説明

インバータ電源装置

【課題】フォワード・コンバータ方式のインバータ電源装置において、主素子のターンオン及びターンオフにおいて損失が発生し、電源装置の小型化の妨げになっていた。
【解決手段】直流電源回路と1次巻線、2次巻線及び1次帰還巻線を設けた変換器と1次巻線の端子に接続した主素子と主素子のエミッタと1次帰還巻線の端子間とに設けた帰還ダイオードと負荷の電圧のフィードバック信号に応じて生成しかつ所定のデッドタイムを有する制御信号を出力するパルス幅変調制御回路と直流電源回路の−側と主素子のエミッタ間とに設けた電力開閉用素子と直流電源回路の+側と電力開閉用素子のコレクタ間とに設けた補助コンデンサと電力開閉用素子に並列に設けた充電用抵抗器と制御信号に応じて電力開閉用素子を制御する電力開閉用駆動回路と制御信号がオンすると主素子を導通しオフすると所定時間後に遮断させる主素子駆動回路とを備えたインバータ電源装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負荷に電力を供給するフォワード・コンバータ方式のインバータ電源装置において、特に直流電圧を主スイッチング素子によって交流電圧に変換する時に発生するスイッチング損失の値を低減する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記補助コンデンサC2の端子間に電源電圧まで充電する。図4は、従来技術のインバータ電源装置の代表的な例である、フォワード・コンバータ方式のスイッチング電源装置の電気接続図である。同図を用いて従来技術の電源装置の動作について説明する。直流電源回路は、三相交流商用電源ACの出力を整流して直流電圧に変換する1次整流回路DR1と、上記直流に変換した電圧を平滑する平滑コンデンサC1とから形成されている。
【0003】
変圧器INTは、1次巻線N1、2次巻線N2及び上記1次巻線N1に密結合した1次帰還巻線N3で形成され、リセット回路は帰還ダイオードD3と上記1次帰還巻線N3とで形成され、上記変圧器の励磁インダクタンスに蓄積された励磁エネルギーを主スイッチング素子TR1のオフの期間中に上記帰還ダイオードD3を介して上記1次還巻線N3に帰還して励磁エネルギーをリセットさせる。
【0004】
図4に示す主スイッチング素子TR1は、変圧器INTの1次巻巻線N1の端子に直列接続し、上記主スイッチング素子TR1が導通のとき、上記変圧器INTの1次巻線N1に入力電圧を印加さえると共に上記変圧器INTの2次巻線N2に誘起された電圧を出力させる。通常、上記フォワード・コンバータ方式のデューティは、通常0.4〜0.5である。
【0005】
出力変換回路は、2次整流ダイオードD4、フライホールダイオードD5、直流リアクトルDCL及び2次平滑コンデンサC3によって形成され、主スイッチング素子TR1が導通のとき変圧器INTの2次巻線N2に誘起された電圧が出力され、上記2次整流ダイオードD4で整流し直流リアクトルDCL及び2次平滑コンデンサC3によって平滑される。上記主スイッチング素子TR1が遮断のとき上記直流リアクトルDCLに蓄えられたエネルギーは、上記フライホールダイオードD5を通して出力側に供給される。
【0006】
出力電圧検出回路VDは、出力電圧を検出して出力電圧検出信号Vdとして出力する。誤差増幅回路ERは、出力電圧設定信号Vrと出力電圧検出信号Vdとを誤差増幅して、フィードバック信号Erを出力する。パルス幅変調制御回路SCは、パルス周波数が一定でパルス幅を変調するパルス幅変調制御を行い、フィードバック信号Erに応じてパルス幅変調制御によって生成されかつ予め定めたデッドタイム時間を有する出力制御信号Scを出力する。
【0007】
図5は、図4示す従来技術のインバータ電源装置の代表的な例であるフォワード・コンバータ方式のスイッチング電源装置の動作を説明する波形タイミング図であり、同図(A)の波形は出力制御信号Scを示し、同図(B)の波形は平滑コンデンサC1の端子電圧Vc1を示し、同図(C)の波形は主スイッチング素子TR1のコレクタ・エミッタ間電圧V1を示し、同図(D)の波形は主スイッチング素子TR1のコレクタ電流Ic1を示す。
【0008】
以下、図5の波形タイミング図を用いて動作について説明する。起動信号Tsが入力されると出力制御回路SCは、フィードバック信号Erに応じて定まる図5(A)に示すパルス幅T1の出力制御信号Scを出力する。同図(A)に示す時刻t=t1において、出力制御信号Scがオンすると主スイッチング素子TR1が導通する。このときに同図(D)に示すコレクタ電流Ic1が流れる。このときターンオンにおいて、同図(C)に示すコレクタ・エミッタ間電圧V1と同図(D)に示すコレクタ電流Ic1との積で生じるターンオン損失が発生する。
【0009】
図5(A)に示す時刻t=t2において、出力制御信号Scがオフすると、主スイッチング素子TR1が遮断し、同図(D)に示すコレクタ電流Ic1は略零にまで減少する。このときターンオフにおいて、同図(C)に示すコレクタ・エミッタ間電圧V1と同図(D)に示すコレクタ電流Ic1との積で生じるターンオフ損失が発生する。
【0010】
また、図5(A)に示す時刻t=t2において、変圧器INTの励磁インダクタンスによって蓄積された励磁エネルギーを帰還ダイオードD3を介して上記変圧器INTの1次帰還巻線N3に帰還させ、上記励磁エネルギーのリセットを開始する。このときの帰還によるリセット電圧は、Ve=(N1/N3)×Vinとなり、主スイッチング素子TR1のコレクタ・エミッタ間の電圧V1は同図(C)に示すVe+Vinとなる。このとき、上記主スイッチング素子TR1のコレクタ・エミッタ間の電圧V1はVe+Vinと高電圧になるために、上記コレクタ・エミッタ間の電圧V1とコレクタ電流Ic1との積で生じるターンオフ損失の値が大きくなる。
【0011】
時刻t=t21において、変圧器INTの励磁エネルギーがリセットされると、主スイッチング素子TR1のコレクタ・エミッタ間電圧V1は、直流電源回路の直流電圧Vinに減少する。
【0012】
上述より、ターンオン時の損失によってかなりの熱が発生し、大形の冷却機構を必要としていた。特許文献1では、主スイッチング素子TR1の損失値を低減するソフトスイッチング技術が開示されている。
【0013】
【特許文献1】特開2003−311408号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述に示す従来技術のフォワード・コンバータ方式のインバータ電源装置において、主スイッチング素子がオンからオフに切り換わるターンオフ時において、上記主スイッチング素子のコレクタ・エミッタ間に図5(C)に示すVe+Vinの高電圧が印加され、上記コレクタ・エミッタ間電圧Ve+Vinとコレクタ電流Ic1との積で生じるターンオン損がリセット電圧Veの加算によって増加する。この大きなターンオン損失によって乗じる発熱を放熱するためには大きな放熱機構を必要とし、インバータ電源装置の小型化の妨げになっていた。本発明は、上記の点に鑑み主スイッチング素子のスイッチング損失(ターンオン損失)を低減したインバータ電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述した課題を解決するために、第1の発明は、直流電圧を出力する直流電源回路と、1次巻線、2次巻線及び上記1次巻線に直列結合した1次帰還巻線で形成され上記直流電圧を負荷に適した交流電圧に変換する変換器と、上記変換器の1次巻線の端子に直列接続された主スイッチング素子と、上記主スイッチング素子のエミッタ側と上記1次帰還巻線の端子との間に設けられた帰還ダイオードと、負荷の電圧又は電流のフィードバック信号に応じたパルス幅変調制御によって生成されかつ予め定めたデッドタイム時間を有する出力制御信号を出力するパルス幅変調制御回路と、上記直流電源回路のマイナス側と上記主スイッチング素子のエミッタ側との間に設けられて上記直流電源回路からの出力を開閉する電力開閉用スイッチング素子と、上記直流電源回路のプラス側と上記電力開閉用スイッチング素子のコレクタ側との間に設けられて上記電力開閉用スイッチング素子の入力電圧と出力電圧とを略同一電圧でターンオンさせる補助コンデンサと、上記電力開閉用スイッチング素子に並列に設けられた充電用抵抗器と、上記出力制御信号のオン及びオフに応じて上記電力開閉用スイッチング素子を導通及び遮断する電力開閉用駆動回路と、上記出力制御信号がオンすると上記主スイッチング素子を導通させ上記出力制御信号がオフし上記補助コンデンサが相当に放電する補助コンデンサ放電時間が経過した後に上記主スイッチング素子を遮断させる主素子駆動回路と、上記変圧器によって変換された交流電圧を負荷に応じた出力に変換する出力変換回路とを備えたことを特徴とするインバータ電源装置である。
【0016】
第2の発明は、上記充電用抵抗器の値は、上記変圧器の励磁インダクタンスに蓄積されたエネルギーによって上記補助コンデンサの電圧が十分充電されないときに上記直流電源回路から上記補助コンデンサに充電する充電電流の値を決定し、上記充電用抵抗器の最大値は上記デッドタイム時間終了時に上記充電電流によって上記補助コンデンサの充電が略完了する値であることを特徴とする請求項1記載のインバータ電源装置である。
【0017】
第3の発明は、上記変換器の漏れインダクタンスの値は、上記主スイッチング素子のターンオン時のコレクタ電流の立ち上り時間を決定し、上記立ち上り時間が遅くなるように上記漏れインダクタンスの値を設定した変圧器であることを特徴とする請求項1記載のインバータ電源装置である。
【発明の効果】
【0018】
第1の発明によれば、フォワード・コンバータ方式のインバータ電源装置において、主スイッチング素子を導通から遮断する前に、電力開閉用スイッチング素子を遮断することによって、直流電源回路からの直流電圧の供給を停止するので、補助コンデンサの端子電圧は放電されて略零電圧になると共に主スイッチング素子のコレクタ・エミッタ間に印加される電圧も略零になる。このとき、上記主スイッチング素子がターンオフすると略零電圧でターンオフが行われてターンオフ損失の値が略零になり、上記ターンオフ損失の減少に応じて発熱が非常に小さくなり放熱機構の小型化が可能となる。
【0019】
第2の発明によれば、上記第1の発明の効果を有し、更に、変圧器の励磁インダクタンスに蓄積されたエネルギーによって補助コンデンサの電圧が十分に充電できないときでも直流電源回路から充電用抵抗器を介して上記補助コンデンサに充電するので、上記励磁インダクタンスに蓄積されたエネルギーが小さいときでも確実に上記補助コンデンサに充電できるので、ターンオン時に電力開閉用スイッチング素子の入力電圧と出力電圧とが略同一電圧でターンオンができターンオン損失が略零になる。
【0020】
第3の発明によれば、主スイッチング素子のターンオン時のコレクタ電流の立ち上り速度(di/dt)は変圧器の漏れインダクタンスの値で決定し、上記変圧器の漏れインダクタンスの値を大きくして上記コレクタ電流の立ち上り速度(di/dt)を遅くすると、上記主スイッチング素子のコレクタ・エミッタ間電圧とコレクタ電流Ic1との積で生じるターンオン損失が減少するが、上記コレクタ電流の立ち下り速度(di/dt)も遅くなりターンオン損失も増加してしまう。しかし、上記第1の発明の効果により、上記コレクタ電流の立ち下り速度(di/dt)を遅くしてもターンオン損失の値が略零になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
[実施の形態1]
本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。図1は本発明のインバータ電源装置の代表的な例であるフォワード・コンバータ方式のスイッチング・レギュレータの電気接続図である。同図を用いて本発明の動作について説明する。
【0022】
図1に示す電力開閉用スイッチング素子TR2は、直流電源回路のマイナス側と主スイッチング素子TR1のエミッタ側との間に設けられて、上記直流電源回路からの出力を開閉する。
【0023】
補助コンデンサC2は、直流電源回路のプラス側と主スイッチング素子TR1のエミッタ側と電力開閉用スイッチング素子TR2のコレクタ側との接点との間に設けて、上記電力開閉用スイッチング素子TR2の入力電圧と出力電圧とを略同一電圧でターンオンさせると共に上記主スイッチング素子TR1のターンオフを略零電圧でターンオフさせる。
【0024】
充電用抵抗器R1は、電力開閉用スイッチング素子TR2と並列に設けられて電源から補助コンデンサを充電する充電電流の値を決定する。
【0025】
主素子駆動回路SRは、出力制御信号Scがオンすると主スイッチング素子TR1を導通させる主素子駆動信号Tr1をオンし、上記出力制御信号Scがオフすると補助コンデンサC2が相当に放電(略零電圧)する補助コンデンサ放電時間が経過した後に上記主素子駆動信号Tr1をオフにして上記主スイッチング素子TR1を遮断させる。
【0026】
電力開閉用駆動回路CRは、出力制御信号Scのオン及びオフに応じて電力開閉用スイッチング素子TR2を導通及び遮断する電力開閉用駆動信号Crを出力する。
【0027】
図2は、図1に示す本発明の実施の形態1の動作を説明する波形タイミング図である。同図(A)の波形は出力制御信号Scを示し、同図(B)の波形は主素子駆動信号Tr1を示し、同図(C)の波形は電力開閉用駆動信号Crを示し、同図(D)の波形は補助コンデンサC2の端子電圧Vc2を示し、同図(E)の波形は主スイッチング素子TR1のコレクタ・エミッタ間電圧V1を示し、同図(F)の波形は主スイッチング素子TR1のコレクタ電流Ic1を示す。同図(G)の波形は電力開閉用スイッチング素子TR2のコレクタ・エミッタ間電圧V2を示し、同図(H)の波形は電力開閉用スイッチング素子TR5のコレクタ電流Ic2を示す。
【0028】
以下、図2の波形タイミング図を用いて動作について説明する。起動信号Tsが入力されるとパルス幅変調制御回路SCは、フィードバック信号Erの値に応じて定まる図2(A)に示すパルス幅T1の出力制御信号Scを出力する。時刻t=t1において、出力制御信号Scが主素子駆動回路SR及び電力開閉用駆動回路CRに入力されると、同図(B)に示す主素子駆動信号Tr1をオンし、主スイッチング素子TR1を導通させると共に同図(C)に示す電力開閉用駆動信号Crもオンし、電力開閉用スイッチング素子TR2を導通する。この時点では既に補助コンデンサC2の端子間は電源電圧に充電されているので、上記電力開閉用スイッチング素子TR2は入力電圧と出力電圧とを略同一電圧でターンオンできターンオン損失が発生しなくなる。
【0029】
時刻t=t2において、出力制御信号Scがオフになると電力開閉用駆動回路CRの電力開閉用駆動信号Crもオフになる。このとき、電力開閉用スイッチング素子TR2のパルス幅T3の期間中において飽和損失が発生する。続いて、上記電力開閉用スイッチング素子TR2が遮断し直流電源回路からの出力の供給が停止する。このとき補助コンデンサC2の端子電圧は電源電圧に充電されており、上記電力開閉用スイッチング素子TR2を遮断しても入力電圧と出力電圧とを略同一電圧でターンオフされてターンオフ損失は発生しない。
【0030】
時刻t=t2において、出力制御信号Scがオフになると、主素子制御回路SRは時限を開始して予め定めた補助コンデンサ放電時間Taが経過した図2(C)に示す時刻t=t3において、主素子駆動信号Tr1をオフし、主スイッチング素子TR1を遮断させる。このときT1+Ta=T2の期間中、上記主スイッチング素子TR1は導通し飽和損失が発生する。
【0031】
補助コンデンサC2は、時刻t=t2において電力開閉用スイッチング素子TR2が遮断すると放電を開始し、補助コンデンサ放電時間Taが経過した時刻t=t3の時点で、上記補助コンデンサC2の端子電圧Vc2が略零電圧になっている。続いて、主素子駆動信号Tr1が遮断するが、このとき、図2(D)に示す上記補助コンデンサC2の端子電圧Vc2が既に略零電圧になっているので、主スイッチング素子TR1は零電圧でターンオフが可能となりターンオフ損失は発生しない。
【0032】
時刻t=t3において、変圧器INTの励磁インダクタンスに蓄積された励磁エネルギーは、帰還ダイオードD3を介して上記変圧器INTの1次帰還巻線N3に帰還させ、上記励磁エネルギーのリセットを開始する。このときの帰還によるリセット電圧は、Ve=(N1/N3)×Vinとなり、上記主スイッチング素子TR1のコレクタ・エミッタ間電圧V1は図2(E)に示すようにVe+Vinとなる。続いて、時刻t=t31近辺において、上記励磁エネルギーのリセットが完了すると、上記主スイッチング素子TR1のコレクタ・エミッタ間電圧V1はVinに減少する。
【0033】
時刻t=t3〜t4の期間は、上記励磁インダクタンスに蓄積されたエネルギーをリセットするためのデッドタイム時間であり、変圧器INTの励磁インダクタンスに蓄積されたエネルギーによって補助コンデンサC2の端子間を電源電圧に充電する充電時間でもある。このとき、上記蓄積されたエネルギーによって、上記変圧器INT、補助コンデンサC2、帰還ダイオードD3の経路で励磁インダクタンスに蓄えられたエネルギーによるリセット電流が発生し、上記補助コンデンサC2が充電される。また、上記励磁インダクタンスに蓄えられたエネルギーが小さく上記補助コンデンサC2に充分に充電できないときに、直流電源回路の平滑コンデンサC1、補助コンデンサC2、充電用抵抗器R1の経路で充電電流が発生し、上記補助コンデンサC2が充電される。
【0034】
時刻t=t4において、出力制御信号Scが主素子駆動回路SR及び電力開閉用駆動回路CRに入力されると、同図(B)に示す主素子駆動信号Tr1をオンし、主スイッチング素子TR1を再度導通させると共に同図(C)に示す電力開閉用駆動信号Crもオンし、電力開閉用スイッチング素子TR2も再度導通する。この時点では既に補助コンデンサC2の端子間は電源電圧に充電されているので、上記電力開閉用スイッチング素子TR2は入力電圧と出力電圧とを略同一電圧でターンオンできターンオン損失が発生しなくなる。
【0035】
時刻t=t5において、出力制御信号Scがオフになると、主素子制御回路SRは時限を開始して補助コンデンサ放電時間Taが経過した図2(C)に示す時刻t=t6において、主素子駆動信号Tr1をオフし、主スイッチング素子TR1を遮断させる。このときT1+Ta=T2の期間中、上記主スイッチング素子TR1は導通し飽和損失が発生する。
【0036】
補助コンデンサC2は、時刻t=t6において電力開閉用スイッチング素子TR2が遮断すると放電を開始し、補助コンデンサ放電時間Taが経過した時刻t6の時点では上記補助コンデンサC2の端子電圧Vc2が略零電圧になっている。続いて、主素子駆動信号Tr1が遮断するが、このとき、図2(D)に示す上記補助コンデンサC2の端子電圧Vc2が既に零電圧になっているので、主スイッチング素子TR1は零電圧でターンオフが可能となりターンオフ損失は発生しない。
【0037】
[実施の形態2]
図1及び図2を用いて実施の形態2の動作について説明する。
【0038】
図2(D)に示す、時刻t=t3において、変圧器INTの励磁インダクタンスに蓄積されたエネルギーによるリセット電流が発生し、補助コンデンサC2の端子間に充電を開始する。このとき、上記蓄積されたエネルギーが大きいときには上記変圧器INT、補助コンデンサC2、帰還ダイオードD3の経路でリセット電流によって上記補助コンデンサC2の端子間に電源電圧まで充電する。
【0039】
しかし、上記励磁インダクタンスに蓄積されたエネルギーが小さいときには、補助コンデンサC2の端子間に電源電圧まで充電されない。このとき、直流電源回路から平滑コンデンサC1、補助コンデンサC2、充電用抵抗器R1の経路で充電電流が発生し、上記充電電流の値は上記充電用抵抗器R1の値で設定でき、図2(D)に示す、時刻t=t4のデッドタイム時間終了時に、上記充電電流によって上記補助コンデンサC2の充電が完了するように上記充電用抵抗器R1の値を設定しているので、上記励磁インダクタンスに蓄積されたエネルギーが小さいときでも上記補助コンデンサC2の端子間に電源電圧が十分充電でき、時刻t=t4のターンオン時に、電力開閉用スイッチング素子TR2の入力電圧と出力電圧とが略同一電圧でターンオンができターンオン損失が略零になる。
【0040】
[実施の形態3]
図3は、実施の形態3の動作を説明する波形タイミング図であり、主スイッチング素子TR1のコレクタ・エミッタ間電圧V1とコレクタ電流Ic1との積で生じるターンオン時の詳細波形タイミング図を示している。
【0041】
図1に示す、変圧器INTの漏れインダクタンスは、主スイッチング素子TR1のターンオン時のコレクタ電流立ち上り速度(di/dt)を決定し、図4に示すように上記変圧器INTの漏れインダクタンスの値が大きくしていくと、上記主スイッチング素子TR1のコレクタ電流Ic1の立ち上り速度(di/dt)は遅くなる。そして、上記主スイッチング素子TR1のコレクタ・エミッタ間電圧V1とコレクタ電流Ic1との積で生じるターンオン損失が減少する
【0042】
また、変圧器INTのインダクタンスの値を大きくしていくと、上記主スイッチング素子TR1のコレクタ電流Ic1の立ち下り速度(di/dt)も遅くなり、上記主スイッチング素子TR1のコレクタ・エミッタ間電圧V1とコレクタ電流Ic1との積で生じるターンオフ損失が逆に増加する。しかし、上述の第1の発明により、補助コンデンサC2は、図2に示す時刻t=t2において、電力開閉用スイッチング素子TR2が遮断すると放電を開始し、補助コンデンサ放電時間Taが経過した時刻t=t3の時点で、上記補助コンデンサC2の端子電圧Vc2が略零電圧になっているので、上記主スイッチング素子TR1のコレクタ・エミッタ間電圧V1も略零電圧になり、主スイッチング素子TR1は零電圧でターンオフが可能となりターンオフ損失は発生しない。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施の形態1のインバータ電源装置の電気接続図である。
【図2】本発明の実施の形態1の動作を説明する波形タイミング図である。
【図3】実施の形態3の動作を説明する波形タイミング図である。
【図4】従来技術のインバータ電源装置の電気接続図である。
【図5】従来技術の動作を説明する波形タイミング図である。
【符号の説明】
【0044】
C1 平滑コンデンサ
C2 補助コンデンサ
C3 2次平滑コンデンサ
CR 電力開閉用駆動回路
D1 第1の逆導通ダイオード
D2 第2の逆導通ダイオード
D3 帰還ダイオード
D4 2次整流ダイオード
D5 フライホールダイオード
DCL 直流リアクトル
DR1 1次整流回路
ER 誤差増幅回路
INT 変圧器
R1 充電用抵抗器
SC パルス幅変調制御回路
SR 主素子駆動回路
TS 起動スイッチ
TR1 主スイッチング素子(主素子)
TR2 電力開閉用スイッチング素子(電力開閉用素子)
VD 出力電圧検出回路
VR 出力電圧設定回路
Cr 電力開閉用駆動信号
Er フィードバック信号
Ts 起動信号
Tr1 主素子駆動信号
Sc 出力制御信号
Vd 出力電圧検出信号
Vr 出力電圧設定信号




【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電圧を出力する直流電源回路と、1次巻線、2次巻線及び前記1次巻線に直列結合した1次帰還巻線で形成され前記直流電圧を負荷に適した交流電圧に変換する変換器と、前記変換器の1次巻線の端子に直列接続された主スイッチング素子と、前記主スイッチング素子のエミッタ側と前記1次帰還巻線の端子との間に設けられた帰還ダイオードと、負荷の電圧又は電流のフィードバック信号に応じたパルス幅変調制御によって生成されかつ予め定めたデッドタイム時間を有する出力制御信号を出力するパルス幅変調制御回路と、前記直流電源回路のマイナス側と前記主スイッチング素子のエミッタ側との間に設けられて前記直流電源回路からの出力を開閉する電力開閉用スイッチング素子と、前記直流電源回路のプラス側と前記電力開閉用スイッチング素子のコレクタ側との間に設けられて前記電力開閉用スイッチング素子の入力電圧と出力電圧とを略同一電圧でターンオンさせる補助コンデンサと、前記電力開閉用スイッチング素子に並列に設けられた充電用抵抗器と、前記出力制御信号のオン及びオフに応じて前記電力開閉用スイッチング素子を導通及び遮断する電力開閉用駆動回路と、前記出力制御信号がオンすると前記主スイッチング素子を導通させ前記出力制御信号がオフし前記補助コンデンサが相当に放電する補助コンデンサ放電時間が経過した後に前記主スイッチング素子を遮断させる主素子駆動回路と、前記変圧器によって変換された交流電圧を負荷に応じた出力に変換する出力変換回路とを備えたことを特徴とするインバータ電源装置。
【請求項2】
前記充電用抵抗器の値は、前記変圧器の励磁インダクタンスに蓄積されたエネルギーによって前記補助コンデンサの電圧が十分充電されないときに前記直流電源回路から前記補助コンデンサに充電する充電電流の値を決定し、前記充電用抵抗器の最大値は前記デッドタイム時間終了時に前記充電電流によって前記補助コンデンサの充電が略完了する値であることを特徴とする請求項1記載のインバータ電源装置。
【請求項3】
前記変換器の漏れインダクタンスの値は、前記主スイッチング素子のターンオン時のコレクタ電流の立ち上り時間を決定し、前記立ち上り時間が遅くなるように前記漏れインダクタンスの値を設定した変圧器であることを特徴とする請求項1記載のインバータ電源装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−340498(P2006−340498A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−162092(P2005−162092)
【出願日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【Fターム(参考)】