説明

インターホン装置

【課題】 帰還信号による通話路の切り替わりを防止するために高い閾値に変更した状態を継続させる時間を設置環境に応じて最適に設定できるインターホン装置を提供する。
【解決手段】 送話/受話の音声の大きさを比較して通話路を切り替えるアッテネート制御部43は、受話優先状態から受話音声レベルが低下して受話音声閾値以下になって受話音声検出部45が受話音無しと判定した後、この低下状態が一定時間(送話オフセット継続時間)継続したら、受話優先を受けて設定された送話オフセット閾値を送話音声閾値に変更する。受話オフセット継続時間は、親機2の所定の操作を受けて、テスト信号を親機スピーカ22から報音させた後、親機マイク21の入力レベルが送話音声閾値を下回るまでの時間を送話音声検出部49が検出して設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インターホン機器としての子機と親機の間で通話する際に、子機から親機へ伝送される受話音声及び親機から子機へ伝送される送話音声に対して何れか一方の音声を優先させることで、双方とも音声を拡声することでハンドセットを使用せずに通話ができるインターホン装置に関し、特にこのような拡声通話式のインターホン装置において通話を良好に行う為に受話/送話の一方を優先させる制御に関する。
【背景技術】
【0002】
ハンドセットを使用しない拡声通話式のインターホン装置では、伝送された音声はスピーカから拡声されて報音される。このようなインターホン装置としては、ハンズフリーインターホン装置が知られている。
ハンズフリーインターホン装置では、受話/送話の音声を比較して大きい方の音声を優先させるボイススイッチが使用され、子機から伝送された音声を優先させる受話モード時は、子機から伝送された音声は親機側で拡声して報音されるが、送話側マイクで集音された音声が大きく減衰されて子機スピーカから報音される。一方、親機から伝送された音声を優先させる送話モード時は、親機から伝送された音声は子機側で拡声して報音されるが、受話側マイクで集音された音声が大きく減衰されて親機スピーカから報音されるよう制御され、音声の大きさを検出して受話モード、送話モードを自動で切り替える制御を行った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−135596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記拡声通話式のインターホン装置の場合、特に音響帰還量が0dB以上の特性を有する機器では、例えば受話状態と判定した時は受話出力により生じる音響エコー(スピーカからマイクへの音響帰還)で送話判定されないように、送話を検出する閾値を音響帰還量に応じて音声の無いアイドル状態の送話検出閾値よりも高いレベルに変更し、帰還信号による切り替わりを防止した。同様に送話状態の場合は、音声の無いアイドル状態の受話検出閾値よりも受話を検出する閾値を高いレベルに変更した。
しかし、高い状態に変更された送話を検出する閾値も受話音が終了したら低い閾値に変更された。そのため、残響音を音声と判断してしまい送話路が形成されてしまう場合があった。これは、スムーズな通話の障害となったし、ハウリング発生の原因となっていた。そのため、残響時間を考慮して高く設定した閾値をしばらく保持させるために遅延時間を設けることが考えられるが、設置環境に応じて残響時間は変化するため、遅延時間は想定される最長時間を考慮して長めに設定する必要が生じ、この場合もスムーズな通話の障害となってしまう。
【0005】
そこで、本発明はこの課題を解決するためになされたもので、帰還信号による通話路の切り替わりを防止するために高い閾値に変更した状態を継続させる時間を設置環境に応じて最適に設定できるインターホン装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する為に、請求項1の発明は、音声を拡声して通話を行う子機と親機とが伝送線で接続され、子機から親機への受話音声、及び親機から子機への送話音声の何れか一方向の音声を優先させる切り替えを行う音声制御部を備え、音声制御部は、受話音声を優先させるための受話音声閾値、送話音声を優先させるための送話音声閾値に加え、送話音声優先中に送話音声の帰還により受話音声優先へ切り替わるのを防止するための受話オフセット閾値、受話音声優先中に受話音声の帰還により送話音声優先へ切り替わるのを防止するための送話オフセット閾値を記憶する閾値記憶部と、受話音声レベルと受話音声閾値或いは受話オフセット閾値とを比較して受話音の有無を判定する受話音声検出部と、送話音声レベルと送話音声閾値或いは送話オフセット閾値とを比較して送話音の有無を判定する送話音声検出部と、受話音声検出部及び送話音声検出部の判定結果を受けて受話音声及び送話音声の減衰量を変更して受話/送話の優先を切り替えるアッテネート制御部と、を有するインターホン装置において、アッテネート制御部は、受話優先状態から受話音声レベルが低下して受話音声閾値以下になって受話音声検出部が受話音無しと判定した後、この低下状態が特定の時間である送話オフセット継続時間の間継続したら、受話優先を受けて設定された送話オフセット閾値を送話音声閾値に変更すると共に、音声制御部は、送話オフセット継続時間を決定する継続時間決定部を備え、継続時間決定部は親機或いは子機の所定の操作を受けて、テスト信号を親機スピーカから報音させた後、親機マイクの入力レベルが送話音声閾値を下回るまでの時間を送話音声検出部に検出させ、この時間を送話オフセット継続時間とすることを特徴とする。
この構成によれば、親機を設置した環境の残響時間を測定して受話音声の帰還を防止する送話オフセット継続時間を設定するので、送話オフセット閾値を継続させる時間を最適に設定することができる。よって、残響音が親機のマイクに集音されて送話路が形成されることがないし、送話オフセット閾値の継続時間が長すぎてスムーズな通話を阻害することも防止できる。
【0007】
請求項2の発明は、音声を拡声して通話を行う子機と親機とが伝送線で接続され、子機から親機への受話音声、及び親機から子機への送話音声の何れか一方向の音声を優先させる切り替えを行う音声制御部を備え、音声制御部は、受話音声を優先させるための受話音声閾値、送話音声を優先させるための送話音声閾値に加え、送話音声優先中に送話音声の帰還により受話音声優先へ切り替わるのを防止するための受話オフセット閾値、受話音声優先中に受話音声の帰還により送話音声優先へ切り替わるのを防止するための送話オフセット閾値を記憶する閾値記憶部と、受話音声レベルと受話音声閾値或いは受話オフセット閾値とを比較して受話音の有無を判定する受話音声検出部と、送話音声レベルと送話音声閾値或いは送話オフセット閾値とを比較して送話音の有無を判定する送話音声検出部と、受話音声検出部及び送話音声検出部の判定結果を受けて受話音声及び送話音声の減衰量を変更して受話/送話の優先を切り替えるアッテネート制御部と、を有するインターホン装置において、アッテネート制御部は、送話優先状態から送話音声レベルが低下して送話音声閾値以下になって送話音声検出部が送話音無しと判定した後、この低下状態が特定の時間である受話オフセット継続時間の間継続したら、送話優先を受けて設定された受話オフセット閾値を受話音声閾値に変更すると共に、音声制御部は、受話オフセット継続時間を決定する継続時間決定部を備え、継続時間決定部は親機或いは子機の所定の操作を受けて、テスト信号を子機スピーカから報音させた後、子機マイクの入力レベルが受話音声閾値を下回るまでの時間を受話音声検出部に検出させ、この時間を受話オフセット継続時間とすることを特徴とする。
この構成によれば、子機を設置した環境の残響時間を測定して送話音声の帰還を防止する受話オフセット継続時間を設定するので、受話オフセット閾値を継続させる時間を最適に設定することができる。よって、残響音が子機のマイクに集音されて受話路が形成されることがないし、受話オフセット閾値の継続時間が長すぎてスムーズな通話を阻害することも防止できる。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の構成において、音声制御部は、受話音声レベルから受話側背景雑音の大きさを判定する受話ノイズレベル判定部と、受話ノイズレベル判定部の判定結果を受けて受話音声閾値を決定する受話閾値制御部と、送話音声レベルから送話側背景雑音の大きさを判定する送話ノイズレベル判定部と、送話ノイズレベル判定部の判定結果を受けて送話音声閾値を決定する送話閾値制御部と、を有することを特徴とする。
この構成によれば、背景雑音のレベルを基に受話音/送話音を判定する閾値を決定するので、設置環境に応じて受話音声及び送話音声を認識する閾値を設定できる。よって、音声ではない周囲の雑音に反応して受話路或いは送話路を形成してしまう誤動作を防止できる。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、親機を設置した環境の残響時間を測定して受話音声の帰還を防止する受話オフセット継続時間を設定するので、送話オフセット閾値を継続させる時間を最適に設定することができる。また、子機を設置した環境の残響時間を測定して送話音声の帰還を防止する送話オフセット継続時間を設定するので、受話オフセット閾値を継続させる時間を最適に設定することができる。
よって、親機のマイク或いは子機マイクに集音された残響音により、送話路或いは受話路が形成されることがなく、通話をスムーズに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係るインターホン装置の一例を示す回路ブロック図である。
【図2】音声制御部の構成図である。
【図3】帰還音声による切り替わり防止の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明に係るインターホン装置の一例を示す回路ブロック図であり、1は玄関等に設置されて来訪者が居住者を呼び出すための子機、2は居室に設置されて子機1からの呼び出しを報音し、居住者が応答するための親機であり、子機1と親機2は伝送線Lにより接続されている。
【0012】
子機1は、通話するための子機マイク11及び子機スピーカ(子機SP)12、この子機マイク11及び子機スピーカ12を制御する音声処理部13、呼出操作等行うための操作部14、来訪者を撮像するためのカメラ15、カメラ15が撮像した映像データを親機2に伝送するために信号処理する映像処理部16、親機2と通信を行う子機通信処理部17等を備えている。
【0013】
親機2は、通話するための親機マイク21及び親機スピーカ(親機SP)22、この親機マイク21が集音した送話音声をA/D変換し、親機スピーカ22から報音させるために子機1から伝送された受話音声をD/A変換する第1音声CODEC23、デジタル信号化された送話音と受話音とを比較して送話路/受話路の形成を制御する音声制御部24、子機1から伝送されてきた受話音声をA/D変換して音声制御部24へ出力し、音声制御部24から送出される送話音声をD/A変換して子機1側へ出力する第2音声CODEC25、第1CODEC23或いは第2音声CODEC25にテスト信号を出力するテスト信号発生部27、子機1のカメラ15が撮像した映像を表示するモニタ28、子機1から伝送された映像信号をモニタ28が表示可能な信号に変換する映像処理部29、応答操作や後述するオフセット閾値の継続時間の設定操作等を行うための操作部30、親機2全体を制御するCPU31、子機1と通信する親機通信処理部32等を備えている。
【0014】
音声制御部24は、図2のブロック図に示すように構成されている。図2において、M1は子機1から親機2に伝送される受話音伝送路、M2は親機2から子機1に伝送される送話音伝送路を示している。そして、受話音伝送路M1の途中に受話音声を減衰させるための第1アッテネータ(第1ATT)41が設けられ、送話音伝送路M2の途中に送話音声を減衰させるための第2アッテネータ(第2ATT)42が設けられている。
【0015】
これらのアッテネータ41,42の減衰量はアッテネート制御部43で制御される。アッテネート制御部43は、比較器を内蔵して受話及び送話の音量を比較し、大きい方の音声を通過させるよう制御する。
また、受話音声の背景雑音レベルを判別する受話ノイズレベル判定部44、受話音声の有音/無音を判別する受話音声検出部45、受話音声の有音/無音を判別するための閾値を制御する受話閾値制御部46、送話音声の背景雑音レベルを判別する送話ノイズレベル判定部48、送話音声の有音/無音を判別する送話音声検出部49、送話音声の有音/無音を判別するための閾値を制御する送話閾値制御部50等を備えている。
【0016】
具体的に、受話音声検出部45は、受話音声を検出して受話閾値制御部46からの閾値情報を基に閾値と受話音声レベルを比較して有音/無音を判別する。また、後述する受話オフセット閾値の継続時間を設定する際に、子機1が設置された環境の残響時間をカウントする。
【0017】
受話閾値制御部46は、音声のないアイドル状態で受話路を形成するための受話音声閾値、送話路形成状態(送話優先状態)で受話路に切り替えるために、受話音声閾値より高く設定した受話オフセット閾値を記憶し、状況に応じて受話音声検出部45に閾値情報を出力する。
【0018】
送話音声検出部49は、送話音声を検出して送話閾値制御部50からの閾値情報を基に、閾値と送話音声レベルを比較して有音/無音を判別する。また、後述する送話オフセット閾値の継続時間を設定する際に、親機2が設置された環境の残響時間をカウントする。
【0019】
送話閾値制御部50は、アイドル状態で送話音声を検出するための送話音声閾値、受話路形成状態(受話優先状態)で送話音声を検出するために送話音声閾値より高く設定した送話オフセット閾値を記憶し、状況に応じて送話音声検出部49に閾値情報を出力する。
【0020】
尚、受話オフセット閾値は、子機スピーカ12で報音されている送話音声の回り込み(帰還)により受話判定しないよう設定された閾値であり、送話オフセット閾値は、親機スピーカ22で報音されている受話音声の回り込み(帰還)により送話判定しないよう設定された閾値である。
また、受話/送話ノイズレベル判定部44,48、受話/送話音声検出部45,49、受話/送話閾値制御部46,50、アッテネート制御部43は1つのDSPにより構成されている。
【0021】
このように構成されたインターホン装置は次のように動作する。但し、ここでは発明の要部である音声制御部24の動作を中心に説明し、子機1の呼出動作、呼び出しを受けた親機2での応答動作、カメラ15の撮像動作及びモニタ28での映像表示動作等の説明は省略する。
先ず、アイドル状態から受話音声の有無を判定するための受話音声閾値の設定、及びアイドル状態から送話音声の有無を判定するための送話音声閾値が設定される。受話音声閾値及び送話音声閾値は、背景雑音レベルを判定して設定され、背景雑音レベルは、音声の無いアイドル状態において判定される。
【0022】
受話音声の背景雑音レベルは受話ノイズレベル判定部44で判定され、音声のない状態で秒オーダーの時間平均を算出して判定される。送話音声の背景雑音レベルの判定も同様であり、送話ノイズレベル判定部48で実施され、音声のない状態で秒オーダーの時間平均を算出して判定される。
【0023】
そして、判定された受話音声の背景雑音レベルを基に、受話閾値制御部46で受話音声閾値が設定され、送話音声の背景雑音レベルを基に、送話閾値制御部50で送話音声閾値が設定される。何れの閾値も雑音レベルより所定値大きな値で設定される。尚、これらノイズレベルの判定及び受話音声/送話音声閾値の設定は、親機2の所定の設定操作で実施され、通常は施工業者によりインターホン装置設置時に実施される。
【0024】
こうして設定された受話音声閾値、送話音声閾値、そして予め受話閾値制御部46に記憶されている受話オフセット閾値、及び送話閾値制御部50に記憶されている送話オフセット閾値を基に、音声制御部24は受話路及び送話路の何れを形成するか判断する。以下、具体的に受話路或いは送話路の形成制御を説明するが、受話路の形成と送話路の形成は同様の制御であるため、ここでは受話路の形成から終了までを中心に説明する。
尚、送話路の形成状態とは第1アッテネータ41の減衰量が大きく第2アッテネータ42の減衰量がゼロの状態を言い、受話路の形成状態とは第1アッテネータ41の減衰量がゼロで第2アッテネータ42の減衰量が大きい状態を言う。
【0025】
子機マイク11が集音した音声は、音声処理部13により決められたレベルダイアに従いゲイン調整されて親機2に伝送される。伝送された受話音声は、第2音声CODEC25によりデジタル信号に変換されて音声制御部24に送られる。音声制御部24に送られた受話音声信号は、受話音声検出部45において信号レベルが算出(短時間平均パワーなど)され、音声の有無が判定される。このとき、算出された信号レベルが受話閾値制御部46において設定された受話音声閾値と比較され、有音/無音判定が行われる。
【0026】
受話音声検出部45で有音判定されると、判定結果はアッテネート制御部43に通知される。アッテネート制御部43は、送話音声検出部49からも送話音声の有音/無音判定情報を受けており、ここでは、送話音声が無い状態としているため、受話音声優先と判断して、予め設定された挿入損失量を送話側の第2アッテネータ42に挿入する。この結果、送話音声信号はアイドル状態の所定の減衰量から大きな減衰量に変更されて子機1に向けて送出される。同時に、受話側の第1アッテネータ41の減衰量をアイドル状態の所定の減衰量(初期設定値)から無損失の状態に変更して受話状態とする。
この結果、送話音声が大きく減衰されて子機スピーカ12から報音され、受話音声は減衰すること無く親機スピーカ22から報音される。即ち受話路が形成される。
また同時に、送話音声検出部49が送話音声を有音判定する送話閾値を送話音声閾値から送話オフセット閾値に引き上げる。
【0027】
図3は、受話音声の帰還信号による切り替わりを防止するために、送話音声を有音判定する閾値が変化する説明図を示している。V1は受話音声信号、V2は受話音声信号の親機2における帰還信号、S1は送話音声閾値、S2は送話オフセット閾値を示し、夫々の時間変化を示している。
受話音声検出部45は、受話信号レベルを算出し、アイドル状態時に設定されている受話音声閾値と比較し、閾値を上回ってから下回るまでを受話と認識する(図3に示す区間A1)。そして、受話と認識したら受話路を形成させ、受話終了と認識したら受話路の形成を解除する。即ち、アッテネート制御部43が第1アッテネータ41の減衰量をアイドル時の減衰量に変更する。但し、受話路形成を示す図3の受話区間B1は、ノイズを除去するために区間A1より一定時間遅れて形成される。
尚、受話信号の送話側における帰還信号は、同様に送話音声検出部49で信号レベル(例えば、短時間平均パワー)が算出される。
【0028】
こうして形成された受話路により、親機スピーカ22で受話音声が報音される。この報音された音声のマイク21への帰還量が0dB以上であったとすると、帰還信号(帰還音声)は送話検出閾値を上回る場合が発生するが、受話路を優先すると同時に送話検出閾値がそれより高い送話オフセット閾値S2に変更されることで、アッテネート制御部43が送話状態と判定することがない。
【0029】
尚、送話音声信号の入力により、送話音声検出部49が有音判定を同時に実施した場合は、アッテネート制御部43において受話/送話の検出レベルが比較され、レベルの大きい信号を選択して受話路/送話路の何れかが形成される。また、受話音声の帰還信号による切り替わりを防止する送話オフセット閾値S2は、送話音声の帰還信号による切り替わりを防止する受話オフセット閾値と合わせて、使用する機器の帰還特性などから事前に算出されて設定される。
【0030】
次に、図3に示す区間T1について説明する。区間T1は送話オフセット閾値S2の継続時間を示している。図3に示すように受話区間B1が終了しても一定時間T1の間継続され、その後送話音声閾値S1に変更される。
但し、受話区間B1は、受話終了を認識しても一定時間t1遅れて終了となる。この時間t1は無音と判定するための例えば250ms等の時間(無音判定時間)であり、従来より設けられている。そのため、この時間を加味すれば受話状態が終了してから送話オフセット閾値S2を継続させる時間はt1+T1となる。
尚、送話音声閾値S1から送話オフセット閾値S2への変更は受話状態確定時に実施される。
【0031】
この一定時間T1は、機器の設置環境(残響特性)に合わせて設定された時間であり、受話音声検出部45が検出する受話信号レベルが受話音声閾値を下回ってから親機マイク21が集音する残響音が送話音声閾値を下回るまでの時間に合わせて設定された送話オフセット継続時間である。
また、送話が終了した時点でも受話オフセット閾値は一定時間T2(図示せず)継続される。この一定時間T2は、送話音声検出部49が検出する送話信号レベルが送話音声閾値を下回ってから子機マイク11が集音する残響音が受話音声閾値を下回るまでの時間に合わせて設定された受話オフセット継続時間である。
【0032】
送話オフセット継続時間T1は、具体的に次のように設定される。親機2の所定の操作により、受話音声出力時の送話オフセット継続時間設定モードに入る。送話オフセット継続時間設定モードに入ると、CPU31の制御によりテスト信号発生部27に記憶されているテスト音声信号が第1音声CODEC23に出力される。出力されたテスト音声信号は第1音声CODEC23でD/A変換されて親機スピーカ22から所定の音量で報音される。尚、送話オフセット継続時間T1の設定中は、第2アッテネータ42はミュートされて子機1のスピーカ12からの報音はない。
【0033】
送話音声検出部49は、親機スピーカ22の報音が終了してから検出する送話音声レベルが送話閾値制御部50で決定した送話音声閾値を下回るまでの時間をカウントし、この時間を送話オフセット継続時間T1として記憶する。
【0034】
一方、受話オフセット継続時間T2は次のように設定される。親機2の操作を受けて受話オフセット継続時間設定モードに入ると、CPU31の制御によりテスト信号発生部27に記憶されている音声信号が第2音声CODEC25に出力され、出力されたテスト音声信号が第2音声CODEC25でD/A変換されて子機1に向けて出力される。この音声信号は子機1に伝送されて、子機スピーカ12から所定の音量で報音される。尚、受話オフセット継続時間T2の設定中は、第1アッテネータ41はミュートされ、親機スピーカ22からの報音はない。
【0035】
受話音声検出部45は、子機スピーカ12の報音が終了してから検出する受話音声レベルが受話閾値制御部46で決定した受話音声閾値を下回るまでの時間をカウントし、この時間を受話オフセット継続時間T2として記憶する。
【0036】
このように、親機2を設置した環境の残響時間を測定して受話音声の帰還を防止する送話オフセット継続時間T1を設定するので、送話オフセット閾値を継続させる時間を最適に設定することができる。また、子機1を設置した環境の残響時間を測定して送話音声の帰還を防止する受話オフセット継続時間T2を設定するので、受話オフセット閾値を継続させる時間を最適に設定することができる。よって、残響音が親機マイク21、或いは子機マイク11に集音されて送話路或いは受話路が形成されることがなく、通話をスムーズに行うことができる。
更に、背景雑音のレベルを基に受話音/送話音を判定する閾値を決定するので、設置環境に応じて最適な受話音声及び送話音声を認識する閾値を設定できる。よって、音声ではない周囲の雑音に反応して受話路或いは送話路を形成してしまう誤動作を防止できる。
【0037】
尚、上記実施形態では、テスト信号を自動発生させて残響時間を測定しているが、テスト信号の入力は外部機器を使用して行っても良い。例えば、第1音声CODEC23、或いは第2音声CODEC25にテスト信号を入力する端子を設け、音声制御部24内で最大入力レベルとなるようレベル調整されたテスト信号を例えばパーソナルコンピュータから出力させ、この信号によりオフセット継続時間T1,T2を設定しても良い。
また、子機1を住戸玄関に設置し親機2を住戸内設置した場合のインターホン装置に付いて説明したが、子機1と親機2の関係は、集合住宅に設置されるインターホン機器の集合玄関機と居室親機の関係に対しても適用でき、エントランスの残響時間が長い場合等良好に作用する。
【符号の説明】
【0038】
1・・子機、2・・親機、24・・音声制御部、27・・テスト信号発生部、41・・第1アッテネータ、42・・第2アッテネータ、43・・アッテネート制御部、44・・受話ノイズレベル判定部、45・・受話音声検出部(継続時間決定部)、46・・受話閾値制御部(閾値記憶部)、48・・送話ノイズレベル判定部、49・・送話音声検出部(継続時間決定部)、50・・送話閾値制御部(閾値記憶部)、T1・・送話オフセット継続時間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音声を拡声して通話を行う子機と親機とが伝送線で接続され、前記子機から前記親機への受話音声、及び前記親機から前記子機への送話音声の何れか一方向の音声を優先させる切り替えを行う音声制御部を備え、
前記音声制御部は、受話音声を優先させるための受話音声閾値、送話音声を優先させるための送話音声閾値に加え、送話音声優先中に送話音声の帰還により受話音声優先へ切り替わるのを防止するための受話オフセット閾値、受話音声優先中に受話音声の帰還により送話音声優先へ切り替わるのを防止するための送話オフセット閾値を記憶する閾値記憶部と、
受話音声レベルと前記受話音声閾値或いは前記受話オフセット閾値とを比較して受話音の有無を判定する受話音声検出部と、
送話音声レベルと前記送話音声閾値或いは前記送話オフセット閾値とを比較して送話音の有無を判定する送話音声検出部と、
前記受話音声検出部及び前記送話音声検出部の判定結果を受けて受話音声及び送話音声の減衰量を変更して受話/送話の優先を切り替えるアッテネート制御部と、を有するインターホン装置において、
前記アッテネート制御部は、受話優先状態から受話音声レベルが低下して前記受話音声閾値以下になって前記受話音声検出部が受話音無しと判定した後、この低下状態が特定の時間である送話オフセット継続時間の間継続したら、受話優先を受けて設定された前記送話オフセット閾値を前記送話音声閾値に変更すると共に、
前記音声制御部は、前記送話オフセット継続時間を決定する継続時間決定部を備え、前記継続時間決定部は親機或いは子機の所定の操作を受けて、テスト信号を親機スピーカから報音させた後、親機マイクの入力レベルが前記送話音声閾値を下回るまでの時間を前記送話音声検出部に検出させ、この時間を前記送話オフセット継続時間とすることを特徴とするインターホン装置。
【請求項2】
音声を拡声して通話を行う子機と親機とが伝送線で接続され、前記子機から前記親機への受話音声、及び前記親機から前記子機への送話音声の何れか一方向の音声を優先させる切り替えを行う音声制御部を備え、
前記音声制御部は、受話音声を優先させるための受話音声閾値、送話音声を優先させるための送話音声閾値に加え、送話音声優先中に送話音声の帰還により受話音声優先へ切り替わるのを防止するための受話オフセット閾値、受話音声優先中に受話音声の帰還により送話音声優先へ切り替わるのを防止するための送話オフセット閾値を記憶する閾値記憶部と、
受話音声レベルと前記受話音声閾値或いは前記受話オフセット閾値とを比較して受話音の有無を判定する受話音声検出部と、
送話音声レベルと前記送話音声閾値或いは前記送話オフセット閾値とを比較して送話音の有無を判定する送話音声検出部と、
前記受話音声検出部及び前記送話音声検出部の判定結果を受けて受話音声及び送話音声の減衰量を変更して受話/送話の優先を切り替えるアッテネート制御部と、を有するインターホン装置において、
前記アッテネート制御部は、送話優先状態から送話音声レベルが低下して前記送話音声閾値以下になって前記送話音声検出部が送話音無しと判定した後、この低下状態が特定の時間である受話オフセット継続時間の間継続したら、送話優先を受けて設定された前記受話オフセット閾値を前記受話音声閾値に変更すると共に、
前記音声制御部は、前記受話オフセット継続時間を決定する継続時間決定部を備え、前記継続時間決定部は親機或いは子機の所定の操作を受けて、テスト信号を子機スピーカから報音させた後、子機マイクの入力レベルが前記受話音声閾値を下回るまでの時間を前記受話音声検出部に検出させ、この時間を前記受話オフセット継続時間とすることを特徴とするインターホン装置。
【請求項3】
前記音声制御部は、受話音声レベルから受話側背景雑音の大きさを判定する受話ノイズレベル判定部と、
前記受話ノイズレベル判定部の判定結果を基に前記受話音声閾値を決定する受話閾値制御部と、
送話音声レベルから送話側背景雑音の大きさを判定する送話ノイズレベル判定部と、
前記送話ノイズレベル判定部の判定結果を基に前記送話音声閾値を決定する送話閾値制御部と、を有することを特徴とする請求項1又は2記載のインターホン装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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