説明

インバータ装置

【課題】インバータ装置内の各部材の配置を最適化による更なる小型化の実現。
【解決手段】回転電機接続端子25が、スイッチング素子14に対して短辺第一方向X1側に配置され、コンデンサ31が、直交方向Zに見て回転電機接続端子25と重複するように配置され、コンデンサ31とスイッチング素子14とを電気的に接続するコンデンサ接続端子33が、ベースプレート11に対して短辺第二方向X2側に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機のケースに固定されるインバータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機のケースに固定されるインバータ装置としては、例えば、ハイブリッド車両用のインバータ装置などがあり、当該インバータ装置において小型化は重要な課題である。インバータ装置の小型化に関する技術として、例えば下記の特許文献1の図6などには、制御回路基板20と、コンデンサモジュール500との間に、パワーモジュール300を挟むように垂直方向に積層することで、水平方向の大きさを抑える技術が開示されている。
【0003】
しかし、特許文献1の技術では、コンデンサモジュールとパワーモジュールとを電気的に接続する直流電力端子や、回転電機とパワーモジュールとを電気的に接続する交流電力端子を、制御回路基板20、コンデンサモジュール500、パワーモジュール300に対してどのように配置すると良いかについては特段の記載はなく、この点において改善の余地があった。また、特許文献1の技術では、インバータ装置は回転電機のケースに固定できるほどには小型化されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−183748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、インバータ装置内の各部材の配置を最適化して更なる小型化を実現することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る回転電機のケースに固定されるインバータ装置の特徴構成は、直流電力と交流電力との間の電力変換を行うための複数のスイッチング素子と、前記直流電力の平滑用のコンデンサと、冷却器と、を備え、前記冷却器の前記回転電機側に設けられた冷却面に接して前記複数のスイッチング素子が配置され、前記コンデンサが、前記冷却器を挟んで前記複数のスイッチング素子とは反対側に配置され、前記スイッチング素子が、前記冷却面に沿って当該冷却面の所定の長方形状領域内に配置され、前記スイッチング素子と前記回転電機とを電気的に接続する交流電力端子が、前記スイッチング素子に対して前記長方形状領域の短辺方向の一方側である短辺第一方向側に配置され、前記コンデンサが、前記冷却面に直交する方向に見て前記交流電力端子と重複するように配置され、前記コンデンサと前記スイッチング素子とを電気的に接続する直流電力端子が、前記冷却器に対して前記短辺第一方向側とは反対方向である短辺第二方向側に配置されている点にある。
【0007】
この特徴構成によれば、冷却面に直交する方向に見てコンデンサと交流電力端子とを重複させて配置しているので、これらを重複させずに配置する場合に比べて、冷却面に沿った方向における装置の大きさを小さく抑えることが容易となる。また、交流電力端子が設けられた短辺第一方向側にコンデンサを寄せて配置することができるので、短辺第二方向側に空間を設けることが容易となる。そして、このような空間を利用することにより、冷却面に沿った方向に装置を大きくすることなく、冷却器を挟んで両側に配置されたスイッチング素子とコンデンサとを接続する直流電力端子を配置することが容易となる。以上により、回転電機のケースに固定されるインバータ装置の更なる小型化を実現できる。
また、コンデンサが、冷却器を挟んで回転電機とは反対側に配置されているので、回転電機から発生する熱がコンデンサに伝わることを抑制できる。したがって、熱に弱いコンデンサを適切に保護することができる。
【0008】
ここで、前記交流電力端子が、前記長方形状領域の長辺方向に沿って複数配列され、前記回転電機の回転軸と前記長方形状領域の短辺方向とが平行になるように前記回転電機のケースに固定されていると好適である。
【0009】
一般的に、交流回転電機のコイルの各相の端子は、コイルの周方向に沿って配列されることが多い。従って、回転電機の径方向外側に配置されたインバータ側から見れば、回転電機側のコイルの端子は、回転電機の回転軸に直交する方向に沿って配列されることになる。本特徴構成によれば、インバータ装置の複数の交流電力端子が回転電機の回転軸と直交する方向に沿って配列されることになるので、インバータ装置の交流電力端子と回転電機のコイルの端子とを、冷却面に直交する方向に見て重複するように配置することが容易となる。これにより、交流電力端子と回転電機のコイルとを電気的に接続するための導体長さを短くできると共に、インバータ装置を回転電機のケースに取り付ける際における、交流電力端子と回転電機のコイルとの電気的接続の作業を簡略化することが容易となる。従って、インバータ装置及び回転電機を備える回転電機ユニットの製造コストを低減できると共に、周辺機器に与えるノイズの影響を低減することができる。
【0010】
また、前記交流電力端子が、前記冷却器に対して前記短辺第一方向側に配置されていると好適である。
【0011】
この構成によれば、冷却面に直交する方向に見て交流電力端子が冷却器と重複しない。このため交流電力端子とコンデンサとの間に空間を設けることが容易となる。従って、このような空間を利用して工具等を挿入することが可能となり、交流電力端子と回転電機との接続作業が容易となる。これにより、作業性に優れたインバータ装置を実現することができる。
【0012】
また、前記複数のスイッチング素子に対して前記冷却器とは反対側に、前記複数のスイッチング素子を電気的に接続してインバータ回路を形成するための複数のバスバーを有するバスバーモジュールが配置され、前記交流電力端子は、前記バスバーにおける前記短辺第一方向側に向って突出する部分に形成され、前記直流電力端子は、前記バスバーにおける前記短辺第二方向側に向って突出する部分に形成されていると好適である。
【0013】
この特徴構成によれば、インバータ回路を形成するためのバスバーユニットと一体的に交流電力端子及び直流電力端子を形成することができると共に、交流電力端子及び直流電力端子を適切な位置に配置することが容易となる。従って、上記のような配置構成を適切に実現しつつ、装置の製造コストの低減や装置の小型化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】車両に搭載される車両用駆動装置及びインバータ装置の斜視図である。
【図2】インバータ回路の構成を示す模式図である。
【図3】インバータ装置の分解斜視図である。
【図4】インバータモジュールの分解斜視図である。
【図5】インバータ装置を冷却面に直交する方向から見た平面図である。
【図6】インバータ装置の断面図である。
【図7】インバータ装置を車両に搭載した状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係るインバータ装置の実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態では、ハイブリッド車両Vの車輪の駆動力源として機能する回転電機3を制御するシステムにおけるインバータ装置1を例として説明する。ハイブリッド車両V(以下では、「車両V」と呼ぶ。)は、図7に示すように、内燃機関61と、回転電機3を有する車両用駆動装置62と、インバータ装置1と、バッテリ2と、を備えている。
【0016】
インバータ装置1はインバータ回路7(図2参照)を備え、当該インバータ装置1から見て外部機器となる回転電機3を制御する。なお、本例では、回転電機3は、三相交流で駆動される交流電動機とされている。この回転電機3は、電力の供給を受けて動力を発生するモータ(電動機)としての機能と、動力の供給を受けて電力を発生するジェネレータ(発電機)としての機能との双方を果たすことが可能とされている。本実施形態では、図7に示すように、車両用駆動装置62は、内燃機関61を収容する内燃機関ケース63と、回転電機3を収容する回転電機ケース64とを備えている。
【0017】
図1に示すように、インバータ装置1は、回転電機ケース64に一体的に固定されている 。本例では、インバータ装置1は、インバータモジュール6を含むインバータの構成部品を収容するインバータケース5(以下、「ケース5」と呼ぶ。)を備えている。本例では、当該ケース5は回転電機ケース64とは別体として形成されるとともに、回転電機ケース64に対して一体的に固定可能に構成されている。
【0018】
図7に示すように、インバータ装置1は、車両Vの駆動力源としての回転電機3及びそのエネルギ源となる直流電源としてのバッテリ2に接続されている。本例では、さらに、インバータ装置1は、車両Vに備えられた電装部品101及びラジエータ102に接続されている。
【0019】
1.インバータ回路の構成
まず、インバータ回路7の構成について説明する。本実施形態に係るインバータ回路7は、複数(本例では6つ)のスイッチング素子14を用いて構成されている。スイッチング素子14は、直流電力と交流電力との間の電力変換を行うための電子素子であり、インバータ回路7及びインバータ装置1の中核をなしている。図2に示すように、インバータ回路7は、ブリッジ回路により構成されており、バッテリ2の正極P側とバッテリ2の負極N側(例えばクランド側)との間に2つのスイッチング素子14が直列に接続され、この直列回路が3回線並列に接続されている。すなわち、インバータ回路7は、正極P側に接続される上段アームを構成するスイッチング素子14と負極N側に接続される下段アームを構成するスイッチング素子14とを有するレッグを3つ有する3レッグ構成とされている。各レッグは、回転電機3のコイル3b(ステータコイル)の三相(U相、V相、W相)のそれぞれに対応している。
【0020】
図2において、符号14aはU相用上段側スイッチング素子であり、符号14bはV相用上段側スイッチング素子であり、符号14cはW相用上段側スイッチング素子である。また、符号14dはU相用下段側スイッチング素子であり、符号14eはV相用下段側スイッチング素子であり、符号14fはW相用下段側スイッチング素子である。ここで、「上段側」は正極P側のアームであることを表し、「下段側」は負極N側のアームであることを表す。
【0021】
各相の上段側スイッチング素子14a,14b,14cのコレクタは第四バスバー23dを介して正極P側に接続され、エミッタはバスバー23a,23b,23cを介して各相の下段側スイッチング素子14d,14e,14fのコレクタに接続されている。また、各相の下段側スイッチング素子14d,14e,14fのエミッタは第五バスバー23eを介して負極N側に接続されている。各スイッチング素子14のエミッタ−コレクタ間には、ダイオード素子15が並列接続されている。ダイオード素子15は、アノードがスイッチング素子14のエミッタに接続され、カソードがスイッチング素子14のコレクタに接続されている。ダイオード素子15はFWD(Free Wheel Diode)として用いられている。
【0022】
対となるスイッチング素子(14a,14d)、(14b,14e)、(14c,14f)と、それぞれ対応するバスバー23a,23b,23cとを含んで構成される各アームは、回転電機接続端子25a,25b,25cを介して回転電機3の各相のコイルに接続されている。そして、各スイッチング素子14のゲートは、制御基板41に設けられた駆動回路(図示省略)に接続されており、それぞれ個別にスイッチング制御される。
【0023】
このようなインバータ回路7を含むインバータ装置1は、回転電機3に要求される要求回転速度や要求トルクに基づいて各スイッチング素子14を制御(例えば、パルス幅変調制御等)することで、バッテリ2からの直流電力を三相交流電力に変換して回転電機3に供給する。これにより、回転電機3を要求回転速度及び要求トルクに応じて力行させる。一方、回転電機3が発電機として機能し、回転電機3側から電力の供給を受ける場合には、インバータ装置1は、各スイッチング素子14を制御することで、発電された三相交流電力を直流電力に変換してバッテリ2に充電させる。
【0024】
2.インバータ装置の全体構成
次に、インバータ装置1の全体構成について、図3を参照して説明する。インバータ装置1は、インバータモジュール6と直流電力の平滑用のコンデンサ31とスイッチング素子14などの動作を制御するための制御基板41とを備えている。これらは直方体状に形成されたケース5内に収容されている。インバータモジュール6は、インバータ回路7が実装されたモジュールであり、図2に示すように、バッテリ2と回転電機3との間の電気回路に介挿されている。バッテリ2とインバータモジュール6との間には、コンデンサ31がさらに介挿されている。
【0025】
図4に示すように、インバータ装置1の構成部品であるインバータモジュール6は、複数のスイッチング素子14と、これら複数のスイッチング素子14が載置される素子載置面11aを有するベースプレート11と、複数のバスバー23を有するバスバーモジュール20とを主要な構成部品として備えている。ここで、スイッチング素子14は、直流電力と交流電力との間の電力変換を行うための部材であり、バスバー23は、複数のスイッチング素子14を電気的に接続してインバータ回路7を形成するための部材である。
【0026】
本実施形態におけるベースプレート11が本発明における「冷却器」に相当し、素子載置面11aが「冷却面」に相当する。
【0027】
2−1.インバータモジュール
2−1−1.ベースプレート
図3に示すように、ベースプレート11は、スイッチング素子14を載置するためのベースとなる板状の部材である。ベースプレート11は、銅やアルミニウム等の金属材料で構成されている。図4等に示すように、ベースプレート11の素子載置面11aには、絶縁部材12及び素子基板13が互いに平行な状態で積層されている。この積層方向は素子載置面11aに直交する方向Z(以下、単に「直交方向Z」と呼ぶ)に一致している。
【0028】
絶縁部材12は、電気的絶縁性及び熱伝導性の双方を備えるシート状部材で構成され、本例では樹脂製のシート部材とされている。素子基板13は、導電性の材料(例えば、銅やアルミニウム等の金属材料)で構成され、絶縁部材12を介して熱圧着によりベースプレート11に接着固定されている。本例では、素子基板13は、ベースプレート11と別部材として異なる材料で構成されている。この素子基板13は、ヒートスプレッダとしても機能する。
【0029】
図4に示すように、本実施形態ではベースプレート11上に1つの絶縁部材12が配置され、絶縁部材12上に複数(本例では6つ)の素子基板13が配置されている。本例では、これら複数の素子基板13は、一方向(後述する長辺方向Y)に沿って一列に6つ並ぶように配置されている。この際、複数の素子基板13は、各素子基板13の短辺方向が、複数の素子基板13の配列方向(長辺方向Y)と平行になる向きで、すなわち、複数の素子基板13の長辺が互いに平行になる向きで配列されている。
【0030】
また本実施形態では、各素子基板13の上面には、スイッチング素子14及びダイオード素子15がそれぞれ1つずつ載置されている。これにより、本例では、ベースプレート11の素子載置面11aに、絶縁部材12及び素子基板13を介して6つのスイッチング素子14と6つのダイオード素子15とが設けられる。そして、これらのスイッチング素子14及びダイオード素子15を含んでインバータ回路7が構成される。スイッチング素子14として、本実施形態ではIGBT(insulated gate bipolar transistor)を用いている。なお、スイッチング素子14として、MOSFET(metal oxide semiconductor field effect transistor)等を用いることも可能である。また、本例では、図4等に示すように、同一の素子基板13に載置されたスイッチング素子14とダイオード素子15とは、一方向(後述する短辺方向X)に沿って並ぶように互いに隣接して配置されている。
【0031】
図5に示すように、スイッチング素子14は、ケース5内において、素子載置面11aに沿って当該素子載置面11aの所定の長方形状領域R内に配置されている。長方形状領域Rは、回転電機接続端子25とコンデンサ接続端子33との間に設けられている。図5中では、長方形状領域Rの長辺方向をY、短辺方向をXで表している。以下では、長方形状領域Rの各辺の方向を「短辺方向X」、「長辺方向Y」と呼ぶ。また、短辺方向Xにおいて図5における左側を「短辺第一方向X1」と呼び、右側を「短辺第二方向X2」と呼ぶ。本例では、6つのスイッチング素子14が、長辺方向Yに沿って6つ並ぶように配置されている。
【0032】
図4に示すように、スイッチング素子14の上面(エミッタ電極)とダイオード素子15の上面(アノード電極)とを電気的に接続する状態で、第一電極部材17が配置されている。第一電極部材17は、本例では一定幅の帯状部材(板状部材)を用いて屈曲成形されている。また、素子基板13の上面に第二電極部材18が載置されている。第二電極部材18は、素子基板13を介してスイッチング素子14の下面(コレクタ電極)とダイオード素子15の下面(カソード電極)とを電気的に接続する。第二電極部材18は、本例ではブロック状部材とされている。第一電極部材17及び第二電極部材18の双方は、導電性の材料(例えば、銅やアルミニウム等の金属材料)で構成される。
【0033】
図5に示すように、本実施形態では、対となるスイッチング素子(14a,14d)、(14b,14e)、(14c,14f)と、それぞれ対応するダイオード素子15、第一電極部材17、第二電極部材18、及びバスバー23a,23b,23c(以下、単に「ダイオード素子15等」と略称する場合がある)とにより、インバータ回路7の各レッグが構成される。このうち、スイッチング素子14a,14b,14cと、それぞれ対応するダイオード素子15等とにより、インバータ回路7の各上段アームが構成される。また、スイッチング素子14d,14e,14fと、それぞれ対応するダイオード素子15等とにより、インバータ回路7の各下段アームが構成される。
【0034】
図6に示すように、ベースプレート11の素子載置面11aとは反対側には、放熱フィン11bが設けられている。本例では、放熱フィン11bはベースプレート11と一体的に形成されている。この放熱フィン11bは、素子基板13及び絶縁部材12を介してベースプレート11に伝達されるスイッチング素子14の熱(スイッチング動作に伴って発生する熱)をその表面から放熱させる。図示は省略するが、本例では、放熱フィン11bは、ベースプレート11の素子載置面11aとは反対側の面から当該面に直交する方向Z(以下、単に「直交方向Z」と呼ぶ)に向って立設するフィンからなる。具体的には、放熱フィン11bは、直交方向Zに向かって、複数の棒状部材が立設して構成されるピンフィンである。ただし、放熱フィン11bは、直交方向Zに突出するとともに、一方向(長辺方向Y)に沿って延びる平板状に形成してもよい。
【0035】
本実施形態では、ベースプレート11は、ケース5内に設けられた冷却路構成部材110に接するように配置される。冷却路構成部材110は、ベースプレート11の素子載置面11aに平行な面に沿って延在する部材であり、ケース5と一体的に形成されている。ただし、冷却水通流部110を、ケース5と別体として形成し、ケース5の内壁に固定する構造としても構わない。そして、冷却路構成部材110は、ベースプレート11が接する側の面に凹部111を備えている。凹部111は、冷却路構成部材110にベースプレート11が取り付けられた状態で、冷却水の流通経路となる。そのため、凹部111は、ベースプレート11の放熱フィン11bが収容可能な空間を有するように形成されている。凹部111には、ケース5外からの冷却水流通管路112a、112bが接続されている。そして、これらの冷却水流通管路112a、112bの一方から凹部111内に冷却水が導入されるとともに、他方からケース5外に冷却水が排出される。このような構成により、ベースプレート11を冷却水により冷却できる。
【0036】
2−1−2.バスバーモジュール
図4に示すように、インバータ装置1の構成部品であるバスバーモジュール20は、複数のバスバー23と、当該複数のバスバー23を一体保持する接続支持体21と、を主要な構成部品として備え、さらにスイッチング素子14と回転電機3とを電気的に接続する回転電機接続端子25、及び少なくともコンデンサ31とスイッチング素子14とを電気的に接続するコンデンサ接続端子33を備えている。回転電機接続端子25及びコンデンサ接続端子33は、バスバー23と一体的に形成されており、バスバーモジュール20の一部を構成している。
本実施形態におけるコンデンサ接続端子33は、本発明における「直流電力端子」に相当する。また、本実施形態における接続支持体21は、本発明における「保持部材」に相当する。
【0037】
図6に示すように、バスバーモジュール20は、複数のスイッチング素子14に対してベースプレート11とは反対側に配置されている。すなわち、これらの構成部品は、直交方向Zに沿って回転電機3側から、バスバーモジュール20、スイッチング素子14、ベースプレート11の順に配置される。
【0038】
図4〜図6に示す接続支持体21は、複数のバスバー23を一体的に支持する構造体である。本実施形態では、接続支持体21は、複数のバスバー23を内部に保持する絶縁材料の成形体で構成されている。そして、接続支持体21は、ケース5に直接固定されている。ただし、この接続支持体21は、ボルト等の締結部材によりベースプレート11の素子載置面11a側に固定され、当該ベースプレート11がケース5に固定されることで、ケース5に対して間接的に固定されてもよい。本実施形態では、バスバーモジュール20は、第一バスバー23a、第二バスバー23b、第三バスバー23c、第四バスバー23d、及び第五バスバー23eの5つのバスバー23を備えている。各バスバー23は、導電性の材料(例えば、銅やアルミニウム等の金属材料)で構成され、本例では平板状部材を用いて所定形状に屈曲形成されている。
【0039】
図2及び図5に示すように、第一バスバー23a、第二バスバー23b、及び第三バスバー23cは、それぞれ第一電極部材17(図4参照)を介して上段アームのスイッチング素子14及びダイオード素子15と回転電機接続端子25との間を電気的に接続するとともに、第二電極部材18(図4参照)を介して下段アームのスイッチング素子14及びダイオード素子15と回転電機接続端子25との間を電気的に接続する電気的接続部材である。バスバー23a,23b,23cは、全体として短辺方向Xに沿って延在している。第四バスバー23dは、第二電極部材18(図4参照)を介して上段アームのスイッチング素子14及びダイオード素子15と正極P側の直流端子34である正極側直流端子34aとの間を電気的に接続する電気的接続部材である。第五バスバー23eは、第一電極部材17(図4参照)を介して下段アームのスイッチング素子14及びダイオード素子15と負極N側の直流端子34である負極側直流端子34bとの間を電気的に接続する電気的接続部材である。バスバー23d,23eは、全体として長辺方向Yに沿って延在している。
【0040】
本例では、各バスバー23と第一電極部材17及び第二電極部材18との間の電気的な接続は、各バスバー23と一体的に形成され、接続支持体21に支持された複数の接合部24が、第一電極部材17の上面及び第二電極部材18の上面に対して押圧された状態で接合されることによって実現される。本例では、各バスバー23と第一電極部材17及び第二電極部材18とは、YAGレーザ、CO2レーザ、半導体レーザ等を利用したレーザ溶接により接合される。
【0041】
回転電機接続端子25は、車両Vの駆動力源としての回転電機3との間で交流電力の入出力を行うための端子である。本実施形態では、このような回転電機接続端子25として、三相用の回転電機接続端子25a,25b,25cを備えている。本例では、U相用回転電機接続端子25aは、第一バスバー23aの短辺第一方向X1側の端部において当該第一バスバー23aと一体的に形成されている。同様に、V相用回転電機接続端子25bは第二バスバー23bの短辺第一方向X1方向側の端部と一体的に形成され、W相用回転電機接続端子25cは第三バスバー23cの短辺第一方向X1方向側の端部と一体的に形成されている。これら3つの回転電機接続端子25a,25b,25cは、インバータ回路7を構成する3つのレッグの配列に応じて長辺方向Yに平行な方向に沿って順に配列されている。なお、本実施形態では、後述するように長辺方向Yは回転電機3の回転軸3aに対して直交する方向に一致しており、従って3つの回転電機接続端子25a,25b,25cは、当該回転軸3aに対して直交する方向に沿って順に配列されていることになる。
【0042】
本実施形態における、各相用の回転電機接続端子25a,25b,25cが本発明における「交流電力端子」に相当する。
【0043】
2−2.コンデンサ
コンデンサ31は、バッテリ2とインバータモジュール6との間に並列に設けられ、これらの間の直流電力を平滑する。図3に示すように、コンデンサ31は、ケース部31aとコンデンサ素子31bとにより構成されている。ケース部31aは、短辺方向Xの両側、長辺方向Yの両側、及び直交方向Zの一方側を覆うように形成されている。具体的には、直交方向Zから見て、長方形状となるバスタブ状に形成されている。ケース部31aには、バッテリ2との間で直流電力の入出力を行う電源端子と、スイッチング素子14との間で直流電力の入出力を行う直流端子35とがケース部31aに対して所定位置に配置されている。これらの部材は、ケース部31aの所定位置に配置された状態で、ケース部31a内に樹脂が充填されることで、ケース部31aに固定されている。これらの電源端子と直流端子35との間は、図2に示すように電気的に接続される。
【0044】
図6に示すように、コンデンサ31は、ベースプレート11を挟んで複数のスイッチング素子14とは反対側に配置されている。すなわち、これらの構成部品は、素子載置面11aに直交する一直交方向Zに沿って回転電機3側から、スイッチング素子14、ベースプレート11、コンデンサ31の順に配置される。
【0045】
2−3.制御基板
制御基板41は、主にスイッチング素子14の動作を制御するための機能を有する。そのため、制御基板41には、少なくともスイッチング素子14を個別にスイッチング制御するための駆動回路(図示省略)が設けられている。また本実施形態では、制御基板41には、バスバー23dとバスバー23eとの間の電圧を検出するための電圧検出回路も設けられている。その他、制御基板41には、バスバー23a,23b,23cを流れる交流電流を検出するための電流検出回路や、スイッチング素子14の温度を検出するための温度検出回路等も設けられている。
【0046】
図6に示すように、制御基板41は、バスバーモジュール20を挟んで複数のスイッチング素子14とは反対側に配置されている。すなわち、これらの構成部品は、素子載置面11aに直交する直交方向Zに沿って回転電機3側から、制御基板41、バスバーモジュール20、スイッチング素子14の順に配置される。
【0047】
3.インバータ装置における各構成部品の配置構成
3−1.回転電機接続端子
本実施形態においては、回転電機接続端子25は、図5及び図6に示すように、バスバー23における短辺第一方向X1側に向って突出する部分に形成されている。具体的には、バスバー23において短辺第一方向X1に向かって接続支持体21から突出する部分において、回転電機接続端子25が一体的に形成されている。本例では、第一バスバー23a、第二バスバー23b、第三バスバー23の短辺第一方向X1側端部にそれぞれ、U相用回転電機接続端子25a、V相用回転電機接続端子25b、W相用回転電機接続端子25cが形成されている。
【0048】
ここで、ケース5には回転電機3と回転電機接続端子25との接続部材120が固定されている。接続部材120は、直交方向Zに延在する円筒状の部材であり、内部に回転電機3と回転電機接続端子25とを電気的に接続するバスバーを備えている。回転電機接続端子25は、接続部材120と直交方向Zに見て重複するように配置される。本実施形態においては、回転電機接続端子25は、直交方向Zに貫通する貫通孔(図示省略)を備えており、当該貫通孔を介してボルトにより接続部材120に締結固定される。
【0049】
図6に示すように、バスバーモジュール20に備えられた回転電機接続端子25は、スイッチング素子14に対して短辺第一方向X1側に配置されている。本実施形態においては、回転電機接続端子25は、スイッチング素子14及びスイッチング素子14が配置されたベースプレート11に対して、短辺第一方向X1側に配置されている。すなわち、回転電機接続端子25は、直交方向Z方向に見てベースプレート11と重複しないように配置されている。回転電機接続端子25は、ベースプレート11の短辺第一方向X1側端面よりも短辺第一方向X1側に配置されている。さらに、本実施形態においては、回転電機接続端子25は、更に冷却路構成部材110よりも短辺第一方向X1側に配置されている。
【0050】
3−2.コンデンサ
図6に示すように、コンデンサ31は、直交方向Zに見て回転電機接続端子25と重複するように配置されている。本実施形態においては、コンデンサ31は、ケース5の短辺第一方向X1側の壁面に隣接して配置されている。回転電機接続端子25もまた、ケース5の短辺第一方向X1側の壁面に隣接して配置されている。図示の例では、回転電機接続端子25を備えるバスバーモジュール20の短辺第一方向X1側の端部と、コンデンサ31の短辺第一方向X1側の端部とが、短辺方向Xの位置を揃えて配置されている。
【0051】
本例では、コンデンサ素子31bの短辺方向Xの長さは、バスバーモジュール20の短辺方向Xの長さよりも短い。このため、コンデンサ素子31bとケース5の短辺第二方向X2側の壁面との間には空間Sが生じるため、当該空間Sに直流端子35が配置されるように、コンデンサ31(ケース部31a)が配置されている。
【0052】
3−3.コンデンサ接続端子
本実施形態においては、コンデンサ接続端子33は、バスバー23における短辺第二方向X2側に向って突出する部分に形成されている 具体的には、図5に示すように、バスバー23における短辺第二方向X2に向かって接続支持体21から突出する部分に、コンデンサ接続端子33が一体的に形成されている。本例では、第四バスバー23d及び第五バスバー23eのそれぞれの短辺第二方向X2側の端部に、正極側と負極側の2つのコンデンサ接続端子33が形成されている。
【0053】
バスバーモジュール20のコンデンサ接続端子33は、ベースプレート11に対して短辺第二方向X2側に配置されている。すなわち、コンデンサ接続端子33とベースプレート11とは、直交方向Zに見て重複しないように配置されている。また、本実施形態においては、バスバーモジュール20のコンデンサ接続端子33と、コンデンサ31の直流端子35とは直交方向Zに見て重複するように配置されている。そして、コンデンサ接続端子33と直流端子35とは、それぞれボルトにより接続部材130に締結固定され、当該接続部材130に設けられたバスバーを介して電気的に接続されている。
【0054】
4.回転電機とインバータ装置との配置構成
インバータ装置1を車両Vに搭載した状態を例として、インバータ装置1を回転電機3のケースに固定した状態における回転電機3とインバータ装置1との配置構成を説明する。本実施形態に係る車両用駆動装置62は、図7に示すようにFF(Front Engine
Front Drive)型のハイブリッド車両Vに搭載されており、運転席の前方の駆動力源収容室(エンジンルーム)内において横置きされる内燃機関61に対して車両Vの幅方向に並ぶように隣接した状態で配置されている。
【0055】
車両用駆動装置62に備えられる回転電機3の回転軸3aは、内燃機関61のクランクシャフトと平行に配置され、当該クランクシャフトに駆動連結されている。すなわち、内燃機関61のクランクシャフト及び回転電機3の回転軸3aは、車両Vの幅方向に沿って配置され、車両Vの進行方向に対して直交するように配置されている。図1及び図7に示すように、本実施形態においては、インバータ装置1は、回転電機3の回転軸3aと長方形状領域Rの短辺方向Xとが平行になるように回転電機3のケース上に固定されている。
【0056】
これまでの説明から明らかなように、本実施形態では、ベースプレート11に設けられている回転電機接続端子25は、長辺方向Yに沿った方向となっている。そして、回転電機接続端子25と接続されている接続部材120もまた長辺方向Yに沿った方向となっている。また、本実施形態では、長辺方向Yは、車両Vの進行方向と一致する。このため、回転電機接続端子25は、回転電機3の回転軸3aに対して直交する方向に沿って順に配列される。
【0057】
さらに本実施形態では、回転電機接続端子25は、回転電機3の径方向視で当該回転電機3のコイル(ここでは特に、回転電機3のステータから軸方向に突出する部分であるコイルエンド部)と重複するように配置されている。本例では、回転電機接続端子25は、回転電機3を含む車両用駆動装置62よりも鉛直上方側において、鉛直方向から見た平面視で回転電機3のコイルと重複するように配置されている。これにより、回転電機接続端子25と回転電機3のコイルとを、回転電機3の軸方向の同じ側において当該回転電機3の径方向に沿って直線的に接続できる。よって、回転電機接続端子25とコイルとの電気的な接続を必要最小限の部材を用いて実現でき、インバータ装置1とコイルとの電気的接続構造を簡素化できる。
【0058】
このように、本実施形態に係るインバータ装置1は、車両Vに搭載された状態を考慮してインバータ装置1を構成する各部品の配置位置がそれぞれ最適化されている。これにより、インバータ装置1と回転電機3との電気的接続構造を簡素化するとともに、インバータ装置1の小型化を実現している。
【0059】
〔その他の実施形態〕
最後に、本発明のその他の実施形態について説明する。なお、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用されるものに限られず、矛盾が生じない限り、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0060】
(1)上記の実施形態においては、インバータケース5が、回転電機ケース64とは別体として形成される場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、インバータケース5の少なくとも一部が、回転電機ケース64と一体的に構成されても構わない。
【0061】
(2)上記の実施形態においては、回転電機接続端子25が、長方形状領域Rの長辺方向Yに沿って複数配列される場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、回転電機接続端子25が、長辺方向Yに沿って並んでおらず、短辺方向Xの位置が回転電機接続端子25ごとに前後していても構わない。
【0062】
また、上記の実施形態においては、回転電機3の回転軸3aと長方形状領域Rの短辺方向Xとが平行になるように回転電機ケース64に固定されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、回転軸3aと短辺方向Xとが、ねじれの位置にあっても構わない。
【0063】
また、上記の実施形態においては、回転電機3が三相からなり、当該回転電機3に対応してインバータ装置1に回転電機接続端子25が3つ備えられている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、回転電機3が四相以上からなり、インバータ装置1に回転電機接続端子25が4つ以上備えられていても構わない。
【0064】
(3)上記の実施形態においては、回転電機接続端子25が、ベースプレート11に対して短辺第一方向X1側に配置されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、回転電機接続端子25とベースプレート11とが、直交方向Zに見て重複するように配置されていても構わない。
【0065】
(4)上記の実施形態においては、回転電機接続端子25が、バスバー23における短辺第一方向X1側に向って突出する部分に形成され、コンデンサ接続端子33が、バスバー23における短辺第二方向X2側に向って突出する部分に形成されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、回転電機接続端子25又はコンデンサ接続端子33のいずれか一方又は両方が、バスバー23の短辺方向X側に突出していない部分に形成されていても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0066】
回転電機のケースに固定されるインバータ装置として利用可能である。
【符号の説明】
【0067】
1 :インバータ装置
2 :バッテリ
3 :回転電機
3a :回転軸
5 :インバータケース
6 :インバータモジュール
7 :インバータ回路
11 :ベースプレート(冷却器)
11a :素子載置面(冷却面)
14 :スイッチング素子
20 :バスバーモジュール
21 :接続支持体(保持部材)
23 :バスバー
25 :回転電機接続端子(交流電力端子)
31 :コンデンサ
33 :コンデンサ接続端子(直流電力端子)
64 :回転電機ケース
R :長方形状領域
X :短辺方向
X1 :短辺第一方向
X2 :短辺第二方向
Y :長辺方向
Z :直交方向(冷却面に直交する方向)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電機のケースに固定されるインバータ装置であって、
直流電力と交流電力との間の電力変換を行うための複数のスイッチング素子と、
前記直流電力の平滑用のコンデンサと、
冷却器と、を備え、
前記冷却器の前記回転電機側に設けられた冷却面に接して前記複数のスイッチング素子が配置され、
前記コンデンサが、前記冷却器を挟んで前記複数のスイッチング素子とは反対側に配置され、
前記スイッチング素子が、前記冷却面に沿って当該冷却面の所定の長方形状領域内に配置され、
前記スイッチング素子と前記回転電機とを電気的に接続する交流電力端子が、前記スイッチング素子に対して前記長方形状領域の短辺方向の一方側である短辺第一方向側に配置され、
前記コンデンサが、前記冷却面に直交する方向に見て前記交流電力端子と重複するように配置され、
前記コンデンサと前記スイッチング素子とを電気的に接続する直流電力端子が、前記冷却器に対して前記短辺第一方向側とは反対方向である短辺第二方向側に配置されているインバータ装置。
【請求項2】
前記交流電力端子が、前記長方形状領域の長辺方向に沿って複数配列され、
前記回転電機の回転軸と前記長方形状領域の短辺方向とが平行になるように前記回転電機のケースに固定されている請求項1に記載のインバータ装置。
【請求項3】
前記交流電力端子が、前記冷却器に対して前記短辺第一方向側に配置されている請求項1又は2に記載のインバータ装置。
【請求項4】
前記複数のスイッチング素子に対して前記冷却器とは反対側に、前記複数のスイッチング素子を電気的に接続してインバータ回路を形成するための複数のバスバーを有するバスバーモジュールが配置され、
前記交流電力端子は、前記バスバーにおける前記短辺第一方向側に向って突出する部分に形成され、
前記直流電力端子は、前記バスバーにおける前記短辺第二方向側に向って突出する部分に形成されている請求項1から3のいずれか一項に記載のインバータ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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