説明

インドロピロロカルバゾール誘導体及び抗腫瘍剤

本発明は、式:[式中、Rは未置換のピリジル基、フリル基又はチエニル基を示し、mは1〜3の整数を示し、Gはβ−D−グルコピラノシル基を示し、インドロピロロカルバゾール環上のヒドロキシ基の置換位置は1位と11位又は2位と10位である]で表される化合物又はその医薬上許容される塩、及びそれを有効成分として含有する抗腫瘍剤に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は医薬の分野で有用であり、具体的には腫瘍細胞の増殖を阻害し、抗腫瘍効果を発揮する、新規なインドロピロロカルバゾール誘導体、及びその抗腫瘍剤としての用途に関する。
【背景技術】
癌化学療法の分野においては、すでに多数の化合物が医薬として実用化されている。しかしながら、様々な種類の腫瘍に対してその効果は必ずしも充分ではなく、またこれらの薬剤に対する腫瘍細胞の耐性の問題も臨床上の使用法を複雑にしている[第47回日本癌学会総会記事、12〜15頁(1988年)参照]。
このような状況下、癌治療の分野においては常に新規制癌物質の開発が求められている。特に、既存の制癌物質に対する耐性を克服し、既存の制癌物質が十分に効果を発揮できない種類の癌に対して有効性を示す物質が必要とされている。
このような現状に鑑み、本発明者らは広く微生物代謝産物をスクリーニングした結果、抗腫瘍活性を有する新規な化合物BE−13793C(12,13−ジヒドロ−1,11−ジヒドロキシ−5H−インドロ[2,3−a]ピロロ[3,4−c]カルバゾール−5,7(6H)−ジオン)を見出した(ヨーロッパ特許公開公報0388956A2参照]。
その後、BE−13793Cに化学修飾を加えて更に優れた抗腫瘍活性を有する化合物を創製することを試み、先の特許出願・特許(ヨーロッパ特許公開公報0528030A1、米国特許第5,591,842号明細書、米国特許第5,668,271号明細書、米国特許第5,804,564号明細書、WO95/30682及びWO96/04293)、及び特開平10−245390号公報において開示した。
ここで、ヨーロッパ特許公開公報0528030A1には、本発明化合物の−NH(CH−Rに相当する基がHである化合物がもっぱら記載されている。米国特許第5,591,842号明細書には、本発明化合物の環外窒素原子についた−(CH−RおよびHに相当する基がRおよびRとされた化合物が記載され、このRおよびRが広範囲の基を包含しているが、本発明化合物にもっとも近いものとして、RおよびRがフリル基、チエニル基もしくはピリジル基である化合物(RおよびRの一方はHであり得る)が挙げられているに過ぎない。また、米国特許第5,804,564号明細書には、本発明化合物の−(CH−Rに相当する基がビス(ヒドロキシメチル)メチル基である化合物がもっぱら記載されている。WO96/04293には、本発明化合物の−NH(CH−Rに相当する基がRとされた化合物が記載され、このRが広範囲の基を包含しているが、本発明化合物に近い化合物は見当らず、さらに本発明化合物のGに相当する基も二糖基とされている。
また、特開平10−245390号公報には、下記式:

[式中、R’はヒドロキシ基、低級アルコキシ基、ヒドロキシ低級アルキル基及びヒドロキシ低級アルケニル基からなる群から選ばれる1又は2個の置換基を有するフェニル基、ナフチル基、ピリジル基、フリル基又はチエニル基(但し、置換基として低級アルコキシ基を有する場合は、同時にヒドロキシ基、低級アルコキシ基、ヒドロキシ低級アルキル基及びヒドロキシ低級アルケニル基からなる群から選ばれるもう一つの置換基を有する)を示し、mは1〜3の整数を示し、Gはβ−D−グルコピラノシル基を示し、インドロピロロカルバゾール環上のヒドロキシ基の置換位置は1位と11位又は2位と10位である]で表される化合物又はその医薬上許容される塩が開示されている。しかしながら、特開平10−245390号公報の明細書の記載を見ても、上記式[I’]の化合物中、R’は、1又は2個の置換基を有するフェニル基、ナフチル基、ピリジル基、フリル基又はチエニル基に限定され、R’が、置換基を有しないピリジル基、フリル基又はチエニル基である化合物については開示も示唆もない。
【発明の開示】
本発明者等は、上記式[I’]の化合物中、R’が置換基を有するピリジル基、フリル基又はチエニル基である化合物に比べて、置換基を有しない当該化合物が際立って優れた抗腫瘍作用を示すことを見いだして本発明を完成した。
即ち、本発明は式:

[式中、Rは未置換のピリジル基、フリル基又はチエニル基を示し、mは1〜3の整数を示し、Gはβ−D−グルコピラノシル基を示し、インドロピロロカルバゾール環上のヒドロキシ基の置換位置は1位と11位又は2位と10位である]で表される化合物又はその医薬上許容される塩、及びその抗腫瘍剤としての用途に関するものである。
また、本発明は、抗腫瘍作用を示すのに有効な量の上記式[I]の化合物又はその医薬上許容される塩、及び医薬製剤用の賦形剤もしくは担体を含有する抗腫瘍剤に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
式[I]で表される本発明化合物の置換基の定義において、
Rは未置換のピリジル基が好ましく、ピリジン−4−イル基が特に好ましい。
mは1〜3の整数を示すが、好ましくは1である。
インドロピロロカルバゾール環上のヒドロキシ基の置換位置は1位と11位又は2位と10位のいずれでも良いが、2位と10位が好ましい。
また、本発明化合物は、好ましくは、式:

[式中、R及びGは上記と同義である]で表される化合物又はその医薬上許容される塩; 或いは
式:

[式中、R及びGは上記と同義である]で表される化合物又はその医薬上許容される塩である。
次に本発明化合物の製造法について説明する。
本発明のインドロピロロカルバゾール誘導体は、ヨーロッパ特許公開公報0528030A1、ヨーロッパ特許公開公報0545195A1、WO95/30682及びWO96/04293に記載の公知化合物である、式:

[式中、AはNHを示し、Gは前記の意味を有する]で表される化合物に、式:

[式中、R及びmは前記の意味を有する]で表される化合物を反応させるか、式:

[式中、Gは前記の意味を有する]で表される化合物と、式:

[式中、RはRと同様の意味を有し、mは前記の意味を有する]で表される化合物を縮合させ、次いで還元し、そして必要に応じて保護基の除去を行うことにより製造するか、又は式[IV]の化合物に、式:

[式中、Lは脱離基を示し、R及びmは前記と同様の意味を有する]で表される化合物を反応させ、そして必要に応じて保護基の除去を行うことにより製造することができる。
式[II]で表される化合物と式[III]で表される化合物との反応は化学の分野で広く知られたイミド又は酸無水物とヒドラジン誘導体との反応である。この反応は、通常反応に悪影響を及ぼさない溶媒、例えばテトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド等を用いて行うことができ、化合物[III]の使用量は化合物[II]に対して通常少過剰から5モル当量であるが、必要に応じて大過剰用いて行うこともできる。
反応温度は通常−50℃〜溶媒の沸点の範囲であり、必要に応じてこれ以上又はこれ以下の温度を選択することもできる。反応時間は通常30分〜2日間の範囲であるが必要に応じてこれ以上又はこれ以下の時間で行うことができる。
また式[IV]で表される化合物と式[V]で表される化合物を縮合させ、ついで還元して化合物[I]を製造する反応は、同一の反応系で行うことができるが、場合により中間生成物であるシッフ塩基(ヒドラゾン)を一旦単離することもできる。すなわち通常、化合物[IV]と化合物[V]を適当な溶媒中で混合し、次いで還元剤を添加することにより行うことができる。この際、酢酸、塩酸等の酸の存在下に反応を行うことが好ましい。ここで使用できる溶媒としては、例えばメタノール、エタノール等のアルコール系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒等を挙げることができる。シッフ塩基(ヒドラゾン)の還元は、シアノ水素化ほう素ナトリウム等の水素化金属錯体等を用いて行うことができるが、また接触還元法により行うこともできる。
また式[IV]の化合物と式[VI]の反応は、アミンのアルキル化反応であり、公知の方法、例えばアルキルハライド、アルキルメシレート又はアルキルトシレート等との反応等により行うことができる。
また、上記反応の生成物は有機合成化学の分野における公知の方法、例えば沈澱法、溶媒抽出法、再結晶、クロマトグラフィー法等により精製することができる。
更に本発明には、上記方法で得られる化合物の医薬上許容される塩も包含される。このような塩としては例えばカリウム、ナトリウム等のアルカリ金属との塩、例えばカルシウム等のアルカリ土類金属との塩、又は例えばエチルアミン及びアルギニン等の塩基性有機化合物との塩、例えば塩酸、硫酸等の無機酸との塩又は例えば酢酸、クエン酸、マレイン酸等の有機酸との塩を挙げることができる。
本発明の式[I]で表される化合物の薬効試験結果を述べる。
細胞を用いた薬剤効果判定方法
本発明の式[I]で表される化合物は、表1に示されるようにヒト由来の癌細胞(MKN−45)に対して優れた細胞増殖抑制効果を示す。
a)試薬
牛胎児血清(FCS)はモルゲート社から、DMEM培地は旭テクノグラス社から入手した。
b)細胞
MKN−45ヒト胃がん細胞は、免疫生物研究所より入手した。
c)効果判定法
細胞を10%FCS添加DMEM培地に懸濁し、1穴あたり1000個/50マイクロリットルの細胞懸濁液を96穴プラスチックプレートに分注した。37℃、5%CO−95%空気中で1晩培養した。各薬剤をジメチルスルフォキサイド又は適当な溶媒にて段階希釈し、あらかじめ細胞を播いておいたプレートに50マイクロリットルずつ分注した。さらに3日間、37℃、5%CO−95%空気中で培養する。培養後細胞の増殖はWST−8法(H.Tominaga,et al.,Anal.Commun.,36,47−50(1999))により測定した。ここで、WST−8法とは、各穴に10マイクロリットルのWST−8試薬溶液を加え、1〜6時間37℃で培養を続けてから、プレートを攪拌後、生成されたフォルマザンの量を比色法にて測定し、薬剤の阻害率を求める方法である。化合物の50%増殖阻止濃度(IC50)を求めた。

動物を用いた薬効試験
a)マウスおよびがん細胞
5週令の雌ヌードマウス(Balb/c−nu/nu)は日本クレア社より入手した。ヒト肺がん細胞LX−1は財団法人癌研究所より入手した。
b)試薬
対照化合物の合成は、特開平10−245390号明細書実施例14に記載されている。
c)効果判定法
がん細胞は、ヌードマウスの皮下に移植し、固形がんの形で維持している。固形がんを、氷冷下の生理食塩液内で3mm角に細切する。その1個を、実験に供与するヌードマウス皮下に移植する(Day 1)。がん細胞は、マウス皮下にて増殖し、腫瘍塊を形成する。腫瘍塊の大きさを経時的に測定し、その体積(体積=長径×短径÷2で近似する)が0.2cm以上になったときに薬剤の投与を開始する。薬剤は、5%ブドウ糖溶液で溶解し、尾静脈より投与する。投与方法は、週2回2週連続(計4回)の投与を行う。投与終了後2週目の腫瘍体積を測定し、対照群の腫瘍体積(C)と投与群の腫瘍体積(T)より百分率(T/C%)を求め、腫瘍体積比とした。
d)結果

表2より明らかなように、ヒト肺がん細胞LX−1に対して、実施例1の化合物は、対照化合物と比べると明らかに強い抗腫瘍活性を示した。即ち、Rが置換基を有するピリジル基である対照化合物に比べて、Rが置換基を有しないピリジル基である化合物(実施例1の化合物)は、顕著に優れた効果を示したと認められる。
従って、薬学的に許容し得る担体又は希釈剤と一緒に、本願発明に係る式[I]で示される化合物を有効成分として含む、医薬組成物又は抗がん剤は、有望であることが期待される。
また、本発明の化合物は優れた抗腫瘍作用を示すので、ヒトもしくは他の哺乳動物、特にヒトのための抗腫瘍剤として各種の癌、例えば固形腫瘍としての頭頸部癌、甲状腺癌、肺癌、食道癌、胃癌、肝癌、膵臓癌、大腸癌、腎癌、前立腺癌、精巣癌、子宮癌、卵巣癌、乳癌、脳腫瘍等、その他の癌としての白血病、リンパ腫、骨髄腫等、好ましくは胃癌、大腸癌、肺癌、乳癌の予防・治療のために有用である。特に好ましくは、肺がんに有用である。
本発明化合物を、医薬製剤分野で公知の固体又は液体の賦形剤もしくは担体と混合し、経口投与、非経口投与等に適した抗腫瘍性医薬製剤の形で使用することができる。経口投与形態としては例えば錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤若しくは液剤等の経口剤、非経口投与形態としては例えば溶液若しくは懸濁液等の殺菌した液状の非経口剤が挙げられる。
固体の製剤は、そのまま錠剤、カプセル剤、顆粒剤又は粉末の形態として製造することもできるが、適当な添加物を使用して製造することもできる。そのような添加物としては、例えば乳糖若しくはブドウ糖等の糖類、例えばトウモロコシ、小麦若しくは米等の澱粉類、例えばステアリン酸等の脂肪酸、例えばメタケイ酸アルミン酸マグネシウム若しくは無水リン酸カルシウム等の無機塩、例えばポリビニルピロリドン若しくはポリアルキレングリコール等の合成高分子、例えばステアリン酸カルシウム若しくはステアリン酸マグネシウム等の脂肪酸塩、例えばステアリルアルコール若しくはベンジルアルコール等のアルコール類、例えばメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース若しくはヒドロキシプロピルメチルセルロース等の合成セルロース誘導体、その他、水、ゼラチン、タルク、植物油、アラビアゴム等通常用いられる添加物が挙げられる。
これらの錠剤、カプセル剤、顆粒剤及び粉末等の固形製剤は一般的には0.1〜100重量%、好ましくは5〜100重量%の有効成分を含む。
液状製剤は、水、アルコール類又は例えば大豆油、ピーナツ油若しくはゴマ油等の植物由来の油等液状製剤において通常用いられる適当な添加物を使用し、懸濁液、シロップ剤若しくは注射剤等の形態として製造される。
特に、非経口的に筋肉内注射、静脈内注射又は皮下注射で投与する場合の適当な溶剤としては、例えば注射用蒸留水、塩酸リドカイン水溶液(筋肉内注射用)、生理食塩水、ブドウ糖水溶液、エタノール、ポリエチレングリコール、静脈内注射用液体(例えばクエン酸及びクエン酸ナトリウム等の水溶液)若しくは電解質溶液(点滴静注及び静脈内注射用)等、又はこれらの混合溶液が挙げられる。
これらの注射剤は予め溶解したものの他、粉末のまま或いは適当な添加物を加えたものを用時溶解する形態もとり得る。これらの注射液は、通常0.1〜10重量%、好ましくは1〜5重量%の有効成分を含む。
また、経口投与の懸濁剤又はシロップ剤等の液剤は、0.5〜10重量%の有効成分を含む。
本発明の化合物の実際に好ましい投与量は、使用される化合物の種類、配合された組成物の種類、適用頻度及び治療すべき特定部位、宿主及び腫瘍によって変化することに注意すべきである。例えば、1日当りの成人1人当りの投与量は、経口投与の場合、10ないし500mgであり、非経口投与、好ましくは静脈内注射の場合、1日当り10ないし100mgである。なお、投与回数は投与方法及び症状により異なるが、1回ないし5回である。また、隔日投与、隔々日投与などの間歇投与等の投与方法も用いることができる。
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
なお、実施例において原料として用いた以下の構造式を有する化合物を化合物Aとする。なお、化合物Aの製法は、日本特許第2629542号明細書の実施例47に開示されている。

式中、Gはβ−D−グルコピラノシル基を示す。
[実施例1]
下記式:

で表される化合物の合成。
化合物A1.0gと4−ピリジンカルバルデヒド253mgをメタノール200mlに溶解し、酢酸0.3mlを加え、80℃で一晩攪拌した後に、析出した結晶を濾取しクロロホルムで洗浄した。これをメタノール/テトラヒドロフラン(1:1)混合溶媒に溶解し、10%パラジウム炭素を加え水素気流下、一晩攪拌した。セライト濾過、濃縮後、残渣をセファデックスLH−20のクロマト塔にかけメタノールで溶出した。目的物を含む分画を濃縮乾固することにより、表題の式で表される化合物730mgを得た。
Rf値:0.12(メルク社製,キーゼルゲル60F254,展開溶媒;トルエン:アセトニトリル:テトラヒドロフラン:水:酢酸=2:4:2:0.5:0.1)
FAB−MS(m/z):626(M+H)
H−NMR(300MHz,DMSO−d,δppm):11.18(1H,s),9.80(2H,br),8.89(1H,d,J=8.3Hz),8.76(1H,d,J=8.6Hz),8.49(2H,dd,J=1.8,5.7Hz),7.55(2H,d,J=6.0Hz),7.16(1H,d,J=1.5Hz),6.97(1H,d,J=2.4Hz),6.81(2H,dt,J=2.4,8.6Hz),6.32(1H,t,J=4.8Hz),5.96(1H,d,J=9.0Hz),5.85(1H,br),5.34(1H,br),5.14(1H,br),4.90(1H,br),4.34(2H,d,J=4.2Hz),4.00(1H,d,J=11.1Hz),3.90(2H,br),3.73〜3.80(1H,m),3.50(2H,br)
[実施例2]
下記式:

で示される化合物の合成
化合物A(45mg)及び5等量の2−ピリジンカルボキシアルデヒドをメタノール(9ml)に溶解し、60μlの酢酸を加えた後、80℃で終夜撹拌した。反応液を濃縮した後、析出固体をクロロホルム−ヘキサンで洗浄後乾燥した。得られた固体(20mg)をテトラヒドロフラン5mlに溶解し、シアノ水素化ほう素ナトリウム(NaBHCN)(80mg)及び1M塩化亜鉛テトラヒドロフラン溶液(0.64ml)のテトラヒドロフラン溶液(5ml)に添加した後終夜撹拌した。反応液を濃縮した後、残渣をダイアイオンHP−20カラムクロマトグラフィ(メタノール)、次いでセファデックスLH−20カラムクロマトグラフィ(メタノール)を用いて精製し表題の式で表される化合物(10.5mg)を得た。
Rf値:0.07(メルク社製、キーゼルゲル60F254、展開溶媒;アセトニトリル:テトラヒドロフラン:トルエン:水:酢酸=4:2:2:0.5:0.1)
FAB(m/z):626(M+H)
H−NMR(300MHz、DMSO−d6、δppm):11.19(1H、s)、9.78(1H、s)、9.75(1H、s)、8.85(1H、d、J=8.5Hz)、8.76(1H、d、J=8.6Hz)、8.41(1H、d、J=4.4Hz)、7.79(2H、m)、7.23(1H、m)、7.17(1H、d、J=2.1Hz)、6.98(1Hd、J=2.1Hz)、6.78〜6.84(2H、dt、J=2.1Hz、8.6Hz)、6.25(1H、t、J=4.5Hz)、5.96(1H、d、J=8.1Hz)、5.86(1H、t、J=4.2Hz)、5.33(1H、d、J=4.2Hz)、5.12(1H、d、J=5.1Hz)、4.91(1H、d、J=5.1Hz)、4.36(2H、d、J=4.8Hz)、3.90〜4.02(3H、m)、3.75〜3.80(1H、m)、3.50(2H、m)
[実施例3]
下記式:

で示される化合物の合成。
化合物A50mgと3−ピリジンカルバルデヒド50mgをメタノール10mlに溶解し、酢酸50μlを加え、80℃で6時間攪拌した後に、クロロホルム−ノルマルヘキサン混合溶媒を加え析出したヒドラゾン体47.3mgを濾取した。得られたヒドラゾン体25mgをメタノール/テトラヒドロフラン(1:1)混合溶媒25mlに溶解し、20mgの10%パラジウム炭素を加え水素気流下、一晩攪拌した。セライト濾過、濃縮後、残渣に10%HCl−MeOH1mlを加えた後溶媒を濃縮した。残渣に水および酢酸エチルを加え、水層を抽出した後トリエチルアミンを加えて塩酸塩を中和した。水溶液をHP−20カラムクロマトグラフィーを用いて展開し、メタノールで溶出した。溶出液を濃縮後、残渣をセファデックスLH−20のクロマト塔にかけメタノールで溶出した。目的物を含む分画を濃縮乾固することにより、表題の式で表される化合物3.5mgを得た。
FAB−MS(m/z):626(M+H)
H−NMR(300MHz,DMSO−d,δppm):11.16(1H、s)、9.85(2H、br)、8.83(1H、d、J=8.5Hz)、8.75(1H、d、J=8.6Hz)、8.62(1H、d、J=2.4Hz)、8.41(1H、dd、J=1.8、5.1Hz)、7.92(1H、dt、J=2.4、8.1Hz)、7.33(1H、dd、J=5.1、8.1Hz)、7.15(1H、s)、6.96(1H、d、J=1.5Hz)、6.80(2H、dt、J=1.5、6.3Hz)、6.26(1H、t、J=4.2Hz)、5.95(1H、d、J=7.8Hz)、5.88(1H、br)、5.38(1H、br)、5.16(1H、br)、4.92(1H、br)、4.29(2H、d、J=4.5Hz)、4.02(1H、d、J=10.8Hz)、3.90(2H、m)、3.76(1H、d、J=10.5Hz)、3.50(2H、m)
[実施例4]
下記式:

で示される化合物の合成。
化合物A(50mg)及び3−(3−ピリジル)プロパナール(183mg)をメタノール(10ml)に溶解し、10μlの酢酸を加えた後、80℃で3時間撹拌した。反応液を濃縮した後、残渣を酢酸エチルで固化させた。得られた固体(5.3mg)をテトラヒドロフラン1mlに溶解し、NaBHCN(10mg)及び10%HCl−MeOH(1ml)を加え室温にて3時間撹拌した。反応液を濃縮した後、残渣をセファデックスLH−20カラムクロマトグラフィに充填し、メタノールで展開した。目的とする分画を濃縮乾燥することにより表題の式で表される化合物(1.3mg)を得た。
Rf値:0.10(メルク社製、キーゼルゲル60F254、展開溶媒;アセトニトリル:テトラヒドロフラン:トルエン:水:酢酸=4:2:2:0.5:0.1)
FAB(m/z):654(M+H)
H−NMR(300MHz、DMSO−d6、δppm):1.72〜1.82(2H、m)、2.80(2H、t、J=7.3Hz)、3.00〜3.06(2H、m)、3.48〜3.53(2H、m)、3.75〜4.04(4H、m)、4.93(1H、br)、5.18(1H、bs)、5.41(1H、bs)、5.79(1H、t、J=4.2Hz)、5.92(2H、s)、5.96(1H、d、J=8.3Hz)、6.78〜6.83(2H、m)、6.98(1H、d、J=2.0Hz)、7.16(1H、s)、7.28(1H、dd、J=7.5Hz、4.5Hz)、7.67(1H、dt、J=7.5Hz、2.0Hz)、8.36(1H、dd、J=4.5Hz、2.0Hz)、8.47(1H、s)、8.78(1H、d、J=8.5Hz)、8.87(1H、d、J=8.5Hz)、9.83(1H、br)、11.18(1H、s)
[実施例5]
下記式:

で示される化合物の合成
化合物A(200mg)及び3−フランカルボキシアルデヒド(100mg)をメタノール(10ml)に溶解し、18μlの酢酸を加えた後、80℃で1時間撹拌した。反応液を濃縮した後、残渣を酢酸エチルで固化させた。得られた固体(30mg)をテトラヒドロフラン(2ml)に溶解し、NaBHCN(20mg)及び10%HCl−MeOH(2ml)を加え室温にて1時間撹拌した。反応液を濃縮した後、残渣をセファデックスLH−20カラムクロマトグラフィに充填し、メタノールで展開した。目的とする分画を濃縮乾燥することにより表題の式で表される化合物(23.2mg)を得た。
Rf値:0.60(メルク社製、キーゼルゲル60F254、展開溶媒;アセトニトリル:テトラヒドロフラン:トルエン:水:酢酸=4:2:2:0.5:0.1)
FAB(m/z):615(M+H)
H−NMR(300MHz、DMSO−d6、δppm):11.18(1H、s)、9.77(2H、br)、8.85(1H、d、J=8.6Hz)、8.77(1H、d、J=8.5Hz)、7.62(1H、s)、7.50(1H、d、J=1.0Hz)、7.16(1H、s)、6.97(1H、d、J=1.9Hz)、6.78〜6.83(2H、m)、6.57(1H、s)、5.94〜5.99(2H、m)5.87(1H、br)、5.34(1H、br)、5.12(1H、br)、4.91(1H、br)、4.11(2H、d、J=4.6Hz)、3.75〜4.06(4H、m)、3.47〜3.53(2H、m)
[実施例6]
下記式:

で示される化合物の合成
化合物A(200mg)及び2−フランカルボキシアルデヒド(100mg)をメタノール(10ml)に溶解し、18μlの酢酸を加えた後、80℃で6時間撹拌した。反応液を濃縮した後、残渣を酢酸エチルで固化させた。得られた固体(20mg)をメタノール−テトラヒドロフラン(1:1)(5ml)に溶解し、NaBHCN(20mg)及び10%HCl−MeOH(2ml)を加え室温にて0.5時間撹拌した。反応液を濃縮した後、残渣をセファデックスLH−20カラムクロマトグラフィに充填し、メタノールで展開した。目的とする分画を濃縮乾燥することにより表題の式で表される化合物(10.8mg)を得た。
Rf値:0.30(メルク社製、キーゼルゲル60F254、展開溶媒;アセトニトリル:テトラヒドロフラン:トルエン:水:酢酸=4:2:2:0.5:0.1)
FAB(m/z):615(M+H)
H−NMR(300MHz、DMSO−d6、δppm):11.10(1H、s)、9.50〜10.20(2H、br)、8.82(1H、d、J=8.5Hz)、8.73(1H、d、J=8.5Hz)、7.55(1H、s)、7.13(1H、s)、6.95(1H、d、J=1.9Hz)、6.74〜6.78(2H、m)、6.31〜6.35(2H、m)、6.05(1H、t、J=5.1Hz)、5.94(1H、d、J=8.3Hz)、5.75〜6.00(1H、br)、4.83−5.50(3H、m)、4.12(2H、d、J=4.6Hz)、3.73〜4.054H、m)、3.49〜3.53(2H、m)
[実施例7]
下記式:

で表される化合物の合成。
化合物A(ヒドラジン体)30mg及び3−チオフェンカルボキシアルデヒド30mgをメタノール6mlに溶解し、30μlの酢酸を加えた後、80℃で2時間撹拌した。反応液を室温に戻した後、適量のNaBHCN及び10%HCl−MeOHを加え室温にて30分間撹拌した。適量の水を加え、酢酸エチル−メチルエチルケトン混合溶媒で抽出した。有機層を濃縮した後、残渣をセファデックスLH−20カラムクロマトグラフィに充填し、メタノールで展開した。目的とする分画を濃縮乾燥することにより赤色固体である目的化合物(5.5mg)を得た。
FAB(m/z):631(M+H)
H−NMR(300MHz、DMSO−d6、δppm):3.50(2H、m)、3.78(1H、m)、3.91(2H、s)、4.02(1H、m)、4.27(2H、d、J=4.5Hz)、4.91(1H、d、J=5.1Hz)、5.12(1H、d、J=3.9Hz)、5.33(1H、d、J=3.6Hz)、5.87(1H、t、J=3.6Hz)、5.96(1H、d、J=8.4Hz)、6.06(1H、t、J=4.5Hz)、6.80(1H、dd、J=2.4Hz、8.4Hz)、6.82(1H、dd、J=2.1Hz、8.7Hz)、6.98(1H、d、J=2.4Hz)、7.17(1H、d、J=2.1Hz)、7.22(1H、dd、J=2.4Hz、3.6Hz)、7.45(1H、s)、7.47(1H、t、J=2.4Hz)、8.78(1H、d、J=8.7Hz)、8.86(1H、d、J=8.4Hz)、9.76(1H、s)、11.18(1H、s)
[実施例8]
下記式:

で表される化合物の合成。
化合物A(ヒドラジン体)100mg及び2−チオフェンカルボキシアルデヒド50mgをDMF3mlに溶解し、80℃で終夜撹拌した。適量の水を加え、酢酸エチル溶媒で抽出した。有機層を濃縮した後、残渣をセファデックスLH−20カラムクロマトグラフィに充填し、メタノールで展開した。反応生成物(ヒドラゾン)分画を濃縮し、88mgのヒドラゾンを得た。得られたヒドラゾン40mgをメタノール5mlに溶解し、NaBHCN8mg及び適量の10%HCl−MeOHを加え室温にて2時間撹拌した。反応液を濃縮した後、残渣をセファデックスLH−20カラムクロマトグラフィに充填し、メタノールで展開した。目的とする分画を濃縮乾燥することにより橙色固体である目的化合物(35mg)を得た。
FAB(m/z):631(M+H)
H−NMR(300MHz、DMSO−d6、δppm):3.45−3.56(3H、m)、3.77(1H、m)、3.85−4.12(2H、m)、4.44(2H、d、J=4.8Hz)、4.92(1H、d、J=4.8Hz)、5.11(1H、d、J=4.2Hz)、5.32(1H、d、J=4.5Hz)、5.85(1H、t、J=3.6Hz)、5.97(1H、d、J=8.4Hz)、6.16(1H、t、J=4.8Hz)、6.81(1H、t、J=8.7Hz)、6.90(1H、m)、6.97(1H、s)、7.06(1H、d、J=3.0Hz)、7.18(1H,s)、7.45(1H、s)、7.40(1H、t、J=4.8Hz)、8.77(1H、d、J=8.4Hz)、8.85(1H、d、J=9.3Hz)、9.75(1H、s)、9.78(1H、s)、11.19(1H、s)
産業上の利用の可能性
本発明の化合物は、優れた抗腫瘍効果を有することから医薬の分野において抗腫瘍剤として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:

[式中、Rは未置換のピリジル基、フリル基又はチエニル基を示し、mは1〜3の整数を示し、Gはβ−D−グルコピラノシル基を示し、インドロピロロカルバゾール環上のヒドロキシ基の置換位置は1位と11位又は2位と10位である]で表される化合物又はその医薬上許容される塩。
【請求項2】
式:

[式中、R及びGは請求項1記載の意味を有する]で表される請求の範囲第1項記載の化合物又はその医薬上許容される塩。
【請求項3】
Rがピリジン−4−イル基である請求の範囲第2項記載の化合物又はその医薬上許容される塩。
【請求項4】
式:

[式中、R及びGは請求項1記載の意味を有する]で表される請求の範囲第1項記載の化合物又はその医薬上許容される塩。
【請求項5】
抗腫瘍作用を示すのに有効な量の請求の範囲第1項記載の化合物又はその医薬上許容される塩、及び医薬製剤用の賦形剤もしくは担体を含有する抗腫瘍剤。
【請求項6】
肺がん治療のために用いられる、請求の範囲5記載の抗腫瘍剤。

【国際公開番号】WO2005/010020
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【発行日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−512074(P2005−512074)
【国際出願番号】PCT/JP2004/010742
【国際出願日】平成16年7月21日(2004.7.21)
【出願人】(000005072)萬有製薬株式会社 (51)
【Fターム(参考)】