インストルメントパネルの支持構造
【課題】インストルメントパネルの上壁の側部と他部品の端部との見切り部の外観を向上させることができるインストルメントパネルの支持構造を提供する。
【解決手段】ステアリングサポートメンバー3の長手方向の端部にサイドブラケット10が設けられ、サイドブラケット10が車体側の部品に連結され、インストルメントパネル1がステアリングサポートメンバー3に支持され、サイドブラケット10に延長ブラケット20が設けられ、延長ブラケット20に形成された被固定部21が、インストルメントパネル1の上壁15の側部15Sに形成された固定部31に固定されている。
【解決手段】ステアリングサポートメンバー3の長手方向の端部にサイドブラケット10が設けられ、サイドブラケット10が車体側の部品に連結され、インストルメントパネル1がステアリングサポートメンバー3に支持され、サイドブラケット10に延長ブラケット20が設けられ、延長ブラケット20に形成された被固定部21が、インストルメントパネル1の上壁15の側部15Sに形成された固定部31に固定されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
ステアリングサポートメンバーの長手方向の端部にサイドブラケットが設けられ、
前記サイドブラケットが車体側の部品に連結され、
インストルメントパネルが前記ステアリングサポートメンバーに支持されているインストルメントパネルの支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上記のインストルメントパネルの支持構造では、特許文献1に開示されているように、インストルメントパネルの側部に設けられた第1ブラケットが、インストルメントパネルの上壁の側部に対向する車体部分に設けられた第2ブラケットに連結されて、インストルメントパネルが前記車体部分に支持されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭57−47221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のインストルメントパネルの側部に対向する車体部分は他の車体部分に比べると強度が十分ではない。そのために、上記従来の構造のように、インストルメントパネルが、インストルメントパネルの上壁の側部に対向する車体部分に支持された構造では、インストルメントパネルの上壁の側部と、この側部に合わせられる他部品の端部(例えばフロントピラートリムの下端部)との見切り部に隙間が形成され、前記見切り部の外観が損なわれることがあった。
本発明は上記実状に鑑みて成されたもので、その目的は、インストルメントパネルの上壁の側部と他部品の端部との見切り部の外観を向上させることができるインストルメントパネルの支持構造を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の特徴は、
ステアリングサポートメンバーの長手方向の端部にサイドブラケットが設けられ、
前記サイドブラケットが車体側の部品に連結され、
インストルメントパネルが前記ステアリングサポートメンバーに支持されているインストルメントパネルの支持構造であって、
前記サイドブラケットに延長ブラケットが設けられ、
前記延長ブラケットに形成された被固定部が、前記インストルメントパネルの上壁の側部に形成された固定部に固定されている点にある。(請求項1)
【0006】
上記の構成によれば、前記サイドブラケットに延長ブラケットが設けられ、延長ブラケットに形成された被固定部が、インストルメントパネルの上壁の側部に形成された固定部に固定されているから、インストルメントパネルの上壁の側部を延長ブラケットとサイドブラケットを介してステアリングサポートメンバーで支持することができる。
ステアリングサポートメンバーはインストルメントパネルやステアリングシャフトを支える役割りを担うことから、強度の高い金属製部品に構成されており、支持剛性、寸法精度に優れている。このような支持剛性、寸法精度に優れた部品にインストルメントパネルの上壁の側部を支持させることにより、前記上壁の側部を精度よく位置決めでき、前記上壁の側部の支持剛性を強くすることができる。
従って、例えば、インストルメントパネルの車体への搭載作業性の向上のために、インストルメントパネルの前端部と車体との固定部の嵌合構造(インストルメントパネルの前端部のダッシュパネル部やカウル部への固定構造)を廃止した構造であっても、インストルメントパネルの車両前後方向への位置ズレを規制することができる。
これにより、インストルメントパネルの上壁の側部と他部品の端部との見切り部の外観を向上させることができる。(請求項1)
【0007】
本発明において、
前記固定部と被固定部は、前記インストルメントパネルの上壁の側部から上方に延びるフロントピラートリムに覆い隠されていると、前記固定部と被固定部を隠すための部品を省くことができ、インストルメントパネルやフロントピラートリムが複雑な型構造や形状になることを避けることができる。(請求項2)
【0008】
本発明において、
前記固定部の固定面と前記被固定部の被固定面は車両前方側ほど上方に位置するように傾斜していると、次の作用を奏することができる。(請求項3)
【0009】
延長ブラケットに、インストルメントパネルの上壁の側部を支える役割りと、インストルメントパネルが車両前後側にずれようとする動きを抑える前後方向の規制の役割りとを担わせることができる。これにより、インストルメントパネルの上壁の側部を車両前後方向でより精度よく位置決めすることができる。(請求項3)
【0010】
本発明において、
前記延長ブラケットに形成された接合部が、前記サイドブラケットに形成された被接合部に溶接接合されていると、インストルメントパネルの前後方向のバラツキが生じた場合に、前記被接合部に対する前記接合部の溶接位置を変更調節するのみで、ダッシュパネルの型変更を行なう事無く、インストルメントパネルの前後方向のバラツキの修正が可能となる。(請求項4)
【0011】
本発明において、
前記接合部の側部に下方に張り出すフランジが形成され、
前記フランジが前記被接合部の側部に車幅方向で当接していると、延長ブラケットの車幅方向における位置ずれを抑制することができ、インストルメントパネルの上壁の側部の車幅方向における位置精度を向上させることができる。(請求項5)
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、
インストルメントパネルの上壁の側部と他部品の端部との見切り部の外観を向上させることができるインストルメントパネルの支持構造を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】インストルメントパネルとステアリングサポートメンバーの分解斜視図
【図2】インストルメントパネル本体をステアリングサポートメンバーに取り付けた状態の斜視図
【図3】サイドブラケットを示す側面図(一部は模式図)
【図4】延長ブラケットの取り付け構造を上方から見た斜視図
【図5】延長ブラケットの斜視図
【図6】延長ブラケットの取り付け構造を下方から見た斜視図
【図7】インストルメントパネルの側部を上から見た斜視図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に、自動車のインストルメントパネル1と、ステアリングを支持するステアリングサポートメンバー3とを示してある。インストルメントパネル1は合成樹脂製の成形品であり、運転席及び助手席の車両前方側Frに配置されている。
【0015】
[インストルメントパネル1の構造]
インストルメントパネル本体14は車室内のほぼ全幅にわたる長さに設定され、上壁15と、運転席及び助手席に対向する車室内側の前壁16と、左右一対の側壁17とを備えている。また、前壁16の車幅方向の中央部にカーステレオ(オーディオ類)・エアコン(空調機器)などの操作系パネル18が配置され、助手席と対向する前壁16の下半部に、揺動開閉するグローブボックス19が設けられている。
【0016】
図1,図4,図6に示すように、上壁15の側部15Sに段差部15Dが形成され、前記側部15Sから第1フランジ15Fが下方に延びている。そして、後述の延長ブラケット20の被固定部21が固定される板状の固定片30が、第1フランジ15Fの車幅方向内側W1の段差面(第1フランジ15Fの表側の面)から車幅方向外側W2に張り出している。
【0017】
前記固定片30は、車両前方側Frほど上方に位置するように傾斜した固定部31と、この固定部31の車両後方側Rrの端部から立ち上がる立ち上がり部32とから成る。固定部31の前部にはスクリュー挿通孔31Hが形成され、後部には裏側に突出する位置決めボス31B(図6参照)が形成されている。また、前記立ち上がり部32の車幅方向内側W1の部分は切り欠かれ、切り欠き部から断面L字状の壁部33が車両後方側Rrに延びている。断面L字状の壁部33は前記段差面との間に溝部を形成している。
【0018】
[ステアリングサポートメンバー3の構造]
図1に示すように、前記ステアリングサポートメンバー3は車幅方向に沿う丸パイプ状に形成され、運転席側のメンバー部分3Aの径が助手席側のメンバー部分3Bの径よりも大きく設定されている。そして、ステアリングサポートメンバー3の左端部(ステアリングサポートメンバーの長手方向の端部に相当)に左側のサイドブラケット10が溶接固着され、右端部(ステアリングサポートメンバーの長手方向の端部に相当)に右側のサイドブラケット10が溶接固着されている。
【0019】
左側のサイドブラケット10は左ダッシュサイドパネル(車体側の部品に相当、図示せず)に連結され、右側のサイドブラケット10は右ダッシュサイドパネル(車体側の部品に相当、図示せず)に連結されている。
【0020】
そして、ステアリングサポートメンバー3の長手方向(車幅方向)中間部に複数の帯板状の中間ブラケット40の上端部が溶接固着され、前記複数の中間ブラケット40がインストルメントパネル1の左右中間部に連結されて、インストルメントパネル1がステアリングサポートメンバー3に支持されている。
【0021】
[サイドブラケット10の構造]
図1〜図4に示すように、左側のサイドブラケット10(以下、「サイドブラケット10」と称する)は車幅方向から見て車両後方側Rrに窄まる台形板状に形成され、上下両端部10Aが車幅方向内側W1にフランジ状に折曲されている。これにより、サイドブラケット10の剛性・強度が向上している。図3はサイドブラケット10を示す側面図であり、一部を模式図にしてある。図3の符号8はカウルパネル、9はダッシュパネルの上端部である。
【0022】
ステアリングサポートメンバー3の左端部は左側のサイドブラケット10に溶接固着されている。ステアリングサポートメンバー3の左端部の周りには複数のボルト挿通孔10Hが形成され、このボルト挿通孔10Hに挿通されたボルトでサイドブラケット10が左ダッシュサイドパネルに固定される。
【0023】
図4,図6に示すように、サイドブラケット10の前端部の上側コーナー部に、延長ブラケット20の接合部22が接合する被接合部50が車両前方側Frに張り出し形成されている。この被接合部50は、上面部51と、上面部51の車幅方向外側の端部から下方に延びる側面部52とを備えた断面L字形に形成されている。
【0024】
[延長ブラケット20の構造]
図4〜図6に示すように、サイドブラケット10に、車幅方向と直交する方向に長い板状の延長ブラケット20が設けられている。この延長ブラケット20は、下側接合部22(接合部に相当)と、下側接合部22から前上方に延びる傾斜壁23と、傾斜壁23に対して車両前方側Frに折曲し、前記傾斜壁23の上端部から前上方に延びる被固定部21とから成る。上記のように、前記被固定部21は傾斜壁23よりも傾斜が緩やかに設定されている。
【0025】
延長ブラケット20の幅方向(車幅方向)の両側部には下方に張り出す第2フランジ20Fが全長にわたって形成されている。また、被固定部21の前部にスクリュー挿通孔21Hが形成され、後部にピン挿通孔21Pが形成されている。傾斜壁23には複数の軽量化用孔23Hが形成されている。
【0026】
そして、延長ブラケット20の下側接合部22が、サイドブラケット10の被接合部50の上面部51に上方から重なり、下側接合部22の第2フランジ20Fが被接合部50の車幅方向外側の側部に車幅方向外側(車室外側W2)から当接して、下側接合部22が被接合部50の上面部51に溶接接合されている。図6の符号Bは溶接接合された部分を示している。
下側接合部22は被接合部50の上面部51に溶接接合されているので、インストルメントパネル1の前後方向のバラツキが生じた場合に、被接合部50に対する下側接合部22の溶接位置を変更調節するのみで、ダッシュパネル9の型変更を行なう事無く、インストルメントパネル1の前後方向のバラツキの修正が可能となる。
【0027】
延長ブラケット20の被固定部21の被固定面21M(上面)は、インストルメントパネル1の上壁15の側部15Sに形成された固定片30の固定部31の固定面31M(下面)に斜め前下方から重ね合わされている。このように重ね合わされた状態で前記固定部31の固定面31Mと前記被固定部21の被固定面21Mは車両前方側Frほど上方に位置するように傾斜している。
【0028】
そして、前記固定部31から裏側に突出する位置決めボス31B(図6参照)が被固定部21のピン挿通孔21Pに挿通されて位置決めされ、被固定部21のスクリュー挿通孔21Hと固定部31のスクリュー挿通孔31Hにスクリューが挿通されて被固定部21と固定部31が締め付け固定されている。
【0029】
図7に示すように、互いに連結された前記固定部31と被固定部21は、インストルメントパネル1の上壁15の側部15Sから上方に延びるフロントピラートリム2に覆い隠されている。フロントピラートリム2はインストルメントパネル1が車体に固定された後に車体に取り付けられる。
【0030】
図1に示すように、前記延長ブラケット20は右側のサイドブラケット10にも設けられている。右側のサイドブラケット10と左側のサイドブラケット10、右側の延長ブラケット20と左側の延長ブラケット20は、それぞれほぼ同一の構造である。また、右側の延長ブラケット20とインストルメントパネル1の右側の側部15Sの連結構造と、左側の延長ブラケット20とインストルメントパネル1の左側の側部15Sの連結構造とはほぼ同一の構造である。これらの構造については説明を省略する。
【0031】
上記の構成によれば、
(1) 前記サイドブラケット10に延長ブラケット20が設けられ、延長ブラケット20に形成された被固定部21が、インストルメントパネル1の上壁15の側部15Sに形成された固定部31に固定されているから、インストルメントパネル1の上壁15の側部15Sを延長ブラケット20とサイドブラケット10を介してステアリングサポートメンバー3で支持することができる。
前記ステアリングサポートメンバー3はインストルメントパネル1やステアリングシャフトを支える役割りを担うことから、強度の高い金属製部品に構成されており、支持剛性、寸法精度に優れている。このような支持剛性、寸法精度に優れた部品にインストルメントパネル1の上壁15の側部15Sを支持させることにより、前記上壁15の側部15Sを車両前後方向で精度よく位置決めでき、上壁15の側部15Sの支持剛性を強くすることができる
従って、例えば、インストルメントパネル1の車体への搭載作業性の向上のために、インストルメントパネル1の前端部と車体との固定部31の嵌合(インストルメントパネル1の前端部のダッシュパネル部やカウル部への固定構造)を廃止した構造であっても、インストルメントパネル1の車両前後方向への位置ズレを規制することができる。
また、例えば、インストルメントパネル1の上壁15の側部15Sとフロントピラートリム2の下端部との合わせ部に位置決め機構を設けて両者の車両前後方向の位置を調整する構造に比べると、インストルメントパネル1の天面の外観や前記合わせ部の外観を損なうことなく前記両者の車両前後方向の位置調整を行うことができる。
これにより、インストルメントパネル1の上壁15の側部15Sと他部品の端部(フロントピラートリム2の下端部)との見切り部の外観を向上させることができる。
そして、インストルメントパネル1の上壁15の側部15Sの位置規制を車体やフロントピラートリム2に頼らずに、インストルメントパネル1の部組構成内にて行うことができる。
【0032】
(2) 前記固定部31と被固定部21は、インストルメントパネル1の上壁15の側部15Sから上方に延びるフロントピラートリム2に覆い隠されているから、固定部31と被固定部21を隠すための部品を省くことができ、インストルメントパネル本体14やフロントピラートリム2が複雑な型構造や形状になることを避けることができる。
【0033】
(3) 前記固定部31の固定面31Mと前記被固定部21の被固定面21Mは車両前方側Frほど上方に位置するように傾斜しているから、延長ブラケット20に、インストルメントパネル1の上壁15の側部15Sを支える役割りと、インストルメントパネル1が前後側にずれようとする動きを抑える前後方向の規制の役割りとを担わせることができる。これにより、インストルメントパネル1の上壁15の側部15Sを車両前後方向でより精度よく位置決めすることができる。
【0034】
(4) 前記延長ブラケット20に形成された接合部22が、サイドブラケット10に形成された被接合部50に上方から接合し、接合部22の側部に下方に張り出す第2フランジ20Fが形成され、第2フランジ20Fが前記被接合部50の車幅方向外側の側部に車幅方向外側(車室外側W2)から当接しているから、延長ブラケット20の車幅方向における位置ずれを抑制することができ、インストルメントパネル1の上壁15の側部15Sの車幅方向における位置精度を向上させることができる。
【0035】
[別実施形態]
(1) 上記の実施形態では、前記延長ブラケット20の接合部22をサイドブラケット10の被接合部50に溶接固着したが、この構造に換えて、車両前後方向に長い長孔を延長ブラケット20の接合部22とサイドブラケット10の被接合部50の一方に形成し、スクリューやボルト等の締結部材で前記接合部22を被接合部50に結合して、接合部22を被接合部50に対して車両前後方向の調整可能に構成してあってもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 インストルメントパネル
2 フロントピラートリム
3 ステアリングサポートメンバー
10 サイドブラケット
15 インストルメントパネルの上壁
15S インストルメントパネルの上壁の側部
20 延長ブラケット
20F フランジ(第2フランジ)
21 被固定部
21M 被固定部の被固定面
22 接合部(下側接合部)
31 固定部
31M 固定部の固定面
50 被接合部
Fr 車両前方側
【技術分野】
【0001】
本発明は、
ステアリングサポートメンバーの長手方向の端部にサイドブラケットが設けられ、
前記サイドブラケットが車体側の部品に連結され、
インストルメントパネルが前記ステアリングサポートメンバーに支持されているインストルメントパネルの支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上記のインストルメントパネルの支持構造では、特許文献1に開示されているように、インストルメントパネルの側部に設けられた第1ブラケットが、インストルメントパネルの上壁の側部に対向する車体部分に設けられた第2ブラケットに連結されて、インストルメントパネルが前記車体部分に支持されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭57−47221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のインストルメントパネルの側部に対向する車体部分は他の車体部分に比べると強度が十分ではない。そのために、上記従来の構造のように、インストルメントパネルが、インストルメントパネルの上壁の側部に対向する車体部分に支持された構造では、インストルメントパネルの上壁の側部と、この側部に合わせられる他部品の端部(例えばフロントピラートリムの下端部)との見切り部に隙間が形成され、前記見切り部の外観が損なわれることがあった。
本発明は上記実状に鑑みて成されたもので、その目的は、インストルメントパネルの上壁の側部と他部品の端部との見切り部の外観を向上させることができるインストルメントパネルの支持構造を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の特徴は、
ステアリングサポートメンバーの長手方向の端部にサイドブラケットが設けられ、
前記サイドブラケットが車体側の部品に連結され、
インストルメントパネルが前記ステアリングサポートメンバーに支持されているインストルメントパネルの支持構造であって、
前記サイドブラケットに延長ブラケットが設けられ、
前記延長ブラケットに形成された被固定部が、前記インストルメントパネルの上壁の側部に形成された固定部に固定されている点にある。(請求項1)
【0006】
上記の構成によれば、前記サイドブラケットに延長ブラケットが設けられ、延長ブラケットに形成された被固定部が、インストルメントパネルの上壁の側部に形成された固定部に固定されているから、インストルメントパネルの上壁の側部を延長ブラケットとサイドブラケットを介してステアリングサポートメンバーで支持することができる。
ステアリングサポートメンバーはインストルメントパネルやステアリングシャフトを支える役割りを担うことから、強度の高い金属製部品に構成されており、支持剛性、寸法精度に優れている。このような支持剛性、寸法精度に優れた部品にインストルメントパネルの上壁の側部を支持させることにより、前記上壁の側部を精度よく位置決めでき、前記上壁の側部の支持剛性を強くすることができる。
従って、例えば、インストルメントパネルの車体への搭載作業性の向上のために、インストルメントパネルの前端部と車体との固定部の嵌合構造(インストルメントパネルの前端部のダッシュパネル部やカウル部への固定構造)を廃止した構造であっても、インストルメントパネルの車両前後方向への位置ズレを規制することができる。
これにより、インストルメントパネルの上壁の側部と他部品の端部との見切り部の外観を向上させることができる。(請求項1)
【0007】
本発明において、
前記固定部と被固定部は、前記インストルメントパネルの上壁の側部から上方に延びるフロントピラートリムに覆い隠されていると、前記固定部と被固定部を隠すための部品を省くことができ、インストルメントパネルやフロントピラートリムが複雑な型構造や形状になることを避けることができる。(請求項2)
【0008】
本発明において、
前記固定部の固定面と前記被固定部の被固定面は車両前方側ほど上方に位置するように傾斜していると、次の作用を奏することができる。(請求項3)
【0009】
延長ブラケットに、インストルメントパネルの上壁の側部を支える役割りと、インストルメントパネルが車両前後側にずれようとする動きを抑える前後方向の規制の役割りとを担わせることができる。これにより、インストルメントパネルの上壁の側部を車両前後方向でより精度よく位置決めすることができる。(請求項3)
【0010】
本発明において、
前記延長ブラケットに形成された接合部が、前記サイドブラケットに形成された被接合部に溶接接合されていると、インストルメントパネルの前後方向のバラツキが生じた場合に、前記被接合部に対する前記接合部の溶接位置を変更調節するのみで、ダッシュパネルの型変更を行なう事無く、インストルメントパネルの前後方向のバラツキの修正が可能となる。(請求項4)
【0011】
本発明において、
前記接合部の側部に下方に張り出すフランジが形成され、
前記フランジが前記被接合部の側部に車幅方向で当接していると、延長ブラケットの車幅方向における位置ずれを抑制することができ、インストルメントパネルの上壁の側部の車幅方向における位置精度を向上させることができる。(請求項5)
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、
インストルメントパネルの上壁の側部と他部品の端部との見切り部の外観を向上させることができるインストルメントパネルの支持構造を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】インストルメントパネルとステアリングサポートメンバーの分解斜視図
【図2】インストルメントパネル本体をステアリングサポートメンバーに取り付けた状態の斜視図
【図3】サイドブラケットを示す側面図(一部は模式図)
【図4】延長ブラケットの取り付け構造を上方から見た斜視図
【図5】延長ブラケットの斜視図
【図6】延長ブラケットの取り付け構造を下方から見た斜視図
【図7】インストルメントパネルの側部を上から見た斜視図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に、自動車のインストルメントパネル1と、ステアリングを支持するステアリングサポートメンバー3とを示してある。インストルメントパネル1は合成樹脂製の成形品であり、運転席及び助手席の車両前方側Frに配置されている。
【0015】
[インストルメントパネル1の構造]
インストルメントパネル本体14は車室内のほぼ全幅にわたる長さに設定され、上壁15と、運転席及び助手席に対向する車室内側の前壁16と、左右一対の側壁17とを備えている。また、前壁16の車幅方向の中央部にカーステレオ(オーディオ類)・エアコン(空調機器)などの操作系パネル18が配置され、助手席と対向する前壁16の下半部に、揺動開閉するグローブボックス19が設けられている。
【0016】
図1,図4,図6に示すように、上壁15の側部15Sに段差部15Dが形成され、前記側部15Sから第1フランジ15Fが下方に延びている。そして、後述の延長ブラケット20の被固定部21が固定される板状の固定片30が、第1フランジ15Fの車幅方向内側W1の段差面(第1フランジ15Fの表側の面)から車幅方向外側W2に張り出している。
【0017】
前記固定片30は、車両前方側Frほど上方に位置するように傾斜した固定部31と、この固定部31の車両後方側Rrの端部から立ち上がる立ち上がり部32とから成る。固定部31の前部にはスクリュー挿通孔31Hが形成され、後部には裏側に突出する位置決めボス31B(図6参照)が形成されている。また、前記立ち上がり部32の車幅方向内側W1の部分は切り欠かれ、切り欠き部から断面L字状の壁部33が車両後方側Rrに延びている。断面L字状の壁部33は前記段差面との間に溝部を形成している。
【0018】
[ステアリングサポートメンバー3の構造]
図1に示すように、前記ステアリングサポートメンバー3は車幅方向に沿う丸パイプ状に形成され、運転席側のメンバー部分3Aの径が助手席側のメンバー部分3Bの径よりも大きく設定されている。そして、ステアリングサポートメンバー3の左端部(ステアリングサポートメンバーの長手方向の端部に相当)に左側のサイドブラケット10が溶接固着され、右端部(ステアリングサポートメンバーの長手方向の端部に相当)に右側のサイドブラケット10が溶接固着されている。
【0019】
左側のサイドブラケット10は左ダッシュサイドパネル(車体側の部品に相当、図示せず)に連結され、右側のサイドブラケット10は右ダッシュサイドパネル(車体側の部品に相当、図示せず)に連結されている。
【0020】
そして、ステアリングサポートメンバー3の長手方向(車幅方向)中間部に複数の帯板状の中間ブラケット40の上端部が溶接固着され、前記複数の中間ブラケット40がインストルメントパネル1の左右中間部に連結されて、インストルメントパネル1がステアリングサポートメンバー3に支持されている。
【0021】
[サイドブラケット10の構造]
図1〜図4に示すように、左側のサイドブラケット10(以下、「サイドブラケット10」と称する)は車幅方向から見て車両後方側Rrに窄まる台形板状に形成され、上下両端部10Aが車幅方向内側W1にフランジ状に折曲されている。これにより、サイドブラケット10の剛性・強度が向上している。図3はサイドブラケット10を示す側面図であり、一部を模式図にしてある。図3の符号8はカウルパネル、9はダッシュパネルの上端部である。
【0022】
ステアリングサポートメンバー3の左端部は左側のサイドブラケット10に溶接固着されている。ステアリングサポートメンバー3の左端部の周りには複数のボルト挿通孔10Hが形成され、このボルト挿通孔10Hに挿通されたボルトでサイドブラケット10が左ダッシュサイドパネルに固定される。
【0023】
図4,図6に示すように、サイドブラケット10の前端部の上側コーナー部に、延長ブラケット20の接合部22が接合する被接合部50が車両前方側Frに張り出し形成されている。この被接合部50は、上面部51と、上面部51の車幅方向外側の端部から下方に延びる側面部52とを備えた断面L字形に形成されている。
【0024】
[延長ブラケット20の構造]
図4〜図6に示すように、サイドブラケット10に、車幅方向と直交する方向に長い板状の延長ブラケット20が設けられている。この延長ブラケット20は、下側接合部22(接合部に相当)と、下側接合部22から前上方に延びる傾斜壁23と、傾斜壁23に対して車両前方側Frに折曲し、前記傾斜壁23の上端部から前上方に延びる被固定部21とから成る。上記のように、前記被固定部21は傾斜壁23よりも傾斜が緩やかに設定されている。
【0025】
延長ブラケット20の幅方向(車幅方向)の両側部には下方に張り出す第2フランジ20Fが全長にわたって形成されている。また、被固定部21の前部にスクリュー挿通孔21Hが形成され、後部にピン挿通孔21Pが形成されている。傾斜壁23には複数の軽量化用孔23Hが形成されている。
【0026】
そして、延長ブラケット20の下側接合部22が、サイドブラケット10の被接合部50の上面部51に上方から重なり、下側接合部22の第2フランジ20Fが被接合部50の車幅方向外側の側部に車幅方向外側(車室外側W2)から当接して、下側接合部22が被接合部50の上面部51に溶接接合されている。図6の符号Bは溶接接合された部分を示している。
下側接合部22は被接合部50の上面部51に溶接接合されているので、インストルメントパネル1の前後方向のバラツキが生じた場合に、被接合部50に対する下側接合部22の溶接位置を変更調節するのみで、ダッシュパネル9の型変更を行なう事無く、インストルメントパネル1の前後方向のバラツキの修正が可能となる。
【0027】
延長ブラケット20の被固定部21の被固定面21M(上面)は、インストルメントパネル1の上壁15の側部15Sに形成された固定片30の固定部31の固定面31M(下面)に斜め前下方から重ね合わされている。このように重ね合わされた状態で前記固定部31の固定面31Mと前記被固定部21の被固定面21Mは車両前方側Frほど上方に位置するように傾斜している。
【0028】
そして、前記固定部31から裏側に突出する位置決めボス31B(図6参照)が被固定部21のピン挿通孔21Pに挿通されて位置決めされ、被固定部21のスクリュー挿通孔21Hと固定部31のスクリュー挿通孔31Hにスクリューが挿通されて被固定部21と固定部31が締め付け固定されている。
【0029】
図7に示すように、互いに連結された前記固定部31と被固定部21は、インストルメントパネル1の上壁15の側部15Sから上方に延びるフロントピラートリム2に覆い隠されている。フロントピラートリム2はインストルメントパネル1が車体に固定された後に車体に取り付けられる。
【0030】
図1に示すように、前記延長ブラケット20は右側のサイドブラケット10にも設けられている。右側のサイドブラケット10と左側のサイドブラケット10、右側の延長ブラケット20と左側の延長ブラケット20は、それぞれほぼ同一の構造である。また、右側の延長ブラケット20とインストルメントパネル1の右側の側部15Sの連結構造と、左側の延長ブラケット20とインストルメントパネル1の左側の側部15Sの連結構造とはほぼ同一の構造である。これらの構造については説明を省略する。
【0031】
上記の構成によれば、
(1) 前記サイドブラケット10に延長ブラケット20が設けられ、延長ブラケット20に形成された被固定部21が、インストルメントパネル1の上壁15の側部15Sに形成された固定部31に固定されているから、インストルメントパネル1の上壁15の側部15Sを延長ブラケット20とサイドブラケット10を介してステアリングサポートメンバー3で支持することができる。
前記ステアリングサポートメンバー3はインストルメントパネル1やステアリングシャフトを支える役割りを担うことから、強度の高い金属製部品に構成されており、支持剛性、寸法精度に優れている。このような支持剛性、寸法精度に優れた部品にインストルメントパネル1の上壁15の側部15Sを支持させることにより、前記上壁15の側部15Sを車両前後方向で精度よく位置決めでき、上壁15の側部15Sの支持剛性を強くすることができる
従って、例えば、インストルメントパネル1の車体への搭載作業性の向上のために、インストルメントパネル1の前端部と車体との固定部31の嵌合(インストルメントパネル1の前端部のダッシュパネル部やカウル部への固定構造)を廃止した構造であっても、インストルメントパネル1の車両前後方向への位置ズレを規制することができる。
また、例えば、インストルメントパネル1の上壁15の側部15Sとフロントピラートリム2の下端部との合わせ部に位置決め機構を設けて両者の車両前後方向の位置を調整する構造に比べると、インストルメントパネル1の天面の外観や前記合わせ部の外観を損なうことなく前記両者の車両前後方向の位置調整を行うことができる。
これにより、インストルメントパネル1の上壁15の側部15Sと他部品の端部(フロントピラートリム2の下端部)との見切り部の外観を向上させることができる。
そして、インストルメントパネル1の上壁15の側部15Sの位置規制を車体やフロントピラートリム2に頼らずに、インストルメントパネル1の部組構成内にて行うことができる。
【0032】
(2) 前記固定部31と被固定部21は、インストルメントパネル1の上壁15の側部15Sから上方に延びるフロントピラートリム2に覆い隠されているから、固定部31と被固定部21を隠すための部品を省くことができ、インストルメントパネル本体14やフロントピラートリム2が複雑な型構造や形状になることを避けることができる。
【0033】
(3) 前記固定部31の固定面31Mと前記被固定部21の被固定面21Mは車両前方側Frほど上方に位置するように傾斜しているから、延長ブラケット20に、インストルメントパネル1の上壁15の側部15Sを支える役割りと、インストルメントパネル1が前後側にずれようとする動きを抑える前後方向の規制の役割りとを担わせることができる。これにより、インストルメントパネル1の上壁15の側部15Sを車両前後方向でより精度よく位置決めすることができる。
【0034】
(4) 前記延長ブラケット20に形成された接合部22が、サイドブラケット10に形成された被接合部50に上方から接合し、接合部22の側部に下方に張り出す第2フランジ20Fが形成され、第2フランジ20Fが前記被接合部50の車幅方向外側の側部に車幅方向外側(車室外側W2)から当接しているから、延長ブラケット20の車幅方向における位置ずれを抑制することができ、インストルメントパネル1の上壁15の側部15Sの車幅方向における位置精度を向上させることができる。
【0035】
[別実施形態]
(1) 上記の実施形態では、前記延長ブラケット20の接合部22をサイドブラケット10の被接合部50に溶接固着したが、この構造に換えて、車両前後方向に長い長孔を延長ブラケット20の接合部22とサイドブラケット10の被接合部50の一方に形成し、スクリューやボルト等の締結部材で前記接合部22を被接合部50に結合して、接合部22を被接合部50に対して車両前後方向の調整可能に構成してあってもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 インストルメントパネル
2 フロントピラートリム
3 ステアリングサポートメンバー
10 サイドブラケット
15 インストルメントパネルの上壁
15S インストルメントパネルの上壁の側部
20 延長ブラケット
20F フランジ(第2フランジ)
21 被固定部
21M 被固定部の被固定面
22 接合部(下側接合部)
31 固定部
31M 固定部の固定面
50 被接合部
Fr 車両前方側
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングサポートメンバーの長手方向の端部にサイドブラケットが設けられ、
前記サイドブラケットが車体側の部品に連結され、
インストルメントパネルが前記ステアリングサポートメンバーに支持されているインストルメントパネルの支持構造であって、
前記サイドブラケットに延長ブラケットが設けられ、
前記延長ブラケットに形成された被固定部が、前記インストルメントパネルの上壁の側部に形成された固定部に固定されているインストルメントパネルの支持構造。
【請求項2】
前記固定部と被固定部は、前記インストルメントパネルの上壁の側部から上方に延びるフロントピラートリムに覆い隠されている請求項1記載のインストルメントパネルの支持構造。
【請求項3】
前記固定部の固定面と前記被固定部の被固定面は車両前方側ほど上方に位置するように傾斜している請求項1又は2記載のインストルメントパネルの支持構造。
【請求項4】
前記延長ブラケットに形成された接合部が、前記サイドブラケットに形成された被接合部に溶接接合されている請求項1〜3のいずれか一つに記載のインストルメントパネルの支持構造。
【請求項5】
前記接合部の側部に下方に張り出すフランジが形成され、
前記フランジが前記被接合部の側部に車幅方向で当接している請求項4に記載のインストルメントパネルの支持構造。
【請求項1】
ステアリングサポートメンバーの長手方向の端部にサイドブラケットが設けられ、
前記サイドブラケットが車体側の部品に連結され、
インストルメントパネルが前記ステアリングサポートメンバーに支持されているインストルメントパネルの支持構造であって、
前記サイドブラケットに延長ブラケットが設けられ、
前記延長ブラケットに形成された被固定部が、前記インストルメントパネルの上壁の側部に形成された固定部に固定されているインストルメントパネルの支持構造。
【請求項2】
前記固定部と被固定部は、前記インストルメントパネルの上壁の側部から上方に延びるフロントピラートリムに覆い隠されている請求項1記載のインストルメントパネルの支持構造。
【請求項3】
前記固定部の固定面と前記被固定部の被固定面は車両前方側ほど上方に位置するように傾斜している請求項1又は2記載のインストルメントパネルの支持構造。
【請求項4】
前記延長ブラケットに形成された接合部が、前記サイドブラケットに形成された被接合部に溶接接合されている請求項1〜3のいずれか一つに記載のインストルメントパネルの支持構造。
【請求項5】
前記接合部の側部に下方に張り出すフランジが形成され、
前記フランジが前記被接合部の側部に車幅方向で当接している請求項4に記載のインストルメントパネルの支持構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2012−140093(P2012−140093A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−294506(P2010−294506)
【出願日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】
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