説明

インドールのクロスカップリング方法

【課題】医薬中間体として有用な2,3−二置換インドールの製造方法の提供。
【解決手段】置換インドール化合物I’


を、Pd、Niから選ばれた金属触媒、及びPh3P等のリガンドの存在下、ヘテロアリール亜鉛ハライド(Y−ZnL)又はジヘテロアリール亜鉛(Y−Zn−Y)(式中、LはBr又はCl、RはH又はC1-8アルキル、XはC3-C8シクロアルキル、アリール又はH、C1-C8アルキル、Yはヘテロアリール又はアリール、ZはH、HO2C-、C1-8アルキルO2C-等である。)とを反応させる2,3−二置換インドールの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
この出願は2004年3月8日に出願された米国仮特許出願第60/551,107号(その内容が本明細書に含まれる)の優先権を主張する。
本発明は医薬品の分野、更に詳しくは2,3-二置換インドールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
置換インドールは医薬物質として有益である。医薬物質として使用される置換インドール及びこれらの製剤の例として、坑炎症薬インドメタシン及びトロペシン、坑ヒスタミン薬メブヒドロリン、並びに血管拡張薬ビンポセチンが挙げられる。医薬物質として使用されるインドール化合物のその他の例は米国特許出願第10/198,384号(US2004/0024190)(その内容が参考として本明細書に含まれる)に開示されたようなインドール化合物であり、HCV感染症の治療においてHCVポリメラーゼインヒビターとして有益である。
アリール置換インドールを調製するのに便利な方法はパラジウム触媒クロスカップリング反応、例えば、ネギシクロスカップリング(E. Negishi, S. Baba, J. Chem. Soc. Chem. Communications, 1976, 596-597; S. Baba, E. Negishi, J. Am. Chem. Soc., 1976, 98, 6729-6731)、又はスズキクロスカップリング(J. Hassanら, Chem. Rev., 2002, 102, 1359並びにN. Miyaura及びA. Suzuki, Chem. Rev., 1995, 95, 2457)によるものである。ネギシカップリングの方法はパラジウム触媒クロスカップリング(スキームI)によるアルケニル又はアリールハライドと有機アルミニウム試薬及び有機亜鉛試薬(Csp2又はCsp)を含む有機金属試薬の間のCsp2-Csp2又はCsp2-Csp結合形成のために開発された。
スキームI
【0003】
【化1】

【0004】
クロスカップリング反応は、おそらく触媒の立体かつ電子要求の結果として、基質要件を有することが知られていた。基質要件のために、広範囲の基質に適した一様な最適条件はない。それ故、変数及びそれらの組み合わせの広範なスクリーニングがこの方法を使用する実用的かつ経済的な製造方法を開発するのにしばしば必要である。重要な変数として、金属触媒、例えば、Pd、Ni、Pt等、リガンド、例えば、一座トリフェニルホスフィン(Ph3P)、トリ-p-トリルホスフィン(p-Tol3P)、トリシクロヘキシルホスフィン(PCy3)、トリ-t-ブチルホスフィン(t-Bu3P)、(Cy2P(Ph-Ph))及び二座1,1'-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(dppf)、1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(dppb)等、溶媒、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、ジメトキシエタン(DME)、ジメチルホルムアミド(DMF)、1-メチル-2-ピロリジノン(NMP)等、及び温度並びにスズキ反応の場合には塩基、例えば、K2CO3の選択がしばしば挙げられるが、これらに限定されない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は2,3-二置換インドールの製造方法に関する。更に詳しくは、本発明はまた米国特許出願第10/198,384号に開示された2,3-二置換インドール及びこれらの中間体の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一実施態様は一般式I:
【0007】
【化2】

【0008】
の化合物の製造方法であって、
前記方法が置換インドール化合物I':
【0009】
【化3】

【0010】
をPd、Niから選ばれた金属触媒、Ph3P、p-Tol3P、トリ(2-フリル)ホスフィン、Cy3P、tBu3P、Cy2P(Ph-Ph)、dppf及びdppbから選ばれたリガンドの存在下で、THF、DMF、NMP又はこれらの組み合わせから選ばれた溶媒中で、周囲温度〜100℃の温度でヘテロアリール又はアリール亜鉛ハライド:
【0011】
【化4】

【0012】
又はジヘテロアリールもしくはジアリール亜鉛:
【0013】
【化5】

【0014】
(式中、
LはBr又はClであり、
RはH又はC1-8アルキルであり、
XはC3-C8シクロアルキル、アリール又はH、C1-C8アルキルであり、
Yはヘテロアリール又はアリールであり、
ZはH、HO2C-、C1-8アルキルO2C-、C1-6アルキルHNC(O)-、
【0015】
【化6】

【0016】
であり、式中、Qは
【0017】
【化7】

【0018】
【化8】

【0019】
から選ばれる)
と反応させて式Iの所望の化合物を得ることを特徴とする上記化合物の製造方法を提供する。
本発明の別の局面は所望の生成物の比が2Hインドール生成物の比より2.5倍大きい、第一実施態様の方法を提供する。
本発明の別の局面は触媒がPdである、第一実施態様の方法を提供する。
本発明の別の局面はリガンドがPh3P、Cy3P又はCy2P(Ph-Ph)である、第一実施態様の方法を提供する。
本発明の別の局面は溶媒がTHFとNMPの混合物である、第一実施態様の方法を提供する。
本発明の別の局面は
LがBr又はClであり、
RがH又はメチルであり、
XがC3-C8シクロアルキルであり、
Yがヘテロアリール又はアリールであり、
ZがH、HO2C-、C1-8アルキルO2C-、
【0020】
【化9】

【0021】
であり、式中、Qが
【0022】
【化10】

【0023】
【化11】

【0024】
から選ばれる上記式Iの化合物を製造するための第一実施態様の方法を提供する。
本発明の別の局面はPd(OAc)2及びPh3P、(2-フリル)3P、p-Tol3P、dppb及びCy3Pから選ばれたリガンドの存在下のNMP対THFの2:1混合物中の、70℃〜90℃の温度における、
LがBr又はClであり、
RがH又はメチルであり、
Xがシクロペンチルであり、
Yがピリジルであり、
LがBr又はClであり、かつ
ZがH、HO2C-、C1-8アルキルO2C-、
【0025】
【化12】

【0026】
であり、式中、Qが
【0027】
【化13】

【0028】
【化14】

【0029】
から選ばれる式Iの化合物を製造するための第一実施態様の方法を提供する。
本発明の別の局面はPd(OAc)2及びPh3P、(2-フリル)3P、p-Tol3P及びCy2P(Ph-Ph)から選ばれたリガンドの存在下のNMP対THFの2:1混合物中の、70℃〜90℃の温度における、
LがBr又はClであり、
RがH又はメチルであり、
Zが
【0030】
【化15】

【0031】
であり、
Xがシクロペンチルであり、
Yがピリジルである式Iの化合物を製造するための第一実施態様の方法を提供する。
本発明の別の局面は式:
【0032】
【化16】

【0033】
(式中、LはBr又はClである)
を有する化合物を提供する。
本発明の別の局面は式:
【0034】
【化17】

【0035】
(式中、LはBr又はClであり、かつ
RはH又はメチルである)
を有する化合物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0036】
用語及び定義
本明細書中で特別に定義されない用語は開示及び状況に鑑みて当業者によりそれらに与えられる意味を与えられるべきである。しかしながら、明細書及び特許請求の範囲に使用される下記の用語は、その逆に明記されない限り、示された意味を有し、下記の慣例が従われる。
“アリール”という用語は6-12員芳香族炭素環を意味し、これは単環であってもよく、又は一緒に縮合され、もしくは共有結合された多環であってもよい。“アリール”という用語は、例えば、フェニル及びナフチルを含み、“アリール”を含むその他の用語はアリール成分について同じ定義を有するであろう。これらの部分の例として、アリールアルキル、アリールオキシ又はアリールチオが挙げられる。
“アルキル”という用語は、特にことわらない限り、1個から10個までの炭素原子を含む飽和脂肪族基又は2個から12個までの炭素原子を含むモノもしくはポリ不飽和脂肪族炭化水素基を表す。モノ又はポリ不飽和脂肪族炭化水素基は夫々少なくとも一つの二重結合又は三重結合を含む。“アルキル”は分岐アルキル基及び非分岐アルキル基の両方を表す。“アルキル”の例として、1個から8個までの炭素原子を含む直鎖アルキル基及び3個から10個までの炭素原子を含む分岐アルキル基であるアルキル基が挙げられる。その他の例として、1個から6個までの炭素原子を含む直鎖アルキル基及び3個から6個までの炭素原子を含む分岐アルキル基である低級アルキル基が挙げられる。“alk”又は“アルキル”接頭辞を使用するあらゆる組み合わせ用語は“アルキル”の上記定義に従う類似体を表すことが理解されるべきである。例えば、“アルコキシ”、“アルキルチオ”の如き用語は酸素原子又は硫黄原子を介して第二の基に結合されたアルキル基を表す。“アルカノイル”はカルボニル基(C=O)に結合されたアルキル基を表す。本明細書に記載された夫々のアルキル又はアルキル類似体は必要により部分又は完全ハロゲン化されていてもよいことが理解されるべきである。
【0037】
“シクロアルキル”という用語は先に定義されたアルキル基の環状類似体を表す。シクロアルキル基の例は3個から8個までの炭素原子を含む飽和又は不飽和非芳香族シクロアルキル基であり、その他の例として、3個から6個までの炭素原子を有するシクロアルキル基が挙げられる。
“ヘテロアリール”という用語は安定な5-8員(好ましくは、5又は6員)単環式又は8-11員二環式芳香族複素環基を表す。夫々の複素環は炭素原子と窒素、酸素及び硫黄から選ばれた1個から4個までのヘテロ原子からなる。ヘテロアリール基は安定な構造の形成をもたらす環のいずれかの原子により結合されてもよい。“ヘテロアリール”の例として、フラニル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、オキサジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、チアジアゾリル、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、インドリジニル、インドリル、イソインドリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、プリニル、キノリジニル、キノリニル、イソキノリニル、シノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、ナフチリジニル、プテリジニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェナジニル、フェノチアジニル及びフェノキサジニルの如き基が挙げられる。
“任意の”又は“必要により”という用語は続いて記載されるイベント又は状況が起こってもよく、また起こらなくてもよいこと、及びその記載がイベント又は状況が起こる場合及びそれが起こらない場合を含むことを意味する。例えば、“必要により置換されていてもよいシクロアルキル”はシクロアルキル基が置換されてもよく、また置換されなくてもよいこと及びその記載が置換シクロアルキル基及び置換を有しないシクロアルキル基の両方を含むことを意味する。
“置換”という用語は基又は部分の原子にある一つ以上の水素(特別に表示され、又は表示されない)が置換基の示されたグループからの選択で置換されることを意味し、但し、その原子の通常の原子価が越えられないこと及びその置換が安定な化合物をもたらすことを条件とする。置換基への結合が環中の2個の原子を連結する結合と交差することが示される場合、このような置換基はその環のあらゆる原子に結合されてもよい。置換基が原子(それを介してこのような置換基が化合物の残部に結合される)を示さないでリストされる場合、このような置換基はこのような置換基中のあらゆる原子を介して結合されてもよい。一般に、置換基又は基が成分又は化合物中に1回より多く現れる場合、夫々の出現についてのその定義は夫々のその他の出現におけるその定義とは独立である。しかしながら、置換基及び/又は変数のこのような組み合わせはこのような組み合わせが安定な化合物をもたらす場合にのみ許される。
以下に記載される本発明の方法において、パラジウム触媒クロスカップリング反応がPd(OAc)2とPh3Pからその場で生成された、触媒Pd(Ph3P)4の存在下の、市販の2-ピリジル亜鉛ブロミド又はその場で生成されたジ(2-ピリジル)亜鉛とのインドール中間体:
【0038】
【化18】

【0039】
のクロスカップリングに適用された。結果が表1に示される。
“Z”により特定される出発物質の如き出発物質は米国仮特許出願第60/551,107号に教示された方法を使用してつくられる。
リガンド
リガンドの選択が本発明のクロスカップリング反応に影響することがまたわかった。反応リガンドのスクリーニングが上記出発物質を使用して行なわれた。結果が表1に示される。Pd(Ph3P)4又はPd(PCy3)2がカップリングではなく脱ハロゲン化から生じる望ましくない副生物と較べて所望の生成物の比(生成物/2H-インドール)に関して良好な結果を生じることがわかった(エントリー5、11、12を参照のこと)。
【0040】
【表1】

【0041】
a)アルゴン雰囲気下で2当量の2-PyZnBrを使用して全ての反応を行ない、生成物と副生物2H-インドールの比をHPLC積分に基づいて測定した。
b)インドール-亜鉛試薬及び2-PyBrを使用した。
c)出発物質をCH2Cl2中でMgSO4で前処理した。
d)POPdはPdCl2〔(t-Bu)2P(OH)〕2である。
e)PXPdはPdCl2〔(t-Bu)2PCl〕2である。
f)Lはカルベンリガンドである1,3-ビス(アダマンチル)イミダゾール-2-イリデンである。
溶媒
上記パラジウム触媒クロスカップリング反応について最適化反応を達成する際の主要な考慮の一つは2H-インドール副生物の生成を最小にすることである。所望の生成物vs.2H-インドール副生物の比は一種以上の溶媒の選択により影響されたことがわかった。表1に示されるように、THFがその方法で唯一の溶媒として使用された場合、所望の生成物vs.副生物の比は52:48であった(エントリー1-3)。一方、NMP-THF(2:1)溶媒組み合わせが溶媒として使用された場合、この比が改良された。1.5:1の比が好ましい。スキームIIに示される最適条件が94:6の比を与えた。
【0042】
【化19】

【0043】
好ましい溶媒はDMSO、DMF、DMAC、DMA、NMP、N-エチルピロリジノン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンである。最も好ましい溶媒はNMPである。溶媒の好ましい組み合わせはNMP-THF(2:1)である。
温度
温度がまた本発明のクロスカップリング反応に影響することがわかった。例えば、その反応は70℃で完結するのに24時間以上を要したが、それは90℃でわずかに3時間を要した。好ましい温度は70〜90℃である。
本発明は2-ブロモインドールをアリール又はヘテロアリール亜鉛種中間体とカップリングすることによる、大規模(25kg)のクロスカップリングされたインドール化合物の製造に使用し得る方法を開示する。本発明の一実施態様は1-メチル-2-ブロモ-3-シクロペンチル-6-メトキシカルボニルインドールを2-ピリジル亜鉛ブロミド又はジ(2-ピリジル)亜鉛とカップリングすることによる3-シクロペンチル-6-メトキシカルボニル-2-(2-ピリジル)インドールの如き三置換インドールの製造方法を提供する(スキームII)。
アリールクロリドの使用
本発明の別の局面において、2-クロロインドール中間体がスキームIIIに示されるようなアリールクロリドのパラジウム触媒クロスカップリングに使用し得ることがわかった。アリールクロリドのコストは相当するブロモ又はヨード誘導体よりもしばしばかなり低い。2-クロロインドール出発物質の容易な入手可能性を考慮して、本発明は重要な医療価値を有する種々の2,3-二置換インドール化合物を生成するための経済的な経路を与える。
【0044】
【化20】

【0045】
種々のその他の条件下の上記反応の結果が下記の表2に示される。
【0046】
【表2】

【0047】
合成実施例
【実施例】
【0048】
実施例1:3-シクロペンチル-1-メチル-2-(ピリジン-2-イル)-1H-インドール-6-カルボン酸の調製
【0049】
【化21】

【0050】
イソプロピルマグネシウムクロリド(THF中2M)1448g(2.97モル、2.0当量)を窒素雰囲気下で乾燥反応器に仕込んだ。2-ブロモピリジン474g(3.0モル、2.02当量)を1時間にわたってその反応器に仕込み、その間その内容物温度を35-45℃に維持した。その混合物を1時間にわたって40℃で撹拌した。35-40℃に冷却した後、温度を65℃以下に維持しながらその反応混合物にZnBr2 368g(1.634モル、1.1当量)を仕込んだ。添加後、その混合物を1時間にわたって65℃に温めた。35-40℃に冷却した後、その反応混合物にNMP3046gを仕込み、続いて安息香酸メチル202.4g(1.487モル、1.0当量)を添加した。その反応混合物を更に1時間にわたって65℃に温め、次いで35℃に冷却した。その混合物に酢酸パラジウム6.66g(0.029モル、0.02当量)、PPh3 31.14g(0.119モル、0.08当量)及び2-ブロモ-3-シクロペンチル-1-メチル-1H-インドール-カルボン酸メチルエステル500.0g(1.487モル、1.0当量)を連続して添加した。添加後、その反応混合物を1時間にわたって70℃に温め、次いで90℃に温め、90℃で3時間撹拌した。完結後、トリブチルホスフィン25.2g(0.124モル、0.083当量)、酢酸イソプロピル2600g、及び飽和アンモニウム溶液3270gをその反応混合物に連続して添加した。1時間撹拌した後、バッチ内容物を濾過し、固体を酢酸イソプロピル2x670gで洗浄した。有機相を分離し、10%のNH4Cl水溶液2x2230gで洗浄し、次いで4MのHCl水溶液1484mlで処理した。下の水相を分離し、有機層を4MのHCl水溶液744mlで2回抽出した。水相を合わせ、続いて1-プロパノール602gを添加し、50%の水酸化ナトリウム0.2176g(16.32モル、11.0当量)を添加した。加水分解反応が完結するまで、得られる混合物を2時間にわたって89℃に加熱した。その混合物を25℃に冷却し、0.5ミクロンのインラインフィルターで濾過した。濾液に酢酸322g(5.36モル、3.6当量)を添加した。60℃で1時間温めた後、その混合物を2時間にわたって25℃に冷却した。固体を濾過し、湿潤ケーキを1-プロパノールと水の1:2混合物2x1000mlで洗浄し、続いて水2x500gで洗浄した。40℃で真空下で窒素パージして乾燥した後に標題化合物365gを得た(収率77%)。
実施例2:1-〔(3-シクロペンチル-1-メチル-2-(ピリジン-2-イル)-1H-インドール-6-カルボニル)-アミノ〕-シクロブタンカルボン酸の調製
【0051】
【化22】

【0052】
2-ブロモ-3-シクロペンチル-1-メチル-1H-インドール-6-カルボン酸(32.22g、100.0ミリモル)を無水THF(322mL)中で懸濁させた。トリエチルアミン(62.72mL、450.0ミリモル)を添加した。その溶液を氷-水浴中で5℃に冷却した。塩化チオニル(8.73mL、120.0ミリモル)を激しく撹拌しながら徐々に添加した。添加後、その懸濁液を5℃で1時間撹拌し、次いで室温で一夜撹拌した。HPLCは出発物質の74%の転化率を示した(ジエチルアミンで反応停止した)。追加のトリエチルアミン(32.06mL、230.0ミリモル)を撹拌下で添加し、続いて塩化チオニル(3.64mL、50.0ミリモル)を徐々に添加した。その混合物を室温(25℃)で4時間撹拌した。出発物質の転化率はHPLCにより示されるように殆ど変化しないで留まった。1-メトキシカルボニル-シクロブチル-アンモニウムクロリド(17.39g、105.0ミリモル)を添加し、その混合物を室温で4時間撹拌した。HPLCは77%のカップリング生成物が生成され、一方、出発物質の22%が残存することを示した。酢酸(74.42mL、1300ミリモル)及び水(322mL)を添加して褐色の溶液(pH約6)を得た。THF(約250mL)を常圧で蒸留した。沈殿を濾過により集め、1/1のアセトニトリル/水(2x150mL)及び水(150mL)で洗浄し、乾燥させて固体(37.00g)を得た。その粗生成物を酢酸エチル(450mL)中で懸濁させ、その混合物を0.5時間にわたって加熱、還流した。その混合物を室温に冷却した。固体を濾過により集め、酢酸エチル(3x50mL)で洗浄し、乾燥させて1-〔(2-ブロモ-3-シクロペンチル-1-メチル-1H-インドール-6-カルボニル)-アミノ〕-シクロブタンカルボン酸メチルエステル(17.26g、40%)を得た。その濾液を真空で濃縮、乾燥させた。残留固体をTHF(50mL)に溶解した。その溶液を中性酸化アルミニウム(活性化、ブロックマンI、150g)の短いカラムに通し、THF(300mL)で溶離した。溶媒を除去して生成物の第二クロップ(11.20g、26%)を得た。合わせた生成物の収率は転化された出発物質を基準として約86%であった。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 9.02 (s, 1H), 8.09 (s, 1H), 7.61 (br s, 2H), 3.80 (s, 3H), 3.62 (s, 3H), 3.30-3.26 (m, 1H), 2.62-2.57 (m, 2H), 2.38-2.30 (m, 2H), 2.05-1.91 (m, 8H), 1.81-1.62 (m, 2H).
【0053】
THF中のi-PrMgClの溶液(10mL、20ミリモル)に2-ブロモピリジン(1.93g、20.2ミリモル)を室温で一度に添加した。その混合物を35℃で0.5時間撹拌した。その深赤色の溶液にアルゴン雰囲気下でZnBr2(4.50g、20ミリモル)を添加し、得られる混合物を70℃で0.5時間撹拌して濃厚なオフホワイトのスラリーを得た。1-メチル-2-ピロリジノン(20mL)、続いて安息香酸メチル(1.1mL、8.7ミリモル)を添加した。その混合物を70℃で0.5時間撹拌し、次いで室温に冷却した。酢酸パラジウム(39.1mg、0.17ミリモル)、トリフェニルホスフィン(182.6mg、0.70ミリモル)及び1-〔(2-ブロモ-3-シクロペンチル-1-メチル-1H-インドール-6-カルボニル)-アミノ〕-シクロブタンカルボン酸メチルエステル(3.768g、8.70ミリモル)を添加した。出発物質がHPLCにより監視して残らないようになるまで(約3時間)、その混合物を90℃で撹拌した。飽和塩化アンモニウム(20mL)、酢酸イソプロピル(20mL)及びTHF(10mL)を添加した。4NのHCl(約3mL)を使用してその混合物のpHを4-5に調節し、その混合物を60℃で5分間撹拌し、次いで分離ロートに写した。水層を分離し、60℃の酢酸イソプロピル(20mL)で抽出した。合わせた有機相を60℃の飽和塩化アンモニウム(10mL)と水(10mL)の混合物で洗浄した。有機層を4NのHCl(15mL及び10mL)で抽出した。氷-水浴中で冷却した合わせた抽出液に50%のNaOH(9.40g、117.5ミリモル)を徐々に添加した。バッチ内部温度が89-90℃に達するまでその混合物を加熱、還流した。n-プロパノール(10mL)を添加し、その混合物を90℃で1時間撹拌した。その混合物を60℃に冷却した後、酢酸(1.57g、26.1ミリモル)を徐々に添加してpHを5-6に調節した。得られる白色の懸濁液を60℃で1時間撹拌し、2時間で室温に冷却した。白色の沈殿を濾過により集め、湿ったケーキを2:1の水/n-プロパノール(15mL)及び水(50mL)ですすいだ。固体を一定重量まで真空下で乾燥させた(2.67g、74%)。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 12.25 (s, 1H), 8.92 (s, 1H), 8.80 (d, J = 4.0 Hz, 1H), 8.13 (s, 1H), 7.98 (dt, J = 1.5, 7.5 Hz, 1H), 7.70 (d, J = 8.5, 1H), 7.68-7.56 (m, 2H), 7.52-7.45 (m, 1H), 3.71 (s, 3H), 3.21-3.08 (m, 1H), 2.68-2.55 (m, 2H), 2.42-2.28 (m, 2H), 2.05-1.80 (m, 8H), 1.70-1.55 (m, 2H).
実施例3:1-〔(3-シクロペンチル-1-メチル-2-ピリジン-2-イル-1H-インドール-6-カルボニル)-アミノ〕-シクロブタンカルボン酸の調製
【0054】
【化23】

【0055】
n-プロパノール(100mL)及び水(100mL)中の1-〔(2-ブロモ-3-シクロペンチル-1-メチル-1H-インドール-6-カルボニル)-アミノ〕-シクロブタンカルボン酸メチルエステル(20.00g、46.15ミリモル)の懸濁液に50%のNaOH(4.06g、50.77ミリモル)を添加した。出発物質が残らなくなるまで(0.5時間)その混合物を89℃で加熱した。その透明な溶液を50℃に冷却し、酢酸(4.23mL、73.85ミリモル)を滴下して添加してpHを5-6に調節した。生成物を白色の固体として沈殿させた。その懸濁液を0.5時間にわたって還流させ、次いで1時間以上で室温に冷却した。固体を濾過により集め、1:1の水/n-プロパノール(100mL)及び水(200mL)により洗浄した。白色の固体として得られた、1-〔(2-ブロモ-3-シクロペンチル-1-メチル-1H-インドール-6-カルボニル)-アミノ〕-シクロブタンカルボン酸を一定重量まで真空下で乾燥させた(17.78g、97%)。
THF中のi-PrMgClの溶液(10mL、20ミリモル)に2-ブロモピリジン(1.93g、20.2ミリモル)を室温で一度に添加した。その混合物を35℃で0.5時間撹拌した。その深赤色の溶液にアルゴン雰囲気下でZnBr2(2.477g、11ミリモル)を添加し、得られる混合物を70℃で0.5時間撹拌して赤褐色の溶液を得た。1-メチル-2-ピロリジノン(20mL)を添加し、その混合物を70℃で10分間撹拌した。酢酸パラジウム(11.2mg、0.05ミリモル)、トリフェニルホスフィン(52.5mg、0.20ミリモル)及び1-〔(2-ブロモ-3-シクロペンチル-1-メチル-1H-インドール-6-カルボニル)-アミノ〕-シクロブタンカルボン酸(2.097g、5ミリモル)を添加した。その混合物を90℃で6時間撹拌した。飽和塩化アンモニウム(20mL)及びTHF(20mL)を添加した。4NのHCl(約3mL)を使用してその混合物のpHを4-5に調節し、その混合物を60℃で5分間撹拌した。水層を分離し、60℃の酢酸イソプロピル(20mL)で抽出した。合わせた有機相を60℃の飽和塩化アンモニウム(10mL)と水(10mL)の混合物と合わせ、洗浄した。有機層を4NのHCl(10mL及び5mL)で抽出した。氷-水浴中で冷却した合わせた抽出液に50%のNaOH(5.60g、70ミリモル)を徐々に添加した。内温が89-90℃に達するまでその混合物を加熱、還流した。その混合物を60℃に冷却し、n-プロパノール(10mL)を添加した。撹拌しながら、酢酸(1.14mL、20ミリモル)を添加してpHを5-6に調節した。得られる白色の懸濁液を60℃で1時間撹拌し、室温(20℃)に冷却した。白色の沈殿を濾過により集め、湿ったケーキを2:1の水/n-プロパノール(15mL)及び水(50mL)ですすいだ。固体を真空下で乾燥させて標題化合物(1.65g、79%)を得た。
実施例4:1-〔(3-シクロペンチル-1-メチル-2-ピリジン-2-イル-1H-インドール-6-カルボニル)-アミノ〕-シクロブタンカルボン酸メチルエステルの調製
【0056】
【化24】

【0057】
THF中のi-PrMgClの溶液(10mL、20ミリモル)に2-ブロモピリジン(1.93g、20.2ミリモル)を室温で一度に添加した。その混合物を35℃で0.5時間撹拌した。その深赤色の溶液にアルゴン雰囲気下でZnBr2(4.50g、20ミリモル)を添加し、得られる混合物を70℃で0.5時間撹拌して濃厚な白色のスラリーを得た。1-メチル-2-ピロリジノン(20mL)を添加し、続いて安息香酸メチル(2.5mL、20ミリモル)を添加した。その混合物を70℃で0.5時間撹拌した。その混合物を室温に冷却した。酢酸パラジウム(56.1mg、0.25ミリモル)、2-ジシクロヘキシルホスフィノビフェニル(350.5mg、1ミリモル)及び1-〔(2-クロロ-3-シクロペンチル-1-メチル-1H-インドール-6-カルボニル)-アミノ〕-シクロブタンカルボン酸メチルエステル(1.944g、5ミリモル)を添加した。出発物質がHPLCにより監視して残らなくなるまで(約4時間)その混合物を90℃で撹拌した。カップリング生成物と出発物質の比がHPLCにより78/22であると推定された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式I:
【化1】

の化合物の製造方法であって、
前記方法が置換インドール化合物I':
【化2】

をPd、Niから選ばれた金属触媒、Ph3P、p-Tol3P、Cy3P、tBu3P、Cy2P(Ph-Ph)、dppf及びdppbから選ばれたリガンドの存在下で、THF、DMF、NMP又はこれらの組み合わせから選ばれた溶媒中で、周囲温度〜100℃の温度でヘテロアリール又はアリール亜鉛ハライド:
【化3】

又はジヘテロアリールもしくはジアリール亜鉛:
【化4】

(式中、
LはBr又はClであり、
RはH又はC1-8アルキルであり、
XはC3-C8シクロアルキル、アリール又はH、C1-C8アルキルであり、
Yはヘテロアリール又はアリールであり、
ZはH、HO2C-、C1-8アルキルO2C-、C1-6アルキルHNC(O)-、
【化5】

であり、式中、Qは
【化6】

【化7】

から選ばれる)
と反応させて式Iの所望の化合物を得ることを特徴とする上記化合物の製造方法。
【請求項2】
所望の生成物の比が2Hインドール生成物の比よりも2.5倍大きい、請求項1記載の方法。
【請求項3】
触媒がPdである、請求項1記載の方法。
【請求項4】
リガンドがPh3P、Cy3P又はCy2P(Ph-Ph)である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
溶媒がTHFとNMPの混合物である、請求項1記載の方法。
【請求項6】
LがBr又はClであり、
RがH又はメチルであり、
XがC3-C8シクロアルキルであり、
Yがヘテロアリール又はアリールであり、
ZがH、HO2C-、C1-8アルキルO2C-、
【化8】

であり、式中、Qが
【化9】

【化10】

から選ばれる式Iの化合物を製造するための請求項1記載の方法。
【請求項7】
Pd(OAc)2及びPh3P、p-Tol3P、(2-フリル)3P、又はCy2P(Ph-Ph)、dppb及びCy3Pから選ばれたリガンドの存在下のNMP対THFの2:1混合物中の、70℃〜90℃の温度における、
LがBr又はClであり、
RがH又はメチルであり、
Xがシクロペンチルであり、
Yがピリジルであり、
LがBr又はClであり、かつ
ZがH、HO2C-、C1-8アルキルO2C-、
【化11】

であり、式中、Qが
【化12】

【化13】

から選ばれる式Iの化合物を製造するための請求項1記載の方法。
【請求項8】
Pd(OAc)2及びPh3P、p-Tol3P、(2-フリル)3P、dppb及びCy2P(Ph-Ph)から選ばれたリガンドの存在下のNMP対THFの2:1混合物中の、70℃〜90℃の温度における、
LがBr又はClであり、
RがH又はメチルであり、
Zが
【化14】

であり、
Xがシクロペンチルであり、
Yがピリジルである式Iの化合物を製造するための請求項1記載の方法。
【請求項9】
式:
【化15】

(式中、LはBr又はClである)
を有する化合物。
【請求項10】
式:
【化16】

(式中、LはBr又はClであり、かつ
RはH又はメチルである)
を有する化合物。

【公開番号】特開2011−241217(P2011−241217A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−115980(P2011−115980)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【分割の表示】特願2007−502861(P2007−502861)の分割
【原出願日】平成17年3月7日(2005.3.7)
【出願人】(500091335)ベーリンガー インゲルハイム ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (55)
【Fターム(参考)】