説明

インターフェロン−α核酸の送達および発現のための方法および組成物

【課題】ガン、肝炎、およびαインターフェロンでの治療に敏感に反応する他の状態の処置のために、αインターフェロンの発現を標的化することを本発明の課題とする。
【解決手段】上記課題は、インターフェロンαポリペプチドの発現のための組換えベクターであって、哺乳動物細胞中で機能的なプロモーターに作動可能に連結されたインターフェロンαポリペプチドをコードする核酸配列を含む、ベクターを提供することによって解決された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療目的のための、インターフェロンαの組織特異的発現のための方法および組成物の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
ヒトインターフェロン-α(IFN-α)は、少なくとも24の亜種を含むタンパク質のファミリーである(非特許文献1)。インターフェロンαは、細胞において抗ウイルス状態を誘導し得る試薬として最初に記載されたが、現在は、免疫系の多くの機能に影響を与える多面発現性のリンホカインとして知られている(Openakkerら、Experimentia45:513(1989))。
【0003】
IFN-αは、以下を含む治療目的のために広範に使用されている:毛状細胞白血病、カポジ肉腫、腎臓細胞ガン、非ホジキン病リンパ腫(nonHodgkin's lymphoma)、T細胞白血病、多発性の慢性骨髄性白血病、悪性黒色腫、膀胱細胞ガン、結腸ガン(5-FUを有する)、尖圭湿疣(condylomaacuminate)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、非A非Bウイルス(NANB)、またはδ肝炎ウイルス(HDV)感染の結果として生じる、ライノウイルスおよび種々の形態の慢性ウイルス肝炎(PestkaAIDA Research & Human Retroviruses 8(5):776-786(1992))。IFN-αはまた、巨核球形成に対して、および骨髄増殖性(myeloproliferative)障害を有する患者における血小板増加症の制御に高度に効果的であることが見出されている(Talpazら、AnnalsInt. Med. 99:789-792(1983);Gisslingerら、Lancet i:634-637(1989);Ganserら、Blood70:1173-1179(1987))。
【0004】
遺伝子治療技術は、遺伝子産物(例えば、インターフェロン)への被験体の暴露を、目的の組織へ治療用遺伝子の発現を標的化することによって制限する可能性を有する。しかし、一般に、目的の組織に標的化する能力は、遺伝子治療の主要な難題の1つである。インターフェロン遺伝子の標的化の一例として、WIPO特許出願公開番号第WO93/15609号は、カテーテルシステムを使用する、血管壁の損傷領域へのこのような遺伝子投与による、管組織へのインターフェロン遺伝子の送達を開示している。別の例では、プロドラッグ「自殺遺伝子」を酵素的に転換し得るタンパク質をコードするアデノウイルスベクター、およびサイトカインをコードする遺伝子が固形の腫瘍に直接投与される。
【0005】
治療用遺伝子を目的の組織に対して標的化する他の方法として、形質導入標的化、部位標的化(positional targeting)、および転写標的化の3つの一般的なカテゴリーが挙げられる(概説については、例えば、Millerら、FASEBJ. 9:190-199(1995)を参照のこと)。形質導入標的化は、特定の細胞への選択的な進入をいい、主にレセプターリガンドの選択によって実施される。ゲノム内での部位標的化は、所望の遺伝子座(例えば、クロマチンの活性領域)への組み込み、または標的遺伝子のような内因性ヌクレオチド配列との相同組換えによる組み込みをいう。転写標的化は、目的の細胞に合わせて作られた遺伝子発現のより高い特異的調節を有する転写プロモーターの取り込みによって達成される、選択的発現をいう。
【0006】
組織特異的プロモーターの例として、クレアチンキナーゼのプロモーター(これは、筋肉および心臓組織でのジストロフィンcDNAの発現を指向するために使用されている)(Coxら、Nature 364:725-729(1993));およびB細胞中の自殺遺伝子の発現のためのイムノグロブリン重鎖または軽鎖プロモーター(Maxwellら、CancerRes.51:4299-4304(1991))が挙げられる。内皮細胞特異的調節領域もまた、特徴づけられている(Jahroudiら、Mol.Cell.Biol. 14:999-1008(1994))。アルブミンまたはα-フェトタンパク質のいずれかのプロモーターの制御下に単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ遺伝子を有する両親媒性レトロウイルスベクターが、肝臓系統の細胞および肝ガン細胞をそれぞれ標的化するために構築されている(Huberら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.88:8039-8043(1991))。このような組織特異的プロモーターは、レトロウイルスベクター(Hartzoglouら、J. Biol. Chem.265:17285-17293(1990))およびアデノウイルスベクター(Friedmanら、Mol.Cell. Biol. 6:3719-3797(1986))中で使用され得、そしてなおそれらの組織特異性を維持し得る。
【0007】
従って、ガン、肝炎、およびαインターフェロンでの治療に敏感に反応する他の状態の処置のために、αインターフェロンの発現を標的化することが必要とされている。本発明は、この要件およびさらにそれ以上を取り扱う。
【0008】
この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、次のものがある。
【非特許文献1】Zoon,K.C.,Interferon 9:1(1987)、Gresser,I.編、Academoc Press, NY
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の要旨)
本発明は、以下を提供する。
(項目1) ベクターを含む組成物であって、該ベクターは、インターフェロンαポリペプチドをコードする核酸セグメントを含み、該核酸セグメントは、目的の組織に特異的なプロモーターに作動可能に連結されている、組成物。
(項目2) 前記ベクターがウイルスベクターである、項目1に記載の組成物。
(項目3) 前記ウイルスベクターがアデノウイルスベクターである、項目2に記載の組成物。
(項目4) 前記プロモーターが肝臓特異的プロモーターである、項目3に記載の組成物。
(項目5) 前記プロモーターが前立腺特異的プロモーターである、項目3に記載の組成物。
(項目6) 項目4または5に記載の組成物であって、さらに、インターフェロンαポリペプチドをコードする核酸に作動可能に連結されているインターフェロンα分泌リーダーを含む、組成物。
(項目7) 項目1から6のいずれかに記載の組成物を含む、薬学的処方物。
(項目8) インターフェロンαポリペプチドを組織に提供するための方法であって、該方法は、目的の組織に対して、インターフェロンαポリペプチドをコードする核酸セグメントを含むベクターを導入する工程を包含し、
該核酸セグメントは、該目的の組織に対する特異性を有するプロモーターに対して作動可能に連結され、
ここで、該インターフェロンαポリペプチドは、患者の該目的の組織において発現する、
方法。
(項目9) 前記インターフェロンαがインターフェロンα2bである、項目8に記載の方法。
(項目10) 前記ウイルスベクターがアデノウイルスベクターである、項目9に記載の方法。
【0010】

(項目11) 前記プロモーターが肝臓特異的プロモーターである、項目10に記載の方法。
(項目12) 前記プロモーターが前立腺特異的プロモーターである、項目10に記載の方法。
(項目13) 項目11または12に記載の方法であって、ここで、インターフェロンαをコードする核酸セグメントが、インターフェロンα分泌リーダーをコードする核酸に作動可能に連結されている、方法。
【0011】
本発明の1つの局面は、インターフェロンαポリペプチドをコードする核酸セグメントを含むベクターを患者の目的の組織に導入することを含む、インターフェロンαポリペプチドを患者に提供する方法である。この核酸セグメントは、目的の組織に対する特異性を有するプロモーターに作動可能に連結されている。ここでポリペプチドは、目的の組織で発現される。
【0012】
本発明の別の局面は、インターフェロンαポリペプチドをコードする核酸セグメントを含むベクターを目的の組織に導入することを包含する、患者の目的の組織でインターフェロンαレベルを増大させる方法である。この核酸セグメントは、目的の組織に対する特異性を有するプロモーターに作動可能に連結されている。ここでインターフェロンαポリペプチドは、目的の組織で発現される。
【0013】
本発明の別の局面は、インターフェロンαポリペプチドをコードする核酸セグメントを含むベクターをガン性組織に投与することを包含する、インターフェロンαに応答性であるガンの処置のための方法である。この核酸セグメントはインターフェロンαポリペプチドをコードし、この核酸セグメントは、上記の組織に対する特異性を有するプロモーターに作動可能に連結されている。ここでαインターフェロンポリペプチドは、上記の組織で発現される。
【0014】
本発明の別の局面は、インターフェロンαポリペプチドをコードする核酸セグメントを含むベクターを患者の肝臓に投与することを包含する、肝炎の処置方法である。この核酸セグメントは、肝細胞に対する特異性を有するプロモーターに作動可能に連結されている。ここでインターフェロンαポリペプチドは、患者の肝臓で発現される。
【0015】
本発明のさらなる局面は、インターフェロンαポリペプチドをコードする核酸セグメントを含むベクターを含む組成物である。この核酸セグメントは、目的の組織に対する特異性を有するプロモーターに作動可能に連結されている。
【0016】
(特定の実施態様の詳細な説明)
本発明は、組織特異的プロモーターを使用するIFN-αの組織特異的発現のための方法を提供する。本明細書中で使用される用語TFN-αは、インターフェロンαの全てのサブクラス、それらの欠失、挿入、または置換改変体、生物学的に活性なフラグメント、および対立遺伝子の形態を含むことが意図される。本明細書中で使用される「生物学的に活性な」は、当該分野で周知の技術によって測定した場合、任意の抗ウイルス活性または抗増殖活性をいう(例えば、Openakkerら、前出;Mossman、J.Immunol. Method 65:55(1983)を参照のこと)。組換えインターフェロンαがクローニングされており、そしていくつかのグループによってE.coli中で発現されている(例えば、Weissmannら、Science209:1343-1349(1980);Sreuliら、Science 209:1343-1347(1980);Goeddelら、Nature290:20-26(1981);Hencoら、J.Mol.Biol.185:227-260(1985))。好ましくは、インターフェロンαは、インターフェロンα2aまたは2b(例えば、WO91/18927を参照のこと)であるが、任意のインターフェロンαが使用され得る。
【0017】
IFN-αポリペプチドをコードする核酸は、DNAまたはRNAであり得る。句「コードする核酸配列」は、特異的なタンパク質またはペプチドの発現を指向する核酸をいう。核酸配列は、RNAに転写されるDNA鎖配列、およびタンパク質に翻訳されるRNA配列の両方を含む。核酸配列は、全長の核酸配列、および全長のタンパク質ゆらいの全長ではない配列の両方を含む。この配列が、特異的な宿主細胞中で好ましいコドンを提供するように導入され得る天然の配列(単数または複数)の縮重コドンを含むことが、さらに理解される。
【0018】
用語「ベクター」は、ウイルス発現システムである自律複製性の環状DNA(プラスミド)をいい、そして発現プラスミドおよび非発現プラスミドの両方を含む。組換え微生物または細胞培養物が「発現ベクター」の宿主として記載される場合、発現ベクターは、染色体外の環状DNAおよび宿主染色体(単数または複数)に取り込まれているDNAの両方を含む。ベクターが宿主細胞によって維持されている場合、ベクターは、自律的な構造の場合には有糸分裂の間に細胞によって安定に複製されるか、または宿主ゲノム中に取り込まれるかのいずれかであり得る。ベクターは、部位的におよび配列的に方向づけられた複数の遺伝子エレメントを含み、すなわち、他の必須のエレメントに作動可能に連結され、その結果、TFN-αをコードするベクター中の核酸は転写され得、そして必要な場合は、トランスフェクトされた細胞中で翻訳され得る。
【0019】
本明細書中で使用される用語「遺伝子」は、ポリペプチドをコードする核酸配列をいうことが意図される。この定義は、種々の配列多型、変異体、および/または配列改変体を含み、ここでこのような変化は、遺伝子産物の機能には影響を与えない。用語「遺伝子」は、コード配列だけでなく、プロモーター、エンハンサー、およびターミネーター領域のような調節領域をも含むことが意図される。この用語はさらに、mRNA転写物からスプライシングされる全てのイントロンおよび他のDNA配列を、別のスプライシング部位から生じる変異体とともに含む。
【0020】
用語「プラスミド」は、細胞内で複製し得る自律性の環状DNA分子をいい、そして発現型および非発現型の両方を含む。組換え微生物または細胞培養物が、「発現プラスミド」の宿主として記載されており、発現プラスミドは、染色体外の環状DNA分子、および宿主染色体(単数または複数)に取り込まれているDNAの両方を含む。プラスミドが宿主細胞によって維持されている場合、プラスミドは、自律的な構造の場合には有糸分裂の間に細胞によって安定に複製されるか、または宿主ゲノム中に取り込まれるかのいずれかである。
【0021】
句「組換えタンパク質」または「組換え産生されたタンパク質」は、タンパク質を発現し得るDNAの内因性のコピーを有さない非天然の細胞を使用して産生される、ペプチドまたはタンパク質をいう。細胞は、細胞が適切な核酸配列の導入によって遺伝的に変更されているので、タンパク質を産生する。組換えタンパク質は、タンパク質と会合して、およびタンパク質を産生する細胞と通常会合する他の亜細胞成分と会合しては見出されない。用語「タンパク質」および「ポリペプチド」は、本明細書中で互換的に使用される。
【0022】
一般に、IFN-αは、機能的な発現のために適切な間隔で連続的に連結される以下のエレメントを含む発現ベクター中で提供される:組織特異的プロモーター、転写開始部位、3'非翻訳領域、5'mRNAリーダー配列、αインターフェロンポリペプチドをコードする核酸配列、およびポリアデニル化シグナル。エンハンサー配列、ならびに他の発現および/または分泌を補助する配列もまた、発現ベクターに含まれ得る。さらなる遺伝子(例えば、薬物耐性をコードする遺伝子)が、組換えベクターの存在についての選択またはスクリーニングを可能にするために含まれ得る。このようなさらなる遺伝子として、例えば、ネオマイシン耐性、多剤耐性、チミジンキナーゼ、β-ガラクトシダーゼ、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)、およびクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼをコードする遺伝子が挙げられ得る。
【0023】
本発明において、TFN-αを目的の特定の組織に対して標的化することは、目的の組織によって優先的に使用されるプロモーターおよび/または他の発現エレメントの使用によって達成される。公知の組織特異的プロモーターの例として、クレアチンキナーゼのプロモーター(これは、筋肉および心臓組織でのジストロフィンcDNAの発現を指向するために使用されている、Coxら、Nature364:725-729(1993));B細胞中での遺伝子の発現のためのイムノグロブリン重鎖または軽鎖プロモーター;肝臓系統の細胞および肝ガン細胞をそれぞれ標的化するためのアルブミンまたはα-フェトタンパク質プロモーターが挙げられる。
【0024】
肝臓についての例示的な組織特異的発現エレメントとして、以下が挙げられるが、これらに限定されない:HMG-CoAレダクターゼプロモーター(Luskey、Mol.Cell. Biol. 7(5):1881-1893 (1987));ステロール調節因子1(SRE-1;Smithら、J. Biol. Chem. 265(4):2306-2310 (1990);ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(PEPCK)プロモーター(Eisenbergerら、Mol.Cell Biol. 12(3):1396-1403(1992));ヒトC反応性タンパク質(CRP)プロモーター(Liら、J. Biol. Chem.265(7):4136-4142 (1990));ヒトグルコキナーゼプロモーター(Tanizawaら、Mol. Endocrinology6(7):1070-81 (1992);コレステロール7-αヒドロリラーゼ(CYP-7)プロモーター(Leeら、J. Biol. Chem.269(20):14681-9 (1994));βガラクトシダーゼα-2,6シアリルトランスフェラーゼプロモーター(Svenssonら、J. Biol.Chem.265(34):20863-8(1990);インシュリン様成長因子結合タンパク質(IGFBP-1)プロモーター(Babajkoら、Biochem Biophys.Res.Comm.196(1):480-6(1993));アルドラーゼBプロモーター(Bingleら、BiochemJ.294(Pt2):473-9(1993));ヒトトランスフェリンプロモーター(Mendelzonら、Nucl.Acids Res.18(19):5717-21(1990);I型コラーゲンプロモーター(Houglumら、J.Clin.Invest.94(2):808-14(1994))。
【0025】
前立腺についての例示的な組織特異的発現エレメントとしていかが挙げられるが、これらに限定されない:前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)プロモーター(Banasら、Biochem.Biophys.Acta.1217(2)188-94(1994);前立腺分泌タンパク質の94(PSP94)プロモーター(Noletら、Biochem.Biophys.ACTA1098(2):247-9(1991));前立腺特異的抗原複合プロモーター(Casperら、J.Steroid Biochem.Mol.Biol.47(1-6):127-35(1993));ヒト腺カリクレイン遺伝子プロモーター(hgt-1)(Liljaら、WorldJ.Urology 11(4):188-91(1993)。
【0026】
胃組織についての例示的な組織特異的発現エレメントとして以下が挙げられるが、これらに限定されない:ヒトH+/K+-ATPaseαサブユニットプロモーター(Tanuraら、FEBS Letters298(2-3):137-41(1992))。
【0027】
膵臓についての例示的な組織特異的発現エレメントとして以下が挙げられるが、これらに限定されない:膵臓関連タンパク質プロモーター(PAP)(Dusettiら、J.Biol.Chem.268(19):14470-5(1993));エラスターゼ1転写エンハンサー(Kruseら、Genesand Development 7(5):774-86(1993));膵臓特異的アミラーゼおよびエラスターゼエンハンサープロモーター(Wuら、Mol.Cell.Biol.11(9):4423-30(1991));Kellerら、Genes& Dev.4(8):1316-21(1990));膵臓コレステロールエステラーゼ遺伝子プロモーター(Fontaineら、Biochemistry30(28):7008-14(1991))。
【0028】
子宮内膜についての例示的な組織特異的発現エレメントとして以下が挙げられるが、これらに限定されない:子宮グロビンプロモーター(Helftenbeinら、Annal.NY Acad.Sci.622:69-79(1991))。
【0029】
副腎細胞についての例示的な組織特異的発現エレメントとして以下が挙げられるが、これらに限定されない:コレステロール側鎖切断(SCC)プロモーター(Riceら、J.Biol.chem.265:11713-20(1990))。
【0030】
一般的な神経系についての例示的な組織特異的発現エレメントとして以下が挙げられるが、これらに限定されない:γ−γエノラーゼ(ニューロン-特異的エノラーゼ,NSE)プロモーター(Forss-Petterら、Neuron 5(2)187-97(1990))。
【0031】
脳についての例示的な組織特異的発現エレメントとして以下が挙げられるが、これらに限定されない:神経繊維重鎖(NF-H)プロモーター(Schwartzら、J.Biol.Chem.269(18):13444-50(1994))。
【0032】
リンパ球についての例示的な組織特異的発現エレメントとして以下が挙げられるが、これらに限定されない:ヒトCGL-1/グランザイム(granzyme)Bプロモーター(Hansonら、J.Biol.Chem.266(36):24433-8(1991));末端デオキシトランスフェラーゼ(TdT)、λ5、VpreB、およびlck(リンパ球特異的チロシンタンパク質キナーゼp56lck)プロモーター(Loら、Mol.Cell.Biol.11(10):5229-43(1991));ヒトCD2プロモーターおよびその3'転写エンハンサー(Lakeら、EMBOJ.9(10):3129-36(1990)、およびヒトNKおよびT細胞特異的活性化(NKG5)プロモーター(Houchinsら、Immunogenetics37(2):102-7(1993))。
【0033】
結腸についての例示的な組織特異的発現エレメントとして以下が挙げられるが、これらに限定されない:pp60c-srcチロシンキナーゼプロモーター(Talamontiら、J.Clin.Invest 91(1):53-60(1993));起源特異的新生抗原(OSN)、mw40kDa(p40)プロモーター(Ilantzisら、Microbiol.Immunol.37(2):119-28(1993));結腸特異的抗原Pプロモーター(Sharkeyら、Cancer73(3 前出)864-77(1994))。
【0034】
乳房細胞についての例示的な組織特異的発現エレメントとして以下が挙げられるが、これらに限定されない:ヒトαラクトアルブミンプロモーター(Theanら、British J.Cancer.61(5):773-5(1990))。
【0035】
目的の組織での発現の特異性を補助する他のエレメントとして、分泌リーダー配列、エンハンサー、核局在化シグナル、内方浸透性ペプチドなどが挙げられ得る。好ましくは、これらのエレメントは、特異性を補助するために目的の組織由来である。
【0036】
本発明の核酸配列の核酸操作のための技術(例えば、発現ベクター中へのポリペプチドをコードする核酸配列のサブクローニング、プローブの標識、DNAのハイブリダイゼーションなど)が、Sambrookら、Molecular Cloning−A Laboratory Manual(第2版)1〜3巻、ColdSpring Harbor Labpratory,Cold Spring Harbor,New York,(1989)に一般的に記載されており、これは、本明細書中で参考として援用される。このマニュアルを、本明細書中以下で「Sambrookら」と呼ぶ。
【0037】
一旦、目的の配列をコードするDNAが単離され、そしてクローニングされると、これは、種々の組換え操作した細胞中でコードされるタンパク質を発現し得る。当業者は、コードするDNAの発現に有用な多数の発現系を十分に知り得ることが、予想される。原核生物および真核生物でのタンパク質の発現について知られる種々の方法を詳細に記載する試みは、現在行われていない。
【0038】
簡潔にまとめると、目的の配列をコードする天然のまたは合成の核酸の発現は、代表的には、プロモーター(これは、構成性または誘導性のいずれかである))へのDNAまたはcDNAの作動可能な連結、続く発現ベクターへの取り込みによって達成される。ベクターは、原核生物または真核生物のいずれかでの、複製および組み込みに適切であり得る。代表的な発現ベクターは、転写および翻訳のターミネーター、開始配列、および目的のポリヌクレオチド配列の発現の調節に有用なプロモーターを含む。クローニングした遺伝子の高レベルの発現を得るために、転写を指向する最小の強いプロモーター、転写開始のためのリボソーム結合部位、および転写/翻訳ターミネーターを含む発現プラスミドを構築することが、所望される。発現ベクターはまた、少なくとも1つの独立したターミネーター配列、真核生物および原核生物の両方でプラスミドの複製が可能である配列(すなわち、シャトルベクター)、ならびに原核生物および真核生物システムの両方のための選択マーカーを含み得る。Sambrookらを参照のこと。
【0039】
本発明の構築物は、種々の方法によって、インビボまたはエキソビボの組織に導入され得る。本発明のいくつかの実施態様において、ベクターは、マイクロインジェクション、リン酸カルシウム沈殿、リポソーム融合、または微粒子銃のような方法によって、細胞に導入される。さらなる実施態様において、DNAは、目的の組織から直接採取される。他の実施態様において、構築物をウイルスベクターシステムにパッケージして、細胞への導入を促進する。
【0040】
本発明の実施に有用なウイルスベクターシステムとして、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、アデノ随伴ウイルス、マウスのminuteウイルス(MVM)、HIV、シンドビスウイルス、およびラウス肉腫ウイルスのようなレトロウイルス、およびMoMLVが挙げられる。
【0041】
代表的には、本発明の構築物は、このようなベクター中に挿入され、インターフェロン発現構築物のパッケージングを可能にし、これによって、代表的には、感受性宿主細胞のウイルスDNA感染、およびインターフェロン-α遺伝子の発現が伴う。特に有利なベクターは、Willsら、Hum.Gene Therapy5:1079-1088(1994)に開示されているアデノウイルスベクターである。
【0042】
本発明のなお他の実施態様において、本発明の組換えIFN-α構築物は、DNAの連結部分を通じる取り込み(例えば、コートされた穴(pit)の陥入およびエンドソームの内部移行)を促進するために、細胞のレセプターリガンドに結合される(Wuら、J.Biol.Chem.263:14621-14624(1988);WO92/06180)。例えば、本発明のDNA構築物は、肝細胞のアシアロ糖タンパク質レセプターのリガンドであるアシアロオロムコイドに対して、ポリリジン部分を通じて連結され得る。
【0043】
同様に、本発明の構築物をパッケージングするために使用されるウイルスエンベロープは、レセプターリガンドまたはレセプターに特異的な抗体の添加によって改変され得るか、または特定の細胞へのレセプター媒介性エンドサイトーシスが可能となる(例えば、WO93/20221、WO93/14188;WO94/06923)。本発明のいくつかの実施態様において、本発明のDNA構築物は、ウイルスタンパク質(例えば、アデノウイルス粒子)に連結されて、エンドサイトーシスを促進する(Curielら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.88:8850-8854(1991))。他の実施態様において、本発明の分子結合体は、微小管インヒビター(WO/9406922);インフルエンザウイルス血球凝集素を模倣する合成ペプチド(Plankら、J.Biol.Chem.269:12918-12924(1994));およびSV40T抗原のような核局在化シグナル(WO93/19768)を含み得る。
【0044】
本明細書中で使用する用語「処置」は、目的の組織(特に、いくつかの病状を示す1つ以上の細胞を有する組織)のインターフェロンαへの暴露の目的のための、患者へのαインターフェロンをコードする核酸の導入をいうことが意図される。従って、例えば、「ガン性」組織は、1つ以上の細胞が、ガン性、悪性、腫瘍、前ガン性、形質転換されたとして分類されるか、または腺ガンもしくはガンとして分類されるか、あるいはこれらの症状について当業者で一般的に使用される任意の他の同義語として分類される組織をいうことが意図される。
【0045】
本明細書中で使用される「非ガン性」細胞は、ガン性細胞またはガン細胞の定義を除外するように当業者に理解され、そして以下を含み得る:正常な細胞、およびウイルス、細菌、寄生虫、または他の生物による感染のようないくつかの病理学的特徴を示す細胞、細胞を正常な部分または野生型の部分よりもより少ない最適性にする、遺伝し得る症状に罹患した細胞、糖尿病などのようないくつかの考えられる非感染性疾患の状態を罹患した細胞、ならびに任意のこれらのストレスを生存している細胞など。
【0046】
IFN-αの投与から恩恵を受ける任意の症状の処置または治療は、症状の診断の前、または症状の診断後の任意の時点で開始され得る。従って、例えば、前ガン性の病変、またはいくつかの型のガンを発症する増大した可能性を有すると疑われる患者は、本発明の組成物で処置され得る。同様に、病原体(例えば、B型肝炎ウイルス)に曝された人は、肝炎と診断される前に、本発明の組成物で処置され得る。さらに、HBVの疑わしいキャリアまたはおそらくキャリアになる患者は、疾患の著しい兆候が改善した後に、処置され得る。
【0047】
本発明の構築物は、種々のガン、肝炎、および以下を含むがこれらに限定されない、組織中のIFN-αレベルを増大させるためのIFN-αの投与が有利である他の状態の治療に有用である:潰瘍性大腸炎、ライノウイルス感染、尖圭コンジローム、喉頭腫症(laryngealpapillomitis);HIV感染、繊維症、過剰のIL-4およびIgEの産生によるアレルギー性疾患、およびクローン病のような肉芽腫症障害。いくつかの組織特異的発現エレメント(例えば、プロモーター)が同定され得る任意の組織が標的化され得るが、詳細な目的は、ガン性組織(例えば、ヒト前立腺ガンおよび肝ガン組織)中のIFN-αレベルを増大させるためのIFN-αの組織特異的投与である。さらに、本発明の構築物は、非ガン性細胞がインターフェロン産生が欠損した(すなわち、健常な細胞よりも少ないインターフェロンを産生する)、例えば慢性のB型肝炎ウイルスキャリアのような病理学的状態における組織中でIFN-αレベルを増大させるために使用され得る(Nouri-Ariaら、Hepatology14(6):1308-1311(1991))。本発明のいくつかの実施態様において、組換え構築物は、目的の細胞集団中のインターフェロンαの局所的濃度を増大させるために、近隣の組織または細胞に対して標的化される。
【0048】
本発明の組成物は、哺乳動物被験体(好ましくは、ヒト)への投与のために受容可能であると当該分野で公知の様式による投与のために処方される。本発明のいくつかの実施態様において、本発明の組成物は、注射によって組織内に直接か、または目的の組織に供給される血管に投与され得る。本発明のさらなる実施態様において、本発明の組成物は、「移動領域的に(locoregionally)」(すなわち、膀胱内、病巣内、および/または局所的に)投与される。本発明の他の実施態様において、本発明の組成物は、注射、吸入、坐剤、経皮送達などによって全身的に投与される。本発明のさらなる実施態様において、組成物は、内部器官のような遠く離れた目的の組織に投与することを可能にする、カテーテルまたは他のデバイスを通じて投与される。本発明の組成物はまた、組成物のゆっくりとした放出、または徐放を可能にするために、貯蔵型デバイス、移植物、またはカプセル化した処方物で投与され得る。
【0049】
本発明は、受容可能なキャリア(好ましくは、水溶性のキャリア)中に溶解されたかまたは懸濁された本発明の組成物の溶液を含む、投与のための組成物を提供する。以下のような種々の水溶性キャリアが使用され得る:例えば、水、緩衝化した水、0.8%の生理食塩水、0.3%のグリシン、ヒアルロン酸など。これらの組成物は、従来の周知の滅菌技術によって滅菌され得るか、または滅菌濾過され得る。得られる水溶液は、そのまま使用するためにパッケージされ得るか、または凍結乾燥され得、凍結乾燥した調製物は投与の前に滅菌の溶液と組み合わされる。組成物は、適切な生理学的条件が必要とされる場合は、以下のような薬学的に受容可能な補助物質を含み得る:例えば、pH調整剤および緩衝化剤、張性調整剤、湿潤剤など(例えば、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、ソルビタンモノラウレート、オレイン酸トリエタノールアミンなど)。
【0050】
薬学的処方物中の本発明の組成物の濃度は広範に変化し得(すなわち、約0.1重量%未満から通常は、約2重量%または少なくとも約2重量%から多くとも20重量%から50重量%またはそれ以上まで)、そして液体の容量、粘度などによって、選択される投与の特定の様式にしたがって主に選択される。
【0051】
本発明の組成物はまた、リポソームを通じて投与され得る。リポソームとしては、乳濁物、泡、ミセル、不溶性の単層、液晶、リン脂質分散物、ラメラ層などが挙げられる。これらの調製物において、送達されるべき本発明の組成物は、リポソームの一部として、単独で、あるいは所望の標的(例えば、抗体)に結合する分子、または他の治療用組成物もしくは免疫学的組成物とともに取り込まれる。従って、本発明の所望の組成物で満たされたかまたは飾られた(decorated)のいずれかのリポソームは、全身的に送達され得るか、または目的の組織に対して指向され得、次いで、ここで、リポソームは、選択された治療的/免疫原性ペプチド組成物を送達する。
【0052】
本発明での使用のためのリポソームは、一般に中性および陰性に荷電したリン脂質およびステロール(例えば、コレステロール)を含む、標準的なベシクル形成脂質から形成される。脂質の選択は、一般に、例えば、リポソームの大きさ、酸不安定性、および血流中でのリポソームの安定性を考慮して導かれる。本明細書中で参考として援用される、例えば、Szokaら、Ann. Rev. Biophys.Bioeng.9:467(1980)、米国特許第4,235,871号、同第4,501,728号、同第4,837,028号、および同第5,019,369号に記載されるような種々の方法が、リポソームの調製に利用可能である。
【0053】
本発明の組成物を含有するリポソーム懸濁物は、静脈内、局部的、局所的などで、とりわけ投与の様式、送達される本発明の組成物、および処置される疾患の段階に従って変化する用量で投与され得る。
【0054】
固体の組成物について、従来の非毒性の固体キャリアが使用され得、これには、例えば、薬学的グレードのマンニトール、ラクトース、澱粉、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、セルロース、グルコース、スクロース、炭酸マグネシウムなどが挙げられる。経口投与のための薬学的に受容可能な非毒性の組成物は、任意の通常使用される賦形剤(例えば、先に列挙されたキャリア、および一般に10〜95%、そしてより好ましくは25〜75%の濃度の活性成分(すなわち、本発明の1つ以上の組成物))の取り込みによって形成される。
【0055】
噴霧投与について、本発明の組成物は、好ましくは、界面活性剤および噴霧剤とともに最終的に分配された形態で供給される。本発明の組成物の代表的な割合は、0.01重量%〜20重量%であり、好ましくは1重量%〜10重量%である。界面活性剤は、もちろん、非毒性でなければならず、そして好ましくは噴霧剤中で可溶性である。代表的なこのような試薬は、6〜22個の炭素原子を含む脂肪酸(例えば、脂肪族多価アルコールまたはその環状アルデヒドを有する、カプロン酸、オクタン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、オレステリン酸(olestericacid)、およびオレイン酸)のエステルまたは部分的なエステルである。混合エステル(例えば、混合グリセリドまたは天然のグリセリド)が使用され得る。界面活性剤は、0.1重量%〜20重量%、好ましくは0.25重量%〜5重量%の組成物を構成し得る。組成物のバランスは、通常の噴霧剤である。キャリアはまた、所望される場合は、例えば、鼻腔内送達のためのレシチンと共に含まれ得る。
【0056】
本発明の構築物は、貯蔵型システム、カプセル化形態、または当該分野で周知の技術による移植においてもまた送達され得る。同様に、構築物は、目的の組織への注入(pump)によって送達され得る。
【0057】
本発明のいくつかの実施態様において、本発明の組成物は、患者から外植され、次いで患者に戻される細胞または組織に対してエキソボビで投与される。遺伝子治療構築物のエキソビボの投与の例として、以下が挙げられる:Arteagaら、Cancer Research 56(5):1098-1103(1996);Noltaら、Proc Natl.Acad. Sci. USA 93(6):2414-9(1996);Kocら、Seminars in Oncology 23(1):46-65(1996);Raperら、Annalsof Surgery 223(2):116-26(1996);Dalesandroら、J.Thorac.Cardi.Surg.11(2):416-22(1996);およびMakarovら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA93(1):402-6(1996)。
【0058】
以下の実施例は、例示の目的のために含まれ、そして本発明を限定するとは考えられるべきではない。
【実施例】
【0059】
(I.前立腺ガン細胞の増殖に有効なインターフェロン-α)
3つの異なる前立腺ガン細胞LNCaP(アンドロゲン依存性、ATCC #CRL 1740)、PC-3細胞(アンドロゲン非依存性、ATCC #CRL 1435)、およびDU-145(アンドロゲン非依存性、ATCC#HTB 81)を研究した。細胞を、以下の培地中の5つの異なる濃度(10、102、103、104、105IU/ml)のインターフェロン-α2b(Schering-Plough)中で72時間増殖させた:PC-3を、7%のウシ胎児血清を補充したHamのF12 K培地(GIBCOBRL)中で培養した;DU-145を、10%のウシ胎児血清を補充したDMEM(GIBCO BRL)中で培養した;LnCaPを、5%のウシ胎児血清を補充したRPMI1640(GIBCO BRL)中で培養した。
【0060】
インターフェロンの抗増殖効果を、MTTアッセイ(Mossman、J.Immunol.Methods 65:55(1983)))によって測定した。PC-3およびDU-145細胞は、104IU/mlでプラトーに達するインターフェロンの漸増濃度に対して一貫した感受性を示した。アンドロゲン感受性LNCaP細胞は、IFNに応答しなかった。2つのアンドロゲン無不応性細胞の間では、PC-3はDU-145細胞よりも感受性であるようであった。これらのデータを、図1にまとめる。黒棒は、細胞株PC-3(アンドロゲン非依存性)を示す;編み掛けした棒は、細胞株DU-145(アンドロゲン非依存性)を示す;斜線をいれた棒は、LNCaP(アンドロゲン依存性)を示す。
【0061】
(II.発現カセットの構築)
前立腺ガン細胞中でのIFN-αの組織特異的発現のために、前立腺特異的抗原遺伝子(PSA)の約600bpの基本プロモーターの制御下に、インターフェロンα2b(IFN-α2b)の完全なcDNA配列およびIFN-α2bの完全なシグナル配列(Sreuliら、Science209:1343-1347(1980);Goeddelら、Nature 290:20-26(1981);Hencoら、J.Mol.Biol.185:227-260(1985))を有する発現ベクターを構築した。基本的には、5'末端にその推定のシグナルリーダーを有する完全長のIFN-α2bcDNAを、哺乳動物発現ベクターPCDNA3(Invitrogen)中のCMVプロモーターの下流のHindIIおよびEcoRI多重クローニング部位にクローニングして、プラスミドDIFNを作成した。PSAプロモーターを含むPSA遺伝子(BBRC161:1151-1159(1989);Genebank #M27274)の5'隣接配列をベクターに挿入し、これによってCMVプロモーターを置き換えてプラスミドPSADIFNを作製した。
【0062】
(III.肝臓特異的遺伝子の基本プロモーターのクローニング)
4つのヒトの肝臓特異的遺伝子(アルブミン(HAL)、α1-抗トリプシン(HAT)、αフェトタンパク質(AFP)、およびヒドロキシ-メチル-グルタリルCoAレダクターゼ(HMG))由来の、基本プロモーターを含む5'隣接配列を、インターフェロン遺伝子の送達および肝細胞でのその組織特異的発現での使用のために、それぞれATCC65731、ATCC 61597、ATCC 65735、およびATCC 59567から、pCRScriptベクター中にサブクローニングした(Luskey、Mol.Cell.Biol.7(5):1881-1893(1987);Minghettiら、J.Biol.Chem.261(15):6747-6757(1986);Longら、Biochemistry23:4828-4837(1984);Gibbs、Biochemistry 26:1332-1343(1987))。
【0063】
上記の肝臓特異的酵素の遺伝子の5'隣接配列を含有するpCRScriptベクター中の挿入物の制限酵素マッピング後、挿入物を、pCRScriptベクター由来のレポータープラスミドpGL3(Promega)中のルシフェラーゼ遺伝子の上流に配置した。チャイニーズハムスター卵巣(CHO-K1、ATCC#CCL-61)、ヒト肝ガン(HepG2、ATCC #NB 8065)、およびヒト肝ガン(Hep3B ATCC #HB 8064)細胞を、これらの4つの構築物を用いておよびコントロールプラスミドpGLC(PROMEGACorp)でのエレクトロポレーションによってトランスフェクトした。pGLCは、SV40プロモーターおよびSV40エンハンサーの制御下にルシフェラーゼ遺伝子を含む。
【0064】
トランスフェクトした細胞中での4つの肝臓特異的プロモーター配列によるルシフェラーゼの発現を、コントロールプラスミドpGLCおよびベクターpGL3と比較した。データを、図2にまとめる(HALの結果は示さず)。3つの細胞型を、示された顕著な特徴を有するDNA構築物によってトランスフェクトした。黒棒は、ヒト肝ガンHepG2細胞を示す;編み掛けした棒は、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)を示す;斜線を入れた棒は、ヒト肝ガンHep3B細胞(Hep3B)を示す。pGLBは、ネガティブコントロールプラスミドである;pGLCは、ポジティブコントロールプラスミドである;HATは、ヒトα1-抗トリプシンプロモーターを示す;HMGは、ヒトヒドロキシ-メチル-グルタリルCoAレダクターゼプロモーターを示す;AFPは、ヒトα-フェトタンパク質プロモーターを示す。4つの組織特異的プロモーターのうち、ヒトα1-抗トリプシン(HAT)プロモーターは、これらの条件下での肝臓特異的発現のための最良の候補であるようである。
【0065】
HATプロモーターによって駆動される発現はさらに、以下のような肝臓特異的エンハンサー配列を用いて発現ベクターを構築することによって最適化され得る:例えば、ヒトαフェトタンパク質エンハンサー(Watanabeら、J.Biol.Chem.262(10):4812-4818(1987)、Genebank#J02693)、ヒトアルブミンエンハンサー(Hayashiら、J.Biol.Chem.267(21):14580-14585(1992)、Genebank#M92816)、ヒトα1ミクログロブリン/ビクニンエンハンサー(Rouetら、J.Biol.Chem.267(29):20765-20773(1992)、Genebank#X67082)、またはB型肝炎エンハンサー(Valenzuelaら、Animal Virus Genetics、B.Bielsら編、57-70頁、AcademicPress、N.Y.(1981);Galibertら、Nature 281:646-650(1979))。
【0066】
上述の発明は、理解の明確化の目的のために説明および実施例によっていくらか詳細に記載されているが、特定の変更および改変が添付の請求の範囲内で行われ得ることが明らかである。
【0067】
本明細書中で引用される全ての参考文献は、全ての目的についてそれらの全体が参照として援用される。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】図1は、ヒト前立腺ガン細胞に対するインターフェロンαの抗増殖効果を示すグラフである。
【図2】図2は、肝臓特異的遺伝子のプロモーターによって駆動されるルシフェラーゼの発現の測定値としてルシフェラーゼ活性を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インターフェロンαポリペプチドの発現のための組換えベクターであって、哺乳動物細胞中で機能的なプロモーターに作動可能に連結されたインターフェロンαポリペプチドをコードする核酸配列を含む、ベクター。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−301832(P2008−301832A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−212260(P2008−212260)
【出願日】平成20年8月20日(2008.8.20)
【分割の表示】特願平10−519400の分割
【原出願日】平成9年10月16日(1997.10.16)
【出願人】(399025284)カンジ,インコーポレイテッド (21)
【Fターム(参考)】