説明

インターフェロンβの精製方法

2つのアフィニティークロマトグラフィーステップ、続く疎水性相互作用クロマトグラフィーステップ、好ましくはその後のアニオン交換クロマトグラフィーステップを含む、ヒトグリコシル化インターフェロン−ベータ(IFN−β)の生成方法が記載される。記載されている方法により得られるIFN−βは、高い純度及び生物学的比活性により特徴付けられ、そのため、医薬組成物の製造に特に適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組換えヒトインターフェロンβ(IFN−β)を生成する方法であって、少なくとも1つのアフィニティークロマトグラフィー(AC)及び少なくとも1つの疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)ステップを含む方法に関する。特に、本発明は、細胞培養上清又は他のタンパク質の混合物からグリコシル化IFN−βを精製する方法であって、2つのアフィニティークロマトグラフィーステップと、続く疎水性相互作用クロマトグラフィーステップを含み、好ましくは続いてアニオン交換クロマトグラフィー(AEX)ステップを含む方法に関する。
【背景技術】
【0002】
天然のインターフェロンは、種特異的タンパク質、部分的には糖タンパク質であり、これらは、ウイルス、二本鎖RNA、他のポリヌクレオチド、および抗原による誘導によって体の種々の細胞型から分泌される。インターフェロンは、抗ウイルス特性、抗増殖特性、および免疫調節特性などの多数の生物学的活性を有する。今までのところ、少なくとも3つの異なる種類のヒトインターフェロンが同定されており、これらは、白血球、リンパ球、線維芽細胞、および免疫系の細胞により産生され、α−、β−及びγ−インターフェロンと呼ばれる。幾つかのインターフェロンの種類は、サブタイプに更に細分化される。未変性ヒトIFN−βは、ポリICを用いるヒト線維芽細胞培養の超誘導、続くクロマトグラフィー技術及び電気泳動技術によるIFN−βの単離及び精製によって工業的に生成することができる。組換えDNA技術を適用して、天然のIFN−βに相当する特徴を有するタンパク質又はポリペプチドを生成することができる(例えば、欧州特許出願EP028033、EP0041313、EP070906及びEP287075、並びにChernajovskyら、DNA3(1984)、297〜308頁及びMcCormickら、Mol.Cell.Biol.4(1984)、166〜172頁を参照すること)。このような方法では、ヒト組換えIFN−βを、真核細胞(例えば、CHO細胞)又は原核細胞(例えば、大腸菌)により生成することができる。対応するインターフェロンは、それぞれIFN−β−1a及びIFN−β−1bと呼ばれる。IFN−β−1bと対照的に、IFN−β−1aはグリコシル化されている(Goodkin、Lancet 344(1994)、1057〜1060頁を参照すること)。
【0003】
インターフェロンβの治療用途における前提条件は、十分な量及び高純度で提供できること、並びに分子の完全性の維持によりタンパク質を長期保存に適したものにするガレニック(galenic)組成物に配合されることを示唆する。インターフェロンβは不安定であり、種々の分解反応にさらされる。これらには、特にペプチド結合の切断、脱アミド、メチオニンのメチオニン硫化物への酸化、ジスルフィド交換、および糖側鎖の脱グリコシル化までの修飾が含まれる。
【0004】
マウスインターフェロンβ(IFN−β)は、ヒトIFN−βと有意に異なる。したがって、多数の利用可能な文献に記載されているマウスIFN−βを精製する原理を移し当てはめることができず、過去十年間において、十分な量、並びに安定した保存及び治療使用に適した形態でIFN−βを単離するIFN−βの精製プロトコールを提供及び最適化するために、鋭意努力がなされてきた。したがって、IFN−βの異なる精製方法を記載する幾つかの出版物が存在する。
【0005】
欧州特許出願EP011435は、カチオン交換及び金属キレートアフィニティークロマトグラフィーステップを含む一連の精製ステップを開示する。
【0006】
欧州特許出願EP027262は、シバクロンブルーを用いる色素リガンドクロマトグラフィーを含む精製方法を記載している。
【0007】
欧州特許出願EP041313は、IFN−βの精製における亜鉛キレートクロマトグラフィーの使用を記載している。
【0008】
欧州特許出願EP094672及びEP118808は、シバクロンブルー及び金属キレートクロマトグラフィーを含む精製方法を記載している。
【0009】
欧州特許出願EP215658は、アフィニティークロマトグラフィー及び高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を含む一連の精製ステップを記載している。
【0010】
欧州特許出願EP274900には、とりわけアフィニティークロマトグラフィー及び逆相HPLC(RP−HPLC)によるIFN−βの精製が記載されている。
【0011】
欧州特許出願EP467992は、IFN−βの精製における金属キレートクロマトグラフィーの使用を記載している。
【0012】
欧州特許出願EP529300は、液/液相抽出、シバクロンブルーアフィニティークロマトグラフィー、固定金属イオンアフィニティークロマトグラフィー(IMAC)及びゲルクロマトグラフィーを含む一連の精製ステップを開示している。
【0013】
国際特許出願WO98/28007は、アフィニティークロマトグラフィー、カチオン交換クロマトグラフィー及び金属キレートクロマトグラフィーを含む一連の精製ステップを記載している。
【0014】
ドイツ国特許出願DE3028919は、アフィニティークロマトグラフィー及びRP−HPLCを含む一連の精製ステップを記載している。
【0015】
ドイツ国特許出願DE3039566において、とりわけガラス吸収及び金属キレートクロマトグラフィーステップによるIFN−βの精製が記載される。
【0016】
欧州特許出願EP446850は、ガラス吸収及びカチオン交換クロマトグラフィー(CEX)を含む一連の精製ステップを記載している。
【0017】
イムノアフィニティークロマトグラフィーによるIFN−βの精製も当該技術において知られている(例えば、先行してアニオン交換クロマトグラフィーが実施される、Conradtら、J.Biol.Chem.262(1987)、14600〜14605頁を参照すること)。
【0018】
更に、特にコンカナバリンA(ConA)を使用するレクチンアフィニティークロマトグラフィー及びフェニルセファロースを用いる疎水性相互作用クロマトグラフィーによるIFN−βの精製が記載されている(例えば、Carter及びHoroszewicz、Pharmacol.Ther.8(1980)、359〜377頁、並びにMikulskiら、Prep.Biochem.10(1980)、103〜119頁を参照すること)。
【0019】
色素リガンド及び金属キレートアフィニティークロマトグラフィーステップが先行するサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)の組み入れは、ハノーバー大学化学学部(Faculty Chemistry of the University of Hannover)のMeyerの学位論文(2000)に記載されている。
【0020】
近年、一般にインターフェロンの精製において、精製されるインターフェロンの等電点(pI)に対応するpHよりも塩基性のpHを含む固体マトリックスを用いるカチオン交換クロマトグラフィーの使用が示唆されており、それは、そのpHにおいて、タンパク質が依然として吸収されており、前記タンパク質の溶出が、緩衝水溶液のイオン強度及び/又はpHの増加により生じるからである(例えば、欧州特許出願EP1273592を参照すること)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明の目的は、生物学的に活性な組換えヒトIFN−βを十分な純度及び量で精製する方法を提供することである。更に、この方法は、実現するのに簡単で直接的であるべきである。望ましいものは、GMP(医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理規則)の観点から日常的な処理において適用可能であり、好ましくは規制による容認要件(バリデーション、再現性)及びIFN−βの特定の生化学的な特質(疎水性など)が考慮される精製方法である。
【課題を解決するための手段】
【0022】
これら及び更なる技術的な問題は、請求項1により特徴付けられる方法によって解決され、本記載及び添付の実施例の例示的な方法において開示されている。好ましい実施形態は、従属クレーム、更に下記において記載されている。
【0023】
ヒト組換えIFN−βのクロマトグラフィー精製を適用することによって、許容される純度及び十分な収率の組換え型の生物学的に活性なIFN−βが、アフィニティークロマトグラフィー及び疎水性相互作用クロマトグラフィーステップ、並びに好ましくはアニオン交換クロマトグラフィーステップにより生じることが見出された。純度等級は、濾過ステップを適用することによって更に上げることができる。
【0024】
したがって、本発明は、組換えにより生成された生物学的に活性なヒトIFN−β(IFN−β)を精製する方法であって、少なくとも1つのアフィニティークロマトグラフィー(AC)ステップ及び少なくとも1つの疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)ステップを含み、これらのクロマトグラフィーステップをいずれかの順序で一方の直後に実施することができる方法に関する。
【0025】
好ましくは、IFN−βを含有する細胞培養上清又は細胞画分が、医薬組成物の配合に適用することができる十分な純度に達成するためのクロマトグラフィー精製における出発材料として機能する。
前記精製に意図されるIFN−βは、天然のヒトIFN−βの生物学的及び/又は免疫学的特徴を示し、天然又は組換えのいずれかのIFN−βでありうるポリペプチドである。真核宿主細胞、好ましくはCHO細胞からの、好ましくはグリコシル化IFN−β、より好ましくは組換えIFN−βが使用される。最も好ましくは、細胞株BIC8622(ECACC 87 04 03 01)由来のIFN−β種が使用され、これらは例えば欧州特許出願EP287075及びEP529300に記載されており、これらの開示は本明細書により参照される。
【0026】
IFN−β(旧:線維芽細胞インターフェロン)は、166アミノ酸、Mr=22〜22.5kD(ポリペプチド=18.5kD)、平均で2つのシアル酸/Mol(95%の二分岐(biantennary))を有する80位における1つのN−グリコシル化部位(Asn80)、1つの分子内ジスルフィド架橋を有する3つのシステイン(Cys31〜Cys141)及び1つの遊離システイン残基(C17)から構成されるシアロ糖タンパク質である。生物学的な活性に、ジスルフィド結合の正確な形成が必須である。タンパク質は、40%の疎水性アミノ酸からなり、極めて疎水性(不溶性)である。そのpIは、僅かに塩基性(7.8〜8.9)である。アミノ酸配列は、93、97、121及び131位に4つのヒスチジン残基を示し、このことは、Me++リガンドへの良好な結合を説明している。
【0027】
IFN−βの比活性は、少なくとも2×108IU/mgであるべきである。高い三分岐(triantennary)(>25%)及び追加的な四分岐(tetraantennary)グリコシル化(>5%)のIFN−β調製物が記載されており、これは3×108IU/mgまでおよびそれ以上の比活性を有することができる。測定することができるIFN−βの2つの必須の生物学的活性は、その抗ウイルス効果及び抗増殖効果である。これらの生物学的活性を、それぞれ、ウイルスの細胞変性効果の阻害を介する標準的な方法によって測定することができる。使用される試験方法の詳細な記載は、Stewart,W.E.11(1981)、The Interferon System(第2増補版)、Springer−Verlag:Wien、New York;Grossberg,S.E.ら(1984)、Assay of Interferons.In:Came,P.E.、Carter W.A(編)Interferons and their Applications、Springer−Verlag:Berlin、Heidelberg、New York、Tokyo、23〜43頁において見出すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の好ましい実施形態において、IFN−βを精製する方法は、好ましくは疎水性相互作用クロマトグラフィーステップの前に実施される2つのアフィニティークロマトグラフィーステップを含む。本発明の範囲内で実施される実験は、驚くべきことに、本明細書中以下、特に実施例に記載の色素リガンドアフィニティークロマトグラフィー(AC)、金属キレートアフィニティークロマトグラフィー(MAC)及び疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)を介した細胞培養上清からのIFN−βの精製が、液体配合物において、および凍結又は解凍状態において既に実質的に純粋であり、安定しているIFN−β調製物をもたらすこと、並びにAvonex(登録商標)(Biogen Idec)及びRebif(登録商標)(Serono)のような市販の製品に匹敵するか又はそれ以上の高い生物学的活性を有することを見出したことを明らかにした。RP−HPLC測定によると、それぞれ、金属キレートアフィニティークロマトグラフィー(亜鉛セファロースクロマトグラフィー)の収率は90〜100%であり、疎水性相互作用クロマトグラフィー(ブチルセファロースクロマトグラフィー)の収率は、>70%である。RP−HPLC、およびSDS−PAGEによる分析、続く銀染色法は、IFN−βが見掛け上均質まで精製されていることを確認した。還元及び非還元条件下でのSDS−PAGEにおけるバンドシフトは、内部ジスルフィド結合が形成され、それによってタンパク質が正確に折り畳まれていることを明らかにした。等電点電気泳動(IEF)ウエスタンブロットにおいて、中間精製生成物及び最終生成物は、Avonex(登録商標)と同様のIFN−βアイソフォームパターンを示す。
【0029】
本発明のIFN−β調製物を、Superdex 75 HR 10/30を使用する分析SECにより更に分析した。A280及びA214での主な溶出ピークは、13.9〜14.0mlの溶出容量でピーク最大値を示した。見掛けの分子量は14kDaであり、これは、IFN−βモノマーが、おそらくカラムマトリックスとの非特異的相互作用によって僅かに遅れて溶出したことを示す。
【0030】
この段階において、本発明により精製されたIFN−βの比活性は、通常は1×108IU/mg以上、典型的には少なくとも2×108IU/mg超、好ましくは少なくとも3×108IU/mg以上を既に示している。
【0031】
おそらく存在している残りの宿主細胞DNA、並びに潜在的なウイルス汚染及び他の負に帯電した汚染物質の除去では、本発明の一つの更なる実施形態において、IFN−βの精製方法は、流入式(flow through modus)でHICステップの後に好ましくは直接適用されるアニオン交換クロマトグラフィー(AEX)ステップを含む。この更なるAEXステップは、IFN−βの医薬組成物の調製に特に有益であり、それは、試料へウイルス材料による追加的なスパイク(spiking)を行う対照実験において、得られたIFN−β調製物にはもはや感染性がなく、したがって治療用途に適しているからである。
上記に記載されたクロマトグラフィーステップの適用によって、精製された組換えヒトIFN−βを十分に純粋な等級で提供することができ、したがって、本発明の精製方法では、追加的なクロマトグラフィーステップを必要としない。したがって、IFN−βの精製方法の更なる実施形態において、カチオン交換クロマトグラフィー(CEX)ステップが省かれる。本発明の背景技術の記載において記述されているように、特に、インターフェロンの精製のためのカチオン交換クロマトグラフィーの使用が既に記載されている。一見、このステップは、IFN−βの相対的に高いpI(7.8〜8.9)のために、アニオン交換クロマトグラフィー(AEX)ステップよりも好まれる可能性がある。しかし、中性pH(=細胞培養上清のpH)では結合を生じないか又は弱い結合しか生じず、細胞培養上清の酸性化が、追加的な濾過を必要とする他のタンパク質の沈殿をもたらす場合があるので、CEXステップは、中間ステップとして使用されるべきであり、ポリッシングステップとしてより適している場合がある。しかし、CEXは、溶出のために塩濃度の上昇を必要とするので、IMACとしてシバクロン又は金属キレートなどの色素リガンドを用いるアフィニティークロマトグラフィーステップの後に直接適用することができない。したがって、その後の再緩衝及び脱塩ステップが必要になる。更に、本発明により実施される実験において、CEX技術の使用は、出発試料に存在する総IFN−β量のわずか25%しか生じないことが分かった。このために、本発明はCEXを使用しないことが有益である。
【0032】
本発明の更に好ましい実施形態において、IFN−βを精製する方法は、分取HPLCの使用を含まない。同じことが、本発明の疎水性相互作用クロマトグラフィーと異なり、好ましくは本発明の方法によるIFN−βの調製においても実施されない、逆相(RP)低又は中圧クロマトグラフィーにも当てはまる。好ましい実施形態におけるこのステップの省略は有益であり、その理由は、精製方法におけるHPLCステップが常に相当な労力を伴うからである。これは、特に高価な装置(高い投資)のためであり、また、身体の安全、引火性溶媒、爆発防護などに関わる追加的な制約のために施設が必要になるからである。したがって、RP−HPLCは、必要な場合、分析の目的だけに適用される。
【0033】
更なる実施形態において、免疫グロブリンアフィニティークロマトグラフィーは、本発明の前記精製方法の一部ではない。治療用タンパク質のためのこれらの精製ステップは、相互汚染などの安全上の問題を除くために、広範囲な検証プログラムを常に伴う。したがって、前記イムノアフィニティーステップの省略は、大きな利点であると考慮される。
【0034】
本発明の精製方法の更なる実施形態において、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーの使用が省かれる。
【0035】
したがって、好ましい実施形態において、本発明の精製方法は、2〜3つの異なるクロマトグラフィー分離方法、特に色素リガンド及び/又は金属キレートを用いるアフィニティークロマトグラフィー、並びに固定相における弱疎水性リガンドへの高塩濃度でのタンパク質の非極性表面領域の吸着(加塩効果)及びバッファー塩濃度を減少することによる溶出により特徴付けられる疎水性相互作用クロマトグラフィーだけを使用する。場合によるが、好ましくは、このステップの後には、荷電イオン、すなわち本明細書ではアニオンの競合的相互作用の原則に基づいたイオン交換クロマトグラフィーステップが続く。
【0036】
これは、無機ヒドロキシアパタイト結晶の使用に基づいているヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーのクロマトグラフィー分離原則と区別されるべきであり、したがって、アニオン交換クロマトグラフィーなどのイオン交換クロマトグラフィー及び疎水性相互作用クロマトグラフィーと異なる。これらのクロマトグラフィーの原則は、当該技術の水準においても明らかに優れている(例えば、Bioanalytik、F.Lottspeich、H.Zorbas(編集者)、Heidelberg、Berlin、Spektrum Akad.Verlag 1998を参照すること)。
【0037】
好ましい実施形態において、IFN−βのクロマトグラフィー精製は、以下のステップ:
(a)色素アフィニティークロマトグラフィー(AC)ステップ;
(b)金属キレートアフィニティークロマトグラフィー(MAC)ステップ;
(c)疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)ステップ;及び/又は
(d)アニオン交換膜濾過
を含む。
【0038】
この文脈において、精製の全過程の際に、IFN−β試料は、幾つかの個別の洗浄ステップを別にして、使用するバッファー及び洗浄溶液が好ましくは≦7のpHを示すように、カチオン性環境下、すなわちその等電点(pI)を下回るpH値に保持されるべきである(実施例も参照すること)。
【0039】
色素アフィニティークロマトグラフィーの使用では、例えば、AmiconからのMatrex Gel Blue A又はMerckからのFraktogel 45 TSK AF−Blue又はGE HealthcareからのBlue−Sepharose R 6FFなどのブルーデキストランセファロースR又は他の適切なシバクロンRブルー固定化マトリックスを使用することができる。
【0040】
化学的に同一又は異なるリガンドを有する異なるマトリックスを、金属キレートクロマトグラフィーに使用することができる。組換えIFN−βの配位結合では、適切な金属イオンは、Cu2+、Zn2+、Co2+又はNi2+イオンであってよい。脱着は、イミダゾール、ヒスチジン、グリシン又はNH4Clなどの競合物質、EDTA、IDA(イミノアセト酢酸(iminodiacidic acid))、TED(トリス−カルボキシメチルエチレンジアミン)などのキレート剤により又はpH値をpH2〜4に低下させることにより誘導することができる。
【0041】
適切な分離媒体は、アガロース又はFraktogel TSK HW−65F(Pierce)若しくはChelating Sepharose R FF(GE Healthcare)若しくはCellufine Chelate(Amicon)に結合した固定イミノアセト酢酸である。
【0042】
上記したように、本発明により実施された実験は、特に、シバクロンブルーを用いる色素アフィニティークロマトグラフィー及びIMACクロマトグラフィーが、特に組み合わせると、IFN−βの精製方法において特に有益であることを明らかにした。したがって、本発明の方法の一つの好ましい実施形態において、色素アフィニティークロマトグラフィー(AC)ステップにはシバクロンブルー及び金属キレートアフィニティークロマトグラフィー(MAC)ステップにはZn2+キレートセファロース(IMAC)が使用される。
【0043】
シバクロンブルーを用いる色素アフィニティークロマトグラフィーによるIFN−βの精製は、当該技術において既に知られており、頻繁に記載されている(クロマトグラフィー法の実施についての開示内容が参照として本明細書に包含される、上記に記載された参考文献を参照すること)。
【0044】
IFN−βは、シバクロンブルーF3GA(CB−F3GA)の強力な結合パートナーであり、溶出の前に外来結合タンパク質を多様なバッファーにより洗い流すことができる。この強力な相互作用は、桁外れの疎水性に起因する可能性が最も高い。IFN−βが生理学的条件下で低濃度でも定量的に(quantatively)結合するので、このステップは、捕捉ステップとして、すなわち本発明の精製方法の第1のクロマトグラフィーステップとして特に適している。IFN−βの溶出は、例えば、(必要であれば勾配の)エチレングリコールにより実施することができる。Blue Sepharose Streamliner又はBlue Sepharose Fast Flow(GE Healthcare)が好ましい材料である。
【0045】
色素アフィニティークロマトグラフィーステップの代わりに又はそれに加えて、例えばコンカナバリンA(ConA)を使用するレクチンアフィニティークロマトグラフィーステップも、考慮することができる。しかし、本発明の実験において、ConAは、取扱いが難しいこと及び個々のConAバッチの定性的な差により、連続した実質的な品質の精製IFN−βを提供できないことが分かった。したがって、レクチンアフィニティークロマトグラフィーステップを本発明の方法から省くことが好ましい。
【0046】
固定金属キレートクロマトグラフィー(IMAC)も、IFN−βの精製に関してよく記載されている。担体はイミノアセト酢酸塩(IDA)に結合させるべきである。今までのところ、IMACは、常にアフィニティークロマトグラフィーステップ(通常はシバクロンブルー又はConA)の後に実施された。その高い分離のため、このクロマトグラフィーステップは、中間精製ステップとしてより適している。強力な結合は、アミノ酸配列における隣接ヒスチジンの存在により説明することができる。IFN−βは、pH勾配の低下と組み合わせた塩の増加を使用して溶出することができる。しかし塩それ自体では十分ではなく、IFN−βはpH<5で溶出する。上記に記述した理由によって、勾配の使用が推奨される。本発明により実施される実験において、特にZn2+荷電キレートSepharose Fast Flow(GE Healthcare)が、本発明のIFN−βの精製方法におけるクロマトグラフィーステップに好適であることが示された。
【0047】
本明細書において既に説明されているように、本発明のIFN−βの精製方法の好ましい実施形態において、好ましくはブチル基がリガンドとして機能する疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)が実施される。今までのところ、IFN−βの精製のための疎水性相互作用クロマトグラフィーの使用は、詳細には調査されていない。IFN−βの激しい疎水性のために、疎水性マトリックスへの吸着及びそれからの脱着には問題があると思われた。本発明により実施される実験において、驚くべきことに、特にpH5.0の酢酸バッファーを適用及び溶出ステップに使用するとき、IFN−βはHICステップにおいて結合し、容易に溶出されることが見出された。本発明の方法の更なる利点として、HICを、捕捉ステップとして(試料の適用の前に塩の添加を必要とする)及びIMACなどの金属キレートクロマトグラフィーの後の中間クロマトグラフィーステップとして使用できること及び適切な場合、例えばシバクロンを用いる色素アフィニティークロマトグラフィーの後に直接実施できることが分かった。更に、潜在的に存在する酵素又はウイルスの初期不活性化は、有機溶媒を用いる溶出によりHICにおいて達成することができる。
【0048】
HICに使用できる広範囲の可能性のある材料が存在する。原則的には、強力な疎水性タンパク質に好ましいものは、メチル、ブチル又はプロピルのような短鎖アルキル、例えばButyl Sepharose 4 Fast Flow、Macro Prep Methyl、Fractogel EMD Propyl又はPhenyl Sepharose Low Substitution(Merck)である。マトリックスも結合に寄与するので、どの材料がIFN−βの精製に最終的に最適であるかを本発明の実験により試験する必要があった。この文脈において、ブチル基が吸着、特に続く脱着において最も適していることが分かった(実施例も参照すること)。Amersham Biosciences(現GE Healthcare)の製品を使用することができる。当業者は、Amersham Biosciences(http://www.amershambiosciences.com、現GE Healthcare)又はBio−Rad(http://www.bio−rad.com)などの供給会社から疎水性相互作用クロマトグラフィーを実施するのに適したマトリックス及びプロトコールについての製品情報を得ることができる。
【0049】
本発明の精製方法の更なる実施形態において、第四級アミノ基を有する膜が、アニオン交換膜濾過に使用される。当業者は、Amersham Biosciences(http://www.amershambiosciences.com、現GE Healthcare)又はBio−Rad(http://www.bio−rad.com)などの供給会社からアニオン交換クロマトグラフィーを実施するのに適したマトリックス及びプロトコールについての製品情報を得ることができる。好ましい実施形態において、20mMの酢酸ナトリウム、pH5.0が、アニオン交換クロマトグラフィーステップにおいて平衡及び洗浄に使用される。アニオン交換クロマトグラフィーに更に適した条件を、Amersham Biosciences、Freiburg、Deutschland(現GE Healthcare)からのハンドブック「Ion Exchange Chromatography−Principles and Methods」、2002のような文献において見出すことができる。
【0050】
IFN−βの更なる精製では、特に医薬組成物におけるその使用では、例えば宿主細胞DNA、内毒素及び他の有害な物質などの細胞培養物に残っている残留物の除去に適している更なる精製及び/又は濃縮ステップ、特に濾過を加えることが有益である。したがって、本発明の好ましい実施形態において、IFN−βの精製方法は、以下のステップ:
(e)限外濾過(UF)ステップ;
(f)精密濾過(MF)ステップ;
(g)サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)ステップ;及び/又は
(i)ナノ濾過(NF)ステップ
のうちの少なくとも1つを含む(実施例も参照すること)。
【0051】
原則的には、限外濾過及び精密濾過は、IFN−βの特定の精製及び濃縮に役立ち、一方、サイズ排除クロマトグラフィー及びナノ濾過は、存在する場合、溶出液における宿主細胞DNA、内毒素及び方法に関連する残留不純物の除去に特に使用される。実施例において説明されるように、限外濾過が、5kD〜1000kDのサイズ排除を有するタンジェント流濾過である場合、本発明の精製に好ましく、精密濾過では0.2μmの膜、サイズ排除クロマトグラフィーではSuperdex 200及び/又はナノ濾過では15〜75nmの孔径を有するフィルターが使用されるべきである。特定の濾過ステップ、およびサイズ排除クロマトグラフィーを実施するのに適した条件は、当業者に良く知られており、Millipore und Pall Systemsの製品モノグラフなどの文献から取ることができる。好ましい実施形態において、請求されるIFN−βの精製方法は、実施例において例示されるように、以下のステップ:
(a)色素アフィニティークロマトグラフィー(AC)ステップ;
(b)金属キレートアフィニティークロマトグラフィー(MAC)ステップ;
(c)疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)ステップ;
(d)アニオン交換クロマトグラフィー(AEX)ステップ;
(e)限外濾過(UF)ステップ;
(f)精密濾過(MF)ステップ;
(g)サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)ステップ;
(f’)精密濾過(MF)ステップ;及び
(h)ナノ濾過(NF)ステップ
を含む。
【0052】
本発明は、また、本発明の方法によって得たIFN−βを含む医薬組成物に関する。得られたIFN−βを凍結乾燥物として又は好ましくは液体形態で保存することができる。それを皮下又は静脈内に適用することができる。組換え的に発現したIFN−βの配合に適した薬学的に許容される担体は、糖又は糖アルコール、アミノ酸のような安定剤、およびPolyssorbate 20又は80のような界面活性剤、および適切な緩衝物質である。製剤の例は、国際出願WO98/28007及びWO99/15193、並びに欧州特許出願EP0529300に記載されている(ROTE LISTE 2005の製品Avonex(登録商標)及びRebif(登録商標)も参照すること)。
【0053】
したがって本発明は、また、非経口適用に適したヒトIFN−βの医薬液体製剤を調製する方法であって、本明細書前記及び実施例に記載されているIFN−βを精製する方法、並びに
(i)精製されたIFN−βを適切な医薬組成物に配合すること(ここでIFN−β製剤及び場合により更なる必要なガレニック担体が調製され、適切な適用形態にされる)及び
(ii)製剤を適切な入れ物又は容器に充填又は瓶詰めすること
を含む方法に関する。
【0054】
IFN−β製剤を、例えば、薬学的に許容されるゴムプラグを備えた適切な洗浄及び滅菌ガラスバイアル(加水分解等級1)に保存することができる。加えて、医薬IFN−β製剤を、自己注射装置用の消毒包装済シリンジ又はカプセル若しくはカープルに充填して、自己注射のために使用することもできる。水溶液を、好ましくないが当業者に既知の更なる追加的な担体を添加して凍結乾燥することができ、再構成後に液体形態で利用可能である。適切な防腐剤の添加により、液体多回投与形態、並びに点眼液剤及び経口用途の滴下液剤を製造することができる。適切な投与形態の調製に必要な更なる担体は、当業者に知られている(例えば、ハンドブックRemington:The Science and Practice of Pharmacy 第20版(2000)、ISBN0−683−306472、並びに本明細書上記に参照された特許文献、特にWO98/28007及び商標製品Avonex(登録商標)の製剤を参照すること)。
【0055】
好ましい実施形態において、IFN−βの医薬組成物は、酢酸塩、NaCl又はアミノ酸のアルギニン、リシン及びグルタミンのうちの1つを単独で含むか又は1つ以上の更なる担体の他に含み、ここで、担体は、好ましくはメチオニン、マンニトール、ソルビトール、グリセロール又は界面活性剤であり、界面活性剤は、好ましくはPolysorbate 20又は80である。
【0056】
本発明により実施される実験において、保存が十分に安定したIFN−βの液体製剤の調製を考慮すると、製剤のpH値は、好ましくは4.3〜4.8の範囲である。
【0057】
本発明により精製されたIFN−βの比活性は、通常は少なくとも1×108IU/mg、典型的には少なくとも2×108IU/mg、好ましくは少なくとも3×108IU/mg以上である。
【0058】
実施例3に例示されているように、複数の可能な緩衝組成物が製剤に適していると同定されており、色素アフィニティークロマトグラフィー(AC)、金属キレートアフィニティークロマトグラフィー(MAC)及び疎水性相互作用クロマトグラフィーにより精製された見掛け上均一なIFN−βをもたらし、これは、室温、また−80℃での保存及び後の解凍後において実質的に安定しており、生物学的に活性である。所定のバッファー中200μg/mlの濃度で+4℃又は−80℃での2週間までの保存におけるIFN−βの安定性は、初期活性の少なくとも95%、好ましくは少なくとも97%、おそらくほぼ100%に達する。したがって本発明は、また、生物学的に活性なIFN−βを含む医薬組成物に特に関する。
【0059】
IFN−β調製物は、RP−HPLC測定、A280測定及び/又はA320値(「濁度」0.010未満)の決定により確認して、好ましくは、−80℃で26〜27日間及び+4℃で47〜48日間(>6.5週間)にわたる保存において安定している。両方の保存条件で、SDS−PAGEの後のウエスタンブロット及びIEFウエスタンブロットにおけるIFN−βアイソフォームパターンは、好ましくは、Avonex(登録商標)及びHIC精製ステップ後のIFN−β調製物と非常に類似しているか又は同一である。Superdex 75 HR 10/30において分析SECを実施することによって、本発明のIFN−β調製物は、好ましくは12〜16kDaの見掛けの分子量を示す。
【0060】
実施例3に示されているように、表10で3aと示されているバッファーは、組換えにより生成したグリコシル化IFN−βの保存に特に好適である。
【0061】
したがって、好ましい実施形態において、本発明は、25mMの酢酸塩、150mMのNaCl及び0.167%(v/v)のPolysorbate 20中にIFN−βを含み、好ましくはpH4.8のpH値を有する医薬組成物に関する。本発明の液体医薬製剤は、好ましくはヒト血清アルブミン、より好ましくは、医薬品を別にして、ヒト又は動物のポリペプチド、特に血清タンパク質を実質的に含まない。
【0062】
IFN−β製剤の安定性には、ヘリウム又は窒素などの不活性ガスを注入すること(sparging)により、更に肯定的な影響を与えることができる。このことは、適切な入れ物又は容器内の本発明のIFN−β製剤にとって特に当てはまり、ここで前記入れ物又は容器の上部空間にも、好ましくはヘリウム又は窒素などの不活性ガスが注入され、好ましくは、上記空間は入れ物又は容器の容積の30%を超えない。
【0063】
本発明は、また、本発明の方法により得られた精製IFN−βと、バッファー、塩、界面活性剤及び安定剤などの薬学的に許容される担体とを含む医薬に関する。本明細書に記載されたように、IFN−βの液体製剤は、長期間にわたって安定しており、基本的に任意の適切な入れ物又は容器に保存することができる。したがって、本発明は、また、非経口適用に適しており、本明細書前記および特に実施例において記載されているIFN−βの医薬液体製剤の調製のための本発明の方法により得ることができるヒトIFN−βの液体医薬製剤を含む入れ物又は容器に関する。
【0064】
本発明の入れ物又は容器は、好ましくは、医薬製剤と接触するその内面がIFN−βの吸着を防止するようなものである。好ましくは、液体製剤と接触する入れ物又は容器の少なくとも一面は、ポリプロピレン(PP)、シリコーン又はポリテトラフルオロエチレン若しくはエチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)コポリマーから実質的になる又は作製される材料で被覆されている又は構成されている。
【0065】
典型的には、入れ物は、バイアル、シリンジ、アンプル、カープル(carpule)、穿刺ボトル又は注入容器のような液体医薬の保存及び/又は投与のために従来意図されている容器であり、ここで本発明のIFN−βの液体製剤は、充填済シリンジ又はアンプルにおける使用のために特に有益である。好ましい実施形態において、液体製剤は、例えば、IFN−βの10〜500μg/ml、好ましくは50〜250μg/mlの濃度及び/又は5〜5000万I.E./mlの活性でシリンジ又はアンプルに存在する。
【0066】
得られる本発明の医薬組成物、並びにこれらの組成物を含有する入れ物及び容器を、腫瘍、ウイルス疾患、免疫病又はリウマチ性疾患、アレルギー、乾癬、クローン病を含む炎症及び神経系の変性疾患、特に多発性硬化症の治療に使用することができる。所望の治療効果のために医薬における組換えIFN−βに求められる品質は、それぞれの投与及び治療される被験者、並びにそれぞれの疾患によって決まる。ヒトに投与する活性成分の適切な投与量は、0.1×106〜100×106I.E.の範囲である。特に最も好ましい投与量は、1日あたり、適切であれば数回の、局所治療の場合では6×106I.E.、全身治療ではおよそ1×106〜30×106I.E.である。
【0067】
本発明の医薬組成物、並びにそれらを含有する入れ物及び容器は、好ましくは、眼科適用、皮下適用、皮内適用、筋肉内適用、静脈内適用、鞘内適用、関節内適用、腫瘍内/腫瘍周囲適用、病巣内/病巣周囲適用又は局所適用のために設計される。
【0068】
有益なことには、本発明のIFN−βの液体製剤の投与の前に、更なる担体が混合されない又は濾過、混合などのような更なる予備的処置が取られないので、本発明のIFN−βの液体医薬を、例えばキットによる即時投与に使用することができる。
【0069】
したがって、医師、薬剤師、特に患者にとって特に有益である一つの実施形態において、本発明は、また、1つ又は複数の上記記載の入れ物を好ましくは保存及び/又は投与の使用説明書を伴って含む、注入又は注射によるIFN−βの投与キットに関する。通常、1×106〜10×106I.E.の投与量でのIFN−βの投与が提供されるが、これより低い又は高い投与量も、医療適用及び疾患の病期に応じて指示される。好ましくは、幾つかの入れ物が本発明のキットに提供され、例えば、1か月間の週に1回の筋肉内投与では、4つの充填済針付きシリンジ又は包装済シリンジと針を伴う4つの穿刺ボトル、また適切であれば凍結乾燥物の場合には溶媒が使用され、これは基本的に可能であるが、好ましくない。対照的に、Rebif(登録商標)は、週に3回、静脈内投与される。
【0070】
安全に取り扱うために、本発明のキットは、有利には、シリンジ、注射用及び/又は注入用針それぞれのために安全区画を有する。ここでは、針のための放出助剤及び準備済又は適合済密閉キャップも考慮される。
【0071】
実施例に記載されているように、本発明の液体IFN−β製剤は、特に約2〜8℃で長期間にわたって、好ましくは少なくとも4週間にわたって安定している。したがって、本発明の液体製剤、入れ物及びキットは、有利には、従来の冷蔵庫に保存することができる。
【0072】
本発明によりもたらされるこれら及び更なる実施形態は、特許請求の範囲に包含される。
【0073】
上記及び下記に引用されている従来技術の文書の開示内容は、特にIFN−βの組換えによる生成、バッファー、シリンジ及びキットに関して、ここに参照により本出願に組み込まれる。これら及び更なる実施形態は開示され、当業者には明白であり、本発明の記載及び実施例に包含される。上記に記述された担体の1つについて、また本発明に使用することができる電子的手段についての更なる文献を、従来技術から、例えば電子的手段を使用して公共の図書館から入手することができる。加えて、例えば「Pubmed」(http://www.pubmed.gov)のような更なる公共のデータベースが、インターネットにより容易に利用可能である。
【0074】
本発明を実施する技術は当業者に知られており、関連文献から取ることができる(例えば、Molecular Cloning.A Laboratory Manual、第2版、Sambrook、Fritsch及びManiatis編(Cold Spring Harbor Laboratory Press:1989);Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology(Mayer及びWalker編、Academic Press、London、1987);Handbook Of Experimental Immunology、第I〜IV巻(D.M.Weir及びC.C.Blackwell編、1986)を参照すること)。
【0075】
以下において、本発明を好ましい実施形態によって更に説明するが、これは本発明の範囲をいかようにも制限することを意図していない。
【実施例1】
【0076】
IFN−βの精製のための出発材料の準備
出発点としてIFN−βは、典型的には、組換えチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株により発現させたヒト組換えIFN−β 1aである。タンパク質は、アルギニンN結合グリカンを含有し、関連する草案Ph.Eur.モノグラフ(PHARMEUROPA)第15巻、第4号、2003年10月に記載されているアイソフォームプロファイルを示す。比活性は、A549細胞及び感染性物質としての脳心筋炎ウイルスEMCの使用によるCPEアッセイ(CPE、細胞変性効果)で示されている(PHARMEUROPA、第15巻、第4号、2003年10月)。精製バルクのIFN−βの比活性は、およそ3.2×108IU×mg-1である。
【0077】
ヒトIFN−β 1aを発現する組換えCHO細胞株を作製し、懸濁及び血清不含培養条件に適合させる。発現ベクターとして、(天然)ヒトIFN−β遺伝子配列、コザックの翻訳開始配列(コザック配列)及び発現の調節エレメントとして、SV40ポリAターミネーター配列を有するSV40プロモーターを含有するベクターを使用することができる。発現ベクターの選択及び増幅は、アデノ主要後期プロモーター及びSV40ポリA配列の制御下でマウスdhfr遺伝子配列により行う。親細胞株は、好ましくは、例えばATCC又はDSMZから得られるdhfr欠損チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株である。産生細胞株の作製は、当該技術において既知の方法に従って行う。dhfr欠損CHO細胞を、発現ベクターにより形質移入する。選択、クローニングシリンダーを用いるサブクローニング、続くメトトレキセートを使用する増幅の後、得られた細胞株を血清不含培養条件に適合させ、懸濁培養として試験する。第2回目のサブクローニングを、限界希釈技術を利用して実施することができる。
【0078】
細胞培養プロセスは、好ましくは、エルレンマイヤーフラスコにおける形質移入CHO細胞の種系列増殖(seed train expansion)、続く10リットルのバイオリアクターにおける商業規模の生成からなる。次に、パイロット規模で1リットル及び商業規模の稼働容量で10リットルの灌流バイオリアクターにおいて4週間にわたる増殖及びIFN−β発現を行う。細胞密度が好ましくは1.2(±0.2)×106細胞/mlに達したとき、細胞培地を、超音波細胞保持(acoustic cell retention)を介する灌流により連続的に採取し、連続的に収集し、50〜200リットルのStedimバッグに5±3℃で保存する。産物をブルーセファロースアフィニティークロマトグラフィーにより週に1回捕捉し、溶出液を、続く精製手順に付すまで<−70℃で凍結する。完全灌流発酵処理に由来する上記に記載されたブルーセファロース溶出液を解凍し、プールし、次の精製ステップに付す。
【実施例2】
【0079】
細胞培養上清からのIFN−βの精製
精製方法は、高い生物学的活性及び生化学特性を有する産物を生じるように設計された幾つかのステップを含み、産物のレベル及び産物では、関連物質及び不純物は、現行の規制基準、科学基準及び概要(compendia)基準を完全に遵守している。この開発段階の範囲には、各精製ステップの広範囲の最適化及びカニクイザルを用いるパイロットPK/PD研究のために代表的な材料を生成することが含まれる。限定された開発供給源のため、この材料の精製(捕捉ステップを除く)を、規模を縮小した実験室プロセスにより実施する。
【0080】
a)アフィニティークロマトグラフィー:Streamline Blue Sepharose
フェニル及びブルーセファロースを捕捉するために、Fast Flowを試験する。最適な結果は、ブルーセファロース樹脂、段階的洗浄、並びにそれぞれ10%、20%及び50%のエチレングリコールによるカラムの溶出を使用して得る。7日間の収集による採取(H)(すなわち、H1〜H4)を、Blue Sepharose FF樹脂(GE Healthcare)を使用するアフィニティークロマトグラフィーにより最初に捕捉し、表1に記載する。採取物からの残留細胞の追加的な分離をすることなく粗採取物を樹脂に直接装填するために、Streamline(登録商標)技術を、Streamline(登録商標)Blue Sepharoseを使用して調査する。クロマトグラフィーパラメーター(例えば、装填試料の流速、拡大因子、接触時間、伝導性及び量)の変更及び適合は、以下の表1に記載されている最終方法をもたらす。ステップの収率は、通常60%超である。
【0081】
【表1】

【0082】
平衡では、ウォッシングバッファーa):20mMのNaH2PO4/Na2HPO4、1MのNaCl、pH7.2を使用する。カラム再生は、再生バッファー1:50mMのTris/HCl、1MのNaCl、pH7.6;再生バッファー2:10mMのTris−HCl、800mMのNaCl、50mMのEDTA、10%のイソプロパノール、pH7.6及び再生バッファー3:50mMのTris/HCl、3MのNaCl、pH7.6をSIP:70%のエタノール>12時間及び2時間/CIP:0.5MのNaOHと一緒に用いて実施する。続いて、カラムを保存バッファー:0.01MのNaOHに好ましくは2〜8℃で保存する。
【0083】
【表2】

【0084】
b)アフィニティークロマトグラフィー:Chelat−Sepharose FF
塩含有量及び溶出ステップの最適化を含む、亜鉛荷電及び銅荷電キレートセファロースの使用による金属キレートアフィニティークロマトグラフィー方法の確立についての総合的な分析の後、亜鉛セファロースへの結合は、極めて選択的であり、pH5.0のバッファーによる溶出の後、IFN−βは、96%均質であり、ステップ収率のおよそ75%をもたらす。したがって、4つのブルーセファロース溶出液(完全な10リットル灌流発酵床から)をプールし、Zn2+ Chelate Sepharose FFカラム(GE Healthcare)に適用する。装填試料量の更なる最適化及びリン酸バッファー系の酢酸塩ベースのバッファー系への交換は、ステップ収率が95%超までの下記に記載されている方法をもたらす。加えて、宿主細胞タンパク質が実質的に除去される。
【0085】
【表3】

【0086】
装填の前に、カラムを水、Zn(Cl2)、水及びローディングバッファーで平衡にする。亜鉛の切断では、カラムを50mMのEDTA、1MのNaCl、続いて0.5MのNaOHと共にインキュベートする。カラムを20mMのNaOH保存バッファーに保存する。
【0087】
c)疎水性相互作用クロマトグラフィー:Butyl−Sepharose FF
Butyl−Sepharose FFの疎水性相互作用クロマトグラフィーを使用する実現性は、バッファー系及び温度の最適化の後で収率がおよそ60%であることにより実証される。したがって、Butyl−Sepharose樹脂(GE Healthcare)を使用する疎水性相互作用クロマトグラフィーを実施する。
【0088】
特別の洗浄ステップを組み込んで汚染物質を除去し、溶出を上昇流モード(upflow mode)で実施した後、この方法は80%までのステップ収率をもたらした。加えて、残っていたCHO/HCP汚染物質を除去することができた。
【0089】
【表4】

【0090】
溶出液の伝導性(conductivity)を決定し、20mMの酢酸ナトリウム、pH5.0を使用して、2.5±0.5mS/cm(およそ希釈比2)に調整する。pHをpH5.0±0.1に調整する。カラムを、洗浄バッファーa)により平衡にし、試料の溶出後にSIP/CIP:0.1MのNaOHで処理し、保存バッファー:20mMのNaOHに保存する。
【0091】
d)アニオン交換膜濾過
宿主細胞DNA及び潜在的なウイルス汚染を除去するために、AEX膜濾過をHICステップの直後に導入する。ウイルス感染性の有効性確認予備試験の際に、Mustang Qは、パーコレーション式によるウイルスクリアランスの有力な方法であることが同定される。ブチルセファロース溶出液のアニオン交換クロマトグラフィーを実施し、Mustang Qフィルターカートリッジ(Pall system)を使用して表5に記載し、収率がおよそ97%である。
【0092】
【表5】

【0093】
ローディングバッファーは平衡のために使用される。
【0094】
e)限外濾過
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)の前のMustang QフィルターにおけるIFN−βの濃度については、ポリエーテルスルホン(PES)膜を使用する限外濾過ステップを、タンジェント流式で確立する。この方法は、表6において説明しているように、約80〜100%のステップ収率をもたらした。
【0095】
【表6】

【0096】
最後に、系を20mMのNaAc、pH5.0で洗浄する。
【0097】
f)精密濾過
沈殿物を除去するため及び潜在的なバイオバーデンを排除するため、SEC溶出液が0.22μmのPES膜(Pall Systems)を介して濾過される前に、3つの精密濾過を精製方法に導入する。ここでも、系の最終洗浄のために、20mMのNaAc、pH5.0を使用する。
【0098】
g)サイズ排除クロマトグラフィー:Superdex 200
Superdex 75、Superdex 200及びSephacryl S 100のサイズ排除クロマトグラフィーをポリッシングステップとして調査する。汚染タンパク質をIFN−βから定量的に分離して、85%までの収率にする。少ない溶出量の要求に関して、Superdex 200は最適な樹脂であることを証明した。結果として、およそ25%の収率しかCEX技術の使用により得られないので、CEX(SP−Sepharose)をSECに変える。
【0099】
したがって、Superdex 200樹脂(GE Healthcare)を使用するサイズ排除クロマトグラフィーを実施し、表7に記載する。このステップはCHO/HCP汚染を低減する。臨床前の目的に必要なIFN−βの総量が非常に少ないので(およそ200mg)、この方法ステップを4.6倍縮小する。この手順は計画費用も低減する。実験室規模での開発に基づいて、装填試料容量は、カラム容量の2.5%であることが規定される。86〜96%の収率が得られる。
【0100】
【表7】

【0101】
平衡の前に酸素を除去するために、平衡に使用されるローディングバッファーに窒素を注入し、続いて試料を溶出した後、カラムを1MのNaOHで処理し、保存バッファー:20mMのNaOHに保存する。
【0102】
f)前濾過/ナノ濾過
精製材料を、表8のナノ濾過の前に濾過する。ナノ濾過膜を微細沈殿物から保護するために、Mini Kleenpak(Pall Systems)を濾過の際に使用する。
【0103】
【表8】

【0104】
前濾過した後、精製材料をPlanova N20フィルター装置(表9)を介して濾過する。ウイルス濾過には、IFN−βに対する収率及び原薬保存バッファーの使用に対する適合性を考慮すると、中空繊維系のPlanova20N(Asahi Kasei)が適している。この方法は、収率が90〜100%である。純度は>99%であった(RP−HPLCにより決定した)。
【0105】
【表9】

【0106】
ナノフィルターを、300mLまでの20mMのNaAc、pH5.0、150mMのNaCl,0.167%のTween 20(v/v)で洗浄する。その後、精製した原薬を、凍結及び保存用容器(TPP Cryotubes)に充填する。
【0107】
出発活性に対するIFN−βの全収率は25%である。
【実施例3】
【0108】
IFN−β原薬に適した保存バッファー系の同定
この研究の目的は、IFN−β原薬に適したバッファー系及び保存条件の同定である。
【0109】
IFN−βブルーセファロース溶出液を、亜鉛セファロースクロマトグラフィー及びブチルセファロースクロマトグラフィーにより精製し、Vivacell 70遠心分離フィルター装置を使用しておよそ1.9mg/mlに濃縮する。この調製物は、配合研究に必要な出発材料である。
【0110】
バッファーの交換は、サイズ排除クロマトグラフィー(NAP10、GE Healthcare)を使用して実施する。合計で20個の異なるバッファーに、不活性ガスとして窒素を部分的に注入することにより調査する(表10を参照すること)。更に、保存安定性及び沈殿に対する上部空間及び密閉系の影響を分析する。
【0111】
【表10】

【表11】

【0112】
RP−HPLC測定により測定したIFN−βタンパク質の安定性は、低いIFN−β濃度(およそ60μg/ml)及び少量の安定剤を示すバッファー11aIを除いて、全てのバッファー溶出液が、+4℃で12〜14日間の保存の後で良好な安定性を示す(97〜103%の回収)。良好な安定性は、低いIFN−β濃度(およそ60μg/ml)又は10%(v/v)のエタノール、100mMのCaCl2、200mMのCHES若しくは50mMのイミダゾールそれぞれのような僅かに少量の安定剤を示す6個のバッファー溶出液を除いて、全てのバッファー溶出液に関して、−80℃で10〜14日間保存した後でも示される(98〜102%の回収)。
【0113】
A320値(「濁度」)は、+4℃及び−80℃の両方での保存の前及び保存の後のバッファー溶出液3a(25mMの酢酸塩、150mMのNaCl、0.167%のTween 20、pH4.8)、9aI(25mMの酢酸塩、150mMのNaCl、25%(v/v)のグリセロール、pH3.0)及び9bI(25mMの酢酸塩、150mMのNaCl、25%(v/v)のPEG300、pH3.0)、並びに+4℃での保存の前及び保存の後で低いIFN−β濃度(およそ60μg/ml)を含有する更に2個のバッファー溶出液において、特に低い(0.000〜0.006)。
【0114】
更なる分析(RP−HPLC、%T580、A280、A320、SDS−PAGE後のウエスタンブロット、IEFウエスタンブロット、Superdex 75 HR 10/30による分析SEC及びペプチドマッピング)を、−80℃の試料で26〜27日間及び+4℃の試料で47〜48日間(>6.5週間)の総保存期間の後、バッファー3a、9aI及び9bIにおいて実施する。
【0115】
RP−HPLC測定(100〜102%回収)及びA280測定(99〜107%回収)は、3個のバッファー溶出液全てに関して、ならびに両方の保存条件に関して非常に良好な安定性(IFN−βタンパク質回収)を示す。A320値(「濁度」)は、3個のバッファー溶出液全てに関して、ならびに2つの異なる保存条件に関して非常に低かった(0.000〜0.008)。
【0116】
SDS−PAGE後のウエスタンブロット及びIEFウエスタンブロットを、両方の保存条件の後で全てのバッファー溶出液に関して実施し、非常に類似したアイソフォームパターンを示し、Avonex及び濃HIC溶出液対照(「バッファー交換前」の対照)とも非常に類似している。
【0117】
IFN−βは、両方の異なる保存条件下で3個全てのバッファー溶出液において、ならびにHIC溶出液対照(「バッファー交換前」の対照)において、Superdex 75 HR 10/30の分析SECによりおよそ12〜16kDの見掛け分子量で溶出する。
【0118】
まとめると、解凍後の収率及び沈殿の不存在に関して、−80℃でのIFN−βの保存(IFN−βの予備モノグラフの要求)に関する原薬に最も適したバッファーが、パイロット及び商業規模で使用される(25mMのNaAc、pH4.8、150mMのNaCl、0.167%のTween 20)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトインターフェロン−β(IFN−β)を精製する方法であって、少なくとも1つのアフィニティークロマトグラフィー(AC)ステップ及び少なくとも1つの疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)ステップを含み、これらのクロマトグラフィーステップが任意の順序で直ちに連続して適用される方法。
【請求項2】
疎水性相互作用クロマトグラフィーステップの前に実施される2つのアフィニティークロマトグラフィーステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1つのアニオン交換クロマトグラフィー(AEX)ステップを更に含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
アニオン交換クロマトグラフィーステップが、疎水性相互作用クロマトグラフィーステップの後に実施される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
(a)色素リガンドアフィニティークロマトグラフィー(AC)ステップ;
(b)金属キレートアフィニティークロマトグラフィー(MAC)ステップ;
(c)疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)ステップ;及び/又は
(d)アニオン交換膜濾過ステップ
のうちの少なくとも1つを含む、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
色素リガンドアフィニティークロマトグラフィー(AC)ではシバクロンブルー、金属キレートアフィニティークロマトグラフィー(MAC)ではZnキレートセファロース(IMAC)、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)ステップではブチル基がリガンドとして使用される及び/又はアニオン交換膜濾過では第四級アミノ基を有する膜が使用される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
HPLCが実施されない、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
カチオン交換クロマトグラフィーステップが実施されない、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーステップが実施されない、請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
以下のステップ:
(e)限外濾過(UF)ステップ;
(f)精密濾過(MF)ステップ;
(g)サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)ステップ;及び/又は
(i)ナノ濾過(NF)ステップ
のうちの少なくとも1つを更に含む、請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
限外濾過が、5kD〜1000kDの排除サイズを含むタンジェント流濾過(tangential flow filtration)であり、精密濾過では0.2μmの膜、サイズ排除クロマトグラフィーではSuperdex 200及び/又はナノ濾過では孔径15〜75nmのフィルターが使用される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
以下のステップ:
(a)色素リガンドアフィニティークロマトグラフィー(AC)ステップ;
(b)金属キレートアフィニティークロマトグラフィー(MAC)ステップ;
(c)疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)ステップ;
(d)アニオン交換クロマトグラフィー(AEX)ステップ;
(e)限外濾過(UF)ステップ;
(f)精密濾過(MF)ステップ;
(g)サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)ステップ;
(f’)精密濾過(MF)ステップ;及び
(h)ナノ濾過(NF)ステップ
を更に含む、請求項1から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
IFN−βが真核宿主細胞により産生される、請求項1から12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記真核宿主細胞がチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
非経口適用に適したヒトIFN−βの液体医薬製剤を調製する方法であって、請求項1から14のいずれか一項に記載のIFN−βを精製する方法、並びに
(i)精製されたIFN−βを適切な医薬組成物に配合すること;及び
(ii)製剤を適切な入れ物に瓶詰めすること
を含む方法。
【請求項16】
医薬組成物が、酢酸塩、NaCl又はアミノ酸のアルギニン、リシン及びグルタミンのうちの1つ、並びに場合により1つ又は複数の薬学的に許容される担体を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
担体が、メチオニン、マンニトール、ソルビトール、グリセロール又は界面活性剤(tenside)である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
界面活性剤がPolysorbate 20又は80である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
製剤のpH値が4.3〜4.8である、請求項15から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
医薬組成物が、25mMの酢酸塩、150mMのNaCl及び0.167%(v/v)のPolysorbate 20を含む、請求項15から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
製剤が、ヘリウム又は窒素などの不活性ガスで液化される(devolatilized)、請求項15から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
上部空間に、ヘリウム又は窒素などの不活性ガスを注入する(sparged)、請求項15から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
上部空間が容器の容量の30%を超えない、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
請求項1から14のいずれかに記載の方法により精製されたIFN−βと、バッファー、塩、界面活性剤及び安定剤などの薬学的に許容される担体とを含む医薬。
【請求項25】
非経口投与に適したヒトIFN−βの液体医薬製剤を含み、請求項15から23のいずれか一項に記載の方法により得られる入れ物。
【請求項26】
液体医薬製剤と接触する内面がIFN−βの吸収を防止する、請求項25に記載の入れ物。
【請求項27】
液体医薬製剤と接触する前記入れ物の少なくとも1つの面が、ポリプロピレン(PP)、シリコーン又はポリテトラフルオロエチレン若しくはエチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)コポリマーから実質的になる材料で被覆されている又は作製されている、請求項26に記載の入れ物。
【請求項28】
シリンジ、アンプル、カープル、穿刺ボトル又は注入容器である、請求項26又は27に記載の入れ物。
【請求項29】
液体製剤が、IFN−βの濃度として10〜250μg/mlの濃度及び/又は5〜5000万I.E./mlの活性で存在する、請求項28に記載の入れ物。
【請求項30】
請求項26から29のいずれか一項に記載の入れ物と、保存及び/又は投与の使用説明書とを含む、注射又は注入によるIFN−βの投与のためのキット。
【請求項31】
キットが幾つかの入れ物を含む、請求項30に記載のキット。
【請求項32】
シリンジ、注射用及び/又は注入用針それぞれのための安全区画を備える、請求項31又は32に記載のキット。
【請求項33】
保存が約2℃〜8℃で意図される、請求項30から32のいずれか一項に記載のキット。

【公表番号】特表2012−532167(P2012−532167A)
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518819(P2012−518819)
【出願日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【国際出願番号】PCT/EP2010/004130
【国際公開番号】WO2011/003600
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(510048820)バイオジェネリクス アーゲー (2)
【Fターム(参考)】