インターカレーティング核酸を用いる核酸におけるメチル化の変化を検出するためのアッセイ
試料中の標的核酸の存在を検出するための方法において、
− 非メチル化シトシンを修飾する作用物質で核酸を含有する試料を処理するステップ;
− 核酸の標的領域に結合する能力を有するインターカレーティング核酸(INA)の形態をとる検出リガンドを処理済み試料に供給し、検出リガンドが標的核酸に結合するのに充分な時間をおくステップ;及び
− 標的核酸の存在を示すために試料中の核酸分子に対する検出リガンドの結合を検出するステップ、を含む方法。
− 非メチル化シトシンを修飾する作用物質で核酸を含有する試料を処理するステップ;
− 核酸の標的領域に結合する能力を有するインターカレーティング核酸(INA)の形態をとる検出リガンドを処理済み試料に供給し、検出リガンドが標的核酸に結合するのに充分な時間をおくステップ;及び
− 標的核酸の存在を示すために試料中の核酸分子に対する検出リガンドの結合を検出するステップ、を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DNAハイブリダイゼーションアッセイ、及び改良されたオリゴヌクレオチド又はインターカレーティング核酸(INA)アッセイに関する。本発明は、特に、これらのアッセイを用いたDNA内の5−メチルシトシン塩基を含む特定の塩基配列を識別するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特定の核酸分子を検出するためには、数多くの方法が利用可能であった。これらの方法は、概して、短いオリゴヌクレオチド(20塩基以下)から数千塩基の配列に至る範囲の長さを有し得る標的DNAと核酸プローブの間の配列依存性ハイブリダイゼーションに依存している。
【0003】
直接的検出のために、最も一般的には標的DNAがゲル電気泳動によりサイズに基づいて分離され、固体支持体に移されてから、標的配列に相補的なプローブによるハイブリダイゼーションに供される(サザン及びノーザンブロット法)。該プローブは、INAといったような天然の核酸又はその類似体、又はlocked nucleic acid(LNA)、PNA、HNA、ANA及びMNAであり得る。プローブは、直接標識されていてよく(例えば32Pで)、そうでなければ間接的検出方法を使用することもできる。間接的方法は通常ビオチン又はジゴキシゲニンといったような「タグ」のプローブ内への取込みに依存しており、プローブはこのとき、酵素関連性基質転換又は化学発光(chemiluminescence)といった手段によって検出される。
【0004】
広く使用されてきた核酸の直接的検出のためのもう1つの方法は、「サンドイッチ」ハイブリダイゼーションである。この方法では、捕捉プローブが固体支持体にカップリングされ、溶液中の標的DNAは結合済みプローブとハイブリッド形成させられる。結合しない標的DNAは、洗浄され、結合したDNAは、標的配列に対しハイブリッド形成する第2のプローブを用いて検出される。検出は、上述のように直接又は間接的方法を使用することができる。「分岐型DNA」シグナル検出システムは、サンドイッチハイブリダイゼーション原理を用いる一つの例である(Urdea Ms Branched DNA signal amplification, Biotechnology, 12 : 926-928)。
【0005】
核酸配列の直接的検出のために核酸ハイブリダイゼーションを使用する急速な拡大を続ける分野は、DNAマイクロアレイの分野である。(Young RA, Biomedical discovery with DNA arrays, Cell, 102:9-15 (2000); Watson, New tools. A new breed of high tech detectives., Science, 289:850-854(2000))。このプロセスにおいては、オリゴヌクレオチドからcDNAクローンといったようなさらに長い配列までの範囲にあり得る個々の核酸種が、格子パターンで固体支持体に固定された。次に、タグを付けられた又は標識された核酸集団がアレイとハイブリッド形成させられ、アレイ内の各スポットとのハイブリダイゼーションレベルは定量化される。最も一般的には、ハイブリダイゼーションのためには、放射能又は蛍光標識された核酸(例えばcDNA)が使用されたが、その他の検出システムも利用された。
【0006】
核酸配列の集団内から特定の配列を増幅するために最も広く用いられている方法は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)である(Dieffenbach C and Dveksler G eds., PCR Primer: A Laboratory Manual., Cold Spring Harbor Press, Plainview NY)。この増幅方法においては、変性一本鎖DNA上でのDNA合成をプライミングするために、相補的DNA鎖上及び増幅すべきDNA領域のいずれかの末端において長さが一般に15〜30ヌクレオチドであるオリゴヌクレオチドが使用された。熱安定性DNAポリメラーゼを用いた変性プライマハイブリダイゼーション及びDNA鎖合成の連続的サイクルは、プライマ間の配列の指数関数的増幅を可能にする。最初にcDNAコピーを作製するべく逆転写酵素を用いてコピーすることにより、RNA配列を増幅することができる。ゲル電気泳動、標識されたプローブでのハイブリダイゼーション、(例えば酵素結合アッセイによる)その後の同定を可能にするタグを付けられたプライマの使用、標的DNAでのハイブリダイゼーションの時点でシグナルを発生する蛍光によりタグ付けされたプライマの使用(例えばBeacon及びTaqManシステム)を含めたさまざまな手段によって、増幅されたDNAフラグメントを検出することができる。
【0007】
PCRと同様に、さまざまなその他の技術が、特定の配列の検出及び増幅のために開発されてきた。一例としては、リガーゼ連鎖反応がある(Barany F, Genetic disease detection and DNA amplification using cloned thermostable ligase., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88:189-193(1991))。
【0008】
現在、例えば前立腺癌においてGSTP1遺伝子プロモータの中に見出されたような、DNA内のメチル化の変化を検出するために選ばれる方法は、DNAの重亜硫酸塩による修飾の後、このような配列をPCRで増幅する方法に依存していた。重亜硫酸塩で処理されたDNA中では、シトシンはウラシルに変換されるが(ひいては、PCR中にチミンとして増幅され)、メチル化シトシンは反応せずシトシンとしてとどまる。(Frommer M, McDonald LE, Millar DS, Collis CM, Watt F, Grigg GW, Molloy PL and Paul CL, A genomic sequencing protocol which yeilds a positive display of 5-methyl cytosine residues in individual DNA strands, PNAS, 89:1827-1831 (1992); Clark SJ, Harrison J, Paul CL and Frommer M, High sensitivity mapping of methylated cytosines, Nucleic Acids Res., 22:2990-2997(1994))。かくして(重亜硫酸塩処理の後)5−メチルシトシン塩基を含有するDNAは、対応するメチル化されていないDNAと配列的に異なっていることになる。Frommerらによる1992年の結果は、DNA中の5−メチルシトシン残基を配列決定するために重亜硫酸塩を使用する方法の基盤となっている。数年後、このアッセイは、米国特許第5786146号明細書中のCpG島のメチル化状態についてのPCRアッセイの基礎として使用された。プライマは、そのメチル化状態を判定するために問題のゲノムの領域を非選択的に増幅するように選択されてもよいし、又は、中で特定のシトシンがメチル化された配列を選択的に増幅するように設計されてもよい(Herman JG, Graff JR, Myohanen S, Nelkin BD and Baylin SB, Methylation-specific PCR:a novel PCR assay for methylation status of CpG islands, PNAS, 93:9821-9826 (1996))。
【0009】
シトシンメチル化の検出のための代替的方法には、部位特異的DNAメチル化によりその切断が阻止される制限酵素を用いた消化と、それに続くサザンブロット法及び問題の領域についてのハイブリダイゼーションプローブ探査が含まれる。このアプローチは、DNAの有意な割合(一般に10%を超える)がその部位でメチル化され、検出を可能にするのに充分な通常10μgのDNAが存在するような状況に制限される。部位特異的DNAメチル化によりその切断が防止されている制限酵素での消化の後に、制限酵素部位にフランキングするプライマを用いたPCR増幅が行われる。この方法では、より少量のDNAを使用するが、DNAメチル化以外の理由で完全な酵素消化が行われなかった場合には、ことごとく偽陽性シグナルを導く可能性がある。
【0010】
数年前、デオキシリボース−ホスフェート主鎖全体が、N−(2−アミノエチル)グリシン単位からなる構造的に同形性の非荷電ポリアミド主鎖で交換されたペプチド核酸(PNA)が開発された(Ray A and Norden B, Peptide nucleic acid, (PNA):its medical and biotechnical applications and for the future, FASEB J, 14:1041-1060(2000))。
【0011】
PCR増幅を必要としない高感度で特異的なDNA検出のために、PNAリガンドを利用する方法が開発されてきている(国際公開第02/38801号パンフレット)。最近では、固有の有用な特性を有する新しいDNAリガンドであるインターカレーティング核酸(INA)が開発されてきている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
当該発明人らは、INAプローブを用いて問題の核酸を検出するための新しいアッセイを開発した。
【0013】
発明の開示
第1の態様において、本発明は、試料中の標的核酸の存在を検出するための方法であって、
(a) 非メチル化シトシンを修飾する作用物質で核酸を含有する試料を処理するステップ;
(b) 核酸の標的領域に結合する能力を有するインターカレーティング核酸(INA)の形態をとる検出リガンドを、前記処理済み試料に供給し、前記検出リガンドが前記標的核酸に結合するのに充分な時間をおくステップ;及び
(c) 試料中の標的核酸の存在を示すために、試料中の核酸分子に対する検出リガンドの結合を測定するステップ、を含む方法を提供する。
【0014】
第2の態様では、本発明は、試料中の標的核酸のメチル化を検出するための方法であって、
(a) 非メチル化シトシンを修飾する作用物質で核酸を含有する試料を処理するステップ;
(b) 核酸のメチル化シトシンと非メチル化シトシンの識別能を有するインターカレーティング核酸(INA)の形態をとる検出リガンドを処理済み試料に提供し、標的核酸に対し検出リガンドが結合するのに充分な時間をおくステップ;及び
(c) 標的核酸のメチル化の程度を示す、試料中の核酸に対する検出リガンドの結合を検出するステップ;を含む方法、を提供する。
【0015】
第3の態様では、本発明は、試料中の標的核酸の存在を検出するための方法であって、
(a) 非メチル化シトシンを修飾する作用物質で核酸を含有する試料を処理するステップ;
(b) 標的核酸配列の第1の部分を認識する能力を有する捕捉リガンドが結合された支持体を提供するステップ;
(c) 処理済みの試料と支持体を接触させ、核酸が捕捉リガンドに結合するのに十分な時間おいて、試料中の標的核酸が捕捉リガンドを介して支持体に結合できるようにするステップ;
(d) 標的核酸配列の第2の部分を認識する能力を有する検出リガンドと支持体を接触させ、支持体に結合した標的核酸に検出リガンドが結合するのに充分な時間をおくステップ;
(e) 試料中の標的核酸の存在を判定するために支持体に結合した核酸に対する検出リガンドの結合を測定するステップ;を含み、
ここで捕捉リガンド又は検出リガンドのうちの少なくとも1つがインターカレーティング核酸(INA)の形態をとる方法を提供する。
【0016】
第4の態様では、本発明は、試料中の標的核酸のメチル化の程度を評価するための方法であって、
(a) 非メチル化シトシンを修飾する作用物質で核酸を含有する試料を処理するステップ;
(b) 標的核酸配列の第1の部分を認識する能力を有する捕捉リガンドが結合された支持体を提供するステップ;
(c) 処理済みの試料と支持体を接触させ、DNAが捕捉リガンドに結合するのに十分な時間おいて、試料中の標的核酸が捕捉リガンドを介して支持体に結合できるようにするステップ;
(d) 支持体と、DNAのメチル化シトシンと非メチル化シトシンを区別する能力を有する検出リガンドとを接触させ、支持体上で検出リガンドが任意の標的核酸に結合できるようにするステップ;及び
(e) 結合度又は結合量が標的核酸のメチル化の程度を示すような形で支持体に対する検出リガンドの結合を検出するステップ、を含み、該捕捉リガンド又は検出リガンドのうちの少なくとも1つがインターカレーティング核酸(INA)の形態をとる方法を提供する。
【0017】
第5の態様では、本発明は、メチル化されたCpG又はCpNpG含有DNAを検出するための方法であって、
(a) DNA内で非メチル化シトシンをウラシルへと修飾するために重亜硫酸塩でDNAを含有する試料を処理するステップ;
(b) DNAのメチル化シトシンと非メチル化シトシンの識別能を有する検出INAリガンドを、処理済み試料に供給するステップ;及び
(c) 検出INAリガンドの結合の存在又は非存在に基づいてメチル化されたDNAを検出するステップ;を含む方法を提供する。
【0018】
第6の態様では、本発明は、試料中の標的DNAのメチル化の程度を評価するための方法であって、
(a) 非メチル化シトシンをウラシルへと修飾するために重亜硫酸塩でDNAを含有する試料を処理するステップ;
(b) 標的DNA配列の第1の部分を認識する能力を有するINA、PNA又はオリゴヌクレオチドリガンドの形態を有する捕捉リガンドが結合させた、磁気ビーズ、多重ウェルマイクロタイタープレート又は造形粒子の形態の固体支持体を供給するステップ;
(c) 支持体と標的DNAを含有する疑いのある処理済み試料とを接触させ、試料中の標的DNAが捕捉リガンドを介して固体支持体に結合できるようにするステップ;
(d) DNAのメチル化シトシンと非メチル化シトシンの識別能を有するINA、PNA又はオリゴヌクレオチドリガンドの形態をとる検出リガンドと、支持体を接触させるステップ;及び
(e) 結合した検出リガンドの量を測定することにより支持体に結合したDNAのメチル化の程度を判定するステップ、を含み、捕捉リガンド又は検出リガンドのうちの少なくとも1つがINAである方法を提供している。
【0019】
1つの好ましい形態では、捕捉リガンドはINAである。もう1つの好ましい形態では、検出リガンドはINAである。
【0020】
第7の態様では、本発明は、標的核酸のメチル化をアッセイする方法において、非メチル化シトシンを修飾して、メチル化シトシンを修飾しない作用物質、及び
核酸のメチル化シトシンと非メチル化シトシンの識別能を有するINAプローブの形態をとる1つ以上のリガンド、の使用に関する。
【0021】
第8の態様では、本発明は、非メチル化シトシンを修飾する作用物質で処理された核酸を分析するためのキットであって、DNAのメチル化シトシンと非メチル化シトシンの識別能を有する少なくとも1つのINAリガンドを含むキットを提供する。
【0022】
好ましくは、キットは、固体支持体に固定化された1つ以上のINAリガンドを含んでいる。該キットは同様に、処理済みDNAを増幅するためのプライマを含んでいてもよい。
【0023】
核酸は、真核生物、原核生物及びウイルスのゲノム、ならびにミトコンドリア核酸、その他の細胞小器官内に見られる核酸及び細胞外のものである核酸を含んでもよく、これらからコピーされたものであってもよい。本書で定義されている通りの核酸は同様に、インターカレーティング核酸(INA)、アルトリトール核酸(ANA)、シクロヘキサニル核酸(CNA)、ペプチド核酸(PNA)、ロック核酸(LNA)、ヘキシトール核酸(HNA)、マンニトール核酸(MNA)及びこれらのキメラの組合せといったような、DNA及びRNAの両方の形態及びその天然又は人工的誘導体をも含み得る。
【0024】
核酸は、細菌、ウイルス、ウイロイド又は真核生物又はプリオンに感染した病気の生物又は正常な生物から誘導され得る。該核酸は同様に、異なる種から又は人工的に合成された供給源からの核酸を取込んだ修飾された(遺伝子導入型)生物にも(修飾された生物が、生殖細胞系、過渡的又は体細胞トランスフェクションプロセスのいずれから作られているかとは無関係に)由来し得る。該核酸は、(ステント、パッチ、ペースメーカーなどといった)機械的、電子的又は化学的放出型である、移植又は固定されたデバイスを伴う生物の細胞、組織又は器官に由来していてよい。該核酸は、接合、人工受精、胚幹細胞方法又は核移入、(体細胞又は生殖細胞系核からの)又は細胞質、核又は膜抽出物による細胞又は核の修飾によるクローニングという標準的でない方法;又は(決定転換及び分化転換プロセスが関与する)外来性作用物質による細胞の修飾、又は同じ又は異なる種からのミトコンドリア又はその他の細胞小器官の投入又は修飾、又はその組合せから発生する生体に由来し得る。該核酸は、自己移植片、同種移植片又は異種移植片、組織又は器官移植片又は(例えばモデル生物インターベンショナルカーディオロジーの場合のような)他の生物内にヒト細胞が移植された組織に由来してもよい。核酸は(in vivoかエクスビボのいずれかでの)ノック−アウト、ノック−イン又はノック−ダウン方法、又は例えばRNAi、リボザイム、アプタマー、トランスポゾン活性化、薬物又は(Trojanペプチドを含むもののこれに制限されるわけではない)PNA、INA、ANA、MNA、LNA、HNA、CNA分子又はその他の核酸ベースの接合体に起因する擾乱といったような小分子方法によって、過渡的又は永久的にゲノム又はトランスクリプトームが改変されるようなあらゆる方法によって、産生又は修飾された生物に由来してもよい。該核酸は、受精から死後48時間までの人間の全てのライフステージ由来、又はあらゆる(正常又は子宮外)妊娠段階及び、胚材料又は胎児材料由来、ならびに染色体不均衡の又は間性固体といった異なる自己細胞集団のキメラ又は2倍体、異数性又は分節的異数性細胞集団のキメラである個体又は生物由来であってよい。核酸は、上述の供給源のいずれか又は全てに由来する一次又は培養細胞系統に由来するか又は;組織学的標本、組織及び器官といった貯蔵された材料;ならびにヒト組織から単離された細胞(及び細胞系統)及びその誘導体、同種移植片、異種移植片ならびに、凍結された又は(その他の形で貯蔵された;天然又は人工的に保存された又はミイラにされた)切開された又は切除された供給源、顕微鏡スライドといった供給源に由来し得る試料、ブロック又は液体培地内に包埋された試料又は合成又は天然の表面又は液体から抽出された試料に由来する可能性がある。
【0025】
好ましくは、核酸はDNA、より好ましくは動物又はヒトからのゲノムDNAである。
【0026】
修飾性作用物質は好ましくは、重亜硫酸塩、酢酸塩又はクエン酸塩から選択される。より好ましくは、この作用物質は、水の存在下でシトシンをウラシルへと修飾する試薬である重亜硫酸ナトリウムである。
【0027】
重亜硫酸ナトリウム(NaHSO3)は、脱アミノ化を起こす可能性がありかつ水の存在下で亜硫酸ウラシルを発生させるスルホン化シトシン反応中間体を形成するべくシトシンの5,6二重結合と容易に反応する。必要であれば、亜硫酸塩基を弱アルカリ性条件下で除去してウラシルを形成させることができる。かくして、潜在的に全てのシトシンはウラシルに転換されることになる。しかしながら、メチル化による保護によって、いかなるメチル化シトシンも修飾用試薬により転換され得ない。
【0028】
インターカレーティング核酸(INA)は、配列特異性をもつ核酸(DNA及びRNA)に対しハイブリッド形成できる、天然に発生するものでないポリヌクレオチドである。INAは、複数の望ましい特性を示すことから、プローブベースのハイブリダイゼーションアッセイ内で核酸プローブに対する代替案/代用品候補である。INAは、核酸に対しハイブリッド形成して、対応する天然に発生する核酸/核酸複合体よりも熱力学的に安定したハイブリッドを形成する重合体である。これらは、ペプチド又は核酸を消化させるものとして知られている酵素のための基質ではない。従って、INAは、天然に発生する核酸フラグメントに比べ生体試料中でより安定しかつより長い保存寿命を有するはずである。イオン強度に高く依存している核酸ハイブリダイゼーションとは異なり、核酸とINAのハイブリダイゼーションは、イオン強度からかなり独立しており、イオン強度の低い、天然に発生する核酸と核酸のハイブリダイゼーションには著しく不利に作用する条件下でも有利である。INAの結合強度は、分子内に挿入された挿入基(intercalating groups)の数、ならびに二本鎖構造内で特異的に積重ねられた塩基間の水素結合からの通常の相互作用に左右される。配列の識別は、DNAを認識するDNAよりも、DNAを認識するINAの方が、効率が良い。
【0029】
好ましくは、INAは(S)−1−O−(4,4’−ジメトキシトリフェニルメチル)−3−O−(1−ピレニルメチル)−グリセロールのホスホラミダイトである。
【0030】
INAは、市販のフォーマットに標準的オリゴヌクレオチド合成方法を応用することによって合成される。INA及びその合成の完全な定義は、本発明に参照により援用されている国際公開第03/051901号パンフレット、国際公開第03/052132号パンフレット、国際公開第03/052133号パンフレット及び国際公開第03/052134号パンフレット(Unest A/S)の中に見出すことができる。
【0031】
INAプローブと標準的核酸プローブの間には、実際数多くの差異が存在する。これらの差異は、生物学的、構造的及び物理化学差異に内訳すると便利である。以上及び以下で論述するように、これらの生物学的、構造的及び物理化学的差異は、核酸が標準的に利用されてきた応用分野でINAプローブを使用することを試みた場合に、予測できない結果を導く可能性がある。この異なる組成物の非等価性は、化学技術では往々にして見られることである。
【0032】
生物学的差異に関しては、核酸は、遺伝子伝達及び発現の作用物質として生きた種の生において中心的役割を果たす生物学的材料である。そのin vivo特性は、かなり良く理解されている。しかしながらINAは、化学者の頭の中で設計され合成有機化学を用いて作られた、近年開発された完全に人工的な分子である。それには、既知の生物学的機能は全く無い。
【0033】
構造的にも、INAは核酸とは格段に異なっている。両方に共通の核塩基(A、C、G、T及びU)を利用し得るものの、これらの分子の組成は構造的に多様である。RNA、DNA、及びINAの主鎖は、反復ホスホジエステルリボース及び2−デオキシリボース単位からなる。INAは、重合体に対しリンカー分子を介して固定した1つ以上の大型で平坦な分子を有するという点でDNA又はRNAとは異なっている。平坦な分子は、二本鎖構造内でINAとは反対側の相補的DNA鎖内の塩基の間に介在する。
【0034】
INAと、DNA又はRNAとの物理/化学的差異も同様に実質的なものである。INAは、核酸プローブが同じ標的配列に結合する以上に急速に相補的DNAに結合する。DNA又はRNAフラグメントとは異なり、INAは、挿入基か末端位置にあるのでないかぎり、RNAに対しほとんど結合しない。挿入基と相補的DNA鎖上の塩基の間の強い相互作用のため、INA/DNA複合体の安定性は、類似のDNA/DNA又はRNA/DNA複合体のものよりも高い。
【0035】
DNA又はRNAフラグメント又はPNAといったその他のDNAとは異なり、INAは、自己凝集又は結合特性を示さない。
【0036】
要するに、INAは配列特異性をもつ核酸にハイブリッド形成することから、これは、プローブベースのアッセイを開発するための有用な候補であり、キット及びスクリーニングアッセイのために特に適している。しかしながら、INAプローブは核酸プローブの等価物ではない。従って、プローブベースのアッセイの特異性、感度及び信頼性を改善し得るあらゆる方法、キット又は組成物が、DNA含有試料の検出、分析及び定量において有用となるだろう。INAは、この目的に必要な特性を有している。
【0037】
ステップ(b)では、一方のリガンドが1つ以上のメチル化シトシンを含有する核酸領域に結合する能力をもち、もう一方のリガンドが、処理(ステップ(a))前にいかなるメチル化シトシンも含有していなかった核酸の対応する領域に結合する能力を有する、2つの検出リガンドを使用することができる。試料は標的核酸コピーを数多く含有しうることから、往々にしてコピーは異なるメチル化量を有する。従って、2つのリガンドの結合比は、試料中のその核酸標的のメチル化度に正比例することになる。2つのリガンドを、一緒に1つの試験において添加することも、又別々のデュプリケート試験において添加することもできる。各々のリガンドは、1つの試験内で同時に又は別々に検出され得る独自のマーカーを含むこともできるし、又同じマーカーを有し別々の試験内で個別に検出することもできる。
【0038】
好ましくは、捕捉リガンドは、INAプローブ、PNAプローブ、LNAプローブ、HNAプローブ、ANAプローブ、MNAプローブ、CNAプローブ、オリゴヌクレオチド、修飾されたオリゴヌクレオチド、一本鎖DNA、RNA、アプタマー、抗体、タンパク質、ペプチド、その組合せ又はそのキメラ体から選択される。
【0039】
より好ましくは、捕捉リガンドは、INAプローブ、PNAプローブ又はオリゴヌクレオチドプローブである。さらに一層好ましくは、捕捉リガンドはINAプローブである。
【0040】
支持体は、プラスチック材料、蛍光ビーズ、磁気ビーズ、造形粒子、プレート、マイクロタイタープレート、合成又は天然のメンブラン、ラテックスビーズ、ポリスチレン、カラムサポート、ガラスビーズ又はスライド、ナノチューブ、ファイバ、又はその他の有機及び無機支持体といったようなあらゆる適切な支持体であり得る。好ましくは、支持体は、磁気ビーズ、蛍光ビーズ、造形粒子、又は1つ以上のウェルを伴うマイクロタイタープレートである。
【0041】
固体基質は、標準的にはガラス又は重合体であり、最も一般的に用いられる重合体は、セルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル又はポリプロピレンである。固体支持体は、チューブ、ビーズ、ディスク又はマイクロプレート或いはアッセイを実施するのに適したその他のあらゆる表面の形をしていてよい。結合プロセスは、当該技術分野において周知であり、一般的には不溶性担体に対し分子を架橋共有結合させること又は物理的に吸着させることからなる。
【0042】
好ましい形態では、ステップ(b)は固体支持体上に整列した複数の捕捉リガンドを含む。該アレイは、その上に同じ標的核酸を捕捉するべく同じリガンドの多数のコピーを含むことができ、そうでなければアレイ上に複数の標的核酸分子を捕捉するべく異なる核酸のターゲットとなる複数の異なるリガンドを含むこともできる。標準的には、アレイは約10〜200,000の捕捉リガンドを含む。しかしながら、アレイは任意の数の捕捉リガンドを有することができるということがわかるだろう。
【0043】
1つの形態においては、捕捉オリゴヌクレオチドプローブ、INAプローブ又は捕捉PNAプローブを1つのアレイ上に配置し、核酸のメチル化された状態を測定するために、重亜硫酸塩で処理された核酸の捕捉に使用することができる。アレイ技術は周知であり、未処理試料内の遺伝子又はヌクレオチド配列の存在を検出するために使用されてきた。しかしながら、本発明は、沢山の異なる核酸供給源のメチル化状態についての貴重な情報を提供するためにアレイ技術の有用性を拡張することができる。
【0044】
好ましい形態では、試料は、幹細胞、血液、尿、糞、精液、脳脊髄液;脳、結腸、泌尿生殖器、肺、腎、造血器、乳房、胸腺、精巣、卵巣又は子宮といった細胞又は組織;環境試料;細菌、ウイルス、真菌、原生動物、ウイロイドなどを含めた微生物といったあらゆる生体試料であり得る。幹細胞には、始原細胞を含む細胞集団が含まれる。これは又、胚細胞集団にもあてはまり、同じく体細胞と融合して特定の表現型を採用する能力を有するハイブリッド細胞を形成する幹細胞をも内含する。
【0045】
好ましくは、修飾性作用物質は、非メチル化シトシンを修飾するもののメチル化シトシンを修飾しないという能力を有する。該作用物質は好ましくは、重亜硫酸塩、酢酸塩及びクエン酸塩から選択される。好ましくは、該作用物質は、重亜硫酸ナトリウムであり、シトシンはウラシルへと修飾される。
【0046】
本書で使用する「修飾する」という語は、非メチル化シトシンとメチル化シトシンを区別することになる1つの非メチル化シトシンからもう1つのヌクレオチドへの転換を意味する。好ましくは、該作用物質は、非メチル化シトシンをウラシルへと修飾する。好ましくは、非メチル化シトシンを修飾するために用いられる作用物質は、重亜硫酸ナトリウムである。非メチル化シトシンを類似の要領で修飾するもののメチル化シトシンを修飾しないその他の作用物質も同様に、本発明の方法において使用可能である。例としては重亜硫酸塩、酢酸塩又はクエン酸塩が含まれるが、これらに制限されるわけではない。好ましくは、該作用物質は、水の存在下でシトシンをウラシルに修飾する試薬である重亜硫酸ナトリウムである。
【0047】
重亜硫酸ナトリウム(NaHSO3)は、5,6−シトシン二重結合と容易に反応するがメチル化シトシンとはほとんど反応しない。シトシンは重亜硫酸塩イオンと反応して、脱アミノ化を受ける可能性のあるスルホン化シトシン反応中間体を形成し、スルホン化ウラシルを発生させる。スルホン酸塩基は、アルカリ性条件下で除去され、ウラシルを結果として形成することができる。かくして、シトシンを含有する配列又はウラシルを含有する対応する配列を認識することになるリガンドを調製できるような形でメチル化シトシンが転換から保護されている一方で、全ての非メチル化シトシンがウラシルに転換されることになる。2つのプローブの結合比は、一定の与えられた核酸内のメチル化度の精確な尺度を提供することができる。
【0048】
重要なことに、数多くの状況において、必要な情報を得るために核酸を増幅させる必要は全くなくなり、かくして潜在的誤差を克服し、自動化に従順な、より高速でかつより単純なアッセイが結果としてもたらされる。処理に先立つ捕捉又は核酸選択の後の増幅も、本発明には同じく可能である。
【0049】
好ましい形態では、検出リガンドは、NがA、T、C又はGという考えられる4つの塩基のうちのいずれか1つを表わす場合に、DNAのCpG又はCpNpG含有領域に向けられている。好ましくは、DNAのCpG又はCpNpG含有領域は、化学物質、毒素、薬物、放射線、合成又は天然化合物及び微生物又はその他の感染性物質例えばウイルス、細菌、真菌及びプリオンなどを含めた環境因子により活性が改変されている、プロモータ、エンハンサ、腫瘍遺伝子、レトロエレメント、可動(mobile)又は可動化可能(mobilisable)な配列又はその他の調節要素を含む任意の調節要素又は領域のエンハンサ又は遺伝子の調節領域の中にある。例えば、プロモータ又は調節要素は、腫瘍抑制遺伝子プロモータ、腫瘍遺伝子又は、加齢といったような変化する正常状態又は病的状態に関与する1つ以上の遺伝子を抑制するか又はこれに影響を及ぼす可能性のあるその他のあらゆる要素又は領域であり得る。
【0050】
標本中にDNAのメチル化されたCpG又はCpNpG含有領域が存在することは、特に細胞プログラミングに関しての細胞の機能的変化を表わす可能性がある。該変化は、増殖障害でもありうる。これには、低悪性度星状細胞腫、未分化悪性星状細胞腫、グリア芽腫、髄芽細胞腫、結腸癌、肺癌、腎臓癌、白血病、乳癌、前立腺癌、子宮内膜癌及び神経芽細胞腫、又は幹細胞集団の正常な細胞分裂、分化又は代謝/異化の障害が含まれる可能性がある。
【0051】
核酸修飾性作用物質の反応を補助するために、尿素、メトキシアミン及びそらの混合物といった任意の添加物を加えてもよい。
【0052】
ステップ(b)は標準的に、該方法のその後のステップ内でメチル化について分析されることになる問題の核酸を捕捉するために使用される。かくして、ステップ(b)は、問題の核酸の捕捉及び濃縮を可能にする。好ましくは、1つ以上のINAプローブがステップ(b)で使用される。
【0053】
1つの好ましい形態においては、ステップ(b)は、固体支持体上に整列された複数の捕捉リガンドを含む。該アレイは、その後の試験のためアレイ上の同じ標的核酸を捕捉するべく同じリガンドの多数のコピーを含有し得る。代替的には、該アレイは、その後の試験のためアレイ上の数多くの異なる標的DNA試料を捕捉するべく異なるDNA分子をターゲットとする複数の異なる捕捉リガンドを含有し得る。好ましい形態では、捕捉リガンドは、多数のアッセイを実施し得るようにマイクロタイタープレートのウェルに結合させられている。
【0054】
ステップ(d)では、1つのリガンドが、1つ以上のメチル化シトシンを含む核酸領域に結合する能力をもち、第2のリガンドが、メチル化シトシンを全く含まない対応する核酸領域に結合する能力を有する、2つの検出リガンドを使用することができる。試料は、異なるメチル化量を有する、1つの標的核酸の数多くのコピーを含有し得る。従って、2つのリガンドの結合比は、該試料内のその核酸標的のメチル化度に正比例することになる。2つのリガンドは1つの試験で一緒に添加することもできるし、そうでなければ別々のデュプリケート試験で添加することもできる。各々のリガンドは、1つの試験内で同時に又は別々に検出され得る独自のマーカーを有することもできるし、又同じマーカーを有し別々の試験内で個別に検出することもできる。
【0055】
標的核酸に対する検出リガンドの結合を検出するためには、好ましくは、リガンドはそれに付された検出可能な標識を有する。結合した標識の存在は、リガンドの結合の程度を表わす。適切な標識としては、化学ルミネセンス、蛍光、放射能、酵素、ハプテン及びデンドリマーが含まれるが、これらに制限されるわけではない。
【0056】
重亜硫酸塩修飾の後、試料のCpG又はCpNpG含有DNAを検出するために本発明で使用される検出リガンドは、未処理DNA、メチル化されたDNA、及びメチル化されていないDNAを特異的に区別することができる。メチル化されていないDNAのためのオリゴヌクレオチド又はPNA又はINAプローブの形態の検出リガンドは、好ましくは、メチル化されたDNA内に保持されたCとそれを区別するべく3’CpG又はCpNpG対内にT又はAを有する。
【0057】
本発明のプローブは、テスト対象のゲノム遺伝子座の一本の鎖に対し「実質的に」相補的であり適切なG又はCヌクレオチドを含むように設計することができる。このことはすなわち、結合を可能にする条件下で、プライマが、それぞれの問題の領域とハイブリッド形成するのに充分な相補性を有するべきである、ということを意味している。換言すると、プローブは、好ましくは、5’及び3’フランキング配列とハイブリッド形成するのに充分な相補性を有するべきである。
【0058】
本発明のINAプローブは、当該技術分野において既知の任意の適切な方法を用いて調製可能である。好ましくは、プローブは、本発明に参照により援用されている国際公開第03/051901号パンフレット、国際公開第03/052132号パンフレット、国際公開第03/052133号パンフレット及び国際公開第03/052134号パンフレット(Unest A/S)の教示に従って調製される。
【0059】
標的核酸のメチル化状態に関係する本発明に従った方法は、それが標的領域(通常はCpG又はCpNpG)を含む特定の核酸配列を含んでいる又は含んでいるとされることを条件として、出発材料として、精製済み又は未精製形態での任意の核酸試料を使用することができる。1つの好ましい形態では、未増幅試料が、本発明に従った方法において使用される。
【0060】
検出リガンドによる捕捉に先立ち増幅濃縮ステップにおいて、INA混合物又は特異的INA分子を使用することができる。重亜硫酸塩で処理された核酸の特異的又は無作為増幅のために、単一の又は多数のINAを使用することができるだろう。
【0061】
問題の核酸分子は、本発明に従った方法のステップ(a)に先立って選択又は濃縮可能である。濃縮又は選択ステップには、音波処理及びせん断、酵素消化、酵素処理、制限消化、ヌクレアーゼ処理、DNase処理、濃縮、抗体捕捉を含めた物理的方法、酸性又は塩基性消化を含めた化学的方法及びそれらの組合せが含まれるが、これらに制限されるわけではない。例えば、5−メチルシトシンを濃縮する又はメチル化度の高いゲノムDNAといった核酸を捕捉するために、5−メチルシトシンに向けられた抗体を使用することができる。より管理しやすいサイズの核酸へと分割するべく任意の適切な物理的又は酵素的手段による分割を受けたゲノムDNAから核酸を誘導することができる。
【0062】
メチル化CpG又はCpNpGの検出に用いられる核酸含有標本は、任意の供給源に由来するものであってよく、Maniatisら(Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, N.Y., pp280, 281, 1982)によって記述されているものなど、さまざまな技術によって抽出され得る。
【0063】
試料中の核酸が二本鎖を含有する場合には、修飾されないうちに核酸の鎖を分離する必要がある。鎖の分離は、別々のステップとしてか又は化学的処理と同時に実施できる。この鎖分離は、物理的、化学的又は酵素的手段を含むさまざまな適切な変性条件を用いて達成され得、「変性」という語はこのような手段全てを内含する。核酸鎖を分離する1つの物理的方法には、変性されるまで核酸を加熱することが含まれる。標準的な熱変性には、DNAについて約1〜10分の範囲の時間、約80℃〜105℃の範囲内の温度が関与する。鎖分離は、同様に、ヘリカーゼとして知られる酵素クラスからの酵素によって、又はヘリカーゼ活性を有しリボATPの存在下でDNAを変性するものとして知られている酵素RecAによっても誘発され得る。ヘリカーゼでのDNAの鎖分離に適した反応条件は、Kuhn Hoffmann-Berling (CSH-Quantitative Biology, 43:63, 1978)によって記述されており、RecAを用いるための技術は、C. Radding (Ann.Rev.Genetics, 16:405-437, 1982)の中で再考された。
【0064】
検出可能な標識は、化学発光、蛍光又は放射性標識であってよく、そうでなければ、ミクロスフェア又はナノ結晶の形の第2の標識又はマーカーを含有してもよい。蛍光又は放射性ミクロスフェア又はナノ結晶は、捕捉リガンド又は検出リガンドに共有結合され得る。
【0065】
好ましくは、標的核酸に対するハイブリダイゼーションの特異性を用いて、メチル化シトシンと非メチル化シトシンを識別する。
【0066】
一部は一本鎖DNAに選択的である、核酸に結合し、かつその励起及び発光波長が異なる適切な数多くの蛍光色素が知られていた。検出システムは同様に、DNAに選択的に結合することになりかつ酵素アッセイを用いて検出し得る正荷電領域を担持する酵素、又は捕捉されたDNAに対し選択的に結合する正荷電放射性分子でもあり得る。適切な物質は、同様に、コア/シェルCdSe/ZrS半導体ナノ結晶でもあり得る(Gerion et al 2002 J Am Chem Soc: 24:7070-7074)。
【0067】
この方法におけるリガンドの1つとしてINAプローブを使用することには、オリゴヌクレオチド又はPNAプローブの使用に比べて非常に有意な利点がある。INA結合は、オリゴヌクレオチド又はPNAといったその他のリガンドに比べて速く平衡に達し、より大きい配列特異性を示し、かつINAが1つ以上の挿入基を担持することから。これらはより高い結合係数で標的DNA分子を結合させる。結合特性は、INAに付加するべく挿入基の異なる数を選択することによって修飾可能である。
【0068】
本発明は、直接検出方法を使用できることから、該方法は、試料内での標的核酸の量の真正かつ正確な尺度を提供できる。該方法は、その方法において一般に使用される酵素が異なる配列の増幅速度差を通して系統的偏向を導入する可能性のある場合に、シグナル増幅用としてPCRといったようなプロセスに依存している先行技術の方法に固有の潜在的偏向によって混乱させられることはない。
【0069】
蛍光又は放射能を検出又は測定するのに利用可能な数多くの検出システム及び計器が存在する。計装における改良及び進歩が数多くのメーカーにより行なわれている。本発明のためには、数多くの異なる測定計器を使用できることがわかるだろう。例えば、多光子検出(Multi Photon Detection)は、超微量の選択された放射性同位元素を検出するための独自仕様のシステムである。これは既存の方法より1000倍高い感度をもつ。これは、ゼプトモル量の生体材料の定量で、ヨウ素125原子1000個の感度を有する。これには、1ピコキュリー未満の同位元素しか必要ではなく、この値は、コップ1杯の水中の100分の1の放射能である。MPD計器ファミリーは、すでに、1つの試料中の放射能を測定するために存在している。これらは、96ウェル、384ウェル及びそれ以上用に構成されている計器からなる。MPDは、オペレータが選択した放射性同位元素と相容性ある光子のみを選択的に計数するためのコンピュータ制御式電子部品と接続された同時多重チャンネル光子検出を使用する。数多くの異なる同位元素を使用できることから、これは多色システムである。MPDイメージャシステムは、ホスホイメージャに比べ少なくとも100倍高い感度をもつ。かかる計装は、リガンド又は支持体が放射性となっている本発明の検出部において特に適したものとなる。
【0070】
結合された捕捉リガンド又は検出リガンドを含むビーズは、蛍光を測定するセルソーターで処理又は測定することができる。実施例又は適切な計器には、フローサイトメータ及びその改良型が含まれる。
【0071】
本発明に従った方法は、特に数多くの試料を処理するためのスケールアップ及び自動化に非常に適している。
【0072】
上述のことに関わらず、記述された方法は、検出用として充分な材料を提供するために制限的な量のDNAを増幅する必要がある場合に、かかる増幅方法と併用することができる。さらに、メチル化された又はメチル化されていない核酸に対し導かれたINAリガンドで捕捉されたDNAを選択的に増幅するために、PCRを使用することができる。
【0073】
メチル化されたDNA:
本発明で詳述されている通りの特定の適合において、重亜硫酸ナトリウムで処理されたDNA中のメチル化シトシンの存在を区別するために該方法を用いることができる。シトシンは、メチルシトシンが未反応状態にとどまっている間にウラシルへと転換されていることから、メチル化された分子及びメチル化されていない分子に由来する重亜硫酸塩処理済みDNAの配列は異なっている。選択された標的領域に対し特異的INAリガンド(長さ4〜100残基、好ましくは長さ20±10残基)を選択することにより、ハイブリダイゼーションの特異性を用いて、CpG又はCpNpG部位内になかったシトシンが完全に反応しウラシルに転換されている分子のみが査定されることを確実にしながら、(シトシンとしてとどまっている)CpG又はCpNpG部位にあるメチル化シトシンと、シトシンがウラシルに転換されているメチル化されていないCpG又はCpNpG部位を区別することができる。
【0074】
その他の部位にあるメチル化シトシンも同様にして検出可能である。重亜硫酸塩と完全に反応しなかった(1つ以上のシトシンがウラシルに転換されていない)分子の存在を同定するための対照として、適切なINAプローブを用いることができる。しかしながら、DNAのメチル化状態を識別できるその他のリガンドを類似の要領で使用できることがわかるだろう。
【0075】
該方法は、多重ウェルプレート、マイクロアレイ、光ファイバアレイ及び懸濁粒子を含めたさまざまなフォーマットでの使用に適している。アレイフォーマットでの使用のための特異的リガンドの適切な選択により、多数の標的領域内での個々のシトシンのメチル化状態を同時に判定することができる。
【0076】
多型現象/突然変異及び後成的突然変異の検出:
本発明に従った方法は捕捉リガンド及び/又は検出リガンドの配列が1つの対立遺伝子と整合するがもう1つの対立遺伝子とは不整合となる、1つの遺伝子の異なる対立遺伝子の識別に対し適用可能である。
【0077】
DNA定量化:
本発明に従った方法を使用することにより、特定の領域において1つの配列をもつ分子に対してもう1つの配列をもつ分子の割合をDNA集合内部で直接決定することが可能である。これは、異なる色の蛍光色素が装てんされたミクロスフェア、ナノ結晶又は放射性分子、粒子及びマイクロタイタープレートといった支持体に対し、配列の代替形態を表わすリガンドをカップリングすることによって行なうことができる。かかる配列差は、遺伝子のもとの塩基配列の差、又はもとのDNA内のメチル化の差に起因していた重亜硫酸塩処理されたDNAの塩基配列の差であり得る。
【0078】
細胞定量化:
該方法は、ゲノム内の特定の部位において塩基配列が異なっている(癌細胞及び正常な細胞内といった)1つの集団内の細胞比を決定するために応用できる。
【0079】
変動:
該方法は、多重ウェルプレート、マイクロアレイ、光ファイバアレイ及び懸濁粒子を含むさまざまなフォーマットにおける使用に適している。アレイフォーマットで使用するための特異的INAプローブの適切な選択により、例えば多重標的領域内の個々のシトシンのメチル化状態の決定など、異なるDNA配列の存在の同時決定を可能にすることができる。
【0080】
本明細書全体を通して、前後関係から相反する必要性が生じた場合を除き、「含む(comprise)」という語又は「含む(comprises)」又は「含む(comprising)」といった活用形は、言及された要素、整数又はステップ、又は要素、整数又はステップ群の内含を意味するもののその他のあらゆる要素、整数又はステップ、又は要素、整数又はステップ群の除外を意味しないものと理解される。
【0081】
本明細書中に含まれた文書、行為、材料、装置、物品などについての論述は全て、単に本発明の前後関係を提供するためのものにすぎない。これは、これらのもののいずれか又は全てが先行技術の基礎の一部を成す又は本出願の各請求の範囲の優先年月日以前にオーストラリアに存在した通りの本発明に関連する分野における一般的な共通の知識であったということを認知するものとしてとらえられるべきではない。
【0082】
本発明をより明確に理解するため、以下、図面及び実施例を参考にしながら、好ましい形態について記述する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0083】
発明を実施する方法
定義
エピジェネティクス/エピゲノミクス/メチロミクス(Methylomics)
受精から死後48時間に至るまでの全ての細胞、組織及び器官内及びヒト組織自己移植片ならびに非自己移植片、異種移植片から単離された細胞(及び細胞系統)及びその誘導体内の、全てのライフサイクル段階でのヒト、動物、細菌(ナノ細菌及び細胞外ならびに細胞内細菌を含む)及びウイルス起源の試料、ならびに凍結させられた又はその他の形で貯蔵された、切開又は切除された供給源、顕微鏡スライドといった組織学的供給源から誘導され得る試料、ブロック又は液体培地内に包埋された試料又は合成又は天然の表面又は液体から抽出された試料からの核酸内の5−メチルシトシン残基の分析。
【0084】
エピジェネティクス/エピゲノミクス/メチロミクス
主要な死因すなわち、悪性新生物、(癌)、虚血性心臓疾患、脳血管疾患、慢性閉塞性肺疾患、肺炎及びインフルエンザ、動脈疾患(アテローム性動脈硬化症及び大動脈瘤)、真性糖尿病及び中枢神経疾患、ならびに不安症、ストレス関連神経精神病及び肥満症などの社会的消耗性疾患、及び異常染色体数又は染色体再配列から発生したすべての状態、(常染色体ならびに性染色体が関与する異数性、身体的状態又は生殖細胞系内の挿入、転位、欠損症、複製)、ならびにミトコンドリアゲノムの類似の異常、に重点をおいた、病気の個体(なおここで言う「病気の」という語は、Jean D Wilson et al., McGraw Hill Inc.編, Harrison’s Principles of Internal Medicine、第12版及びそれ以降の版に記述されている又は言及されている全てのヒトの疾患、病気、不快及び逸脱状態、ならびにOMIM, Online Mendelian Inheritance in Man, www.ncbi.gov内に記述された全ての疾患、病気、不快及び逸脱状態を含む)からの細胞、組織及び器官、ならびに健康な個体(WHOにより定義されている通りの健康)の細胞、組織及び器官の間に自然に発生する変動の5−メチルシトシン分析を含む。
【0085】
正常な又は病気の個体は、(a)さまざまな民族性及び進化系統の集団、(b)種族及び地理的隔離集団、(c)亜種、(d)同性又は異性の双生児又はさらに高次の多生児、(e)正常な接合方法、人工受精、胚幹細胞方法によるクローニングから発生した又は(体細胞又は生殖細胞系核からの)核移植によって又は細胞質抽出物又は外来性作用物質による細胞又は核の修飾(決定転換及び分化転換)によって発生した、又はミトコンドリア又はその他の細胞小器官の投入又は修飾から発生した個体、(f)遺伝子導入ノック−アウト、ノック−イン又はノック−ダウン方法(in vivo、エクスビボ又は遺伝子活性が例えばRNAi、リボザイム、トランスボゾン活性、薬物又は小分子方法、PNA、INA、AMA、AHAなど又は核酸ベースの接合体(Trojanペプチドを含むがこれに制限されるわけではない)などによって過渡的に又は常時改変されているあらゆる方法によるかのいずれか)に由来する個体、又は、(正常な又は子宮外)妊娠の任意の段階にある個体、に由来し得る。
【0086】
エピジェネティクス/エピゲノミクス/メチロミクス
エピジェネティクス/エピゲノミクス/メチロミクスは、以下のような、変化したパラメータ及び基礎を成すメカニズムを、正常に変動する系及び病気の系の両方において決定し、治療的に改変させることを目的とした、細胞外又は細胞内様式でのヒトの疾患に結びつけられる、原核又は真核生物及びウイルス(又はそれらの組合せ)からの核酸内の5−メチルシトシン残基の分析を意味する。
(i) 遺伝的疾患;
(ii) 生物学的又は非生物学的起源のいずれであれ、環境的に誘発された因子(ここで言う環境的という語は、あらゆる妊娠段階中の又は排卵及び不妊治療条件下にある生物自体の体内の環境をも含むものとしてとらえられる)によりひき起こされた非遺伝的又は後成的遺伝疾患;
(iii) 「プリオン」クラスの因子、気圧変化及び無重力に対する暴露又は放射線効果によってもたらされる効果を含む、遺伝的又は非遺伝的疾患に対する素因;
(iv) 加齢に関連するうつ病、苦痛、神経精神病及び神経変性病及び更年期前及び更年期後の身体状態(排卵減少を含む;両方の性別で)を含む、全ての細胞型組織、器官系および生命ネットワークにおける加齢プロセスでの5−メチルシトシン変化;
(v) 癌(又は核酸増幅、欠失、再配列、転位及び挿入事象から生じる核型異常を伴う細胞内の変化を含めた、核酸供与量の変化により実証される疾病)における5−メチルシトシン変化、及び(日周期、光周期、睡眠、記憶及び「時差ぼけ」に対する細胞周期効果を含む)異なる細胞周期現象におけるその変動又は改変
(vi) ((イオン化するものであれイオン化しないものであれ、又は化学療法治療又は高高度暴露から生じたものであれ)あらゆるタイプの低酸素症、酸素欠乏症、放射線、ストレスによって又はミトコンドリア、核又は細胞小器官ゲノム間の不均衡によってもたらされた代謝効果を含めた)受精卵から胚形成、胎児発達、出生、青年期、成人期及び老年期までの、最も広義で定義された代謝ネットワーク内の5−メチルシトシン変化;
(vii) (翻訳後付加、翻訳後分割産物、翻訳後修飾(例えばインテイン、エクステイン、汎存化及び分解産物など)を伴うあらゆるもの;学習、脳成長及び細胞死に関与するD−セリンといったような単一の希少アミノ酸ならびに希少天然アミノ酸を含むタンパク質、ポリペプチド及びペプチド;薬物、生物医薬品、化学物質(ここで化学物質及び生物医薬品の定義は、G.Ashton, 2001, Nature Biotechnology, 19, 307-3111のものである)を含めた)タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、及びDNA、RNA、PNA、INA、AMA、AHAなど又はペプチドアプタマー、代謝産物、新規塩、プロドラッグ、既存の化合物のエステル、ワクチン、抗原、ポリケチド、非リボソームペプチド、ビタミン、及び(植物由来のシクロパミンといったような)あらゆる天然供給源由来の分子に対する、分子、細胞、組織、器官及び全生体レベルでの応答に起因する5−メチルシトシンの改変;
(viii) それが一本鎖であれ二本鎖であれ、外部供給源からの内因性トランスポゾン又はレトロトランスポゾン(SINES及びLINES)などの中で内部的に活性化されたRNA及びDNAウイルスに対する、分子、細胞、組織、器官及び全生体レベルでの応答に起因する5−メチルシトシンの改変;
(ix) 遺伝子由来又は非遺伝子由来のいずれであれ(又はイントロンを含有しているか又はしていない)、RNA写しの逆転写されたコピーに対する分子、細胞、組織、器官及び全生体レベルでの応答に起因する5−メチルシトシンの改変;
(x) (a)妊娠前、妊娠中及び妊娠後の母体流体ならびに血液及び脳脊髄液を含む全ての流体中を循環するDNA、RNA、PNA、INA、AMA、AHAなどの分子を含めた、DNA、RNA、PNA、INA、AMA、AHAなど(又はDNA、RNA、PNA、INA、AMA、AHA、そのいずれかのもののアプタマーのあらゆる組合せ)、
(b)ペプチド及び核酸のキメラであるか又はコレステロール部分、ホルモン及び核酸といったような天然分子のキメラである接合生体分子の組合せに対する、分子、細胞、組織、器官及び全生体レベルでの応答に起因する5−メチルシトシンの改変;及び
(xi) (in vivo又はエクスビボで、又は新規の環境又は天然の及び合成の基質と結びつけられた形で又はその組合せの形で実施される)その他の任意の既存の又は新規の細胞型への軌道に沿って、好ましくは幹細胞へ又は幹細胞からの軌道に沿っての、(両生類卵母細胞、植物、動物、細菌又はウイルス供給源といったような非ヒト供給源からの擾乱原、薬物、抗体又はそれらのあらゆる混合物を含めた)、最も広義での擾乱原を用いて決定転換又は分化転換された(又はされつつある)細胞又は幹細胞の応答に起因する5−メチルシトシンの改変。
【0087】
核酸
「核酸」という語は、天然に発生する核酸、DNA及びRNAを網羅する。「核酸類似体」という語は、天然に発生する核酸、DNA及びRNAの誘導体ならびに天然に発生する核酸の合成類似体を網羅する。合成類似体は、1つ以上のヌクレオチド類似体を含む。ヌクレオチド類似体という語には、基本的に天然に発生するヌクレオチドのように、核酸主鎖内に取込まれる能力をもちかつ特異的塩基対合(以下参照)の能力を有する全てのヌクレオチド類似体が含まれる。
【0088】
従って、「核酸」又は「核酸類似体」という語は、基本的に複数のヌクレオチド及び/又はヌクレオチド類似体及び/又はインタカレータ擬ヌクレオチドからなるあらゆる分子を表わしている。本発明にとって有用な核酸又は核酸類似体は、異なる主鎖モノマー単位を伴う一定数の異なるヌクレオチドを含み得る。
【0089】
好ましくは、核酸又は核酸類似体の一本鎖は、実質的に相補的な一本鎖核酸及び/又は核酸類似体とハイブリッド形成して二本鎖核酸又は核酸類似体を形成する能力を有する。より好ましくは、かかる二本鎖類似体は、二重らせんを形成する能力を有する。好ましくは、該二重らせんは、水素結合に起因して形成され、より好ましくは、二重らせんは、A形態、B形態、Z形態及びそれらの中間体の二重らせんからなる群から選択された二重らせんである。
【0090】
従って、本発明に有用な核酸及び核酸類似体としては、DNA、RNA、LNA、PNA、MNA、ANA、HNA、INA及びその混合物及びそのハイブリッド、ならびにそのリン原子修飾、例えば制限的意味なくホスホロチオエート、メチルホスホレート、ホスホラミダイト、ホスホロジチエート、ホスホロセレノエート、ホスホトリエステル及びホスホボラノエート、が含まれるが、これらに制限されるわけではない。さらに、制限的な意味なくメチルイミノメチル、ホルムアセテート、チオホルムアセテート及びアミドを含む連結基といったような、リンを含有しない化合物をヌクレオチドに対する連結のために使用することができる。特に、核酸及び核酸類似体は、1つ以上のインタカレータ擬ヌクレオチドを含むことができる。
【0091】
この状況下で、「混合物」は、異なる種類のヌクレオチド又はヌクレオチド類似体を含む核酸又は核酸類似体鎖を網羅するものと考えられている。さらに、この状況下では、「ハイブリッド」は、1つ以上の種類の主鎖を伴うヌクレオチド又はヌクレオチド類似体を含む1つの鎖及び異なる種類の主鎖を伴うヌクレオチド又はヌクレオチド類似体を含むもう一方の鎖を含む核酸又は核酸類似体を網羅すると考えられている。
【0092】
INAというのは、本発明に参照により援用されている国際公開第03/051901号パンフレット、国際公開第03/052132号パンフレット、国際公開第03/052133号パンフレット及び国際公開第03/052134号パンフレット(Unest A/S)の教示に従ったインターカレーティング核酸を意味する。HNAというのは、例えばVan Aetschotら、1995により記述されている通りの核酸を意味する。MNAというのは、Hossainら、1998によって記述されている通りの核酸を意味する。ANAは、Allertら、1999により記述されている核酸を意味する。LNAは、国際公開第99/14226号パンフレット(Exiqon)中で記述されている通りのあらゆるLNA分子であり得、好ましくは、LNAは国際公開第99/14226号パンフレットの要約で描かれている分子から選択される。より好ましくは、LNAは、Singhら、1998、Koshkinら、1998又はObikaら、1997に記述されている通りの核酸である。PNAは、例えばNielsenら、1991により記述されている通りのペプチド核酸を意味する。
【0093】
ヌクレオチドという語は、核酸又は核酸類似体の構築ブロックを表わし、ヌクレオチドという語は、天然に発生するヌクレオチド及びその誘導体ならびに基本的に天然に発生するヌクレオチド及びその誘導体と同じ機能を果たす能力を有するヌクレオチドを網羅している。天然に発生するヌクレオチドには、4つの主たる核塩基アデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)又はシトシン(C)のうちの1つを含むデオキシリボヌクレオチド、及び4つの核塩基アデニン(A)、ウラシル(U)、グアニン(G)又はシトシン(C)を含むリボヌクレオチドが含まれる。上述の主たる又は一般的な塩基に加えて、一部の核酸分子内に存在しうるその他のさほど一般的でない天然に発生する塩基としては、5−メチルシトシン(met−C)及び6−メチルアデニン(met−A)が含まれる。
【0094】
ヌクレオチド類似体は、核酸主鎖内に取込まれる能力をもちかつ特異的塩基対合の能力も有する任意のヌクレオチド様分子であり得る。天然に発生するものでないヌクレオチドには、DNA、RNA、PNA、INA、HNA、MNA、ANA、LNA、CNA、CeNA、TNA、(2’−NH)−TNA、(3’−NH)−TNA、α−L−リボ−LNA、α−L−キシロ−LNA、β−D−キシロ−LNA、α−D−リボ−LNA、[3.2.1]−LNA、ビシクロ−DNA、6−アミノ−ビシクロ−DNA、5−エピ−ビシクロ−DNA、α−ビシクロ−DNA、トリシクロ−DNA、ビシクロ[4.3.0]−DNA、ビシクロ−[3.2.1]−DNA、ビシクロ−[4.3.0]アミド−DNA、β−D−リボピラノシル−NA、α−L−リキソピラノシル−NA、2’−R−RNA、α−L−RNA又はα−D−RNA、β−D−RNA内に含まれたヌクレオチドが含まれるが、これらに制限されるわけではない。
【0095】
ヌクレオチド及びヌクレオチド類似体の機能は、相補的ヌクレオチドの核塩基の水素結合を介して相補的ヌクレオチドと特異的に相互作用できるようになることならびに核酸又は核酸類似体の中に取込まれ得るようになることにある。天然に発生するヌクレオチドならびに一部のヌクレオチド類似体は、例えばRNA又はDNAポリメラーゼにより核酸又は核酸類似体内に酵素的に取込まれる能力を有する。しかしながら、ヌクレオチド又はヌクレオチド類似体は、核酸又は核酸類似体内に化学的に取込まれてもよい。
【0096】
さらに核酸又は核酸類似体は、2つの比較的小さい核酸又は核酸類似体をもう1つのものにカップリングすることによって調製されることができ、例えば、これはリガーゼによって酵素的に行なわれてもよいし、又、化学的に行なわれてもよい。
【0097】
ヌクレオチド又はヌクレオチド類似体は、主鎖モノマー単位及び核塩基を含む。核塩基は、天然に発生する核塩基か又は基本的に同じ機能を果たす能力を有するその誘導体又はその類似体であり得る。核塩基の機能は、水素結合を介して1つ以上のその他の核塩基と特異的に会合する能力を有することにある。かくして、1つ又はわずかなその他の核塩基と安定した水素結合を形成することだけができ、通常それ自体を含めた大部分のその他の核塩基と安定した水素結合を形成できないということが、核塩基の重要な特長である。もう1つの核塩基との1つの核塩基の特異的相互反応は一般に「塩基対合」と呼ばれる。
【0098】
塩基対合は、予め定められたヌクレオチドと相補的ヌクレオチドの間の特異的ハイブリダイゼーションを結果としてもたらす。相補的ヌクレオチドは、塩基対合の能力を有する核塩基を含むヌクレオチドである。
【0099】
一般的な天然に発生する核塩基のうち、アデニン(A)は、チミン(T)又はウラシル(U)と対合し、グアニン(G)はシトシン(C)と対合する。従って、Aを含むヌクレオチドは、T又はUのいずれかを含むヌクレオチドと相補的であり、Gを含むヌクレオチドは、Cを含むヌクレオチドと相補的である。
【0100】
ヌクレオチドは、追加の分子物質を含むようにさらに誘導体化され得る。ヌクレオチドは、核塩基又は主鎖モノマー単位上で誘導体化され得る。塩基上の好ましい誘導体化部位としては、アデニンの8位、ウラシルの5位、シトシンの5又は6位及びグアニンの7位が含まれる。複素環修飾は、強化された塩基スタッキング、付加的な水素結合、及びこれらのクラスの組合わせといった3つの構造クラスへとグループ分けすることができる。平面系のπ−電子雲を拡張させることによって塩基スタッキングを増強する修飾か、ピリミジンの5位及び7−デアザ−プリンの7位における接合型親油性修飾により代表される。ピリミジン修飾の5位での置換にはプロピン、ヘキシン、チアゾール及び単にメチル基が含まれ、7−デアザプリンの7位における置換には、ヨード、プロピニル及びシアノ基が含まれる。プロピルから5員複素環へそして4及び5位(シトシンクランプ)から生じる3環融合系へとシトシンの5位を修飾することも同様に可能である。複素環修飾の第2のタイプは、付加的なアミノ基が、G−C塩基対内の3水素結合に類似するA−T塩基対内のもう1つの水素結合を提供している2−アミノ−アデニンにより代表される。効果の組合せを提供する複素環修飾は、2−アミノ−7−デアザ−7−修飾済みアデニン及びヘテロ二重鎖のエトキシアミノ官能基を有する3環シトシン類似体により代表される。さらに、N2−修飾済み2−アミノアデニン修飾済みオリゴヌクレオチドが、一般的な修飾の中に含まれる。リボース又はデオキシリボース部分上の好ましい誘導体化部位は、非連結性炭素位置C−2’及びC−4’の修飾、連結性炭素C−1’、C−3’及びC−5’の修飾、糖酸素O−4’の置換、無水糖修飾(立体配座制限あるもの)、環糖修飾(立体配座制限あるもの)、リボフラノシル環サイズ変更、連結部位−糖対糖、(C−3’対C−5’/C−2’対C−5’)、ヘテロ原子環−修飾済み糖及び上述の修飾の組合せである。しかしながら、核酸又は核酸類似体の全体的塩基対合特異性が分断されないかぎり、その他の部位を誘導体化させることもできる。最終的に、主鎖モノマー単位がリン酸塩基を含む場合、一部の主鎖モノマー単位のリン酸塩を誘導体化させることができる。
【0101】
本書で使用されている通りのオリゴヌクレオチド及びオリゴヌクレオチド類似体は、基本的にヌクレオチド及び/又はヌクレオチド類似体及び/又はインタカレータ擬ヌクレオチドの配列からなる分子である。好ましくは、オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体は5〜100個の個々のヌクレオチドを含む。オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体は、DNA、RNA、LNA、2’−O−メチルRNA、PNA、ANA、HNA及びその混合物ならびにあらゆるその他のヌクレオチド及び/又はヌクレオチド類似体及び/又はインタカレータ擬ヌクレオチドを含み得る。
【0102】
対応する核酸
核酸、核酸類似体、オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体は、それらがハイブリッド形成する能力を有する場合に対応しているとみなされる。好ましくは、対応する核酸、核酸類似体、オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体は、低ストリンジェンシー条件でハイブリッド形成する能力をもち、より好ましくは、対応する核酸、核酸類似体、オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体は、中ストリンジェンシー条件下でハイブリッド形成する能力をもち、より好ましくは、対応する核酸、核酸類似体、オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体は高ストリンジェンシー条件下でハイブリッド形成する能力を有する。
【0103】
本書で使用する高ストリンジェンシー条件は、例えばSouthern E.M., 1975, J. Mol. Biol., 98:503-517によって記述されている通りのサザンブロット法及びハイブリダイゼーションに関連して通常利用される通りのストリンジェンシーを表わすものとする。このような目的のためには、予備ハイブリダイゼーションとハイブリダイゼーションのステップを内含することが日常的実践方法である。かかるステップは通常本発明に参照により援用されている「Molecular Cloning/A Laboratory Manual」(Cold Spring Harbar)中でSambrookらにより記述されているように、6×SSPE、5%のDenhardt、0.5%のSDS、50%のホルムアミド、100μg/mlの変性サケ精巣DNAを含有する溶液を使用し(42℃で18時間のインキュベーション)、それに続いて2×SSC及び0.5%SDSで洗浄し(室温及び37℃で)、0.1×SSC及び0.5%SDSで洗浄する(30分間68℃でのインキュベーション)ことによって実施される。
【0104】
本書で使用されている中ストリンジェンシー条件は、pH7.0で1mMのEDTA、10mMのNa2HPO4H2O、140mMのNaClを含有する緩衝液中でのハイブリダイゼーションを意味するものとする。好ましくは、各々の核酸又は核酸類似体が約1.5μMずつ提供される。代替的には、中ストリンジェンシーは、50mMのKCl、10mMのTRIS−HCl(pH9.0)、0.1%のトリトンX−100、2mMのMgCl2を含有する緩衝液中でのハイブリダイゼーションを意味する可能性がある。
【0105】
低ストリンジェンシー条件は、pH7.0で1MのNaCl、10mMのNa3PO4を構成する緩衝液中でのハイブリダイゼーションを意味する。
【0106】
代替的には、対応する核酸、核酸類似体、オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体は、70%を上回る相補性、例えば75%を上回る、例えば80%を上回る、例えば85%を上回る、例えば90%を上回る、例えば92%を上回る、例えば94%を上回る、例えば95%を上回る、例えば96%を上回る、例えば97%を上回る相補性といったような実質的な相補性を一定の与えられた配列上で互いに有する核酸、核酸類似体、オリゴヌクレオチド、又はオリゴヌクレオチド類似体である。
【0107】
好ましくは、該一定の与えられた配列の長さは、少なくとも10ヌクレオチド長、例えば少なくとも15ヌクレオチド、例えば少なくとも20ヌクレオチド、例えば少なくとも25ヌクレオチド、例えば少なくとも30ヌクレオチド、例えば10〜500ヌクレオチドの間、例えば10〜100ヌクレオチド長の間、例えば10〜50ヌクレオチド長の間である。より好ましくは、対応するオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体は実質的にその全長にわたり相補性をもつ。
【0108】
クロスハイブリダイゼーション
クロスハイブリダイゼーションという語は、少なくとも2つの核酸又は核酸類似体の間の意図的でないハイブリダイゼーションを網羅している。クロスハイブリダイゼーションという語は、その意図された標的配列以外の核酸配列又は核酸類似体配列に対する核酸プローブ又は核酸類似体プローブ配列のハイブリダイゼーションを表わすために用いることができる。
【0109】
往々にして、クロスハイブリダイゼーションは、たとえそのプローブ及びその対応する標的配列よりも低い相補性度しか有していなくても、1つ以上の対応する非標的配列とプローブの間で起こる。この望まれない効果は、標的に比べてプローブがはるかに余剰であること及び/又はアニーリング反応速度が速いことに起因している可能性がある。クロスハイブリダイゼーションは同様に、わずかな核塩基対の間、例えばPCR反応内のプライマの間の水素結合によっても発生し、プライマ2量体を形成する及び/又は非特異的PCR産物を形成する結果となる。
【0110】
同じタイプのヌクレオチド類似体に対する高い親和力をもつ1つ以上のヌクレオチド類似体を含む核酸は、塩基対合に基づいた2量体又はそれより高次の複合体を形成する傾向をもつ。LNA、2’−O−メチルRNA及びPNAといったような(ただしこれらに制限されるわけではない)ヌクレオチド類似体を含むプローブは一般に、同じタイプの主鎖モノマー単位を含むその他のオリゴヌクレオチド類似体に対しハイブリッド形成するための高い親和力を有する。従って、個々のプローブ分子が低い相補性度しか有していない場合でも、それらはハイブリッド形成する傾向をもつ。
【0111】
自己ハイブリダイゼーション
自己ハイブリダイゼーションという語は、自らの上に戻るように折畳むことによって核酸又は核酸類似体分子が自らにアニールして例えばヘアピン構造などといった二次構造を生成するプロセス、又は1つの分子がもう1つの同一の分子に結合して分子の凝集を導くことを網羅している。大部分の利用分野において、自己ハイブリダイゼーションを回避することが重要である。さらに、自己ハイブリダイゼーションは同様にバックグラウンドシグナルを増大させ、分子生物学的方法又はアッセイの感度を大幅に低下させる可能性がある。二次構造の生成は、望ましい核酸標的配列とのハイブリダイゼーションを阻害し得る。これは、例えば核酸又は核酸類似体がPCR反応内のプライマとして又はエクソヌクレアーゼアッセイ用のフルオロフォア/消光剤標識済みプローブとして使用される場合などの大部分のアッセイにおいて望ましくない。両方のアッセイにおいて、自己ハイブリダイゼーションは、標的核酸に対するハイブリダイゼーションを阻害することになり、さらにエクソヌクレアーゼアッセイにおけるフルオロフォア消光度は低下させられる。
【0112】
同じタイプのヌクレオチド類似体に対する高い親和力を伴う1つ以上のヌクレオチド類似体を含む核酸は、自己ハイブリッド形成する傾向をもつ。LNA、2’−O−メチルRNA及びPNAといったような(ただしこれらに制限されるわけではない)ヌクレオチド類似体を含むプローブは一般に、自己ハイブリッド形成するための高い親和力を有する。従って、個々のプローブ分子が低い自己相補性度しかもたない場合でも、これらは自己ハイブリッド形成する傾向をもつ。
【0113】
融解温度
核酸の融解というのは、二本鎖核酸分子の二本鎖の分離を意味する。融解温度(Tm)は、50%のらせん(ハイブリッド形成されたもの)対コイル(ハイブリッド形成されていないもの)形態が存在する摂氏温度を表わす。
【0114】
高い融解温度は、安定した複合体、ひいては個々の鎖間の高い親和力を表わす。同様にして、低い融解温度は、個々の鎖間の比較的低い親和力を表わす。従って、通常は、2つの鎖の間の強い水素結合は、結果として高い融解温度をもたらす。
【0115】
さらに、二本鎖核酸の核塩基間のインタカレータの挿入も同様に、二本鎖核酸を安定化し、従ってより高い融解温度を結果としてもたらす。
【0116】
さらに、融解温度は、周囲の物理的/化学的状態に左右される。例えば融解温度は塩濃度及びpHによって左右される。
【0117】
融解温度は、数多くのアッセイにより決定され得る。例えば、それは、ハイブリダイゼーションの形成及び崩壊(融解)を判定するべくUVスペクトルを用いることにより決定され得る。
【0118】
インターカレーティング核酸(INA)又はインタカレータ擬ヌクレオチド
インターカレーティング核酸(INA)は、本明細書においてインタカレータ擬ヌクレオチドとも呼ばれている。
【0119】
インタカレータを含み以下の望ましい特徴のうちのうちの1つ以上のものを有する擬ヌクレオチド又はポリヌクレオチド類似体:
予め定められた位置で二重らせん内に挿入する;
I. DNAに対する親和力を実質的に増大させる;
II. 自己及びクロスハイブリダイゼーションを阻害又は減少させる;
III. RNA及びDNAといったような異なる核酸を識別する;
IV. ハイブリダイゼーションの特異性を実質的に増大させる;
V. ヌクレアーゼ安定性を増大させる;
VI. 鎖侵入を有意に増強させる;
VII. ハイブリダイゼーションの時点で蛍光強度の変化を示す。
【0120】
インタカレータ擬ヌクレオチドは、一般構造:
X−Y−Q、
を有し、式中、
Xは、核酸又は核酸類似体の主鎖内に取込まれる能力を有する主鎖モノマー単位であり;
Qは、DNAの核塩基とコ・スタッキング(co−stacking)する能力を有する、少なくとも1つの基本的に平坦な接合系を含むインタカレータであり;
Yは、主鎖モノマー単位とインタカレータを連結するリンカー部分である。
【0121】
より好ましくは、インタカレータ擬ヌクレオチドは、一般構造:
X−Y−Q、
を有し、式中
− Xは、
【化1】
という一般構造式の核酸又は核酸類似体の主鎖内に取込まれる能力を有する主鎖モノマー単位であり、
[ここで、n=1〜6であり、
R1は三価又は五価の置換基を有するリン原子であり;
R2は少なくとも2つの結合を形成する能力を有する原子から個別に選択され、R2は任意には個別に置換されており、
R6は保護基である]、
− Qは、DNAの核塩基とコ・スタッキングする能力を有する、少なくとも1つの基本的に平坦な接合系を含むインタカレータであり;
− Yは、主鎖モノマー単位のR2のいずれかとインタカレータを連結するリンカー部分であり;
Q及びYの合計長は、約7Å〜20Åの範囲内にある。
【0122】
インタカレータがピレンである場合、例えば、Q及びYの合計長は約9Å〜13Å、好ましくは9Å〜11Åの範囲内にある。
【0123】
「核酸又は核酸類似体の主鎖内に取込まれた」という語は、該インタカレータ擬似ヌクレオチドを核酸及び/又は核酸類似体の配列内に挿入できることを意味している。
【0124】
「平坦な接合系」という語は、その接合系内に含まれた実質的に全ての原子が1つの平面内にあることを意味する。
【0125】
「基本的に平坦な接合系」という語は、接合系内に含まれる全ての原子のうち常時1つの平面内に無いのは最大でも20%であることを意味する。
【0126】
「接合系」という語は、3つ以上の隣接する原子の原子p軌道の重複を伴う化学的結合を含有する構造単位を意味する(Gold et al., 1987, Compendium of Chemical Terminology, Blackwell Scientific Publications, Oxford, UK)。
【0127】
コ・スタッキングは、コアキシャル・スタッキング(coaxial stacking)を略したものとして用いられている。コアキシャル・スタッキングは、スタック様の構造内の共通軸に沿って互いの上に(平坦な側面に対し平坦な側面)平坦な分子が整列している1つのエネルギー的に有利な構造である。コ・スタッキングには、個々の分子の2つのパイ電子雲の間の相互作用が必要である。二重鎖内で核塩基とコ・スタッキングするインタカレータ擬似ヌクレオチドの場合、好ましくは、反対側の鎖上にパイ電子系との相互作用が存在し、より好ましくは、両鎖上にパイ電子系との相互作用が存在する。コ・スタッキング相互作用は分子間及び分子内の両方で見られる。例えば、核酸は、核塩基コ・スタッキングを可能にするべく二重鎖構造を採用している。
【0128】
主鎖モノマー単位
適切なあらゆる主鎖モノマー単位を利用することができる。主鎖モノマー単位は、オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体の主鎖内に取込まれ得るインタカレータ擬似ヌクレオチドの部分を含む。さらに、主鎖モノマー単位は、その主鎖モノマー単位を含むオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体の合成中又は合成の後、いかなる形であれ除去又は変化されうる1つ以上の離脱基、保護基及び/又は反応基を含み得る。
【0129】
「主鎖モノマー単位」という語には、主鎖モノマー単位自体しか含まれず、例えばインタカレータに主鎖モノマー単位を連結させるリンカーは含まれない。従って、インタカレータならびにリンカーは主鎖モノマー単位の一部ではない。
【0130】
従って、主鎖モノマー単位はモノマーが1つの配列内に取込まれている原子のみを含有し、次のものからなる群から選択される。
− 近隣ヌクレオチドの主鎖モノマー単位に対する連結を形成する能力を有する原子;又は
− 少なくとも2つの部位で主鎖モノマー単位のその他の原子に連結されている原子;又は
− 1つの部位で主鎖モノマー単位に連結され、そうでなければその他の原子と連結されていない原子。
【0131】
かくして、主鎖モノマー単位原子は、モノマーが1つの配列内に取込まれた時点で近隣ヌクレオチドの主鎖リン原子の間の直接的連結(最短経路)に関与し、該近隣ヌクレオチドが天然に発生するヌクレオチドである原子として定義づけされる。
【0132】
主鎖モノマー単位は、適切な任意の主鎖モノマー単位であり得る。主鎖モノマー単位は例えば、DNA、RNA、PNA、INA、HNA、MNA、ANA、LNA、CNA、CeNA、TNA、(2’−NH)−TNA、(3’−NH)−TNA、α−L−リボ−LNA、α−L−キシロ−LNA、β−D−キシロ−LNA、α−D−リボ−LNA、[3.2.1]−LNA、ビシクロ−DNA、6−アミノ−ビシクロ−DNA、5−エピ−ビシクロ−DNA、α−ビシクロ−DNA、トリシクロ−DNA、ビシクロ[4.3.0]−DNA、ビシクロ[3.2.1]−DNA、ビシクロ[4.3.0]アミド−DNA、β−D−リボピラノシル−NA、α−L−リキソピラノシル−NA、2’−R−RNA、α−L−RNA又はα−D−RNA、β−D−RNAの主鎖モノマー単位からなる群から選択され得る。
【0133】
LNA(ロック核酸)の主鎖モノマー単位は、DNA主鎖モノマー単位の通常の立体配座の自由を制限する分子内ブリッジを含む、立体的に制限されたDNA主鎖モノマー単位である。LNAは、国際公開第99/14226号パンフレット(Exiqon)内で記述されているようなあらゆるLNA分子であり得る。好ましいLNAは、2’−O位を4’−C位に連結するメチルリンカーを含むが、2’オキシ原子が窒素又は硫黄のいずれかで置換されているLNAといったようなその他のLNAも同様に、本発明の中に含まれている。
【0134】
インタカレータ擬似ヌクレオチドの主鎖モノマー単位は、好ましくは、オリゴヌクレオチド及び/又はヌクレオチド類似体の中に取込まれる前に、一般構造:
【化2】
を有し、式中、
n=1〜6、好ましくはn=2〜6、より好ましくはn=3〜6、より好ましくはn=2〜5、より好ましくはn=3〜5、より好ましくはn=3〜4であり;
R1は、三価又は五価の置換リン原子であり、好ましくはR1は、
【化3】
であり、
R2は、少なくとも2つの結合を形成する能力を有する原子から個別に選択され得、該原子は任意には個別に置換され、好ましくはR2は、任意には個別に置換されたO、S、N、C、Pから個別に選択される。「個別に」という語は、R2が同じ分子内の1つ、2つ又はそれ以上の異なる基を表わし得ることを意味している。2つのR2の間の結合は、飽和又は不飽和又は環系の一部、又はその組合せであり得る。各々のR2は、H、低級アルキル、C2−C6アルケニル、C6−C10アリール、C7−C11アリールメチル、C2−C7アシルオキシメチル、C3−C8アルコキシカルボニルオキシメチル、C7−C11アリーロイルオキシメチル、C3−C8S−アシル−2−チオエチルから選択された置換基といった任意の適切な置換基と個別に置換され得る。
【0135】
「アルキル」基というのは、直鎖、分枝鎖、及び環状アルキル基を含めた、任意には置換された脂肪族炭化水素を意味する。好ましくは、アルキル基は1〜25個の炭素を有し、20個以下のヘテロ原子を含む。より好ましくは、1〜12個の炭素、より好ましくは1〜6個の炭素、より好ましくは1〜4個の炭素の低級アルキルである。ヘテロ原子は好ましくは、窒素、硫黄、リン及び酸素からなる群から選択されている。
【0136】
「アルケニル」基は、全て任意に置換され得る直鎖、分枝鎖及び環状アルケニル基を内含する少なくとも1つの二重結合を含有する、任意に置換された炭化水素を意味する。好ましくは、アルケニル基は2〜25個の炭素を有し、20個以下のヘテロ原子を含有する。より好ましくは、2〜12個、より好ましくは2〜4個の炭素の低級アルケニルである。ヘテロ原子は好ましくは、窒素、硫黄、リン及び酸素からなる群から選択される。
【0137】
「アルキニル」基は、全て任意に置換され得る直鎖、分枝鎖及び環状アルキニル基を内含する少なくとも1つの3重結合を含有する、任意に置換された不飽和炭化水素を意味する。好ましくは、アルキニル基は2〜25個の炭素を有し、20個以下のヘテロ原子を含有する。より好ましくは、2〜12個、より好ましくは2〜4個の炭素の低級アルキニルである。ヘテロ原子は好ましくは、窒素、硫黄、リン及び酸素からなる群から選択される。
【0138】
「アリール」は、接合パイ電子系を伴う少なくとも1つの環を有する任意には置換された芳香族基を意味し、炭素環アリール、複素環アリール、ビ−アリール及びトリ−アリール基を含む。アリール置換の置換基例としては、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アミノ、基本的に相補的なアミノ、カルボキシ、ヒドロキシ、アルコキシ、ニトロ、スルフォニル、ハロゲン、チオール及びアリールオキシが含まれる。
【0139】
「炭素環アリール」は、芳香族環上の全ての原子が炭素原子であるアリールを意味する。炭素原子は、任意にはアリールについて以上で記述されている通りに置換される。好ましくは、炭素環アリールは、任意に置換されたフェニルである。
【0140】
「複素環アリール」というのは、芳香族環の中の環原子として1〜3個のヘテロ原子を有するアリールを意味し、該環原子の残りの部分は炭素原子である。適切なヘテロ原子には酸素、硫黄及び窒素が含まれる。複素環アリールの例としては、フラニル、チェリル、ピリジル、ピロリル、N−低級アルキルピロロ、ピリミジル、ピラジニル及びイミダゾリルが含まれる。複素環アリールは、アリールについて上述されたとおり、任意には置換される。
【0141】
2つ以上のR2上の置換基は、代替的には合わさって、上述のとおりの環系のいずれかのような1つの環系を形成する。好ましくはR2は、H、メチル、R4、ヒドロキシ、ハロゲン、及びアミノから選択された1つの原子又は基で置換され、より好ましくはR2は、H、メチル、R4から選択された1つの原子又は基で置換される。より好ましくは、R2はO、S、NH、N(Me)、N(R4)、C(R4)2、CH(R4)又はCH2から個別に選択され、ここでR4は以下で定義される通りである。
【0142】
R3は、メチル、ベータ−シアノエチル、p−ニトロフェネチル、o−クロロフェニル、又はp−クロロフェニルである。
【0143】
R4は、低級アルキル、好ましくはメチル、エチル、又はイソプロピルといったような低級アルキル、又はモルフォリノ、ピロリジノ又は2,2,6,6−テトラメチルピロリジノといったような複素環であり、ここで低級アルキルはC1−C4といったようなC1−C6として定義される。
【0144】
R5は、X2=O−である場合にHであることを条件としてアルキル、アルコキシ、アリール又はHであり、好ましくはR5は低級アルキル、低級アルコキシ、アリールオキシから選択されている。好ましい実施形態においては、アリールオキシはフェニル、ナフチル又はピリジンから選択されている。
【0145】
R6は、任意の適切な保護基から選択された保護基である。好ましくは、R6は、トリチル、モノメトキシトリチル、2−クロロトリチル、1,1,1,2−テトラクロロ−2,2−ビス(p−メトキシフェニル)−エタン(DATE)、9−フェニルキサンチン−9−イル(ピキシル)及び9−(p−メトキシフェニル)キサンチン−9−イル(MOX)又は、「Current Protocols in Nucleic Acid Chemistry」volume 1, Beaucage et al. Wileyの中で言及されているその他の保護基からなる群から選択される。より好ましくは、保護基は、モノメトキシトリチル及びジメトキシトリチルからなる群から選択され得る。最も好ましくは、保護基は、4,4’−ジメトキシトリチル(DMT)であり得る。
【0146】
R9は、任意に置換されたO、S、Nから選択され、好ましくはR9はO、S、NH、N(Me)から選択される。
【0147】
R10は、任意に置換されたO、S、N、Cから選択される。
【0148】
X1は、Cl、Br、I、又はN(R4)2から選択される。
【0149】
X2は、Cl、Br、I、N(R4)2又はO−から選択される。
【0150】
置換基に関して上述されているように、主鎖モノマー単位は、非環式又は環系の一部分であり得る。
【0151】
好ましくは、インタカレータ擬似ヌクレオチドの主鎖モノマー単位は、非環式主鎖モノマー単位からなる群から選択されている。非環式というのは、環構造を含まないあらゆる主鎖モノマー単位を網羅するものとされており、例えば、該主鎖モノマー単位は好ましくはリボース又はデオキシリボース系を含まない。
【0152】
特に、インタカレータ擬似ヌクレオチドの主鎖モノマー単位が、バルジ挿入(以下で定義されている)を安定化させる能力を有する非環式主鎖モノマー単位であることのが好ましい。
【0153】
インタカレータ擬似ヌクレオチドの主鎖モノマー単位は、五価のリン原子といったような三価及び五価のリン原子から選択された少なくとも1つの化学基を含む主鎖モノマー単位からなる群から選択され得る。より好ましくは、インタカレータ擬似ヌクレオチドの主鎖モノマー単位のリン原子は、ホスホエステル、ホスホジエステル、ホスホラミデート及びホスホラミダイト基からなる群から選択された少なくとも1つの化学基を含む主鎖モノマー単位からなる群から選択され得る。
【0154】
リン酸塩、ホスホエステル、ホスホジエステル、ホスホラミデート及びホスホラミダイト基からなる群から選択された少なくとも1つの化学基を含む好ましい主鎖モノマー単位は、それが核酸主鎖内に取込まれた場合、リン原子を含まずに少なくとも1つのリン原子から近隣ヌクレオチドの少なくとも1つのリン原子までの距離が、長くても6原子、例えば2、例えば3、例えば4、例えば5、例えば6原子の長さである、主鎖モノマー単位である。
【0155】
好ましくは、主鎖モノマー単位は、いずれの場合でもリン原子自体を含めずに、多くとも5個の原子(より好ましくは多くとも4個)がインタカレータ擬似ヌクレオチド主鎖モノマー単位のリン原子と最も近い近隣リン原子を隔離しており、より好ましくは5個の原子が、インタカレータ擬似ヌクレオチド主鎖モノマー単位のリン原子と最も近い近隣リン原子を隔離しているような形で、核酸又は核酸類似体のリン酸塩主鎖内に取込まれる能力を有している。
【0156】
特に好ましい形態では、インタカレータ擬似ヌクレオチドは、ホスホラミダイトを含む主鎖モノマー単位を含み、より好ましくは、該主鎖モノマー単位は三価のホスホラミダイトを含む。適切な三価のホスホラミダイトは、核酸及び/又は核酸類似体の主鎖内に取込まれ得る三価のホスホラミダイトである。通常は、アミダイト基は、核酸の主鎖内に取込まれ得ず、むしろアミジット基又はその一部は、離脱基及び/又は保護基として役立ち得る。しかしながら、ホスホラミダイト基は、核酸主鎖内への主鎖モノマー単位の取込みを容易にし得ることから、主鎖モノマー単位がホスホラミダイト基を含むことが好ましい。
【0157】
オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体内に挿入されるインタカレータ擬似ヌクレオチドの主鎖モノマー単位は、ホスホジエステル結合を含み得る。さらに、インタカレータ擬似ヌクレオチドの主鎖モノマー単位は五価のホスホラミダイトを含み得る。好ましくは、インタカレータ擬似ヌクレオチドの主鎖モノマー単位は、五価のホスホラミデートを含み得る非環式主鎖モノマー単位である。
【0158】
離脱基
主鎖モノマー単位は、1つ以上の離脱基を含み得る。離脱基は、インタカレータ擬似ヌクレオチド又はヌクレオチドがモノマーである場合に主鎖モノマー単位の一部であるが、ひとたびインタカレータ擬似ヌクレオチド又はヌクレオチドがオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体内に取込まれた時点で分子内にもはや存在しない化学基である。
【0159】
離脱基の性質は、主鎖モノマー単位により異なる。例えば、主鎖モノマー単位がリンアミジットである場合、離脱基は例えばジイソプロピルアミン基であり得る。一般に、主鎖モノマー単位がリンアミジットである場合、離脱基は例えばジイソプロピルアミンの形でリン原子に固定され、離脱基は求核基に対するリン原子のカップリング時点で除去され、一方リン酸塩基の残りの部分又は残りの部分の1部分が核酸又は核酸類似体主鎖の一部となり得る。
【0160】
反応基
主鎖モノマー単位はさらに、反応前よりも長い1つのヌクレオチドである核酸又は核酸類似体を形成するべくもう1つのヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド又は核酸又は核酸類似体との化学反応を実施する能力を有する反応基を含むことができる。従って、ヌクレオチドは、その遊離形態にある場合、すなわち核酸内に取込まれていない場合、もう1つのヌクレオチド又は核酸又は核酸類似体と反応する能力を有する反応基を含み得る。
【0161】
反応基は、保護基によって保護され得る。化学反応に先立って、保護基を除去することができる。保護基はかくして、新たに形成された核酸又は核酸類似体の一部とはならない。反応基の例としては、DNA又はRNA主鎖モノマー単位の5’−ヒドロキシ基といったような求核物質がある。
【0162】
保護基
主鎖モノマー単位は、合成中に除去できる保護基をも含むことができる。保護基の除去は、インタカレータ擬似ヌクレオチドとヌクレオチド又はヌクレオチド類似体又はもう1つのインタカレータ擬似ヌクレオチドの間の化学反応を可能にする。
【0163】
特にヌクレオチドモノマー又はヌクレオチド類似体モノマー又はインタカレータ擬似ヌクレオチドモノマーは、ひとたびヌクレオチド又はヌクレオチド類似体又はインタカレータ擬似ヌクレオチドが核酸又は核酸類似体内に取込まれた時点で、分子内にもはや存在しなくなる1つの保護基を含み得る。さらに、主鎖モノマー単位は、ヌクレオチド又はヌクレオチド類似体又はインタカレータ擬似ヌクレオチドの取込みの後にオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体内に存在しうるものの該オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体への付加的なヌクレオチド又はヌクレオチド類似体の導入後にはもはや存在し得ないか又はオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体全体の合成後除去され得る保護基を含むことができる。
【0164】
保護基は、当業者にとって既知の一定数の適切な技術によって除去され得る。好ましくは、保護基は、酸処理、チオフェノール処理及びアルカリ処理からなる群から選択された処理によって除去され得る。
【0165】
主鎖モノマー単位の5’末端及び5’末端類似体を保護するために用いることのできる好ましい保護基は、トリチル、モノメトキシトリチル、2−クロロトリチル、1,1,1,2−テトラクロロ−2,2−ビス(p−メトキシフェニル)−エタン(DATE)、9−フェニルキサンチン−9−イル(ピキシル)及び9−(p−メトキシフェニル)キサンチン−9−イル(MOX)又は「Current Protocols In Nucleic Acid Chemistry」volume 1, Beaucage et al. Wiley中で言及されているその他の保護基からなる群から選択され得る。より好ましくは、保護基は、モノメトキシトリチル及びジメトキシトリチルからなる群から選択され得る。最も好ましくは、保護基は、4,4’−ジメトキシトリチル(DMT)であり得る。4,4’−ジメトキシトリチル(DMT)基は、酸処理例えば、CH2Cl2中の3%ジクロロ酢酸中での又は3%のトリクロロ酢酸中での短時間のインキュベーション(30〜60秒で充分である)によって除去可能である。
【0166】
主鎖モノマー単位のリン酸塩又はホスホラミダイト基を保護し得る好ましい保護基は、例えばメチル及び2−シアノエチルからなる群から選択され得る。メチル保護基は、例えば、チオフェノール又は二ナトリウム2−カルバモイル2−シアノエチレン−1,1−ジチオレートでの処理によって除去され得る。2−シアノエチル基は、アルカリ処理例えば、濃縮アンモニア水、メチルアミン水と濃縮アンモニア水の1:1混合物又はアンモニアガスでの処理により除去され得る。
【0167】
インタカレータ
インタカレータという語は、核酸の核塩基とコ・スタッキングする能力を有する少なくとも1つの基本的に平坦な接合系を含むあらゆる分子部分を網羅する。好ましくは、インタカレータは、核酸又は核酸類似体の核塩基とコ・スタッキングする能力を有する少なくとも1つの基本的に平坦な接合系からなる。
【0168】
好ましくは、インタカレータは、ポリアロメート及びヘテロポリアロメートからなる群から選択された化学基を含み、さらに一層好ましくは、インタカレータは基本的にポリアロメート又はヘテロポリアロメートからなる。最も好ましくは、インタカレータはポリアロメート及びヘテロポリアロメートからなる群から選択される。
【0169】
ポリアロメート又はヘテロポリアロメートは、例えば1個、例えば2個、例えば3個、例えば4個、例えば5個、例えば6個、例えば7個、例えば8個、例えば8個を超える数といった適切な任意の数の環で構成され得る。さらに、ポリアロメート又はヘテロポリアロメートは、ヒドロキシル、ブロモ、フルオロ、クロロ、ヨード、メルカプト、チオ、シアノ、アルキルチオ、複素環、アリール、ヘテロアリール、カルボキシル、カルボアルコイル、アルキル、アルケニル、アルキニル、ニトロ、アミノ、アルコキシ及びアミドからなる群から選択された1つ以上のもので置換することができる。
【0170】
1つの好ましい形態においては、インタカレータは、蛍光発光能力を有するポリアロメート及びヘテロポリアロメートからなる群から選択され得る。
【0171】
もう1つのより好ましい形態においては、インタカレータは、エキサイマー、エキシプレックス、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)又は電荷移動複合体を形成する能力を有するポリアロメート及びヘテロポリアロメートからなる群から選択され得る。
【0172】
従って、インタカレータは好ましくは、フェナントロリン、フェナジン、フェナントリジン、アントラキノン、ピレン、アントラセン、ナプテン、フェナントレン、ピセン、クリセン、ナフタセン、アクリドン、ベンズアントラセン、スチルベン、オキサロ−ピリドカルバゾール、アジドベンゼン、ポルフィリン、プソラレン、及びヒドロキシル、ブロモ、フルオロ、クロロ、ヨード、メルカプト、チオ、シアノ、アルキルチオ、複素環、アリール、ヘテロアリール、カルボキシル、カルボアルコイル、アルキル、アルケニル、アルキニル、ニトロ、アミノ、アルコキシ及び/又はアミドからなる群から選択された1つ以上のものと置換された上述のインタカレータのうちのいずれかからなる群から選択され得る。
【0173】
好ましくは、インタカレータはフェナントロリン、フェナジン、フェナントリジン、アントラキノン、ピレン、アントラセン、ナプテン、フェナントレン、ピセン、クリセン、ナフタセン、アクリドン、ベンズアントラセン、スチルベン、オキサロ−ピリドカルバゾール、アジドベンゼン、ポルフィリン及びプソラレンからなる群から選択される。
【0174】
インタカレータの例は、いかなる形であれ制限的意味があるものとして理解されるべきではなく、インタカレータとして使用するための考えられる構造の一例を提供するためのものである。さらに、修飾された構造を得るための各インタカレータ上の1つ以上の化学基の置換も同様に内含されている。
【0175】
インタカレータ擬似ヌクレオチドのインタカレータ部分は、リンカーにより主鎖単位に連結される。主鎖からリンカーに沿って挿入部分まで進んだ時点で、リンカー及びインタカレータの連結は、オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体かインタカレータ擬似ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド類似体に対しハイブリッド形成された時点でオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体の一本の鎖の核塩基とコ・スタッキングすることのできる接合系の一部分である第1の原子とリンカー原子の間の結合として定義される。
【0176】
リンカーは、接合系を含むことができ、インタカレータはもう1つの接合系を含むことができる。この場合、リンカー結合系は、反対側のオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体鎖の核塩基とコ・スタッキングする能力をもたない。
【0177】
リンカー
インタカレータ擬似ヌクレオチドのリンカーは、インタカレータ擬似ヌクレオチドの主鎖モノマーとインタカレータを連結する部分である。リンカーは、1つ以上の原子又は原子間に結合を含み得る。
【0178】
本書で定義されている挿入部分と主鎖の定義によると、リンカーは、主鎖とインタカレータを連結する最短経路である。インタカレータが主鎖に直接連結されている場合、リンカーは1つの結合である。リンカーは通常、原子の連鎖又は原子の分枝鎖からなる。連鎖は、飽和ならびに不飽和であり得る。リンカーは、接合された結合を伴う又は伴わない環構造でもあり得る。例えば、リンカーは、連鎖の片端がインタカレータに連結され、連鎖のもう一方の末端が主鎖モノマー単位に連結された、C、O、S、N.P、Se、Si、Ge、Sn及びPbからなる群から選択されたm個の原子の連鎖を含み得る。
【0179】
インタカレータ擬似ヌクレオチドのインタカレータ及びリンカーの全長は好ましくは8Å〜13Åの間である。従って、mは、特定のインタカレータ擬似ヌクレオチドのインタカレータのサイズに応じて選択されるべきである。すなわち、mは、インタカレータが小さい場合に比較的大きく、インタカレータが大きい場合に比較的小さいものであるべきである。ただし、大部分の目的について、mは、1〜7、例えば1〜6、例えば1〜5、例えば1〜4の整数となる。上述の通り、リンカーは、不飽和連鎖又は接合した結合が関与するもう1つの系であり得る。例えば、リンカーは環式接合構造を含み得る。好ましくは、リンカーが飽和連鎖であるときmは1〜4である。
【0180】
インタカレータがピレンである場合、mは好ましくは1〜7、例えば1〜6、例えば1〜5、例えば1〜4、より好ましくは1〜4、さらに一層好ましくは1〜3の整数であり、最も好ましくはmは2又は3である。
【0181】
インタカレータが、構造:
【化4】
を有する場合、
mは、2〜6、より好ましくは2である。
【0182】
リンカーの連鎖は、C、H、O、S、N、P、Se、Si、Ge、Sn及びPbからなる群から選択された1つ以上の原子で置換され得る。
【0183】
1つの形態においては、リンカーはアザアルキル、オキサアルキル、チアアルキル又はアルキル鎖である。例えば、リンカーは、C、H、O、S、N、P、Se、Si、Ge、Sn及びPbからからなる群から選択された1つ以上のもので置換されたアルキル鎖であり得る。好ましい実施形態においては、リンカーは、非分枝アルキル鎖から成り、ここで連鎖の片端はインタカレータに連結され、連鎖のもう一方の末端は主鎖モノマー単位に連結され、各々のCは2Hで置換されている。より好ましくは、非分枝アルキル鎖の長さは、原子長1〜5個、例えば原子長1〜4個、例えば原子長1〜3個、例えば原子長2〜3個である。
【0184】
もう1つの形態においては、リンカーはC、O、S、N、P、Se、Si、Ge、Sn及びPbからなる群から選択された原子を含む環構造である。例えば、連結は、C、H、O、S、N、P、Se、Si、Ge、Sn及びPbからなる群から選択された1つ以上のものと置換されたこのような環構造であり得る。
【0185】
もう1つの形態においては、リンカーは、1〜6個のC原子、O、S、Nの各々の原子0〜3個からなる。より好ましくは、リンカーは、1〜6個のC原子及びO、S、Nの各々の原子0〜1個からなる。好ましい形態においては、リンカーは、任意に置換されたC、O、S及びN個の原子の鎖からなる。好ましくは、連鎖は、多くても3個の原子から成り、かくして、任意に置換されたC、O、S、Nから個別に選択された0〜3個の原子を含むべきである。
【0186】
好ましい形態においては、リンカーは、C、N、S及びO原子の連鎖から成り、ここで連鎖の片端はインタカレータに連結され、連鎖のもう一方の末端は、主鎖モノマー単位に連結される。
【0187】
リンカーは、上述の通りのインタカレータ擬似ヌクレオチドについての構造式X−Y−Q中のYを構成し、従って、X及びQはリンカーの一部ではない。
【0188】
インタカレータ擬似ヌクレオチド
インタカレータ擬似ヌクレオチド又はINA分子は、好ましくは一般構造:
X−Y−Q
を有し、式中、
Xは、核酸又は核酸類似体の主鎖内に取込まれる能力を有する主鎖モノマー単位であり;
Qは、核酸の核塩基とコ・スタッキングする能力を有する、少なくとも1つの基本的に平坦な接合系を含むインタカレータであり;
Yは、主鎖モノマー単位とインタカレータを連結するリンカー部分であり;
Q及びYの合計長は、約7Å〜20Åの範囲内にある。
【0189】
さらに、本発明の好ましい実施形態においては、インタカレータ擬似ヌクレオチドは、主鎖モノマー単位を含み、ここで主鎖モノマー単位は、多くとも4個の原子がインタカレータに最も近い主鎖の2つのリン原子を隔離しているような形で核酸又は核酸類似体のリン酸塩主鎖内に取込まれる能力を有する。
【0190】
インタカレータ擬似ヌクレオチドは好ましくは、ワトソン・クリック水素結合を形成する能力を有する核塩基を含まない。従って、インタカレータ擬似ヌクレオチドは好ましくは、ワトソン・クリック塩基対合の能力をもたない。
【0191】
好ましくは、Q及びYの全長は、約7Å〜20Å、より好ましくは約8Å〜15Å、さらに一層好ましくは約8Å〜13Å、さらに一層好ましくは約8.4Å〜12Å、最も好ましくは約8.59Å〜10Å又は約8.4Å〜10.5Åの範囲内にある。
【0192】
インタカレータが例えばピレンである場合、Q及びYの全長は好ましくは約8Å〜13Å、例えば約9Å〜13Å、より好ましくは約9.05Å〜11Å、例えば約9.0Å〜11Å、さらに一層好ましくは約9.05〜10Å、例えば約9.0〜10Åの範囲内にあり、最も好ましくは約9.8Åである。
【0193】
リンカー(Y)及びインタカレータ(Q)の全長は、インタカレータから最も遠くにあるリンカーの非水素原子の中心から、主鎖モノマー単位から最も遠くにあるインタカレータの基本的に平坦な接合系の非水素原子の中心までの距離を決定することによって、決定されるべきである。好ましくは該距離は、結合角及び標準化学法則がいかなる形であれ破られない又はゆがめられない最大距離でなくてはならない。
【0194】
該距離は好ましくは、最低の立体配座エネルギーレベルをもつ遊離挿入擬ヌクレオチドの構造を計算し、次に、自由に回転する結合(例えば環構造に参与する結合又は二重結合でない)の単純回転以上に構造を湾曲、伸長又はその他の形でゆがませることなく、インタカレータから最も遠くにあるリンカーの非水素原子の中心から、主鎖モノマー単位から最も遠くにあるインタカレータの基本的に平坦な接合系の非水素原子の中心までの最大距離を決定することによって決定されるべきである。好ましくは、エネルギー的に有利な構造は、非経験又は力場計算により見出される。
【0195】
該距離は、以下のステップからなる方法により決定可能である。
− 問題のインタカレータ擬似ヌクレオチドの構造は、プログラムChemWindow(登録商標)6.0(バイオラド(BioRad))を用いてコンピュータにより引き出される;
− 該構造は、コンピュータプログラムSymAppsTM(バイオラド(BioRad))へと転送される;
− インタカレータ擬似ヌクレオチドの計算された結合長及び結合角を含む3次元構造は、コンピュータプログラムSymAppsTM(バイオラド(BioRad))を用いて計算される;
− 該3次元構造は、コンピュータプログラムRasWin Molecular Graphics Ver. 2.6-ucbへと転送される;
− 該結合は、最大距離(以上で定義づけした通りの距離)を得るべくRasWin Molecular Graphics Ver. 2.6-ucbを用いて回転される;そして
− 該距離が決定される。
【0196】
インタカレータ擬似ヌクレオチドは、上述の主鎖モノマー単位、リンカー及びインタカレータのあらゆる組合せであり得る。
【0197】
もう1つの好ましい形態においては、インタカレータ擬似ヌクレオチドは、1−(4,4’−ジメトキシトリフェニルメチルオキシ)−3−ピレンメチルオキシ−2−プロパノールのホスホラミダイトからなる群から選択される。さらに一層好ましくは、インタカレータ擬似ヌクレオチドは、(S)−1−(4,4’−ジメトキシトリフェニルメチルオキシ)−3−ピレンメチルオキシ−2−プロパノールのホスホラミダイト及び(R)−1−(4,4’−ジメトキシトリフェニルメチルオキシ)−3−ピレンメチルオキシ−2−プロパノールのホスホラミダイトからなる群から選択される。
【0198】
インタカレータ擬似ヌクレオチドの調製
インタカレータ擬似ヌクレオチド又はINA分子は、適切なあらゆる方法により合成可能である。1つの適切な方法は、以下のステップを含む。
a1) 任意には反応基にカップリングされたリンカー部分及び核酸の核塩基とコ・スタッキングする能力を有する少なくとも1つの基本的に平坦な接合系を含むインタカレータを含有する化合物を提供するステップ;
b1) 少なくとも2つの反応基を含むリンカー前駆体分子を提供するステップ(なお該2つの反応基は任意には個々に保護されていてよい);
c1) インタカレータをリンカー前駆体と反応させ、かくしてインタカレータ−リンカーを得るステップ;
d1) 少なくとも2つの反応基を含み(なお該2つの反応基は任意には個別に保護及び/又はマスキングされていてよい)、かつ任意にはリンカー部分を含む、主鎖モノマー前駆体単位を提供するステップ;及び
e1) インタカレータ−リンカーを主鎖モノマー前駆体と反応させ、インタカレータ−リンカー−主鎖モノマー前駆体を得るステップ;
又は、
a2) 少なくとも2つの反応基を含み(なお、該2つの反応基は、任意には個別に保護及び/又はマスキングされていてよい)かつ任意にはリンカー部分を含む主鎖モノマー前駆体単位を提供するステップ;
b2) 少なくとも2つの反応基を含むリンカー前駆体分子を提供するステップ(なお該2つの反応基は任意には個別に保護されていてよい);
c2) リンカー前駆体とモノマー前駆体単位を反応させ、かくして主鎖−リンカーを得るステップ;
d2) 任意には反応基にカップリングされたリンカー部分及び核酸の核塩基とコ・スタッキングする能力を有する少なくとも1つの基本的に平坦な接合系を含むインタカレータを含有する化合物を提供するステップ;及び
e2) 主鎖−リンカーとインタカレータを反応させ、インタカレータ−リンカー−主鎖モノマー前駆体を得るステップ;
又は、
a3) 反応基にカップリングされたリンカー部分及び核酸の核塩基とコ・スタッキングする能力を有する少なくとも1つの基本的に平坦な接合系を含むインタカレータを含有する化合物を提供するステップ;
b3) 少なくとも2つの反応基(なお該2つの反応基は任意には個別に保護及び/又はマスキングされていてよい);及びリンカー部分を含む、主鎖モノマー前駆体単位を提供するステップ;及び
c3) インタカレータ−リンカー部分を主鎖モノマー前駆体のリンカーと反応させ、インタカレータ−リンカー−主鎖モノマー前駆体を得るステップ;
f) 任意には、インタカレータ−リンカー−主鎖モノマー前駆体を保護しかつ/又は脱保護するステップ;
g) 2つの擬ヌクレオチド、ヌクレオチド及び/又はヌクレオチド類似体を合わせて連結する能力を有するリン含有化合物を提供するステップ;
h) インタカレータ−リンカー−主鎖モノマー前駆体とリン含有化合物を反応させるステップ、及び
i) インタカレータ擬似ヌクレオチドを得るステップ。
【0199】
好ましくは、インタカレータ反応基は、それがリンカー反応基と反応し得るような形で選択される。従って、リンカー反応基が求核物質である場合には、好ましくは、インタカレータ反応基は求電子物質であり、より好ましくは、ハロアルキル、メシルオキシアルキル及びトシルオキシアルキルからなる群から選択された求電子物質である。より好ましくは、インタカレータ反応基は、クロロメチルである。代替的には、インタカレータ反応基は、例えばヒドロキシ、チオール、セラム、アミン又はそれらの混合物を含む求核物質基といった求核物質基であり得る。
【0200】
好ましくは、環式又は非環状アルカンは、少なくとも3つのリンカー反応基を含む多置換アルカン又はアルコキシであり得る。より好ましくは、多置換アルカンは、アルカントリオール、アミノアルカンジオール又はメルカプトアルカンジオールといったような(ただしこれらに制限されるわけではない)3つの求核基を含み得る。好ましくは、多置換アルカンは、その他のものよりもさらに反応性の高い1つの求核基を含有し、代替的には、求核基のうちの2つは保護基により保護されていてよい。より好ましくは、環式又は非環状アルカンは、2,2−ジメチル−4−メチルヒドロキシ−1,3−ジオキサランであり、さらに一層好ましくは、アルカンはD−α,β−イソプロピリデングリセロールである。
【0201】
好ましくは、リンカー反応基はインタカレータ反応基と反応できなくてはならず、例えば、リンカー反応基は、例えばヒドロキシ、チオール、セラム及びアミンからなる群から選択された求核物質基であり得、好ましくはヒドロキシ基である。代替的には、リンカー反応基は、例えばハロゲン、トリフレート、メシレート及びトシレートからなる群から選択された求電子物質基であり得る。好ましい形態では、少なくとも2つのリンカー反応基は保護基により保護され得る。
【0202】
該方法は、さらに、インタカレータ−前駆体モノマーの1つ以上の反応基に対し保護基を固定させるステップを含むことができる。例えば、DMT基は、ClといったハロゲンにカップリングされたDMTを提供し、少なくとも1つのリンカー反応基とDMT−Clを反応させることによって添加可能である。従って好ましくは、少なくとも1つのリンカー反応基が利用可能となり、1つが保護されている。このステップがリン含有作用物質との反応に先立って行なわれた場合には、該リン含有作用物質は、単に1つのリンカー反応基とのみ相互作用し得る。
【0203】
リン含有作用物質は、例えば、ホスホラミダイト、例えばNC(CH2)2OP(Npri2)2又はNC(CH2)2OP(Npri2)Clであり得る。好ましくは、リン含有作用物質は、N(et)3、N(‘pr)2Et及び及びCH2Cl2といったような塩基の存在下でインタカレータ−前駆体と反応し得る。
【0204】
インタカレータ擬似ヌクレオチドを合成する方法の1つの特定の例が、実施例1及び図7で概略的に説明されている。
【0205】
オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体の適切な配列がひとたび決定された時点で、これらは好ましくは市販の方法及び機器を用いて化学的に合成される。例えば、インタカレータ擬似ヌクレオチドを含む短かいオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体を産生するために、固相ホスホラミダイト方法を使用することができる。
【0206】
例えば、オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体は、「Current Protocols in Nucleic acid Chemistry」Volume 1, Beaucage et al., Wileyに記述されている方法のいずれかにより合成可能である。
【0207】
インタカレータ擬似ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド
標的核酸に対する合成核酸の高い親和力は、検出アッセイを著しく容易にすることができ、その上、標的核酸に対する高い親和力をもつ合成核酸は、核酸の遺伝子ターゲティング及び精製といったような数多くのその他の目的のために有用であり得る。インタカレータを含むオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体は、相同な相補的核酸に対する親和力を増大させることが示されてきた。
【0208】
オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体及び相同な相補的DNAからなるハイブリッド(DNAハイブリッド)の融解温度が該オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体と同じヌクレオチド配列からなるインタカレータ擬似ヌクレオチドが欠如したオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体と相同な相補的DNAの間のハイブリッド(対応するDNAハイブリッド)の融解温度よりも著しく高い、少なくとも1つのインタカレータ擬似ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体を作ることができる。
【0209】
好ましくは、DNAハイブリッドの融解温度は、対応するDNAハイブリッドの融解温度よりも1〜80℃、より好ましくは少なくとも2℃、さらに一層好ましくは少なくとも5℃、さらに一層好ましくは少なくとも10℃高い。
【0210】
オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体は、少なくとも1つの内部インタカレータ擬似ヌクレオチドを有することができる。内部的にインタカレータ単位を位置づけすることで、設計上の柔軟性をさらに大きくすることができる。内部的に位置づけされたインタカレータ擬似ヌクレオチドを含む核酸類似体はかくして、内部的に位置づけされたインタカレータ擬似ヌクレオチドをもたない核酸類似体に比べ、相同的相補性核酸に対するさらに高い親和力を有し得る。少なくとも1つの内部インタカレータ擬似ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体は、RNA(RNA様の核酸類似体を含む)とDNA(DNA様の核酸類似体を含む)を識別することもできる。さらに、内部的に位置づけされた蛍光インタカレータモノマーは、診断手段内で使用可能である。
【0211】
インタカレータ擬似ヌクレオチドは、一定の与えられたオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体の内部の任意の望ましい位置に配置され得る。例えば、インタカレータ擬似ヌクレオチドをオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体の末端に置くことができ、そうでなければインタカレータ擬似ヌクレオチドをオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体内の内部的位置に置くこともできる。
【0212】
オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体が2個以上のインタカレータ擬似ヌクレオチドを含んでいる場合、インタカレータ擬似ヌクレオチドを互いとの関係において任意の位置に置くことができる。例えば、これらを互いに隣り合って置くことができ、そうでなければ、1個、例えば2個、例えば3個、例えば4個、例えば5個、例えば5個を超えるヌクレオチドがインタカレータ擬似ヌクレオチドを隔離しているような形で位置づけすることもできる。1つの好ましい実施形態においては、オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体内部の2つのインタカレータ擬似ヌクレオチドが次の最近隣体として配置される。すなわち、これらは、2つのインタカレータ擬似ヌクレオチドを離隔する1つのヌクレオチドを有し、該オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体内部で任意の位置に設置され得る。もう1つの好ましい形態では、2つのインタカレータが、それぞれオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体の各々の末端に又はそれに近いところに配置される。
【0213】
オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体は、上述のヌクレオチド及び/又はヌクレオチド類似体といったような任意の種類のヌクレオチド及び/又はヌクレオチド類似体を含み得る。例えば、オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体は、DNA、RNA、LNA、PNA、ANA、INA及びHNA内に含まれるヌクレオチド及び/又はヌクレオチド類似体を含み得る。従ってオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体はPNA、ホモ−DNA、b−D−アルトロピラノシル−NA、b−D−グルコピラノシル−NA、b−D−アロピラヌシル−NA、HNA、MNA、ANA、LNA、CNA、CeNA、TNA、(2’−NH)−TNA、(3’−NH)−TNA、□−L−リボ−LNA、□−L−キシロ−LNA、□−D−キシロ−LNA、□−D−リボ−LNA、[3.2.1]−LNA、ビシクロ−DNA、6−アミノ−ビシクロ−DNA、5−エピ−ビシクロ−DNA、□−ビシクロ−DNA、トリシクロ−DNA、ビシクロ[4.3.0]−DNA、ビシクロ[3.2.1]−DNA、ビシクロ[4.3.0]アミド−DNA、□−D−リボピラノシル−NA、□−L−リクソピラノシル−NA、2’−R−RNA、2’−OR−RNA、□−L−RNA、α−D−RNA、β−D−RNAのサブユニットからなる群から選択された1つ以上のものを含むことができる。すなわちオリゴヌクレオチド類似体はPNA、ホモ−DNA、b−D−アルトロピラノシル−NA、b−D−グルコピラノシル−NA、b−D−アロピラヌシル−NA、HNA、MNA、ANA、LNA、CNA、CeNA、TNA、(2’−NH)−TNA、(3’−NH)−TNA、□−L−リボ−LNA、□−L−キシロ−LNA、□−D−キシロ−LNA、□−D−リボ−LNA、[3.2.1]−LNA、ビシクロ−DNA、6−アミノ−ビシクロ−DNA、5−エピ−ビシクロ−DNA、□−ビシクロ−DNA、トリシクロ−DNA、ビシクロ[4.3.0]−DNA、ビシクロ[3.2.1]−DNA、ビシクロ[4.3.0]アミド−DNA、□−D−リボピラノシル−NA、□−L−リクソピラノシル−NA、2’−R−RNA、2’−OR−RNA、□−L−RNA、α−D−RNA、β−D−RNA及びその混合物からなる群から選択され得る。
【0214】
オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体の1つの利点は、少なくとも1つのインタカレータ擬似ヌクレオチド及び基本的に相補的なDNAを含むオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体からなるハイブリッド(DNAハイブリッド)の融解温度が、基本的に相補的なDNA及びそれに相補的なDNAからなる二重鎖の融解温度よりも著しく高いという点にある。
【0215】
従って、オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体は、天然に発生する核酸よりも高い親和力をもつDNAとハイブリッドを形成し得る。融解温度は、例えば5から20℃へ、例えば10℃から15℃へ、例えば2℃から5℃へ、例えば5℃から10℃へ、例えば15℃から20℃へ、例えば20℃から25℃へ、例えば25℃から30℃へ、例えば30℃から35℃へ、例えば35℃から40℃へ、例えば40℃から45℃へ、例えば45℃から50℃以上へ、好ましくは2〜30℃上昇させられる。
【0216】
特に、融解温度の上昇は、挿入がDNA二重鎖を安定させ得ることから、インタカレータの挿入に起因して達成される可能性がある。従って、インタカレータがDNAの核塩基間に挿入する能力を有することが好ましい。好ましくは、インタカレータ擬似ヌクレオチドは、二重鎖内にバルジ挿入又は末端挿入として配置され(以下参照)、これが一部の核酸又は核酸類似体内で挿入を可能にし得る。
【0217】
少なくとも1つのインタカレータ擬似ヌクレオチド及び基本的に相補的なRNA(RNAハイブリッド)又はRNA様核酸類似体(RNA様ハイブリッド)を含むオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体の融解温度は、いかなるインタカレータ擬似ヌクレオチドも含まないオリゴヌクレオチド類似体と基本的に相補的なRNA又はRNA様の標的からなる二重鎖の融解温度よりも著しく高いものであり得る。好ましくは、オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体のインタカレータ擬似ヌクレオチドの大部分又は全ては、いずれか又は両方の末端に位置づけされている。
【0218】
従って、オリゴヌクレオチド及び/又はオリゴヌクレオチド類似体は、天然に発生する核酸よりも高い親和力をもつRNA又はRNA様の核酸類似体又はRNA様オリゴヌクレオチド類似体とハイブリッドを形成し得る。融解温度は、例えば5から15℃へ、例えば10℃から15℃へ、例えば2℃から5℃へ、例えば5℃から15℃へ、例えば15℃から20℃以上へ、好ましくは2〜20℃上昇される。
【0219】
インタカレータ擬似ヌクレオチドは好ましくは、オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体の末端に位置づけされた時点で、RNA及びRNA様標的に向かってのみ安定することになる。しかし、そのために、インタカレータ擬似ヌクレオチドが形成済みハイブリッドの内部の領域に配置されるようにRNA又はRNA様核酸類似体とハイブリッド形成されるべきオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体内へのインタカレータ擬似ヌクレオチドの位置づけが除外されるわけではない。これは、或る種のハイブリッド不安定性を得るため又はハイブリッド形成の後に形成されるべき分子内及び分子間複合体の全体的2D又は3D構造に影響を及ぼすために行なわれ得る。
【0220】
1つ以上のインタカレータ擬似ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド及び/又はオリゴヌクレオチド類似体が、相同な相補的核酸又は核酸類似体又はオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体に対するフーグステン型塩基対合により結合されたオリゴヌクレオチド及び/又はオリゴヌクレオチド類似体からなる3本鎖構造(3重鎖構造)を形成し得る。該オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体は、3重鎖構造内のフーグステン型塩基対合の融解温度を上昇させ得る。
【0221】
オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体は、プリン富有/ピリミジン富有核酸又は核酸類似体二重鎖標的配列のような特定の配列制約の存在に左右されない形で3重鎖構造内のフーグステン型塩基対合の融解温度を上昇させ得る。従って、3重鎖構造内のフーグステン型塩基対合は、オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体がインタカレータ擬似ヌクレオチドを全くもたなかった場合の二重鎖領域に対するフーグステン型塩基対合の融解温度に比べて著しく高い融解温度を有する。
【0222】
従って、オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体は、天然に発生する核酸よりも高い親和力をもつ相同な相補的核酸又は核酸類似体又はオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体を伴う3重鎖構造を形成し得る。融解温度は、例えば2から40℃へ、例えば2から30℃へ、例えば5から20℃へ、例えば10℃から15℃へ、例えば2℃から5℃へ、例えば5℃から10℃へ、例えば10℃から15℃へ、例えば15℃から20℃へ、例えば20℃から25℃へ、例えば25℃から30℃へ、例えば30℃から35℃へ、例えば35℃から40℃へ、例えば40℃から45℃へ、例えば45℃から50℃へ、好ましくは2〜50℃上昇させられる。
【0223】
特に、融解温度の上昇は、挿入がDNA3重鎖を安定させ得ることから、インタカレータの挿入に起因して達成される可能性がある。従って、インタカレータが3重鎖構造の核塩基間に挿入する能力を有することが好ましい。好ましくは、インタカレータ擬似ヌクレオチドは、二重鎖内にバルジ挿入として配置され(以下参照)、これが一部の核酸又は核酸類似体内で挿入を可能にし得る。
【0224】
3重鎖形成は、フーグステン型塩基対合された第3の鎖が標的二重鎖に侵入し同一の鎖の一部分又は全てを変位させて相補的鎖とワトソン・クリック塩基対を形成するプロセスであり、鎖反転の中で進行してもよいし、しなくてもよい。これは、複数の目的で開発利用可能である。オリゴヌクレオチド及びオリゴヌクレオチド類似体は、二本鎖核酸又は核酸類似体標的のみが存在する場合に適切に使用され、3重鎖形成及び/又は鎖反転のための二本鎖核酸又は核酸類似体領域を予め融解させることの無い相補的領域の二本鎖侵入又は領域の一本鎖侵入による検出である標的鎖の分離は、不可能、実施不能であるか又は望まれない。従って、核酸又は核酸類似体分子の二本鎖領域に侵入することのできる少なくとも1つのインタカレータ擬似ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体が提供される。
【0225】
配列特異的な領域で二本鎖核酸又は核酸類似体に侵入することのできる少なくとも1つのインタカレータ擬似ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体を提供することができる。少なくとも1つのインタカレータ擬似ヌクレオチドを含む侵入性のオリゴヌクレオチド及び/又はオリゴヌクレオチド類似体は、変位された鎖よりも高い親和力をもつ配列特異的な領域で相補的鎖に結合することになる。
【0226】
少なくとも1つのインタカレータ擬似ヌクレオチド及び相同な相補的DNAを含むオリゴヌクレオチド類似体からなるハイブリッド(DNAハイブリッド)の融解温度は、通常、オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体及び相同な相補的RNA(RNAハイブリッド)又はRNA様の核酸類似体標的又はRNA様のオリゴヌクレオチド類似体標的からなるハイブリッドの融解温度よりも著しく高い。オリゴヌクレオチドは、上述のオリゴヌクレオチド類似体のいずれかであり得る。例えば、オリゴヌクレオチドは少なくとも1つのインタカレータ擬似ヌクレオチドを含むDNAオリゴヌクレオチド(類似体)又は少なくとも1つのインタカレータ擬似ヌクレオチドを含むホモ−DNA、b−D−アルトロピラノシル−NA、b−D−グルコピラノシル−NA、b−D−アロピラヌシル−NA、HNA、MNA、ANA、LNA、CNA、CeNA、TNA、(2’−NH)−TNA、(3’−NH)−TNA、□−L−リボ−LNA、□−L−キシロ−LNA、□−D−キシロ−LNA、□−D−リボ−LNA、[3.2.1]−LNA、ビシクロ−DNA、6−アミノ−ビシクロ−DNA、5−エピ−ビシクロ−DNA、□−ビシクロ−DNA、トリシクロ−DNA、ビシクロ[4.3.0]−DNA、ビシクロ[3.2.1]−DNA、ビシクロ[4.3.0]アミド−DNA、□−D−リボピラノシル−NA、□−L−リクソピラノシル−NA、2’−R−RNA、2’−OR−RNA、□−L−RNA、α−D−RNA、β−D−RNAオリゴヌクレオチド又はその混合物である。
【0227】
従って、DNAに対するオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体の親和力は、RNA又はRNA様標的についてのオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体の親和力よりも著しく高い。従って、制限的な数のオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体及び相同な相補的DNA及び相同な相補的RNA又は相同な相補的RNA様標的を含む混合物内では、該オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体は好ましくは相同な相補的DNAにハイブリッド形成する。
【0228】
好ましくは、DNAハイブリッドの融解温度は少なくとも2℃、例えば少なくとも5℃、例えば少なくとも10℃、例えば少なくとも15℃、例えば少なくとも20℃、例えば少なくとも25℃、例えば少なくとも30℃、例えば少なくとも35℃、例えば少なくとも40℃、例えば2〜30℃、例えば5℃〜20℃、例えば10℃〜15℃、例えば2℃〜5℃、例えば5℃〜10℃、例えば10℃〜15℃、例えば15℃〜20℃、例えば20℃〜25℃、例えば25℃〜30℃、例えば30℃〜35℃、例えば35℃〜40℃、例えば40℃〜45℃、例えば45℃〜50℃、例えば50℃〜55℃、例えば55℃〜60℃だけ、相同な相補的RNA又はRNA様ハイブリッドの融解温度よりも高い。
【0229】
少なくとも1つのインタカレータ擬似ヌクレオチドを含有するオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体を、核酸又は核酸類似体の二次構造に対しハイブリッド形成させることができる。該オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体は、二次構造に対するかかるハイブリダイゼーションを安定化させる能力を有する。二次構造は、ステム−ループ構造、ファラデ−接合部、折り畳み、H−ノット及びバルジであり得るが、これらに制限されるわけではない。二次構造は、少なくとも1つのインタカレータ擬似ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体が、該インタカレータ擬似ヌクレオチドが二次構造とオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体の間の3方接合部の中に形成された3つの二重鎖のうちの1つの二重鎖の末端でハイブリッド形成しているような形で設計されているRNAのステム−ループ構造であり得る。
【0230】
インタカレータ擬似ヌクレオチドの位置
オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体は、相同な相補的核酸又は核酸類似体(標的核酸)に対しハイブリッド形成し得るような形で設計可能である。好ましくは、オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体は、標的核酸に対し実質的に相補的である。より好ましくは、オリゴヌクレオチド類似体が標的核酸とハイブリッド形成された時点でインタカレータ擬似ヌクレオチドがバルジ挿入として位置づけされるような形で少なくとも1つのインタカレータ擬似ヌクレオチドが位置づけされる。すなわち、インタカレータ擬似ヌクレオチドの上流側近隣ヌクレオチド及びインタカレータ擬似ヌクレオチドの下流側近隣ヌクレオチドは、標的核酸内の近隣ヌクレオチドに対してハイブリッド形成される。
【0231】
1つのインタカレータ擬似ヌクレオチドを、該インタカレータ擬似ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド類似体とその標的ヌクレオチド又はヌクレオチド類似体の間に形成された二重鎖のいずれか又は両方の末端の隣りに位置づけすることが可能であり、例えば、インタカレータ擬似ヌクレオチドを、懸垂コ・スタッキング末端として位置づけすることもできる。
【0232】
オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体の全てのインタカレータ擬似ヌクレオチド又はINAは、オリゴヌクレオチド類似体が標的核酸とハイブリッド形成された時点で全てのインタカレータ擬似ヌクレオチドがバルジ挿入及び/又は懸垂コ・スタッキング末端として位置付けされるような形で位置づけされ得る。
【0233】
インタカレータ擬似ヌクレオチドを含有するオリゴヌクレオチドの例を以下に記す。
N1−(P)q−N2、
N1−(P−N3)q−N2、
(P)q−N2、
N1−(P)q、
(P)q−N2−(P)r、
N1−(P)q−N2、
N1(P−N3)q−N2−(P−N3)r−N4、
式中、
− N1、N2、N3、N4は個別に、1つのヌクレオチド配列及び/又は少なくとも1つのヌクレオチドのヌクレオチド類似体を表わし、
− Pは、インタカレータ擬似ヌクレオチドを表わし、
− q及びrは、1〜10の整数から個別に選択される。
【0234】
メチル化
ゲノムDNAのメチル化の量又は度合は、加齢、幹細胞分化、遺伝子異常、癌及びその他の疾病状態といった数多くの身体条件において潜在的重要性をもつ。メチル化状態の数多くの潜在的重要性が、以下に記されている。
【0235】
融合が行なわれた後DNAメチル化のレベルで発生する再プログラミングを検討するための、成人の胸腺細胞と胚幹細胞の融合。全染色体検査により視覚化されるように、不活性体細胞Xは活性状態となる(Tada et al., 2001; Current Biology, 11, 1553-1558)。
【0236】
かかる腫瘍を同定する廉価で正確な方法としての、散発性結腸直腸癌の臨床病理学的特長における特異的DNA領域内のメチル化パターン(Ward et al., 2001; Gut, 48, 821-829)、及びヒト結腸腺窩内の幹細胞中のメチル化パターン(Ro et al., 2001, Proc Natl Acad Sci, USA, 98, 10519-10521; Yatabe et al., 2001, Proc. Natl. Acad Sci USA, on line edition)の検討。
【0237】
前立腺癌及び特定の遺伝子を再活性化するために5−アザシチジンで処理された細胞系統におけるメチル化パターン(Chetcuti et al., 2001, Cancer Research, 61, 6331-6334)。
【0238】
メチル化を介しての遺伝子不活性化が数多くの癌において発生するものの正常な個体では高頻度ではない、子宮内膜癌内のさまざまなエストロゲンレセプタ中のメチル化パターン(Sasaki et al., 2001, Cancer Research, 61, 3262-3266)。
【0239】
膀胱癌におけるメチル化パターン(Markl et al., 2001, Cancer Research, 61, 5875-5884)。
【0240】
乳癌におけるメチル化パターン(Nielsen et al., 2001, Cancer Letters, 163, 59-69)。
【0241】
肺癌及び乳癌に関与する特異的プロモータ内のメチル化パターン(Burbee et al., 2001, J Natl Cancer Institute, 93, 691-699)。
【0242】
食道腺癌患者の血漿中の遊離DNA内のメチル化パターン(Kawakami et al., 2000, J Natl Cancer Institute, 92, 1805-1811)。
【0243】
遺伝性びまん性胃癌内のCDH1プロモータのメチル化(Grady et al., 2000, Nature Genetics, 26, 16-17)。
【0244】
例えば、遺伝子の父系対立遺伝子が活性であり母系対立遺伝子が不活性であるか又はその逆である、ゲノムインプリンティング。この不活性化は、関与する遺伝子又はそれらに近い配列内のメチル化変化を介して達成される。基本的に、DNA領域は1つの性別の生殖細胞系の中でメチル化された状態となるが、もう1つの性別のものの中ではメチル化された状態とならない(Mann, 2001, Stem Cells, 19, 287-294)。
【0245】
核移植又はin vitro受精を介したさまざまな種(ヒツジ、ウシ、ヤギ、ブタ及びマウス)のクローニングの研究における全ゲノムメチル化パターン。かくして、卵母細胞内に挿入された供与体核のメチル化パターンは大幅に変動し、これが、現行のクローニング実験においてあれほどまでに失敗率が高い理由であると考えられている。これらの分化された核は恐らくは、胚幹細胞内といったような分化度の低いものに比べさらに再プログラミングを必要とする(Kang et al., 2001;Nature Genetics, 28, 173-177; Humphreyset al., 2001, Science, 293, 95-97)。
【0246】
24の癌細胞系統対正常な組織内の過剰な超メチル化パターン(Smiraglia et al., 2001, Human Molecular Genetics, 10, 1413-1419)。
【0247】
遺伝子発現及びインプリンティングに対する効果を検討するための非メチル化ミニ遺伝子構成体内へのメチル化DNAの挿入(Holmgren et al., 2001, Current Biology, 11, 1128-1130)。
【0248】
特定の遺伝子がメチル化により活性化された、成熟B細胞リンパ腫内のメチル化パターン(Malone et al., 2001, Proc Natl Acad Sci USA, 98, 10404-10409)。
【0249】
急性骨髄性白血病における特定の遺伝子のメチル化パターン(Melki et al., 1999, Leukemia, 13, 877-883)。
【0250】
ノック−アウトマウスにおけるMecp2遺伝子の分析。このタンパク質は、DNA中のメチル化された部位に対する結合に関与し、遺伝性神経障害であるレット症候群に関与すると思われる(Guy et al., Nature Genetics, 27, 322-326)。
【0251】
正常な加齢プロセス中の及び潰瘍性大腸炎における5個の特異的遺伝子のメチル化パターン(Issa et al., 2001, Cancer Research, 61, 3573-3577)。
【0252】
シグナル変換経路上に衝突するアポトーシスプロセス、細胞周期制御、ゲノム内での可動要素の運動におけるメチル化の喪失(Jackson-Grusbyet al., 2001, Nature Genetics, 27, 31-39)。
【0253】
遺伝子調節に関与するCpG島の進化的保存性又はその喪失を判定するための、ヒト及びマウスといった異なる種におけるプロモータ及び遺伝子領域のメチル化パターンの比較(Cuadrado et al., 2001, EMBO Reports, 21, 586-592)。
【0254】
異なる発達段階におけるこう丸精子内のDNAメチル化パターン(Manning et al., 2001, Urol Int, 67, 151-155)。
【0255】
DNAメチル化パターンを分析するためのモノクローナル抗体を用いた免疫組織化学染色(Piyathilake et al., 2000, Biotechnic and Histochem, 75, 251-258)。
【0256】
遺伝子と偽遺伝子のメチル化パターンの差(Grunau et al., 2000, Human Mol Genet, 9, 2651-2663)。
【0257】
キイロショウジョウバエといったような無脊椎動物モデルの5−メチルシトシン含有量(Gowher et al., 2000, EMBO J, 19, 6918-6923)。
【0258】
CpG島のメチル化パターンを用いたヒトプロモータの大規模マッピング(Ioshikhes et al., 2000, Nature Genetics, 26, 61-63)。
【0259】
知的障害、顔面形成異常、泌尿生殖器異常及びアルファサラセミアを発生させるATRX遺伝子の発現の変化に起因する哺乳動物の発達中の遺伝子発現、DNAメチル化、クロマチンリモデリングプロセスにおいて誘発された変化(Gibbons et al., 2000, Nature Genetics, 24, 368-371)。
【0260】
前立腺癌に関与するGSTP1遺伝子のプロモータ領域におけるメチル化されたドメインとメチル化されていないドメインの間の境界(Millar et al., 2000, J Biological Chemistry, 275, 24893-24899;Millar et al., 1999, Oncogene, 18, 1313-1324)。
【0261】
正常な加齢プロセス中のメチル化の変化(Toyota et al., 1999, Seminars in Cancer Biology, 9, 349-357)。
【0262】
心臓血管系内のアテローム性動脈硬化症及び加齢(Post et al., 1999, Cardiovascular Research, 43, 985-991)における、及び結腸直腸粘膜内の癌及び加齢の間のメチル化の変化(Ahuja et al., 1998, Cancer Research, 58, 5489-5494)。
【0263】
精巣内のセルトリ細胞及び生殖細胞内のメチル化パターン(Coffigny et al., 1999, Cytogenet Cell Genets, 87, 175-181)。
【0264】
ゼブラフィッシュといったような脊椎動物モデルの発達中のDNAメチル化の変化(Macleod et al., 1999, Nature Genetics, 23, 139-140)。
【0265】
ヒト組織−血液ABO遺伝子のプロモータ領域内のメチル化パターン(Kominato et al., 1999, J Biol Chem, 274, 37240-37250)。
【0266】
モノクローナル抗体を用いた哺乳動物着床前発達中のメチル化パターン(Rougier et al., 1999, Genes and Development, 12, 2108-2113)。
【0267】
さまざまな癌化学療法薬物により誘発されるメチル化パターン(Nyce, 1997, Mutation Research, 386, 153-161;Nyce, 1989, Cancer Research, 49, 5829-5836)及びフェノバルビタールで誘発された及び自然発生肝癌におけるDNAメチル化の変化(Ray et al., 1994, Molecular Carcinogenesis, 9, 155-166)。
【0268】
重亜硫酸塩配列決定方法によるDNA中の5−メチシトシン(methycytosine)残基の分析(Grigg, 1996, DNA Sequence, 6, 189-198)。
【0269】
メチル化されたDNA結合カラムを用いたCpG島の単離(Cross et al., 1994, Nature Genetics, 6, 236-244)。
【0270】
カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)溶菌成長はメチル化感応性スイッチにより誘発されるか?(Laman and Boshoff, Trends Microbiol, 2001, Oct, 9(10): 464-6)。カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV又はHHV−8)の潜在的成長及び溶菌成長は共にその病因に寄与している。
【0271】
以上に記した異なるメチル化状態及び潜在的重要性の多数の例からわかるように、本発明は、メチル化研究のための強力な手段を提供しており、かくして数多くの疾病及び健康の様相にとって有用なものである。
【0272】
材料と方法
固体支持体
表1は、本発明の捕捉リガンドを固定するために有用な固体支持体のいくつかの例を示す。
【0273】
【表1】
【0274】
【表2】
【0275】
挿入用核酸(INA)
挿入用核酸(INA)は、配列特異性を伴って核酸(DNA及びRNA)にハイブリッド形成し得る天然に発生しないポリヌクレオチドである。INAは、複数の望ましい特性を示すことから、プローブベースのハイブリダイゼーションアッセイにおいて核酸プローブに対する代替物/代用品の候補である。INAは、対応する核酸/核酸複合体よりも熱力学的に安定しているハイブリッドを形成するべく核酸に対しハイブリッド形成する重合体である。これらは、ペプチド又は核酸を分解させるものとして知られている酵素のための基質ではない。従って、INAは、天然に発生する核酸フラグメントに比べて生体試料内でより安定しており、かつより長い保管寿命をもつ。イオン強度に大きく左右される核酸ハイブリダイゼーションとは異なり、核酸とのINAのハイブリダイゼーションは、イオン強度からかなり独立しており、核酸に対する核酸のハイブリダイゼーションに極めて不利な条件下で低いイオン強度で有利な作用を受ける。INAの結合強度は、分子へと工学処理された挿入基の数ならびに二本鎖構造内で特異的にスタッキングされた塩基間の水素結合からの通常の相互作用によって左右される。配列の識別は、DNA認識DNAについてよりもINA認識DNAについてさらに効率が良い。
【0276】
INAは、市販のフォーマットの標準的オリゴヌクレオチド合成方法を適合させることによって合成される。
【0277】
INAプローブと標準的核酸プローブの間には、実に数多くの差異が存在する。これらの差異は、生物学的、構造的及び物理化学的差異へと都合良く分類することができる。以上及び以下で論述されるように、これらの生物学的、構造的、及び物理化学的差異は、核酸がこれまで標準的に利用されてきた利用分野でINAプローブを使用しようとした場合に、予測できない結果を導く可能性がある。この異なる組成物の非等価性は、化学技術において往々にして見られる。
【0278】
生物学的差異に関しては、核酸は、遺伝的伝達及び発現の作用物質として生きた種の生命において中心的役割を果たす生体物質である。そのin vivo特性は、かなり充分に理解されている。しかしながら、INAは、化学者の頭の中で考案され、合成有機化学を用いて作られた、最近開発された完全に人工的な分子である。これには既知の生物学的機能は全く無い。
【0279】
構造的には、INAは同様に核酸とも劇的な違いをもつ。両方共共通の核塩基(A、C、G、T及びU)を利用し得るものの、これらの分子の組成は、構造的に多様である。RNA、DNA及びINAの主鎖は、反復するホスホジエステルリボースと2−デオキシリボース単位で構成されている。INAは、リンカー分子を介して重合体に固定される1つ以上の大きく平坦な分子を有するという点でDNA又はRNAと異なっている。平坦な分子は、二本鎖構造内のINAと反対側の相補的DNA鎖内の塩基間に挿入する。
【0280】
INAとDNA又はRNAの間の物理化学的差異も同様に実質的なものである。INAは、核酸プローブが同じ標的配列に結合するよりも急速に、相補的DNAに結合する。DNA又はRNAフラグメントとは異なるINAは、挿入基が末端位置にあるのでないかぎりRNAにほとんど結合しない。相補的DNA鎖上の塩基と挿入基の間の強い相互作用のため、INA/DNA複合体の安定性は、類似のDNA/DNA又はRNA/DNA複合体のものよりも高い。
【0281】
DNA又はRNAフラグメント又はPNAといったその他のDNAと異なり、INAは、自己凝集又は結合特性を示さない。
【0282】
要約すると、INAは、配列特異性をもつ核酸に対してハイブリッド形成することから、プローブベースのアッセイを開発するための有用な候補であり、キット及びスクリーニングアッセイに特に適合されている。しかしながらINAプローブは、核酸プローブの等価物ではない。従って、DNA含有試料の検出、分析及び定量において、プローブベースのアッセイの特異性、感度及び信頼性を改善できるあらゆる方法、キット又は組成物が有用となる。INAはこの目的で必要な特性を有する。
【0283】
本発明中で実施例のために使用されるINAの一例としては、(S)−1−O−(4,4’−ジメトキシトリフェニルメチル)−3−O−(1−ピレニルメチル)−グリセロールのホスホラミダイトであった。しかしながら、INAのその他の化学的形態も同様に使用され得ることがわかるだろう。
【0284】
重亜硫酸ナトリウム−特異的脱アミノ方法
重亜硫酸ナトリウムで核酸を処理するための標準的な方法は、Frommer et al., 1992, Proc Natl Acad Sci, 89:1827-1831; Grigg and Clark, 1994, BioAssays, 16:431-436; Shapiro et al., 1970, J Amer Chem Soc, 92:422 to 423;Wataya and Hayatsu, 1972, Biochemistry, 11:3583-3588を含めた数多くの参考文献に見出すことができる。これらのプロトコルに対するいくつかの改良も、本発明により開発されてきた。
【0285】
検出システム
磁気ビーズのコーティング
磁気ビーズに固定させるために用いられるINA、DNA、PNA、LNA、HNA、ANA、MNA、CNAは、数多くの要領で修飾可能である。この例では、INAはEDCで使用されているようなヘテロ−2官能性リンカーを用いたビーズへのINAの共有結合による固定のための5’又は3’のいずれかのアミノ基を含有していた。しかしながら、同様にビオチンといった5’基でINAを修飾することもでき、この5’基を次に、アビジン又はストレプトアビジン基で修飾された磁気ビーズに受動的に固定させることができる。
【0286】
清浄な1.5ml入りの試験管に、10μlのカルボキシレート修飾済みMagnabindTMビーズ(ピアース(Pierce))又は100μlのDynabeadsTMストレプトアビジン(Dynal (ダイナル))を移し、90μlのPBS溶液を磁気ビーズに添加した。
【0287】
次にビーズを混合し、次に磁化して、上清を廃棄した。ビーズを、1回あたり100μlのPBS中で2回洗浄し、最後にpH4.5の50mMのMES緩衝液又はメーカーの仕様により規定されているもう1つの緩衝液90μlの中で再懸濁させた。
【0288】
試料に対し1μlの250μMのINA、DNA、PNA、LNA、HNA、ANA、MNA、CNA(濃度はオリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション実験により判定される通り、選択されたINAの比活性によって左右される)を添加し、試験管をボルテックスに付し、10〜20分間室温で放置した。
【0289】
その後10μlの新たに調製した25mg/mlのEDC溶液(Pierce /Sigma)を添加し、試料をボルテックスに付し、室温か又は4℃で最高60分間インキュベートした。
【0290】
その後試料を磁化し、上清を廃棄し、ビーズは必要とあらば100μlの0.25MNaOHか又は0.5MトリスpH8.0を10分間添加することによって遮断した。
【0291】
その後ビーズをPBS溶液で2回洗浄し、100μlのPBS溶液中で最終的に再懸濁させた。
【0292】
磁気ビーズを用いたハイブリダイゼーション
10μlのINAコーティング済みMagnabindTMを清浄な試験管に移し、ストレート又は蒸留水中で1:1に希釈した40μlのExpress HybTM 緩衝液(クローンテック(Clontech))、或いはその他のあらゆる市販の又は自家製ハイブリダイゼーション緩衝液を加えた。緩衝液は、既知の濃度のカチオン/アニオン又は両性洗浄剤のいずれか、又はヘパリン及びポリアミノ酸といったようなその他の添加剤をも含有し得る。
【0293】
その後上述の溶液にDNA1〜5μlの熱変性された試料を添加し、試験管をボルテックスに付し次に20〜60分、選ばれたINAの融解温度に応じて55℃又はもう1つの温度でインキュベートする。
【0294】
試料を磁化し、上清を廃棄し、1回あたり5分間、以前のステップからのハイブリダイゼーション温度で0.1×SSC/0.1%SDSで2回ビーズを洗浄し、2回洗浄の間に試料を磁化させた。
【0295】
二重INA捕捉
INA#1を、INAのN又はC末端アミンを介してカルボキシレート修飾された磁気ビーズにカップリングさせ、洗浄して未結合INAを除去した。
【0296】
その後、INA/ビーズ複合体を、適切なハイブリダイゼーション及び洗浄条件を用いて溶液中の標的DNAに対しハイブリッド形成させた。
【0297】
その後、適切な方法を用いて磁気ビーズから標的DNAを放出し、DNA分子の反対側末端にターゲティングされた第2のINA/磁気ビーズ複合体の入った試験管にこれを移した。
【0298】
適切なハイブリダイゼーション及び洗浄条件を用いて溶液中の標的DNAに対し、第2のINA/ビーズ複合体又はオリゴ/ビーズ複合体をハイブリッド形成させた。
【0299】
検出分子として、標的DNAの中央領域に相補的な第3のINA又はオリゴヌクレオチドを使用することができる。この検出分子は、数多くの方法で標識することができる。すなわち、
(i) P32又はI125といったような放射性同位元素でINA、DNA、PNA、LNA、HNA、ANA、MNA、CNA、を直接標識し、その後標的DNAでハイブリッド形成させることができる。
(ii) Cy−3又はCy−5といった蛍光分子でINA、DNA、PNA、LNA、HNA、ANA、MNA、CNA、を標識し、次に標的DNAでハイブリッド形成させることができる。
(iii) アミン修飾されたINA、DNA、PNA、LNA、HNA、ANA、MNA、CNA、を上述の方法のうちのいずれかで標識し次に既知のサイズのカルボキシレート修飾されたミクロスフェアにカップリングさせ、次にスフェアを洗浄して未結合の標識されたINA、PNA又はオリゴを除去することができる。このビーズ複合体を次に、特異的DNA分子の検出用のシグナル増幅系を産生するために用いることができる。
(iv) INA、DNA、PNA、LNA、HNA、ANA、MNA、CNA、を、蛍光又は放射性基のいずれかで標識されたデンドリマー分子に固定させ、この複合体を用いてシグナル増幅を生成させることができる。
(v) 上述のいずれかの方法で標識され固体支持体上で標的DNAにハイブリッド形成されたINA、DNA、PNA、LNA、HNA、ANA、MNA、CNA、を、大豆ヌクレアーゼ又はS1ヌクレアーゼといったような一本鎖特異的ヌクレアーゼを用いて溶液中に放出することができる。
【0300】
放射性標識された検出スフェアの調製
INA、DNA、PNA、LNA、HNA、ANA、MNA、CNA、を、アミノ基、チオール基又はビオチンといったような分子で3’又は5’標識することができる。
【0301】
標識された分子は又、第1の標識に対し分子の反対側末端で取込まれたP32又はI125といったような第2のラベルを有することもできる。
【0302】
この二重標識された検出分子は、例えばEDCといったヘテロ−2官能性リンカーを用いて、既知のサイズのカルボキシレート又は修飾されたラテックスビーズに共有結合でカップリングされ得る。アッセイに応じて、その他の適切な基質も使用することができる。
【0303】
このとき、未結合分子を洗浄により除去して、多数の特異的検出/シグナル増幅分子でコーティングされたビーズを残すことができる。
【0304】
これらのビーズは、このとき、シグナル増幅を生成するべく問題のDNA試料でハイブリッド形成することができる。
【0305】
蛍光標識された検出スフェアの調製
INA、DNA、PNA、LNA、HNA、ANA、MNA、CNA、を、アミノ基、チオール基又はビオチンといったような分子で3’又は5’標識することができる。
【0306】
標識された分子は又、第1の標識に対し分子の反対側末端で取込まれたCy−3又はCy−5といったような第2のラベルを有することもできる。
【0307】
ここで、この二重標識された検出分子は、EDCといったヘテロ−2官能性リンカーを用いて、既知のサイズのカルボキシレート又は修飾されたラテックスビーズに共有結合でカップリングされ得る。
【0308】
このとき、未結合分子を洗浄により除去して、多数の特異的検出/シグナル増幅分子でコーティングされたビーズを残すことができる。
【0309】
これらのビーズは、このとき、シグナル増幅を生成するべく問題のDNA試料でハイブリッド形成することができる。
【0310】
酵素で標識された検出スフェアの調製
INA、DNA、PNA、LNA、HNA、ANA、MNA、CNA、を、アミノ基又はチオール基といったような分子で3’又は5’標識することができる。
【0311】
標識された分子は又、ビオチン又は第1の標識に対し分子の反対側の末端で、へテロ2官能性リンカーを介して接合させたホースラディッシュペルオキシダーゼ又はアルカリホスファターゼといったその他の分子といったような第2のラベルを有することもできる。
【0312】
この二重標識された検出分子は、EDCといったヘテロ−2官能性リンカーを用いて、既知のサイズのカルボキシレート又は修飾されたラテックスビーズに共有結合でカップリングされ得る。
【0313】
このとき、未結合分子を洗浄により除去して、多数の特異的検出/シグナル増幅分子でコーティングされたビーズを残すことができる。
【0314】
これらのビーズは、このとき、シグナル増幅を生成するべく問題のDNA試料でハイブリッド形成することができる。
【0315】
シグナル増幅はこのとき、ストレプトアビジンといったような分子の結合又は比色分析基質が関与する酵素反応により達成可能である。
【0316】
INAオリゴマー組合せ
上述のケース全てにおいて、初期ハイブリダイゼーション事象には、問題の核酸に対して相補的なINAでコーティングされた磁気ビーズの使用が関与していた。
【0317】
第2のハイブリダイゼーション事象には、上述の方法のいずれかが関与し得る。
【0318】
このハイブリダイゼーション反応は、問題のDNAに相補的な第2のINA、PNA又は問題の核酸に対し相補的なオリゴヌクレオチド又は修飾済みオリゴヌクレオチドのいずれかを用いて行なうことができる。これらのアッセイにおける適切なサイズの蛍光ビーズは106を超える蛍光色素分子を担持し単一の蛍光ビーズは容易に検出可能であることから、該方法は、1つ又は数個の細胞からの1つ又は数個のDNAをアッセイするための潜在的感度を有する。
【0319】
デンドリマー及びアプタマー
デンドリマーは、特異的分子で標識された多重層を生成し得るように制御された形で化学的に合成可能な分枝樹状分子である。これらは、中心から周囲に又はその逆に段階的に合成された。
【0320】
デンドリマー構造及びその生成を支配する最も重要なパラメータの1つは、各ステップ内で生成される分枝の数である。これは、所望の分子を構築するために必要とされる反復的ステップの数を決定する。
【0321】
シグナル増幅を増強するべく、Cy−3又はCy−5といったような蛍光標識又はI125又はP32といったような放射性標識を含むデンドリマーを合成することができる。
【0322】
代替的には、修飾されたINA、PNA又はDNA分子を固定させるために用いることのできるカルボキシレート基又はその他のあらゆる反応基を含むようにデンドリマーを合成することが可能である。
【0323】
方法
固体支持体及び磁気ビーズを用いたメチル化されたDNAの検出
図1及び図2は、それぞれ固体支持体及び磁気ビーズを用いたサンドイッチINAシグナル増幅を使用する本発明の方法の実施例を示している。INAが図1及び図2で検出リガンドとして例示されているものの、オリゴヌクレオチドといったようなその他の検出リガンドもこれらの方法において使用できるということがわかるだろう。
【0324】
マイクロタイターウェルの形態の固体支持体を提供し、ウェルに対するINA又はその他のリガンドの固定を補助するべくN−オキシスクシニミドでこれをコーティングした。
【0325】
標的ヌクレオチド配列の第1の部分に対し相補的であった第1のINAをウェルに添加し、この固体支持体に固定させる。
【0326】
その後ウェルに重亜硫酸塩で処理したDNAを添加し、INAにハイブリッド形成しその後ウェルに結合した標的DNAを捕捉するべくINAとこれをハイブリッド形成させた。
【0327】
その後、ハイブリダイゼーション溶液及びハイブリッド形成しなかった全てのDNAを除去してウェル上に捕捉されたハイブリッド形成済みDNAのみを残すように、ウェルを洗浄した。
【0328】
次に、標的ヌクレオチド配列の第2の部分に相補的であった第2のINAを、蛍光標識をもつミクロスフェアビーズに連結させた。その後、第2の連結されたINAを、すでにウェルに結合した標的DNAでハイブリッド形成させた。その後、ハイブリッド形成しなかった第2のINA/ミクロスフェア複合体を除去して、標的DNA配列と関連した蛍光標識及びINA/ミクロスフェア複合体のみを残すように、ウェルを洗浄した。
【0329】
その後、蛍光を測定して、標的DNAのレベルを決定した。
【0330】
ミクロスフェアを用いたメチル化されたDNAの検出
方法論
図3及び図4を参照すると、ミクロスフェアを用いたメチル化されたDNAの検出が示されている。
【0331】
捕捉INAでのマイクロタイターウェルのコーティング
(i) 50mMのリン酸塩緩衝液、1mMのEDTApH8.5(100μl)中の捕捉INA(ウェルあたり0.01〜100pM)を用いて、N−オキシスクシニミドでコーティングされたマイクロタイターウェル(Costar(コスター)Cat#2498)を16〜24時間4℃でコーティングした。
(ii) プレートを100μlの50mMのリン酸緩衝液、1mMのEDTApH8.5で洗浄した。
(iii) 各ウェルに対し、3%のBSA、50mMのリン酸塩緩衝液、1mMのEDTApH8.5を150μl添加し、必要になるまで4℃でプレートを放置した。
【0332】
検出INAでのフルオロスフェアのコーティング
(i) フルオロスフェア(分子プローブ)を5秒間5回音波処理して、凝集した材料を全て壊した。
(ii) pH6.0の音波処理された50mMの2[N−モルホリノ]エタンスルホン酸(MES)250μl及び音波処理されたフルオロスフェア250μl中300pM〜0.3pMの範囲内で検出プローブINAを希釈し、30分間室温で溶液を放置した。
(iii) 試料に対し0.5mgの1−エチル−3[3ジメチルアミンプロピル]カルボジイミド[EDAC]、Sigma (シグマ) Cat#E1769を添加し、試料を暗所で室温に4〜6時間放置し、次に4℃で16時間インキュベートした。
(iv) ビーズに対し1Mのグリシン55μlで添加し、2時間室温にビーズを放置した。
(v) 5〜20分間(ビーズのサイズによる;一般に0.5μMのビーズは5分を要し、一方0.1μMのビーズは20分を要した)、ベンチトップ遠心分離機内で14,000rpmでビーズを遠心分離に付し、上清を廃棄した。
(vi) 前述のように洗浄ステップ間で遠心分離に付しながら、500μlのPBS/1%BSAで2回ビーズを洗浄した。
(vii) 次にビーズを200μlのPBS/1%BSA中で再懸濁し、必要となるまで暗所で4℃で貯蔵した。
(viii) 感度を最適化しバックグラウンドレベルを最小限にするため、ビーズに結合されたINAリガンドの数の変動を使用することができる。
【0333】
DNAのハイブリダイゼーション
(i) Clarkら、(Clark SJ, Harrison J, Paul CL and Frommer M, High sensitivity mapping of methylated cytosines, Nucleic Acids Res., 22:2990-2997(1994))内にある通りに処理された重亜硫酸塩であったDNAか対照サケ精子DNAのいずれかを、マイクロタイターウェルにカップリングされたINAリガンドとハイブリッド形成させ、次に各ウェルに添加した。
(ii) 100μlのExpress HybTM 緩衝液(クローンテック(Clontech))とDNA試料を混合させ、さらに長時間のインキュベーションのためプレートをラップでカバーするか又はウェルを鉱油(シグマ(Sigma))により被覆し、試料を1〜16時間45〜60℃の間でインキュベートさせた。
(iii) その後ウェルを、1回あたり5〜10分間、150μlの2×SSC/0.1%SDS@45〜60℃で2回洗浄した。
(iv) ウェルをさらに150μlの0.1×SSC/0.1%SDSにより45〜60℃で5〜10分間洗浄し、洗浄溶液を廃棄した。
(v) INA/フルオロフェアをExpress HybTM 緩衝液(クローンテック(Clonetech))中で1/100に希釈し、100μlの試料をウェルに添加した。さらに長時間のインキュベートのため、プレートをラップでカバーするか又はウェルを鉱油(シグマ(Sigma))により被覆し;試料を1〜16時間、45〜60℃でインキュベートさせた。
(vi) 次にウェルを、1回あたり5〜10分間、45〜60℃で150μlの2×SSC/0.1%SDSにより2回洗浄した。
(vii) ウェルをさらに5〜10分間45〜60℃で150μlの0.1×SSC/0.1%SDSにより洗浄し、洗浄溶液を廃棄した。
(viii) 最後に、各ウェルの蛍光強度を、Victor II蛍光プレート読取り装置内で特定のビーズ(黄色ビーズについては500/520)について適切な励起/発光波長で測定した。
(ix) いかなるINAも固定しなかったウェル内で測定したバックグラウンド値を全ての測定値から差引いた。
【0334】
コーティングされた放射性標識済みビーズの生産方法
(i) 標的DNA又は問題の核酸領域に対して特異的オリゴヌクレオチド(INA又はPNA)を合成した。このオリゴヌクレオチド、INA又はPNAは、標準化学(シグマジェノシス(Sigma Genosys))を用いて合成された3’アミン基を含有していた。
(ii) 次に、以下の通りのガンマP32dATPを用いて、オリゴヌクレオチド(INA又はPNA)を5’キナーゼ処理した。
・オリゴヌクレオチド(20ng/μl) 1μl
・X10PNK緩衝液 1μl
・T4PNK 1μl
・ガンマP32dATP 2μl
・無菌水 5μl
(iii) その後、1時間37℃で試料をインキュベートさせ、次に、酵素を不活性化するべく95℃まで5分間加熱した。
(iv) 0.1μMのカルボキシレートで修飾済みの蛍光ビーズ(モレキュラー・プローブス(Molecular Probes) Cat#F−8803)を、無菌水中で1/10,000、1/100,000及び1/1,000,000に希釈し、次にキナーゼ処理したオリゴヌクレオチドを以下の通りビーズにカップリングした。
・ビーズ 1μl
・標識されたオリゴ(INA又はPNA) 3μl
・50mMのMESpH8.0 5μl
・10mg/mlのEDC(ピアース(Pierce)) 2μl
(v) その後、ビーズを1時間室温でインキュベートして、キナーゼ処理したオリゴヌクレオチドを3’アミンを介してビーズに固定させた。
(vi) その後、ビーズを15分間最高速度で微小遠心分離機内で回転させて、コーティング済みビーズを沈降させた。
(vii) 上清を除去し、ビーズを100μlのPBS溶液で洗浄し、上述の通り旋回させた。
(viii) 上清を除去し、ビーズを50μlのPBS中に再懸濁させた。
(ix) その後チェレンコフ計数プロトコルを用いて標準シンチレーション計数管内で、コーティングされたビーズのCPMを測定した。最高の活性をもつビーズを次に、アッセイ中の検出システムとして使用した。
【0335】
このプロトコルの背後にある考え方は、最高の比活性をもつビーズを最少数生成する、というものであり、かくして検出可能なシグナルを生成するために標的配列にわずかなビーズを結合させる必要しかなかった。
【0336】
DNAの重亜硫酸塩処理
2μgのDNAに対して、2μl(1/10体積)の3MのNaOH(50mlの水中に6g、直前に調製)を、最終体積20μlで添加した。15分間37℃で混合物をインキュベートした。室温より高い温度でのインキュベーションを用いて、変性効率を改善することができる。
【0337】
インキュベーションの後、208μlの2Mメタ重亜硫酸ナトリウム(416mlの10N NaOHを伴う20mlの水又はトリス/EDTA中7.6g;BDH AnalaR #10356.4D;直前に調製)を添加した。200μlの鉱油で試料を被覆した。次に試料を一晩55℃でインキュベートした。代替的には、以下の通りに試料をサーマルサイクラーで循環させることができる。すなわち、以下の通りに約4時間又は一晩インキュベートさせる。ステップ1、PCR機内で循環して2時間、55℃;ステップ2、2分間95℃。ステップ1は、約37℃から約90℃までの任意の適切な温度で実施可能であり、5分〜16時間の間で長さを変動できる。ステップ2は、約70℃から約99℃まで任意の温度で実施可能であり、約1秒から60分又はそれ以上と長さが変動し得る。
【0338】
メタ重亜硫酸ナトリウムでの処理の後、油を除去し、DNA濃度が低い場合、1μlのtRNA(20mg/ml)又は2μlのグリコーゲンを添加した。これらの添加物は任意であり、特にDNAが低濃度で存在する場合に標的DNAと共沈させることによって得られるDNAの収量を改善させるために用いることができる。
【0339】
イソプロパノール浄化処理は、以下の通りに実施された。すなわち、試料に対し800μlの水を加え、混合させ次に1mlのイソプロパノールを添加した。試料を再度混合し、最低5分間−20℃で放置した。10〜15分間微小遠心分離機内で試料を回転させ、ペレットを80%のETOHで2回洗浄し、毎回ボルテックスに付した。この洗浄処理は、核酸と共に沈殿したあらゆる残留塩を除去する。
【0340】
ペレットを乾燥させ、その後50μlといった適切な量のT/E(10mMのトリス/0.1mMEDTA)pH7.0〜12.5中に再懸濁させた。pH10.5の緩衝液が特に有効であることがわかった。核酸を懸濁させるのに必要とされるように、1分−96時間37℃〜95℃で試料をインキュベートさせた。
【0341】
抗体アプローチ
ゲノム内のメチル化されたDNA配列のための抗体選択
該アプローチは図3の中に記され、以下で要約されている。
I. 5−メチルシトシンに対し向けられた抗体を、磁気ビーズ上にコーティングする。(A)。
II. 未結合抗体を除去するべく洗浄した後、ビーズをゲノムDNAに添加する。(B)。
III. 5−メチルシトシンを含有するあらゆるDNAはことごとく抗体でコーティングされたビーズに結合し、溶液中に遊離した大部分のメチル化されていないDNAを放置する。
IV. 抗体/ビーズを洗浄して、メチル化されたDNA配列の純粋な集合を生成させ、これを次に重亜硫酸塩処理に付す。(C)
【0342】
多重リガンドアプローチ
挿入用核酸リガンド(INA)を用いた多重リガンド
図4に1つの好ましいアプローチが記されている。この方法を用いて、問題の配列を次のように検出する。
I. 問題の配列の5’領域に対し設計されたINAを磁気ビーズ又は検出可能な粒子にカップリングする。(A)
II. INA/ビード複合体を重亜硫酸塩処理されたDNAと混合し、洗浄して非標的DNAを除去する。(B)
III. 第2のINA、PNA又はオリゴを次に添加する(これは問題の配列の3’領域に対し設計されている)。第2のINA、PNA又はオリゴは、その後検出のために使用されるゲノム内に発見されないユニーク配列タグを含む。(c)
IV. その後、試料を洗浄し、ここでも同じタグを含む第2のINA種を添加し、ビーズを洗浄する。(D)
V. 第3及び第4のINA等々を添加し、ハイブリッド形成させ、洗浄する。(E)
VI. INA1〜4のタグ配列に結合する標識された(蛍光/放射性)INA、PNA又はオリゴを用いて、タグ配列をここで検出する。(F)
【0343】
図5に1つの好ましいアプローチが記されている。この方法を用いて、問題の配列を次のように検出する。
I. 問題の配列の5’領域に対し設計されたINAを磁気ビーズ又は検出可能な粒子にカップリングする。(A、B)
II. INA/ビード複合体を重亜硫酸塩処理されたDNAと混合し、洗浄して非標的DNAを除去する。(C)
III. 問題の配列の3’領域に対し設計されている第2のINA/ビーズを次に添加する。第2のINA/ビーズ複合体を、検出のために使用されるように蛍光又は放射能のいずれかにより標識する。(D)
IV. その後、試料を洗浄し、ここでも蛍光又は放射能で標識された第3のINA/ビーズ複合体を添加する。(D)
V. 第3及び第4のINA等々を添加し、ハイブリッド形成させ、洗浄する。
VI. 次に、全ての検出ビーズ複合体の合計を用いてシグナル増幅を達成する。(E)
【0344】
抗体捕捉多重リガンドアッセイ
本発明者らは、(通常染色体を染色するために使用される)5−メチルシトシンに向けられた抗体を、高いメチル化の部域をもつ核酸を捕捉又は濃縮するために使用できる、ということを発見した。ひとたび捕捉した時点で、核酸を本発明に従った方法に従ってアッセイすることができる。
【0345】
アッセイについて、以下で記述する。
【0346】
A. 磁気ビーズに対する5−メチルシトシン抗体のカップリング
I. メーカーの指示に従って洗浄した状態で、125μlのダイナル・パン・マウスD(Dynal Pan Mouse)IgG(Cat#110.22)に対して、0.1μl(0.5μg)のモノクローナル5−メチルシトシン抗体(オンコジーン(Oncogene)Cat#NA81)を添加した。
II. 試料を45分間室温で揺動させた。
III. ビーズをPBS/0.1%BSAで4回洗浄した。
IV. 次にビーズをPBS/0.1%BSA125μl中に最懸濁させた。
【0347】
B. ゲノムDNAの予備濃縮
I. メーカーの指示に従ってEcoR1及びHindIIIで予め消化した6.5μgのゲノムLNCaPDNAを、洗浄済みビーズに添加した。
II. 試料を45分間室温で揺動させた。
III. PBS/0.1%BSAで4回ビーズを洗浄した。
IV. 次に40μlの水でビーズを再懸濁させた。
【0348】
C. 捕捉されたDNAの重亜硫酸塩処理
I. 20μlの捕捉されたDNAを以下の通りに重亜硫酸塩で処理した。
II. 2μl(1/10体積)の3MのNaOH。15分間、37℃で混合物をインキュベートした。
III. インキュベーションの後、208μlの2Mのメタ重亜硫酸ナトリウムを添加した。試料を200μlの鉱油により被覆した。
IV. 次に55℃で一晩試料をインキュベートした。
V. メタ重亜硫酸ナトリウムでの処理後、油を除去し、1μlのtRNA(20mg/ml)。
VI. 800μlの水を試料に添加し、混合し、次に1mlのイソプロパノールを添加した。試料を再度混合し、30分間4℃で放置した。
VII. 10〜15分間、微小遠心分離機内で試料を回転させ、ペレットを80%のETOHで2回洗浄し、毎回ボルテックスに付した。
VIII. ペレットを乾燥させ、次にpH10.5の50μlのT/E(10mMのトリス/0.1mMのEDTA)中で再懸濁させた。
IX. 試料を1時間72℃でインキュベートさせた。
【0349】
D. PNA捕捉ビーズの調製
GSTP!遺伝子(受入れ番号M24485)のメチル化された配列を認識するため、以下のPNAを合成した。
PNA 5’アミン−CTA ACG CGC CGA AAC
I. 10μlのカルボキシレート修飾済みMagnebindTMビーズ(ピアース(Pierce) Cat#21353)を清潔な1.5ml入り試験管に移し、90μlのPBS溶液を磁気ビーズに添加した。
II. ビーズを混合し、次に磁化させ、上清を廃棄した。ビーズを、一回につき100μlのPBS中で2回洗浄し、最終的にpH4.5の90μlの50mMのMES緩衝液50mMの中に再懸濁させた。
III. 試料に1μlの250μMPNAを添加し、試験管をボルテックスに付し、10〜20分間室温で放置した。
IV. 10μlの調製されたばかりの25mg/mlのEDC溶液(ピアース/シグマ (Pierce / Sigma))を次に添加し、試料をボルテックスに付し、最高60分間室温又は4℃のいずれかでインキュベートした。
V. 次に試料を磁化させ、上清を廃棄した。
VI. 10分間、0.25MのNaOH又は0.5MのトリスpH8.0のいずれか100μlを添加することにより、ビーズを遮断した。
VII. その後、PBS溶液で2回ビーズを洗浄し、最後に100μlのPBS溶液中で再懸濁させた。
【0350】
E. 抗体濃縮した重亜硫酸塩処理されたDNAに対するPNAコーティングした捕捉ビーズのハイブリダイゼーション
I. 10μlのPNAコーティングされたビーズを、5μlの抗体濃縮した重亜硫酸塩処理済みDNA及び蒸留水で1:1に希釈した35μlのExpress Hyb溶液(Clontech (クローンテック))と共に、新鮮な1.5ml入り遠心分離管に添加した。
II. 試料を混合し、1時間55℃で放置した。
III. 55℃で×2SSC/0.1%SDSで1回、試料を洗浄した。磁化し、上清を廃棄した。
IV. さらに55℃で×1SSC/0.1%SDSで1回、試料を洗浄した。磁化し、上清を廃棄した。
V. 最後に、20μlの×1SSC/0.1%SDS内で試料を再懸濁させた。
【0351】
F. 検出オリゴヌクレオチドのキナーゼ処理
初期PNA捕捉内で用いられる領域の下流側のメチル化された領域に対して、4つの特異的検出オリゴヌクレオチドを設計した。これらのプライマの配列が以下に示されている。
DETECT−1 5’−TAAATCACGACGCCGACCGCTCTT−アミン3’ (配列番号1)
DETECT−2 5’−AAAACGCGAACCGCGCGTACTCA−アミン3’(配列番号2)
DETECT−3 5’−CCTAAAAACCGCTAACGACACTA−アミン3’(配列番号3)
DETECT−4 5’−TAAACCACGATATAAAACGACACTC−アミン3’ (配列番号4)
【0352】
合成オリゴヌクレオチドを以下の通りにキナーゼ処理した。
オリゴ 40ng
×10緩衝液 2μl
T4キナーゼ 2μl
ガンマP32 4μl
水 20μlまで
【0353】
反応物を60分間37℃で加熱し、次に酵素を5分間95℃で熱変性させた。
【0354】
G. 蛍光ビーズに対するキナーゼ処理済みオリゴヌクレオチドの固定
I. 5μlのキナーゼ処理済みの検出オリゴを、以下の通り、10−7希釈Molecular Probes (モレキュラー・プローブ) カルボキシレートフルオロスフェア0.5μM(Cat#F−8812−pink)1μlにカップリングさせた。
10−7のフルオロスフェア0.5μM 1μl
キナーゼ処理済み検出オリゴ 5μl
50mMのMESpH8.0 12μl
10mg/mlのEDC(シグマ(Sigma)) 2μl
II. ビーズを室温で1時間放置した。
III. SSC/0.1%SDSで1回ビーズを洗浄し、以下の通り再懸濁させた。
IV. Detect 1. 20μlの×0.1SSC/0.1%SDS
V. Detect 2. 10μlの×0.1SSC/0.1%SDS
VI. Detect 3. 10μlの×0.1SSC/0.1%SDS
VII. Detect 4. 10μlの×0.1SSC/0.1%SDS
【0355】
H. PNA捕捉された抗体濃縮済みの重亜硫酸塩処理されたDNAに対する検出オリゴのハイブリダイゼーション
I. セクションFからのビーズを磁化し、上清を除去した。
II. 蒸留水で1:1に希釈した47μlのExpress Hyb溶液(クローンテック (Clontech))を試料に添加した。
III. 試料に対して、検出ビーズ1−4各々3μlずつ(合計容積12μl)を添加した。
IV. 1時間55℃で試料をインキュベートした。
V. 55℃で×2SSC/0.1%SDSで1回試料を洗浄した。磁化し、上清を廃棄した。
VI. 55℃で×1SSC/0.1%SDSさらに1回試料を洗浄した。磁化し、上清を廃棄した。
VII. 最後に、5mlのInstaGelシンチラントの中にビーズを再懸濁させ、放射能を、チェレンコクプロトコルを用いたシンチレーション計数により決定した。
【0356】
結果
図6は、抗体を受けなかったゲノムDNA試料と抗体捕捉試料を比較した場合に提供される濃縮係数を示す。
【0357】
図7は、抗体捕捉多重リガンドアッセイを用いた非PCRシグナル増幅を示す。結果は、1.LNCaPDNA(メチル化されたDNA)について抗体濃縮無し、2.抗体濃縮されたDu145DNA(メチル化されていないDNA)及び3.抗体濃縮されたLNCaPDNA(メチル化されたDNA)を用いて得られたシグナルを示す。
【0358】
ゲノムDNA配列を捕捉するためのINAプローブ及びPCRを用いた検出
アッセイは、図8に要約されている。この方法を用いて、問題の配列は以下のように検出される。
I. 重亜硫酸塩転換済みのメチル化された領域又は重亜硫酸塩転換済みのメチル化されていない領域に対して導かれたINAを、問題の配列の5’領域に対し設計し、次に磁気ビーズ又は任意の固相にカップリングする。
II. INA/ビーズ複合体を、重亜硫酸塩処理したDNAと混合し、洗浄して非標的DNAを除去する。
III. その後、捕捉された材料は、所望の配列が捕捉されたことを正のPCRが示した場合に捕捉部位から下流側の配列を検出するべくPCRのための入力材料として使用される。
IV. INAリガンドは同様に、形状で認識できるあらゆる粒子に結合され得、従って、何千もの反応が唯一の反応試験管の中で発生し得る。
V. INA1が形状1の粒子に固定され、INA2が形状2の粒子に固定され、INA3が形状3の粒子に固定されるといったような形で、INA、PNA又はオリゴなどがかかる粒子に固定され、次に粒子はその後の反応のため全て一本の試験管内に入れられる。
VI. INAは同様に、PCRプレートのウェルに物理的に結合され得、反応全体は単一のウェル内で実施され得る。こうして、生成された正のシグナルがプレート内の位置により(メチル化/メチル化無しについて)解読され得る「キット」フォーマットが可能となる(アガロースゲル実験結果については以下の図9を参照のこと)。
【0359】
磁気ビーズに対するアミン修飾された核酸のカップリング
I. 清浄な1.5ml入り試験管に対し、10μlのカルボキシレート修飾済みMagnabindTMビーズ(ピアース(Pierce))を移し、90μlのPBS溶液を磁気ビーズに添加した。
II. 次にビーズを混合し、次に磁化し、上清を廃棄した。ビーズを一回につき100μlのPBS中で2回洗浄し、最終的に90μlの50mMMES緩衝液pH4.5又は、メーカーの仕様書に規定されている通りのもう1つの緩衝液中で再懸濁させた。
III. 1μlの250μMINA(濃度は、オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション実験により決定される通りの選択されたINAの比活性に応じて異なる)を、試料に加え、試験管をボルテックスに付し、10〜20分間室温で放置した。
IV. その後、10μlの新たに調製された25mg/mlのEDC溶液(ピアース/シグマ (Pierce / Sigma))を次に添加し、試料をボルテックスに付し、室温か又は4℃で最高60分インキュベートした。
V. その後試料を磁化し、上清を廃棄し、必要とあらば、10分間、0.25MのNaOH又は0.5MのトリスpH8.0のいずれかを100μl添加することによってビーズを遮断した。
VI. 次にビーズをPBS溶液で2回洗浄し、最終的に100μlのPBS溶液中で再懸濁させた。
【0360】
ゲノムDNAに対するINAでコーティングされた磁気ビーズを用いたハイブリダイゼーション
10μlのINAコーティング済みMagnabindTMビーズを清浄な試験管に移し、ストレート又は蒸留水中で1:1に希釈した40μlのExpress HybTM 緩衝液(クローンテック (Clontech))、或いはその他のあらゆる市販の又は自家製ハイブリダイゼーション緩衝液を加えた。緩衝液は、既知の濃度のカチオン/アニオン又は両性洗浄剤のいずれか、又はヘパリン及びポリアミノ酸といったようなその他の添加剤をも含有し得る。
【0361】
その後上述の溶液にDNA1〜5μlの熱変性された試料を添加し、試験管をボルテックスに付し次に20〜60分、選ばれたINAの融解温度に応じて55℃又はもう1つの温度でインキュベートする。
【0362】
試料を磁化し、上清を廃棄し、1回あたり5分間、以前のステップからのハイブリダイゼーション温度で0.1×SSC/0.1%SDSで2回ビーズを洗浄し、2回洗浄の間に試料を磁化させた。
【0363】
INA捕捉されたDNAのPCR増幅
以下の通り、最終的な再懸濁された試料体積の1/5である、1μlの処理済みDNAに対し、PCR増幅を実施した。各プライマ1μlあたり6ng、Promega (プロメガ) PCRマスターミックスを用いて、1μlの重亜硫酸塩処理済みゲノムDNAを含有する25μlの反応混合物内でPCR増幅を実施した。重亜硫酸塩処理済みDNAからのGSTP1の増幅のために用いられる鎖特異的なネスティングされたプライマは、GST−9(967−993)
TTTGTTGTTTGTTTATTTTTTAGGTTT(F)GST−10(1307−1332)(配列番号5)
AACCTAATACTACCAATTAACCCCAT第1ラウンドの増幅条件(配列番号6)である。
【0364】
第1ラウンドの増幅の1μlを、
プライマ(R)GST−11(999−1027)
GGGATTTGGGAAAGAGGGAAAGGTTTTTT(F)GST−12(1281−1306)(配列番号7)
ACTAAAAACTCTAAAAACCCCATCC(R)(配列番号8)
を含有する第2ラウンドの増幅反応混合物に移した。プライマの場所は、GSTP1配列(受入れ番号M24485)に従って示されている。PCR産物の試料を標準的な条件の下でThermoHybaid PX2サーマルサイクラーの中で増幅させた。
【0365】
50mlのアガロースあたり1滴の臭化エチジウム(CLP#5450)を含有する1%のTAE内で、アガロースゲル(2%)を調製した。5μlのPCR由来の産物を、1μlの5×アガロースローディングバッファーと混合し、潜水水平電気泳動タンクを用いて×1TAE中で125mAで電気泳動させた。マーカーは、低100〜1000bpタイプであった。Kodak (コダック) UVIdoc EDAS290システムを用いて、UV照射の下でゲルを視覚化した。
【0366】
図9は、INA捕捉及びPCR方法のアガロースゲル表現を示している。メチル化されていないゲノムDNA配列に特異的なINAリガンドが、磁気ビーズにカップリングされ、ゲノム重亜硫酸塩処理済みDNAと混合された。ビーズ/DNA複合体を洗浄し、結合した分子を、下流側領域についてのPCRにおける鋳型として使用した。レーン:マーカー、1、2、3、ここで
レーン1:HepG2DNA(標的部位においてメチル化されているものとして知られている)、
レーン2:Du145DNA(標的部位においてメチル化されていないものとして知られている)、
レーン3:BL13DNA(標的部位においてメチル化されていないものとして知られている)。
【0367】
結果は、磁気ビーズにカップリングされたメチル化されていない標的核酸に向けられたINAリガンドを用いて、INAが、メチル化されていない重亜硫酸塩処理された合計ゲノムDNAを特異的に捕捉することができる、ということを示している。レーン1で用いられているゲノムDNA(HepG2)は、INAが導かれたゲノム遺伝子座でメチル化されている。レーン2(Du145)及び3(BL13)で用いられているゲノムDNAは、INAが導かれたゲノム遺伝子座でメチル化されておらず、その結果両方のレーンで正のPCRシグナルがもたらされている。その上、この例は、メチル化された/メチル化されていない標的核酸の存在を迅速に決定するためPCR検出と共に該アプローチを使用し得るということを示している。
【0368】
メチル化された混合物を用いたINAリガンドの特異性
INA捕捉ビーズの調製
以下のINAは、GSTP1遺伝子のメチル化された配列及び同じ領域のメチル化されていないバージョンを認識するように合成された(受入れ番号;M24485)。(Yは偽挿入ヌクレオチドを表わす)。
【0369】
メチル化されたINA−1 5’アミン−YA TCY GGC YGC GCY AAC YTA Y(配列番号9)
メチル化されていないINA−2 5’アミン−CTA ACG CGC CGA AAC(配列番号10)
【0370】
I. 清浄な1.5ml入り試験管に対し、10μlのカルボキシレート修飾済みMagnabindTMビーズ(Pierce(ピアース)cat # 21353)を移し、90μlのPBS溶液を磁気ビーズに添加した。
II. 次にビーズを混合し、次に磁化し、上清を廃棄した。ビーズを一回につき100μlのPBS中で2回洗浄し、最終的に90μlの50mMMES緩衝液pH4.5中で再懸濁させた。
III. 1μlの250μMPNA)を、試料に加え、試験管をボルテックスに付し、10〜20分間室温で放置した。
IV. その後、10μlの新たに調製された25mg/mlのEDC溶液(Pierce / Sigma (ピアース/シグマ))を次に添加し、試料をボルテックスに付し、室温か又は4℃で最高60分インキュベートさせる。
V. その後試料を磁化し、上清を廃棄した。
VI. 10分間、0.25MのNaOH又は0.5MのトリスpH8.0のいずれかを100μl添加することによってビーズを遮断した。
【0371】
次にビーズをPBS溶液で2回洗浄し、最終的に100μlのPBS溶液中で再懸濁させた。
【0372】
メチル化された及びメチル化されていない合成GSTP1配列に対するINAリガンドのハイブリダイゼーション
2つの合成100bpオリゴヌクレオチドを、GSTP1遺伝子のメチル化された及びメチル化されていない領域を示すように設計した。
【0373】
メチル化されていない配列
5’AGGGAATTTTTTTTTGTGATGTTTTGGTGTGTTAGTTTGTTGTGTATATTTTGTTGTGGTTTTTTTTTTGGTTTTTTTGGTTAGTTGTGTGGTGATTTTGGGGATTTTAG−3’(配列番号11)
メチル化された配列
5’AGGGAATTTTTTTTCGCGATGTTTCGGCGCGTTAGTTCGTTGCGTATATTTCGTTGCGGTTTTTTTTTTGGTTTTTTCGGTTAGTTGCGCGGCGATTTCGGGGATTTTAG−3’(配列番号12)
【0374】
メチル化された及びメチル化されていない配列を次に以下のメチル化されたもの対メチル化されていないものの比で混合した。
100:0% 25:75%
99:1% 10:90%
95:5% 5:95%
90:10% 1:99%
75:25% 0:100%
50:50%
【0375】
ハイブリダイゼーション反応
I. 蒸留水で1:1に希釈した40μlのExpress Hyb溶液(クローンテック(Clontech))を5μlのカップリングされたビーズに添加した。
II. 5μlのオリゴ混合物を添加し、溶液を積極的なピペッティングにより混合して粒子を再懸濁させた。
III. 次に試料を30分間50℃でインキュベートして、標的配列の結合を可能にした。
IV. ビーズを磁化し、上清を除去した。
V. 次にビーズを、5分間50℃で×2SSC/0.1%SDSで1回洗浄した。
VI. ビーズを磁化させ、上清を除去した。
VII. ビーズを洗浄し、さらにもう1回、5分間50℃で×1SSC/0.1%SDSで洗浄した。
【0376】
検出オリゴヌクレオチドのキナーゼ処理
メチル化された又はメチル化されていないのいずれかの合成オリゴ配列の3’領域に対して結合した2つの検出オリゴヌクレオチドを合成した。
メチル化された検出オリゴヌクレオチド
5’−AAA CTA ACA CAC CAA AAC ATC ACA AA−アミン−3’(配列番号13)
メチル化されていない検出オリゴヌクレオチド
5’−GAA CTA ACG CGC CGA AAC ATC GCG AA−アミン−3’(配列番号14)
【0377】
オリゴを、以下の通りにキナーゼ処理した。
オリゴ 100ng
×10緩衝液 2μl
T4キナーゼ 2μl
ガンマP32 4μl
水 20μlまで
【0378】
反応物を60分間37℃で加熱し、次に酵素を5分間95℃で熱変性させた。反応体積を次に、PCRグレードの水で55μlに調整した。
【0379】
INA捕捉磁気ビーズに対するキナーゼ処理済みオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション
I. 蒸留水で1:1に希釈した45μlのExpressHyb溶液(クローンテック(Clontech))に洗浄済みのINA捕捉ビーズを再懸濁した。
II. 5μlのキナーゼ処理済みオリゴを添加し、溶液を積極的なピペッティングにより混合して粒子を再懸濁させた。
III. 次に試料を30分間50℃でインキュベートして、標的配列の結合を可能にした。
IV. ビーズを磁化し、上清を除去した。
V. 次にビーズを、5分間50℃で×2SSC/0.1%SDSで1回洗浄した。
VI. ビーズを磁化させ、上清を除去した。
VII. ビーズをさらにもう1回、5分間50℃で×1SSC/0.1%SDSで洗浄した。
VIII. ビーズを磁化し、上清を除去した。
IX. 最終的に、ビーズを5mlのInsta Gelシンチラント中に再懸濁させ、チェレンコフプロトコルを用いたシンチレーション計数により放射能を決定した。
【0380】
結果は、それぞれに、メチル化されていない及びメチル化されたDNAに対して導かれたINAの特異性を実証する図10及び図11に示されている。
【0381】
INA対PNA対オリゴヌクレオチドの特異性
捕捉ビーズの調製
INA対PNA対オリゴヌクレオチドの特異性を判定するため、以下のプローブを合成した。
INAプローブ 5’アミン−YA TCY GGC YGC GCY AAC YTA Y(配列番号15)
PNAプローブ 5’アミン−ATC GCC GCG CAA CTA Å(配列番号16)
オリゴプローブ 5’アミン−AAT CCC CGA AAT CGC CGC GCA ACT AA(配列番号17)
【0382】
プローブは、GSTP1遺伝子(受入れ番号M24485)のメチル化された配列を認識するように合成された。
I. 清浄な1.5ml入り試験管に対し、10μlのカルボキシレート修飾済みMagnabindTMビーズ(ピアース(Pierce)cat # 21353)を移し、90μlのPBS溶液を磁気ビーズに添加した。
II. 次にビーズを混合し、次に磁化し、上清を廃棄した。ビーズを一回につき100μlのPBS中で2回洗浄し、最終的に90μlの50mMMES緩衝液pH4.5中で再懸濁させた。
III. 1μlの250μMPNAを、試料に加え、試験管をボルテックスに付し、10〜20分間室温で放置した。
IV. その後、10μlの新たに調製された25mg/mlのEDC溶液(ピアース/シグマ(Pierce / Sigma))を次に添加し、試料をボルテックスに付し、室温か又は4℃で最高60分インキュベートさせる。
V. その後試料を磁化し、上清を廃棄した。
VI. 10分間、0.25MのNaOH又は0.5MのトリスpH8.0のいずれかを100μl添加することによってビーズを遮断した。
VII. 次にビーズをPBS溶液で2回洗浄し、最終的に100μlのPBS溶液中で再懸濁させた。
【0383】
合成GSTP1配列に対するビーズ/プローブ複合体のハイブリダイゼーション
複合体110bpオリゴヌクレオチドを、GSTP1遺伝子のメチル化された領域を示すように設計した。
5’AGGGAATTTTTTTTCGCGATGTTTCGGCGCGTTAGTTCGTTGCGTATATTTCGTTGCGGTTTTTTTTTTGGTTTTTTCGGTTAGTTGCGCGGCGATTTCGGGGATTTTAG−3’(配列番号18)
【0384】
合成オリゴを以下の通りに、1/10、1/100及び1/1000でキナーゼ処理した。
オリゴ 2μl
×10緩衝液 2μl
T4キナーゼ 2μl
ガンマP32 4μl
水 20μlまで
【0385】
60分間37℃で反応物を加熱し、次に酵素を5分間95℃で熱変性させた。
【0386】
ハイブリダイゼーション反応
I. 1.5ml入り遠心分離管の中の5μlの磁気ビーズコーティングされたプローブに対して、蒸留水で1:1に希釈された40μlのExpress Hyb溶液(Clontech (クローンテック))を添加した。
II. 5μlのキナーゼ処理済みオリゴを添加し溶液を積極的なピペッティングにより混合して粒子を再懸濁させた。
III. 次に試料を30分間55℃でインキュベートして、標的配列の結合を可能にした。
IV. ビーズを磁化し、上清を除去した。
V. 次に粒子を、1回につき5分間55℃で×2SSC/0.1%SDSで2回洗浄した。
VI. ビーズをさらにもう1回、5分間55℃で×1SSC/0.1%SDSで洗浄した。
VII. 上清を除去し、最後にInsta Gelシンチラント5ml中でビーズを再懸濁させ、チェレンコフプロトコルを用いたシンチレーション計数により放射能を決定した。
【0387】
図12は、GSTP1遺伝子のメチル化された領域に対して設計された合成110bpオリゴとのPNA、INA及びオリゴ試料のハイブリダイゼーション時点で生成されたシグナルを示している。オリゴは、記述されている通りに希釈され、次に標識され、試料に対してハイブリッド形成された。ここでわかるように、INAは、PNAプローブよりも高くないものの類似のシグナル強度を示した。
【0388】
図12は、PNA、INA及びオリゴヌクレオチドが同一のゲノム遺伝子座を検出するために設計された場合に生成される結果を示している。PNA、INA及びオリゴヌクレオチドリガンドは、系列希釈された合成重亜硫酸塩転換された配列とハイブリッド形成された。ハイブリダイゼーションの後、試料を洗浄して、未結合分子を除去し、次に残りの特異的結合済み分子を定量化した。ここでわかるように、INAは、PNAに比べ高い特異性、及び従来のオリゴヌクレオチドのものに比べ15倍以上の検出シグナル強度の増加を示した。
【0389】
固体支持体上のアレイタイプのハイブリダイゼーションを用いたINAリガンド対オリゴヌクレオチドの比較
INAリガンド対オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション試験を行なうため、以下のINAプローブを、次に記した記号のさまざまな遺伝子座に対して合成した。M=メチル化された配列検出、U=メチル化されていない配列検出。
【0390】
【表3】
【0391】
INAリガンドをオリゴと比較するため、同じオリゴヌクレオチド配列を合成した。
【0392】
Qiagen Multiplex PCRキット(キアゲン(Qiagen)P/N206143)を用い、標準的条件の下で10×多重反応を用いて各々の選択されたゲノム領域からPCR産物を生成した。
【0393】
固体支持体に対するINAリガンド及びオリゴヌクレオチドのカップリング
I. Biodyne Cトランスファメンブラン(Pall P/70155A)の8cm×12cmの切片をカットし、0.1NのHClで簡単に洗い流した。
II. メンブランを15分間、調製されたばかりのEDC水溶液(シグマ(Sigma))の中に浸漬した。
III. 水中でメンブランを洗い流し、96ウェルのドットブロット装置内に入れた。
IV. 500mgのINA及びオリゴを、20μlのPBS中に希釈し、適切なウェル内へとピペット取りした。
V. 10分間メンブランを室温に放置し、その後真空を加え、ウェルを乾燥させた。
VI. その後200μlのPBS/0.1%Tween 20でウェル2回洗浄し、2回の洗浄間に真空を加えた。
VII. メンブランをブロッティング装置から除去し、メンブラン上の残りの活性部位を室温で10分間0.1NのNaOHでクエンチングさせた。
VIII. 蒸留水でメンブランを洗浄し、最終的に使用に先立ち30分間空気乾燥させた。
【0394】
P32で標識された多重プローブの調製
Prime−a−gene 標識系(プロメガ (Promega) Cat#U1100)を用いて、放射性プローブを調製した。
PCR産物 2μl
PCRグレードの水 21μl
【0395】
5分間95℃で試料を加熱し、次に氷上で急冷した。
dNTPミックス 6μl
プライマミックス 15μl
P32dATP 5μl
クレノウ 1μl
【0396】
プローブを室温で1時間放置し、次に、メーカーの指示に従って、ウイザードDNAクリーンナップシステムを用いて精製した。
【0397】
コーティングしたメンブランの予備ハイブリダイゼーション/ハイブリダイゼーション
I. 1時間、1分あたり7rpmで回転する55℃のローラーボトル内で100μg/mlのせん断されたサケ精巣DNA(シグマ(Sigma))を含む10mlのExpress Hyb溶液(クローンテック(Clontech))中で、メンブランを予備ハイブリッド形成させた。
II. 5分間プローブを煮沸し、5分間氷上で急冷させ、次にメンブランに添加させた。
III. 一分あたり7rpmで回転するボトルの中で55℃で一晩ハイブリダイゼーションを実施した。
【0398】
メンブランの洗浄
I. その後メンブランを、1回あたり20分間55℃で、×2SSC/0.1%SDSで2回洗浄した。
II. メンブランを20分間50℃で、×1SSC/0.1%SDSでさらに1回洗浄した。
III. 最後に、メンブランを20分間55℃で、×0.1SSC/0.1%SDSでさらに1回洗浄した。
IV. メンブランを、グラッドラップ(glad wrap)で包み、Molecular Dynamics (モレキュラー・ダイナミクス)リン画像形成機に暴露した。
【0399】
INA対従来のオリゴヌクレオチドを用いたハイブリダイゼーション結果は、図13に記されている。上部2列のシグナルは、INAを用いて生成された。下部2列のシグナルは、従来のオリゴヌクレオチドを用いて生成された。図13から、INAを用いて生成されたハイブリダイゼーションシグナルの質の高さが明らかにわかる。
【0400】
PNAに対するINAの利点
INAリガンドは、標準オリゴヌクレオチドプラットフォーム上で合成され得、一方PNAリガンドは、専門化されたペプチド合成機上で合成されなくてはならない。
【0401】
PNAリガンドは、PCR、逆転写、実時間PCR、等温増幅反応、拡張反応といったような標準的分子技術ではプライマとして使用することができない。これとは対照的に、INAリガンドは、以上の全てにおいて使用可能であり、そのため分子生物学にとってはるかに有用な手段となっている。
【0402】
INAリガンドをエクソヌクレアーゼ耐性のものにすることも可能である。
【0403】
INAリガンドは、DNAに選択的に結合するように設計でき、一方PNAリガンドは、DNA及びRNAの両方に結合する。
【0404】
INAリガンドは、同様に内因性蛍光を示しそのため実時間PCRといったような応用分野において有用な分子となっており、一方PNAリガンドはそうではない。
【0405】
INAリガンドは同時に、PNAリガンドに比べた場合、自己親和性が減少している。
【0406】
本発明者らは、PNAリガンドが表面に非特異的に粘着するという意味でむしろ「粘着性」でもあるということを発見した。このことは、2つのINAリガンドを同じ系内で使用した場合に、特に明白である。INAリガンドが、この問題で不利益をこうむっているとは思われない。
【0407】
要約
本発明の方法は、固体支持体に結合された1つのリガンド(好ましくはオリゴヌクレオチド又はINA)及びミクロスフェアにカップリングされた1つのリガンドを用いたあらゆるDNAの検出に応用することができる。天然のオリゴヌクレオチド又はINAを使用することができるが、その特異性、安定性及びハイブリダイゼーション速度のためINAが好まれた。
【0408】
1つの特定の適合においては、本発明の方法は、重亜硫酸塩ナトリウムで処理されたDNA中のメチル化シトシンの存在を区別するために使用することができる。ハイブリダイゼーションの特異性は、重亜硫酸塩と完全に反応しなかった分子(ウラシルに転換されなかった1つ以上のシトシン)を識別し、かつ(シトシンとしてとどまっている)CpG部位におけるメチル化シトシンとシトシンがウラシルに転換されているメチル化されていないCpG部位を区別するために使用することができる。
【0409】
もう1つの適合においては、本発明の方法は、ウラシルへと転換させるために、そのシトシンが完全に重亜硫酸塩試薬と反応しなかったDNAを識別するために使用することができる。
【0410】
重亜硫酸塩での処理は、全てのシトシンをウラシルに転換させること(ただし5−メチルシトシンは転換させない)によってDNAの配列を変更させることから、5メチルシトシンを含有する領域を認識するものの偶然5メチルシトシンを全く有していない同じ配列は認識しないことになる特異的INAを作ることが可能である。
【0411】
本発明の方法は同様に、オリゴヌクレオチド又はINAの一方又は両方の配列が1つの対立遺伝子と完全に整合するもののもう1方の対立遺伝子とは整合しない1つの遺伝子の異なる対立遺伝子の識別にも応用することができる。
【0412】
本発明の方法は、バルクDNA試料のメチル化状態の迅速な検出のための多重アレイチップを考案する上での特殊な用途を含め、以前に記述した通りの数多くの利用分野を有する。検出可能な粒子は同様に、検出及びスクリーニングプロセスをスケールアップし自動化するためにも使用可能である。
【0413】
該方法は、異なるメチル化状態が細胞の病的又は改変された状態において1つの役割を果たすことが発見されてきたその他の数多くの状態及び条件のために利用可能であることがわかるだろう。CpGメチル化による影響を受けたほんのいくつかの遺伝子の例が表3に示されている。本発明は、明らかにこのようなメチル化状態及び数多くのその他の状態の検出又は測定に利用可能である。
【0414】
当業者であれば、広範に記述された通りの本発明の精神又は範囲から逸脱することなく特定の実施形態において示された通りの該発明に対し数多くの変形形態及び/又は修正を加えることができるということを認識することだろう。従って本実施形態は、全ての点で例示的かつ非制限的なものとしてみなされるべきである。
【0415】
【表4】
【図面の簡単な説明】
【0416】
【図1】サンドイッチINAシグナル増幅を示す。
【図2】磁気ビーズ又は検出可能な粒子を用いたサンドイッチINAシグナル増幅技術を示す。
【図3】抗体を用いたメチル化されたDNAの捕捉の概略を示す。
【図4】ミクロスフェアを用いたメチル化されたDNAの検出の概略を示す。
【図5】ミクロスフェアを用いたメチル化されたDNAの検出の概略を示す。
【図6】抗体を受けつけなかったゲノムDNA試料と抗体捕捉試料を比較した場合に提供される濃縮係数の結果を示す。
【図7】抗体捕捉多重リガンドアッセイを用いた非PCRシグナル増幅の結果を示す。結果は、1.LNCaP DNA(メチル化されていないDNA)での抗体濃縮無し、2.抗体濃縮されたDu145 DNA(メチル化されていないDNA)及び3.抗体濃縮されたLNCaP DNA(メチル化されたDNA)を用いて得られたシグナルの結果を示す。
【図8】メチル化されたDNAの検出及びその後の増幅の概略図を示す。
【図9】INA捕捉及びPCR方法のアガロースゲル表現を示す。メチル化されていないゲノムDNA配列に特異的なINAリガンドが、磁気ビーズにカップリングされ、ゲノム重亜硫酸塩処理済みDNAと混合された。ビーズ/DNA複合体を洗浄し、結合した分子を、下流側領域についてのPCR内の鋳型として使用した。レーン;マーカー、1、2、3。レーン1:HepG2DNA(標的部位においてメチル化されているものとして知られている)レーン2:Du145DNA(標的部位においてメチル化されていないものとして知られている)レーン3:BL13DNA(標的部位においてメチル化されていないものとして知られている)。
【図10】メチル化されていないDNAに対して導かれたINAの特異性を示す。グラフは、DNAのメチル化百分率を示す。
【図11】メチル化されたDNAに対して導かれたINAの特異性を示す。グラフは、DNAのメチル化百分率を示す。
【図12】GSTP1遺伝子のメチル化された領域に対し設計された合成110bpオリゴとのPNA、INA及びオリゴ試料のハイブリダイゼーションの時点で生成されたシグナルを示す。オリゴは、記述された通りに希釈されており、次に標識され、試料に対しハイブリッド形成された。ここでわかるように、INAは、PNAリガンドより高くないものの類似のシグナル強度を示した。
【図13】INA対従来のオリゴヌクレオチドを用いたハイブリダイゼーションの結果を示す。上部2列は、INAを用いて生成されたシグナルである。下部2列は、従来のオリゴヌクレオチドを用いて生成されたシグナルである。結果から、INAリガンドを用いて生成されたハイブリダイゼーションシグナルの質がより優れたものであることが明確にわかる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、DNAハイブリダイゼーションアッセイ、及び改良されたオリゴヌクレオチド又はインターカレーティング核酸(INA)アッセイに関する。本発明は、特に、これらのアッセイを用いたDNA内の5−メチルシトシン塩基を含む特定の塩基配列を識別するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特定の核酸分子を検出するためには、数多くの方法が利用可能であった。これらの方法は、概して、短いオリゴヌクレオチド(20塩基以下)から数千塩基の配列に至る範囲の長さを有し得る標的DNAと核酸プローブの間の配列依存性ハイブリダイゼーションに依存している。
【0003】
直接的検出のために、最も一般的には標的DNAがゲル電気泳動によりサイズに基づいて分離され、固体支持体に移されてから、標的配列に相補的なプローブによるハイブリダイゼーションに供される(サザン及びノーザンブロット法)。該プローブは、INAといったような天然の核酸又はその類似体、又はlocked nucleic acid(LNA)、PNA、HNA、ANA及びMNAであり得る。プローブは、直接標識されていてよく(例えば32Pで)、そうでなければ間接的検出方法を使用することもできる。間接的方法は通常ビオチン又はジゴキシゲニンといったような「タグ」のプローブ内への取込みに依存しており、プローブはこのとき、酵素関連性基質転換又は化学発光(chemiluminescence)といった手段によって検出される。
【0004】
広く使用されてきた核酸の直接的検出のためのもう1つの方法は、「サンドイッチ」ハイブリダイゼーションである。この方法では、捕捉プローブが固体支持体にカップリングされ、溶液中の標的DNAは結合済みプローブとハイブリッド形成させられる。結合しない標的DNAは、洗浄され、結合したDNAは、標的配列に対しハイブリッド形成する第2のプローブを用いて検出される。検出は、上述のように直接又は間接的方法を使用することができる。「分岐型DNA」シグナル検出システムは、サンドイッチハイブリダイゼーション原理を用いる一つの例である(Urdea Ms Branched DNA signal amplification, Biotechnology, 12 : 926-928)。
【0005】
核酸配列の直接的検出のために核酸ハイブリダイゼーションを使用する急速な拡大を続ける分野は、DNAマイクロアレイの分野である。(Young RA, Biomedical discovery with DNA arrays, Cell, 102:9-15 (2000); Watson, New tools. A new breed of high tech detectives., Science, 289:850-854(2000))。このプロセスにおいては、オリゴヌクレオチドからcDNAクローンといったようなさらに長い配列までの範囲にあり得る個々の核酸種が、格子パターンで固体支持体に固定された。次に、タグを付けられた又は標識された核酸集団がアレイとハイブリッド形成させられ、アレイ内の各スポットとのハイブリダイゼーションレベルは定量化される。最も一般的には、ハイブリダイゼーションのためには、放射能又は蛍光標識された核酸(例えばcDNA)が使用されたが、その他の検出システムも利用された。
【0006】
核酸配列の集団内から特定の配列を増幅するために最も広く用いられている方法は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)である(Dieffenbach C and Dveksler G eds., PCR Primer: A Laboratory Manual., Cold Spring Harbor Press, Plainview NY)。この増幅方法においては、変性一本鎖DNA上でのDNA合成をプライミングするために、相補的DNA鎖上及び増幅すべきDNA領域のいずれかの末端において長さが一般に15〜30ヌクレオチドであるオリゴヌクレオチドが使用された。熱安定性DNAポリメラーゼを用いた変性プライマハイブリダイゼーション及びDNA鎖合成の連続的サイクルは、プライマ間の配列の指数関数的増幅を可能にする。最初にcDNAコピーを作製するべく逆転写酵素を用いてコピーすることにより、RNA配列を増幅することができる。ゲル電気泳動、標識されたプローブでのハイブリダイゼーション、(例えば酵素結合アッセイによる)その後の同定を可能にするタグを付けられたプライマの使用、標的DNAでのハイブリダイゼーションの時点でシグナルを発生する蛍光によりタグ付けされたプライマの使用(例えばBeacon及びTaqManシステム)を含めたさまざまな手段によって、増幅されたDNAフラグメントを検出することができる。
【0007】
PCRと同様に、さまざまなその他の技術が、特定の配列の検出及び増幅のために開発されてきた。一例としては、リガーゼ連鎖反応がある(Barany F, Genetic disease detection and DNA amplification using cloned thermostable ligase., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88:189-193(1991))。
【0008】
現在、例えば前立腺癌においてGSTP1遺伝子プロモータの中に見出されたような、DNA内のメチル化の変化を検出するために選ばれる方法は、DNAの重亜硫酸塩による修飾の後、このような配列をPCRで増幅する方法に依存していた。重亜硫酸塩で処理されたDNA中では、シトシンはウラシルに変換されるが(ひいては、PCR中にチミンとして増幅され)、メチル化シトシンは反応せずシトシンとしてとどまる。(Frommer M, McDonald LE, Millar DS, Collis CM, Watt F, Grigg GW, Molloy PL and Paul CL, A genomic sequencing protocol which yeilds a positive display of 5-methyl cytosine residues in individual DNA strands, PNAS, 89:1827-1831 (1992); Clark SJ, Harrison J, Paul CL and Frommer M, High sensitivity mapping of methylated cytosines, Nucleic Acids Res., 22:2990-2997(1994))。かくして(重亜硫酸塩処理の後)5−メチルシトシン塩基を含有するDNAは、対応するメチル化されていないDNAと配列的に異なっていることになる。Frommerらによる1992年の結果は、DNA中の5−メチルシトシン残基を配列決定するために重亜硫酸塩を使用する方法の基盤となっている。数年後、このアッセイは、米国特許第5786146号明細書中のCpG島のメチル化状態についてのPCRアッセイの基礎として使用された。プライマは、そのメチル化状態を判定するために問題のゲノムの領域を非選択的に増幅するように選択されてもよいし、又は、中で特定のシトシンがメチル化された配列を選択的に増幅するように設計されてもよい(Herman JG, Graff JR, Myohanen S, Nelkin BD and Baylin SB, Methylation-specific PCR:a novel PCR assay for methylation status of CpG islands, PNAS, 93:9821-9826 (1996))。
【0009】
シトシンメチル化の検出のための代替的方法には、部位特異的DNAメチル化によりその切断が阻止される制限酵素を用いた消化と、それに続くサザンブロット法及び問題の領域についてのハイブリダイゼーションプローブ探査が含まれる。このアプローチは、DNAの有意な割合(一般に10%を超える)がその部位でメチル化され、検出を可能にするのに充分な通常10μgのDNAが存在するような状況に制限される。部位特異的DNAメチル化によりその切断が防止されている制限酵素での消化の後に、制限酵素部位にフランキングするプライマを用いたPCR増幅が行われる。この方法では、より少量のDNAを使用するが、DNAメチル化以外の理由で完全な酵素消化が行われなかった場合には、ことごとく偽陽性シグナルを導く可能性がある。
【0010】
数年前、デオキシリボース−ホスフェート主鎖全体が、N−(2−アミノエチル)グリシン単位からなる構造的に同形性の非荷電ポリアミド主鎖で交換されたペプチド核酸(PNA)が開発された(Ray A and Norden B, Peptide nucleic acid, (PNA):its medical and biotechnical applications and for the future, FASEB J, 14:1041-1060(2000))。
【0011】
PCR増幅を必要としない高感度で特異的なDNA検出のために、PNAリガンドを利用する方法が開発されてきている(国際公開第02/38801号パンフレット)。最近では、固有の有用な特性を有する新しいDNAリガンドであるインターカレーティング核酸(INA)が開発されてきている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
当該発明人らは、INAプローブを用いて問題の核酸を検出するための新しいアッセイを開発した。
【0013】
発明の開示
第1の態様において、本発明は、試料中の標的核酸の存在を検出するための方法であって、
(a) 非メチル化シトシンを修飾する作用物質で核酸を含有する試料を処理するステップ;
(b) 核酸の標的領域に結合する能力を有するインターカレーティング核酸(INA)の形態をとる検出リガンドを、前記処理済み試料に供給し、前記検出リガンドが前記標的核酸に結合するのに充分な時間をおくステップ;及び
(c) 試料中の標的核酸の存在を示すために、試料中の核酸分子に対する検出リガンドの結合を測定するステップ、を含む方法を提供する。
【0014】
第2の態様では、本発明は、試料中の標的核酸のメチル化を検出するための方法であって、
(a) 非メチル化シトシンを修飾する作用物質で核酸を含有する試料を処理するステップ;
(b) 核酸のメチル化シトシンと非メチル化シトシンの識別能を有するインターカレーティング核酸(INA)の形態をとる検出リガンドを処理済み試料に提供し、標的核酸に対し検出リガンドが結合するのに充分な時間をおくステップ;及び
(c) 標的核酸のメチル化の程度を示す、試料中の核酸に対する検出リガンドの結合を検出するステップ;を含む方法、を提供する。
【0015】
第3の態様では、本発明は、試料中の標的核酸の存在を検出するための方法であって、
(a) 非メチル化シトシンを修飾する作用物質で核酸を含有する試料を処理するステップ;
(b) 標的核酸配列の第1の部分を認識する能力を有する捕捉リガンドが結合された支持体を提供するステップ;
(c) 処理済みの試料と支持体を接触させ、核酸が捕捉リガンドに結合するのに十分な時間おいて、試料中の標的核酸が捕捉リガンドを介して支持体に結合できるようにするステップ;
(d) 標的核酸配列の第2の部分を認識する能力を有する検出リガンドと支持体を接触させ、支持体に結合した標的核酸に検出リガンドが結合するのに充分な時間をおくステップ;
(e) 試料中の標的核酸の存在を判定するために支持体に結合した核酸に対する検出リガンドの結合を測定するステップ;を含み、
ここで捕捉リガンド又は検出リガンドのうちの少なくとも1つがインターカレーティング核酸(INA)の形態をとる方法を提供する。
【0016】
第4の態様では、本発明は、試料中の標的核酸のメチル化の程度を評価するための方法であって、
(a) 非メチル化シトシンを修飾する作用物質で核酸を含有する試料を処理するステップ;
(b) 標的核酸配列の第1の部分を認識する能力を有する捕捉リガンドが結合された支持体を提供するステップ;
(c) 処理済みの試料と支持体を接触させ、DNAが捕捉リガンドに結合するのに十分な時間おいて、試料中の標的核酸が捕捉リガンドを介して支持体に結合できるようにするステップ;
(d) 支持体と、DNAのメチル化シトシンと非メチル化シトシンを区別する能力を有する検出リガンドとを接触させ、支持体上で検出リガンドが任意の標的核酸に結合できるようにするステップ;及び
(e) 結合度又は結合量が標的核酸のメチル化の程度を示すような形で支持体に対する検出リガンドの結合を検出するステップ、を含み、該捕捉リガンド又は検出リガンドのうちの少なくとも1つがインターカレーティング核酸(INA)の形態をとる方法を提供する。
【0017】
第5の態様では、本発明は、メチル化されたCpG又はCpNpG含有DNAを検出するための方法であって、
(a) DNA内で非メチル化シトシンをウラシルへと修飾するために重亜硫酸塩でDNAを含有する試料を処理するステップ;
(b) DNAのメチル化シトシンと非メチル化シトシンの識別能を有する検出INAリガンドを、処理済み試料に供給するステップ;及び
(c) 検出INAリガンドの結合の存在又は非存在に基づいてメチル化されたDNAを検出するステップ;を含む方法を提供する。
【0018】
第6の態様では、本発明は、試料中の標的DNAのメチル化の程度を評価するための方法であって、
(a) 非メチル化シトシンをウラシルへと修飾するために重亜硫酸塩でDNAを含有する試料を処理するステップ;
(b) 標的DNA配列の第1の部分を認識する能力を有するINA、PNA又はオリゴヌクレオチドリガンドの形態を有する捕捉リガンドが結合させた、磁気ビーズ、多重ウェルマイクロタイタープレート又は造形粒子の形態の固体支持体を供給するステップ;
(c) 支持体と標的DNAを含有する疑いのある処理済み試料とを接触させ、試料中の標的DNAが捕捉リガンドを介して固体支持体に結合できるようにするステップ;
(d) DNAのメチル化シトシンと非メチル化シトシンの識別能を有するINA、PNA又はオリゴヌクレオチドリガンドの形態をとる検出リガンドと、支持体を接触させるステップ;及び
(e) 結合した検出リガンドの量を測定することにより支持体に結合したDNAのメチル化の程度を判定するステップ、を含み、捕捉リガンド又は検出リガンドのうちの少なくとも1つがINAである方法を提供している。
【0019】
1つの好ましい形態では、捕捉リガンドはINAである。もう1つの好ましい形態では、検出リガンドはINAである。
【0020】
第7の態様では、本発明は、標的核酸のメチル化をアッセイする方法において、非メチル化シトシンを修飾して、メチル化シトシンを修飾しない作用物質、及び
核酸のメチル化シトシンと非メチル化シトシンの識別能を有するINAプローブの形態をとる1つ以上のリガンド、の使用に関する。
【0021】
第8の態様では、本発明は、非メチル化シトシンを修飾する作用物質で処理された核酸を分析するためのキットであって、DNAのメチル化シトシンと非メチル化シトシンの識別能を有する少なくとも1つのINAリガンドを含むキットを提供する。
【0022】
好ましくは、キットは、固体支持体に固定化された1つ以上のINAリガンドを含んでいる。該キットは同様に、処理済みDNAを増幅するためのプライマを含んでいてもよい。
【0023】
核酸は、真核生物、原核生物及びウイルスのゲノム、ならびにミトコンドリア核酸、その他の細胞小器官内に見られる核酸及び細胞外のものである核酸を含んでもよく、これらからコピーされたものであってもよい。本書で定義されている通りの核酸は同様に、インターカレーティング核酸(INA)、アルトリトール核酸(ANA)、シクロヘキサニル核酸(CNA)、ペプチド核酸(PNA)、ロック核酸(LNA)、ヘキシトール核酸(HNA)、マンニトール核酸(MNA)及びこれらのキメラの組合せといったような、DNA及びRNAの両方の形態及びその天然又は人工的誘導体をも含み得る。
【0024】
核酸は、細菌、ウイルス、ウイロイド又は真核生物又はプリオンに感染した病気の生物又は正常な生物から誘導され得る。該核酸は同様に、異なる種から又は人工的に合成された供給源からの核酸を取込んだ修飾された(遺伝子導入型)生物にも(修飾された生物が、生殖細胞系、過渡的又は体細胞トランスフェクションプロセスのいずれから作られているかとは無関係に)由来し得る。該核酸は、(ステント、パッチ、ペースメーカーなどといった)機械的、電子的又は化学的放出型である、移植又は固定されたデバイスを伴う生物の細胞、組織又は器官に由来していてよい。該核酸は、接合、人工受精、胚幹細胞方法又は核移入、(体細胞又は生殖細胞系核からの)又は細胞質、核又は膜抽出物による細胞又は核の修飾によるクローニングという標準的でない方法;又は(決定転換及び分化転換プロセスが関与する)外来性作用物質による細胞の修飾、又は同じ又は異なる種からのミトコンドリア又はその他の細胞小器官の投入又は修飾、又はその組合せから発生する生体に由来し得る。該核酸は、自己移植片、同種移植片又は異種移植片、組織又は器官移植片又は(例えばモデル生物インターベンショナルカーディオロジーの場合のような)他の生物内にヒト細胞が移植された組織に由来してもよい。核酸は(in vivoかエクスビボのいずれかでの)ノック−アウト、ノック−イン又はノック−ダウン方法、又は例えばRNAi、リボザイム、アプタマー、トランスポゾン活性化、薬物又は(Trojanペプチドを含むもののこれに制限されるわけではない)PNA、INA、ANA、MNA、LNA、HNA、CNA分子又はその他の核酸ベースの接合体に起因する擾乱といったような小分子方法によって、過渡的又は永久的にゲノム又はトランスクリプトームが改変されるようなあらゆる方法によって、産生又は修飾された生物に由来してもよい。該核酸は、受精から死後48時間までの人間の全てのライフステージ由来、又はあらゆる(正常又は子宮外)妊娠段階及び、胚材料又は胎児材料由来、ならびに染色体不均衡の又は間性固体といった異なる自己細胞集団のキメラ又は2倍体、異数性又は分節的異数性細胞集団のキメラである個体又は生物由来であってよい。核酸は、上述の供給源のいずれか又は全てに由来する一次又は培養細胞系統に由来するか又は;組織学的標本、組織及び器官といった貯蔵された材料;ならびにヒト組織から単離された細胞(及び細胞系統)及びその誘導体、同種移植片、異種移植片ならびに、凍結された又は(その他の形で貯蔵された;天然又は人工的に保存された又はミイラにされた)切開された又は切除された供給源、顕微鏡スライドといった供給源に由来し得る試料、ブロック又は液体培地内に包埋された試料又は合成又は天然の表面又は液体から抽出された試料に由来する可能性がある。
【0025】
好ましくは、核酸はDNA、より好ましくは動物又はヒトからのゲノムDNAである。
【0026】
修飾性作用物質は好ましくは、重亜硫酸塩、酢酸塩又はクエン酸塩から選択される。より好ましくは、この作用物質は、水の存在下でシトシンをウラシルへと修飾する試薬である重亜硫酸ナトリウムである。
【0027】
重亜硫酸ナトリウム(NaHSO3)は、脱アミノ化を起こす可能性がありかつ水の存在下で亜硫酸ウラシルを発生させるスルホン化シトシン反応中間体を形成するべくシトシンの5,6二重結合と容易に反応する。必要であれば、亜硫酸塩基を弱アルカリ性条件下で除去してウラシルを形成させることができる。かくして、潜在的に全てのシトシンはウラシルに転換されることになる。しかしながら、メチル化による保護によって、いかなるメチル化シトシンも修飾用試薬により転換され得ない。
【0028】
インターカレーティング核酸(INA)は、配列特異性をもつ核酸(DNA及びRNA)に対しハイブリッド形成できる、天然に発生するものでないポリヌクレオチドである。INAは、複数の望ましい特性を示すことから、プローブベースのハイブリダイゼーションアッセイ内で核酸プローブに対する代替案/代用品候補である。INAは、核酸に対しハイブリッド形成して、対応する天然に発生する核酸/核酸複合体よりも熱力学的に安定したハイブリッドを形成する重合体である。これらは、ペプチド又は核酸を消化させるものとして知られている酵素のための基質ではない。従って、INAは、天然に発生する核酸フラグメントに比べ生体試料中でより安定しかつより長い保存寿命を有するはずである。イオン強度に高く依存している核酸ハイブリダイゼーションとは異なり、核酸とINAのハイブリダイゼーションは、イオン強度からかなり独立しており、イオン強度の低い、天然に発生する核酸と核酸のハイブリダイゼーションには著しく不利に作用する条件下でも有利である。INAの結合強度は、分子内に挿入された挿入基(intercalating groups)の数、ならびに二本鎖構造内で特異的に積重ねられた塩基間の水素結合からの通常の相互作用に左右される。配列の識別は、DNAを認識するDNAよりも、DNAを認識するINAの方が、効率が良い。
【0029】
好ましくは、INAは(S)−1−O−(4,4’−ジメトキシトリフェニルメチル)−3−O−(1−ピレニルメチル)−グリセロールのホスホラミダイトである。
【0030】
INAは、市販のフォーマットに標準的オリゴヌクレオチド合成方法を応用することによって合成される。INA及びその合成の完全な定義は、本発明に参照により援用されている国際公開第03/051901号パンフレット、国際公開第03/052132号パンフレット、国際公開第03/052133号パンフレット及び国際公開第03/052134号パンフレット(Unest A/S)の中に見出すことができる。
【0031】
INAプローブと標準的核酸プローブの間には、実際数多くの差異が存在する。これらの差異は、生物学的、構造的及び物理化学差異に内訳すると便利である。以上及び以下で論述するように、これらの生物学的、構造的及び物理化学的差異は、核酸が標準的に利用されてきた応用分野でINAプローブを使用することを試みた場合に、予測できない結果を導く可能性がある。この異なる組成物の非等価性は、化学技術では往々にして見られることである。
【0032】
生物学的差異に関しては、核酸は、遺伝子伝達及び発現の作用物質として生きた種の生において中心的役割を果たす生物学的材料である。そのin vivo特性は、かなり良く理解されている。しかしながらINAは、化学者の頭の中で設計され合成有機化学を用いて作られた、近年開発された完全に人工的な分子である。それには、既知の生物学的機能は全く無い。
【0033】
構造的にも、INAは核酸とは格段に異なっている。両方に共通の核塩基(A、C、G、T及びU)を利用し得るものの、これらの分子の組成は構造的に多様である。RNA、DNA、及びINAの主鎖は、反復ホスホジエステルリボース及び2−デオキシリボース単位からなる。INAは、重合体に対しリンカー分子を介して固定した1つ以上の大型で平坦な分子を有するという点でDNA又はRNAとは異なっている。平坦な分子は、二本鎖構造内でINAとは反対側の相補的DNA鎖内の塩基の間に介在する。
【0034】
INAと、DNA又はRNAとの物理/化学的差異も同様に実質的なものである。INAは、核酸プローブが同じ標的配列に結合する以上に急速に相補的DNAに結合する。DNA又はRNAフラグメントとは異なり、INAは、挿入基か末端位置にあるのでないかぎり、RNAに対しほとんど結合しない。挿入基と相補的DNA鎖上の塩基の間の強い相互作用のため、INA/DNA複合体の安定性は、類似のDNA/DNA又はRNA/DNA複合体のものよりも高い。
【0035】
DNA又はRNAフラグメント又はPNAといったその他のDNAとは異なり、INAは、自己凝集又は結合特性を示さない。
【0036】
要するに、INAは配列特異性をもつ核酸にハイブリッド形成することから、これは、プローブベースのアッセイを開発するための有用な候補であり、キット及びスクリーニングアッセイのために特に適している。しかしながら、INAプローブは核酸プローブの等価物ではない。従って、プローブベースのアッセイの特異性、感度及び信頼性を改善し得るあらゆる方法、キット又は組成物が、DNA含有試料の検出、分析及び定量において有用となるだろう。INAは、この目的に必要な特性を有している。
【0037】
ステップ(b)では、一方のリガンドが1つ以上のメチル化シトシンを含有する核酸領域に結合する能力をもち、もう一方のリガンドが、処理(ステップ(a))前にいかなるメチル化シトシンも含有していなかった核酸の対応する領域に結合する能力を有する、2つの検出リガンドを使用することができる。試料は標的核酸コピーを数多く含有しうることから、往々にしてコピーは異なるメチル化量を有する。従って、2つのリガンドの結合比は、試料中のその核酸標的のメチル化度に正比例することになる。2つのリガンドを、一緒に1つの試験において添加することも、又別々のデュプリケート試験において添加することもできる。各々のリガンドは、1つの試験内で同時に又は別々に検出され得る独自のマーカーを含むこともできるし、又同じマーカーを有し別々の試験内で個別に検出することもできる。
【0038】
好ましくは、捕捉リガンドは、INAプローブ、PNAプローブ、LNAプローブ、HNAプローブ、ANAプローブ、MNAプローブ、CNAプローブ、オリゴヌクレオチド、修飾されたオリゴヌクレオチド、一本鎖DNA、RNA、アプタマー、抗体、タンパク質、ペプチド、その組合せ又はそのキメラ体から選択される。
【0039】
より好ましくは、捕捉リガンドは、INAプローブ、PNAプローブ又はオリゴヌクレオチドプローブである。さらに一層好ましくは、捕捉リガンドはINAプローブである。
【0040】
支持体は、プラスチック材料、蛍光ビーズ、磁気ビーズ、造形粒子、プレート、マイクロタイタープレート、合成又は天然のメンブラン、ラテックスビーズ、ポリスチレン、カラムサポート、ガラスビーズ又はスライド、ナノチューブ、ファイバ、又はその他の有機及び無機支持体といったようなあらゆる適切な支持体であり得る。好ましくは、支持体は、磁気ビーズ、蛍光ビーズ、造形粒子、又は1つ以上のウェルを伴うマイクロタイタープレートである。
【0041】
固体基質は、標準的にはガラス又は重合体であり、最も一般的に用いられる重合体は、セルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル又はポリプロピレンである。固体支持体は、チューブ、ビーズ、ディスク又はマイクロプレート或いはアッセイを実施するのに適したその他のあらゆる表面の形をしていてよい。結合プロセスは、当該技術分野において周知であり、一般的には不溶性担体に対し分子を架橋共有結合させること又は物理的に吸着させることからなる。
【0042】
好ましい形態では、ステップ(b)は固体支持体上に整列した複数の捕捉リガンドを含む。該アレイは、その上に同じ標的核酸を捕捉するべく同じリガンドの多数のコピーを含むことができ、そうでなければアレイ上に複数の標的核酸分子を捕捉するべく異なる核酸のターゲットとなる複数の異なるリガンドを含むこともできる。標準的には、アレイは約10〜200,000の捕捉リガンドを含む。しかしながら、アレイは任意の数の捕捉リガンドを有することができるということがわかるだろう。
【0043】
1つの形態においては、捕捉オリゴヌクレオチドプローブ、INAプローブ又は捕捉PNAプローブを1つのアレイ上に配置し、核酸のメチル化された状態を測定するために、重亜硫酸塩で処理された核酸の捕捉に使用することができる。アレイ技術は周知であり、未処理試料内の遺伝子又はヌクレオチド配列の存在を検出するために使用されてきた。しかしながら、本発明は、沢山の異なる核酸供給源のメチル化状態についての貴重な情報を提供するためにアレイ技術の有用性を拡張することができる。
【0044】
好ましい形態では、試料は、幹細胞、血液、尿、糞、精液、脳脊髄液;脳、結腸、泌尿生殖器、肺、腎、造血器、乳房、胸腺、精巣、卵巣又は子宮といった細胞又は組織;環境試料;細菌、ウイルス、真菌、原生動物、ウイロイドなどを含めた微生物といったあらゆる生体試料であり得る。幹細胞には、始原細胞を含む細胞集団が含まれる。これは又、胚細胞集団にもあてはまり、同じく体細胞と融合して特定の表現型を採用する能力を有するハイブリッド細胞を形成する幹細胞をも内含する。
【0045】
好ましくは、修飾性作用物質は、非メチル化シトシンを修飾するもののメチル化シトシンを修飾しないという能力を有する。該作用物質は好ましくは、重亜硫酸塩、酢酸塩及びクエン酸塩から選択される。好ましくは、該作用物質は、重亜硫酸ナトリウムであり、シトシンはウラシルへと修飾される。
【0046】
本書で使用する「修飾する」という語は、非メチル化シトシンとメチル化シトシンを区別することになる1つの非メチル化シトシンからもう1つのヌクレオチドへの転換を意味する。好ましくは、該作用物質は、非メチル化シトシンをウラシルへと修飾する。好ましくは、非メチル化シトシンを修飾するために用いられる作用物質は、重亜硫酸ナトリウムである。非メチル化シトシンを類似の要領で修飾するもののメチル化シトシンを修飾しないその他の作用物質も同様に、本発明の方法において使用可能である。例としては重亜硫酸塩、酢酸塩又はクエン酸塩が含まれるが、これらに制限されるわけではない。好ましくは、該作用物質は、水の存在下でシトシンをウラシルに修飾する試薬である重亜硫酸ナトリウムである。
【0047】
重亜硫酸ナトリウム(NaHSO3)は、5,6−シトシン二重結合と容易に反応するがメチル化シトシンとはほとんど反応しない。シトシンは重亜硫酸塩イオンと反応して、脱アミノ化を受ける可能性のあるスルホン化シトシン反応中間体を形成し、スルホン化ウラシルを発生させる。スルホン酸塩基は、アルカリ性条件下で除去され、ウラシルを結果として形成することができる。かくして、シトシンを含有する配列又はウラシルを含有する対応する配列を認識することになるリガンドを調製できるような形でメチル化シトシンが転換から保護されている一方で、全ての非メチル化シトシンがウラシルに転換されることになる。2つのプローブの結合比は、一定の与えられた核酸内のメチル化度の精確な尺度を提供することができる。
【0048】
重要なことに、数多くの状況において、必要な情報を得るために核酸を増幅させる必要は全くなくなり、かくして潜在的誤差を克服し、自動化に従順な、より高速でかつより単純なアッセイが結果としてもたらされる。処理に先立つ捕捉又は核酸選択の後の増幅も、本発明には同じく可能である。
【0049】
好ましい形態では、検出リガンドは、NがA、T、C又はGという考えられる4つの塩基のうちのいずれか1つを表わす場合に、DNAのCpG又はCpNpG含有領域に向けられている。好ましくは、DNAのCpG又はCpNpG含有領域は、化学物質、毒素、薬物、放射線、合成又は天然化合物及び微生物又はその他の感染性物質例えばウイルス、細菌、真菌及びプリオンなどを含めた環境因子により活性が改変されている、プロモータ、エンハンサ、腫瘍遺伝子、レトロエレメント、可動(mobile)又は可動化可能(mobilisable)な配列又はその他の調節要素を含む任意の調節要素又は領域のエンハンサ又は遺伝子の調節領域の中にある。例えば、プロモータ又は調節要素は、腫瘍抑制遺伝子プロモータ、腫瘍遺伝子又は、加齢といったような変化する正常状態又は病的状態に関与する1つ以上の遺伝子を抑制するか又はこれに影響を及ぼす可能性のあるその他のあらゆる要素又は領域であり得る。
【0050】
標本中にDNAのメチル化されたCpG又はCpNpG含有領域が存在することは、特に細胞プログラミングに関しての細胞の機能的変化を表わす可能性がある。該変化は、増殖障害でもありうる。これには、低悪性度星状細胞腫、未分化悪性星状細胞腫、グリア芽腫、髄芽細胞腫、結腸癌、肺癌、腎臓癌、白血病、乳癌、前立腺癌、子宮内膜癌及び神経芽細胞腫、又は幹細胞集団の正常な細胞分裂、分化又は代謝/異化の障害が含まれる可能性がある。
【0051】
核酸修飾性作用物質の反応を補助するために、尿素、メトキシアミン及びそらの混合物といった任意の添加物を加えてもよい。
【0052】
ステップ(b)は標準的に、該方法のその後のステップ内でメチル化について分析されることになる問題の核酸を捕捉するために使用される。かくして、ステップ(b)は、問題の核酸の捕捉及び濃縮を可能にする。好ましくは、1つ以上のINAプローブがステップ(b)で使用される。
【0053】
1つの好ましい形態においては、ステップ(b)は、固体支持体上に整列された複数の捕捉リガンドを含む。該アレイは、その後の試験のためアレイ上の同じ標的核酸を捕捉するべく同じリガンドの多数のコピーを含有し得る。代替的には、該アレイは、その後の試験のためアレイ上の数多くの異なる標的DNA試料を捕捉するべく異なるDNA分子をターゲットとする複数の異なる捕捉リガンドを含有し得る。好ましい形態では、捕捉リガンドは、多数のアッセイを実施し得るようにマイクロタイタープレートのウェルに結合させられている。
【0054】
ステップ(d)では、1つのリガンドが、1つ以上のメチル化シトシンを含む核酸領域に結合する能力をもち、第2のリガンドが、メチル化シトシンを全く含まない対応する核酸領域に結合する能力を有する、2つの検出リガンドを使用することができる。試料は、異なるメチル化量を有する、1つの標的核酸の数多くのコピーを含有し得る。従って、2つのリガンドの結合比は、該試料内のその核酸標的のメチル化度に正比例することになる。2つのリガンドは1つの試験で一緒に添加することもできるし、そうでなければ別々のデュプリケート試験で添加することもできる。各々のリガンドは、1つの試験内で同時に又は別々に検出され得る独自のマーカーを有することもできるし、又同じマーカーを有し別々の試験内で個別に検出することもできる。
【0055】
標的核酸に対する検出リガンドの結合を検出するためには、好ましくは、リガンドはそれに付された検出可能な標識を有する。結合した標識の存在は、リガンドの結合の程度を表わす。適切な標識としては、化学ルミネセンス、蛍光、放射能、酵素、ハプテン及びデンドリマーが含まれるが、これらに制限されるわけではない。
【0056】
重亜硫酸塩修飾の後、試料のCpG又はCpNpG含有DNAを検出するために本発明で使用される検出リガンドは、未処理DNA、メチル化されたDNA、及びメチル化されていないDNAを特異的に区別することができる。メチル化されていないDNAのためのオリゴヌクレオチド又はPNA又はINAプローブの形態の検出リガンドは、好ましくは、メチル化されたDNA内に保持されたCとそれを区別するべく3’CpG又はCpNpG対内にT又はAを有する。
【0057】
本発明のプローブは、テスト対象のゲノム遺伝子座の一本の鎖に対し「実質的に」相補的であり適切なG又はCヌクレオチドを含むように設計することができる。このことはすなわち、結合を可能にする条件下で、プライマが、それぞれの問題の領域とハイブリッド形成するのに充分な相補性を有するべきである、ということを意味している。換言すると、プローブは、好ましくは、5’及び3’フランキング配列とハイブリッド形成するのに充分な相補性を有するべきである。
【0058】
本発明のINAプローブは、当該技術分野において既知の任意の適切な方法を用いて調製可能である。好ましくは、プローブは、本発明に参照により援用されている国際公開第03/051901号パンフレット、国際公開第03/052132号パンフレット、国際公開第03/052133号パンフレット及び国際公開第03/052134号パンフレット(Unest A/S)の教示に従って調製される。
【0059】
標的核酸のメチル化状態に関係する本発明に従った方法は、それが標的領域(通常はCpG又はCpNpG)を含む特定の核酸配列を含んでいる又は含んでいるとされることを条件として、出発材料として、精製済み又は未精製形態での任意の核酸試料を使用することができる。1つの好ましい形態では、未増幅試料が、本発明に従った方法において使用される。
【0060】
検出リガンドによる捕捉に先立ち増幅濃縮ステップにおいて、INA混合物又は特異的INA分子を使用することができる。重亜硫酸塩で処理された核酸の特異的又は無作為増幅のために、単一の又は多数のINAを使用することができるだろう。
【0061】
問題の核酸分子は、本発明に従った方法のステップ(a)に先立って選択又は濃縮可能である。濃縮又は選択ステップには、音波処理及びせん断、酵素消化、酵素処理、制限消化、ヌクレアーゼ処理、DNase処理、濃縮、抗体捕捉を含めた物理的方法、酸性又は塩基性消化を含めた化学的方法及びそれらの組合せが含まれるが、これらに制限されるわけではない。例えば、5−メチルシトシンを濃縮する又はメチル化度の高いゲノムDNAといった核酸を捕捉するために、5−メチルシトシンに向けられた抗体を使用することができる。より管理しやすいサイズの核酸へと分割するべく任意の適切な物理的又は酵素的手段による分割を受けたゲノムDNAから核酸を誘導することができる。
【0062】
メチル化CpG又はCpNpGの検出に用いられる核酸含有標本は、任意の供給源に由来するものであってよく、Maniatisら(Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, N.Y., pp280, 281, 1982)によって記述されているものなど、さまざまな技術によって抽出され得る。
【0063】
試料中の核酸が二本鎖を含有する場合には、修飾されないうちに核酸の鎖を分離する必要がある。鎖の分離は、別々のステップとしてか又は化学的処理と同時に実施できる。この鎖分離は、物理的、化学的又は酵素的手段を含むさまざまな適切な変性条件を用いて達成され得、「変性」という語はこのような手段全てを内含する。核酸鎖を分離する1つの物理的方法には、変性されるまで核酸を加熱することが含まれる。標準的な熱変性には、DNAについて約1〜10分の範囲の時間、約80℃〜105℃の範囲内の温度が関与する。鎖分離は、同様に、ヘリカーゼとして知られる酵素クラスからの酵素によって、又はヘリカーゼ活性を有しリボATPの存在下でDNAを変性するものとして知られている酵素RecAによっても誘発され得る。ヘリカーゼでのDNAの鎖分離に適した反応条件は、Kuhn Hoffmann-Berling (CSH-Quantitative Biology, 43:63, 1978)によって記述されており、RecAを用いるための技術は、C. Radding (Ann.Rev.Genetics, 16:405-437, 1982)の中で再考された。
【0064】
検出可能な標識は、化学発光、蛍光又は放射性標識であってよく、そうでなければ、ミクロスフェア又はナノ結晶の形の第2の標識又はマーカーを含有してもよい。蛍光又は放射性ミクロスフェア又はナノ結晶は、捕捉リガンド又は検出リガンドに共有結合され得る。
【0065】
好ましくは、標的核酸に対するハイブリダイゼーションの特異性を用いて、メチル化シトシンと非メチル化シトシンを識別する。
【0066】
一部は一本鎖DNAに選択的である、核酸に結合し、かつその励起及び発光波長が異なる適切な数多くの蛍光色素が知られていた。検出システムは同様に、DNAに選択的に結合することになりかつ酵素アッセイを用いて検出し得る正荷電領域を担持する酵素、又は捕捉されたDNAに対し選択的に結合する正荷電放射性分子でもあり得る。適切な物質は、同様に、コア/シェルCdSe/ZrS半導体ナノ結晶でもあり得る(Gerion et al 2002 J Am Chem Soc: 24:7070-7074)。
【0067】
この方法におけるリガンドの1つとしてINAプローブを使用することには、オリゴヌクレオチド又はPNAプローブの使用に比べて非常に有意な利点がある。INA結合は、オリゴヌクレオチド又はPNAといったその他のリガンドに比べて速く平衡に達し、より大きい配列特異性を示し、かつINAが1つ以上の挿入基を担持することから。これらはより高い結合係数で標的DNA分子を結合させる。結合特性は、INAに付加するべく挿入基の異なる数を選択することによって修飾可能である。
【0068】
本発明は、直接検出方法を使用できることから、該方法は、試料内での標的核酸の量の真正かつ正確な尺度を提供できる。該方法は、その方法において一般に使用される酵素が異なる配列の増幅速度差を通して系統的偏向を導入する可能性のある場合に、シグナル増幅用としてPCRといったようなプロセスに依存している先行技術の方法に固有の潜在的偏向によって混乱させられることはない。
【0069】
蛍光又は放射能を検出又は測定するのに利用可能な数多くの検出システム及び計器が存在する。計装における改良及び進歩が数多くのメーカーにより行なわれている。本発明のためには、数多くの異なる測定計器を使用できることがわかるだろう。例えば、多光子検出(Multi Photon Detection)は、超微量の選択された放射性同位元素を検出するための独自仕様のシステムである。これは既存の方法より1000倍高い感度をもつ。これは、ゼプトモル量の生体材料の定量で、ヨウ素125原子1000個の感度を有する。これには、1ピコキュリー未満の同位元素しか必要ではなく、この値は、コップ1杯の水中の100分の1の放射能である。MPD計器ファミリーは、すでに、1つの試料中の放射能を測定するために存在している。これらは、96ウェル、384ウェル及びそれ以上用に構成されている計器からなる。MPDは、オペレータが選択した放射性同位元素と相容性ある光子のみを選択的に計数するためのコンピュータ制御式電子部品と接続された同時多重チャンネル光子検出を使用する。数多くの異なる同位元素を使用できることから、これは多色システムである。MPDイメージャシステムは、ホスホイメージャに比べ少なくとも100倍高い感度をもつ。かかる計装は、リガンド又は支持体が放射性となっている本発明の検出部において特に適したものとなる。
【0070】
結合された捕捉リガンド又は検出リガンドを含むビーズは、蛍光を測定するセルソーターで処理又は測定することができる。実施例又は適切な計器には、フローサイトメータ及びその改良型が含まれる。
【0071】
本発明に従った方法は、特に数多くの試料を処理するためのスケールアップ及び自動化に非常に適している。
【0072】
上述のことに関わらず、記述された方法は、検出用として充分な材料を提供するために制限的な量のDNAを増幅する必要がある場合に、かかる増幅方法と併用することができる。さらに、メチル化された又はメチル化されていない核酸に対し導かれたINAリガンドで捕捉されたDNAを選択的に増幅するために、PCRを使用することができる。
【0073】
メチル化されたDNA:
本発明で詳述されている通りの特定の適合において、重亜硫酸ナトリウムで処理されたDNA中のメチル化シトシンの存在を区別するために該方法を用いることができる。シトシンは、メチルシトシンが未反応状態にとどまっている間にウラシルへと転換されていることから、メチル化された分子及びメチル化されていない分子に由来する重亜硫酸塩処理済みDNAの配列は異なっている。選択された標的領域に対し特異的INAリガンド(長さ4〜100残基、好ましくは長さ20±10残基)を選択することにより、ハイブリダイゼーションの特異性を用いて、CpG又はCpNpG部位内になかったシトシンが完全に反応しウラシルに転換されている分子のみが査定されることを確実にしながら、(シトシンとしてとどまっている)CpG又はCpNpG部位にあるメチル化シトシンと、シトシンがウラシルに転換されているメチル化されていないCpG又はCpNpG部位を区別することができる。
【0074】
その他の部位にあるメチル化シトシンも同様にして検出可能である。重亜硫酸塩と完全に反応しなかった(1つ以上のシトシンがウラシルに転換されていない)分子の存在を同定するための対照として、適切なINAプローブを用いることができる。しかしながら、DNAのメチル化状態を識別できるその他のリガンドを類似の要領で使用できることがわかるだろう。
【0075】
該方法は、多重ウェルプレート、マイクロアレイ、光ファイバアレイ及び懸濁粒子を含めたさまざまなフォーマットでの使用に適している。アレイフォーマットでの使用のための特異的リガンドの適切な選択により、多数の標的領域内での個々のシトシンのメチル化状態を同時に判定することができる。
【0076】
多型現象/突然変異及び後成的突然変異の検出:
本発明に従った方法は捕捉リガンド及び/又は検出リガンドの配列が1つの対立遺伝子と整合するがもう1つの対立遺伝子とは不整合となる、1つの遺伝子の異なる対立遺伝子の識別に対し適用可能である。
【0077】
DNA定量化:
本発明に従った方法を使用することにより、特定の領域において1つの配列をもつ分子に対してもう1つの配列をもつ分子の割合をDNA集合内部で直接決定することが可能である。これは、異なる色の蛍光色素が装てんされたミクロスフェア、ナノ結晶又は放射性分子、粒子及びマイクロタイタープレートといった支持体に対し、配列の代替形態を表わすリガンドをカップリングすることによって行なうことができる。かかる配列差は、遺伝子のもとの塩基配列の差、又はもとのDNA内のメチル化の差に起因していた重亜硫酸塩処理されたDNAの塩基配列の差であり得る。
【0078】
細胞定量化:
該方法は、ゲノム内の特定の部位において塩基配列が異なっている(癌細胞及び正常な細胞内といった)1つの集団内の細胞比を決定するために応用できる。
【0079】
変動:
該方法は、多重ウェルプレート、マイクロアレイ、光ファイバアレイ及び懸濁粒子を含むさまざまなフォーマットにおける使用に適している。アレイフォーマットで使用するための特異的INAプローブの適切な選択により、例えば多重標的領域内の個々のシトシンのメチル化状態の決定など、異なるDNA配列の存在の同時決定を可能にすることができる。
【0080】
本明細書全体を通して、前後関係から相反する必要性が生じた場合を除き、「含む(comprise)」という語又は「含む(comprises)」又は「含む(comprising)」といった活用形は、言及された要素、整数又はステップ、又は要素、整数又はステップ群の内含を意味するもののその他のあらゆる要素、整数又はステップ、又は要素、整数又はステップ群の除外を意味しないものと理解される。
【0081】
本明細書中に含まれた文書、行為、材料、装置、物品などについての論述は全て、単に本発明の前後関係を提供するためのものにすぎない。これは、これらのもののいずれか又は全てが先行技術の基礎の一部を成す又は本出願の各請求の範囲の優先年月日以前にオーストラリアに存在した通りの本発明に関連する分野における一般的な共通の知識であったということを認知するものとしてとらえられるべきではない。
【0082】
本発明をより明確に理解するため、以下、図面及び実施例を参考にしながら、好ましい形態について記述する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0083】
発明を実施する方法
定義
エピジェネティクス/エピゲノミクス/メチロミクス(Methylomics)
受精から死後48時間に至るまでの全ての細胞、組織及び器官内及びヒト組織自己移植片ならびに非自己移植片、異種移植片から単離された細胞(及び細胞系統)及びその誘導体内の、全てのライフサイクル段階でのヒト、動物、細菌(ナノ細菌及び細胞外ならびに細胞内細菌を含む)及びウイルス起源の試料、ならびに凍結させられた又はその他の形で貯蔵された、切開又は切除された供給源、顕微鏡スライドといった組織学的供給源から誘導され得る試料、ブロック又は液体培地内に包埋された試料又は合成又は天然の表面又は液体から抽出された試料からの核酸内の5−メチルシトシン残基の分析。
【0084】
エピジェネティクス/エピゲノミクス/メチロミクス
主要な死因すなわち、悪性新生物、(癌)、虚血性心臓疾患、脳血管疾患、慢性閉塞性肺疾患、肺炎及びインフルエンザ、動脈疾患(アテローム性動脈硬化症及び大動脈瘤)、真性糖尿病及び中枢神経疾患、ならびに不安症、ストレス関連神経精神病及び肥満症などの社会的消耗性疾患、及び異常染色体数又は染色体再配列から発生したすべての状態、(常染色体ならびに性染色体が関与する異数性、身体的状態又は生殖細胞系内の挿入、転位、欠損症、複製)、ならびにミトコンドリアゲノムの類似の異常、に重点をおいた、病気の個体(なおここで言う「病気の」という語は、Jean D Wilson et al., McGraw Hill Inc.編, Harrison’s Principles of Internal Medicine、第12版及びそれ以降の版に記述されている又は言及されている全てのヒトの疾患、病気、不快及び逸脱状態、ならびにOMIM, Online Mendelian Inheritance in Man, www.ncbi.gov内に記述された全ての疾患、病気、不快及び逸脱状態を含む)からの細胞、組織及び器官、ならびに健康な個体(WHOにより定義されている通りの健康)の細胞、組織及び器官の間に自然に発生する変動の5−メチルシトシン分析を含む。
【0085】
正常な又は病気の個体は、(a)さまざまな民族性及び進化系統の集団、(b)種族及び地理的隔離集団、(c)亜種、(d)同性又は異性の双生児又はさらに高次の多生児、(e)正常な接合方法、人工受精、胚幹細胞方法によるクローニングから発生した又は(体細胞又は生殖細胞系核からの)核移植によって又は細胞質抽出物又は外来性作用物質による細胞又は核の修飾(決定転換及び分化転換)によって発生した、又はミトコンドリア又はその他の細胞小器官の投入又は修飾から発生した個体、(f)遺伝子導入ノック−アウト、ノック−イン又はノック−ダウン方法(in vivo、エクスビボ又は遺伝子活性が例えばRNAi、リボザイム、トランスボゾン活性、薬物又は小分子方法、PNA、INA、AMA、AHAなど又は核酸ベースの接合体(Trojanペプチドを含むがこれに制限されるわけではない)などによって過渡的に又は常時改変されているあらゆる方法によるかのいずれか)に由来する個体、又は、(正常な又は子宮外)妊娠の任意の段階にある個体、に由来し得る。
【0086】
エピジェネティクス/エピゲノミクス/メチロミクス
エピジェネティクス/エピゲノミクス/メチロミクスは、以下のような、変化したパラメータ及び基礎を成すメカニズムを、正常に変動する系及び病気の系の両方において決定し、治療的に改変させることを目的とした、細胞外又は細胞内様式でのヒトの疾患に結びつけられる、原核又は真核生物及びウイルス(又はそれらの組合せ)からの核酸内の5−メチルシトシン残基の分析を意味する。
(i) 遺伝的疾患;
(ii) 生物学的又は非生物学的起源のいずれであれ、環境的に誘発された因子(ここで言う環境的という語は、あらゆる妊娠段階中の又は排卵及び不妊治療条件下にある生物自体の体内の環境をも含むものとしてとらえられる)によりひき起こされた非遺伝的又は後成的遺伝疾患;
(iii) 「プリオン」クラスの因子、気圧変化及び無重力に対する暴露又は放射線効果によってもたらされる効果を含む、遺伝的又は非遺伝的疾患に対する素因;
(iv) 加齢に関連するうつ病、苦痛、神経精神病及び神経変性病及び更年期前及び更年期後の身体状態(排卵減少を含む;両方の性別で)を含む、全ての細胞型組織、器官系および生命ネットワークにおける加齢プロセスでの5−メチルシトシン変化;
(v) 癌(又は核酸増幅、欠失、再配列、転位及び挿入事象から生じる核型異常を伴う細胞内の変化を含めた、核酸供与量の変化により実証される疾病)における5−メチルシトシン変化、及び(日周期、光周期、睡眠、記憶及び「時差ぼけ」に対する細胞周期効果を含む)異なる細胞周期現象におけるその変動又は改変
(vi) ((イオン化するものであれイオン化しないものであれ、又は化学療法治療又は高高度暴露から生じたものであれ)あらゆるタイプの低酸素症、酸素欠乏症、放射線、ストレスによって又はミトコンドリア、核又は細胞小器官ゲノム間の不均衡によってもたらされた代謝効果を含めた)受精卵から胚形成、胎児発達、出生、青年期、成人期及び老年期までの、最も広義で定義された代謝ネットワーク内の5−メチルシトシン変化;
(vii) (翻訳後付加、翻訳後分割産物、翻訳後修飾(例えばインテイン、エクステイン、汎存化及び分解産物など)を伴うあらゆるもの;学習、脳成長及び細胞死に関与するD−セリンといったような単一の希少アミノ酸ならびに希少天然アミノ酸を含むタンパク質、ポリペプチド及びペプチド;薬物、生物医薬品、化学物質(ここで化学物質及び生物医薬品の定義は、G.Ashton, 2001, Nature Biotechnology, 19, 307-3111のものである)を含めた)タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、及びDNA、RNA、PNA、INA、AMA、AHAなど又はペプチドアプタマー、代謝産物、新規塩、プロドラッグ、既存の化合物のエステル、ワクチン、抗原、ポリケチド、非リボソームペプチド、ビタミン、及び(植物由来のシクロパミンといったような)あらゆる天然供給源由来の分子に対する、分子、細胞、組織、器官及び全生体レベルでの応答に起因する5−メチルシトシンの改変;
(viii) それが一本鎖であれ二本鎖であれ、外部供給源からの内因性トランスポゾン又はレトロトランスポゾン(SINES及びLINES)などの中で内部的に活性化されたRNA及びDNAウイルスに対する、分子、細胞、組織、器官及び全生体レベルでの応答に起因する5−メチルシトシンの改変;
(ix) 遺伝子由来又は非遺伝子由来のいずれであれ(又はイントロンを含有しているか又はしていない)、RNA写しの逆転写されたコピーに対する分子、細胞、組織、器官及び全生体レベルでの応答に起因する5−メチルシトシンの改変;
(x) (a)妊娠前、妊娠中及び妊娠後の母体流体ならびに血液及び脳脊髄液を含む全ての流体中を循環するDNA、RNA、PNA、INA、AMA、AHAなどの分子を含めた、DNA、RNA、PNA、INA、AMA、AHAなど(又はDNA、RNA、PNA、INA、AMA、AHA、そのいずれかのもののアプタマーのあらゆる組合せ)、
(b)ペプチド及び核酸のキメラであるか又はコレステロール部分、ホルモン及び核酸といったような天然分子のキメラである接合生体分子の組合せに対する、分子、細胞、組織、器官及び全生体レベルでの応答に起因する5−メチルシトシンの改変;及び
(xi) (in vivo又はエクスビボで、又は新規の環境又は天然の及び合成の基質と結びつけられた形で又はその組合せの形で実施される)その他の任意の既存の又は新規の細胞型への軌道に沿って、好ましくは幹細胞へ又は幹細胞からの軌道に沿っての、(両生類卵母細胞、植物、動物、細菌又はウイルス供給源といったような非ヒト供給源からの擾乱原、薬物、抗体又はそれらのあらゆる混合物を含めた)、最も広義での擾乱原を用いて決定転換又は分化転換された(又はされつつある)細胞又は幹細胞の応答に起因する5−メチルシトシンの改変。
【0087】
核酸
「核酸」という語は、天然に発生する核酸、DNA及びRNAを網羅する。「核酸類似体」という語は、天然に発生する核酸、DNA及びRNAの誘導体ならびに天然に発生する核酸の合成類似体を網羅する。合成類似体は、1つ以上のヌクレオチド類似体を含む。ヌクレオチド類似体という語には、基本的に天然に発生するヌクレオチドのように、核酸主鎖内に取込まれる能力をもちかつ特異的塩基対合(以下参照)の能力を有する全てのヌクレオチド類似体が含まれる。
【0088】
従って、「核酸」又は「核酸類似体」という語は、基本的に複数のヌクレオチド及び/又はヌクレオチド類似体及び/又はインタカレータ擬ヌクレオチドからなるあらゆる分子を表わしている。本発明にとって有用な核酸又は核酸類似体は、異なる主鎖モノマー単位を伴う一定数の異なるヌクレオチドを含み得る。
【0089】
好ましくは、核酸又は核酸類似体の一本鎖は、実質的に相補的な一本鎖核酸及び/又は核酸類似体とハイブリッド形成して二本鎖核酸又は核酸類似体を形成する能力を有する。より好ましくは、かかる二本鎖類似体は、二重らせんを形成する能力を有する。好ましくは、該二重らせんは、水素結合に起因して形成され、より好ましくは、二重らせんは、A形態、B形態、Z形態及びそれらの中間体の二重らせんからなる群から選択された二重らせんである。
【0090】
従って、本発明に有用な核酸及び核酸類似体としては、DNA、RNA、LNA、PNA、MNA、ANA、HNA、INA及びその混合物及びそのハイブリッド、ならびにそのリン原子修飾、例えば制限的意味なくホスホロチオエート、メチルホスホレート、ホスホラミダイト、ホスホロジチエート、ホスホロセレノエート、ホスホトリエステル及びホスホボラノエート、が含まれるが、これらに制限されるわけではない。さらに、制限的な意味なくメチルイミノメチル、ホルムアセテート、チオホルムアセテート及びアミドを含む連結基といったような、リンを含有しない化合物をヌクレオチドに対する連結のために使用することができる。特に、核酸及び核酸類似体は、1つ以上のインタカレータ擬ヌクレオチドを含むことができる。
【0091】
この状況下で、「混合物」は、異なる種類のヌクレオチド又はヌクレオチド類似体を含む核酸又は核酸類似体鎖を網羅するものと考えられている。さらに、この状況下では、「ハイブリッド」は、1つ以上の種類の主鎖を伴うヌクレオチド又はヌクレオチド類似体を含む1つの鎖及び異なる種類の主鎖を伴うヌクレオチド又はヌクレオチド類似体を含むもう一方の鎖を含む核酸又は核酸類似体を網羅すると考えられている。
【0092】
INAというのは、本発明に参照により援用されている国際公開第03/051901号パンフレット、国際公開第03/052132号パンフレット、国際公開第03/052133号パンフレット及び国際公開第03/052134号パンフレット(Unest A/S)の教示に従ったインターカレーティング核酸を意味する。HNAというのは、例えばVan Aetschotら、1995により記述されている通りの核酸を意味する。MNAというのは、Hossainら、1998によって記述されている通りの核酸を意味する。ANAは、Allertら、1999により記述されている核酸を意味する。LNAは、国際公開第99/14226号パンフレット(Exiqon)中で記述されている通りのあらゆるLNA分子であり得、好ましくは、LNAは国際公開第99/14226号パンフレットの要約で描かれている分子から選択される。より好ましくは、LNAは、Singhら、1998、Koshkinら、1998又はObikaら、1997に記述されている通りの核酸である。PNAは、例えばNielsenら、1991により記述されている通りのペプチド核酸を意味する。
【0093】
ヌクレオチドという語は、核酸又は核酸類似体の構築ブロックを表わし、ヌクレオチドという語は、天然に発生するヌクレオチド及びその誘導体ならびに基本的に天然に発生するヌクレオチド及びその誘導体と同じ機能を果たす能力を有するヌクレオチドを網羅している。天然に発生するヌクレオチドには、4つの主たる核塩基アデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)又はシトシン(C)のうちの1つを含むデオキシリボヌクレオチド、及び4つの核塩基アデニン(A)、ウラシル(U)、グアニン(G)又はシトシン(C)を含むリボヌクレオチドが含まれる。上述の主たる又は一般的な塩基に加えて、一部の核酸分子内に存在しうるその他のさほど一般的でない天然に発生する塩基としては、5−メチルシトシン(met−C)及び6−メチルアデニン(met−A)が含まれる。
【0094】
ヌクレオチド類似体は、核酸主鎖内に取込まれる能力をもちかつ特異的塩基対合の能力も有する任意のヌクレオチド様分子であり得る。天然に発生するものでないヌクレオチドには、DNA、RNA、PNA、INA、HNA、MNA、ANA、LNA、CNA、CeNA、TNA、(2’−NH)−TNA、(3’−NH)−TNA、α−L−リボ−LNA、α−L−キシロ−LNA、β−D−キシロ−LNA、α−D−リボ−LNA、[3.2.1]−LNA、ビシクロ−DNA、6−アミノ−ビシクロ−DNA、5−エピ−ビシクロ−DNA、α−ビシクロ−DNA、トリシクロ−DNA、ビシクロ[4.3.0]−DNA、ビシクロ−[3.2.1]−DNA、ビシクロ−[4.3.0]アミド−DNA、β−D−リボピラノシル−NA、α−L−リキソピラノシル−NA、2’−R−RNA、α−L−RNA又はα−D−RNA、β−D−RNA内に含まれたヌクレオチドが含まれるが、これらに制限されるわけではない。
【0095】
ヌクレオチド及びヌクレオチド類似体の機能は、相補的ヌクレオチドの核塩基の水素結合を介して相補的ヌクレオチドと特異的に相互作用できるようになることならびに核酸又は核酸類似体の中に取込まれ得るようになることにある。天然に発生するヌクレオチドならびに一部のヌクレオチド類似体は、例えばRNA又はDNAポリメラーゼにより核酸又は核酸類似体内に酵素的に取込まれる能力を有する。しかしながら、ヌクレオチド又はヌクレオチド類似体は、核酸又は核酸類似体内に化学的に取込まれてもよい。
【0096】
さらに核酸又は核酸類似体は、2つの比較的小さい核酸又は核酸類似体をもう1つのものにカップリングすることによって調製されることができ、例えば、これはリガーゼによって酵素的に行なわれてもよいし、又、化学的に行なわれてもよい。
【0097】
ヌクレオチド又はヌクレオチド類似体は、主鎖モノマー単位及び核塩基を含む。核塩基は、天然に発生する核塩基か又は基本的に同じ機能を果たす能力を有するその誘導体又はその類似体であり得る。核塩基の機能は、水素結合を介して1つ以上のその他の核塩基と特異的に会合する能力を有することにある。かくして、1つ又はわずかなその他の核塩基と安定した水素結合を形成することだけができ、通常それ自体を含めた大部分のその他の核塩基と安定した水素結合を形成できないということが、核塩基の重要な特長である。もう1つの核塩基との1つの核塩基の特異的相互反応は一般に「塩基対合」と呼ばれる。
【0098】
塩基対合は、予め定められたヌクレオチドと相補的ヌクレオチドの間の特異的ハイブリダイゼーションを結果としてもたらす。相補的ヌクレオチドは、塩基対合の能力を有する核塩基を含むヌクレオチドである。
【0099】
一般的な天然に発生する核塩基のうち、アデニン(A)は、チミン(T)又はウラシル(U)と対合し、グアニン(G)はシトシン(C)と対合する。従って、Aを含むヌクレオチドは、T又はUのいずれかを含むヌクレオチドと相補的であり、Gを含むヌクレオチドは、Cを含むヌクレオチドと相補的である。
【0100】
ヌクレオチドは、追加の分子物質を含むようにさらに誘導体化され得る。ヌクレオチドは、核塩基又は主鎖モノマー単位上で誘導体化され得る。塩基上の好ましい誘導体化部位としては、アデニンの8位、ウラシルの5位、シトシンの5又は6位及びグアニンの7位が含まれる。複素環修飾は、強化された塩基スタッキング、付加的な水素結合、及びこれらのクラスの組合わせといった3つの構造クラスへとグループ分けすることができる。平面系のπ−電子雲を拡張させることによって塩基スタッキングを増強する修飾か、ピリミジンの5位及び7−デアザ−プリンの7位における接合型親油性修飾により代表される。ピリミジン修飾の5位での置換にはプロピン、ヘキシン、チアゾール及び単にメチル基が含まれ、7−デアザプリンの7位における置換には、ヨード、プロピニル及びシアノ基が含まれる。プロピルから5員複素環へそして4及び5位(シトシンクランプ)から生じる3環融合系へとシトシンの5位を修飾することも同様に可能である。複素環修飾の第2のタイプは、付加的なアミノ基が、G−C塩基対内の3水素結合に類似するA−T塩基対内のもう1つの水素結合を提供している2−アミノ−アデニンにより代表される。効果の組合せを提供する複素環修飾は、2−アミノ−7−デアザ−7−修飾済みアデニン及びヘテロ二重鎖のエトキシアミノ官能基を有する3環シトシン類似体により代表される。さらに、N2−修飾済み2−アミノアデニン修飾済みオリゴヌクレオチドが、一般的な修飾の中に含まれる。リボース又はデオキシリボース部分上の好ましい誘導体化部位は、非連結性炭素位置C−2’及びC−4’の修飾、連結性炭素C−1’、C−3’及びC−5’の修飾、糖酸素O−4’の置換、無水糖修飾(立体配座制限あるもの)、環糖修飾(立体配座制限あるもの)、リボフラノシル環サイズ変更、連結部位−糖対糖、(C−3’対C−5’/C−2’対C−5’)、ヘテロ原子環−修飾済み糖及び上述の修飾の組合せである。しかしながら、核酸又は核酸類似体の全体的塩基対合特異性が分断されないかぎり、その他の部位を誘導体化させることもできる。最終的に、主鎖モノマー単位がリン酸塩基を含む場合、一部の主鎖モノマー単位のリン酸塩を誘導体化させることができる。
【0101】
本書で使用されている通りのオリゴヌクレオチド及びオリゴヌクレオチド類似体は、基本的にヌクレオチド及び/又はヌクレオチド類似体及び/又はインタカレータ擬ヌクレオチドの配列からなる分子である。好ましくは、オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体は5〜100個の個々のヌクレオチドを含む。オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体は、DNA、RNA、LNA、2’−O−メチルRNA、PNA、ANA、HNA及びその混合物ならびにあらゆるその他のヌクレオチド及び/又はヌクレオチド類似体及び/又はインタカレータ擬ヌクレオチドを含み得る。
【0102】
対応する核酸
核酸、核酸類似体、オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体は、それらがハイブリッド形成する能力を有する場合に対応しているとみなされる。好ましくは、対応する核酸、核酸類似体、オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体は、低ストリンジェンシー条件でハイブリッド形成する能力をもち、より好ましくは、対応する核酸、核酸類似体、オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体は、中ストリンジェンシー条件下でハイブリッド形成する能力をもち、より好ましくは、対応する核酸、核酸類似体、オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体は高ストリンジェンシー条件下でハイブリッド形成する能力を有する。
【0103】
本書で使用する高ストリンジェンシー条件は、例えばSouthern E.M., 1975, J. Mol. Biol., 98:503-517によって記述されている通りのサザンブロット法及びハイブリダイゼーションに関連して通常利用される通りのストリンジェンシーを表わすものとする。このような目的のためには、予備ハイブリダイゼーションとハイブリダイゼーションのステップを内含することが日常的実践方法である。かかるステップは通常本発明に参照により援用されている「Molecular Cloning/A Laboratory Manual」(Cold Spring Harbar)中でSambrookらにより記述されているように、6×SSPE、5%のDenhardt、0.5%のSDS、50%のホルムアミド、100μg/mlの変性サケ精巣DNAを含有する溶液を使用し(42℃で18時間のインキュベーション)、それに続いて2×SSC及び0.5%SDSで洗浄し(室温及び37℃で)、0.1×SSC及び0.5%SDSで洗浄する(30分間68℃でのインキュベーション)ことによって実施される。
【0104】
本書で使用されている中ストリンジェンシー条件は、pH7.0で1mMのEDTA、10mMのNa2HPO4H2O、140mMのNaClを含有する緩衝液中でのハイブリダイゼーションを意味するものとする。好ましくは、各々の核酸又は核酸類似体が約1.5μMずつ提供される。代替的には、中ストリンジェンシーは、50mMのKCl、10mMのTRIS−HCl(pH9.0)、0.1%のトリトンX−100、2mMのMgCl2を含有する緩衝液中でのハイブリダイゼーションを意味する可能性がある。
【0105】
低ストリンジェンシー条件は、pH7.0で1MのNaCl、10mMのNa3PO4を構成する緩衝液中でのハイブリダイゼーションを意味する。
【0106】
代替的には、対応する核酸、核酸類似体、オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体は、70%を上回る相補性、例えば75%を上回る、例えば80%を上回る、例えば85%を上回る、例えば90%を上回る、例えば92%を上回る、例えば94%を上回る、例えば95%を上回る、例えば96%を上回る、例えば97%を上回る相補性といったような実質的な相補性を一定の与えられた配列上で互いに有する核酸、核酸類似体、オリゴヌクレオチド、又はオリゴヌクレオチド類似体である。
【0107】
好ましくは、該一定の与えられた配列の長さは、少なくとも10ヌクレオチド長、例えば少なくとも15ヌクレオチド、例えば少なくとも20ヌクレオチド、例えば少なくとも25ヌクレオチド、例えば少なくとも30ヌクレオチド、例えば10〜500ヌクレオチドの間、例えば10〜100ヌクレオチド長の間、例えば10〜50ヌクレオチド長の間である。より好ましくは、対応するオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体は実質的にその全長にわたり相補性をもつ。
【0108】
クロスハイブリダイゼーション
クロスハイブリダイゼーションという語は、少なくとも2つの核酸又は核酸類似体の間の意図的でないハイブリダイゼーションを網羅している。クロスハイブリダイゼーションという語は、その意図された標的配列以外の核酸配列又は核酸類似体配列に対する核酸プローブ又は核酸類似体プローブ配列のハイブリダイゼーションを表わすために用いることができる。
【0109】
往々にして、クロスハイブリダイゼーションは、たとえそのプローブ及びその対応する標的配列よりも低い相補性度しか有していなくても、1つ以上の対応する非標的配列とプローブの間で起こる。この望まれない効果は、標的に比べてプローブがはるかに余剰であること及び/又はアニーリング反応速度が速いことに起因している可能性がある。クロスハイブリダイゼーションは同様に、わずかな核塩基対の間、例えばPCR反応内のプライマの間の水素結合によっても発生し、プライマ2量体を形成する及び/又は非特異的PCR産物を形成する結果となる。
【0110】
同じタイプのヌクレオチド類似体に対する高い親和力をもつ1つ以上のヌクレオチド類似体を含む核酸は、塩基対合に基づいた2量体又はそれより高次の複合体を形成する傾向をもつ。LNA、2’−O−メチルRNA及びPNAといったような(ただしこれらに制限されるわけではない)ヌクレオチド類似体を含むプローブは一般に、同じタイプの主鎖モノマー単位を含むその他のオリゴヌクレオチド類似体に対しハイブリッド形成するための高い親和力を有する。従って、個々のプローブ分子が低い相補性度しか有していない場合でも、それらはハイブリッド形成する傾向をもつ。
【0111】
自己ハイブリダイゼーション
自己ハイブリダイゼーションという語は、自らの上に戻るように折畳むことによって核酸又は核酸類似体分子が自らにアニールして例えばヘアピン構造などといった二次構造を生成するプロセス、又は1つの分子がもう1つの同一の分子に結合して分子の凝集を導くことを網羅している。大部分の利用分野において、自己ハイブリダイゼーションを回避することが重要である。さらに、自己ハイブリダイゼーションは同様にバックグラウンドシグナルを増大させ、分子生物学的方法又はアッセイの感度を大幅に低下させる可能性がある。二次構造の生成は、望ましい核酸標的配列とのハイブリダイゼーションを阻害し得る。これは、例えば核酸又は核酸類似体がPCR反応内のプライマとして又はエクソヌクレアーゼアッセイ用のフルオロフォア/消光剤標識済みプローブとして使用される場合などの大部分のアッセイにおいて望ましくない。両方のアッセイにおいて、自己ハイブリダイゼーションは、標的核酸に対するハイブリダイゼーションを阻害することになり、さらにエクソヌクレアーゼアッセイにおけるフルオロフォア消光度は低下させられる。
【0112】
同じタイプのヌクレオチド類似体に対する高い親和力を伴う1つ以上のヌクレオチド類似体を含む核酸は、自己ハイブリッド形成する傾向をもつ。LNA、2’−O−メチルRNA及びPNAといったような(ただしこれらに制限されるわけではない)ヌクレオチド類似体を含むプローブは一般に、自己ハイブリッド形成するための高い親和力を有する。従って、個々のプローブ分子が低い自己相補性度しかもたない場合でも、これらは自己ハイブリッド形成する傾向をもつ。
【0113】
融解温度
核酸の融解というのは、二本鎖核酸分子の二本鎖の分離を意味する。融解温度(Tm)は、50%のらせん(ハイブリッド形成されたもの)対コイル(ハイブリッド形成されていないもの)形態が存在する摂氏温度を表わす。
【0114】
高い融解温度は、安定した複合体、ひいては個々の鎖間の高い親和力を表わす。同様にして、低い融解温度は、個々の鎖間の比較的低い親和力を表わす。従って、通常は、2つの鎖の間の強い水素結合は、結果として高い融解温度をもたらす。
【0115】
さらに、二本鎖核酸の核塩基間のインタカレータの挿入も同様に、二本鎖核酸を安定化し、従ってより高い融解温度を結果としてもたらす。
【0116】
さらに、融解温度は、周囲の物理的/化学的状態に左右される。例えば融解温度は塩濃度及びpHによって左右される。
【0117】
融解温度は、数多くのアッセイにより決定され得る。例えば、それは、ハイブリダイゼーションの形成及び崩壊(融解)を判定するべくUVスペクトルを用いることにより決定され得る。
【0118】
インターカレーティング核酸(INA)又はインタカレータ擬ヌクレオチド
インターカレーティング核酸(INA)は、本明細書においてインタカレータ擬ヌクレオチドとも呼ばれている。
【0119】
インタカレータを含み以下の望ましい特徴のうちのうちの1つ以上のものを有する擬ヌクレオチド又はポリヌクレオチド類似体:
予め定められた位置で二重らせん内に挿入する;
I. DNAに対する親和力を実質的に増大させる;
II. 自己及びクロスハイブリダイゼーションを阻害又は減少させる;
III. RNA及びDNAといったような異なる核酸を識別する;
IV. ハイブリダイゼーションの特異性を実質的に増大させる;
V. ヌクレアーゼ安定性を増大させる;
VI. 鎖侵入を有意に増強させる;
VII. ハイブリダイゼーションの時点で蛍光強度の変化を示す。
【0120】
インタカレータ擬ヌクレオチドは、一般構造:
X−Y−Q、
を有し、式中、
Xは、核酸又は核酸類似体の主鎖内に取込まれる能力を有する主鎖モノマー単位であり;
Qは、DNAの核塩基とコ・スタッキング(co−stacking)する能力を有する、少なくとも1つの基本的に平坦な接合系を含むインタカレータであり;
Yは、主鎖モノマー単位とインタカレータを連結するリンカー部分である。
【0121】
より好ましくは、インタカレータ擬ヌクレオチドは、一般構造:
X−Y−Q、
を有し、式中
− Xは、
【化1】
という一般構造式の核酸又は核酸類似体の主鎖内に取込まれる能力を有する主鎖モノマー単位であり、
[ここで、n=1〜6であり、
R1は三価又は五価の置換基を有するリン原子であり;
R2は少なくとも2つの結合を形成する能力を有する原子から個別に選択され、R2は任意には個別に置換されており、
R6は保護基である]、
− Qは、DNAの核塩基とコ・スタッキングする能力を有する、少なくとも1つの基本的に平坦な接合系を含むインタカレータであり;
− Yは、主鎖モノマー単位のR2のいずれかとインタカレータを連結するリンカー部分であり;
Q及びYの合計長は、約7Å〜20Åの範囲内にある。
【0122】
インタカレータがピレンである場合、例えば、Q及びYの合計長は約9Å〜13Å、好ましくは9Å〜11Åの範囲内にある。
【0123】
「核酸又は核酸類似体の主鎖内に取込まれた」という語は、該インタカレータ擬似ヌクレオチドを核酸及び/又は核酸類似体の配列内に挿入できることを意味している。
【0124】
「平坦な接合系」という語は、その接合系内に含まれた実質的に全ての原子が1つの平面内にあることを意味する。
【0125】
「基本的に平坦な接合系」という語は、接合系内に含まれる全ての原子のうち常時1つの平面内に無いのは最大でも20%であることを意味する。
【0126】
「接合系」という語は、3つ以上の隣接する原子の原子p軌道の重複を伴う化学的結合を含有する構造単位を意味する(Gold et al., 1987, Compendium of Chemical Terminology, Blackwell Scientific Publications, Oxford, UK)。
【0127】
コ・スタッキングは、コアキシャル・スタッキング(coaxial stacking)を略したものとして用いられている。コアキシャル・スタッキングは、スタック様の構造内の共通軸に沿って互いの上に(平坦な側面に対し平坦な側面)平坦な分子が整列している1つのエネルギー的に有利な構造である。コ・スタッキングには、個々の分子の2つのパイ電子雲の間の相互作用が必要である。二重鎖内で核塩基とコ・スタッキングするインタカレータ擬似ヌクレオチドの場合、好ましくは、反対側の鎖上にパイ電子系との相互作用が存在し、より好ましくは、両鎖上にパイ電子系との相互作用が存在する。コ・スタッキング相互作用は分子間及び分子内の両方で見られる。例えば、核酸は、核塩基コ・スタッキングを可能にするべく二重鎖構造を採用している。
【0128】
主鎖モノマー単位
適切なあらゆる主鎖モノマー単位を利用することができる。主鎖モノマー単位は、オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体の主鎖内に取込まれ得るインタカレータ擬似ヌクレオチドの部分を含む。さらに、主鎖モノマー単位は、その主鎖モノマー単位を含むオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体の合成中又は合成の後、いかなる形であれ除去又は変化されうる1つ以上の離脱基、保護基及び/又は反応基を含み得る。
【0129】
「主鎖モノマー単位」という語には、主鎖モノマー単位自体しか含まれず、例えばインタカレータに主鎖モノマー単位を連結させるリンカーは含まれない。従って、インタカレータならびにリンカーは主鎖モノマー単位の一部ではない。
【0130】
従って、主鎖モノマー単位はモノマーが1つの配列内に取込まれている原子のみを含有し、次のものからなる群から選択される。
− 近隣ヌクレオチドの主鎖モノマー単位に対する連結を形成する能力を有する原子;又は
− 少なくとも2つの部位で主鎖モノマー単位のその他の原子に連結されている原子;又は
− 1つの部位で主鎖モノマー単位に連結され、そうでなければその他の原子と連結されていない原子。
【0131】
かくして、主鎖モノマー単位原子は、モノマーが1つの配列内に取込まれた時点で近隣ヌクレオチドの主鎖リン原子の間の直接的連結(最短経路)に関与し、該近隣ヌクレオチドが天然に発生するヌクレオチドである原子として定義づけされる。
【0132】
主鎖モノマー単位は、適切な任意の主鎖モノマー単位であり得る。主鎖モノマー単位は例えば、DNA、RNA、PNA、INA、HNA、MNA、ANA、LNA、CNA、CeNA、TNA、(2’−NH)−TNA、(3’−NH)−TNA、α−L−リボ−LNA、α−L−キシロ−LNA、β−D−キシロ−LNA、α−D−リボ−LNA、[3.2.1]−LNA、ビシクロ−DNA、6−アミノ−ビシクロ−DNA、5−エピ−ビシクロ−DNA、α−ビシクロ−DNA、トリシクロ−DNA、ビシクロ[4.3.0]−DNA、ビシクロ[3.2.1]−DNA、ビシクロ[4.3.0]アミド−DNA、β−D−リボピラノシル−NA、α−L−リキソピラノシル−NA、2’−R−RNA、α−L−RNA又はα−D−RNA、β−D−RNAの主鎖モノマー単位からなる群から選択され得る。
【0133】
LNA(ロック核酸)の主鎖モノマー単位は、DNA主鎖モノマー単位の通常の立体配座の自由を制限する分子内ブリッジを含む、立体的に制限されたDNA主鎖モノマー単位である。LNAは、国際公開第99/14226号パンフレット(Exiqon)内で記述されているようなあらゆるLNA分子であり得る。好ましいLNAは、2’−O位を4’−C位に連結するメチルリンカーを含むが、2’オキシ原子が窒素又は硫黄のいずれかで置換されているLNAといったようなその他のLNAも同様に、本発明の中に含まれている。
【0134】
インタカレータ擬似ヌクレオチドの主鎖モノマー単位は、好ましくは、オリゴヌクレオチド及び/又はヌクレオチド類似体の中に取込まれる前に、一般構造:
【化2】
を有し、式中、
n=1〜6、好ましくはn=2〜6、より好ましくはn=3〜6、より好ましくはn=2〜5、より好ましくはn=3〜5、より好ましくはn=3〜4であり;
R1は、三価又は五価の置換リン原子であり、好ましくはR1は、
【化3】
であり、
R2は、少なくとも2つの結合を形成する能力を有する原子から個別に選択され得、該原子は任意には個別に置換され、好ましくはR2は、任意には個別に置換されたO、S、N、C、Pから個別に選択される。「個別に」という語は、R2が同じ分子内の1つ、2つ又はそれ以上の異なる基を表わし得ることを意味している。2つのR2の間の結合は、飽和又は不飽和又は環系の一部、又はその組合せであり得る。各々のR2は、H、低級アルキル、C2−C6アルケニル、C6−C10アリール、C7−C11アリールメチル、C2−C7アシルオキシメチル、C3−C8アルコキシカルボニルオキシメチル、C7−C11アリーロイルオキシメチル、C3−C8S−アシル−2−チオエチルから選択された置換基といった任意の適切な置換基と個別に置換され得る。
【0135】
「アルキル」基というのは、直鎖、分枝鎖、及び環状アルキル基を含めた、任意には置換された脂肪族炭化水素を意味する。好ましくは、アルキル基は1〜25個の炭素を有し、20個以下のヘテロ原子を含む。より好ましくは、1〜12個の炭素、より好ましくは1〜6個の炭素、より好ましくは1〜4個の炭素の低級アルキルである。ヘテロ原子は好ましくは、窒素、硫黄、リン及び酸素からなる群から選択されている。
【0136】
「アルケニル」基は、全て任意に置換され得る直鎖、分枝鎖及び環状アルケニル基を内含する少なくとも1つの二重結合を含有する、任意に置換された炭化水素を意味する。好ましくは、アルケニル基は2〜25個の炭素を有し、20個以下のヘテロ原子を含有する。より好ましくは、2〜12個、より好ましくは2〜4個の炭素の低級アルケニルである。ヘテロ原子は好ましくは、窒素、硫黄、リン及び酸素からなる群から選択される。
【0137】
「アルキニル」基は、全て任意に置換され得る直鎖、分枝鎖及び環状アルキニル基を内含する少なくとも1つの3重結合を含有する、任意に置換された不飽和炭化水素を意味する。好ましくは、アルキニル基は2〜25個の炭素を有し、20個以下のヘテロ原子を含有する。より好ましくは、2〜12個、より好ましくは2〜4個の炭素の低級アルキニルである。ヘテロ原子は好ましくは、窒素、硫黄、リン及び酸素からなる群から選択される。
【0138】
「アリール」は、接合パイ電子系を伴う少なくとも1つの環を有する任意には置換された芳香族基を意味し、炭素環アリール、複素環アリール、ビ−アリール及びトリ−アリール基を含む。アリール置換の置換基例としては、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アミノ、基本的に相補的なアミノ、カルボキシ、ヒドロキシ、アルコキシ、ニトロ、スルフォニル、ハロゲン、チオール及びアリールオキシが含まれる。
【0139】
「炭素環アリール」は、芳香族環上の全ての原子が炭素原子であるアリールを意味する。炭素原子は、任意にはアリールについて以上で記述されている通りに置換される。好ましくは、炭素環アリールは、任意に置換されたフェニルである。
【0140】
「複素環アリール」というのは、芳香族環の中の環原子として1〜3個のヘテロ原子を有するアリールを意味し、該環原子の残りの部分は炭素原子である。適切なヘテロ原子には酸素、硫黄及び窒素が含まれる。複素環アリールの例としては、フラニル、チェリル、ピリジル、ピロリル、N−低級アルキルピロロ、ピリミジル、ピラジニル及びイミダゾリルが含まれる。複素環アリールは、アリールについて上述されたとおり、任意には置換される。
【0141】
2つ以上のR2上の置換基は、代替的には合わさって、上述のとおりの環系のいずれかのような1つの環系を形成する。好ましくはR2は、H、メチル、R4、ヒドロキシ、ハロゲン、及びアミノから選択された1つの原子又は基で置換され、より好ましくはR2は、H、メチル、R4から選択された1つの原子又は基で置換される。より好ましくは、R2はO、S、NH、N(Me)、N(R4)、C(R4)2、CH(R4)又はCH2から個別に選択され、ここでR4は以下で定義される通りである。
【0142】
R3は、メチル、ベータ−シアノエチル、p−ニトロフェネチル、o−クロロフェニル、又はp−クロロフェニルである。
【0143】
R4は、低級アルキル、好ましくはメチル、エチル、又はイソプロピルといったような低級アルキル、又はモルフォリノ、ピロリジノ又は2,2,6,6−テトラメチルピロリジノといったような複素環であり、ここで低級アルキルはC1−C4といったようなC1−C6として定義される。
【0144】
R5は、X2=O−である場合にHであることを条件としてアルキル、アルコキシ、アリール又はHであり、好ましくはR5は低級アルキル、低級アルコキシ、アリールオキシから選択されている。好ましい実施形態においては、アリールオキシはフェニル、ナフチル又はピリジンから選択されている。
【0145】
R6は、任意の適切な保護基から選択された保護基である。好ましくは、R6は、トリチル、モノメトキシトリチル、2−クロロトリチル、1,1,1,2−テトラクロロ−2,2−ビス(p−メトキシフェニル)−エタン(DATE)、9−フェニルキサンチン−9−イル(ピキシル)及び9−(p−メトキシフェニル)キサンチン−9−イル(MOX)又は、「Current Protocols in Nucleic Acid Chemistry」volume 1, Beaucage et al. Wileyの中で言及されているその他の保護基からなる群から選択される。より好ましくは、保護基は、モノメトキシトリチル及びジメトキシトリチルからなる群から選択され得る。最も好ましくは、保護基は、4,4’−ジメトキシトリチル(DMT)であり得る。
【0146】
R9は、任意に置換されたO、S、Nから選択され、好ましくはR9はO、S、NH、N(Me)から選択される。
【0147】
R10は、任意に置換されたO、S、N、Cから選択される。
【0148】
X1は、Cl、Br、I、又はN(R4)2から選択される。
【0149】
X2は、Cl、Br、I、N(R4)2又はO−から選択される。
【0150】
置換基に関して上述されているように、主鎖モノマー単位は、非環式又は環系の一部分であり得る。
【0151】
好ましくは、インタカレータ擬似ヌクレオチドの主鎖モノマー単位は、非環式主鎖モノマー単位からなる群から選択されている。非環式というのは、環構造を含まないあらゆる主鎖モノマー単位を網羅するものとされており、例えば、該主鎖モノマー単位は好ましくはリボース又はデオキシリボース系を含まない。
【0152】
特に、インタカレータ擬似ヌクレオチドの主鎖モノマー単位が、バルジ挿入(以下で定義されている)を安定化させる能力を有する非環式主鎖モノマー単位であることのが好ましい。
【0153】
インタカレータ擬似ヌクレオチドの主鎖モノマー単位は、五価のリン原子といったような三価及び五価のリン原子から選択された少なくとも1つの化学基を含む主鎖モノマー単位からなる群から選択され得る。より好ましくは、インタカレータ擬似ヌクレオチドの主鎖モノマー単位のリン原子は、ホスホエステル、ホスホジエステル、ホスホラミデート及びホスホラミダイト基からなる群から選択された少なくとも1つの化学基を含む主鎖モノマー単位からなる群から選択され得る。
【0154】
リン酸塩、ホスホエステル、ホスホジエステル、ホスホラミデート及びホスホラミダイト基からなる群から選択された少なくとも1つの化学基を含む好ましい主鎖モノマー単位は、それが核酸主鎖内に取込まれた場合、リン原子を含まずに少なくとも1つのリン原子から近隣ヌクレオチドの少なくとも1つのリン原子までの距離が、長くても6原子、例えば2、例えば3、例えば4、例えば5、例えば6原子の長さである、主鎖モノマー単位である。
【0155】
好ましくは、主鎖モノマー単位は、いずれの場合でもリン原子自体を含めずに、多くとも5個の原子(より好ましくは多くとも4個)がインタカレータ擬似ヌクレオチド主鎖モノマー単位のリン原子と最も近い近隣リン原子を隔離しており、より好ましくは5個の原子が、インタカレータ擬似ヌクレオチド主鎖モノマー単位のリン原子と最も近い近隣リン原子を隔離しているような形で、核酸又は核酸類似体のリン酸塩主鎖内に取込まれる能力を有している。
【0156】
特に好ましい形態では、インタカレータ擬似ヌクレオチドは、ホスホラミダイトを含む主鎖モノマー単位を含み、より好ましくは、該主鎖モノマー単位は三価のホスホラミダイトを含む。適切な三価のホスホラミダイトは、核酸及び/又は核酸類似体の主鎖内に取込まれ得る三価のホスホラミダイトである。通常は、アミダイト基は、核酸の主鎖内に取込まれ得ず、むしろアミジット基又はその一部は、離脱基及び/又は保護基として役立ち得る。しかしながら、ホスホラミダイト基は、核酸主鎖内への主鎖モノマー単位の取込みを容易にし得ることから、主鎖モノマー単位がホスホラミダイト基を含むことが好ましい。
【0157】
オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体内に挿入されるインタカレータ擬似ヌクレオチドの主鎖モノマー単位は、ホスホジエステル結合を含み得る。さらに、インタカレータ擬似ヌクレオチドの主鎖モノマー単位は五価のホスホラミダイトを含み得る。好ましくは、インタカレータ擬似ヌクレオチドの主鎖モノマー単位は、五価のホスホラミデートを含み得る非環式主鎖モノマー単位である。
【0158】
離脱基
主鎖モノマー単位は、1つ以上の離脱基を含み得る。離脱基は、インタカレータ擬似ヌクレオチド又はヌクレオチドがモノマーである場合に主鎖モノマー単位の一部であるが、ひとたびインタカレータ擬似ヌクレオチド又はヌクレオチドがオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体内に取込まれた時点で分子内にもはや存在しない化学基である。
【0159】
離脱基の性質は、主鎖モノマー単位により異なる。例えば、主鎖モノマー単位がリンアミジットである場合、離脱基は例えばジイソプロピルアミン基であり得る。一般に、主鎖モノマー単位がリンアミジットである場合、離脱基は例えばジイソプロピルアミンの形でリン原子に固定され、離脱基は求核基に対するリン原子のカップリング時点で除去され、一方リン酸塩基の残りの部分又は残りの部分の1部分が核酸又は核酸類似体主鎖の一部となり得る。
【0160】
反応基
主鎖モノマー単位はさらに、反応前よりも長い1つのヌクレオチドである核酸又は核酸類似体を形成するべくもう1つのヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド又は核酸又は核酸類似体との化学反応を実施する能力を有する反応基を含むことができる。従って、ヌクレオチドは、その遊離形態にある場合、すなわち核酸内に取込まれていない場合、もう1つのヌクレオチド又は核酸又は核酸類似体と反応する能力を有する反応基を含み得る。
【0161】
反応基は、保護基によって保護され得る。化学反応に先立って、保護基を除去することができる。保護基はかくして、新たに形成された核酸又は核酸類似体の一部とはならない。反応基の例としては、DNA又はRNA主鎖モノマー単位の5’−ヒドロキシ基といったような求核物質がある。
【0162】
保護基
主鎖モノマー単位は、合成中に除去できる保護基をも含むことができる。保護基の除去は、インタカレータ擬似ヌクレオチドとヌクレオチド又はヌクレオチド類似体又はもう1つのインタカレータ擬似ヌクレオチドの間の化学反応を可能にする。
【0163】
特にヌクレオチドモノマー又はヌクレオチド類似体モノマー又はインタカレータ擬似ヌクレオチドモノマーは、ひとたびヌクレオチド又はヌクレオチド類似体又はインタカレータ擬似ヌクレオチドが核酸又は核酸類似体内に取込まれた時点で、分子内にもはや存在しなくなる1つの保護基を含み得る。さらに、主鎖モノマー単位は、ヌクレオチド又はヌクレオチド類似体又はインタカレータ擬似ヌクレオチドの取込みの後にオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体内に存在しうるものの該オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体への付加的なヌクレオチド又はヌクレオチド類似体の導入後にはもはや存在し得ないか又はオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体全体の合成後除去され得る保護基を含むことができる。
【0164】
保護基は、当業者にとって既知の一定数の適切な技術によって除去され得る。好ましくは、保護基は、酸処理、チオフェノール処理及びアルカリ処理からなる群から選択された処理によって除去され得る。
【0165】
主鎖モノマー単位の5’末端及び5’末端類似体を保護するために用いることのできる好ましい保護基は、トリチル、モノメトキシトリチル、2−クロロトリチル、1,1,1,2−テトラクロロ−2,2−ビス(p−メトキシフェニル)−エタン(DATE)、9−フェニルキサンチン−9−イル(ピキシル)及び9−(p−メトキシフェニル)キサンチン−9−イル(MOX)又は「Current Protocols In Nucleic Acid Chemistry」volume 1, Beaucage et al. Wiley中で言及されているその他の保護基からなる群から選択され得る。より好ましくは、保護基は、モノメトキシトリチル及びジメトキシトリチルからなる群から選択され得る。最も好ましくは、保護基は、4,4’−ジメトキシトリチル(DMT)であり得る。4,4’−ジメトキシトリチル(DMT)基は、酸処理例えば、CH2Cl2中の3%ジクロロ酢酸中での又は3%のトリクロロ酢酸中での短時間のインキュベーション(30〜60秒で充分である)によって除去可能である。
【0166】
主鎖モノマー単位のリン酸塩又はホスホラミダイト基を保護し得る好ましい保護基は、例えばメチル及び2−シアノエチルからなる群から選択され得る。メチル保護基は、例えば、チオフェノール又は二ナトリウム2−カルバモイル2−シアノエチレン−1,1−ジチオレートでの処理によって除去され得る。2−シアノエチル基は、アルカリ処理例えば、濃縮アンモニア水、メチルアミン水と濃縮アンモニア水の1:1混合物又はアンモニアガスでの処理により除去され得る。
【0167】
インタカレータ
インタカレータという語は、核酸の核塩基とコ・スタッキングする能力を有する少なくとも1つの基本的に平坦な接合系を含むあらゆる分子部分を網羅する。好ましくは、インタカレータは、核酸又は核酸類似体の核塩基とコ・スタッキングする能力を有する少なくとも1つの基本的に平坦な接合系からなる。
【0168】
好ましくは、インタカレータは、ポリアロメート及びヘテロポリアロメートからなる群から選択された化学基を含み、さらに一層好ましくは、インタカレータは基本的にポリアロメート又はヘテロポリアロメートからなる。最も好ましくは、インタカレータはポリアロメート及びヘテロポリアロメートからなる群から選択される。
【0169】
ポリアロメート又はヘテロポリアロメートは、例えば1個、例えば2個、例えば3個、例えば4個、例えば5個、例えば6個、例えば7個、例えば8個、例えば8個を超える数といった適切な任意の数の環で構成され得る。さらに、ポリアロメート又はヘテロポリアロメートは、ヒドロキシル、ブロモ、フルオロ、クロロ、ヨード、メルカプト、チオ、シアノ、アルキルチオ、複素環、アリール、ヘテロアリール、カルボキシル、カルボアルコイル、アルキル、アルケニル、アルキニル、ニトロ、アミノ、アルコキシ及びアミドからなる群から選択された1つ以上のもので置換することができる。
【0170】
1つの好ましい形態においては、インタカレータは、蛍光発光能力を有するポリアロメート及びヘテロポリアロメートからなる群から選択され得る。
【0171】
もう1つのより好ましい形態においては、インタカレータは、エキサイマー、エキシプレックス、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)又は電荷移動複合体を形成する能力を有するポリアロメート及びヘテロポリアロメートからなる群から選択され得る。
【0172】
従って、インタカレータは好ましくは、フェナントロリン、フェナジン、フェナントリジン、アントラキノン、ピレン、アントラセン、ナプテン、フェナントレン、ピセン、クリセン、ナフタセン、アクリドン、ベンズアントラセン、スチルベン、オキサロ−ピリドカルバゾール、アジドベンゼン、ポルフィリン、プソラレン、及びヒドロキシル、ブロモ、フルオロ、クロロ、ヨード、メルカプト、チオ、シアノ、アルキルチオ、複素環、アリール、ヘテロアリール、カルボキシル、カルボアルコイル、アルキル、アルケニル、アルキニル、ニトロ、アミノ、アルコキシ及び/又はアミドからなる群から選択された1つ以上のものと置換された上述のインタカレータのうちのいずれかからなる群から選択され得る。
【0173】
好ましくは、インタカレータはフェナントロリン、フェナジン、フェナントリジン、アントラキノン、ピレン、アントラセン、ナプテン、フェナントレン、ピセン、クリセン、ナフタセン、アクリドン、ベンズアントラセン、スチルベン、オキサロ−ピリドカルバゾール、アジドベンゼン、ポルフィリン及びプソラレンからなる群から選択される。
【0174】
インタカレータの例は、いかなる形であれ制限的意味があるものとして理解されるべきではなく、インタカレータとして使用するための考えられる構造の一例を提供するためのものである。さらに、修飾された構造を得るための各インタカレータ上の1つ以上の化学基の置換も同様に内含されている。
【0175】
インタカレータ擬似ヌクレオチドのインタカレータ部分は、リンカーにより主鎖単位に連結される。主鎖からリンカーに沿って挿入部分まで進んだ時点で、リンカー及びインタカレータの連結は、オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体かインタカレータ擬似ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド類似体に対しハイブリッド形成された時点でオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体の一本の鎖の核塩基とコ・スタッキングすることのできる接合系の一部分である第1の原子とリンカー原子の間の結合として定義される。
【0176】
リンカーは、接合系を含むことができ、インタカレータはもう1つの接合系を含むことができる。この場合、リンカー結合系は、反対側のオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体鎖の核塩基とコ・スタッキングする能力をもたない。
【0177】
リンカー
インタカレータ擬似ヌクレオチドのリンカーは、インタカレータ擬似ヌクレオチドの主鎖モノマーとインタカレータを連結する部分である。リンカーは、1つ以上の原子又は原子間に結合を含み得る。
【0178】
本書で定義されている挿入部分と主鎖の定義によると、リンカーは、主鎖とインタカレータを連結する最短経路である。インタカレータが主鎖に直接連結されている場合、リンカーは1つの結合である。リンカーは通常、原子の連鎖又は原子の分枝鎖からなる。連鎖は、飽和ならびに不飽和であり得る。リンカーは、接合された結合を伴う又は伴わない環構造でもあり得る。例えば、リンカーは、連鎖の片端がインタカレータに連結され、連鎖のもう一方の末端が主鎖モノマー単位に連結された、C、O、S、N.P、Se、Si、Ge、Sn及びPbからなる群から選択されたm個の原子の連鎖を含み得る。
【0179】
インタカレータ擬似ヌクレオチドのインタカレータ及びリンカーの全長は好ましくは8Å〜13Åの間である。従って、mは、特定のインタカレータ擬似ヌクレオチドのインタカレータのサイズに応じて選択されるべきである。すなわち、mは、インタカレータが小さい場合に比較的大きく、インタカレータが大きい場合に比較的小さいものであるべきである。ただし、大部分の目的について、mは、1〜7、例えば1〜6、例えば1〜5、例えば1〜4の整数となる。上述の通り、リンカーは、不飽和連鎖又は接合した結合が関与するもう1つの系であり得る。例えば、リンカーは環式接合構造を含み得る。好ましくは、リンカーが飽和連鎖であるときmは1〜4である。
【0180】
インタカレータがピレンである場合、mは好ましくは1〜7、例えば1〜6、例えば1〜5、例えば1〜4、より好ましくは1〜4、さらに一層好ましくは1〜3の整数であり、最も好ましくはmは2又は3である。
【0181】
インタカレータが、構造:
【化4】
を有する場合、
mは、2〜6、より好ましくは2である。
【0182】
リンカーの連鎖は、C、H、O、S、N、P、Se、Si、Ge、Sn及びPbからなる群から選択された1つ以上の原子で置換され得る。
【0183】
1つの形態においては、リンカーはアザアルキル、オキサアルキル、チアアルキル又はアルキル鎖である。例えば、リンカーは、C、H、O、S、N、P、Se、Si、Ge、Sn及びPbからからなる群から選択された1つ以上のもので置換されたアルキル鎖であり得る。好ましい実施形態においては、リンカーは、非分枝アルキル鎖から成り、ここで連鎖の片端はインタカレータに連結され、連鎖のもう一方の末端は主鎖モノマー単位に連結され、各々のCは2Hで置換されている。より好ましくは、非分枝アルキル鎖の長さは、原子長1〜5個、例えば原子長1〜4個、例えば原子長1〜3個、例えば原子長2〜3個である。
【0184】
もう1つの形態においては、リンカーはC、O、S、N、P、Se、Si、Ge、Sn及びPbからなる群から選択された原子を含む環構造である。例えば、連結は、C、H、O、S、N、P、Se、Si、Ge、Sn及びPbからなる群から選択された1つ以上のものと置換されたこのような環構造であり得る。
【0185】
もう1つの形態においては、リンカーは、1〜6個のC原子、O、S、Nの各々の原子0〜3個からなる。より好ましくは、リンカーは、1〜6個のC原子及びO、S、Nの各々の原子0〜1個からなる。好ましい形態においては、リンカーは、任意に置換されたC、O、S及びN個の原子の鎖からなる。好ましくは、連鎖は、多くても3個の原子から成り、かくして、任意に置換されたC、O、S、Nから個別に選択された0〜3個の原子を含むべきである。
【0186】
好ましい形態においては、リンカーは、C、N、S及びO原子の連鎖から成り、ここで連鎖の片端はインタカレータに連結され、連鎖のもう一方の末端は、主鎖モノマー単位に連結される。
【0187】
リンカーは、上述の通りのインタカレータ擬似ヌクレオチドについての構造式X−Y−Q中のYを構成し、従って、X及びQはリンカーの一部ではない。
【0188】
インタカレータ擬似ヌクレオチド
インタカレータ擬似ヌクレオチド又はINA分子は、好ましくは一般構造:
X−Y−Q
を有し、式中、
Xは、核酸又は核酸類似体の主鎖内に取込まれる能力を有する主鎖モノマー単位であり;
Qは、核酸の核塩基とコ・スタッキングする能力を有する、少なくとも1つの基本的に平坦な接合系を含むインタカレータであり;
Yは、主鎖モノマー単位とインタカレータを連結するリンカー部分であり;
Q及びYの合計長は、約7Å〜20Åの範囲内にある。
【0189】
さらに、本発明の好ましい実施形態においては、インタカレータ擬似ヌクレオチドは、主鎖モノマー単位を含み、ここで主鎖モノマー単位は、多くとも4個の原子がインタカレータに最も近い主鎖の2つのリン原子を隔離しているような形で核酸又は核酸類似体のリン酸塩主鎖内に取込まれる能力を有する。
【0190】
インタカレータ擬似ヌクレオチドは好ましくは、ワトソン・クリック水素結合を形成する能力を有する核塩基を含まない。従って、インタカレータ擬似ヌクレオチドは好ましくは、ワトソン・クリック塩基対合の能力をもたない。
【0191】
好ましくは、Q及びYの全長は、約7Å〜20Å、より好ましくは約8Å〜15Å、さらに一層好ましくは約8Å〜13Å、さらに一層好ましくは約8.4Å〜12Å、最も好ましくは約8.59Å〜10Å又は約8.4Å〜10.5Åの範囲内にある。
【0192】
インタカレータが例えばピレンである場合、Q及びYの全長は好ましくは約8Å〜13Å、例えば約9Å〜13Å、より好ましくは約9.05Å〜11Å、例えば約9.0Å〜11Å、さらに一層好ましくは約9.05〜10Å、例えば約9.0〜10Åの範囲内にあり、最も好ましくは約9.8Åである。
【0193】
リンカー(Y)及びインタカレータ(Q)の全長は、インタカレータから最も遠くにあるリンカーの非水素原子の中心から、主鎖モノマー単位から最も遠くにあるインタカレータの基本的に平坦な接合系の非水素原子の中心までの距離を決定することによって、決定されるべきである。好ましくは該距離は、結合角及び標準化学法則がいかなる形であれ破られない又はゆがめられない最大距離でなくてはならない。
【0194】
該距離は好ましくは、最低の立体配座エネルギーレベルをもつ遊離挿入擬ヌクレオチドの構造を計算し、次に、自由に回転する結合(例えば環構造に参与する結合又は二重結合でない)の単純回転以上に構造を湾曲、伸長又はその他の形でゆがませることなく、インタカレータから最も遠くにあるリンカーの非水素原子の中心から、主鎖モノマー単位から最も遠くにあるインタカレータの基本的に平坦な接合系の非水素原子の中心までの最大距離を決定することによって決定されるべきである。好ましくは、エネルギー的に有利な構造は、非経験又は力場計算により見出される。
【0195】
該距離は、以下のステップからなる方法により決定可能である。
− 問題のインタカレータ擬似ヌクレオチドの構造は、プログラムChemWindow(登録商標)6.0(バイオラド(BioRad))を用いてコンピュータにより引き出される;
− 該構造は、コンピュータプログラムSymAppsTM(バイオラド(BioRad))へと転送される;
− インタカレータ擬似ヌクレオチドの計算された結合長及び結合角を含む3次元構造は、コンピュータプログラムSymAppsTM(バイオラド(BioRad))を用いて計算される;
− 該3次元構造は、コンピュータプログラムRasWin Molecular Graphics Ver. 2.6-ucbへと転送される;
− 該結合は、最大距離(以上で定義づけした通りの距離)を得るべくRasWin Molecular Graphics Ver. 2.6-ucbを用いて回転される;そして
− 該距離が決定される。
【0196】
インタカレータ擬似ヌクレオチドは、上述の主鎖モノマー単位、リンカー及びインタカレータのあらゆる組合せであり得る。
【0197】
もう1つの好ましい形態においては、インタカレータ擬似ヌクレオチドは、1−(4,4’−ジメトキシトリフェニルメチルオキシ)−3−ピレンメチルオキシ−2−プロパノールのホスホラミダイトからなる群から選択される。さらに一層好ましくは、インタカレータ擬似ヌクレオチドは、(S)−1−(4,4’−ジメトキシトリフェニルメチルオキシ)−3−ピレンメチルオキシ−2−プロパノールのホスホラミダイト及び(R)−1−(4,4’−ジメトキシトリフェニルメチルオキシ)−3−ピレンメチルオキシ−2−プロパノールのホスホラミダイトからなる群から選択される。
【0198】
インタカレータ擬似ヌクレオチドの調製
インタカレータ擬似ヌクレオチド又はINA分子は、適切なあらゆる方法により合成可能である。1つの適切な方法は、以下のステップを含む。
a1) 任意には反応基にカップリングされたリンカー部分及び核酸の核塩基とコ・スタッキングする能力を有する少なくとも1つの基本的に平坦な接合系を含むインタカレータを含有する化合物を提供するステップ;
b1) 少なくとも2つの反応基を含むリンカー前駆体分子を提供するステップ(なお該2つの反応基は任意には個々に保護されていてよい);
c1) インタカレータをリンカー前駆体と反応させ、かくしてインタカレータ−リンカーを得るステップ;
d1) 少なくとも2つの反応基を含み(なお該2つの反応基は任意には個別に保護及び/又はマスキングされていてよい)、かつ任意にはリンカー部分を含む、主鎖モノマー前駆体単位を提供するステップ;及び
e1) インタカレータ−リンカーを主鎖モノマー前駆体と反応させ、インタカレータ−リンカー−主鎖モノマー前駆体を得るステップ;
又は、
a2) 少なくとも2つの反応基を含み(なお、該2つの反応基は、任意には個別に保護及び/又はマスキングされていてよい)かつ任意にはリンカー部分を含む主鎖モノマー前駆体単位を提供するステップ;
b2) 少なくとも2つの反応基を含むリンカー前駆体分子を提供するステップ(なお該2つの反応基は任意には個別に保護されていてよい);
c2) リンカー前駆体とモノマー前駆体単位を反応させ、かくして主鎖−リンカーを得るステップ;
d2) 任意には反応基にカップリングされたリンカー部分及び核酸の核塩基とコ・スタッキングする能力を有する少なくとも1つの基本的に平坦な接合系を含むインタカレータを含有する化合物を提供するステップ;及び
e2) 主鎖−リンカーとインタカレータを反応させ、インタカレータ−リンカー−主鎖モノマー前駆体を得るステップ;
又は、
a3) 反応基にカップリングされたリンカー部分及び核酸の核塩基とコ・スタッキングする能力を有する少なくとも1つの基本的に平坦な接合系を含むインタカレータを含有する化合物を提供するステップ;
b3) 少なくとも2つの反応基(なお該2つの反応基は任意には個別に保護及び/又はマスキングされていてよい);及びリンカー部分を含む、主鎖モノマー前駆体単位を提供するステップ;及び
c3) インタカレータ−リンカー部分を主鎖モノマー前駆体のリンカーと反応させ、インタカレータ−リンカー−主鎖モノマー前駆体を得るステップ;
f) 任意には、インタカレータ−リンカー−主鎖モノマー前駆体を保護しかつ/又は脱保護するステップ;
g) 2つの擬ヌクレオチド、ヌクレオチド及び/又はヌクレオチド類似体を合わせて連結する能力を有するリン含有化合物を提供するステップ;
h) インタカレータ−リンカー−主鎖モノマー前駆体とリン含有化合物を反応させるステップ、及び
i) インタカレータ擬似ヌクレオチドを得るステップ。
【0199】
好ましくは、インタカレータ反応基は、それがリンカー反応基と反応し得るような形で選択される。従って、リンカー反応基が求核物質である場合には、好ましくは、インタカレータ反応基は求電子物質であり、より好ましくは、ハロアルキル、メシルオキシアルキル及びトシルオキシアルキルからなる群から選択された求電子物質である。より好ましくは、インタカレータ反応基は、クロロメチルである。代替的には、インタカレータ反応基は、例えばヒドロキシ、チオール、セラム、アミン又はそれらの混合物を含む求核物質基といった求核物質基であり得る。
【0200】
好ましくは、環式又は非環状アルカンは、少なくとも3つのリンカー反応基を含む多置換アルカン又はアルコキシであり得る。より好ましくは、多置換アルカンは、アルカントリオール、アミノアルカンジオール又はメルカプトアルカンジオールといったような(ただしこれらに制限されるわけではない)3つの求核基を含み得る。好ましくは、多置換アルカンは、その他のものよりもさらに反応性の高い1つの求核基を含有し、代替的には、求核基のうちの2つは保護基により保護されていてよい。より好ましくは、環式又は非環状アルカンは、2,2−ジメチル−4−メチルヒドロキシ−1,3−ジオキサランであり、さらに一層好ましくは、アルカンはD−α,β−イソプロピリデングリセロールである。
【0201】
好ましくは、リンカー反応基はインタカレータ反応基と反応できなくてはならず、例えば、リンカー反応基は、例えばヒドロキシ、チオール、セラム及びアミンからなる群から選択された求核物質基であり得、好ましくはヒドロキシ基である。代替的には、リンカー反応基は、例えばハロゲン、トリフレート、メシレート及びトシレートからなる群から選択された求電子物質基であり得る。好ましい形態では、少なくとも2つのリンカー反応基は保護基により保護され得る。
【0202】
該方法は、さらに、インタカレータ−前駆体モノマーの1つ以上の反応基に対し保護基を固定させるステップを含むことができる。例えば、DMT基は、ClといったハロゲンにカップリングされたDMTを提供し、少なくとも1つのリンカー反応基とDMT−Clを反応させることによって添加可能である。従って好ましくは、少なくとも1つのリンカー反応基が利用可能となり、1つが保護されている。このステップがリン含有作用物質との反応に先立って行なわれた場合には、該リン含有作用物質は、単に1つのリンカー反応基とのみ相互作用し得る。
【0203】
リン含有作用物質は、例えば、ホスホラミダイト、例えばNC(CH2)2OP(Npri2)2又はNC(CH2)2OP(Npri2)Clであり得る。好ましくは、リン含有作用物質は、N(et)3、N(‘pr)2Et及び及びCH2Cl2といったような塩基の存在下でインタカレータ−前駆体と反応し得る。
【0204】
インタカレータ擬似ヌクレオチドを合成する方法の1つの特定の例が、実施例1及び図7で概略的に説明されている。
【0205】
オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体の適切な配列がひとたび決定された時点で、これらは好ましくは市販の方法及び機器を用いて化学的に合成される。例えば、インタカレータ擬似ヌクレオチドを含む短かいオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体を産生するために、固相ホスホラミダイト方法を使用することができる。
【0206】
例えば、オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体は、「Current Protocols in Nucleic acid Chemistry」Volume 1, Beaucage et al., Wileyに記述されている方法のいずれかにより合成可能である。
【0207】
インタカレータ擬似ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド
標的核酸に対する合成核酸の高い親和力は、検出アッセイを著しく容易にすることができ、その上、標的核酸に対する高い親和力をもつ合成核酸は、核酸の遺伝子ターゲティング及び精製といったような数多くのその他の目的のために有用であり得る。インタカレータを含むオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体は、相同な相補的核酸に対する親和力を増大させることが示されてきた。
【0208】
オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体及び相同な相補的DNAからなるハイブリッド(DNAハイブリッド)の融解温度が該オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体と同じヌクレオチド配列からなるインタカレータ擬似ヌクレオチドが欠如したオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体と相同な相補的DNAの間のハイブリッド(対応するDNAハイブリッド)の融解温度よりも著しく高い、少なくとも1つのインタカレータ擬似ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体を作ることができる。
【0209】
好ましくは、DNAハイブリッドの融解温度は、対応するDNAハイブリッドの融解温度よりも1〜80℃、より好ましくは少なくとも2℃、さらに一層好ましくは少なくとも5℃、さらに一層好ましくは少なくとも10℃高い。
【0210】
オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体は、少なくとも1つの内部インタカレータ擬似ヌクレオチドを有することができる。内部的にインタカレータ単位を位置づけすることで、設計上の柔軟性をさらに大きくすることができる。内部的に位置づけされたインタカレータ擬似ヌクレオチドを含む核酸類似体はかくして、内部的に位置づけされたインタカレータ擬似ヌクレオチドをもたない核酸類似体に比べ、相同的相補性核酸に対するさらに高い親和力を有し得る。少なくとも1つの内部インタカレータ擬似ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体は、RNA(RNA様の核酸類似体を含む)とDNA(DNA様の核酸類似体を含む)を識別することもできる。さらに、内部的に位置づけされた蛍光インタカレータモノマーは、診断手段内で使用可能である。
【0211】
インタカレータ擬似ヌクレオチドは、一定の与えられたオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体の内部の任意の望ましい位置に配置され得る。例えば、インタカレータ擬似ヌクレオチドをオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体の末端に置くことができ、そうでなければインタカレータ擬似ヌクレオチドをオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体内の内部的位置に置くこともできる。
【0212】
オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体が2個以上のインタカレータ擬似ヌクレオチドを含んでいる場合、インタカレータ擬似ヌクレオチドを互いとの関係において任意の位置に置くことができる。例えば、これらを互いに隣り合って置くことができ、そうでなければ、1個、例えば2個、例えば3個、例えば4個、例えば5個、例えば5個を超えるヌクレオチドがインタカレータ擬似ヌクレオチドを隔離しているような形で位置づけすることもできる。1つの好ましい実施形態においては、オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体内部の2つのインタカレータ擬似ヌクレオチドが次の最近隣体として配置される。すなわち、これらは、2つのインタカレータ擬似ヌクレオチドを離隔する1つのヌクレオチドを有し、該オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体内部で任意の位置に設置され得る。もう1つの好ましい形態では、2つのインタカレータが、それぞれオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体の各々の末端に又はそれに近いところに配置される。
【0213】
オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体は、上述のヌクレオチド及び/又はヌクレオチド類似体といったような任意の種類のヌクレオチド及び/又はヌクレオチド類似体を含み得る。例えば、オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体は、DNA、RNA、LNA、PNA、ANA、INA及びHNA内に含まれるヌクレオチド及び/又はヌクレオチド類似体を含み得る。従ってオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体はPNA、ホモ−DNA、b−D−アルトロピラノシル−NA、b−D−グルコピラノシル−NA、b−D−アロピラヌシル−NA、HNA、MNA、ANA、LNA、CNA、CeNA、TNA、(2’−NH)−TNA、(3’−NH)−TNA、□−L−リボ−LNA、□−L−キシロ−LNA、□−D−キシロ−LNA、□−D−リボ−LNA、[3.2.1]−LNA、ビシクロ−DNA、6−アミノ−ビシクロ−DNA、5−エピ−ビシクロ−DNA、□−ビシクロ−DNA、トリシクロ−DNA、ビシクロ[4.3.0]−DNA、ビシクロ[3.2.1]−DNA、ビシクロ[4.3.0]アミド−DNA、□−D−リボピラノシル−NA、□−L−リクソピラノシル−NA、2’−R−RNA、2’−OR−RNA、□−L−RNA、α−D−RNA、β−D−RNAのサブユニットからなる群から選択された1つ以上のものを含むことができる。すなわちオリゴヌクレオチド類似体はPNA、ホモ−DNA、b−D−アルトロピラノシル−NA、b−D−グルコピラノシル−NA、b−D−アロピラヌシル−NA、HNA、MNA、ANA、LNA、CNA、CeNA、TNA、(2’−NH)−TNA、(3’−NH)−TNA、□−L−リボ−LNA、□−L−キシロ−LNA、□−D−キシロ−LNA、□−D−リボ−LNA、[3.2.1]−LNA、ビシクロ−DNA、6−アミノ−ビシクロ−DNA、5−エピ−ビシクロ−DNA、□−ビシクロ−DNA、トリシクロ−DNA、ビシクロ[4.3.0]−DNA、ビシクロ[3.2.1]−DNA、ビシクロ[4.3.0]アミド−DNA、□−D−リボピラノシル−NA、□−L−リクソピラノシル−NA、2’−R−RNA、2’−OR−RNA、□−L−RNA、α−D−RNA、β−D−RNA及びその混合物からなる群から選択され得る。
【0214】
オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体の1つの利点は、少なくとも1つのインタカレータ擬似ヌクレオチド及び基本的に相補的なDNAを含むオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体からなるハイブリッド(DNAハイブリッド)の融解温度が、基本的に相補的なDNA及びそれに相補的なDNAからなる二重鎖の融解温度よりも著しく高いという点にある。
【0215】
従って、オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体は、天然に発生する核酸よりも高い親和力をもつDNAとハイブリッドを形成し得る。融解温度は、例えば5から20℃へ、例えば10℃から15℃へ、例えば2℃から5℃へ、例えば5℃から10℃へ、例えば15℃から20℃へ、例えば20℃から25℃へ、例えば25℃から30℃へ、例えば30℃から35℃へ、例えば35℃から40℃へ、例えば40℃から45℃へ、例えば45℃から50℃以上へ、好ましくは2〜30℃上昇させられる。
【0216】
特に、融解温度の上昇は、挿入がDNA二重鎖を安定させ得ることから、インタカレータの挿入に起因して達成される可能性がある。従って、インタカレータがDNAの核塩基間に挿入する能力を有することが好ましい。好ましくは、インタカレータ擬似ヌクレオチドは、二重鎖内にバルジ挿入又は末端挿入として配置され(以下参照)、これが一部の核酸又は核酸類似体内で挿入を可能にし得る。
【0217】
少なくとも1つのインタカレータ擬似ヌクレオチド及び基本的に相補的なRNA(RNAハイブリッド)又はRNA様核酸類似体(RNA様ハイブリッド)を含むオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体の融解温度は、いかなるインタカレータ擬似ヌクレオチドも含まないオリゴヌクレオチド類似体と基本的に相補的なRNA又はRNA様の標的からなる二重鎖の融解温度よりも著しく高いものであり得る。好ましくは、オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体のインタカレータ擬似ヌクレオチドの大部分又は全ては、いずれか又は両方の末端に位置づけされている。
【0218】
従って、オリゴヌクレオチド及び/又はオリゴヌクレオチド類似体は、天然に発生する核酸よりも高い親和力をもつRNA又はRNA様の核酸類似体又はRNA様オリゴヌクレオチド類似体とハイブリッドを形成し得る。融解温度は、例えば5から15℃へ、例えば10℃から15℃へ、例えば2℃から5℃へ、例えば5℃から15℃へ、例えば15℃から20℃以上へ、好ましくは2〜20℃上昇される。
【0219】
インタカレータ擬似ヌクレオチドは好ましくは、オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体の末端に位置づけされた時点で、RNA及びRNA様標的に向かってのみ安定することになる。しかし、そのために、インタカレータ擬似ヌクレオチドが形成済みハイブリッドの内部の領域に配置されるようにRNA又はRNA様核酸類似体とハイブリッド形成されるべきオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体内へのインタカレータ擬似ヌクレオチドの位置づけが除外されるわけではない。これは、或る種のハイブリッド不安定性を得るため又はハイブリッド形成の後に形成されるべき分子内及び分子間複合体の全体的2D又は3D構造に影響を及ぼすために行なわれ得る。
【0220】
1つ以上のインタカレータ擬似ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド及び/又はオリゴヌクレオチド類似体が、相同な相補的核酸又は核酸類似体又はオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体に対するフーグステン型塩基対合により結合されたオリゴヌクレオチド及び/又はオリゴヌクレオチド類似体からなる3本鎖構造(3重鎖構造)を形成し得る。該オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体は、3重鎖構造内のフーグステン型塩基対合の融解温度を上昇させ得る。
【0221】
オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体は、プリン富有/ピリミジン富有核酸又は核酸類似体二重鎖標的配列のような特定の配列制約の存在に左右されない形で3重鎖構造内のフーグステン型塩基対合の融解温度を上昇させ得る。従って、3重鎖構造内のフーグステン型塩基対合は、オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体がインタカレータ擬似ヌクレオチドを全くもたなかった場合の二重鎖領域に対するフーグステン型塩基対合の融解温度に比べて著しく高い融解温度を有する。
【0222】
従って、オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体は、天然に発生する核酸よりも高い親和力をもつ相同な相補的核酸又は核酸類似体又はオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体を伴う3重鎖構造を形成し得る。融解温度は、例えば2から40℃へ、例えば2から30℃へ、例えば5から20℃へ、例えば10℃から15℃へ、例えば2℃から5℃へ、例えば5℃から10℃へ、例えば10℃から15℃へ、例えば15℃から20℃へ、例えば20℃から25℃へ、例えば25℃から30℃へ、例えば30℃から35℃へ、例えば35℃から40℃へ、例えば40℃から45℃へ、例えば45℃から50℃へ、好ましくは2〜50℃上昇させられる。
【0223】
特に、融解温度の上昇は、挿入がDNA3重鎖を安定させ得ることから、インタカレータの挿入に起因して達成される可能性がある。従って、インタカレータが3重鎖構造の核塩基間に挿入する能力を有することが好ましい。好ましくは、インタカレータ擬似ヌクレオチドは、二重鎖内にバルジ挿入として配置され(以下参照)、これが一部の核酸又は核酸類似体内で挿入を可能にし得る。
【0224】
3重鎖形成は、フーグステン型塩基対合された第3の鎖が標的二重鎖に侵入し同一の鎖の一部分又は全てを変位させて相補的鎖とワトソン・クリック塩基対を形成するプロセスであり、鎖反転の中で進行してもよいし、しなくてもよい。これは、複数の目的で開発利用可能である。オリゴヌクレオチド及びオリゴヌクレオチド類似体は、二本鎖核酸又は核酸類似体標的のみが存在する場合に適切に使用され、3重鎖形成及び/又は鎖反転のための二本鎖核酸又は核酸類似体領域を予め融解させることの無い相補的領域の二本鎖侵入又は領域の一本鎖侵入による検出である標的鎖の分離は、不可能、実施不能であるか又は望まれない。従って、核酸又は核酸類似体分子の二本鎖領域に侵入することのできる少なくとも1つのインタカレータ擬似ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体が提供される。
【0225】
配列特異的な領域で二本鎖核酸又は核酸類似体に侵入することのできる少なくとも1つのインタカレータ擬似ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体を提供することができる。少なくとも1つのインタカレータ擬似ヌクレオチドを含む侵入性のオリゴヌクレオチド及び/又はオリゴヌクレオチド類似体は、変位された鎖よりも高い親和力をもつ配列特異的な領域で相補的鎖に結合することになる。
【0226】
少なくとも1つのインタカレータ擬似ヌクレオチド及び相同な相補的DNAを含むオリゴヌクレオチド類似体からなるハイブリッド(DNAハイブリッド)の融解温度は、通常、オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体及び相同な相補的RNA(RNAハイブリッド)又はRNA様の核酸類似体標的又はRNA様のオリゴヌクレオチド類似体標的からなるハイブリッドの融解温度よりも著しく高い。オリゴヌクレオチドは、上述のオリゴヌクレオチド類似体のいずれかであり得る。例えば、オリゴヌクレオチドは少なくとも1つのインタカレータ擬似ヌクレオチドを含むDNAオリゴヌクレオチド(類似体)又は少なくとも1つのインタカレータ擬似ヌクレオチドを含むホモ−DNA、b−D−アルトロピラノシル−NA、b−D−グルコピラノシル−NA、b−D−アロピラヌシル−NA、HNA、MNA、ANA、LNA、CNA、CeNA、TNA、(2’−NH)−TNA、(3’−NH)−TNA、□−L−リボ−LNA、□−L−キシロ−LNA、□−D−キシロ−LNA、□−D−リボ−LNA、[3.2.1]−LNA、ビシクロ−DNA、6−アミノ−ビシクロ−DNA、5−エピ−ビシクロ−DNA、□−ビシクロ−DNA、トリシクロ−DNA、ビシクロ[4.3.0]−DNA、ビシクロ[3.2.1]−DNA、ビシクロ[4.3.0]アミド−DNA、□−D−リボピラノシル−NA、□−L−リクソピラノシル−NA、2’−R−RNA、2’−OR−RNA、□−L−RNA、α−D−RNA、β−D−RNAオリゴヌクレオチド又はその混合物である。
【0227】
従って、DNAに対するオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体の親和力は、RNA又はRNA様標的についてのオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体の親和力よりも著しく高い。従って、制限的な数のオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体及び相同な相補的DNA及び相同な相補的RNA又は相同な相補的RNA様標的を含む混合物内では、該オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体は好ましくは相同な相補的DNAにハイブリッド形成する。
【0228】
好ましくは、DNAハイブリッドの融解温度は少なくとも2℃、例えば少なくとも5℃、例えば少なくとも10℃、例えば少なくとも15℃、例えば少なくとも20℃、例えば少なくとも25℃、例えば少なくとも30℃、例えば少なくとも35℃、例えば少なくとも40℃、例えば2〜30℃、例えば5℃〜20℃、例えば10℃〜15℃、例えば2℃〜5℃、例えば5℃〜10℃、例えば10℃〜15℃、例えば15℃〜20℃、例えば20℃〜25℃、例えば25℃〜30℃、例えば30℃〜35℃、例えば35℃〜40℃、例えば40℃〜45℃、例えば45℃〜50℃、例えば50℃〜55℃、例えば55℃〜60℃だけ、相同な相補的RNA又はRNA様ハイブリッドの融解温度よりも高い。
【0229】
少なくとも1つのインタカレータ擬似ヌクレオチドを含有するオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体を、核酸又は核酸類似体の二次構造に対しハイブリッド形成させることができる。該オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体は、二次構造に対するかかるハイブリダイゼーションを安定化させる能力を有する。二次構造は、ステム−ループ構造、ファラデ−接合部、折り畳み、H−ノット及びバルジであり得るが、これらに制限されるわけではない。二次構造は、少なくとも1つのインタカレータ擬似ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体が、該インタカレータ擬似ヌクレオチドが二次構造とオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体の間の3方接合部の中に形成された3つの二重鎖のうちの1つの二重鎖の末端でハイブリッド形成しているような形で設計されているRNAのステム−ループ構造であり得る。
【0230】
インタカレータ擬似ヌクレオチドの位置
オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体は、相同な相補的核酸又は核酸類似体(標的核酸)に対しハイブリッド形成し得るような形で設計可能である。好ましくは、オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体は、標的核酸に対し実質的に相補的である。より好ましくは、オリゴヌクレオチド類似体が標的核酸とハイブリッド形成された時点でインタカレータ擬似ヌクレオチドがバルジ挿入として位置づけされるような形で少なくとも1つのインタカレータ擬似ヌクレオチドが位置づけされる。すなわち、インタカレータ擬似ヌクレオチドの上流側近隣ヌクレオチド及びインタカレータ擬似ヌクレオチドの下流側近隣ヌクレオチドは、標的核酸内の近隣ヌクレオチドに対してハイブリッド形成される。
【0231】
1つのインタカレータ擬似ヌクレオチドを、該インタカレータ擬似ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド類似体とその標的ヌクレオチド又はヌクレオチド類似体の間に形成された二重鎖のいずれか又は両方の末端の隣りに位置づけすることが可能であり、例えば、インタカレータ擬似ヌクレオチドを、懸垂コ・スタッキング末端として位置づけすることもできる。
【0232】
オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体の全てのインタカレータ擬似ヌクレオチド又はINAは、オリゴヌクレオチド類似体が標的核酸とハイブリッド形成された時点で全てのインタカレータ擬似ヌクレオチドがバルジ挿入及び/又は懸垂コ・スタッキング末端として位置付けされるような形で位置づけされ得る。
【0233】
インタカレータ擬似ヌクレオチドを含有するオリゴヌクレオチドの例を以下に記す。
N1−(P)q−N2、
N1−(P−N3)q−N2、
(P)q−N2、
N1−(P)q、
(P)q−N2−(P)r、
N1−(P)q−N2、
N1(P−N3)q−N2−(P−N3)r−N4、
式中、
− N1、N2、N3、N4は個別に、1つのヌクレオチド配列及び/又は少なくとも1つのヌクレオチドのヌクレオチド類似体を表わし、
− Pは、インタカレータ擬似ヌクレオチドを表わし、
− q及びrは、1〜10の整数から個別に選択される。
【0234】
メチル化
ゲノムDNAのメチル化の量又は度合は、加齢、幹細胞分化、遺伝子異常、癌及びその他の疾病状態といった数多くの身体条件において潜在的重要性をもつ。メチル化状態の数多くの潜在的重要性が、以下に記されている。
【0235】
融合が行なわれた後DNAメチル化のレベルで発生する再プログラミングを検討するための、成人の胸腺細胞と胚幹細胞の融合。全染色体検査により視覚化されるように、不活性体細胞Xは活性状態となる(Tada et al., 2001; Current Biology, 11, 1553-1558)。
【0236】
かかる腫瘍を同定する廉価で正確な方法としての、散発性結腸直腸癌の臨床病理学的特長における特異的DNA領域内のメチル化パターン(Ward et al., 2001; Gut, 48, 821-829)、及びヒト結腸腺窩内の幹細胞中のメチル化パターン(Ro et al., 2001, Proc Natl Acad Sci, USA, 98, 10519-10521; Yatabe et al., 2001, Proc. Natl. Acad Sci USA, on line edition)の検討。
【0237】
前立腺癌及び特定の遺伝子を再活性化するために5−アザシチジンで処理された細胞系統におけるメチル化パターン(Chetcuti et al., 2001, Cancer Research, 61, 6331-6334)。
【0238】
メチル化を介しての遺伝子不活性化が数多くの癌において発生するものの正常な個体では高頻度ではない、子宮内膜癌内のさまざまなエストロゲンレセプタ中のメチル化パターン(Sasaki et al., 2001, Cancer Research, 61, 3262-3266)。
【0239】
膀胱癌におけるメチル化パターン(Markl et al., 2001, Cancer Research, 61, 5875-5884)。
【0240】
乳癌におけるメチル化パターン(Nielsen et al., 2001, Cancer Letters, 163, 59-69)。
【0241】
肺癌及び乳癌に関与する特異的プロモータ内のメチル化パターン(Burbee et al., 2001, J Natl Cancer Institute, 93, 691-699)。
【0242】
食道腺癌患者の血漿中の遊離DNA内のメチル化パターン(Kawakami et al., 2000, J Natl Cancer Institute, 92, 1805-1811)。
【0243】
遺伝性びまん性胃癌内のCDH1プロモータのメチル化(Grady et al., 2000, Nature Genetics, 26, 16-17)。
【0244】
例えば、遺伝子の父系対立遺伝子が活性であり母系対立遺伝子が不活性であるか又はその逆である、ゲノムインプリンティング。この不活性化は、関与する遺伝子又はそれらに近い配列内のメチル化変化を介して達成される。基本的に、DNA領域は1つの性別の生殖細胞系の中でメチル化された状態となるが、もう1つの性別のものの中ではメチル化された状態とならない(Mann, 2001, Stem Cells, 19, 287-294)。
【0245】
核移植又はin vitro受精を介したさまざまな種(ヒツジ、ウシ、ヤギ、ブタ及びマウス)のクローニングの研究における全ゲノムメチル化パターン。かくして、卵母細胞内に挿入された供与体核のメチル化パターンは大幅に変動し、これが、現行のクローニング実験においてあれほどまでに失敗率が高い理由であると考えられている。これらの分化された核は恐らくは、胚幹細胞内といったような分化度の低いものに比べさらに再プログラミングを必要とする(Kang et al., 2001;Nature Genetics, 28, 173-177; Humphreyset al., 2001, Science, 293, 95-97)。
【0246】
24の癌細胞系統対正常な組織内の過剰な超メチル化パターン(Smiraglia et al., 2001, Human Molecular Genetics, 10, 1413-1419)。
【0247】
遺伝子発現及びインプリンティングに対する効果を検討するための非メチル化ミニ遺伝子構成体内へのメチル化DNAの挿入(Holmgren et al., 2001, Current Biology, 11, 1128-1130)。
【0248】
特定の遺伝子がメチル化により活性化された、成熟B細胞リンパ腫内のメチル化パターン(Malone et al., 2001, Proc Natl Acad Sci USA, 98, 10404-10409)。
【0249】
急性骨髄性白血病における特定の遺伝子のメチル化パターン(Melki et al., 1999, Leukemia, 13, 877-883)。
【0250】
ノック−アウトマウスにおけるMecp2遺伝子の分析。このタンパク質は、DNA中のメチル化された部位に対する結合に関与し、遺伝性神経障害であるレット症候群に関与すると思われる(Guy et al., Nature Genetics, 27, 322-326)。
【0251】
正常な加齢プロセス中の及び潰瘍性大腸炎における5個の特異的遺伝子のメチル化パターン(Issa et al., 2001, Cancer Research, 61, 3573-3577)。
【0252】
シグナル変換経路上に衝突するアポトーシスプロセス、細胞周期制御、ゲノム内での可動要素の運動におけるメチル化の喪失(Jackson-Grusbyet al., 2001, Nature Genetics, 27, 31-39)。
【0253】
遺伝子調節に関与するCpG島の進化的保存性又はその喪失を判定するための、ヒト及びマウスといった異なる種におけるプロモータ及び遺伝子領域のメチル化パターンの比較(Cuadrado et al., 2001, EMBO Reports, 21, 586-592)。
【0254】
異なる発達段階におけるこう丸精子内のDNAメチル化パターン(Manning et al., 2001, Urol Int, 67, 151-155)。
【0255】
DNAメチル化パターンを分析するためのモノクローナル抗体を用いた免疫組織化学染色(Piyathilake et al., 2000, Biotechnic and Histochem, 75, 251-258)。
【0256】
遺伝子と偽遺伝子のメチル化パターンの差(Grunau et al., 2000, Human Mol Genet, 9, 2651-2663)。
【0257】
キイロショウジョウバエといったような無脊椎動物モデルの5−メチルシトシン含有量(Gowher et al., 2000, EMBO J, 19, 6918-6923)。
【0258】
CpG島のメチル化パターンを用いたヒトプロモータの大規模マッピング(Ioshikhes et al., 2000, Nature Genetics, 26, 61-63)。
【0259】
知的障害、顔面形成異常、泌尿生殖器異常及びアルファサラセミアを発生させるATRX遺伝子の発現の変化に起因する哺乳動物の発達中の遺伝子発現、DNAメチル化、クロマチンリモデリングプロセスにおいて誘発された変化(Gibbons et al., 2000, Nature Genetics, 24, 368-371)。
【0260】
前立腺癌に関与するGSTP1遺伝子のプロモータ領域におけるメチル化されたドメインとメチル化されていないドメインの間の境界(Millar et al., 2000, J Biological Chemistry, 275, 24893-24899;Millar et al., 1999, Oncogene, 18, 1313-1324)。
【0261】
正常な加齢プロセス中のメチル化の変化(Toyota et al., 1999, Seminars in Cancer Biology, 9, 349-357)。
【0262】
心臓血管系内のアテローム性動脈硬化症及び加齢(Post et al., 1999, Cardiovascular Research, 43, 985-991)における、及び結腸直腸粘膜内の癌及び加齢の間のメチル化の変化(Ahuja et al., 1998, Cancer Research, 58, 5489-5494)。
【0263】
精巣内のセルトリ細胞及び生殖細胞内のメチル化パターン(Coffigny et al., 1999, Cytogenet Cell Genets, 87, 175-181)。
【0264】
ゼブラフィッシュといったような脊椎動物モデルの発達中のDNAメチル化の変化(Macleod et al., 1999, Nature Genetics, 23, 139-140)。
【0265】
ヒト組織−血液ABO遺伝子のプロモータ領域内のメチル化パターン(Kominato et al., 1999, J Biol Chem, 274, 37240-37250)。
【0266】
モノクローナル抗体を用いた哺乳動物着床前発達中のメチル化パターン(Rougier et al., 1999, Genes and Development, 12, 2108-2113)。
【0267】
さまざまな癌化学療法薬物により誘発されるメチル化パターン(Nyce, 1997, Mutation Research, 386, 153-161;Nyce, 1989, Cancer Research, 49, 5829-5836)及びフェノバルビタールで誘発された及び自然発生肝癌におけるDNAメチル化の変化(Ray et al., 1994, Molecular Carcinogenesis, 9, 155-166)。
【0268】
重亜硫酸塩配列決定方法によるDNA中の5−メチシトシン(methycytosine)残基の分析(Grigg, 1996, DNA Sequence, 6, 189-198)。
【0269】
メチル化されたDNA結合カラムを用いたCpG島の単離(Cross et al., 1994, Nature Genetics, 6, 236-244)。
【0270】
カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)溶菌成長はメチル化感応性スイッチにより誘発されるか?(Laman and Boshoff, Trends Microbiol, 2001, Oct, 9(10): 464-6)。カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV又はHHV−8)の潜在的成長及び溶菌成長は共にその病因に寄与している。
【0271】
以上に記した異なるメチル化状態及び潜在的重要性の多数の例からわかるように、本発明は、メチル化研究のための強力な手段を提供しており、かくして数多くの疾病及び健康の様相にとって有用なものである。
【0272】
材料と方法
固体支持体
表1は、本発明の捕捉リガンドを固定するために有用な固体支持体のいくつかの例を示す。
【0273】
【表1】
【0274】
【表2】
【0275】
挿入用核酸(INA)
挿入用核酸(INA)は、配列特異性を伴って核酸(DNA及びRNA)にハイブリッド形成し得る天然に発生しないポリヌクレオチドである。INAは、複数の望ましい特性を示すことから、プローブベースのハイブリダイゼーションアッセイにおいて核酸プローブに対する代替物/代用品の候補である。INAは、対応する核酸/核酸複合体よりも熱力学的に安定しているハイブリッドを形成するべく核酸に対しハイブリッド形成する重合体である。これらは、ペプチド又は核酸を分解させるものとして知られている酵素のための基質ではない。従って、INAは、天然に発生する核酸フラグメントに比べて生体試料内でより安定しており、かつより長い保管寿命をもつ。イオン強度に大きく左右される核酸ハイブリダイゼーションとは異なり、核酸とのINAのハイブリダイゼーションは、イオン強度からかなり独立しており、核酸に対する核酸のハイブリダイゼーションに極めて不利な条件下で低いイオン強度で有利な作用を受ける。INAの結合強度は、分子へと工学処理された挿入基の数ならびに二本鎖構造内で特異的にスタッキングされた塩基間の水素結合からの通常の相互作用によって左右される。配列の識別は、DNA認識DNAについてよりもINA認識DNAについてさらに効率が良い。
【0276】
INAは、市販のフォーマットの標準的オリゴヌクレオチド合成方法を適合させることによって合成される。
【0277】
INAプローブと標準的核酸プローブの間には、実に数多くの差異が存在する。これらの差異は、生物学的、構造的及び物理化学的差異へと都合良く分類することができる。以上及び以下で論述されるように、これらの生物学的、構造的、及び物理化学的差異は、核酸がこれまで標準的に利用されてきた利用分野でINAプローブを使用しようとした場合に、予測できない結果を導く可能性がある。この異なる組成物の非等価性は、化学技術において往々にして見られる。
【0278】
生物学的差異に関しては、核酸は、遺伝的伝達及び発現の作用物質として生きた種の生命において中心的役割を果たす生体物質である。そのin vivo特性は、かなり充分に理解されている。しかしながら、INAは、化学者の頭の中で考案され、合成有機化学を用いて作られた、最近開発された完全に人工的な分子である。これには既知の生物学的機能は全く無い。
【0279】
構造的には、INAは同様に核酸とも劇的な違いをもつ。両方共共通の核塩基(A、C、G、T及びU)を利用し得るものの、これらの分子の組成は、構造的に多様である。RNA、DNA及びINAの主鎖は、反復するホスホジエステルリボースと2−デオキシリボース単位で構成されている。INAは、リンカー分子を介して重合体に固定される1つ以上の大きく平坦な分子を有するという点でDNA又はRNAと異なっている。平坦な分子は、二本鎖構造内のINAと反対側の相補的DNA鎖内の塩基間に挿入する。
【0280】
INAとDNA又はRNAの間の物理化学的差異も同様に実質的なものである。INAは、核酸プローブが同じ標的配列に結合するよりも急速に、相補的DNAに結合する。DNA又はRNAフラグメントとは異なるINAは、挿入基が末端位置にあるのでないかぎりRNAにほとんど結合しない。相補的DNA鎖上の塩基と挿入基の間の強い相互作用のため、INA/DNA複合体の安定性は、類似のDNA/DNA又はRNA/DNA複合体のものよりも高い。
【0281】
DNA又はRNAフラグメント又はPNAといったその他のDNAと異なり、INAは、自己凝集又は結合特性を示さない。
【0282】
要約すると、INAは、配列特異性をもつ核酸に対してハイブリッド形成することから、プローブベースのアッセイを開発するための有用な候補であり、キット及びスクリーニングアッセイに特に適合されている。しかしながらINAプローブは、核酸プローブの等価物ではない。従って、DNA含有試料の検出、分析及び定量において、プローブベースのアッセイの特異性、感度及び信頼性を改善できるあらゆる方法、キット又は組成物が有用となる。INAはこの目的で必要な特性を有する。
【0283】
本発明中で実施例のために使用されるINAの一例としては、(S)−1−O−(4,4’−ジメトキシトリフェニルメチル)−3−O−(1−ピレニルメチル)−グリセロールのホスホラミダイトであった。しかしながら、INAのその他の化学的形態も同様に使用され得ることがわかるだろう。
【0284】
重亜硫酸ナトリウム−特異的脱アミノ方法
重亜硫酸ナトリウムで核酸を処理するための標準的な方法は、Frommer et al., 1992, Proc Natl Acad Sci, 89:1827-1831; Grigg and Clark, 1994, BioAssays, 16:431-436; Shapiro et al., 1970, J Amer Chem Soc, 92:422 to 423;Wataya and Hayatsu, 1972, Biochemistry, 11:3583-3588を含めた数多くの参考文献に見出すことができる。これらのプロトコルに対するいくつかの改良も、本発明により開発されてきた。
【0285】
検出システム
磁気ビーズのコーティング
磁気ビーズに固定させるために用いられるINA、DNA、PNA、LNA、HNA、ANA、MNA、CNAは、数多くの要領で修飾可能である。この例では、INAはEDCで使用されているようなヘテロ−2官能性リンカーを用いたビーズへのINAの共有結合による固定のための5’又は3’のいずれかのアミノ基を含有していた。しかしながら、同様にビオチンといった5’基でINAを修飾することもでき、この5’基を次に、アビジン又はストレプトアビジン基で修飾された磁気ビーズに受動的に固定させることができる。
【0286】
清浄な1.5ml入りの試験管に、10μlのカルボキシレート修飾済みMagnabindTMビーズ(ピアース(Pierce))又は100μlのDynabeadsTMストレプトアビジン(Dynal (ダイナル))を移し、90μlのPBS溶液を磁気ビーズに添加した。
【0287】
次にビーズを混合し、次に磁化して、上清を廃棄した。ビーズを、1回あたり100μlのPBS中で2回洗浄し、最後にpH4.5の50mMのMES緩衝液又はメーカーの仕様により規定されているもう1つの緩衝液90μlの中で再懸濁させた。
【0288】
試料に対し1μlの250μMのINA、DNA、PNA、LNA、HNA、ANA、MNA、CNA(濃度はオリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション実験により判定される通り、選択されたINAの比活性によって左右される)を添加し、試験管をボルテックスに付し、10〜20分間室温で放置した。
【0289】
その後10μlの新たに調製した25mg/mlのEDC溶液(Pierce /Sigma)を添加し、試料をボルテックスに付し、室温か又は4℃で最高60分間インキュベートした。
【0290】
その後試料を磁化し、上清を廃棄し、ビーズは必要とあらば100μlの0.25MNaOHか又は0.5MトリスpH8.0を10分間添加することによって遮断した。
【0291】
その後ビーズをPBS溶液で2回洗浄し、100μlのPBS溶液中で最終的に再懸濁させた。
【0292】
磁気ビーズを用いたハイブリダイゼーション
10μlのINAコーティング済みMagnabindTMを清浄な試験管に移し、ストレート又は蒸留水中で1:1に希釈した40μlのExpress HybTM 緩衝液(クローンテック(Clontech))、或いはその他のあらゆる市販の又は自家製ハイブリダイゼーション緩衝液を加えた。緩衝液は、既知の濃度のカチオン/アニオン又は両性洗浄剤のいずれか、又はヘパリン及びポリアミノ酸といったようなその他の添加剤をも含有し得る。
【0293】
その後上述の溶液にDNA1〜5μlの熱変性された試料を添加し、試験管をボルテックスに付し次に20〜60分、選ばれたINAの融解温度に応じて55℃又はもう1つの温度でインキュベートする。
【0294】
試料を磁化し、上清を廃棄し、1回あたり5分間、以前のステップからのハイブリダイゼーション温度で0.1×SSC/0.1%SDSで2回ビーズを洗浄し、2回洗浄の間に試料を磁化させた。
【0295】
二重INA捕捉
INA#1を、INAのN又はC末端アミンを介してカルボキシレート修飾された磁気ビーズにカップリングさせ、洗浄して未結合INAを除去した。
【0296】
その後、INA/ビーズ複合体を、適切なハイブリダイゼーション及び洗浄条件を用いて溶液中の標的DNAに対しハイブリッド形成させた。
【0297】
その後、適切な方法を用いて磁気ビーズから標的DNAを放出し、DNA分子の反対側末端にターゲティングされた第2のINA/磁気ビーズ複合体の入った試験管にこれを移した。
【0298】
適切なハイブリダイゼーション及び洗浄条件を用いて溶液中の標的DNAに対し、第2のINA/ビーズ複合体又はオリゴ/ビーズ複合体をハイブリッド形成させた。
【0299】
検出分子として、標的DNAの中央領域に相補的な第3のINA又はオリゴヌクレオチドを使用することができる。この検出分子は、数多くの方法で標識することができる。すなわち、
(i) P32又はI125といったような放射性同位元素でINA、DNA、PNA、LNA、HNA、ANA、MNA、CNA、を直接標識し、その後標的DNAでハイブリッド形成させることができる。
(ii) Cy−3又はCy−5といった蛍光分子でINA、DNA、PNA、LNA、HNA、ANA、MNA、CNA、を標識し、次に標的DNAでハイブリッド形成させることができる。
(iii) アミン修飾されたINA、DNA、PNA、LNA、HNA、ANA、MNA、CNA、を上述の方法のうちのいずれかで標識し次に既知のサイズのカルボキシレート修飾されたミクロスフェアにカップリングさせ、次にスフェアを洗浄して未結合の標識されたINA、PNA又はオリゴを除去することができる。このビーズ複合体を次に、特異的DNA分子の検出用のシグナル増幅系を産生するために用いることができる。
(iv) INA、DNA、PNA、LNA、HNA、ANA、MNA、CNA、を、蛍光又は放射性基のいずれかで標識されたデンドリマー分子に固定させ、この複合体を用いてシグナル増幅を生成させることができる。
(v) 上述のいずれかの方法で標識され固体支持体上で標的DNAにハイブリッド形成されたINA、DNA、PNA、LNA、HNA、ANA、MNA、CNA、を、大豆ヌクレアーゼ又はS1ヌクレアーゼといったような一本鎖特異的ヌクレアーゼを用いて溶液中に放出することができる。
【0300】
放射性標識された検出スフェアの調製
INA、DNA、PNA、LNA、HNA、ANA、MNA、CNA、を、アミノ基、チオール基又はビオチンといったような分子で3’又は5’標識することができる。
【0301】
標識された分子は又、第1の標識に対し分子の反対側末端で取込まれたP32又はI125といったような第2のラベルを有することもできる。
【0302】
この二重標識された検出分子は、例えばEDCといったヘテロ−2官能性リンカーを用いて、既知のサイズのカルボキシレート又は修飾されたラテックスビーズに共有結合でカップリングされ得る。アッセイに応じて、その他の適切な基質も使用することができる。
【0303】
このとき、未結合分子を洗浄により除去して、多数の特異的検出/シグナル増幅分子でコーティングされたビーズを残すことができる。
【0304】
これらのビーズは、このとき、シグナル増幅を生成するべく問題のDNA試料でハイブリッド形成することができる。
【0305】
蛍光標識された検出スフェアの調製
INA、DNA、PNA、LNA、HNA、ANA、MNA、CNA、を、アミノ基、チオール基又はビオチンといったような分子で3’又は5’標識することができる。
【0306】
標識された分子は又、第1の標識に対し分子の反対側末端で取込まれたCy−3又はCy−5といったような第2のラベルを有することもできる。
【0307】
ここで、この二重標識された検出分子は、EDCといったヘテロ−2官能性リンカーを用いて、既知のサイズのカルボキシレート又は修飾されたラテックスビーズに共有結合でカップリングされ得る。
【0308】
このとき、未結合分子を洗浄により除去して、多数の特異的検出/シグナル増幅分子でコーティングされたビーズを残すことができる。
【0309】
これらのビーズは、このとき、シグナル増幅を生成するべく問題のDNA試料でハイブリッド形成することができる。
【0310】
酵素で標識された検出スフェアの調製
INA、DNA、PNA、LNA、HNA、ANA、MNA、CNA、を、アミノ基又はチオール基といったような分子で3’又は5’標識することができる。
【0311】
標識された分子は又、ビオチン又は第1の標識に対し分子の反対側の末端で、へテロ2官能性リンカーを介して接合させたホースラディッシュペルオキシダーゼ又はアルカリホスファターゼといったその他の分子といったような第2のラベルを有することもできる。
【0312】
この二重標識された検出分子は、EDCといったヘテロ−2官能性リンカーを用いて、既知のサイズのカルボキシレート又は修飾されたラテックスビーズに共有結合でカップリングされ得る。
【0313】
このとき、未結合分子を洗浄により除去して、多数の特異的検出/シグナル増幅分子でコーティングされたビーズを残すことができる。
【0314】
これらのビーズは、このとき、シグナル増幅を生成するべく問題のDNA試料でハイブリッド形成することができる。
【0315】
シグナル増幅はこのとき、ストレプトアビジンといったような分子の結合又は比色分析基質が関与する酵素反応により達成可能である。
【0316】
INAオリゴマー組合せ
上述のケース全てにおいて、初期ハイブリダイゼーション事象には、問題の核酸に対して相補的なINAでコーティングされた磁気ビーズの使用が関与していた。
【0317】
第2のハイブリダイゼーション事象には、上述の方法のいずれかが関与し得る。
【0318】
このハイブリダイゼーション反応は、問題のDNAに相補的な第2のINA、PNA又は問題の核酸に対し相補的なオリゴヌクレオチド又は修飾済みオリゴヌクレオチドのいずれかを用いて行なうことができる。これらのアッセイにおける適切なサイズの蛍光ビーズは106を超える蛍光色素分子を担持し単一の蛍光ビーズは容易に検出可能であることから、該方法は、1つ又は数個の細胞からの1つ又は数個のDNAをアッセイするための潜在的感度を有する。
【0319】
デンドリマー及びアプタマー
デンドリマーは、特異的分子で標識された多重層を生成し得るように制御された形で化学的に合成可能な分枝樹状分子である。これらは、中心から周囲に又はその逆に段階的に合成された。
【0320】
デンドリマー構造及びその生成を支配する最も重要なパラメータの1つは、各ステップ内で生成される分枝の数である。これは、所望の分子を構築するために必要とされる反復的ステップの数を決定する。
【0321】
シグナル増幅を増強するべく、Cy−3又はCy−5といったような蛍光標識又はI125又はP32といったような放射性標識を含むデンドリマーを合成することができる。
【0322】
代替的には、修飾されたINA、PNA又はDNA分子を固定させるために用いることのできるカルボキシレート基又はその他のあらゆる反応基を含むようにデンドリマーを合成することが可能である。
【0323】
方法
固体支持体及び磁気ビーズを用いたメチル化されたDNAの検出
図1及び図2は、それぞれ固体支持体及び磁気ビーズを用いたサンドイッチINAシグナル増幅を使用する本発明の方法の実施例を示している。INAが図1及び図2で検出リガンドとして例示されているものの、オリゴヌクレオチドといったようなその他の検出リガンドもこれらの方法において使用できるということがわかるだろう。
【0324】
マイクロタイターウェルの形態の固体支持体を提供し、ウェルに対するINA又はその他のリガンドの固定を補助するべくN−オキシスクシニミドでこれをコーティングした。
【0325】
標的ヌクレオチド配列の第1の部分に対し相補的であった第1のINAをウェルに添加し、この固体支持体に固定させる。
【0326】
その後ウェルに重亜硫酸塩で処理したDNAを添加し、INAにハイブリッド形成しその後ウェルに結合した標的DNAを捕捉するべくINAとこれをハイブリッド形成させた。
【0327】
その後、ハイブリダイゼーション溶液及びハイブリッド形成しなかった全てのDNAを除去してウェル上に捕捉されたハイブリッド形成済みDNAのみを残すように、ウェルを洗浄した。
【0328】
次に、標的ヌクレオチド配列の第2の部分に相補的であった第2のINAを、蛍光標識をもつミクロスフェアビーズに連結させた。その後、第2の連結されたINAを、すでにウェルに結合した標的DNAでハイブリッド形成させた。その後、ハイブリッド形成しなかった第2のINA/ミクロスフェア複合体を除去して、標的DNA配列と関連した蛍光標識及びINA/ミクロスフェア複合体のみを残すように、ウェルを洗浄した。
【0329】
その後、蛍光を測定して、標的DNAのレベルを決定した。
【0330】
ミクロスフェアを用いたメチル化されたDNAの検出
方法論
図3及び図4を参照すると、ミクロスフェアを用いたメチル化されたDNAの検出が示されている。
【0331】
捕捉INAでのマイクロタイターウェルのコーティング
(i) 50mMのリン酸塩緩衝液、1mMのEDTApH8.5(100μl)中の捕捉INA(ウェルあたり0.01〜100pM)を用いて、N−オキシスクシニミドでコーティングされたマイクロタイターウェル(Costar(コスター)Cat#2498)を16〜24時間4℃でコーティングした。
(ii) プレートを100μlの50mMのリン酸緩衝液、1mMのEDTApH8.5で洗浄した。
(iii) 各ウェルに対し、3%のBSA、50mMのリン酸塩緩衝液、1mMのEDTApH8.5を150μl添加し、必要になるまで4℃でプレートを放置した。
【0332】
検出INAでのフルオロスフェアのコーティング
(i) フルオロスフェア(分子プローブ)を5秒間5回音波処理して、凝集した材料を全て壊した。
(ii) pH6.0の音波処理された50mMの2[N−モルホリノ]エタンスルホン酸(MES)250μl及び音波処理されたフルオロスフェア250μl中300pM〜0.3pMの範囲内で検出プローブINAを希釈し、30分間室温で溶液を放置した。
(iii) 試料に対し0.5mgの1−エチル−3[3ジメチルアミンプロピル]カルボジイミド[EDAC]、Sigma (シグマ) Cat#E1769を添加し、試料を暗所で室温に4〜6時間放置し、次に4℃で16時間インキュベートした。
(iv) ビーズに対し1Mのグリシン55μlで添加し、2時間室温にビーズを放置した。
(v) 5〜20分間(ビーズのサイズによる;一般に0.5μMのビーズは5分を要し、一方0.1μMのビーズは20分を要した)、ベンチトップ遠心分離機内で14,000rpmでビーズを遠心分離に付し、上清を廃棄した。
(vi) 前述のように洗浄ステップ間で遠心分離に付しながら、500μlのPBS/1%BSAで2回ビーズを洗浄した。
(vii) 次にビーズを200μlのPBS/1%BSA中で再懸濁し、必要となるまで暗所で4℃で貯蔵した。
(viii) 感度を最適化しバックグラウンドレベルを最小限にするため、ビーズに結合されたINAリガンドの数の変動を使用することができる。
【0333】
DNAのハイブリダイゼーション
(i) Clarkら、(Clark SJ, Harrison J, Paul CL and Frommer M, High sensitivity mapping of methylated cytosines, Nucleic Acids Res., 22:2990-2997(1994))内にある通りに処理された重亜硫酸塩であったDNAか対照サケ精子DNAのいずれかを、マイクロタイターウェルにカップリングされたINAリガンドとハイブリッド形成させ、次に各ウェルに添加した。
(ii) 100μlのExpress HybTM 緩衝液(クローンテック(Clontech))とDNA試料を混合させ、さらに長時間のインキュベーションのためプレートをラップでカバーするか又はウェルを鉱油(シグマ(Sigma))により被覆し、試料を1〜16時間45〜60℃の間でインキュベートさせた。
(iii) その後ウェルを、1回あたり5〜10分間、150μlの2×SSC/0.1%SDS@45〜60℃で2回洗浄した。
(iv) ウェルをさらに150μlの0.1×SSC/0.1%SDSにより45〜60℃で5〜10分間洗浄し、洗浄溶液を廃棄した。
(v) INA/フルオロフェアをExpress HybTM 緩衝液(クローンテック(Clonetech))中で1/100に希釈し、100μlの試料をウェルに添加した。さらに長時間のインキュベートのため、プレートをラップでカバーするか又はウェルを鉱油(シグマ(Sigma))により被覆し;試料を1〜16時間、45〜60℃でインキュベートさせた。
(vi) 次にウェルを、1回あたり5〜10分間、45〜60℃で150μlの2×SSC/0.1%SDSにより2回洗浄した。
(vii) ウェルをさらに5〜10分間45〜60℃で150μlの0.1×SSC/0.1%SDSにより洗浄し、洗浄溶液を廃棄した。
(viii) 最後に、各ウェルの蛍光強度を、Victor II蛍光プレート読取り装置内で特定のビーズ(黄色ビーズについては500/520)について適切な励起/発光波長で測定した。
(ix) いかなるINAも固定しなかったウェル内で測定したバックグラウンド値を全ての測定値から差引いた。
【0334】
コーティングされた放射性標識済みビーズの生産方法
(i) 標的DNA又は問題の核酸領域に対して特異的オリゴヌクレオチド(INA又はPNA)を合成した。このオリゴヌクレオチド、INA又はPNAは、標準化学(シグマジェノシス(Sigma Genosys))を用いて合成された3’アミン基を含有していた。
(ii) 次に、以下の通りのガンマP32dATPを用いて、オリゴヌクレオチド(INA又はPNA)を5’キナーゼ処理した。
・オリゴヌクレオチド(20ng/μl) 1μl
・X10PNK緩衝液 1μl
・T4PNK 1μl
・ガンマP32dATP 2μl
・無菌水 5μl
(iii) その後、1時間37℃で試料をインキュベートさせ、次に、酵素を不活性化するべく95℃まで5分間加熱した。
(iv) 0.1μMのカルボキシレートで修飾済みの蛍光ビーズ(モレキュラー・プローブス(Molecular Probes) Cat#F−8803)を、無菌水中で1/10,000、1/100,000及び1/1,000,000に希釈し、次にキナーゼ処理したオリゴヌクレオチドを以下の通りビーズにカップリングした。
・ビーズ 1μl
・標識されたオリゴ(INA又はPNA) 3μl
・50mMのMESpH8.0 5μl
・10mg/mlのEDC(ピアース(Pierce)) 2μl
(v) その後、ビーズを1時間室温でインキュベートして、キナーゼ処理したオリゴヌクレオチドを3’アミンを介してビーズに固定させた。
(vi) その後、ビーズを15分間最高速度で微小遠心分離機内で回転させて、コーティング済みビーズを沈降させた。
(vii) 上清を除去し、ビーズを100μlのPBS溶液で洗浄し、上述の通り旋回させた。
(viii) 上清を除去し、ビーズを50μlのPBS中に再懸濁させた。
(ix) その後チェレンコフ計数プロトコルを用いて標準シンチレーション計数管内で、コーティングされたビーズのCPMを測定した。最高の活性をもつビーズを次に、アッセイ中の検出システムとして使用した。
【0335】
このプロトコルの背後にある考え方は、最高の比活性をもつビーズを最少数生成する、というものであり、かくして検出可能なシグナルを生成するために標的配列にわずかなビーズを結合させる必要しかなかった。
【0336】
DNAの重亜硫酸塩処理
2μgのDNAに対して、2μl(1/10体積)の3MのNaOH(50mlの水中に6g、直前に調製)を、最終体積20μlで添加した。15分間37℃で混合物をインキュベートした。室温より高い温度でのインキュベーションを用いて、変性効率を改善することができる。
【0337】
インキュベーションの後、208μlの2Mメタ重亜硫酸ナトリウム(416mlの10N NaOHを伴う20mlの水又はトリス/EDTA中7.6g;BDH AnalaR #10356.4D;直前に調製)を添加した。200μlの鉱油で試料を被覆した。次に試料を一晩55℃でインキュベートした。代替的には、以下の通りに試料をサーマルサイクラーで循環させることができる。すなわち、以下の通りに約4時間又は一晩インキュベートさせる。ステップ1、PCR機内で循環して2時間、55℃;ステップ2、2分間95℃。ステップ1は、約37℃から約90℃までの任意の適切な温度で実施可能であり、5分〜16時間の間で長さを変動できる。ステップ2は、約70℃から約99℃まで任意の温度で実施可能であり、約1秒から60分又はそれ以上と長さが変動し得る。
【0338】
メタ重亜硫酸ナトリウムでの処理の後、油を除去し、DNA濃度が低い場合、1μlのtRNA(20mg/ml)又は2μlのグリコーゲンを添加した。これらの添加物は任意であり、特にDNAが低濃度で存在する場合に標的DNAと共沈させることによって得られるDNAの収量を改善させるために用いることができる。
【0339】
イソプロパノール浄化処理は、以下の通りに実施された。すなわち、試料に対し800μlの水を加え、混合させ次に1mlのイソプロパノールを添加した。試料を再度混合し、最低5分間−20℃で放置した。10〜15分間微小遠心分離機内で試料を回転させ、ペレットを80%のETOHで2回洗浄し、毎回ボルテックスに付した。この洗浄処理は、核酸と共に沈殿したあらゆる残留塩を除去する。
【0340】
ペレットを乾燥させ、その後50μlといった適切な量のT/E(10mMのトリス/0.1mMEDTA)pH7.0〜12.5中に再懸濁させた。pH10.5の緩衝液が特に有効であることがわかった。核酸を懸濁させるのに必要とされるように、1分−96時間37℃〜95℃で試料をインキュベートさせた。
【0341】
抗体アプローチ
ゲノム内のメチル化されたDNA配列のための抗体選択
該アプローチは図3の中に記され、以下で要約されている。
I. 5−メチルシトシンに対し向けられた抗体を、磁気ビーズ上にコーティングする。(A)。
II. 未結合抗体を除去するべく洗浄した後、ビーズをゲノムDNAに添加する。(B)。
III. 5−メチルシトシンを含有するあらゆるDNAはことごとく抗体でコーティングされたビーズに結合し、溶液中に遊離した大部分のメチル化されていないDNAを放置する。
IV. 抗体/ビーズを洗浄して、メチル化されたDNA配列の純粋な集合を生成させ、これを次に重亜硫酸塩処理に付す。(C)
【0342】
多重リガンドアプローチ
挿入用核酸リガンド(INA)を用いた多重リガンド
図4に1つの好ましいアプローチが記されている。この方法を用いて、問題の配列を次のように検出する。
I. 問題の配列の5’領域に対し設計されたINAを磁気ビーズ又は検出可能な粒子にカップリングする。(A)
II. INA/ビード複合体を重亜硫酸塩処理されたDNAと混合し、洗浄して非標的DNAを除去する。(B)
III. 第2のINA、PNA又はオリゴを次に添加する(これは問題の配列の3’領域に対し設計されている)。第2のINA、PNA又はオリゴは、その後検出のために使用されるゲノム内に発見されないユニーク配列タグを含む。(c)
IV. その後、試料を洗浄し、ここでも同じタグを含む第2のINA種を添加し、ビーズを洗浄する。(D)
V. 第3及び第4のINA等々を添加し、ハイブリッド形成させ、洗浄する。(E)
VI. INA1〜4のタグ配列に結合する標識された(蛍光/放射性)INA、PNA又はオリゴを用いて、タグ配列をここで検出する。(F)
【0343】
図5に1つの好ましいアプローチが記されている。この方法を用いて、問題の配列を次のように検出する。
I. 問題の配列の5’領域に対し設計されたINAを磁気ビーズ又は検出可能な粒子にカップリングする。(A、B)
II. INA/ビード複合体を重亜硫酸塩処理されたDNAと混合し、洗浄して非標的DNAを除去する。(C)
III. 問題の配列の3’領域に対し設計されている第2のINA/ビーズを次に添加する。第2のINA/ビーズ複合体を、検出のために使用されるように蛍光又は放射能のいずれかにより標識する。(D)
IV. その後、試料を洗浄し、ここでも蛍光又は放射能で標識された第3のINA/ビーズ複合体を添加する。(D)
V. 第3及び第4のINA等々を添加し、ハイブリッド形成させ、洗浄する。
VI. 次に、全ての検出ビーズ複合体の合計を用いてシグナル増幅を達成する。(E)
【0344】
抗体捕捉多重リガンドアッセイ
本発明者らは、(通常染色体を染色するために使用される)5−メチルシトシンに向けられた抗体を、高いメチル化の部域をもつ核酸を捕捉又は濃縮するために使用できる、ということを発見した。ひとたび捕捉した時点で、核酸を本発明に従った方法に従ってアッセイすることができる。
【0345】
アッセイについて、以下で記述する。
【0346】
A. 磁気ビーズに対する5−メチルシトシン抗体のカップリング
I. メーカーの指示に従って洗浄した状態で、125μlのダイナル・パン・マウスD(Dynal Pan Mouse)IgG(Cat#110.22)に対して、0.1μl(0.5μg)のモノクローナル5−メチルシトシン抗体(オンコジーン(Oncogene)Cat#NA81)を添加した。
II. 試料を45分間室温で揺動させた。
III. ビーズをPBS/0.1%BSAで4回洗浄した。
IV. 次にビーズをPBS/0.1%BSA125μl中に最懸濁させた。
【0347】
B. ゲノムDNAの予備濃縮
I. メーカーの指示に従ってEcoR1及びHindIIIで予め消化した6.5μgのゲノムLNCaPDNAを、洗浄済みビーズに添加した。
II. 試料を45分間室温で揺動させた。
III. PBS/0.1%BSAで4回ビーズを洗浄した。
IV. 次に40μlの水でビーズを再懸濁させた。
【0348】
C. 捕捉されたDNAの重亜硫酸塩処理
I. 20μlの捕捉されたDNAを以下の通りに重亜硫酸塩で処理した。
II. 2μl(1/10体積)の3MのNaOH。15分間、37℃で混合物をインキュベートした。
III. インキュベーションの後、208μlの2Mのメタ重亜硫酸ナトリウムを添加した。試料を200μlの鉱油により被覆した。
IV. 次に55℃で一晩試料をインキュベートした。
V. メタ重亜硫酸ナトリウムでの処理後、油を除去し、1μlのtRNA(20mg/ml)。
VI. 800μlの水を試料に添加し、混合し、次に1mlのイソプロパノールを添加した。試料を再度混合し、30分間4℃で放置した。
VII. 10〜15分間、微小遠心分離機内で試料を回転させ、ペレットを80%のETOHで2回洗浄し、毎回ボルテックスに付した。
VIII. ペレットを乾燥させ、次にpH10.5の50μlのT/E(10mMのトリス/0.1mMのEDTA)中で再懸濁させた。
IX. 試料を1時間72℃でインキュベートさせた。
【0349】
D. PNA捕捉ビーズの調製
GSTP!遺伝子(受入れ番号M24485)のメチル化された配列を認識するため、以下のPNAを合成した。
PNA 5’アミン−CTA ACG CGC CGA AAC
I. 10μlのカルボキシレート修飾済みMagnebindTMビーズ(ピアース(Pierce) Cat#21353)を清潔な1.5ml入り試験管に移し、90μlのPBS溶液を磁気ビーズに添加した。
II. ビーズを混合し、次に磁化させ、上清を廃棄した。ビーズを、一回につき100μlのPBS中で2回洗浄し、最終的にpH4.5の90μlの50mMのMES緩衝液50mMの中に再懸濁させた。
III. 試料に1μlの250μMPNAを添加し、試験管をボルテックスに付し、10〜20分間室温で放置した。
IV. 10μlの調製されたばかりの25mg/mlのEDC溶液(ピアース/シグマ (Pierce / Sigma))を次に添加し、試料をボルテックスに付し、最高60分間室温又は4℃のいずれかでインキュベートした。
V. 次に試料を磁化させ、上清を廃棄した。
VI. 10分間、0.25MのNaOH又は0.5MのトリスpH8.0のいずれか100μlを添加することにより、ビーズを遮断した。
VII. その後、PBS溶液で2回ビーズを洗浄し、最後に100μlのPBS溶液中で再懸濁させた。
【0350】
E. 抗体濃縮した重亜硫酸塩処理されたDNAに対するPNAコーティングした捕捉ビーズのハイブリダイゼーション
I. 10μlのPNAコーティングされたビーズを、5μlの抗体濃縮した重亜硫酸塩処理済みDNA及び蒸留水で1:1に希釈した35μlのExpress Hyb溶液(Clontech (クローンテック))と共に、新鮮な1.5ml入り遠心分離管に添加した。
II. 試料を混合し、1時間55℃で放置した。
III. 55℃で×2SSC/0.1%SDSで1回、試料を洗浄した。磁化し、上清を廃棄した。
IV. さらに55℃で×1SSC/0.1%SDSで1回、試料を洗浄した。磁化し、上清を廃棄した。
V. 最後に、20μlの×1SSC/0.1%SDS内で試料を再懸濁させた。
【0351】
F. 検出オリゴヌクレオチドのキナーゼ処理
初期PNA捕捉内で用いられる領域の下流側のメチル化された領域に対して、4つの特異的検出オリゴヌクレオチドを設計した。これらのプライマの配列が以下に示されている。
DETECT−1 5’−TAAATCACGACGCCGACCGCTCTT−アミン3’ (配列番号1)
DETECT−2 5’−AAAACGCGAACCGCGCGTACTCA−アミン3’(配列番号2)
DETECT−3 5’−CCTAAAAACCGCTAACGACACTA−アミン3’(配列番号3)
DETECT−4 5’−TAAACCACGATATAAAACGACACTC−アミン3’ (配列番号4)
【0352】
合成オリゴヌクレオチドを以下の通りにキナーゼ処理した。
オリゴ 40ng
×10緩衝液 2μl
T4キナーゼ 2μl
ガンマP32 4μl
水 20μlまで
【0353】
反応物を60分間37℃で加熱し、次に酵素を5分間95℃で熱変性させた。
【0354】
G. 蛍光ビーズに対するキナーゼ処理済みオリゴヌクレオチドの固定
I. 5μlのキナーゼ処理済みの検出オリゴを、以下の通り、10−7希釈Molecular Probes (モレキュラー・プローブ) カルボキシレートフルオロスフェア0.5μM(Cat#F−8812−pink)1μlにカップリングさせた。
10−7のフルオロスフェア0.5μM 1μl
キナーゼ処理済み検出オリゴ 5μl
50mMのMESpH8.0 12μl
10mg/mlのEDC(シグマ(Sigma)) 2μl
II. ビーズを室温で1時間放置した。
III. SSC/0.1%SDSで1回ビーズを洗浄し、以下の通り再懸濁させた。
IV. Detect 1. 20μlの×0.1SSC/0.1%SDS
V. Detect 2. 10μlの×0.1SSC/0.1%SDS
VI. Detect 3. 10μlの×0.1SSC/0.1%SDS
VII. Detect 4. 10μlの×0.1SSC/0.1%SDS
【0355】
H. PNA捕捉された抗体濃縮済みの重亜硫酸塩処理されたDNAに対する検出オリゴのハイブリダイゼーション
I. セクションFからのビーズを磁化し、上清を除去した。
II. 蒸留水で1:1に希釈した47μlのExpress Hyb溶液(クローンテック (Clontech))を試料に添加した。
III. 試料に対して、検出ビーズ1−4各々3μlずつ(合計容積12μl)を添加した。
IV. 1時間55℃で試料をインキュベートした。
V. 55℃で×2SSC/0.1%SDSで1回試料を洗浄した。磁化し、上清を廃棄した。
VI. 55℃で×1SSC/0.1%SDSさらに1回試料を洗浄した。磁化し、上清を廃棄した。
VII. 最後に、5mlのInstaGelシンチラントの中にビーズを再懸濁させ、放射能を、チェレンコクプロトコルを用いたシンチレーション計数により決定した。
【0356】
結果
図6は、抗体を受けなかったゲノムDNA試料と抗体捕捉試料を比較した場合に提供される濃縮係数を示す。
【0357】
図7は、抗体捕捉多重リガンドアッセイを用いた非PCRシグナル増幅を示す。結果は、1.LNCaPDNA(メチル化されたDNA)について抗体濃縮無し、2.抗体濃縮されたDu145DNA(メチル化されていないDNA)及び3.抗体濃縮されたLNCaPDNA(メチル化されたDNA)を用いて得られたシグナルを示す。
【0358】
ゲノムDNA配列を捕捉するためのINAプローブ及びPCRを用いた検出
アッセイは、図8に要約されている。この方法を用いて、問題の配列は以下のように検出される。
I. 重亜硫酸塩転換済みのメチル化された領域又は重亜硫酸塩転換済みのメチル化されていない領域に対して導かれたINAを、問題の配列の5’領域に対し設計し、次に磁気ビーズ又は任意の固相にカップリングする。
II. INA/ビーズ複合体を、重亜硫酸塩処理したDNAと混合し、洗浄して非標的DNAを除去する。
III. その後、捕捉された材料は、所望の配列が捕捉されたことを正のPCRが示した場合に捕捉部位から下流側の配列を検出するべくPCRのための入力材料として使用される。
IV. INAリガンドは同様に、形状で認識できるあらゆる粒子に結合され得、従って、何千もの反応が唯一の反応試験管の中で発生し得る。
V. INA1が形状1の粒子に固定され、INA2が形状2の粒子に固定され、INA3が形状3の粒子に固定されるといったような形で、INA、PNA又はオリゴなどがかかる粒子に固定され、次に粒子はその後の反応のため全て一本の試験管内に入れられる。
VI. INAは同様に、PCRプレートのウェルに物理的に結合され得、反応全体は単一のウェル内で実施され得る。こうして、生成された正のシグナルがプレート内の位置により(メチル化/メチル化無しについて)解読され得る「キット」フォーマットが可能となる(アガロースゲル実験結果については以下の図9を参照のこと)。
【0359】
磁気ビーズに対するアミン修飾された核酸のカップリング
I. 清浄な1.5ml入り試験管に対し、10μlのカルボキシレート修飾済みMagnabindTMビーズ(ピアース(Pierce))を移し、90μlのPBS溶液を磁気ビーズに添加した。
II. 次にビーズを混合し、次に磁化し、上清を廃棄した。ビーズを一回につき100μlのPBS中で2回洗浄し、最終的に90μlの50mMMES緩衝液pH4.5又は、メーカーの仕様書に規定されている通りのもう1つの緩衝液中で再懸濁させた。
III. 1μlの250μMINA(濃度は、オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション実験により決定される通りの選択されたINAの比活性に応じて異なる)を、試料に加え、試験管をボルテックスに付し、10〜20分間室温で放置した。
IV. その後、10μlの新たに調製された25mg/mlのEDC溶液(ピアース/シグマ (Pierce / Sigma))を次に添加し、試料をボルテックスに付し、室温か又は4℃で最高60分インキュベートした。
V. その後試料を磁化し、上清を廃棄し、必要とあらば、10分間、0.25MのNaOH又は0.5MのトリスpH8.0のいずれかを100μl添加することによってビーズを遮断した。
VI. 次にビーズをPBS溶液で2回洗浄し、最終的に100μlのPBS溶液中で再懸濁させた。
【0360】
ゲノムDNAに対するINAでコーティングされた磁気ビーズを用いたハイブリダイゼーション
10μlのINAコーティング済みMagnabindTMビーズを清浄な試験管に移し、ストレート又は蒸留水中で1:1に希釈した40μlのExpress HybTM 緩衝液(クローンテック (Clontech))、或いはその他のあらゆる市販の又は自家製ハイブリダイゼーション緩衝液を加えた。緩衝液は、既知の濃度のカチオン/アニオン又は両性洗浄剤のいずれか、又はヘパリン及びポリアミノ酸といったようなその他の添加剤をも含有し得る。
【0361】
その後上述の溶液にDNA1〜5μlの熱変性された試料を添加し、試験管をボルテックスに付し次に20〜60分、選ばれたINAの融解温度に応じて55℃又はもう1つの温度でインキュベートする。
【0362】
試料を磁化し、上清を廃棄し、1回あたり5分間、以前のステップからのハイブリダイゼーション温度で0.1×SSC/0.1%SDSで2回ビーズを洗浄し、2回洗浄の間に試料を磁化させた。
【0363】
INA捕捉されたDNAのPCR増幅
以下の通り、最終的な再懸濁された試料体積の1/5である、1μlの処理済みDNAに対し、PCR増幅を実施した。各プライマ1μlあたり6ng、Promega (プロメガ) PCRマスターミックスを用いて、1μlの重亜硫酸塩処理済みゲノムDNAを含有する25μlの反応混合物内でPCR増幅を実施した。重亜硫酸塩処理済みDNAからのGSTP1の増幅のために用いられる鎖特異的なネスティングされたプライマは、GST−9(967−993)
TTTGTTGTTTGTTTATTTTTTAGGTTT(F)GST−10(1307−1332)(配列番号5)
AACCTAATACTACCAATTAACCCCAT第1ラウンドの増幅条件(配列番号6)である。
【0364】
第1ラウンドの増幅の1μlを、
プライマ(R)GST−11(999−1027)
GGGATTTGGGAAAGAGGGAAAGGTTTTTT(F)GST−12(1281−1306)(配列番号7)
ACTAAAAACTCTAAAAACCCCATCC(R)(配列番号8)
を含有する第2ラウンドの増幅反応混合物に移した。プライマの場所は、GSTP1配列(受入れ番号M24485)に従って示されている。PCR産物の試料を標準的な条件の下でThermoHybaid PX2サーマルサイクラーの中で増幅させた。
【0365】
50mlのアガロースあたり1滴の臭化エチジウム(CLP#5450)を含有する1%のTAE内で、アガロースゲル(2%)を調製した。5μlのPCR由来の産物を、1μlの5×アガロースローディングバッファーと混合し、潜水水平電気泳動タンクを用いて×1TAE中で125mAで電気泳動させた。マーカーは、低100〜1000bpタイプであった。Kodak (コダック) UVIdoc EDAS290システムを用いて、UV照射の下でゲルを視覚化した。
【0366】
図9は、INA捕捉及びPCR方法のアガロースゲル表現を示している。メチル化されていないゲノムDNA配列に特異的なINAリガンドが、磁気ビーズにカップリングされ、ゲノム重亜硫酸塩処理済みDNAと混合された。ビーズ/DNA複合体を洗浄し、結合した分子を、下流側領域についてのPCRにおける鋳型として使用した。レーン:マーカー、1、2、3、ここで
レーン1:HepG2DNA(標的部位においてメチル化されているものとして知られている)、
レーン2:Du145DNA(標的部位においてメチル化されていないものとして知られている)、
レーン3:BL13DNA(標的部位においてメチル化されていないものとして知られている)。
【0367】
結果は、磁気ビーズにカップリングされたメチル化されていない標的核酸に向けられたINAリガンドを用いて、INAが、メチル化されていない重亜硫酸塩処理された合計ゲノムDNAを特異的に捕捉することができる、ということを示している。レーン1で用いられているゲノムDNA(HepG2)は、INAが導かれたゲノム遺伝子座でメチル化されている。レーン2(Du145)及び3(BL13)で用いられているゲノムDNAは、INAが導かれたゲノム遺伝子座でメチル化されておらず、その結果両方のレーンで正のPCRシグナルがもたらされている。その上、この例は、メチル化された/メチル化されていない標的核酸の存在を迅速に決定するためPCR検出と共に該アプローチを使用し得るということを示している。
【0368】
メチル化された混合物を用いたINAリガンドの特異性
INA捕捉ビーズの調製
以下のINAは、GSTP1遺伝子のメチル化された配列及び同じ領域のメチル化されていないバージョンを認識するように合成された(受入れ番号;M24485)。(Yは偽挿入ヌクレオチドを表わす)。
【0369】
メチル化されたINA−1 5’アミン−YA TCY GGC YGC GCY AAC YTA Y(配列番号9)
メチル化されていないINA−2 5’アミン−CTA ACG CGC CGA AAC(配列番号10)
【0370】
I. 清浄な1.5ml入り試験管に対し、10μlのカルボキシレート修飾済みMagnabindTMビーズ(Pierce(ピアース)cat # 21353)を移し、90μlのPBS溶液を磁気ビーズに添加した。
II. 次にビーズを混合し、次に磁化し、上清を廃棄した。ビーズを一回につき100μlのPBS中で2回洗浄し、最終的に90μlの50mMMES緩衝液pH4.5中で再懸濁させた。
III. 1μlの250μMPNA)を、試料に加え、試験管をボルテックスに付し、10〜20分間室温で放置した。
IV. その後、10μlの新たに調製された25mg/mlのEDC溶液(Pierce / Sigma (ピアース/シグマ))を次に添加し、試料をボルテックスに付し、室温か又は4℃で最高60分インキュベートさせる。
V. その後試料を磁化し、上清を廃棄した。
VI. 10分間、0.25MのNaOH又は0.5MのトリスpH8.0のいずれかを100μl添加することによってビーズを遮断した。
【0371】
次にビーズをPBS溶液で2回洗浄し、最終的に100μlのPBS溶液中で再懸濁させた。
【0372】
メチル化された及びメチル化されていない合成GSTP1配列に対するINAリガンドのハイブリダイゼーション
2つの合成100bpオリゴヌクレオチドを、GSTP1遺伝子のメチル化された及びメチル化されていない領域を示すように設計した。
【0373】
メチル化されていない配列
5’AGGGAATTTTTTTTTGTGATGTTTTGGTGTGTTAGTTTGTTGTGTATATTTTGTTGTGGTTTTTTTTTTGGTTTTTTTGGTTAGTTGTGTGGTGATTTTGGGGATTTTAG−3’(配列番号11)
メチル化された配列
5’AGGGAATTTTTTTTCGCGATGTTTCGGCGCGTTAGTTCGTTGCGTATATTTCGTTGCGGTTTTTTTTTTGGTTTTTTCGGTTAGTTGCGCGGCGATTTCGGGGATTTTAG−3’(配列番号12)
【0374】
メチル化された及びメチル化されていない配列を次に以下のメチル化されたもの対メチル化されていないものの比で混合した。
100:0% 25:75%
99:1% 10:90%
95:5% 5:95%
90:10% 1:99%
75:25% 0:100%
50:50%
【0375】
ハイブリダイゼーション反応
I. 蒸留水で1:1に希釈した40μlのExpress Hyb溶液(クローンテック(Clontech))を5μlのカップリングされたビーズに添加した。
II. 5μlのオリゴ混合物を添加し、溶液を積極的なピペッティングにより混合して粒子を再懸濁させた。
III. 次に試料を30分間50℃でインキュベートして、標的配列の結合を可能にした。
IV. ビーズを磁化し、上清を除去した。
V. 次にビーズを、5分間50℃で×2SSC/0.1%SDSで1回洗浄した。
VI. ビーズを磁化させ、上清を除去した。
VII. ビーズを洗浄し、さらにもう1回、5分間50℃で×1SSC/0.1%SDSで洗浄した。
【0376】
検出オリゴヌクレオチドのキナーゼ処理
メチル化された又はメチル化されていないのいずれかの合成オリゴ配列の3’領域に対して結合した2つの検出オリゴヌクレオチドを合成した。
メチル化された検出オリゴヌクレオチド
5’−AAA CTA ACA CAC CAA AAC ATC ACA AA−アミン−3’(配列番号13)
メチル化されていない検出オリゴヌクレオチド
5’−GAA CTA ACG CGC CGA AAC ATC GCG AA−アミン−3’(配列番号14)
【0377】
オリゴを、以下の通りにキナーゼ処理した。
オリゴ 100ng
×10緩衝液 2μl
T4キナーゼ 2μl
ガンマP32 4μl
水 20μlまで
【0378】
反応物を60分間37℃で加熱し、次に酵素を5分間95℃で熱変性させた。反応体積を次に、PCRグレードの水で55μlに調整した。
【0379】
INA捕捉磁気ビーズに対するキナーゼ処理済みオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション
I. 蒸留水で1:1に希釈した45μlのExpressHyb溶液(クローンテック(Clontech))に洗浄済みのINA捕捉ビーズを再懸濁した。
II. 5μlのキナーゼ処理済みオリゴを添加し、溶液を積極的なピペッティングにより混合して粒子を再懸濁させた。
III. 次に試料を30分間50℃でインキュベートして、標的配列の結合を可能にした。
IV. ビーズを磁化し、上清を除去した。
V. 次にビーズを、5分間50℃で×2SSC/0.1%SDSで1回洗浄した。
VI. ビーズを磁化させ、上清を除去した。
VII. ビーズをさらにもう1回、5分間50℃で×1SSC/0.1%SDSで洗浄した。
VIII. ビーズを磁化し、上清を除去した。
IX. 最終的に、ビーズを5mlのInsta Gelシンチラント中に再懸濁させ、チェレンコフプロトコルを用いたシンチレーション計数により放射能を決定した。
【0380】
結果は、それぞれに、メチル化されていない及びメチル化されたDNAに対して導かれたINAの特異性を実証する図10及び図11に示されている。
【0381】
INA対PNA対オリゴヌクレオチドの特異性
捕捉ビーズの調製
INA対PNA対オリゴヌクレオチドの特異性を判定するため、以下のプローブを合成した。
INAプローブ 5’アミン−YA TCY GGC YGC GCY AAC YTA Y(配列番号15)
PNAプローブ 5’アミン−ATC GCC GCG CAA CTA Å(配列番号16)
オリゴプローブ 5’アミン−AAT CCC CGA AAT CGC CGC GCA ACT AA(配列番号17)
【0382】
プローブは、GSTP1遺伝子(受入れ番号M24485)のメチル化された配列を認識するように合成された。
I. 清浄な1.5ml入り試験管に対し、10μlのカルボキシレート修飾済みMagnabindTMビーズ(ピアース(Pierce)cat # 21353)を移し、90μlのPBS溶液を磁気ビーズに添加した。
II. 次にビーズを混合し、次に磁化し、上清を廃棄した。ビーズを一回につき100μlのPBS中で2回洗浄し、最終的に90μlの50mMMES緩衝液pH4.5中で再懸濁させた。
III. 1μlの250μMPNAを、試料に加え、試験管をボルテックスに付し、10〜20分間室温で放置した。
IV. その後、10μlの新たに調製された25mg/mlのEDC溶液(ピアース/シグマ(Pierce / Sigma))を次に添加し、試料をボルテックスに付し、室温か又は4℃で最高60分インキュベートさせる。
V. その後試料を磁化し、上清を廃棄した。
VI. 10分間、0.25MのNaOH又は0.5MのトリスpH8.0のいずれかを100μl添加することによってビーズを遮断した。
VII. 次にビーズをPBS溶液で2回洗浄し、最終的に100μlのPBS溶液中で再懸濁させた。
【0383】
合成GSTP1配列に対するビーズ/プローブ複合体のハイブリダイゼーション
複合体110bpオリゴヌクレオチドを、GSTP1遺伝子のメチル化された領域を示すように設計した。
5’AGGGAATTTTTTTTCGCGATGTTTCGGCGCGTTAGTTCGTTGCGTATATTTCGTTGCGGTTTTTTTTTTGGTTTTTTCGGTTAGTTGCGCGGCGATTTCGGGGATTTTAG−3’(配列番号18)
【0384】
合成オリゴを以下の通りに、1/10、1/100及び1/1000でキナーゼ処理した。
オリゴ 2μl
×10緩衝液 2μl
T4キナーゼ 2μl
ガンマP32 4μl
水 20μlまで
【0385】
60分間37℃で反応物を加熱し、次に酵素を5分間95℃で熱変性させた。
【0386】
ハイブリダイゼーション反応
I. 1.5ml入り遠心分離管の中の5μlの磁気ビーズコーティングされたプローブに対して、蒸留水で1:1に希釈された40μlのExpress Hyb溶液(Clontech (クローンテック))を添加した。
II. 5μlのキナーゼ処理済みオリゴを添加し溶液を積極的なピペッティングにより混合して粒子を再懸濁させた。
III. 次に試料を30分間55℃でインキュベートして、標的配列の結合を可能にした。
IV. ビーズを磁化し、上清を除去した。
V. 次に粒子を、1回につき5分間55℃で×2SSC/0.1%SDSで2回洗浄した。
VI. ビーズをさらにもう1回、5分間55℃で×1SSC/0.1%SDSで洗浄した。
VII. 上清を除去し、最後にInsta Gelシンチラント5ml中でビーズを再懸濁させ、チェレンコフプロトコルを用いたシンチレーション計数により放射能を決定した。
【0387】
図12は、GSTP1遺伝子のメチル化された領域に対して設計された合成110bpオリゴとのPNA、INA及びオリゴ試料のハイブリダイゼーション時点で生成されたシグナルを示している。オリゴは、記述されている通りに希釈され、次に標識され、試料に対してハイブリッド形成された。ここでわかるように、INAは、PNAプローブよりも高くないものの類似のシグナル強度を示した。
【0388】
図12は、PNA、INA及びオリゴヌクレオチドが同一のゲノム遺伝子座を検出するために設計された場合に生成される結果を示している。PNA、INA及びオリゴヌクレオチドリガンドは、系列希釈された合成重亜硫酸塩転換された配列とハイブリッド形成された。ハイブリダイゼーションの後、試料を洗浄して、未結合分子を除去し、次に残りの特異的結合済み分子を定量化した。ここでわかるように、INAは、PNAに比べ高い特異性、及び従来のオリゴヌクレオチドのものに比べ15倍以上の検出シグナル強度の増加を示した。
【0389】
固体支持体上のアレイタイプのハイブリダイゼーションを用いたINAリガンド対オリゴヌクレオチドの比較
INAリガンド対オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション試験を行なうため、以下のINAプローブを、次に記した記号のさまざまな遺伝子座に対して合成した。M=メチル化された配列検出、U=メチル化されていない配列検出。
【0390】
【表3】
【0391】
INAリガンドをオリゴと比較するため、同じオリゴヌクレオチド配列を合成した。
【0392】
Qiagen Multiplex PCRキット(キアゲン(Qiagen)P/N206143)を用い、標準的条件の下で10×多重反応を用いて各々の選択されたゲノム領域からPCR産物を生成した。
【0393】
固体支持体に対するINAリガンド及びオリゴヌクレオチドのカップリング
I. Biodyne Cトランスファメンブラン(Pall P/70155A)の8cm×12cmの切片をカットし、0.1NのHClで簡単に洗い流した。
II. メンブランを15分間、調製されたばかりのEDC水溶液(シグマ(Sigma))の中に浸漬した。
III. 水中でメンブランを洗い流し、96ウェルのドットブロット装置内に入れた。
IV. 500mgのINA及びオリゴを、20μlのPBS中に希釈し、適切なウェル内へとピペット取りした。
V. 10分間メンブランを室温に放置し、その後真空を加え、ウェルを乾燥させた。
VI. その後200μlのPBS/0.1%Tween 20でウェル2回洗浄し、2回の洗浄間に真空を加えた。
VII. メンブランをブロッティング装置から除去し、メンブラン上の残りの活性部位を室温で10分間0.1NのNaOHでクエンチングさせた。
VIII. 蒸留水でメンブランを洗浄し、最終的に使用に先立ち30分間空気乾燥させた。
【0394】
P32で標識された多重プローブの調製
Prime−a−gene 標識系(プロメガ (Promega) Cat#U1100)を用いて、放射性プローブを調製した。
PCR産物 2μl
PCRグレードの水 21μl
【0395】
5分間95℃で試料を加熱し、次に氷上で急冷した。
dNTPミックス 6μl
プライマミックス 15μl
P32dATP 5μl
クレノウ 1μl
【0396】
プローブを室温で1時間放置し、次に、メーカーの指示に従って、ウイザードDNAクリーンナップシステムを用いて精製した。
【0397】
コーティングしたメンブランの予備ハイブリダイゼーション/ハイブリダイゼーション
I. 1時間、1分あたり7rpmで回転する55℃のローラーボトル内で100μg/mlのせん断されたサケ精巣DNA(シグマ(Sigma))を含む10mlのExpress Hyb溶液(クローンテック(Clontech))中で、メンブランを予備ハイブリッド形成させた。
II. 5分間プローブを煮沸し、5分間氷上で急冷させ、次にメンブランに添加させた。
III. 一分あたり7rpmで回転するボトルの中で55℃で一晩ハイブリダイゼーションを実施した。
【0398】
メンブランの洗浄
I. その後メンブランを、1回あたり20分間55℃で、×2SSC/0.1%SDSで2回洗浄した。
II. メンブランを20分間50℃で、×1SSC/0.1%SDSでさらに1回洗浄した。
III. 最後に、メンブランを20分間55℃で、×0.1SSC/0.1%SDSでさらに1回洗浄した。
IV. メンブランを、グラッドラップ(glad wrap)で包み、Molecular Dynamics (モレキュラー・ダイナミクス)リン画像形成機に暴露した。
【0399】
INA対従来のオリゴヌクレオチドを用いたハイブリダイゼーション結果は、図13に記されている。上部2列のシグナルは、INAを用いて生成された。下部2列のシグナルは、従来のオリゴヌクレオチドを用いて生成された。図13から、INAを用いて生成されたハイブリダイゼーションシグナルの質の高さが明らかにわかる。
【0400】
PNAに対するINAの利点
INAリガンドは、標準オリゴヌクレオチドプラットフォーム上で合成され得、一方PNAリガンドは、専門化されたペプチド合成機上で合成されなくてはならない。
【0401】
PNAリガンドは、PCR、逆転写、実時間PCR、等温増幅反応、拡張反応といったような標準的分子技術ではプライマとして使用することができない。これとは対照的に、INAリガンドは、以上の全てにおいて使用可能であり、そのため分子生物学にとってはるかに有用な手段となっている。
【0402】
INAリガンドをエクソヌクレアーゼ耐性のものにすることも可能である。
【0403】
INAリガンドは、DNAに選択的に結合するように設計でき、一方PNAリガンドは、DNA及びRNAの両方に結合する。
【0404】
INAリガンドは、同様に内因性蛍光を示しそのため実時間PCRといったような応用分野において有用な分子となっており、一方PNAリガンドはそうではない。
【0405】
INAリガンドは同時に、PNAリガンドに比べた場合、自己親和性が減少している。
【0406】
本発明者らは、PNAリガンドが表面に非特異的に粘着するという意味でむしろ「粘着性」でもあるということを発見した。このことは、2つのINAリガンドを同じ系内で使用した場合に、特に明白である。INAリガンドが、この問題で不利益をこうむっているとは思われない。
【0407】
要約
本発明の方法は、固体支持体に結合された1つのリガンド(好ましくはオリゴヌクレオチド又はINA)及びミクロスフェアにカップリングされた1つのリガンドを用いたあらゆるDNAの検出に応用することができる。天然のオリゴヌクレオチド又はINAを使用することができるが、その特異性、安定性及びハイブリダイゼーション速度のためINAが好まれた。
【0408】
1つの特定の適合においては、本発明の方法は、重亜硫酸塩ナトリウムで処理されたDNA中のメチル化シトシンの存在を区別するために使用することができる。ハイブリダイゼーションの特異性は、重亜硫酸塩と完全に反応しなかった分子(ウラシルに転換されなかった1つ以上のシトシン)を識別し、かつ(シトシンとしてとどまっている)CpG部位におけるメチル化シトシンとシトシンがウラシルに転換されているメチル化されていないCpG部位を区別するために使用することができる。
【0409】
もう1つの適合においては、本発明の方法は、ウラシルへと転換させるために、そのシトシンが完全に重亜硫酸塩試薬と反応しなかったDNAを識別するために使用することができる。
【0410】
重亜硫酸塩での処理は、全てのシトシンをウラシルに転換させること(ただし5−メチルシトシンは転換させない)によってDNAの配列を変更させることから、5メチルシトシンを含有する領域を認識するものの偶然5メチルシトシンを全く有していない同じ配列は認識しないことになる特異的INAを作ることが可能である。
【0411】
本発明の方法は同様に、オリゴヌクレオチド又はINAの一方又は両方の配列が1つの対立遺伝子と完全に整合するもののもう1方の対立遺伝子とは整合しない1つの遺伝子の異なる対立遺伝子の識別にも応用することができる。
【0412】
本発明の方法は、バルクDNA試料のメチル化状態の迅速な検出のための多重アレイチップを考案する上での特殊な用途を含め、以前に記述した通りの数多くの利用分野を有する。検出可能な粒子は同様に、検出及びスクリーニングプロセスをスケールアップし自動化するためにも使用可能である。
【0413】
該方法は、異なるメチル化状態が細胞の病的又は改変された状態において1つの役割を果たすことが発見されてきたその他の数多くの状態及び条件のために利用可能であることがわかるだろう。CpGメチル化による影響を受けたほんのいくつかの遺伝子の例が表3に示されている。本発明は、明らかにこのようなメチル化状態及び数多くのその他の状態の検出又は測定に利用可能である。
【0414】
当業者であれば、広範に記述された通りの本発明の精神又は範囲から逸脱することなく特定の実施形態において示された通りの該発明に対し数多くの変形形態及び/又は修正を加えることができるということを認識することだろう。従って本実施形態は、全ての点で例示的かつ非制限的なものとしてみなされるべきである。
【0415】
【表4】
【図面の簡単な説明】
【0416】
【図1】サンドイッチINAシグナル増幅を示す。
【図2】磁気ビーズ又は検出可能な粒子を用いたサンドイッチINAシグナル増幅技術を示す。
【図3】抗体を用いたメチル化されたDNAの捕捉の概略を示す。
【図4】ミクロスフェアを用いたメチル化されたDNAの検出の概略を示す。
【図5】ミクロスフェアを用いたメチル化されたDNAの検出の概略を示す。
【図6】抗体を受けつけなかったゲノムDNA試料と抗体捕捉試料を比較した場合に提供される濃縮係数の結果を示す。
【図7】抗体捕捉多重リガンドアッセイを用いた非PCRシグナル増幅の結果を示す。結果は、1.LNCaP DNA(メチル化されていないDNA)での抗体濃縮無し、2.抗体濃縮されたDu145 DNA(メチル化されていないDNA)及び3.抗体濃縮されたLNCaP DNA(メチル化されたDNA)を用いて得られたシグナルの結果を示す。
【図8】メチル化されたDNAの検出及びその後の増幅の概略図を示す。
【図9】INA捕捉及びPCR方法のアガロースゲル表現を示す。メチル化されていないゲノムDNA配列に特異的なINAリガンドが、磁気ビーズにカップリングされ、ゲノム重亜硫酸塩処理済みDNAと混合された。ビーズ/DNA複合体を洗浄し、結合した分子を、下流側領域についてのPCR内の鋳型として使用した。レーン;マーカー、1、2、3。レーン1:HepG2DNA(標的部位においてメチル化されているものとして知られている)レーン2:Du145DNA(標的部位においてメチル化されていないものとして知られている)レーン3:BL13DNA(標的部位においてメチル化されていないものとして知られている)。
【図10】メチル化されていないDNAに対して導かれたINAの特異性を示す。グラフは、DNAのメチル化百分率を示す。
【図11】メチル化されたDNAに対して導かれたINAの特異性を示す。グラフは、DNAのメチル化百分率を示す。
【図12】GSTP1遺伝子のメチル化された領域に対し設計された合成110bpオリゴとのPNA、INA及びオリゴ試料のハイブリダイゼーションの時点で生成されたシグナルを示す。オリゴは、記述された通りに希釈されており、次に標識され、試料に対しハイブリッド形成された。ここでわかるように、INAは、PNAリガンドより高くないものの類似のシグナル強度を示した。
【図13】INA対従来のオリゴヌクレオチドを用いたハイブリダイゼーションの結果を示す。上部2列は、INAを用いて生成されたシグナルである。下部2列は、従来のオリゴヌクレオチドを用いて生成されたシグナルである。結果から、INAリガンドを用いて生成されたハイブリダイゼーションシグナルの質がより優れたものであることが明確にわかる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の標的核酸の存在を検出するための方法であって、
非メチル化シトシンを修飾する作用物質で核酸を含有する試料を処理するステップ;
核酸の標的領域に結合する能力を有するインターカレーティング核酸(intercalating nucleic acid;INA)の形態をとる検出リガンドを、前記処理済み試料に供給し、前記検出リガンドが前記標的核酸に結合するのに充分な時間をおくステップ;及び
前記標的核酸の存在を示すために、前記試料中における核酸分子に対する前記検出リガンドの結合を検出するステップ、を含む方法。
【請求項2】
前記核酸が、真核生物、原核生物、ウイルスのゲノム、ミトコンドリア核酸、その他の細胞小器官内に見られる核酸、細胞外核酸、DNA及びRNA形態、並びにDNA及びRNAの天然又は人工誘導体から得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記DNA及びRNAの天然又は人工誘導体が、INA、ANA、MNA、PNA、LNA、HNA、CNA及びそのキメラの組合せからなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記核酸がゲノムDNAである、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記作用物質が、重亜硫酸塩、酢酸塩又はクエン酸塩から選択される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記作用物質が、水の存在下でシトシンをウラシルへと修飾する試薬である重亜硫酸ナトリウムである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記INAが、(S)−1−O−(4,4’−ジメトキシトリフェニルメチル)−3−O−(1−ピレニルメチル)−グリセロールのホスホラミダイトである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記標的領域が、前記未処理核酸内に少なくとも1つの5’−メチルシトシンを含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
Nが可能性のある4つの塩基A、T、C又はGのいずれか1つを表わすとき、前記検出リガンドが、DNAのCpG又はCpNpG含有領域を標的とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
DNAの前記CpG又はCpNpG含有領域が、
遺伝子の調節領域中にある、又は
化学物質、毒素、薬物、放射線、合成又は天然化合物、並びにウイルス、細菌、真菌及びプリオンなどの微生物又はその他の感染性物質を含む環境因子により活性が改変される、プロモータ、エンハンサ、腫瘍遺伝子、レトロエレメント、可動又は可動化可能な配列、を含む任意の調節因子または調節領域、あるいはその他の調節因子のエンハンサ中にある、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記試料の処理に先立ち、前記核酸が、濃縮又は選択ステップに供される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記濃縮又は選択ステップが、音波処理及びせん断を含む物理的方法、及び、酵素消化、酵素処理、制限消化、ヌクレアーゼ処理、DNase処理、濃縮、抗体捕捉、酸性又は塩基性消化を含む化学的方法、並びにそれらの組合せからなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記濃縮又は選択ステップが、メチル化された核酸試料を得るための5’−メチルシトシンを標的とする抗体を用いる処理である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
核酸のメチル化シトシンと非メチル化シトシンの識別能を有するつインターカレーティング核酸(INA)の形態をとる検出リガンドを前記処理済み試料に供給することによって標的核酸のメチル化を検出する方法であって、
前記試料中の前記核酸に対する前記検出リガンドの結合の検出が、前記標的核酸のメチル化の程度を示す、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
標的核酸配列の第1の部分を認識する能力を有する捕捉リガンドが固体支持体に結合され、前記処理済み核酸が第1の捕捉リガンドを介して支持体に結合するようにされており、
次に、前記結合した核酸が、前記標的核酸配列の第2の部分を認識する能力を有する検出リガンドに暴露され、前記検出リガンドが、支持体に結合された標的核酸に結合するのに充分な時間をおき、
前記支持体に結合した核酸に対する前記検出リガンドの結合が、前記試料中の前記標的核酸の存在を判定するために測定され、
前記捕捉リガンド又は前記検出リガンドのうちの少なくとも1つがINAリガンドである、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記リガンドが、INAプローブ、ペプチド核酸(PNA)プローブ、LNAプローブ、HNAプローブ、ANAプローブ、MNAプローブ、オリゴヌクレオチド、修飾オリゴヌクレオチド、一本鎖DNA、RNA、アプタマー、抗体、タンパク質、ペプチド、それらの組合せ、及びそれらのキメラ体からなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記捕捉リガンドが、INAプローブ、PNAプローブ、及びオリゴヌクレオチドプローブからなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記捕捉リガンド及び前記検出リガンドの両方がINAリガンドである、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記検出リガンドが、DNAのメチル化シトシンと非メチル化シトシンの識別能を有するINAリガンドであり、
前記検出リガンドの結合度又は結合量が、前記標的核酸のメチル化の程度を示す、請求項15〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記支持体が、プラスチック材料、蛍光ビーズ、磁気ビーズ、造形粒子、プレート、マイクロタイタープレート、合成又は天然メンブラン、ラテックスビーズ、ポリスチレン、カラムサポート、ガラスビーズ又はスライド、ナノチューブ、アレイ、ファイバ、有機及び無機支持体からなる群から選択される、請求項15〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記支持体が、磁気ビーズ、蛍光ビーズ、造形粒子、ビーズアレイ、又は1つ以上のウェルを備えたマイクロタイタープレートである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
複数の捕捉リガンドが前記固体支持体上に整列されている、請求項15〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記INA検出リガンドには、検出可能な標識が固定されている、請求項1〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
検出可能な標識が、化学ルミネセンス、蛍光、放射能、酵素、ハプテン及びデンドリマーからなる群から選択されている、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記INA検出リガンドに結合された前記核酸がさらにプロセス又は処理される、請求項1〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記核酸が、核酸の領域を標的とするプライマを用いてポリメラーゼ連鎖反応によって増幅される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記プライマがINAリガンドである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
DNAのメチル化シトシンと非メチル化シトシンの識別能を有する少なくとも1つのINAリガンドを含む、非メチル化シトシンを修飾する作用物質で処理された核酸を分析するためのキット。
【請求項29】
1つ以上のINAリガンドが固体支持体に固定化されている、請求項28に記載のキット。
【請求項30】
前記固体支持体が、プラスチック材料、蛍光ビーズ、磁気ビーズ、造形粒子、プレート、マイクロタイタープレート、合成又は天然メンブラン、ラテックスビーズ、ポリスチレン、カラムサポート、ガラスビーズ又はスライド、ナノチューブ、アレイ、ファイバ、有機及び無機支持体からなる群から選択される、請求項29に記載のキット。
【請求項31】
処理済みDNAを増幅するためのプライマをさらに含む、請求項28〜30のいずれか1項に記載のキット。
【請求項32】
前記プライマがINAプライマである、請求項31に記載のキット。
【請求項1】
試料中の標的核酸の存在を検出するための方法であって、
非メチル化シトシンを修飾する作用物質で核酸を含有する試料を処理するステップ;
核酸の標的領域に結合する能力を有するインターカレーティング核酸(intercalating nucleic acid;INA)の形態をとる検出リガンドを、前記処理済み試料に供給し、前記検出リガンドが前記標的核酸に結合するのに充分な時間をおくステップ;及び
前記標的核酸の存在を示すために、前記試料中における核酸分子に対する前記検出リガンドの結合を検出するステップ、を含む方法。
【請求項2】
前記核酸が、真核生物、原核生物、ウイルスのゲノム、ミトコンドリア核酸、その他の細胞小器官内に見られる核酸、細胞外核酸、DNA及びRNA形態、並びにDNA及びRNAの天然又は人工誘導体から得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記DNA及びRNAの天然又は人工誘導体が、INA、ANA、MNA、PNA、LNA、HNA、CNA及びそのキメラの組合せからなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記核酸がゲノムDNAである、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記作用物質が、重亜硫酸塩、酢酸塩又はクエン酸塩から選択される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記作用物質が、水の存在下でシトシンをウラシルへと修飾する試薬である重亜硫酸ナトリウムである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記INAが、(S)−1−O−(4,4’−ジメトキシトリフェニルメチル)−3−O−(1−ピレニルメチル)−グリセロールのホスホラミダイトである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記標的領域が、前記未処理核酸内に少なくとも1つの5’−メチルシトシンを含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
Nが可能性のある4つの塩基A、T、C又はGのいずれか1つを表わすとき、前記検出リガンドが、DNAのCpG又はCpNpG含有領域を標的とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
DNAの前記CpG又はCpNpG含有領域が、
遺伝子の調節領域中にある、又は
化学物質、毒素、薬物、放射線、合成又は天然化合物、並びにウイルス、細菌、真菌及びプリオンなどの微生物又はその他の感染性物質を含む環境因子により活性が改変される、プロモータ、エンハンサ、腫瘍遺伝子、レトロエレメント、可動又は可動化可能な配列、を含む任意の調節因子または調節領域、あるいはその他の調節因子のエンハンサ中にある、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記試料の処理に先立ち、前記核酸が、濃縮又は選択ステップに供される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記濃縮又は選択ステップが、音波処理及びせん断を含む物理的方法、及び、酵素消化、酵素処理、制限消化、ヌクレアーゼ処理、DNase処理、濃縮、抗体捕捉、酸性又は塩基性消化を含む化学的方法、並びにそれらの組合せからなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記濃縮又は選択ステップが、メチル化された核酸試料を得るための5’−メチルシトシンを標的とする抗体を用いる処理である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
核酸のメチル化シトシンと非メチル化シトシンの識別能を有するつインターカレーティング核酸(INA)の形態をとる検出リガンドを前記処理済み試料に供給することによって標的核酸のメチル化を検出する方法であって、
前記試料中の前記核酸に対する前記検出リガンドの結合の検出が、前記標的核酸のメチル化の程度を示す、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
標的核酸配列の第1の部分を認識する能力を有する捕捉リガンドが固体支持体に結合され、前記処理済み核酸が第1の捕捉リガンドを介して支持体に結合するようにされており、
次に、前記結合した核酸が、前記標的核酸配列の第2の部分を認識する能力を有する検出リガンドに暴露され、前記検出リガンドが、支持体に結合された標的核酸に結合するのに充分な時間をおき、
前記支持体に結合した核酸に対する前記検出リガンドの結合が、前記試料中の前記標的核酸の存在を判定するために測定され、
前記捕捉リガンド又は前記検出リガンドのうちの少なくとも1つがINAリガンドである、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記リガンドが、INAプローブ、ペプチド核酸(PNA)プローブ、LNAプローブ、HNAプローブ、ANAプローブ、MNAプローブ、オリゴヌクレオチド、修飾オリゴヌクレオチド、一本鎖DNA、RNA、アプタマー、抗体、タンパク質、ペプチド、それらの組合せ、及びそれらのキメラ体からなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記捕捉リガンドが、INAプローブ、PNAプローブ、及びオリゴヌクレオチドプローブからなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記捕捉リガンド及び前記検出リガンドの両方がINAリガンドである、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記検出リガンドが、DNAのメチル化シトシンと非メチル化シトシンの識別能を有するINAリガンドであり、
前記検出リガンドの結合度又は結合量が、前記標的核酸のメチル化の程度を示す、請求項15〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記支持体が、プラスチック材料、蛍光ビーズ、磁気ビーズ、造形粒子、プレート、マイクロタイタープレート、合成又は天然メンブラン、ラテックスビーズ、ポリスチレン、カラムサポート、ガラスビーズ又はスライド、ナノチューブ、アレイ、ファイバ、有機及び無機支持体からなる群から選択される、請求項15〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記支持体が、磁気ビーズ、蛍光ビーズ、造形粒子、ビーズアレイ、又は1つ以上のウェルを備えたマイクロタイタープレートである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
複数の捕捉リガンドが前記固体支持体上に整列されている、請求項15〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記INA検出リガンドには、検出可能な標識が固定されている、請求項1〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
検出可能な標識が、化学ルミネセンス、蛍光、放射能、酵素、ハプテン及びデンドリマーからなる群から選択されている、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記INA検出リガンドに結合された前記核酸がさらにプロセス又は処理される、請求項1〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記核酸が、核酸の領域を標的とするプライマを用いてポリメラーゼ連鎖反応によって増幅される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記プライマがINAリガンドである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
DNAのメチル化シトシンと非メチル化シトシンの識別能を有する少なくとも1つのINAリガンドを含む、非メチル化シトシンを修飾する作用物質で処理された核酸を分析するためのキット。
【請求項29】
1つ以上のINAリガンドが固体支持体に固定化されている、請求項28に記載のキット。
【請求項30】
前記固体支持体が、プラスチック材料、蛍光ビーズ、磁気ビーズ、造形粒子、プレート、マイクロタイタープレート、合成又は天然メンブラン、ラテックスビーズ、ポリスチレン、カラムサポート、ガラスビーズ又はスライド、ナノチューブ、アレイ、ファイバ、有機及び無機支持体からなる群から選択される、請求項29に記載のキット。
【請求項31】
処理済みDNAを増幅するためのプライマをさらに含む、請求項28〜30のいずれか1項に記載のキット。
【請求項32】
前記プライマがINAプライマである、請求項31に記載のキット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2006−517402(P2006−517402A)
【公表日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−500414(P2006−500414)
【出願日】平成16年1月23日(2004.1.23)
【国際出願番号】PCT/AU2004/000083
【国際公開番号】WO2004/065625
【国際公開日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(505188906)ヒューマン ジェネティック シグネチャーズ ピーティーワイ リミテッド (15)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年1月23日(2004.1.23)
【国際出願番号】PCT/AU2004/000083
【国際公開番号】WO2004/065625
【国際公開日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(505188906)ヒューマン ジェネティック シグネチャーズ ピーティーワイ リミテッド (15)
【Fターム(参考)】
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