説明

インスリンを哺乳動物に送達するための脂質構築物

本発明は、両親媒性脂質と伸張両親媒性脂質(当該構築物が肝細胞が提示する受容体を標的にするようにする)を含んで成る脂質構築物と合併しているインスリンを含んで成る肝細胞標的組成物に向けたものである。本組成物は前記錯体と合併しているインスリンと遊離インスリンの混合物を含有して成り得る。この組成物に改変をインスリンおよび前記錯体が劣化から保護されるように受けさせることも可能である。本発明は、また、本組成物を製造しそしてインスリンを本組成物に充填しそして本組成物のいろいろな成分を回収する方法も包含する。糖尿病にかかっている人を治療する方法。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
糖尿病は世界規模で非常に多くの人に影響を与えている疾患である。1型および2型糖尿病を制御する管理方策は主に血糖値を正常にすることで短期および長期の合併症を予防することにある。数多くの患者は糖尿病を制御する目的でインスリンを日に数回注射する必要がある。血糖値をいろいろな時間的間隔に渡って制御するインスリン製品が数種製造されている。いくつかの製品では血糖値をより幅広い期間に渡って制御する製剤を提供する試みでいろいろな形態のインスリンが組み合わされている。
【0002】
1型および2型糖尿病患者の血糖値を正常にする以前の試みは、インスリンをいろいろな徐放性製剤、例えば製薬学的ウルトラレンテ(ultralent)およびフムリン(humulin)NPHインスリン製品などとして皮下投与することに焦点が当てられていた。そのような製剤は、インスリンの生物学的利用能を持続して管理すると糖制御がより良好になるであろうと言った期待で周囲組織へのインスリン放出を調節してインスリンの生体内分布を遅らせる結果としてそれを制御することを試みた製剤である。グラルギンインスリンは長期作用形態のインスリンであり、この形態では、インスリンがその日全体に渡って比較的一定した速度で注射部位の回りの皮下組織から血流の中に放出される。グラルギンインスリンはその日全体に渡って一定した速度で放出されはするが、その放出されたインスリンは体の標的領域に送達されないでむしろ体内の幅広い範囲の系に到達する。必要とされている組成物は、投与されたインスリンの一部がその日全体に渡って比較的一定した速度で放出されかつインスリンの別の一部が投与部位から徐放されそして肝臓を標的にして送達されることで糖産生の制御をより良好に行うインスリン組成物である。
【0003】
従って、1型および2型糖尿病患者における血糖値を管理する組成物および方法が本技術分野で満たされないで必要とされているままである。本発明は、肝細胞を標的にして送達する脂質構築物と合併させておいたインスリンと遊離インスリンであるインスリンを含んで成る長期作用組成物を提供することでそのような必要性を満たすものである。脂質構築物は脂質/燐脂質粒子であり、この粒子の中の個々の脂質分子が協調して相互作用することで二極性脂質膜を形成していて前記膜が媒体(この中で前記膜が形成される)の一部を封じ込めかつ孤立させている。この脂質構築物は遊離インスリンを経時的に放出するばかりでなく残りのインスリンの一部が肝臓の中の肝細胞を標的にすることで糖の蓄積および産生の制御がより良好になる。
【発明の開示】
【0004】
発明の簡単な要約
本発明は、1つの面において、両親媒性脂質および伸張両親媒性脂質を含んで成る脂質構築物を包含し、ここで、前記伸張両親媒性脂質は近位、中位および遠位部分を含有して成っていて、前記近位部分が前記伸張両親媒性脂質を該構築物と連結させており、前記遠位部分によって該構築物が肝細胞が提示する受容体を標的にしそして前記中位部分が前記近位部分と遠位部分を連結させている。
【0005】
別の面における前記脂質構築物は、更に、少なくとも1種のインスリンも含んで成る。
【0006】
更に別の面では、前記少なくとも1種のインスリンがインスリンリスプロ、インスリンアスパルト、レギュラーインスリン、インスリングラルギン、インスリン亜鉛、持続型ヒトインスリン亜鉛、イソフェンインスリン、ヒト緩衝レギュラーインスリン、インスリングルリシン、組換え型ヒトレギュラーインスリン、組換え型ヒトインスリンイソフェン、前記インスリンのいずれかの予混合組み合わせ、それらの誘導体および前記インスリンの
いずれかの組み合わせから成る群から選択される。
【0007】
別の面における前記脂質構築物は、更に、この脂質構築物と合併している不溶形態の少なくとも1種のインスリンも含んで成る。
【0008】
更に別の面における前記両親媒性脂質は、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン、コレステロール、ジセチルホスフェート、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロール−[3−ホスホ−rac−(1−グリセロ)]、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−(スクシニル)、これらの誘導体および前記化合物のいずれかの混合物から成る群から選択される少なくとも1種の脂質を含んで成る。
【0009】
1つの面における前記伸張両親媒性脂質の近位部分は、バックボーンと結合している長鎖アシル炭化水素鎖を少なくとも1個であるが、2個以下の数で含有し、ここでは、前記炭化水素鎖の各々を独立して飽和炭化水素鎖および不飽和炭化水素鎖から成る群から選択される。
【0010】
別の面における前記バックボーンはグリセロールを含んで成る。
【0011】
更に別の面における前記伸張両親媒性脂質の遠位部分は、ビオチン、ビオチン誘導体、イミノビオチン、イミノビオチン誘導体、ビオシチン、ビオシチン誘導体、イミノビオシチン、イミノビオシチン誘導体および肝細胞中の受容体と結合する肝細胞特異的分子から成る群から選択した少なくとも一員を含んで成る。
【0012】
更に別の面では、前記伸張両親媒性脂質がN−ヒドロキシスクシニミド(NHS)ビオチン;スルホ−NHS−ビオチン;N−ヒドロキシスクシニミド長鎖ビオチン,スルホ−N−ヒドロキシスクシニミド長鎖ビオチン;D−ビオチン;ビオシチン;スルホ−N−ヒドロキシスクシニミド−S−S−ビオチン;ビオチン−BMCC;ビオチン−HPDP;ヨードアセチル−LC−ビオチン;ビオチン−ヒドラジド;ビオチン−LC−ヒドラジド;ビオシチンヒドラジド;ビオチンカダベリン;カルボキシビオチン;フォトビオチン;トリフルオロ酢酸ρ−アミノベンゾイルビオシチン;ρ−ジアゾベンゾイルビオシチン;ビオチン DHPE;ビオチン−X−DHPE;12−((ビオチニル)アミノ)ドデカン酸;12−((ビオチニル)アミノ)ドデカン酸スクシニミジルエステル;S−ビオチニルホモシステイン;ビオシチンX;ビオシチン x−ヒドラジド;ビオチンエチレンジアミン;ビオチン−XL;ビオチン−X−エチレンジアミン;ビオチン−XX−ヒドラジド;ビオチン−XX−SE;ビオチン−XX,SSE;ビオチン−X−カダベリン;α−(t−BOC)ビオシチン;N−(ビオチニル)−N’−(ヨードアセチル)エチレンジアミン;DNP−X−ビオシチンX−SE;ビオチン−X−ヒドラジド;塩酸ノルビオチンアミン;3−(N−マレイミジルプロピオニル)ビオシチン;ARP;ビオチン−l−スルホキサイド;ビオチンのメチルエステル;ビオチン−マレイミド;ビオチン−ポリ(エチレングリコール)アミン;(+)ビオチン 4−アミド安息香酸ナトリウム塩;ビオチン 2−N−アセチルアミノ−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシド;ビオチン−α−D−N−アセチルニューラミニド;ビオチン−α−L−フコシド;ビオチンラクト−N−ビオシド;ビオチン-ルイス−A 三糖;ビオチン-ルイス−Y 四糖;ビオチン−α−D−マンノピラノシド;ビオチン 6−O−ホスホ−α−D−マンノピラノシド;およびポリクロム−ポリ(ビス)−[N−(2,6−(ジイソプロピルフェニル)カルバモイル メチル)イミノ]ジ酢酸から成る群から選択される。
【0013】
1つの面における前記伸張両親媒性脂質の中位部分はチオ−アセチルトリグリシン重合
体またはこれの誘導体を含んで成り、前記伸張両親媒性脂質の分子は該脂質構築物の表面から外側に伸びている。
【0014】
別の面における前記脂質構築物は、更に、水に不溶な標的分子錯体と合併している少なくとも1種のインスリンも含み、前記錯体は多数の連結した個々の単位を含んでおり、ここで、前記個々の単位は、遷移元素、内部遷移元素、遷移元素の同胞元素および前記元素のいずれかの混合物から成る群から選択される橋かけ成分および錯体形成成分を含んで成るが、但し前記遷移元素がクロムの時にはクロム標的分子錯体が生じることを条件とする。
【0015】
更に別の面における前記脂質構築物は、更に、前記標的分子錯体と合併していない少なくとも1種のインスリンも含んで成る。
【0016】
さらなる面における前記橋かけ成分はクロムである。
【0017】
1つの面における前記錯体形成成分はポリ(ビス)−[(N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルバモイルメチル)イミノジ酢酸]を含んで成る。
【0018】
別の面における前記伸張両親媒性脂質の遠位成分は非極性誘導体化ベンゼン環または複素二環式環構造を含んで成る。
【0019】
更に別の面における前記構築物は正電荷、負電荷またはこれらの組み合わせを含んで成る。
【0020】
1つの面における前記伸張両親媒性脂質は前記遠位部分の末端終点から約13.5オングストローム以内の距離に位置するカルボニル部分を少なくとも1個含んで成る。
【0021】
別の面における前記伸張両親媒性脂質は第二級アミン含有カルバモイル部分を少なくとも1個含んで成る。
【0022】
更に別の面における前記伸張両親媒性脂質は帯電したクロムを中位に含んで成る。
【0023】
さらなる面における前記脂質構築物は、更に、酢酸水素フタル酸セルロースも含んで成る。
【0024】
更に別の面における前記脂質構築物は、更に、前記インスリンと結合している少なくとも1種の帯電した有機分子も含んで成る。
【0025】
1つの面では、前記帯電した有機分子がプロタミン、ポリリシンの誘導体、高度に塩基性のアミノ酸重合体、モル比が1:1:1のポリ(arg−pro−thr)、モル比が6:1のポリ(DL−Ala−ポリ−L−lys)、ヒストン、第一級アミノ基による正帯電を有する糖重合体、第一級アミノ基を有するポリヌクレオチド、カルボキシル化重合体および高分子量アミノ酸、カルボキシル(COO)またはスルフヒドラール(S)官能基を有するアミノ酸残基を多量に含有する蛋白質フラグメント、負帯電末端酸性カルボキシル基を有する蛋白質誘導体、酸性重合体、負帯電カルボキシル基を有する糖重合体、それらの誘導体および前記化合物の任意組み合わせから成る群から選択される。
【0026】
別の面では、両親媒性脂質および伸張両親媒性脂質[前記伸張両親媒性脂質は近位、中位および遠位部分を含み、ここで、前記近位部分が前記伸張両親媒性脂質を該構築物と連結させており、前記遠位部分によって該構築物が肝細胞が提示する受容体を標的にしそし
て前記中位部分が前記近位部分と遠位部分を連結させている]を含んで成る脂質構築物を製造する方法に、前記両親媒性脂質と伸張両親媒性脂質を含んで成る混合物を生じさせそして前記脂質構築物が水に入っている懸濁液を生じさせることを含める。
【0027】
更に別の面では、インスリン、両親媒性脂質および伸張両親媒性脂質[前記伸張両親媒性脂質は近位、中位および遠位部分を含み、ここで、前記近位部分が前記伸張両親媒性脂質を該構築物と連結させており、前記遠位部分によって該構築物が肝細胞が提示する受容体を標的にしそして前記中位部分が前記近位部分と遠位部分を連結させている]含んで成る脂質構築物を製造する方法に、前記両親媒性脂質と伸張両親媒性脂質を含んで成る混合物を生じさせ、前記脂質構築物が水に入っている懸濁液を生じさせそしてインスリンを前記脂質構築物の中に充填することを含める。
【0028】
別の面では、前記インスリンを前記脂質構築物の中に充填する段階に平衡充填および非平衡充填を含める。
【0029】
更に別の面では、前記インスリンを前記脂質構築物に充填する段階に、遊離インスリンが入っている溶液を前記脂質構築物が水に入っている混合物に添加しそして前記インスリンと前記混合物を平衡状態に到達するまで接触させたままにしておくことを含める。
【0030】
更に別の面では、本方法に、更に、前記混合物が平衡に到達した後に前記インスリンを前記脂質構築物の中に最終的に充填する段階も含め、ここでは、前記遊離インスリンが入っている溶液を前記構築物から除去し、更にここでは、前記構築物がこの構築物と合併しているインスリンも含有する。
【0031】
1つの面では、本方法に、更に、急速濾過手順、遠心分離、濾過遠心分離およびイオン交換樹脂またはビオチン、イミノビオチンもしくはこれらの誘導体に親和性を示すストレプトアビジンアガロース親和性樹脂ゲルが用いられているクロマトグラフィーから成る群から選択した方法を用いて前記遊離インスリンが入っている溶液を前記構築物と合併しているインスリンを含有する前記脂質構築物から除去する段階も含める。
【0032】
別の面では、本方法に、更に、多数の連結した個々の単位を含んで成るクロム錯体を前記脂質構築物に添加する段階も含める。
【0033】
更に別の面では、本方法に、更に、酢酸水素フタル酸セルロースを前記脂質構築物に添加する段階も含める。
【0034】
更に別の面では、本方法に、更に、インスリン、イオン交換樹脂およびストレプトアビジンアガロース親和性ゲルから成る群から選択した少なくとも1種の材料を工程から回収する段階も含める。
【0035】
別の面では、前記インスリンを前記脂質構築物の中に充填する段階に、前記インスリンを前記脂質構築物に充填する前に少なくとも1種の帯電した有機分子を前記インスリンに添加しておく段階を含める。
【0036】
更に別の面では、少なくとも1種のインスリンが患者内で示す生物学的利用能を向上させる方法に、少なくとも1種のインスリンを多数の非共有多座結合部位を含んで成る脂質構築物と一緒にし、そして前記インスリンを含有する構築物を前記患者に投与することを含める。
【0037】
別の面では、生物学的利用能の向上に、更に、少なくとも1種の有効成分が示す等電点
を調節する段階も含める。
【0038】
更に別の面では、前記インスリンがインスリンリスプロ、インスリンアスパルト、レギュラーインスリン、インスリングラルギン、インスリン亜鉛、持続型ヒトインスリン亜鉛、イソフェンインスリン、ヒト緩衝レギュラーインスリン、インスリングルリシン、組換え型ヒトレギュラーインスリン、組換え型ヒトインスリンイソフェン、前記インスリンのいずれかの予混合組み合わせ、それらの誘導体および前記インスリンのいずれかの組み合わせから成る群から選択される。
【0039】
請求項33の方法の前記脂質構築物にインスリン,1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン,コレステロール,ジセチルホスフェート,1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−[3−ホスホ−rac−(1−グリセロール)],1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミンおよび1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−(スクシニル)または誘導体および肝細胞受容体結合分子を含有させる。
【0040】
1つの面では、本方法に、更に、前記インスリンを前記脂質構築物と一緒にする前に少なくとも1種の帯電した有機分子を前記インスリンに添加しておく段階も含める。
【0041】
別の面では、インスリンが宿主内で示す生体内分布を向上させる徐放性組成物を製造する方法に、脂質構築物をイミノビオチンまたはイミノビオチン誘導体を含んで成る脂質を通してストレプトアビジンアガロース親和性ゲルとpH9.5以上で結合させることで前記構築物を多量相媒体から取り出し、前記構築物を前記多量相媒体から分離し、そして前記親和性ゲルの水性混合物のpHをpH4.5に調整することで前記構築物を前記親和性ゲルから放出させることを含め、ここで、前記放出された構築物は不溶インスリンを含有するが、前記構築物を温血宿主に投与した後に前記インスリンが宿主内の生理学的pH条件下で再溶解する。
【0042】
更に別の面では、糖尿病にかかっている患者を治療する方法に、前記患者に脂質構築物と合併しているインスリンを含んで成る前記構築物を有効量で投与することを含める。
【0043】
更に別の面では、前記インスリンがインスリンリスプロ、インスリンアスパルト、レギュラーインスリン、インスリングラルギン、インスリン亜鉛、持続型ヒトインスリン亜鉛、イソフェンインスリン、ヒト緩衝レギュラーインスリン、インスリングルリシン、組換え型ヒトレギュラーインスリン、組換え型ヒトインスリンイソフェン、前記インスリンのいずれかの予混合組み合わせ、それらの誘導体および前記インスリンのいずれかの組み合わせから成る群から選択される。
【0044】
1つの面における前記脂質構築物は更に標的分子錯体も含んでおり、前記錯体が多数の連結した個々の単位を含み、更にここで、前記連結した個々の単位は、遷移元素、内部遷移元素、遷移元素の同胞元素および前記元素のいずれかの混合物を包含する群から選択した橋かけ成分および錯体形成成分を含んで成るが、但し前記遷移元素がクロムの時にはクロム標的分子錯体が生じることを条件とする。
【0045】
別の面における前記脂質構築物は、更に、前記標的分子錯体と合併していないインスリンも含んで成る。
【0046】
更に別の面における前記投与は経口または皮下である。
【0047】
更に別の面において、前記構築物と合併している前記インスリンは、このインスリンと
結合している少なくとも1種の帯電した有機分子を含んで成る。
【0048】
1つの面において、本発明は、糖尿病にかかっている患者の肝臓の中の肝細胞にインスリンを送達する送達を向上させる方法を包含し、ここでは、それを、インスリン、両親媒性脂質および伸張脂質[前記伸張脂質は肝細胞受容体と結合する部分を含有して成っていて前記脂質構築物は複数の大きさで存在する]を含んで成る脂質構築物を前記患者に投与することで向上させる。
【0049】
別の面では、前記少なくとも1種のインスリンがインスリンリスプロ、インスリンアスパルト、レギュラーインスリン、インスリングラルギン、インスリン亜鉛、持続型ヒトインスリン亜鉛、イソフェンインスリン、ヒト緩衝レギュラーインスリン、インスリングルリシン、組換え型ヒトレギュラーインスリン、組換え型ヒトインスリンイソフェン、前記インスリンのいずれかの予混合組み合わせ、それらの誘導体および前記インスリンのいずれかの組み合わせから成る群から選択される。
【0050】
更に別の面では、本方法に、更に、前記インスリンが加水分解酵素に近づかないように脂質分子の三次元構造配列を生じさせることで前記脂質構築物内の前記インスリンを加水分解による劣化から保護することも含める。
【0051】
更に別の面では、本方法に、更に、酢酸水素フタル酸セルロースを前記脂質構築物に添加することで個々の脂質分子と反応させることも含める。
【0052】
更に別の面では、本方法に、更に、不溶化した投薬形態のインスリンを前記脂質構築物内に生じさせること含める。
【0053】
1つの面において、本発明は、糖尿病にかかっている哺乳動物を治療する時に用いるに適したキットを包含し、このキットは、両親媒性脂質および伸張両親媒性脂質[前記伸張両親媒性脂質は近位、中位および遠位部分を含む、ここで、前記近位部分が前記伸張両親媒性脂質を該構築物と連結させており、前記遠位部分によって該構築物が肝細胞が提示する受容体を標的にしそして前記中位部分が前記近位部分と遠位部分を連結させている]を含む脂質構築物、生理学的緩衝剤溶液、アプリケーターおよび使用説明資料を含んで成る。
【0054】
別の面では、前記キットに、更に、少なくとも1種のインスリンも含有させる。
【0055】
1つの面において、本発明は、肝細胞を標的にする組成物を包含し、この組成物は、少なくとも1種の遊離インスリン、水に不溶な標的分子錯体と合併している少なくとも1種のインスリンおよび脂質構築物マトリクスを含有して成り、ここで、前記脂質構築物マトリクスは、少なくとも1種の脂質成分を含有して成り、そしてここで、前記標的分子錯体は、遷移元素、内部遷移元素および遷移元素の同胞元素から成る群から選択される少なくとも1種の橋かけ成分および錯体形成成分を含んで成る複数の連結した個々の単位で構成されているが、但し前記遷移元素がクロムの時にはクロム標的分子錯体が生じることを条件とし、更に、前記標的分子錯体が負帯電を有することも条件とする。
【0056】
別の面では、前記少なくとも1種のインスリンをインスリンリスプロ、インスリンアスパルト、レギュラーインスリン、インスリングラルギン、インスリン亜鉛、持続型ヒトインスリン亜鉛、イソフェンインスリン、ヒト緩衝レギュラーインスリン、インスリングルリシン、組換え型ヒトレギュラーインスリン、組換え型ヒトインスリンイソフェン、前記インスリンのいずれかの予混合組み合わせ、それらの誘導体および前記インスリンのいずれかの組み合わせから成る群から選択する。
【0057】
更に別の面における前記インスリンは、インスリンの生物学的活性を有するインスリン様部分(インスリン分子のフラグメントを包含)を含んで成る。
【0058】
更に別の面における前記脂質成分は、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン、1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン、コレステロール、コレステロールオレエート、ジセチルホスフェート、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスフェート、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスフェートおよび1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスフェートから成る群から選択される少なくとも1種の脂質を含んで成る。
【0059】
1つの面における前記脂質成分は1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン、コレステロールおよびジセチルホスフェートから成る群から選択した少なくとも1種の脂質を含んで成る。
【0060】
別の面における前記脂質成分は1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリンとコレステロールとジセチルホスフェートの混合物を含んで成る。
【0061】
更に別の面における前記橋かけ成分はクロムである。
【0062】
更に別の面における前記錯体形成成分は、
N−(2,6−ジイソプロピルフェニルカルバモイルメチル)イミノジ酢酸;
N−(2,6−ジエチルフェニルカルバモイルメチル)イミノジ酢酸;
N−(2,6−ジメチルフェニルカルバモイルメチル)イミノジ酢酸;
N−(4−イソプロピルフェニルカルバモイルメチル)イミノジ酢酸;
N−(4−ブチルフェニルカルバモイルメチル)イミノジ酢酸;
N−(2,3−ジメチルフェニルカルバモイルメチル)イミノジ酢酸;
N−(2,4−ジメチルフェニルカルバモイルメチル)イミノジ酢酸;
N−(2,5−ジメチルフェニルカルバモイルメチル)イミノジ酢酸;
N−(3,4−ジメチルフェニルカルバモイルメチル)イミノジ酢酸;
N−(3,5−ジメチルフェニルカルバモイルメチル)イミノジ酢酸;
N−(3−ブチルフェニルカルバモイルメチル)イミノジ酢酸;
N−(2−ブチルフェニルカルバモイルメチル)イミノジ酢酸;
N−(4−第三ブチルフェニルカルバモイルメチル)イミノジ酢酸;
N−(3−ブトキシフェニルカルバモイルメチル)イミノジ酢酸;
N−(2−ヘキシルオキシフェニルカルバモイルメチル)イミノジ酢酸;
N−(4−ヘキシルオキシフェニルカルバモイルメチル)イミノジ酢酸;
アミノピロールイミノジ酢酸;
N−(3−ブロモ−2,4,6−トリメチルフェニルカルバモイルメチル)イミノジ酢酸;
ベンゾイミダゾールメチルイミノジ酢酸;
N−(3−シアノ−4,5−ジメチル−2−ピリルカルバモイルメチル)イミノジ酢酸;N−(3−シアノ−4−メチル−5−ベンジル−2−ピリルカルバモイルメチル)イミノジ酢酸;および
N−(3−シアノ−4−メチル−2−ピリルカルバモイルメチル)イミノジ酢酸;
から成る群から選択される少なくとも一員を含んで成る。
【0063】
更に別の面における前記錯体形成成分はポリ(ビス)[N−(2,6−ジイソプロピルフェニルカルバモイルメチル)イミノジ酢酸]を含んで成る。
【0064】
1つの面において、本発明は、肝細胞を標的にする組成物を製造する方法を包含し、この方法は、多数の連結した個々の単位および脂質構築物マトリクスを含んで成る標的分子錯体を生じさせ、前記標的分子錯体が緩衝液に入っている懸濁液を生じさせ、そして前記インスリンと前記標的分子錯体を一緒にすることを含んで成る。
【0065】
別の面では、肝細胞を標的にする組成物を製造する方法に、多数の連結した個々の単位および脂質構築物マトリクスを含んで成る標的分子錯体を生じさせ、前記標的分子錯体が水に入っている懸濁液を生じさせ、前記水懸濁液のpHを約pH5.3に調整し、インスリンであるグラルギンインスリンのpHを約4.8に調整し、そして
前記グラルギンインスリンと前記標的分子錯体を一緒にすることを含める。
【0066】
更に別の面では、肝細胞を標的にする組成物を製造する方法に、多数の連結した個々の単位および脂質構築物マトリクスを含んで成る標的分子錯体を生じさせ、前記標的分子錯体が水に入っている懸濁液を生じさせ、前記水懸濁液のpHを約pH5.3に調整し、グラルギンインスリンとグラルギンインスリン以外の少なくとも1種のインスリンを含んで成るインスリンのpHを約4.8に調整し、そして前記グラルギンインスリンとグラルギンインスリン以外のインスリンと前記標的分子錯体を一緒にすることを含める。
【0067】
1つの面において、本発明は、1型糖尿病または2型糖尿病の患者を治療する方法を包含し、この方法は、前記患者に肝細胞を標的にする組成物を有効量で投与することを含んで成る。
【0068】
別の面では、前記投与の経路を経口、非経口、皮下、肺および口腔から成る群から選択する。
【0069】
更に別の面における前記投与の経路は経口または皮下である。
【0070】
1つの面において、本発明は、1型糖尿病または2型糖尿病の患者を治療する方法を包含し、この方法は、前記患者に肝細胞を標的にする組成物を有効量で投与することを含んで成り、ここで、インスリンはグラルギンインスリンとグラルギンインスリン以外の少なくとも1種のインスリンを含んで成り、更にここでは、前記グラルギンインスリン以外のインスリンをインスリンリスプロ、インスリンアスパルト、レギュラーインスリン、インスリングラルギン、インスリン亜鉛、持続型ヒトインスリン亜鉛、イソフェンインスリン、ヒト緩衝レギュラーインスリン、インスリングルリシン、組換え型ヒトレギュラーインスリン、組換え型ヒトインスリンイソフェン、前記インスリンのいずれかの予混合組み合わせ、それらの誘導体および前記インスリンのいずれかの組み合わせから成る群から選択される。
【0071】
別の面における前記グラルギンインスリン以外のインスリンは、インスリンの生物学的活性を有するインスリン様部分(インスリン分子のフラグメントを包含)を含んで成る。
【0072】
更に別の面において、本発明は、1型糖尿病または2型糖尿病の患者を治療する方法を包含し、この方法は、前記患者に肝細胞を標的にする組成物を有効量で投与することを含んで成る。
【0073】
別の面では、前記投与の経路を経口、非経口、皮下、肺および口腔から成る群から選択する。
【0074】
更に別の面における前記投与の経路は経口または皮下である。
【0075】
更に別の面において、本発明は、1型糖尿病または2型糖尿病の患者を治療する方法を包含し、この方法は、前記患者に肝細胞を標的にする組成物を有効量で投与することを含んで成り、ここで、インスリンは組換え型ヒトインスリンイソフェンおよび組換え型ヒトインスリンイソフェンではない少なくとも1種のインスリンを含んで成る。
【0076】
別の面において、前記組換え型ヒトインスリンイソフェンではない少なくとも1種のインスリンは、インスリンの生物学的活性を有するインスリン様部分(インスリン分子のフラグメントを包含)を含んで成る。
【0077】
1つの面において、本発明は、哺乳動物における1型または2型糖尿病を治療する時に用いるに適したキットを包含し、このキットは、生理学的緩衝溶液、アプリケーター、使用説明資料および水に不溶な標的分子錯体[この錯体は、多数の連結した個々の単位および負電荷を有する脂質構築物マトリクスを含んで成り、前記複数の連結した個々の単位は、遷移元素、内部遷移元素、遷移元素の同胞元素および前記元素のいずれかの混合物から成る群から選択される橋かけ成分および錯体形成成分を含んで成るが、但し前記遷移元素がクロムの時にはクロム標的分子錯体が生じることを条件とし、ここで、前記複数の連結した個々の単位は前記脂質構築物マトリクスと一緒になっている]を含んで成る。
【0078】
別の面における前記キットは、更に、少なくとも1種のインスリンも含有して成り、ここで、前記インスリンは電荷を有する標的分子錯体と合併している。
発明の詳細な説明
本発明は肝細胞を標的する製薬学的組成物を包含し、ここでは、インスリンを構築物の中で水に不溶な標的分子錯体と合併させておき、そして前記組成物が患者の肝臓の中の肝細胞を標的にするようにすることで、糖尿病を取り扱う有効な手段を提供するものである。
【0079】
本発明は、インスリンと両親媒性脂質と伸張両親媒性脂質(受容体結合分子)を含んで成る脂質構築物を包含する。前記伸張両親媒性脂質は近位、中位および遠位部分を含んで成る。前記近位部分が前記伸張脂質分子を本構築物とつなげており、前記遠位部分によって本構築物が肝細胞が提示する受容体を標的にし、そして前記中位部分が前記近位部分と遠位部分をつなげている。
【0080】
脂質構築物は球形の脂質および燐脂質粒子であり、この粒子の中で個々の脂質分子が協調的に相互作用することで二極性脂質膜を構成しており、その膜が媒体(この中で前記膜が形成される)の一部を封じ込めかつ孤立させる。本脂質構築物はインスリンを肝臓の中の肝細胞に送達するようにそれを標的にする能力を有しかつインスリンを持続的に放出することで糖尿病をより良好に制御する能力を有する。
【0081】
本発明は、また、肝細胞を標的にする製薬学的組成物を包含し、この組成物は、遊離インスリンおよび水に不溶な標的分子錯体[患者の肝臓の中の肝細胞を標的にする]と合併しているインスリンを組み合わせて有することで、血糖値管理の有効な手段を与えるものである。いろいろな形態のインスリンの混合物を標的分子錯体と合併させてインスリン分子のユニークな混合物を生じさせておき、それらのインスリンを肝細胞を標的とする脂質構築物の中で一緒にすると、付加的治療利点が達成される。本発明の組成物は、糖尿病にかかっている動物を治療する目的で、いろいろな経路で投与可能であり、そのような経路には皮下または経口が含まれる。
【0082】
本発明は、更に、インスリンと両親媒性脂質と伸張両親媒性脂質を含んで成る脂質構築物を製造する方法も提供する。前記伸張両親媒性脂質分子は近位、中位および遠位部分を
含んで成る。前記近位部分が前記伸張脂質を本構築物とつなげている。前記遠位部分によって本構築物が肝細胞が提示する受容体を標的にし、そして前記中位部分が前記近位部分と遠位部分をつなげている。
【0083】
本発明は、また、水に不溶な標的分子錯体と合併しているインスリンと遊離インスリンを脂質構築物(前記錯体が肝細胞に向かうようにそれへの送達を標的にする)の中に含んで成る組成物を製造する方法も提供する。前記標的分子錯体は金属錯体によって生じたある構造を有する多数の連結した個々の単位を含有する脂質構築物マトリクスを含んで成る。
【0084】
加うるに、本発明は、糖尿病にかかっている人を治療する方法も提供し、ここでは、インスリンと両親媒性脂質と伸張両親媒性脂質(肝細胞に送達するようにそれを標的にする)を含んで成る脂質構築物を有効量で投与することで治療を施す。
【0085】
本発明は、また、糖尿病にかかっている人を治療する方法も提供し、ここでは、インスリンと両親媒性脂質と伸張両親媒性脂質と水に不溶な標的分子錯体(肝細胞に送達するようにそれを標的にする)を含んで成る脂質構築物を有効量で投与することで治療を施す。
【0086】
本発明は、また、インスリンが示す等電点が変化するように極性有機化合物もしくは化合物混合物と結合させておいたインスリンを用いて患者を治療する方法も提供する。そのように等電点を変化させると、その組成物を用いて治療を受けさせる患者の体内へのインスリンの放出が変化する。
【0087】
加うるに、本発明は、1型および2型糖尿病にかかっている人における血糖値を管理する方法も提供し、ここでは、遊離インスリンおよび水に不溶な標的分子錯体[肝細胞に送達されるようにそれを標的にする]と合併しているインスリンを組み合わせて有する肝細胞を標的にする製薬学的組成物を有効量で投与することで管理を実施する。そのように水に不溶な標的分子錯体と合併しているインスリンを遊離インスリンと組み合わせると、前記2形態のインスリンの間の動的平衡プロセスが生体内で生じ、これは、遊離インスリンが指定期間の間にホルモン作用の受容体部位、例えば糖尿病患者の筋肉および脂肪組織などに向かう移動の制御に役立つ。また、肝細胞を標的にするインスリンは、遊離インスリンが脂質構築物から放出される時にインスリンの新しい薬物動態プロファイルが導入されるように遊離インスリンとは異なる指定期間に渡って糖尿病患者の肝臓に送達される。加うるに、脂質構築物と合併しているインスリンの一部は肝臓を標的にする。そのような製品の新規な薬物動態プロファイルによって、抹消組織に長期に作用する基本的インスリンがもたらされるばかりでなくまた食事中の肝臓による糖貯蔵管理のための食事中の肝インスリン刺激ももたらされる。遊離インスリンが投与部位から放出されて体全体に渡って分布する。水に不溶な標的分子錯体と合併しているインスリンは肝臓に送達され、その中で前記錯体から経時的に放出される。その標的分子錯体と合併しているインスリンが放出される速度は遊離インスリンが投与部位から放出される速度とは異なる。そのようにインスリン送達の放出速度が異なることと、脂質構築物と合併しているインスリンが肝臓を標的にして送達されることとが組み合わさって、1型および2型糖尿病にかかっている患者の血糖濃度を正常にする。肝細胞を標的にする組成物にまた他の種類のインスリンまたは他の種類のインスリンの組み合わせを含有させることも可能である。
【0088】
定義
特に明記しない限り、本明細書で用いる技術的および科学的用語の全部に一般に本発明が属する技術分野の通常の技術者が通常理解する意味と同じ意味を持たせる。本明細書および有機化学および蛋白質化学における実験室手順で用いる命名法は一般に本技術分野で良く知られていて通常用いられる用語である。
【0089】
本明細書では、品詞“a”および“an”をその品詞の文法的目的物の1個または2個以上(即ち少なくとも1個)を指す目的で用いる。例として、“元素”は、1個の元素または2個以上の元素を意味する。
【0090】
用語“有効成分”は組換え型ヒトインスリンイソフェン、組換え型ヒトレギュラーイソフェンおよび他のインスリンを指す。
【0091】
アミノ酸を本明細書で用いる場合、それらを以下の表に示すようにフルネーム、それに相当する3文字コードばかりでなく1文字コードでも示す:
【0092】
【表1】

【0093】
用語“低級”は、それで記述する基が炭素原子を1から6個含有することを意味する。
【0094】
用語“アルキル”は、それ自身または別の置換基の一部として、特に明記しない限り、炭素原子を表示する数で有する直鎖、分枝または環式鎖炭化水素を意味し(即ちC−Cは1から6個の炭素を意味し)、直鎖、分枝鎖または環式基を包含する。例にはメチル,エチル,プロピル,イソプロピル,ブチル,イソブチル,t−ブチル,ペンチル,ネオペンチル,ヘキシル,シクロヘキシルおよびシクロプロピルメチルが含まれる。(C−C)アルキル、特にエチル、メチルおよびイソプロピルが最も好適である。
【0095】
用語“アルキレン”は、それ自身または別の置換基の一部として、特に明記しない限り、置換部位を2個有する直鎖、分枝または環式鎖炭化水素、例えばメチレン(−CH−),エチレン(−CHCH−),イソプロピレン(−CH(CH)=CH)などを意味する。
【0096】
用語“アリール”は、これを単独または他の用語と組み合わせて用い、特に明記しない限り、飽和もしくは不飽和の環を1個以上(典型的には環を1、2または3個)含有する環式炭素環構造を意味し、ここで、前記環はペンダント様式で一緒に結合していてもよい(例えばビフェニル)か、或は縮合していてもよい(例えばナフタレン)。例にはフェニル;アントラシルおよびナフチルが含まれる。前記構造は置換部位を1個以上持ち得、その部位に官能基、例えばアルコール,アルコキシ,アミド,アミノ,シアニド,ハロゲンおよびニトロなどが結合する。
【0097】
用語“アリール低級アルキル”は、アリール基が低級アルキレン基と結合している官能基、例えば−CHCH−フェニルなどを意味する。
【0098】
用語“アルコキシ”は、これを単独または他の用語と組み合わせて用い、特に明記しな
い限り、酸素原子を通して分子の残りと連結していて炭素原子を表示する数で有するアルキル基または置換基、例えばヒドロキシル基などを含有するアルキル、例えば−OCHOH−,−OCHOH,メトキシ(−OCH),エトキシ(−OCHCH),1−プロポキシ(−OCHCHCH),2−プロポキシ(イソプロポキシ),ブトキシ(−OCHCHCHCH),ペントキシ(−OCHCHCHCHCH)および高級同族体および異性体などを意味する。
【0099】
用語“アシル”は、一般式−C(=O)−R[式中、-Rは水素,ヒドロカルビル,アミノまたはアルコキシである]で表される官能基を意味する。例にはアセチル(−C(=O)CH),プロピオニル(−C(=O)CHCH),ベンゾイル(−C(=O)C),フェニルアセチル(−C(=O)CH),カルボエトキシ(−COCHCH)およびジメチルカルバモイル(−C(=O)N(CH)が含まれる。
【0100】
用語“ハロ”または“ハロゲン”は、それ自身または別の置換基の一部として、特に明記しない限り、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素原子を意味する。
【0101】
用語“複素環”または“ヘテロシクリル”または“複素環式”は、それ自身または別の置換基の一部として、特に明記しない限り、炭素原子およびN,OおよびSを包含する群から選択されるヘテロ原子を少なくとも1個含有しかつ前記窒素および硫黄ヘテロ原子が場合により酸化されていてもよくかつ前記窒素原子が場合により第四級化されていてもよい安定な単環式もしくは多環式の置換もしくは非置換複素環式環系を意味する。前記複素環系は、特に明記しない限り、安定な構造物がもたらされるように如何なるヘテロ原子または炭素原子の所で結合していてもよい。例にはピロール,イミダゾール,ベンゾイミダゾール,フタレイン,ピリデニル,ピラニル,フラニル,チアゾール,チオフェン,オキサゾール,ピラゾール,3−ピロリン,ピロリデン,ピリミジン,プリン,キノリン,イソキノリン,カルバゾールなどが含まれる。
【0102】
用語“クロム標的分子錯体”は、数多くの個々の単位を含んで成る錯体を指し、ここで、各単位は、多価分子が寄与するリガンド、例えば数多くのN−(2,6−ジイソプロピルフェニルカルバモイルメチル)イミノジ酢酸分子に由来するリガンドなどを6個以下の数で受け入れ得るクロム(Cr)原子を含んで成る。その個々の単位が互いに連結して三次元配列で連結している複雑な高分子構造を形成している。その高分子錯体は水に不溶であるが、有機溶媒には可溶である。
【0103】
用語“脂質構築物”は、脂質および/または燐脂質粒子を指し、この中の個々の脂質分子が協調して相互作用することで二極性脂質膜が生じ、その膜が媒体(本構築物が存在する)の一部を封じ込めかつ孤立させる。
【0104】
用語“両親媒性脂質分子”は、極性末端部と非極性末端部を有する脂質分子を意味する。
【0105】
用語“伸張両親媒性脂質”は、それが脂質構造物の一部である時に前記脂質構造物からこの構造物を取り巻く媒体の中に伸びそして受容体と結合または相互作用し得る構造を有する両親媒性分子を意味する。
【0106】
“錯化剤”は、選択した金属橋かけ剤と一緒に高分子錯体を形成する化合物、例えばクロム、ジルコニウムなどの塩であり、これは当該高分子錯体が実質的に水に不溶でありかつ有機溶媒に可溶であると言った高分子特性を示す。
【0107】
“水性媒体”は、水、または緩衝剤または塩が入っている水を意味する。
【0108】
“実質的に可溶”は、結果としてもたらされる高分子クロム標的分子錯体または他の金属標的錯体(これらは錯化剤から生じた組成物の中で結晶性または非晶質であり得る)などの如き材料が室温の水に不溶であると言った特性を示すことを意味する。そのような高分子錯体またはそれの解離形態が脂質構築物マトリクスと合併すると、インスリンを温血宿主の肝臓の中の肝細胞に運んで送達する機能を果たす輸送剤が形成される。
【0109】
“実質的に不溶”は、高分子錯体、例えば高分子クロム標的分子錯体または他の金属標的錯体などが室温の水に不溶であると言った特性を示すことを意味する。そのような高分子錯体(これは組成物中で結晶性、非晶質またはそれに解離した形態であり得る)が脂質構築物と合併すると、インスリンを肝臓の中の肝細胞に運んで送達する輸送剤が形成される。
【0110】
用語“と合併”を用いる場合、これは言及する材料が当該脂質構築物マトリクスの表面の中または表面上またはその中に取り込まれることを意味する。
【0111】
用語“インスリン”は、天然もしくは組換え形態のインスリンおよび前記インスリンの誘導体を指す。インスリンの例には、これらに限定するものでないが、インスリンリスプロ(lispro)、インスリンアスパルト(aspart)、レギュラーインスリン、インスリングラルギン(glargine)、インスリン亜鉛、持続型ヒトインスリン亜鉛、イソフェンインスリン、ヒト緩衝レギュラーインスリン、インスリングルリシン(glulisine)、組換え型ヒトレギュラーインスリンおよび組換え型ヒトインスリンイソフェンが含まれる。また、動物のインスリン、例えばウシもしくはウマインスリンなども含まれる。
【0112】
用語“遊離インスリン”は、標的分子錯体と合併していないインスリンを指す。
【0113】
用語“グラルギン”および“グラルギンインスリン”は、両方とも、A21位の所のアミノ酸であるアスパラギンがグリシンに置き換わっておりかつ2個のアルギニンがB鎖のC末端に付加している点でヒトインスリンとは異なる組換え型ヒトインスリン類似物を指す。化学的に、それは21−Gly−30a−L−Arg−30b−L−Arg−ヒトインスリンであり、実験式C2574047278で表され、そして分子量は6063である。グラルギンインスリンの構造式を図11に示す。
【0114】
用語“グラルギン以外のインスリン”は、グラルギンインスリンではない天然もしくは組換え型いずれかのインスリンの全部を指す。その用語には、インスリンの生物学的活性を有するインスリン様部分(インスリン分子のフラグメントを包含)が含まれる。
【0115】
用語“組換え型ヒトインスリンイソフェン”は、プロタミンによる処理を受けさせておいたヒトインスリンを指す。組換え型ヒトインスリンイソフェンおよびプロタミンの構造式を図12に示す。
【0116】
用語“組換え型ヒトインスリンイソフェンインスリンではない少なくとも1種のインスリン”は、組換え型ヒトインスリンイソフェンではない天然もしくは組換え型いずれかのインスリンの全部を指す。その用語には、インスリンの生物学的活性を有するインスリン様部分(インスリン分子のフラグメントを包含)が含まれる。
【0117】
“HDV”または“肝細胞送達用媒体”は、金属橋かけ剤と錯化剤の組み合わせで作られたある構造を有する多数の連結した個々の単位を含有する脂質構築物マトリクスを含ん
で成る水に不溶な標的分子錯体である。“HDV”はWO99/59545,Targeted Liposomal Drug送達Systemに記述されている。
【0118】
“HDV−グラルギン”は、水に不溶な標的分子錯体[前記錯体は、クロムとN−(2,6−ジイソプロピルフェニルカルバモイルメチル)イミノジ酢酸が連結した多数の個々の単位を含有して成り、それは、金属橋かけ剤と錯化剤の組み合わせによって生じたものである]と合併しているグラルギンインスリンと遊離グラルギンインスリンの混合物および脂質構築物マトリクスを含んで成る肝細胞を標的にする組成物の表示である。
【0119】
“HDV−NPH”は、水に不溶な標的分子錯体[前記錯体は、クロムとN−(2,6−ジイソプロピルフェニルカルバモイルメチル)イミノジ酢酸が連結した多数の個々の単位を含有して成り、それは、金属橋かけ剤と錯化剤の組み合わせによって生じたものである]と合併している組換え型ヒトインスリンイソフェンおよび非フムリンインスリンと遊離組換え型ヒトインスリンイソフェンおよび遊離非フムリンインスリンとの混合物および脂質構築物マトリクスを含んで成る肝細胞を標的にする組成物の表示である。
【0120】
用語“生物学的利用能”は、インスリンが全身循環に到達して作用部位で利用され得る速度および度合の尺度を指す。
【0121】
用語“等電点”は、蛋白質が有する正電荷と負電荷の濃度が等しくそしてその結果として当該蛋白質が正味ゼロ電荷を示す時のpHを指す。蛋白質は、等電点の時、ほとんど全体が双性イオンまたは蛋白質形態間のハイブリッドの形態で存在するであろう。蛋白質は等電点の時に最も低い安定性を示しかつそのpHの時により容易に凝固または沈澱を起こす。しかしながら、蛋白質は等電点で沈澱を起こしても変性を起こさない、と言うのは、その過程は本質的に可逆的であるからである。
【0122】
生物学的または化学的プロセスまたは状態“を改変”または“の改変”の用語を本明細書で用いる場合、これは、その生物学的または化学的プロセスの正常な過程を変化させるか或は前記生物学的または化学的プロセスの状態を変化させて現在の状態とは異なる新しい状態にすることを指す。例えば、ポリペプチドが示す等電点の改変は、そのポリペプチドが示す等電点を高くする変化を伴い得る。別法として、ポリペプチドが示す等電点の改変は、ポリペプチドが示す等電点を低くする変化を伴い得る。
【0123】
“統計学的構造物”は、1つの脂質構築物から別の脂質構築物に移行し得る分子で構成されている構造物を指し、その構造物は、ガウス分布で表され得る複数の粒径で存在する。
【0124】
“多座結合”は、当該脂質構築物内の多数の結合部位、例えば酢酸水素フタル酸セルロース、燐脂質およびインスリンなどを利用する化学的結合プロセスである。そのような結合部位によって水素結合、イオン−双極子および双極子−双極子相互作用が助長され、その場合、個々の分子が協力して働くことで非共有結合を形成し、それが2個以上の分子を結合または連結させる働きをする。
【0125】
“治療”を本明細書で用いる場合、これは患者がかかっている病気、疾患または不利な状態などの症状の頻度を低下させることを意味する。
【0126】
本明細書で用いる如き用語“製薬学的に受け入れられる担体”は、当該有効成分と組み合わせ可能でありかつ組み合わせた後に前記有効成分を被験体に投与する時に使用可能な化学的組成物を意味する。
【0127】
本明細書で用いる如き用語“生理学的に受け入れられる”は、当該生成物を投与すべき被験体にとってその材料が有害ではないことを意味する。
【0128】
発明の説明−組成物
脂質構築物
インスリンと両親媒性脂質と伸張両親媒性脂質を含んで成るインスリン結合脂質構築物の図を図1に示す。前記伸張両親媒性脂質(また受容体結合分子としても認識する)は、近位、中位および遠位部分を含有して成り、ここで、前記近位部分が前記伸張脂質分子を当該構築物と連結させており、前記遠位部分によって当該構築物が肝細胞が提示する受容体を標的にし、そして前記中位部分が前記近位部分と遠位部分をつなげている。適切な両親媒性脂質は、一般に、極性頭基と非極性尾基を含有して成っていて、それらが互いにグリセロール−バックボーンを通して結合している。
【0129】
適切な両親媒性脂質には、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン,1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン,1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン,コレステロール,コレステロールオレエート,ジセチルホスフェート,1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスフェート,1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスフェート,1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスフェート,1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−(Cap ビオチニル),1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3− ホスホエタノールアミン,1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−(スクシニル),1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−rac−(1−グリセロール)](ナトリウム塩),2,3−ジアセトキシプロピル 2−(5−((3aS,6aR)−2−オキソヘキサヒドロ−1H−チエノ[3,4−d]イミダゾール−4−イル)ペンタンアミド)エチル燐酸トリエチルアンモニウムおよび前記脂質または前記脂質の適切な誘導体のいずれかの混合物が含まれる。
【0130】
1つの態様における両親媒性脂質分子には、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン,コレステロール,ジセチルホスフェート,1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−(Cap ビオチニル);1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3− ホスホエタノールアミン,1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−(スクシニル),1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−rac−(1−グリセロール)](ナトリウム塩)、2,3−ジアセトキシプロピル 2−(5−((3aS,6aR)−2−オキソヘキサヒドロ−1H−チエノ[3,4−d]イミダゾール−4−イル)ペンタンアミド)エチル燐酸トリエチルアンモニウムおよび前記脂質のいずれかの混合物が含まれる。
【0131】
前記伸張両親媒性脂質分子(また受容体結合分子としても認識)は、近位、中位および遠位部分を含んで成る。前記近位部分が前記伸張脂質分子を当該構築物と連結させており、そして前記遠位部分によって当該構築物が肝細胞が提示する受容体を標的にする。前記近位部分と遠位部分は中位部分を通して連結している。いろいろな受容体結合分子の組成を以下に記述する。脂質構築物を肝細胞の中の受容体と結合させる目的で、以下に示す群の中の1つ以上から生じさせた肝細胞受容体結合分子を前記脂質構築物の中に存在させることができる。
【0132】
1つの群の肝細胞受容体結合分子は末端のビオチンもしくはイミノビオチン部分ばかりでなくこれらの誘導体を含んで成る。ビオチン,イミノビオチン,カルボキシビオチンおよびビオシチンの構造式を表1に示す。
【0133】
【表2】

【0134】
これらの分子をいろいろな技術を用いて燐脂質分子と結合させることで、脂質構築物の中に挿入することが可能な脂質つなぎ止め分子を生じさせることができる。そのような肝細胞受容体結合分子は、当該脂質構築物の近位に位置するつなぎ止め部分を含んで成る。そのつなぎ止め部分は2本の親油性炭化水素鎖を含有して成り、それらは当該脂質構築物の中の他の親油性炭化水素鎖または燐脂質分子と合併または結合し得る。
【0135】
好適な態様における2番目の群の肝細胞受容体結合分子は、当該脂質構築物から遠位に位置する末端のビオチンもしくはイミノビオチン部分を含んで成る。そのような化合物の構造を表2に示す。
【0136】
【表3】

【0137】
ビオチンおよびイミノビオチンは両方ともが中程度に親油性の二環式環構造を含有し、それはその二環式環上の4−炭素位の所で5炭素吉草酸鎖と結合している。1つの態様では、L−リシンであるアミノ酸を吉草酸のC−末端カルボキシル官能基と共有結合させることができるが、それは、吉草酸が有するカルボキシル基をL−リシンのN−末端α−アミノ基またはε−アミノ基のいずれかと反応させることで実施可能である。そのような連成反応をカルボジイミド接合方法を用いて実施し、その結果として、図2に示すように、L−リシンとビオチンの間にアミド結合を生じさせる。
【0138】
3番目の群の肝細胞受容体結合分子にはイミノビオチン,カルボキシビオチンおよびビオシチンが含まれ、その場合には、吉草酸の側鎖をアミノ酸であるL−リシンのα−アミノ基またはε−アミノ基のいずれかとアミド結合で結合させる。好適な態様では、図3に示すように、イミノビオシチン部分を生じさせる時にイミノビオチンを用いる。図4に示すように、肝細胞受容体結合分子合成中にイミノビオシチンのα−アミノ基を活性エステルであるベンゾイルチオアセチルトリグリシンスルホ−N−ヒドロキシスクシニミド(BTA−3gly−スルホ−NHS)と反応させることで活性肝細胞結合分子(BTA−3gly−イミノビオシチン)を生じさせることができる。BTA−3gly−イミノビオシチンは、最終的に次の連成反応で使用可能な活性求核性スルフヒドラール官能基を発現する分子スペーサーとして機能する。そのスペーサーは当該脂質構築物に関して中位に位
置し、末端のイミノビオシチン部分が前記脂質構築物の表面から約30オングストローム伸びることを可能にし、それによってイミノビオシチンの配向が最適になりかつ制限されなくなることで、肝細胞受容体と結合することが可能になる。そのような中位スペーサーには、末端のビオチン部分が示す立体化学的配向を補正する他の誘導体も含まれ得る。その中位スペーサーの主機能は、近位部分と遠位部分を線形配列で適切に共有結合させる機能である。
【0139】
前記肝細胞受容体結合分子のBTA−3gly−スルホ−NHS部分の合成はいろいろな手段を用いて実施可能であり、次の段階で、それらをビオシチンまたはイミノビオシチンと結合させることができる。最初の段階は、塩化ベンゾイルをチオ酢酸に求核付加で付加させて活性チオ官能性用の保護基を生じさせることを包含する。その反応の生成物は図5に示すようにベンゾイルチオ酢酸錯体と塩酸である。その合成の追加的段階は、図5に示すように、ベンゾイルチオ酢酸とスルホ−N−ヒドロキシスクシニミドの反応をジシクロヘキシルカルボジイミドまたは1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドを連成剤として用いて起こさせることでベンゾイルチオアセチルスルホ−N−ヒドロキシスクシニミド(BTA−スルホ−NHS)を生じさせることを伴う。次に、ベンゾイルチオアセチルスルホ−N−ヒドロキシスクシニミドをアミノ酸重合体(グリシン−グリシン−グリシン)と反応させる。図5に示すように、トリグリシンのα−アミノ基による求核攻撃によってベンゾイルチオアセチルトリグリシン(BTA−3gly)が生じると同時に、スルホ−N−ヒドロキシスクシニミド脱離基が水性媒体に溶解する。図6に示すように、ベンゾイルチオアセチルトリグリシンを再びジシクロヘキシルカルボジイミドまたは1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドと反応させることでスルホ−N−ヒドロキシスクシニミドとのエステル結合を生じさせる。次に、その活性化されたベンゾイルチオアセチルトリグリシン(BTA−3gly−スルホ−NHS)のスルホ−N−ヒドロキシスクシニミドエステルをビオシチンまたはイミノビオシチンのL−リシン官能性のα−アミノ基と反応させることで肝細胞受容体結合部分、即ち図7に示すベンゾイルチオアセチルトリグリシンイミノビオシチン(BTA−3gly−イミノビオシチン)の伸張両親媒性脂質分子を生じさせる。
【0140】
肝細胞受容体結合分子を合成する時の2番目の主要な連成反応を説明するが、この反応では、ベンゾイルチオアセチルトリグリシンイミノビオシチンをチオエーテル結合を通してN−パラ−マレイミドフェニルブチレートホスファチジルエタノールアミン、即ち好適な燐脂質つなぎ止め分子と共有結合させる。その反応の結果として、末端のイミノビオシチン環と脂質構築物の間の正確な分子空間が分子中にもたらされる。伸張両親媒性脂質分子として機能する肝細胞受容体結合分子を生じさせるに適した反応スキームの全体を図8に示す。ベンゾイルチオアセチルトリグリシンイミノビオシチンとN−パラ−マレイミドフェニルブチレートホスファチジルエタノールアミンを反応させてチオエーテル結合を生じさせる前に加熱を実施してベンゾイル保護基を除去しておくことで遊離のスルフヒドラール官能性を露出させる。この反応を前記スルフヒドラールが酸化されてジスルフィドになる度合が最小限になるように酸素の無い環境下で実施すべきである。さらなる酸化が起こるとスルホン、スルホキサイド、スルフェン酸またはスルホン酸誘導体が生じる可能性がある。
【0141】
1つの態様における前記分子のつなぎ止め部分は、この分子の脂質部分を構成する1対のアシル炭化水素鎖を含有する。前記分子のその部分は当該脂質構築物の脂質領域の中で非共有結合している。1つの態様では、N−パラ−マレイミドフェニルブチレートホスファチジルエタノールアミンを用いてつなぎ止め部分を生じさせる。他のつなぎ止め分子を用いることも可能である。1つの態様におけるつなぎ止め分子には、チオ−コレステロール,コレステロールオレエート,ジセチルホスフェート;1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3− ホスホエタノールアミン,1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ
−3−ホスホエタノールアミン−N−(スクシニル),1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−rac−(1−グリセロール)](ナトリウム塩)およびこれらの混合物が含まれ得る。完全に生じさせた脂質つなぎ止めおよび肝細胞受容体結合分子(LA−HRBMと表示する)の分子構造全体を図8に示す。
【0142】
4番目の群の肝細胞受容体結合分子には、水溶性部分と水に不溶な部分の両方を有する両親媒性有機分子が含まれる。その水に不溶な部分を中位または連結部分と配位または生体接合化学反応で反応させると同時に、前記水に不溶な部分が肝臓の中の肝細胞結合受容体と結合するようにする。そのような分子は、非極性誘導体化ベンゼン環構造、例えば2,6−ジイソプロピルベンゼン誘導体などまたは親油性複素二環式環構造のいずれかで構成されている遠位成分を含有する。その肝細胞受容体結合分子は全体として固定または過渡的電荷(正または負のいずれか)またはそれらのいろいろな組み合わせを有する。そのような分子は、遠位部分の末端部から約13.5オングストロームに相当するか或はそれ未満であるがそれ以上ではない所に位置するカルボニル基を少なくとも1個含有しかつ第二級アミンとカルボニル基を含有するカルバモイル部分を少なくとも1個含有する。カルバモイル部分を1個以上存在させると有機分子の分子安定性が向上する。そのような分子の中に第二級アミンを多数存在させることも可能である。そのような第二級アミンは1対の非共有電子を含有することで、当該構築物の中の他の分子とイオン−双極子および双極子−双極子結合相互作用を起こし得る。そのようなアミンは分子安定性を向上させかつ遠位部分と相互作用する負電荷をある程度生じさせることで、肝細胞受容体との結合および特異性を向上させる。この群の受容体結合分子の例は、ポリクロム−ポリ(ビス)−[N−(2,6−(ジイソプロピルフェニル)カルバモイルメチル)イミノジ酢酸]である。1つの態様では、クロムIIIを肝細胞受容体結合分子の中位に位置させる。そのような肝細胞特異的結合分子の近位部分は、その分子を当該脂質構築物の中に挿入させた後にそれの中で結合させることを可能にする疎水性および/または非極性構造を含有する。その中位および近位部分によって、また、肝細胞受容体結合分子の遠位部分の立体化学配向も補正される。
【0143】
本脂質構築物の構造および特性は当該脂質の構造および脂質間の相互作用に支配される。前記脂質の構造は主に共有結合で支配される。共有結合は本脂質構築物の個々の成分を構成する分子の構造的一体性を保持するに必要な分子結合力である。本脂質構築物は脂質間の非共有相互作用によって三次元形態に維持される。
【0144】
非共有結合は、一般的意味で、イオン−双極子または誘発されたイオン−双極子結合、および脂質の頭部に位置するいろいろな極性基と会合している水素結合で表され得る。疎水結合およびファンデルワールス相互作用は、脂質のアシル鎖の間の誘発された双極子会合によって生じ得る。そのような結合機構は現実に過渡的であり、その結果として、結合形成と結合破壊過程がフェムト秒未満の間隔で起こる。例えばファンデルワールス相互作用は、双極子モーメントが一時的に変化することでもたらされ、それは、1つの原子または分子が有する軌道の電子が1つの側に短時間シフトすることで生じ、それによって、隣接する原子または分子にも同様なシフトが生じる。プロトンはδ電荷を取りそして単一の電子はδ- 電荷を取ることで、双極子が生じる。双極子相互作用は、両親媒性脂質分子が有する炭化水素アシル鎖の間で大きな頻度で起こる。個々の双極子が生じた後、それらはメチレン(−CH−)官能性を含有する近隣原子の中に新しい双極子の形成を一時的に誘発する。多数の過渡的に誘発された双極子相互作用が本脂質構築物全体に渡ってアシル脂質鎖の間に生じる。そのように誘発された双極子相互作用が持続する時間はフェムト秒(1x10−15秒)の何分かの1のみであるが、官能性が集合的に働くと強力な力を及ぼす。そのような相互作用は絶えず変化しかつそれの力は共有結合の約1/20である。それにも拘らず、それらは安定な共有結合分子間の過渡的結合に責任を負っており、それによって、本構築物の三次元統計学的構造が決まりかつ本脂質構築物の中の分子の立
体特異的分子配向が決まる。
【0145】
そのように誘発された双極子相互作用の結果として構築物間で脂質成分の交換が起こることで、本脂質構築物の構造が維持される。本構築物の個々の成分の組成は固定されているが、脂質構築物の個々の成分は構築物間の交換反応を受ける。そのような交換は、最初、脂質成分が脂質構築物から離れる時のゼロ次速度過程で支配される。その脂質成分が本脂質構築物から放出された後、それは近隣の脂質構築物によって再捕捉され得る。その放出された成分の再捕捉は二次反応速度過程で支配され、それは、その放出された成分がこの成分を捕捉する構築物の回りに存在する水性媒体中で示す濃度およびその放出された成分を捕捉する脂質構築物の濃度の影響を受ける。
【0146】
伸張両親媒性脂質の例は下記であり、それらを表3に個々の識別に加えて化学名と一緒に示す:N−ヒドロキシスクシニミド(NHS)ビオチン[1];スルホ−NHS−ビオチン[2];N−ヒドロキシスクシニミド長鎖ビオチン[3],スルホ−N−ヒドロキシスクシニミド長鎖ビオチン[4];D−ビオチン[5];ビオシチン[6];スルホ−N−ヒドロキシスクシニミド−S−S−ビオチン[7];ビオチン−BMCC[8];ビオチン−HPDP[9];ヨードアセチル−LC−ビオチン[10];ビオチン−ヒドラジド[11];ビオチン−LC−ヒドラジド[12];ビオシチンヒドラジド[13];ビオチンカダベリン[14];カルボキシビオチン[15];フォトビオチン[16];ρ−アミノベンゾイルビオシチンのトリフルオロ酢酸塩[17];ρ−ジアゾベンゾイルビオシチン[18];ビオチン DHPE[19];ビオチン−X−DHPE[20];12−((ビオチニル)アミノ)ドデカン酸[21];12−((ビオチニル)アミノ)ドデカン酸 スクシニミジル エステル[22];S−ビオチニル ホモシステイン[23];ビオシチンX[24];ビオシチン x−ヒドラジド[25];ビオチンエチレンジアミン[26];ビオチン−XL[27];ビオチン−X−エチレンジアミン[28];ビオチン−XX−ヒドラジド[29];ビオチン−XX−SE[30];ビオチン−XX,SSE[31];ビオチン−X−カダベリン[32];α−(t−BOC)ビオシチン[33];N−(ビオチニル)−N’−(ヨードアセチル)エチレンジアミン[34];DNP−X−ビオシチンX−SE[35];ビオチン−X−ヒドラジド[36];塩酸ノルビオチンアミン[37];3−(N−マレイミジルプロピオニル)ビオシチン[38];ARP[39];ビオチン−l−スルホキサイド[40];ビオチンのメチルエステル[41];ビオチン−マレイミド[42];ビオチン−ポリ(エチレングリコール)アミン[43];(+)ビオチン 4−アミノ安息香酸ナトリウム塩[44];ビオチン 2−N−アセチルアミノ−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシド[45];ビオチン−α−D−N−アセチルニューラミニド[46];ビオチン−α−L−フコシド[47];ビオチン ラクト−N−ビオシド[48];ビオチン-ルイス−A 三糖[49];ビオチン-ルイス−Y 四糖[50];ビオチン−α−D−マンノピラノシド[51];ビオチン 6−O−ホスホ−α−D−マンノピラノシド[52];and ポリクロム−ポリ(ビス)−[N−(2,6−(ジイソプロピルフェニル)カルバモイル メチル)イミノ]ジ酢酸[53]。
【0147】
【表4】

【0148】
【表5】

【0149】
【表6】

【0150】
【表7】

【0151】
【表8】

【0152】
【表9】

【0153】
【表10】

【0154】
【表11】

【0155】
【表12】

【0156】
【表13】

【0157】
【表14】

【0158】
【表15】

【0159】
【表16】

【0160】
【表17】

【0161】
【表18】

【0162】
【表19】

【0163】
【表20】

【0164】
【表21】

【0165】
【表22】

【0166】
1つの態様では、酢酸水素フタル酸セルロース重合体を本脂質構築物の中に取り込ませて、それをインスリン分子上の親水性官能基と結合させることでインスリンを加水分解による劣化から保護することができる。酢酸水素フタル酸セルロースは、重合体配置でベー
タ結合(1→4)しているグルコース分子を2個含有して成り、その重合体が有するヒドロキシル基上の水素原子の数個がアセチル官能性に置き換わっている(メチル基がカルボニルの炭素と結合している)か或はフタレート基(ベンゼン環がベンゼン環の1番目および2番目の位置の所に2個のカルボキシル基を有することで表される)に置き換わっている。酢酸水素フタル酸セルロース重合体の構造式を図9に示す。酢酸セルロース分子との共有エステル結合に関与しているカルボキシル基はフタレート環構造に存在するカルボキシル基の中の1個のみである。もう一方のカルボキシル基(カルボニルの炭素とヒドロキシル官能性を含有する)はインスリン上に存在していて隣接して位置する負帯電および正帯電双極子およびいろいろな脂質分子との水素結合に参与している。
【0167】
1つの態様において、酢酸水素フタル酸セルロース重合体は1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリンホスフェートおよびジセチルホスフェート分子とのイオン−双極子結合を通して脂質と相互作用する。そのようなイオン−双極子結合は、セルロースが有するヒドロキシル基上のδ水素と燐脂質分子が有するホスフェート部分上の負に帯電している酸素原子の間に生じる。そのようなイオン−双極子相互作用で最も大きな役割を果たす官能基は、燐脂質分子が有するホスフェート基上の負に帯電している酸素原子、インスリン分子が有するヒドロキシル基上の水素原子およびアミド結合上の水素原子である。負に帯電している官能基はイオン−双極子相互作用の部位および酢酸水素フタル酸セルロース上の個々のヒドロキシル基およびカルボキシル官能性のヒドロキシル基上のδ水素原子との反応部位を形成する。イオン−双極子は、ホスホコリン官能上の正に帯電している第四級アミンと酢酸水素フタル酸セルロースおよびインスリン上に存在するδ-カルボニル酸素の間にも生じ得る。インスリンの中の分枝親水性構造を有する糖分子は水素結合およびイオン−双極子相互作用に参与し得る。
【0168】
重合体の分子形態および大きさ(適切な分子量は15,000以上である)によって、酢酸水素フタル酸セルロースは親水性頭基領域の中で本脂質構築物の個々の燐脂質分子を覆うことができる。そのような被覆によって、本脂質構築物の中のインスリンが胃の酸性環境から保護される。酢酸水素フタル酸セルロースを本脂質構築物の中の分子の表面と結合させることを可能にする方法はいくつか存在する。酢酸水素フタル酸セルロースを本脂質構築物の表面と結合させる好適な手段は、インスリン分子の尾に高分子量セルロース種を結合させることで本脂質構築物の表面から突き出る糖を与える手段である。それによってインスリンの蛋白質系尾が酵素による加水分解から保護される。
【0169】
伸張両親媒性脂質は、受容体と結合するに適したいろいろな多座結合部位を含んで成る。多座結合を起こさせるには、本明細書で定義するように、酢酸水素フタル酸セルロース重合体が有するカルボニル、カルボキシルおよびヒドロキシル官能基と相互作用し得る多数の可能な結合部位をインスリンの表面におよび付随する糖部分上ばかりでなく本脂質構築物上にも存在させる必要がある。それによって、酢酸水素フタル酸セルロース重合体が本脂質構築物上ばかりでなくまたインスリン分子上にも存在する多数の親水性領域と結合することが可能になり、それによって、本親水性構築物の加水分解保護遮蔽が確立される。このようにして、インスリンおよび本脂質構築物の両方がインスリン投薬形態物を経口投与した後に胃の酸性環境から保護される。酢酸水素フタル酸セルロースは本脂質構築物の中および表面に存在する個々の脂質分子を覆うか或は遮蔽すると同時に胃を通過するが、それでも、本構築物が小腸のアルカリ性領域にまで移行すると、酢酸水素フタル酸セルロースは加水分解によって分解する。酢酸水素フタル酸セルロースが本脂質構築物の分子の表面から取り除かれた後、脂質つなぎ止め−肝細胞受容体結合分子、例えば1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−(Cap ビオチニル)などが露出して、次に受容体との結合で利用されるようになる。インスリンのより高い生物学的利用能の達成を確保するには、そのように酢酸水素フタル酸セルロースでインスリンおよび本脂質構築物を覆う態様が必要である。
【0170】
標的分子錯体
1つの態様における本脂質構築物は、橋かけ成分と錯化剤が錯体を形成することで生じた多数の連結した個々の単位を含んで成る標的分子錯体を含んで成る。そのような橋かけ成分は、錯化剤と一緒に水に不溶な配位錯体を形成し得る金属の水溶性塩である。適切な金属を遷移金属および内部遷移金属または遷移金属の同胞から選択する。そのような金属を選択する源の遷移金属および内部遷移金属は下記である:Sc(スカンジウム),Y(イットリウム),La(ランタン),Ac(アクチニウム),アクチニド系列;Ti(チタン),Zr(ジルコニウム),Hf(ハフニウム),V(バナジウム),Nb(ニオブ),Ta(タンタル),Cr(クロム),Mo(モリブデン),W(タングステン),Mn(マンガン),Tc(テクネチウム),Re(レニウム),Fe(鉄),Co(コバルト),Ni(ニッケル),Ru(ルテニウム),Rh(ロジウム),Pd(パラジウム),Os(オスミウム),Ir(イリジウム)およびPt(白金)。そのような金属を選択することが可能な源の遷移金属同胞は下記である:Cu(銅),Ag(銀),Au(金),Zn(亜鉛),Cd(カドミウム),Hg(水銀),Al(アルミニウム),Ga(ガリウム),In(インジウム),Tl(タリウム),Ge(ゲルマニウム),Sn(錫),Pb(鉛),Sb(アンチモン)およびBi(ビスマス)およびPo(ポロニウム)。橋かけ剤として有用な金属化合物の例には、塩化クロム(III)六水化物;フッ化クロム(III)四水化物;臭化クロム(III)六水化物;クエン酸ジルコニウム(IV)アンモニウム錯体;塩化ジルコニウム(IV);フッ化ジルコニウム(IV)水化物;ヨウ化ジルコニウム(IV);臭化モリブデン(III);塩化モリブデン(III);硫化モリブデン(IV);水化鉄(III);燐酸鉄(III)四水化物,硫酸鉄(III)五水化物などが含まれる。
【0171】
そのような錯化剤は、橋かけ成分と一緒に水に不溶な配位錯体を形成し得る化合物である。適切な錯化剤の系列はいくつか存在する。
【0172】
ある種の錯化剤は式(1)
【化1】

[式中、
は、低級アルキル,アリール,アリール低級アルキルおよび複素環式置換基である]で表されるイミノジ酢酸の系列から選択可能である。
【0173】
式(1)で表される適切な化合物には下記が含まれる:
N−(2,6−ジイソプロピルフェニルカルバモイルメチル)イミノジ酢酸;
N−(2,6−diエチルフェニルカルバモイルメチル)イミノジ酢酸;
N−(2,6−ジメチルフェニルカルバモイルメチル)イミノジ酢酸;
N−(4−イソプロピルフェニルカルバモイルメチル)イミノジ酢酸;
N−(4−ブチルフェニルカルバモイルメチル)イミノジ酢酸;
N−(2,3−ジメチルフェニルカルバモイルメチル)イミノジ酢酸;
N−(2,4−ジメチルフェニルカルバモイルメチル)イミノジ酢酸;
N−(2,5−ジメチルフェニルカルバモイルメチル)イミノジ酢酸;
N−(3,4−ジメチルフェニルカルバモイルメチル)イミノジ酢酸;
N−(3,5−ジメチルフェニルカルバモイルメチル)イミノジ酢酸;
N−(3−ブチルフェニルカルバモイルメチル)イミノジ酢酸;
N−(2−ブチルフェニルカルバモイルメチル)イミノジ酢酸;
N−(4−第三ブチルフェニルカルバモイルメチル)イミノジ酢酸;
N−(3−ブトキシフェニルカルバモイルメチル)イミノジ酢酸;
N−(2−ヘキシルオキシフェニルカルバモイルメチル)イミノジ酢酸;
N−(4−ヘキシルオキシフェニルカルバモイルメチル)イミノジ酢酸;
アミノピロール イミノジ酢酸;
N−(3−ブロモ−2,4,6−トリメチルフェニルカルバモイルメチル)イミノジ酢酸;
ベンゾイミダゾール メチル イミノジ酢酸;
N−(3−シアノ−4,5−ジメチル−2−ピリルカルバモイルメチル)イミノジ酢酸;N−(3−シアノ−4−メチル−5−ベンジル−2−ピリルカルバモイルメチル)イミノジ酢酸;および
N−(3−シアノ−4−メチル−2−ピリルカルバモイルメチル)イミノジ酢酸、および式(2),
【0174】
【化2】

[式中、
およびRは下記である:

H イソ−C
H CHCHSCH
H CH−p−OH
CH CH
CH イソ−C
CH CHCHSCH
CH
CH CH
CH CH−p−OCH
で表される他のN−(3−シアノ−4−メチル−2−ピリルカルバモイルメチル)イミノジ酢酸誘導体。
【0175】
ある種の錯化剤を一般式(3)
【化3】

[式中、
,RおよびRは、互いに独立して、水素,低級アルキル,アリール,アリール低級アルキル,アルコキシ低級アルキルおよび複素環であってもよい]
で表されるイミノ二酸誘導体の系列から選択する。
【0176】
式(3)で表される適切な化合物には、N’−(2−アセチルナフチル)イミノジ酢酸(NAIDA);N’−(2−ナフチルメチル)イミノジ酢酸(NMIDA);イミノジカルボキシメチル−2−ナフチルケトンフタレインコンプレクソン;3(3:7a:12a:トリヒドロキシ−24−ノルコラニル−23−イミノジ酢酸;ベンゾイミダゾールメチルイミノジ酢酸;およびN−(5,プレグネン−3−p−オール−2−オイルカルバモイルメチル)イミノジ酢酸が含まれる。
【0177】
ある種の錯化剤を式(4),
【化4】

[式中、
は、アミノ酸側鎖であり、Rは低級アルキル,アリール,アリール低級アルキルであり、そしてRはピリドキシリデンである]
で表されるアミノ酸の系列から選択する。
【0178】
式(4)で表される適切なアミノ酸は脂肪族アミノ酸であり、これには、これらに限定するものでないが、グリシン,アラニン,バリン,ロイシン,イソロイシン;ヒドロキシアミノ酸(セリンおよびトレオニンを包含);ジカルボキシルアミノ酸およびこれらのアミド(アスパラギン酸,アスパラギン,グルタミン酸,グルタミンを包含);塩基官能を有するアミノ酸(リシン,ヒドロキシリシン,ヒスチジン,アルギニンを包含);芳香族アミノ酸(フェニルアラニン,チロシン,トリプトファン,チロキシンを包含)および硫黄含有アミノ酸(シスチン,メチオニンを包含)が含まれる。
【0179】
ある種の錯化剤をアミノ酸誘導体から選択するが、それには、これらに必ずしも限定するものでないが、(3−アラニン−y−アミノ)酪酸,O−ジアゾアセチルセリン(アザセリン),ホモセリン,オルニチン,シトルリン,ペニシラミンおよびピリドキシリデンクラスの化合物の員が含まれ、それには、これらに限定するものでないが、グルタミン酸ピリドキシリデン;ピリドキシリデンイソロイシン;ピリドキシリデンフェニルアラニン;ピリドキシリデントリプトファン;ピリドキシリデン−5−メチルトリプトファン;ピリドキシリデン−5−ヒドロキシトリプタミン;およびピリドキシリデン−5−ブチルトリプタミンが含まれる。
【0180】
ある種の錯化剤を一般式(6),
【化5】

[式中、
10は水素,低級アルキルまたはアリールであり;R11は低級アルキレンまたはアリ
ール低級アルキルであり;R12およびR13は独立して水素,低級アルキル,アルキル,アリール,アリール低級アルキル,アシル複素環,トルエン,スルホニルまたはトシレートである]
で表されるジアミンの系列から選択する。
【0181】
式(6)で表される数種の適切なジアミンには、これらに限定するものでないが、エチレンジアミン−N,N ジ酢酸;酢酸エチレンジアミン−N,N−ビス(−2−ヒドロキシ5−ブロモフェニル);N’−アセチルエチレンジアミン−N,N ジ酢酸;N’−ベンゾイル エチレンジアミン−N,N ジ酢酸;N’(p−トルエンスルホニル)エチレンジアミン−N,N ジ酢酸;N’−(p−t−ブチルベンゾイル)エチレンジアミン−N,N ジ酢酸;N’−(ベンゼンスルホニル)エチレンジアミン−N,N ジ酢酸;N’−(p−クロロベンゼンスルホニル)エチレンジアミン−N,N ジ酢酸;N’−(p−エチルベンゼンスルホニル エチレンジアミン−N,N ジ酢酸;N’−アシルおよびN’−スルホニル エチレンジアミン−N,N ジ酢酸;N’−(p−n−プロピルベンゼンスルホニル)エチレンジアミン−N,N ジ酢酸;N’−(ナフタレン−2−スルホニル)エチレンジアミン−N,N ジ酢酸;およびN’−(2,5−ジメチルベンゼンスルホニル)エチレンジアミン−N,N ジ酢酸が含まれる。
【0182】
他の適切な錯体形成化合物もしくは錯化剤には、これらに限定するものでないが、ペニシラミン;p−メルカプトイソ酪酸;ジヒドロチオクト酸;6−メルカプトプリン;ケトキサール−ビス(チオセミカルバゾン);肝胆汁性アミン錯体,1−ヒドラジノフタラジン(ヒドララジン);スルホニル尿素;肝胆汁性アミノ酸シッフ塩基錯体;グルタミン酸ピリドキシリデン;ピリドキシリデン イソロイシン;ピリドキシリデン フェニルアラニン;ピリドキシリデン トリプトファン;ピリドキシリデン 5−メチル トリプトファン;ピリドキシリデン−5−ヒドロキシトリプタミン;ピリドキシリデン−5−ブチルトリプタミン;テトラシクリン;7−カルボキシ−p−ヒドロキシキノリン;フェノールフタレイン;青みがかったエオシンI;黄色がかったエオシンI ;ベログラフィン;3−ヒドロキシル−4−ホルミル−ピリデングルタミン酸;アゾ置換イミノジ酢酸;肝胆汁性色素錯体、例えばローズベンガル;コンゴレッド;ブロモスルホフタレイン;ブロモフェノールブルー;トルイジンブルーおよびインドシアニングリーンなど;肝胆汁性コントラスト剤、例えばヨージパミド;およびイオグリカミン酸(ioglycamic acid);胆汁塩、例えばビリルビン;コルギシリオドヒスタミン(cholgycyliodohistamine);およびチロキシン;肝胆汁性チオ錯体、例えばペニシラミン;p−メルカプトイソ酪酸;ジヒドロチオシト酸(dihydrothiocytic
acid);6−メルカプトプリン;およびケトキサール−ビス(チオセミカルバゾン);肝胆汁性アミン錯体、例えば1−ヒドラジノフタラジン(ヒドララジン);およびスルホニル尿素;肝胆汁性アミノシッフ塩基錯体(ピリドキシリデン−5−ヒドロキシトリプタミンおよびピリドキシリデン−5−ブチルトリプタミンを包含);肝胆汁性蛋白質錯体、例えばプロタミン;フェリチン;およびアシアロ−オロソムコイド;およびアシアロ錯体、例えばラクトサミン化アルブミン;免疫グロブリン,G,IgG;およびヘモグロビンが含まれる。
【0183】
橋かけ剤と錯化剤を組み合わせることで生じさせた三次元標的分子錯体がWO 99/59545(これは引用することによって本明細書に組み入れられる)に記述されている。1つの態様における橋かけ剤は、錯化剤、例えばN−(2,6−ジイソプロピルフェニルカルバモイルメチル)イミノジ酢酸などと一緒に配位錯体を形成し得る金属塩、例えば塩化クロム六水化物などである。そのような橋かけ剤と錯化剤を一緒にすることで三次元配列で連結した多数の単位で構成されている錯体を生じさせる。好適な態様では、そのような錯体をクロム(ビス)[N−(2,6−(ジイソプロピルフェニル)カルバモイルメチル)イミノジ酢酸]の多数の単位を一緒に連結させることで構成させる。1つの態様に
おけるクロム標的分子錯体物質は、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリンとジセチルホスフェートとコレステロールを含有する脂質混合物に可溶である。そのような錯体をこの上に記述した群の脂質で構成させた脂質構築物の中に取り込ませる。
【0184】
インスリンが示す等電点の改変
蛋白質が示す等電点は、この蛋白質を用いた治療を受けさせる患者の体の中で前記蛋白質が示す放出および分布に影響を与え得る。蛋白質が示す等電点を変えると、その蛋白質が投与部位から放出される速度が変わりかつ前記蛋白質が示す薬物動態も変わり得る。
【0185】
インスリンが示す等電点を変える1つの方法は、いろいろなアミノ酸を置換または付加させることでそれの分子構造を変える方法である。いろいろな特性を得る目的でインスリンの構造を変えた2つの例はグラルギンインスリンおよびインスリンアスパルトである。そのようなインスリンは両方ともアミノ酸の組成が組換え型ヒトレギュラーインスリンのそれとは異なる。組換え型ヒトレギュラーインスリンが示す等電点は5.30−5.35である。グラルギンインスリンではA21位の所のアスパラギンがグリシンに置き換わっていることに加えて2個のアルギニンがB鎖のC末端の所に付加している。グリシンおよびアスパラギンの等電点はそれぞれ5.97および5.41である。グラルギンインスリンではアスパラギンがグリシンに置き換わっているが、それによって生じる等電点への影響はほとんどか或は全くない。しかしながら、グラルギンインスリンには等電点が10.76の高度に塩基性のアルギニンアミノ酸残基が2個付加しているが、それによって等電点が有意に上昇してpH5.8−6.2になっている。
【0186】
インスリンアスパルトではB−28位の所のプラリンがアスパラギン酸に置き換わっている。アスパラギン酸およびプラリンの等電点はそれぞれ2.97および6.10である。そのように酸性アミノ酸が1個置き換わっているインスリンアスパルトでは、等電点が有意に低い方、即ち酸性度がより高いpHの方にシフトしている。
【0187】
そのような市販インスリンの2例を用いて、置き換わっているアミノ酸の数が比較的少なくてもインスリングラルギンまたはインスリンアスパルトが示す等電点が組換え型ヒトレギュラーインスリンに比べて有意に高くなるか或は低くなるかを示す。インスリンが示す化学的特性が変わるとまた生物学的利用能および薬物動態プロファイルも変わる。生物学的利用能を向上させる目的で構造が変化したインスリンを糖尿病患者に投与すると、そのような新規な薬物動態反応によって新規な治療利益が得られる。
【0188】
インスリンが示す等電点に改変をインスリンが示す主アミノ酸配列の内部分子再構築によってばかりでなくまたインスリンに帯電した有機分子を結合させることでも受けさせることができる。そのような帯電した有機分子をインスリンの表面または構造内に結合させることができる。インスリンが1ml当たり100単位または3.65mg入っている1.0mlのインスリン溶液に高度に塩基性の蛋白質混合物を1.0から1.5mg添加することによって未変性インスリンが示す等電点をpH5.3からpH7.2に変化させることができる。プロタミンがインスリンの等電点を変える目的で使用可能な高度に塩基性の簡単な蛋白質の群の一例である。プロタミンは加水分解によっていろいろな塩基性アミノ酸を生じ、高い窒素含有量を有し、かつ魚の精子の中に核酸と一緒になった状態で天然に存在する。例えば、プロタミンであるサルミン、クルペイン、イリジン、スツリンおよびスコムブリンなどはそれぞれサケ、ニシン、マス、チョウザメおよびサバの精子から単離される。そのような塩基性の蛋白質は、個別または混合物として、インスリンと結合してインスリンの等電点を高くする。
【0189】
インスリンの表面電荷を変える化合物には、ポリリシンの誘導体および他の高度に塩基
性のアミノ酸重合体、例えばポリオルニチン、ポリヒドロキシリシン、ポリアルギニンおよびポリヒスチジンなどまたはこれらの組み合わせが含まれる。他の重合体には、モル比が1:1:1のポリ(arg−pro−thr)(数百から数千の範囲の分子量を有する)、モル比が6:1のポリ(DL−Ala−ポリ−L−lys)(数百から数千の範囲の分子量を有する)が含まれる。正電荷を与える目的で、また、ヒストン、即ち塩基性蛋白質(インスリンが有するカルボキシル基とイオン結合し得るアルギニン、リシンおよび他の塩基性アミノ酸を多種多様な量で含有する数種のサブタイプとして存在する)およびヒストンのフラグメントも用いる。また、第一級アミノ基による正帯電を有する重合体、例えばポリグルコサミン、ポリガラクトサミンおよび他のいろいろな糖重合体も含まれる。また、第一級アミノ基のイオン化によって正電荷を示すポリヌクレオチド、例えばポリアデニン、ポリシトシンまたはポリグアニンなども用いる。この上に示した高分子種は全部がインスリンと結合した時に正電荷が高くなり、それに伴ってインスリンが示す等電点を高くする。そのような高分子化合物を少量、例えばインスリン1ml当たり数ミクログラムなどの量で重合体を添加するとインスリンの等電点が変わり、最低度合は一般に1pH単位未満である。100単位/mlの塩基性有機化合物をより多い量、一般的にはインスリン1ml当たり1ミリグラムまたは2ミリグラム以上添加することで、インスリンが示す等電点を次第に高くしていってそれが自然に示す等電点より2pH単位以上高くする。
【0190】
逆に、カルボキシル化重合体および高分子量アミノ酸、例えばポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、カルボキシル(COO)またはスルフヒドラール(S)官能基を有するアミノ酸残基を多量に含有する蛋白質もしくは蛋白質フラグメントを添加することでインスリンの等電点を同様な様式で低くすることも可能である。高度に塩基性の蛋白質を適切な無水物、例えば無水酢酸などと反応させることでそれを高度に酸性の蛋白質に変化させることで、正に帯電している塩基性第一級アミノ基の代わりに負に帯電している末端酸性カルボキシル基を生じさせることも可能である。他の酸性重合体、例えばスルフェートを持つ重合体などをインスリンに添加することでインスリンが示す等電点を低くすることも可能である。負帯電カルボキシル基を有する糖重合体、例えばポリガラクツロン酸、ポリグルコン酸、ポリグルクロン酸またはポリグルカル酸などを用いて蛋白質の等電点を低くすることも可能である。
【0191】
インスリンが示す等電点を変えると、未変性のインスリン分子が示すイオン特性ばかりでなくまたインスリンを取り巻きかつ前記インスリンの回りの多量相水性媒体の中に伸びているイオン膜(Hemholtz二重層として知られる)の性質も変わる。そのインスリンを取り巻いているイオン環境は、インスリンと結合して参与している帯電した有機分子と会合している対イオンの層を伴う層の状態で存在する傾向がある。多量相媒体中でコロイド状懸濁状態を維持している改変インスリン上には電位が存在する、と言うのは、インスリンの表面にイオンが存在するからである。その結合している有機分子と会合している固定対イオンの層と前記多量相媒体の層の間に存在する電位のその部分は運動もしくはゼータ(ζ)電位として知られる。そのゼータ電位はコロイド系、例えば水性媒体に入っているインスリンなどの電気特性および安定性に有意に貢献する。
【0192】
等電点を変える材料を添加して異なる化学的構造を生じさせると、結果として、コロイド懸濁液中の蛋白質インスリンの安定性が本質的に変わる。インスリンはゼータ電位がより低くなることで変化した新しい等電点で安定性のシフトを経験する。インスリンはこれが双性イオン、即ち負に帯電している官能基が正に帯電している官能基と正確に均衡していて全体として蛋白質上の正味の電荷がゼロであるハイブリッド形態の時に最も低い安定性を示す。全体として正味の電荷がゼロであっても蛋白質構造全体に渡って負電荷のポケットと正電荷のポケットは存在したままである。インスリン溶液のpHがそれの等電点に到達するにつれて、それの溶解性が低下しかつインスリンが溶液から沈澱して来る可能性
がある。そのようにインスリンが等電点沈澱を起こしている間、多量相水性緩衝媒体の絶縁および誘電特性が克服されかつHemholtz二重層のイオン雰囲気が壊れることで、コロイド状粒子間の異なる電荷が会合する可能性があり、それによって、蛋白質コロイド懸濁液の不安定性が増す。そのような効果によって最終的に凝固が起こった後、蛋白質が等電点で沈澱を起こす。等電点沈澱の理想的な範囲はインスリンが示す等電点であるpH5.3の上下2または3pH単位の範囲である。しかしながら、本分野の技術者はそのような情報を用いて前記pH範囲を越える等電点を設定することも可能であろう。
【0193】
pHが等電点から移行するにつれて溶解性が高くなりかつ等電点で沈澱していたインスリンが再溶解し得る。それは、pHが等電点より高くなるか或は低くなるにつれて、代表的な官能基のkKaによって調節される負電荷(等電点より高い)の蓄積または正電荷(等電点より低い)の蓄積のそれぞれが起こることによって生じる。再溶解は蛋白質が示す電荷の不均衡の度合が大きくなることで蛋白質が示すゼータ電位が高くなりそしてそれによって今度は蛋白質の安定性が高くなることで起こる。そのような効果の結果として前記蛋白質を取り巻いているイオン膜の再発生がもたらされ、それによって、インスリン分子のコロイド分散の度合がより大きくなることが助長される。
【0194】
未変性インスリンが示す等電点(これはpHが5.3の時に存在する)は、インスリンと結合してインスリンのイオン性質を変える蛋白質、ペプチドフラグメント、重合体または重合体フラグメントを添加すると次第に高くなり得る。塩基性官能基を添加した時の全体としての効果は、インスリンが示す等電点が上昇しかつインスリンが可溶形態から不溶形態に変化した後に新しい可溶形態になることで薬理学的作用開始速度がより遅いインスリンがもたらされると言った効果である。未変性インスリンが示す等電点に改変、特にHDVインスリンの存在下で改変を受けさせることを通して、インスリンの両方の形態の生物学的利用能を調節することができる。
【0195】
アミノ酸配列を変えることで等電点を変えたインスリンを脂質構築物の中に取り込ませることができる。1つの態様では、橋かけ成分と錯化剤が錯体を形成することで生じた多数の連結した個々の単位と脂質を含んで成る標的分子錯体の中にグラルギンインスリンを取り込ませる。そのような標的分子錯体およびそれの成分の説明を本明細書の上に記述した。グラルギンインスリンの構造を図11に示す。グラルギンインスリンはヒトインスリンが有するA鎖のC末端の所のアスパラギンがグリシンに置き換わっておりかつヒトインスリンが有するB鎖のC末端の所にアルギニンのジペプチドが付加している分子構造を有する点でグラルギンインスリンとヒトインスリンは異なる。ある化合物が示す等電点は、その化合物が全体として電荷が中性の時のpHである。しかしながら、前記化合物の中には負電荷と正電荷の領域が存在したままである。ヒトインスリンが示す等電点はpH5.3である。グラルギンインスリンが示す等電点はヒトインスリンが示すそれよりも高い、と言うのは、グラルギンインスリンではアミノ酸の置換によってグラルギンインスリンの等電点が上昇してpH5.8−6.2になっているからである。化合物が水溶液中で示す溶解度は一般に等電点付近のpHの範囲の時が低い。ある化合物が水系中で示す溶解度は一般に当該溶液のpHが等電点より約1−2pH単位高いか或は低い時に高くなる。グラルギンインスリンが示す等電点はそのようにより高いことから、それはほどよく酸性の環境の中でより幅広いpH範囲に渡って溶解したままである。
【0196】
商業的形態のグラルギンインスリンであるLANTUS(商標)(インスリングラルギン[rDNAオリジナル]注射)は、糖尿病患者が結果として生体内血中濃度を管理するための注射可能インスリンとして用いるに適した無菌のグラルギンインスリン溶液である。グラルギンインスリンは、長期に作用する(24時間に及ぶ作用持続時間)非経口血糖低下薬である組換え型ヒトインスリン類似物である。LANTUS(商標)の製造は大腸菌の非病原性実験室株(K12)を産生用有機体として用いた組換えDNA技術を用いて
行われている。LANTUSは奇麗な水性流体に溶解しているグラルギンインスリンで構成されている。1ミリリットルのLANTUS(インスリングラルギン注射)当たりにグラルギンインスリンが100IU(3.6378mg)、亜鉛が30mcg、m−クレゾールが2.7mg、85%のグリセロールが20mgおよび注射用水が入っている。市販のLANTUSインスリンが示すpHは、生理学的に適合し得る酸、塩基または緩衝剤の水溶液を添加することで調整可能である。LANTUSが示すpHは約4である。
【0197】
標的分子錯体と合併しているインスリンと遊離インスリンが一緒に入っている製薬学的組成物の描写を図13に示す。1つの態様における製薬学的組成物は2種以上のインスリンを含有して成り得る。その標的分子錯体は、橋かけ成分と錯化剤が錯体を形成することで生じた多数の連結した個々の単位を含んで成る。その橋かけ成分は、錯化剤と一緒に水に不溶な配位錯体を形成し得る金属の水溶性塩である。適切な金属を遷移金属および内部遷移金属または遷移金属の同胞から選択する。標的分子錯体およびこれの錯体の説明は本明細書の上に記述した。1つの態様における製薬学的組成物は、水に不溶な標的分子錯体と合併しているインスリンと遊離インスリンの混合物を含んで成る。遊離インスリンは前記標的分子錯体と合併していなくて、水に溶解する。そのような組成物に入っている別の形態のインスリンは水に不溶な標的分子錯体と合併している。
【0198】
前記標的分子錯体を含有する脂質構築物を取り巻いている水溶液のpHを酸、塩基または緩衝剤の添加で調整すると、結果として当該脂質構築物構造が負の電荷を示すようになる。それが起こる時のpHの範囲は当該脂質の組成に依存する。好適な脂質系は1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリンとコレステロールとジセチルホスフェートの混合物である。この混合物は生理学的条件下で負に帯電している脂質構築物構造を形成する。そのような脂質構築物は肝細胞を標的にする特異性を示す、即ち肝細胞に特異的であり、それによって前記構築物は肝臓を標的にする。
【0199】
本発明では、pHが最終的に3.95±0.2になるようにpHを調整しておいた注射用無菌水USP(SWI)を用いて適切な脂質成分を水に不溶な標的分子錯体の中に配合すると前記標的分子錯体が全体として示す電荷が主に負になることを見いだした。グラルギンインスリンはpH5.2±0.5の時に正味正電荷を示し、それはその蛋白質が示す等電点より低い。グラルギンインスリンはpH5.2±0.5の時に正電荷を示すことで、グラルギン分子の正帯電部分と標的分子錯体の負帯電部分が相互作用する。その結果として、負に帯電している標的分子錯体と結合する正に帯電しているグラルギンインスリンがもたらされる。その帯電しているグラルギンインスリン部分が脂質が有する電荷と会合し、その帯電しているグラルギンインスリンが前記脂質の中を移動する一方で、他の帯電しているグラルギンインスリン分子は、前記脂質構築物が有するいろいろな脂質部分を通ることで分離した後、前記脂質構築物の中心部容積の中に隔離される。
【0200】
水に不溶な標的分子錯体と合併しているグラルギンインスリンと溶液の状態の遊離グラルギンインスリンの間に平衡状態が存在する。グラルギンインスリンと標的分子錯体の間の相互作用には平衡が関与することから、経時的に遊離グラルギンインスリンは前記水に不溶な標的分子錯体の脂質ドメインおよび/または中心容積部分と更に結合しかつ分離して中に入り込み得る。1つの態様では、遊離グラルギンインスリンが前記水に不溶な標的分子錯体と平衡状態にある脂質の個々の分子に吸着されるか或はそれと反応することで一時的に脂質誘導体に変化し得る。そのような誘導体は前記水に不溶な標的分子錯体の脂質と合併しかつ前記錯体の中心容積部分の中に入り込むことで、そのような生成物が示す薬理学的活性に影響を与える。
【0201】
帯電有機分子をインスリンと結合させることで等電点を変化させたインスリンを脂質構築物の中に取り込ませることができる。1つの態様では、橋かけ成分と錯化剤が錯体を形
成することで生じた多数の連結した個々の単位と脂質を含んで成る標的分子錯体の中に組換え型ヒトインスリンイソフェンを取り込ませる。
【0202】
組換え型ヒトインスリンイソフェンおよびプロタミンの構造を図12に示す。組換え型ヒトインスリンはプロタミンによる処理をプロタミンがインスリンの上に被膜を形成するように受けている点で、組換え型インスリンイソフェンとヒトインスリンは異なる。組換え型ヒトインスリンイソフェンにはプロタミンが付加していることでその蛋白質の等電点が高くなっていることから、組換え型ヒトインスリンイソフェンの等電点(pH7.2)の方がヒトインスリンのそれ(pH5.3)より高い。組換え型ヒトインスリンイソフェンは、そのように等電点がより高いことから、生理学的pHで不溶のままである。現在市場に出ているフムリンNPHインスリン製品は乳状懸濁液として存在することから、組換え型ヒトインスリンイソフェンがびんの底に沈降する。
【0203】
1つの態様における製薬学的組成物は、水に不溶な標的分子錯体と合併している組換え型ヒトインスリンイソフェンおよび組換え型ヒトレギュラーインスリンと遊離組換え型ヒトインスリンイソフェンおよび遊離組換え型ヒトレギュラーインスリンとの混合物を含んで成る。遊離組換え型ヒトインスリンイソフェンは図12に示した材料である。遊離組換え型ヒトインスリンイソフェンは前記標的分子錯体と合併していなくて、約7.2の生理学的pH、即ちNPHインスリンが示す等電点の時に不溶である。組換え型ヒトレギュラーインスリンはpH7.2の時に可溶である。
【0204】
前記インスリンの各々に関して、水に不溶な標的分子錯体と合併している形態のインスリンと溶液または懸濁液に入っている遊離形態のインスリンの間に平衡状態が存在する。各形態のインスリンと標的分子錯体の間の相互作用は平衡状態を伴うことから、経時的に遊離形態のインスリンは前記水に不溶な標的分子錯体の脂質領域および/または中心容積部分と結合しかつ分離して中に入り込む。1つの態様では、遊離組換え型ヒトインスリンイソフェンおよび組換え型ヒトレギュラーインスリンが前記水に不溶な標的分子錯体と平衡状態にある脂質の個々の分子に吸着されるか或はそれと反応することで一時的に脂質誘導体に変化し得る。そのような誘導体は前記水に不溶な標的分子錯体の脂質と合併しかつ前記錯体の中心容積部分の中に入り込むことで、そのような生成物が示す薬理学的活性に影響を与える。
【0205】
発明の説明−脂質構築物の製造方法
図14に、両親媒性脂質と伸張両親媒性脂質とインスリンを含んで成る脂質構築物を製造する方法の概略を示す。そのような組成物の製造は全体で下記の3段階を包含する:両親媒性脂質と伸張両親媒性脂質の混合物を調製する段階、両親媒性脂質と伸張両親媒性脂質の前記混合物から脂質構築物を調製する段階、およびインスリンを前記脂質構築物の中に組み入れる段階。
【0206】
脂質の製造および充填を本明細書に開示する方法および米国特許第4,946,787;4,603,044および5,104,661、およびそれらに引用されている文献に記述されている方法を用いて実施する。典型的には、本発明の水性脂質構築物配合物は、水溶液中に活性薬剤を0.1重量%から10重量%(即ち1ml当たり 1−10mgの薬剤)および脂質を0.1重量%から4重量%含有して成り、場合により塩および緩衝液を100体積%になる量で含有していてもよい。好適な配合物は、活性薬剤含有量が0.1%から5%の配合物である。最も好適な配合物は活性薬剤が0.01重量%から5重量%および脂質成分が2重量%以下の量で100体積%になるに充分な量(q.s.)の水溶液に入っている配合物である。
【0207】
1つの態様では、本脂質構築物の調製を下記の手順を用いて実施する。個々の脂質成分
を有機溶媒系中で一緒に混合するが、ここでは、その溶媒をこの溶媒に付随していくらか存在する可能性のある残存水を除去する目的でモレキュラーシーブを用いて約2時間乾燥させておいた。1つの態様では、そのような溶媒系にクロロホルムとメタノールが2:1の体積比の混合物を含めた。また、乾燥させた脂質の混合物から容易に除去可能な他の有機溶媒も使用可能である。最初の混合手順で脂質成分を単一段階で添加することを利用すると、脂質構築物の構造を不必要に複雑にする可能性がありかつ追加的分離手順を必要とする如何なる追加的連成反応も導入する必要がなくなる。その脂質成分と肝細胞受容体結合分子を溶媒に溶解させた後、その溶媒の除去を脂質の乾燥した混合物が生じるまで高真空下で実施する。1つの態様では、ロトエバポレーターを約60℃で約2時間ゆっくり回転させることでか或は本技術分野で公知の他の方法を用いて溶媒を真空下で除去する。その脂質混合物をさらなる使用の目的で貯蔵してもよいか或は直接用いることも可能である。
【0208】
本脂質構築物の調製を両親媒性脂質と伸張両親媒性脂質の乾燥させた混合物を用いて実施する。その乾燥させた脂質混合物を適切な量の緩衝水溶液媒体に加えた後、その混合物を渦巻き撹拌することで均一な懸濁液を生じさせる。次に、その脂質混合物を乾燥窒素雰囲気下で混合しながら約80℃に約30分間加熱する。その加熱した均一な懸濁液を約70℃に前以て加熱しておいたミクロ流動装置(micro−fluidizer)に直ちに移す。その懸濁液をミクロ流動装置の中に通す。均一な脂質ミクロ懸濁液を得るには前記懸濁液を前記ミクロ流動装置に追加的に通す必要もあり得る。1つの態様では、Model #M−110 EHIミクロ流動装置を用い、ここでは、最初に通す時の圧力を約9,000psigにした。均一な脂質ミクロ懸濁液の特性を示す生成物を生じさせるには、前記脂質懸濁液を前記ミクロ流動装置に2回通す必要があるかもしれない。そのような生成物は肝細胞受容体結合分子を含有する三次元脂質構築物として構造的および形態的に限定されている。
【0209】
インスリンをそのような脂質構築物の中に下記の2方法の中の1つを用いて充填する:平衡充填および非平衡充填。インスリンの平衡充填は、インスリンを前記脂質構築物の懸濁液に添加した時点で始まる。時間が経過すると、インスリン分子が前記脂質構築物に出入りする。そのような動きは分配平衡に支配され、インスリンを最初に前記懸濁液に導入した後にインスリンが前記脂質構築物の中に入り込む。
【0210】
インスリンが前記脂質構築物の中に非平衡充填で入り込むことでインスリンが前記脂質構築物の中に局在化する。遊離インスリンが前記脂質構築物の中に入り込む平衡充填が起こった後に遊離インスリンが入っている多量相媒体を除去する。非平衡充填手順はベクトル推進プロセス(vector−driven process)であり、それは外部の多量相媒体を除去した瞬間に始まる。インスリンが入っている水相を除去するとインスリンが脂質構築物から移行して出て行く勾配ポテンシャル(gradient potential)がなくなる。このプロセス全体の結果として、最終的脂質構築物の中に存在するインスリンの濃度がより高くなる、と言うのは、インスリンが前記構築物の中から出て行く動きがなくなるからである。インスリンの平衡充填は時間に依存する現象であるが、非平衡充填手順は実際上瞬時である。溶液に入っている材料を脂質構築物から分離するいろいろな方法を用いて非平衡充填を開始させることができる。そのような方法の例には、これらに限定するものでないが、濾過、セントリコン(centricon)濾過、遠心分離、バッチ型アフィニティークロマトグラフィー、ストレプトアビジンアガロース親和性ゲルクロマトグラフィーまたはバッチ型イオン交換クロマトグラフィーが含まれる。インスリンが拡散して出て行く勾配ポテンシャルをなくさせかつインスリンが脂質構築物に保持されるようにする如何なる手段も使用可能である。
【0211】
バッチ型クロマトグラフィーを用いる場合、アフィニティーまたはイオン交換ゲルをイ
ンスリンと本構築物の混合物と急速混合する。そのクロマトグラフィーの媒体との結合が迅速に起こり、そしてその水相を傾斜法で除去するか或は古典的な濾過技術、例えば濾紙とブフナー漏斗の使用などで前記クロマトグラフィー用媒体を前記水性媒体から除去する。
【0212】
本脂質構築物は、この脂質構築物の内部ばかりでなくまたそれの表面の中および表面の上に存在する充填されたインスリンを個別の量で含有する。そのようにして生じさせた脂質構築物は新しい新規な組成物であり、非平衡充填の結果としてインスリンを有効量で送達するに適した組成物になる。インスリンをそのような脂質構築物の中に充填した後に多量相のインスリンを除去すると、結果として、外部相媒体の除去に要する時間が短くなることで、脂質構築物の中に存在するインスリンの濃度が高くなる。時間に依存する手順、例えばイオン交換またはゲル濾過クロマトグラフィーなどを用いたのでは構築物へのそのようなインスリン充填度合を達成するのは困難であると思われる、と言うのは、そのような手順ではインスリンが高濃度で入っている緩衝液を絶えず注入する必要があるからである。例えば、小規模のカラムクロマトグラフィーを用いてインスリンを構築物の中に充填しようとする場合、インスリンが入っている外部の多量相媒体をインスリンを含有する構築物から除去するに要する時間は約20分である。その期間の間にインスリンが前記構築物から出て行くことで平衡状態が再び確立される。インスリンが脂質構築物の中および上に高濃度で存在することが維持されることが、非平衡充填を用いる肯定的な利点の中の1つである。
【0213】
そのような非平衡充填方法を拡張した方法では、インスリンを脂質構築物に充填する段階中、インスリンに平衡充填を受けさせた後であるが非平衡充填過程を開始する前に酢酸水素フタル酸セルロースを脂質構築物に添加する。インスリン分子の性質および構造によってインスリンが脂質構築物の中に入り込んで、それが脂質構築物全体に渡って分散する。インスリンの親水性部分ばかりでなく分枝した複雑な糖および追加的官能基が脂質構築物の表面から多量相媒体の中に伸びる。そのようなインスリンの伸張親水性部分は、脂質構築物の表面の所で、図9に示す如き酢酸水素フタル酸セルロースが有するヒドロキシル基,カルボキシル基およびカルボニル官能との水素結合、双極子−双極子およびイオン−双極子相互作用に参与し得る。酢酸水素フタル酸セルロースは、脂質構築物の分子を一緒にするユニークな手段を与えるものであり、それによって、当該脂質構築物の内容物を胃の消化環境から保護する優れた遮蔽が与えられる。胃の中で起こる消化過程は、酵素であるペプシンが蛋白質系基質を加水分解で開裂させるばかりでなく酸による加水分解によって開裂させる結果として起こる。そのような胃の酸性環境によって遊離インスリンが分解を起こしかつ燐脂質分子の中のアシル炭化水素鎖をグリセロールバックボーンに保持させているエステル結合が加水分解を起こし得る。加水分解による開裂はまたホスホコリン基が有するホスフェート官能性のいずれの側でも起こり得る。その消化系は胃の酸性領域から小腸のアルカリ性領域に移り、そこにはトリプシンおよびキモトリプシンの酵素作用が存在する。アミノ酸溶解酵素、例えばアルファアミノペプチダーゼなどによって蛋白質、例えばインスリンなどはN−末端から劣化を起こし得る。酢酸水素フタル酸セルロースを脂質構築物に存在させておくとインスリンが加水分解による劣化から保護される。小腸のアルカリ性環境によって脂質構築物を遮蔽している酢酸水素フタル酸セルロースが加水分解で劣化を起こすことから、肝細胞受容体結合分子が利用可能になることで当該構築物が肝細胞結合受容体と結合することができるようになる。如何なる特別な理論でも範囲を限定することを望むものでないが、非平衡充填が終了した時点で酢酸水素フタル酸セルロースを添加すると加水分解からの防護が相乗的に起こる。そのような防護はインスリンおよび個々の脂質分子に分配されるばかりでなくまた脂質構築物全体にも与えられる。そのような相乗性によって集合的ばかりでなく個々の分子が酵素および酸による加水分解から保護される。
【0214】
1つ態様では、いろいろな方法を用いて酢酸水素フタル酸セルロースをインスリンまたは脂質構築物のいずれかと共有結合させる。例えば、1つの方法は、酢酸水素フタル酸セルロースが有するヒドロキシル基を1,2−ジアシル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン上またはインスリン分子が有する10個のL−リシンのε−アミノ基上に存在するアミン官能性とマンニッヒ反応を利用して連成させることを伴う。
【0215】
1つの態様では、酢酸水素フタル酸セルロースを脂質構築物の中にインスリンを前記構築物の中に平衡充填している間に詰め込む。前記酢酸水素フタル酸セルロースが有するヒドロキシルおよびカルボニル官能性と脂質構築物の中の脂質分子が水素結合を形成する。酢酸水素フタル酸セルロースと前記構築物の間に水素結合が形成される時期はインスリンを平衡条件下で脂質構築物の中に充填している時期と同時であり、それによって、インスリンの回りおよび前記構築物の回りに遮蔽が作り出される。
【0216】
HDV−インスリンをストレプトアビジン−アガロースイミノビオチンと結合させることを通して、それを水性媒体から回収して再利用する。ストレプトアビジンは臭化シアンで活性化されたアガロースと共有結合し、それによって、当該構築物へのインスリンの非平衡充填が終了した時点でイミノビオチンが基になった脂質構築物を水性媒体中のインスリンから分離する手段がもたらされる。1つの態様では、イミノビオチン誘導体を用いて当該脂質構築物の中の燐脂質部分の肝細胞受容体結合部分を生じさせる。その脂質つなぎ止め分子の水溶性部分は脂質表面から約30オングストローム伸び、それによって、燐脂質部分の肝細胞受容体結合部分と肝細胞受容体の結合が助長されかつ当該脂質構築物とストレプトアビジンの結合が助長される。
【0217】
ストレプトアビジンはイミノビオチンと9.5以上のpH値で可逆的に結合し、イミノビオチンが有する帯電してないグアンジノ官能基が蛋白質表面の下方約9オングストロームの所に位置するストレプトアビジン上の4個の結合部位の中の1つと強力に結合する。20mMの炭酸ナトリウム−重炭酸ナトリウム緩衝液を添加して前記構築物が入っている水性混合物のpHをpH9.5にまで上昇させることで、イミノビオチンを含有する脂質構築物を緩衝媒体から取り出す。そのようなpHにすると、多量相媒体の中に遊離インスリンが入り込み、それをいろいろな手順で脂質構築物から回収して分離するが、そのような手順には、これらに限定するものでないが、濾過、遠心分離またはクロマトグラフィーが含まれる。
【0218】
次に、pHが9.5の前記混合物をストレプトアビジン−アガロース架橋ビードと混合することで、前記構築物をストレプトアビジン上に吸着させる。前記ビード(直径が約120ミクロン)を濾過で前記溶液から分離する。20mMの酢酸ナトリウム−酢酸緩衝液(pH4.5)を添加してpHをpH9.5からpH4.5にまで低くすることで、脂質構築物をストレプトアビジン−アガロース親和性ゲルから放出させる。pHが4.5の時、図10に示すように、イミノビオチンのグアンジノ基はプロトン化して正に帯電する。脂質構築物が放出され、それを濾過でストレプトアビジン−アガロースビードから分離する。ストレプトアビジン−アガロースビードを回収して追加的に用いる。このように、遊離インスリンとストレプトアビジン-アガロースの両方を節約して再使用することができる。
【0219】
1つの態様では、イミノビオチンまたはイミノビオシチン脂質構築物にインスリンをストレプトアビジン−アガロースビードを用いて充填すると、インスリンを長時間に渡って放出する組成物がもたらされる。上述した構築物のpHをpH9.5からpH4.5に調整するとpHが約5.9になった時点でインスリンが前記脂質構築物の中で沈澱を起こす。インスリンの等電点はpH5.9であり、これはインスリンが水中で最も低い溶解度を示す時のpHに相当する。pHがpH5.9からpH6.7の範囲より高いと、インスリ
ンは本質的に不溶のままでありかつ粒子状物質に共通した属性である特性を示す。脂質構築物の中でインスリンが不溶化することで、皮下注射または経口投与で投与された時にインスリン分子を徐放する新規なインスリン製剤がもたらされる。インスリンの可溶化は当該脂質構築物のpHがpH7.4に近づくと始まる。
【0220】
本脂質構築物を凍結乾燥させるか或は投与するまで非水性環境の中に保持する。水性投薬形態のインスリンの場合には、インスリンが不溶形態のままであるように、そのインスリン溶液のpHを約pH6.5に維持する。インスリンが外部の生体内pH勾配にさらされると、インスリンが可溶化して当該脂質構築物から出て行くことで、インスリンがウイルスが潜んでいる他の組織に供給される。当該脂質構築物と一緒のままのインスリンは、肝臓の中の肝細胞上の肝細胞結合受容体に向かう能力を維持したままである。従って、そのような特別な脂質構築物を用いると2種類の形態のインスリンがもたらされる。生体内環境では、遊離インスリンおよび脂質と合併したインスリンが時間に依存した様式で生じる。この上に記述したようにして脂質と合併しているインスリンの可溶化物を製造することができ、それによってインスリンを指定放出時間の間に放出させることができると予測する。そのようにすると糖尿病にかかっている患者に投与する予定の頻度が少なくなる。
【0221】
好適な態様において、インスリン分子は当該脂質構築物の中に移動しそしてそれを詰め込む脂質構築物の脂質領域の中に隔離される。インスリン充填手順の最終段階中に化学的平衡が乱れた時でもインスリン分子が1つの方向に移動するようにする目的でベクトル推進方法を用いる。最終的インスリン充填段階中に緩衝剤または水性媒体が移動する速度は速いことから、当該脂質構築物と合併したインスリン分子は、それが入り込む外部の媒体から追いやられる。その外部の媒体を除去すると、前記脂質構築物と合併しているインスリンと前記外部の媒体に溶解しているインスリンの間の平衡が効果的に壊れる。この過程を本明細書の他の場所で記述した如き非平衡充填と呼ぶ。
【0222】
1つの態様では、平衡方法を用いて脂質構築物にインスリンを充填する。そのような充填手順を開始させる目的で、蛋白質1ミクログラム当たりのインスリンが273,000
単位のインスリン濃度を選択する。平衡充填を当該脂質構築物がインスリンで飽和状態になるまで継続する。
【0223】
脂質構築物へのインスリンの非平衡充填を終了する過程では、遊離インスリンが入っている緩衝媒体から固体状の脂質構築物を分離する手順を用いる必要がある。1つの態様では、当該脂質構築物を外部の媒体から分離する目的で、非常に微細な微小孔を有する合成膜を用いた濾過手順を用いる。別の態様では、100,000分子量カットオフ膜が備わっている適切なフィルター、例えばNanoSepフィルターなどが備わっているセントリコン装置を用いて、当該脂質構築物を遊離インスリンが入っている緩衝媒体から取り出す。そのような脂質構築物に入っているインスリンの濃度は、合併したインスリンと前記構築物から除去した多量相媒体の中に入っている遊離インスリン分子とはもはや平衡状態ではないことから維持される。溶液に入っている遊離インスリンは他の脂質構築物の充填で使用可能である。このように、インスリンを脂質構築物の中に集中させるベクトル推進方法を本質的に時間に依存しない手順を用いて1段階で達成する。
【0224】
多量相媒体から単離した後の脂質構築物の大きさは直径で表して約0.0200ミクロンから0.4000ミクロン の範囲であり得る。脂質構築物の粒径は一般にガウス分布に従ういろいろな粒径を包含する。意図した薬理学的効力を達成するに必要な適切な脂質構築物サイズの選択では、脂質構築物の粒径が肝細胞結合受容体がガウス分布において示す粒径を包含するように選択することができる。
【0225】
インスリンと脂質と肝細胞受容体結合分子を含んで成る脂質構築物の調製を、大きな脂
質構築物をより小さな構築物に崩壊させる高いせん断力を与えるミクロ流動方法を用いて実施する。本脂質構築物に含有させる両親媒性脂質成分は、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン,コレステロール,ジセチルホスフェート,1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−(Cap ビオチニル),1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン,1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−(スクシニル),1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−rac−(1−グリセロール)](ナトリウム塩),2,3−ジアセトキシプロピル 2−(5−((3aS,6aR)−2−オキソヘキサヒドロ−1H−チエノ[3,4−d]イミダゾール−4−イル)ペンタンアミド)エチル燐酸トリエチルアンモニウムおよびこれらの適切な誘導体であり、それらの代表的な構造を表1に示す。
【0226】
1つの態様における構築物は、橋かけ成分と錯化剤の錯体形成で生じた多数の連結した個々の単位を含んで成る標的分子錯体を含んで成る。そのような標的分子錯体を、典型的には、選択した金属化合物、例えば塩化クロム(III)六水化物などと当該錯化剤の緩衝水溶液を一緒にすることで生じさせる。1つの態様では、当該錯化剤が入っている緩衝水溶液の調製を、錯化剤、例えばN−(2,6−ジイソプロピルフェニルカルバモイルメチル)イミノジ酢酸などを緩衝水溶液、例えば10mMの酢酸ナトリウム緩衝液などの中に最終pHが3.2−3.3になるように溶解させることを通して実施する。前記金属化合物を当該錯化剤の不溶部分との錯体が生じるに充分な過剰量で加えて、反応を20℃から33℃の温度で24から96時間、または結果として生じた錯体が緩衝水溶液から析出するまで実施する。次に、その沈澱してきた錯化剤(これは重合体特性を示す)を単離して、将来用いる。前記錯体を両親媒性脂質分子と伸張両親媒性脂質の混合物に添加した後に脂質構築物の調製を実施する。
【0227】
アミノ酸配列を変えることで等電点を変化させたインスリンの組成物を水に不溶な標的分子錯体の中に組み込むことを可能にする製造方法を以下に示す。1つの態様では、グラルギンインスリンを水に不溶な標的分子錯体の中に取り込ませる。図15に、水に不溶な標的分子錯体と合併しているグラルギンインスリンと遊離グラルギンインスリンの混合物を製造する方法の概略を示す。1つの態様において、そのような組成物の製造は全体として下記の3段階を包含する:標的分子錯体を調製する段階、前記標的分子錯体を脂質構築物の中に取り込ませる段階、そして前記標的分子錯体とグラルギンインスリンを一緒にして製薬学的組成物を生じさせる段階。
【0228】
標的分子錯体は、重合体配列で一緒に連結している多数の個々の単位を含んで成る。各単位は橋かけ成分と錯化剤を含んで成る。1つの態様では、選択した金属化合物、例えば塩化クロム(III)六水化物などと当該錯化剤の緩衝水溶液を一緒にすることで標的分子錯体を生じさせる。1つの態様では、当該錯化剤が入っている緩衝水溶液の調製を、錯化剤、例えばN−(2,6−ジイソプロピルフェニルカルバモイルメチル)イミノジ酢酸などを緩衝水溶液、例えば10mMの酢酸ナトリウム緩衝液などの中に最終pHが3.2−3.3になるように溶解させることを通して実施する。金属化合物を当該錯化剤の不溶部分との錯体が生じるに充分な過剰量で加えて、反応を約20℃から33℃の温度で約24から96時間、または結果として生じた錯体が緩衝水溶液から析出するまで実施する。次に、その沈澱してきた錯体を単離して、将来用いる。
【0229】
次に、その沈澱してきた錯体を選択した脂質または当該脂質構築物の脂質と混合した後、有機溶媒に溶解させる。1つの態様における有機溶媒はクロロホルム:メタノール(2:1体積/体積)である。前記脂質の濃度を本明細書に示す金属錯体の全部または一部を溶解させかつ取り込むに充分な濃度にする。前記錯体と当該脂質構築物を構成する選択した脂質の混合物を転移温度が高い脂質、例えば1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ
−3−ホスホコリンなどを用いる時には約60℃の温度に維持する。当該脂質構築物の中に取り込ませる目的で選択する脂質が示す転移温度に応じて、より低い温度を用いることも可能である。当該脂質を乾燥させかつ脂質マトリクスにいくらか残存する有機溶媒を除去して標的分子錯体中間体を生じさせるには一般に真空下で30分から2時間の時間を要する。
【0230】
脂質の製造および充填を本明細書に開示する方法および米国特許第4,946,787;4,603,044および5,104,661、およびそれらに引用されている文献に記述されている方法を用いて実施する。典型的には、本発明の水性脂質構築物配合物は、水溶液中に活性薬剤を0.1重量%から10重量%(即ち1ml当たり1−100mgの薬剤)および脂質を0.1重量%から4重量%含有して成り、場合により塩および緩衝液を100体積%になる量で含有していてもよい。好適な配合物は、活性薬剤含有量が0.1%から5%の配合物である。最も好適な配合物は活性薬剤が0.01重量%から5重量%および脂質成分が2重量%以下の量で100体積%になるに充分な量(q.s.)の水溶液に入っている配合物である。
【0231】
1つの態様では、前記標的分子錯体と注射用水USPの懸濁液が示すpHを約pH4.89±0.2から5.27±0.5に調整した後にグラルギンインスリンを標的分子錯体の中に充填する。グラルギンインスリン溶液のpHをpH3.88±0.2から約pH4.78±0.5に調整した後に前記水に不溶な標的分子錯体を添加した。その結果として生じた組成物は、水に不溶な標的分子錯体と合併しているグラルギンインスリンと遊離グラルギンインスリンの混合物であった。グラルギンインスリンの一部が前記脂質構築物マトリクスと合併するか或は前記脂質構築物の中心容積部分の中に捕捉された。そのような製薬学的組成物をまたHDV−グラルギンとも呼ぶ。1つの態様では、一定分量の前記標的分子錯体をインスリンが1ml当たり100国際単位入っているグラルギンインスリン瓶の中に導入することで、標的分子錯体と合併しているグラルギンインスリンと遊離グラルギンインスリンの両方を含有する肝細胞特異的送達系を生じさせる。
【0232】
水に不溶な標的分子錯体と合併しているグラルギンインスリンと遊離グラルギンインスリンが一緒に入っている製薬学的組成物の調製を下記の手順で実施した。注射用無菌水USPサンプルのpHをpH3.95±0.2に調整した。HDV懸濁液をある分量で取り出して、それのpHを一連の段階で最終的pHが5.2±0.5になるまで調整した。ある分量の注射用無菌水USP(pH3.95±0.2)を前記標的分子錯体の懸濁液と混合した。その結果として生じた懸濁液のpHは4.89±0.2であった。次に、その懸濁液のpHを5.27±0.5に調整した。ある分量のグラルギンインスリンのpHをpH3.88±0.2からpH4.78±0.5に調整した。次に、その溶液をpHが5.20±0.5の前記標的分子錯体懸濁液に加えた。その結果としてもたらされた製薬学的組成物は、水に不溶な標的分子錯体と合併しているグラルギンインスリンと遊離グラルギンインスリンの混合物である。そのような製薬学的組成物をまたHDV−グラルギンとも呼ぶ。
【0233】
帯電している有機分子をインスリンと結合させることで等電点を変化させたインスリンの組成物を水に不溶な標的分子錯体の中に組み込むことを可能にする製造方法を以下に示す。1つの態様では、組換え型ヒトインスリンイソフェンを水に不溶な標的分子錯体の中に取り込ませる。図16に、水に不溶な標的分子錯体と合併している組換え型ヒトインスリンイソフェンと組換え型ヒトレギュラーインスリンの混合物と遊離組換え型ヒトインスリンイソフェンと遊離組換え型ヒトレギュラーインスリンの混合物を製造する方法の概略を示す。1つの態様において、そのような組成物の製造は全体として下記の3段階を包含する:標的分子錯体を調製する段階、前記標的分子錯体を遊離および合併した組換え型ヒトレギュラーインスリンを含有する脂質構築物の中に取り込ませる段階、そして前記標的
分子錯体と遊離および合併した組換え型ヒトインスリンイソフェンを一緒にして製薬学的組成物を生じさせる段階。
【0234】
標的分子錯体は、重合体配列で一緒に連結している多数の個々の単位を含んで成る。各単位は橋かけ成分と錯化剤を含んで成る。1つの態様では、選択した金属化合物、例えば塩化クロム(III)六水化物などと当該錯化剤の緩衝水溶液を一緒にすることで標的分子錯体を生じさせる。1つの態様では、当該錯化剤が入っている緩衝水溶液の調製を、錯化剤、例えばN−(2,6−ジイソプロピルフェニルカルバモイルメチル)イミノジ酢酸などを緩衝水溶液、例えば10mMの酢酸ナトリウム緩衝液などの中に最終pHが3.2−3.3になるように溶解させることを通して実施する。金属化合物を当該錯化剤の不溶部分との錯体が生じるに充分な過剰量で加えて、反応を約20℃から33℃の温度で約24から96時間、または結果として生じた錯体が緩衝水溶液から析出するまで実施する。次に、その沈澱してきた錯体を単離して、将来用いる。
【0235】
次に、その沈澱してきた錯体を選択した脂質または当該脂質構築物の脂質と混合した後、有機溶媒に溶解させる。1つの態様における有機溶媒はクロロホルム:メタノール(2:1体積/体積)である。前記脂質の濃度を本明細書に示す金属錯体の全部または一部を溶解させかつ取り込むに充分な濃度にする。前記錯体と当該脂質構築物を構成する選択した脂質の混合物を転移温度が高い脂質、例えば1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリンなどを用いる時には約60℃の温度に維持する。当該脂質構築物の中に取り込ませる目的で選択する脂質が示す転移温度に応じて、より低い温度を用いることも可能である。当該脂質を乾燥させかつ脂質混合物にいくらか残存する有機溶媒を除去して標的分子錯体中間体を生じさせるには一般に真空下で30分から2時間の時間を要する。
【0236】
脂質の製造および充填を本明細書に開示する方法および米国特許第4,946,787;4,603,044および5,104,661、およびそれらに引用されている文献に記述されている方法を用いて実施する。典型的には、本発明の水性脂質構築物配合物は、水溶液中に活性薬剤を0.1重量%から10重量%(即ち1ml当たり1−100mgの薬剤)および脂質を0.1重量%から4重量%含有して成り、場合により塩および緩衝液を100体積%になる量で含有していてもよい。好適な配合物は、活性薬剤含有量が0.01%から5%の配合物である。最も好適な配合物は活性薬剤が0.01重量%から5重量%および脂質成分が2重量%以下の量で100体積%になるに充分な量(q.s.)の水溶液に入っている配合物である。
【0237】
1つの態様では、この上で生じさせた組換え型ヒトレギュラーインスリンと脂質構築物の混合物にフムリンNPHインスリンを添加した。その結果として生じた組成物は、遊離組換え型ヒトレギュラーインスリンと遊離組換え型ヒトインスリンイソフェンの混合物であった。同様に、組換え型ヒトレギュラーインスリンおよび組換え型ヒトインスリンイソフェンの一部が前記脂質構築物マトリクスと合併するか或は前記脂質構築物の中心容積部分の中に捕捉されている。そのような製薬学的組成物をまたHDV−NPHインスリンとも呼ぶ。1つの態様では、一定分量の前記標的分子錯体を組換え型ヒトインスリンイソフェンが入っている瓶の中に導入することで、標的分子錯体と合併している組換え型ヒトインスリンイソフェンと遊離組換えヒトインスリンイソフェンの両方を含有する肝細胞特異的送達系を生じさせる。1つの態様では、組換え型ヒトインスリンイソフェンを他の形態のインスリン、例えば迅速に作用するHumalogインスリンおよびNovologインスリンなど、作用時間が短いRegular(商標)インスリン、作用が中間的なLenteインスリンおよび長期に作用するUltralenteインスリンおよびLantusインスリンなどまたはインスリンの予混合組み合わせなどと一緒にすることも可能である。ある分量の組換え型ヒトインスリンイソフェンを組換え型ヒトインスリンイソフェ
ンではないインスリンと一緒にしておいた標的分子錯体の混合物に添加してもよい。
【0238】
発明の説明−使用方法
1型または2型糖尿病にかかっている患者に両親媒性脂質と伸張両親媒性脂質とインスリンを含んで成る肝細胞標的脂質構築物を有効量で投与する。この組成物を皮下投与すると、その組成物の一部が循環系の中に入り、その組成物が肝臓および他の領域に輸送されて、前記伸張両親媒性脂質によって前記脂質構築物が肝細胞の受容体と結合する。その投与された組成物の一部が生体内の外部勾配にさらされることで、インスリンが可溶化した後、前記脂質構築物から出て行くことでインスリンが筋肉および脂肪細胞に供給される。前記脂質構築物と一緒のままのインスリンは、肝臓の中の肝細胞上の肝細胞結合受容体に向かう能力を維持したままである。従って、そのような特別な脂質構築物を用いると2種類の形態のインスリンが生じる。生体内環境下では遊離インスリンと脂質と合併したインスリンが時間に依存した様式で生じる。
【0239】
本発明の脂質構築物構造はインスリンを宿主に投与するに有用な製薬学的用途用薬剤を与えるものである。従って、本発明の構造物は製薬学的に受け入れられる担体と組み合わせた製薬学的組成物として用いるに有用である。本明細書に記述する構造物の投与は、投与する必要があるインスリンに受け入れられる投与様式のいずれかで実施可能である。そのような方法には経口、非経口、鼻および他の全身またはエーロゾル形態が含まれる。
【0240】
標的分子錯体と合併しているインスリンを含んで成る製薬学的組成物を経口投与すると、その後、その標的分子錯体と合併しているインスリンが腸で吸収されて体の循環系の中に入り、それはまた血液の生理学的pHにもさらされる。前記脂質構築物が肝臓を標的にして送達される。1つの態様では、前記脂質構築物の中に酢酸水素フタル酸セルロースを存在させることで前記構築物を遮蔽する。経口投与の場合、前記遮蔽されている脂質構築物は口腔を通過し、胃の中を移行した後、小腸の中に移動し、その小腸のアルカリ性pHによってその遮蔽していた酢酸水素フタル酸セルロースが分解を起こす。その遮蔽が取り除かれた脂質構築物が吸収されて循環系の中に入り込む。それによって、前記脂質構築物は肝類洞に送達される。受容体結合分子、例えば1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−(Cap ビオチニル)または上述した他の肝細胞特異的分子などは、脂質構築物が前記受容体と結合する手段を与え、そしてその後に肝細胞に飲み込まれるか或は取り込まれる。次に、インスリンが前記脂質構築物から放出され、細胞環境に入り込むことで、糖尿病を制御する薬剤として作用することに関して考案した機能を果たす。
【0241】
投与するインスリンの量は、治療すべき被験体、病気の種類およびひどさ、投与様式および処方する医者の判断に依存するであろう。興味の持たれる特定の生物学的活性物質に有効な投薬量の範囲はいろいろな要因に依存しかつ一般に本分野の通常の技術者に公知であるが、いくつかの投薬指針は一般的に明記可能である。大部分の投薬形態物では、脂質成分を水溶液の中に入れて懸濁させるが、それの量を一般に製剤全体の4.0%(重量/体積)以下にする。そのような製剤の薬剤成分の量を最も高い可能性として当該製剤の一般に0.01%(重量/体積)以上から20%(重量/体積)未満にする。
【0242】
アミノ酸配列を変えることで等電点を変化させたインスリンを水に不溶な標的分子錯体の中に組み込むことで生じさせた組成物を投与する方法を以下に示す。1つの態様では、1型または2型糖尿病の患者に水に不溶な標的分子錯体と合併しているグラルギンインスリンと遊離グラルギンインスリンの混合物を含んで成る肝細胞標的組成物を有効量で投与する。1つの態様では、グラルギンインスリンを他の形態のインスリン、例えばインスリンリスプロ、インスリンアスパルト、レギュラーインスリン、インスリン亜鉛、持続型ヒトインスリン亜鉛、イソフェンインスリン、ヒト緩衝レギュラーインスリン、インスリン
グルリシン、組換え型ヒトレギュラーインスリン、組換え型ヒトインスリンイソフェン、前記インスリンのいずれかの予混合組み合わせ、それらの誘導体および前記インスリンのいずれかの組み合わせなどと一緒にしてもよい。1つの態様では、そのような組成物を皮下または経口経路で投与してもよい。
【0243】
本発明の脂質構築物構造はインスリンを宿主に投与するに有用な製薬学的用途用薬剤を与えるものである。従って、本発明の構造物は製薬学的に受け入れられる担体と組み合わせた製薬学的組成物として用いるに有用である。本明細書に記述する構造物の投与は、投与する必要があるインスリンに受け入れられる投与様式のいずれかで実施可能である。そのような方法には経口、非経口、鼻および他の全身またはエーロゾル形態が含まれる。
【0244】
組成物を患者に皮下注射で投与した後、その注射領域の中の生理学的インシトゥ環境、遊離グラルギンインスリンの形態および化学的構造および前記水に不溶な標的分子錯体と合併しているグラルギンインスリンが変化し始める。前記水に不溶な標的分子錯体と合併しているグラルギンインスリンおよび遊離グラルギンインスリンの回りの環境のpHが生理学的媒体による希釈で上昇するにつれて、pHが前記グラルギンインスリンの等電点に到達して、前記標的分子錯体と合併しているグラルギンインスリンおよび遊離グラルギンインスリンの両方が凝集、凝固および沈澱反応を起こす。そのような過程が起こる速度は、前記標的分子錯体と合併しているグラルギンインスリンと遊離グラルギンインスリンの間で異なる。遊離グラルギンインスリンはpHの変化および希釈に直接さらされる。前記標的分子錯体と合併しているグラルギンインスリンが小さなpH変化および生理学的pHにおける希釈にさらされる速度は、生理学的流体または媒体が前記水に不溶な標的分子錯体の中の脂質2層を通して拡散するに時間を要することが理由で遅い。そのようにインスリンが前記脂質構築物から放出される速度が遅いばかりでなく沈澱した遊離グラルギンマトリクスの中のインスリンと合併している脂質構築物からの放出も遅いことが本発明の必須な特徴である、と言うのは、それによって生体内の生物学的および薬理学的反応が影響を受けて増加するからである。
【0245】
標的分子錯体と合併しているグラルギンインスリンと遊離グラルギンインスリンを一緒に有する製薬学的組成物を経口投与すると、その後、その標的分子錯体と合併しているグラルギンインスリンが腸で吸収されて体の循環系の中に入り、それはまた血液の生理学的pHにもさらされる。前記脂質構築物の全部または一部が肝臓に送達される。
【0246】
生理学的希釈度が皮下空間部の中でか或は循環系の中に入り込んだ時点でインシトゥで高くなるにつれて、前記標的分子錯体と合併しているグラルギンインスリンおよび遊離グラルギンインスリンがpHが7.4の通常の生理学的pH環境に遭遇する。その結果として、遊離グラルギンインスリンが注射時の可溶形態からそれの等電点であるpH5.8−6.2の近くのpHで不溶形態に変化した後、生理学的pHで可溶形態に変化する。グラルギンインスリンは可溶形態の時に体の中を通って移行して薬理学的反応が明らかに現れ得る部位に至る。水に不溶な標的分子錯体と合併しているグラルギンインスリンが可溶化して前記錯体から放出されるが、その速度は、遊離グラルギンインスリンのそれよりは遅い異なる速度である。その理由は、前記水に不溶な標的分子錯体と合併しているグラルギンインスリンはこれが多量相媒体と接触する前に前記水に不溶な標的分子錯体の中心容積部分および脂質ドメインを通る必要があるからである。
【0247】
投与するグラルギンインスリンの量は、治療すべき被験体、病気の種類およびひどさ、投与様式および処方する医者の判断に依存するであろう。興味の持たれる特定の生物学的活性物質に有効な投薬量の範囲はいろいろな要因に依存しかつ一般に本分野の通常の技術者に公知であるが、いくつかの投薬指針は一般的に明記可能である。大部分の投薬形態物では、脂質成分を水溶液の中に入れて懸濁させるが、それの量を一般に製剤全体の4.0
%(重量/体積)以下にする。そのような製剤の薬剤成分の量を最も高い可能性として当該製剤の一般に0.01%(重量/体積)以上から20%(重量/体積)未満にする。
【0248】
帯電した有機分子をインスリンに結合させることで等電点を変化させたインスリンを水に不溶な標的分子錯体の中に組み込むことで生じさせた組成物を投与する方法を以下に示す。1つの態様では、1型または2型糖尿病の患者に組換え型ヒトインスリンイソフェンおよび組換え型ヒトレギュラーインスリン(これらは両方とも水に不溶な標的分子錯体と合併している)と一緒に遊離組換え型ヒトインスリンイソフェンと遊離組換え型ヒトレギュラーインスリンの混合物を含んで成る肝細胞標的組成物を有効量で投与する。1つの態様では、組換え型ヒトインスリンイソフェンを他の形態のインスリン、例えばインスリンリスプロ、インスリンアスパルト、レギュラーインスリン、インスリングラルギン、インスリン亜鉛、持続型ヒトインスリン亜鉛、イソフェンインスリン、ヒト緩衝レギュラーインスリン、インスリングルリシン、組換え型ヒトレギュラーインスリン、組換え型ヒトインスリンイソフェン、前記インスリンのいずれかの予混合組み合わせ、それらの誘導体および前記インスリンのいずれかの組み合わせなどと一緒にしてもよい。
【0249】
本発明の脂質構築物構造はインスリンを宿主に投与するに有用な製薬学的用途用薬剤を与えるものである。従って、本発明の構造物は製薬学的に受け入れられる担体と組み合わせた製薬学的組成物として用いるに有用である。本明細書に記述する構造物の投与は、投与する必要があるインスリンに受け入れられる投与様式のいずれかで実施可能である。そのような方法には経口、非経口、鼻および他の全身またはエーロゾル形態が含まれる。
【0250】
組成物を患者に皮下注射で投与した後、その注射領域の中の生理学的インシトゥ環境、遊離組換え型ヒトインスリンイソフェンおよび前記水に不溶な標的分子錯体と合併している組換え型ヒトインスリンイソフェンの形態および化学的構造が変化し始める。前記水に不溶な標的分子錯体と合併している組換え型ヒトインスリンイソフェンおよび遊離組換え型ヒトインスリンイソフェンの回りの環境のpHが生理学的媒体で希釈されるにつれて、両方のインスリンの溶解がある程度起こる。可溶化しそして平衡状態になる結果として、組換え型ヒトインスリンイソフェンが前記標的分子錯体と合併してくる可能性がある。そのような平衡プロセスが起こる速度は前記標的分子錯体と合併している組換え型ヒトインスリンイソフェンと遊離組換え型ヒトインスリンイソフェンの間で異なる。前記遊離組換え型ヒトインスリンイソフェンは小さなpH変化および生理学的希釈に直接さらされる。前記標的分子錯体と合併している組換え型ヒトインスリンイソフェンが小さなpH変化および生理学的pHにおける希釈にさらされる速度は、生理学的流体または媒体が前記水に不溶な標的分子錯体の中の脂質2層を通して拡散するには時間を要することが理由で遅い。そのようにインスリンが前記脂質構築物から放出される速度が遅いばかりでなく沈澱した遊離組換え型ヒトインスリンイソフェンマトリクスの中に存在する時に前記脂質構築物からの放出も遅いことが本発明で見いだした必須な事項である、と言うのは、それによって生体内の生物学的および薬理学的反応が影響を受けて増加するからである。
【0251】
標的分子錯体と合併している組換え型ヒトインスリンイソフェンと遊離組換え型ヒトインスリンイソフェンを一緒に有する製薬学的組成物を経口投与すると、その後、その標的分子錯体と合併している組換え型ヒトインスリンイソフェンが腸で吸収されて体の循環系の中に入り、それはまた血液の生理学的pHにもさらされる。前記脂質構築物の全部または一部が肝臓に送達される。
【0252】
生理学的希釈度が皮下空間部の中でか或は循環系の中に入り込んだ時点でインシトゥで高くなるにつれて、前記標的分子錯体と合併している組換え型ヒトインスリンイソフェンおよび遊離組換え型ヒトインスリンイソフェンがpHが7.4の通常の生理学的pH環境に遭遇する。希釈が起こる結果として、遊離組換え型ヒトインスリンイソフェンが注射時
の不溶形態から生理学的pHで可溶形態に変化する。組換え型ヒトインスリンイソフェンは可溶形態の時に体の中を通って移行して薬理学的反応が明らかに現れ得る部位に至る。水に不溶な標的分子錯体と合併している組換え型ヒトインスリンイソフェンは可溶化して前記錯体から放出されるが、その速度は、遊離組換え型ヒトインスリンイソフェンのそれよりは遅い異なる速度である。その理由は、前記水に不溶な標的分子錯体と合併している組換え型ヒトインスリンイソフェンはこれが多量相媒体と接触する前に前記水に不溶な標的分子錯体の中心容積部分および脂質ドメインを通る必要があるからである。
【0253】
本発明の脂質構築物構造は組換え型ヒトインスリンイソフェンを宿主に投与するに有用な製薬学的用途用薬剤を与えるものである。従って、本発明の構造物は製薬学的に受け入れられる担体と組み合わせた製薬学的組成物として用いるに有用である。本明細書に記述する構造物の投与は、投与する必要がある組換え型ヒトインスリンイソフェンに受け入れられる投与様式のいずれかで実施可能である。そのような方法には経口、非経口、鼻および他の全身またはエーロゾル形態が含まれる。
【0254】
投与する組換え型ヒトインスリンイソフェンおよび組換え型ヒトレギュラーインスリンの量は、治療すべき被験体、病気の種類およびひどさ、投与様式および処方する医者の判断に依存するであろう。興味の持たれる特定の生物学的活性物質に有効な投薬量の範囲はいろいろな要因に依存しかつ一般に本分野の通常の技術者に公知であるが、いくつかの投薬指針は一般的に明記可能である。大部分の投薬形態物では、脂質成分を水溶液の中に入れて懸濁させるが、それの量を一般に製剤全体の4.0%(重量/体積)以下にする。そのような製剤の薬剤成分の量を最も高い可能性として当該製剤の一般に0.01%(重量/体積)以上から20%(重量/体積)未満にする。
【0255】
投与するインスリンの量は、治療すべき被験体、病気の種類およびひどさ、投与様式および処方する医者の判断に依存するであろう。興味の持たれる特定の生物学的活性物質に有効な投薬量の範囲はいろいろな要因に依存しかつ一般に本分野の通常の技術者に公知であるが、いくつかの投薬指針は一般的に明記可能である。大部分の投薬形態物では、脂質成分を水溶液の中に入れて懸濁させるが、それの量を一般に製剤全体の4.0%(重量/体積)以下にする。そのような製剤の薬剤成分の量を最も高い可能性として当該製剤の一般に0.01%(重量/体積)以上から20%(重量/体積)未満にする。
【0256】
有効成分の含有量が0.005%から5%の範囲で残りを無毒の担体が構成している投薬形態物または組成物を生じさせることができる。
【0257】
そのような製剤に持たせる正確な組成は当該薬剤が示す個々の特性に応じて幅広く多様であり得る。しかしながら、有効成分の含有量を一般に効力が高い薬剤の場合には0.01%から5%、好適には0.05%から1%にしそして活性が中程度の薬剤の場合には2%−4%にする。
【0258】
そのような非経口組成物に入れる活性化合物のパーセントは高度にそれの特定の性質ばかりでなく当該有効成分の活性および当該被験体の必要性に依存する。しかしながら、溶液の場合には有効成分を0.01%から5%のパーセントで用いることができ、そして当該組成物が固体の場合には、より高いパーセントにして、後で希釈してこの上に示したパーセントにする。そのような組成物の有効成分含有量を好適には溶液中0.2%−2.0%にする。
【0259】
本明細書に記述する製薬学的組成物の調剤の調製は薬理学技術で公知の方法または本明細書以降に開発されるであろう方法のいずれかを用いて実施可能である。そのような調製方法は、一般に、有効成分を担体または他の1種以上の材料と一緒にした後、必要または
望まれる時には、その生成物の成形または包装を実施して所望の単一もしくは複数投薬単位にする段階を包含する。
【0260】
本明細書に示す製薬学的組成物の説明は原則として人に処方して投与するに適した製薬学的組成物に向けたものであるが、本分野の技術者は、そのような組成物は一般にあらゆる種類の動物に投与するに適することを理解するであろう。人に投与するに適した製薬学的組成物がいろいろな動物への投与に適するように前記組成物を改変することは充分に理解され、通常の技術を持つ獣医薬理学者は、単に通常(行うとしても)の実験を行うことでそのような改変を考案して実施することができるであろう。本発明の製薬学的組成物を投与することを意図する被験体には、これらに限定するものでないが、ヒトおよび他の霊長類、哺乳動物が含まれ、それには商業に関連した哺乳動物、例えばウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ネコおよびイヌなどが含まれる。
【0261】
本発明の方法で用いるに有用な製薬学的組成物の調製、包装または販売は経口、非経口、肺、鼻内、口腔または別の投与経路に適した製剤として実施可能である。
【0262】
本発明の製薬学的組成物の調製、包装または販売は大量、単位投薬物または複数の単位投薬物として実施可能である。本明細書で用いる“単位投薬物”は、有効成分を前以て決めておいた量で含んで成る個別量の製薬学的組成物である。有効成分の量は、一般に、被験体に投与されるであろう有効成分の投薬量に相当するか或はそのような投薬量の便利な一部、例えば前記投薬量の半分または1/3などに相当する。しかしながら、本発明に示す如き有効成分の送達量は通常投与される投薬量の約1/10,1/100または1/1,000以下であってもよい、と言うのは、本インスリン治療薬は標的に向かう性質を有するからである。
【0263】
本発明の製薬学的組成物に入れる有効成分と製薬学的に受け入れられる担体といずれかの追加的材料の相対量は、治療すべき被験体の同定、大きさおよび状態に応じかつ更に本組成物を投与する経路にも応じて多様である。例として、本組成物の有効成分含有量は0.1%から100%(重量/重量)であってもよい。
【0264】
経口投与に適した本発明の製薬学的組成物の製剤の調製、包装または販売は個別の固体状投薬単位の形態で実施可能であり、そのような形態には、これらに限定するものでないが、錠剤、硬質もしくは軟質カプセル、カプセル、トローチまたはロゼンジが含まれ、それらの各々に有効成分を前以て決めた量で含有させる。経口投与に適した他の製剤には、これらに限定するものでないが、粉末または顆粒状の製剤、水性もしくは油性懸濁液、水性もしくは油性溶液または乳液が含まれる。
【0265】
本明細書で用いる如き“油性”液は、炭素含有液状分子が入っていて水に比べて低い極性を示す液である。
【0266】
有効成分を含んで成る錠剤の製造は、例えば有効成分を場合により1種以上の追加的材料と一緒に圧縮または成形することなどで実施可能である。圧縮錠剤の調製は、自由に流れる形態、例えば粉末または顆粒状製剤などの形態の有効成分を場合により結合剤、滑剤、賦形剤、表面活性剤および分散剤などの中の1種以上と一緒に混合しておいて適切な装置で圧縮することで実施可能である。成形錠剤の製造は、有効成分と製薬学的に受け入れられる担体の混合物とこの混合物を湿らせるに少なくとも充分な量の液体を適切な装置で成形することで実施可能である。錠剤を製造する時に用いる製薬学的に受け入れられる賦形剤には、これらに限定するものでないが、不活性な希釈剤、顆粒および崩壊剤、結合剤および滑剤が含まれる。公知の分散剤には、これらに限定するものでないが、ジャガイモ澱粉および澱粉グリコール酸ナトリウムが含まれる。公知の表面活性剤には、これらに限
定するものでないが、ラウリル硫酸ナトリウムが含まれる。公知の希釈剤には、これらに限定するものでないが、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、微結晶性セルロース、燐酸カルシウム、燐酸水素カルシウムおよび燐酸ナトリウムが含まれる。公知の顆粒および崩壊剤には、これらに限定するものでないが、コーンスターチおよびアルギン酸が含まれる。公知の結合剤には、これらに限定するものでないが、ゼラチン、アカシア、前以てゼラチン状にしておいたトウモロコシ澱粉、ポリビニルピロリドンおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースが含まれる。公知の滑剤には、これらに限定するものでないが、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、シリカおよびタルクが含まれる。
【0267】
錠剤に被覆を受けさせなくてもよいか、或はそれらに公知方法を用いた被覆を受けさせることで被験体の胃腸管の中で起こる崩壊を遅らせることで有効成分の持続放出および吸収を達成することも可能である。例として、モノステアリルグリセリルまたはジステアリルグリセリルなどの如き材料を錠剤の被覆で用いてもよい。さらなる例として、錠剤に米国特許第4,256,108;4,160,452および4,265,874に記述されている方法を用いた被覆を受けさせることで放出が浸透圧的に制御される錠剤を生じさせることも可能である。更に、錠剤に甘味剤、風味剤、着色剤、防腐剤またはそれらの数種の組み合わせを含有させることで製薬学的に優雅で飲み易い製剤を生じさせることも可能である。
【0268】
有効成分を含んで成る硬質カプセルの製造は生理学的に分解し得る組成物、例えばゼラチンなどを用いて実施可能である。そのような硬質カプセルに有効成分を含有させかつ更に追加的材料を含有させることも可能であり、そのような追加的材料には、例えば不活性な固体状の希釈剤、例えば炭酸カルシウム、燐酸カルシウム、カオリンまたは酢酸水素フタル酸セルロースなどが含まれる。
【0269】
有効成分を含んで成る軟質ゼラチン製カプセルの製造は生理学的に分解し得る組成物、例えばゼラチンなどを用いて実施可能である。そのような軟質カプセルに有効成分を含有させて、それを水または油媒体、例えば落花生油、液状パラフィンまたはオリーブ油などと混合してもよい。
【0270】
経口投与に適した本発明の製薬学的組成物の液状製剤の調製、包装および販売は液状形態または使用前に水または別の適切な媒体を用いて再構成させることを意図する乾燥製品の形態で実施可能である。
【0271】
液状懸濁液の調製は、有効成分が水性もしくは油性媒体に入っている懸濁液を達成する通常方法を用いて実施可能である。水性媒体には、例えば水および等張性食塩水が含まれる。油性媒体には、例えばアーモンド油、油状エステル、エチルアルコール、植物油、例えば落花生、オリーブ、ゴマまたはヤシ油、分溜植物油など、および鉱油、例えば液状パラフィンなどが含まれる。液状懸濁液に更に1種以上の追加的材料を含有させることも可能であり、そのような材料には、これらに限定するものでないが、懸濁剤、分散もしくは湿潤剤、乳化剤、粘滑剤、防腐剤、緩衝剤、塩類、風味剤、着色剤および甘味剤が含まれる。油性懸濁液に更に増粘剤を入れることも可能である。公知の懸濁剤には、これらに限定するものでないが、ソルビトールシロップ、水添食用油、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム、アカシアゴムおよびセルロース誘導体、例えばナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどが含まれる。公知の分散もしくは湿潤剤には、これらに限定するものでないが、天然に存在するホスファチド、例えばレシチンなど、アルキレンオキサイドを脂肪酸、長鎖脂肪アルコール、脂肪酸とヘキシトールから生じさせた部分エステルまたは脂肪酸と無水ヘキシトールから生じさせた部分エステルと縮合させることで生じさせた生成物(例えば、それぞれポリオキシエチレンステアレート、ヘプタデカエチレンオキシセタノー
ル、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエートおよびポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)が含まれる。公知の乳化剤には、これらに限定するものでないが、レシチンおよびアカシアが含まれる。公知の防腐剤には、これらに限定するものでないが、パラ−ヒドロキシ安息香酸メチル、エチルもしくはn−プロピル、アスコルビン酸およびソルビン酸が含まれる。公知甘味剤には、例えばグリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、スクロースおよびサッカリンが含まれる。油性懸濁液用の公知増粘剤には、例えば蜜蝋、硬質パラフィンおよびセチルアルコールが含まれる。
【0272】
有効成分が水性もしくは油性溶媒に入っている液状溶液の調製は、液状懸濁液の調製と実質的に同じ様式で実施可能であるが、主な差は、有効成分が溶媒に懸濁するのではなく溶解する点である。本発明の製薬学的組成物の液状溶液は、液状懸濁液に関して記述した成分の各々を含有していてもよいが、有効成分を溶媒に溶解させる補助で必ずしも懸濁剤を用いる必要はないと理解する。水性溶媒には、例えば水および等張性食塩水が含まれる。油性溶媒には、例えばアーモンド油、油状エステル、エチルアルコール、植物油、例えば落花生、オリーブ、ゴマまたはヤシ油、分溜植物油など、および鉱油、例えば液状パラフィンなどが含まれる。
【0273】
本発明の製薬学的製剤の粉末および顆粒配合物の調製は公知方法を用いて実施可能である。そのような配合物を被験体に直接投与してもよいか、それを用いて例えば錠剤を成形するか、カプセルを満たすか、或はそれに水性もしくは油性媒体を添加することで水性もしくは油性の懸濁液または溶液を生じさせることも可能である。そのような配合物の各々に更に分散もしくは湿潤剤、懸濁剤および防腐剤の中の1種以上を含有させることも可能である。また、追加的賦形剤、例えば充填剤および甘味剤、風味剤または着色剤などをそのような配合物に含有させることも可能である。
【0274】
また、本発明の製薬学的組成物の調製、包装または販売を水中油エマルジョンまたは油中水エマルジョンの形態で実施することも可能である。その油相は植物油、例えばオリーブまたは落花生油など、鉱油、例えば液状パラフィンなど、またはそれらの組み合わせであってもよい。そのような組成物に更に1種以上の乳化剤、例えば天然に存在するゴム、例えばアカシアゴムまたはトラガカントゴムなど、天然に存在するホスファチド、例えば大豆もしくはレシチンホスファチドなど、脂肪酸と無水ヘキシトールの組み合わせから誘導されたエステルもしくは部分エステル、例えばソルビタンモノオレエートなど、およびそのような部分エステルとエチレンオキサイドの縮合生成物、例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートなどを含有させることも可能である。そのようなエマルジョンにまた追加的材料を含有させることも可能であり、そのような材料には、例えば甘味剤または風味剤が含まれる。
【0275】
本明細書で用いる如き製薬学的組成物の“非経口投与”には、被験体の組織に物理的穴を開けそしてその組織の穴を通して製薬学的組成物を投与することで特徴づけられる如何なる投与経路も含まれる。従って、非経口投与には、これらに限定するものでないが、製薬学的組成物を注入するか、製薬学的組成物を外科切開を通して加えるか、製薬学的組成物を組織を貫通する非外科創傷を通して加えることなどで前記組成物を投与することが含まれる。特に、非経口投与に、これらに限定するものでないが、皮下、腹腔内、筋肉内、胸骨内注入および腎臓透析輸液技術を包含させることを意図する。
【0276】
非経口投与に適した製薬学的組成物の製剤は、有効成分を製薬学的に受け入れられる担体、例えば無菌水または無菌の等張性食塩水などと一緒に含んで成る。そのような製剤の調製、包装または販売はボーラス投与または連続投与に適した形態で実施可能である。注射可能製剤の調製、包装または販売は単位投薬形態、例えば防腐剤を入れておいたアンプルまたは複数回投与用容器などの形態で実施可能である。非経口投与に適した製剤には、
これらに限定するものでないが、油性もしくは水性媒体に入っている懸濁液、溶液、乳液、ペーストおよび移植可能な持続放出もしくは生分解性製剤が含まれる。そのような製剤に更に1種以上の追加的材料を含有させることも可能であり、そのような材料には、これらに限定するものでないが、懸濁剤、安定剤または分散剤が含まれる。非経口投与用製剤の1つの態様では、有効成分を適切な媒体(例えば、発熱物質が入っていない無菌水)で再構成させるに適した乾燥(即ち粉末または顆粒)形態で提供した後、その再構成させた組成物を非経口投与する。
【0277】
製薬学的組成物の調製、包装または販売を注射可能な無菌の水性もしくは油性懸濁液もしくは溶液の形態で実施することも可能である。そのような懸濁液もしくは溶液の調製は公知技術に従って実施可能であり、それに有効成分に加えて本明細書に記述する追加的材料、例えば分散剤、湿潤剤または懸濁剤などを含有させることも可能である。そのような注射可能な無菌製剤の調製は、非経口的に受け入れられる無毒の希釈剤もしくは溶媒、例えば水または1,3−ブタンジオールなどを用いて実施可能である。他の受け入れられる希釈剤および溶媒には、これらに限定するものでないが、リンゲル液、等張性塩化ナトリウム溶液および固定油、例えば合成モノ−もしくはジグリセリドなどが含まれる。有用な他の非経口投与可能製剤には、微結晶形態の有効成分が脂質構築物製剤の中に入っているか或は生分解性重合体系の1成分として入っている製剤が含まれる。持続放出または移植に適した組成物に、製薬学的に受け入れられる高分子または疎水性材料、例えばエマルジョン、イオン交換樹脂、難溶性重合体または難溶性塩などを含有させてもよい。
【0278】
本発明の製薬学的組成物の調製、包装または販売は口腔経由の肺投与に適した製剤として実施可能である。そのような製剤は、有効成分を含有する直径が約0.5から約7ミクロン、好適には約1から約6ミクロンの範囲の乾燥粒子を構成していてもよい。そのような組成物を便利には乾燥粉末貯蔵部を含んで成る装置を用いて投与するに適した乾燥粉末の形態にし、その装置に噴射剤の流れを向けることで前記粉末を分散させるか、或は自己噴射性溶媒/粉末分与用容器、例えば有効成分が低沸点の噴射剤に溶解または懸濁している状態で密封容器に入っている装置などを用いて投与する。好適には、そのような粉末が粒子の少なくとも98重量%が0.5ミクロン以上の直径を有しかつ粒子の数の少なくとも95%が7ミクロン未満の直径を有する粒子を構成するようにする。より好適には、粒子の少なくとも95重量%が1ナノメートル以上の直径を有しかつ粒子の数の少なくとも90%が6ミクロン未満の直径を有するようにする。乾燥粉末組成物に好適には固体状の微粉末希釈剤、例えば糖などを含有させ、便利には、単位投薬形態で提供する。
【0279】
低沸点の噴射剤には、一般に、周囲圧力における沸点が65°F未満の液状噴射剤が含まれる。一般的には、そのような噴射剤が当該組成物の50から99.9%(重量/重量)を構成しそして有効成分が当該組成物の0.1から20%(重量/重量)を構成するようにしてもよい。そのような噴射剤に更に追加的材料、例えば液状の非イオン性もしくは固体状のアニオン性界面活性剤または固体状の希釈剤(好適には当該有効成分を含んで成る粒子の粒径と同じ桁の粒径を有する)などを含有させることも可能である。
【0280】
肺送達の目的で調製する本発明の製薬学的組成物は、また、有効成分を溶液もしくは懸濁液の液滴の形態で与える組成物であってもよい。そのような製剤の調製、包装または販売は有効成分が入っている水溶液もしくは希アルコール溶液もしくは懸濁液(場合により無菌であってもよい)として実施可能でありかつそれらの投与は便利には噴霧もしくは霧化用装置のいずれかを用いて実施可能である。それらの製剤に更に1種以上に追加的材料を含有させることも可能であり、そのような材料には、これらに限定するものでないが、風味剤、例えばサッカリンナトリウム、揮発性油、緩衝剤、表面活性剤または防腐剤、例えばヒドロキシ安息香酸メチルなどが含まれる。そのような投与経路で生じる液滴の平均直径が好適には約0.1から約200ミクロンの範囲になるようにする。
【0281】
本明細書に肺送達に有用であると記述した製剤はまた本発明の製薬学的組成物を鼻内送達するにも有用である。
【0282】
鼻内送達に適した別の製剤は、有効成分を含んで成る平均粒径が約0.2から500ミクロンの粗い粉末である。そのような製剤の投与を鼻から吸う様式で実施する、即ち前記粉末が入っている容器を鼻孔の近くに保持してそれを鼻路に通して急速に吸入することで投与する。
【0283】
鼻投与に適した製剤に含有させる有効成分の量は例えば約0.1%(重量/重量)の如き少ない量から75%(重量/重量)の如き多い量であってもよく、それに更に本明細書に記述する追加的材料の中の1種以上を含有させることも可能である。
【0284】
本発明の製薬学的組成物の調製、包装または販売は口腔投与に適した製剤として実施可能である。そのような製剤は、例えば通常方法を用いて生じさせた錠剤またはロゼンジの形態であってもよく、それの有効成分含有量を例えば0.1から20%(重量/重量)にし、その残りに経口的に溶解もしくは分解し得る組成物を含めかつ場合により本明細書に記述する追加的材料の中の1種以上を含めてもよい。別法として、口腔投与に適した製剤には、有効成分が入っている粉末またはエーロゾル化もしくは霧化した溶液もしくは懸濁液も含まれ得る。そのような粉末化、エーロゾル化、または分散した時にエーロゾル化する製剤の平均粒径または液滴サイズが好適には約0.1から約200ミクロンの範囲になるようにし、そしてそれらに更に本明細書に記述する追加的材料の中の1種以上を含有させることも可能である。
【0285】
本発明の製薬学的組成物の調製、包装または販売は眼投与に適した製剤として実施可能である。そのような製剤は、例えば点眼液の形態であってもよく、それには例えば有効成分が水性もしくは油性の液状担体に0.1%−1.0%(重量/重量)入っている溶液もしくは懸濁液が含まれる。そのような点眼液に更に緩衝剤、塩類または本明細書に記述する他の追加的材料の中の1種以上を含有させることも可能である。有用な他の眼投与可能配合物には、有効成分が微結晶性形態または脂質構築物製剤の形態で入っている製剤が含まれる。
【0286】
本明細書で用いる如き“追加的材料”には、これらに限定するものでないが、下記の中の1種以上が含まれる:賦形剤、表面活性剤、分散剤、不活性希釈剤、顆粒および崩壊剤、結合剤、滑剤、甘味剤、風味剤、着色剤、防腐剤、生理学的に分解し得る組成物、例えばゼラチンなど、水性の媒体および溶媒、油性の媒体および溶媒、懸濁剤、分散もしくは湿潤剤、乳化剤、粘滑剤、緩衝剤、塩類、増粘剤、充填剤、乳化剤、抗酸化剤、抗生物質、抗菌・カビ剤、安定剤および製薬学的に受け入れられる高分子もしくは疎水性材料。本発明の製薬学的組成物に入れることができる他の“追加的材料”は本技術分野で公知でありかつ例えばGenaro編集,1985,Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,PA(これは引用することによって本明細書に組み入れられる)などに記述されている。
【0287】
動物、好適にはヒトに投与可能な本発明の組成物中の有効成分の投薬量は、典型的に、動物の体重1キログラム当たり1ミクログラムから約100gの量の範囲である。その投与する正確な投薬量は様々な要因に応じて変わるが、そのような要因には、これらに限定するものでないが、治療すべき動物の種類および病気状態の種類、動物の年齢および投与経路が含まれる。本有効成分の投薬量は好適には動物の体重1キログラム当たり約1mgから約10gに及んで多様である。より好適には、その投薬量は動物の体重1キログラム
当たり約10mgから約1gに及んで多様である。
【0288】
本組成物を動物に日に数回の如き頻度で投与してもよいか、或はそれはより少ない頻度、例えば日に1回、週に1回、2週毎に1回、月に1回または更により少ない頻度、例えば数カ月毎に1回または1年に1回またはそれより少ない回数でさえ投与可能である。そのような投薬頻度を技術を持つ医者に容易に明らかであると思われ、それは様々な要因、例えばこれらに限定するものでないが、治療すべき病気の種類およびひどさ、動物の種類および年齢などに依存するであろう。
【0289】
本発明は、また、本発明の組成物および本組成物を哺乳動物の組織に投与することを説明する使用説明資料を含んで成るキットも包含する。別の態様では、そのようなキットに、本発明の組成物を哺乳動物に投与する前に前記組成物を溶解または懸濁させるに適した溶媒(好適には無菌)も含有させる。
【0290】
本明細書で用いる如き“使用説明資料”には、本明細書に示すいろいろな病気もしくは疾患の軽減を実施することに関して本キットに入っている本発明の蛋白質が有効であることを伝える目的で使用可能な資料、記録、図または他の表現媒体のいずれも含まれる。場合によるか或は別法として、そのような使用説明資料に、哺乳動物の細胞または組織における病気または疾患を軽減する1種の方法を記述することも可能である。本発明のキットに入れる使用説明資料を例えば本発明の成分を入れる容器に固定しているか或は本発明の成分を入れる容器と一緒に輸送してもよい。別法として、その使用説明資料と本組成物を受益者が協調的に用いることを意図して、前記使用説明資料を前記容器と個別に輸送することも可能である。
【0291】
本発明の実施で用いるに有用な製薬学的組成物を投与することでインスリンを標準的用量に相当する用量で送達することができる。
【0292】
本明細書に示した製薬学的組成物の説明は原則としてヒトに処方して投与するに適した製薬学的組成物に向けたものであるが、本分野の技術者はそのような組成物は一般にあらゆる種類の動物に投与するに適することを理解するであろう。人に投与するに適した製薬学的組成物がいろいろな動物への投与に適するように前記組成物を改変することは充分に理解され、通常の技術を持つ獣医薬理学者は、単に通常(行うとしても)の実験を行うことでそのような改変を考案して実施することができるであろう。本発明の製薬学的組成物を投与することを意図する被験体には、これらに限定するものでないが、ヒトおよび他の霊長類、ペットおよび他の哺乳動物が含まれる。
【0293】
本発明の方法で用いるに有用な製薬学的組成物の調製、包装または販売は経口または注射投与経路に適した製剤として実施可能である。
【0294】
本発明の製薬学的組成物に入れる有効成分、製薬学的に受け入れられる担体および任意の追加的材料の相対量は、治療すべき被験体の同定、大きさおよび状態に応じかつ更に本組成物を投与する経路に応じても変わるであろう。
【0295】
実施例
本発明をここに以下の実施例を参照して記述する。本実施例は単に説明の目的で示すものであり、決して本発明を本実施例に限定すると解釈されるべきでなく、むしろ、本明細書に示す教示の結果として明らかになるであろう変形のいずれもおよび全部を包含させると解釈されるべきである。
【0296】
本実施例に示す実験で用いる材料および方法をここに記述する。
【実施例1】
【0297】
製薬学的組成物1
脂質構築物に脂質である1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン,コレステロール,ジセチルホスフェート,1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン,1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−(スクシニル),1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−rac−(1−グリセロール)](ナトリウム塩)と受容体結合分子である1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−(Cap ビオチニル)とインスリンの混合物を含有させる。
【実施例2】
【0298】
製薬学的組成物2
脂質構築物に脂質である1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン,コレステロール,ジセチルホスフェート,1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン,1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−(スクシニル),1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−rac−(1−グリセロ)](ナトリウム塩)とインスリンと受容体結合分子である1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−(Cap ビオチニル)および/またはポリクロム−ポリ(ビス)−[N−(2,6−(ジイソプロピルフェニル)カルバモイルメチル)イミノ]ジ酢酸]の混合物を含有させる。脂質つなぎ止め−肝細胞受容体分子である1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−(Cap ビオチニル)およびポリクロム−ポリ(ビス)−[N−(2,6−(ジイソプロピルフェニル)カルバモイル メチル)イミノジ酢酸]を前記脂質構築物にそれぞれ1.68±0.5重量%および1.2±0.5重量%の濃度で添加した。
【実施例3】
【0299】
製薬学的組成物3
脂質構築物に両親媒性脂質である1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(12.09g),コレステロール(1.60g),ジセチルホスフェート(3.10g),ポリクロム−ポリ(ビス)−[N−(2,6−(ジイソプロピルフェニル)カルバモイルメチル)イミノ]ジ酢酸](0.20g)とインスリンの混合物を含有させる。前記混合物を水性媒体に添加することで総質量を1200gにした。
【実施例4】
【0300】
インスリン含有脂質構築物の調製
両親媒性脂質分子と伸張両親媒性脂質の混合物を調製し、前記両親媒性脂質分子と伸張両親媒性脂質の混合物から脂質構築物を調製しそして前記脂質構築物の中にインスリンを組み込むことを通して、脂質構築物を生じさせた。
【0301】
両親媒性脂質分子と伸張両親媒性脂質の混合物を下記の手順で生じさせた。脂質構築物に含有させる脂質成分の混合物[全質量が8.5316g]の調製を一定分量の脂質1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(5.6881g),結晶性コレステロール(0.7980g),ジセチルホスフェート(1.5444g),1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−(Cap ビオチニル)(0.1436g),1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(0.1144g),1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−(スクシニル)(0.1245g)および1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−rac−(1−グリセロール)](ナトリウム塩
)(0.1186g)を一緒にすることで実施した。
【0302】
100mlのクロロホルム:メタノール(2:1体積:体積)溶液に脱水を5.0グラムのモレキュラーシーブを用いて受けさせた。その脂質構築物の脂質成分混合物を3リットルのフラスコに入れた後、その脂質混合物に45mlの前記クロロホルム/メタノール溶液を加えた。その溶液をロトエバポレーターに取り付けたフラスコに入れ、水浴を60℃±2℃にして、前記フラスコをゆっくり回転させた。ロータリーエバポレーターを用いて前記クロロホルム/メタノール溶液をアスピレーターを用いた真空下で約45分間除去した後、真空ポンプを約2時間用いることで残存する溶媒を除去し、それによって脂質の固体状混合物が生じた。その乾燥させた脂質混合物は約−20℃−0℃の冷凍庫内で無限に貯蔵可能である。
【0303】
下記の手順を用いて、前記両親媒性脂質分子と伸張両親媒性脂質の混合物から脂質構築物を調製した。前記脂質混合物を約600mlの28.4mM燐酸ナトリウム(一塩基性−二塩基性)緩衝液とpH7.0で混合した。前記脂質混合物を渦巻き撹拌した後、80℃±4℃に加熱しておいた水浴に30分間入れたままゆっくり回転させることで前記脂質に水和を受けさせた。
【0304】
M−110 EHIミクロ流動装置をpHが6.5−7.5の範囲のSWIを用いて70℃±10℃に前以て加熱しておいた。前記水和を受けさせた標的錯体の懸濁液を前記ミクロ流動装置に移して、前記水和標的分子錯体の懸濁液を前記流動装置に約9000psigで1回通すことでミクロ流動させた。前記ミクロ流動装置に通した後の流動懸濁液の未濾過サンプル(2.0−5.0ml)を集めて、それに単峰型分布データを用いた粒径分析をCoulter N−4プラス粒径分析装置を用いて受けさせた。あらゆる粒径測定を実施する前に、サンプルに希釈を0.2ミクロンのフィルターに通しておいたSWI(pHを6.5−7.5に調整しておいた)を用いて受けさせた。その粒径を0.020−0.40ミクロンの範囲にする必要があった。粒径が前記範囲内でない場合には、前記懸濁液を前記ミクロ流動装置に約9000psigで再び通し、そして再び粒径分析をそれが粒径要求に到達するまで受けさせた。そのミクロ流動を受けさせた標的分子錯体を無菌容器の中に集めた。
【0305】
前記ミクロ流動を受けさせた標的分子錯体を60℃±2℃に維持しながら、0.8ミクロン+0.2ミクロンの無菌ギャングフィルター(gang filter)[5.0mlのシリンジに取り付けておいた]に2回通すことで濾過した。その濾過した懸濁液の一定分量に分析を受けさせることで前記懸濁液に入っている粒子の粒径範囲を測定した。最終的に0.2ミクロンのフィルターに通したサンプルが示す粒径範囲は、粒径分析器からプリントアウトした単峰型分布から決定して0.0200−0.2000ミクロンの範囲内であるべきである。
【0306】
米国特許第5,104,661(引用することによって本明細書に組み入れられる)に記述されている方法を用いて、前記構築物に逆充填を受けさせることでインスリンを前記構築物の中に充填する。
【実施例5】
【0307】
使用方法
肝臓に向かう媒体(HDV)インスリンが肝臓グリコーゲンに対して示す効力の評価をラットモデルを用いて実施した。全体で60匹のオスSprague−Dawleyラット(8週齢、250g)を以下に記述する如き5処置グループに分けた。
【0308】
試験の1日目の間、あらゆるラットを24時間空腹状態にしたが、水は随意与えた。2
日目、ラットにアロキサンとストレプトゾトシン(AS)の混合物を腹腔内注入した。前記アロキサンとストレプトゾトシンの混合物の調製では、アロキサンの最終濃度が1mL当たり5mgでストレプトゾトシンの最終濃度が1mL当たり5mgになるように各材料を1mL当たり5mg計り取って0.01Mの燐酸塩緩衝液(pH7)に入れることで調製を実施した。そのAS混合物を体重1kg当たり20mgの量でアロキサンとストレプトゾトシンの混合物が0.5mLになるように腹腔内注入で投与した(アロキサンが10mg/kgでストレプトゾトシンが10mg/kg)。ASはインスリンを多量に放出させ、その結果として、ASを注入してから数時間後に顕著な一時的低血糖がもたらさる。水中10%のグルコース溶液を低血糖を防止するに必要な量で皮下注射することでラットを2日目の間充分に水が与えられた状態に保持した。通常の餌および水を随意取ることができるようにした。
【0309】
3日目、ベースラインの血糖サンプルを0分の時に尾の静脈から採取し、その後直ちに、ラットを割り当てたグループに相当する下記の溶液の中の1つをラット1匹当たり0.32Uのインスリンになるように皮下注射した。
(1)肝細胞標的分子(HTM)(正)対照であるCr−ジソフェニン[ポリクロム−ポリ(ビス)−[N−(2,6−(ジイソプロピルフェニル)カルバモイルメチル)イミノ]ジ酢酸]を用いたHDV−インスリン。伸張両親媒性脂質は存在させなかった。存在させた両親媒性脂質の量はラット1キログラム当たり約14.5ミクログラムの両親媒性脂質用量をもたらす量であった。
(2)レギュラーインスリン(負)対照、
(3)HDV−インスリン試験材料1[この材料の場合の伸張両親媒性脂質はビオチン−X DHPE[2,3−ジアセトキシプロピル 2−(6−(5−((3aS,6aR)−2−オキソヘキサヒドロ−1H−チエノ[3,4−d]イミダゾール−4−イル)ペンタンアミド)ヘキサンアミド)エチル燐酸トリエチルアンモニウム]であった]。存在させた両親媒性脂質の量はラット1キログラム当たり約14.5ミクログラムの両親媒性脂質用量をもたらす量であった。存在させた伸張両親媒性脂質の量はラット1キログラム当たり約191ナノグラムの伸張両親媒性脂質用量をもたらす量であった。
(4)HDV−インスリン試験材料2[この材料の場合の伸張両親媒性脂質はビオチン DHPE[2,3−ジアセトキシプロピル 2−(5−((3aS,6aR)−2−オキソヘキサヒドロ−1H−チエノ[3,4−d]イミダゾール−4−イル)ペンタンアミド)エチル燐酸トリエチルアンモニウム]であった]。存在させた両親媒性脂質の量はラット1キログラム当たり約7.25ミクログラムの両親媒性脂質用量をもたらす量であった。存在させた伸張両親媒性脂質の量はラット1キログラム当たり約95.5ナノグラムの伸張両親媒性脂質用量をもたらす量であった。
(5)HDV−インスリン試験材料3[この材料の場合の伸張両親媒性脂質はビオチン DHPE[2,3−ジアセトキシプロピル 2−(5−((3aS,6aR)−2−オキソヘキサヒドロ−1H−チエノ[3,4−d]イミダゾール−4−イル)ペンタンアミド)エチル燐酸トリエチルアンモニウム]であった]。存在させた両親媒性脂質の量はラット1キログラム当たり約14.5ミクログラムの両親媒性脂質用量をもたらす量であった。存在させた伸張両親媒性脂質の量はラット1キログラム当たり約191ナノグラムの伸張両親媒性脂質用量をもたらす量であった。
【0310】
処置グループ1および3−5の場合の両親媒性脂質は、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリンとコレステロールとジセチルホスフェートの混合物であった。
【0311】
「0」分の時、各ラットにまた375mgのグルコースを3.75mlの水に入れて(10%のグルコース)強制的に与えた。
【0312】
1時間の分が経過した時に各グループの動物の半分にケタミン(150mg/kg)/キシラジン(15mg/kg)を用いて麻酔をかけて安楽死させ、そして残りのラットを2時間が経過した時にI.P.で安楽死させた。Cr−ジソフェニンHTMを用いた以前の研究で2時間に渡る効果は統計学的に有意であることが分かっていた。肝臓全体を取り出した後、−80℃の液体窒素の中で肝臓のグリコーゲンを分析する時まで貯蔵した。
【0313】
肝臓グリコーゲンの測定をOng KCおよびKho HE、Life Sciences 67(2000)1695−1705に記述されている下記の手順を用いて実施した。凍結肝臓組織を0.3−0.5gの量で計り取って10倍体積の氷冷30%KOHに入れて均一にした後、100℃で30分間沸騰させた。グリコーゲンをエタノールで沈澱させ、ペレット状にし、洗浄した後、蒸留水で再溶解させた。グリコーゲン含有量の測定をその水溶液をアントロン試薬(1gのアントロンを500mlの濃HSOに溶解)で処理することを通して実施した。前記溶液が625nmの所で示す吸光度を分光計で測定しそして存在するグリコーゲンの量を計算した。
【0314】
その結果を図17に示し、この図では、5処置グループに関して肝臓内に存在するグリコーゲン濃度を比較する。その値は1時間目の値と2時間目の値の平均であり、これは互いに同様であった。レギュラーインスリンは肝臓のグルコースおよびグリコーゲンの貯蔵にとって刺激剤として有効でないことが分かっており、これを負対照として用いた。Cr−ジソフェニンHTMを用いたHDV−インスリンを正対照とし、これはレギュラーインスリン負対照に比べて有意にグリコーゲン含有量を高くした(p<0.05)。従って、投与後に負対照と正対照の間の有意な差を統計学的および生物学的に予測した通り観察した。
【0315】
伸張両親媒性脂質であるビオチン DHPE[2,3−ジアセトキシプロピル 2−(5−((3aS,6aR)−2−オキソヘキサヒドロ−1H−チエノ[3,4−d]イミダゾール−4−イル)ペンタンアミド)エチル燐酸トリエチルアンモニウムおよびビオチン−X DHPE[2,3−ジアセトキシプロピル 2−(6−(5−((3aS,6aR)−2−オキソヘキサヒドロ−1H−チエノ[3,4−d]イミダゾール−4−イル)ペンタンアミド)ヘキサンアミド)エチル燐酸トリエチルアンモニウム]を用いた試験材料1および3はレギュラーインスリンに比べて統計学的に高い(p=0.05)グリコーゲンレベルをもたらした。試験材料2(これにもまたビオチン−X DHPEを用いたが、脂質濃度は試験材料3に入れた脂質濃度の半分である)もより高いグリコーゲンレベルをもたらしはしたが、グループ内の変動はp=0.08になるほど大きかった。
【実施例6】
【0316】
HDV−グラルギンインスリンの製薬学的組成物
肝細胞標的組成物に水に不溶な標的分子錯体と合併しているグラルギンインスリンと遊離グラルギンインスリンの混合物を含有させる。前記錯体は1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリンとコレステロールとジセチルホスフェートの混合物を含んで成る脂質構築マトリクスおよび多数の連結した個々の単位を含んで成る。橋かけ剤であるポリクロム−ポリ(ビス)−[N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルバモイルメチル)イミノジ酢酸]を前記錯体の中に存在させる。
【実施例7】
【0317】
HDV−グラルギンインスリンの調製
標的分子錯体に含める成分の中間体混合物の調製を下記の手順で実施した。標的分子錯体に含有させる成分の混合物[全質量が2.830g]の調製を一定分量の脂質1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(2.015g),結晶性コレステロール(0.266g)およびジセチルホスフェート(0.515g)を橋かけ剤である
ポリクロム−ポリ(ビス)−[N−(2,6−(ジイソプロピルフェニルカルバモイルメチル)イミノジ酢酸](0.034g)に加えることで実施した。クロロホルム(50ml)とメタノール(25ml)の溶液に脱水をモレキュラーシーブを用いて受けさせた。その標的分子錯体の成分混合物を前記クロロホルム/メタノール溶液に加えた後、それを60℃±2℃の水浴に入れることで溶液を生じさせた。ロータリーエバポレーターを用いて前記クロロホルム/メタノール溶液をアスピレーターを用いた真空下に続いて真空ポンプを用いることで除去し、それによって固体状の中間体混合物が生じた。
【0318】
下記の手順を用いて、標的分子錯体を調製した。0.1NのNaOH溶液を105μl添加することで530mlの注射用無菌水USP(SWI)のpHをpH6.5−7.5の範囲に調整した。水を生成物の量が200gになるに充分な量で加えた。そのpHを調整しておいたSWIを前記中間体混合物(2.830g)に加えた後、その中間体混合物を80℃±2℃の水浴に入れて前記混合物を約30分±15分間、または前記混合物が明らかに均一な懸濁液になるまで回転させることで、前記混合物に水和を受けさせた。この上に示した工程中に前記懸濁液のpHが低下した。次に、0.1NのNaOHを約1.0ml添加することで前記懸濁液のpHをpH5.44±0.5pH単位に調整した。
【0319】
前記水和を受けさせておいた標的錯体の懸濁液をpHが7.0の28mM燐酸ナトリウム緩衝液を用いて70℃±10℃に前以て加熱しておいたモデルM−110 EHIミクロ流動装置に移した。前記水和標的分子錯体の懸濁液を前記流動装置に9000psigで1回通すことで前記懸濁液をミクロ流動させた。前記ミクロ流動装置に通した後の流動懸濁液の未濾過サンプル(2.0−5.0ml)を集めて、それに単峰型分布データを用いた粒径分析をCoulter N−4プラス粒径分析装置を用いて受けさせた。あらゆる粒径測定を実施する前に、サンプルに希釈を0.2ミクロンのフィルターに通しておいたSWI(pHを6.5−7.5に調整しておいた)を用いて受けさせておいた。その粒径を0.020−0.40ミクロンの範囲にする必要があった。粒径が前記範囲内でない場合には、前記懸濁液を前記ミクロ流動装置に再び通しそして再び粒径分析をそれが粒径要求に到達するまで受けさせた。そのミクロ流動を受けさせた標的分子錯体を無菌容器の中に集めた。
【0320】
前記ミクロ流動を受けさせた標的分子錯体の懸濁液を60℃±2℃に維持しながら、0.8ミクロン+0.2ミクロンの無菌ギャングフィルター(gang filter)[5.0mlのシリンジに取り付けておいた]に2回通すことで濾過した。その濾過した懸濁液の一定分量に分析を受けさせることで前記懸濁液に入っている粒子の粒径範囲を測定した。最終的に0.2ミクロンのフィルターに通したサンプルが示す粒径範囲は、粒径分析器からプリントアウトした単峰型分布から決定して0.0200−0.2000ミクロンの範囲内であった。その濾過した標的分子錯体懸濁液のpHはpH調節を実施する前3.74±0.2pH単位であった。サンプルをさらなる使用まで2−8℃の冷蔵庫の中に貯蔵した。
【0321】
水に不溶な標的分子錯体と合併しているグラルギンインスリンと遊離グラルギンインスリンの混合物を含んで成る製薬学的組成物(またHDV−グラルギンインスリンとも呼ぶ)の製造を下記の方法を用いて実施した。2回濾過しておいた前記標的分子錯体懸濁液の5.0ml分量が示すpHを下記の手順に従って無菌の0.1 NaOHを逐次的に添加することで初期のpH3.74±0.2からpH5.2±pH0.5に調整した:
pH3.74+10μlの0.1N NaOH→pH3.96
pH3.96+20μlの0.1N NaOH→pH4.52
pH4.52+10μlの0.1N NaOH→pH4.69
pH4.69+10μlの0.1N NaOH→pH5.01
pH5.01+10μlの0.1N NaOH→pH5.20
pHが5.20±0.5の前記標的分子錯体懸濁液の1.6ml分量をpHを3.95±0.2に調整しておいた18.4mlのSWIと一緒にした。その結果として生じた懸濁液のpHを10μl±1.0μの0.1N NaOHを添加することでpH4.89からpH5.27±0.5に調整した。
【0322】
5.0ml分量のLantus(商標)グラルギン−U−100インスリンのpHを混合を行いながら60μl±2μlの無菌0.1N NaOHを添加することでpH3.88±0.2からpH4.78±0.5にまで上昇させた。pHが4.78±0.5の5.0ml±0.1mlの前記グラルギンインスリン溶液にpHが5.27±0.5の前記標的分子錯体懸濁液を2.5ml±0.1mlの分量で加えることで前記水に不溶な標的分子錯体と合併しているグラルギンインスリンと遊離グラルギンインスリンの混合物を含んで成る製薬学的組成物を生じさせた。その生成物はグラルギンインスリンを懸濁液1ml当たり66.1 IU含有していた。1つの態様では、個々の投薬形態物を製造する目的で、前記錯体と合併しているグラルギンインスリンと遊離グラルギンインスリンの混合物をグラルギンインスリンが入っている瓶の中でインシトゥで生じさせることも可能である。
【実施例8】
【0323】
1型糖尿病患者における血糖値を制御する目的でHDV−グラルギンインスリンを使用する方法
HDV−グラルギンインスリンを患者に投与することでHDV−グラルギンインスリンが食事後血糖値を制御するか否かを測定した。1型糖尿病患者を7人選択した。これらの患者の選別かつ選択を検定プロトコルに示す判断基準に従って注意深く実施した。これらの患者に基本的グラルギンインスリンおよび短期作用型インスリンを用いた処置を食事時に受けさせた後、HDV−グラルギンインスリン処置期間に入らせた。HDV−グラルギンインスリンを投与する前4日間に渡って患者を監視(日程カードおよび部位接触によって)することで、彼らが受け入れられる血糖値対照であることを確かめた。朝の空腹時血糖値は100−150mg/dlの範囲内であることを確認した。
【0324】
検定中、各患者に投与するHDV−グラルギンインスリンの量を1日当たりの通常の基本的グラルギンインスリン投与量の1.2Xにすることで、試験日に投与されないであろう短期作用型インスリンの量を補った。設定スケジュールに従って血液サンプルを13時間に渡って採取した。この上に記述した方法を用いてHDVをグラルギンインスリンに添加することでグラルギンの最終濃度が1ml当たり66.1 IUでHDVの最終濃度が1ml当たり0.37mgの懸濁液を生じさせた。前記患者に朝食前1時間の時にHDV−グラルギンインスリンを注射した。1日3回の食事、即ち朝食、昼食および夕食の各々における食事の炭水化物量を栄養士によって60グラムに設定した。
【0325】
この実施例に示した実験の結果をここに説明する。前記患者はHDV−グラルギンインスリンを良好に許容しかつ注射部位に副作用は全く見られなかった。この処置を受けさせた患者に低血糖反応は観察されなかった。HDV−グラルギンインスリンを用いた処置を受けさせた患者の血糖値を図18にグラフで示す。図18は、予測した通り、食事後に血糖濃度が高くなりそして次の食事を取るまで経時的に血糖濃度が低下することを示している。このようなパターンを4人の患者全員に観察した。図19に、その日の間に3回の食事を取った患者の平均血糖濃度に対してHDV−グラルギンインスリンを1回投与した時の効果を示す。個々の患者の場合と同様に、食事を取った後に血糖濃度が高くなりそして次の食事を取るまで経時的に血糖濃度が低下した。平均血糖濃度はあらゆる時間点でベースライン値よりも高かった。そのような曲線は、HDV−グラルギンインスリンの効力がその日全体に渡って向上することを示している、と言うのは、昼食後および夕食後の濃度を朝食後のそれと比べた時の高濃度と低濃度の間の変動が低かったからである。HDV−
グラルギンインスリンが経時的に血糖濃度に対して示した効果を空腹中の血糖濃度と比較して図20に示す。血糖濃度は食事後に高くなった後、経時的に次の食事を取るまで空腹時の血糖値に向かって低下した。血糖濃度は検定全体に渡って空腹時濃度よりも高かった。患者をHDV−グラルギンインスリンで処置すると結果として食事後血糖値の制御がある程度もたらされ、このことは、食事時にHDVがグラルギン−インスリンをそのような制御をもたらすに充分な量で肝臓に運ぶ能力を有することを示している。血糖値は、基本的なインスリン治療を通常受けていることに加えて食事時に短期作用型インスリンを受けている1型患者に典型的な値であった。
【実施例9】
【0326】
HDV−フムリンNPHインスリン#1の製薬学的組成物
肝細胞標的組成物に水に不溶な標的分子錯体と合併している組換え型ヒトインスリンイソフェンと遊離組換え型ヒトインスリンイソフェンの混合物を含有させる。前記錯体は1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリンとコレステロールとジセチルホスフェートの混合物を含んで成る脂質構築物マトリクスおよび多数の連結した個々の単位を含んで成る。橋かけ剤であるポリクロム−ポリ(ビス)−[N−(2,6−(ジイソプロピルフェニルカルバモイルメチル)イミノジ酢酸]を前記錯体の中に存在させる。
【実施例10】
【0327】
HDV−フムリンNPHインスリン#2の製薬学的組成物
肝細胞標的組成物に水に不溶な標的分子錯体と合併している組換え型ヒトインスリンイソフェンおよび組換え型ヒトレギュラーインスリンと遊離組換え型ヒトインスリンイソフェンと遊離組換え型ヒトレギュラーインスリンの混合物を含有させる。前記錯体は1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリンとコレステロールとジセチルホスフェートの混合物を含んで成る脂質構築物マトリクス
および多数の連結した個々の単位を含んで成る。橋かけ剤であるポリクロムポリ(ビス)[N−(2,6−ジイソプロピルフェニルカルバモイルメチル)イミノジ酢酸]を前記錯体の中に存在させる。
【実施例11】
【0328】
HDV−フムリンNPHインスリンの調製
標的分子錯体に含める成分の中間体混合物の調製を下記の手順で実施した。標的分子錯体に含有させる成分の混合物[全質量が2.830g]の調製を一定分量の脂質1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(2.015g)、結晶性コレステロール(0.266g)およびジセチルホスフェート(0.515g)を橋かけ剤であるポリクロムポリ(ビス)[N−(2,6−ジイソプロピルフェニルカルバモイルメチル)イミノジ酢酸](0.034g)に加えることで実施した。クロロホルム(50ml)とメタノール(25ml)の溶液に脱水をモレキュラーシーブを用いて受けさせた。その標的分子錯体の成分混合物を25.0mlの前記クロロホルム/メタノール溶液に加えた後、それを60℃±2℃の水浴に入れることで溶液を生じさせた。ロータリーエバポレーターを用いて前記クロロホルム/メタノール溶液をアスピレーターを用いた真空下に続いて真空ポンプを用いることで除去し、それによって固体状の中間体混合物が生じた。
【0329】
下記の手順を用いて標的分子錯体を調製した。前記中間体混合物にpHが7.0の28mM燐酸ナトリウム緩衝液を約200ml添加することで水性懸濁液を生じさせた。その水性懸濁液を80℃±2℃の水浴に入れて前記混合物を約30分±15分間、または前記混合物が明らかに均一な懸濁液になるまで回転させることで、前記懸濁液に水和を受けさせた。
【0330】
前記水和を受けさせておいた標的錯体の懸濁液をpHが7.0の28mM燐酸ナトリウ
ム緩衝液を用いて70℃±10℃に前以て加熱しておいたモデルM−110 EHIミクロ流動装置に移した。前記水和を受けさせた標的分子錯体の懸濁液を前記流動装置に9000psigで1回通すことで前記懸濁液をミクロ流動させた。前記ミクロ流動装置に通した後の流動懸濁液の未濾過サンプル(2.0−5.0ml)を集めて、それに単峰型分布データを用いた粒径分析をCoulter N−4プラス粒径分析装置を用いて受けさせた。あらゆる粒径測定を実施する前に、サンプルに希釈をpHが7.0の28mM燐酸ナトリウム緩衝液を用いて受けさせておいた。その粒径が0.020−0.40ミクロンの範囲内でない場合には、前記懸濁液を前記ミクロ流動装置に再び通しそして再び粒径を分析した。これを粒径が0.020−0.40ミクロンの範囲内になるまで繰り返す。そのミクロ流動を受けさせた標的分子錯体の懸濁液を無菌容器の中に集めた。
【0331】
前記ミクロ流動を受けさせた標的分子錯体の懸濁液を60℃±2℃に維持しながら、0.8ミクロン+0.2ミクロンの無菌ギャングフィルター[5.0mlのシリンジに取り付けておいた]に通すことで濾過した。その濾過した懸濁液の一定分量に分析を受けさせることで前記懸濁液に入っている粒子の粒径範囲を測定した。最終的に0.2ミクロンのフィルターに通したサンプルが示した粒径範囲は、粒径分析器からプリントアウトした単峰型分布から決定して0.0200−0.2000ミクロンの範囲内であった。その濾過した標的分子錯体懸濁液のpHは7.0±0.5pH単位であった。サンプルをさらなる使用まで2−8℃の冷蔵庫の中に貯蔵した。
【0332】
その濾過したHDV−脂質懸濁液はHDV脂質を1ml当たり14.15mg含有していた。0.8ml分量の前記懸濁液を10.0mlのフムリンRインスリン瓶に加えた後、2−8℃で7日間インキュベートした。次に、無菌シリンジを用いて前記10.0mlのフムリンRインスリンHDV懸濁液の中の5.0mlを取り出した。その瓶に入っている残りの5.0mlのフムリンRインスリンに5.0mlのフムリンNPHインスリンを添加することで最終的HDV製品を生じさせた。その最終的HDV組成物はHDVフムリンRとHDVフムリンNPHインスリンを組み合わせて懸濁液1ml当たり93.6単位含有しかつHDV脂質を1ml当たり0.52mg含有していた。そのような組成物を個々の投薬形態物を製造する目的でインシトゥで生じさせることも可能であり、その組成物は、脂質構築物と合併しているフムリンRインスリンとフムリンNPHインスリンの両方と遊離フムリンRインスリンと遊離フムリンNPHインスリンの混合物を含有して成っていた。
【実施例12】
【0333】
1型糖尿病患者における血糖値を制御する目的でHDVフムリンRインスリンとHDV−フムリンNPHインスリンを組み合わせて使用する方法
HDV−フムリンNPHインスリンを患者に投与することでHDV−フムリンNPHインスリンが食事後血糖値を制御するか否かを測定した。1型糖尿病患者を7人選択した。これらの患者の選別かつ選択を検定プロトコルに示す判断基準に従って注意深く実施した。これらの患者に基本的フムリンNPHインスリンおよび短期作用型インスリンを用いた処置を食事時に受けさせた後、HDV−フムリンNPHインスリン処置期間に入らせた。HDV−フムリンNPHインスリンを投与する前4日間に渡って患者を監視(日程カードおよび部位接触によって)することで、彼らが受け入れられる血糖値対照であることを確かめた。朝の空腹時の血糖値は100−150mg/dlの範囲内であることを確認した。
【0334】
検定中、各患者に投与するHDV−フムリンNPHインスリンの量を1日当たりの通常の基本的フムリンNPHインスリン投与量の1.2Xにすることで、試験日に投与されないであろう短期作用型インスリンの量を補った。設定スケジュールに従って血液サンプルを13時間に渡って採取した。この上に記述した方法を用いてHDVをフムリンNPHイ
ンスリンに添加することでHDVフムリンRインスリンとHDVフムリンNPHインスリンを一緒にした最終濃度が1ml当たり93.6単位の懸濁液を生じさせた。その最終的懸濁液はHDV脂質を1ml当たり0.52mg含有していた。前記患者に朝食前1時間の時にその組み合わせたHDV−インスリンを注射した。1日3回の食事、即ち朝食、昼食および夕食の各々における食事の炭水化物量を栄養士によって60グラムに設定した。
【0335】
この実施例に示した実験の結果をここに説明する。前記患者はHDV−フムリンNPHインスリンを良好に許容しかつ注射部位に副作用は全く見られなかった。この処置を受けさせた患者に低血糖反応は観察されなかった。HDV−フムリンNPHインスリンを用いた処置を受けさせた患者の血糖値を図21にグラフで示す。図21は、予測した通り、食事後に血糖濃度が高くなりそして次の食事を取るまで経時的に血糖濃度が低下することを示している。このようなパターンを4人の患者全員に観察した。図22に、その日の間に3回の食事を取った患者の平均血糖濃度に対してHDV−フムリンNPHインスリンを1回投与した時の効果を示す。個々の患者の場合と同様に、食事を取った後に血糖濃度が高くなりそして次の食事を取るまで経時的に血糖濃度が低下した。平均血糖濃度はあらゆる時間点でベースライン値よりも高かった。そのような曲線は、HDV−フムリンNPHインスリンの効力がその日全体に渡って向上することを示している、と言うのは、昼食後および夕食後の濃度を朝食後のそれと比べた時の高濃度と低濃度の間の変動が低かったからである。HDV−フムリンNPHインスリンが経時的に血糖濃度に対して示した効果を空腹中の血糖濃度と比較して図23に示す。血糖濃度は食事後に高くなった後、経時的に次の食事を取るまで空腹時の血糖値に向かって低下した。血糖濃度は検定全体に渡って空腹時濃度よりも高かった。患者をHDV−フムリンNPHインスリンで処置すると結果として食事後血糖値の制御がある程度もたらされ、このことは、食事時にHDVがフムリンNPHインスリンをそのような制御をもたらすに充分な量で肝臓に運ぶ能力を有することを示している。血糖値は、基本的なインスリン治療を通常受けていることに加えて食事時に短期作用型インスリンを受けている1型患者に典型的な値であった。
【0336】
本発明を特定の態様を言及することで開示してきたが、本分野の他の技術者は本発明の真の精神および範囲から逸脱することのない本発明の他の態様および変形を考案することができることは明らかである。添付請求項にそのような態様および相当する変形の全部を包含させると解釈されるべきであることを意図する。
【図面の簡単な説明】
【0337】
本発明を例示する目的で本発明の特定の態様を本図に示す。しかしながら、本発明を本図に示す態様の正確な配置および手段に限定するものでない。
【図1】図1は、インスリンと両親媒性脂質分子と伸張両親媒性脂質を含んで成るインスリン結合脂質構築物の図である。
【図2】図2は、ビオシチンの製造経路を示す図である。
【図3】図3は、イミノビオシチンの製造経路を示す図である。
【図4】図4は、ベンゾイルチオアセチルトリグリシンイミノビオシチン(BTA−3gly−イミノビオシチン)の製造経路を示す図である。
【図5】図5は、ベンゾイルチオアセチルトリグリシンの製造経路を示す図である。
【図6】図6は、ベンゾイルチオアセチルトリグリシンスルホ−N−ヒドロキシスクシニミド(BTA−3−gly−スルホ−NHS)の製造経路を示す図である。
【図7】図7は、ベンゾイルチオアセチルトリグリシンイミノビオシチン(BTA−3−gly−イミノビオシチン)の製造経路を示す図である。
【図8】図8は、脂質つなぎ止めおよび肝細胞受容体結合分子(LA−HRBM)の製造経路を示す図である。
【図9】図9は、酢酸水素フタル酸セルロースとインスリンの間の可能な結合部位を示す図である。
【図10】図10は、イミノビオチンの構造的変化を酸性条件と塩基性条件を対比させて示す図である。
【図11】図11は、グラルギンインスリンの化学的構造を示す図である。
【図12】図12は、組換え型ヒトインスリンイソフェンおよびプロタミン蛋白質の化学的構造を示す図である。
【図13】図13は、水に不溶な標的分子錯体と合併しているインスリンと遊離インスリンが一緒に入っている製薬学的組成物を示す図である。
【図14】図14は、両親媒性脂質分子と伸張両親媒性脂質を含んで成るインスリン結合脂質構築物を製造する方法の概略である。
【図15】図15は、水に不溶な標的分子錯体と合併しているグラルギンインスリンと遊離グラルギンインスリンが一緒に入っている肝細胞標的製薬学的組成物を製造する方法の概略である。
【図16】図16は、水に不溶な標的分子錯体(組換え型ヒトレギュラーインスリンの一部が脂質構築物と合併している状態および遊離状態の両方で入っている)と合併している組換え型ヒトインスリンイソフェンと遊離組換え型ヒトインスリンイソフェンが一緒に入っている肝細胞標的製薬学的組成物を製造する方法の概略である。
【図17】図17に、いろいろな肝細胞標的組成物を用いて処置したラットの肝臓に存在するグリコーゲンの濃度を示す。
【図18】図18は、HDV−グラルギンインスリンを用いて朝食前に一度処置した個々の患者の血液中の糖濃度のグラフである。
【図19】図19は、その日の間に食事を3回取った患者の平均血糖濃度に対してHDV−グラルギンインスリンを1回投与した時の効果を示すグラフである。
【図20】図20は、空腹中の血糖濃度を基準にした経時的血糖濃度に対してHDV−グラルギンインスリンが示した効果を示すグラフである。
【図21】図21は、HDV−フムリンNPHインスリンを用いて朝食前に一度処置した個々の患者の血液中の糖濃度のグラフである。
【図22】図22は、その日の間に食事を3回取った患者の平均血糖濃度に対してHDV−フムリンNPHインスリンを1回投与した時の効果を示すグラフである。
【図23】図23は、空腹中の血糖濃度を基準にした経時的血糖濃度に対してHDV−フムリンNPHインスリンが示した効果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両親媒性脂質および伸張両親媒性脂質を含んで成る脂質構築物であって、前記伸張両親媒性脂質が近位、中位および遠位部分を含み、前記近位部分が前記伸張両親媒性脂質を該構築物と連結させており、前記遠位部分によって該構築物が肝細胞が提示する受容体を標的にしそして前記中位部分が前記近位部分と遠位部分を連結させている、上記脂質構築物。
【請求項2】
少なくとも1種のインスリンも、更に、含んで成る請求項1記載の脂質構築物。
【請求項3】
前記少なくとも1種のインスリンがインスリンリスプロ、インスリンアスパルト、レギュラーインスリン、インスリングラルギン、インスリン亜鉛、持続型ヒトインスリン亜鉛、イソフェンインスリン、ヒト緩衝レギュラーインスリン、インスリングルリシン、組換え型ヒトレギュラーインスリン、組換え型ヒトインスリンイソフェン、前記インスリンのいずれかの予混合組み合わせ、それらの誘導体および前記インスリンのいずれかの組み合わせから成る群から選択される請求項2記載の脂質構築物。
【請求項4】
該脂質構築物と合併している不溶形態の少なくとも1種のインスリンも、更に、含んで成る請求項2記載の脂質構築物。
【請求項5】
前記両親媒性脂質が1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン、コレステロール、ジセチルホスフェート、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロール−[3−ホスホ−rac−(1−グリセロ)]、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−(スクシニル)、これらの誘導体および前記化合物のいずれかの混合物から成る群から選択される少なくとも1種の脂質を含んで成る請求項1記載の脂質構築物。
【請求項6】
前記伸張両親媒性脂質の近位部分がバックボーンと結合している長鎖アシル炭化水素鎖を少なくとも1個であるが、2個以下の数で含有していて、前記炭化水素鎖の各々が独立して飽和炭化水素鎖および不飽和炭化水素鎖から成る群から選択される請求項1記載の脂質構築物。
【請求項7】
前記バックボーンがグリセロールを含んで成る請求項7記載の脂質構築物。
【請求項8】
前記伸張両親媒性脂質の遠位部分がビオチン、ビオチン誘導体、イミノビオチン、イミノビオチン誘導体、ビオシチン、ビオシチン誘導体、イミノビオシチン、イミノビオシチン誘導体および肝細胞中の受容体と結合する肝細胞特異的分子から成る群から選択される少なくとも一員を含んで成る請求項1記載の脂質構築物。
【請求項9】
前記伸張両親媒性脂質がN−ヒドロキシスクシニミド(NHS)ビオチン;スルホ−NHS−ビオチン;N−ヒドロキシスクシニミド長鎖ビオチン,スルホ−N−ヒドロキシスクシニミド長鎖ビオチン;D−ビオチン;ビオシチン;スルホ−N−ヒドロキシスクシニミド−S−S−ビオチン;ビオチン−BMCC;ビオチン−HPDP;ヨードアセチル−LC−ビオチン;ビオチン−ヒドラジド;ビオチン−LC−ヒドラジド;ビオシチンヒドラジド;ビオチンカダベリン;カルボキシビオチン;フォトビオチン;トリフルオロ酢酸ρ−アミノベンゾイルビオシチン;ρ−ジアゾベンゾイルビオシチン;ビオチン DHPE;ビオチン−X−DHPE;12−((ビオチニル)アミノ)ドデカン酸;12−((ビオチニル)アミノ)ドデカン酸スクシニミジルエステル;S−ビオチニルホモシステイン;ビオシチンX;ビオシチン x−ヒドラジド;ビオチンエチレンジアミン;ビオチン
−XL;ビオチン−X−エチレンジアミン;ビオチン−XX−ヒドラジド;ビオチン−XX−SE;ビオチン−XX,SSE;ビオチン−X−カダベリン;α−(t−BOC)ビオシチン;N−(ビオチニル)−N’−(ヨードアセチル)エチレンジアミン;DNP−X−ビオシチンX−SE;ビオチン−X−ヒドラジド;塩酸ノルビオチンアミン;3−(N−マレイミジルプロピオニル)ビオシチン;ARP;ビオチン−l−スルホキサイド;ビオチンのメチルエステル;ビオチン−マレイミド;ビオチン−ポリ(エチレングリコール)アミン;(+)ビオチン 4−アミド安息香酸ナトリウム塩;ビオチン 2−N−アセチルアミノ−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシド;ビオチン−α−D−N−アセチルニューラミニド;ビオチン−α−L−フコシド;ビオチンラクト−N−ビオシド;ビオチン-ルイス−A 三糖;ビオチン-ルイス−Y 四糖;ビオチン−α−D−マンノピラノシド;ビオチン 6−O−ホスホ−α−D−マンノピラノシド;およびポリクロム−ポリ(ビス)−[N−(2,6−(ジイソプロピルフェニル)カルバモイル メチル)イミノ]ジ酢酸から成る群から選択される請求項1記載の脂質構築物。
【請求項10】
前記伸張両親媒性脂質の中位部分がチオ−アセチルトリグリシン重合体またはこれの誘導体を含んでおり、前記伸張両親媒性脂質の分子が該脂質構築物の表面から外側に伸びている請求項1記載の脂質構築物。
【請求項11】
更に水に不溶な標的分子錯体と合併している少なくとも1種のインスリンも含み、前記錯体が多数の連結した個々の単位を含んでおり、ここで、前記個々の単位が、
a.遷移元素、内部遷移元素、遷移元素の同胞元素および前記元素のいずれかの混合物から成る群から選択される橋かけ成分;および
b.錯体形成成分;
を含んで成るが、但し前記遷移元素がクロムの時にはクロム標的分子錯体が生じることを条件とする請求項2記載の脂質構築物。
【請求項12】
前記標的分子錯体と合併していない少なくとも1種のインスリンも、更に、含んで成る請求項11記載の脂質構築物。
【請求項13】
前記橋かけ成分がクロムである請求項11記載の脂質構築物。
【請求項14】
前記錯体形成成分がポリ(ビス)−[(N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルバモイルメチル)イミノジ酢酸]を含んで成る請求項11記載の脂質構築物。
【請求項15】
前記伸張両親媒性脂質の遠位成分が非極性誘導体化ベンゼン環または複素二環式環構造を含んで成る請求項1記載の脂質構築物。
【請求項16】
該構築物が正電荷、負電荷またはこれらの組み合わせを含んで成る請求項1記載の脂質構築物。
【請求項17】
前記伸張両親媒性脂質が前記遠位部分の末端終点から約13.5オングストローム以内の距離に位置するカルボニル部分を少なくとも1個含んで成る請求項1記載の脂質構築物。
【請求項18】
前記伸張両親媒性脂質が第二級アミン含有カルバモイル部分を少なくとも1個含んで成る請求項1記載の脂質構築物。
【請求項19】
前記伸張両親媒性脂質が帯電したクロムを中位に含んで成る請求項1記載の脂質構築物。
【請求項20】
酢酸水素フタル酸セルロースも、更に、含んで成る請求項1記載の脂質構築物。
【請求項21】
前記インスリンと結合している少なくとも1種の帯電した有機分子も、更に、含んで成る請求項2記載の脂質構築物。
【請求項22】
前記帯電した有機分子がプロタミン、ポリリシンの誘導体、高度に塩基性のアミノ酸重合体、モル比が1:1:1のポリ(arg−pro−thr)、モル比が6:1のポリ(DL−Ala−ポリ−L−lys)、ヒストン、第一級アミノ基による正帯電を有する糖重合体、第一級アミノ基を有するポリヌクレオチド、カルボキシル化重合体および高分子量アミノ酸、カルボキシル(COO)またはスルフヒドラール(S)官能基を有するアミノ酸残基を多量に含有する蛋白質フラグメント、負帯電末端酸性カルボキシル基を有する蛋白質誘導体、酸性重合体、負帯電カルボキシル基を有する糖重合体、それらの誘導体および前記化合物の任意組み合わせから成る群から選択される請求項2記載の脂質構築物。
【請求項23】
両親媒性脂質および伸張両親媒性脂質を含み、前記伸張両親媒性脂質が近位、中位および遠位部分を含んでおり、ここで、前記近位部分が前記伸張両親媒性脂質を該構築物と連結させており、前記遠位部分によって該構築物が肝細胞が提示する受容体を標的にしそして前記中位部分が前記近位部分と遠位部分を連結させている脂質構築物を製造する方法であって、
a.前記両親媒性脂質と伸張両親媒性脂質を含んで成る混合物を生じさせ;そして
b.前記脂質構築物が水性媒体に入っている懸濁液を生じさせる;
ことを含んで成る、上記方法。
【請求項24】
インスリン、両親媒性脂質および伸張両親媒性脂質を含み、前記伸張両親媒性脂質が近位、中位および遠位部分を含んでおり、ここで、前記近位部分が前記伸張両親媒性脂質を該構築物と連結させており、前記遠位部分によって該構築物が肝細胞が提示する受容体を標的にしそして前記中位部分が前記近位部分と遠位部分を連結させている脂質構築物を製造する方法であって、
a.前記両親媒性脂質と伸張両親媒性脂質を含んで成る混合物を生じさせ;
b.前記脂質構築物が水性媒体に入っている懸濁液を生じさせ;そして
c.インスリンを前記脂質構築物の中に充填する;
ことを含んで成る、上記方法。
【請求項25】
前記インスリンを前記脂質構築物の中に充填する段階が平衡充填および非平衡充填を含んで成る請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記インスリンを前記脂質構築物に充填する段階が遊離インスリンが入っている溶液を前記脂質構築物が水性媒体に入っている混合物に添加しそして前記インスリンと前記混合物を平衡状態に到達するまで接触させたままにしておくことを含んで成る請求項24記載の方法。
【請求項27】
d.前記混合物が平衡に到達した後に前記インスリンを前記脂質構築物の中に最終的に充填し、前記遊離インスリンが入っている溶液を前記構築物から除去し、更に、前記構築物がインスリンも含有する、
段階も、更に、含んで成る請求項24記載の方法。
【請求項28】
e.急速濾過手順、遠心分離、濾過遠心分離およびイオン交換樹脂またはビオチン、イミノビオチンもしくはこれらの誘導体に親和性を示すストレプトアビジンアガロース親和性樹脂ゲルが用いられているクロマトグラフィーから成る群から選択した方法を用いて前記
遊離インスリンが入っている溶液を前記構築物と合併している少なくとも1種のインスリンを含む前記脂質構築物から除去する、
段階も、更に、含んで成る請求項27記載の方法。
【請求項29】
f.多数の連結した個々の単位を含むクロム錯体を前記脂質構築物に添加する、
段階も、更に、含んで成る請求項24記載の方法。
【請求項30】
g.酢酸水素フタル酸セルロースを前記脂質構築物に添加する、
段階も、更に、含んで成る請求項24記載の方法。
【請求項31】
h.インスリン、イオン交換樹脂およびストレプトアビジンアガロース親和性ゲルから成る群から選択した少なくとも1種の材料を工程から回収する、
段階も、更に、含んで成る請求項24記載の方法。
【請求項32】
前記インスリンを前記脂質構築物の中に充填する段階が前記インスリンを前記脂質構築物に充填する前に少なくとも1種の帯電した有機分子を前記インスリンに添加しておく段階を含んで成る請求項24記載の方法。
【請求項33】
少なくとも1種のインスリンが患者内で示す生物学的利用能を向上させる方法であって、
a.少なくとも1種のインスリンを多数の非共有多座結合部位を含む脂質構築物と一緒にし、そして
b.前記インスリンを含む構築物を前記患者に投与する、
ことを含んで成る、上記方法。
【請求項34】
少なくとも1種の有効成分が示す等電点を調節する段階も、更に、含んで成る請求項33記載の方法。
【請求項35】
前記インスリンがインスリンリスプロ、インスリンアスパルト、レギュラーインスリン、インスリングラルギン、インスリン亜鉛、持続型ヒトインスリン亜鉛、イソフェンインスリン、ヒト緩衝レギュラーインスリン、インスリングルリシン、組換え型ヒトレギュラーインスリン、組換え型ヒトインスリンイソフェン、前記インスリンのいずれかの予混合組み合わせ、それらの誘導体および前記インスリンのいずれかの組み合わせから成る群から選択される請求項33記載の方法。
【請求項36】
前記脂質構築物がインスリン,1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン,コレステロール,ジセチルホスフェート,1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−[3−ホスホ−rac−(1−グリセロール)],1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミンおよび1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−(スクシニル)または誘導体および肝細胞受容体結合分子を含んで成る請求項33記載の方法。
【請求項37】
前記インスリンを前記脂質構築物と一緒にする前に少なくとも1種の帯電した有機分子を前記インスリンに添加しておく段階も、更に、含んで成る請求項33記載の方法。
【請求項38】
インスリンが宿主内で示す生体内分布を向上させる徐放性組成物を製造する方法であって、
a.脂質構築物をイミノビオチンまたはイミノビオチン誘導体を含む脂質を通してストレプトアビジンアガロース親和性ゲルとpH9.5以上で結合させることで前記構築物を多
量相媒体から取り出し;
b.前記構築物を前記多量相媒体から分離し;そして
c.前記親和性ゲルの水性混合物のpHをpH4.5に調整することで前記構築物を前記親和性ゲルから放出させるが、前記放出された構築物が少なくとも1種の不溶インスリンを含み;ここで、
前記構築物を温血宿主に投与した後に前記不溶インスリンが宿主内の生理学的pH条件下で再溶解する、
ことを含んで成る、上記方法。
【請求項39】
糖尿病にかかっている患者を治療する方法であって、前記患者に脂質構築物と合併しているインスリンを含んで成る前記構築物を有効量で投与することを含んで成る、上記方法。
【請求項40】
前記インスリンがインスリンリスプロ、インスリンアスパルト、レギュラーインスリン、インスリングラルギン、インスリン亜鉛、持続型ヒトインスリン亜鉛、イソフェンインスリン、ヒト緩衝レギュラーインスリン、インスリングルリシン、組換え型ヒトレギュラーインスリン、組換え型ヒトインスリンイソフェン、前記インスリンのいずれかの予混合組み合わせ、それらの誘導体および前記インスリンのいずれかの組み合わせから成る群から選択される請求項39記載の方法。
【請求項41】
前記脂質構築物が更に標的分子錯体も含み、前記錯体が多数の連結した個々の単位を含んでおり、ここで、前記連結した個々の単位が、
a.遷移元素、内部遷移元素、遷移元素の同胞元素および前記元素のいずれかの混合物を包含する群から選択される橋かけ成分;および
b.錯体形成成分;
を含んで成るが、但し前記遷移元素がクロムの時にはクロム標的分子錯体が生じることを条件とする請求項39記載の方法。
【請求項42】
前記脂質構築物が前記標的分子錯体と合併していないインスリンも、更に、含んで成る請求項39記載の方法。
【請求項43】
前記投与の経路が経口または皮下である請求項39記載の方法。
【請求項44】
前記構築物と合併している前記インスリンがこのインスリンと結合している少なくとも1種の帯電した有機分子を含んで成る請求項39記載の方法。
【請求項45】
糖尿病にかかっている患者の肝臓の中の肝細胞へのインスリンの送達を向上させる方法であって、インスリン、両親媒性脂質および伸張脂質を含み、前記伸張脂質が肝細胞受容体と結合する部分を含んでいる複数の大きさで存在する脂質構築物を前記患者に投与することによる方法。
【請求項46】
前記インスリンがインスリンリスプロ、インスリンアスパルト、レギュラーインスリン、インスリングラルギン、インスリン亜鉛、持続型ヒトインスリン亜鉛、イソフェンインスリン、ヒト緩衝レギュラーインスリン、インスリングルリシン、組換え型ヒトレギュラーインスリン、組換え型ヒトインスリンイソフェン、前記インスリンのいずれかの予混合組み合わせ、それらの誘導体および前記インスリンのいずれかの組み合わせから成る群から選択される請求項45記載の方法。
【請求項47】
前記インスリンが加水分解酵素に近づかないように脂質分子の三次元構造配列を生じさせることで前記脂質構築物内の前記インスリンを加水分解による劣化から保護することも、更に、含んで成る請求項45記載の方法。
【請求項48】
酢酸水素フタル酸セルロースを前記脂質構築物に添加することで個々の脂質分子と反応させることも、更に、含んで成る請求項45記載の方法。
【請求項49】
不溶化した投薬形態のインスリンを前記脂質構築物内に生じさせることも、更に、含んで成る請求項45記載の方法。
【請求項50】
糖尿病にかかっている哺乳動物を治療する時に用いるに適したキットであって、両親媒性脂質および伸張両親媒性脂質を含み、前記伸張両親媒性脂質が近位、中位および遠位部分を含んでおり、ここで、前記近位部分が前記伸張両親媒性脂質を該構築物と連結させており、前記遠位部分によって該構築物が肝細胞が提示する受容体を標的にしそして前記中位部分が前記近位部分と遠位部分を連結させている脂質構築物、生理学的緩衝剤溶液、アプリケーターおよび使用説明資料を含んで成る、上記キット。
【請求項51】
少なくとも1種のインスリンも、更に、含んで成る請求項50記載のキット。
【請求項52】
肝細胞を標的にする組成物であって、
a.少なくとも1種の遊離インスリン、および
b.水に不溶な標的分子錯体と合併している少なくとも1種のインスリン、
を含んでおり、前記標的分子錯体が
a.i.遷移元素、内部遷移元素および遷移元素の同胞元素から成る群から選択される少なくとも1種の橋かけ成分;および
ii.錯体形成成分;
を含む複数の連結した個々の単位、および
b.少なくとも1種の脂質成分を含んで成る脂質構築物マトリクス
の組み合わせで構成されているが、但し
前記遷移元素がクロムの時にはクロム標的分子錯体が生じることを条件とし、更に、
前記標的分子錯体が負電荷を有する、
ことも条件とする肝細胞を標的にする、上記組成物。
【請求項53】
前記インスリンがインスリンリスプロ、インスリンアスパルト、レギュラーインスリン、インスリングラルギン、インスリン亜鉛、持続型ヒトインスリン亜鉛、イソフェンインスリン、ヒト緩衝レギュラーインスリン、インスリングルリシン、組換え型ヒトレギュラーインスリン、組換え型ヒトインスリンイソフェン、前記インスリンのいずれかの予混合組み合わせ、それらの誘導体および前記インスリンのいずれかの組み合わせから成る群から選択される請求項52記載の肝細胞を標的にする組成物。
【請求項54】
前記インスリンがインスリンの生物学的活性を有するインスリン様部分(インスリン分子のフラグメントを包含)を含んで成る請求項52記載の肝細胞を標的にする組成物。
【請求項55】
前記脂質成分が1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン、1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン、コレステロール、コレステロールオレエート、ジセチルホスフェート、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスフェート、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスフェートおよび1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスフェートから成る群から選択される少なくとも1種の脂質を含んで成る請求項52記載の肝細胞を標的にする組成物。
【請求項56】
前記脂質成分が1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン、コレステロールおよびジセチルホスフェートから成る群から選択される少なくとも1種の脂質を
含んで成る請求項52記載の肝細胞を標的にする組成物。
【請求項57】
前記脂質成分が1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリンとコレステロールとジセチルホスフェートの混合物を含んで成る請求項52記載の肝細胞を標的にする組成物。
【請求項58】
前記橋かけ成分がクロムである請求項52記載の肝細胞を標的にする組成物。
【請求項59】
前記錯体形成成分が
N−(2,6−ジイソプロピルフェニルカルバモイルメチル)イミノジ酢酸;
N−(2,6−ジエチルフェニルカルバモイルメチル)イミノジ酢酸;
N−(2,6−ジメチルフェニルカルバモイルメチル)イミノジ酢酸;
N−(4−イソプロピルフェニルカルバモイルメチル)イミノジ酢酸;
N−(4−ブチルフェニルカルバモイルメチル)イミノジ酢酸;
N−(2,3−ジメチルフェニルカルバモイルメチル)イミノジ酢酸;
N−(2,4−ジメチルフェニルカルバモイルメチル)イミノジ酢酸;
N−(2,5−ジメチルフェニルカルバモイルメチル)イミノジ酢酸;
N−(3,4−ジメチルフェニルカルバモイルメチル)イミノジ酢酸;
N−(3,5−ジメチルフェニルカルバモイルメチル)イミノジ酢酸;
N−(3−ブチルフェニルカルバモイルメチル)イミノジ酢酸;
N−(2−ブチルフェニルカルバモイルメチル)イミノジ酢酸;
N−(4−第三ブチルフェニルカルバモイルメチル)イミノジ酢酸;
N−(3−ブトキシフェニルカルバモイルメチル)イミノジ酢酸;
N−(2−ヘキシルオキシフェニルカルバモイルメチル)イミノジ酢酸;
N−(4−ヘキシルオキシフェニルカルバモイルメチル)イミノジ酢酸;
アミノピロールイミノジ酢酸;
N−(3−ブロモ−2,4,6−トリメチルフェニルカルバモイルメチル)イミノジ酢酸;
ベンゾイミダゾールメチルイミノジ酢酸;
N−(3−シアノ−4,5−ジメチル−2−ピリルカルバモイルメチル)イミノジ酢酸;N−(3−シアノ−4−メチル−5−ベンジル−2−ピリルカルバモイルメチル)イミノジ酢酸;および
N−(3−シアノ−4−メチル−2−ピリルカルバモイルメチル)イミノジ酢酸;
から成る群から選択される少なくとも一員を含んで成る請求項52記載の肝細胞を標的にする組成物。
【請求項60】
前記錯体形成成分がポリ(ビス)[N−(2,6−ジイソプロピルフェニルカルバモイルメチル)イミノジ酢酸]を含んで成る請求項52記載の肝細胞を標的にする組成物。
【請求項61】
請求項52記載の肝細胞を標的にする組成物を製造する方法であって、
多数の連結した個々の単位および脂質構築物マトリクスを含む標的分子錯体を生じさせ、前記標的分子錯体が緩衝液に入っている懸濁液を生じさせ、そして
前記インスリンと前記標的分子錯体を一緒にする、
ことを含んで成る、上記方法。
【請求項62】
請求項52記載の肝細胞を標的にする組成物を製造する方法であって、
多数の連結した個々の単位および脂質構築物マトリクスを含む標的分子錯体を生じさせ、前記標的分子錯体が水性媒体に入っている懸濁液を生じさせ、
前記水性懸濁液のpHを約pH5.3に調整し、
インスリンであるグラルギンインスリンのpHを約4.8に調整し、そして
前記グラルギンインスリンと前記標的分子錯体を一緒にする、
ことを含んで成る、上記方法。
【請求項63】
請求項52記載の肝細胞を標的にする組成物を製造する方法であって、
多数の連結した個々の単位および脂質構築物マトリクスを含む標的分子錯体を生じさせ、前記標的分子錯体が水性媒体に入っている懸濁液を生じさせ、
前記水性懸濁液のpHを約pH5.3に調整し、
グラルギンインスリンとグラルギンインスリン以外の少なくとも1種のインスリンを含んで成るインスリンのpHを約4.8に調整し、そして
前記グラルギンインスリンとグラルギンインスリン以外のインスリンと前記標的分子錯体を一緒にする、
ことを含んで成る、上記方法。
【請求項64】
1型糖尿病または2型糖尿病の患者の治療方法であって、前記患者に請求項52記載の肝細胞を標的にする組成物を有効量で投与することを含んで成る、上記治療方法。
【請求項65】
前記投与の経路を経口、非経口、皮下、肺および口腔から成る群から選択する請求項64記載の治療方法。
【請求項66】
前記投与の経路が経口または皮下である請求項64記載の治療方法。
【請求項67】
1型糖尿病または2型糖尿病の患者の治療方法であって、前記患者に請求項52記載の肝細胞を標的にする組成物を有効量で投与することを含んで成っていて、インスリンがグラルギンインスリンとグラルギンインスリン以外の少なくとも1種のインスリンを含んで成り、更にここで、前記グラルギンインスリン以外のインスリンをインスリンリスプロ、インスリンアスパルト、レギュラーインスリン、インスリングラルギン、インスリン亜鉛、持続型ヒトインスリン亜鉛、イソフェンインスリン、ヒト緩衝レギュラーインスリン、インスリングルリシン、組換え型ヒトレギュラーインスリン、組換え型ヒトインスリンイソフェン、前記インスリンのいずれかの予混合組み合わせ、それらの誘導体および前記インスリンのいずれかの組み合わせから成る群から選択される、上記治療方法。
【請求項68】
前記グラルギンインスリン以外のインスリンがインスリンの生物学的活性を有するインスリン様部分(インスリン分子のフラグメントを包含)を含んで成る請求項67記載の治療方法。
【請求項69】
1型糖尿病または2型糖尿病の患者の治療方法であって、前記患者に請求項52記載の肝細胞を標的にする組成物を有効量で投与することを含んで成る、上記治療方法。
【請求項70】
前記投与の経路を経口、非経口、皮下、肺および口腔から成る群から選択する請求項69記載の治療方法。
【請求項71】
前記投与の経路が経口または皮下である請求項69記載の治療方法。
【請求項72】
1型糖尿病または2型糖尿病の患者の治療方法であって、前記患者に請求項51記載の肝細胞を標的にする組成物を有効量で投与することを含んで成り、ここで、インスリンが組換え型ヒトインスリンイソフェンおよび組換え型ヒトインスリンイソフェンではない少なくとも1種のインスリンを含んで成る、上記方法。
【請求項73】
前記組換え型ヒトインスリンイソフェンではない少なくとも1種のインスリンがインスリンの生物学的活性を有するインスリン様部分(インスリン分子のフラグメントを包含)
を含んで成る請求項72記載の方法。
【請求項74】
哺乳動物における1型または2型糖尿病を治療する時に用いるに適したキットであって、多数の連結した個々の単位および負帯電を有する脂質構築物マトリクスを含み、前記複数の連結した個々の単位が遷移元素、内部遷移元素、遷移元素の同胞元素および前記元素のいずれかの混合物から成る群から選択される橋かけ成分および錯体形成成分を含むが、但し前記遷移元素がクロムの時にはクロム標的分子錯体が生じることを条件とし、ここで、前記複数の連結した個々の単位が前記脂質構築物マトリクスと一緒になっている水に不溶な標的分子錯体、生理学的緩衝溶液、アプリケーターおよび使用説明資料を含んで成る、上記キット。
【請求項75】
少なくとも1種のインスリンも、更に、含んでおり、前記インスリンが電荷を有する前記標的分子錯体と合併している請求項74記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図17】
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【公表番号】特表2009−507761(P2009−507761A)
【公表日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−513541(P2008−513541)
【出願日】平成18年5月16日(2006.5.16)
【国際出願番号】PCT/US2006/019119
【国際公開番号】WO2006/127361
【国際公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(507387387)エスデイージー・インコーポレーテツド (3)
【Fターム(参考)】