説明

インターネットを活用したアミューズメント農園とその統合システム

【課題】農業熟練者でない一般人においても農園管理を可能とし、関連する情報処理システムをリアルタイムで統合して、楽しんで農業ができるアミューズメント農園を提供する。
【解決手段】利用者がインターネットを介して、農園を観察し、栽培制御できるようにシステム化し、関連する内外の情報を簡便に統合できるようにするとともに、それらの情報処理を可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インターネットを介して個人でも作物栽培が可能となり、かつ作物相場や作物の品質を考慮に入れた作物栽培ができるアミューズメント農園に関する。
【従来技術】
【0002】
従来より、作物栽培は農家が実施するものであったが、作物の価格が、天候や作物相場に左右される上に、近年の輸入依存による市場の体質によって、安定収入を欠いている。
【0003】
結果として、日本の国内では新規就農者は減少を続け、高齢化した農業生産者が増えた結果として、今後の食糧自給率がたいへんな深刻な予測がなされている。
【本発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、農業をアミューズメント化することによって、これまでと異なるタイプのニーズを生み出し、多くの農業参入を促し、経済活動の核として認識されるしくみを作ることにある。
【0005】
本発明によって、生産過程の管理や生産物の販売条件に関わる管理を簡便にし、真に安全で安心な農産品を多くの人たちと少しずつ育てながら普及させていく。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、農園の管理にインターネットを活用し、作物の栽培を遠隔地でも簡便に管理できるようにし、かつ遠隔地にある農園間の情報とインターネット上で得られる農産品の出荷数量ならびにその他の関連情報から農産品の生産と販売が統轄管理されるようにする。
【0007】
そのために、インターネットを接続したカメラを用いて、農園内の作物栽培状況を観察可能とし、インターネットを経由して遠隔地の第三者のコンピューター情報端末上の画面上で、クリックやマウスの移動等の指示、あるいはマイクを介した音声指示によって、栽培作物に対する水分補給や肥料等の投与を指示することができるようにする。
【0008】
さらに、電気信号あるいは音声信号を感知するセンサーを搭載した草刈り装置を農園内で自由に運転させたり、着火装置によって暖炉に投入した薪に火をつけること、電灯機器あるいは換気装置、冷暖房装置等の稼働がインターネットを介して操作できるようにする。
【0009】
上記施設の操作に関して、不適切な指示がなされた場合には、過去のデータベースに基づいて、指示をしたコンピューター上で、要注意の画面表示をする。
【0010】
さらに上記施設のインターネットを介した操作中に、CMなどを同時に放映可能にすることによって、広告宣伝を可能にする。
【0011】
本発明では、栽培施設内を多重層構造にし、地下等の比較的安定温度帯の水あるいは空気を循環させることによって、施設内の温度ならびに湿度を安定化することを可能とする。
【0012】
栽培敷地内の栽培区画毎に作物の生育状況をカメラで観察可能し、その画像データに基づいて、画像処理し作物の生産量を数値化する。
【0013】
さらに、複数の農園の生産量を、過去の生産量と販売額のデータベースに基づいて情報処理して、農園別の総販売予想額を算出することができるとともに、そのデータをインターネット上で閲覧可能とする。
【0014】
また、作物の生育度合別に気象条件を類型化したデータベースに基づいて、任意の気象条件の際の生産量ならびに価格を予測させる。
【0015】
また作物相場の予測値に基づいて、農園の不動産証券などの取引きがインターネット上で可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、農業経験者でなくとも農作物の観察と栽培制御を、簡易にインターネットを介して遠隔地から行なうことができるとともに、作物の生産量などの情報を共有することによって相場の変動予測などの情報処理を、簡易に体感し、農業のしくみ全体をアミニューメント化することを特徴とする。
【実施例1】
【0017】
図1は、農園から離れた遠隔地にカメラを設置し、コンピュータからインターネットを介して農園内を観察あるいは栽培制御を実施する形態を示している。コンピュータ画面からの観察中にインターネットを介してCMなどを同時に放映することができれば効率的な広告にもなる。
【0018】
図2は、農園内を稼働する自動草刈り装置を示している。インターネットを介して運転を制御できるようにし、音声信号あるいは電気信号によって遠隔地より操作することができるようにする。また、図3に示すように、光センサーが感知する外壁等を利用することによって、画面上からの制御を補助する。さらに、電気信号あるいは音声信号を感知するセンサーを搭載した着火装置によって、暖炉に投入した薪に火をつけたり、電灯機器あるいは換気装置、冷暖房装置等の稼働の指示をすることが可能なシステムを施設内に装備する。
【0019】
図4は効率的な栽培を実験するために、農園施設内の温度管理を制御する上でできるだけ自然の力を活用する方法である。外気温に比較して、地下水あるいは地下空気は比較的安定な温度を保っているため、その温度を断熱材的に用いるために、施設内の外周を多重層化した層内を循環するようにする。
【実施例2】
【0020】
図5は、インターネットからの観察を可能とするカメラを設置した複数の農園をインターネットを介して連携し、その画像情報を統合して情報処理し、情報処理データを遠隔地のコンピュータで閲覧可能にするシステムを示している。
【0021】
これによって、遠隔地の情報を統合管理ができるとともに、さまざまな情報処理データをリアルタイムで取得することができる。
【0022】
図6は、農園に設置されたカメラの画像データをインターネットを介してコンピューター上に取り込み、画像処理によって作物の収量を数値化する情報処理10と、作物の過去の生産量と販売額のデータベース30と、10ならびに32基づいて、該当する作物の総出荷推定量と販売予想額を算出する情報処理部20から構成されている。このような情報処理システムによって、インターネットで連結したカメラを併設した農園毎の出荷推定量や販売予想額を過去のデータに基づいて予測することが可能となり、ゲーム的な感覚で農園の作物栽培を楽しむことができる。
【実施例3】
【0023】
図7は、作物毎の生育度合いを決定する気象条件別に類型化した作物生産量ならびに販売価格を内包したデータベース40と、任意の気象条件の情報50と、それらの情報に基づいて統計処理をする情報処理部60とから算出された予想生産量と販売価格のデータ70を示す。これらによって、気象条件毎の作物の生産量と販売価格のデータベースと照合し、任意の気象条件の際に予想される市場の作物生産量と価格を予測したシュミレーションデータに基づいて、該作物農園の作物の販売価格を予測することが可能となる。
【0024】
例えば図8に示す情報処理手順によって、作物の過去の平均的相場価格の時の平均気温と価格が高騰した際の平均気温を類型化して分散分析をし、気象庁の予報に基づいて比較し、次のように高値リスクを予測する。
【0025】
表1は仮想作物Xを生産する仮想生産地W地区の平均気温の変化の例を示す。
【表1】


【0026】
A群 平均相場時の気温とB群 相場高騰時の気温、ならびにC群 任意の時期の実測値を分散分析し、有意差のある、あるいは有意差のない平均気温℃とその時期を算出する。尚、実測値Cは毎日のデータYn(Y1、Y2、Y3・・・・Yn)を用いることによって統計データとする。
【0027】
その結果、5月の平均気温がA群に対してB群で有意差があり、B群に対してC群は有意差が認められない場合、仮想作物Xの当該収穫時期の作物相場は「高騰する可能性あり」と判定される。
【0028】
次にD群の気象庁の事前の予測によって、5月の気温が平年以下であった場合に、仮想作物Xの収穫時期の作物相場が高騰する可能性があることを予測する。
【0029】
表2は、仮想作物Xの各年度毎の国内総出荷量と相場の仮想値を示している。
【表2】

【0030】
表2に示したような国内総出荷量と相場と、表1のデータベースに基づいて図8の情報処理を実施することによって、2006年の出荷量ならびに相場は、出荷量減ならびに高値リスクありと予測された後に、統計的に予測値が算出される。
【0031】
表3は、作物Pと作物Qの最適温度を類型化したデータベースを示している。
【表3】

【0032】
このような作物毎の最適栽培温度の類型化によって、表4に示すように、実測値気温は新たな類型化したデータベース化が可能となる。最適温度以下、最適温度、最適温度以上をそれぞれ、0、1、2の数値として類型化する。
【表4】

【0033】
これによって、図8の情報処理を作物の特性に沿った気象変化であったか否かを加味したシュミレーションに役立てることが可能となる。
【0034】
このような情報処理は、データベースとして1日の中での気温の経時変化、平均雨量、台風の通過の有無などを活用し、多変量解析を活用すること等によって、よりシュミレーションの精度が上がる。
【0035】
表5は、仮想作物Nの相場の変化と作物Nを生産するF農園の不動産証券としての価値を示している。

【0036】
作物Nの相場にあわせて、作物Nを大量に出荷するF農園の不動産証券価値を作物相場から想定して予測する。作物生産量からも同様のことが可能である。
【0037】
表6は、作物Nの生産地を対象とした気象庁の予報ならびに作物の収穫前の外気温データと作物Nの最適温度と農園の不動産証券との関係を示している。F農園は、露地栽培農園ではなく、安定生産が可能な施設農園で高床式農園を仮想農園として例題としている。類型化処理は、気温の実測値の類型化処理を、表4のデータペースの類型化に準じて実施している。
【表6】

【0039】
図8の情報処理によって、作物Nは、3月の天気予報が平年以下のため、一般市場では高値が予測される。その際に農園Fは安定生産が可能な高床式土耕水耕による施設栽培を実施しているため、高値での販売が可能となる。そのため、高値の証券取引きが予測できる。
【0040】
また、F農園において3月より栽培開始して、5月出荷予定の作物Nについては、4月の時点の気温実測値が栽培最適温度を下回っているため、出荷一ヶ月前の時点で、安定生産が可能なF農園の不動産証券としての価値は、高値と予測される。このような処理システムは、農園のみならず、安定生産が可能な畜産施設あるいは養殖場などにおいても活用することができる。
【0041】
当該仕組みは、インターネットを介した作物栽培システムの管理と、その情報の共有と農園の不動産証券取引を同時に実現する。安定生産が可能な植物工場や施設農園などによって、作物毎のフランチャイズ化を実施したり、特別な栽培方法でつくられた作物毎の権利を分割し、その一部を証券化すれば、作物毎に、フランチャイズの作物の販売金額に応じた配当が受けられるしくみが可能となる。多くの作物が存在し、食料難を背景に、証券取引きが活性化すると予想される。さらに、証券取引きの対象として、インターネットを介して各地のフランチャイズ工場の作物の生産量の推移をリアルタイムで確認でき、また、過去の天候情報や過去の農作物の市場の相場の変化と照らし合わせて、作物の取引き価格の推移をデータ化することによって、アミューズメント的要素が高まり、さらに農業が活性化していくと想定される。
【0042】
本発明は、本発明の精神を逸脱しないかぎり、種々の改変をなすことができ、該改変が本発明に及ぶものである。
【発明の効果】
【0043】
本発明は、インターネットを介して農園の観察、栽培制御などを簡便に提供できるとともに、作物相場のシュミレーションや農園の不動産証券の取引きなど、さまざまな経済活動の中で楽しむことができる。これによって保守的な農業スタイルが変革し、一般人が参加しやすい農業が可能となる。また、高床式の農地のように施設管理が可能で、かつ安定生産が可能な、利便性の高い農業形態を普及させることによって、これまで農業現場になりえなかったビルの屋上、あるいは人が行き交う道路の沿線、例えば道の駅や高速道路のサービスエリアなどでも農業施設の普及が可能となり、農業が活性化すると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施例を示し、アミューズメント農園の概念図。
【図2】一実施例に関わる安定生産可能な装置の概念図。
【図3】一実施例に関わる安定生産可能な装置ならびに施設の概念図。
【図4】一実施例に関わる安定生産可能な施設の形態図。
【図5】一実施例に関わる情報処理システム全体の手順を示す概念図。
【図6】一実施例に関わる情報処理部の構成図。
【図7】一実施例に関わる情報処理部の構成図。
【図8】一実施例に関わる情報処理手順を示す概念構成図。
【符号の説明】
【0045】
1 情報処理システム
10 情報処理部1
20 情報処理部2
21 情報処理2の算出データ 総出荷推定量
22 情報処理2の算出データ 販売予想額
30 記録メディア
40 記録メディア2 気象条件別の類型化データ
50 任意の入力気象条件
60 情報処理部3
70 情報処理3の算出データ 総出荷推定量ならびに販売予想額

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インターネットを接続したカメラを用いて、農園内の作物栽培状況を観察可能とし、該インターネットを経由して遠隔地の第三者のコンピューター情報端末上の画面上で、クリックやマウスの移動等の指示、あるいは該情報端末に接続したマイクを介した音声指示によって、栽培作物に対する水分補給や肥料等の投与の指示することが可能なアミューズメント農園の管理システム。
【請求項2】
電気信号あるいは音声信号を感知するセンサーを搭載した草刈り装置を農園内で自由に運転させることが可能な、請求項1記載のアミューズメント農園の管理システム。
【請求項3】
電気信号あるいは音声信号を感知するセンサーを搭載した着火装置によって、暖炉に投入した薪に火をつけることが可能な請求項1至乃2記載のアミューズメント農園の管理システム。
【請求項4】
電灯機器あるいは換気装置、冷暖房装置等の稼働の指示をすることが可能な請求項1至乃3記載のアミューズメント農園の管理システム。
【請求項5】
上記請求項1乃至4記載の管理システムにおいて、不適切な指示がなされた場合には、過去のデータベースに基づいて、該指示をしたコンピューター上で、要注意の画面表示をすることが可能な、アミューズメント農園の管理システム。
【請求項6】
栽培施設内を多重層構造にし、地下等の比較的安定温度帯の水あるいは空気を循環させることによって、施設内の温度ならびに湿度を安定化することを特徴とする、上記1乃至5記載のアミューズメント農園の管理システム。
【請求項7】
露地あるいは施設内、高床式土耕水耕施設等において、一日毎に作物を収穫する栽培区画を作成し、請求項1乃至6記載の管理システムによって、該分画毎の栽培作物の生育度合いを画像データで入手可能とし、
前記画像データ等に基づいて該栽培作物の生産される予定数量を算出し、該栽培作物と同種の作物の他地域の総生産予定数量の情報をインターネットを介して共有して合算するステップを経て、
該栽培作物と同種の作物の過去の総生産量と販売単価のデータベースとを照合し、該栽培作物の栽培施設毎の総販売額を予測するコンピュータ用のプログラムを活用できる、アミューズメント農園システム。
【請求項8】
過去の地域別の気温、湿度、雨量等の気象条件を農作物毎の生育度合いを決定する数値範囲別に類型化して変換したデータベースと、
前記類型化した数値範囲別で、地域毎ならびに全国の農作物の生産量を変換したデータベースと、
前記類型化した数値範囲別で、過去の農作物の市場相場の価格に変換したデータベースと、
前記3者のデータベースの相関を用いて、任意の気象条件に応じて推移する農作物の生産量と市場価格の増減を予測するための確率演算を実施するコンピュータ用のプログラムを活用することが可能な請求項1乃至7記載のアミューズメント農園システム。
【請求項9】
一般市場の作物の相場のデータと、請求項1乃至8記載のアミューズメント農園システムで生産される作物の総生産量と予想販売額の総データをインターネット上で閲覧できるようにした上で、不動産証券化した当該農園の変動価値を予測し、該作物ならびに該作物から加工される食品等に関連する証券の売買をインターネット上で可能とするシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−79590(P2008−79590A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−288092(P2006−288092)
【出願日】平成18年9月25日(2006.9.25)
【出願人】(501176303)日環科学株式会社 (10)
【Fターム(参考)】