インターフェロンアナログ
本発明は医薬の分野に関する。とりわけ、本発明は、より少ない望ましくない副作用を示すインターフェロン(IFN)の生物学的に活性なアナログ及びその治療的使用方法に関する。IFNアナログが提供され、ここでその天然のレセプターに結合することを媒介する部分が、少なくとも機能的に破壊され、且つ、該アナログは、細胞内のIFN活性を媒介することができるシグナリング部分を含み、該シグナリング部分は、そのN末端で、任意的にリンカーを介して、IFNレセプター以外の細胞表面レセプターに結合することができる少なくとも1つのターゲティングドメインを備えられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医薬の分野に関する。とりわけ、それは、より少ない望ましくない副作用を示すインターフェロン(IFN)の生物学的に活性なアナログ、及び、その治療的使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
約10の異なるIFNが哺乳動物において同定されている;このうち7つはヒトに関して説明された。それらは、典型的には、3つのIFNクラスのうちに分けられる:I型IFN、II型IFN、及びIII型IFN。全てのI型IFNは、IFNAR1及びIFNAR2鎖からなるIFN−αレセプター(IFNAR)として知られる特異的細胞表面レセプター複合体に結合する。ヒトにおいて存在するI型インターフェロンは、IFN−α、IFN−β、及びIFN−ωである。II型インターフェロンはIFNGRに結合する。ヒトにおいて、これは、IFN−γである。それらの特異的な細胞表面レセプターと相互作用することにより、IFNは、シグナル伝達兼転写活性化因子(signal transducer and activator of transcription (STAT))複合体を活性化する;STATは、いくつかの免疫系遺伝子の発現を制御する転写因子のファミリーである。いくつかのSTATは、I型及びII型のIFNの両方により活性化される。しかしながら、それぞれのIFN型はまた固有のSTATを活性化しうる(Platanias, L. C. 2005 Nature reviews. Immunology 5 (5): 375-386)。
【0003】
全てのIFNクラスに属するIFNはウィルス感染と戦う為に非常に重要である。それらは宿主細胞内のウィルス複製を「阻害(interfere)」するそれらの能力にちなんで名づけられているけれども、IFNは他の機能を有する:それらは免疫細胞、例えばナチュラルキラー細胞及びマクロファージなど、を活性化する;それらはTリンパ球への抗原提示を上方制御することにより感染又は腫瘍細胞の認識を増す;及び、それらはウィルスによる新たな感染に抵抗する為の感染していない宿主細胞の能力を増す。いくつかの宿主の症状、例えば筋肉痛及び熱など、は感染の間のIFNの産生に関連付けられる。
【0004】
IFNγは、活性化した免疫細胞により産生される多面的サイトカインである。それは、ほとんど全ての細胞タイプ上に発現されるIFNγレセプターを通じて作用する。しかしながら、それは厳密な種特異性を示す。IFNγは、有意な効果により、免疫学的疾患、ウィルス性疾患、及びガン疾患の処置の為に適用されてきた(Younes and Amsden, J Pharm Sci 2002)。加えて、いくつかの研究は、腎及び肝線維症におけるIFNγの潜在的な役割を実証した(Kidney Int. 1999 ;56:2116-27, Hepatology 1996 23:1189-99)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
残念ながら、現在利用可能なインターフェロンの短い循環半減期及び望ましくない全身性副作用は、その臨床的適用を限定し、及び、臨床試験を停止さえした。これらの問題を回避する為に、例えばIFNγをリポソーム、ミクロスフィア、及びエラストマーに組み込むことにより、多くの試みがなされてきた(Pharm Res. 2000 17 :42-8, Pharm Res. 1996 13:1464-75, J Control Release. 2005 102:607-17)。細胞特異的送達アプローチはこれまで用いられてこなかった。そのようなアプローチは一般に、生物学的効果を引き起こす為にそれら自身のレセプターに送達される必要があり、その結果それらはこれらのレセプターを発現する標的細胞に行きつくサイトカインにとって不可能であると考えられている点で、これは驚くべきことでない。それ故に、他の標的レセプターへの送達は、ほとんどの場合において有用でなく、そして、せいぜい、活性の喪失又は有害な効果のさらなる多様化を引き起こす他の細胞タイプにおける取り込みをもたらすであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
しかしながら、本発明者らは、INFの構造が独特なターゲティング機会をもたらすことを認識した。というのも、該分子は、種特異的であるレセプター結合部分及び種特異的でなく且つ細胞内で作用するシグナリング部分を有するからである。驚くべきことに、IFNγのその独特な構造がIFNγの該シグナリング部分の他の標的レセプターへの送達を、この新しい標的レセプターがこのシグナリング部分の細胞内放出及び次の細胞内/核のINFγシグナリング経路の活性化を許すことを条件として、許すことが発見された。例えば、血小板由来成長因子(PDGF)を標的とした切り取られたIFNγ模倣物は、急性肝障害マウスモデルにおいて、完全長INFγ又はターゲティングされていないIFNγ模倣物と比較したときに、有意により少ない全身性副作用を示した。
【0007】
従って、本発明は、インターフェロン(IFN)のアナログに関し、ここでその天然のレセプターに結合することを媒介する部分が少なくとも機能的に破壊されており且つ該アナログは細胞内IFN活性を媒介することができるシグナリング部分を含み、該シグナリング部分はそのN末端で、任意的にリンカーを介して、該IFNレセプター以外の細胞表面レセプターに結合することができる少なくとも一つのターゲティングドメインを備えられている。好ましくは、該アナログはIFNガンマ(IFNγ)アナログである。
【0008】
異種のターゲティング部分を備えられたインターフェロンアナログは当技術分野で知られている。国際公開第2008/068621号パンフレットは、IFNγとターゲティング部分、例えば腫瘍を標的とする部分又は腫瘍血管系を標的とする部分など、との複合産物を開示する。先行技術は、完全長IFNγへの結合を開示するだけであり、これはその野生型レセプターへなお結合し、不都合な効果を引き起こすであろう。
【0009】
欧州特許出願公開第0844252号明細書は環状ペプチド及びそれらの調製方法を提供することを目的とし、特には親和性クロマトグラフィー、免疫付与、診断試験、ワクチン、及び医薬組成物の開発の分野において、新たな又は改善された生物工学的適用を提供する為に、それは該環状ペプチド上の続く化学的グラフティング又はカップリングを許し、すなわちそれらの固形支持体への、高分子量化合物への、マーカーへの、及び/又は他の環状ペプチドへの付着を許す。それは、環状ペプチドリガンドの生物学的分子への、とりわけインターフェロンへの、カップリングを教示する。欧州特許出願公開第0844252号明細書に、その天然のレセプターへの機能的結合性ドメインを欠く切り取られたIFN分子の使用について何も言及されていない。
【発明の効果】
【0010】
本発明のインターフェロンアナログは、その治療的使用方法(より小さい分子量の故の、より少ない副作用、増加した有効性、減少した抗原性)に関してだけでなく、その製造方法(組み換え合成)に関しても、(修飾された)完全長インターフェロンの使用を超える、明白であり且つ予期されない利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】マウスからの模倣IFNγのクローニングを示す図である。脾臓細胞がPHAにより刺激され、そして、RNAが単離された。特異的なプライマーを用いたRT及びPCRが予想されたサイズのPCR産物を産出した。BL21細胞における該構築物の発現及びウェスタンブロッティングが該模倣物の産出を確認した。
【図2】組み換え模倣IFNγが、マウス3T3線維芽細胞における抗線維症効果を示す。細胞が、線維症マーカーであるα平滑筋アクチンについて染色される。
【図3】二環のPDGFレセプターターゲティングドメインをコードするpET39b-BiPPBの構築を示す図である。
【図4】PDGFRを標的としたIFNγ複合体をコードするpET39b-BiPPB-IFNガンマの構築を示す図である。
【図5】pET39b-BiPPB-模倣IFNγの構築を示す図である。
【図6】pPBペプチドのINFγへのカップリングを示すIFNγ-BiPPB及び模倣IFNγ-BiPPBのドットブロット分析を示す図である。
【図7】ヒト肝星細胞株LX2細胞における結合研究を示す図である。細胞は、PDGFR結合性ペプチドについて染色された。染色は、pPB含有構築物の標的細胞への結合を示す。
【図8】急性肝障害マウスモデルにおける該処置の副作用を研究する為の血球計数分析を示す図である。WBC=白血球数。LYM=リンパ球。PLT=血小板数。RBC=赤血球数。詳細について、実施例4を参照されたい。
【図9】肝臓線維症マーカーMMP13及びTIMP1のリアルタイムPCR分析を示す図である。詳細について、実施例4を参照されたい。
【図10】CCl4により誘発された急性肝障害マウスモデルにおける模倣IFNγ-PEG-BiPPBの効果を示す図である。a-SMA (A)、コラーゲン-I (B)、及びデスミン(C)の定量 - オリーブオイル処理された正常マウス及び、IFNγ、模倣IFNγ、模倣IFNγ-PEG、模倣IFNγ-PEG-BiPPB (5 μg/マウス)又はPBS単独のいずれかを受けるCCl4処理されたマウスから得られた肝臓切片の染色。定量は、コンピュータ化されたCell-Dイメージングソフトウェアを用いて行われた。データは、群当たり5のマウスからの平均±SEMを表す。#P<0.05、対PBS処理されたオリーブオイル群; *P<0.05、**P<0.01、対PBS処理されたCCl4群。詳細について、実施例6を参照されたい。
【図11】CCl4投与又はオリーブオイル投与3日後の、マウスにおける肝臓線維症についてのマーカーのリアルタイムPCR分析を示す図である。マウスは、示されたとおりの種々の化合物により処理され、そして、Collagen 1a1 (A)、a-SMA (B)、デスミン(C)、及びTIMP1 (D)のmRNAレベルが測定された。詳細について、実施例6を参照されたい。
【図12】CCl4投与又はオリーブオイル投与3日後の、マウスの全血における血球計数分析を示す図である。マウスは、示された通りの種々の化合物により処理され、そして、血小板数(PLT:図A)、白血球数(WBC、図B)、及びリンパ球数(C)が、コールターカウンターを用いて測定された。詳細について、実施例6を参照されたい。
【発明を実施するための形態】
【0012】
その天然のレセプターへ結合することを媒介する部分の機能的破壊は、該レセプター結合性ドメイン中において1又はそれより多く(1以上の)関連するアミノ酸残基を削除し、挿入し、置換することにより達成されうる。インターフェロンレセプター結合性ドメインは同定されており、そして、当技術分野で既知である。例えば、IFNγレセプターへのマウスIFNγの結合は、最初の40、30、又は20のN−末端残基を少なくとも部分的に削除することにより無効にされうる。
【0013】
一つの実施態様において、該アナログは、細胞内シグナリングに関与する残基を有するだけの切り取られたIFNγポリペプチドである。本明細書において用いられるときに、細胞内シグナリングは、核移行及び/又は抗ウィルス活性を含みうる。
【0014】
好ましくは、細胞内活性を媒介するシグナリング部分は、ヒト及びマウスのIFNのC末端に見られるとおりの多塩基の核局在シグナル(NLS)モチーフを有する(Subramaniam et al. 2000, J. Cell Science 113, 2771-2781)。このNLSモチーフは、シグナル伝達兼転写活性化因子(STAT)と複合体を形成すると考えられている;STATは、いくつかの免疫系遺伝子の発現を制御する転写因子のファミリーである。いくつかのSTATは、I型及びII型のIFNの両方により活性化される。しかしながら、それぞれのIFN型はまた、固有のSTATも活性化しうる(Platanias, L. C. 2005 Nature reviews. Immunology 5 (5): 375-386)。STAT活性化は、全てのIFNについて最もよく明確にされた細胞シグナリング経路、古典的Janusキナーゼ−STAT(JAK-STAT)シグナリング経路、を開始する。この経路において、JAKは、IFNレセプターと会合し、そして、IFNとのレセプター連結についで、STAT1及びSTAT2の両方をリン酸化する。結果として、IFNにより刺激された遺伝子因子3(IFN−stimulated gene factor 3、ISGF3)複合体が形成し−これはSTAT1、STAT2、及びIRF9と呼ばれる第三の転写因子を含む−そして、細胞核に移動する。核の内側で、ISGF3複合体が、いくつかの遺伝子のプロモーター内の、IFNにより刺激された応答エレメント(IFN−stimulated response element、ISRE)と呼ばれる特異的なヌクレオチド配列に結合する;これがそれらの遺伝子の転写を誘発する。
【0015】
本明細書内に提供されたアナログは、アミノ酸配列(R)KRXRS(R)を有する多塩基NLSモチーフを有してよく、ここでXは任意のアミノ酸残基であり、好ましくはXはR、K、S、又はTである。好ましくは、該NLSモチーフは、該アナログのC末端に存在する。一つの実施態様において、それは、該配列を含み、好ましくはC末端配列RKRKRSR、KSKRSR、KRTRS、又はKRTRSQを含む。
【0016】
特定の局面において、該シグナリング部分は、
(d)(a)、(b)、又は(c)の配列の少なくも10、好ましくは少なくとも15、の連続したアミノ酸の一続き;
(e) a)又はb)又はc)と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、の同一性を示すアミノ酸配列、ただし細胞内シグナリング活性が維持される; 及び
(f) 多くとも10、好ましくは多くとも8、より好ましくは多くとも5のアミノ酸残基が削除され、追加され、又は置換されている(a)又は(b)又は(c)のアミノ酸配列、ただし該シグナリング活性、例えば核移行、が維持される;
(g)コンセンサス配列VxxxxVQRxAxxELIxVxxxLxPxxxxxKRxRS、ここでxは任意のアミノ酸残基である;
(h)コンセンサス配列VxxxxxQxxAxxELIxVxxxLxPxxxxxKRKRS、ここでxは任意のアミノ酸残基である;
からなる群から選ばれる配列を含み又は当該配列からなる。
【0017】
(a)におけるアミノ酸配列は、切り取られたマウスINFγ配列を表し、(b)における配列はヒトのホモログであり及び(c)における配列はラットのホモログである。好ましくは、本発明のアナログは、(a)又は(b)又は(c)の配列の少なくとも10、好ましくは少なくとも15、より好ましくは少なくとも20の連続したアミノ酸の一続きを含む。一つの実施態様において、該一続きは、(a)又は(b)又は(c)における配列のN末端配列を含む。他の実施態様において、それは(a)又は(b)又は(c)における配列のC末端配列を含み、好ましくは少なくとも最後の15のアミノ酸を含む。さらに他の実施態様において、該一続きは、(a)又は(b)又は(c)における配列の内部配列を含む。例となる配列は、
である。
【0018】
(a)又は(b)又は(c)における配列への1又はそれより多くの(1以上の)アミノ酸改変を有する変異体もまた本発明の範囲内にあることを当業者は理解するであろう。多くとも10、好ましくは多くとも8、より好ましくは多くとも5のアミノ酸残基が削除され、追加され、又は置換された(a)又は(b)又は(c)におけるアミノ酸配列、ただしシグナリング活性、例えば核移行、が維持される。
【0019】
ヒト及びマウスのINFγ配列のアラインメントは、36残基のうち15(41%)が同一であり、及び、36残基のうち24(66%)が正に荷電されている。同一性マッチはclustal Wアラインメントソフトウェアに従い行われる。
【0020】
【0021】
配列間のラインイン(line in)は保存された残基を示し、本明細書内上記の(g)下で記載されたコンセンサス配列を生じる。ヒト、ラット、及びマウスのインターフェロンガンマのアラインメントは、(h)及び(i)におけるコンセンサス配列を与えうる。
【0022】
一つの実施態様において、アナログは、上記言及されたコンセンサス配列(g)、(h)、又は(i)に従うシグナリング部分を含む。他の有用な配列は、(a)又は(b)又は(c)と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の同一性を示すアミノ酸配列を含み、ただし細胞内シグナリング活性は維持されることを条件とする。
【0023】
特定の局面において、該アナログは、以下のコンセンサス配列に従うシグナリング部分を含む:
ここで
Xaa1、Xaa2、Xaa3、Xaa4、Xaa6、Xaa11、Xaa13、Xaa14、Xaa16、Xaa17、Xaa18、Xaa19、Xaa20、Xaa21、Xaa22、Xaa23、Xaa24、及びXaa25は任意のアミノ酸残基であり、
Xaa5は極性の荷電されていない残基、たとえばAsn又はThrであり、
Xaa7は非極性の疎水性残基、例えばPro又はLeuであり、
Xaa8は極性の荷電されていない残基、例えばGln又はAsnであり、
Xaa9は非極性の疎水性残基、例えばVal、Ile、又はLeuであり、
Xaa10は極性の塩基性残基、例えばArg、His、又はLysであり、
Xaa12は非極性の疎水性残基、例えばPhe、Val、又はIleであり、
Xaa15は非極性の疎水性残基、例えばVal、Ile、Metである。
【0024】
好ましくは、アナログは、シグナリング部分として、マウスIFNγ中の残基95-133又はヒトIFNγ中の残基95-134に対応する配列を有する。この配列は抗ウィルス活性を有する(Mujtaba et al. 2006, Clinical and Vaccine Immunology, Vol. 13, No.8, p.944-952)。
【0025】
アナログの該シグナリング部分は、当技術分野で既知の方法により容易に決定されうる。例えば、マウスマクロファージ細胞株により細胞内に取り込まれたときに該アナログのSTAT1αの核移行を誘発する能力は、Subramaniamらにより記載されたとおりに決定されうる。シグナリング活性は、転写因子Stat1α及びStat1αの核インポーター、インポーチン−αアナログNPI-1、との複合体形成により評価されうる。特に、Subramaniamら(2001, J. Interferon Cytokine Res. 21(11):951-959)を参照されたい。他の適したインビトロアッセイは、マウスマクロファージ、例えばRAW細胞株など、におけるNO産生を含む。一つの実施態様において、該アナログは、その完全長インターフェロンカウンターパートの(インビトロ)活性の少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも75%を示す。細胞特異的ターゲティングは、インビトロで比較的低い活性を示すアナログのインビボの有効性を有意に増大しうる。
【0026】
本明細書内上記で言及されたとおり、本発明のアナログは、機能的なIFNレセプター結合性ドメインの不在及び該アナログの細胞内取り込みを媒介できる代替レセプター、例えばリガンド結合の際に及び/又は一定のレセプターターンオーバーの一部としてエンドサイトーシス経路に入るレセプター、に結合することができるターゲティングドメインの存在により特徴付けられる。理解されるであろうとおり、標的とされるべき該代替の又は「二次的」レセプターは、ある程度の細胞タイプ特異的発現を有する。遍在的に発現されるレセプターは、より適さない候補である。さらに、該レセプターは、該細胞内シグナリング部分に応答性である細胞上で発現されなければならず、例えばIFNγの場合、それはIFNγ応答性エレメントを有さなければならない。
【0027】
好ましくは、該ターゲティングドメインは、線維芽細胞及び線維芽細胞様細胞、例えば筋線維芽細胞、門脈域の線維芽細胞(portal fibroblasts)、メサンギウム細胞、間質線維芽細胞、肺胞線維芽細胞(alveolar fibroblasts)、又は間質細胞など、に特異的であるレセプターに結合できる。腫瘍細胞上に発現されるレセプターも意図される。IFNγアナログは、腫瘍細胞においてアポトーシスを誘発することができ、これは腫瘍細胞上に発現される二次レセプターを介して特異的に標的とされうる。一つの実施態様において、該レセプターは、PDGFレセプター、コラーゲンVI型レセプター、サイトカインレセプター(TGFβレセプター、TNFαレセプター、及びIL1βレセプターを含む)、インスリン成長因子レセプター、VEGFレセプター、及びケモカインレセプター(例えばCXCR4)からなる群から選ばれる。該アナログがPDGFレセプター、好ましくはPDGF−βレセプター、を標的とした場合に、非常に良い結果が得られた。他の適切なターゲティングドメインは、細胞接着ペプチド、例えばトリペプチドArg-Gly-Asp(RGD)(これは、細胞付着を媒介するフィブロネクチン内に該配列として元々同定された)など、を含む。RGDモチーフは、現在、多くの他のタンパク質において発見されており、そして、これらの多くにおいて(しかし全てでない)細胞接着を支持する。インテグリン、細胞表面タンパク質のファミリー、は細胞接着分子にとってのレセプターとして働く。インテグリンのサブセットは、それらのリガンド内のRGDモチーフを認識し、その結合が、細胞−基質及び細胞−細胞の相互作用の両方を媒介する。RGD含有アナログは、血栓症及びガンなどの疾患の処置の為の治療剤として用いられうる。
【0028】
特定の局面において、該ターゲティングドメインは、オリゴ糖又は糖タンパク質についてのレセプター、好ましくはアシアログリコプロテイン(ASGP)レセプター又はマンノースレセプター(CD 206)、に結合することができる。例えば、該ターゲティングドメインは、キャリア分子に複合体化(結合)されたオリゴ糖、好ましくはマンノース又はラクトースである。他の実施態様において、マンノース-6-ホスフェート (M6P)又はその誘導体が、M6P/IGF IIレセプターにとってのターゲティングドメインとして用いられうる。例えば、欧州特許出願公開第1117443号明細書を参照されたい。
【0029】
該ターゲティングドメインは好ましくは、該アナログが全体として、例えば組み換えにより、容易に製造されうるフュージョンポリペプチドであるようなタンパク質性物質(ペプチド)である。しかしながら、非タンパク質性の他のタイプのターゲティングドメインもまた意図され、例えば糖、脂質、核酸、合成分子、及び同様の物などが意図される。
【0030】
一つの局面において、該ターゲティングドメインは、少なくとも1つの環状ペプチド部分を含む。ペプチドは、システイン−ジスルフィド又はランチオニン(lanthionine)架橋形成を含む、種々の手段により環状化されうる。本発明のアナログを所望の細胞タイプにターゲティングする為に有用な環状ペプチドは当技術分野において記載されている。例えば、欧州特許出願公開第1117443号明細書は、細胞レセプター認識性ペプチド(RPR)をコードする少なくとも一つの配列を含む環状ペプチドを開示する。一つの実施態様において、本発明のアナログは、その(環状の又は線状の)ターゲティングドメイン内に、少なくとも1つのRGD、KPT、SRN、NLI、及びLIDからなる群から選ばれるアミノ酸配列を含む。
【0031】
好ましい実施態様は、好ましくは(環状)ペプチド部分の少なくとも一つのタンデムリピートの形にある、複数のレセプター結合性配列を含むターゲティングドメインを有するアナログに関する。該タンデムリピートは、1〜5のアミノ酸のリンカーを介して連結された、2つの環状ペプチド部分、好ましくは同一の環状ペプチド部分を含みうる。これは、二量体として活性であるレセプター、例えばPDGF、TGFβ、又はIL-10レセプターなど、をターゲティングする為に特に有利である。
【0032】
一つの実施態様において、該ターゲティングドメインは、アミノ酸配列X1SRNLIDX2の1つの、好ましくは2つの、コピーを含み、ここでX1及びX2は、環状構造が形成され、配列SRNLIDがその環の部分であるように、(ペプチドの)結合を一緒に形成しうる部分を示す。該2つのコピーは、好ましくは、1〜7アミノ酸のリンカー配列により間をあけられる。好ましくは、X1及びX2はCys残基である。アミノ酸配列CSRNLIDC-リンカー-CSRNLIDCSを含むターゲティングドメインであって該リンカーが1、2、3、4、5、6、又は7のアミノ酸残基のような1〜7のアミノ酸残基のアミノ酸配列である前記ターゲティングドメインが、二量体PDGFβレセプターに結合することにおいて非常に有効であることを、本発明者らは発見した。例えば、該PDGFレセプターに結合することができる2つの環状ペプチドが6のアミノ酸からなるスペーサーにより互いに連結されている一方で、他の構築物においてこれらの2つの環状ペプチドが11のアミノ酸のスペーサーにより結合されるところの比較実験を彼らは実施した。両方の構築物において、該スペーサーは、リジン残基を含んで、薬剤又はトレーサーの結合を許した。両方の二環式構築物は、FITCにより標識され及び3T3細胞培養物に添加され、該PDGF−レセプターを発現し、及び、結合を試験する為に2時間インキュベートされた。インキュベーション及びFITCに対する抗体による染色の後に、免疫組織化学的データが、6アミノ酸のスペーサーを有する構築物の有意な結合を示し、一方で、低い結合だけが、11アミノ酸のより長いスペーサーを有する構築物により観察された。
【0033】
一つの実施態様において、該リンカーは、4又は5のアミノ酸残基からなってよく、好ましくはGly、Ala、Ser、及びThr残基の群から選ばれ、より好ましくはそれらの少なくとも3つがグリシン残基である。好ましいリンカーは、配列K(GS)mGGからなり、ここでmは1又は2である。特定の例として、該ターゲティングドメインは、アミノ酸配列CSRNLIDCKGSGGCSRNLIDCS又はCSRNLIDCKGSGSGGCSRNLIDCSを含み又は当該配列からなる。他の実施態様において、該リンカーは、5又は6のアミノ酸残基からなり、好ましくはAsp、Lys、Gly、Ala、Ser、及びThr残基の群から選ばれる。良い結果が、4〜7残基のリンカーであって、少なくとも4、好ましくは少なくとも5、がグリシン残基である前記リンカーにより得られた。他の適切なリンカーは、4〜7の残基の配列を含み、該残基はGly及びAsp残基から選ばれ、例えば [GnDm]であって、n+mが4〜7であり、n ≧ 4且つMが0〜3の整数であるもの、である。特定の実施態様において、該ターゲティングドメインは、アミノ酸配列CSRNLIDC[GnDm]CSRNLIDCを含み又は当該配列からなり、ここでn+mは4〜7であり、n ≧ 4であり且つMが0〜3の整数である。例えば、該ターゲティングドメインは、配列CSRNLIDCGGGDGGCSRNLIDC、CSRNLIDCGGDGGCSRNLIDC、CSRNLIDCGDDGGCSRNLIDC、又はCSRNLIDCGGGGGGCSRNLIDCからなり又は当該配列を含む。
【0034】
該ターゲティングドメインは、任意の手段により、例えばリンカー又はスペーサー配列により、該シグナリングドメインに取り付けられうる。適したリンカー配列は、典型的には、最大で15、好ましくは最大で10のアミノ酸残基長である。ポリアラニンリンカーが用いられてよい。例えば、本明細書において与えられるものは、インターフェロンガンマアナログであり、
配列
からなる。
【0035】
該ターゲティングドメインは、キャリア分子、例えばアルブミン、を介して該シグナリングドメインに取り付けられてもよい。これは、もし該ターゲティングドメインが非タンパク質性物質、例えばオリゴ糖、例えばマンノース又はラクトースなど、であるならば、特に有利である。一つの実施態様において、該キャリア分子は、ヒドロキシル、アミン、及び/又はサルフェートのような遊離反応性基を含む。該キャリアのサイズは、好ましくは、アルブミン、ラクトフェリン、又はフィブロネクチンのような、内因性血しょうタンパク質である。
【0036】
本発明はまた、PDGFをターゲティングする二環式ドメインに複合体化された関心のある化合物、例えば生物学的に活性な分子、を含む複合体(conjugate)に関し、該ターゲティングドメインは2コピーのアミノ酸配列X1SRNLIDX2を含み、X1及びX2は、二環構造が形成され、配列SRNLIDがそれぞれの環の部分であるように、ペプチドの結合又はジスルフィド結合などの結合を一緒に形成しうる部分を示す。好ましくは、X1及びX2はCys残基であり、ジスルフィド結合形成を介した環状化を許す。本発明に従う複合体は、該2つのコピーが、2〜7のアミノ酸のリンカー配列により間をあけられることにおいて特徴付けられる。驚くべきことに、この特定のスペーサー長が、二量体として活性であるPDGFレセプターを、非常に有効にターゲティングすることを許すことが発見された。すなわち、ターゲティングドメインと複合体化された関心のある化合物を含む複合体も提供され、該ターゲティングドメインはアミノ酸配列X1SRNLIDX2-リンカー-X3SRNLIDX4を含み、ここでX1及びX2の対並びにX3及びX4の対が、二環構造が形成され、配列SRNLIDが環の部分であるように、(ペプチド)結合を形成することができ、且つ、該リンカーが2〜7アミノ酸残基からなるアミノ酸配列である。本明細書内上記で議論されたとおり、該リンカーは、4又は5のアミノ酸残基からなりうる。それらは、Gly、Ala、Ser、Asp、Lys、及びThr残基の群から選ばれてよく、好ましくはそれらの少なくとも3がグリシン残基である。好ましいリンカーは、配列K(GS)mGGからなり、ここでmは1又は2である。特定の例として、該ターゲティングドメインは、アミノ酸配列CSRNLIDCKGSGGCSRNLIDCS又はCSRNLIDCKGSGSGGCSRNLIDCSを含み又は当該配列からなる。他の実施態様において、該リンカーは、5又は6アミノ酸残基からなり、好ましくはAsp、Gly、Ala、Ser、及びThr残基の群から選ばれる。良い結果が、4〜7残基のリンカーであって、少なくとも4、好ましくは少なくとも5、がグリシン残基である前記リンカーにより得られた。他の適切なリンカーは、4〜7残基の配列を含み、該残基は、Gly及びAsp残基から選ばれ、例えば[GnDm]であり、ここでn+mが4〜7であり、n≧4であり且つMが0〜3の整数である。特定の実施態様において、該ターゲティングドメインは、アミノ酸配列CSRNLIDC[GnDm]CSRNLIDCを含み又は当該配列からなり、ここでn+mは4〜7であり、n≧4且つMは0〜3の整数である。例えば、該ターゲティングドメインは、配列
からなり又は当該配列を含む。
【0037】
配列SRNLIDの細胞ターゲティングドメインとしての使用は当技術分野で知られている。国際公開第00/23113号パンフレットは、レセプター認識性ペプチド(RRP)を含む環状ペプチドの、5000ダルトンより大きいキャリア分子、例えば血清アルブミン、への複合体化を開示する。例となるRRPは、PDGFレセプター結合性の配列XSRNLIDCXであり、ここでXは環状化の場所を示す。該環状ペプチド構造内に複数のRRP配列が存在しうることが教示されている。1超(例えば5-15の環状ペプチド)をキャリア分子に取り付けることも開示されている。Hagens et al. (2007) Pharmaceutical Res. Vol. 24, pp. 566-574,は、アルブミンに複合体化された環状ペプチドCSRNLIDCの、肝星細胞への送達を示す。すなわち、先行技術の複合体は全て、RRPのキャリア分子への取り付けに依存する。該環状ペプチドがキャリア分子に取り付けられないがその代わりに2〜7アミノ酸の特定のスペーサー長を有するタンデムモチーフ内に置かれるところの本発明の複合体の構築は、当技術分野において教示も示唆もされていない。このよく規定された二環構造が、該キャリアに取り付けられた複数レセプター結合性配列の数及び空間方向がランダム化され且つはるかにより制御されていないところの国際公開第00/23113号パンフレットに従う複合体と比較したときに、二量体PDGFレセプターへの複合体結合を増強することが発見された。本発明の複合体における2つの環状部分の間の距離を固定するタンデム構造は、二量体PDGFレセプターと最適に相互作用するように作られている。さらに、比較的大きなキャリア分子の存在が、立体障害によりレセプター相互作用を減少しうる。
【0038】
該二環ペプチドは化学的に調製されることができ、又は、医薬産業に非常に好ましい製造方法を提供する組み換え技術によって調製されることができる。加えて、該二環構造は、血管外組織に容易に侵入することができる細胞特異的低分子量化合物を生じる、化学的実体(薬剤又はトレーサー)、ポリマー(例えばポリエチレングリコール、PEG)、スモールペプチド、又はタンパク質に直接に取り付けられてよい。特に、腫瘍をターゲティングする為に、この組織侵入は非常に関連しうる。
【0039】
非常に良い結果が、3〜5のアミノ酸残基からなるリンカーにより達成された。一つの実施態様において、該複合体は、アミノ酸配列CSRNLIDC-リンカー-CSRNLIDCS (BiPPB)を含み、ここで該リンカーは2〜7、好ましくは3〜5、のアミノ酸残基のアミノ酸配列である。この二環ペプチドは、PDGFレセプター(PDGF-R)に高い親和性を有する低分子量ターゲティングリガンドとして、適切に用いられる。該ペプチドは、化学合成又は組み換え合成により調製されうる。該リンカーは、検出可能な標識、薬剤及び/又は診断のような、関心のある化合物の共有結合の為に用いられうる反応性側鎖を有する1以上の(1又はそれより多くの)アミノ酸残基を含みうる。適切な反応性アミノ酸は、リジン、セリン、及びスレオニン、アルギニン、ヒスチジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、システイン、アスパラギン、グルタミン、チロシン、メチオニン、及びトリプトファンを含む。
【0040】
生物学的に活性な部分は、サイトカイン、ケモカイン、又はプロスタグランジン活性を含む、任意の種類の有用な生物学的活性を有しうる。それは、タンパク質性又は非タンパク質性の性質を有しうる。例えば、該部分は、薬剤、サイトカイン、ケモカイン、ホルモン、プロスタグランジン、及び同様物から選ばれる群から選ばれる。特定の例は、PGE2、15d-PGJ2、IL-10、IFNγ、切り取られたIFNγを含む。タンパク質性部分は、PDGF-R特異的ターゲティングドメインに遺伝子融合によりN−末端又はC−末端で簡便に取り付けられうる。一つの実施態様において、それは、N−末端に結合される。
【0041】
本発明に従うアナログ又は複合体は、当技術分野で知られている方法によって、コア及び/又はキャリア又は送達分子に結合されうる。適切なコア又はキャリアは、デンドリマー、リポソーム、及び、天然の、合成の、若しくは半合成の(分枝した又は線状の)ポリマーを包含する。デンドリマーは、それら自身が種々の薬剤投与経路において有用な添加物であるとして成功裏に示されており、というのもそれらは薬剤により大きな水溶性、バイオアベイラビリティ、及び生物適合性を与えることができるからである。Chen et al., Journal of Pharmaceutical Sciences, Vol. 97 Issue 1, pg. 123 - 143、を参照されたい。例として、本発明は、デンドリマーに又はリポソームに複合体化されたIFNγアナログを提供する。該リポソームは、(抗ガン)薬剤を含みうる。
【0042】
一つの実施態様において、本発明に従うインターフェロンアナログ又はPDGFRを標的とした複合体は、有効性及び/又は安定性を増大するなど、その薬理学的特性を改善する為に、慣用の手段により修飾される。一つの実施態様において、それは、半減期を増す為に、少なくとも1つの非抗原性ポリマーの取り付けにより、例えばポリエチレングリコール(PEG)及びその誘導体からなる群から選ばれるポリマーにより、修飾される。PEG化は、PEGの反応性誘導体と該標的マクロ分子とのインキュベーションにより普通に達成される。PEGの薬剤又は治療的タンパク質への共有結合は、該剤を宿主免疫系から「マスク」することができ(減少された免疫原性及び抗原性)、該剤の流体力学的サイズ(溶液中におけるサイズ)を増大し、これが腎クリアランスを減少することによりその循環時間を延長する。
【0043】
本発明のさらなる局面は、本発明に従うタンパク質性インターフェロンアナログをコードする又は本明細書内上記で記載されたとおりのPDGFRを標的としたタンパク質性複合体をコードする分離された核酸配列に関する。当業者は、適切な核酸配列、例えば該ターゲティング部分及び該生物学的に活性な部分の両方をコードする融合構築物を、標準的な組み換えDNA技術を用いて設計すること及び構築することができるであろう。該分離された核酸配列は、発現ベクター、例えばバクテリアの又は哺乳類の宿主細胞における組み換えタンパク質産生の為に設計されたベクター、の部分でありうる。また、本発明に従う核酸配列又はベクターを含む宿主細胞も提供され、好ましくは該宿主細胞はバクテリアの又は哺乳類の宿主細胞である。
【0044】
本明細書内に開示されたアナログ又はPDGFにターゲティングされた複合体は、体内でのその分布に関して改善された特性を有する。より具体的には、それは関心のある生物学的に活性な化合物を、関心のある細胞に向けることを許す一方で、その特定の化合物の該生物学的活性を維持することを許す。細胞特異性を獲得する為に、これらのメディエーターは、病気の組織における関連標的レセプター周囲のそれらの濃度を増加するであろうアドレスラベルを備えられる。それ故に、さらなる実施態様は、IFNアナログ又はPDGFを標的とした複合体と医薬的に許容できるキャリアとを含む医薬組成物に関する。特定の局面は、ターゲティングされたIFNγアナログ(a targeted IFNγ analog)、好ましくはターゲティングされていないIFN γと比較して減少された副作用を示すPDGFにターゲティングされたIFNγアナログ、を含む医薬組成物に関する。例となる医薬組成物は、
、を含み又は当該配列からなるペプチドを含む。他の例となる医薬組成物は、ターゲティングドメインに複合体化された生物学的に活性な分子を含む複合体を含み、該ターゲティングドメインは、アミノ酸配列CSRNLIDC-リンカー-CSRNLIDCSを含み、ここで該リンカーは2〜7、好ましくは3〜5、のアミノ酸残基のアミノ酸配列である。
【0045】
ガン、ウィルス性疾患、線維性疾患、硬化性疾患、及び、慢性又は急性の炎症性疾患から選ばれる疾患の治療的又は予防的処置の為の医薬の製造の為の、本発明に従うIFN (γ)アナログの使用も提供される。例となる疾患は、糸球体硬化症、間質性線維症、肺線維症(特発性肺線維症)、アテローム性動脈硬化、関節リウマチ、クローン病、潰瘍性大腸炎、糸球体腎炎、及び敗血症を包含する。
【0046】
INFγが抗ウィルス活性も有することが知られている。INFγの切り取られた形は、ホーミングデバイスが該分子に取り付けられた場合に生物活性であると示され及び天然のINFγの全ての活性を示すと分かるので、本発明のアナログは、抗ウィルス活性も同様に備えられる。例となる疾患は、インフルエンザウィルス又はヒト呼吸器合胞体ウイルス(RSV)により引き起こされる感染症を包含する。RSVは、気道感染症(respiratory tract infections)を引き起こすウィルスである。それは、幼児及び子供の間の下部呼吸管感染症及び通院の主要な原因である。ときどき、幼児は、一つのRSVシーズン内でさえ、1回超症状的に感染されうる。米国において、幼児の60%が、それらの最初のRSVシーズンの間に感染し、及び、ほぼすべての子供が2〜3歳齢までに該ウィルスに感染するであろう。RSVに感染したもののうち、2〜3%が気管支炎を発症し、通院を必要とする。重度のRSV感染症が、老齢の患者の間において増加していることが分かった。ワクチンは無い。処置は、酸素を含む、支援的なケアに限定される。温帯気候において、冬の月の間、毎年の感染症がある。熱帯気候において、感染症は雨期の間に最も一般的なものである。
【0047】
従って、本発明は、ガン、ウィルス性疾患、線維性疾患、硬化性疾患、及び、慢性又は急性の炎症性疾患、例えば糸球体硬化症、間質性線維症、肺線維症(特発性肺線維症)、アテローム性動脈硬化、関節リウマチ、クローン病、潰瘍性大腸炎、糸球体腎炎、及び敗血症など、から選ばれる疾患の治療的又は予防的処置の為の方法にも関し、該方法は、その必要がある対象に、治療的に有効な量の本発明に従うIFNアナログを与えることを含む。該疾患は、肝臓疾患、好ましくは慢性肝臓疾患、例えば肝硬変など、でありうる。当技術分野の当業者は、施与されるべき用量を投与が生じる対象の投与様式、サイズ、体重、健康状態などに調節するであろう。投与は、医薬の投与の為にそれ自体既知の任意の様式で行われうる。本発明に従うIFNγアナログは、例えば経鼻投与又は吸入により、肺内送達の為の形にある医療組成物(治療的又は予防的)において有利に用いられる。また、IFNγアナログを活性成分として含む吸入装置も提供される。
【0048】
実験の部
【0049】
肝臓線維症は、肝臓瘢痕形成をもたらす細胞外マトリックス成分の過剰蓄積により特徴付けられる。今日まで、肝臓線維症処置の為に利用可能な成功した治療はない。肝星細胞(HSC)及び線維芽細胞が、該疾患の進行に関与する重要なエフェクター細胞であり、これらは血小板由来成長因子(PDGF)及び形質転換成長因子β(TGFβ)のような重要な成長因子により活性化される。インターフェロンガンマ(IFNγ)は、肝臓線維症の間にインビトロ及びインビボで種々の有益な効果を有すると示された。しかしながら、IFNγは厳密な種特異性を示し、及び、短い循環半減期を有し、これはその潜在的な臨床的使用を制限する。さらに、INFγは、免疫系に対し、内皮細胞に対し、及び中枢神経系に対し(例えば、うつを引き起こす)、深刻な有害作用を有し、これは全て患者の臨床試験からの頻繁な離脱をもたらしそしてその結果これらの試験の失敗をもたらす。これらの欠点を回避する為に、本発明者らは、該細胞外レセプター認識部位を欠き且つ下流IFNγシグナリングカスケードで直接に相互作用するシグナリング部分を有し、それによりIFNγの予期される機能を維持する、IFNγの安定なペプチド模倣物を作った。
【0050】
IFNγ及びIFNγ模倣ペプチドの特異性を増加する為に、BiPPB(Bicyclic peptide against the PDGF−beta−receptor、PDGF−β−レセプターに対する二環ペプチド)に連結されたIFNγ及び模倣ペプチドが生成された。というのも、PDGFレセプター発現は肝臓損傷の間に、特にHSCにおいて、高度に上方制御されるからである。
【実施例1】
【0051】
模倣IFNγのクローニング。マウス脾臓細胞が新鮮な脾臓から分離され、そして、サイトカイン産生を刺激する為にPHA(フィトヘマグルチニン)の存在下で培養された。24時間の刺激後、RNAが単離され、そして、cDNAが、遺伝子特異的リバースプライマーを用いて合成され、次に、模倣IFNγ特異的フォワードプライマー及びリバースプライマーを用いて、Phusion DNAポリメラーゼによるPCR増幅が行われた。得られた断片が、pET42a (原核生物発現ベクター)中にPshA1/EcoRI部位でクローン化され、そして、陽性クローンが制限消化分析によりチェックされた。図1を参照されたい。
【0052】
切り取られたマウスインターフェロンガンマの5’->3’ヌクレオチド配列(NCBI Reference sequence: NM_008337.2) (nt457-nt572)は以下のとおりである:
【0053】
該配列における最後のアミノ酸であるシステインの前にストップコドンを挿入する為に、最後のヌクレオチドが追加された。該ペプチドの適切な折り畳みを提供する為に及びまた(BiPPBとの)該融合タンパク質におけるジスルフィド結合に起因する不適切な折り畳みを回避する為に、システインは該配列から除去された。
【0054】
コードされたアミノ酸配列は
である。
*はストップコドンを示す
【0055】
IFNγ−BiPPB及び模倣IFNγ−BiPPBのクローニング。該二環のPDGFターゲティングドメインBiPPBをコードする核酸配列が、4つのプライマー(それぞれの断片について2つ)を用いた2つの断片の増幅により生成され、そして次に、本来備わっているBam HI制限部位を用いてライゲーションされ、そして次にScaI/NotI部位でpET39bベクター中にクローン化された。IFNγ及び模倣IFNγが、ペプチド融合プライマー(フォワード)及びIFNγ又は模倣IFNγリバースプライマーを用いてPCR増幅された。その増幅された断片が、NotI/XhoI部位で消化されそしてpET39b-BiPPBベクターにライゲーションされ、そして、陽性クローンが制限消化分析によりチェックされた。図4及び5を参照されたい。全ての構築物の配列がさらに、自動化されたDNAシークエンシングにより確認された。
【0056】
BiPPB
BiPPBについてのヌクレオチド配列:
BiPPBについてのアミノ酸配列:
CSRNLIDCKGSGGCSRNLIDCS
(図3も参照されたい)
【0057】
インターフェロンガンマ(完全長)
ヌクレオチド配列:マウスインターフェロンガンマ(NCBI参照配列: NM_008337.3)
マウスIFNガンマについてのアミノ酸配列
融合タンパク質(BiPPB-IFNγ)のヌクレオチド配列
BiPPB-IFNγについてのアミノ酸配列
イタリックはBiPPBを示す、通常のテキストがIFNγ模倣物を示す、太字はリンカー又はスペーサーを示す。図4も参照されたい。
【0058】
BiPPBに連結された模倣インターフェロンガンマ
融合タンパク質(BiPPB-IFNγ模倣物)のヌクレオチド配列
BiPPB-IFNγ模倣物についてのアミノ酸配列
イタリックはBiPPBを示す、通常テキストがIFNγ模倣物を示す、太字はリンカー又はスペーサーを示す。図5も参照されたい。
【0059】
核酸が次に、IPTG誘導を用いた発現の為に、BL21細胞(E.coli)中に形質転換された。発現されたタンパク質は、抗IFNγ抗体及び/又は抗PPB抗体を用いて、SDS-PAGE及びウェスタンブロット分析若しくはドットブロット分析により分析された(図6参照)。発現されたタンパク質(Hisタグを有する)は、次に、Ni-NTAカラムクロマトグラフィーによりネイティブな状態の下で精製された。該タグはタンパク質分解的に開裂され、そしてさらに、セファロースカラムクロマトグラフィーを用いて精製された。
【実施例2】
【0060】
開裂され且つ活性な模倣IFNγの抗線維効果
我々は、免疫−細胞化学により評価されたときの(α−SMA染色)、マウスNIH3T3線維芽細胞における開裂したIFNγ模倣ペプチドの抗線維効果を評価した。簡潔に言うと、3T3線維芽細胞が、24ウェルプレート中に6x104細胞/ウェルの密度で蒔かれ、24時間後、細胞が0.5% FBS含有培地で一晩飢餓状態にされた。その後、細胞が、種々の化合物(PDGF 50 ng/ml、TGFβ 10 ng/ml、模倣IFNγ 1μg/ml、50ng/mlのPDGF + 1μg/mlの模倣IFNγ、及び10 ng/mlのTGFβ+1μg/mlの模倣IFNγ)を有する飢餓培地中でインキュベートされた。48時間のインキュベーション後、細胞が洗浄され、エタノール:アセトン(1:1)により固定され、そして、α−SMA(活性化した線維芽細胞のマーカー)について染色された。
【実施例3】
【0061】
ヒトLX2細胞におけるBiPPB及び模倣IFNγ−BiPPBの結合研究。
我々は、LX2細胞(ヒトHSC)におけるBiPPB及び模倣-BiPPBの結合を決定した。簡潔に言うと、LX2細胞が、48ウェルプレート中に、3x104細胞/ウェルの細胞密度でプレートされた。24時間後、細胞が培地(−FBS)中で一晩飢餓状態にされた。次に、結合の為に、細胞が種々の化合物(BiPPB、PPB-HAS、及びBiPPB-模倣IFNγ)と、2時間室温でインキュベートされた。結合後、細胞がPBSにより強く洗浄され、エタノール:アセトン(1:1)により固定化され、そして、PPBについて染色された。結果が図7に示される。
【実施例4】
【0062】
マウスにおけるCCl4誘発急性肝臓損傷におけるインビボ効果研究:
組み換えIFNγ、模倣IFNγ、組み換え融合タンパク質IFNγ−BiPPB、及び組み換え融合タンパク質模倣IFNγ−BiPPBが、CCl4誘発急性肝臓損傷マウスモデルにおける抗線維効果について試験された。1日目で、該動物は、オリーブ油中の四塩化炭素(CCl4)又はオリーブ油(対照n=6)の1回の腹腔内投与量(1ml/kg)を与えられた。CCl4注入の24時間後、2及び3日目で、動物が、PBS (n=6)、50,000 U/マウスのIFNγ (n=6)、50,000 U/マウスの模倣IFNγ(n=5)、50,000 U/マウスのIFNγ-BiPPB (n=6)、50,000 U/マウスの模倣IFNγ-BiPPB (n=6)のいずれかにより処置された。その後、4日目で、動物は犠牲にされ、そして、血球計数が実施され、及び、抗線維症効果(Hemmann S, Graf J, Roderfeld M, Roeb. J Hepatol. 2007 May;46(5):955-75を参照)が定量的PCRを用いて評価された。結果が図8及び9に提示される。
【0063】
図8に提示されたデータは、模倣-BiPPBが、CCl4により誘発された肝線維症に関連付けられた全血中の白血球数(WBC)及びリンパ球数(lym)の上方制御を減衰することにおいて、修飾されていないINFγよりも有効であることを示す(p<0.01)。対照的に、INFγ処置に関連付けられた血小板数(PLT)の減少(これはINFγの良く知られた副作用である)が、動物が修飾されていないINFγの代わりに模倣INFγ-BiPPBを受ける場合、より重度でない(p< 0.0025)。
【0064】
図9に提示されたデータは、模倣INFγ-Bi-PPBが、抗線維症効果を授けられていることを示す:それは、CCl4により誘発されたマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP13)上方制御を減衰する。MMP-13対メタロプロテイナーゼ組織インヒビター(TIPM1)の比が、天然INFγにより得られたものと同様であるが、模倣INFγよりも良く(p<0.03)、Bi-PPBの模倣INFγへの結合が有益であることを示す。まとめると、図8及び9におけるデータは、模倣INFγ-BiPPBが、天然INFγと比べてより強力であり及びより少ない副作用を有することを示す。
【実施例5】
【0065】
模倣インターフェロンγ複合体の化学合成:
【0066】
模倣IFNγ-PEG-BiPPB複合体:0.111μmolの二環PDGFR認識性ペプチド(BiPPB, 2223.2 Da, Genosphere Biotechnologies)が、0.337 μmolのマレイミド-PEG-スクシンイミジルカルボキシメチルエステル(Mal-PEG-SCM, 2 KDa, Creative PEGworks)と3時間結合された。その後、リジン(0.337 μmol)が、Mal-PEG-SCMの遊離基をブロックする為に添加された。1時間の反応後、合成された産物BiPPB-PEG-MAL (0.112 μmol)が、0.56 μmolの模倣IFNg-ATA(4689 Da, Genosphere Biotechnologies)と、脱アセチル化試薬の存在下で一晩室温で反応させられた。最後に、合成された模倣IFNγ-PEG-BiPPB複合体(8828.2 Da)が、7 KDa slide-a-lyzer G2透析カセット(Thermo scientific)を用いてPBSに対して広範に透析された。
【0067】
模倣IFNγ-PEG複合体:0.107 μmolの模倣IFNγ-ATA (4689 Da)が、0.321 μmolのポリ(エチレングリコール)-スクシンイミジルα-メチルブタノエート(mPEG-SMB, 2 KDa, Nektar therapeutics)と2時間反応させられ、そして次に、産物が広範に透析された。
【0068】
【実施例6】
【0069】
急性肝損傷マウスモデルにおける模倣IFNγ-PEG-BiPPBの静脈内投与後の線維症パラメータに対する効果
【0070】
タンパク質レベルでの線維症パラメーターの分析:
肝損傷を誘発する為に、マウスが腹腔内にCCl4を1日目に注入された。2及び3日目で、マウスは、IFNγ(5 ug/投与量)、模倣IFNg-PEG、模倣IFNg-PEG-BiPPB (5μg/投与量)、又はPBS単独により処置された。4日目で、動物が犠牲にされ、肝臓及び種々の臓器がさらなる分析の為に集められた。肝臓切片がアセトンにより固定化され、乾燥され、そしてPBSにより再水和された。次に、該切片が、一次抗体(コラーゲン、SMA、及びデスミン)と一緒に1時間インキュベートされた。その後、該切片が、内因性ペルオキシダーゼ活性に対する0.03%のH2O2により30分間ブロックされた。その後、切片が二次抗体HRP結合ウサギ抗ヤギ抗体(1:100、DAKO)、次にHRP結合ヤギ抗ウサギ抗体(1:100、DAKO)と、30分間インキュベートされた。ペルオキシダーゼ活性が、AEC(Sigma)を用いて20分間発現され、そして、核がヘマトキシリン(Fluka)により対比染色された。該切片は、カイザーゼラチンを載せられ、そして、光学顕微鏡(Olympus)下で可視化された。定量的分析の為に、27の顕微鏡写真が撮られ、そして、陽性に染色した領域がコンピュータ化オリンパスCell Dイメージングソフトウェアを用いて定量された。結果が図10に示される。
【0071】
遺伝子発現レベルでの線維症パラメータの分析:
肝臓組織からの全RNAが、製造者の指示に従いRNeasyミニキット(Qiagen)を用いて単離された。RNA濃度は、UVスペクトロメーター(NanoDrop Technologies、ウィルミントン、デラウェア州)により定量された。全RNA(1.6 mg)が、cDNA合成キット(Promega)を用いた全量50 μlでの逆転写の為に用いられた。全てのプライマーは、Sigma-Genosys(Haverhill、英国)から購入された。10ngのcDNAが、定量的リアルタイムPCR分析の為に用いられた。反応は、製造者の指示に従いSYBRグリーンPCRミックス(Applied Biosystems)を用いて実施された。試料は、ABI7900HTシークエンス検出システム(Applied Biosystems)により分析された。最後に、閾値サイクル数(threshold cycle number、Ct)が、それぞれの遺伝子について計算され、そして、相対的な遺伝子発現が、参照遺伝子GAPDHの発現についての正規化後に計算された。結果が図11に示される。副作用の分析が図12に示される。
【実施例7】
【0072】
確立された進行した肝臓線維症マウスモデルにおける模倣IFNγ-PEG-BiPPBの静脈内投与後の線維症パラメータに対する効果
【0073】
タンパク質レベルでの線維症パラメータの分析:
オスのbalb/cマウス(20-22g)が、オリーブ油又は増加する用量のCCl4 (1週目: 0.5 ml/kg; 2週目: 0.8 ml/kg、及び3〜8週目: 1 ml/kg、オリーブ油中に調製された)により週2回、8週間の腹腔内注入で処理された。7及び8週目において、マウスは、静脈内に、PBS、模倣IFNγ-PEG、又は模倣IFNγ-PEG-BiPPB (5μg/マウス、週当たり3回)により処置された。全てのマウスが8週目で犠牲にされ、血液及び肝臓試料が次の測定の為に集められた。肝臓切片は、コラーゲンI及びデスミン、CD68、33D1、及びMHCクラスIIについて染色された。標的とされた切り取られた形のIFNγ(模倣IFNγ-biPPB)が、マウスにおけるこの慢性肝臓線維症における線維症パラメータの実質的な減少を誘発することが発見され、コラーゲンI及びデスミン両方の染色が、処理されていないCCl4-マウスと比較して、模倣IFNγ-biPPBにより処理されたCCl4マウスにおいて顕著に減少された。対照的に、レセプター結合部位を欠くターゲティングされていない模倣IFNγによる処理は、これらのパラメータに対する効果を何も誘発しない一方で完全長マウスIFNγはコラーゲンI及びデスミン染色における少しの減少だけを誘発した。天然(マウス)IFNγは、炎症細胞(CD68+マクロファージ、好中球、33D1+樹状細胞)の浸潤を誘発し、及び、増加したMHCII発現を誘発した。対照的に、模倣IFNγ-BiPPBは、肝臓におけるこの増加した炎症応答を誘発しなかった。
【実施例8】
【0074】
PDGFレセプターにターゲティングされた切り取られたIFNγアナログは活性であるが、より少ない副作用を引き起こす。
【0075】
模倣IFNγに化学的に結合したBiPPBのターゲティングされた複合体が合成され、そして、ウェスタンブロット分析を用いて及びマウス3T3線維芽細胞におけるインビトロのその抗線維症効果について特徴付けされた。インビボで、該ターゲティングされた複合体は、マウスにおいてCCl4により誘発された4日(急性)肝臓線維症モデルにおいて及び8週(慢性)肝臓線維症モデルにおいて試験された。いくつかの線維症パラメーター及び炎症細胞の浸潤が、免疫組織化学及び遺伝子発現分析を用いて該肝臓において評価された。
【0076】
結果:成功裏に合成された該複合体は、TGFβにより誘発されたマウス線維芽細胞におけるコラーゲン発現の阻害を引き起こした。インビボで、IFNγの該ターゲティングされたペプチド模倣物(模倣IFNγ-biPPB)が、マウスにおける急性及び慢性肝臓線維症モデルの両方において線維症パラメータにおける実質的な減少を誘発した。レセプター結合性ドメインを欠くターゲティングされていない模倣IFNγによる処置は何も効果を示さず、そして、修正されていないマウス完全長IFNγは穏やかな減少だけを示した。このマウス完全長IFNγは、炎症細胞(CD68+マクロファージ、好中球、33D1+樹状細胞)の浸潤を誘発し、及び、増加したMHCII発現を誘発した。対照的に、模倣IFNγ-BiPPBは炎症応答を誘発しなかった(データは示されていない)。
【実施例9】
【0077】
マウスにおける皮下腫瘍モデルにおける模倣IFNγ-PEG-BiPPBによる研究
【0078】
材料及び方法
20〜25gの重さの正常なオスのC57BL/6及びBalb/cマウスがHarlan (Zeist、オランダ)から得られた。それらは、12:12時間の明/暗サイクルで維持され、及び、自由に標準的な食餌を受けた。動物研究についての全ての実験プロトコルは、グローニンゲン大学の動物倫理委員会により承認された。皮下腫瘍を誘発する為に、C26細胞が、それらを増殖フェーズに維持する為に、動物における注入の1日前に、125-mm3フラスコにおいて培養された。細胞がトリプシン処理により脱着され、そして、トリプシンが遠心により除去された。細胞ペレットがPBS中に再懸濁された。100μlのPBS中に懸濁された1 × 106の細胞 (B16及びC26細胞)の全部がBalb/cマウスの脇腹に皮下注入された。腫瘍成長が、デジタルVernierカリパー(a digital Vernier caliper)を用いて腫瘍サイズを測定することにより追跡された。腫瘍体積が式:a × b2 / 2、を用いて確立され、ここでaは腫瘍長さを示し、そして、bは腫瘍幅を示す。C26腫瘍が、記載されたとおりに、マウスにおいて誘発された。処置が、腫瘍体積が50〜100mm3に達した5日目に開始された。というのも、この腫瘍サイズが該処置の開始のための最適な腫瘍サイズとして示されているからである。動物(群当たりn=4)が、麻酔(O2/イソフルラン)下で1日おきに、ビヒクル(PBS)、模倣IFNγ-PEG (5μg/投与)、又は模倣IFNγ-PEG-BiPPB (5 μg/投与)の6の用量を静脈内に注入された。腫瘍サイズは麻酔科で測定された。C26腫瘍を有する動物が、20日目で殺された。というのも、該処置の効果が観察されなかったからである。動物は、ガス麻酔(O2/イソフルラン)下で殺され、そして腫瘍が分離され、そして、凍結切片の為に冷たいイソペンタン中に固定化された。
【0079】
4μm厚のクライオスタット切片が、瞬間凍結された組織から調製され、そして、標準的な免疫ペルオキシダーゼ方法に従いCD31について染色された。我々は、C26腫瘍の腫瘍切片における血管腔面積及び血管密度の決定の為に、CD31染色(内皮細胞マーカー)を分析した。結果は、未処理腫瘍における及び模倣IFNγにより処置されたマウスの腫瘍における有意な血管新生を示し、一方で、模倣IFNγ-BiPPBにより処置されたマウスが、それらの腫瘍における血管新生の大幅な減少を示した(データは示されていない)。
【実施例10】
【0080】
肺線維症に対する、PDGFレセプターにターゲティングされた切り取られたIFNγの効果
【0081】
IPF患者におけるIFNγに基づく治療についての背景及び原理
【0082】
特発性肺線維症(IPF)は、診断に続くわずかに3〜5年平均生存期間を有する進行性の実質性肺疾患(a progressive parenchymal lung disease)である1,2。IPFのほかに、他の種類の肺線維症も貧しい予後を有し、特に線維化する非特異性間質性肺炎(fibrosing non-specific interstitial pneumonia:NSIP)及び、例えばいくつかの自己免疫疾患及び外因性アレルギー性肺胞炎の、末期線維症が貧しい予後を有する。現在、疾患メカニズムの乏しい理解の故に、肺線維症のための有効な治療は無い。
【0083】
線維芽細胞(筋線維芽細胞)は、肺線維症の全てのタイプにおいて中心的な役割を果たす3。継続的な肺への損傷が、線維芽細胞の動員及びそれらの筋線維芽細胞への形質転換を伴う、異常に制御された修復メカニズムの開始をもたらす。筋線維芽細胞は、コラーゲンのような細胞外マトリックス成分の過剰量を生産する線維症における重要なエフェクター細胞である。筋線維芽細胞は現在、肺線維症の処置の為の重要な治療標的であると考えられている3。筋線維芽細胞の増殖及び形質転換における重要な成長因子は、形質転換成長因子β(TGFb)、血小板由来成長因子(PDGF)、及びエンドセリン-1であり、そして、多くの新たな治療がこれらの因子又はそれらのレセプターを阻害することに焦点を当ててきた。しかしながら、筋線維芽細胞挙動を調節することに基づく臨床試験のほとんどが失望させる結果を示した1。
【0084】
インターフェロンガンマ(IFNγ)はおそらく、IPFの臨床試験において最も研究された抗線維症メディエーターである。それは、STAT-1(Signal Transducers and Activators of Transcription-1)依存性経路を通じて筋線維芽細胞の増殖停止及びアポトーシスを媒介し、これは、線維生成応答の解決にとって重要である4。最初の有望な開始にもかかわらず、大規模なINSPIRE試験は、IFNγが生存期間を延ばさないことを結論付けた5。しかしながら、IFNγは、皮下に投与され、そして、IFNγレセプターは体内のほとんどすべての細胞上に見られるので、それは深刻な、用量を制限する副作用を有する。これらは、インフルエンザ様の病気及びけん怠感を含む5。吸入された投与は、この問題を部分的に回避することができ、そして、一つの臨床試験が現在、IPFにおけるエアロゾル化IFNγの効果を研究する為に登録されている(http://clinicaltrials.govを参照)。
【0085】
筋線維芽細胞内のIFNγの濃度、すなわちその有効性、を増加する為の他の方法は、薬剤ターゲティングの概念を用いることである:薬剤が、標的細胞により特異的に取り込まれる細胞選択的薬剤キャリアに結合され、該薬剤がそれらの細胞内で遊離され、それにより全身的な副作用を減少する一方で、標的細胞内の高い局所的濃度を得る。例えば、筋線維芽細胞は、薬剤ターゲティング目的の為に用いられうるPDGFレセプターを特異的に上方制御する6。
【0086】
CCl4は肝臓線維症を誘発するけれども、肺もまたシトクロムP450活性の低い発現を有し、そして、CCl4(この酵素により毒性化合物へと変化される)は、それ故に、肺組織においてもわずかに活性化される。これらは、PDGFレセプターを次に発現する線維症促進細胞の活性化をもたらし、これが線維症促進活性を開始する。このモデルは突発性肺線維症(IPF、参考文献8及び9を参照)のモデルとして用いられてきた。肝臓組織におけるINFγの抗線維症効果を探索する一方で、肺組織における有意な変化が調査者らにより注目された。CCl4により処理されたマウスからの肺の質量は、正常なマウスの肺よりも有意に高かったが(正常における体重の0.75 ± 0.05 %対未処置のCCl4により処理されたマウスにおける体重の2.03 ± 0.15 %; P< 0.01)、この増加はPPB-PEG-INFγによる処置によって有意に減少された(体重の1.53 ± 0.11 %; P<0.05、対未処置のCCl4マウス)。顕微鏡検査が、CCl4により処理されたマウスの肺がびまん性肺胞炎(線維症に進行しうる状態)により冒されていることを明らかにし及び肺が増大したコラーゲン染色を示した。これらのマウスがPDGFレセプター認識性ペプチドに結合したIFNγにより処置された場合、我々は肺における有意に減少した肺胞炎及び減少したコラーゲン沈着を発見した。注目すべきは、ターゲティングされたIFNγのこれらの有益な効果が、肺疾患を確立した後に得られたことである。
【0087】
それ故に、我々は、PDGFレセプターにターゲティングされたINFγが、有意なPDGFβレセプター発現を有する任意の組織において蓄積することができ、そして、肺におけるその効果により示されると同様に他の組織においても抗線維症効果を発揮することができると結論付ける。本発明のINFγアナログは、すなわち、PDGFレセプターの増加した発現により特徴づけられる他の組織における突発性線維症及び他の形の線維症又は硬化症の処置の為に用いられうる。
【実施例11】
【0088】
切り取られたIFNガンマの種々のレセプターへのターゲティング
【0089】
この実験において、マウスIFNγのシグナリング部分(模倣IFNγ)及び細胞表面ターゲティングドメインを有する本発明のアナログが、PDGFレセプターだけでなく、他の細胞表面レセプターにも効率的にターゲティングされうることが示される。試験された例となるターゲティングドメインは、ラクトース(アシアログリコプロテイン(ASGP)についてのリガンド)、マンノース(マンノースレセプター(CD 206)についてのリガンド)、及びトリペプチドRGD(レセプターαvβ3インテグリンレセプターについてのリガンド)を含む。模倣IFNγの配列は、FEVNNPQVQRQAFNELIRVVHQLLPESSLRKRKRSRからなった。IFNγ活性を試験する為の種々の細胞タイプ及び種々のパラメータが本研究に用いられた。対照試料は、無傷のマウスINNγにさらされた。詳細について、以下の表を参照されたい。
【0090】
【0091】
ラクトース−HSA-PEG-IFNγによる実験:
【0092】
合成
【0093】
ラクトース-HSA (ヒト血清アルブミンに結合した25のラクトース分子)が、二重機能的PEG分子(2KDa)に複合体化された。透析の後に、ラクトース-HSA-PEGが、マウスから得られたSATA修飾された切り取られたIFNγに結合された。合成された産物(Lac-HSA-PEG-模倣IFNγ)がPBSに対して広範に透析された。
【0094】
ヒト肝細胞における実験:
【0095】
ヒト肝細胞(HepG2)が、12のウェルプレート中にまかれた(1x105細胞/ウェル)。細胞が、一晩5%/37℃/CO2インキュベーター中で増殖させられた。次に、細胞が、Lac-HSAによる2時間のブロッキング後、培地、マウスIFNγ(1ug/ml)、ヒトIFNγ(1ug/ml)、マウスIFNγ由来Lac-HSA-PEG-IFNγ(1ug/ml)、Lac-HAS、又はLac-HSA-PEG-IFNγ (1ug/ml)とインキュベートされた。24時間のインキュベーション後、細胞が溶解され、RNAが分離され、そして、逆転写された。そのcDNAが、Inter-Cellular Adhesion Molecule 1 (ICAM1)発現の分析の為に用いられた(これはIFNγに応答して誘発されると知られている)。18srRNAが、ハウスキーピング対照として用いられた。
【0096】
結果:
【0097】
予想されたとおり、マウスの切り取られたIFNγもLac-HSAも、ヒト肝細胞におけるICAM1発現を誘発しなかった一方で、ヒトIFNγ及びマウス由来Lac-HSA-PEG-IFNγが、ヒト肝細胞におけるICAM1発現を上方制御した。さらに、Lac-HSA-PEG-IFNγにより誘発されたICAM1発現は、Lac-HSAの過剰によりほとんど完全にブロックされた。
【0098】
結論:
【0099】
INFγの種特異性が、マウス(切り取られた)INFγがヒト肝細胞において無効であることを示すことによって確認された。しかしながら、このサイトカインは、アシアログリコプロテイン(ASGP)レセプターを介して肝細胞へ進入すると知られている、標的部分ラクトースへの結合後、ヒト細胞において生物活性な化合物に変化された。ASGPレセプターについての特異性が、Lac-HSAによるこのレセプターの妨害により示された。これは、INFγのシグナリング部分(これは種特異的でない)が、線維芽細胞以外の標的細胞の細胞質内へ、PDGFレセプター以外の標的レセプターを介して、ペプチドの代わりに糖部分を用いて、送達されうることを実証する。肝細胞ターゲティングは、B型肝炎及びC型肝炎の処置に特に関連し、及び、ICAM-1上方制御は抗ウィルス活性を増大する為の生理学的応答である。この実験は、本発明に従う細胞特異的な切り取られたINFγの抗ウィルス性化合物としての使用を裏付ける。
【0100】
同様に、マンノースが、標準的な技術(L. Beljaars et al J. of Hepatology 29: 579-588, 1998)に従い、切り取られたマウスINFγに連結され、そして、このマンノシル化INFγの生物活性が、マウスマクロファージにおいて、読み取りパラメータとしてのMHCクラスII発現により示された(rtPCR方法)。
【0101】
内皮結合性ペプチドRGD又はその対照ペプチドRAG(これはこれらの細胞に結合しない)も、標準的な方法に従い、切り取られたマウスINFγに連結された。得られたアナログが、それらの生物学的活性について、内皮細胞(H5V)の培養物において、血管新生を反映するパラメータである管形成を測定することにより評価された。H5V細胞による管形成は、このアッセイにおいてRGD-模倣INFγにより最も強力に阻害された(データは示されていない)。
【0102】
結論:ターゲティング部分(例えばオリゴ糖又はペプチド)への複合体化による切り取られたマウスINFγの修飾は、このサイトカインのシグナリング部分の生物活性を妨げること無く、実行可能である。天然のレセプターへの結合において欠陥があるが代わりに該アナログの細胞取り込み媒介する異なる細胞表面レセプターへ結合できるINFγアナログの送達は、より少ない副作用を有するより有効な治療適用を許す。
【0103】
【実施例12】
【0104】
培養された又は新たに分離された初代細胞へのBiPPBの結合性研究
【0105】
この実験は、化学的に製造された又は組み換え技術により製造されたBi-PPBのいずれもが、PDGFβレセプターに特異的に結合することを示す。レセプター特異性は、特異的な抗PDGF-βレセプター抗体との結合を妨害することにより示される。BiPPBは、それがラット、マウス、及びヒトの筋線維芽細胞様細胞に結合するので、種に非特異的である。単環の形は該標的レセプターに結合しないので、レセプター相互作用は少なくとも2つの環状ペプチドを要求する。
【0106】
BiPPBの配列
Cys(1)-Cys(1)及びCys(2)-Cys(2) ジスルフィド架橋環状化
【0107】
方法
【0108】
BiPPBの結合が、初代の新たに分離されたラット肝星細胞において実施された。細胞が、8ウェルのガラスプレート (Lab-Tek,、Nunc、ネーパービル、IL)中に、30,000細胞/ウェルで、培養培地中に蒔かれた。一晩の37℃/5%CO2でのインキュベーション後、細胞がPBSにより洗浄され、そしてその後、FITC標識されたPPB (単環)又はBiPPB (二環: 10 μg/ml)と一緒に、室温でインキュベートされた。結合を妨害する為に、FITCに結合したPPB又はBiPPBの1時間前に、抗PDGF-βRIgGが該細胞に添加された。2時間後、細胞が冷たいPBSにより3〜4回洗浄され、そして、4%パラホルムアルデヒドにより固定化された。核がDAPIにより対比染色され、そして、シチフロー(citifluor、抗劣化試薬)中に包埋され、そして、蛍光顕微鏡下で可視化された。
【0109】
同様の結合性実験が、初代の新たに分離されたヒト筋線維芽細胞、マウス3T3線維芽細胞、及びヒト肝星細胞(LX2)において実施された。ヒト肝星細胞について、BiPPBの配列は以下の通りであった:
Cys(1)-Cys(1)及びCys(2)-Cys(2) ジスルフィド架橋環状化
【0110】
結果:PDGFレセプターは二量体相互作用を要求するので、FITCに結合した単環のPPBは何も結合を示さなかった。FITCに結合したBiPPBは、試験された細胞タイプへの有意な結合を示し、これはPDGFレセプター抗体によりほとんど完全にブロックされ、これらの細胞への結合のレセプター特異性を示す(データは示されていない)。
【技術分野】
【0001】
本発明は医薬の分野に関する。とりわけ、それは、より少ない望ましくない副作用を示すインターフェロン(IFN)の生物学的に活性なアナログ、及び、その治療的使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
約10の異なるIFNが哺乳動物において同定されている;このうち7つはヒトに関して説明された。それらは、典型的には、3つのIFNクラスのうちに分けられる:I型IFN、II型IFN、及びIII型IFN。全てのI型IFNは、IFNAR1及びIFNAR2鎖からなるIFN−αレセプター(IFNAR)として知られる特異的細胞表面レセプター複合体に結合する。ヒトにおいて存在するI型インターフェロンは、IFN−α、IFN−β、及びIFN−ωである。II型インターフェロンはIFNGRに結合する。ヒトにおいて、これは、IFN−γである。それらの特異的な細胞表面レセプターと相互作用することにより、IFNは、シグナル伝達兼転写活性化因子(signal transducer and activator of transcription (STAT))複合体を活性化する;STATは、いくつかの免疫系遺伝子の発現を制御する転写因子のファミリーである。いくつかのSTATは、I型及びII型のIFNの両方により活性化される。しかしながら、それぞれのIFN型はまた固有のSTATを活性化しうる(Platanias, L. C. 2005 Nature reviews. Immunology 5 (5): 375-386)。
【0003】
全てのIFNクラスに属するIFNはウィルス感染と戦う為に非常に重要である。それらは宿主細胞内のウィルス複製を「阻害(interfere)」するそれらの能力にちなんで名づけられているけれども、IFNは他の機能を有する:それらは免疫細胞、例えばナチュラルキラー細胞及びマクロファージなど、を活性化する;それらはTリンパ球への抗原提示を上方制御することにより感染又は腫瘍細胞の認識を増す;及び、それらはウィルスによる新たな感染に抵抗する為の感染していない宿主細胞の能力を増す。いくつかの宿主の症状、例えば筋肉痛及び熱など、は感染の間のIFNの産生に関連付けられる。
【0004】
IFNγは、活性化した免疫細胞により産生される多面的サイトカインである。それは、ほとんど全ての細胞タイプ上に発現されるIFNγレセプターを通じて作用する。しかしながら、それは厳密な種特異性を示す。IFNγは、有意な効果により、免疫学的疾患、ウィルス性疾患、及びガン疾患の処置の為に適用されてきた(Younes and Amsden, J Pharm Sci 2002)。加えて、いくつかの研究は、腎及び肝線維症におけるIFNγの潜在的な役割を実証した(Kidney Int. 1999 ;56:2116-27, Hepatology 1996 23:1189-99)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
残念ながら、現在利用可能なインターフェロンの短い循環半減期及び望ましくない全身性副作用は、その臨床的適用を限定し、及び、臨床試験を停止さえした。これらの問題を回避する為に、例えばIFNγをリポソーム、ミクロスフィア、及びエラストマーに組み込むことにより、多くの試みがなされてきた(Pharm Res. 2000 17 :42-8, Pharm Res. 1996 13:1464-75, J Control Release. 2005 102:607-17)。細胞特異的送達アプローチはこれまで用いられてこなかった。そのようなアプローチは一般に、生物学的効果を引き起こす為にそれら自身のレセプターに送達される必要があり、その結果それらはこれらのレセプターを発現する標的細胞に行きつくサイトカインにとって不可能であると考えられている点で、これは驚くべきことでない。それ故に、他の標的レセプターへの送達は、ほとんどの場合において有用でなく、そして、せいぜい、活性の喪失又は有害な効果のさらなる多様化を引き起こす他の細胞タイプにおける取り込みをもたらすであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
しかしながら、本発明者らは、INFの構造が独特なターゲティング機会をもたらすことを認識した。というのも、該分子は、種特異的であるレセプター結合部分及び種特異的でなく且つ細胞内で作用するシグナリング部分を有するからである。驚くべきことに、IFNγのその独特な構造がIFNγの該シグナリング部分の他の標的レセプターへの送達を、この新しい標的レセプターがこのシグナリング部分の細胞内放出及び次の細胞内/核のINFγシグナリング経路の活性化を許すことを条件として、許すことが発見された。例えば、血小板由来成長因子(PDGF)を標的とした切り取られたIFNγ模倣物は、急性肝障害マウスモデルにおいて、完全長INFγ又はターゲティングされていないIFNγ模倣物と比較したときに、有意により少ない全身性副作用を示した。
【0007】
従って、本発明は、インターフェロン(IFN)のアナログに関し、ここでその天然のレセプターに結合することを媒介する部分が少なくとも機能的に破壊されており且つ該アナログは細胞内IFN活性を媒介することができるシグナリング部分を含み、該シグナリング部分はそのN末端で、任意的にリンカーを介して、該IFNレセプター以外の細胞表面レセプターに結合することができる少なくとも一つのターゲティングドメインを備えられている。好ましくは、該アナログはIFNガンマ(IFNγ)アナログである。
【0008】
異種のターゲティング部分を備えられたインターフェロンアナログは当技術分野で知られている。国際公開第2008/068621号パンフレットは、IFNγとターゲティング部分、例えば腫瘍を標的とする部分又は腫瘍血管系を標的とする部分など、との複合産物を開示する。先行技術は、完全長IFNγへの結合を開示するだけであり、これはその野生型レセプターへなお結合し、不都合な効果を引き起こすであろう。
【0009】
欧州特許出願公開第0844252号明細書は環状ペプチド及びそれらの調製方法を提供することを目的とし、特には親和性クロマトグラフィー、免疫付与、診断試験、ワクチン、及び医薬組成物の開発の分野において、新たな又は改善された生物工学的適用を提供する為に、それは該環状ペプチド上の続く化学的グラフティング又はカップリングを許し、すなわちそれらの固形支持体への、高分子量化合物への、マーカーへの、及び/又は他の環状ペプチドへの付着を許す。それは、環状ペプチドリガンドの生物学的分子への、とりわけインターフェロンへの、カップリングを教示する。欧州特許出願公開第0844252号明細書に、その天然のレセプターへの機能的結合性ドメインを欠く切り取られたIFN分子の使用について何も言及されていない。
【発明の効果】
【0010】
本発明のインターフェロンアナログは、その治療的使用方法(より小さい分子量の故の、より少ない副作用、増加した有効性、減少した抗原性)に関してだけでなく、その製造方法(組み換え合成)に関しても、(修飾された)完全長インターフェロンの使用を超える、明白であり且つ予期されない利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】マウスからの模倣IFNγのクローニングを示す図である。脾臓細胞がPHAにより刺激され、そして、RNAが単離された。特異的なプライマーを用いたRT及びPCRが予想されたサイズのPCR産物を産出した。BL21細胞における該構築物の発現及びウェスタンブロッティングが該模倣物の産出を確認した。
【図2】組み換え模倣IFNγが、マウス3T3線維芽細胞における抗線維症効果を示す。細胞が、線維症マーカーであるα平滑筋アクチンについて染色される。
【図3】二環のPDGFレセプターターゲティングドメインをコードするpET39b-BiPPBの構築を示す図である。
【図4】PDGFRを標的としたIFNγ複合体をコードするpET39b-BiPPB-IFNガンマの構築を示す図である。
【図5】pET39b-BiPPB-模倣IFNγの構築を示す図である。
【図6】pPBペプチドのINFγへのカップリングを示すIFNγ-BiPPB及び模倣IFNγ-BiPPBのドットブロット分析を示す図である。
【図7】ヒト肝星細胞株LX2細胞における結合研究を示す図である。細胞は、PDGFR結合性ペプチドについて染色された。染色は、pPB含有構築物の標的細胞への結合を示す。
【図8】急性肝障害マウスモデルにおける該処置の副作用を研究する為の血球計数分析を示す図である。WBC=白血球数。LYM=リンパ球。PLT=血小板数。RBC=赤血球数。詳細について、実施例4を参照されたい。
【図9】肝臓線維症マーカーMMP13及びTIMP1のリアルタイムPCR分析を示す図である。詳細について、実施例4を参照されたい。
【図10】CCl4により誘発された急性肝障害マウスモデルにおける模倣IFNγ-PEG-BiPPBの効果を示す図である。a-SMA (A)、コラーゲン-I (B)、及びデスミン(C)の定量 - オリーブオイル処理された正常マウス及び、IFNγ、模倣IFNγ、模倣IFNγ-PEG、模倣IFNγ-PEG-BiPPB (5 μg/マウス)又はPBS単独のいずれかを受けるCCl4処理されたマウスから得られた肝臓切片の染色。定量は、コンピュータ化されたCell-Dイメージングソフトウェアを用いて行われた。データは、群当たり5のマウスからの平均±SEMを表す。#P<0.05、対PBS処理されたオリーブオイル群; *P<0.05、**P<0.01、対PBS処理されたCCl4群。詳細について、実施例6を参照されたい。
【図11】CCl4投与又はオリーブオイル投与3日後の、マウスにおける肝臓線維症についてのマーカーのリアルタイムPCR分析を示す図である。マウスは、示されたとおりの種々の化合物により処理され、そして、Collagen 1a1 (A)、a-SMA (B)、デスミン(C)、及びTIMP1 (D)のmRNAレベルが測定された。詳細について、実施例6を参照されたい。
【図12】CCl4投与又はオリーブオイル投与3日後の、マウスの全血における血球計数分析を示す図である。マウスは、示された通りの種々の化合物により処理され、そして、血小板数(PLT:図A)、白血球数(WBC、図B)、及びリンパ球数(C)が、コールターカウンターを用いて測定された。詳細について、実施例6を参照されたい。
【発明を実施するための形態】
【0012】
その天然のレセプターへ結合することを媒介する部分の機能的破壊は、該レセプター結合性ドメイン中において1又はそれより多く(1以上の)関連するアミノ酸残基を削除し、挿入し、置換することにより達成されうる。インターフェロンレセプター結合性ドメインは同定されており、そして、当技術分野で既知である。例えば、IFNγレセプターへのマウスIFNγの結合は、最初の40、30、又は20のN−末端残基を少なくとも部分的に削除することにより無効にされうる。
【0013】
一つの実施態様において、該アナログは、細胞内シグナリングに関与する残基を有するだけの切り取られたIFNγポリペプチドである。本明細書において用いられるときに、細胞内シグナリングは、核移行及び/又は抗ウィルス活性を含みうる。
【0014】
好ましくは、細胞内活性を媒介するシグナリング部分は、ヒト及びマウスのIFNのC末端に見られるとおりの多塩基の核局在シグナル(NLS)モチーフを有する(Subramaniam et al. 2000, J. Cell Science 113, 2771-2781)。このNLSモチーフは、シグナル伝達兼転写活性化因子(STAT)と複合体を形成すると考えられている;STATは、いくつかの免疫系遺伝子の発現を制御する転写因子のファミリーである。いくつかのSTATは、I型及びII型のIFNの両方により活性化される。しかしながら、それぞれのIFN型はまた、固有のSTATも活性化しうる(Platanias, L. C. 2005 Nature reviews. Immunology 5 (5): 375-386)。STAT活性化は、全てのIFNについて最もよく明確にされた細胞シグナリング経路、古典的Janusキナーゼ−STAT(JAK-STAT)シグナリング経路、を開始する。この経路において、JAKは、IFNレセプターと会合し、そして、IFNとのレセプター連結についで、STAT1及びSTAT2の両方をリン酸化する。結果として、IFNにより刺激された遺伝子因子3(IFN−stimulated gene factor 3、ISGF3)複合体が形成し−これはSTAT1、STAT2、及びIRF9と呼ばれる第三の転写因子を含む−そして、細胞核に移動する。核の内側で、ISGF3複合体が、いくつかの遺伝子のプロモーター内の、IFNにより刺激された応答エレメント(IFN−stimulated response element、ISRE)と呼ばれる特異的なヌクレオチド配列に結合する;これがそれらの遺伝子の転写を誘発する。
【0015】
本明細書内に提供されたアナログは、アミノ酸配列(R)KRXRS(R)を有する多塩基NLSモチーフを有してよく、ここでXは任意のアミノ酸残基であり、好ましくはXはR、K、S、又はTである。好ましくは、該NLSモチーフは、該アナログのC末端に存在する。一つの実施態様において、それは、該配列を含み、好ましくはC末端配列RKRKRSR、KSKRSR、KRTRS、又はKRTRSQを含む。
【0016】
特定の局面において、該シグナリング部分は、
(d)(a)、(b)、又は(c)の配列の少なくも10、好ましくは少なくとも15、の連続したアミノ酸の一続き;
(e) a)又はb)又はc)と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、の同一性を示すアミノ酸配列、ただし細胞内シグナリング活性が維持される; 及び
(f) 多くとも10、好ましくは多くとも8、より好ましくは多くとも5のアミノ酸残基が削除され、追加され、又は置換されている(a)又は(b)又は(c)のアミノ酸配列、ただし該シグナリング活性、例えば核移行、が維持される;
(g)コンセンサス配列VxxxxVQRxAxxELIxVxxxLxPxxxxxKRxRS、ここでxは任意のアミノ酸残基である;
(h)コンセンサス配列VxxxxxQxxAxxELIxVxxxLxPxxxxxKRKRS、ここでxは任意のアミノ酸残基である;
からなる群から選ばれる配列を含み又は当該配列からなる。
【0017】
(a)におけるアミノ酸配列は、切り取られたマウスINFγ配列を表し、(b)における配列はヒトのホモログであり及び(c)における配列はラットのホモログである。好ましくは、本発明のアナログは、(a)又は(b)又は(c)の配列の少なくとも10、好ましくは少なくとも15、より好ましくは少なくとも20の連続したアミノ酸の一続きを含む。一つの実施態様において、該一続きは、(a)又は(b)又は(c)における配列のN末端配列を含む。他の実施態様において、それは(a)又は(b)又は(c)における配列のC末端配列を含み、好ましくは少なくとも最後の15のアミノ酸を含む。さらに他の実施態様において、該一続きは、(a)又は(b)又は(c)における配列の内部配列を含む。例となる配列は、
である。
【0018】
(a)又は(b)又は(c)における配列への1又はそれより多くの(1以上の)アミノ酸改変を有する変異体もまた本発明の範囲内にあることを当業者は理解するであろう。多くとも10、好ましくは多くとも8、より好ましくは多くとも5のアミノ酸残基が削除され、追加され、又は置換された(a)又は(b)又は(c)におけるアミノ酸配列、ただしシグナリング活性、例えば核移行、が維持される。
【0019】
ヒト及びマウスのINFγ配列のアラインメントは、36残基のうち15(41%)が同一であり、及び、36残基のうち24(66%)が正に荷電されている。同一性マッチはclustal Wアラインメントソフトウェアに従い行われる。
【0020】
【0021】
配列間のラインイン(line in)は保存された残基を示し、本明細書内上記の(g)下で記載されたコンセンサス配列を生じる。ヒト、ラット、及びマウスのインターフェロンガンマのアラインメントは、(h)及び(i)におけるコンセンサス配列を与えうる。
【0022】
一つの実施態様において、アナログは、上記言及されたコンセンサス配列(g)、(h)、又は(i)に従うシグナリング部分を含む。他の有用な配列は、(a)又は(b)又は(c)と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の同一性を示すアミノ酸配列を含み、ただし細胞内シグナリング活性は維持されることを条件とする。
【0023】
特定の局面において、該アナログは、以下のコンセンサス配列に従うシグナリング部分を含む:
ここで
Xaa1、Xaa2、Xaa3、Xaa4、Xaa6、Xaa11、Xaa13、Xaa14、Xaa16、Xaa17、Xaa18、Xaa19、Xaa20、Xaa21、Xaa22、Xaa23、Xaa24、及びXaa25は任意のアミノ酸残基であり、
Xaa5は極性の荷電されていない残基、たとえばAsn又はThrであり、
Xaa7は非極性の疎水性残基、例えばPro又はLeuであり、
Xaa8は極性の荷電されていない残基、例えばGln又はAsnであり、
Xaa9は非極性の疎水性残基、例えばVal、Ile、又はLeuであり、
Xaa10は極性の塩基性残基、例えばArg、His、又はLysであり、
Xaa12は非極性の疎水性残基、例えばPhe、Val、又はIleであり、
Xaa15は非極性の疎水性残基、例えばVal、Ile、Metである。
【0024】
好ましくは、アナログは、シグナリング部分として、マウスIFNγ中の残基95-133又はヒトIFNγ中の残基95-134に対応する配列を有する。この配列は抗ウィルス活性を有する(Mujtaba et al. 2006, Clinical and Vaccine Immunology, Vol. 13, No.8, p.944-952)。
【0025】
アナログの該シグナリング部分は、当技術分野で既知の方法により容易に決定されうる。例えば、マウスマクロファージ細胞株により細胞内に取り込まれたときに該アナログのSTAT1αの核移行を誘発する能力は、Subramaniamらにより記載されたとおりに決定されうる。シグナリング活性は、転写因子Stat1α及びStat1αの核インポーター、インポーチン−αアナログNPI-1、との複合体形成により評価されうる。特に、Subramaniamら(2001, J. Interferon Cytokine Res. 21(11):951-959)を参照されたい。他の適したインビトロアッセイは、マウスマクロファージ、例えばRAW細胞株など、におけるNO産生を含む。一つの実施態様において、該アナログは、その完全長インターフェロンカウンターパートの(インビトロ)活性の少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも75%を示す。細胞特異的ターゲティングは、インビトロで比較的低い活性を示すアナログのインビボの有効性を有意に増大しうる。
【0026】
本明細書内上記で言及されたとおり、本発明のアナログは、機能的なIFNレセプター結合性ドメインの不在及び該アナログの細胞内取り込みを媒介できる代替レセプター、例えばリガンド結合の際に及び/又は一定のレセプターターンオーバーの一部としてエンドサイトーシス経路に入るレセプター、に結合することができるターゲティングドメインの存在により特徴付けられる。理解されるであろうとおり、標的とされるべき該代替の又は「二次的」レセプターは、ある程度の細胞タイプ特異的発現を有する。遍在的に発現されるレセプターは、より適さない候補である。さらに、該レセプターは、該細胞内シグナリング部分に応答性である細胞上で発現されなければならず、例えばIFNγの場合、それはIFNγ応答性エレメントを有さなければならない。
【0027】
好ましくは、該ターゲティングドメインは、線維芽細胞及び線維芽細胞様細胞、例えば筋線維芽細胞、門脈域の線維芽細胞(portal fibroblasts)、メサンギウム細胞、間質線維芽細胞、肺胞線維芽細胞(alveolar fibroblasts)、又は間質細胞など、に特異的であるレセプターに結合できる。腫瘍細胞上に発現されるレセプターも意図される。IFNγアナログは、腫瘍細胞においてアポトーシスを誘発することができ、これは腫瘍細胞上に発現される二次レセプターを介して特異的に標的とされうる。一つの実施態様において、該レセプターは、PDGFレセプター、コラーゲンVI型レセプター、サイトカインレセプター(TGFβレセプター、TNFαレセプター、及びIL1βレセプターを含む)、インスリン成長因子レセプター、VEGFレセプター、及びケモカインレセプター(例えばCXCR4)からなる群から選ばれる。該アナログがPDGFレセプター、好ましくはPDGF−βレセプター、を標的とした場合に、非常に良い結果が得られた。他の適切なターゲティングドメインは、細胞接着ペプチド、例えばトリペプチドArg-Gly-Asp(RGD)(これは、細胞付着を媒介するフィブロネクチン内に該配列として元々同定された)など、を含む。RGDモチーフは、現在、多くの他のタンパク質において発見されており、そして、これらの多くにおいて(しかし全てでない)細胞接着を支持する。インテグリン、細胞表面タンパク質のファミリー、は細胞接着分子にとってのレセプターとして働く。インテグリンのサブセットは、それらのリガンド内のRGDモチーフを認識し、その結合が、細胞−基質及び細胞−細胞の相互作用の両方を媒介する。RGD含有アナログは、血栓症及びガンなどの疾患の処置の為の治療剤として用いられうる。
【0028】
特定の局面において、該ターゲティングドメインは、オリゴ糖又は糖タンパク質についてのレセプター、好ましくはアシアログリコプロテイン(ASGP)レセプター又はマンノースレセプター(CD 206)、に結合することができる。例えば、該ターゲティングドメインは、キャリア分子に複合体化(結合)されたオリゴ糖、好ましくはマンノース又はラクトースである。他の実施態様において、マンノース-6-ホスフェート (M6P)又はその誘導体が、M6P/IGF IIレセプターにとってのターゲティングドメインとして用いられうる。例えば、欧州特許出願公開第1117443号明細書を参照されたい。
【0029】
該ターゲティングドメインは好ましくは、該アナログが全体として、例えば組み換えにより、容易に製造されうるフュージョンポリペプチドであるようなタンパク質性物質(ペプチド)である。しかしながら、非タンパク質性の他のタイプのターゲティングドメインもまた意図され、例えば糖、脂質、核酸、合成分子、及び同様の物などが意図される。
【0030】
一つの局面において、該ターゲティングドメインは、少なくとも1つの環状ペプチド部分を含む。ペプチドは、システイン−ジスルフィド又はランチオニン(lanthionine)架橋形成を含む、種々の手段により環状化されうる。本発明のアナログを所望の細胞タイプにターゲティングする為に有用な環状ペプチドは当技術分野において記載されている。例えば、欧州特許出願公開第1117443号明細書は、細胞レセプター認識性ペプチド(RPR)をコードする少なくとも一つの配列を含む環状ペプチドを開示する。一つの実施態様において、本発明のアナログは、その(環状の又は線状の)ターゲティングドメイン内に、少なくとも1つのRGD、KPT、SRN、NLI、及びLIDからなる群から選ばれるアミノ酸配列を含む。
【0031】
好ましい実施態様は、好ましくは(環状)ペプチド部分の少なくとも一つのタンデムリピートの形にある、複数のレセプター結合性配列を含むターゲティングドメインを有するアナログに関する。該タンデムリピートは、1〜5のアミノ酸のリンカーを介して連結された、2つの環状ペプチド部分、好ましくは同一の環状ペプチド部分を含みうる。これは、二量体として活性であるレセプター、例えばPDGF、TGFβ、又はIL-10レセプターなど、をターゲティングする為に特に有利である。
【0032】
一つの実施態様において、該ターゲティングドメインは、アミノ酸配列X1SRNLIDX2の1つの、好ましくは2つの、コピーを含み、ここでX1及びX2は、環状構造が形成され、配列SRNLIDがその環の部分であるように、(ペプチドの)結合を一緒に形成しうる部分を示す。該2つのコピーは、好ましくは、1〜7アミノ酸のリンカー配列により間をあけられる。好ましくは、X1及びX2はCys残基である。アミノ酸配列CSRNLIDC-リンカー-CSRNLIDCSを含むターゲティングドメインであって該リンカーが1、2、3、4、5、6、又は7のアミノ酸残基のような1〜7のアミノ酸残基のアミノ酸配列である前記ターゲティングドメインが、二量体PDGFβレセプターに結合することにおいて非常に有効であることを、本発明者らは発見した。例えば、該PDGFレセプターに結合することができる2つの環状ペプチドが6のアミノ酸からなるスペーサーにより互いに連結されている一方で、他の構築物においてこれらの2つの環状ペプチドが11のアミノ酸のスペーサーにより結合されるところの比較実験を彼らは実施した。両方の構築物において、該スペーサーは、リジン残基を含んで、薬剤又はトレーサーの結合を許した。両方の二環式構築物は、FITCにより標識され及び3T3細胞培養物に添加され、該PDGF−レセプターを発現し、及び、結合を試験する為に2時間インキュベートされた。インキュベーション及びFITCに対する抗体による染色の後に、免疫組織化学的データが、6アミノ酸のスペーサーを有する構築物の有意な結合を示し、一方で、低い結合だけが、11アミノ酸のより長いスペーサーを有する構築物により観察された。
【0033】
一つの実施態様において、該リンカーは、4又は5のアミノ酸残基からなってよく、好ましくはGly、Ala、Ser、及びThr残基の群から選ばれ、より好ましくはそれらの少なくとも3つがグリシン残基である。好ましいリンカーは、配列K(GS)mGGからなり、ここでmは1又は2である。特定の例として、該ターゲティングドメインは、アミノ酸配列CSRNLIDCKGSGGCSRNLIDCS又はCSRNLIDCKGSGSGGCSRNLIDCSを含み又は当該配列からなる。他の実施態様において、該リンカーは、5又は6のアミノ酸残基からなり、好ましくはAsp、Lys、Gly、Ala、Ser、及びThr残基の群から選ばれる。良い結果が、4〜7残基のリンカーであって、少なくとも4、好ましくは少なくとも5、がグリシン残基である前記リンカーにより得られた。他の適切なリンカーは、4〜7の残基の配列を含み、該残基はGly及びAsp残基から選ばれ、例えば [GnDm]であって、n+mが4〜7であり、n ≧ 4且つMが0〜3の整数であるもの、である。特定の実施態様において、該ターゲティングドメインは、アミノ酸配列CSRNLIDC[GnDm]CSRNLIDCを含み又は当該配列からなり、ここでn+mは4〜7であり、n ≧ 4であり且つMが0〜3の整数である。例えば、該ターゲティングドメインは、配列CSRNLIDCGGGDGGCSRNLIDC、CSRNLIDCGGDGGCSRNLIDC、CSRNLIDCGDDGGCSRNLIDC、又はCSRNLIDCGGGGGGCSRNLIDCからなり又は当該配列を含む。
【0034】
該ターゲティングドメインは、任意の手段により、例えばリンカー又はスペーサー配列により、該シグナリングドメインに取り付けられうる。適したリンカー配列は、典型的には、最大で15、好ましくは最大で10のアミノ酸残基長である。ポリアラニンリンカーが用いられてよい。例えば、本明細書において与えられるものは、インターフェロンガンマアナログであり、
配列
からなる。
【0035】
該ターゲティングドメインは、キャリア分子、例えばアルブミン、を介して該シグナリングドメインに取り付けられてもよい。これは、もし該ターゲティングドメインが非タンパク質性物質、例えばオリゴ糖、例えばマンノース又はラクトースなど、であるならば、特に有利である。一つの実施態様において、該キャリア分子は、ヒドロキシル、アミン、及び/又はサルフェートのような遊離反応性基を含む。該キャリアのサイズは、好ましくは、アルブミン、ラクトフェリン、又はフィブロネクチンのような、内因性血しょうタンパク質である。
【0036】
本発明はまた、PDGFをターゲティングする二環式ドメインに複合体化された関心のある化合物、例えば生物学的に活性な分子、を含む複合体(conjugate)に関し、該ターゲティングドメインは2コピーのアミノ酸配列X1SRNLIDX2を含み、X1及びX2は、二環構造が形成され、配列SRNLIDがそれぞれの環の部分であるように、ペプチドの結合又はジスルフィド結合などの結合を一緒に形成しうる部分を示す。好ましくは、X1及びX2はCys残基であり、ジスルフィド結合形成を介した環状化を許す。本発明に従う複合体は、該2つのコピーが、2〜7のアミノ酸のリンカー配列により間をあけられることにおいて特徴付けられる。驚くべきことに、この特定のスペーサー長が、二量体として活性であるPDGFレセプターを、非常に有効にターゲティングすることを許すことが発見された。すなわち、ターゲティングドメインと複合体化された関心のある化合物を含む複合体も提供され、該ターゲティングドメインはアミノ酸配列X1SRNLIDX2-リンカー-X3SRNLIDX4を含み、ここでX1及びX2の対並びにX3及びX4の対が、二環構造が形成され、配列SRNLIDが環の部分であるように、(ペプチド)結合を形成することができ、且つ、該リンカーが2〜7アミノ酸残基からなるアミノ酸配列である。本明細書内上記で議論されたとおり、該リンカーは、4又は5のアミノ酸残基からなりうる。それらは、Gly、Ala、Ser、Asp、Lys、及びThr残基の群から選ばれてよく、好ましくはそれらの少なくとも3がグリシン残基である。好ましいリンカーは、配列K(GS)mGGからなり、ここでmは1又は2である。特定の例として、該ターゲティングドメインは、アミノ酸配列CSRNLIDCKGSGGCSRNLIDCS又はCSRNLIDCKGSGSGGCSRNLIDCSを含み又は当該配列からなる。他の実施態様において、該リンカーは、5又は6アミノ酸残基からなり、好ましくはAsp、Gly、Ala、Ser、及びThr残基の群から選ばれる。良い結果が、4〜7残基のリンカーであって、少なくとも4、好ましくは少なくとも5、がグリシン残基である前記リンカーにより得られた。他の適切なリンカーは、4〜7残基の配列を含み、該残基は、Gly及びAsp残基から選ばれ、例えば[GnDm]であり、ここでn+mが4〜7であり、n≧4であり且つMが0〜3の整数である。特定の実施態様において、該ターゲティングドメインは、アミノ酸配列CSRNLIDC[GnDm]CSRNLIDCを含み又は当該配列からなり、ここでn+mは4〜7であり、n≧4且つMは0〜3の整数である。例えば、該ターゲティングドメインは、配列
からなり又は当該配列を含む。
【0037】
配列SRNLIDの細胞ターゲティングドメインとしての使用は当技術分野で知られている。国際公開第00/23113号パンフレットは、レセプター認識性ペプチド(RRP)を含む環状ペプチドの、5000ダルトンより大きいキャリア分子、例えば血清アルブミン、への複合体化を開示する。例となるRRPは、PDGFレセプター結合性の配列XSRNLIDCXであり、ここでXは環状化の場所を示す。該環状ペプチド構造内に複数のRRP配列が存在しうることが教示されている。1超(例えば5-15の環状ペプチド)をキャリア分子に取り付けることも開示されている。Hagens et al. (2007) Pharmaceutical Res. Vol. 24, pp. 566-574,は、アルブミンに複合体化された環状ペプチドCSRNLIDCの、肝星細胞への送達を示す。すなわち、先行技術の複合体は全て、RRPのキャリア分子への取り付けに依存する。該環状ペプチドがキャリア分子に取り付けられないがその代わりに2〜7アミノ酸の特定のスペーサー長を有するタンデムモチーフ内に置かれるところの本発明の複合体の構築は、当技術分野において教示も示唆もされていない。このよく規定された二環構造が、該キャリアに取り付けられた複数レセプター結合性配列の数及び空間方向がランダム化され且つはるかにより制御されていないところの国際公開第00/23113号パンフレットに従う複合体と比較したときに、二量体PDGFレセプターへの複合体結合を増強することが発見された。本発明の複合体における2つの環状部分の間の距離を固定するタンデム構造は、二量体PDGFレセプターと最適に相互作用するように作られている。さらに、比較的大きなキャリア分子の存在が、立体障害によりレセプター相互作用を減少しうる。
【0038】
該二環ペプチドは化学的に調製されることができ、又は、医薬産業に非常に好ましい製造方法を提供する組み換え技術によって調製されることができる。加えて、該二環構造は、血管外組織に容易に侵入することができる細胞特異的低分子量化合物を生じる、化学的実体(薬剤又はトレーサー)、ポリマー(例えばポリエチレングリコール、PEG)、スモールペプチド、又はタンパク質に直接に取り付けられてよい。特に、腫瘍をターゲティングする為に、この組織侵入は非常に関連しうる。
【0039】
非常に良い結果が、3〜5のアミノ酸残基からなるリンカーにより達成された。一つの実施態様において、該複合体は、アミノ酸配列CSRNLIDC-リンカー-CSRNLIDCS (BiPPB)を含み、ここで該リンカーは2〜7、好ましくは3〜5、のアミノ酸残基のアミノ酸配列である。この二環ペプチドは、PDGFレセプター(PDGF-R)に高い親和性を有する低分子量ターゲティングリガンドとして、適切に用いられる。該ペプチドは、化学合成又は組み換え合成により調製されうる。該リンカーは、検出可能な標識、薬剤及び/又は診断のような、関心のある化合物の共有結合の為に用いられうる反応性側鎖を有する1以上の(1又はそれより多くの)アミノ酸残基を含みうる。適切な反応性アミノ酸は、リジン、セリン、及びスレオニン、アルギニン、ヒスチジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、システイン、アスパラギン、グルタミン、チロシン、メチオニン、及びトリプトファンを含む。
【0040】
生物学的に活性な部分は、サイトカイン、ケモカイン、又はプロスタグランジン活性を含む、任意の種類の有用な生物学的活性を有しうる。それは、タンパク質性又は非タンパク質性の性質を有しうる。例えば、該部分は、薬剤、サイトカイン、ケモカイン、ホルモン、プロスタグランジン、及び同様物から選ばれる群から選ばれる。特定の例は、PGE2、15d-PGJ2、IL-10、IFNγ、切り取られたIFNγを含む。タンパク質性部分は、PDGF-R特異的ターゲティングドメインに遺伝子融合によりN−末端又はC−末端で簡便に取り付けられうる。一つの実施態様において、それは、N−末端に結合される。
【0041】
本発明に従うアナログ又は複合体は、当技術分野で知られている方法によって、コア及び/又はキャリア又は送達分子に結合されうる。適切なコア又はキャリアは、デンドリマー、リポソーム、及び、天然の、合成の、若しくは半合成の(分枝した又は線状の)ポリマーを包含する。デンドリマーは、それら自身が種々の薬剤投与経路において有用な添加物であるとして成功裏に示されており、というのもそれらは薬剤により大きな水溶性、バイオアベイラビリティ、及び生物適合性を与えることができるからである。Chen et al., Journal of Pharmaceutical Sciences, Vol. 97 Issue 1, pg. 123 - 143、を参照されたい。例として、本発明は、デンドリマーに又はリポソームに複合体化されたIFNγアナログを提供する。該リポソームは、(抗ガン)薬剤を含みうる。
【0042】
一つの実施態様において、本発明に従うインターフェロンアナログ又はPDGFRを標的とした複合体は、有効性及び/又は安定性を増大するなど、その薬理学的特性を改善する為に、慣用の手段により修飾される。一つの実施態様において、それは、半減期を増す為に、少なくとも1つの非抗原性ポリマーの取り付けにより、例えばポリエチレングリコール(PEG)及びその誘導体からなる群から選ばれるポリマーにより、修飾される。PEG化は、PEGの反応性誘導体と該標的マクロ分子とのインキュベーションにより普通に達成される。PEGの薬剤又は治療的タンパク質への共有結合は、該剤を宿主免疫系から「マスク」することができ(減少された免疫原性及び抗原性)、該剤の流体力学的サイズ(溶液中におけるサイズ)を増大し、これが腎クリアランスを減少することによりその循環時間を延長する。
【0043】
本発明のさらなる局面は、本発明に従うタンパク質性インターフェロンアナログをコードする又は本明細書内上記で記載されたとおりのPDGFRを標的としたタンパク質性複合体をコードする分離された核酸配列に関する。当業者は、適切な核酸配列、例えば該ターゲティング部分及び該生物学的に活性な部分の両方をコードする融合構築物を、標準的な組み換えDNA技術を用いて設計すること及び構築することができるであろう。該分離された核酸配列は、発現ベクター、例えばバクテリアの又は哺乳類の宿主細胞における組み換えタンパク質産生の為に設計されたベクター、の部分でありうる。また、本発明に従う核酸配列又はベクターを含む宿主細胞も提供され、好ましくは該宿主細胞はバクテリアの又は哺乳類の宿主細胞である。
【0044】
本明細書内に開示されたアナログ又はPDGFにターゲティングされた複合体は、体内でのその分布に関して改善された特性を有する。より具体的には、それは関心のある生物学的に活性な化合物を、関心のある細胞に向けることを許す一方で、その特定の化合物の該生物学的活性を維持することを許す。細胞特異性を獲得する為に、これらのメディエーターは、病気の組織における関連標的レセプター周囲のそれらの濃度を増加するであろうアドレスラベルを備えられる。それ故に、さらなる実施態様は、IFNアナログ又はPDGFを標的とした複合体と医薬的に許容できるキャリアとを含む医薬組成物に関する。特定の局面は、ターゲティングされたIFNγアナログ(a targeted IFNγ analog)、好ましくはターゲティングされていないIFN γと比較して減少された副作用を示すPDGFにターゲティングされたIFNγアナログ、を含む医薬組成物に関する。例となる医薬組成物は、
、を含み又は当該配列からなるペプチドを含む。他の例となる医薬組成物は、ターゲティングドメインに複合体化された生物学的に活性な分子を含む複合体を含み、該ターゲティングドメインは、アミノ酸配列CSRNLIDC-リンカー-CSRNLIDCSを含み、ここで該リンカーは2〜7、好ましくは3〜5、のアミノ酸残基のアミノ酸配列である。
【0045】
ガン、ウィルス性疾患、線維性疾患、硬化性疾患、及び、慢性又は急性の炎症性疾患から選ばれる疾患の治療的又は予防的処置の為の医薬の製造の為の、本発明に従うIFN (γ)アナログの使用も提供される。例となる疾患は、糸球体硬化症、間質性線維症、肺線維症(特発性肺線維症)、アテローム性動脈硬化、関節リウマチ、クローン病、潰瘍性大腸炎、糸球体腎炎、及び敗血症を包含する。
【0046】
INFγが抗ウィルス活性も有することが知られている。INFγの切り取られた形は、ホーミングデバイスが該分子に取り付けられた場合に生物活性であると示され及び天然のINFγの全ての活性を示すと分かるので、本発明のアナログは、抗ウィルス活性も同様に備えられる。例となる疾患は、インフルエンザウィルス又はヒト呼吸器合胞体ウイルス(RSV)により引き起こされる感染症を包含する。RSVは、気道感染症(respiratory tract infections)を引き起こすウィルスである。それは、幼児及び子供の間の下部呼吸管感染症及び通院の主要な原因である。ときどき、幼児は、一つのRSVシーズン内でさえ、1回超症状的に感染されうる。米国において、幼児の60%が、それらの最初のRSVシーズンの間に感染し、及び、ほぼすべての子供が2〜3歳齢までに該ウィルスに感染するであろう。RSVに感染したもののうち、2〜3%が気管支炎を発症し、通院を必要とする。重度のRSV感染症が、老齢の患者の間において増加していることが分かった。ワクチンは無い。処置は、酸素を含む、支援的なケアに限定される。温帯気候において、冬の月の間、毎年の感染症がある。熱帯気候において、感染症は雨期の間に最も一般的なものである。
【0047】
従って、本発明は、ガン、ウィルス性疾患、線維性疾患、硬化性疾患、及び、慢性又は急性の炎症性疾患、例えば糸球体硬化症、間質性線維症、肺線維症(特発性肺線維症)、アテローム性動脈硬化、関節リウマチ、クローン病、潰瘍性大腸炎、糸球体腎炎、及び敗血症など、から選ばれる疾患の治療的又は予防的処置の為の方法にも関し、該方法は、その必要がある対象に、治療的に有効な量の本発明に従うIFNアナログを与えることを含む。該疾患は、肝臓疾患、好ましくは慢性肝臓疾患、例えば肝硬変など、でありうる。当技術分野の当業者は、施与されるべき用量を投与が生じる対象の投与様式、サイズ、体重、健康状態などに調節するであろう。投与は、医薬の投与の為にそれ自体既知の任意の様式で行われうる。本発明に従うIFNγアナログは、例えば経鼻投与又は吸入により、肺内送達の為の形にある医療組成物(治療的又は予防的)において有利に用いられる。また、IFNγアナログを活性成分として含む吸入装置も提供される。
【0048】
実験の部
【0049】
肝臓線維症は、肝臓瘢痕形成をもたらす細胞外マトリックス成分の過剰蓄積により特徴付けられる。今日まで、肝臓線維症処置の為に利用可能な成功した治療はない。肝星細胞(HSC)及び線維芽細胞が、該疾患の進行に関与する重要なエフェクター細胞であり、これらは血小板由来成長因子(PDGF)及び形質転換成長因子β(TGFβ)のような重要な成長因子により活性化される。インターフェロンガンマ(IFNγ)は、肝臓線維症の間にインビトロ及びインビボで種々の有益な効果を有すると示された。しかしながら、IFNγは厳密な種特異性を示し、及び、短い循環半減期を有し、これはその潜在的な臨床的使用を制限する。さらに、INFγは、免疫系に対し、内皮細胞に対し、及び中枢神経系に対し(例えば、うつを引き起こす)、深刻な有害作用を有し、これは全て患者の臨床試験からの頻繁な離脱をもたらしそしてその結果これらの試験の失敗をもたらす。これらの欠点を回避する為に、本発明者らは、該細胞外レセプター認識部位を欠き且つ下流IFNγシグナリングカスケードで直接に相互作用するシグナリング部分を有し、それによりIFNγの予期される機能を維持する、IFNγの安定なペプチド模倣物を作った。
【0050】
IFNγ及びIFNγ模倣ペプチドの特異性を増加する為に、BiPPB(Bicyclic peptide against the PDGF−beta−receptor、PDGF−β−レセプターに対する二環ペプチド)に連結されたIFNγ及び模倣ペプチドが生成された。というのも、PDGFレセプター発現は肝臓損傷の間に、特にHSCにおいて、高度に上方制御されるからである。
【実施例1】
【0051】
模倣IFNγのクローニング。マウス脾臓細胞が新鮮な脾臓から分離され、そして、サイトカイン産生を刺激する為にPHA(フィトヘマグルチニン)の存在下で培養された。24時間の刺激後、RNAが単離され、そして、cDNAが、遺伝子特異的リバースプライマーを用いて合成され、次に、模倣IFNγ特異的フォワードプライマー及びリバースプライマーを用いて、Phusion DNAポリメラーゼによるPCR増幅が行われた。得られた断片が、pET42a (原核生物発現ベクター)中にPshA1/EcoRI部位でクローン化され、そして、陽性クローンが制限消化分析によりチェックされた。図1を参照されたい。
【0052】
切り取られたマウスインターフェロンガンマの5’->3’ヌクレオチド配列(NCBI Reference sequence: NM_008337.2) (nt457-nt572)は以下のとおりである:
【0053】
該配列における最後のアミノ酸であるシステインの前にストップコドンを挿入する為に、最後のヌクレオチドが追加された。該ペプチドの適切な折り畳みを提供する為に及びまた(BiPPBとの)該融合タンパク質におけるジスルフィド結合に起因する不適切な折り畳みを回避する為に、システインは該配列から除去された。
【0054】
コードされたアミノ酸配列は
である。
*はストップコドンを示す
【0055】
IFNγ−BiPPB及び模倣IFNγ−BiPPBのクローニング。該二環のPDGFターゲティングドメインBiPPBをコードする核酸配列が、4つのプライマー(それぞれの断片について2つ)を用いた2つの断片の増幅により生成され、そして次に、本来備わっているBam HI制限部位を用いてライゲーションされ、そして次にScaI/NotI部位でpET39bベクター中にクローン化された。IFNγ及び模倣IFNγが、ペプチド融合プライマー(フォワード)及びIFNγ又は模倣IFNγリバースプライマーを用いてPCR増幅された。その増幅された断片が、NotI/XhoI部位で消化されそしてpET39b-BiPPBベクターにライゲーションされ、そして、陽性クローンが制限消化分析によりチェックされた。図4及び5を参照されたい。全ての構築物の配列がさらに、自動化されたDNAシークエンシングにより確認された。
【0056】
BiPPB
BiPPBについてのヌクレオチド配列:
BiPPBについてのアミノ酸配列:
CSRNLIDCKGSGGCSRNLIDCS
(図3も参照されたい)
【0057】
インターフェロンガンマ(完全長)
ヌクレオチド配列:マウスインターフェロンガンマ(NCBI参照配列: NM_008337.3)
マウスIFNガンマについてのアミノ酸配列
融合タンパク質(BiPPB-IFNγ)のヌクレオチド配列
BiPPB-IFNγについてのアミノ酸配列
イタリックはBiPPBを示す、通常のテキストがIFNγ模倣物を示す、太字はリンカー又はスペーサーを示す。図4も参照されたい。
【0058】
BiPPBに連結された模倣インターフェロンガンマ
融合タンパク質(BiPPB-IFNγ模倣物)のヌクレオチド配列
BiPPB-IFNγ模倣物についてのアミノ酸配列
イタリックはBiPPBを示す、通常テキストがIFNγ模倣物を示す、太字はリンカー又はスペーサーを示す。図5も参照されたい。
【0059】
核酸が次に、IPTG誘導を用いた発現の為に、BL21細胞(E.coli)中に形質転換された。発現されたタンパク質は、抗IFNγ抗体及び/又は抗PPB抗体を用いて、SDS-PAGE及びウェスタンブロット分析若しくはドットブロット分析により分析された(図6参照)。発現されたタンパク質(Hisタグを有する)は、次に、Ni-NTAカラムクロマトグラフィーによりネイティブな状態の下で精製された。該タグはタンパク質分解的に開裂され、そしてさらに、セファロースカラムクロマトグラフィーを用いて精製された。
【実施例2】
【0060】
開裂され且つ活性な模倣IFNγの抗線維効果
我々は、免疫−細胞化学により評価されたときの(α−SMA染色)、マウスNIH3T3線維芽細胞における開裂したIFNγ模倣ペプチドの抗線維効果を評価した。簡潔に言うと、3T3線維芽細胞が、24ウェルプレート中に6x104細胞/ウェルの密度で蒔かれ、24時間後、細胞が0.5% FBS含有培地で一晩飢餓状態にされた。その後、細胞が、種々の化合物(PDGF 50 ng/ml、TGFβ 10 ng/ml、模倣IFNγ 1μg/ml、50ng/mlのPDGF + 1μg/mlの模倣IFNγ、及び10 ng/mlのTGFβ+1μg/mlの模倣IFNγ)を有する飢餓培地中でインキュベートされた。48時間のインキュベーション後、細胞が洗浄され、エタノール:アセトン(1:1)により固定され、そして、α−SMA(活性化した線維芽細胞のマーカー)について染色された。
【実施例3】
【0061】
ヒトLX2細胞におけるBiPPB及び模倣IFNγ−BiPPBの結合研究。
我々は、LX2細胞(ヒトHSC)におけるBiPPB及び模倣-BiPPBの結合を決定した。簡潔に言うと、LX2細胞が、48ウェルプレート中に、3x104細胞/ウェルの細胞密度でプレートされた。24時間後、細胞が培地(−FBS)中で一晩飢餓状態にされた。次に、結合の為に、細胞が種々の化合物(BiPPB、PPB-HAS、及びBiPPB-模倣IFNγ)と、2時間室温でインキュベートされた。結合後、細胞がPBSにより強く洗浄され、エタノール:アセトン(1:1)により固定化され、そして、PPBについて染色された。結果が図7に示される。
【実施例4】
【0062】
マウスにおけるCCl4誘発急性肝臓損傷におけるインビボ効果研究:
組み換えIFNγ、模倣IFNγ、組み換え融合タンパク質IFNγ−BiPPB、及び組み換え融合タンパク質模倣IFNγ−BiPPBが、CCl4誘発急性肝臓損傷マウスモデルにおける抗線維効果について試験された。1日目で、該動物は、オリーブ油中の四塩化炭素(CCl4)又はオリーブ油(対照n=6)の1回の腹腔内投与量(1ml/kg)を与えられた。CCl4注入の24時間後、2及び3日目で、動物が、PBS (n=6)、50,000 U/マウスのIFNγ (n=6)、50,000 U/マウスの模倣IFNγ(n=5)、50,000 U/マウスのIFNγ-BiPPB (n=6)、50,000 U/マウスの模倣IFNγ-BiPPB (n=6)のいずれかにより処置された。その後、4日目で、動物は犠牲にされ、そして、血球計数が実施され、及び、抗線維症効果(Hemmann S, Graf J, Roderfeld M, Roeb. J Hepatol. 2007 May;46(5):955-75を参照)が定量的PCRを用いて評価された。結果が図8及び9に提示される。
【0063】
図8に提示されたデータは、模倣-BiPPBが、CCl4により誘発された肝線維症に関連付けられた全血中の白血球数(WBC)及びリンパ球数(lym)の上方制御を減衰することにおいて、修飾されていないINFγよりも有効であることを示す(p<0.01)。対照的に、INFγ処置に関連付けられた血小板数(PLT)の減少(これはINFγの良く知られた副作用である)が、動物が修飾されていないINFγの代わりに模倣INFγ-BiPPBを受ける場合、より重度でない(p< 0.0025)。
【0064】
図9に提示されたデータは、模倣INFγ-Bi-PPBが、抗線維症効果を授けられていることを示す:それは、CCl4により誘発されたマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP13)上方制御を減衰する。MMP-13対メタロプロテイナーゼ組織インヒビター(TIPM1)の比が、天然INFγにより得られたものと同様であるが、模倣INFγよりも良く(p<0.03)、Bi-PPBの模倣INFγへの結合が有益であることを示す。まとめると、図8及び9におけるデータは、模倣INFγ-BiPPBが、天然INFγと比べてより強力であり及びより少ない副作用を有することを示す。
【実施例5】
【0065】
模倣インターフェロンγ複合体の化学合成:
【0066】
模倣IFNγ-PEG-BiPPB複合体:0.111μmolの二環PDGFR認識性ペプチド(BiPPB, 2223.2 Da, Genosphere Biotechnologies)が、0.337 μmolのマレイミド-PEG-スクシンイミジルカルボキシメチルエステル(Mal-PEG-SCM, 2 KDa, Creative PEGworks)と3時間結合された。その後、リジン(0.337 μmol)が、Mal-PEG-SCMの遊離基をブロックする為に添加された。1時間の反応後、合成された産物BiPPB-PEG-MAL (0.112 μmol)が、0.56 μmolの模倣IFNg-ATA(4689 Da, Genosphere Biotechnologies)と、脱アセチル化試薬の存在下で一晩室温で反応させられた。最後に、合成された模倣IFNγ-PEG-BiPPB複合体(8828.2 Da)が、7 KDa slide-a-lyzer G2透析カセット(Thermo scientific)を用いてPBSに対して広範に透析された。
【0067】
模倣IFNγ-PEG複合体:0.107 μmolの模倣IFNγ-ATA (4689 Da)が、0.321 μmolのポリ(エチレングリコール)-スクシンイミジルα-メチルブタノエート(mPEG-SMB, 2 KDa, Nektar therapeutics)と2時間反応させられ、そして次に、産物が広範に透析された。
【0068】
【実施例6】
【0069】
急性肝損傷マウスモデルにおける模倣IFNγ-PEG-BiPPBの静脈内投与後の線維症パラメータに対する効果
【0070】
タンパク質レベルでの線維症パラメーターの分析:
肝損傷を誘発する為に、マウスが腹腔内にCCl4を1日目に注入された。2及び3日目で、マウスは、IFNγ(5 ug/投与量)、模倣IFNg-PEG、模倣IFNg-PEG-BiPPB (5μg/投与量)、又はPBS単独により処置された。4日目で、動物が犠牲にされ、肝臓及び種々の臓器がさらなる分析の為に集められた。肝臓切片がアセトンにより固定化され、乾燥され、そしてPBSにより再水和された。次に、該切片が、一次抗体(コラーゲン、SMA、及びデスミン)と一緒に1時間インキュベートされた。その後、該切片が、内因性ペルオキシダーゼ活性に対する0.03%のH2O2により30分間ブロックされた。その後、切片が二次抗体HRP結合ウサギ抗ヤギ抗体(1:100、DAKO)、次にHRP結合ヤギ抗ウサギ抗体(1:100、DAKO)と、30分間インキュベートされた。ペルオキシダーゼ活性が、AEC(Sigma)を用いて20分間発現され、そして、核がヘマトキシリン(Fluka)により対比染色された。該切片は、カイザーゼラチンを載せられ、そして、光学顕微鏡(Olympus)下で可視化された。定量的分析の為に、27の顕微鏡写真が撮られ、そして、陽性に染色した領域がコンピュータ化オリンパスCell Dイメージングソフトウェアを用いて定量された。結果が図10に示される。
【0071】
遺伝子発現レベルでの線維症パラメータの分析:
肝臓組織からの全RNAが、製造者の指示に従いRNeasyミニキット(Qiagen)を用いて単離された。RNA濃度は、UVスペクトロメーター(NanoDrop Technologies、ウィルミントン、デラウェア州)により定量された。全RNA(1.6 mg)が、cDNA合成キット(Promega)を用いた全量50 μlでの逆転写の為に用いられた。全てのプライマーは、Sigma-Genosys(Haverhill、英国)から購入された。10ngのcDNAが、定量的リアルタイムPCR分析の為に用いられた。反応は、製造者の指示に従いSYBRグリーンPCRミックス(Applied Biosystems)を用いて実施された。試料は、ABI7900HTシークエンス検出システム(Applied Biosystems)により分析された。最後に、閾値サイクル数(threshold cycle number、Ct)が、それぞれの遺伝子について計算され、そして、相対的な遺伝子発現が、参照遺伝子GAPDHの発現についての正規化後に計算された。結果が図11に示される。副作用の分析が図12に示される。
【実施例7】
【0072】
確立された進行した肝臓線維症マウスモデルにおける模倣IFNγ-PEG-BiPPBの静脈内投与後の線維症パラメータに対する効果
【0073】
タンパク質レベルでの線維症パラメータの分析:
オスのbalb/cマウス(20-22g)が、オリーブ油又は増加する用量のCCl4 (1週目: 0.5 ml/kg; 2週目: 0.8 ml/kg、及び3〜8週目: 1 ml/kg、オリーブ油中に調製された)により週2回、8週間の腹腔内注入で処理された。7及び8週目において、マウスは、静脈内に、PBS、模倣IFNγ-PEG、又は模倣IFNγ-PEG-BiPPB (5μg/マウス、週当たり3回)により処置された。全てのマウスが8週目で犠牲にされ、血液及び肝臓試料が次の測定の為に集められた。肝臓切片は、コラーゲンI及びデスミン、CD68、33D1、及びMHCクラスIIについて染色された。標的とされた切り取られた形のIFNγ(模倣IFNγ-biPPB)が、マウスにおけるこの慢性肝臓線維症における線維症パラメータの実質的な減少を誘発することが発見され、コラーゲンI及びデスミン両方の染色が、処理されていないCCl4-マウスと比較して、模倣IFNγ-biPPBにより処理されたCCl4マウスにおいて顕著に減少された。対照的に、レセプター結合部位を欠くターゲティングされていない模倣IFNγによる処理は、これらのパラメータに対する効果を何も誘発しない一方で完全長マウスIFNγはコラーゲンI及びデスミン染色における少しの減少だけを誘発した。天然(マウス)IFNγは、炎症細胞(CD68+マクロファージ、好中球、33D1+樹状細胞)の浸潤を誘発し、及び、増加したMHCII発現を誘発した。対照的に、模倣IFNγ-BiPPBは、肝臓におけるこの増加した炎症応答を誘発しなかった。
【実施例8】
【0074】
PDGFレセプターにターゲティングされた切り取られたIFNγアナログは活性であるが、より少ない副作用を引き起こす。
【0075】
模倣IFNγに化学的に結合したBiPPBのターゲティングされた複合体が合成され、そして、ウェスタンブロット分析を用いて及びマウス3T3線維芽細胞におけるインビトロのその抗線維症効果について特徴付けされた。インビボで、該ターゲティングされた複合体は、マウスにおいてCCl4により誘発された4日(急性)肝臓線維症モデルにおいて及び8週(慢性)肝臓線維症モデルにおいて試験された。いくつかの線維症パラメーター及び炎症細胞の浸潤が、免疫組織化学及び遺伝子発現分析を用いて該肝臓において評価された。
【0076】
結果:成功裏に合成された該複合体は、TGFβにより誘発されたマウス線維芽細胞におけるコラーゲン発現の阻害を引き起こした。インビボで、IFNγの該ターゲティングされたペプチド模倣物(模倣IFNγ-biPPB)が、マウスにおける急性及び慢性肝臓線維症モデルの両方において線維症パラメータにおける実質的な減少を誘発した。レセプター結合性ドメインを欠くターゲティングされていない模倣IFNγによる処置は何も効果を示さず、そして、修正されていないマウス完全長IFNγは穏やかな減少だけを示した。このマウス完全長IFNγは、炎症細胞(CD68+マクロファージ、好中球、33D1+樹状細胞)の浸潤を誘発し、及び、増加したMHCII発現を誘発した。対照的に、模倣IFNγ-BiPPBは炎症応答を誘発しなかった(データは示されていない)。
【実施例9】
【0077】
マウスにおける皮下腫瘍モデルにおける模倣IFNγ-PEG-BiPPBによる研究
【0078】
材料及び方法
20〜25gの重さの正常なオスのC57BL/6及びBalb/cマウスがHarlan (Zeist、オランダ)から得られた。それらは、12:12時間の明/暗サイクルで維持され、及び、自由に標準的な食餌を受けた。動物研究についての全ての実験プロトコルは、グローニンゲン大学の動物倫理委員会により承認された。皮下腫瘍を誘発する為に、C26細胞が、それらを増殖フェーズに維持する為に、動物における注入の1日前に、125-mm3フラスコにおいて培養された。細胞がトリプシン処理により脱着され、そして、トリプシンが遠心により除去された。細胞ペレットがPBS中に再懸濁された。100μlのPBS中に懸濁された1 × 106の細胞 (B16及びC26細胞)の全部がBalb/cマウスの脇腹に皮下注入された。腫瘍成長が、デジタルVernierカリパー(a digital Vernier caliper)を用いて腫瘍サイズを測定することにより追跡された。腫瘍体積が式:a × b2 / 2、を用いて確立され、ここでaは腫瘍長さを示し、そして、bは腫瘍幅を示す。C26腫瘍が、記載されたとおりに、マウスにおいて誘発された。処置が、腫瘍体積が50〜100mm3に達した5日目に開始された。というのも、この腫瘍サイズが該処置の開始のための最適な腫瘍サイズとして示されているからである。動物(群当たりn=4)が、麻酔(O2/イソフルラン)下で1日おきに、ビヒクル(PBS)、模倣IFNγ-PEG (5μg/投与)、又は模倣IFNγ-PEG-BiPPB (5 μg/投与)の6の用量を静脈内に注入された。腫瘍サイズは麻酔科で測定された。C26腫瘍を有する動物が、20日目で殺された。というのも、該処置の効果が観察されなかったからである。動物は、ガス麻酔(O2/イソフルラン)下で殺され、そして腫瘍が分離され、そして、凍結切片の為に冷たいイソペンタン中に固定化された。
【0079】
4μm厚のクライオスタット切片が、瞬間凍結された組織から調製され、そして、標準的な免疫ペルオキシダーゼ方法に従いCD31について染色された。我々は、C26腫瘍の腫瘍切片における血管腔面積及び血管密度の決定の為に、CD31染色(内皮細胞マーカー)を分析した。結果は、未処理腫瘍における及び模倣IFNγにより処置されたマウスの腫瘍における有意な血管新生を示し、一方で、模倣IFNγ-BiPPBにより処置されたマウスが、それらの腫瘍における血管新生の大幅な減少を示した(データは示されていない)。
【実施例10】
【0080】
肺線維症に対する、PDGFレセプターにターゲティングされた切り取られたIFNγの効果
【0081】
IPF患者におけるIFNγに基づく治療についての背景及び原理
【0082】
特発性肺線維症(IPF)は、診断に続くわずかに3〜5年平均生存期間を有する進行性の実質性肺疾患(a progressive parenchymal lung disease)である1,2。IPFのほかに、他の種類の肺線維症も貧しい予後を有し、特に線維化する非特異性間質性肺炎(fibrosing non-specific interstitial pneumonia:NSIP)及び、例えばいくつかの自己免疫疾患及び外因性アレルギー性肺胞炎の、末期線維症が貧しい予後を有する。現在、疾患メカニズムの乏しい理解の故に、肺線維症のための有効な治療は無い。
【0083】
線維芽細胞(筋線維芽細胞)は、肺線維症の全てのタイプにおいて中心的な役割を果たす3。継続的な肺への損傷が、線維芽細胞の動員及びそれらの筋線維芽細胞への形質転換を伴う、異常に制御された修復メカニズムの開始をもたらす。筋線維芽細胞は、コラーゲンのような細胞外マトリックス成分の過剰量を生産する線維症における重要なエフェクター細胞である。筋線維芽細胞は現在、肺線維症の処置の為の重要な治療標的であると考えられている3。筋線維芽細胞の増殖及び形質転換における重要な成長因子は、形質転換成長因子β(TGFb)、血小板由来成長因子(PDGF)、及びエンドセリン-1であり、そして、多くの新たな治療がこれらの因子又はそれらのレセプターを阻害することに焦点を当ててきた。しかしながら、筋線維芽細胞挙動を調節することに基づく臨床試験のほとんどが失望させる結果を示した1。
【0084】
インターフェロンガンマ(IFNγ)はおそらく、IPFの臨床試験において最も研究された抗線維症メディエーターである。それは、STAT-1(Signal Transducers and Activators of Transcription-1)依存性経路を通じて筋線維芽細胞の増殖停止及びアポトーシスを媒介し、これは、線維生成応答の解決にとって重要である4。最初の有望な開始にもかかわらず、大規模なINSPIRE試験は、IFNγが生存期間を延ばさないことを結論付けた5。しかしながら、IFNγは、皮下に投与され、そして、IFNγレセプターは体内のほとんどすべての細胞上に見られるので、それは深刻な、用量を制限する副作用を有する。これらは、インフルエンザ様の病気及びけん怠感を含む5。吸入された投与は、この問題を部分的に回避することができ、そして、一つの臨床試験が現在、IPFにおけるエアロゾル化IFNγの効果を研究する為に登録されている(http://clinicaltrials.govを参照)。
【0085】
筋線維芽細胞内のIFNγの濃度、すなわちその有効性、を増加する為の他の方法は、薬剤ターゲティングの概念を用いることである:薬剤が、標的細胞により特異的に取り込まれる細胞選択的薬剤キャリアに結合され、該薬剤がそれらの細胞内で遊離され、それにより全身的な副作用を減少する一方で、標的細胞内の高い局所的濃度を得る。例えば、筋線維芽細胞は、薬剤ターゲティング目的の為に用いられうるPDGFレセプターを特異的に上方制御する6。
【0086】
CCl4は肝臓線維症を誘発するけれども、肺もまたシトクロムP450活性の低い発現を有し、そして、CCl4(この酵素により毒性化合物へと変化される)は、それ故に、肺組織においてもわずかに活性化される。これらは、PDGFレセプターを次に発現する線維症促進細胞の活性化をもたらし、これが線維症促進活性を開始する。このモデルは突発性肺線維症(IPF、参考文献8及び9を参照)のモデルとして用いられてきた。肝臓組織におけるINFγの抗線維症効果を探索する一方で、肺組織における有意な変化が調査者らにより注目された。CCl4により処理されたマウスからの肺の質量は、正常なマウスの肺よりも有意に高かったが(正常における体重の0.75 ± 0.05 %対未処置のCCl4により処理されたマウスにおける体重の2.03 ± 0.15 %; P< 0.01)、この増加はPPB-PEG-INFγによる処置によって有意に減少された(体重の1.53 ± 0.11 %; P<0.05、対未処置のCCl4マウス)。顕微鏡検査が、CCl4により処理されたマウスの肺がびまん性肺胞炎(線維症に進行しうる状態)により冒されていることを明らかにし及び肺が増大したコラーゲン染色を示した。これらのマウスがPDGFレセプター認識性ペプチドに結合したIFNγにより処置された場合、我々は肺における有意に減少した肺胞炎及び減少したコラーゲン沈着を発見した。注目すべきは、ターゲティングされたIFNγのこれらの有益な効果が、肺疾患を確立した後に得られたことである。
【0087】
それ故に、我々は、PDGFレセプターにターゲティングされたINFγが、有意なPDGFβレセプター発現を有する任意の組織において蓄積することができ、そして、肺におけるその効果により示されると同様に他の組織においても抗線維症効果を発揮することができると結論付ける。本発明のINFγアナログは、すなわち、PDGFレセプターの増加した発現により特徴づけられる他の組織における突発性線維症及び他の形の線維症又は硬化症の処置の為に用いられうる。
【実施例11】
【0088】
切り取られたIFNガンマの種々のレセプターへのターゲティング
【0089】
この実験において、マウスIFNγのシグナリング部分(模倣IFNγ)及び細胞表面ターゲティングドメインを有する本発明のアナログが、PDGFレセプターだけでなく、他の細胞表面レセプターにも効率的にターゲティングされうることが示される。試験された例となるターゲティングドメインは、ラクトース(アシアログリコプロテイン(ASGP)についてのリガンド)、マンノース(マンノースレセプター(CD 206)についてのリガンド)、及びトリペプチドRGD(レセプターαvβ3インテグリンレセプターについてのリガンド)を含む。模倣IFNγの配列は、FEVNNPQVQRQAFNELIRVVHQLLPESSLRKRKRSRからなった。IFNγ活性を試験する為の種々の細胞タイプ及び種々のパラメータが本研究に用いられた。対照試料は、無傷のマウスINNγにさらされた。詳細について、以下の表を参照されたい。
【0090】
【0091】
ラクトース−HSA-PEG-IFNγによる実験:
【0092】
合成
【0093】
ラクトース-HSA (ヒト血清アルブミンに結合した25のラクトース分子)が、二重機能的PEG分子(2KDa)に複合体化された。透析の後に、ラクトース-HSA-PEGが、マウスから得られたSATA修飾された切り取られたIFNγに結合された。合成された産物(Lac-HSA-PEG-模倣IFNγ)がPBSに対して広範に透析された。
【0094】
ヒト肝細胞における実験:
【0095】
ヒト肝細胞(HepG2)が、12のウェルプレート中にまかれた(1x105細胞/ウェル)。細胞が、一晩5%/37℃/CO2インキュベーター中で増殖させられた。次に、細胞が、Lac-HSAによる2時間のブロッキング後、培地、マウスIFNγ(1ug/ml)、ヒトIFNγ(1ug/ml)、マウスIFNγ由来Lac-HSA-PEG-IFNγ(1ug/ml)、Lac-HAS、又はLac-HSA-PEG-IFNγ (1ug/ml)とインキュベートされた。24時間のインキュベーション後、細胞が溶解され、RNAが分離され、そして、逆転写された。そのcDNAが、Inter-Cellular Adhesion Molecule 1 (ICAM1)発現の分析の為に用いられた(これはIFNγに応答して誘発されると知られている)。18srRNAが、ハウスキーピング対照として用いられた。
【0096】
結果:
【0097】
予想されたとおり、マウスの切り取られたIFNγもLac-HSAも、ヒト肝細胞におけるICAM1発現を誘発しなかった一方で、ヒトIFNγ及びマウス由来Lac-HSA-PEG-IFNγが、ヒト肝細胞におけるICAM1発現を上方制御した。さらに、Lac-HSA-PEG-IFNγにより誘発されたICAM1発現は、Lac-HSAの過剰によりほとんど完全にブロックされた。
【0098】
結論:
【0099】
INFγの種特異性が、マウス(切り取られた)INFγがヒト肝細胞において無効であることを示すことによって確認された。しかしながら、このサイトカインは、アシアログリコプロテイン(ASGP)レセプターを介して肝細胞へ進入すると知られている、標的部分ラクトースへの結合後、ヒト細胞において生物活性な化合物に変化された。ASGPレセプターについての特異性が、Lac-HSAによるこのレセプターの妨害により示された。これは、INFγのシグナリング部分(これは種特異的でない)が、線維芽細胞以外の標的細胞の細胞質内へ、PDGFレセプター以外の標的レセプターを介して、ペプチドの代わりに糖部分を用いて、送達されうることを実証する。肝細胞ターゲティングは、B型肝炎及びC型肝炎の処置に特に関連し、及び、ICAM-1上方制御は抗ウィルス活性を増大する為の生理学的応答である。この実験は、本発明に従う細胞特異的な切り取られたINFγの抗ウィルス性化合物としての使用を裏付ける。
【0100】
同様に、マンノースが、標準的な技術(L. Beljaars et al J. of Hepatology 29: 579-588, 1998)に従い、切り取られたマウスINFγに連結され、そして、このマンノシル化INFγの生物活性が、マウスマクロファージにおいて、読み取りパラメータとしてのMHCクラスII発現により示された(rtPCR方法)。
【0101】
内皮結合性ペプチドRGD又はその対照ペプチドRAG(これはこれらの細胞に結合しない)も、標準的な方法に従い、切り取られたマウスINFγに連結された。得られたアナログが、それらの生物学的活性について、内皮細胞(H5V)の培養物において、血管新生を反映するパラメータである管形成を測定することにより評価された。H5V細胞による管形成は、このアッセイにおいてRGD-模倣INFγにより最も強力に阻害された(データは示されていない)。
【0102】
結論:ターゲティング部分(例えばオリゴ糖又はペプチド)への複合体化による切り取られたマウスINFγの修飾は、このサイトカインのシグナリング部分の生物活性を妨げること無く、実行可能である。天然のレセプターへの結合において欠陥があるが代わりに該アナログの細胞取り込み媒介する異なる細胞表面レセプターへ結合できるINFγアナログの送達は、より少ない副作用を有するより有効な治療適用を許す。
【0103】
【実施例12】
【0104】
培養された又は新たに分離された初代細胞へのBiPPBの結合性研究
【0105】
この実験は、化学的に製造された又は組み換え技術により製造されたBi-PPBのいずれもが、PDGFβレセプターに特異的に結合することを示す。レセプター特異性は、特異的な抗PDGF-βレセプター抗体との結合を妨害することにより示される。BiPPBは、それがラット、マウス、及びヒトの筋線維芽細胞様細胞に結合するので、種に非特異的である。単環の形は該標的レセプターに結合しないので、レセプター相互作用は少なくとも2つの環状ペプチドを要求する。
【0106】
BiPPBの配列
Cys(1)-Cys(1)及びCys(2)-Cys(2) ジスルフィド架橋環状化
【0107】
方法
【0108】
BiPPBの結合が、初代の新たに分離されたラット肝星細胞において実施された。細胞が、8ウェルのガラスプレート (Lab-Tek,、Nunc、ネーパービル、IL)中に、30,000細胞/ウェルで、培養培地中に蒔かれた。一晩の37℃/5%CO2でのインキュベーション後、細胞がPBSにより洗浄され、そしてその後、FITC標識されたPPB (単環)又はBiPPB (二環: 10 μg/ml)と一緒に、室温でインキュベートされた。結合を妨害する為に、FITCに結合したPPB又はBiPPBの1時間前に、抗PDGF-βRIgGが該細胞に添加された。2時間後、細胞が冷たいPBSにより3〜4回洗浄され、そして、4%パラホルムアルデヒドにより固定化された。核がDAPIにより対比染色され、そして、シチフロー(citifluor、抗劣化試薬)中に包埋され、そして、蛍光顕微鏡下で可視化された。
【0109】
同様の結合性実験が、初代の新たに分離されたヒト筋線維芽細胞、マウス3T3線維芽細胞、及びヒト肝星細胞(LX2)において実施された。ヒト肝星細胞について、BiPPBの配列は以下の通りであった:
Cys(1)-Cys(1)及びCys(2)-Cys(2) ジスルフィド架橋環状化
【0110】
結果:PDGFレセプターは二量体相互作用を要求するので、FITCに結合した単環のPPBは何も結合を示さなかった。FITCに結合したBiPPBは、試験された細胞タイプへの有意な結合を示し、これはPDGFレセプター抗体によりほとんど完全にブロックされ、これらの細胞への結合のレセプター特異性を示す(データは示されていない)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インターフェロンガンマ(IFNγ)のアナログであって、その天然のレセプターへの結合を媒介する部分が少なくとも機能的に破壊され、且つ、該アナログが細胞内のIFNγ活性を媒介することができるシグナリング部分を含み、該シグナリング部分がそのN末端で、任意的にリンカーを介して、該IFNγレセプター以外の細胞表面レセプターへ結合することができる少なくとも1つのターゲティングドメインを備えられている、前記アナログ。
【請求項2】
細胞内活性を媒介する該シグナリング部分が、多塩基性核局在シグナル(NLS)モチーフを含む、請求項1に記載のアナログ。
【請求項3】
該多塩基性NLSモチーフがアミノ酸配列(R)KRXRS(R)を含み、Xが任意のアミノ酸残基であり、好ましくはXがR、K、S、又はTであるところの(R)KRXRS(R)を含む、請求項2に記載のアナログ。
【請求項4】
該シグナリング部分が、
(d) (a)、(b)、又は(c)における配列の少なくとも10、好ましくは少なくとも15、の連続したアミノ酸の一続き;
(e) (a)又は(b)又は(c)と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%の同一性を示すアミノ酸配列、ただし該細胞内シグナリング活性が維持されている; 及び
(f) 多くとも10、好ましくは多くとも8、より好ましくは多くとも5のアミノ酸残基が削除され、追加され、又は置換されている(a)又は(b)又は(c)下のアミノ酸配列、ただし該シグナリング活性、例えば核局在、が維持されている
(g) コンセンサス配列VxxxxVQRxAxxELIxVxxxLxPxxxxxKRxRS、ここでxは任意のアミノ酸残基である;
(h) コンセンサス配列VxxxxxQxxAxxELIxVxxxLxPxxxxxKRKRS、ここでxは任意のアミノ酸残基である; 及び
(i) コンセンサス配列Vxxx[Q/N][F/V/I]Q[R/H][Q/K]A[F/V/I][N/H]ELI[R/Q]Vx[H/A][Q/E]L[L/S]P[E/A][S/A][S/A][L/K]xxKRKRS、ここでxは任意のアミノ酸残基である;
からなる群から選ばれる配列を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のアナログ。
【請求項5】
配列:
ここで
Xaa1、Xaa2、Xaa3、Xaa4、Xaa6、Xaa11、Xaa13、Xaa14、Xaa16、Xaa17、Xaa18、Xaa19、Xaa20、Xaa21、Xaa22、Xaa23、Xaa24、及びXaa25が任意のアミノ酸残基であり、
Xaa5が極性の、荷電していない残基であり、例えばAsn又はThrなど、
Xaa7が非極性の、疎水性残基であり、例えばPro又はLeuなど、
Xaa8が極性の、荷電していない残基であり、例えばGln又はAsnなど、
Xaa9が非極性の、疎水性残基であり、例えばVal、Ile、又はLeuなど、
Xaa10が極性の、塩基性残基であり、例えばArg、His、又はLysなど、
Xaa12が非極性の、疎水性残基であり、例えばPhe、Val、又はIleなど、
Xaa15が非極性の、疎水性残基である、例えばVal、Ile、又はMetなど、
に従うシグナリング部分を含む、請求項4に記載のアナログ。
【請求項6】
該ターゲティングドメインが、線維芽細胞及び線維芽細胞様細胞、好ましくは筋線維芽細胞、門脈線維芽細胞、メサンギウム細胞、間質線維芽細胞、肺胞線維芽細胞、及び/又は間質細胞に特異的であるレセプターに結合することができる、請求項1〜5のいずれか1項に記載のアナログ。
【請求項7】
該ターゲティングドメインが、オリゴ糖又は糖タンパク質に対するレセプター、好ましくはマンノース6-ホスフェート/インスリン様成長因子IIレセプター(M6P/IGF2R)、アシアログリコプロテイン(ASGP)レセプター、又はマンノースレセプター(CD 206)、に結合することができる、請求項1〜6のいずれか1項に記載のアナログ。
【請求項8】
該ターゲティングドメインが、キャリア分子と複合体化されたオリゴ糖、好ましくはマンノース(-6-ホスフェート)又はラクトースである、請求項7に記載のアナログ。
【請求項9】
該レセプターが、PDGFレセプター、コラーゲンVI型レセプター、並びに、TGFβレセプター、TNFαレセプター、インスリン成長因子レセプター、VEGFレセプター、ケモカインレセプター、及びIL1βレセプターを包含するサイトカインレセプターからなる群から選ばれるものである、請求項1〜6のいずれか1項に記載のアナログ。
【請求項10】
レセプターがPDGFレセプター、好ましくはPDGFβレセプターである、請求項9に記載のアナログ。
【請求項11】
該ターゲティングドメインが少なくとも1つの環状ペプチド部分を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載のアナログ。
【請求項12】
該ターゲティングドメインが、環状ペプチド部分の少なくとも1つのタンデムリピート、好ましくは同一の環状ペプチド部分、を含む、請求項11に記載のアナログ。
【請求項13】
タンデムリピート内の該2つの環状ペプチド部分が2〜7のアミノ酸のリンカーを介して連結されている、請求項11に記載のアナログ。
【請求項14】
該リンカーが、(i)配列K(GS)mGG、ここでmは1又は2である、及び(ii)一般式 [G n D m]の配列、ここでn+mが4〜7であり、n ≧ 4且つmが0〜3の整数である、からなる群から選ばれるものである、請求項13に記載のアナログ。
【請求項15】
該ターゲティングドメインが、少なくともアミノ酸配列RGD、KPT、SRN、NLI、及び/又はLIDを含む、請求項1〜14のいずれか1項に記載のアナログ。
【請求項16】
該ターゲティングドメインが、アミノ酸配列CSRNLIDC-リンカー-CSRNLIDCSを含み、該リンカーが3〜7、好ましくは4又は5、のアミノ酸残基のアミノ酸配列である、請求項15に記載のアナログ。
【請求項17】
ターゲティングドメインに複合体化された関心のある化合物を含む複合体であって、該ターゲティングドメインが、アミノ酸配列X1SRNLIDX2-リンカー-X3SRNLIDX4を含み、ここで、X1及びX2の対及びX3及びX4の対が、二環構造が形成され、配列SRNLIDが環のそれぞれの部分であるように、結合、好ましくはペプチド結合、を形成でき、且つ、該リンカーが2〜7、好ましくは3〜5、のアミノ酸残基のアミノ酸配列である、前記複合体。
【請求項18】
好ましくはポリエチレングリコール及びその誘導体からなる群から選ばれる、少なくとも1つの非抗原性ポリマーを備えられた、請求項1〜17のいずれか1項に記載のアナログ又は複合体。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか1項に記載のタンパク質性アナログ又は複合体をコードする、分離された核酸配列。
【請求項20】
請求項19に記載の分離された核酸配列を含む発現ベクター。
【請求項21】
請求項18に記載の核酸配列又は請求項20に記載のベクターを含む宿主細胞であって、好ましくは該宿主細胞がバクテリア宿主細胞又は哺乳類宿主細胞である、前記宿主細胞。
【請求項22】
請求項1〜18のいずれか1項に記載のアナログ又は複合体と、医薬的に許容できるキャリア、アジュバント、及び/又は添加物とを含む医薬組成物。
【請求項23】
ガン、ウィルス性疾患、線維性疾患、硬化性疾患、及び慢性又は急性の炎症疾患から選ばれる疾患の治療的又は予防的処置の為の医薬の製造の為に、請求項1〜18のいずれか1項に記載のアナログ又は複合体を使用する方法。
【請求項24】
ガン、ウィルス性疾患、線維性疾患、硬化性疾患、及び慢性又は急性の炎症疾患から選ばれる疾患の治療的又は予防的処置の為の、請求項1〜18のいずれか1項に記載のアナログ又は複合体。
【請求項25】
肝臓疾患、好ましくは慢性の肝臓疾患、例えば肝硬変など、の処置の為の、請求項24に記載のアナログ又は複合体。
【請求項26】
ウィルス性疾患、好ましくはインフルエンザウィルス又は呼吸器合胞体ウィルス(RSV)により引き起こされる疾患、の処置の為の、請求項24に記載のアナログ又は複合体。
【請求項27】
ガン、ウィルス性疾患、線維性疾患、硬化性疾患、及び慢性又は急性の炎症疾患から選ばれる疾患の治療的又は予防的処置の為の方法であって、その必要がある対象に、請求項1〜18のいずれか1項に記載のアナログ又は複合体の有効量を投与することを含む、前記方法。
【請求項28】
該疾患が、糸球体硬化症、間質性線維症、肺線維症、アテローム性動脈硬化症、関節リウマチ、クローン病、潰瘍性大腸炎、糸球体腎炎、及び敗血症からなる群から選ばれるものであり、好ましくは該疾患が肝臓疾患であり、より好ましくは慢性肝臓疾患、例えば肝硬変である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
該投与が、粘膜投与を含み、好ましくは肺内投与を含む、請求項27又は28に記載の方法。
【請求項1】
インターフェロンガンマ(IFNγ)のアナログであって、その天然のレセプターへの結合を媒介する部分が少なくとも機能的に破壊され、且つ、該アナログが細胞内のIFNγ活性を媒介することができるシグナリング部分を含み、該シグナリング部分がそのN末端で、任意的にリンカーを介して、該IFNγレセプター以外の細胞表面レセプターへ結合することができる少なくとも1つのターゲティングドメインを備えられている、前記アナログ。
【請求項2】
細胞内活性を媒介する該シグナリング部分が、多塩基性核局在シグナル(NLS)モチーフを含む、請求項1に記載のアナログ。
【請求項3】
該多塩基性NLSモチーフがアミノ酸配列(R)KRXRS(R)を含み、Xが任意のアミノ酸残基であり、好ましくはXがR、K、S、又はTであるところの(R)KRXRS(R)を含む、請求項2に記載のアナログ。
【請求項4】
該シグナリング部分が、
(d) (a)、(b)、又は(c)における配列の少なくとも10、好ましくは少なくとも15、の連続したアミノ酸の一続き;
(e) (a)又は(b)又は(c)と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%の同一性を示すアミノ酸配列、ただし該細胞内シグナリング活性が維持されている; 及び
(f) 多くとも10、好ましくは多くとも8、より好ましくは多くとも5のアミノ酸残基が削除され、追加され、又は置換されている(a)又は(b)又は(c)下のアミノ酸配列、ただし該シグナリング活性、例えば核局在、が維持されている
(g) コンセンサス配列VxxxxVQRxAxxELIxVxxxLxPxxxxxKRxRS、ここでxは任意のアミノ酸残基である;
(h) コンセンサス配列VxxxxxQxxAxxELIxVxxxLxPxxxxxKRKRS、ここでxは任意のアミノ酸残基である; 及び
(i) コンセンサス配列Vxxx[Q/N][F/V/I]Q[R/H][Q/K]A[F/V/I][N/H]ELI[R/Q]Vx[H/A][Q/E]L[L/S]P[E/A][S/A][S/A][L/K]xxKRKRS、ここでxは任意のアミノ酸残基である;
からなる群から選ばれる配列を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のアナログ。
【請求項5】
配列:
ここで
Xaa1、Xaa2、Xaa3、Xaa4、Xaa6、Xaa11、Xaa13、Xaa14、Xaa16、Xaa17、Xaa18、Xaa19、Xaa20、Xaa21、Xaa22、Xaa23、Xaa24、及びXaa25が任意のアミノ酸残基であり、
Xaa5が極性の、荷電していない残基であり、例えばAsn又はThrなど、
Xaa7が非極性の、疎水性残基であり、例えばPro又はLeuなど、
Xaa8が極性の、荷電していない残基であり、例えばGln又はAsnなど、
Xaa9が非極性の、疎水性残基であり、例えばVal、Ile、又はLeuなど、
Xaa10が極性の、塩基性残基であり、例えばArg、His、又はLysなど、
Xaa12が非極性の、疎水性残基であり、例えばPhe、Val、又はIleなど、
Xaa15が非極性の、疎水性残基である、例えばVal、Ile、又はMetなど、
に従うシグナリング部分を含む、請求項4に記載のアナログ。
【請求項6】
該ターゲティングドメインが、線維芽細胞及び線維芽細胞様細胞、好ましくは筋線維芽細胞、門脈線維芽細胞、メサンギウム細胞、間質線維芽細胞、肺胞線維芽細胞、及び/又は間質細胞に特異的であるレセプターに結合することができる、請求項1〜5のいずれか1項に記載のアナログ。
【請求項7】
該ターゲティングドメインが、オリゴ糖又は糖タンパク質に対するレセプター、好ましくはマンノース6-ホスフェート/インスリン様成長因子IIレセプター(M6P/IGF2R)、アシアログリコプロテイン(ASGP)レセプター、又はマンノースレセプター(CD 206)、に結合することができる、請求項1〜6のいずれか1項に記載のアナログ。
【請求項8】
該ターゲティングドメインが、キャリア分子と複合体化されたオリゴ糖、好ましくはマンノース(-6-ホスフェート)又はラクトースである、請求項7に記載のアナログ。
【請求項9】
該レセプターが、PDGFレセプター、コラーゲンVI型レセプター、並びに、TGFβレセプター、TNFαレセプター、インスリン成長因子レセプター、VEGFレセプター、ケモカインレセプター、及びIL1βレセプターを包含するサイトカインレセプターからなる群から選ばれるものである、請求項1〜6のいずれか1項に記載のアナログ。
【請求項10】
レセプターがPDGFレセプター、好ましくはPDGFβレセプターである、請求項9に記載のアナログ。
【請求項11】
該ターゲティングドメインが少なくとも1つの環状ペプチド部分を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載のアナログ。
【請求項12】
該ターゲティングドメインが、環状ペプチド部分の少なくとも1つのタンデムリピート、好ましくは同一の環状ペプチド部分、を含む、請求項11に記載のアナログ。
【請求項13】
タンデムリピート内の該2つの環状ペプチド部分が2〜7のアミノ酸のリンカーを介して連結されている、請求項11に記載のアナログ。
【請求項14】
該リンカーが、(i)配列K(GS)mGG、ここでmは1又は2である、及び(ii)一般式 [G n D m]の配列、ここでn+mが4〜7であり、n ≧ 4且つmが0〜3の整数である、からなる群から選ばれるものである、請求項13に記載のアナログ。
【請求項15】
該ターゲティングドメインが、少なくともアミノ酸配列RGD、KPT、SRN、NLI、及び/又はLIDを含む、請求項1〜14のいずれか1項に記載のアナログ。
【請求項16】
該ターゲティングドメインが、アミノ酸配列CSRNLIDC-リンカー-CSRNLIDCSを含み、該リンカーが3〜7、好ましくは4又は5、のアミノ酸残基のアミノ酸配列である、請求項15に記載のアナログ。
【請求項17】
ターゲティングドメインに複合体化された関心のある化合物を含む複合体であって、該ターゲティングドメインが、アミノ酸配列X1SRNLIDX2-リンカー-X3SRNLIDX4を含み、ここで、X1及びX2の対及びX3及びX4の対が、二環構造が形成され、配列SRNLIDが環のそれぞれの部分であるように、結合、好ましくはペプチド結合、を形成でき、且つ、該リンカーが2〜7、好ましくは3〜5、のアミノ酸残基のアミノ酸配列である、前記複合体。
【請求項18】
好ましくはポリエチレングリコール及びその誘導体からなる群から選ばれる、少なくとも1つの非抗原性ポリマーを備えられた、請求項1〜17のいずれか1項に記載のアナログ又は複合体。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか1項に記載のタンパク質性アナログ又は複合体をコードする、分離された核酸配列。
【請求項20】
請求項19に記載の分離された核酸配列を含む発現ベクター。
【請求項21】
請求項18に記載の核酸配列又は請求項20に記載のベクターを含む宿主細胞であって、好ましくは該宿主細胞がバクテリア宿主細胞又は哺乳類宿主細胞である、前記宿主細胞。
【請求項22】
請求項1〜18のいずれか1項に記載のアナログ又は複合体と、医薬的に許容できるキャリア、アジュバント、及び/又は添加物とを含む医薬組成物。
【請求項23】
ガン、ウィルス性疾患、線維性疾患、硬化性疾患、及び慢性又は急性の炎症疾患から選ばれる疾患の治療的又は予防的処置の為の医薬の製造の為に、請求項1〜18のいずれか1項に記載のアナログ又は複合体を使用する方法。
【請求項24】
ガン、ウィルス性疾患、線維性疾患、硬化性疾患、及び慢性又は急性の炎症疾患から選ばれる疾患の治療的又は予防的処置の為の、請求項1〜18のいずれか1項に記載のアナログ又は複合体。
【請求項25】
肝臓疾患、好ましくは慢性の肝臓疾患、例えば肝硬変など、の処置の為の、請求項24に記載のアナログ又は複合体。
【請求項26】
ウィルス性疾患、好ましくはインフルエンザウィルス又は呼吸器合胞体ウィルス(RSV)により引き起こされる疾患、の処置の為の、請求項24に記載のアナログ又は複合体。
【請求項27】
ガン、ウィルス性疾患、線維性疾患、硬化性疾患、及び慢性又は急性の炎症疾患から選ばれる疾患の治療的又は予防的処置の為の方法であって、その必要がある対象に、請求項1〜18のいずれか1項に記載のアナログ又は複合体の有効量を投与することを含む、前記方法。
【請求項28】
該疾患が、糸球体硬化症、間質性線維症、肺線維症、アテローム性動脈硬化症、関節リウマチ、クローン病、潰瘍性大腸炎、糸球体腎炎、及び敗血症からなる群から選ばれるものであり、好ましくは該疾患が肝臓疾患であり、より好ましくは慢性肝臓疾患、例えば肝硬変である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
該投与が、粘膜投与を含み、好ましくは肺内投与を含む、請求項27又は28に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2013−516170(P2013−516170A)
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−547044(P2012−547044)
【出願日】平成22年12月30日(2010.12.30)
【国際出願番号】PCT/NL2010/050897
【国際公開番号】WO2011/081523
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(512171733)バイオリオン テクノロジーズ ビー.ブイ. (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月30日(2010.12.30)
【国際出願番号】PCT/NL2010/050897
【国際公開番号】WO2011/081523
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(512171733)バイオリオン テクノロジーズ ビー.ブイ. (1)
【Fターム(参考)】
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