インターフェロン−タウを使用した多発性硬化症の治療
IFNτを投与することにより自己免疫状態を治療する方法を記載する。IFNτは、多発性硬化症患者の新しい造影増強脳病変における減少などの、所望の臨床的エンドポイントを達成するために十分な用量で経口投与される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、インターフェロン−タウを含む医薬組成物及びその使用法に関する。より具体的には、本発明の主題は、所望の臨床転帰を得るために、インターフェロン−タウ(IFNτ)を十分な用量で投与すると、自己免疫状態などの特定のサイトカイン濃度の調節から利益を得る、状態を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インターフェロン−タウ(以下、「IFNτ」又は「インターフェロン−τ」)は、当初、反芻動物の受胎産物の栄養外胚葉により産生される妊娠認識ホルモンとして発見された(Imakawa,K.ら、Nature,330:377−379,(1987);Bazer,F.W.及びJohnson,H.M.,Am.J.Repro.Immunol.,26:19−22,(1991))。IFNτ遺伝子の分布は、ウシ、ヒツジ及びヤギなどの反芻動物に限定されているが(Alexenko,A.P.ら、J.Interferon and Cytokine Res.,19:1335−1341,(1999))、ヒト及びマウスなどの他の種に属する細胞で活性を有することが示されている(Pontzer,C.H.ら、Cancer Res.,51:5304−5307,(1991);Alexenko,A.P.ら、J.Interferon and Cytokine Res.,20:817−822,(2000))。例えば、IFNτは、抗ウイルス(Pontzer,C.H.ら、Biochem.Biophys.Res.Commun.,152:801−807,(1988))、抗増殖性(Pontzer,C.H.ら、1991)及び免疫調節活性(Assal−Meliani,A.,Am.J.Repro.Immunol.,33:267−275(1995))を有することが実証されている。
【0003】
IFNτは、インナーフェロン−α及びインターフェロン−βなどのI型IFNに古典的に関連した活性の多くを示すが、IFNτと他のタイプのI型IFNとの間にはかなりの相違が存在する。最も顕著な相違は、反芻動物種の妊娠におけるIFNτの役割である。他のIFNは、妊娠認識において同様の活性を持たない。また、ウイルス誘導性も異なる。IFNτ以外の全てのI型IFNは、ウイルス及びdsRNAにより容易に誘導される(Robertsら、Endocrine Reviews,13:432(1992))。誘導されたIFN−α及びIFN−β発現は一過性で、ほぼ数時間持続する。対照的に、IFNτの合成は、一旦、誘導されると、数日間にわたり維持される(Godkinら、J.Reprod.Fert.,65:141(1982))。1細胞あたりの基準で、IFNτは、他のI型IFNより300倍多く生成される(Cross,J.C.及びRoberts,R.M.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:3817−3821(1991))。
【0004】
他の相違は、IFNτ及び他のI型インターフェロンのアミノ酸配列にある。インターフェロンα2b、β1、ω1、γ及びτの間のアミノ酸配列類似性のパーセントを以下の表に要約する。
【表1】
以下の参考文献から判定した配列比較。
Taniguchiら、Gene,10(1)11(1980)。
Adolfら、Biochim.Biophys.Acta,1089(2):167(1991)。
Streuliら、Science,209:1343(1980)。
Imakawaら、Nature,330:377(1987)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
組換え型ヒツジIFNτは、IFNα2bに48.8パーセント相同であり、IFNβ1に33.8パーセント相同である。このIFNτとIFNα及びIFNτとIFNβの間の限定的な相同性のため、経口投与した際、IFNτがIFNα又はIFNβと同じ様式で作用するか予測することができない。また、IFNτは、ヒト細胞上のI型受容体に対する受容体結合親和性が低いことが報告されている(Brod,S.,J.Interferon and Cytokine Res.,18:841(1999);Alexenko,A.ら、J.Interferon and Cytokine Res.,17:769(1997))。さらに、IFNτが非内在性ヒトタンパク質であるという事実は、IFNτが人体に導入されると、全身の中和抗体形成の潜在性を生じる(Brod,S.,J.Interferon and Cytokine Res.,18:841(1999))。これらのIFNτと他のインターフェロンとの相違は、ヒトに投与すると、IFNτが治療上の有益性をもたらすかどうかを予測することを困難にする。IFNα、IFNβ、又はタウ以外の他のインターフェロンのいずれかの経口投与に関する当技術分野の教示は、IFNτに対する何らかの期待を抱くためのベースを提供することができない。
【0006】
IFNτ、並びに通常はタンパク質及びポリペプチドの使用における1つの制限因子は、非経口的に投与した際の血漿タンパク質及び血球とのタンパク質の相互作用により影響される体内分布に関連する。経口投与経路は、意図される標的に到達する前に、酸性条件が分子を破壊する可能性がある胃内におけるタンパク分解により、なおさら問題である。例えば、胃及び膵臓の酵素の作用により産生されるポリペプチド及びタンパク質断片は、腸内の刷子縁膜でエキソペプチダーゼ及びエンドペプチダーゼにより切断され、ジペプチド及びトリペプチドを生じる。膵酵素によるタンパク分解が避けられる場合、ポリペプチドは刷子縁ペプチダーゼによる分解にかけられる。胃の通過を生き延びることができるポリペプチド又はタンパク質は、浸透障壁(penetration barrier)が細胞への流入を防止する腸管粘膜で代謝にかけられる。この理由により、多くの試みは、一定期間、口腔に留まるトローチ剤又は溶液の形態で、咽頭口部(oral−pharyngeal region)にタンパク質を送達することに焦点が当てられている。
【0007】
様々な疾患におけるサイトカインの役割、並びにサイトカインの血中濃度と疾患の発症及び重症度との相関は、医学界の関心事である。最近の調査は、血清中IL−10濃度の低い多発性硬化症患者が、血清中IL−10濃度が高い患者より障害度が顕著であることを示している(Petereit,H.F.,J.Neurological Sciences,206:209(2003))。また、IL−12の下方制御が多発性硬化症患者を治療する際に有益であり得ることが報告されている(Tuohy,V.ら、J.Neuroimmunol.,111(1−2):55(2000))。インターフェロン−γと多発性硬化症とのリンクも、文献で報告されている(Moldovan,I.R.ら、J.Neuroimmunol.,141(1−2):132(2003))。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、症状を軽減し、状態の進行を抑制し、及び/又は状態の回復を促進するというように、患者の血清中サイトカイン濃度を調節することにより対象の自己免疫状態を治療する方法を提供する。一実施形態では、症状の軽減、進行の抑制を、磁気共鳴映像法(MRI)、特に造影増強MRIを使用して確認する。血清中サイトカイン濃度の調節は、多発性硬化症と診断された患者で、新しい造影増強MRIによる脳病変を減少することに相関し、したがって、インターフェロン−タウによる治療に反応する患者は、血清中サイトカイン濃度の変化を検出することにより選択することができる。
【0009】
別の態様では、多発性硬化症患者の新たなガドリニウム増強病変の数を減少させる方法であって、経口投与用に処方されたインターフェロン−タウを含有する薬物を、少なくとも約3カ月の期間投与して、インターフェロン−タウで治療しない期間の病変の数と比べて、新たな病変の出現が少なくとも約30%減少する方法を提供する。
【0010】
別の態様では、症状を軽減し、継続的細胞増殖を抑制し、及び/又は増殖の回復を促進するというように、対象の血清中サイトカイン濃度を調節することにより対象の細胞増殖に関連する状態を治療する方法を提供する。
【0011】
一態様では、実施形態は、疾患状態の継続的進行を患う又はそのリスクにある患者に、その患者又はモデル患者集団のベースラインの血清中サイトカイン濃度に比べて、選択された血清中サイトカイン濃度を調節するのに十分なインターフェロン−タウの用量を投与することにより達成される。
【0012】
別の態様では、ヒト対象の血中インターロイキン−10(IL−10)濃度を上方制御する方法であって、インターフェロン−タウ(IFNτ)を、1×105単位を超える、好ましくは約1×108単位を超える、好ましくは5×108単位を超える1日投与量で、さらにより好ましくは少なくとも約9×108単位の1日投与量で患者に投与することを含む方法を提供する。対象へのIFNτの経口投与を、所望の臨床的エンドポイントが達成されるまで、1週間あたり少なくとも数回定期的に継続する。
【0013】
一実施形態では、IFNτは、ヒツジIFNτ又はウシIFNτである。典型的なヒツジIFNτ配列は、配列番号2又は配列番号3として識別される。
【0014】
別の実施形態では、IFNτを対象の腸管に経口投与する。
【0015】
一実施形態では、自己免疫状態を患う対象を治療する場合、所望の臨床的エンドポイントは、患者の症状の軽減である。典型的な自己免疫状態は、多発性硬化症、I型糖尿病、リウマチ様関節炎、エリテマトーデス、乾癬、重症筋無力症、グレーブス病、橋本甲状腺炎、シェーグレン症候群、強直性脊椎炎及び炎症性大腸疾患を含む。
【0016】
他の実施形態では、IFNτを、細胞増殖により特徴付けられる障害の治療のために経口投与する。IFNτを、例えば、腫瘍の大きさ又は全身腫瘍組織量の減少など、障害に関連した症状の軽減などの、臨床的エンドポイントに達するまで投与する。典型的な細胞増殖状態は、ヒト肺大細胞癌、ヒト結腸腺癌、ヒト悪性黒色腫、ヒト腎腺癌、ヒト前骨髄球性白血病、ヒトT細胞リンパ腫、ヒト皮膚T細胞リンパ腫、ヒト乳腺癌及びステロイド感受性腫瘍を含む。
【0017】
他の実施形態では、IFNτの投与を第2の治療薬の同時又は連続投与と組み合わされる。典型的な第2の治療薬は、抗ウイルス薬、抗癌剤、及び自己免疫障害の治療に適した薬剤を含む。
【0018】
別の態様では、一般的に上記の範囲の投与量である、疾患の進行の減速を達成するために選択された1日投与量で患者にIFNτを投与する、ヒトの患者において多発性硬化症の進行を遅らせる方法を提供する。IFNτの経口投与は、少なくとも新しい造影増強脳病変の減少などの所望の治療転帰が観察されるまで継続する。
【0019】
さらに別の態様では、多発性硬化症を患う対象の再発のリスクを減少させる方法を記載する。この方法は、上記の範囲の1日投与量で対象にIFNτを経口投与することを含み、この投与量は一般的に、インターフェロン−タウを投与しない対象の血中IL−10濃度に比べて、対象の血中IL−10濃度の増加をもたらすのに十分である。対象へのIFNτの経口投与は、少なくとも新しい脳病変の減少若しくは神経学的評価スコアの変化などの所望の臨床転帰に達するまで、又はより長く継続する。
【0020】
より一般に、対象の自己免疫状態を治療する方法を記載する。この方法は、インターフェロン−タウを投与しない対象の血中IL−10濃度に比べて、対象の血中IL−10濃度の増加をもたらすのに十分な量でIFNτを対象に投与すること、対象の血中IL−10濃度が、インターフェロン−タウを投与しない対象の血中IL−10濃度に比べて増加を維持している選択された期間、IFNτの投与を中止すること、及びIFNτの投与を再開することを含む。
【0021】
上記の典型的な態様及び実施形態に加えて、さらなる態様及び実施形態が、図を参照することにより、さらに以下に記載の試験により明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
1.定義
インターフェロン−タウ(IFNτ又はインターフェロン−τと省略)は、以下の2群の特性の各々から少なくとも1つの特性を有するインターフェロンタンパク質のファミリーのいずれか1つを指す:(i)(a)抗黄体融解性(anti−luteolytic)特性、(b)抗ウイルス特性、(c)抗細胞増殖特性;及び(ii)α−インターフェロンと約45から68%アミノ酸相同性及び公知のIFNτ配列に対して70%より大きいアミノ酸相同性(例えば、Ottら、J.Interferon Res.,11:357(1991);Helmerら、J.Reprod.Fert.,79:83(1987);Imakawaら、Mol.Endocrinol,3:127(1989);Whaleyら、J.Biol.Chem.,269:10846(1994);Bazerら、WO94/10313(1994))。アミノ酸相同性は、例えばデフォルトパラメータを用いたLALIGNプログラムを使用して決定することができる。このプログラムは、配列比較プログラムのFASTAバージョン1.7パッケージで見つけられる(Pearson及びLipman、PNAS,85:2444(1988);Pearson、「酵素学における方法(Methods in Enzymology)」183:63(1990);William R.Pearson,Department of Biological Chemistry,Box 440,Jordan Hall,Charlottesville,VAから入手可能なプログラム)。IFNτ配列は、ウシ(ウシ属、Helmer S.D.,J.Reprod.Fert.,79:83(1987);Imakawa,K.,Mol.Endocrinol.,119:532(1988))、ヒツジ(ヒツジ属)、ジャコウウシ(ジャコウウシ属)、キリン(キリン属、GenBank登録番号U55050)、ウマ(Equus caballus)、シマウマ(Equus burchelli、GenBank登録番号NC005027)、カバ(カバ属)、ゾウ(ゾウ属)、ラマ(Llama glama)、ヤギ(ヤギ属、GenBank登録番号AY357336、AY357335、AY347334、AY357333、AY357332、AY357331、AY357330、AY357329、AY357328、AY357327)及びシカ(シカ属)を含むがこれらに限定されるものではない様々な反芻動物種で同定されている。これら多くの種のIFNτのヌクレオチド配列が、公開データベース及び/又は文献で報告されている(例えば、Roberts,R.M.ら、J.Interferon and Cytokine Res.,18:805(1998)、Leaman D.W.ら、J.Interferon Res.,12:1(1993)、Ryan,A.M.ら、Anim.Genet.,34:9(1996)参照)。「インターフェロン−タウ」という用語は、上記に記載した特性の以下の2群のそれぞれの、少なくとも1つの特性を有する、上記に列挙した反芻動物種により例証されたあらゆる反芻動物種由来のインターフェロン−タウタンパク質を含むことを意図する。
【0023】
ヒツジIFNτ(OvIFNτ)は、本明細書で配列番号2として識別されるアミノ酸配列を有するタンパク質を指し、また本明細書で配列番号3として識別されるIFNτタンパク質などの、タンパク質の活性に著明な影響を及ぼさない中性アミノ酸置換などのアミノ酸置換及び改変を有するタンパク質を指す。より一般的に、ヒツジIFNτタンパク質は、配列番号2として識別される配列に対して、約80%、より好ましくは90%の配列相同性を有するタンパク質である。配列相同性は、例えば、厳密なアミノ酸比較によるか、又は市販の多くのプログラムの1つを使用して判定することができる。
【0024】
状態を治療することは、状態の症状を緩和及び/又は状態の重症度を軽減するために有効な治療物質を投与することを指す。
【0025】
経口は、口による投与、又は胃内投与などの胃若しくは腸への直接の投与を含むあらゆる経路を指す。
【0026】
腸は、胃の下部開口部から肛門まで広がり、小腸(十二指腸、空腸及び回腸)及び大腸(上行結腸、横行結腸、下行結腸、S字結腸及び直腸)を含む消化管の部分を指す。
【0027】
「血中IL−10濃度の測定可能な増加」は、同一条件下で測定した治療前濃度に対するインターロイキン−10の血液中(血清及び/又は血球)濃度の統計的有意な増加、一般的に少なくとも20%の増加、より好ましくは25%の増加を指す。血中IL−10濃度を測定する方法は、本明細書に記載されており、市販の酵素免疫測定法(ELISA)キットを使用する。倍の増加は、x時点の値をスクリーニング又はベースライン値で割ることにより決定する。増加パーセントは、x時点の値とスクリーニング又はベースライン値との差を見出し;この差をスクリーニング又はベースライン値で割り;商に100を掛けることにより決定する。
【0028】
「血中IL−12濃度の測定可能な減少」は、同一条件下で測定した治療前濃度に対するインターロイキン−12の血液中(血清及び/又は血球)濃度の統計的有意な増加、一般的に少なくとも20%の増加、より好ましくは25%の増加を指す。血中IL−12濃度を測定する方法は、本明細書に記載されており、市販の酵素免疫測定法(ELISA)キットを使用する。倍の増加は、x時点の値をスクリーニング又はベースライン値で割ることにより決定する。増加パーセントは、x時点の値とスクリーニング又はベースライン値との差を見出し;この差をスクリーニング又はベースライン値で割り、商に100を掛けることにより決定する。
【0029】
「血中インターフェロン−γ濃度を維持すること」又は「血中インターフェロン−γ濃度が実質的に減少しない」は、インターフェロン−γの血液中(血清及び/又は血球)濃度に統計的に有意な変化がないことを指す。血中インターフェロン−γ濃度を測定する方法は、本明細書に記載されており、市販の酵素免疫測定法(ELISA)キットを使用する。
【0030】
インターフェロン−τの1日投与量に関して、例えば、「5×108単位を超えた1日投与量」という句は、列挙したタンパク質の抗ウイルス単位数を十分にもたらすIFNτ量を指し、これは以下の方法の部分に記載したような、IFNτの抗ウイルス活性を標準の細胞変性効果阻害アッセイを使用して測定する。所与の単位数をもたらすタンパク質量(すなわち、mg)が、このタンパク質の特定の抗ウイルス活性により変動することが理解されよう。
【0031】
II.インターフェロン−τ組成及び治療法
A.インターフェロン−τ
同定された最初のIFNτは、18〜19kDaタンパク質のヒツジIFNτ(IFNτ)であった。いくつかのイソ型が、受胎産物(胚及び周囲の膜)のホモジネート中で同定された(Martal,J.ら、J.Reprod.Fertil.56:63−73(1979))。続いて、受胎産物培地に遊離される低分子量タンパク質が精製され、熱不安定性及びプロテアーゼに対して感受性の両方であることが示された(Godkin,J.D.ら、J.Reprod.Fertil.65:141−150(1982))。IFNτは、元来、ヒツジトロホブラストタンパク質−1(ovine trophoblast protein−one;oTP−1)と呼ばれていたが、これは、ヒツジの母性認識の重要な時期の間にヒツジの受胎産物の栄養外胚葉により最初に生産される一次分泌タンパク質であったからである。続く実験は、IFNτが、反芻動物(例えば、ヒツジ及びウシ)において妊娠に対する生理的な応答を確立するために不可欠な妊娠認識ホルモンであることを決定している(Bazer,F.W.及びJohnson,H.M.,Am.J.Reprod.lmmunol.26:19−22(1991))。
【0032】
N末端アミノ酸配列を示す合成オリゴヌクレオチドを用いたヒツジ胚盤胞ライブラリーのプロービングにより得られたIFNτ cDNA(Imakawa,Kら、Nature,330:377−379,(1987))は、ヒト、マウス、ラット及びブタ由来のIFN−αと45〜55%の相同性を有し、ウシIFN−αII(現在はIFN−Ωと呼ばれる。)と70%の相同性を有する推定のアミノ酸配列を有する。異なるイソ型を示し得るいくつかのcDNA配列が報告された(Stewart,H.J.,ら、Mol.Endocrinol.2:65(1989);Klemann,S.W.,ら、Nuc.Acids Res.18:6724(1990);及びCharlier,M.,ら、Mol.Cell Endocrinol.76:161−171(1991))。全ては、23アミノ酸のリーダー配列と172アミノ酸の成熟タンパク質とをコードする585塩基のオープンリーディングフレームを含む約1kbである。アミノ末端及びカルボキシル末端を有する並列する4つの螺旋型の束と推定されるIFNτの構造は、IFNτをI型IFNとして分類することをさらに支持する(Jarpe,M.A.ら、Protein Engineering 7:863−867(1994))。
【表2】
【0033】
IFNτは、I型IFNに古典的に関連する活性のいくつかを示す(上記の表を参照のこと)が、IFNτと他のI型IFNとの間にはかなりの相違が存在する。最も顕著な相違は、上記に詳細に示したような妊娠におけるその役割である。また、ウイルス性誘導性も異なる。IFNτを除く全てのI型IFNは、ウイルス及びdsRNAにより容易に誘導される(Roberts,R.M.ら、Endocrine.Rev.13:432−452(1992))。誘導されたIFN−α及びIFN−β発現は一過性で、ほぼ数時間持続する。対照的に、IFNτの合成は、一旦、誘導されると、数日間にわたり維持される(Godkinら、1982)。1細胞あたりの基準で、他のI型IFNより300倍多くIFNτが生成される(Cross,J.C.及びRoberts,R.M.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA88:3817−3821(1991))。
【0034】
他の相違が、IFNτ遺伝子の調節領域に存在し得る。例えば、ウシIFNτ遺伝子を用いたヒトトロホブラスト細胞系JARのトランスフェクションは、抗ウイルス活性をもたらしたが、ウシIFN−Ω遺伝子を用いたトランスフェクションはもたらさなかった。これは、独特のトランス活性化因子がIFNτ遺伝子発現に関与したことを示唆する。これは、IFNτの近位のプロモーター領域(126から転写開始部位まで)がIFN−α及びIFN−βの近位のプロモーター領域と高く相同的であり;−126から−450までの領域は相同的ではなく、IFNτの発現のみを促進する(Cross,J.C.及びRoberts,R.M.,Proc.Natl.Acad.Soi.USA88:3817−3821(1991))という観察と一致する。したがって、他のI型IFNと比較して、IFNτの発現には異なる調節因子が関与していると思われる。
【0035】
ヒツジIFNτの172のアミノ酸配列が、例えば、米国特許第5958402号において記載されており、その相同的なウシIFNτの配列は、例えば、Helmerら、J.Reprod.Fert.,79:83−91(1987)及びImakawa,K.ら、Mol..Endocrinol.,3:127(1989)に記載されている。これらの参考文献からヒツジIFNτ及びウシIFNτの配列を、本願明細書に援用する。ヒツジIFNτのアミノ酸配列を、本明細書の配列番号2に示す。
【0036】
1.IFNτの単離
IFNτタンパク質を、妊娠中のヒツジから回収した受胎産物より単離し、Godkin,J.D.ら、J.Reprod.Fertil.65:141−150(1982)及びVallet,J.L.ら、Biol.Reprod.37:1307(1987)に記載されるように改変最少必須培地中のin vitroで培養することができる。IFNτを、イオン交換クロマトグラフィー及びゲル濾過により受胎産物の培養物から精製することができる。単離したIFNτの均一性を、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(Maniatis,T.ら、「分子クローニング:研究室マニュアル(MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL)」、Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY(1982);Ausubel,F.M.ら、「分子生物学の最新のプロトコール(CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY)」、John Wiley & Sons,Inc.,Media,PA(1988))により評価することができ、精製されたIFNτ試料中のタンパク質濃度の決定をビシンコニン(biocinchoninic:BCA)アッセイ(Pierce Chemical Co.、Rockford,IL;Smith,P.K.ら、Anal.Biochem.150:76(1985))を用いて実施することができる。
【0037】
2.IFNτの組換え産生
組換えIFNτタンパク質を、任意に選択されたIFNτポリヌクレオチド断片から、適切な発現系(例えば、細菌細胞又は酵母細胞)を用いて産生させることができる。IFNτヌクレオチド及びポリペプチド配列の単離は、PCT公開WO/94/10313に記載され、本願明細書に援用する。
【0038】
IFNτ発現ベクターを作製するために、IFNτコード配列(例えば、配列番号1又は4)を発現ベクター(例えば、細菌の発現ベクター)中に配置し、標準的な方法に従って発現させる。適切なベクターの例としては、λgt11(Promega,Madison WI);pGEX(Smith,P.K.ら、Anal.Biochem.150:76(1985));pGEMEX(Promega);及びpBS(Stratagene,La Jolla CA)ベクターなどがある。適切なプロモーター(例えば、T7RNAポリメラーゼプロモーター又はtacプロモーター)を有する他の細菌の発現ベクターもまた、使用することができる。IFNτ合成ポリヌクレオチドの改変pIN III omp−A発現ベクターへのクローニングを材料及び方法において記載する。
【0039】
本明細書中に記載された試験では、配列番号4に存在するIFNτコード配列を、酵母細胞の形質転換に適切な、メタノール調節アルコールオキシダーゼ(AOX)プロモーター及びPho1シグナル配列を有するベクター中にクローン化した。このベクターを用いてピキア・パストリス(P.pastoris)宿主細胞を形質転換し、そして形質転換細胞を用いて、製造者の説明書(Invitrogen,San Diego,CA)に従ってタンパク質を発現させた。
【0040】
IFNτを発現させるために適切な他の酵母ベクターとしては、2μmプラスミドベクター(Ludwig,D.L.ら、Gene,132:33(1993))、酵母組み込みプラスミド(Shaw,K.J.ら、DNA,7:117(1988))、YEPベクター(Shen,L.P.ら、Sci.Sin.,29:856(1986))、酵母セントロメアプラスミド(YCp)及び発現の調整可能な他のベクター(Hitzeman,R.A.ら、米国特許第4775622号、1988年10月4日発行;Rutter,W.J.ら、米国特許第4769238号、1988年9月6日発行;Oeda,K.ら、米国特許第4766068号、1988年8月23日発行)などがある。好ましくは、ベクターは、例えば、MFα1プロモーター(Bayne,M.L.ら、Gene 66.235−244(1988))、GADPHプロモーター(グリセルアルデヒド−3−リン酸−デヒドロゲナーゼ;Wu,D.A.ら、DNA,10:201(1991))又はガラクトース誘導性GAL10プロモーター(Ludwig,D.L.ら、Gene,132:33(1993);Feher,Z.ら、Curr.Genet.,16:461(1989);Shen,L.P.ら、Sci.Sin.,29:856(1986))などの有効な酵母プロモーターを含む発現カセットを含む。酵母の形質転換宿主は、一般的に出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)であるが、上記のように形質転換に適切な他の酵母(例えば、分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)など)もまた同様に用いることができる。
【0041】
さらに、IFNτポリペプチドをコードするDNAは、多くの市販のベクターにクローン化させ、適切な宿主系においてポリペプチドの発現を生じさせることができる。これらの系としては、上記の細菌発現系及び酵母発現系、並びに以下が挙げられる:バキュロウイルス発現系(Reilly,P.R.ら、「バキュロウイルス発現ベクター:実験マニュアル(BACULOVIRUS EXPRESSION VECTORS:A LABORATORY MANUAL)」(1992);Beamesら、Biotechniques,11:378(1991);Clonetech、Palo Alto CA);植物細胞発現系、トランスジェニック植物発現系、及び哺乳動物細胞内での発現系(Clontech、Palo Alto CA;Gibco−BRL、Gaithersburg MD)。組換えポリペプチドは、融合タンパク質として又は天然のタンパク質として発現され得る。多くの特性(例えば、培養培地中へ発現される配列の分泌を促進するリーダー配列)を発現ベクター中に工学的に導入することができる。組換え生産されたポリペプチドは、一般的には溶解された細胞又は培養培地から単離される。精製は、塩分画、イオン交換クロマトグラフィー、及びアフィニティークロマトグラフィーを含む、当技術分野で公知の方法により行うことができる。上記のように、IFNτポリペプチドに基づいて生成された抗体を用いて、イムノアフィニティークロマトグラフィーを用いることができる。
【0042】
組換え方法に加えて、IFNτタンパク質又はポリペプチドを、親和性に基づく方法により(例えば、適切な抗体を使用することにより)選択された細胞から単離させることができる。さらに、IFNτペプチド(例えば、配列番号2又は3)を、当業者に公知の方法を用いて化学的に合成させることができる。
【0043】
B.IFNτの投与
補助試験では、IFNτを、多発性硬化症を患う患者及びC型肝炎に苦しむ患者に投与した。試験中、サイトカインIL−10、IFN−γ及びIL−12の血清中濃度を患者ごとに監視した。これより、これらの試験について述べる。
【0044】
1.多発性硬化症を患うヒトへのIFNτの投与
多発性硬化症を患うヒトを、IFNτ治療に関する試験に登録した。実施例1Aに記載のように、患者15例を3つの治療群にランダム化した(表1に要約する)。
【表3】
11mg IFNτ=1×108単位
【0045】
治療前に、各対象から血液試料を採取し、ベースラインの血清中サイトカイン濃度を決定した。1日目の採血後、各患者に、適切な用量でIFNτを経口投与することにより治療を開始した。治療は28日間継続し、血液試料を、試験の1、4、8、15、29及び57日目に各患者から採取した。試料を、IFNγ及びIL−10濃度について分析した。
【0046】
群I、II及びIIIの患者のIL−10濃度を、それぞれ図1A〜1Cに示す。図1Aは、群Iの患者5例における血清中IL−10濃度(pm/mL)を示す。これらの患者を解釈すると、患者3例(患者番号103、104及び105)は、4日目にIL−10濃度の増加を示したが、8日目にIL−10濃度は減少した。患者番号103及び104の8及び15日目IL−10濃度は、4日目の濃度と著しく変わらなかった。図1B及び1Cは、それぞれ試験群II及びIIIにおける患者の結果を示す。特に群IIIの患者では、IFNτ投与後の血清中IL−10濃度のわずかな増加が示唆される。
【0047】
図1Dは、群I、II及びIIIにおける平均血清中IL−10濃度(pg/mL)を示す。2〜28日目のIFNτの投与期間中に、試験群においてIL−10のわずかな上方制御が認められたが、このわずかな上方制御は、実施例1A(1)に記載された統計解析に基づいて、統計的に有意ではなかった。IFNτ投与後の一定期間の群I及びIIにおける継続した血中IL−10濃度のわずかな増加は、28日目には停止した。IFNτの最後の投与から34日後の57日目の血清中IL−10濃度は、0日目及び1日目に測定したベースライン濃度より上に維持されていた。したがって、対象の自己免疫状態を治療する方法が企図され、IFNτは、インターフェロン−タウを投与しない対象の血中IL−10濃度と比べて、対象の血中IL−10濃度に最初の測定可能な増加を生じさせるために十分な量で投与される。次いで、インターフェロン−タウを投与しない対象の血中IL−10濃度に比べて、対象の血中IL−10濃度が増加を維持している間の選択された一定期間、IFNτの投与を終了する。次いで、IFNτの投与を、所望により再開してもよい。
【0048】
また、本試験では、血中IFN−γ濃度を監視した。IFN−γは、炎症誘発性サイトカインであり、IFN−γの上方制御は、自己免疫状態(例えば、多発性硬化症及び関節炎)を患う患者における不快感の増大に相関する。インターフェロン−β(IFN−β)による多発性硬化症の治療の間、IFN−γ分泌細胞の頻度がIFN−β治療の最初の2カ月間に増加することが報告されており、この血清中IFN−γ濃度の増加は、おそらく患者がIFN−β治療中に経験する顕著な「インフルエンザ様」症状に関連する。したがって、IL−10濃度がIFN−γの上方制御を伴うことなしに好都合に上方制御される場合、自己免疫状態を治療する方法は有益と思われる。
【0049】
図2A〜2Dは、多発性硬化症を患い、IFNτで経口的に治療された群I、II及びIIIの患者における血中IFN−γ濃度(pg/mL)を示す。図2Aは、IFNτ0.2mgで治療された群Iの患者における血清中濃度を示す。患者番号101、102、104、105は、それぞれ治療コース中に血中IFN−γ濃度が減少した。血清中濃度は、28日目の治療中断直後に増加した。患者番号103の血清中IFN−γ濃度は増加せず、本質的に変化しなかった。
【0050】
図2Bは、IFNτ0.6mgで毎日治療された群IIの患者における血中IFN−γ濃度(pg/mL)を示す。図2Cは、IFNτ1.8mgで毎日治療された群IIIの患者における血中IFN−γ濃度(pg/mL)を示す。前述のように、IFN−τの最初の用量は、1日目の採血後に投与され、最終用量は、28日目に投与された。したがって、1日目及び「スクリーン」のデータポイントは、個々の患者のベースライン濃度である。群I及びIIIの全患者が、IFN−τによる治療中に血清中IFN−γ濃度の減少又は血清中IFN−γ濃度の有意な変化がないかのいずれかを経験した。
【0051】
図2Dは、各試験群I、II及びIIIのヒト患者における平均血中IFN−γ濃度(pg/mL)を要約する。血中IFN−γ濃度のこの減少傾向は、特に高用量のIFN−τが投与される場合(群III)、明白である。
【0052】
図3A〜3Eは、治療群I、II及びIIIから選択された個々の患者のIL−10(ダイヤモンド)及びIFN−γ(正方形)の血清中濃度(両方ともpg/mL)を示す。図3Aは、治療群Iの患者番号101におけるサイトカインの産生動態(production kinetics)を示す。血中IL−10濃度(ダイヤモンド)は、治療期間中、統計学的に増加しない。血中IFN−γ濃度は、経口投与されたIFN−τによる治療中、減少する。IL−10及びIFN−γのベースライン濃度は、それぞれ15.8pg/mL及び14.5pg/mLで、最初のIL−10/IFN−γ比の1.1を得た。IFN−τによる治療中、血中IFN−γ濃度の減少により、IL−10/IFN−γ比は約2.2まで増加した。IL−10/IFN−γ比は、治療終了の約1カ月後の57日目に、ベースライン比の約1.1に戻った。したがって、IFN−τによる治療の期間中、IL−10/IFN−γ比は約100%増加した。
【0053】
図3Bは、治療群Iの患者番号105におけるサイトカインの産生動態を示す。IL−10及びIFN−γのベースライン濃度は、それぞれ平均して6.6pg/mL及び49.2pg/mLで、最初のIL−10/IFN−γ比の0.13を得た。IFN−τによる治療中、血中IFN−γ濃度の減少により、IL−10/IFN−γ比は約0.2〜0.3まで増加した。IL−10/IFN−γ比は、治療終了の約1カ月後の57日目に、ベースライン比の約0.12に戻った。したがって、IFNτ治療は、50%を超えて、より好ましくは80%を超えて比を増加させ、IL−10/IFN−γ比を調節するために有効だった。
【0054】
図3Cは、治療群IIIの患者番号302におけるサイトカインの産生動態を示す。IL−10及びIFN−γのベースライン濃度(スクリーン及び1日目の平均として得た)は、それぞれ5.8pg/mL及び4.0pg/mLで、最初のIL−10/IFN−γ比の1.45を得た。IFN−τによる治療中、平均血中IL−10濃度(4、8、15日目の平均IL−10濃度)は7.7pg/mLで、これはベースラインのIL−10濃度(スクリーン及び1日目の平均血中IL−10濃度)と統計的に差異はなかった。IFN−γ濃度は、実質的に治療期間にわたり変わらなかった。この患者のIL−10/IFN−γ比は、本質的に変わらなかった。
【0055】
図3Dは、治療群IIIの患者番号303におけるサイトカインの産生動態を示す。IL−10及びIFN−γのベースライン濃度(スクリーン及び1日目の平均として得た)は、それぞれ4.4pg/mL及び3.6pg/mLで、最初のIL−10/IFN−γ比の1.2を得た。IFN−τによる治療中、血中IFN−γ濃度の減少により、IL−10/IFN−γ比は8日目に約11まで増加したが、29日目にはベースライン比に戻った。
【0056】
図3Eは、治療群IIIの患者番号305におけるサイトカインの産生動態を示す。IL−10及びIFN−γのベースライン濃度(スクリーン及び1日目の平均として得た)は、それぞれ4.3pg/mL及び34.8pg/mLで、最初のIL−10/IFN−γ比の0.1を得た。IFN−τによる治療中、血中IL−10濃度は本質的に一定であったが;血中IFN−γ濃度がわずかに減少したため、IL−10/IFN−γ比は、8日目に0.14まで約14%増加した。
【0057】
したがって、自己免疫状態を患う対象のIL−10/IFN−γ比を増加させる方法であって、インターフェロン−タウを投与しない対象の血中IL−10濃度に比べて、対象の血中IL−10濃度の測定可能な増加をもたらすために十分な量でIFNτを対象に投与することを含み、(i)IFNτを投与しないIFNγ濃度と比べて、対象の血中IFNγ濃度に実質的な変化がない、又は(ii)IFNτを投与しないIFNγ濃度と比べて、対象の血中IFNγ濃度が減少する方法を提供する。IL−10/IFN−γ比は、少なくとも約10%、好ましくは約25%、より好ましくは約40%、さらにより好ましくは少なくとも約50%増加する。一実施形態では、IFNτは、ヒツジ又はウシIFNτである。他の実施形態では、IFNγを、約5×108抗ウイルス単位(U)を超える用量、より好ましくは0.5×109U以上、さらにより好ましくは1×109U以上の用量で投与する。
【0058】
実施例1Bに記載の別の試験では、活動状態の疾患を有するMS患者22例を、IFNτ治療に組み入れた。MS患者は、以前に再発寛解型(relapsing−remitting)MSの臨床診断を受けていた。疾患が活動状態であったか確認するために、MRI脳スキャンを、3カ月の期間、毎月撮影した。MRIスキャンのうちの1つにおいて示された少なくとも1つのガドリニウム増強病変を有する患者を、本試験の登録のために選択した。IFNτ治療の前に、血液試料を採取して、治療前のベースライン血清中サイトカイン濃度を評価した。患者を、1日3回、経口IFNτ3mgにより6カ月間治療した。
【0059】
表2Aは、最初に登録された患者22例うちの6カ月の時点で試験に残った15例の新しいガドリニウム増強病変の数を要約する。
【表4】
*患者006は、治療3カ月前(−3カ月)に実施した最初のMRIスクリーンで、1つの造影増強病変が認められたので、登録資格を有した。
**na=MRIスキャンが行われず、データが入手できない。
【0060】
データの統計解析を、表2Bに示す。
【表5】
【0061】
患者22例のスクリーニング期間中(治療の3、2及び1カ月前)の新しいガドリニウム増強病変の平均数は、2.59であった。経口投与によるIFNτ治療の3カ月後、新しいガドリニウム増強病変の平均数は1.01まで減少し、治療前のスクリーニング期間中に観察された新しい病変の数から63.4%減少した。治療の6カ月後、新しいガドリニウム増強病変の平均数は1.30まで減少し、治療前のスクリーニング期間中に観察された新しい病変の数から62.4%減少した。
【0062】
MRIの病変データは、患者18例(すなわち、治療した患者集団の約82%)が、インターフェロン−タウで治療すると、新しい病変の数に30%を超える変化(減少)があったことを示している。14例(すなわち、治療した患者集団の約63%)は、インターフェロン−タウで治療すると、新しい病変の数に50%を超える変化(減少)があった。したがって、インターフェロン−タウの経口投与は、治療した患者集団の大多数で新しい病変の数の30%を超える減少を達成した。一実施形態では、治療した患者の少なくとも60%は、少なくとも約30%、好ましくは50%の新しい脳病変の数の減少を達成する。他の実施形態では、治療した患者の少なくとも75%は、少なくとも約30%の新しい脳病変の数の減少、好ましくは少なくとも約50%の減少を達成する。
【0063】
また、血清中サイトカイン濃度を評価し、IL−10及びIFN−γの結果を表2C〜2Dに示す。
【表6】
**na=データが入手できず。
【表7】
**na=データが入手できず。
【0064】
3カ月の治療後、本試験に登録した患者16例の平均血清中IL−10濃度は6.72pg/mLで、これは血清中IL−10の31.5%の増加に相当した(パーセント変化は、全患者に対して平均した各患者のベースラインでのスクリーニングのIL−10濃度からの変化である)。6カ月の治療後、本試験に登録した患者15例の平均IL−10濃度は6.15pg/mLで、これは血清中IL−10の53.6%の増加に相当した(パーセント変化は、全患者に対して平均した各患者のベースラインでのスクリーニングのIL−10濃度からの変化である)。
【0065】
3カ月の治療後、本試験に登録した患者16例の平均血清中IFN−γ濃度は3.9pg/mLで、これは血清中IFN−γの2.5%の増加に相当した(パーセント変化は、全患者に対して平均した各患者のベースラインでのスクリーニングのIFN−γ濃度からの変化である)。6カ月の治療後、本試験に登録した患者15例の平均IFN−γ濃度は4.5pg/mLで、これは血清中IFN−γの9.1%の増加に相当した(パーセント変化は、全患者に対して平均した各患者のベースラインでのスクリーニングのIFN−γ濃度からの変化である)。
【0066】
治療前のスクリーニング期間の平均IL−10/IFN−γ比は、1.65であった。3カ月の治療後、比は1.98まで、71.4%増加した。インターフェロン−タウによる6カ月の治療後、比は1.7まで、194%増加した。
【0067】
したがって、一実施形態では、多発性硬化症患者の脳MRIで検出可能な新しいガドリニウム増強病変の数を減少させるための薬物の製造用組成物を提供する。本薬物は、経口投与用に調製されたインターフェロン−タウを含み、本薬物による治療のない期間中に観察された新しいガドリニウム増強病変の数と比べて、約1カ月、好ましくは約2カ月、及びさらにより好ましくは少なくとも約3カ月の期間の本薬物による治療後に、新しいガドリニウム増強病変の出現において、少なくとも約10%、より好ましくは少なくとも約20%、及びさらに好ましくは少なくとも約30%の減少をもたらす。治療のない期間はインターフェロン−タウ治療の1、2又は3カ月前からの期間に相当し得て、新しい病変の数を1回又は複数回測定した。また、治療期間は、治療後の期間が、持続した1、2又は3カ月であるインターフェロン−タウによる治療後の期間に相当し得て、新しい病変の数を1回又は複数回測定した。
【0068】
他の実施形態では、多発性硬化症のインターフェロン−タウ治療に反応する患者を選択するための方法を提供する。この方法は、選択した用量でインターフェロン−タウを多発性硬化症患者に経口投与することを含み、本明細書に記載のいずれの用量も適するが、少なくとも1×105U/日の用量が好ましい。本用量を、少なくとも約1カ月の期間投与し、次いで1種又は複数のサイトカインの血中濃度を測定する。血清中濃度に検出可能な変化を示す患者を、血清中サイトカイン濃度の変化及びMRIにより測定した脳のガドリニウム増強病変の数の減少との確立された相関(上記に記載)に基づき反応する患者と確認する。血清中サイトカイン濃度の変化が選択されたサイトカインにより増加又は減少し得ることが理解されよう。もちろん、変化の範囲は、上記のデータで例証したように、インターフェロン−タウ治療の用量及び長さにより決まる。
【0069】
2.C型肝炎を患うヒトへの投与
別の試験では、C型肝炎に感染したヒト患者を組み入れた。患者を、経口IFNτ(配列番号4)治療のために、4つの試験群に割り付けた。実施例2に記載のように、試験群の各対象は、IFNτ1mg/mL溶液の管理された量を1日3回自己投与した。試験群I、II及びIIIの患者に、それぞれIFNτ1mg、IFNτ3mg、IFNτ9mg及びIFNτ15mgの総1日量を投与した(IFNτ1mgは、約1×108抗ウイルス単位である)。治療期間は、84日間継続し、患者は、IL−10及びIFN−γの濃度分析の血液試料を提供するために、規定の間隔で試験診療所に戻った。監視は、IFNτによる治療終了の85日後である169日間継続した。
【0070】
図4A〜4Cは、各試験群I、II及びIIIの患者6例における血清中IL−10濃度(pg/mL)を示すグラフである。図4Aは、総1日量1mg(1×108U)で、1日3回IFNτ0.33mgで毎日治療した試験群Iの患者6例のIL−10濃度を示す。全患者のデータは、IL−10濃度が増加する傾向を示す。
【0071】
図4Bは、84日目まで、それぞれ1日3回IFNτ1.0mg(3×108U/日)で毎日治療した試験群IIの患者6例のデータを示す。全患者のデータは、治療期間にわたり(1〜84日目)、統計的に有意ではないが、より明確にIL−10濃度が増加する傾向を示す。IFNτの投与中断直後より、血中IL−10濃度は、85〜169日目の継続した監視期間にわたり、ベースライン濃度に緩徐に近づいた。
【0072】
図4Cは、1〜84日目まで、1日3回IFNτ3mg(9×108U/日)で毎日治療した試験群IIIの患者6例の血清中IL−10濃度を示す。全患者は、IFNτ投与に反応して血清中IL−10濃度が統計学的に増加した。IFNτの投与の終了直後より、血中IL−10濃度は、ほぼ3カ月間、上昇したまま維持した。
【0073】
図4Dは、図4A〜4Cにおける試験群I、II及びIIIの血清中IL−10濃度の要約図である。図4Dは、試験群I(ダイヤモンド、1日3回0.33mg)、群II(正方形、1日3回1mg)及び群III(三角形、1日3回3mg)に関する時間に応じた血清中IL−10濃度の増加パーセントを示す。用量に応じた血清中IL−10濃度の増加パーセントが図から明らかであり、最高用量の9mg(3mgを1日3回;9×108U/日)が、治療の最初の15日以内に100%を超えるIL−10の上方制御を誘発している。3mgの1日量(試験群II、正方形)は、IL−10の産生を刺激して、試験15日目までに約150%の増加を引き起こした。3mgの1日量は、84日の試験期間に150%の増加を維持するために十分であった。
【0074】
また、図4Dは、IFNτの投与を中断した85〜169日目の期間中、ベースラインの治療前濃度と比べたIL−10濃度の継続した上昇を例証する。試験群III(毎日IFN−τ9mg)では、IL−10濃度は、169日目までにベースライン濃度に戻らなかった。したがって、インターフェロン−タウを投与しない対象の血中IL−10濃度に比べて、対象の血中IL−10濃度の最初の測定可能な増加をもたらすために十分な量でIFNτを対象に投与すること、IFNτを投与しない対象の血中IL−10濃度に比べて、対象の血中IL−10濃度が増加を維持している選択された期間、IFNτの投与を中断すること、及び、必要に応じて(例えば、症状が悪化した時)、IFNτの投与を再開することにより、自己免疫状態(特に、多発性硬化症、乾癬、関節リウマチ及びアレルギー)を治療する方法を企図する。血中IL−10濃度の増加をもたらすために十分なIFNτ量は、約1×108U/日超、より好ましくは5×108U/日以上、さらにより好ましくは1×109U/日以上である。IFNτの投与が中断される期間は、疾患の状態により変動し得るが、その疾患状態を患う患者のIL−10濃度をIFNτによる治療中及びIFNτ治療の終了後に監視する試験から、容易に判定することができる。そのような試験の結果を、一般に、他の患者に適用し、推奨される投与パターンを提供することができる。或いは、IFNτの投与が中断される期間は、個々の患者に対して、治療をいつ再開するか判定するために、治療をしない期間中、定期的に(例えば、毎週又は週2回)血中IL−10濃度を実際に監視するか、又は患者の症状認知の自覚的徴候により追跡することができる。治療は、その特定の患者若しくはモデル患者集団におけるIL−10濃度が治療前の濃度に近づいている時、又は治療している特定の患者において症状が悪化した時に再開する。
【0075】
図5A〜5Cは、本試験におけるC型肝炎患者の血清中IFN−γ濃度(pg/mL)を示すグラフである。図5Aは、1日3回IFNτ0.33mgで毎日治療した試験群Iの患者6例のIFN−γ濃度を示す。ベースライン濃度でIFN−γ濃度を維持し、わずかにIFN−γ濃度が減少へと向かう全体的な傾向が明白である。
【0076】
図5Bは、1日3回IFNτ1.0mgで毎日治療した試験群IIの患者6例の血清中IFN−γ濃度を示す。約3〜15日目の治療の初期段階におけるIFN−γ濃度の減少は、明白である。次いで濃度はベースラインに戻り、残りの試験期間にはおよそ投与前の濃度を維持した。
【0077】
図5Cは、1日3回IFNτ3mgで毎日治療した試験群IIIIの患者6例の血清中IFN−γ濃度を示す。一部の患者がIFN−γ濃度の明確な減少を経験した間、総体的に、治療群は治療期間にわたり濃度の変化がほとんど見られないようであった。投与の中断直後のIFN−γ濃度の増加は、85〜169日目に見られる。このことは、ある程度までの濃度の減少が、IFNτの投与により達成されたことを示唆している。
【0078】
図5Dは、時間に応じた試験群I(ダイヤモンド、1日3回0.33mg)、群II(丸、1日3回1mg)及び群III(三角形、1日3回3mg)に関する時間に応じた平均血清中IFN−γ濃度を示す、図5A〜5Cにおける試験群I、II及びIIIの要約図である。IFNτの投与は、(1)IFN−γ濃度の著明な変化を起こさず、濃度が本質的にスクリーン時の投与前の濃度のままであるか、又は(2)ベースラインの投与前の濃度からのIFN−γ濃度の減少を引き起こすかのいずれであることは明らかである。
【0079】
したがって、別の態様では、IFNτを投与しない対象の血中IFN−γ濃度に比べて、対象の血中IFN−γ濃度を減少させるために有効な量でIFNτを対象に投与することにより対象の血中IFN−γ濃度を減少させる方法を提供する。この方法は、特にIFN−γ濃度の上昇を引き起こす薬剤を服用している患者、又はIFN−γ濃度が上昇する状態を患う患者における使用を見出す。したがって、IFNτを投与しない患者の血中IFN−γ濃度に比べて、対象の血中IFN−γ濃度を減少させるために有効な量でIFNτを対象に投与することにより、(i)治療薬の投与又は(ii)疾患状態による血中IFN−γ濃度の上昇リスクにある対象の血中IFN−γ濃度の増加を予防する方法も企図する。前述のように、IFNβによる多発性硬化症の治療は、患者のIFNγ濃度の増加を引き起こす。IFNτの同時投与(同時又は連続投与)は、治療前のIFNγ濃度を維持することを補助する。一般的に、対象の血中IFN−γ濃度におけるそのような減少を生じさせるために十分なIFNτの量は、約1×108U/日超、好ましくは約5×108U/日超、より好ましくは少なくとも約9×108U/日、より好ましくは0.5×108U/日以上、さらにより好ましくは1×109U/日以上である。
【0080】
図6A〜6Fは、図4〜5に関して述べた治療群I、II及びIIIから選択された個々のC型肝炎患者のIL−10(ダイヤモンド)及びIFN−γ(正方形)の血清中濃度(両方ともpg/mL)を示す。
【0081】
図6Aは、IFNτ1mgの1日量で、1日3回IFNτ0.33mgにより治療した試験群Iの患者番号101のIL−10(ダイヤモンド)及びIFN−γ(正方形)の血清中濃度を示す。IL−10及びIFN−γのベースライン濃度は、それぞれ平均5.2pg/mL及び3.9pg/mL(スクリーン及び1日目の平均値)で、最初のIL−10/IFN−γ比の1.3を得た。IFNτによる治療中、IL−10/IFN−γ比は、22日目に1.6まで増加し、その後、84日目の投与中断までベースライン比に戻った。
【0082】
図6Bは、IFNτ3mgの1日量で、1日3回IFNτ1.0mgにより治療した試験群IIの患者番号205のIL−10(ダイヤモンド)及びIFN−γ(正方形)の血清中濃度を示す。IL−10及びIFN−γのベースライン濃度は、それぞれ平均3.8pg/mL及び5.2pg/mL(スクリーン及び1日目の平均値)で、最初のIL−10/IFN−γ比の0.73を得た。IFNτによる治療中、IL−10/IFN−γ比は、1に近づき、15日目に1に達した。したがって、IFNτによる治療は、比を約25%増加させることにより、IL−10/IFN−γ比を調節した。
【0083】
図6Cは、IFNτ9mg(9×108U)の1日量で、1日3回IFNτ3.0mgにより治療した試験群IIIの患者番号301のIL−10(ダイヤモンド)及びIFN−γ(正方形)の血清中濃度を示す。IL−10及びIFN−γのベースライン濃度は、それぞれ平均4.4pg/mL及び3.9pg/mL(スクリーン及び1日目の平均値)で、最初のIL−10/IFN−γ比の約1.0を得た。IFNτによる治療中、IL−10濃度が、かなりの増加である4〜5倍増加したが、IFN−γ濃度は、4〜5pg/mLのおよそ最初の濃度で維持した。したがって、IL−10/IFN−γ比は、IFNτの投与直後より約1.0からおよそ4.0まで増加した(4倍の増加)。
【0084】
図6D〜6Fは、IFNτ9mgの1日量で、1日3回IFNτ3.0mgにより治療した試験群IIIの患者番号303、304及び305のIL−10(ダイヤモンド)及びIFN−γ(正方形)の血清中濃度を示す。IL−10/IFN−γ比の分析は、図6Cに記載の患者番号301のものと類似している。具体的には、図6Dは、患者番号303のデータを示す。この患者では、血中IL−10濃度は、試験43日目までにベースライン濃度から約4倍増加し、試験71日目までに6倍を超えて増加した。血中IFN−γ濃度は、実質的に一定のままであった。したがって、血中IL−10/IFN−γ比は、0.6のベースライン値から3超まで増加した(5倍増加、500%増加)。
【0085】
図6Eは、群IIIの患者番号304のデータを示す。患者の血中IL−10濃度は、IFNτによる治療中、4〜5倍増加したが、IFNγ濃度は本質的に変わらなかった。したがって、IL−10/IFNγ比は、0.6の最初の値から71日目の2.6まで増加した(400%を超えた増加)。
【0086】
図6Fは、群IIIの患者番号305のデータを示す。治療期間中の血中IL−10濃度の増加は明白であり、43日目までに0.7pg/mLから9pg/mLを超えて増加した。IFNγ濃度が本質的に変わらなかったため、IL−10/IFNγ比は10倍を超えて増加した。
【0087】
要約すると、群IIIの患者に関して示したデータは、IFNτの投与がIL−10/IFN−γ比を増加させるために有効だったことを示す。特に、血中IL−10濃度は、血中IL−10濃度の統計学的な増加により証明されたように、IFNτの経口投与により測定可能なまで増加した。血中IL−10濃度は、25%を超えて増加し、この患者集団では、血中IL−10濃度の増加が相当大きかった。
【0088】
別の試験では、C型肝炎を患う患者5例を、IFNτ治療のために組み入れた。実施例3に記載した本試験では、IFNτ15mgの1日量(1.5×109抗ウイルス単位)で、患者を1日2回IFNτ7.5mgにより治療した。最初の用量を、朝食前の朝に投与し、第2の用量を夕食の少なくとも3時間後に投与した。血液試料を、113日の試験期間にわたり規定の間隔で採取し、IFNτの投与は、試験84日目に終了した。この試料を、市販の方法を使用して、血清中のIL−10、IL−12及びIFN−γ濃度について分析した。
【0089】
図7A〜7Bは、時間(日)に応じた、患者5例における血清中IL−10濃度(図7A)及び血清中IFN−γ濃度(図7B)(pg/mL)を示すグラフである。図7Aで見られるように、患者3例(三角形、ダイヤモンド及びxにより示された患者)は、1日目〜84日目のIFNτ投与期間にわたりIL−10濃度が増加したことを示す。図7Bは、1日目〜84日目のIFNτ投与期間にわたり、全患者5例が、血中IFNγ濃度が減少したことを示す。投与終了後、85日目〜113日目の期間中に見られるように、IFN−γ濃度は増加している。
【0090】
また、本試験の患者から採血した血液試料を、IL−12濃度について分析した。IL−12は、炎症誘発性サイトカインであり、多発性硬化症の病因の一因となる。文献は、(1)IL−12産生の増加が、多発性硬化症の病因における重要なメカニズムであり(Filsonら、Clin.Immunol.,106(2):127(2003));(2)MS患者が、一般的にIL−10濃度の減少及びIL−12濃度の増加を示し、これらサイトカイン濃度が、病期に相関すること(van Boxel−Dezaireら、Ann.Neural.,45:695(1999))を報告している。ウイルス感染に関して、高いIL−12濃度も、百日咳菌(B.pertussis)の細菌定着を増悪することが示されている(Carterら、Clin.Exp.Immunol.,135(2):233(2004)。したがって、本試験に登録したHCV患者のIL−12濃度を監視することは望ましかった。
【0091】
図8A〜8Dは、本試験(実施例3)の患者6例におけるIL−10(ダイヤモンド)、IFN−γ(正方形)及びIL−12(三角形)の血清中濃度(pg/mL)を示す。実際のIL−12濃度は、図8A〜8Dに示す値の10倍である(実際の値を、1つのグラフ上で全データを示すために10で割った)。
【0092】
図8Aは、患者番号401のデータを示す。見られるように、IL−10濃度は、IFNτを投与した治療期間にわたり増加し、IFN−γは変化なしか、又はわずかに減少し、IL−12は最初に上下し、次いで、約29日目以降は下方制御された。0.08のIL−10/IL−12比に関して、最初のIL−10濃度は53.1pg/mLで、最初のベースラインのIL−12は696pg/mLであった。治療期間中、この比は、約0.12〜0.18に増加した(570〜1,200%増加)。この患者のIL−10濃度は、53.1pg/mLのベースライン値から140pg/mLを超えて増加した(160%超の増加、2.6倍)。
【0093】
図8Bは、患者番号402のデータを示し、図8Cは、患者番号403のデータを示す。患者番号402は、最初のベースラインの血中IL−10濃度が42.7pg/mLであった(スクリーン及び1日目の平均血中濃度)。血中IL−10濃度は、43日目にピークに達し、この時、濃度は67pg/mLに達した(56%の増加)。血中IFNγ濃度は、ベースライン濃度周辺で上下した。最初のIL−10/IL−12比の0.046における治療前の血中IL−12濃度は、934pg/mLであった。43日目に、IL−10/IL−12比は0.088であった(ベースライン比からの90%の増加)。
【0094】
図8Cでは、患者の最初のIL−10/IL−12比は0.10であった(IL−10=118.5pg/mL;IL−12=1,227pg/mL)。この比は治療期間にわたり増加し、43日目の比の値は0.22であった(IL−10/IL−12比で2.2倍の増加)。患者の血中IL−10濃度は、ベースライン濃度より63%高い値で、43日目にピークに達した。
【0095】
図8Dは、患者番号404のデータを示す。この患者は、最初の血中IL−10濃度が69.6pg/mL、最初の血中IL−12濃度が1,552pg/mLであり、これに対する最初のIL−10/IL−12比は0.045であった。1.5×109U/日の投与量でのIFNτによる治療中、血中IL−10濃度は、43日目に113pg/mLまで上昇した(約60%の増加)。43日目のIL−12は900pg/mLに減少し、43日目のIL−10/IL−12比が0.12になった。
【0096】
本試験の患者番号405は、最初の血中IL−10濃度が34.9pg/mL、最初の血中IL−12濃度が976pg/mLであった(IL−10/IL−12比0.036;データ示さず)。1.5×109U/日の投与量でのIFNτ投与は、IL−10/IL−12比を治療期間の71日目の0.058に増加させるために有効であった(60%の増加)。血中IL−10濃度は、最初の治療前の濃度から71日目の濃度へ20%増加した。
【0097】
したがって、インターフェロン−タウを投与しない対象の血中IL−10濃度に比べて、対象の血中IL−10濃度の最初の測定可能な増加をもたらし、インターフェロン−タウを投与しないIL−12濃度に比べて、対象の血中IL−12濃度の減少をもたらすために有効な量でインターフェロン−タウを対象に投与することにより、自己免疫障害を患う患者における血中IL−10/IL−12比を増加させる方法を提供する。また、インターフェロン−タウを投与しない患者の血中IL−10濃度に比べて、対象の血中IL−10濃度の最初の測定可能な増加をもたらし、インターフェロン−タウを投与しないIL−12濃度に比べて、対象の血中IL−12濃度の減少をもたらすために有効な量でインターフェロン−タウを対象に投与することにより、対象の自己免疫状態の進行を抑制する方法を企図する。特に、約5×108Uを超えるIFNτにより治療した対象は、25%を超えて、及び多くの場合50%を超えて、血中IL−10濃度が増加した。同じ患者において、血中IFNγ濃度は本質的に変化しないか、又は減少し、IL−12濃度は一般に減少した。
【0098】
要約すると、治療を必要とする患者に対するIFNτの経口投与は、最初のIFNτの用量が、その特定の患者における血中IL−10濃度の増加、及び/又はIFN−γ濃度の減少若しくは実質的な無変化、及び/又はIL−12濃度の減少を達成するために選択された場合に、血清中サイトカイン濃度を調節するために有益である。IFNτは、口腔よりむしろ、患者の腸管を標的とする形状で好ましくは投与する。投与量の選択は、例えば、血中IL−10濃度を(例えば、治療前及び治療開始後に)監視することにより行うか、又は確認することができる。或いは、有効量を、異なる疾患状態下での所与の投与量に対するモデル患者の反応から事前に決定してもよい。例えば、年齢/疾患プロフィールを有する患者の適した用量を事前に決定するために、所与の年齢範囲内で、特定の状態(例えば、ウイルス感染又は自己免疫状態)を呈する患者を、異なる最初のIFNτ濃度に反応した血中IL−10の変化を監視してもよく、そのような投与ガイドラインを治療する医師に提供することができる。IFNτの治療キットを企図し、このキットは、腸管へのタンパク質を標的にするために適した経口送達形態(例えば、IFN−タウの腸溶性形態)のIFNτ、及び異なる患者の状態下での有効量に関するガイドラインを提供する製品説明書(product literature)又は添付文書;(すなわち、血中IL−10濃度の測定可能な増加を生じさせるために有効な用量)を含む。好ましくは、添付文書は用量の範囲及びIL−10反応における予測される最初の変化を提供する。
【0099】
最初の投与後、又は血中IL−10濃度の測定可能な増加をもたらす用量(有効量)に達した時、有効量のIFNτの投与を、延長された治療期間に、好ましくは毎日又は週に数回の割合で継続する。延長して投与される有効量は、継続する有効量が最初の有効量と同一又は異なるかにかかわらず、延長された治療期間にわたる実際の血中IL−10濃度の動きとは無関係に、血中IL−10の最初の測定可能な増加をもたらすために有効な用量である。したがって、治療期間中、血中IL−10濃度は、患者が血中IL−10濃度の最初の測定可能な増加をもたらすために有効なIFNτの用量を継続して服用するとしても、上昇した濃度で一定のままか、継続して増加するか、又は減少することすらあり得る(例えば、感染したウイルスのレベルの減少に反応して)。この有効量は、一般的に、少なくとも約1×108単位/日から約1012単位/日までの範囲である。用量は、血中IL−10の所望の最初の増加(例えば、正常の未治療の濃度の1.5から4倍の間)を達成するために調整することができる。
【0100】
一部の患者及び一部の状態では、他の治療薬と組み合わせたIFNτの投与が企図されることが理解されよう。例えば、他の認められた肝炎の抗ウイルス薬とIFNτとの組合せは、一部の患者で有益であり得る。同様に、自己免疫状態を治療するために用いられる薬剤とIFNτとの組合せは、この状態を治療する際に有益である。細胞増殖を患う患者での化学療法剤とIFNτとの組合せも、企図される。より一般的に、あらゆる公知の医薬品とIFNτとの組合せが企図され、典型的な薬剤を以下に示す。第2の薬剤とIFNτとの「組合せ」が、2つの薬剤の連続又は同時の投与を意図し、この場合、連続投与が即時又は非即時であり得ることが理解されよう。
【0101】
III.使用の方法
第1の態様では、ヒト対象におけるインターフェロン治療に反応する疾患又は状態を治療する方法を提供する。「インターフェロン治療に反応する」状態は、その状態の存在、進行又は症状が、インターフェロン、特にI型インターフェロン及びより具体的にはインターフェロン−タウの投与に続いて変化する状態である。また、IFNα又はIFNβによる治療に反応する状態も、IFNτによる治療に反応する。より好ましくは、インターフェロン治療に反応する状態は、その状態の存在、進行又は症状が、非経口経路(例えば、注射)で投与したIFNτにより軽減される状態である。本明細書に記載の方法は、同様な状態にある患者又は治療されている特定の個々の患者に関する試験から決定された血中IL−10濃度の増加により証明された、治療に有効な量で、好ましくは胃及び/又は腸への投与用の経口投与可能な剤形でIFNτを提供することを含む。血中IL−10濃度を増加させるために十分なIFNτの用量も、IFN−γ濃度の減少又は無変化と共に、血中IL−12濃度の減少を引き起こすために有効であり得る。
【0102】
IFNτは、抗ウイルス薬、抗増殖薬として、及び自己免疫障害の治療において生物活性を有する(米国特許第5958402号;第5942223号;第6060450号;第6372206号を参照のこと、これらを本願明細書に援用する)。したがって、注射を通して投与した時、IFNτに反応するあらゆる状態の治療におけるIFNτの経口投与が企図される。本明細書に記載の方法により治療し得る状態及び疾患は、自己免疫、炎症性、ウイルス性感染症、増殖性及び過剰増殖性疾患、並びに免疫媒介性疾患を含む。
【0103】
A.免疫系障害の治療
本明細書に詳述された方法は、免疫系過敏症に関する状態を治療するために有益である。4つのタイプの免疫系過敏症が存在する(Clayman,C.B.編、「米国医師会医学事典(AMERICAN MEDICAL ASSOCIATION ENCYCLOPEDIA OF MEDICINE)」Random House,New York,N.Y.,(1991))。タイプI、つまり即時型/アナフィラキシー性過敏症は、アレルゲン(例えば、花粉)に応答する肥満細胞の脱顆粒に起因し、喘息、アレルギー性鼻炎(枯草熱)、じんま疹(urticaria)(じんま疹(hives))、アナフィラキシーショック、及びアレルギー性の他の疾患を含む。タイプII、つまり自己免疫過敏症は、身体自体の細胞上の認識された「抗原」に対する抗体に起因する。タイプIII過敏症は、種々の組織中に存在し、さらなる免疫応答を活性化させる抗原/抗体免疫複合体の形成に起因し、血清病、アレルギー性肺胞炎、及び時にブースターワクチン接種後に形成される大腫脹などの症状の原因となる。タイプIV過敏症は、感作されたT細胞からのリンホカインの放出に起因し、これは炎症性反応を生じる。例は、接触皮膚炎、麻疹の発疹、及び特定の薬物に対する「アレルギー性」反応を含む。
【0104】
それによって特定の状態がある個体において過敏症を生じ得る機構は、一般に十分には理解されていないが、遺伝的要因及び外因性要因の両方が関与し得る。例えば、細菌、ウイルス又は薬物が、自己免疫障害に対する遺伝的素因を既に有する個体における自己免疫反応を引き起こす役割を果たし得る。あるタイプの過敏症の発生数が、他と相関され得ることが示唆されている。例えば、特定の一般的なアレルギーを有する個体は、より自己免疫障害になりやすいと提唱されている。
【0105】
自己免疫障害は、主に特定の器官又は組織に限定される障害と、全身を冒す障害とにおおまかにグループ分けすることができる。器官特異的(冒された器官に)障害の例は、多発性硬化症(神経突起上のミエリン被覆)、I型糖尿病(膵臓)、橋本甲状腺炎(甲状腺)、悪性貧血(胃)、アディソン病(副腎)、重症筋無力症(神経筋接合部におけるアセチルコリン受容体)、関節リウマチ(関節内層)、ブドウ膜炎(眼)、乾癬(皮膚)、ギヤン−バレー症候群(神経細胞)及びグレーブス病(甲状腺)を含む。全身性自己免疫疾患は、全身性エリテマトーデス及び皮膚筋炎を含む。他の自己免疫障害は、白血球がモイスチャー産生腺(moisture−producing gland)を攻撃するシェーグレン症候群である。シェーグレン症候群の特徴症状は、ドライアイ及び口渇であるが、多くの器官に影響を及ぼす全身性疾患である。
【0106】
過敏症障害の他の例は、喘息、湿疹、アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎、他の湿疹性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、鼻炎、扁平苔癬、天疱瘡(Pemplugus)、水疱性類天疱瘡、表皮水疱症、じんま疹、血管性浮腫、脈管炎(vasculitides)、紅班、皮膚性好酸球増加、円形脱毛症、アテローム性動脈硬化、原発性胆汁性肝硬変及びネフローゼ症候群を含む。関連疾患は、小児脂肪便症、直腸炎、好酸球性胃腸炎、肥満細胞症、炎症性腸疾患、クローン病(Chrohn’s disease)及び潰瘍性大腸炎などの腸炎症、並びに食物関連アレルギーを含む。強直性脊椎炎は、脊椎の関節及び骨の一部又は全てが融合する自己免疫、炎症性疾患の他の例である。
【0107】
本明細書に記載された方法を用いる治療を特に受け入れられる自己免疫疾患は、多発性硬化症、I型(インスリン依存性)糖尿病、エリテマトーデス、筋萎縮性側索硬化症、クローン病、関節リウマチ、口内炎、喘息、ブドウ膜炎、アレルギー、乾癬、強直性脊椎炎、重症筋無力症、グレーブス病、橋本甲状腺炎、シェーグレン症候群及び炎症性大腸疾患を含む。
【0108】
本方法を使用して、上記の障害などの自己免疫障害を治療的に治療し、それによって軽減する。自己免疫障害の治療は、本明細書中に、多発性硬化症の動物モデルであるEAEの処置に関して例示される。自己免疫障害を治療するために使用するとき、IFNτを、IFNτの投与の初期段階中にIL−10の測定可能な増加を達成するために十分な用量で投与する。一旦、所望の有効量が獲得されると、その後のさらなる血中IL−10濃度の変化と無関係に、IFNτの有効量で延長された期間にわたり患者を治療する。治療期間は、少なくとも患者が症候性である期間にわたる。自己免疫状態に関連した症状の停止に続いて、用量を下方へ調整するか、又は治療を中断してもよい。IFNτ治療の治療期間中に、患者を、公知の抗炎症薬又は免疫抑制薬などの別の薬剤と併用して治療することができる。
【0109】
また、対象のIL−10濃度を上昇させる用量でIFNτを投与することにより、自己免疫状態の進行を防止する方法を企図する。また、血清中IL−10濃度を、好ましくはIFN−γ濃度の無変化又は減少を伴って、増加させるために有効な用量でIFNτを投与することにより自己免疫状態の発症を抑制する方法を企図する。また、血清中IL−10/IL−12比を増加させるために有効な用量でIFNτを投与することにより自己免疫状態を治療する方法を企図する。
【0110】
B.ウイルス感染症の治療
本方法は、ウイルス感染症に関連した状態を治療するためにも使用される。IFNτの抗ウイルス活性は、通常IFNαに関連する毒性なしに、広範な治療的適用を有し、さらにIFNτは細胞に対する有害作用なしに、その治療活性を発揮する。IFNτの細胞毒性が比較的ないことが、IFNτをin vivoでの治療薬として極めて貴重なものにしており、IFNτを大部分の他の公知の抗ウイルス薬及び全ての他の公知のインターフェロンとは異質にしている。
【0111】
IFNτを含む製剤を、ウイルス複製を阻害するために経口投与することができる。ウイルス感染症を治療するために、このタンパク質を、患者の血中IL−10の測定可能な増加を達成するために十分な用量で投与する。その後に、さらなる血中IL−10濃度の変化(例えば、ウイルス量の減少による血中IL−10濃度の減少)と無関係に、治療を有効量で継続する。IFNτの投与を、例えば、血中ウイルス価から、又はウイルス感染症と関連した症状の臨床観察から測定したウイルス感染症のレベルが寛解するまで継続する。
【0112】
ウイルス感染症は、RNAウイルス又はDNAウイルスに起因し得る。経口投与したIFNτにより治療できる特定のウイルス疾患の例は、エプスタイン−バーウイルス感染症、HIV感染症、ヘルペスウイルス(EB、CML、単純ヘルペス)、乳頭腫、ポックスウイルス、ピコルナウイルス、アデノウイルス、ライノウイルス、HTLV I、HTLV II及びヒト・ロタウイルスを含む。一実施形態では、ウイルス感染症は、肝炎ウイルス感染症以外であって、さらにより好ましくはC型肝炎ウイルス感染症ではない。IFNτ治療の治療期間中に、患者を、第2の抗ウイルス薬と併用して治療することができ、典型的薬剤を以下に挙げる。
【0113】
C.細胞増殖状態を治療するための方法
他の実施形態では、過剰増殖により特徴付けられる状態を治療するための方法を企図する。IFNτは、強力な抗細胞増殖活性を示す。したがって、経口投与したIFNτにより細胞増殖を抑制する方法を、無制御の細胞増殖を抑制、予防又は減速するために企図する。
【0114】
経口投与したIFNτにより治療することができるヒトにおける細胞増殖性障害の例は、肺大細胞癌、結腸腺癌、皮膚癌(基底細胞癌及び悪性黒色腫)、腎腺癌、前骨髄球性白血病、T細胞リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、乳腺癌、ステロイド感受性腫瘍、ヘアリー細胞白血病、カポジ肉腫、慢性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、表在性膀胱癌、卵巣癌及び神経膠腫を含むが、これらに限定されるものではない。
【0115】
細胞増殖状態の治療に用いるために、IFNτを、患者の血中IL−10濃度の最初の測定可能な増加を達成するために十分な用量で投与する。その後に、血中IL−10濃度のさらなる変化(例えば、身体の癌細胞の減少による血中IL−10濃度の減少)と無関係に、治療を有効量で継続する。有効量でのIFNτの投与を、例えば、腫瘍の大きさ又は特定の組織における癌細胞の広がりにより測定した所望の退縮レベルが観察されるまで継続する。
【0116】
IFNτ治療の治療期間中に、患者を、第2の抗癌剤(例えば、シスプラチン、ドキソルビシン又はタキソール、及び以下に挙げた他の薬剤)と併用して治療することができる。
【0117】
D.製剤及び投与量
IFNτを含む経口製剤を、医薬組成物を調製するために公知の方法に従って調製することができる。一般に、IFNτの治療用組成物を、本組成物の有効な経口投与を促進するために、IFNτの有効量を適した添加剤、担体及び/又は賦形剤と組み合わせるというように調製する。例えば、IFNτを含む錠剤及びカプセルを、IFNτ(例えば、凍結乾燥されたIFNτタンパク質)と薬学的に許容される担体(例えば、ラクトース、コーンスターチ、微結晶性セルロース、スクロース)、結合剤(例えば、α型デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン)、崩壊剤(例えば、カルボキシメチルセルロースカルシウム、デンプン、低置換度ヒドロキシ−プロピルセルロース)、界面活性剤(例えば、ツウィーン80(Tween80)、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマー)、抗酸化剤(例えば、L−システイン、亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム)、潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク)などの添加剤と組み合わせることにより調製することができる。
【0118】
さらに、IFNτポリペプチドは、固体、粉状又はその他の担体(例えば、ラクトース、サッカロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン(例えば、ポテトスターチ、コーンスターチ)、ミリペクチン、セルロース誘導体又はゼラチン)と混合することができ、また潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム若しくはステアリン酸カルシウム、又は錠剤の形態に圧縮されたポリエチレングリコールワックス)を含有することができる。いくつかの担体又は希釈剤の層を用いることにより、徐放性を有して作用する錠剤を調製することができる。
【0119】
経口投与のための液体製剤は、エリキシル剤、シロップ、又は懸濁剤の形態で作製することができ、例えば、溶液は、約0.1重量%〜約30重量%のIFNτ、糖、並びにエタノール、水、グリセロール、プロピレン、グリコール及びおそらく従来の性質を有する他の添加物の混合物を含む。
【0120】
他の適した製剤は、腸管粘膜により吸収されるまで胃及び腸において残存させるために、このタンパク質を保護する保護剤形である。タンパク質のための保護剤形は、当技術分野で公知であって、腸溶コーティング及び/又は粘膜付着性ポリマーコーティングを含む。典型的な粘膜付着性ポリマー製剤は、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、Eudragit(登録商標)、カルボキシビニルポリマー、カルボマーなどを含む。腸管及び特に小腸に活性形態のIFNτを送達するために、経口摂取を通した胃への投与のために設計された剤形を企図する。或いは、IFNτは、胃及び/又は腸内環境に対するある程度の保護を提供するために、プロテアーゼ阻害薬と同時投与するか、ポリマー物質で安定化させるか、又は脂質若しくはポリマー粒子でカプセル化することができる。
【0121】
経口的に活性なIFNτの医薬組成物を、治療的有効量で、治療を必要とする個体に投与する。用量はかなり変更することができ、障害の重篤度、患者の年齢及び体重、並びに患者が摂取し得る他の薬物などの要因に依存する。この量又は投与量は、一般的には主治医により決定される。投与量は一般的には、約1×108単位/日〜5×1012単位/日の間であり;より具体的には約1×108単位/日以上であって、好ましくは約2×108単位/日、好ましくは約3×108単位/日、好ましくは約4×108単位/日、より好ましくは約5×108単位/日、好ましくは約6×108単位/日、好ましくは約7×108単位/日、好ましくは約8×108単位/日以上、さらにより好ましくは約1×109単位/日以上である。
【0122】
定常的な上昇した血漿中IFNτ濃度を必要とする障害は、約2〜4時間ごと程度の頻度の投与から利益を得るが、他の障害(例えば、多発性硬化症)は、より少ない頻度の間隔(例えば、1日1回又は48時間ごとに1回)で治療的有効量を投与することにより、効果的に治療することができる。個々の用量の投与速度は、一般的には、主治医により、処置される疾患の重症度を軽減しつつ最低の総投与量の投与を可能にするように調整される。上記のように、方法は、治療の必要な患者に最初の用量でIFNτを経口投与し、最初の用量レベルに対する個々の患者の反応を判定するための生物学的マーカーを監視することを企図する。監視は、採血、及び例えば、ELISA又はラジオイムノアッセイキットを用いた血中のIL−10などのマーカーの分析を介して容易に行うことができる。したがって、別の態様では、IFNτに反応する状態を患う個人を治療する際に用いるキットを企図する。キットは、IFNτの経口投与用に設計された1種又は複数の剤形を含有するコンテナを含む第1の部分、及びIFNτのバイオマーカー(例えば、血中IL−10濃度を分析するために必要なコンポーネント)を監視するために必要なコンポーネントを含む第2の部分を含む。
【0123】
IFNτの投与は、一般に臨床的エンドポイントに達するまで継続する。この臨床的エンドポイントは、治療される状態、状態の重症度、及び患者の個々の特性(年齢、体重、健康)により変動する。臨床的エンドポイントは、主治医又は看護師により容易に決定され、一時的又は永続的な症状の停止から状態の回復までの範囲にわたる。例えば、乾癬などの自己免疫状態を患う患者では、IFNτによる治療は、乾癬が消失するまで継続し得る。多発性硬化症患者では、適切な臨床的エンドポイントは、症状の重症度の低下、新しい造影増強脳病変の減少、又は評価スコアの良好な変化と思われる。ウイルス感染症で苦しむ個人では、適切な臨床的エンドポイントは、ウイルス価の減少又はウイルス感染症に関連した症状(発熱、発疹、倦怠感、など)の減弱と思われる。細胞増殖によって特徴付けられる状態を患う患者では、IFNτの投与を中断する臨床的エンドポイントは、腫瘍の大きさの退縮により測定した細胞増殖速度の退行、又は腫瘍増殖速度の減少により測定した細胞増殖の減速と思われる。
【0124】
一旦所望の臨床的エンドポイントを達成すれば、IFNτによる毎日の治療を中断することができるが、望む場合又は必要であれば維持用量を投与することができる。続いて、投与量若しくは投与の頻度、又は両方を、症状に応じて、臨床的エンドポイントが維持されるか、又は改善した状態が維持されるレベルで減らしてもよい。
【0125】
IFNτの経口投与が、他の治療と組み合わせて使用できることは、もちろん理解される。例えば、IFNτは、自己免疫反応に向けられる抗原の投与と併用することができる。例は、多発性硬化症を治療するためのミエリン塩基性タンパク質とIFNτ;関節リウマチを治療するためのコラーゲンとIFNτ、及び重症筋無力症を治療するためのアセチルコリン受容体ポリペプチドとIFNτの同時投与を含む。
【0126】
さらに、IFNτは、多発性硬化症などの自己免疫疾患を治療するために、公知の免疫抑制剤(例えば、ステロイド)と共に経口投与することができる。免疫抑制剤は、IFNτと共働的に作用し、等価な用量のIFNτ又は免疫抑制剤単独で得るより有効な治療となり得る。より一般的に、薬物(すなわち、自己免疫状態の治療のための治療薬)と組み合わせて投与されるIFNτを企図し、代表的薬物は、アザチオプリン、シクロホスファミド、コルチコステロイド(プレドニゾン、プレドニゾロン、など)、シクロスポリン、ミコフェノール酸モフェチル、抗胸腺細胞グロブリン、ムロモナブCD3モノクローナル抗体、メルカプトプリン、ミトキサントロン、酢酸グラティラマー(Copaxone)、インターフェロン−β(Avonex(商標)、Betaseron(商標)、Ribif(商標))、ダクリズマブ、メトトレキセート、シロリムス、タクロリムスなどを含むが、これらに限定されるものではない。
【0127】
同様に、癌又はウイルス疾患の治療において、IFNτは、例えば、1種又は複数の化学療法薬剤の治療有効量と共に投与することができる。細胞増殖状態の治療用薬剤の典型的なタイプは、ナイトロジェンマスタード、エチレンイミン、メチルメラミン、スルホン酸アルキル、ニトロソウレア、トリアゼン、葉酸類似体、ピリミジン類似体、プリン類似体、ビンカアルカロイド、エピポドフィロトキシン、抗生物質、酵素、生体応答修飾物質(例えば、サイトカイン)、白金配位錯体、アントラセンジオン、置換された尿素、メチルヒドラジン誘導体、副腎皮質性抑制剤、プロゲスチン、エストロゲン、抗エストロゲン剤、アンドロゲン、抗男性ホルモン及び生殖腺刺激ホルモン放出ホルモン類似体を含むが、これらに限定されるものではない。代表的薬物は、メクロレタミン、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ヘキサメチルメラミン、チオテパ、ブスルファン、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、ストレプトゾシン、ダカルバジン、メトトレキセート、フルオロウラシル、フロキシウリジン、シタラビン、メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エトポシド、テニポシド、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリカマイシン、マイトマイシン、アスパラギナーゼ、インターフェロン−α、シスプラチン、カルボプラチン、ミトキサントロン、ヒドロキシ尿素、プロカルバジン、ミトタン、アミノグリチミド(aminoglyethimide)、プレドニゾン、カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、酢酸メドロキシプロゲステロン、酢酸メゲストロール、ジエチルスチルベストロール、エチニルエストラジオール、タモキシフェン、プロピオン酸テストステロン、フルオキシメステロン、フルタミド、ロイプロリド、ジドブジン(AZT)、ロイコボリン、メルファラン、シクロホスファミド、ダカルバジン、ジピリダモールなどを含むが、これらに限定されるものではない。
【0128】
ウイルス感染症治療におけるIFNτの同時投与のための典型的薬剤は、抗ヘルペスウイルス剤、抗レトロウイルス剤及び抗ウイルス薬を含むが、これらに限定されるものではない。代表的薬物は、アシクロビル、ファムシクロビル、ホスカルネット、ガンシクロビル、イドクスウリジン、ソリブジン、トリフルリジン、バラシクロビル、ビダラビン、ジダノシン、スタブジン、ザルシタビン、ジドブジン、アマンタジン、インターフェロン−α、リバビリン、リマンタジン、ラミブジン、プロテアーゼ阻害薬、非環状ヌクレオシドホスホネートなどを含む。
【実施例】
【0129】
IV.実施例
以下の実施例は、本明細書に記載の方法をさらに例証するもので、決して主題の範囲を制限することを意図するものではない。
【0130】
材料及び方法
A.IFNτの生産
一実施形態では、合成IFNτ遺伝子を、IFNτのアミノ酸配列をコードしているDNA配列の連続した部分を含むオリゴヌクレオチドを結合させることによる標準の分子的手法(Ausubelら、上記、1988)を用いて生成した。使用されるDNA配列は、配列番号1若しくは配列番号4又はImakawa,K.ら、Nature、330:377−379,(1987)に示される配列のいずれかでよい。得られたIFNτポリヌクレオチドコード配列は、172アミノ酸のコード配列である16から531位にわたり得る。
【0131】
一実施形態では、全長合成遺伝子StuI/SStI断片(540bp)を、改変pIN III omp−A発現ベクターにクローン化し、適格な大腸菌(E.coli)のSB221株中に形質転換した。IFNτタンパク質の発現のために、発現ベクターを有する細胞を、アンピシリンを含有するL−ブロス中でOD(550nm)0.1〜1まで増殖させ、IPTG(イソプロピル−1−チオ−b−D−ガラクトシド)で3時間誘導し、遠心分離により回収した。可溶性組換えIFNτを、超音波処理又は浸透圧分画により、細胞から遊離させることができる。
【0132】
酵母における発現のために、IFNτ遺伝子を、それぞれ5’末端及び3’末端にStuI及びSacI制限部位を含むPCRプライマーによるポリメラーゼ連鎖反応(PCR;Mullis,K.B.、米国特許第4683202号、1987年7月28日発行;Mullis,K.Bら、米国特許番号4683195号、1987年7月28日発行)を用いて増幅することができる。増幅された断片をStuI及びSacIIで消化し、pBLUESCRIPT+(KS)のSacII及びSmaI部位に連結して、pBSY−IFNτを生成した。プラスミドpBSY−IFNτをSacII及びEcoRVで消化し、そして合成IFNτ遺伝子を含む断片を単離した。酵母発現ベクターpBS24Ub(Ecker,D.J.ら、J.Biol.Chem.264:7715−7719(1989))をSalIで消化した。平滑末端を、T4 DNAポリメラーゼを用いて生成した。ベクターDNAをフェノールで抽出し、エタノール沈澱した(Sambrookら、「分子クローニング:実験マニュアル(MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL)」第2編,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY(1989))。回収したプラスミドをSacIIで消化し、アガロースゲル電気泳動により精製し、pBSY−IFNτから単離したSacII−EcoRV断片に連結した。生じた組換えプラスミドをpBS24Ub−IFNτと名付けた。
【0133】
組換えプラスミドpBS24Ub−IFNτを、大腸菌(E.coli)中に形質転換した。IFNτインサートを含む組換えクローンを単離し、制限酵素解析により同定した。IFNτコード配列をpBS24Ub−IFNτから単離し、アルコールオキシダーゼ(AOX1)プロモーターを含むピキア・パストリス(Pichia pastoris)ベクター(Invitrogen,San Diego,CA)中にクローン化した。次いで、このベクターを用いてピキア・パストリス(Pichia pastoris)GS115 His−宿主細胞を形質転換し、タンパク質を製造者の説明書に従って発現させた。タンパク質を培地中に分泌させ、連続したDEAE−セルロース及びヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーにより、SDS−PAGE及び銀染色により判定される電気泳動的な均質まで精製した。
【0134】
B.特定の抗ウイルス活性を測定する抗ウイルスアッセイ
抗ウイルス活性を、標準の細胞変性効果アッセイを用いて評価した(Familletti,P.C.ら、「酵素学における方法(Methods in Enzymology)」,78:387−394(1981);Rubinstein,S.ら、J.Virol.,37:755−758(1981))。簡単に述べると、IFNτの希釈物を、マディンダービー(Madin−Darby)ウシ腎(MDBK)細胞と共に37℃で16〜18時間インキュベートした。インキュベート後、ウイルス複製の阻害を、負荷として水疱性口炎ウイルスを用いる細胞変性効果アッセイで測定した。1抗ウイルス単位(U)は、単層の破壊で50%の減少を引き起こした。本明細書中に記載された試験では、IFNτは、約1×108抗ウイルスU/mgタンパク質の特定の活性を有した。
【0135】
(実施例1)
多発性硬化症患者へのIFNτの投与
A.様々な用量での試験
多発性硬化症を患うヒトを、IFNτ治療に関する試験に登録した。患者15例を、3つの治療群にランダムに割り付けた。群Iの患者に、0.2mg/日(2×107U/日)の用量でIFNτを経口投与した。群IIの患者に、0.8mg/日(8×107U/日)の用量でIFNτを経口投与した。群IIIの患者に、1.8mg/日(1.8×108U/日)の用量でIFNτを経口投与した。
【0136】
IFNτ治療前のスクリーニング日及び1日目に、ベースラインの血清中サイトカイン濃度を決定するために、各患者から血液試料を採取した。1日目の採血後、各対象にIFNτを経口投与することにより治療を開始した。投与前に、IFNτ(配列番号3)のバイアル及びシリンジを、2〜8℃で冷蔵庫に保存した。薬物の自己投与前に、患者は1つのバイアルと1つのシリンジを冷蔵庫から取り出した。シリンジの先端からキャップを取り外し、1日目に診療所での指示の通りに、シリンジの先端を薬物のビンに入れ、適切な容量をシリンジに吸い上げた。シリンジの先端を口腔内に置き、シリンジの内容物を、プランジャーを押し下げることによって口にあけた。次いで、患者は飲み込み、望むならば、コップ1杯の水を飲んだ。患者は、彼/彼女の日記型カードに用量を投与した日付及び時間を記入した。
【0137】
血液試料を、試験の1、4、8、15、29及び57日目に各患者から採取した。試料を、市販のELISAキット(Genzyme,Cambridge,Mass)を用いてIL−10濃度及びIFN−γ濃度について分析した。結果を、図1A〜1D(IL−10)及び図2A〜2D(IFN−γ)、並びに図3A〜3E(IL−10及びIFN−γ)に示す。
【0138】
A1.結果の統計解析
再発寛解型多発性硬化症患者15例を、3つの用量(0.2mg、0.6mg及び1.8mg)のうちの1つで、1日1回4週間経口IFN−タウで治療した。血清試料は、スクリーニング並びに1、4、8、15、29及び57日目に得て、IL−10濃度及びIFN−γ濃度(pg/ml)について評価した。3群の結果を、反復測定分散分析統計を用いて経時的に評価した。90のデータポイント(1日目〜57日目)のうち、9つの欠測データポイントの値は、以前の値を繰り越すことで代用した。
【0139】
IL−10:解析により、3つの用量群間における有意差(F=2.92、P=0.0927)、時間の有意な影響(F=0.70、P=0.6285)及び有意な群と時間の相互関係(F=0.74、P=0.6803)は認められなかった。このことは、28日の投与期間及び28日の追跡期間にわたり、IL−10濃度が全3群でIFNτの投与後に変わらなかったことを示唆している。最低から最高までの用量群における投与の1日目から29日目までの平均の変化は、それぞれ7%、3%及び−25%であった。3つの用量群の57日目までの平均の変化は、それぞれ10%、−10%及び−39%であった。全ての場合、全3群のデータは、大きなばらつきがあった。
【0140】
IFN−γ:解析により、3つの用量群間における有意差(F=1.06、P>0.3769)、時間の有意な影響(F=1.86、P=0.1140)及び有意な群と時間の相互関係(F=1.45、P=0.1820)は認められなかった。このことは、24日の投与期間及び28日の追跡期間にわたり、IFN−γ濃度が全3群でIFNτの投与後に変わらなかったことを示唆している。最低から最高までの用量群における投与の1日目から29日目までの平均の変化は、それぞれ−63%、−14%及び35%であった。3つの用量群の57日目までの平均の変化は、それぞれ−27%、−46%及び22%であった。IL−10の解析と同様に、全3群のデータは、大きなばらつきがあった。
【0141】
B.単回投与試験
再発寛解型多発性硬化症の臨床診断を受けた対象を、磁気共鳴映像法(MRI)脳スキャンを用いて評価した。画像診断前に、患者にガドリニウムを投与した。3カ月の期間中に、毎月撮影した3回のMRIスキャンのうちの少なくとも1回でガドリニウム増強病変が認められた患者を本試験に登録した。合計で、患者22例をIFNτ治療のために選択した。
【0142】
身体診察、血液学的検査及び血清化学的検査により、スクリーニング時、1及び2週目、6カ月目まで毎月評価した。免疫学的評価(IL−12、IL−10、TGF−β、ネオプトリン、IL−6、IFN−γ、Th1及びTh2サイトカイン)を、スクリーニング時及び6カ月目まで毎月評価した。ガドリニウム増強病変の評価のためのMRIスキャンは、毎月撮影した。神経学的試験は、スクリーニング時及び3及び6カ月目に実施した。
【0143】
本試験のために選択された患者22例に、経口投与を介して、インターフェロン−タウ3.0mgを1日3回(総1日量9.0mg)投与した。標準のアッセイで測定した1〜2×108単位/mgタンパク質の特定の抗ウイルス活性に基づき、各患者に投与した1日投与量は、約9×108から1.8×109単位の間であった。IFNτは、緩衝液中に1.5mg/mLの濃度で提供し、2mLの容量を1日3回投与した。
【0144】
新しいガドリニウム増強病変の減少を、登録した多発性硬化症患者を治療することにおけるインターフェロン−タウの有効性を評価するための臨床的エンドポイントとして使用した。MRIスキャンは、病変部位をマニュアルで確認する専門のMRIリーダーにより解読された。新しいガドリニウム増強病変の数を、治療前のスキャンに対して後のスキャンで病変部位を比較することにより確認した。結果を、表2A〜2Dに示す。
【0145】
(実施例2)
C型肝炎に感染したヒトの患者へのIFNτの1日3回の投与
A.IFNτの調製
1日目、IFNτ(配列番号3)1ビンを冷蔵庫から取り出し、患者は、表3に従って適切な容量の試験材料を自己投与した。また、IFNτ(配列番号2)を、同様に調製及び投与した。
【表8】
【0146】
B.患者服用指示
試験材料の全バイアル及びシリンジは、2〜8℃に保った冷蔵庫内に保存した。薬物の自己投与前に、患者は冷蔵庫から1つのバイアル及び1つのシリンジを取り出した。シリンジの先端からキャップを取り外し、1日目に診療所での指示の通りに、シリンジの先端を薬物のビンに入れ、適切な容量をシリンジに吸い上げた。
【0147】
シリンジの先端を口腔内に置き、シリンジの内容物を、プランジャーを押し下げることによって口にあけた。次いで患者は試験材料を飲み込んだ。患者は、望むならば、コップ1杯の水を飲んだ。患者は、彼/彼女の日記型カードに試験材料の用量を投与した日付及び時間を記入した。
【0148】
上記のステップを、約8時間の間隔で、朝に1回、正午に1回及び夕方に1回の1日3回繰り返した。
【0149】
C.結果
血液試料を、169日の試験期間にわたり規定の間隔で採取した。試料を、市販のELISAキット(Genzyme,Cambridge,Mass)を用いて、製造者の説明書に従って血清中のIL−10濃度及びIFN−γ濃度について分析した。また、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応を用いたC型肝炎ウイルス価、2’,5’−オリゴアデニル酸シンセターゼ(OAS)の血中濃度及びアラニンアミノ基転移酵素(ALT)の血清中濃度を測定したが、本明細書では報告しない。
【0150】
各対象の結果を、図4A〜4D(IL−10濃度)及び図5A〜5D(IFN−γ濃度)、並びに図6A〜6F(IL−10及びIFN−γ)に示す。
【0151】
D.結果の統計解析
3群の結果を、反復測定分散分析統計を用いて経時的に評価した。群IIの患者1例のデータは、ベースラインの血清試料が不明により使用しなかった。204のデータポイント(1日目〜169日目)のうち、両方の測定に関する7つの欠測データポイントの値は、以前の値を繰り越すことで代用した。
【0152】
IL−10:解析により、3群間における有意差(F=12.08、P=0.0009)、時間の有意な影響(F=11.20、P=0.0001)及び有意な群と時間の相互関係(F=7.88、P=0.001)が認められた。後者の知見は、経時的な3つの用量群間におけるIL−10反応率の差により明白に見ることができる。最低用量群(群I;0.33mg TID)は、1日目〜43日目にIL−10濃度が22%増加したが、群II(1mg TID)は、29日までに114%のピーク反応を生じた。対照的に、群IIIは(3mg TID)、43日目までに387%増加し、71日目までに484%のピークを有した。
【0153】
また、有意な相互作用項(interaction term)は、一旦投与が84日目に終了されると、IL−10濃度における用量群間の示差的減少により支持されている。群Iが85日目のIL−10濃度の11%増加から169日目の4%に減少し、群IIが同じ期間にわたり95%から0.5%に減少した。したがって、2つの最低用量群は、投与終了の6カ月後にベースラインに戻った。しかし、最高用量群(群III;3mg TID)は、169日目までに453%から194%に減少し、したがって、ベースラインの6カ月に対して投与終了後も依然としてかなりの増加を示している。
【0154】
IFN−γ:解析により、3つの用量群間における有意差(F=1.13、P>0.3499)、時間の有意な影響(F=1.55、P=0.1187)及び有意な群と時間の相互関係(F=1.39、P=0.1275)は認められなかった。このことは、84日の投与期間及び84日の追跡期間にわたり、IFN−γ濃度が全3群でIFNτの投与後に有意に変わらなかったことを示している。最低から最高までの用量群における投与の1日目から85日目までの平均の変化は、それぞれ−6%、8%及び7%であった。興味深いことに、3つの用量群の169日目までの平均の変化は、それぞれ4%、21%及び31%であり、このことは投与終了後の用量反応を示唆している。
【0155】
(実施例3)
C型肝炎に感染した患者へのIFNτの1日2回投与
C型肝炎に感染したヒト患者5例を試験に組み入れた。患者を、実施例2の方法に従って、IFNτにより治療し、各患者に7.5mgを1日2回(総1日量15mg;1.5×109U)投与した。最初の用量は、朝の朝食前に投与した。第2の用量は、夕食の少なくとも3時間後に投与した。
【0156】
血液試料を、113日の試験期間にわたり規定の間隔で採取した。試料を、市販のELISAキット(Genzyme,Cambridge,Mass)を用いて血清中IL−10、IL−12及びIFN−γ濃度について分析した。各患者5例の結果を、図7A(IL−10)、図7B(IFN−γ)及び図8A〜8D(IL−10、IL−12及びIFN−γ)に示す。
【0157】
多くの典型的な態様及び実施形態について、これまで述べてきたが、当業者は、一定の改変、置換、追加及びそれらの一部組合せを認めるであろう。したがって、以下の添付の特許請求の範囲及び以下の特許請求の範囲は、その趣旨及び範囲の範囲内に全てのそのような改変、置換、追加及び一部組合せを含むと解釈される。
【0158】
(配列表の簡単な説明)
配列番号1は、ヒツジのインターフェロン−τ(IFNτ)をコードする合成遺伝子のヌクレオチド配列である。
配列番号2は、成熟ヒツジのインターフェロン−τのアミノ酸配列(IFNτ;oTP−1;GenBank登録番号Y00287;PID g1358)に相当する。
配列番号3は、配列番号2の配列に比べて、配列の5位及び6位のアミノ酸残基が修飾されている成熟ヒツジのIFNτのアミノ酸配列に相当する。
配列番号4は、配列番号3のタンパク質をコードしている合成ヌクレオチド配列である。
【図面の簡単な説明】
【0159】
【図1A】1〜29日目にIFNτ0.2mgで毎日治療した患者群I、II及びIIIの時間(日)に応じた、多発性硬化症を患い、IFNτで経口的に治療したヒト患者における血清中IL−10濃度(pg/mL)を示すグラフである。
【図1B】1〜29日目にIFNτ0.6mgで毎日治療した患者群I、II及びIIIの時間(日)に応じた、多発性硬化症を患い、IFNτで経口的に治療したヒト患者における血清中IL−10濃度(pg/mL)を示すグラフである。
【図1C】1〜29日目にIFNτ1.8mgで毎日治療した患者群I、II及びIIIの時間(日)に応じた、多発性硬化症を患い、IFNτで経口的に治療したヒト患者における血清中IL−10濃度(pg/mL)を示すグラフである。
【図1D】1〜29日目にIFNτ0.2mg(ダイヤモンド、群I)、IFNτ0.6mg(正方形、群II)及びIFNτ1.8mg(三角形、群III)で毎日治療した各試験群I、II及びIIIのヒト患者における平均血清中IL−10濃度(pg/mL)を示すグラフである。
【図2A】1〜29日目にIFNτ0.2mgで毎日治療した患者群I、II及びIIIの時間(日)に応じた、多発性硬化症を患い、IFNτで経口的に治療したヒト患者における血清中IFN−γ濃度(pg/mL)を示すグラフである。
【図2B】1〜29日目にIFNτ0.6mgで毎日治療した患者群I、II及びIIIの時間(日)に応じた、多発性硬化症を患い、IFNτで経口的に治療したヒト患者における血清中IFN−γ濃度(pg/mL)を示すグラフである。
【図2C】1〜29日目にIFNτ1.8mgで毎日治療した患者群I、II及びIIIの時間(日)に応じた、多発性硬化症を患い、IFNτで経口的に治療したヒト患者における血清中IFN−γ濃度(pg/mL)を示すグラフである。
【図2D】1〜29日目にIFNτ0.2mg(ダイヤモンド、群I)、IFNτ0.6mg(正方形、群II)及びIFNτ1.8mg(三角形、群III)で毎日治療した各試験群I、II及びIIIのヒト患者における平均血清中IFN−γ濃度(pg/mL)を示すグラフである。
【図3A】図1〜2に関して述べた治療群I、II及びIIIから選択された個々の患者のIL−10(ダイヤモンド)及びIFN−γ(正方形)の血清中濃度(両方ともpg/mL)を示すグラフである。
【図3B】図1〜2に関して述べた治療群I、II及びIIIから選択された個々の患者のIL−10(ダイヤモンド)及びIFN−γ(正方形)の血清中濃度(両方ともpg/mL)を示すグラフである。
【図3C】図1〜2に関して述べた治療群I、II及びIIIから選択された個々の患者のIL−10(ダイヤモンド)及びIFN−γ(正方形)の血清中濃度(両方ともpg/mL)を示すグラフである。
【図3D】図1〜2に関して述べた治療群I、II及びIIIから選択された個々の患者のIL−10(ダイヤモンド)及びIFN−γ(正方形)の血清中濃度(両方ともpg/mL)を示すグラフである。
【図3E】図1〜2に関して述べた治療群I、II及びIIIから選択された個々の患者のIL−10(ダイヤモンド)及びIFN−γ(正方形)の血清中濃度(両方ともpg/mL)を示すグラフである。
【図4A】1日3回IFNτ0.33mgで毎日治療した試験群Iの患者6例に関する、時間(日)に応じた、C型肝炎を患い、IFNτで経口的に治療したヒト患者における血清中IL−10濃度(pg/mL)を示すグラフである。
【図4B】1日3回IFNτ1.0mgで毎日治療した試験群IIの患者6例に関する、時間(日)に応じた、C型肝炎を患い、IFNτで経口的に治療したヒト患者における血清中IL−10濃度(pg/mL)を示すグラフである。
【図4C】1日3回IFNτ3mgで毎日治療した試験群IIIIの患者6例に関する、時間(日)に応じた、C型肝炎を患い、IFNτで経口的に治療したヒト患者における血清中IL−10濃度(pg/mL)を示すグラフである。
【図4D】試験群I(ダイヤモンド、1日3回0.33mg)、群II(正方形、1日3回1mg)及び群III(三角形、1日3回3mg)に関する時間に応じた血清中IL−10濃度の増加パーセント示す、図4A〜4Cにおける試験群I、II及びIIIの要約図である。
【図5A】1日3回IFNτ0.33mgで毎日治療した試験群Iの患者6例に関する、時間(日)に応じた、C型肝炎を患い、IFNτで経口的に治療したヒト患者における血清中IFN−γ濃度(pg/mL)を示すグラフである。
【図5B】1日3回IFNτ1.0mgで毎日治療した試験群IIの患者6例に関する、時間(日)に応じた、C型肝炎を患い、IFNτで経口的に治療したヒト患者における血清中IFN−γ濃度(pg/mL)を示すグラフである。
【図5C】1日3回IFNτ3mgで毎日治療した試験群IIIIの患者6例に関する、時間(日)に応じた、C型肝炎を患い、IFNτで経口的に治療したヒト患者における血清中IFN−γ濃度(pg/mL)を示すグラフである。
【図5D】試験群I(ダイヤモンド、1日3回0.33mg)、群II(丸、1日3回1mg)及び群III(三角形、1日3回3mg)に関する時間に応じた平均血清中IFN−γ濃度を示す、図5A〜5Cにおける試験群I、II及びIIIの要約図である。
【図6A】図4〜5に関して述べた治療群I、II及びIIIから選択された個々の患者のIL−10(ダイヤモンド)及びIFN−γ(正方形)の血清中濃度(両方ともpg/mL)を示すグラフである。
【図6B】図4〜5に関して述べた治療群I、II及びIIIから選択された個々の患者のIL−10(ダイヤモンド)及びIFN−γ(正方形)の血清中濃度(両方ともpg/mL)を示すグラフである。
【図6C】図4〜5に関して述べた治療群I、II及びIIIから選択された個々の患者のIL−10(ダイヤモンド)及びIFN−γ(正方形)の血清中濃度(両方ともpg/mL)を示すグラフである。
【図6D】図4〜5に関して述べた治療群I、II及びIIIから選択された個々の患者のIL−10(ダイヤモンド)及びIFN−γ(正方形)の血清中濃度(両方ともpg/mL)を示すグラフである。
【図6E】図4〜5に関して述べた治療群I、II及びIIIから選択された個々の患者のIL−10(ダイヤモンド)及びIFN−γ(正方形)の血清中濃度(両方ともpg/mL)を示すグラフである。
【図6F】図4〜5に関して述べた治療群I、II及びIIIから選択された個々の患者のIL−10(ダイヤモンド)及びIFN−γ(正方形)の血清中濃度(両方ともpg/mL)を示すグラフである。
【図7A】IFNτの用量7.5mgを空腹時に1日2回投与した場合の、時間(日)に応じた、C型肝炎を患い、IFNτで経口的に治療したヒト患者における血清中IL−10濃度(pg/mL)を示すグラフである。
【図7B】IFNτの用量7.5mgを空腹時に1日2回投与した場合の、時間(日)に応じた、C型肝炎を患い、IFNτで経口的に治療したヒト患者における血清中IFN−γ濃度(pg/mL)を示すグラフである。
【図8A】図7A〜7Bに関して述べたように治療した患者におけるIL−10(ダイヤモンド)、IFN−γ(正方形)及びIL−12(三角形)の血清中濃度(pg/mL)を示すグラフである。
【図8B】図7A〜7Bに関して述べたように治療した患者におけるIL−10(ダイヤモンド)、IFN−γ(正方形)及びIL−12(三角形)の血清中濃度(pg/mL)を示すグラフである。
【図8C】図7A〜7Bに関して述べたように治療した患者におけるIL−10(ダイヤモンド)、IFN−γ(正方形)及びIL−12(三角形)の血清中濃度(pg/mL)を示すグラフである。
【図8D】図7A〜7Bに関して述べたように治療した患者におけるIL−10(ダイヤモンド)、IFN−γ(正方形)及びIL−12(三角形)の血清中濃度(pg/mL)を示すグラフである。
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、インターフェロン−タウを含む医薬組成物及びその使用法に関する。より具体的には、本発明の主題は、所望の臨床転帰を得るために、インターフェロン−タウ(IFNτ)を十分な用量で投与すると、自己免疫状態などの特定のサイトカイン濃度の調節から利益を得る、状態を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インターフェロン−タウ(以下、「IFNτ」又は「インターフェロン−τ」)は、当初、反芻動物の受胎産物の栄養外胚葉により産生される妊娠認識ホルモンとして発見された(Imakawa,K.ら、Nature,330:377−379,(1987);Bazer,F.W.及びJohnson,H.M.,Am.J.Repro.Immunol.,26:19−22,(1991))。IFNτ遺伝子の分布は、ウシ、ヒツジ及びヤギなどの反芻動物に限定されているが(Alexenko,A.P.ら、J.Interferon and Cytokine Res.,19:1335−1341,(1999))、ヒト及びマウスなどの他の種に属する細胞で活性を有することが示されている(Pontzer,C.H.ら、Cancer Res.,51:5304−5307,(1991);Alexenko,A.P.ら、J.Interferon and Cytokine Res.,20:817−822,(2000))。例えば、IFNτは、抗ウイルス(Pontzer,C.H.ら、Biochem.Biophys.Res.Commun.,152:801−807,(1988))、抗増殖性(Pontzer,C.H.ら、1991)及び免疫調節活性(Assal−Meliani,A.,Am.J.Repro.Immunol.,33:267−275(1995))を有することが実証されている。
【0003】
IFNτは、インナーフェロン−α及びインターフェロン−βなどのI型IFNに古典的に関連した活性の多くを示すが、IFNτと他のタイプのI型IFNとの間にはかなりの相違が存在する。最も顕著な相違は、反芻動物種の妊娠におけるIFNτの役割である。他のIFNは、妊娠認識において同様の活性を持たない。また、ウイルス誘導性も異なる。IFNτ以外の全てのI型IFNは、ウイルス及びdsRNAにより容易に誘導される(Robertsら、Endocrine Reviews,13:432(1992))。誘導されたIFN−α及びIFN−β発現は一過性で、ほぼ数時間持続する。対照的に、IFNτの合成は、一旦、誘導されると、数日間にわたり維持される(Godkinら、J.Reprod.Fert.,65:141(1982))。1細胞あたりの基準で、IFNτは、他のI型IFNより300倍多く生成される(Cross,J.C.及びRoberts,R.M.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:3817−3821(1991))。
【0004】
他の相違は、IFNτ及び他のI型インターフェロンのアミノ酸配列にある。インターフェロンα2b、β1、ω1、γ及びτの間のアミノ酸配列類似性のパーセントを以下の表に要約する。
【表1】
以下の参考文献から判定した配列比較。
Taniguchiら、Gene,10(1)11(1980)。
Adolfら、Biochim.Biophys.Acta,1089(2):167(1991)。
Streuliら、Science,209:1343(1980)。
Imakawaら、Nature,330:377(1987)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
組換え型ヒツジIFNτは、IFNα2bに48.8パーセント相同であり、IFNβ1に33.8パーセント相同である。このIFNτとIFNα及びIFNτとIFNβの間の限定的な相同性のため、経口投与した際、IFNτがIFNα又はIFNβと同じ様式で作用するか予測することができない。また、IFNτは、ヒト細胞上のI型受容体に対する受容体結合親和性が低いことが報告されている(Brod,S.,J.Interferon and Cytokine Res.,18:841(1999);Alexenko,A.ら、J.Interferon and Cytokine Res.,17:769(1997))。さらに、IFNτが非内在性ヒトタンパク質であるという事実は、IFNτが人体に導入されると、全身の中和抗体形成の潜在性を生じる(Brod,S.,J.Interferon and Cytokine Res.,18:841(1999))。これらのIFNτと他のインターフェロンとの相違は、ヒトに投与すると、IFNτが治療上の有益性をもたらすかどうかを予測することを困難にする。IFNα、IFNβ、又はタウ以外の他のインターフェロンのいずれかの経口投与に関する当技術分野の教示は、IFNτに対する何らかの期待を抱くためのベースを提供することができない。
【0006】
IFNτ、並びに通常はタンパク質及びポリペプチドの使用における1つの制限因子は、非経口的に投与した際の血漿タンパク質及び血球とのタンパク質の相互作用により影響される体内分布に関連する。経口投与経路は、意図される標的に到達する前に、酸性条件が分子を破壊する可能性がある胃内におけるタンパク分解により、なおさら問題である。例えば、胃及び膵臓の酵素の作用により産生されるポリペプチド及びタンパク質断片は、腸内の刷子縁膜でエキソペプチダーゼ及びエンドペプチダーゼにより切断され、ジペプチド及びトリペプチドを生じる。膵酵素によるタンパク分解が避けられる場合、ポリペプチドは刷子縁ペプチダーゼによる分解にかけられる。胃の通過を生き延びることができるポリペプチド又はタンパク質は、浸透障壁(penetration barrier)が細胞への流入を防止する腸管粘膜で代謝にかけられる。この理由により、多くの試みは、一定期間、口腔に留まるトローチ剤又は溶液の形態で、咽頭口部(oral−pharyngeal region)にタンパク質を送達することに焦点が当てられている。
【0007】
様々な疾患におけるサイトカインの役割、並びにサイトカインの血中濃度と疾患の発症及び重症度との相関は、医学界の関心事である。最近の調査は、血清中IL−10濃度の低い多発性硬化症患者が、血清中IL−10濃度が高い患者より障害度が顕著であることを示している(Petereit,H.F.,J.Neurological Sciences,206:209(2003))。また、IL−12の下方制御が多発性硬化症患者を治療する際に有益であり得ることが報告されている(Tuohy,V.ら、J.Neuroimmunol.,111(1−2):55(2000))。インターフェロン−γと多発性硬化症とのリンクも、文献で報告されている(Moldovan,I.R.ら、J.Neuroimmunol.,141(1−2):132(2003))。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、症状を軽減し、状態の進行を抑制し、及び/又は状態の回復を促進するというように、患者の血清中サイトカイン濃度を調節することにより対象の自己免疫状態を治療する方法を提供する。一実施形態では、症状の軽減、進行の抑制を、磁気共鳴映像法(MRI)、特に造影増強MRIを使用して確認する。血清中サイトカイン濃度の調節は、多発性硬化症と診断された患者で、新しい造影増強MRIによる脳病変を減少することに相関し、したがって、インターフェロン−タウによる治療に反応する患者は、血清中サイトカイン濃度の変化を検出することにより選択することができる。
【0009】
別の態様では、多発性硬化症患者の新たなガドリニウム増強病変の数を減少させる方法であって、経口投与用に処方されたインターフェロン−タウを含有する薬物を、少なくとも約3カ月の期間投与して、インターフェロン−タウで治療しない期間の病変の数と比べて、新たな病変の出現が少なくとも約30%減少する方法を提供する。
【0010】
別の態様では、症状を軽減し、継続的細胞増殖を抑制し、及び/又は増殖の回復を促進するというように、対象の血清中サイトカイン濃度を調節することにより対象の細胞増殖に関連する状態を治療する方法を提供する。
【0011】
一態様では、実施形態は、疾患状態の継続的進行を患う又はそのリスクにある患者に、その患者又はモデル患者集団のベースラインの血清中サイトカイン濃度に比べて、選択された血清中サイトカイン濃度を調節するのに十分なインターフェロン−タウの用量を投与することにより達成される。
【0012】
別の態様では、ヒト対象の血中インターロイキン−10(IL−10)濃度を上方制御する方法であって、インターフェロン−タウ(IFNτ)を、1×105単位を超える、好ましくは約1×108単位を超える、好ましくは5×108単位を超える1日投与量で、さらにより好ましくは少なくとも約9×108単位の1日投与量で患者に投与することを含む方法を提供する。対象へのIFNτの経口投与を、所望の臨床的エンドポイントが達成されるまで、1週間あたり少なくとも数回定期的に継続する。
【0013】
一実施形態では、IFNτは、ヒツジIFNτ又はウシIFNτである。典型的なヒツジIFNτ配列は、配列番号2又は配列番号3として識別される。
【0014】
別の実施形態では、IFNτを対象の腸管に経口投与する。
【0015】
一実施形態では、自己免疫状態を患う対象を治療する場合、所望の臨床的エンドポイントは、患者の症状の軽減である。典型的な自己免疫状態は、多発性硬化症、I型糖尿病、リウマチ様関節炎、エリテマトーデス、乾癬、重症筋無力症、グレーブス病、橋本甲状腺炎、シェーグレン症候群、強直性脊椎炎及び炎症性大腸疾患を含む。
【0016】
他の実施形態では、IFNτを、細胞増殖により特徴付けられる障害の治療のために経口投与する。IFNτを、例えば、腫瘍の大きさ又は全身腫瘍組織量の減少など、障害に関連した症状の軽減などの、臨床的エンドポイントに達するまで投与する。典型的な細胞増殖状態は、ヒト肺大細胞癌、ヒト結腸腺癌、ヒト悪性黒色腫、ヒト腎腺癌、ヒト前骨髄球性白血病、ヒトT細胞リンパ腫、ヒト皮膚T細胞リンパ腫、ヒト乳腺癌及びステロイド感受性腫瘍を含む。
【0017】
他の実施形態では、IFNτの投与を第2の治療薬の同時又は連続投与と組み合わされる。典型的な第2の治療薬は、抗ウイルス薬、抗癌剤、及び自己免疫障害の治療に適した薬剤を含む。
【0018】
別の態様では、一般的に上記の範囲の投与量である、疾患の進行の減速を達成するために選択された1日投与量で患者にIFNτを投与する、ヒトの患者において多発性硬化症の進行を遅らせる方法を提供する。IFNτの経口投与は、少なくとも新しい造影増強脳病変の減少などの所望の治療転帰が観察されるまで継続する。
【0019】
さらに別の態様では、多発性硬化症を患う対象の再発のリスクを減少させる方法を記載する。この方法は、上記の範囲の1日投与量で対象にIFNτを経口投与することを含み、この投与量は一般的に、インターフェロン−タウを投与しない対象の血中IL−10濃度に比べて、対象の血中IL−10濃度の増加をもたらすのに十分である。対象へのIFNτの経口投与は、少なくとも新しい脳病変の減少若しくは神経学的評価スコアの変化などの所望の臨床転帰に達するまで、又はより長く継続する。
【0020】
より一般に、対象の自己免疫状態を治療する方法を記載する。この方法は、インターフェロン−タウを投与しない対象の血中IL−10濃度に比べて、対象の血中IL−10濃度の増加をもたらすのに十分な量でIFNτを対象に投与すること、対象の血中IL−10濃度が、インターフェロン−タウを投与しない対象の血中IL−10濃度に比べて増加を維持している選択された期間、IFNτの投与を中止すること、及びIFNτの投与を再開することを含む。
【0021】
上記の典型的な態様及び実施形態に加えて、さらなる態様及び実施形態が、図を参照することにより、さらに以下に記載の試験により明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
1.定義
インターフェロン−タウ(IFNτ又はインターフェロン−τと省略)は、以下の2群の特性の各々から少なくとも1つの特性を有するインターフェロンタンパク質のファミリーのいずれか1つを指す:(i)(a)抗黄体融解性(anti−luteolytic)特性、(b)抗ウイルス特性、(c)抗細胞増殖特性;及び(ii)α−インターフェロンと約45から68%アミノ酸相同性及び公知のIFNτ配列に対して70%より大きいアミノ酸相同性(例えば、Ottら、J.Interferon Res.,11:357(1991);Helmerら、J.Reprod.Fert.,79:83(1987);Imakawaら、Mol.Endocrinol,3:127(1989);Whaleyら、J.Biol.Chem.,269:10846(1994);Bazerら、WO94/10313(1994))。アミノ酸相同性は、例えばデフォルトパラメータを用いたLALIGNプログラムを使用して決定することができる。このプログラムは、配列比較プログラムのFASTAバージョン1.7パッケージで見つけられる(Pearson及びLipman、PNAS,85:2444(1988);Pearson、「酵素学における方法(Methods in Enzymology)」183:63(1990);William R.Pearson,Department of Biological Chemistry,Box 440,Jordan Hall,Charlottesville,VAから入手可能なプログラム)。IFNτ配列は、ウシ(ウシ属、Helmer S.D.,J.Reprod.Fert.,79:83(1987);Imakawa,K.,Mol.Endocrinol.,119:532(1988))、ヒツジ(ヒツジ属)、ジャコウウシ(ジャコウウシ属)、キリン(キリン属、GenBank登録番号U55050)、ウマ(Equus caballus)、シマウマ(Equus burchelli、GenBank登録番号NC005027)、カバ(カバ属)、ゾウ(ゾウ属)、ラマ(Llama glama)、ヤギ(ヤギ属、GenBank登録番号AY357336、AY357335、AY347334、AY357333、AY357332、AY357331、AY357330、AY357329、AY357328、AY357327)及びシカ(シカ属)を含むがこれらに限定されるものではない様々な反芻動物種で同定されている。これら多くの種のIFNτのヌクレオチド配列が、公開データベース及び/又は文献で報告されている(例えば、Roberts,R.M.ら、J.Interferon and Cytokine Res.,18:805(1998)、Leaman D.W.ら、J.Interferon Res.,12:1(1993)、Ryan,A.M.ら、Anim.Genet.,34:9(1996)参照)。「インターフェロン−タウ」という用語は、上記に記載した特性の以下の2群のそれぞれの、少なくとも1つの特性を有する、上記に列挙した反芻動物種により例証されたあらゆる反芻動物種由来のインターフェロン−タウタンパク質を含むことを意図する。
【0023】
ヒツジIFNτ(OvIFNτ)は、本明細書で配列番号2として識別されるアミノ酸配列を有するタンパク質を指し、また本明細書で配列番号3として識別されるIFNτタンパク質などの、タンパク質の活性に著明な影響を及ぼさない中性アミノ酸置換などのアミノ酸置換及び改変を有するタンパク質を指す。より一般的に、ヒツジIFNτタンパク質は、配列番号2として識別される配列に対して、約80%、より好ましくは90%の配列相同性を有するタンパク質である。配列相同性は、例えば、厳密なアミノ酸比較によるか、又は市販の多くのプログラムの1つを使用して判定することができる。
【0024】
状態を治療することは、状態の症状を緩和及び/又は状態の重症度を軽減するために有効な治療物質を投与することを指す。
【0025】
経口は、口による投与、又は胃内投与などの胃若しくは腸への直接の投与を含むあらゆる経路を指す。
【0026】
腸は、胃の下部開口部から肛門まで広がり、小腸(十二指腸、空腸及び回腸)及び大腸(上行結腸、横行結腸、下行結腸、S字結腸及び直腸)を含む消化管の部分を指す。
【0027】
「血中IL−10濃度の測定可能な増加」は、同一条件下で測定した治療前濃度に対するインターロイキン−10の血液中(血清及び/又は血球)濃度の統計的有意な増加、一般的に少なくとも20%の増加、より好ましくは25%の増加を指す。血中IL−10濃度を測定する方法は、本明細書に記載されており、市販の酵素免疫測定法(ELISA)キットを使用する。倍の増加は、x時点の値をスクリーニング又はベースライン値で割ることにより決定する。増加パーセントは、x時点の値とスクリーニング又はベースライン値との差を見出し;この差をスクリーニング又はベースライン値で割り;商に100を掛けることにより決定する。
【0028】
「血中IL−12濃度の測定可能な減少」は、同一条件下で測定した治療前濃度に対するインターロイキン−12の血液中(血清及び/又は血球)濃度の統計的有意な増加、一般的に少なくとも20%の増加、より好ましくは25%の増加を指す。血中IL−12濃度を測定する方法は、本明細書に記載されており、市販の酵素免疫測定法(ELISA)キットを使用する。倍の増加は、x時点の値をスクリーニング又はベースライン値で割ることにより決定する。増加パーセントは、x時点の値とスクリーニング又はベースライン値との差を見出し;この差をスクリーニング又はベースライン値で割り、商に100を掛けることにより決定する。
【0029】
「血中インターフェロン−γ濃度を維持すること」又は「血中インターフェロン−γ濃度が実質的に減少しない」は、インターフェロン−γの血液中(血清及び/又は血球)濃度に統計的に有意な変化がないことを指す。血中インターフェロン−γ濃度を測定する方法は、本明細書に記載されており、市販の酵素免疫測定法(ELISA)キットを使用する。
【0030】
インターフェロン−τの1日投与量に関して、例えば、「5×108単位を超えた1日投与量」という句は、列挙したタンパク質の抗ウイルス単位数を十分にもたらすIFNτ量を指し、これは以下の方法の部分に記載したような、IFNτの抗ウイルス活性を標準の細胞変性効果阻害アッセイを使用して測定する。所与の単位数をもたらすタンパク質量(すなわち、mg)が、このタンパク質の特定の抗ウイルス活性により変動することが理解されよう。
【0031】
II.インターフェロン−τ組成及び治療法
A.インターフェロン−τ
同定された最初のIFNτは、18〜19kDaタンパク質のヒツジIFNτ(IFNτ)であった。いくつかのイソ型が、受胎産物(胚及び周囲の膜)のホモジネート中で同定された(Martal,J.ら、J.Reprod.Fertil.56:63−73(1979))。続いて、受胎産物培地に遊離される低分子量タンパク質が精製され、熱不安定性及びプロテアーゼに対して感受性の両方であることが示された(Godkin,J.D.ら、J.Reprod.Fertil.65:141−150(1982))。IFNτは、元来、ヒツジトロホブラストタンパク質−1(ovine trophoblast protein−one;oTP−1)と呼ばれていたが、これは、ヒツジの母性認識の重要な時期の間にヒツジの受胎産物の栄養外胚葉により最初に生産される一次分泌タンパク質であったからである。続く実験は、IFNτが、反芻動物(例えば、ヒツジ及びウシ)において妊娠に対する生理的な応答を確立するために不可欠な妊娠認識ホルモンであることを決定している(Bazer,F.W.及びJohnson,H.M.,Am.J.Reprod.lmmunol.26:19−22(1991))。
【0032】
N末端アミノ酸配列を示す合成オリゴヌクレオチドを用いたヒツジ胚盤胞ライブラリーのプロービングにより得られたIFNτ cDNA(Imakawa,Kら、Nature,330:377−379,(1987))は、ヒト、マウス、ラット及びブタ由来のIFN−αと45〜55%の相同性を有し、ウシIFN−αII(現在はIFN−Ωと呼ばれる。)と70%の相同性を有する推定のアミノ酸配列を有する。異なるイソ型を示し得るいくつかのcDNA配列が報告された(Stewart,H.J.,ら、Mol.Endocrinol.2:65(1989);Klemann,S.W.,ら、Nuc.Acids Res.18:6724(1990);及びCharlier,M.,ら、Mol.Cell Endocrinol.76:161−171(1991))。全ては、23アミノ酸のリーダー配列と172アミノ酸の成熟タンパク質とをコードする585塩基のオープンリーディングフレームを含む約1kbである。アミノ末端及びカルボキシル末端を有する並列する4つの螺旋型の束と推定されるIFNτの構造は、IFNτをI型IFNとして分類することをさらに支持する(Jarpe,M.A.ら、Protein Engineering 7:863−867(1994))。
【表2】
【0033】
IFNτは、I型IFNに古典的に関連する活性のいくつかを示す(上記の表を参照のこと)が、IFNτと他のI型IFNとの間にはかなりの相違が存在する。最も顕著な相違は、上記に詳細に示したような妊娠におけるその役割である。また、ウイルス性誘導性も異なる。IFNτを除く全てのI型IFNは、ウイルス及びdsRNAにより容易に誘導される(Roberts,R.M.ら、Endocrine.Rev.13:432−452(1992))。誘導されたIFN−α及びIFN−β発現は一過性で、ほぼ数時間持続する。対照的に、IFNτの合成は、一旦、誘導されると、数日間にわたり維持される(Godkinら、1982)。1細胞あたりの基準で、他のI型IFNより300倍多くIFNτが生成される(Cross,J.C.及びRoberts,R.M.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA88:3817−3821(1991))。
【0034】
他の相違が、IFNτ遺伝子の調節領域に存在し得る。例えば、ウシIFNτ遺伝子を用いたヒトトロホブラスト細胞系JARのトランスフェクションは、抗ウイルス活性をもたらしたが、ウシIFN−Ω遺伝子を用いたトランスフェクションはもたらさなかった。これは、独特のトランス活性化因子がIFNτ遺伝子発現に関与したことを示唆する。これは、IFNτの近位のプロモーター領域(126から転写開始部位まで)がIFN−α及びIFN−βの近位のプロモーター領域と高く相同的であり;−126から−450までの領域は相同的ではなく、IFNτの発現のみを促進する(Cross,J.C.及びRoberts,R.M.,Proc.Natl.Acad.Soi.USA88:3817−3821(1991))という観察と一致する。したがって、他のI型IFNと比較して、IFNτの発現には異なる調節因子が関与していると思われる。
【0035】
ヒツジIFNτの172のアミノ酸配列が、例えば、米国特許第5958402号において記載されており、その相同的なウシIFNτの配列は、例えば、Helmerら、J.Reprod.Fert.,79:83−91(1987)及びImakawa,K.ら、Mol..Endocrinol.,3:127(1989)に記載されている。これらの参考文献からヒツジIFNτ及びウシIFNτの配列を、本願明細書に援用する。ヒツジIFNτのアミノ酸配列を、本明細書の配列番号2に示す。
【0036】
1.IFNτの単離
IFNτタンパク質を、妊娠中のヒツジから回収した受胎産物より単離し、Godkin,J.D.ら、J.Reprod.Fertil.65:141−150(1982)及びVallet,J.L.ら、Biol.Reprod.37:1307(1987)に記載されるように改変最少必須培地中のin vitroで培養することができる。IFNτを、イオン交換クロマトグラフィー及びゲル濾過により受胎産物の培養物から精製することができる。単離したIFNτの均一性を、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(Maniatis,T.ら、「分子クローニング:研究室マニュアル(MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL)」、Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY(1982);Ausubel,F.M.ら、「分子生物学の最新のプロトコール(CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY)」、John Wiley & Sons,Inc.,Media,PA(1988))により評価することができ、精製されたIFNτ試料中のタンパク質濃度の決定をビシンコニン(biocinchoninic:BCA)アッセイ(Pierce Chemical Co.、Rockford,IL;Smith,P.K.ら、Anal.Biochem.150:76(1985))を用いて実施することができる。
【0037】
2.IFNτの組換え産生
組換えIFNτタンパク質を、任意に選択されたIFNτポリヌクレオチド断片から、適切な発現系(例えば、細菌細胞又は酵母細胞)を用いて産生させることができる。IFNτヌクレオチド及びポリペプチド配列の単離は、PCT公開WO/94/10313に記載され、本願明細書に援用する。
【0038】
IFNτ発現ベクターを作製するために、IFNτコード配列(例えば、配列番号1又は4)を発現ベクター(例えば、細菌の発現ベクター)中に配置し、標準的な方法に従って発現させる。適切なベクターの例としては、λgt11(Promega,Madison WI);pGEX(Smith,P.K.ら、Anal.Biochem.150:76(1985));pGEMEX(Promega);及びpBS(Stratagene,La Jolla CA)ベクターなどがある。適切なプロモーター(例えば、T7RNAポリメラーゼプロモーター又はtacプロモーター)を有する他の細菌の発現ベクターもまた、使用することができる。IFNτ合成ポリヌクレオチドの改変pIN III omp−A発現ベクターへのクローニングを材料及び方法において記載する。
【0039】
本明細書中に記載された試験では、配列番号4に存在するIFNτコード配列を、酵母細胞の形質転換に適切な、メタノール調節アルコールオキシダーゼ(AOX)プロモーター及びPho1シグナル配列を有するベクター中にクローン化した。このベクターを用いてピキア・パストリス(P.pastoris)宿主細胞を形質転換し、そして形質転換細胞を用いて、製造者の説明書(Invitrogen,San Diego,CA)に従ってタンパク質を発現させた。
【0040】
IFNτを発現させるために適切な他の酵母ベクターとしては、2μmプラスミドベクター(Ludwig,D.L.ら、Gene,132:33(1993))、酵母組み込みプラスミド(Shaw,K.J.ら、DNA,7:117(1988))、YEPベクター(Shen,L.P.ら、Sci.Sin.,29:856(1986))、酵母セントロメアプラスミド(YCp)及び発現の調整可能な他のベクター(Hitzeman,R.A.ら、米国特許第4775622号、1988年10月4日発行;Rutter,W.J.ら、米国特許第4769238号、1988年9月6日発行;Oeda,K.ら、米国特許第4766068号、1988年8月23日発行)などがある。好ましくは、ベクターは、例えば、MFα1プロモーター(Bayne,M.L.ら、Gene 66.235−244(1988))、GADPHプロモーター(グリセルアルデヒド−3−リン酸−デヒドロゲナーゼ;Wu,D.A.ら、DNA,10:201(1991))又はガラクトース誘導性GAL10プロモーター(Ludwig,D.L.ら、Gene,132:33(1993);Feher,Z.ら、Curr.Genet.,16:461(1989);Shen,L.P.ら、Sci.Sin.,29:856(1986))などの有効な酵母プロモーターを含む発現カセットを含む。酵母の形質転換宿主は、一般的に出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)であるが、上記のように形質転換に適切な他の酵母(例えば、分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)など)もまた同様に用いることができる。
【0041】
さらに、IFNτポリペプチドをコードするDNAは、多くの市販のベクターにクローン化させ、適切な宿主系においてポリペプチドの発現を生じさせることができる。これらの系としては、上記の細菌発現系及び酵母発現系、並びに以下が挙げられる:バキュロウイルス発現系(Reilly,P.R.ら、「バキュロウイルス発現ベクター:実験マニュアル(BACULOVIRUS EXPRESSION VECTORS:A LABORATORY MANUAL)」(1992);Beamesら、Biotechniques,11:378(1991);Clonetech、Palo Alto CA);植物細胞発現系、トランスジェニック植物発現系、及び哺乳動物細胞内での発現系(Clontech、Palo Alto CA;Gibco−BRL、Gaithersburg MD)。組換えポリペプチドは、融合タンパク質として又は天然のタンパク質として発現され得る。多くの特性(例えば、培養培地中へ発現される配列の分泌を促進するリーダー配列)を発現ベクター中に工学的に導入することができる。組換え生産されたポリペプチドは、一般的には溶解された細胞又は培養培地から単離される。精製は、塩分画、イオン交換クロマトグラフィー、及びアフィニティークロマトグラフィーを含む、当技術分野で公知の方法により行うことができる。上記のように、IFNτポリペプチドに基づいて生成された抗体を用いて、イムノアフィニティークロマトグラフィーを用いることができる。
【0042】
組換え方法に加えて、IFNτタンパク質又はポリペプチドを、親和性に基づく方法により(例えば、適切な抗体を使用することにより)選択された細胞から単離させることができる。さらに、IFNτペプチド(例えば、配列番号2又は3)を、当業者に公知の方法を用いて化学的に合成させることができる。
【0043】
B.IFNτの投与
補助試験では、IFNτを、多発性硬化症を患う患者及びC型肝炎に苦しむ患者に投与した。試験中、サイトカインIL−10、IFN−γ及びIL−12の血清中濃度を患者ごとに監視した。これより、これらの試験について述べる。
【0044】
1.多発性硬化症を患うヒトへのIFNτの投与
多発性硬化症を患うヒトを、IFNτ治療に関する試験に登録した。実施例1Aに記載のように、患者15例を3つの治療群にランダム化した(表1に要約する)。
【表3】
11mg IFNτ=1×108単位
【0045】
治療前に、各対象から血液試料を採取し、ベースラインの血清中サイトカイン濃度を決定した。1日目の採血後、各患者に、適切な用量でIFNτを経口投与することにより治療を開始した。治療は28日間継続し、血液試料を、試験の1、4、8、15、29及び57日目に各患者から採取した。試料を、IFNγ及びIL−10濃度について分析した。
【0046】
群I、II及びIIIの患者のIL−10濃度を、それぞれ図1A〜1Cに示す。図1Aは、群Iの患者5例における血清中IL−10濃度(pm/mL)を示す。これらの患者を解釈すると、患者3例(患者番号103、104及び105)は、4日目にIL−10濃度の増加を示したが、8日目にIL−10濃度は減少した。患者番号103及び104の8及び15日目IL−10濃度は、4日目の濃度と著しく変わらなかった。図1B及び1Cは、それぞれ試験群II及びIIIにおける患者の結果を示す。特に群IIIの患者では、IFNτ投与後の血清中IL−10濃度のわずかな増加が示唆される。
【0047】
図1Dは、群I、II及びIIIにおける平均血清中IL−10濃度(pg/mL)を示す。2〜28日目のIFNτの投与期間中に、試験群においてIL−10のわずかな上方制御が認められたが、このわずかな上方制御は、実施例1A(1)に記載された統計解析に基づいて、統計的に有意ではなかった。IFNτ投与後の一定期間の群I及びIIにおける継続した血中IL−10濃度のわずかな増加は、28日目には停止した。IFNτの最後の投与から34日後の57日目の血清中IL−10濃度は、0日目及び1日目に測定したベースライン濃度より上に維持されていた。したがって、対象の自己免疫状態を治療する方法が企図され、IFNτは、インターフェロン−タウを投与しない対象の血中IL−10濃度と比べて、対象の血中IL−10濃度に最初の測定可能な増加を生じさせるために十分な量で投与される。次いで、インターフェロン−タウを投与しない対象の血中IL−10濃度に比べて、対象の血中IL−10濃度が増加を維持している間の選択された一定期間、IFNτの投与を終了する。次いで、IFNτの投与を、所望により再開してもよい。
【0048】
また、本試験では、血中IFN−γ濃度を監視した。IFN−γは、炎症誘発性サイトカインであり、IFN−γの上方制御は、自己免疫状態(例えば、多発性硬化症及び関節炎)を患う患者における不快感の増大に相関する。インターフェロン−β(IFN−β)による多発性硬化症の治療の間、IFN−γ分泌細胞の頻度がIFN−β治療の最初の2カ月間に増加することが報告されており、この血清中IFN−γ濃度の増加は、おそらく患者がIFN−β治療中に経験する顕著な「インフルエンザ様」症状に関連する。したがって、IL−10濃度がIFN−γの上方制御を伴うことなしに好都合に上方制御される場合、自己免疫状態を治療する方法は有益と思われる。
【0049】
図2A〜2Dは、多発性硬化症を患い、IFNτで経口的に治療された群I、II及びIIIの患者における血中IFN−γ濃度(pg/mL)を示す。図2Aは、IFNτ0.2mgで治療された群Iの患者における血清中濃度を示す。患者番号101、102、104、105は、それぞれ治療コース中に血中IFN−γ濃度が減少した。血清中濃度は、28日目の治療中断直後に増加した。患者番号103の血清中IFN−γ濃度は増加せず、本質的に変化しなかった。
【0050】
図2Bは、IFNτ0.6mgで毎日治療された群IIの患者における血中IFN−γ濃度(pg/mL)を示す。図2Cは、IFNτ1.8mgで毎日治療された群IIIの患者における血中IFN−γ濃度(pg/mL)を示す。前述のように、IFN−τの最初の用量は、1日目の採血後に投与され、最終用量は、28日目に投与された。したがって、1日目及び「スクリーン」のデータポイントは、個々の患者のベースライン濃度である。群I及びIIIの全患者が、IFN−τによる治療中に血清中IFN−γ濃度の減少又は血清中IFN−γ濃度の有意な変化がないかのいずれかを経験した。
【0051】
図2Dは、各試験群I、II及びIIIのヒト患者における平均血中IFN−γ濃度(pg/mL)を要約する。血中IFN−γ濃度のこの減少傾向は、特に高用量のIFN−τが投与される場合(群III)、明白である。
【0052】
図3A〜3Eは、治療群I、II及びIIIから選択された個々の患者のIL−10(ダイヤモンド)及びIFN−γ(正方形)の血清中濃度(両方ともpg/mL)を示す。図3Aは、治療群Iの患者番号101におけるサイトカインの産生動態(production kinetics)を示す。血中IL−10濃度(ダイヤモンド)は、治療期間中、統計学的に増加しない。血中IFN−γ濃度は、経口投与されたIFN−τによる治療中、減少する。IL−10及びIFN−γのベースライン濃度は、それぞれ15.8pg/mL及び14.5pg/mLで、最初のIL−10/IFN−γ比の1.1を得た。IFN−τによる治療中、血中IFN−γ濃度の減少により、IL−10/IFN−γ比は約2.2まで増加した。IL−10/IFN−γ比は、治療終了の約1カ月後の57日目に、ベースライン比の約1.1に戻った。したがって、IFN−τによる治療の期間中、IL−10/IFN−γ比は約100%増加した。
【0053】
図3Bは、治療群Iの患者番号105におけるサイトカインの産生動態を示す。IL−10及びIFN−γのベースライン濃度は、それぞれ平均して6.6pg/mL及び49.2pg/mLで、最初のIL−10/IFN−γ比の0.13を得た。IFN−τによる治療中、血中IFN−γ濃度の減少により、IL−10/IFN−γ比は約0.2〜0.3まで増加した。IL−10/IFN−γ比は、治療終了の約1カ月後の57日目に、ベースライン比の約0.12に戻った。したがって、IFNτ治療は、50%を超えて、より好ましくは80%を超えて比を増加させ、IL−10/IFN−γ比を調節するために有効だった。
【0054】
図3Cは、治療群IIIの患者番号302におけるサイトカインの産生動態を示す。IL−10及びIFN−γのベースライン濃度(スクリーン及び1日目の平均として得た)は、それぞれ5.8pg/mL及び4.0pg/mLで、最初のIL−10/IFN−γ比の1.45を得た。IFN−τによる治療中、平均血中IL−10濃度(4、8、15日目の平均IL−10濃度)は7.7pg/mLで、これはベースラインのIL−10濃度(スクリーン及び1日目の平均血中IL−10濃度)と統計的に差異はなかった。IFN−γ濃度は、実質的に治療期間にわたり変わらなかった。この患者のIL−10/IFN−γ比は、本質的に変わらなかった。
【0055】
図3Dは、治療群IIIの患者番号303におけるサイトカインの産生動態を示す。IL−10及びIFN−γのベースライン濃度(スクリーン及び1日目の平均として得た)は、それぞれ4.4pg/mL及び3.6pg/mLで、最初のIL−10/IFN−γ比の1.2を得た。IFN−τによる治療中、血中IFN−γ濃度の減少により、IL−10/IFN−γ比は8日目に約11まで増加したが、29日目にはベースライン比に戻った。
【0056】
図3Eは、治療群IIIの患者番号305におけるサイトカインの産生動態を示す。IL−10及びIFN−γのベースライン濃度(スクリーン及び1日目の平均として得た)は、それぞれ4.3pg/mL及び34.8pg/mLで、最初のIL−10/IFN−γ比の0.1を得た。IFN−τによる治療中、血中IL−10濃度は本質的に一定であったが;血中IFN−γ濃度がわずかに減少したため、IL−10/IFN−γ比は、8日目に0.14まで約14%増加した。
【0057】
したがって、自己免疫状態を患う対象のIL−10/IFN−γ比を増加させる方法であって、インターフェロン−タウを投与しない対象の血中IL−10濃度に比べて、対象の血中IL−10濃度の測定可能な増加をもたらすために十分な量でIFNτを対象に投与することを含み、(i)IFNτを投与しないIFNγ濃度と比べて、対象の血中IFNγ濃度に実質的な変化がない、又は(ii)IFNτを投与しないIFNγ濃度と比べて、対象の血中IFNγ濃度が減少する方法を提供する。IL−10/IFN−γ比は、少なくとも約10%、好ましくは約25%、より好ましくは約40%、さらにより好ましくは少なくとも約50%増加する。一実施形態では、IFNτは、ヒツジ又はウシIFNτである。他の実施形態では、IFNγを、約5×108抗ウイルス単位(U)を超える用量、より好ましくは0.5×109U以上、さらにより好ましくは1×109U以上の用量で投与する。
【0058】
実施例1Bに記載の別の試験では、活動状態の疾患を有するMS患者22例を、IFNτ治療に組み入れた。MS患者は、以前に再発寛解型(relapsing−remitting)MSの臨床診断を受けていた。疾患が活動状態であったか確認するために、MRI脳スキャンを、3カ月の期間、毎月撮影した。MRIスキャンのうちの1つにおいて示された少なくとも1つのガドリニウム増強病変を有する患者を、本試験の登録のために選択した。IFNτ治療の前に、血液試料を採取して、治療前のベースライン血清中サイトカイン濃度を評価した。患者を、1日3回、経口IFNτ3mgにより6カ月間治療した。
【0059】
表2Aは、最初に登録された患者22例うちの6カ月の時点で試験に残った15例の新しいガドリニウム増強病変の数を要約する。
【表4】
*患者006は、治療3カ月前(−3カ月)に実施した最初のMRIスクリーンで、1つの造影増強病変が認められたので、登録資格を有した。
**na=MRIスキャンが行われず、データが入手できない。
【0060】
データの統計解析を、表2Bに示す。
【表5】
【0061】
患者22例のスクリーニング期間中(治療の3、2及び1カ月前)の新しいガドリニウム増強病変の平均数は、2.59であった。経口投与によるIFNτ治療の3カ月後、新しいガドリニウム増強病変の平均数は1.01まで減少し、治療前のスクリーニング期間中に観察された新しい病変の数から63.4%減少した。治療の6カ月後、新しいガドリニウム増強病変の平均数は1.30まで減少し、治療前のスクリーニング期間中に観察された新しい病変の数から62.4%減少した。
【0062】
MRIの病変データは、患者18例(すなわち、治療した患者集団の約82%)が、インターフェロン−タウで治療すると、新しい病変の数に30%を超える変化(減少)があったことを示している。14例(すなわち、治療した患者集団の約63%)は、インターフェロン−タウで治療すると、新しい病変の数に50%を超える変化(減少)があった。したがって、インターフェロン−タウの経口投与は、治療した患者集団の大多数で新しい病変の数の30%を超える減少を達成した。一実施形態では、治療した患者の少なくとも60%は、少なくとも約30%、好ましくは50%の新しい脳病変の数の減少を達成する。他の実施形態では、治療した患者の少なくとも75%は、少なくとも約30%の新しい脳病変の数の減少、好ましくは少なくとも約50%の減少を達成する。
【0063】
また、血清中サイトカイン濃度を評価し、IL−10及びIFN−γの結果を表2C〜2Dに示す。
【表6】
**na=データが入手できず。
【表7】
**na=データが入手できず。
【0064】
3カ月の治療後、本試験に登録した患者16例の平均血清中IL−10濃度は6.72pg/mLで、これは血清中IL−10の31.5%の増加に相当した(パーセント変化は、全患者に対して平均した各患者のベースラインでのスクリーニングのIL−10濃度からの変化である)。6カ月の治療後、本試験に登録した患者15例の平均IL−10濃度は6.15pg/mLで、これは血清中IL−10の53.6%の増加に相当した(パーセント変化は、全患者に対して平均した各患者のベースラインでのスクリーニングのIL−10濃度からの変化である)。
【0065】
3カ月の治療後、本試験に登録した患者16例の平均血清中IFN−γ濃度は3.9pg/mLで、これは血清中IFN−γの2.5%の増加に相当した(パーセント変化は、全患者に対して平均した各患者のベースラインでのスクリーニングのIFN−γ濃度からの変化である)。6カ月の治療後、本試験に登録した患者15例の平均IFN−γ濃度は4.5pg/mLで、これは血清中IFN−γの9.1%の増加に相当した(パーセント変化は、全患者に対して平均した各患者のベースラインでのスクリーニングのIFN−γ濃度からの変化である)。
【0066】
治療前のスクリーニング期間の平均IL−10/IFN−γ比は、1.65であった。3カ月の治療後、比は1.98まで、71.4%増加した。インターフェロン−タウによる6カ月の治療後、比は1.7まで、194%増加した。
【0067】
したがって、一実施形態では、多発性硬化症患者の脳MRIで検出可能な新しいガドリニウム増強病変の数を減少させるための薬物の製造用組成物を提供する。本薬物は、経口投与用に調製されたインターフェロン−タウを含み、本薬物による治療のない期間中に観察された新しいガドリニウム増強病変の数と比べて、約1カ月、好ましくは約2カ月、及びさらにより好ましくは少なくとも約3カ月の期間の本薬物による治療後に、新しいガドリニウム増強病変の出現において、少なくとも約10%、より好ましくは少なくとも約20%、及びさらに好ましくは少なくとも約30%の減少をもたらす。治療のない期間はインターフェロン−タウ治療の1、2又は3カ月前からの期間に相当し得て、新しい病変の数を1回又は複数回測定した。また、治療期間は、治療後の期間が、持続した1、2又は3カ月であるインターフェロン−タウによる治療後の期間に相当し得て、新しい病変の数を1回又は複数回測定した。
【0068】
他の実施形態では、多発性硬化症のインターフェロン−タウ治療に反応する患者を選択するための方法を提供する。この方法は、選択した用量でインターフェロン−タウを多発性硬化症患者に経口投与することを含み、本明細書に記載のいずれの用量も適するが、少なくとも1×105U/日の用量が好ましい。本用量を、少なくとも約1カ月の期間投与し、次いで1種又は複数のサイトカインの血中濃度を測定する。血清中濃度に検出可能な変化を示す患者を、血清中サイトカイン濃度の変化及びMRIにより測定した脳のガドリニウム増強病変の数の減少との確立された相関(上記に記載)に基づき反応する患者と確認する。血清中サイトカイン濃度の変化が選択されたサイトカインにより増加又は減少し得ることが理解されよう。もちろん、変化の範囲は、上記のデータで例証したように、インターフェロン−タウ治療の用量及び長さにより決まる。
【0069】
2.C型肝炎を患うヒトへの投与
別の試験では、C型肝炎に感染したヒト患者を組み入れた。患者を、経口IFNτ(配列番号4)治療のために、4つの試験群に割り付けた。実施例2に記載のように、試験群の各対象は、IFNτ1mg/mL溶液の管理された量を1日3回自己投与した。試験群I、II及びIIIの患者に、それぞれIFNτ1mg、IFNτ3mg、IFNτ9mg及びIFNτ15mgの総1日量を投与した(IFNτ1mgは、約1×108抗ウイルス単位である)。治療期間は、84日間継続し、患者は、IL−10及びIFN−γの濃度分析の血液試料を提供するために、規定の間隔で試験診療所に戻った。監視は、IFNτによる治療終了の85日後である169日間継続した。
【0070】
図4A〜4Cは、各試験群I、II及びIIIの患者6例における血清中IL−10濃度(pg/mL)を示すグラフである。図4Aは、総1日量1mg(1×108U)で、1日3回IFNτ0.33mgで毎日治療した試験群Iの患者6例のIL−10濃度を示す。全患者のデータは、IL−10濃度が増加する傾向を示す。
【0071】
図4Bは、84日目まで、それぞれ1日3回IFNτ1.0mg(3×108U/日)で毎日治療した試験群IIの患者6例のデータを示す。全患者のデータは、治療期間にわたり(1〜84日目)、統計的に有意ではないが、より明確にIL−10濃度が増加する傾向を示す。IFNτの投与中断直後より、血中IL−10濃度は、85〜169日目の継続した監視期間にわたり、ベースライン濃度に緩徐に近づいた。
【0072】
図4Cは、1〜84日目まで、1日3回IFNτ3mg(9×108U/日)で毎日治療した試験群IIIの患者6例の血清中IL−10濃度を示す。全患者は、IFNτ投与に反応して血清中IL−10濃度が統計学的に増加した。IFNτの投与の終了直後より、血中IL−10濃度は、ほぼ3カ月間、上昇したまま維持した。
【0073】
図4Dは、図4A〜4Cにおける試験群I、II及びIIIの血清中IL−10濃度の要約図である。図4Dは、試験群I(ダイヤモンド、1日3回0.33mg)、群II(正方形、1日3回1mg)及び群III(三角形、1日3回3mg)に関する時間に応じた血清中IL−10濃度の増加パーセントを示す。用量に応じた血清中IL−10濃度の増加パーセントが図から明らかであり、最高用量の9mg(3mgを1日3回;9×108U/日)が、治療の最初の15日以内に100%を超えるIL−10の上方制御を誘発している。3mgの1日量(試験群II、正方形)は、IL−10の産生を刺激して、試験15日目までに約150%の増加を引き起こした。3mgの1日量は、84日の試験期間に150%の増加を維持するために十分であった。
【0074】
また、図4Dは、IFNτの投与を中断した85〜169日目の期間中、ベースラインの治療前濃度と比べたIL−10濃度の継続した上昇を例証する。試験群III(毎日IFN−τ9mg)では、IL−10濃度は、169日目までにベースライン濃度に戻らなかった。したがって、インターフェロン−タウを投与しない対象の血中IL−10濃度に比べて、対象の血中IL−10濃度の最初の測定可能な増加をもたらすために十分な量でIFNτを対象に投与すること、IFNτを投与しない対象の血中IL−10濃度に比べて、対象の血中IL−10濃度が増加を維持している選択された期間、IFNτの投与を中断すること、及び、必要に応じて(例えば、症状が悪化した時)、IFNτの投与を再開することにより、自己免疫状態(特に、多発性硬化症、乾癬、関節リウマチ及びアレルギー)を治療する方法を企図する。血中IL−10濃度の増加をもたらすために十分なIFNτ量は、約1×108U/日超、より好ましくは5×108U/日以上、さらにより好ましくは1×109U/日以上である。IFNτの投与が中断される期間は、疾患の状態により変動し得るが、その疾患状態を患う患者のIL−10濃度をIFNτによる治療中及びIFNτ治療の終了後に監視する試験から、容易に判定することができる。そのような試験の結果を、一般に、他の患者に適用し、推奨される投与パターンを提供することができる。或いは、IFNτの投与が中断される期間は、個々の患者に対して、治療をいつ再開するか判定するために、治療をしない期間中、定期的に(例えば、毎週又は週2回)血中IL−10濃度を実際に監視するか、又は患者の症状認知の自覚的徴候により追跡することができる。治療は、その特定の患者若しくはモデル患者集団におけるIL−10濃度が治療前の濃度に近づいている時、又は治療している特定の患者において症状が悪化した時に再開する。
【0075】
図5A〜5Cは、本試験におけるC型肝炎患者の血清中IFN−γ濃度(pg/mL)を示すグラフである。図5Aは、1日3回IFNτ0.33mgで毎日治療した試験群Iの患者6例のIFN−γ濃度を示す。ベースライン濃度でIFN−γ濃度を維持し、わずかにIFN−γ濃度が減少へと向かう全体的な傾向が明白である。
【0076】
図5Bは、1日3回IFNτ1.0mgで毎日治療した試験群IIの患者6例の血清中IFN−γ濃度を示す。約3〜15日目の治療の初期段階におけるIFN−γ濃度の減少は、明白である。次いで濃度はベースラインに戻り、残りの試験期間にはおよそ投与前の濃度を維持した。
【0077】
図5Cは、1日3回IFNτ3mgで毎日治療した試験群IIIIの患者6例の血清中IFN−γ濃度を示す。一部の患者がIFN−γ濃度の明確な減少を経験した間、総体的に、治療群は治療期間にわたり濃度の変化がほとんど見られないようであった。投与の中断直後のIFN−γ濃度の増加は、85〜169日目に見られる。このことは、ある程度までの濃度の減少が、IFNτの投与により達成されたことを示唆している。
【0078】
図5Dは、時間に応じた試験群I(ダイヤモンド、1日3回0.33mg)、群II(丸、1日3回1mg)及び群III(三角形、1日3回3mg)に関する時間に応じた平均血清中IFN−γ濃度を示す、図5A〜5Cにおける試験群I、II及びIIIの要約図である。IFNτの投与は、(1)IFN−γ濃度の著明な変化を起こさず、濃度が本質的にスクリーン時の投与前の濃度のままであるか、又は(2)ベースラインの投与前の濃度からのIFN−γ濃度の減少を引き起こすかのいずれであることは明らかである。
【0079】
したがって、別の態様では、IFNτを投与しない対象の血中IFN−γ濃度に比べて、対象の血中IFN−γ濃度を減少させるために有効な量でIFNτを対象に投与することにより対象の血中IFN−γ濃度を減少させる方法を提供する。この方法は、特にIFN−γ濃度の上昇を引き起こす薬剤を服用している患者、又はIFN−γ濃度が上昇する状態を患う患者における使用を見出す。したがって、IFNτを投与しない患者の血中IFN−γ濃度に比べて、対象の血中IFN−γ濃度を減少させるために有効な量でIFNτを対象に投与することにより、(i)治療薬の投与又は(ii)疾患状態による血中IFN−γ濃度の上昇リスクにある対象の血中IFN−γ濃度の増加を予防する方法も企図する。前述のように、IFNβによる多発性硬化症の治療は、患者のIFNγ濃度の増加を引き起こす。IFNτの同時投与(同時又は連続投与)は、治療前のIFNγ濃度を維持することを補助する。一般的に、対象の血中IFN−γ濃度におけるそのような減少を生じさせるために十分なIFNτの量は、約1×108U/日超、好ましくは約5×108U/日超、より好ましくは少なくとも約9×108U/日、より好ましくは0.5×108U/日以上、さらにより好ましくは1×109U/日以上である。
【0080】
図6A〜6Fは、図4〜5に関して述べた治療群I、II及びIIIから選択された個々のC型肝炎患者のIL−10(ダイヤモンド)及びIFN−γ(正方形)の血清中濃度(両方ともpg/mL)を示す。
【0081】
図6Aは、IFNτ1mgの1日量で、1日3回IFNτ0.33mgにより治療した試験群Iの患者番号101のIL−10(ダイヤモンド)及びIFN−γ(正方形)の血清中濃度を示す。IL−10及びIFN−γのベースライン濃度は、それぞれ平均5.2pg/mL及び3.9pg/mL(スクリーン及び1日目の平均値)で、最初のIL−10/IFN−γ比の1.3を得た。IFNτによる治療中、IL−10/IFN−γ比は、22日目に1.6まで増加し、その後、84日目の投与中断までベースライン比に戻った。
【0082】
図6Bは、IFNτ3mgの1日量で、1日3回IFNτ1.0mgにより治療した試験群IIの患者番号205のIL−10(ダイヤモンド)及びIFN−γ(正方形)の血清中濃度を示す。IL−10及びIFN−γのベースライン濃度は、それぞれ平均3.8pg/mL及び5.2pg/mL(スクリーン及び1日目の平均値)で、最初のIL−10/IFN−γ比の0.73を得た。IFNτによる治療中、IL−10/IFN−γ比は、1に近づき、15日目に1に達した。したがって、IFNτによる治療は、比を約25%増加させることにより、IL−10/IFN−γ比を調節した。
【0083】
図6Cは、IFNτ9mg(9×108U)の1日量で、1日3回IFNτ3.0mgにより治療した試験群IIIの患者番号301のIL−10(ダイヤモンド)及びIFN−γ(正方形)の血清中濃度を示す。IL−10及びIFN−γのベースライン濃度は、それぞれ平均4.4pg/mL及び3.9pg/mL(スクリーン及び1日目の平均値)で、最初のIL−10/IFN−γ比の約1.0を得た。IFNτによる治療中、IL−10濃度が、かなりの増加である4〜5倍増加したが、IFN−γ濃度は、4〜5pg/mLのおよそ最初の濃度で維持した。したがって、IL−10/IFN−γ比は、IFNτの投与直後より約1.0からおよそ4.0まで増加した(4倍の増加)。
【0084】
図6D〜6Fは、IFNτ9mgの1日量で、1日3回IFNτ3.0mgにより治療した試験群IIIの患者番号303、304及び305のIL−10(ダイヤモンド)及びIFN−γ(正方形)の血清中濃度を示す。IL−10/IFN−γ比の分析は、図6Cに記載の患者番号301のものと類似している。具体的には、図6Dは、患者番号303のデータを示す。この患者では、血中IL−10濃度は、試験43日目までにベースライン濃度から約4倍増加し、試験71日目までに6倍を超えて増加した。血中IFN−γ濃度は、実質的に一定のままであった。したがって、血中IL−10/IFN−γ比は、0.6のベースライン値から3超まで増加した(5倍増加、500%増加)。
【0085】
図6Eは、群IIIの患者番号304のデータを示す。患者の血中IL−10濃度は、IFNτによる治療中、4〜5倍増加したが、IFNγ濃度は本質的に変わらなかった。したがって、IL−10/IFNγ比は、0.6の最初の値から71日目の2.6まで増加した(400%を超えた増加)。
【0086】
図6Fは、群IIIの患者番号305のデータを示す。治療期間中の血中IL−10濃度の増加は明白であり、43日目までに0.7pg/mLから9pg/mLを超えて増加した。IFNγ濃度が本質的に変わらなかったため、IL−10/IFNγ比は10倍を超えて増加した。
【0087】
要約すると、群IIIの患者に関して示したデータは、IFNτの投与がIL−10/IFN−γ比を増加させるために有効だったことを示す。特に、血中IL−10濃度は、血中IL−10濃度の統計学的な増加により証明されたように、IFNτの経口投与により測定可能なまで増加した。血中IL−10濃度は、25%を超えて増加し、この患者集団では、血中IL−10濃度の増加が相当大きかった。
【0088】
別の試験では、C型肝炎を患う患者5例を、IFNτ治療のために組み入れた。実施例3に記載した本試験では、IFNτ15mgの1日量(1.5×109抗ウイルス単位)で、患者を1日2回IFNτ7.5mgにより治療した。最初の用量を、朝食前の朝に投与し、第2の用量を夕食の少なくとも3時間後に投与した。血液試料を、113日の試験期間にわたり規定の間隔で採取し、IFNτの投与は、試験84日目に終了した。この試料を、市販の方法を使用して、血清中のIL−10、IL−12及びIFN−γ濃度について分析した。
【0089】
図7A〜7Bは、時間(日)に応じた、患者5例における血清中IL−10濃度(図7A)及び血清中IFN−γ濃度(図7B)(pg/mL)を示すグラフである。図7Aで見られるように、患者3例(三角形、ダイヤモンド及びxにより示された患者)は、1日目〜84日目のIFNτ投与期間にわたりIL−10濃度が増加したことを示す。図7Bは、1日目〜84日目のIFNτ投与期間にわたり、全患者5例が、血中IFNγ濃度が減少したことを示す。投与終了後、85日目〜113日目の期間中に見られるように、IFN−γ濃度は増加している。
【0090】
また、本試験の患者から採血した血液試料を、IL−12濃度について分析した。IL−12は、炎症誘発性サイトカインであり、多発性硬化症の病因の一因となる。文献は、(1)IL−12産生の増加が、多発性硬化症の病因における重要なメカニズムであり(Filsonら、Clin.Immunol.,106(2):127(2003));(2)MS患者が、一般的にIL−10濃度の減少及びIL−12濃度の増加を示し、これらサイトカイン濃度が、病期に相関すること(van Boxel−Dezaireら、Ann.Neural.,45:695(1999))を報告している。ウイルス感染に関して、高いIL−12濃度も、百日咳菌(B.pertussis)の細菌定着を増悪することが示されている(Carterら、Clin.Exp.Immunol.,135(2):233(2004)。したがって、本試験に登録したHCV患者のIL−12濃度を監視することは望ましかった。
【0091】
図8A〜8Dは、本試験(実施例3)の患者6例におけるIL−10(ダイヤモンド)、IFN−γ(正方形)及びIL−12(三角形)の血清中濃度(pg/mL)を示す。実際のIL−12濃度は、図8A〜8Dに示す値の10倍である(実際の値を、1つのグラフ上で全データを示すために10で割った)。
【0092】
図8Aは、患者番号401のデータを示す。見られるように、IL−10濃度は、IFNτを投与した治療期間にわたり増加し、IFN−γは変化なしか、又はわずかに減少し、IL−12は最初に上下し、次いで、約29日目以降は下方制御された。0.08のIL−10/IL−12比に関して、最初のIL−10濃度は53.1pg/mLで、最初のベースラインのIL−12は696pg/mLであった。治療期間中、この比は、約0.12〜0.18に増加した(570〜1,200%増加)。この患者のIL−10濃度は、53.1pg/mLのベースライン値から140pg/mLを超えて増加した(160%超の増加、2.6倍)。
【0093】
図8Bは、患者番号402のデータを示し、図8Cは、患者番号403のデータを示す。患者番号402は、最初のベースラインの血中IL−10濃度が42.7pg/mLであった(スクリーン及び1日目の平均血中濃度)。血中IL−10濃度は、43日目にピークに達し、この時、濃度は67pg/mLに達した(56%の増加)。血中IFNγ濃度は、ベースライン濃度周辺で上下した。最初のIL−10/IL−12比の0.046における治療前の血中IL−12濃度は、934pg/mLであった。43日目に、IL−10/IL−12比は0.088であった(ベースライン比からの90%の増加)。
【0094】
図8Cでは、患者の最初のIL−10/IL−12比は0.10であった(IL−10=118.5pg/mL;IL−12=1,227pg/mL)。この比は治療期間にわたり増加し、43日目の比の値は0.22であった(IL−10/IL−12比で2.2倍の増加)。患者の血中IL−10濃度は、ベースライン濃度より63%高い値で、43日目にピークに達した。
【0095】
図8Dは、患者番号404のデータを示す。この患者は、最初の血中IL−10濃度が69.6pg/mL、最初の血中IL−12濃度が1,552pg/mLであり、これに対する最初のIL−10/IL−12比は0.045であった。1.5×109U/日の投与量でのIFNτによる治療中、血中IL−10濃度は、43日目に113pg/mLまで上昇した(約60%の増加)。43日目のIL−12は900pg/mLに減少し、43日目のIL−10/IL−12比が0.12になった。
【0096】
本試験の患者番号405は、最初の血中IL−10濃度が34.9pg/mL、最初の血中IL−12濃度が976pg/mLであった(IL−10/IL−12比0.036;データ示さず)。1.5×109U/日の投与量でのIFNτ投与は、IL−10/IL−12比を治療期間の71日目の0.058に増加させるために有効であった(60%の増加)。血中IL−10濃度は、最初の治療前の濃度から71日目の濃度へ20%増加した。
【0097】
したがって、インターフェロン−タウを投与しない対象の血中IL−10濃度に比べて、対象の血中IL−10濃度の最初の測定可能な増加をもたらし、インターフェロン−タウを投与しないIL−12濃度に比べて、対象の血中IL−12濃度の減少をもたらすために有効な量でインターフェロン−タウを対象に投与することにより、自己免疫障害を患う患者における血中IL−10/IL−12比を増加させる方法を提供する。また、インターフェロン−タウを投与しない患者の血中IL−10濃度に比べて、対象の血中IL−10濃度の最初の測定可能な増加をもたらし、インターフェロン−タウを投与しないIL−12濃度に比べて、対象の血中IL−12濃度の減少をもたらすために有効な量でインターフェロン−タウを対象に投与することにより、対象の自己免疫状態の進行を抑制する方法を企図する。特に、約5×108Uを超えるIFNτにより治療した対象は、25%を超えて、及び多くの場合50%を超えて、血中IL−10濃度が増加した。同じ患者において、血中IFNγ濃度は本質的に変化しないか、又は減少し、IL−12濃度は一般に減少した。
【0098】
要約すると、治療を必要とする患者に対するIFNτの経口投与は、最初のIFNτの用量が、その特定の患者における血中IL−10濃度の増加、及び/又はIFN−γ濃度の減少若しくは実質的な無変化、及び/又はIL−12濃度の減少を達成するために選択された場合に、血清中サイトカイン濃度を調節するために有益である。IFNτは、口腔よりむしろ、患者の腸管を標的とする形状で好ましくは投与する。投与量の選択は、例えば、血中IL−10濃度を(例えば、治療前及び治療開始後に)監視することにより行うか、又は確認することができる。或いは、有効量を、異なる疾患状態下での所与の投与量に対するモデル患者の反応から事前に決定してもよい。例えば、年齢/疾患プロフィールを有する患者の適した用量を事前に決定するために、所与の年齢範囲内で、特定の状態(例えば、ウイルス感染又は自己免疫状態)を呈する患者を、異なる最初のIFNτ濃度に反応した血中IL−10の変化を監視してもよく、そのような投与ガイドラインを治療する医師に提供することができる。IFNτの治療キットを企図し、このキットは、腸管へのタンパク質を標的にするために適した経口送達形態(例えば、IFN−タウの腸溶性形態)のIFNτ、及び異なる患者の状態下での有効量に関するガイドラインを提供する製品説明書(product literature)又は添付文書;(すなわち、血中IL−10濃度の測定可能な増加を生じさせるために有効な用量)を含む。好ましくは、添付文書は用量の範囲及びIL−10反応における予測される最初の変化を提供する。
【0099】
最初の投与後、又は血中IL−10濃度の測定可能な増加をもたらす用量(有効量)に達した時、有効量のIFNτの投与を、延長された治療期間に、好ましくは毎日又は週に数回の割合で継続する。延長して投与される有効量は、継続する有効量が最初の有効量と同一又は異なるかにかかわらず、延長された治療期間にわたる実際の血中IL−10濃度の動きとは無関係に、血中IL−10の最初の測定可能な増加をもたらすために有効な用量である。したがって、治療期間中、血中IL−10濃度は、患者が血中IL−10濃度の最初の測定可能な増加をもたらすために有効なIFNτの用量を継続して服用するとしても、上昇した濃度で一定のままか、継続して増加するか、又は減少することすらあり得る(例えば、感染したウイルスのレベルの減少に反応して)。この有効量は、一般的に、少なくとも約1×108単位/日から約1012単位/日までの範囲である。用量は、血中IL−10の所望の最初の増加(例えば、正常の未治療の濃度の1.5から4倍の間)を達成するために調整することができる。
【0100】
一部の患者及び一部の状態では、他の治療薬と組み合わせたIFNτの投与が企図されることが理解されよう。例えば、他の認められた肝炎の抗ウイルス薬とIFNτとの組合せは、一部の患者で有益であり得る。同様に、自己免疫状態を治療するために用いられる薬剤とIFNτとの組合せは、この状態を治療する際に有益である。細胞増殖を患う患者での化学療法剤とIFNτとの組合せも、企図される。より一般的に、あらゆる公知の医薬品とIFNτとの組合せが企図され、典型的な薬剤を以下に示す。第2の薬剤とIFNτとの「組合せ」が、2つの薬剤の連続又は同時の投与を意図し、この場合、連続投与が即時又は非即時であり得ることが理解されよう。
【0101】
III.使用の方法
第1の態様では、ヒト対象におけるインターフェロン治療に反応する疾患又は状態を治療する方法を提供する。「インターフェロン治療に反応する」状態は、その状態の存在、進行又は症状が、インターフェロン、特にI型インターフェロン及びより具体的にはインターフェロン−タウの投与に続いて変化する状態である。また、IFNα又はIFNβによる治療に反応する状態も、IFNτによる治療に反応する。より好ましくは、インターフェロン治療に反応する状態は、その状態の存在、進行又は症状が、非経口経路(例えば、注射)で投与したIFNτにより軽減される状態である。本明細書に記載の方法は、同様な状態にある患者又は治療されている特定の個々の患者に関する試験から決定された血中IL−10濃度の増加により証明された、治療に有効な量で、好ましくは胃及び/又は腸への投与用の経口投与可能な剤形でIFNτを提供することを含む。血中IL−10濃度を増加させるために十分なIFNτの用量も、IFN−γ濃度の減少又は無変化と共に、血中IL−12濃度の減少を引き起こすために有効であり得る。
【0102】
IFNτは、抗ウイルス薬、抗増殖薬として、及び自己免疫障害の治療において生物活性を有する(米国特許第5958402号;第5942223号;第6060450号;第6372206号を参照のこと、これらを本願明細書に援用する)。したがって、注射を通して投与した時、IFNτに反応するあらゆる状態の治療におけるIFNτの経口投与が企図される。本明細書に記載の方法により治療し得る状態及び疾患は、自己免疫、炎症性、ウイルス性感染症、増殖性及び過剰増殖性疾患、並びに免疫媒介性疾患を含む。
【0103】
A.免疫系障害の治療
本明細書に詳述された方法は、免疫系過敏症に関する状態を治療するために有益である。4つのタイプの免疫系過敏症が存在する(Clayman,C.B.編、「米国医師会医学事典(AMERICAN MEDICAL ASSOCIATION ENCYCLOPEDIA OF MEDICINE)」Random House,New York,N.Y.,(1991))。タイプI、つまり即時型/アナフィラキシー性過敏症は、アレルゲン(例えば、花粉)に応答する肥満細胞の脱顆粒に起因し、喘息、アレルギー性鼻炎(枯草熱)、じんま疹(urticaria)(じんま疹(hives))、アナフィラキシーショック、及びアレルギー性の他の疾患を含む。タイプII、つまり自己免疫過敏症は、身体自体の細胞上の認識された「抗原」に対する抗体に起因する。タイプIII過敏症は、種々の組織中に存在し、さらなる免疫応答を活性化させる抗原/抗体免疫複合体の形成に起因し、血清病、アレルギー性肺胞炎、及び時にブースターワクチン接種後に形成される大腫脹などの症状の原因となる。タイプIV過敏症は、感作されたT細胞からのリンホカインの放出に起因し、これは炎症性反応を生じる。例は、接触皮膚炎、麻疹の発疹、及び特定の薬物に対する「アレルギー性」反応を含む。
【0104】
それによって特定の状態がある個体において過敏症を生じ得る機構は、一般に十分には理解されていないが、遺伝的要因及び外因性要因の両方が関与し得る。例えば、細菌、ウイルス又は薬物が、自己免疫障害に対する遺伝的素因を既に有する個体における自己免疫反応を引き起こす役割を果たし得る。あるタイプの過敏症の発生数が、他と相関され得ることが示唆されている。例えば、特定の一般的なアレルギーを有する個体は、より自己免疫障害になりやすいと提唱されている。
【0105】
自己免疫障害は、主に特定の器官又は組織に限定される障害と、全身を冒す障害とにおおまかにグループ分けすることができる。器官特異的(冒された器官に)障害の例は、多発性硬化症(神経突起上のミエリン被覆)、I型糖尿病(膵臓)、橋本甲状腺炎(甲状腺)、悪性貧血(胃)、アディソン病(副腎)、重症筋無力症(神経筋接合部におけるアセチルコリン受容体)、関節リウマチ(関節内層)、ブドウ膜炎(眼)、乾癬(皮膚)、ギヤン−バレー症候群(神経細胞)及びグレーブス病(甲状腺)を含む。全身性自己免疫疾患は、全身性エリテマトーデス及び皮膚筋炎を含む。他の自己免疫障害は、白血球がモイスチャー産生腺(moisture−producing gland)を攻撃するシェーグレン症候群である。シェーグレン症候群の特徴症状は、ドライアイ及び口渇であるが、多くの器官に影響を及ぼす全身性疾患である。
【0106】
過敏症障害の他の例は、喘息、湿疹、アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎、他の湿疹性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、鼻炎、扁平苔癬、天疱瘡(Pemplugus)、水疱性類天疱瘡、表皮水疱症、じんま疹、血管性浮腫、脈管炎(vasculitides)、紅班、皮膚性好酸球増加、円形脱毛症、アテローム性動脈硬化、原発性胆汁性肝硬変及びネフローゼ症候群を含む。関連疾患は、小児脂肪便症、直腸炎、好酸球性胃腸炎、肥満細胞症、炎症性腸疾患、クローン病(Chrohn’s disease)及び潰瘍性大腸炎などの腸炎症、並びに食物関連アレルギーを含む。強直性脊椎炎は、脊椎の関節及び骨の一部又は全てが融合する自己免疫、炎症性疾患の他の例である。
【0107】
本明細書に記載された方法を用いる治療を特に受け入れられる自己免疫疾患は、多発性硬化症、I型(インスリン依存性)糖尿病、エリテマトーデス、筋萎縮性側索硬化症、クローン病、関節リウマチ、口内炎、喘息、ブドウ膜炎、アレルギー、乾癬、強直性脊椎炎、重症筋無力症、グレーブス病、橋本甲状腺炎、シェーグレン症候群及び炎症性大腸疾患を含む。
【0108】
本方法を使用して、上記の障害などの自己免疫障害を治療的に治療し、それによって軽減する。自己免疫障害の治療は、本明細書中に、多発性硬化症の動物モデルであるEAEの処置に関して例示される。自己免疫障害を治療するために使用するとき、IFNτを、IFNτの投与の初期段階中にIL−10の測定可能な増加を達成するために十分な用量で投与する。一旦、所望の有効量が獲得されると、その後のさらなる血中IL−10濃度の変化と無関係に、IFNτの有効量で延長された期間にわたり患者を治療する。治療期間は、少なくとも患者が症候性である期間にわたる。自己免疫状態に関連した症状の停止に続いて、用量を下方へ調整するか、又は治療を中断してもよい。IFNτ治療の治療期間中に、患者を、公知の抗炎症薬又は免疫抑制薬などの別の薬剤と併用して治療することができる。
【0109】
また、対象のIL−10濃度を上昇させる用量でIFNτを投与することにより、自己免疫状態の進行を防止する方法を企図する。また、血清中IL−10濃度を、好ましくはIFN−γ濃度の無変化又は減少を伴って、増加させるために有効な用量でIFNτを投与することにより自己免疫状態の発症を抑制する方法を企図する。また、血清中IL−10/IL−12比を増加させるために有効な用量でIFNτを投与することにより自己免疫状態を治療する方法を企図する。
【0110】
B.ウイルス感染症の治療
本方法は、ウイルス感染症に関連した状態を治療するためにも使用される。IFNτの抗ウイルス活性は、通常IFNαに関連する毒性なしに、広範な治療的適用を有し、さらにIFNτは細胞に対する有害作用なしに、その治療活性を発揮する。IFNτの細胞毒性が比較的ないことが、IFNτをin vivoでの治療薬として極めて貴重なものにしており、IFNτを大部分の他の公知の抗ウイルス薬及び全ての他の公知のインターフェロンとは異質にしている。
【0111】
IFNτを含む製剤を、ウイルス複製を阻害するために経口投与することができる。ウイルス感染症を治療するために、このタンパク質を、患者の血中IL−10の測定可能な増加を達成するために十分な用量で投与する。その後に、さらなる血中IL−10濃度の変化(例えば、ウイルス量の減少による血中IL−10濃度の減少)と無関係に、治療を有効量で継続する。IFNτの投与を、例えば、血中ウイルス価から、又はウイルス感染症と関連した症状の臨床観察から測定したウイルス感染症のレベルが寛解するまで継続する。
【0112】
ウイルス感染症は、RNAウイルス又はDNAウイルスに起因し得る。経口投与したIFNτにより治療できる特定のウイルス疾患の例は、エプスタイン−バーウイルス感染症、HIV感染症、ヘルペスウイルス(EB、CML、単純ヘルペス)、乳頭腫、ポックスウイルス、ピコルナウイルス、アデノウイルス、ライノウイルス、HTLV I、HTLV II及びヒト・ロタウイルスを含む。一実施形態では、ウイルス感染症は、肝炎ウイルス感染症以外であって、さらにより好ましくはC型肝炎ウイルス感染症ではない。IFNτ治療の治療期間中に、患者を、第2の抗ウイルス薬と併用して治療することができ、典型的薬剤を以下に挙げる。
【0113】
C.細胞増殖状態を治療するための方法
他の実施形態では、過剰増殖により特徴付けられる状態を治療するための方法を企図する。IFNτは、強力な抗細胞増殖活性を示す。したがって、経口投与したIFNτにより細胞増殖を抑制する方法を、無制御の細胞増殖を抑制、予防又は減速するために企図する。
【0114】
経口投与したIFNτにより治療することができるヒトにおける細胞増殖性障害の例は、肺大細胞癌、結腸腺癌、皮膚癌(基底細胞癌及び悪性黒色腫)、腎腺癌、前骨髄球性白血病、T細胞リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、乳腺癌、ステロイド感受性腫瘍、ヘアリー細胞白血病、カポジ肉腫、慢性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、表在性膀胱癌、卵巣癌及び神経膠腫を含むが、これらに限定されるものではない。
【0115】
細胞増殖状態の治療に用いるために、IFNτを、患者の血中IL−10濃度の最初の測定可能な増加を達成するために十分な用量で投与する。その後に、血中IL−10濃度のさらなる変化(例えば、身体の癌細胞の減少による血中IL−10濃度の減少)と無関係に、治療を有効量で継続する。有効量でのIFNτの投与を、例えば、腫瘍の大きさ又は特定の組織における癌細胞の広がりにより測定した所望の退縮レベルが観察されるまで継続する。
【0116】
IFNτ治療の治療期間中に、患者を、第2の抗癌剤(例えば、シスプラチン、ドキソルビシン又はタキソール、及び以下に挙げた他の薬剤)と併用して治療することができる。
【0117】
D.製剤及び投与量
IFNτを含む経口製剤を、医薬組成物を調製するために公知の方法に従って調製することができる。一般に、IFNτの治療用組成物を、本組成物の有効な経口投与を促進するために、IFNτの有効量を適した添加剤、担体及び/又は賦形剤と組み合わせるというように調製する。例えば、IFNτを含む錠剤及びカプセルを、IFNτ(例えば、凍結乾燥されたIFNτタンパク質)と薬学的に許容される担体(例えば、ラクトース、コーンスターチ、微結晶性セルロース、スクロース)、結合剤(例えば、α型デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン)、崩壊剤(例えば、カルボキシメチルセルロースカルシウム、デンプン、低置換度ヒドロキシ−プロピルセルロース)、界面活性剤(例えば、ツウィーン80(Tween80)、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマー)、抗酸化剤(例えば、L−システイン、亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム)、潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク)などの添加剤と組み合わせることにより調製することができる。
【0118】
さらに、IFNτポリペプチドは、固体、粉状又はその他の担体(例えば、ラクトース、サッカロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン(例えば、ポテトスターチ、コーンスターチ)、ミリペクチン、セルロース誘導体又はゼラチン)と混合することができ、また潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム若しくはステアリン酸カルシウム、又は錠剤の形態に圧縮されたポリエチレングリコールワックス)を含有することができる。いくつかの担体又は希釈剤の層を用いることにより、徐放性を有して作用する錠剤を調製することができる。
【0119】
経口投与のための液体製剤は、エリキシル剤、シロップ、又は懸濁剤の形態で作製することができ、例えば、溶液は、約0.1重量%〜約30重量%のIFNτ、糖、並びにエタノール、水、グリセロール、プロピレン、グリコール及びおそらく従来の性質を有する他の添加物の混合物を含む。
【0120】
他の適した製剤は、腸管粘膜により吸収されるまで胃及び腸において残存させるために、このタンパク質を保護する保護剤形である。タンパク質のための保護剤形は、当技術分野で公知であって、腸溶コーティング及び/又は粘膜付着性ポリマーコーティングを含む。典型的な粘膜付着性ポリマー製剤は、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、Eudragit(登録商標)、カルボキシビニルポリマー、カルボマーなどを含む。腸管及び特に小腸に活性形態のIFNτを送達するために、経口摂取を通した胃への投与のために設計された剤形を企図する。或いは、IFNτは、胃及び/又は腸内環境に対するある程度の保護を提供するために、プロテアーゼ阻害薬と同時投与するか、ポリマー物質で安定化させるか、又は脂質若しくはポリマー粒子でカプセル化することができる。
【0121】
経口的に活性なIFNτの医薬組成物を、治療的有効量で、治療を必要とする個体に投与する。用量はかなり変更することができ、障害の重篤度、患者の年齢及び体重、並びに患者が摂取し得る他の薬物などの要因に依存する。この量又は投与量は、一般的には主治医により決定される。投与量は一般的には、約1×108単位/日〜5×1012単位/日の間であり;より具体的には約1×108単位/日以上であって、好ましくは約2×108単位/日、好ましくは約3×108単位/日、好ましくは約4×108単位/日、より好ましくは約5×108単位/日、好ましくは約6×108単位/日、好ましくは約7×108単位/日、好ましくは約8×108単位/日以上、さらにより好ましくは約1×109単位/日以上である。
【0122】
定常的な上昇した血漿中IFNτ濃度を必要とする障害は、約2〜4時間ごと程度の頻度の投与から利益を得るが、他の障害(例えば、多発性硬化症)は、より少ない頻度の間隔(例えば、1日1回又は48時間ごとに1回)で治療的有効量を投与することにより、効果的に治療することができる。個々の用量の投与速度は、一般的には、主治医により、処置される疾患の重症度を軽減しつつ最低の総投与量の投与を可能にするように調整される。上記のように、方法は、治療の必要な患者に最初の用量でIFNτを経口投与し、最初の用量レベルに対する個々の患者の反応を判定するための生物学的マーカーを監視することを企図する。監視は、採血、及び例えば、ELISA又はラジオイムノアッセイキットを用いた血中のIL−10などのマーカーの分析を介して容易に行うことができる。したがって、別の態様では、IFNτに反応する状態を患う個人を治療する際に用いるキットを企図する。キットは、IFNτの経口投与用に設計された1種又は複数の剤形を含有するコンテナを含む第1の部分、及びIFNτのバイオマーカー(例えば、血中IL−10濃度を分析するために必要なコンポーネント)を監視するために必要なコンポーネントを含む第2の部分を含む。
【0123】
IFNτの投与は、一般に臨床的エンドポイントに達するまで継続する。この臨床的エンドポイントは、治療される状態、状態の重症度、及び患者の個々の特性(年齢、体重、健康)により変動する。臨床的エンドポイントは、主治医又は看護師により容易に決定され、一時的又は永続的な症状の停止から状態の回復までの範囲にわたる。例えば、乾癬などの自己免疫状態を患う患者では、IFNτによる治療は、乾癬が消失するまで継続し得る。多発性硬化症患者では、適切な臨床的エンドポイントは、症状の重症度の低下、新しい造影増強脳病変の減少、又は評価スコアの良好な変化と思われる。ウイルス感染症で苦しむ個人では、適切な臨床的エンドポイントは、ウイルス価の減少又はウイルス感染症に関連した症状(発熱、発疹、倦怠感、など)の減弱と思われる。細胞増殖によって特徴付けられる状態を患う患者では、IFNτの投与を中断する臨床的エンドポイントは、腫瘍の大きさの退縮により測定した細胞増殖速度の退行、又は腫瘍増殖速度の減少により測定した細胞増殖の減速と思われる。
【0124】
一旦所望の臨床的エンドポイントを達成すれば、IFNτによる毎日の治療を中断することができるが、望む場合又は必要であれば維持用量を投与することができる。続いて、投与量若しくは投与の頻度、又は両方を、症状に応じて、臨床的エンドポイントが維持されるか、又は改善した状態が維持されるレベルで減らしてもよい。
【0125】
IFNτの経口投与が、他の治療と組み合わせて使用できることは、もちろん理解される。例えば、IFNτは、自己免疫反応に向けられる抗原の投与と併用することができる。例は、多発性硬化症を治療するためのミエリン塩基性タンパク質とIFNτ;関節リウマチを治療するためのコラーゲンとIFNτ、及び重症筋無力症を治療するためのアセチルコリン受容体ポリペプチドとIFNτの同時投与を含む。
【0126】
さらに、IFNτは、多発性硬化症などの自己免疫疾患を治療するために、公知の免疫抑制剤(例えば、ステロイド)と共に経口投与することができる。免疫抑制剤は、IFNτと共働的に作用し、等価な用量のIFNτ又は免疫抑制剤単独で得るより有効な治療となり得る。より一般的に、薬物(すなわち、自己免疫状態の治療のための治療薬)と組み合わせて投与されるIFNτを企図し、代表的薬物は、アザチオプリン、シクロホスファミド、コルチコステロイド(プレドニゾン、プレドニゾロン、など)、シクロスポリン、ミコフェノール酸モフェチル、抗胸腺細胞グロブリン、ムロモナブCD3モノクローナル抗体、メルカプトプリン、ミトキサントロン、酢酸グラティラマー(Copaxone)、インターフェロン−β(Avonex(商標)、Betaseron(商標)、Ribif(商標))、ダクリズマブ、メトトレキセート、シロリムス、タクロリムスなどを含むが、これらに限定されるものではない。
【0127】
同様に、癌又はウイルス疾患の治療において、IFNτは、例えば、1種又は複数の化学療法薬剤の治療有効量と共に投与することができる。細胞増殖状態の治療用薬剤の典型的なタイプは、ナイトロジェンマスタード、エチレンイミン、メチルメラミン、スルホン酸アルキル、ニトロソウレア、トリアゼン、葉酸類似体、ピリミジン類似体、プリン類似体、ビンカアルカロイド、エピポドフィロトキシン、抗生物質、酵素、生体応答修飾物質(例えば、サイトカイン)、白金配位錯体、アントラセンジオン、置換された尿素、メチルヒドラジン誘導体、副腎皮質性抑制剤、プロゲスチン、エストロゲン、抗エストロゲン剤、アンドロゲン、抗男性ホルモン及び生殖腺刺激ホルモン放出ホルモン類似体を含むが、これらに限定されるものではない。代表的薬物は、メクロレタミン、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ヘキサメチルメラミン、チオテパ、ブスルファン、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、ストレプトゾシン、ダカルバジン、メトトレキセート、フルオロウラシル、フロキシウリジン、シタラビン、メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エトポシド、テニポシド、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリカマイシン、マイトマイシン、アスパラギナーゼ、インターフェロン−α、シスプラチン、カルボプラチン、ミトキサントロン、ヒドロキシ尿素、プロカルバジン、ミトタン、アミノグリチミド(aminoglyethimide)、プレドニゾン、カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、酢酸メドロキシプロゲステロン、酢酸メゲストロール、ジエチルスチルベストロール、エチニルエストラジオール、タモキシフェン、プロピオン酸テストステロン、フルオキシメステロン、フルタミド、ロイプロリド、ジドブジン(AZT)、ロイコボリン、メルファラン、シクロホスファミド、ダカルバジン、ジピリダモールなどを含むが、これらに限定されるものではない。
【0128】
ウイルス感染症治療におけるIFNτの同時投与のための典型的薬剤は、抗ヘルペスウイルス剤、抗レトロウイルス剤及び抗ウイルス薬を含むが、これらに限定されるものではない。代表的薬物は、アシクロビル、ファムシクロビル、ホスカルネット、ガンシクロビル、イドクスウリジン、ソリブジン、トリフルリジン、バラシクロビル、ビダラビン、ジダノシン、スタブジン、ザルシタビン、ジドブジン、アマンタジン、インターフェロン−α、リバビリン、リマンタジン、ラミブジン、プロテアーゼ阻害薬、非環状ヌクレオシドホスホネートなどを含む。
【実施例】
【0129】
IV.実施例
以下の実施例は、本明細書に記載の方法をさらに例証するもので、決して主題の範囲を制限することを意図するものではない。
【0130】
材料及び方法
A.IFNτの生産
一実施形態では、合成IFNτ遺伝子を、IFNτのアミノ酸配列をコードしているDNA配列の連続した部分を含むオリゴヌクレオチドを結合させることによる標準の分子的手法(Ausubelら、上記、1988)を用いて生成した。使用されるDNA配列は、配列番号1若しくは配列番号4又はImakawa,K.ら、Nature、330:377−379,(1987)に示される配列のいずれかでよい。得られたIFNτポリヌクレオチドコード配列は、172アミノ酸のコード配列である16から531位にわたり得る。
【0131】
一実施形態では、全長合成遺伝子StuI/SStI断片(540bp)を、改変pIN III omp−A発現ベクターにクローン化し、適格な大腸菌(E.coli)のSB221株中に形質転換した。IFNτタンパク質の発現のために、発現ベクターを有する細胞を、アンピシリンを含有するL−ブロス中でOD(550nm)0.1〜1まで増殖させ、IPTG(イソプロピル−1−チオ−b−D−ガラクトシド)で3時間誘導し、遠心分離により回収した。可溶性組換えIFNτを、超音波処理又は浸透圧分画により、細胞から遊離させることができる。
【0132】
酵母における発現のために、IFNτ遺伝子を、それぞれ5’末端及び3’末端にStuI及びSacI制限部位を含むPCRプライマーによるポリメラーゼ連鎖反応(PCR;Mullis,K.B.、米国特許第4683202号、1987年7月28日発行;Mullis,K.Bら、米国特許番号4683195号、1987年7月28日発行)を用いて増幅することができる。増幅された断片をStuI及びSacIIで消化し、pBLUESCRIPT+(KS)のSacII及びSmaI部位に連結して、pBSY−IFNτを生成した。プラスミドpBSY−IFNτをSacII及びEcoRVで消化し、そして合成IFNτ遺伝子を含む断片を単離した。酵母発現ベクターpBS24Ub(Ecker,D.J.ら、J.Biol.Chem.264:7715−7719(1989))をSalIで消化した。平滑末端を、T4 DNAポリメラーゼを用いて生成した。ベクターDNAをフェノールで抽出し、エタノール沈澱した(Sambrookら、「分子クローニング:実験マニュアル(MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL)」第2編,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY(1989))。回収したプラスミドをSacIIで消化し、アガロースゲル電気泳動により精製し、pBSY−IFNτから単離したSacII−EcoRV断片に連結した。生じた組換えプラスミドをpBS24Ub−IFNτと名付けた。
【0133】
組換えプラスミドpBS24Ub−IFNτを、大腸菌(E.coli)中に形質転換した。IFNτインサートを含む組換えクローンを単離し、制限酵素解析により同定した。IFNτコード配列をpBS24Ub−IFNτから単離し、アルコールオキシダーゼ(AOX1)プロモーターを含むピキア・パストリス(Pichia pastoris)ベクター(Invitrogen,San Diego,CA)中にクローン化した。次いで、このベクターを用いてピキア・パストリス(Pichia pastoris)GS115 His−宿主細胞を形質転換し、タンパク質を製造者の説明書に従って発現させた。タンパク質を培地中に分泌させ、連続したDEAE−セルロース及びヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーにより、SDS−PAGE及び銀染色により判定される電気泳動的な均質まで精製した。
【0134】
B.特定の抗ウイルス活性を測定する抗ウイルスアッセイ
抗ウイルス活性を、標準の細胞変性効果アッセイを用いて評価した(Familletti,P.C.ら、「酵素学における方法(Methods in Enzymology)」,78:387−394(1981);Rubinstein,S.ら、J.Virol.,37:755−758(1981))。簡単に述べると、IFNτの希釈物を、マディンダービー(Madin−Darby)ウシ腎(MDBK)細胞と共に37℃で16〜18時間インキュベートした。インキュベート後、ウイルス複製の阻害を、負荷として水疱性口炎ウイルスを用いる細胞変性効果アッセイで測定した。1抗ウイルス単位(U)は、単層の破壊で50%の減少を引き起こした。本明細書中に記載された試験では、IFNτは、約1×108抗ウイルスU/mgタンパク質の特定の活性を有した。
【0135】
(実施例1)
多発性硬化症患者へのIFNτの投与
A.様々な用量での試験
多発性硬化症を患うヒトを、IFNτ治療に関する試験に登録した。患者15例を、3つの治療群にランダムに割り付けた。群Iの患者に、0.2mg/日(2×107U/日)の用量でIFNτを経口投与した。群IIの患者に、0.8mg/日(8×107U/日)の用量でIFNτを経口投与した。群IIIの患者に、1.8mg/日(1.8×108U/日)の用量でIFNτを経口投与した。
【0136】
IFNτ治療前のスクリーニング日及び1日目に、ベースラインの血清中サイトカイン濃度を決定するために、各患者から血液試料を採取した。1日目の採血後、各対象にIFNτを経口投与することにより治療を開始した。投与前に、IFNτ(配列番号3)のバイアル及びシリンジを、2〜8℃で冷蔵庫に保存した。薬物の自己投与前に、患者は1つのバイアルと1つのシリンジを冷蔵庫から取り出した。シリンジの先端からキャップを取り外し、1日目に診療所での指示の通りに、シリンジの先端を薬物のビンに入れ、適切な容量をシリンジに吸い上げた。シリンジの先端を口腔内に置き、シリンジの内容物を、プランジャーを押し下げることによって口にあけた。次いで、患者は飲み込み、望むならば、コップ1杯の水を飲んだ。患者は、彼/彼女の日記型カードに用量を投与した日付及び時間を記入した。
【0137】
血液試料を、試験の1、4、8、15、29及び57日目に各患者から採取した。試料を、市販のELISAキット(Genzyme,Cambridge,Mass)を用いてIL−10濃度及びIFN−γ濃度について分析した。結果を、図1A〜1D(IL−10)及び図2A〜2D(IFN−γ)、並びに図3A〜3E(IL−10及びIFN−γ)に示す。
【0138】
A1.結果の統計解析
再発寛解型多発性硬化症患者15例を、3つの用量(0.2mg、0.6mg及び1.8mg)のうちの1つで、1日1回4週間経口IFN−タウで治療した。血清試料は、スクリーニング並びに1、4、8、15、29及び57日目に得て、IL−10濃度及びIFN−γ濃度(pg/ml)について評価した。3群の結果を、反復測定分散分析統計を用いて経時的に評価した。90のデータポイント(1日目〜57日目)のうち、9つの欠測データポイントの値は、以前の値を繰り越すことで代用した。
【0139】
IL−10:解析により、3つの用量群間における有意差(F=2.92、P=0.0927)、時間の有意な影響(F=0.70、P=0.6285)及び有意な群と時間の相互関係(F=0.74、P=0.6803)は認められなかった。このことは、28日の投与期間及び28日の追跡期間にわたり、IL−10濃度が全3群でIFNτの投与後に変わらなかったことを示唆している。最低から最高までの用量群における投与の1日目から29日目までの平均の変化は、それぞれ7%、3%及び−25%であった。3つの用量群の57日目までの平均の変化は、それぞれ10%、−10%及び−39%であった。全ての場合、全3群のデータは、大きなばらつきがあった。
【0140】
IFN−γ:解析により、3つの用量群間における有意差(F=1.06、P>0.3769)、時間の有意な影響(F=1.86、P=0.1140)及び有意な群と時間の相互関係(F=1.45、P=0.1820)は認められなかった。このことは、24日の投与期間及び28日の追跡期間にわたり、IFN−γ濃度が全3群でIFNτの投与後に変わらなかったことを示唆している。最低から最高までの用量群における投与の1日目から29日目までの平均の変化は、それぞれ−63%、−14%及び35%であった。3つの用量群の57日目までの平均の変化は、それぞれ−27%、−46%及び22%であった。IL−10の解析と同様に、全3群のデータは、大きなばらつきがあった。
【0141】
B.単回投与試験
再発寛解型多発性硬化症の臨床診断を受けた対象を、磁気共鳴映像法(MRI)脳スキャンを用いて評価した。画像診断前に、患者にガドリニウムを投与した。3カ月の期間中に、毎月撮影した3回のMRIスキャンのうちの少なくとも1回でガドリニウム増強病変が認められた患者を本試験に登録した。合計で、患者22例をIFNτ治療のために選択した。
【0142】
身体診察、血液学的検査及び血清化学的検査により、スクリーニング時、1及び2週目、6カ月目まで毎月評価した。免疫学的評価(IL−12、IL−10、TGF−β、ネオプトリン、IL−6、IFN−γ、Th1及びTh2サイトカイン)を、スクリーニング時及び6カ月目まで毎月評価した。ガドリニウム増強病変の評価のためのMRIスキャンは、毎月撮影した。神経学的試験は、スクリーニング時及び3及び6カ月目に実施した。
【0143】
本試験のために選択された患者22例に、経口投与を介して、インターフェロン−タウ3.0mgを1日3回(総1日量9.0mg)投与した。標準のアッセイで測定した1〜2×108単位/mgタンパク質の特定の抗ウイルス活性に基づき、各患者に投与した1日投与量は、約9×108から1.8×109単位の間であった。IFNτは、緩衝液中に1.5mg/mLの濃度で提供し、2mLの容量を1日3回投与した。
【0144】
新しいガドリニウム増強病変の減少を、登録した多発性硬化症患者を治療することにおけるインターフェロン−タウの有効性を評価するための臨床的エンドポイントとして使用した。MRIスキャンは、病変部位をマニュアルで確認する専門のMRIリーダーにより解読された。新しいガドリニウム増強病変の数を、治療前のスキャンに対して後のスキャンで病変部位を比較することにより確認した。結果を、表2A〜2Dに示す。
【0145】
(実施例2)
C型肝炎に感染したヒトの患者へのIFNτの1日3回の投与
A.IFNτの調製
1日目、IFNτ(配列番号3)1ビンを冷蔵庫から取り出し、患者は、表3に従って適切な容量の試験材料を自己投与した。また、IFNτ(配列番号2)を、同様に調製及び投与した。
【表8】
【0146】
B.患者服用指示
試験材料の全バイアル及びシリンジは、2〜8℃に保った冷蔵庫内に保存した。薬物の自己投与前に、患者は冷蔵庫から1つのバイアル及び1つのシリンジを取り出した。シリンジの先端からキャップを取り外し、1日目に診療所での指示の通りに、シリンジの先端を薬物のビンに入れ、適切な容量をシリンジに吸い上げた。
【0147】
シリンジの先端を口腔内に置き、シリンジの内容物を、プランジャーを押し下げることによって口にあけた。次いで患者は試験材料を飲み込んだ。患者は、望むならば、コップ1杯の水を飲んだ。患者は、彼/彼女の日記型カードに試験材料の用量を投与した日付及び時間を記入した。
【0148】
上記のステップを、約8時間の間隔で、朝に1回、正午に1回及び夕方に1回の1日3回繰り返した。
【0149】
C.結果
血液試料を、169日の試験期間にわたり規定の間隔で採取した。試料を、市販のELISAキット(Genzyme,Cambridge,Mass)を用いて、製造者の説明書に従って血清中のIL−10濃度及びIFN−γ濃度について分析した。また、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応を用いたC型肝炎ウイルス価、2’,5’−オリゴアデニル酸シンセターゼ(OAS)の血中濃度及びアラニンアミノ基転移酵素(ALT)の血清中濃度を測定したが、本明細書では報告しない。
【0150】
各対象の結果を、図4A〜4D(IL−10濃度)及び図5A〜5D(IFN−γ濃度)、並びに図6A〜6F(IL−10及びIFN−γ)に示す。
【0151】
D.結果の統計解析
3群の結果を、反復測定分散分析統計を用いて経時的に評価した。群IIの患者1例のデータは、ベースラインの血清試料が不明により使用しなかった。204のデータポイント(1日目〜169日目)のうち、両方の測定に関する7つの欠測データポイントの値は、以前の値を繰り越すことで代用した。
【0152】
IL−10:解析により、3群間における有意差(F=12.08、P=0.0009)、時間の有意な影響(F=11.20、P=0.0001)及び有意な群と時間の相互関係(F=7.88、P=0.001)が認められた。後者の知見は、経時的な3つの用量群間におけるIL−10反応率の差により明白に見ることができる。最低用量群(群I;0.33mg TID)は、1日目〜43日目にIL−10濃度が22%増加したが、群II(1mg TID)は、29日までに114%のピーク反応を生じた。対照的に、群IIIは(3mg TID)、43日目までに387%増加し、71日目までに484%のピークを有した。
【0153】
また、有意な相互作用項(interaction term)は、一旦投与が84日目に終了されると、IL−10濃度における用量群間の示差的減少により支持されている。群Iが85日目のIL−10濃度の11%増加から169日目の4%に減少し、群IIが同じ期間にわたり95%から0.5%に減少した。したがって、2つの最低用量群は、投与終了の6カ月後にベースラインに戻った。しかし、最高用量群(群III;3mg TID)は、169日目までに453%から194%に減少し、したがって、ベースラインの6カ月に対して投与終了後も依然としてかなりの増加を示している。
【0154】
IFN−γ:解析により、3つの用量群間における有意差(F=1.13、P>0.3499)、時間の有意な影響(F=1.55、P=0.1187)及び有意な群と時間の相互関係(F=1.39、P=0.1275)は認められなかった。このことは、84日の投与期間及び84日の追跡期間にわたり、IFN−γ濃度が全3群でIFNτの投与後に有意に変わらなかったことを示している。最低から最高までの用量群における投与の1日目から85日目までの平均の変化は、それぞれ−6%、8%及び7%であった。興味深いことに、3つの用量群の169日目までの平均の変化は、それぞれ4%、21%及び31%であり、このことは投与終了後の用量反応を示唆している。
【0155】
(実施例3)
C型肝炎に感染した患者へのIFNτの1日2回投与
C型肝炎に感染したヒト患者5例を試験に組み入れた。患者を、実施例2の方法に従って、IFNτにより治療し、各患者に7.5mgを1日2回(総1日量15mg;1.5×109U)投与した。最初の用量は、朝の朝食前に投与した。第2の用量は、夕食の少なくとも3時間後に投与した。
【0156】
血液試料を、113日の試験期間にわたり規定の間隔で採取した。試料を、市販のELISAキット(Genzyme,Cambridge,Mass)を用いて血清中IL−10、IL−12及びIFN−γ濃度について分析した。各患者5例の結果を、図7A(IL−10)、図7B(IFN−γ)及び図8A〜8D(IL−10、IL−12及びIFN−γ)に示す。
【0157】
多くの典型的な態様及び実施形態について、これまで述べてきたが、当業者は、一定の改変、置換、追加及びそれらの一部組合せを認めるであろう。したがって、以下の添付の特許請求の範囲及び以下の特許請求の範囲は、その趣旨及び範囲の範囲内に全てのそのような改変、置換、追加及び一部組合せを含むと解釈される。
【0158】
(配列表の簡単な説明)
配列番号1は、ヒツジのインターフェロン−τ(IFNτ)をコードする合成遺伝子のヌクレオチド配列である。
配列番号2は、成熟ヒツジのインターフェロン−τのアミノ酸配列(IFNτ;oTP−1;GenBank登録番号Y00287;PID g1358)に相当する。
配列番号3は、配列番号2の配列に比べて、配列の5位及び6位のアミノ酸残基が修飾されている成熟ヒツジのIFNτのアミノ酸配列に相当する。
配列番号4は、配列番号3のタンパク質をコードしている合成ヌクレオチド配列である。
【図面の簡単な説明】
【0159】
【図1A】1〜29日目にIFNτ0.2mgで毎日治療した患者群I、II及びIIIの時間(日)に応じた、多発性硬化症を患い、IFNτで経口的に治療したヒト患者における血清中IL−10濃度(pg/mL)を示すグラフである。
【図1B】1〜29日目にIFNτ0.6mgで毎日治療した患者群I、II及びIIIの時間(日)に応じた、多発性硬化症を患い、IFNτで経口的に治療したヒト患者における血清中IL−10濃度(pg/mL)を示すグラフである。
【図1C】1〜29日目にIFNτ1.8mgで毎日治療した患者群I、II及びIIIの時間(日)に応じた、多発性硬化症を患い、IFNτで経口的に治療したヒト患者における血清中IL−10濃度(pg/mL)を示すグラフである。
【図1D】1〜29日目にIFNτ0.2mg(ダイヤモンド、群I)、IFNτ0.6mg(正方形、群II)及びIFNτ1.8mg(三角形、群III)で毎日治療した各試験群I、II及びIIIのヒト患者における平均血清中IL−10濃度(pg/mL)を示すグラフである。
【図2A】1〜29日目にIFNτ0.2mgで毎日治療した患者群I、II及びIIIの時間(日)に応じた、多発性硬化症を患い、IFNτで経口的に治療したヒト患者における血清中IFN−γ濃度(pg/mL)を示すグラフである。
【図2B】1〜29日目にIFNτ0.6mgで毎日治療した患者群I、II及びIIIの時間(日)に応じた、多発性硬化症を患い、IFNτで経口的に治療したヒト患者における血清中IFN−γ濃度(pg/mL)を示すグラフである。
【図2C】1〜29日目にIFNτ1.8mgで毎日治療した患者群I、II及びIIIの時間(日)に応じた、多発性硬化症を患い、IFNτで経口的に治療したヒト患者における血清中IFN−γ濃度(pg/mL)を示すグラフである。
【図2D】1〜29日目にIFNτ0.2mg(ダイヤモンド、群I)、IFNτ0.6mg(正方形、群II)及びIFNτ1.8mg(三角形、群III)で毎日治療した各試験群I、II及びIIIのヒト患者における平均血清中IFN−γ濃度(pg/mL)を示すグラフである。
【図3A】図1〜2に関して述べた治療群I、II及びIIIから選択された個々の患者のIL−10(ダイヤモンド)及びIFN−γ(正方形)の血清中濃度(両方ともpg/mL)を示すグラフである。
【図3B】図1〜2に関して述べた治療群I、II及びIIIから選択された個々の患者のIL−10(ダイヤモンド)及びIFN−γ(正方形)の血清中濃度(両方ともpg/mL)を示すグラフである。
【図3C】図1〜2に関して述べた治療群I、II及びIIIから選択された個々の患者のIL−10(ダイヤモンド)及びIFN−γ(正方形)の血清中濃度(両方ともpg/mL)を示すグラフである。
【図3D】図1〜2に関して述べた治療群I、II及びIIIから選択された個々の患者のIL−10(ダイヤモンド)及びIFN−γ(正方形)の血清中濃度(両方ともpg/mL)を示すグラフである。
【図3E】図1〜2に関して述べた治療群I、II及びIIIから選択された個々の患者のIL−10(ダイヤモンド)及びIFN−γ(正方形)の血清中濃度(両方ともpg/mL)を示すグラフである。
【図4A】1日3回IFNτ0.33mgで毎日治療した試験群Iの患者6例に関する、時間(日)に応じた、C型肝炎を患い、IFNτで経口的に治療したヒト患者における血清中IL−10濃度(pg/mL)を示すグラフである。
【図4B】1日3回IFNτ1.0mgで毎日治療した試験群IIの患者6例に関する、時間(日)に応じた、C型肝炎を患い、IFNτで経口的に治療したヒト患者における血清中IL−10濃度(pg/mL)を示すグラフである。
【図4C】1日3回IFNτ3mgで毎日治療した試験群IIIIの患者6例に関する、時間(日)に応じた、C型肝炎を患い、IFNτで経口的に治療したヒト患者における血清中IL−10濃度(pg/mL)を示すグラフである。
【図4D】試験群I(ダイヤモンド、1日3回0.33mg)、群II(正方形、1日3回1mg)及び群III(三角形、1日3回3mg)に関する時間に応じた血清中IL−10濃度の増加パーセント示す、図4A〜4Cにおける試験群I、II及びIIIの要約図である。
【図5A】1日3回IFNτ0.33mgで毎日治療した試験群Iの患者6例に関する、時間(日)に応じた、C型肝炎を患い、IFNτで経口的に治療したヒト患者における血清中IFN−γ濃度(pg/mL)を示すグラフである。
【図5B】1日3回IFNτ1.0mgで毎日治療した試験群IIの患者6例に関する、時間(日)に応じた、C型肝炎を患い、IFNτで経口的に治療したヒト患者における血清中IFN−γ濃度(pg/mL)を示すグラフである。
【図5C】1日3回IFNτ3mgで毎日治療した試験群IIIIの患者6例に関する、時間(日)に応じた、C型肝炎を患い、IFNτで経口的に治療したヒト患者における血清中IFN−γ濃度(pg/mL)を示すグラフである。
【図5D】試験群I(ダイヤモンド、1日3回0.33mg)、群II(丸、1日3回1mg)及び群III(三角形、1日3回3mg)に関する時間に応じた平均血清中IFN−γ濃度を示す、図5A〜5Cにおける試験群I、II及びIIIの要約図である。
【図6A】図4〜5に関して述べた治療群I、II及びIIIから選択された個々の患者のIL−10(ダイヤモンド)及びIFN−γ(正方形)の血清中濃度(両方ともpg/mL)を示すグラフである。
【図6B】図4〜5に関して述べた治療群I、II及びIIIから選択された個々の患者のIL−10(ダイヤモンド)及びIFN−γ(正方形)の血清中濃度(両方ともpg/mL)を示すグラフである。
【図6C】図4〜5に関して述べた治療群I、II及びIIIから選択された個々の患者のIL−10(ダイヤモンド)及びIFN−γ(正方形)の血清中濃度(両方ともpg/mL)を示すグラフである。
【図6D】図4〜5に関して述べた治療群I、II及びIIIから選択された個々の患者のIL−10(ダイヤモンド)及びIFN−γ(正方形)の血清中濃度(両方ともpg/mL)を示すグラフである。
【図6E】図4〜5に関して述べた治療群I、II及びIIIから選択された個々の患者のIL−10(ダイヤモンド)及びIFN−γ(正方形)の血清中濃度(両方ともpg/mL)を示すグラフである。
【図6F】図4〜5に関して述べた治療群I、II及びIIIから選択された個々の患者のIL−10(ダイヤモンド)及びIFN−γ(正方形)の血清中濃度(両方ともpg/mL)を示すグラフである。
【図7A】IFNτの用量7.5mgを空腹時に1日2回投与した場合の、時間(日)に応じた、C型肝炎を患い、IFNτで経口的に治療したヒト患者における血清中IL−10濃度(pg/mL)を示すグラフである。
【図7B】IFNτの用量7.5mgを空腹時に1日2回投与した場合の、時間(日)に応じた、C型肝炎を患い、IFNτで経口的に治療したヒト患者における血清中IFN−γ濃度(pg/mL)を示すグラフである。
【図8A】図7A〜7Bに関して述べたように治療した患者におけるIL−10(ダイヤモンド)、IFN−γ(正方形)及びIL−12(三角形)の血清中濃度(pg/mL)を示すグラフである。
【図8B】図7A〜7Bに関して述べたように治療した患者におけるIL−10(ダイヤモンド)、IFN−γ(正方形)及びIL−12(三角形)の血清中濃度(pg/mL)を示すグラフである。
【図8C】図7A〜7Bに関して述べたように治療した患者におけるIL−10(ダイヤモンド)、IFN−γ(正方形)及びIL−12(三角形)の血清中濃度(pg/mL)を示すグラフである。
【図8D】図7A〜7Bに関して述べたように治療した患者におけるIL−10(ダイヤモンド)、IFN−γ(正方形)及びIL−12(三角形)の血清中濃度(pg/mL)を示すグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多発性硬化症患者の脳MRIで検出可能な新たなガドリニウム増強病変の数を減少させるための薬物の製造において使用するための組成物であって、前記薬物が、経口投与用に処方されたインターフェロン−タウを含有して、前記薬物で約3カ月の期間治療した後の新たなガドリニウム増強病変の出現が、前記薬物で治療せずに1カ月の期間で観察された新たなガドリニウム増強病変の数と比べて少なくとも約30%減少する上記組成物。
【請求項2】
経口投与したインターフェロン−タウの臨床的効果を評価するための方法であって、
インターフェロン−タウの経口投与の前後のインターフェロン−γ、インターロイキン−10及びインターロイキン−12から選択されたサイトカインの血清中濃度を測定すること、及び
インターフェロン−タウの経口投与の前後の新たなガドリニウム増強病変の数を、MRI造影を用いて決定することを含み、
それによって、前記血清中サイトカイン濃度のうちの1つ又は複数の測定された変化が、インターフェロン−タウの経口投与後の新たなガドリニウム増強病変の数の減少と共に、臨床的効果を表す上記方法。
【請求項3】
多発性硬化症のインターフェロン−タウ治療に反応する患者を選択する方法であって、
少なくとも約1カ月の期間にわたり、少なくとも1×105U/日の用量でインターフェロン−タウを多発性硬化症患者に経口投与すること、及び
インターフェロン−γ、インターロイキン−10及びインターロイキン−12から選択されたサイトカインの血清中濃度の検出可能な変化を示す患者を反応性として選択することを含み、血清中サイトカイン濃度の変化が、前記経口投与後にMRIにより測定した脳のガドリニウム増強病変の数の減少と相関することによって決定されるように、血清中サイトカイン濃度の変化が、インターフェロン−タウ治療に反応する患者と相関する上記方法。
【請求項4】
治療に反応する患者と相関する血清中サイトカイン濃度の変化が、血清中インターロイキン−10濃度の少なくとも約15%の増加である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
経口投与が少なくとも約3カ月の期間であり、治療に反応する患者と相関する血清中サイトカインの変化が、血清中インターロイキン−10濃度の少なくとも約30%の増加である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記インターフェロン−タウが、ヒツジインターフェロン−タウ又はウシインターフェロン−タウである、請求項1から3までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ヒツジインターフェロン−タウが、配列番号2又は配列番号3として識別される配列を有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記インターフェロン−タウが腸管に投与される、請求項1から3までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記患者が第2の治療薬でさらに治療される、請求項1又は請求項3に記載の方法。
【請求項10】
前記第2の治療薬が多発性硬化症の治療に適した薬剤である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
対象の多発性硬化症の進行を治療又は減速する方法であって、
インターフェロン−タウを少なくとも約1×108単位の1日投与量で対象に経口投与すること、及び
新たな造影増強脳病変の減少が観察されるまで対象にインターフェロン−タウを経口投与し続けることを含む上記方法。
【請求項12】
多発性硬化症を患う対象の再発のリスクを減少させる方法であって、
インターフェロン−タウを少なくとも約1×108単位の1日投与量で患者に経口投与すること、及び
新たな造影増強脳病変の減少が観察されるまで対象にインターフェロン−タウを経口投与し続けることを含む上記方法。
【請求項1】
多発性硬化症患者の脳MRIで検出可能な新たなガドリニウム増強病変の数を減少させるための薬物の製造において使用するための組成物であって、前記薬物が、経口投与用に処方されたインターフェロン−タウを含有して、前記薬物で約3カ月の期間治療した後の新たなガドリニウム増強病変の出現が、前記薬物で治療せずに1カ月の期間で観察された新たなガドリニウム増強病変の数と比べて少なくとも約30%減少する上記組成物。
【請求項2】
経口投与したインターフェロン−タウの臨床的効果を評価するための方法であって、
インターフェロン−タウの経口投与の前後のインターフェロン−γ、インターロイキン−10及びインターロイキン−12から選択されたサイトカインの血清中濃度を測定すること、及び
インターフェロン−タウの経口投与の前後の新たなガドリニウム増強病変の数を、MRI造影を用いて決定することを含み、
それによって、前記血清中サイトカイン濃度のうちの1つ又は複数の測定された変化が、インターフェロン−タウの経口投与後の新たなガドリニウム増強病変の数の減少と共に、臨床的効果を表す上記方法。
【請求項3】
多発性硬化症のインターフェロン−タウ治療に反応する患者を選択する方法であって、
少なくとも約1カ月の期間にわたり、少なくとも1×105U/日の用量でインターフェロン−タウを多発性硬化症患者に経口投与すること、及び
インターフェロン−γ、インターロイキン−10及びインターロイキン−12から選択されたサイトカインの血清中濃度の検出可能な変化を示す患者を反応性として選択することを含み、血清中サイトカイン濃度の変化が、前記経口投与後にMRIにより測定した脳のガドリニウム増強病変の数の減少と相関することによって決定されるように、血清中サイトカイン濃度の変化が、インターフェロン−タウ治療に反応する患者と相関する上記方法。
【請求項4】
治療に反応する患者と相関する血清中サイトカイン濃度の変化が、血清中インターロイキン−10濃度の少なくとも約15%の増加である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
経口投与が少なくとも約3カ月の期間であり、治療に反応する患者と相関する血清中サイトカインの変化が、血清中インターロイキン−10濃度の少なくとも約30%の増加である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記インターフェロン−タウが、ヒツジインターフェロン−タウ又はウシインターフェロン−タウである、請求項1から3までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ヒツジインターフェロン−タウが、配列番号2又は配列番号3として識別される配列を有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記インターフェロン−タウが腸管に投与される、請求項1から3までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記患者が第2の治療薬でさらに治療される、請求項1又は請求項3に記載の方法。
【請求項10】
前記第2の治療薬が多発性硬化症の治療に適した薬剤である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
対象の多発性硬化症の進行を治療又は減速する方法であって、
インターフェロン−タウを少なくとも約1×108単位の1日投与量で対象に経口投与すること、及び
新たな造影増強脳病変の減少が観察されるまで対象にインターフェロン−タウを経口投与し続けることを含む上記方法。
【請求項12】
多発性硬化症を患う対象の再発のリスクを減少させる方法であって、
インターフェロン−タウを少なくとも約1×108単位の1日投与量で患者に経口投与すること、及び
新たな造影増強脳病変の減少が観察されるまで対象にインターフェロン−タウを経口投与し続けることを含む上記方法。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【公表番号】特表2009−518432(P2009−518432A)
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−544533(P2008−544533)
【出願日】平成18年12月8日(2006.12.8)
【国際出願番号】PCT/US2006/046885
【国際公開番号】WO2007/070385
【国際公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(507331117)ペプゲン コーポレイション (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月8日(2006.12.8)
【国際出願番号】PCT/US2006/046885
【国際公開番号】WO2007/070385
【国際公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(507331117)ペプゲン コーポレイション (3)
【Fターム(参考)】
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