説明

インストルメントパネルの収納物収納構造

【課題】インストルメントパネルの収納部に収納した収納物がドアミラーに映り込むことによる煩わしさを解消する。
【解決手段】インストルメントパネル1の車幅方向端部上に設けた容器ホルダ5は、開閉可能なリッド23を備える。リッド23は、ドアミラー11側に向けて開放し、この開放状態で収納している飲料容器17とドアミラー11との間に位置する。この状態で、運手席に着座した運転者が助手席側のドアミラー11を介して後方確認する際に、ドアミラー11には、ドアウインドウ21に映った飲料容器17を隠すようにして位置するドアウインドウ21に映ったリッド23の一部が映り込み、飲料容器17の映り込みによる煩わしさを解消する。リッド23は周辺のインストルメントパネル1と同系色もしくは同色としてあるので、ドアミラー11に映り込んでも煩わしさを感じにくい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インストルメントパネルにおけるドア側端部に、収納物を収納可能な収納部を備えたインストルメントパネルの収納物収納構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車におけるインストルメントパネルのドア側端部に、飲料容器を収納する容器ホルダを設け、この容器ホルダ内に、インストルメントパネルの内部に設けたエアコン送風通路を流れる温調空気の一部を流して飲料容器を冷却もしくは加温する技術が知られている(例えば下記特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−135935号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記した従来のものは、容器ホルダに収納した缶や紙コップといった飲料容器の上部が全周露出した状態となるため、特に運転席に着座した運転者が助手席側のドアミラーを目視したときに、ドアウインドウに映った飲料容器の上記露出した一部が、運転者の視線上に重なってドアミラーに映り込み、この映り込んだ飲料容器の色が特にインストルメントパネル周辺の色と異なる場合には、煩わしさを感じてしまう。
【0004】
そこで、本発明は、インストルメントパネルの収納部に収納され、ドアウインドウに映った収納物がドアミラーに映り込むことによる煩わしさを解消することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、インストルメントパネルにおけるドア側端部に、収納物を収納可能な収納部を設け、この収納部に、ドアウインドウの車両外方に設けたドアミラー側に立ち上がるようにして開く蓋体を設けたことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、収納部の蓋体は開いたときにドアミラー側に位置するので、例えば運転席に着座した運転者が助手席側のドアミラーを目視したときに、ドアウインドウに映った収納物は蓋体により遮られて、ドアウインドウに映った収納物のドアミラーへの映り込みを回避でき、収納物のドアミラーへの映り込みによる煩わしさを解消することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0008】
図1は、本発明の一実施形態に係わる自動車における助手席側のインストルメントパネル1周辺を示す斜視図である。なお、この実施形態における自動車は左側に運転席が設定されているものとする。
【0009】
インストルメントパネル1は、フロントウインドウ3の下縁3aから車両後方かつ下方に向けて屈曲する屈曲面1aを備え、この屈曲面1aの車幅方向外側であるドア側端部1bに収納部としての容器ホルダ5を設けている。すなわち、インストルメントパネル1におけるドア側端部1bのドア開口部7近傍に、収納物を収納可能な収納部としての容器ホルダ5を設けていることになる。また、ドア開口部7を開閉するドア9の容器ホルダ5近傍位置にはドアミラー11を取り付けている。すなわち、このドアミラー11は、ドア9に設けられるドアウインドウ21の車両外方に設けている。
【0010】
また、インストルメントパネル1は、上記した屈曲面1aに対して下方に延びる前面部1cを備え、この前面部1cの車幅方向端部でかつ容器ホルダ5の下方位置には、エアコン吹出口13を設けている。インストルメントパネル1の前面部1cからさらに下方かつ車両前方に向けて傾斜して連続する下部傾斜面1dにはグローブボックス15を設けてある。
【0011】
上記したエアコン吹出口13と、図示しないエアコンユニットとを連通するインストルメントパネル1内の温調空気通路は、容器ホルダ5内に向けて分岐しており、温調空気の一部を容器ホルダ5内に流通させて収納物である飲料容器17を冷却あるいは加温する。
【0012】
また、容器ホルダ5とフロントウインドウ3の下縁3aとの間のインストルメントパネル1の屈曲面1aには、空気吹出口としてのデフロスト用のサイドデフ吹出口19を設けてあり、サイドデフ吹出口19から吹き出された空気が、ドアウインドウ21における車両前方下部の角部付近に吹き付けられて曇りを防止する。
【0013】
次に、容器ホルダ5について説明する。図2は、容器ホルダ5の単体を示す斜視図であり、同図(a)が図1と同様に蓋体としてのリッド23をドアミラー11側に立ち上がるようにして開いた状態、同図(b)がリッド23を閉じた状態をそれぞれ示す。図3は容器ホルダ5の分解斜視図である。
【0014】
この容器ホルダ5は、ホルダ本体25と、ホルダ本体25に対して開閉可能に取り付けられる前記したリッド23と、閉状態のリッド23の周囲を覆うようにしてホルダ本体25の上部に固定されるフィニッシャ27とを主として備えている。これら容器ホルダ5の特に外部に露出するリッド23の後述するリッドアウタ35やフィニッシャ27は、他の周辺部品すなわちインストルメントパネル1と同系色もしくは同色としている。
【0015】
ホルダ本体25は、飲料容器17を収納する収納凹部29aを備える容器支持部29と、容器支持部29の車幅方向外側(ドアミラー11側)の開口する部分を覆うように容器支持部29に一体に設けられるリッド支持部31とを備えている。容器支持部29は、上記した収納凹部29aを形成する底壁29bと、車幅方向内側に位置する側壁29cと、前後壁29d,29eとを備えている。また、リッド支持部31は、上記した前後壁29d,29eの車幅方向外側の上部を両側から挟み込むようにして位置する支持突起33を備えている。
【0016】
一方リッド23は、リッドアウタ35と、リッドアウタ35の閉時での車幅方向外側の裏面にねじ37により固定されるリッドインナ39とから構成されている。リッドインナ39は、長手方向両端から閉状態において車幅方向内側に突出する一対の回転支持部41を備え、この回転支持部41を、容器支持部29の前後壁29d,29eと、リッド支持部31の支持突起33との間に形成してある隙間43に挿入する。
【0017】
また、回転支持部41に形成してある貫通孔41aにはカラー45を挿入し、このカラー45の軸方向長さを、上記した隙間43の寸法とほぼ同等とするとともに、回転支持部41の同方向長さ(幅)より僅かに長く形成する。この状態でねじ47を、支持突起33側から、支持突起33に形成してあるねじ挿入孔33aおよびカラー45内に順次挿入し、前後壁29d,29eに形成してあるねじ孔29d1,29e1にねじ込み固定する。
【0018】
上記したねじ47の固定により、前後壁29d,29eと支持突起33との間にカラー45が挟持固定され、このカラー45に対して回転支持部41を備えるリッドインナ39が回転可能となる。
【0019】
これによりリッドインナ39は、リッドアウタ35とともに、ホルダ本体25に対し図2(a)に示す開状態と図2(b)に示す閉状態との間を、回転支持部41を中心として回転可能となる。
【0020】
フィニッシャ27は、図2(b)に示す閉状態のリッドアウタ35が入り込む開口部27aを備え、ホルダ本体25の上端面に上方に向けて突出して設けてある3本(容器支持部29に2本、リッド支持部31に1本)の係合ピン49に嵌め込むことで、ホルダ本体25に固定される。
【0021】
このように構成される容器ホルダ5は、前記図1に示してあるようにインストルメントパネル1の屈曲面1aの下方側の車幅方向端部1bに嵌め込み、このときホルダ本体25(容器支持部29)の下面および、フィニッシャ27の車体前方側の下面に、それぞれ下方に向けて突出して形成してある図示しない係合突起を、インストルメントパネル1側に設けてある係合孔に係合させることで、インストルメントパネル1に固定する。
【0022】
図4(a)は、インストルメントパネル1における図1のA-A線に沿う側面断面図で、図4(b)は、図1における容器ホルダ5周辺の平面図であり、いずれもリッド23は開状態である。ここで図4(a)に示すように、開状態のリッド23のリッドアウタ35は、サイドデフ吹出口19からの空気の吹出し方向前方の領域Bに対し、ずれた位置にあって干渉しない位置にあり、かつ、上記領域Bに近接する部位35aを領域Bの風軸(中心軸)Pに対して平行で、吹出し方向と同方向に延びる直線部分となるよう形成している。
【0023】
なお、サイドデフ吹出口19からの空気の吹出し方向は、サイドデフ吹出口19に設けてあるルーバ(桟)によって決定される。
【0024】
このように構成したインストルメントパネルの収納物収納構造によれば、図1に示すように、容器ホルダ5のリッド23を開放することで、飲料容器17をホルダ本体25における容器支持部29の収納凹部29aに収納でき、この際、インストルメントパネル1内の温調空気通路を通して温調空気を収納凹部29aに流通させることで、飲料容器17を冷却あるいは加温することができる。
【0025】
一方、容器ホルダ5を使用しないときには、リッド23を図2(b)のように閉じることで、インストルメントパネル1上がすっきりし、外観品質上好ましいものとなるとともに、収納凹部29aに流通する温調空気が収納凹部29aから漏れることを抑制し、エアコン吹出口13から吹出される温調空気が減少するのを抑制できる。
【0026】
ここで、本実施形態では、図1のように容器ホルダ5を使用するときにおいて、図1に示す助手席の左側に位置する運転席に着座する運転者が、ドアミラー11を目視して後方確認する際に、ドアミラー11に隣接する容器ホルダ5に収納してある飲料容器17の一部がドアウインドウ21に映り、そのドアウインドウ21に映った飲料容器17の一部とドアミラー11とが上記運転者の視線上で重なり、ドアウインドウ21に映った飲料容器17の一部がドアミラー11に映り込む位置関係となっている。
【0027】
しかしながら、本実施形態では、ドアミラー11と飲料容器17との間に、開状態のリッド23(リッドアウタ35)が位置しているので、ドアミラー11には周辺のインストルメントパネル1と同系色としているリッド23の一部がドアウインドウ21に映り、そのドアウインドウ21に映ったリッド23の一部とドアミラー11とが上記運転者の視線上で重なり、映像23Aとして映り込むことになる。つまり、周辺のインストルメントパネル1と同系色としている開状態のリッド23が飲料容器17を隠すようにして映像23Aとして映り込むことになり、飲料容器17のドアミラー11への映り込みを回避でき、飲料容器17が映り込むことによる煩わしさを解消して、後方視界の確認が容易となる。
【0028】
上記映像23Aとしてドアミラー11に映り込むリッド23は、周辺のインストルメントパネル1と同系色もしくは同色としてあるので、ドアミラー11に映り込んでも煩わしさを感じにくい。
【0029】
なお、開放状態のリッド23(リッドアウタ35)は、図4(b)に示すように、車両後端側が収容凹部29aに対して車両後方に突出しているので、前記したようにドアウインドウ21に映った飲料容器17の一部とドアミラー11とが運転者の視線上で重なり、ドアウインドウ21に映った飲料容器17の一部がドアミラー11に映り込む位置関係となっていても、飲料容器17のドアミラー11への映り込みを確実に回避することができる。
【0030】
また、インストルメントパネル1に、ドア9に設定したドアウインドウ21に向けて空気を吹き付けるサイドデフ吹出口19を設け、容器ホルダ5のリッド23は、開放時においてサイドデフ吹出口19の空気の吹出し方向前方の領域からずれた位置となるので、サイドデフ吹出口19から吹出された空気が、開状態のリッド23によって阻害されることなく、ドアウインドウ21に対する曇り止め機能を所望に確保することができる。
【0031】
この際リッド23は、開放時にサイドデフ吹出口19からの空気の吹出し方向前方の領域Bに近接する部位35aに、空気の吹出し方向と同方向に延びる直線部分を備えているので、サイドデフ吹出口19から吹出された空気が開状態のリッド23に阻害されることをより効果的に回避することができる。
【0032】
なお、上記した実施形態においては、飲料容器17を収納する容器ホルダ5に代えて、他の収納物を収納する収納物収納部としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施形態を示す自動車における助手席側のインストルメントパネル周辺を示す斜視図である。
【図2】図1のインストルメントパネルに設けた容器ホルダの単体を示す斜視図であり、(a)は容器ホルダのリッドを開放した状態、図(b)はリッドを閉じた状態をそれぞれ示す。
【図3】容器ホルダの分解斜視図である。
【図4】(a)は、インストルメントパネルにおける図1のA-A線に沿う側面断面図、(b)は、図1における容器ホルダ周辺の平面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 インストルメントパネル
1b インストルメントパネルのドア側端部
5 容器ホルダ(収納部)
7 ドア開口部
9 ドア
11 ドアミラー
17 飲料容器(収納物)
19 サイドデフ吹出口(空気吹出口)
21 ドアウインドウ
23 容器ホルダのリッド(蓋体)
35a リッドにおける空気吹出し方向前方の領域に近接する部位
B 空気吹出口からの空気の吹出し方向前方の領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インストルメントパネルにおけるドア側端部に、収納物を収納可能な収納部を設ける一方、前記ドアに設けられるドアウインドウの車両外方にドアミラーを設け、前記収納部に、前記ドアミラー側に立ち上がるようにして開く蓋体を設けたことを特徴とするインストルメントパネルの収納物収納構造。
【請求項2】
前記蓋体を前記インストルメントパネルと同系色とすることを特徴とする請求項1に記載のインストルメントパネルの収納物収納構造。
【請求項3】
前記インストルメントパネルに、前記ドアウインドウに向けて空気を吹き付ける空気吹出口を設け、前記蓋体は、開放時において前記空気吹出口からの空気の吹出し方向前方の領域からずれた位置となることを特徴とする請求項1または2に記載のインストルメントパネルの収納物収納構造。
【請求項4】
前記蓋体は、開放時での前記空気吹出口からの空気の吹出し方向前方の領域に近接する部位に、前記空気の吹出し方向と同方向に延びる直線部分を備えていることを特徴とする請求項3に記載のインストルメントパネルの収納物収納構造。
【請求項5】
インストルメントパネルにおけるドア側端部に、収納物を収納可能な収納部を設ける一方、前記ドアに設けられるドアウインドウの車両外方にドアミラーを設け、前記収納部は開閉可能な蓋体を備え、この蓋体は開放時に前記収納部に収納した前記収納物と前記ドアミラーとの間に位置することを特徴とするインストルメントパネルの収納物収納構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−6986(P2009−6986A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−11740(P2008−11740)
【出願日】平成20年1月22日(2008.1.22)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】