説明

インターロイキン−3から誘導されるレトロ−インベルソペプチド

【課題】インターロイキン-3(IL-3)から誘導されるレトロ-インベルソ(retro-inverso)ペプチドの提供。
【解決手段】特定の配列から成るレトロ-インベルソペプチドであり、本来の親タンパク質と同様の活性を有し、また神経栄養活性を有する。好ましい実施態様の1つの態様においては、該配列の少なくとも1つの塩基性に荷電したアミノ酸が、別の塩基性に荷電したアミノ酸で置換される。この好ましい実施態様の別の態様においては、該配列の少なくとも1つの酸性に荷電したアミノ酸が、別の酸性に荷電したアミノ酸で置換される。有利には、該配列の少なくとも1つの非極性アミノ酸が、別の非極性アミノ酸で置換される。好ましくは、該配列の少なくとも1つの非荷電アミノ酸が、別の非荷電アミノ酸で置換される。この好ましい実施態様の別の態様においては、該配列の少なくとも1つの芳香族アミノ酸が、別の芳香族アミノ酸で置換される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、インターロイキン-3(IL-3)から誘導されるレトロ-インベルソ(retro-inverso)ペプチドに関する。これらのペプチドは、本来の親タンパク質と同様の活性を有し、また神経栄養活性を有する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
サイトカインは、天然および特異的免疫のエフェクター相中に製造され、免疫および炎症応答を仲介しかつ調節するように働くタンパク質である。サイトカインは、他のポリペプチドホルモンのように、標的細胞の表面上の特異的レセプターに結合することによってその作用を開始する。サイトカインの最もよく知られている族の1つは、天然の免疫を仲介するインターロイキンである。インターロイキンの構造および機能の詳細な記載については、アバス(Abbas)ら、細胞および分子の免疫学(Cellular and Molecular Immunology), W.B.サンダース社(Saunders Company)、フィラデルフィア、pp.225-243、1991参照。
【0003】
IL-3は、造血系内の多くの標的細胞に作用する。このサイトカインの構造および機能の詳細な概説は、ザ サイトカイン ハンドブック(The Cytokine Handbook)、第3版、トムソン(Thomson),A.編、アカデミック プレス(Academic Press)、サンディエゴ、CA、1998に見出すことができる。IL-3は、他のインターロイキンおよび造血増殖因子と広い構造的類似性を有する糖タンパク質である。ネズミIL-3は、140個のアミノ酸を含み、一方、ヒトIL-3は、133個のアミノ酸を含む。ネズミおよびヒトIL-3のアミノ酸配列は、わずか30%同一性しか示さず、交雑種(cross-species)生物活性の欠如を反映する(ヤング(Yang)ら、Cell 47:3-10, 1986)。
【0004】
IL-3は、いずれの造血増殖因子よりも最も広い標的特異性を有する。標的細胞の範囲としては、多能性造血幹細胞から誘導されるあらゆる系統の始原細胞を包含する。かくして、IL-3は、マクロファージ、好中球、好酸球、好塩基球、肥満細胞、巨核球および赤血球の発生および分化を刺激することができる。イン ビトロ(in vitro)では、造血幹細胞および始原細胞は、組織培養培地だけの中で培養するなら、直ちに死ぬ。他の造血増殖因子と同様に、IL-3は、アポトーシスによる死を防ぎ、イン ビトロ(in vitro)での生存を促進する(ウィリアムズ(Williams)ら、Nature 343:76-78, 1990)。IL-3が奪われたときには、IL-3依存性の細胞はアポトーシスをうける(ウィリアムズ(Williams)ら、前出)。
【0005】
1日3回3日間、IL-3の2000 ED50単位の皮下投与により、脾臓重量の増加ならびに、肥満細胞および肥満細胞の始原細胞、好中球およびマクロファージの数の増加がもたらされる(シュレーダー(Schrader)ら、特性決定されたポリペプチドによる免疫調節(Immune Regulation by Characterized Polypeputides), ゴールドシュタイン(Goldstein), G.ら編、リス(Liss)、ニューヨーク、pp.475-484、1986)。ヒトIL-3の霊長類およびヒトへの投与は、マウスにおいてみられるのと同様の効果をもたらした(ドナヒュー(Donahue)ら、Science 241:1820-1823, 1988;マイヤー(Mayer)ら、Blood 74:613-621, 1989)。カニクイザルにおいて、IL-3は、皮下注射の部位に骨髄外造血を誘発した(カーン(Khan)ら、Toxicol. Pathol. 24:391-397, 1996)。IL-3は、血小板製造を刺激するのに特に有用性を有し得る(ガンサー(Ganser)ら、Blood, 76:666-676, 1990)。さらに、臨床的試みは、IL-3およびG-CSFまたはGM-CSFの連続投与は、骨髄造血の最適刺激を提供し得ることを示唆する(レモリ(Lemoli)ら、J. Clin. Oncol. 14:3018-3025, 1996)。
【0006】
ニューロトロフィン(neurotrophin)および神経栄養因子は、神経細胞母集団の生存、標的神経支配および/または機能に影響を及ぼすことができるタンパク質またはペプチドである(バルデ(Barde)、Neuron, 2:1525-1534, 1989)。ニューロトロフィンのイン ビボ(in vivo)およびイン ビトロ(in vitro)での効力はよく証明されている。例えば、毛様神経栄養因子(ciliary neurotrophic factor)(CNTF)は、鶏の胚毛様神経節(ciliary ganglia)の生存をイン ビトロ(in vitro)で助長し、培養した交感神経、感覚および脊髄運動ニューロンの生存を助ける(イプ(Ip)ら、J. Physiol. Paris, 85:123-130, 1991)。
【0007】
ペプチドのイン ビボ(in vivo)での治療上の使用に対する主な障害は、それらがタンパク質分解を受けやすいことである。静脈内注射したIL-3の半減期は短く、たった40分間のオーダーである(クラッパー(Crapper)ら、Immunology 53:33-42, 1984)。レトロ-インベルソペプチドは、配列の方向が逆(レトロ)で、各アミノ酸のキラリティー(DまたはL)が逆にされた(インベルソ)、線状ペプチドの異性体である。幾つかのペプチド結合だけが逆にされており、逆にされた部分におけるアミノ酸残基のキラリティーが逆にされた、線状ペプチドの部分的に修飾されたレトロ-インベルソ異性体がまたある。そのようなペプチドの主な利点は、タンパク質分解に対する改善された抵抗性の故に、それらのイン ビボ(in vivo)での高められた活性である(概説のためには、チョレフ(Chorev)ら、Trends Biotech., 13:438-445, 1995参照)。そのようなレトロ-インベルソ類似体は、増加された代謝安定性を示すが、それらの生物活性はしばしば大きく妥協される(ギチャード(Guichard)ら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 91:9765-9769, 1994)。例えば、リッチマン(Richman)ら(J. Peptide Protein Res., 25:648-662)は、Gly3-Phe4アミド結合において修飾された線状および環状のリューエンケファリンの類似体は、本来のリューエンケファリンの6〜14%の範囲の活性を有することを決定した。チョレフ(Chorev)ら(同書)は、ビトロネクチン(vitronectin)のそのレセプターへの結合を阻害するペプチドのレトロ-反転が、50,000倍だけ親異性体より効かない1つのペプチドおよび、親環状ペプチドより4,000倍効く別のペプチドをもたらすことを示した。ギチャード(Guichard)ら(TIBTECH 14, 1996)は、レトロ-インベルソ(すべてD-レトロ)抗原擬態性が、ランダムコイル、ループまたは環状の配座のペプチドを用いてしか生じ得ないことを教示する。「らせん形」のペプチドの場合には、抗原擬態性を査定するのに使用される溶媒条件下で、らせん性が実際に不在でありさえしなければ、適切な機能の擬態性が期待される。
【0008】
生物活性を保持しながら、増加された代謝安定性を示す、IL-3誘導の神経栄養ペプチドについての必要性がある。
【発明の概要】
【0009】
発明の概要
本発明の1つの実施態様は、12〜約40個のアミノ酸を有する分離されたレトロ-インベルソペプチドであり、該ペプチドはSEQ ID NO:1で示される配列を含む。この好ましい実施態様の1つの態様においては、該配列の少なくとも1つの塩基性に荷電したアミノ酸が、別の塩基性に荷電したアミノ酸で置換される。この好ましい実施態様の別の態様においては、該配列の少なくとも1つの酸性に荷電したアミノ酸が、別の酸性に荷電したアミノ酸で置換される。有利には、該配列の少なくとも1つの非極性アミノ酸が、別の非極性アミノ酸で置換される。好ましくは、該配列の少なくとも1つの非荷電アミノ酸が、別の非荷電アミノ酸で置換される。この好ましい実施態様の別の態様においては、該配列の少なくとも1つの芳香族アミノ酸が、別の芳香族アミノ酸で置換される。有利には、ペプチドが、アミノ末端、カルボキシ末端またはアミノ末端とカルボキシ末端の両方にて、CH3CO、CH3(CH2)nCO、C6H5CH2COおよびH2N(CH2)nCO(n=1〜10)からなる群より独立して選択される部分で修飾される。好ましくは、ペプチドはグリコシル化されている。この好ましい実施態様の別の態様においては、ペプチドの1つ以上のアミド結合が還元されている。好ましくは、該ペプチド中の1つ以上の窒素がメチル化されている。この好ましい実施態様のなお別の態様においては、ペプチド中の1つ以上のカルボン酸基がエステル化されている。好ましくは、ペプチドは、SEQ ID NO:1で示されるアミノ酸配列を有する。
【0010】
本発明はまた、必要とする哺乳動物において、軸索生長または髄鞘形成を促進する方法を提供し、この方法は、哺乳動物に、軸索生長または髄鞘形成を促進するのに有効な量の、17〜約40個のアミノ酸を有し、SEQ ID NO:1で示される配列を含むレトロ-インベルソペプチドを含む組成物を投与する段階を含む。好ましくは、ペプチドはSEQ ID NO:1で示されるアミノ酸配列を有する。有利には、哺乳動物はヒトである。この好ましい実施態様の1つの態様においては、投与段階は、直接局所注入、全身、頭蓋内、脳脊髄内、局所または経口である。
【0011】
本発明はまた、造血を刺激する方法を提供し、この方法は、多能性造血幹細胞を、造血刺激有効量の、12〜約40個のアミノ酸を有し、SEQ ID NO:1で示される配列を含むレトロ-インベルソペプチドを含む組成物と接触させることを含む。好ましくは、この方法は、マクロファージ、好中球、好酸球、好塩基球、肥満細胞、巨核球または赤血球の発生および分化をもたらす。
【0012】
本発明の別の態様においては、哺乳動物において軸索生長または髄鞘形成を促進するのに使用するための、17〜約40個のアミノ酸を有し、SEQ ID NO:1で示される配列を含むレトロ-インベルソペプチドが提供される。好ましくは、ペプチドはSEQ ID NO:1で示されるアミノ酸配列を有する。有利には、哺乳動物はヒトである。
【0013】
本発明はまた、多能性造血幹細胞の造血を刺激するのに使用するための、17〜約40個のアミノ酸を有し、SEQ ID NO:1で示される配列を含むレトロ-インベルソペプチドを提供する。好ましくは、ペプチドはSEQ ID NO:1で示される配列を有する。
【0014】
本発明の別の実施態様は、17〜約40個のアミノ酸を有し、SEQ ID NO:1で示される配列を含むレトロ-インベルソペプチドを、必要とする哺乳動物において、軸索生長または髄鞘形成を促進するための薬剤の製造に使用することである。好ましくは、ペプチドはSEQ ID NO:1で示される配列を有する。有利には、哺乳動物はヒトである。
【0015】
本発明はまた、17〜約40個のアミノ酸を有し、SEQ ID NO:1で示される配列を含むレトロ-インベルソペプチドを、必要とする哺乳動物において、多能性造血幹細胞の造血を刺激するための薬剤の製造に使用することを提供する。好ましくは、ペプチドはSEQ ID NO:1で示される配列を有する。有利には、哺乳動物はヒトである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
好ましい実施態様の詳細な説明
本発明は、造血および血小板製造の刺激を含む本来のIL-3と同様の効果を仲介する、インターロイキン-3(IL-3)から誘導されるレトロ-インベルソ(RI)ペプチドを提供する。「から誘導される」という語は、ペプチドが、インターロイキン-3または以下に定義するその類似体の活性領域を含むことを示す。これらのRI IL-3-誘導ペプチドは、マクロファージ、好中球、好酸球、好塩基球、肥満細胞、巨核球および赤血球の増殖および分化を刺激する。
【0017】
これらのペプチドはまた、末梢神経および中枢神経系に対する、毒性の、外傷性の、虚血性の、変性の、かつ受け継がれた障害後の機能回復を促進することにおいて、治療上の用途を有する。これらのペプチドはまた、増加された髄鞘形成を促進し、かつ脱髄疾患の影響を打ち消すために有用である。特定のレトロ-インベルソペプチドの親ペプチドと同様の効果を仲介する能力は、以下の実施例に記載された標準のIL-3アッセイを用いて、当業者が決定することができる。これらのペプチドの使用は種々の疾患の治療を容易にする。というのは、それらは、本来のサイトカインまたは組換えサイトカインより安定であり、かつ合成が容易であるからである。
【0018】
本発明の特定のRI IL-3-誘導ペプチドおよび、それが誘導される親タンパク質を表1に示す。対応する本来の(レトロ-反転されていない)ペプチドは、米国特許第5,700,909号に開示されており、その内容のすべてが参照することにより本明細書に組入れられる。
【0019】
【表1】

【0020】
先に論じたように、これらRI IL-3-誘導ペプチドは、対応する全長のIL-3タンパク質と同じ造血活性を有し、また神経栄養および髄鞘栄養(myelinotrophic)活性を有する。本発明の1つの実施態様は、造血促進有効量の、12〜約40個のアミノ酸を有しかつSEQ ID NO:1で示されるRI IL-3-誘導ペプチドまたは同様の活性を有するその類似体を含むRIペプチドを投与することによって、多能性造血幹細胞の、マクロファージ、好中球、好酸球、好塩基球、肥満細胞、巨核球および赤血球のような細胞への発生および分化を刺激する方法である。そのような類似体としては、例えば1個以上のリシンおよび/またはアルギニン残基のアラニンまたは別のアミノ酸での置換;1個以上のリシンおよび/またはアルギニン残基の欠失;1個以上のチロシンおよび/またはフェニルアラニン残基の置換;1個以上のフェニルアラニン残基の欠失;ならびにペプチド内の1個以上のアミノ酸の保存的置換を含む。リシン/アルギニンおよびチロシン/フェニルアラニン残基の置換または欠失は、トリプシンおよびキモトリプシンそれぞれによるペプチド分解の受けやすさを減らす。
【0021】
本発明における使用のために企図されるこれらのペプチド配列の別の変更は、重要でない挿入および欠失を含む。保存的アミノ酸置換が企図される。そのような置換は、例えば、それらの側鎖の化学的性質に関連したアミノ酸の族内で生じる置換である。アミノ酸の族としては、塩基性に荷電したアミノ酸(リシン、アルギニン、ヒスチジン);酸性に荷電したアミノ酸(アスパラギン酸、グルタミン酸);非極性アミノ酸(アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン);非荷電の極性アミノ酸(グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、スレオニン、チロシン);ならびに芳香族アミノ酸(フェニルアラニン、トリプトファンおよびチロシン)を包含する。特に、ロイシンのイソロイシンまたはバリンでの分離した置換または、アスパラギン酸のグルタミン酸での分離した置換または、スレオニンのセリンでの分離した置換または、アミノ酸の構造的に関連のあるアミノ酸での同様の保存的置換からなる保存的アミノ酸置換は、ペプチドの特性に大きな影響を与えないことが、一般に受け入れられる。SEQ ID NO:1で示される配列を含む任意のRIペプチドまたはその挿入物、欠失物または置換物の、軸索生長、髄鞘形成、脱髄逆転および神経細胞死の阻止を促進する能力は、以下に示される実施例において提供されるアッセイを用いて決定することができる。
【0022】
種々の化学的修飾は、安定性、生物活性およびペプチドの血液脳障壁(blood brain barrier)を越える能力を改善する。1つのそのような修飾は、脂肪族または芳香族の酸の誘導体での脂肪族アミノ末端修飾であり、アミド結合を形成する。そのような誘導体としては、例えばCH3CO、CH3(CH2)nCO(n=1〜10)、C6H5CH2COおよびH2N(CH2)nCO(n=1〜10)を包含する。別の修飾は、アミド/エステル結合によりペプチドに結合される、脂肪族または芳香族アミン/アルコールの誘導体でのカルボキシ末端修飾である。そのような誘導体としては先に挙げたものを包含する。ペプチドはまた、アミノ末端およびカルボキシ末端の修飾の両方を有することができ、誘導体は、先に挙げたものから独立して選択される。ペプチドはまたグリコシル化されることができ、アルファアミノ基もしくはD-Asnまたはその両方が、グルコースまたはガラクトースで修飾される。別の企図される修飾においては、選択された主鎖アミド結合が還元される(NH-CH2)。他の修飾としては、アミド結合における選択された窒素のN-メチル化および、ペプチド上の酸基の少なくとも1つが芳香族または脂肪族のエステルとして修飾されるエステル化を含む。上記修飾の任意の組合せがまた企図される。
【0023】
本発明の別の実施態様は、細胞を、造血促進有効量の、12〜約40個のアミノ酸を有しかつSEQ ID NO:1で示されるRI IL-3-誘導ペプチドまたは上記したのと同様の活性を有するその類似体を含むRIペプチドと接触させることによる、分化しているかまたは分化していない神経細胞における軸索生長を促進する方法である。
任意のそのようなペプチドの軸索生長を刺激する能力は、以下の実施例1〜9に記載された方法を用いて、当業者が容易に決定することができる。任意の特定のIL-3-誘導ペプチドの本来のIL-3の同じ活性を仲介する能力は、実施例10〜11において論じられた親ペプチドについての標準アッセイを用いて決定することができる。
【0024】
細胞増殖培地中での神経栄養活性のための、本発明のRIペプチドの典型的最小量は通常、少なくとも約5ng/mlである。イン ビトロ(in vitro)での使用のために、この量またはそれ以上の量の本発明のRIペプチドが予想される。典型的には、0.1〜約10g/mlの範囲の濃度のこれらのペプチドが使用される。任意の特定の組織のための有効量は、実施例1にしたがって決定することができる。
【0025】
造血細胞または神経細胞は、本発明のRIペプチドを細胞に直接投与することによって、イン ビトロ(in vitro)またはイクス ビボ(ex vivo)で処置されることができる。これは、例えば細胞を特定の細胞タイプのために適当な増殖培地中で培養し、次いでペプチドを培地に添加することによって行うことができる。典型的には脊椎動物、好ましくは哺乳動物において、処置されるべき細胞がイン ビボ(in vivo)にあるときには、幾つかの技術のうちの1つによって組成物を投与することができる。最も好ましくは、組成物は、ペプチドの所望の局所濃度を与えるのに十分な量で、血液中に直接注射される。これらのRIペプチドは、Dペプチド結合の故に、イン ビボ(in vivo)で長く持続する。リシンおよびアルギニン残基を欠くペプチドにおいては、タンパク質分解が減らされる。より小さいペプチド(すなわち、50-mer以下)は、血液脳障壁を最も多く越えるようであり、CNS疾患の治療のために中枢神経系に入る(バンクス(Banks)ら、Peptides, 13:1289-1294, 1992参照)。
【0026】
神経疾患の治療のためには、直接頭蓋内注入または脳脊髄流体中への注入をまた、所望の局所濃度のニューロトロフィン(neurotrophin)を与えるのに十分な量で使用することができる。両方の場合に、製薬上許容される注射用担体が使用される。そのような担体としては、例えばホスフェート緩衝塩水およびリンゲル溶液が含まれる。あるいは、直接局所注入または全身投与によって、組成物を末梢神経組織へ投与することができる。種々の慣用の投与方式が予想され、静脈内、肺、筋肉内、皮内、皮下、頭蓋内、硬膜外、鞘内、局所および経口を含む。局所投与のための製薬上許容される担体としては、クリーム、ジェル、ペースト、軟膏、ローション、懸濁液、エマルジョンおよび分散液を含む。
【0027】
本発明のペプチド組成物は、単位投与形態で、例えば注射用組成物または、患者へ投与される毎日の投与量と等価な投与量での局所調製物で、または制御された放出組成物として、包装され、投与されることができる。PBS中または凍結乾燥解形態で活性成分の毎日の投与量を含む中隔封止されたびんは、単位投与の例である。好ましい実施態様においては、IL-3効果、例えば造血の刺激を促進するため、および神経変性疾患または脱髄疾患の治療のための、脊椎動物の体重に基づく、本発明のRIペプチドの毎日の全身投与量は、約0.01〜約10,000g/kgの範囲にある。より好ましくは、毎日の全身投与量は、約0.1〜1,000g/kgである。最も好ましくは、毎日の全身投与量は、約10〜100g/kgである。局所に投与される物質の毎日の投与量は、ほぼより少ない大きさのオーダーである。ペプチドが胃腸内系でのタンパク質分解に抵抗性であるので、経口投与が特に好ましい。
【0028】
本発明の1つの好ましい実施態様においては、ペプチドは局所的に、神経細胞にイン ビボ(in vivo)で、その移植により投与される。例えば、ポリ乳酸、ポリガラクト酸(polygalactic acid)、再生コラーゲン、多層リポソームおよび多くの他の慣用の蓄積処方物が、生物学的に活性な神経栄養ペプチド組成物と共に処方することができる生物侵食性または生物分解性物質を含む。これらの物質は、移植されると、徐々にこわれ、周囲の組織に活性物質を放出する。生物侵食性、生物分解性および他の蓄積処方物の使用は、本発明において特に企図される。注入ポンプ、マトリックス封鎖(entrapment)系および経皮デリバリー装置との組合せがまた企図される。ペプチドはまた、米国特許第5,529,914号に記載されているように、移植の前に、ポリエチレングリコール等角(conformal)コーティング中に封入されることができる。
【0029】
本発明のペプチドはまた、ミセルまたはリポソーム中に封入されることができる。リポソーム封入技術はよく知られている。リポソームは、標的にした組織に結合することができるレセプター、リガンドまたは抗体の使用によって、特定の組織、例えば神経組織を標的にし得る。これらの処方物の製造は、当技術分野においてよく知られている(ラディン(Radin)ら、Meth. Enzymol., 98:613-618, 1983)。
【0030】
目下、神経系の構造完全性の完全な機能再生および回復を促進することができる、入手可能な薬剤がない。これは特にCNSの場合に本当である。神経栄養因子の使用による末梢神経のどのような程度の再生も、本発明の範囲内にある。さらには、神経栄養因子は、神経母集団または脳の特定領域の変性に関連する神経変性疾患の治療において治療上有用であり得る。そのような変性の、どのような程度の遅延、停止、または反転も、本発明の範囲内にある。パーキンソン病の主な原因は、黒質のドーパミン作用性のニューロンの変性である。本発明のRIペプチドは、パーキンソン病の治療において治療上有用であり得る。年をとると視野の喪失に至る視覚神経変性疾患である、網膜神経障害がまた、本発明のRIペプチドを用いて治療可能である。
【0031】
脳のニューロン母集団に到達するために、神経栄養因子は、大脳内に投与されなければならない、というのは、これらのタンパク質は血液脳障壁を越えないからであると長く信じられてきた。米国特許第5,571,787号は、サポシンCから誘導される、ヨウ素化した神経栄養18-merフラグメントが血液脳障壁を越えることを開示する。このように、約22個までのアミノ酸を有するRIペプチドがまたこの障壁を越え、かくして、静脈内投与することができる。他のニューロン母集団、例えば運動ニューロンは、脳脊髄流体中への直接注入がまた代替経路として想像されるが、これはまた静脈内注射によって処置することができる。
【0032】
細胞は、ミエリン形成を促進するかまたは脱髄を防止するように、イン ビボ(in vivo)、イクス ビボ(ex vivo)またはイン ビトロ(in vitro)で、上記した方法で処置されることができる。神経繊維の脱髄をもたらす疾患[MS、急性転移性白質脳炎、脳および/または脊髄への外傷、進行性多焦点白質脳炎、異染性白質ジストロフィー、副腎白質ジストロフィーおよび未成熟の幼児における白質の悪展開(maldevelopment)(室周囲白軟化症(periventicular leucomalacia))を含む]は、本発明の神経栄養ペプチドを疾患に冒された細胞へ投与することによって、遅らせるか、または停止させることができる。
【0033】
本発明のRI IL-3誘導ペプチド組成物はまた、造血を助け、培養された運動ニューロンの生存率を高め、かつ神経栄養因子およびミエリン促進物質の効果を決定するために使用することができる。しかしながら、より実際には、それらは、実験室試薬として、および造血を促進し、神経細胞をイン ビトロ(in vitro)で維持するために、細胞増殖培地の成分としての即時用途を有する。
【0034】
本発明のペプチドは、当技術分野でよく知られている自動化された固相プロトコールを用いて合成される。ペプチドはすべて、使用前に、逆相カラムでの高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により、約95%より上の純度まで精製される。
以下の実施例は説明的なものにすぎず、本発明の範囲を限定することを意図しない。
【実施例】
【0035】
実施例1
軸索生長の刺激
NS20Y神経芽腫細胞を、10%子牛胎児血清(FCS)を含むDMEM中で増殖させる。細胞をトリプシンで除き、30mmペトリ皿中で、カバーガラス上で培養する。20〜24時間後、培地を、0.5%FCSおよび0、0.5、1、2、4または8ng/mlのRI IL-3誘導ペプチド(12〜約40個のアミノ酸を有し、SEQ ID NO:1で示される配列を含む)を含む2mlのDEMEと取り替える。細胞をさらに24時間培養し、PBSで洗浄し、ブワン溶液(Bouin's solution)(飽和水性ピクリン酸/ホルマリン/酢酸15:5:1)で30分間固定した。固定液をPBSで除き、位相差顕微鏡下で軸索生長について評点付けをした。1つの細胞直径以上長いと明らかに定義された1つ以上の軸索を示す細胞は、正であると評点をつけられた。各皿の異なる部分で、少なくとも200個の細胞について評点を付けて、軸索を有する細胞のパーセンテージを決定し、アッセイは二重に行った。
【0036】
実施例2
細胞死の阻止
NS20Y細胞を実施例1のようにして培養し、8ng/mlのRI IL-3誘導ペプチド(12〜約40個のアミノ酸を有し、SEQ ID NO:1で示される配列を含む)の存在下または不在下にて0.5%ウシ胎児血清中のカバーグラス上で2日間増殖させる。培地を除き、PBS中の0.2%トリパンブルーを各ウェルに加える。青色に染色された死細胞を、倒立顕微鏡にて全体中のパーセンテージとして評点付けをし、各ウェルの4領域で400個の細胞を数える。二重アッセイでの平均誤差は5%であった。
【0037】
実施例3
イクス ビボ(ex vivo)での軸索生長の促進
クフラー(Kuffler)ら(J. Neurobiol. 25:1267-1282, 1994)により記載されたようにして、ラット成体から脊髄神経節を除き、感覚ニューロンを調製した。ニューロンを0.5ng/mlのRI IL-3誘導ペプチド(12〜約40個のアミノ酸を有し、SEQ ID NO:1で示される配列を含む)で処理する。処理の3日後、最長の軸索突出の長さをマイクロメーターのグリッドで測定する。RIペプチドで処理したニューロン中の最長の軸索は、対照(非-RI)ペプチドで処理したものまたは未処理の対照より約3倍長い。48時間の処理後、すべての細胞は、神経増殖因子(NGF)に同様に応答し、そこで、広範囲の分岐が観察される。これらの結果は、IL-3誘導ペプチドが感覚ニューロンの分化を促進することを示す。
【0038】
実施例4
ラットモデルにおける脱髄の逆転
実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)は、ヒト多発性硬化症(MS)のラットモデルである。ラットにおいては、EAEは、外来タンパク質(モルモットの脊髄)を注入することによって誘発され、それは、11日後に、白質における炎症および脱髄をもたらす。この脱髄は、活発に脱髄しているヒトMS障害にみられるものと似ている(リュウ(Liu)ら、Multiple Sclerosis 1:2-9, 1995)。
【0039】
モルモットの脊髄および完全フロイントアジュバント(CFA)のエマルジョンの注入によって、ルイス(Lewis)ラットにEAEが誘発される。14日目、弱っているのが明らかなときに、RI IL-3誘導ペプチド(12〜約40個のアミノ酸を有し、SEQ ID NO:1で示される配列を含む)での処置を開始し(200g/kg筋肉内)、毎日8日間続ける。6匹のラットは、賦形剤のみを注入される。14日および22日に、1歩の長さ(筋肉の弱りの尺度)を評点付けする。さらに、mm2当たりの脊髄における脱髄障害(斑)の数および大きさを、22日に評点付けする。最後に、脳中のコレステロールエステルの量(ミエリン破壊のマーカー)を、22日に評点付けする。
【0040】
両群の1歩の長さは14日目に減少し、それに対して、8日間の処置後、IL-3誘導ペプチドで処置した動物は正常に戻ったが、賦形剤処置した動物は戻らない。コレステロールエステル含量の有意の減少が、処置群の脳において観察される。さらに、脊髄障害の数は、IL-3誘導ペプチドでの処置の10日後に有意に減少する。最後に、平均の障害の大きさは有意に減少する。対照動物と実験動物との間の体重減少の差はない。これらの結果は、IL-3誘導ペプチドでの全身処置後に、EAEの有意の臨床的生化学的かつ形態学的な逆転を示す。この作用は、ミエリン修復に直接作用しない、最近のMS薬の抗炎症効果とは違う。
【0041】
実施例5
イクス ビボ(ex vivo)の髄鞘形成アッセイ
新生児マウスの小脳外植片を、サトミ(Satomi)(Zool. Sci. 9:127-137, 1992)にしたがって調製する。軸索生長および髄鞘形成を、培養で22日間観察し、その期間中に、新生児マウスの小脳は普通ニューロン分化し、髄鞘形成が開始する。12〜約40個のアミノ酸を有し、SEQ ID NO:1で示される配列を含むRI IL-3誘導ペプチドを、外植片の調製後第2日に加え(3つの対照および3つの処置外植片)、軸索の生長および髄鞘形成を、ビデオカメラの付いた明視野顕微鏡(bright field microscope)下で査定する。サポシンCを、約1〜10g/mlの濃度での正の対照として使用する。髄鞘形成は、IL-3誘導ペプチドによって、サポシンCを用いたときと同様の程度にまで刺激される。
【0042】
あるいは、髄鞘形成は、35Sをスルホリピド(以下に記載するように、ミエリンに限定的である)に組み込むことによってアッセイすることができる。
【0043】
実施例6
35Sのスルホリピドへの組み込み
初代のミエリン含有シュヴァン(Schwann)細胞を、0.5%ウシ胎児血清(FBS)を含む低サルフェート培地(DMEM)中で48時間インキュベートした後、35S-メチオニンおよび、12〜約40個のアミノ酸を有し、SEQ ID NO:1で示される配列を含むRI IL-3誘導ペプチドを添加する。サポシンCを正の対照として使用する。細胞をPBSですすぎ、採取し、100リットルの蒸留水中で超音波処理する。一定分量の細胞溶解物をタンパク質分析のために除き、残りを5mlのクロロホルム/メタノール(2:1、体積/体積)で抽出する。脂質抽出物をクロマトグラフィーにかけ、ヒライワ(Hiraiwa)ら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 94:4778-4781に記載されているようにして、抗スルファチドモノクローナル抗体を用いて免疫染色する。ペプチドおよびサポシンC処置後、同様の量のスルファチドが観察される。
【0044】
実施例7
外傷性虚血性CNS障害の治療におけるRIペプチドの使用
脳または脊髄に外傷性障害を有するヒトが、滅菌塩水溶液または蓄積形態での約100g/kgのRI IL-3誘導ペプチド(12〜約40個のアミノ酸を有し、SEQ ID NO:1で示される配列を含む)の全身注入を受ける。感覚または運動神経機能の獲得による改善が査定される(すなわち、増加された手足の動き)。さらなる改善が生じなくなるまで治療を続ける。
【0045】
実施例8
脱髄疾患の治療におけるRIペプチドの使用
初期段階のMSと診断された患者に、実施例7と同じ投与量範囲を用いた全身注入によって、12〜約40個のアミノ酸を有し、SEQ ID NO:1で示される配列を含むRI IL-3誘導ペプチドが与えられる。投与は毎日または毎週繰り返され、筋肉の強度の改善、筋骨格協調および髄鞘形成(MRIにより決定)が観察される。慢性再発MSを有する患者を、次の再発が生じるときに、同じ方法で治療する。
【0046】
典型的には、軟質寒天中の骨髄の始原細胞から分化した細胞のコロニーの形成を刺激するその能力によって、IL-3がアッセイされる。あるいは、ヒト白血病から誘導された細胞系統、例えばTF-1およびMO-7eでのその増殖効果について、IL-3をアッセイすることができる。IL-3アッセイについての詳細なプロトコールは、サイトカイン、実際的アプローチ(Cytokines, a Practical approach)、 バルクヴィル(Balkwill), F.編、IRLプレス(Press)、ニューヨーク、第2版、1995年、pp.247-268、372-377に見出すことができ、その内容のすべてが、参照することにより本明細書に組入れられる。IL-3アッセイプロトコールは、以下の実施例において提供されている。
【0047】
実施例9
IL-3コロニー形成アッセイ
IL-3は、異なる細胞タイプの混合コロニーの形成を刺激する。50個より多い細胞のコロニーをカウントし、7〜14日後に双眼顕微鏡を用いて目で分析する。コロニーの数は通常、寒天培地中のIL-3の特異的活性または濃度に関連する。乾燥しかつ固定したゲルの染色による形態学的分析により、コロニータイプの適当な同定が可能になる(メトカルフ(Metcalf)、造血コロニー刺激因子(The Hemopoietic Colony Stimulating Factors)、エルセビア プレス(Elsevier Press)、アムステルダム、1984)。
【0048】
骨髄吸引液を、5〜10mlのイスコフの変性ダルベコー培地(Iscove's modified Dulbecco's medium)(IMDM)および400単位の防腐剤不含有ヘパリンを含む滅菌管に集めることによって、ヒト骨髄から細胞懸濁液を調製する。細胞を、600〜1,000 x gにて10分間遠心分離し、上清を捨て、細胞を、IMDMおよび2%子牛胎児血清(FCS)中に再懸濁させ、次いでピペッティングにより穏やかに混合する。細胞を血球計にてカウントし、必要なように濃度を調整する。骨髄吸引液の細胞充実性は、患者の病状およびまた吸引技術と共に変わるので、細胞を再懸濁するために使用される体積について、ある種の判断を働かせなければならない。細胞が少ない(hypocellular)骨髄試料は1〜2ml中に再懸濁させるが、通常5〜10mlが使用される。細胞懸濁液は培養まで氷上に保持される。
【0049】
以下のプロトコールは、ヒト骨髄からのMix-CFCのアッセイについての段階を詳述する。このアッセイは、混合コロニーの増殖を可能にし、このコロニーは、Mix-CFCのクローン増殖から得られる幾つかの骨髄系統(好中球、好酸球、好塩基球、赤血球、単球-マクロファージおよび巨核球)を含み得る。3通りの、それぞれ5 x 104のヒト骨髄細胞を含む1ml分量を3cm直径のペトリ皿に置く。培養混合物は、以下のようにして作り、全部の値を3.3mlにする(余分に0.3mlを見込む):
【0050】
【表2】

【0051】
寒天(3.3%)を沸騰水浴に入れて溶かした。寒天を溶かしている間、培養混合物を水浴中で37℃に暖めて、寒天が添加されたときにあまりに直ぐに凝固することを防ぐことができる。寒天(0.30ml)を添加し、完全であるが穏やかに混合し、皿当たり1mlを培養する。皿をトレイ上に置き、セットする。皿は約2分間冷蔵中に置いて、プロセスを速めることができる。次に、プレートを37℃の十分に加湿した気体インキュベータ中に置き、14日間インキュベートする。ズームレンズを有する顕微鏡または倒立顕微鏡を用いて約40xの倍率下でコロニーを評点付けする。個々のコロニーを、パスツールピペットを用いて細胞学的検査のために拾い、標準のサイトスピン(cytospin)調製のために0.1mlの培地(およびタンパク質源、1%血清または0.1%のBSA)中に懸濁させる。
【0052】
実施例10
IL-3細胞増殖アッセイ
幾つかのIL-3依存性細胞系統を、ペプチドがIL-3活性を有するかどうかを決定するために使用することができる。細胞系統FDCP-1、FDCP-2、32DCL23、TF-1(ヒト赤白血病)、AML-193(ヒト急性骨髄性白血病: ATCC CRL 9589)、MO-7e(ヒト巨核芽球性白血病)およびDAM1(ヒト巨核芽球細胞;チェン(Chen)ら、Br. J. Haematol. 88:481-490, 1994)はIL-3依存性である。12〜約40個のアミノ酸を有し、SEQ ID NO:1で示される配列を含む特定のRI IL-3誘導ペプチドがIL-3活性を有するかどうかを決定するために、ペプチドまたはその類似体、例えば1つ以上の保存性アミノ酸置換を有するペプチドが、以下のようにして細胞と共にインキュベーションすることによってIL-3活性についてアッセイされる。
【0053】
細胞は、指数関数的増殖速度に達するまで懸濁液中で培養された後、スウィングアウトローター(swing-out rotor)を用いて卓上(bench)遠心機で800xgにて5分間回転させることによって採取される。細胞ペレットを適当な培地に懸濁させ、再び遠心分離し、さらに2回再懸濁させる。細胞は、フィッシャー培地(ギブコおよびグルタミン)およびウマ血清(10%体積/体積)中に1-2 x 106/mlの濃度で再懸濁され、試験下のIL-3誘導ペプチドの希釈またはIL-3の標準調製物の希釈と共に、試験濃度1-2 x 105細胞/mlにて、全体積100リットル中で培養される。ウマ血清(または、細胞が正常に培養されるなら、子牛胎児血清)の最終濃度は10〜20%(体積/体積)である。細胞を、CO2インキュベータ中で37℃にてインキュベートする。
【0054】
24時間または48時間後、生存または増殖への増殖因子の効果を、トリパンブルー排除アッセイ(細胞懸濁液をトリパンブルー溶液と1:1で混合し、染料を排除する目に見える細胞をカウントする)を用いて査定する。細胞増殖(DNA合成)の査定のための別の方法は、[3H]チミジン取り込みの測定を含む。24時間または48時間後、[3H]チミジン(37kBq)を各ウェルに加え、インキュベーションを4時間続ける。細胞をインキュベータから除き、続けてミリポア細胞採取器(Millipore cell harvester)または同様の装置上のGF/Cフィルターに移す。細胞を、トリクロロ酢酸(TCA)で3回洗浄し、フィルターに保持されたTCA沈殿性物質を、液体シンチレーションカウンターでカウントする。標準およびRI IL-3誘導ペプチドの希釈物の相対的増殖促進活性を比較して、RI IL-3誘導ペプチドの増殖促進活性を定量化する。
【0055】
本発明は詳細な説明に記載されたそれらの実施態様のみに限定されるものではないことに注意すべきである。本発明の意図を有する任意の実施態様が、本発明の範囲内にあると考えられるべきである。しかしながら、本発明は、以下の請求の範囲によってのみ限定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SEQ ID NO:1で示される配列から成るレトロ-インベルソペプチド。
【請求項2】
該ペプチドが、アミノ末端で、カルボキシ末端で、又はアミノ末端とカルボキシ末端の両方で、CH3CO、CH3(CH2)nCO、C6H5CH2CO及びH2N(CH2)nCO(n=1〜10)からなる群より独立して選択される部分を用いて修飾されている、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
該ペプチドがグリコシル化されている、請求項1に記載のペプチド。
【請求項4】
その1つ以上のアミド結合が還元されている、請求項1に記載のペプチド。
【請求項5】
該ペプチド中の1個以上の窒素がメチル化されている、請求項1に記載のペプチド。
【請求項6】
該ペプチド中の1個以上のカルボン酸基がエステル化されている、請求項1に記載のペプチド。
【請求項7】
SEQ ID NO:1で示される配列から成るレトロ-インベルソペプチド及び製薬上許容される担体を含む、哺乳動物において軸索生長又は髄鞘形成を促進するため組成物。
【請求項8】
該哺乳動物がヒトである、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
哺乳動物において軸索生長又は髄鞘形成を促進するための薬剤の製造における、SEQ ID NO:1で示される配列から成るレトロ-インベルソペプチドの使用。
【請求項10】
該哺乳動物がヒトである、請求項9に記載の使用。

【公開番号】特開2011−137019(P2011−137019A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−32973(P2011−32973)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【分割の表示】特願2001−503885(P2001−503885)の分割
【原出願日】平成12年6月16日(2000.6.16)
【出願人】(502031119)マイアロス コーポレイション (2)
【Fターム(参考)】