インサート成形方法およびインサート成形装置
【課題】成形型内部において樹脂を充填する充填空間から充填しない非充填空間へ樹脂が流出するおそれがなく、かつ、型閉めの際にインサート部品に過大な圧力が掛からないようにする。
【解決手段】各仕切壁12,22によってインサート部品40のモールド部分40aおよび非モールド部分40bの境界が囲まれるように下型10および上型20を型閉めし、ゲート30から溶融した熱可塑性樹脂を充填空間14,24に充填する。その充填した熱可塑性樹脂を冷却源70,70によって冷却して硬化させ、かつ、仕切壁12,22の先端内部に形成された流路13,23に冷媒50を流し、充填空間14,24から仕切壁12,22およびインサート部品40の隙間を介して非充填空間15,25へ流出する可能性のある熱可塑性樹脂を冷却して硬化させる。
【解決手段】各仕切壁12,22によってインサート部品40のモールド部分40aおよび非モールド部分40bの境界が囲まれるように下型10および上型20を型閉めし、ゲート30から溶融した熱可塑性樹脂を充填空間14,24に充填する。その充填した熱可塑性樹脂を冷却源70,70によって冷却して硬化させ、かつ、仕切壁12,22の先端内部に形成された流路13,23に冷媒50を流し、充填空間14,24から仕切壁12,22およびインサート部品40の隙間を介して非充填空間15,25へ流出する可能性のある熱可塑性樹脂を冷却して硬化させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、インサート部品の一部を樹脂によりモールドするインサート成形方法およびインサート成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のインサート成形方法として、PBT(ポリブチレンテレフタレート)などの成形樹脂によりインサート部品の一部をモールドするインサート成形方法が知られている。
図8は、従来のインサート成形方法において用いるインサート成形装置の説明図であり、(a)は縦断面図、(b)は(a)のA−A矢視断面図である。図9は、インサート部品の説明図であり、(a)はインサート部品の縦断面図であり、(b)はインサート部品の内部構造を示す縦断面図である。図10は、図8に示すインサート成形装置によってインサート成形された成形部品の縦断面図である。
【0003】
図8(a)に示すように、従来のインサート成形装置200は、下型10と、上型20と、成形樹脂を充填するゲート30とを備える。下型10の型面11からは仕切壁12が突出形成されており、上型20の型面21からは仕切壁22が突出形成されている。下型10および上型20の内部は、仕切壁12,22により、成形樹脂を充填する充填空間14,24と、成形樹脂を充填しない非充填空間15,25に仕切られている。
【0004】
インサート部品40は、たとえば、圧力センサである。図9(a)に示すように、インサート部品40は、圧力センサ本体41と、圧力センサ本体41と電気的に接続されたリードフレーム42とから構成されている。インサート部品40には、成形樹脂によりモールドするモールド部分40aと、モールドしない非モールド部分40bとが設定されている。
【0005】
図9(b)に示すように、圧力センサ本体41は、圧力を検出するセンシング部44が形成された基板43と、この基板43の裏面に取付けられたリードフレーム42と、このリードフレーム42の表面に取付けられたICチップ46と、センシング部44とICチップ46及びICチップ46とリードフレーム42とをそれぞれ電気的に接続するボンディングワイヤ45とを備える。基板43、ボンディングワイヤ45およびICチップ46は、樹脂48によってモールドされており、樹脂48のうち、センシング部44と対向する部分には、圧力導入口48aが形成されている。圧力導入口48aは、被検出対象である流体を導入するために露出させる必要があるため、非モールド部分40bに含まれている。
【0006】
また、図8(b)に示すように、仕切壁12,22は、インサート部品40のうち、成形樹脂によりモールドするモールド部分40aと、成形樹脂によりモールドしない非モールド部分40bとの境界を囲むように形成されている。また、下型10の外面には、充填空間14,24に充填された成形樹脂を加熱して硬化させるための加熱装置80が設けられている。
【0007】
従来は、上記構造のインサート成形装置200を用い、次の工程を経てインサート成形を行っている。
最初に、インサート部品40をモールド部分40aおよび非モールド部分40bの境界が下型10の仕切壁12の先端によって囲まれるように下型10に配置する。つまり、モールド部分40aが下型10の充填空間14に位置し、非モールド部分40bが非充填空間15に位置するように配置する。
【0008】
次に、上型20を下型10に接合し、型閉めを行う。これにより、インサート部品40のモールド部分40aおよび非モールド部分40bの境界が、各仕切壁12,22の先端によって囲まれ、モールド部分40aが充填空間14,24に配置され、非モールド部分40bが非充填空間15,25に配置される。
【0009】
次に、溶融状態の成形樹脂をゲート30から充填空間14,24に充填し、充填空間14,24に充填された成形樹脂を加熱装置80により加熱して硬化させる。次に、上型20を開き、インサート成形された成形部品100を取出す。この成形部品100は、図10に示すように、モールド部分40aが成形樹脂によりモールドされたモールド部90を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第2784286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、上述した従来のインサート成形方法には、次に述べる問題点がある。図11および図12は、従来のインサート成形方法における問題点を説明するための説明図である。従来のインサート成形方法は、図11に示すように、溶融状態の成形樹脂91をゲート30から充填空間14,24に充填するときに、成形樹脂91が仕切壁12,22とインサート部品40との境界に形成された隙間から非充填空間15,25へ流出するという問題がある。図11において符号92によって示すものは、充填空間14,24から非充填空間15,25へ流出した成形樹脂を示す。
【0012】
このように、充填空間14,24から非充填空間15,25へ流出した成形樹脂は、硬化後にバリとなって残留し、圧力導入口48aに露出すると、圧力導入口48aに導入される流体の流れが乱れるため、圧力の検出精度が低下してしまう。また、バリが圧力導入口48aに落下し、センシング部44に付着すると、同様に圧力の検出精度が低下する。
【0013】
また、仕切壁12,22とインサート部品40との境界に隙間が形成されないようにするために、型閉めするときの圧力を高めると、図12に示すように、仕切壁12,22のインサート部品40に対する圧力Fによってインサート部品40にクラック47が発生し、インサート部品40が破損するおそれがある。
【0014】
そこでこの発明は、上述の諸問題を解決するためになされたものであり、インサート部品の一部を樹脂によりモールドするインサート成形方法およびインサート成形装置において、成形型内部において樹脂を充填する充填空間から充填しない非充填空間へ樹脂が流出するおそれがなく、かつ、型閉めの際にインサート部品に過大な圧力が掛からないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、インサート部品(40)の一部を樹脂によりモールドするインサート成形方法において、樹脂を充填する充填空間(14,24)と充填しない非充填空間(15,25)とに成形型の内部を仕切る仕切壁(12,22)が型面(11,21)に形成された第1および第2の成形型(10,20)を用意し、前記樹脂によりモールドするモールド部分(40a)が前記第1の成形型(10)の充填空間(14)に配置されるとともに前記樹脂によりモールドしない非モールド部分(40b)が前記第1の成形型の非充填空間(15)に配置されるようにインサート部品を前記第1の成形型に配置する第1の工程と、前記モールド部分が前記第1および第2の成形型の充填空間に配置されるとともに前記非モールド部分が前記第1および第2の成形型の非充填空間に配置され、かつ、前記第1および第2の成形型の各仕切壁によって前記モールド部分および非モールド部分の境界が囲まれるように前記第1および第2の成形型を型閉めする第2の工程と、型閉めされた前記第1および第2の成形型の内部に形成された充填空間に流動状態の前記樹脂を充填する第3の工程と、前記充填空間に充填された流動状態の樹脂を硬化させ、かつ、前記充填空間に充填された流動状態の樹脂のうち前記第1および第2の成形型の各仕切壁およびインサート部品の境界から前記非充填空間へ流出する可能性のある樹脂を前記第1および第2の成形型の内部から硬化させる第4の工程と、を有することを特徴とする。
【0016】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載のインサート成形方法において、前記樹脂は熱可塑性樹脂であり、前記第4の工程は、前記充填空間(14,24)に充填された溶融状態の熱可塑性樹脂を冷却して硬化させ、かつ、前記充填空間に充填された溶融状態の熱可塑性樹脂のうち前記第1および第2の成形型(10,20)の各仕切壁(12,22)およびインサート部品(40)の境界から前記非充填空間(15,25)へ流出する可能性のある熱可塑性樹脂を前記第1および第2の成形型の内部から冷却して硬化させる工程であることを特徴とする。
【0017】
請求項3に記載の発明では、請求項2に記載のインサート成形方法において、前記第1および第2の成形型(10,20)の各仕切壁(12,22)を冷却することにより、前記非充填空間(15,25)へ流出する可能性のある熱可塑性樹脂を前記第1および第2の成形型の内部から冷却して硬化させることを特徴とする。
【0018】
請求項4に記載の発明では、請求項3に記載のインサート成形方法において、前記第1および第2の成形型(10,20)の各仕切壁(12,22)の内部に冷媒(50)を流すことにより、前記第1および第2の成形型の各仕切壁を冷却することを特徴とする。
【0019】
請求項5に記載の発明では、請求項4に記載のインサート成形方法において、前記冷媒(50)を前記各仕切壁(12,22)およびインサート部品(40)の境界に沿って前記各仕切壁の内部に流すことを特徴とする。
【0020】
請求項6に記載の発明では、請求項2に記載のインサート成形方法において、前記インサート部品(40)を冷却するインサート部品冷却工程を有し、前記非充填空間(15,25)へ流出する可能性のある樹脂を前記インサート部品冷却工程によって冷却されたインサート部品によって冷却して硬化させることを特徴とする。
【0021】
請求項7に記載の発明では、請求項3に記載のインサート成形方法において、前記第2の工程の後に前記非充填空間(15,25)に冷媒を注入する冷媒注入工程を有し、前記冷媒注入工程によって前記非充填空間に注入された冷媒によって前記第1および第2の成形型(10,20)の各仕切壁(12,22)を冷却することを特徴とする。
【0022】
請求項8に記載の発明では、請求項1に記載のインサート成形方法において、前記樹脂は硬化剤との化学反応によって硬化する性質の樹脂であり、前記第4の工程は、前記充填空間(14.24)に充填された流動状態の前記樹脂に前記硬化剤(51)を添加して硬化させ、かつ、前記充填空間に充填された流動状態の前記樹脂のうち前記第1および第2の成形型(10,20)の各仕切壁(12,22)およびインサート部品(40)の境界から前記非充填空間(15,25)へ流出する可能性のある樹脂に前記第1および第2の成形型の内部から前記硬化剤を添加して硬化させる工程であることを特徴とする。
【0023】
請求項9に記載の発明では、請求項8に記載のインサート成形方法において、前記非充填空間(15,25)へ流出する可能性のある樹脂に前記第1および第2の成形型(10,20)の各仕切壁(12,22)から前記硬化剤(51)を添加して硬化させることを特徴とする。
【0024】
請求項10に記載の発明では、請求項9に記載のインサート成形方法において、前記非充填空間(15,25)へ流出する可能性のある樹脂に対して前記硬化剤(51)を前記各仕切壁(12,22)およびインサート部品(40)の境界に沿って添加して硬化させることを特徴とする。
【0025】
請求項11に記載の発明では、請求項1に記載のインサート成形方法において、前記樹脂は電磁波の照射によって硬化する性質の樹脂であり、前記第4の工程は、前記充填空間(14,24)に充填された流動状態の前記樹脂に前記電磁波を照射して硬化させ、かつ、前記充填空間に充填された流動状態の前記樹脂のうち前記第1および第2の成形型(10,20)の各仕切壁(12,22)およびインサート部品(40)の境界から前記非充填空間(15,25)へ流出する可能性のある樹脂に前記電磁波を照射して硬化させる工程であることを特徴とする。
【0026】
請求項12に記載の発明では、インサート部品(40)の一部を樹脂によりモールドするインサート成形装置(1)において、インサート部品のうち、樹脂によりモールドするモールド部分(40a)およびモールドしない非モールド部分(40b)の境界を囲むとともに、流動状態の前記樹脂を充填する充填空間(14,24)と充填しない非充填空間(15,25)とに仕切る仕切壁(12,22)がそれぞれ型面(11,21)から突出形成された第1および第2の成形型(10,20)と、型閉めされた前記第1および第2の成形型の前記充填空間に充填された前記流動状態の樹脂を硬化させる第1の硬化装置(50,70,71)と、前記充填空間に充填された前記流動状態の樹脂のうち、前記仕切壁およびインサート部品の境界から前記非充填空間に流出する可能性のある樹脂を硬化させる第2の硬化装置(13,23,50,72)と、を備えることを特徴とする。
【0027】
請求項13に記載の発明では、請求項12に記載のインサート成形装置(1)において、前記樹脂は熱可塑性樹脂であり、前記第1の硬化装置(50,70,71)は、前記充填空間に充填された前記熱可塑性樹脂を冷却して硬化させるものであり、前記第2の硬化装置(13,23,50,72)は、前記充填空間(14.24)に充填された前記熱可塑性樹脂のうち、前記仕切壁(12,22)およびインサート部品(40)の境界から前記非充填空間(15,25)に流出する可能性のある熱可塑性樹脂を冷却して硬化させるものであることを特徴とする。
【0028】
請求項14に記載の発明では、請求項13に記載のインサート成形装置(1)において、前記第2の硬化装置(13,23,50,72)は、前記第1および第2の成形型(10,20)の各仕切壁(12,22)を冷却するものであることを特徴とする。
【0029】
請求項15に記載の発明では、請求項14に記載のインサート成形装置(1)において、前記第2の硬化装置(13,23,50,72)は、前記第1および第2の成形型(10,20)の各仕切壁(12,22)の内部に形成された流路(13,23)に冷媒(50)を流すことにより、前記第1および第2の成形型の各仕切壁を冷却するものであることを特徴とする。
【0030】
請求項16に記載の発明では、請求項15に記載のインサート成形装置(1)において、前記流路(13,23)は、前記各仕切壁(12,22)およびインサート部品(40)の境界に沿うように前記各仕切壁の内部に形成されていることを特徴とする。
【0031】
請求項17に記載の発明では、請求項15または請求項16に記載のインサート成形装置(1)において、前記第2の硬化装置(13,23,50,72)は、前記冷媒(50)を循環させ、かつ、その循環した冷媒を冷却するように構成されていることを特徴とする。
【0032】
なお、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0033】
(請求項1または請求項12に記載の発明の効果)
請求項1または請求項12に記載の発明を実施すれば、第1および第2の成形型の充填空間に充填された流動状態の樹脂を硬化させ、かつ、充填空間に充填された流動状態の樹脂のうち第1および第2の成形型の各仕切壁およびインサート部品の境界から非充填空間へ流出する可能性のある樹脂を第1および第2の成形型の内部から硬化させることができる。
したがって、第1および第2の成形型において樹脂を充填する充填空間から充填しない非充填空間へ樹脂が流出するおそれがない。
【0034】
しかも、第1および第2の成形型の各仕切壁およびインサート部品の境界に隙間が形成されている場合であっても、その隙間から非充填空間へ流出する可能性のある樹脂を硬化させることができるため、第1および第2の成形型を型閉めする際に、各仕切壁をインサート部品に接触させる必要がないので、型閉めの際にインサート部品に過大な圧力が掛からないようにすることもできる。
【0035】
(請求項2または請求項13に記載の発明の効果)
請求項2または請求項13に記載の発明を実施すれば、第1および第2の成形型の充填空間に充填された溶融状態の熱可塑性樹脂を冷却して硬化させ、かつ、充填空間に充填された溶融状態の熱可塑性樹脂のうち第1および第2の成形型の各仕切壁およびインサート部品の境界から非充填空間へ流出する可能性のある熱可塑性樹脂を第1および第2の成形型の内部から冷却して硬化させることができる。
したがって、第1および第2の成形型において熱可塑性樹脂を充填する充填空間から充填しない非充填空間へ熱可塑性樹脂が流出するおそれがない。
【0036】
しかも、第1および第2の成形型の各仕切壁およびインサート部品の境界に隙間が形成されている場合であっても、その隙間から非充填空間へ流出する可能性のある熱可塑性樹脂を硬化させることができるため、第1および第2の成形型を型閉めする際に、各仕切壁をインサート部品に接触させる必要がないので、型閉めの際にインサート部品に過大な圧力が掛からないようにすることもできる。
【0037】
(請求項3または請求項14に記載の発明の効果)
請求項3または請求項14に記載の発明を実施すれば、第1および第2の成形型の各仕切壁を冷却することにより、非充填空間へ流出する可能性のある熱可塑性樹脂を第1および第2の成形型の内部から冷却して硬化させることができる。
したがって、非充填空間へ流出する可能性のある熱可塑性樹脂を効率良く冷却して硬化させることができる。
【0038】
(請求項4または請求項15に記載の発明の効果)
請求項4または請求項15に記載の発明を実施すれば、第1および第2の成形型の各仕切壁の内部に冷媒を流すことにより、第1および第2の成形型の各仕切壁を冷却することができるため、各仕切壁を外部から冷却する場合よりも各仕切壁を効率良く冷却することができるので、非充填空間へ流出する可能性のある熱可塑性樹脂の硬化時間を短縮することができる。
【0039】
(請求項17に記載の発明の効果)
特に、請求項17に記載の発明を実施すれば、冷媒を循環させ、かつ、その循環した冷媒を冷却することができるため、非充填空間へ流出する可能性のある熱可塑性樹脂を効率良く冷却することができるので、硬化時間をより一層短縮することができる。
【0040】
(請求項5または請求項16に記載の発明の効果)
請求項5または請求項16に記載の発明を実施すれば、冷媒を各仕切壁およびインサート部品の境界に沿って各仕切壁の内部に流すことができるため、非充填空間へ流出する可能性のある熱可塑性樹脂をムラ無く硬化させることができる。
【0041】
(請求項6に記載の発明の効果)
請求項6に記載の発明を実施すれば、非充填空間へ流出する可能性のある樹脂を冷却されたインサート部品によって冷却して硬化させることができる。
したがって、各仕切壁を冷却する必要がないため、各仕切壁の内部に流路を形成する必要がないので、各仕切壁の構造を簡易化することができる。
【0042】
(請求項7に記載の発明の効果)
請求項7に記載の発明を実施すれば、非充填空間に注入された冷媒によって第1および第2の成形型の各仕切壁を冷却することができる。
したがって、各仕切壁の内部に流路を形成する必要がないので、各仕切壁の構造を簡易化することができる。
【0043】
(請求項8に記載の発明の効果)
請求項8に記載の発明を実施すれば、第1および第2の成形型の充填空間に充填された流動状態の樹脂に硬化剤を添加して硬化させ、かつ、充填空間に充填された流動状態の樹脂のうち第1および第2の成形型の各仕切壁およびインサート部品の境界から非充填空間へ流出する可能性のある樹脂に第1および第2の成形型の内部から硬化剤を添加して硬化させることができる。
したがって、第1および第2の成形型において流動状態の樹脂を充填する充填空間から充填しない非充填空間へ樹脂が流出するおそれがない。
【0044】
(請求項9に記載の発明の効果)
請求項9に記載の発明を実施すれば、非充填空間へ流出する可能性のある樹脂に第1および第2の成形型の各仕切壁から硬化剤を添加して硬化させることができる。
したがって、非充填空間へ流出する可能性のある樹脂を効率良く硬化させることができる。
【0045】
(請求項10に記載の発明の効果)
請求項10に記載の発明を実施すれば、非充填空間へ流出する可能性のある樹脂に対して硬化剤を各仕切壁およびインサート部品の境界に沿って添加して硬化させることができるため、非充填空間へ流出する可能性のある樹脂をムラ無く硬化させることができる。
【0046】
(請求項11に記載の発明の効果)
請求項11に記載の発明を実施すれば、第1および第2の成形型の充填空間に充填された流動状態の樹脂に電磁波を照射して硬化させ、かつ、充填空間に充填された流動状態の樹脂のうち第1および第2の成形型の各仕切壁およびインサート部品の境界から非充填空間へ流出する可能性のある樹脂に電磁波を照射して硬化させることができる。
したがって、第1および第2の成形型において流動状態の樹脂を充填する充填空間から充填しない非充填空間へ樹脂が流出するおそれがない。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本願発明の第1実施形態におけるインサート成形装置の説明図であり、(a)はインサート成形装置の縦断面図、(b)は(a)に示すインサート成形装置を構成する仕切壁22の縦断面の拡大図、(c)は(a)に示すインサート成形装置を構成する仕切壁12の縦断面の拡大図である。
【図2】図1に示すインサート成形装置のA−A矢視断面図であり、(a)は冷媒が流れていない状態のA−A矢視断面図、(b)は冷媒が流れている状態のA−A矢視断面図である。
【図3】下型および上型を冷却する冷媒冷却循環システムの説明図である。
【図4】仕切壁を冷却する冷媒冷却循環システムの説明図である。
【図5】本願発明の第2実施形態におけるインサート成形装置の説明図であり、(a)はインサート成形装置の縦断面図、(b)は(a)に示すインサート成形装置を構成する仕切壁22の縦断面の拡大図、(c)は(a)に示すインサート成形装置を構成する仕切壁12の縦断面の拡大図である。
【図6】図5に示すインサート成形装置のA−A矢視断面図であり、(a)は硬化剤が流れていない状態のA−A矢視断面図、(b)は硬化剤が流れている状態のA−A矢視断面図である。
【図7】本願発明の第3実施形態におけるインサート成形装置の説明図であり、(a)はインサート成形装置の縦断面図、(b)は(a)に示すインサート成形装置を構成する仕切壁22の縦断面の拡大図、(c)は(a)に示すインサート成形装置を構成する仕切壁12の縦断面の拡大図である。
【図8】従来のインサート成形方法において用いるインサート成形装置の説明図であり、(a)は縦断面図、(b)は(a)のA−A矢視断面図である。
【図9】インサート部品の説明図であり、(a)はインサート部品の縦断面図であり、(b)はインサート部品の内部構造を示す縦断面図である。
【図10】図9に示すインサート成形装置によってインサート成形された成形部品の縦断面図である。
【図11】従来のインサート成形方法における問題点を説明するための説明図である。
【図12】従来のインサート成形方法における問題点を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
〈第1実施形態〉
本願発明の第1実施形態について図を参照して説明する。なお、図8に示した従来のインサート成形装置200と同じ構成については同じ符号を用いて説明し、説明を簡略化または省略する。
【0049】
図1は、第1実施形態におけるインサート成形装置の説明図であり、(a)はインサート成形装置の縦断面図、(b)は(a)に示すインサート成形装置を構成する仕切壁22の縦断面の拡大図、(c)は(a)に示すインサート成形装置を構成する仕切壁12の縦断面の拡大図である。図2は、図1に示すインサート成形装置のA−A矢視断面図であり、(a)は冷媒が流れていない状態のA−A矢視断面図、(b)は冷媒が流れている状態のA−A矢視断面図である。図3は、冷媒冷却循環システムの説明図である。
【0050】
[インサート成形装置の構造]
最初に、インサート成形装置の構造について説明する。図1に示すように、本実施形態のインサート成形装置1は、下型10と、上型20と、熱可塑性樹脂を吐出するゲート30と、下型10を冷却する冷却源70と、上型20を冷却する冷却源70とを備える。図1は、下型10および上型20が型閉めされた状態を示す。下型10の型面11と上型20の型面21との間に形成されたキャビティには、インサート部品40が配置されている。
【0051】
下型10の型面11からは仕切壁12が突出形成されており、下型10の型面11が形成するキャビティは、仕切壁12により、熱可塑性樹脂を充填する充填空間14と充填しない非充填空間15とに仕切られている。上型20の型面21からは仕切壁22が突出形成されており、上型20の型面21が形成するキャビティは、仕切壁22により、熱可塑性樹脂を充填する充填空間24と充填しない非充填空間25とに仕切られている。
【0052】
図2(a)に示すように、各仕切壁12,22の先端は、インサート部品40のうち、熱可塑性樹脂によりモールドするモールド部分40aおよびモールドしない非モールド部分40bの境界を囲み、かつ、その境界の外形と合致する形状に形成されている。このため、各仕切壁12,22の先端は、型閉めを行った際にインサート部品40の上記境界の外面全周に密着可能に形成されている。
【0053】
仕切壁12の内部には、冷媒50を循環させるための流路13が形成されており、仕切壁22の内部には、冷媒50を循環させるための流路23が形成されている。図2(a)に示すように、各流路13,23は、各仕切壁12,22およびインサート部品40の境界に沿うように各仕切壁12,22の先端部に形成されている。下型10には、冷媒50を流路13に流入させるための冷媒流入口13aが形成されており、その冷媒流入口13aの反対側には、流路13を流れた冷媒50を流出させるための冷媒流出口13bが形成されている。
【0054】
上型20には、冷媒50を流路23に流入させるための冷媒流入口23aが形成されており、その冷媒流入口23aの反対側には、流路23を流れた冷媒50を流出させるための冷媒流出口23bが形成されている。図4に示すように、冷媒流入口13a,23aおよび冷媒流出口13b,23bは、冷媒50を冷却するとともに各流路13,23を介して循環させるための冷媒冷却循環装置72と接続されている。
【0055】
図3に示すように、冷却源70,70は、それぞれ鉄などの熱伝導率の高い金属により、下型10および上型20の外面を覆う形状に構成されており、各冷却源70の内部には、冷媒50を循環させるための流路が形成されている。各冷却源70は、冷媒50を冷却するとともに冷却源70,70の内部において循環させるための冷媒冷却循環装置71と接続されている。
【0056】
また、図示しないが、インサート成形装置1は、インサート成形された成形部品(図10において符号100で示す)を離型するための離型装置と、型閉めおよび型開きする際に上型20を昇降させる昇降装置とを備える。離型装置は、下型10の型面11から突出する離型ピンと、この離型ピンを進退させる進退装置とを備えており、離型ピンを型面11から突出させることにより、成形部品を型面11から押し上げる。
【0057】
この実施形態では、熱可塑性樹脂として、PPS(ポリフェニレンスルファイド)またはPBT(ポリブチレンテレフタレート)を用いる。また、冷媒50として冷水を用い、冷媒冷却循環装置71,72は、冷媒50としての冷水を貯蔵する冷水タンクと、この冷水タンクに貯蔵されている冷水を冷却するチリングユニットと、冷水タンクに貯留されている冷水を各流路13,23に循環させるポンプとから構成されている。また、下型10、上型20および仕切壁12,22は、それぞれ鉄などの熱伝導率の高い金属により形成されている。なお、冷媒50として、液化窒素ガスなどの気体を用いることもできる。
【0058】
[インサート成形方法]
次に、上記のインサート成形装置1を用いてインサート部品40の一部を熱可塑性樹脂によりモールドするインサート成形方法について説明する。
【0059】
下型10および上型20を用意する。次に、熱可塑性樹脂によりモールドするモールド部分40aが下型10の充填空間14に配置されるとともに熱可塑性樹脂によりモールドしない非モールド部分40bが下型10の非充填空間15に配置されるようにインサート部品40を下型10に配置する(第1の工程)。
【0060】
次に、モールド部分40aが下型10および上型20の充填空間14,24に配置されるとともに非モールド部分40bが下型10および上型20の非充填空間15,25に配置され、かつ、下型10および上型20の各仕切壁12,22によってモールド部分40aおよび非モールド部分40bの境界が囲まれるように上型20を下型10に接合し、下型10および上型20を型閉めする(第2の工程)。
【0061】
次に、溶融状態の熱可塑性樹脂をゲート30から充填空間14,24に吐出して充填する(第3の工程)。次に、冷媒冷却循環装置72を作動させて冷媒50を流路13,23に循環させ、仕切壁12,22を冷却し、充填空間14,24に充填された溶融状態の熱可塑性樹脂のうち各仕切壁12,22およびインサート部品40の境界から非充填空間15,25へ流出する可能性のある熱可塑性樹脂を冷却して硬化させる。また、冷媒冷却循環装置71を作動させて冷媒50を各冷却源70に循環させ、下型10および上型20を冷却し、充填空間14,24に充填された溶融状態の熱可塑性樹脂を冷却して硬化させる(第4の工程)。
【0062】
このように、各仕切壁12,22を直接冷却するため、上記の境界から非充填空間15,25へ流出する可能性のある熱可塑性樹脂を効率良く冷却して硬化させることができる。
したがって、上記境界に隙間が形成されている場合であっても、硬化した熱可塑性樹脂が上記隙間を閉塞する役割を果たすため、上記隙間から溶融した熱可塑性樹脂が非充填空間15,25へ流出するおそれがない。
【0063】
また、上記隙間が形成されないようにするために、型閉めの際に下型10に対する上型20の押圧力を大きくする必要がないため、仕切壁12,22によってインサート部品40に過大な圧力が掛からないようにすることができるので、インサート部品40が破損するおそれもない。
【0064】
また、各仕切壁12,22およびインサート部品40の境界に隙間が形成されている場合に、充填空間14,24に充填された溶融状態の熱可塑性樹脂が上記隙間から非充填空間15,25へ流出する条件は、熱可塑性樹脂をゲート30から充填空間14,24へ注入する速度、注入された熱可塑性樹脂が上記隙間に到達する速度、熱可塑性樹脂の充填空間14,24における内部圧力、熱可塑性樹脂の粘度、仕切壁12,22の温度、熱可塑性樹脂の硬化速度などによって変わる。
【0065】
そこで、各仕切壁12,22を冷却するタイミングは、上記の各条件に応じて決定することが望ましい。たとえば、充填空間14,24への充填が終了する前に上記隙間から非充填空間15,25へ流出する可能性のある場合は、充填が終了する前に各仕切壁12,22を冷却し、上記流出する可能性のある熱可塑性樹脂を冷却して硬化させ、隙間から流出しないようにする。
【0066】
〈第2実施形態〉
本願発明の第2実施形態について図を参照して説明する。図5は、本実施形態におけるインサート成形装置の説明図であり、(a)はインサート成形装置の縦断面図、(b)は(a)に示すインサート成形装置を構成する仕切壁22の縦断面の拡大図、(c)は(a)に示すインサート成形装置を構成する仕切壁12の縦断面の拡大図である。図6は、図5に示すインサート成形装置のA−A矢視断面図であり、(a)は硬化剤が流れていない状態のA−A矢視断面図、(b)は硬化剤が流れている状態のA−A矢視断面図である。なお、第1実施形態のインサート成形装置1と同じ構成については同じ符号を用いて説明し、説明を簡略化または省略する。
【0067】
本実施形態のインサート成形装置1は、硬化剤との化学反応によって硬化する性質の樹脂によってインサート部品40の一部をモールドする。上型20および仕切壁22には、硬化剤51を注入するための注入口26が貫通形成されている。また、仕切壁22には、注入口26から注入された硬化剤51を仕切壁22の先端に沿って流すための流出路27が仕切壁22の先端に沿って溝状に開口形成されている。注入口26および流出路27は相互に連通している。
【0068】
また、仕切壁12には、仕切壁22の流出路27から流れ込む硬化剤51を流すための流出路16が仕切壁12の先端に沿って溝状に開口形成されている。流出路27,16は相互に連通している。
注入口26から注入された硬化剤51は、流出路27に沿って流れ、さらに流出路16に沿って流れる。
【0069】
つまり、硬化剤51は、流出路27,16の各開口部から、仕切壁12,22およびインサート部品40の隙間を埋めるように溢れ出る。そして、硬化剤51は、充填空間14,24から仕切壁12,22およびインサート部品40の隙間を介して非充填空間15,25へ流出しようとする樹脂に添加され、その樹脂を硬化させる。これにより、硬化した樹脂によって上記隙間が閉塞されるため、充填空間14,24に充填された硬化前の樹脂が上記隙間から非充填空間15,25へ流出するおそれがなくなる。また、充填空間14,24に充填された樹脂は、ゲート30から硬化剤を注入して硬化させる。
【0070】
このように、仕切壁12,22およびインサート部品40の隙間から非充填空間15,25へ流出しようとする樹脂に硬化剤51を直接添加することができるため、上記隙間から非充填空間15,25へ流出しようとする樹脂を短時間で硬化させることができる。
したがって、上記境界に隙間が形成されている場合であっても、硬化した熱可塑性樹脂が上記隙間を閉塞する役割を果たすため、上記隙間から硬化前の樹脂が非充填空間15,25へ流出するおそれがない。
【0071】
また、上記隙間が形成されないようにするために、型閉めの際に下型10に対する上型20の押圧力を大きくする必要がないため、仕切壁12,22によってインサート部品40に過大な圧力が掛からないようにすることができるので、インサート部品40が破損するおそれもない。
【0072】
この実施形態では、樹脂として、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーンゴム、変性シリコーン樹脂などを用いる。たとえば、エポキシ樹脂として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いることができる。また、エポキシ樹脂の硬化剤として、無水マレイン酸、無水フタル酸などの酸無水物系硬化剤、エチレンアミン類などの芳香族アミン系硬化剤などを用いることができる。
【0073】
〈第3実施形態〉
本願発明の第3実施形態について図を参照して説明する。図7は、本実施形態におけるインサート成形装置の説明図であり、(a)はインサート成形装置の縦断面図、(b)は(a)に示すインサート成形装置を構成する仕切壁22の縦断面の拡大図、(c)は(a)に示すインサート成形装置を構成する仕切壁12の縦断面の拡大図である。なお、第1実施形態のインサート成形装置1と同じ構成については同じ符号を用いて説明し、説明を簡略化または省略する。
【0074】
本実施形態のインサート成形装置1は、電磁波(X線、紫外線、可視光線および電子線など)を照射すると硬化する性質の樹脂によってインサート部品40の一部をモールドする。下型10aおよび上型20aのうち、少なくとも充填空間14,24を形成する部分は、電磁波が貫通する材料により形成されている。たとえば、紫外線を照射して硬化する、いわゆる紫外線硬化性樹脂(UV樹脂)を用いる場合は、下型10aおよび上型20aのうち、少なくとも充填空間14,24を形成する部分を、ガラスなど、紫外線が貫通し、かつ、充填する樹脂の温度によって変形しない材料により形成する。
【0075】
下型10aおよび上型20aの外側には、充填空間14,24に充填された樹脂に電磁波を照射して硬化させるための電磁波照射源60が配置されている。たとえば、紫外線の照射により硬化する樹脂を用いる場合は、電磁波照射源60として紫外線ランプなどの紫外線照射源を用いることができる。
また、仕切壁12,22の内部には、仕切壁の先端に沿って複数の電磁波照射源61が設けられている。仕切壁12,22の少なくとも先端12a,22aは、電磁波が貫通する材料により形成されている。
【0076】
電磁波の照射により硬化する樹脂は、ゲート30から充填空間14,24に充填される。そして、充填空間14,24に充填された樹脂に対して電磁波照射源60から電磁波を照射して硬化させる。また、仕切壁12,22およびインサート部品40の隙間から非充填空間15,25へ流出しようとする樹脂は、仕切壁12,22の内部に設けられた電磁波照射源61から照射された電磁波によって硬化する。これにより、硬化した樹脂によって上記隙間が閉塞されるため、充填空間14,24に充填された硬化前の樹脂が上記隙間から非充填空間15,25へ流出するおそれがなくなる。
【0077】
このように、本実施形態のインサート成形装置1は、仕切壁12,22およびインサート部品40の隙間から非充填空間15,25へ流出しようとする樹脂の近傍から電磁波を照射することができるため、上記隙間から非充填空間15,25へ流出しようとする樹脂を短時間で硬化させることができる。
したがって、上記境界に隙間が形成されている場合であっても、硬化した熱可塑性樹脂が上記隙間を閉塞する役割を果たすため、上記隙間から硬化前の樹脂が非充填空間15,25へ流出するおそれがない。
【0078】
また、上記隙間が形成されないようにするために、型閉めの際に下型10aに対する上型20aの押圧力を大きくする必要がないため、仕切壁12,22によってインサート部品40に過大な圧力が掛からないようにすることができるので、インサート部品40が破損するおそれもない。
【0079】
〈他の実施形態〉
(1)インサート部品40を冷却するインサート部品冷却工程を有し、充填空間14,24から隙間を介して非充填空間15,25へ流出する可能性のある樹脂を上記のインサート部品冷却工程によって冷却されたインサート部品40によって冷却して硬化させることもできる。たとえば、インサート部品40に設けられた放熱素子を冷却媒体に接触させて冷却する。その冷却媒体としては、空気、水、液化窒素ガスなど、冷却前の下型10および上型20の温度よりも低い温度の媒体を用いる。
【0080】
このインサート成形方法を実施すれば、非充填空間15,25へ流出する可能性のある樹脂を冷却されたインサート部品によって冷却して硬化させることができる。
したがって、各仕切壁12,22を冷却する必要がないため、各仕切壁12,22の内部に冷媒50を流すための流路13,23などを形成する必要がないので、各仕切壁12,22の構造を簡易化することができる。
【0081】
(2)下型10および上型20を型閉めした後に、非充填空間15,25に冷媒を注入する冷媒注入工程を有し、その冷媒注入工程によって非充填空間15,25に注入された冷媒によって下型10および上型20の各仕切壁12,22を冷却し、充填空間14,24から隙間を介して非充填空間15,25へ流出する可能性のある樹脂を冷却して硬化させることもできる。たとえば、非充填空間15,25に注入する冷媒として、水、アルコール、液化窒素ガスなどを用いることができる。
【0082】
このインサート成形方法を実施すれば、非充填空間15,25に注入された冷媒によって下型10および上型20の各仕切壁12,22を冷却することができる。
したがって、各仕切壁12,22の内部に流路を形成する必要がないので、各仕切壁12,22の構造を簡易化することができる。
【符号の説明】
【0083】
1・・インサート成形装置、10・・下型(第1の成形型)、11・・型面、
12・・仕切壁、13・・流路、14・・充填空間、15・・非充填空間、
20・・上型(第2の成形型)、21・・型面、22・・仕切壁、23・・流路、
25・・非充填空間、40・・インサート部品、50・・冷媒、
71・・冷媒冷却循環装置(第1の硬化装置)、
72・・冷媒冷却循環装置(第2の硬化装置)。
【技術分野】
【0001】
この発明は、インサート部品の一部を樹脂によりモールドするインサート成形方法およびインサート成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のインサート成形方法として、PBT(ポリブチレンテレフタレート)などの成形樹脂によりインサート部品の一部をモールドするインサート成形方法が知られている。
図8は、従来のインサート成形方法において用いるインサート成形装置の説明図であり、(a)は縦断面図、(b)は(a)のA−A矢視断面図である。図9は、インサート部品の説明図であり、(a)はインサート部品の縦断面図であり、(b)はインサート部品の内部構造を示す縦断面図である。図10は、図8に示すインサート成形装置によってインサート成形された成形部品の縦断面図である。
【0003】
図8(a)に示すように、従来のインサート成形装置200は、下型10と、上型20と、成形樹脂を充填するゲート30とを備える。下型10の型面11からは仕切壁12が突出形成されており、上型20の型面21からは仕切壁22が突出形成されている。下型10および上型20の内部は、仕切壁12,22により、成形樹脂を充填する充填空間14,24と、成形樹脂を充填しない非充填空間15,25に仕切られている。
【0004】
インサート部品40は、たとえば、圧力センサである。図9(a)に示すように、インサート部品40は、圧力センサ本体41と、圧力センサ本体41と電気的に接続されたリードフレーム42とから構成されている。インサート部品40には、成形樹脂によりモールドするモールド部分40aと、モールドしない非モールド部分40bとが設定されている。
【0005】
図9(b)に示すように、圧力センサ本体41は、圧力を検出するセンシング部44が形成された基板43と、この基板43の裏面に取付けられたリードフレーム42と、このリードフレーム42の表面に取付けられたICチップ46と、センシング部44とICチップ46及びICチップ46とリードフレーム42とをそれぞれ電気的に接続するボンディングワイヤ45とを備える。基板43、ボンディングワイヤ45およびICチップ46は、樹脂48によってモールドされており、樹脂48のうち、センシング部44と対向する部分には、圧力導入口48aが形成されている。圧力導入口48aは、被検出対象である流体を導入するために露出させる必要があるため、非モールド部分40bに含まれている。
【0006】
また、図8(b)に示すように、仕切壁12,22は、インサート部品40のうち、成形樹脂によりモールドするモールド部分40aと、成形樹脂によりモールドしない非モールド部分40bとの境界を囲むように形成されている。また、下型10の外面には、充填空間14,24に充填された成形樹脂を加熱して硬化させるための加熱装置80が設けられている。
【0007】
従来は、上記構造のインサート成形装置200を用い、次の工程を経てインサート成形を行っている。
最初に、インサート部品40をモールド部分40aおよび非モールド部分40bの境界が下型10の仕切壁12の先端によって囲まれるように下型10に配置する。つまり、モールド部分40aが下型10の充填空間14に位置し、非モールド部分40bが非充填空間15に位置するように配置する。
【0008】
次に、上型20を下型10に接合し、型閉めを行う。これにより、インサート部品40のモールド部分40aおよび非モールド部分40bの境界が、各仕切壁12,22の先端によって囲まれ、モールド部分40aが充填空間14,24に配置され、非モールド部分40bが非充填空間15,25に配置される。
【0009】
次に、溶融状態の成形樹脂をゲート30から充填空間14,24に充填し、充填空間14,24に充填された成形樹脂を加熱装置80により加熱して硬化させる。次に、上型20を開き、インサート成形された成形部品100を取出す。この成形部品100は、図10に示すように、モールド部分40aが成形樹脂によりモールドされたモールド部90を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第2784286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、上述した従来のインサート成形方法には、次に述べる問題点がある。図11および図12は、従来のインサート成形方法における問題点を説明するための説明図である。従来のインサート成形方法は、図11に示すように、溶融状態の成形樹脂91をゲート30から充填空間14,24に充填するときに、成形樹脂91が仕切壁12,22とインサート部品40との境界に形成された隙間から非充填空間15,25へ流出するという問題がある。図11において符号92によって示すものは、充填空間14,24から非充填空間15,25へ流出した成形樹脂を示す。
【0012】
このように、充填空間14,24から非充填空間15,25へ流出した成形樹脂は、硬化後にバリとなって残留し、圧力導入口48aに露出すると、圧力導入口48aに導入される流体の流れが乱れるため、圧力の検出精度が低下してしまう。また、バリが圧力導入口48aに落下し、センシング部44に付着すると、同様に圧力の検出精度が低下する。
【0013】
また、仕切壁12,22とインサート部品40との境界に隙間が形成されないようにするために、型閉めするときの圧力を高めると、図12に示すように、仕切壁12,22のインサート部品40に対する圧力Fによってインサート部品40にクラック47が発生し、インサート部品40が破損するおそれがある。
【0014】
そこでこの発明は、上述の諸問題を解決するためになされたものであり、インサート部品の一部を樹脂によりモールドするインサート成形方法およびインサート成形装置において、成形型内部において樹脂を充填する充填空間から充填しない非充填空間へ樹脂が流出するおそれがなく、かつ、型閉めの際にインサート部品に過大な圧力が掛からないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、インサート部品(40)の一部を樹脂によりモールドするインサート成形方法において、樹脂を充填する充填空間(14,24)と充填しない非充填空間(15,25)とに成形型の内部を仕切る仕切壁(12,22)が型面(11,21)に形成された第1および第2の成形型(10,20)を用意し、前記樹脂によりモールドするモールド部分(40a)が前記第1の成形型(10)の充填空間(14)に配置されるとともに前記樹脂によりモールドしない非モールド部分(40b)が前記第1の成形型の非充填空間(15)に配置されるようにインサート部品を前記第1の成形型に配置する第1の工程と、前記モールド部分が前記第1および第2の成形型の充填空間に配置されるとともに前記非モールド部分が前記第1および第2の成形型の非充填空間に配置され、かつ、前記第1および第2の成形型の各仕切壁によって前記モールド部分および非モールド部分の境界が囲まれるように前記第1および第2の成形型を型閉めする第2の工程と、型閉めされた前記第1および第2の成形型の内部に形成された充填空間に流動状態の前記樹脂を充填する第3の工程と、前記充填空間に充填された流動状態の樹脂を硬化させ、かつ、前記充填空間に充填された流動状態の樹脂のうち前記第1および第2の成形型の各仕切壁およびインサート部品の境界から前記非充填空間へ流出する可能性のある樹脂を前記第1および第2の成形型の内部から硬化させる第4の工程と、を有することを特徴とする。
【0016】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載のインサート成形方法において、前記樹脂は熱可塑性樹脂であり、前記第4の工程は、前記充填空間(14,24)に充填された溶融状態の熱可塑性樹脂を冷却して硬化させ、かつ、前記充填空間に充填された溶融状態の熱可塑性樹脂のうち前記第1および第2の成形型(10,20)の各仕切壁(12,22)およびインサート部品(40)の境界から前記非充填空間(15,25)へ流出する可能性のある熱可塑性樹脂を前記第1および第2の成形型の内部から冷却して硬化させる工程であることを特徴とする。
【0017】
請求項3に記載の発明では、請求項2に記載のインサート成形方法において、前記第1および第2の成形型(10,20)の各仕切壁(12,22)を冷却することにより、前記非充填空間(15,25)へ流出する可能性のある熱可塑性樹脂を前記第1および第2の成形型の内部から冷却して硬化させることを特徴とする。
【0018】
請求項4に記載の発明では、請求項3に記載のインサート成形方法において、前記第1および第2の成形型(10,20)の各仕切壁(12,22)の内部に冷媒(50)を流すことにより、前記第1および第2の成形型の各仕切壁を冷却することを特徴とする。
【0019】
請求項5に記載の発明では、請求項4に記載のインサート成形方法において、前記冷媒(50)を前記各仕切壁(12,22)およびインサート部品(40)の境界に沿って前記各仕切壁の内部に流すことを特徴とする。
【0020】
請求項6に記載の発明では、請求項2に記載のインサート成形方法において、前記インサート部品(40)を冷却するインサート部品冷却工程を有し、前記非充填空間(15,25)へ流出する可能性のある樹脂を前記インサート部品冷却工程によって冷却されたインサート部品によって冷却して硬化させることを特徴とする。
【0021】
請求項7に記載の発明では、請求項3に記載のインサート成形方法において、前記第2の工程の後に前記非充填空間(15,25)に冷媒を注入する冷媒注入工程を有し、前記冷媒注入工程によって前記非充填空間に注入された冷媒によって前記第1および第2の成形型(10,20)の各仕切壁(12,22)を冷却することを特徴とする。
【0022】
請求項8に記載の発明では、請求項1に記載のインサート成形方法において、前記樹脂は硬化剤との化学反応によって硬化する性質の樹脂であり、前記第4の工程は、前記充填空間(14.24)に充填された流動状態の前記樹脂に前記硬化剤(51)を添加して硬化させ、かつ、前記充填空間に充填された流動状態の前記樹脂のうち前記第1および第2の成形型(10,20)の各仕切壁(12,22)およびインサート部品(40)の境界から前記非充填空間(15,25)へ流出する可能性のある樹脂に前記第1および第2の成形型の内部から前記硬化剤を添加して硬化させる工程であることを特徴とする。
【0023】
請求項9に記載の発明では、請求項8に記載のインサート成形方法において、前記非充填空間(15,25)へ流出する可能性のある樹脂に前記第1および第2の成形型(10,20)の各仕切壁(12,22)から前記硬化剤(51)を添加して硬化させることを特徴とする。
【0024】
請求項10に記載の発明では、請求項9に記載のインサート成形方法において、前記非充填空間(15,25)へ流出する可能性のある樹脂に対して前記硬化剤(51)を前記各仕切壁(12,22)およびインサート部品(40)の境界に沿って添加して硬化させることを特徴とする。
【0025】
請求項11に記載の発明では、請求項1に記載のインサート成形方法において、前記樹脂は電磁波の照射によって硬化する性質の樹脂であり、前記第4の工程は、前記充填空間(14,24)に充填された流動状態の前記樹脂に前記電磁波を照射して硬化させ、かつ、前記充填空間に充填された流動状態の前記樹脂のうち前記第1および第2の成形型(10,20)の各仕切壁(12,22)およびインサート部品(40)の境界から前記非充填空間(15,25)へ流出する可能性のある樹脂に前記電磁波を照射して硬化させる工程であることを特徴とする。
【0026】
請求項12に記載の発明では、インサート部品(40)の一部を樹脂によりモールドするインサート成形装置(1)において、インサート部品のうち、樹脂によりモールドするモールド部分(40a)およびモールドしない非モールド部分(40b)の境界を囲むとともに、流動状態の前記樹脂を充填する充填空間(14,24)と充填しない非充填空間(15,25)とに仕切る仕切壁(12,22)がそれぞれ型面(11,21)から突出形成された第1および第2の成形型(10,20)と、型閉めされた前記第1および第2の成形型の前記充填空間に充填された前記流動状態の樹脂を硬化させる第1の硬化装置(50,70,71)と、前記充填空間に充填された前記流動状態の樹脂のうち、前記仕切壁およびインサート部品の境界から前記非充填空間に流出する可能性のある樹脂を硬化させる第2の硬化装置(13,23,50,72)と、を備えることを特徴とする。
【0027】
請求項13に記載の発明では、請求項12に記載のインサート成形装置(1)において、前記樹脂は熱可塑性樹脂であり、前記第1の硬化装置(50,70,71)は、前記充填空間に充填された前記熱可塑性樹脂を冷却して硬化させるものであり、前記第2の硬化装置(13,23,50,72)は、前記充填空間(14.24)に充填された前記熱可塑性樹脂のうち、前記仕切壁(12,22)およびインサート部品(40)の境界から前記非充填空間(15,25)に流出する可能性のある熱可塑性樹脂を冷却して硬化させるものであることを特徴とする。
【0028】
請求項14に記載の発明では、請求項13に記載のインサート成形装置(1)において、前記第2の硬化装置(13,23,50,72)は、前記第1および第2の成形型(10,20)の各仕切壁(12,22)を冷却するものであることを特徴とする。
【0029】
請求項15に記載の発明では、請求項14に記載のインサート成形装置(1)において、前記第2の硬化装置(13,23,50,72)は、前記第1および第2の成形型(10,20)の各仕切壁(12,22)の内部に形成された流路(13,23)に冷媒(50)を流すことにより、前記第1および第2の成形型の各仕切壁を冷却するものであることを特徴とする。
【0030】
請求項16に記載の発明では、請求項15に記載のインサート成形装置(1)において、前記流路(13,23)は、前記各仕切壁(12,22)およびインサート部品(40)の境界に沿うように前記各仕切壁の内部に形成されていることを特徴とする。
【0031】
請求項17に記載の発明では、請求項15または請求項16に記載のインサート成形装置(1)において、前記第2の硬化装置(13,23,50,72)は、前記冷媒(50)を循環させ、かつ、その循環した冷媒を冷却するように構成されていることを特徴とする。
【0032】
なお、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0033】
(請求項1または請求項12に記載の発明の効果)
請求項1または請求項12に記載の発明を実施すれば、第1および第2の成形型の充填空間に充填された流動状態の樹脂を硬化させ、かつ、充填空間に充填された流動状態の樹脂のうち第1および第2の成形型の各仕切壁およびインサート部品の境界から非充填空間へ流出する可能性のある樹脂を第1および第2の成形型の内部から硬化させることができる。
したがって、第1および第2の成形型において樹脂を充填する充填空間から充填しない非充填空間へ樹脂が流出するおそれがない。
【0034】
しかも、第1および第2の成形型の各仕切壁およびインサート部品の境界に隙間が形成されている場合であっても、その隙間から非充填空間へ流出する可能性のある樹脂を硬化させることができるため、第1および第2の成形型を型閉めする際に、各仕切壁をインサート部品に接触させる必要がないので、型閉めの際にインサート部品に過大な圧力が掛からないようにすることもできる。
【0035】
(請求項2または請求項13に記載の発明の効果)
請求項2または請求項13に記載の発明を実施すれば、第1および第2の成形型の充填空間に充填された溶融状態の熱可塑性樹脂を冷却して硬化させ、かつ、充填空間に充填された溶融状態の熱可塑性樹脂のうち第1および第2の成形型の各仕切壁およびインサート部品の境界から非充填空間へ流出する可能性のある熱可塑性樹脂を第1および第2の成形型の内部から冷却して硬化させることができる。
したがって、第1および第2の成形型において熱可塑性樹脂を充填する充填空間から充填しない非充填空間へ熱可塑性樹脂が流出するおそれがない。
【0036】
しかも、第1および第2の成形型の各仕切壁およびインサート部品の境界に隙間が形成されている場合であっても、その隙間から非充填空間へ流出する可能性のある熱可塑性樹脂を硬化させることができるため、第1および第2の成形型を型閉めする際に、各仕切壁をインサート部品に接触させる必要がないので、型閉めの際にインサート部品に過大な圧力が掛からないようにすることもできる。
【0037】
(請求項3または請求項14に記載の発明の効果)
請求項3または請求項14に記載の発明を実施すれば、第1および第2の成形型の各仕切壁を冷却することにより、非充填空間へ流出する可能性のある熱可塑性樹脂を第1および第2の成形型の内部から冷却して硬化させることができる。
したがって、非充填空間へ流出する可能性のある熱可塑性樹脂を効率良く冷却して硬化させることができる。
【0038】
(請求項4または請求項15に記載の発明の効果)
請求項4または請求項15に記載の発明を実施すれば、第1および第2の成形型の各仕切壁の内部に冷媒を流すことにより、第1および第2の成形型の各仕切壁を冷却することができるため、各仕切壁を外部から冷却する場合よりも各仕切壁を効率良く冷却することができるので、非充填空間へ流出する可能性のある熱可塑性樹脂の硬化時間を短縮することができる。
【0039】
(請求項17に記載の発明の効果)
特に、請求項17に記載の発明を実施すれば、冷媒を循環させ、かつ、その循環した冷媒を冷却することができるため、非充填空間へ流出する可能性のある熱可塑性樹脂を効率良く冷却することができるので、硬化時間をより一層短縮することができる。
【0040】
(請求項5または請求項16に記載の発明の効果)
請求項5または請求項16に記載の発明を実施すれば、冷媒を各仕切壁およびインサート部品の境界に沿って各仕切壁の内部に流すことができるため、非充填空間へ流出する可能性のある熱可塑性樹脂をムラ無く硬化させることができる。
【0041】
(請求項6に記載の発明の効果)
請求項6に記載の発明を実施すれば、非充填空間へ流出する可能性のある樹脂を冷却されたインサート部品によって冷却して硬化させることができる。
したがって、各仕切壁を冷却する必要がないため、各仕切壁の内部に流路を形成する必要がないので、各仕切壁の構造を簡易化することができる。
【0042】
(請求項7に記載の発明の効果)
請求項7に記載の発明を実施すれば、非充填空間に注入された冷媒によって第1および第2の成形型の各仕切壁を冷却することができる。
したがって、各仕切壁の内部に流路を形成する必要がないので、各仕切壁の構造を簡易化することができる。
【0043】
(請求項8に記載の発明の効果)
請求項8に記載の発明を実施すれば、第1および第2の成形型の充填空間に充填された流動状態の樹脂に硬化剤を添加して硬化させ、かつ、充填空間に充填された流動状態の樹脂のうち第1および第2の成形型の各仕切壁およびインサート部品の境界から非充填空間へ流出する可能性のある樹脂に第1および第2の成形型の内部から硬化剤を添加して硬化させることができる。
したがって、第1および第2の成形型において流動状態の樹脂を充填する充填空間から充填しない非充填空間へ樹脂が流出するおそれがない。
【0044】
(請求項9に記載の発明の効果)
請求項9に記載の発明を実施すれば、非充填空間へ流出する可能性のある樹脂に第1および第2の成形型の各仕切壁から硬化剤を添加して硬化させることができる。
したがって、非充填空間へ流出する可能性のある樹脂を効率良く硬化させることができる。
【0045】
(請求項10に記載の発明の効果)
請求項10に記載の発明を実施すれば、非充填空間へ流出する可能性のある樹脂に対して硬化剤を各仕切壁およびインサート部品の境界に沿って添加して硬化させることができるため、非充填空間へ流出する可能性のある樹脂をムラ無く硬化させることができる。
【0046】
(請求項11に記載の発明の効果)
請求項11に記載の発明を実施すれば、第1および第2の成形型の充填空間に充填された流動状態の樹脂に電磁波を照射して硬化させ、かつ、充填空間に充填された流動状態の樹脂のうち第1および第2の成形型の各仕切壁およびインサート部品の境界から非充填空間へ流出する可能性のある樹脂に電磁波を照射して硬化させることができる。
したがって、第1および第2の成形型において流動状態の樹脂を充填する充填空間から充填しない非充填空間へ樹脂が流出するおそれがない。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本願発明の第1実施形態におけるインサート成形装置の説明図であり、(a)はインサート成形装置の縦断面図、(b)は(a)に示すインサート成形装置を構成する仕切壁22の縦断面の拡大図、(c)は(a)に示すインサート成形装置を構成する仕切壁12の縦断面の拡大図である。
【図2】図1に示すインサート成形装置のA−A矢視断面図であり、(a)は冷媒が流れていない状態のA−A矢視断面図、(b)は冷媒が流れている状態のA−A矢視断面図である。
【図3】下型および上型を冷却する冷媒冷却循環システムの説明図である。
【図4】仕切壁を冷却する冷媒冷却循環システムの説明図である。
【図5】本願発明の第2実施形態におけるインサート成形装置の説明図であり、(a)はインサート成形装置の縦断面図、(b)は(a)に示すインサート成形装置を構成する仕切壁22の縦断面の拡大図、(c)は(a)に示すインサート成形装置を構成する仕切壁12の縦断面の拡大図である。
【図6】図5に示すインサート成形装置のA−A矢視断面図であり、(a)は硬化剤が流れていない状態のA−A矢視断面図、(b)は硬化剤が流れている状態のA−A矢視断面図である。
【図7】本願発明の第3実施形態におけるインサート成形装置の説明図であり、(a)はインサート成形装置の縦断面図、(b)は(a)に示すインサート成形装置を構成する仕切壁22の縦断面の拡大図、(c)は(a)に示すインサート成形装置を構成する仕切壁12の縦断面の拡大図である。
【図8】従来のインサート成形方法において用いるインサート成形装置の説明図であり、(a)は縦断面図、(b)は(a)のA−A矢視断面図である。
【図9】インサート部品の説明図であり、(a)はインサート部品の縦断面図であり、(b)はインサート部品の内部構造を示す縦断面図である。
【図10】図9に示すインサート成形装置によってインサート成形された成形部品の縦断面図である。
【図11】従来のインサート成形方法における問題点を説明するための説明図である。
【図12】従来のインサート成形方法における問題点を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
〈第1実施形態〉
本願発明の第1実施形態について図を参照して説明する。なお、図8に示した従来のインサート成形装置200と同じ構成については同じ符号を用いて説明し、説明を簡略化または省略する。
【0049】
図1は、第1実施形態におけるインサート成形装置の説明図であり、(a)はインサート成形装置の縦断面図、(b)は(a)に示すインサート成形装置を構成する仕切壁22の縦断面の拡大図、(c)は(a)に示すインサート成形装置を構成する仕切壁12の縦断面の拡大図である。図2は、図1に示すインサート成形装置のA−A矢視断面図であり、(a)は冷媒が流れていない状態のA−A矢視断面図、(b)は冷媒が流れている状態のA−A矢視断面図である。図3は、冷媒冷却循環システムの説明図である。
【0050】
[インサート成形装置の構造]
最初に、インサート成形装置の構造について説明する。図1に示すように、本実施形態のインサート成形装置1は、下型10と、上型20と、熱可塑性樹脂を吐出するゲート30と、下型10を冷却する冷却源70と、上型20を冷却する冷却源70とを備える。図1は、下型10および上型20が型閉めされた状態を示す。下型10の型面11と上型20の型面21との間に形成されたキャビティには、インサート部品40が配置されている。
【0051】
下型10の型面11からは仕切壁12が突出形成されており、下型10の型面11が形成するキャビティは、仕切壁12により、熱可塑性樹脂を充填する充填空間14と充填しない非充填空間15とに仕切られている。上型20の型面21からは仕切壁22が突出形成されており、上型20の型面21が形成するキャビティは、仕切壁22により、熱可塑性樹脂を充填する充填空間24と充填しない非充填空間25とに仕切られている。
【0052】
図2(a)に示すように、各仕切壁12,22の先端は、インサート部品40のうち、熱可塑性樹脂によりモールドするモールド部分40aおよびモールドしない非モールド部分40bの境界を囲み、かつ、その境界の外形と合致する形状に形成されている。このため、各仕切壁12,22の先端は、型閉めを行った際にインサート部品40の上記境界の外面全周に密着可能に形成されている。
【0053】
仕切壁12の内部には、冷媒50を循環させるための流路13が形成されており、仕切壁22の内部には、冷媒50を循環させるための流路23が形成されている。図2(a)に示すように、各流路13,23は、各仕切壁12,22およびインサート部品40の境界に沿うように各仕切壁12,22の先端部に形成されている。下型10には、冷媒50を流路13に流入させるための冷媒流入口13aが形成されており、その冷媒流入口13aの反対側には、流路13を流れた冷媒50を流出させるための冷媒流出口13bが形成されている。
【0054】
上型20には、冷媒50を流路23に流入させるための冷媒流入口23aが形成されており、その冷媒流入口23aの反対側には、流路23を流れた冷媒50を流出させるための冷媒流出口23bが形成されている。図4に示すように、冷媒流入口13a,23aおよび冷媒流出口13b,23bは、冷媒50を冷却するとともに各流路13,23を介して循環させるための冷媒冷却循環装置72と接続されている。
【0055】
図3に示すように、冷却源70,70は、それぞれ鉄などの熱伝導率の高い金属により、下型10および上型20の外面を覆う形状に構成されており、各冷却源70の内部には、冷媒50を循環させるための流路が形成されている。各冷却源70は、冷媒50を冷却するとともに冷却源70,70の内部において循環させるための冷媒冷却循環装置71と接続されている。
【0056】
また、図示しないが、インサート成形装置1は、インサート成形された成形部品(図10において符号100で示す)を離型するための離型装置と、型閉めおよび型開きする際に上型20を昇降させる昇降装置とを備える。離型装置は、下型10の型面11から突出する離型ピンと、この離型ピンを進退させる進退装置とを備えており、離型ピンを型面11から突出させることにより、成形部品を型面11から押し上げる。
【0057】
この実施形態では、熱可塑性樹脂として、PPS(ポリフェニレンスルファイド)またはPBT(ポリブチレンテレフタレート)を用いる。また、冷媒50として冷水を用い、冷媒冷却循環装置71,72は、冷媒50としての冷水を貯蔵する冷水タンクと、この冷水タンクに貯蔵されている冷水を冷却するチリングユニットと、冷水タンクに貯留されている冷水を各流路13,23に循環させるポンプとから構成されている。また、下型10、上型20および仕切壁12,22は、それぞれ鉄などの熱伝導率の高い金属により形成されている。なお、冷媒50として、液化窒素ガスなどの気体を用いることもできる。
【0058】
[インサート成形方法]
次に、上記のインサート成形装置1を用いてインサート部品40の一部を熱可塑性樹脂によりモールドするインサート成形方法について説明する。
【0059】
下型10および上型20を用意する。次に、熱可塑性樹脂によりモールドするモールド部分40aが下型10の充填空間14に配置されるとともに熱可塑性樹脂によりモールドしない非モールド部分40bが下型10の非充填空間15に配置されるようにインサート部品40を下型10に配置する(第1の工程)。
【0060】
次に、モールド部分40aが下型10および上型20の充填空間14,24に配置されるとともに非モールド部分40bが下型10および上型20の非充填空間15,25に配置され、かつ、下型10および上型20の各仕切壁12,22によってモールド部分40aおよび非モールド部分40bの境界が囲まれるように上型20を下型10に接合し、下型10および上型20を型閉めする(第2の工程)。
【0061】
次に、溶融状態の熱可塑性樹脂をゲート30から充填空間14,24に吐出して充填する(第3の工程)。次に、冷媒冷却循環装置72を作動させて冷媒50を流路13,23に循環させ、仕切壁12,22を冷却し、充填空間14,24に充填された溶融状態の熱可塑性樹脂のうち各仕切壁12,22およびインサート部品40の境界から非充填空間15,25へ流出する可能性のある熱可塑性樹脂を冷却して硬化させる。また、冷媒冷却循環装置71を作動させて冷媒50を各冷却源70に循環させ、下型10および上型20を冷却し、充填空間14,24に充填された溶融状態の熱可塑性樹脂を冷却して硬化させる(第4の工程)。
【0062】
このように、各仕切壁12,22を直接冷却するため、上記の境界から非充填空間15,25へ流出する可能性のある熱可塑性樹脂を効率良く冷却して硬化させることができる。
したがって、上記境界に隙間が形成されている場合であっても、硬化した熱可塑性樹脂が上記隙間を閉塞する役割を果たすため、上記隙間から溶融した熱可塑性樹脂が非充填空間15,25へ流出するおそれがない。
【0063】
また、上記隙間が形成されないようにするために、型閉めの際に下型10に対する上型20の押圧力を大きくする必要がないため、仕切壁12,22によってインサート部品40に過大な圧力が掛からないようにすることができるので、インサート部品40が破損するおそれもない。
【0064】
また、各仕切壁12,22およびインサート部品40の境界に隙間が形成されている場合に、充填空間14,24に充填された溶融状態の熱可塑性樹脂が上記隙間から非充填空間15,25へ流出する条件は、熱可塑性樹脂をゲート30から充填空間14,24へ注入する速度、注入された熱可塑性樹脂が上記隙間に到達する速度、熱可塑性樹脂の充填空間14,24における内部圧力、熱可塑性樹脂の粘度、仕切壁12,22の温度、熱可塑性樹脂の硬化速度などによって変わる。
【0065】
そこで、各仕切壁12,22を冷却するタイミングは、上記の各条件に応じて決定することが望ましい。たとえば、充填空間14,24への充填が終了する前に上記隙間から非充填空間15,25へ流出する可能性のある場合は、充填が終了する前に各仕切壁12,22を冷却し、上記流出する可能性のある熱可塑性樹脂を冷却して硬化させ、隙間から流出しないようにする。
【0066】
〈第2実施形態〉
本願発明の第2実施形態について図を参照して説明する。図5は、本実施形態におけるインサート成形装置の説明図であり、(a)はインサート成形装置の縦断面図、(b)は(a)に示すインサート成形装置を構成する仕切壁22の縦断面の拡大図、(c)は(a)に示すインサート成形装置を構成する仕切壁12の縦断面の拡大図である。図6は、図5に示すインサート成形装置のA−A矢視断面図であり、(a)は硬化剤が流れていない状態のA−A矢視断面図、(b)は硬化剤が流れている状態のA−A矢視断面図である。なお、第1実施形態のインサート成形装置1と同じ構成については同じ符号を用いて説明し、説明を簡略化または省略する。
【0067】
本実施形態のインサート成形装置1は、硬化剤との化学反応によって硬化する性質の樹脂によってインサート部品40の一部をモールドする。上型20および仕切壁22には、硬化剤51を注入するための注入口26が貫通形成されている。また、仕切壁22には、注入口26から注入された硬化剤51を仕切壁22の先端に沿って流すための流出路27が仕切壁22の先端に沿って溝状に開口形成されている。注入口26および流出路27は相互に連通している。
【0068】
また、仕切壁12には、仕切壁22の流出路27から流れ込む硬化剤51を流すための流出路16が仕切壁12の先端に沿って溝状に開口形成されている。流出路27,16は相互に連通している。
注入口26から注入された硬化剤51は、流出路27に沿って流れ、さらに流出路16に沿って流れる。
【0069】
つまり、硬化剤51は、流出路27,16の各開口部から、仕切壁12,22およびインサート部品40の隙間を埋めるように溢れ出る。そして、硬化剤51は、充填空間14,24から仕切壁12,22およびインサート部品40の隙間を介して非充填空間15,25へ流出しようとする樹脂に添加され、その樹脂を硬化させる。これにより、硬化した樹脂によって上記隙間が閉塞されるため、充填空間14,24に充填された硬化前の樹脂が上記隙間から非充填空間15,25へ流出するおそれがなくなる。また、充填空間14,24に充填された樹脂は、ゲート30から硬化剤を注入して硬化させる。
【0070】
このように、仕切壁12,22およびインサート部品40の隙間から非充填空間15,25へ流出しようとする樹脂に硬化剤51を直接添加することができるため、上記隙間から非充填空間15,25へ流出しようとする樹脂を短時間で硬化させることができる。
したがって、上記境界に隙間が形成されている場合であっても、硬化した熱可塑性樹脂が上記隙間を閉塞する役割を果たすため、上記隙間から硬化前の樹脂が非充填空間15,25へ流出するおそれがない。
【0071】
また、上記隙間が形成されないようにするために、型閉めの際に下型10に対する上型20の押圧力を大きくする必要がないため、仕切壁12,22によってインサート部品40に過大な圧力が掛からないようにすることができるので、インサート部品40が破損するおそれもない。
【0072】
この実施形態では、樹脂として、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーンゴム、変性シリコーン樹脂などを用いる。たとえば、エポキシ樹脂として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いることができる。また、エポキシ樹脂の硬化剤として、無水マレイン酸、無水フタル酸などの酸無水物系硬化剤、エチレンアミン類などの芳香族アミン系硬化剤などを用いることができる。
【0073】
〈第3実施形態〉
本願発明の第3実施形態について図を参照して説明する。図7は、本実施形態におけるインサート成形装置の説明図であり、(a)はインサート成形装置の縦断面図、(b)は(a)に示すインサート成形装置を構成する仕切壁22の縦断面の拡大図、(c)は(a)に示すインサート成形装置を構成する仕切壁12の縦断面の拡大図である。なお、第1実施形態のインサート成形装置1と同じ構成については同じ符号を用いて説明し、説明を簡略化または省略する。
【0074】
本実施形態のインサート成形装置1は、電磁波(X線、紫外線、可視光線および電子線など)を照射すると硬化する性質の樹脂によってインサート部品40の一部をモールドする。下型10aおよび上型20aのうち、少なくとも充填空間14,24を形成する部分は、電磁波が貫通する材料により形成されている。たとえば、紫外線を照射して硬化する、いわゆる紫外線硬化性樹脂(UV樹脂)を用いる場合は、下型10aおよび上型20aのうち、少なくとも充填空間14,24を形成する部分を、ガラスなど、紫外線が貫通し、かつ、充填する樹脂の温度によって変形しない材料により形成する。
【0075】
下型10aおよび上型20aの外側には、充填空間14,24に充填された樹脂に電磁波を照射して硬化させるための電磁波照射源60が配置されている。たとえば、紫外線の照射により硬化する樹脂を用いる場合は、電磁波照射源60として紫外線ランプなどの紫外線照射源を用いることができる。
また、仕切壁12,22の内部には、仕切壁の先端に沿って複数の電磁波照射源61が設けられている。仕切壁12,22の少なくとも先端12a,22aは、電磁波が貫通する材料により形成されている。
【0076】
電磁波の照射により硬化する樹脂は、ゲート30から充填空間14,24に充填される。そして、充填空間14,24に充填された樹脂に対して電磁波照射源60から電磁波を照射して硬化させる。また、仕切壁12,22およびインサート部品40の隙間から非充填空間15,25へ流出しようとする樹脂は、仕切壁12,22の内部に設けられた電磁波照射源61から照射された電磁波によって硬化する。これにより、硬化した樹脂によって上記隙間が閉塞されるため、充填空間14,24に充填された硬化前の樹脂が上記隙間から非充填空間15,25へ流出するおそれがなくなる。
【0077】
このように、本実施形態のインサート成形装置1は、仕切壁12,22およびインサート部品40の隙間から非充填空間15,25へ流出しようとする樹脂の近傍から電磁波を照射することができるため、上記隙間から非充填空間15,25へ流出しようとする樹脂を短時間で硬化させることができる。
したがって、上記境界に隙間が形成されている場合であっても、硬化した熱可塑性樹脂が上記隙間を閉塞する役割を果たすため、上記隙間から硬化前の樹脂が非充填空間15,25へ流出するおそれがない。
【0078】
また、上記隙間が形成されないようにするために、型閉めの際に下型10aに対する上型20aの押圧力を大きくする必要がないため、仕切壁12,22によってインサート部品40に過大な圧力が掛からないようにすることができるので、インサート部品40が破損するおそれもない。
【0079】
〈他の実施形態〉
(1)インサート部品40を冷却するインサート部品冷却工程を有し、充填空間14,24から隙間を介して非充填空間15,25へ流出する可能性のある樹脂を上記のインサート部品冷却工程によって冷却されたインサート部品40によって冷却して硬化させることもできる。たとえば、インサート部品40に設けられた放熱素子を冷却媒体に接触させて冷却する。その冷却媒体としては、空気、水、液化窒素ガスなど、冷却前の下型10および上型20の温度よりも低い温度の媒体を用いる。
【0080】
このインサート成形方法を実施すれば、非充填空間15,25へ流出する可能性のある樹脂を冷却されたインサート部品によって冷却して硬化させることができる。
したがって、各仕切壁12,22を冷却する必要がないため、各仕切壁12,22の内部に冷媒50を流すための流路13,23などを形成する必要がないので、各仕切壁12,22の構造を簡易化することができる。
【0081】
(2)下型10および上型20を型閉めした後に、非充填空間15,25に冷媒を注入する冷媒注入工程を有し、その冷媒注入工程によって非充填空間15,25に注入された冷媒によって下型10および上型20の各仕切壁12,22を冷却し、充填空間14,24から隙間を介して非充填空間15,25へ流出する可能性のある樹脂を冷却して硬化させることもできる。たとえば、非充填空間15,25に注入する冷媒として、水、アルコール、液化窒素ガスなどを用いることができる。
【0082】
このインサート成形方法を実施すれば、非充填空間15,25に注入された冷媒によって下型10および上型20の各仕切壁12,22を冷却することができる。
したがって、各仕切壁12,22の内部に流路を形成する必要がないので、各仕切壁12,22の構造を簡易化することができる。
【符号の説明】
【0083】
1・・インサート成形装置、10・・下型(第1の成形型)、11・・型面、
12・・仕切壁、13・・流路、14・・充填空間、15・・非充填空間、
20・・上型(第2の成形型)、21・・型面、22・・仕切壁、23・・流路、
25・・非充填空間、40・・インサート部品、50・・冷媒、
71・・冷媒冷却循環装置(第1の硬化装置)、
72・・冷媒冷却循環装置(第2の硬化装置)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インサート部品の一部を樹脂によりモールドするインサート成形方法において、
樹脂を充填する充填空間と充填しない非充填空間とに成形型の内部を仕切る仕切壁が型面に形成された第1および第2の成形型を用意し、
前記樹脂によりモールドするモールド部分が前記第1の成形型の充填空間に配置されるとともに前記樹脂によりモールドしない非モールド部分が前記第1の成形型の非充填空間に配置されるようにインサート部品を前記第1の成形型に配置する第1の工程と、
前記モールド部分が前記第1および第2の成形型の充填空間に配置されるとともに前記非モールド部分が前記第1および第2の成形型の非充填空間に配置され、かつ、前記第1および第2の成形型の各仕切壁によって前記モールド部分および非モールド部分の境界が囲まれるように前記第1および第2の成形型を型閉めする第2の工程と、
型閉めされた前記第1および第2の成形型の内部に形成された充填空間に流動状態の前記樹脂を充填する第3の工程と、
前記充填空間に充填された流動状態の樹脂を硬化させ、かつ、前記充填空間に充填された流動状態の樹脂のうち前記第1および第2の成形型の各仕切壁およびインサート部品の境界から前記非充填空間へ流出する可能性のある樹脂を前記第1および第2の成形型の内部から硬化させる第4の工程と、
を有することを特徴とするインサート成形方法。
【請求項2】
前記樹脂は熱可塑性樹脂であり、
前記第4の工程は、前記充填空間に充填された溶融状態の熱可塑性樹脂を冷却して硬化させ、かつ、前記充填空間に充填された溶融状態の熱可塑性樹脂のうち前記第1および第2の成形型の各仕切壁およびインサート部品の境界から前記非充填空間へ流出する可能性のある熱可塑性樹脂を前記第1および第2の成形型の内部から冷却して硬化させる工程であることを特徴とする請求項1に記載のインサート成形方法。
【請求項3】
前記第1および第2の成形型の各仕切壁を冷却することにより、前記非充填空間へ流出する可能性のある熱可塑性樹脂を前記第1および第2の成形型の内部から冷却して硬化させることを特徴とする請求項2に記載のインサート成形方法。
【請求項4】
前記第1および第2の成形型の各仕切壁の内部に冷媒を流すことにより、前記第1および第2の成形型の各仕切壁を冷却することを特徴とする請求項3に記載のインサート成形方法。
【請求項5】
前記冷媒を前記各仕切壁およびインサート部品の境界に沿って前記各仕切壁の内部に流すことを特徴とする請求項4に記載のインサート成形方法。
【請求項6】
前記インサート部品を冷却するインサート部品冷却工程を有し、
前記非充填空間へ流出する可能性のある樹脂を前記インサート部品冷却工程によって冷却されたインサート部品によって冷却して硬化させることを特徴とする請求項2に記載のインサート成形方法。
【請求項7】
前記第2の工程の後に前記非充填空間に冷媒を注入する冷媒注入工程を有し、
前記冷媒注入工程によって前記非充填空間に注入された冷媒によって前記第1および第2の成形型の各仕切壁を冷却することを特徴とする請求項3に記載のインサート成形方法。
【請求項8】
前記樹脂は硬化剤との化学反応によって硬化する性質の樹脂であり、
前記第4の工程は、前記充填空間に充填された流動状態の前記樹脂に前記硬化剤を添加して硬化させ、かつ、前記充填空間に充填された流動状態の前記樹脂のうち前記第1および第2の成形型の各仕切壁およびインサート部品の境界から前記非充填空間へ流出する可能性のある樹脂に前記第1および第2の成形型の内部から前記硬化剤を添加して硬化させる工程であることを特徴とする請求項1に記載のインサート成形方法。
【請求項9】
前記非充填空間へ流出する可能性のある樹脂に前記第1および第2の成形型の各仕切壁から前記硬化剤を添加して硬化させることを特徴とする請求項8に記載のインサート成形方法。
【請求項10】
前記非充填空間へ流出する可能性のある樹脂に対して前記硬化剤を前記各仕切壁およびインサート部品の境界に沿って添加して硬化させることを特徴とする請求項9に記載のインサート成形方法。
【請求項11】
前記樹脂は電磁波の照射によって硬化する性質の樹脂であり、
前記第4の工程は、前記充填空間に充填された流動状態の前記樹脂に前記電磁波を照射して硬化させ、かつ、前記充填空間に充填された流動状態の前記樹脂のうち前記第1および第2の成形型の各仕切壁およびインサート部品の境界から前記非充填空間へ流出する可能性のある樹脂に前記電磁波を照射して硬化させる工程であることを特徴とする請求項1に記載のインサート成形方法。
【請求項12】
インサート部品の一部を樹脂によりモールドするインサート成形装置において、
インサート部品のうち、樹脂によりモールドするモールド部分およびモールドしない非モールド部分の境界を囲むとともに、流動状態の前記樹脂を充填する充填空間と充填しない非充填空間とに仕切る仕切壁がそれぞれ型面から突出形成された第1および第2の成形型と、
型閉めされた前記第1および第2の成形型の前記充填空間に充填された前記流動状態の樹脂を硬化させる第1の硬化装置と、
前記充填空間に充填された前記流動状態の樹脂のうち、前記仕切壁およびインサート部品の境界から前記非充填空間に流出する可能性のある樹脂を硬化させる第2の硬化装置と、
を備えることを特徴とするインサート成形装置。
【請求項13】
前記樹脂は熱可塑性樹脂であり、
前記第1の硬化装置は、前記充填空間に充填された前記熱可塑性樹脂を冷却して硬化させるものであり、
前記第2の硬化装置は、前記充填空間に充填された前記熱可塑性樹脂のうち、前記仕切壁およびインサート部品の境界から前記非充填空間に流出する可能性のある熱可塑性樹脂を冷却して硬化させるものであることを特徴とする請求項12に記載のインサート成形装置。
【請求項14】
前記第2の硬化装置は、前記第1および第2の成形型の各仕切壁を冷却するものであることを特徴とする請求項13に記載のインサート成形装置。
【請求項15】
前記第2の硬化装置は、
前記第1および第2の成形型の各仕切壁の内部に形成された流路に冷媒を流すことにより、前記第1および第2の成形型の各仕切壁を冷却するものであることを特徴とする請求項14に記載のインサート成形装置。
【請求項16】
前記流路は、前記各仕切壁およびインサート部品の境界に沿うように前記各仕切壁の内部に形成されていることを特徴とする請求項15に記載のインサート成形装置。
【請求項17】
前記第2の硬化装置は、前記冷媒を循環させ、かつ、その循環した冷媒を冷却するように構成されていることを特徴とする請求項15または請求項16に記載のインサート成形装置。
【請求項1】
インサート部品の一部を樹脂によりモールドするインサート成形方法において、
樹脂を充填する充填空間と充填しない非充填空間とに成形型の内部を仕切る仕切壁が型面に形成された第1および第2の成形型を用意し、
前記樹脂によりモールドするモールド部分が前記第1の成形型の充填空間に配置されるとともに前記樹脂によりモールドしない非モールド部分が前記第1の成形型の非充填空間に配置されるようにインサート部品を前記第1の成形型に配置する第1の工程と、
前記モールド部分が前記第1および第2の成形型の充填空間に配置されるとともに前記非モールド部分が前記第1および第2の成形型の非充填空間に配置され、かつ、前記第1および第2の成形型の各仕切壁によって前記モールド部分および非モールド部分の境界が囲まれるように前記第1および第2の成形型を型閉めする第2の工程と、
型閉めされた前記第1および第2の成形型の内部に形成された充填空間に流動状態の前記樹脂を充填する第3の工程と、
前記充填空間に充填された流動状態の樹脂を硬化させ、かつ、前記充填空間に充填された流動状態の樹脂のうち前記第1および第2の成形型の各仕切壁およびインサート部品の境界から前記非充填空間へ流出する可能性のある樹脂を前記第1および第2の成形型の内部から硬化させる第4の工程と、
を有することを特徴とするインサート成形方法。
【請求項2】
前記樹脂は熱可塑性樹脂であり、
前記第4の工程は、前記充填空間に充填された溶融状態の熱可塑性樹脂を冷却して硬化させ、かつ、前記充填空間に充填された溶融状態の熱可塑性樹脂のうち前記第1および第2の成形型の各仕切壁およびインサート部品の境界から前記非充填空間へ流出する可能性のある熱可塑性樹脂を前記第1および第2の成形型の内部から冷却して硬化させる工程であることを特徴とする請求項1に記載のインサート成形方法。
【請求項3】
前記第1および第2の成形型の各仕切壁を冷却することにより、前記非充填空間へ流出する可能性のある熱可塑性樹脂を前記第1および第2の成形型の内部から冷却して硬化させることを特徴とする請求項2に記載のインサート成形方法。
【請求項4】
前記第1および第2の成形型の各仕切壁の内部に冷媒を流すことにより、前記第1および第2の成形型の各仕切壁を冷却することを特徴とする請求項3に記載のインサート成形方法。
【請求項5】
前記冷媒を前記各仕切壁およびインサート部品の境界に沿って前記各仕切壁の内部に流すことを特徴とする請求項4に記載のインサート成形方法。
【請求項6】
前記インサート部品を冷却するインサート部品冷却工程を有し、
前記非充填空間へ流出する可能性のある樹脂を前記インサート部品冷却工程によって冷却されたインサート部品によって冷却して硬化させることを特徴とする請求項2に記載のインサート成形方法。
【請求項7】
前記第2の工程の後に前記非充填空間に冷媒を注入する冷媒注入工程を有し、
前記冷媒注入工程によって前記非充填空間に注入された冷媒によって前記第1および第2の成形型の各仕切壁を冷却することを特徴とする請求項3に記載のインサート成形方法。
【請求項8】
前記樹脂は硬化剤との化学反応によって硬化する性質の樹脂であり、
前記第4の工程は、前記充填空間に充填された流動状態の前記樹脂に前記硬化剤を添加して硬化させ、かつ、前記充填空間に充填された流動状態の前記樹脂のうち前記第1および第2の成形型の各仕切壁およびインサート部品の境界から前記非充填空間へ流出する可能性のある樹脂に前記第1および第2の成形型の内部から前記硬化剤を添加して硬化させる工程であることを特徴とする請求項1に記載のインサート成形方法。
【請求項9】
前記非充填空間へ流出する可能性のある樹脂に前記第1および第2の成形型の各仕切壁から前記硬化剤を添加して硬化させることを特徴とする請求項8に記載のインサート成形方法。
【請求項10】
前記非充填空間へ流出する可能性のある樹脂に対して前記硬化剤を前記各仕切壁およびインサート部品の境界に沿って添加して硬化させることを特徴とする請求項9に記載のインサート成形方法。
【請求項11】
前記樹脂は電磁波の照射によって硬化する性質の樹脂であり、
前記第4の工程は、前記充填空間に充填された流動状態の前記樹脂に前記電磁波を照射して硬化させ、かつ、前記充填空間に充填された流動状態の前記樹脂のうち前記第1および第2の成形型の各仕切壁およびインサート部品の境界から前記非充填空間へ流出する可能性のある樹脂に前記電磁波を照射して硬化させる工程であることを特徴とする請求項1に記載のインサート成形方法。
【請求項12】
インサート部品の一部を樹脂によりモールドするインサート成形装置において、
インサート部品のうち、樹脂によりモールドするモールド部分およびモールドしない非モールド部分の境界を囲むとともに、流動状態の前記樹脂を充填する充填空間と充填しない非充填空間とに仕切る仕切壁がそれぞれ型面から突出形成された第1および第2の成形型と、
型閉めされた前記第1および第2の成形型の前記充填空間に充填された前記流動状態の樹脂を硬化させる第1の硬化装置と、
前記充填空間に充填された前記流動状態の樹脂のうち、前記仕切壁およびインサート部品の境界から前記非充填空間に流出する可能性のある樹脂を硬化させる第2の硬化装置と、
を備えることを特徴とするインサート成形装置。
【請求項13】
前記樹脂は熱可塑性樹脂であり、
前記第1の硬化装置は、前記充填空間に充填された前記熱可塑性樹脂を冷却して硬化させるものであり、
前記第2の硬化装置は、前記充填空間に充填された前記熱可塑性樹脂のうち、前記仕切壁およびインサート部品の境界から前記非充填空間に流出する可能性のある熱可塑性樹脂を冷却して硬化させるものであることを特徴とする請求項12に記載のインサート成形装置。
【請求項14】
前記第2の硬化装置は、前記第1および第2の成形型の各仕切壁を冷却するものであることを特徴とする請求項13に記載のインサート成形装置。
【請求項15】
前記第2の硬化装置は、
前記第1および第2の成形型の各仕切壁の内部に形成された流路に冷媒を流すことにより、前記第1および第2の成形型の各仕切壁を冷却するものであることを特徴とする請求項14に記載のインサート成形装置。
【請求項16】
前記流路は、前記各仕切壁およびインサート部品の境界に沿うように前記各仕切壁の内部に形成されていることを特徴とする請求項15に記載のインサート成形装置。
【請求項17】
前記第2の硬化装置は、前記冷媒を循環させ、かつ、その循環した冷媒を冷却するように構成されていることを特徴とする請求項15または請求項16に記載のインサート成形装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−56289(P2012−56289A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−204596(P2010−204596)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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