インビトロフコシル化により処理された造血性幹細胞およびその使用法
骨髄移植のための臍帯血由来造血幹細胞上のセレクチンリガンドのインビトロでのフコシル化の方法が開示される。この方法において、有効量のα1,3−フコシルトランスフェラーゼ(例えば、α1,3−フコシルトランスフェラーゼVI)が、臍帯血由来造血幹細胞を処理して、非機能的PSGL−1または細胞表面上の他のリガンドを、セレクチン(特に、P−セレクチンまたはE−セレクチン)を結合する機能的形態に変換するためにインビトロで使用される。この処理された細胞は、このような治療の必要がある患者において骨髄を再構成するにあたって、増強された有効性を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願に対する相互参照)
本出願は、米国特許法119条第(e)項の下で、2003年4月18日に出願された米国仮出願番号60/463,778の利益を主張し、この出願は、本明細書中にその全体が参考として明確に援用される。
【0002】
(連邦政府によって援助された研究または開発に関する記載)
本発明のいくつかの局面は、国立衛生研究所により与えられた助成金5P5OHL54502の過程でなされた。従って、政府は、本発明のいくつかの局面において一部の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
本発明は概して、造血性幹細胞の治療上の有用性を改善するために、造血性幹細胞(HSC)を処理する方法に関し、より詳細には、(これに限定されないが、)臍帯血に由来する造血性幹細胞を処理する方法に関連し、従って、造血性幹細胞が処理される。
【0004】
炎症の間、P選択およびE選択は、白血球のローリングおよび血管表面への接着に協同して仲介する(McEver,R.P.Selectins:lectins that initiate cell adhesion under flow.Curr Opin Cell Biol.2002年10月;14:581〜856)。骨髄移植のプロセスにおいて、P−セレクチンおよびE−セレクチンはまた、骨髄にHSCを静脈内注射する自動誘導を仲介する(Frenette,P.S.、Subbarao,S.、Mazo,I.B.、Von Andrian,U.H.、Wagner,D.D.Endothelial selectins and vascular cell adhesion molecule−1 promote hepatopoietic progenitor homing to bone marrow.Proc.Natl.Acad.Sci.USA.1998;95:14423〜14428)。ほとんどの組織において、P−セレクチンおよびE−セレクチンは、アゴニストの刺激の後、内皮細胞で発現されるが、それらは、骨髄内皮細胞上では構成的に発現される。セレクチンは、リガンドとしての糖タンパク質または糖脂質上のα2,3−シアリル化グリカンおよびα1,3−フコシル化グリカン(例えば、シアリルLewisX(sLeX)を使用する。P−セレクチンは、P−セレクチン糖タンパク質リガンド−1(PSGL−1)のN末端領域に結合し、PSGL−1は、チロシン表面およびsLeXでキャップされたO−グリカンを含む。E−セレクチンは、PSGL−1の一つ以上の異なる部位に結合する。E−セレクチンと相互作用するために、PSGL−1は、チロシンの硫酸化を必要としないが、O−グリカン上のsLeXの発現は、結合を増強する。E−セレクチンはまた、HSC上の他のリガンドと相互作用する。HSC上のCD44のイソ型は、インビトロでE−セレクチンに結合することが示されている(Dimitroff,C.J.、Lee,J.Y.、Rafii,S.Fuhlbrigge,R.C.、Sackstein,R.CD44 is major E−selectin ligand on human hematopoietic progenitor cells.J.Cell Biol.2001年6月11日;153:1277〜1286)。HSC上のE−セレクチンに対する別の潜在的なリガンドは、E−セレクチンリガンド−1(ESL−1)である(Wild,M.K.、Huang,M.C.、Schulze−Horsel,U.、van Der Merwe,P.A.、Vestweber,D.Affinity,kinetics,and thermodynamics of E−selectin binding to E−selectin ligand−1.J Biol Chem.2001年8月24日;276:31602〜31612)。これらの糖タンパク質リガンドのそれぞれは、sLeX構造を保有すると考えられる。
【0005】
一人の個体から収集された造血性幹細胞は、静脈注入の後、別の個体の骨髄に移植され得る。このアプローチは、種々の血液疾患(例えば、白血病)の処置に広く使用されている(Thomas,E.D.History,current results,and research in marrow transplantation.Perspectives Biol.Med.38:230〜237、1995)。臨床的に、ヒトHSCは、三つの異なる源:骨髄、流動後の成体末梢血および送達後の臍帯から得られた臍帯血から得られる。500万より多い無関係の有志の骨髄ドナーが世界中で登録されているが、ヒト白血球抗原(HLA)が完全にマッチする無関係のドナーを見つけることは、HLAの多型性に起因して多くの患者にとって問題として残っている。骨髄および成体抹消血と比較して、臍帯血は、特に、細胞の広範かつ迅速な利用可能性、ならびに急性および慢性の対宿主性移植片病(GVHD)の危険度を低減させるので、ドナーとレシピエントとの間のHLA同一性に対する必要条件があまりストリンジェントではないという点においていくつかの潜在的な利点を有する(Rocha,V.ら、Comparison of outocomes of unrelated bone marrow and umbilical cord blood transplants in children with acute leukemia.Blood.97:2962〜71、2001)。骨髄もしくは成体末梢血由来のHSCではなく、臍帯血HSCを使用する移植の潜在的な利点としては、以下が挙げられる:(1)大きな潜在的なドナープール;(2)迅速な利用可能性(臍帯血は、予めスクリーニングされ、試験されるので);(3)収集努力を、代表される人種背景の子供が生まれる病院に集中することによって、より大きな人種の多様性が、バンクに獲得され得ること;(4)ドナーに対する危険性または不快感が減少すること;(5)ウイルスによる汚染が稀であること;および(6)完全ではない組織適合性のレシピエントに対してさえも、対宿主性移植片病(ドナーの細胞が、患者の器官および組織を攻撃する)の危険性が減少すること。従って、HSC由来の臍帯血は、近年骨髄移植にますます使用されるようになっている。
【0006】
移植環境において、HSC自動誘導として規定されるプロセスを移植し、そして増殖するための、静脈内に注入されたHSCは、特に骨髄中に噴出する。自動誘導は、インビボおよびインビトロの両方で広く研究され、HSCと骨髄の内皮との間を相互作用する接着分子に依存すると考えられている。セレクチンは、Ca++依存性(C型)動物レクチン内のN末端炭水化物識別ドメインに関連するN末端炭水化物識別ドメインを含む接着分子の一群である。活性化された血小板および内皮細胞で発現されるP−セレクチン、および活性化された内皮細胞で発現されるE−セレクチンは、白血球およびHSCの複合糖質リガンドに結合する。最も良く特徴付けられた糖タンパク質リガンドは、多数シアル酸付加され、フコシル化されたO結合オリゴ糖である、PSGL−1である。PSGL−1は、白血球およびHSCで発現される。PSGL−1欠損マウスを用いた研究は、PSGL−1が白血球のPセレクチンへの係留およびローリングを仲介し、血流中のE−セレクチンへの係留を支持する。PSGL−1はまた、L−セレクチンに結合し、炎症を起こした内皮細胞表面上をローリングする白血球を増幅する白血球−白血球の相互作用を開始する。ヒトPSGL−1において、P−セレクチンおよびL−セレクチン結合部位は、特定の分枝したフコシル化コア−2 O−グリカンに結合するスレオニンの近くに、3つのチロシン硫酸塩残基を含むペプチド配列を含む(McEver,R.P.、Cummings,R.D.Role of PSGL−1 binding to selectins in leukocyte recruitment. J.Clin Invest.100:S97〜103.1997;R.P.McEver:Selectins:Ligands that initiate cell adhesion under flow. Curr.Op.in Cell Biol.14:581〜586、2002)。フコース部分は、合成糖スルホペプチドを用いるインビトロアッセイにより測定した場合、P−セレクチン結合に不可欠である。フコシル化は、α1,3−フコシルトランスフェラーゼのファミリーによって触媒される。中でもα1,3−フコシルトランスフェラーゼIV(FT−IV)およびα1,3−フコシルトランスフェラーゼVII(FT−VII)は、主にヒト白血球において発現される。これらの酵素は、ドナー(例えば、GDP−フコース)から、Gal−GlcNAc配列中のGlcNAcへのα1,3結合の受容体へのフコース残基の転移を触媒する。FT−IVおよびFT−VIIは両方ともsLex構造(NeuAcα2,3Galβ1,4[Fucα1,3]GlcNAcβ1−R)を形成するのに必要であるフコース付加を行なう。ヒトPSGL−1のN末端アミノ酸配列中の特定のスレオニンに結合したコア−2Oグリカン上のsLeXは、P−セレクチンに対する結合に重要である。
【0007】
HSCは、造血性幹細胞の異なる系統(例えば、赤血球、骨髄性細胞、リンパ球および血小板)へ分化する能力を有する。ヒトHSCは、表面糖タンパク質CD34を発現し、これは、HSC同定および分離に日常的に使用される。このようなヒトCD34+細胞(CD34抗原を発現する細胞)は、造血性成熟の種々の程度の前駆体の異種集団を代表する。ヒトCD34+細胞上の別の表面タンパク質CD38の発現の非存在(「−」)または低い発現(「low」)は、CD34+細胞の初期の部分集団の代理マーカーになると考えられる。従って、CD34+CD38low/−部分集団の細胞は、骨髄細胞または成体末梢血由来の全CD34+細胞の約10〜20%を含み、多重前駆体および幹細胞活性(移植能を含む)が高度に富化されている。とりわけ、臍帯血HSCの約30%は、CD34+CD38low/−である。しかし、CD34+CD38low/−成体末梢血幹細胞とは違って、臍帯血CD34+CD38low/−HSCは、マウス骨髄に戻ることが少ないことが公知であり、このことは、主にヒトHSCのマウスの微小血管内皮上のP−セレクチンとの相互作用に依存する(Hidalgo,A、Weiss,L.A.およびFrenette,P.S.)。ヒトCD34+細胞の骨髄内皮との相互作用を仲介する機能的なセレクチンリガンドは、出生後に増強される。接着経路は、造血前駆体細胞が骨髄へ戻るのを仲介する(J.Clin Invest 110:559〜569、2002)。フローサイトメトリー分析は、この戻りの欠損が、HSCに由来するこれらのCD34+CD38low/−臍帯血上に発現された非機能性のPSGL−1から生じることを示唆している。従って、CD34+CD38low/−HSCのP−セレクチンに結合する能力の欠損は、少なくとも一部は、臍帯血HSC移植に伴なう血小板移植および骨髄移植の遅れを説明する。移植のための臍帯血HSCの使用は、主に子供に制限されている(子供は、移植のために必要とする細胞がより少ない)が、これは、へその緒から単離されたHSCの限定された量およびそのHSCの戻る能力の欠損のためである。
【0008】
HSCの戻る能力の欠損を矯正する発明は、造血幹細胞の源としての臍帯血の能力を有意に向上し、それによって急性および慢性の移植片対宿主病に対する危険性を低減し、骨髄再構成の成功をもたらす。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の要旨)
本発明は、一実施形態において、HSCを処理する方法を企図し、この方法は、一定量のHSCまたはHSCの集団を提供する工程であって、このHSCの内の少なくともある量が、表面タンパク質CD38の発現を欠如するか、またはその発現が減少している工程、ならびに一定量のHSCまたはHSCの集団をインビトロで、α1,3フコシルトランスフェラーゼおよびフコースドナーで処理する工程であって、処理されたHSCが、P−セレクチンおよびE−セレクチンへの結合を増強する工程を包含する。さらに、HSCは代表的に、P−セレクチン糖タンパク質リガンド−1(PSGL−1)および/またはP−セレクチンもしくはE−セレクチンに有効に結合しない他のセレクチンリガンドを含むとして特徴付けられる。より詳細には、PSGL−1またはCD34+CD38low/−HSC上に存在する他のセレクチンリガンドは、フコシル化グリカン、特にO−グリカンを欠如するか、またはほとんど有さず、そして、例えば、NeuAcα2,3Galβ1,4GlcNAcを含むコア−2 O−グリカンを有し、GlcNAcへのα1,3結合中のフコースを欠如するPSGL−1を有する。HSCは、本明細書中に記載されるフコシル化の前の未処理状態では、骨髄の戻る能力が低減している。本発明の一実施形態において、HSCは、ヒト臍帯血に由来するが、フコシル化処理後の骨髄へ戻る能力が増強されているとして特徴付けられる限り、骨髄または末梢血に由来し得る。本明細書中に企図される方法において、α1,3フコシルトランスフェラーゼは、例えば、α1,3フコシルトランスフェラーゼIV、α1,3フコシルトランスフェラーゼVI、またはα1,3フコシルトランスフェラーゼVII、またはこれらの組合せであり得る。フコースドナーは、例えば、GDP−フコースであり得る。
【0010】
本発明はさらに、一実施形態において、ヒトHSCを処理する組成物を企図し、この組成物は、表面タンパク質CD38の発現を欠如するか、または発現の減少した(CD38low/−)臍帯血由来のCD34+HSCを含む。ここで、このHSCは、P−セレクチンまたはE−セレクチンに結合し得る。HSCは、保存または患者への投与のための薬学的に受容可能なキャリア、希釈剤またはビヒクル中に処理され得る。本発明はさらに、処置方法に関し、この方法は、血液疾患、または処置のためにHSCの移植を必要とし、その移植から利益を受ける他の疾患を有する被験体にHSCの有効量を投与する工程を包含する。
【0011】
上記のように、本明細書中に記載されるフコシル化処理の後、処理されたCD34+HSC(CD34+CD38low/−HSCを含む)は、未処理のCD34+HSCと比較してP−セレクチンまたはE−セレクチンに対する結合が増強した。P−セレクチン(またはE−セレクチン)に対する増強された結合は、P−セレクチン(または、E−セレクチン、それぞれ)結合アッセイにおいて、(以下に規定する)所定の蛍光閾値より大きい蛍光を有する、処理されたHSCの少なくとも10%と規定される。別の実施形態において、処理したHSCの少なくとも25%は、所定の蛍光閾値を上回る。別の実施形態において、処理したHSCの少なくとも50%は、所定の蛍光閾値を上回る。別の実施形態において、処理したHSCの少なくとも75%は、所定の蛍光閾値を上回る。別の実施形態において、処理したHSCの少なくとも90%は、所定の蛍光閾値を上回る。別の実施形態において、処理したHSCの少なくとも95%は、所定の蛍光閾値を上回る。
【0012】
本発明はさらに、一定量のHSCまたはHSCの集団を提供する工程および一定量のHSCをインビトロでα1,3フコシルトランスフェラーゼおよびフコシルドナーで処理する工程を包含する方法によって製造された血液製剤を企図し、そのHSCの少なくとも一部は、CD34+であり、タンパク質CD38の発現を欠如するか、または減少している。こここで、処理したHSCの大部分は、本明細書中で記載されるとおりP−セレクチン(またはE−セレクチン)に対する結合が増強されている。一定量のHSCは、好ましくは、臍帯血に由来するが、骨髄または成人の末梢血から入手され得る。一定量のHSCまたはHScの集団は、血液または骨髄の一部もしくは分画されていないサンプルを含み得る。
【0013】
(発明の詳細な説明)
本発明は、1つの実施形態において、HSCを処理する方法を意図し、この方法は、表面結合タンパク質CD38の発現を欠くかまたはCD38の減少した発現を有するHSCのある量もしくは集団を提供する工程、およびそのHSCの量もしくは集団をインビトロでα1,3フコシルトランスフェラーゼおよびフコースドナーで処理する工程を包含し、ここで、そのように処理されるHSCは、P−セレクチンまたはE−セレクチンに対する結合が処理していないHSCを超えて高められる。さらに、処理していないHSCは、代表的には、P−セレクチンまたはE−セレクチンに十分に結合しないPSGL−1または他のセレクチンリガンドを主に含むと特徴付けられる。CD38low/−HSCに生じるPSGL−1または他のセレクチンリガンドは、フコシル化グリカン(例えば、O−グリカン)を欠くかまたはフコシル化グリカンの減少した数を有し、そして例えば、PSGL−1(これは、NeuAcα2,3Galβ1,4GlcNAcを含むコアの2個のO−グリカンを有するが、GlcNAcに対するα1,3結合においてフコースを欠く)を有し得る。CD38low/−HSCは、フコシル化前のその処理されない状態において、低下した骨髄ホーミング能を有する。HSCの骨髄ホーミング能を高めるためのさらなるフコシル化を必要とするかもしくはそのようなフコシル化から利益を受けると特徴付けられる限りは、HSCは、骨髄または末梢血由来であり得るが、好ましくは、HSCは、ヒト臍帯血(CB)由来である。本明細書中で意図される方法において、上記α1,3フコシルトランスフェラーゼは、例えば、α1,3フコシルトランスフェラーゼIV、α1,3フコシルトランスフェラーゼVI、またはα1,3フコシルトランスフェラーゼVIIであり得る。上記フコースドナーは、例えば、GDP−フコースであり得る。
【0014】
本発明は、1つの実施形態において、処理されたヒトHSCの組成物を意図し、その組成物は、表面タンパク質CD38(CD38low/−)の発現を欠くかまたはその発現が減少している臍帯血由来のHSCを含み、ここで、処理されたHSCは、PSGL−1または適切にフコシル化された他のセレクチンリガンド(例えば、シアリルLewisxを含む)を含み、そしてP−セレクチン(もしくはE−セレクチン)に結合し得る。処理されたHSCは、保管または患者への投与のために、薬学的に受容可能なキャリアまたはビヒクル中に置かれ得る。本発明はさらに、処置方法に関し、その方法は、有効量の処理されたHSCを、血液障害または処置のためにHSCを必要とする他の疾患を有する被験体に投与する工程を包含する。
【0015】
1つの実施形態において、処理されたHSCの組成物は、臍帯血に由来するヒトHSCの集団を含み、その集団のうちの少なくとも一部分は、P−セレクチン(もしくはE−セレクチン)に対して増大した結合を有するCD34+CD38low/−HSCと特徴付けられる。P−セレクチン(もしくはE−セレクチン)に対する増大した結合は、処理されたHSCのうち少なくとも10%が、P−セレクチン結合アッセイ(それぞれ、もしくはE−セレクチン結合アッセイ)において、所定の蛍光閾値よりも強い蛍光を有すると規定される。別の実施形態において、処理されたHSCのうち少なくとも25%が、所定の蛍光閾値を上回る。別の実施形態において、処理されたHSCのうち少なくとも50%が、所定の蛍光閾値を上回る。別の実施形態において、処理されたHSCのうち少なくとも75%が、所定の蛍光閾値を上回る。別の実施形態において、処理されたHSCのうち少なくとも90%が、所定の蛍光閾値を上回る。別の実施形態において、処理されたHSCのうち少なくとも95%が、所定の蛍光閾値を上回る。ヒトHSCの組成物は、好ましくは、保管または患者への投与のために、薬学的に受容可能なキャリアまたはビヒクル中に置かれる。
【0016】
所定の蛍光閾値は、1つの実施形態において、まず、通常の臍帯血(健常な満期胎児に由来する臍帯血)の単核画分から、少なくとも100個のCD34+CD38low/−HSCを含む細胞のサンプルを得ることによって決定される。このHSCのコントロール(ベースライン)サンプルは、本明細書中の他で記載されるP−セレクチン結合アッセイ(もしくはE−セレクチン結合アッセイ)を使用してか、あるいは当該分野で公知の任意の他のP−セレクチン蛍光結合アッセイ(それぞれ、もしくはE−セレクチン結合アッセイ)によってアッセイされる。P−セレクチン(もしくはE−セレクチン)結合蛍光レベルは、コントロール(ベースライン)サンンプル中のCD34+CD38low/−HSCについて測定される。1つの実施形態において、蛍光値は、コントロールサンンプル中のCD34+CD38low/−HSCのうちの少なくとも95%のP−セレクチン(もしくはE−セレクチン)結合蛍光レベルを上回る値が選択される。選択された蛍光値は、処理された(すなわち、フコシル化された)HSCのP−セレクチン(もしくはE−セレクチン)結合蛍光と比較される所定の蛍光閾値として示される。
【0017】
本発明はさらに、HSCのある量もしくは集団を提供する工程であって、そのHSCのうちの少なくとも一部分がCD34+でありタンパク質CD38の発現を欠くかまたはそのCD38の減少した発現を有する、工程、ならびにそのHSCの量をインビトロでα1,3フコシルトランスフェラーゼおよびフコースドナーで処理する工程を包含する上記方法によって生成される血液産物を意図し、ここで、その処理されたHSCのうちの大部分は、P−セレクチン(もしくはE−セレクチン)に結合する。そのHSCの量は、臍帯血由来であり得るが、骨髄または成体の末梢血由来であり得る。
【0018】
概して、本発明は、方法を意図し、ここで、非機能性PSGL−1もしくは最適以下の機能性PSGL−1あるいは臍帯血HSCで発現される他のセレクチンリガンドは、インビトロα1,3−フコシル化技術によって改変されて、ホーミング欠損が正され、このことが、骨髄移植における使用を改善する。
【0019】
上記のように、CD34+臍帯血HSCは、CD38+(CD38に対してポジティブ)またはCD38low/−(CD38の発現が減少したかもしくは発現しない)と定義され得る。CD38low/−臍帯血HSCは、上記のような蛍光技術を使用して同定され得る。臍帯血HSCは、それに結合したフルオロフォアを有するCD34結合抗体、およびそれに結合した異なるフルオロフォアを有するCD38結合抗体で処理される。CD34+細胞は、照射の際に抗CD34抗体フルオロフォアから蛍光を発するHSCと定義される。CD38low/−HSCは、CD34+HSCのうち30%が、抗CD38結合抗体から測定される場合に最も低い蛍光を有するCD34+HSC、または(本明細書中の他で記載されるような蛍光フローサイトメーターによって測定される場合)50ユニット以下の抗CD38結合抗体蛍光レベルを有するCD34+HSCと定義される。1つの実施形態において、抗CD34結合抗体フルオロフォアは、FITC(フルオレセインイソチオシアネート)であり、一方、抗CD38結合抗体フルオロフォアは、フィコエリトリン(PE)である。
【0020】
すでに説明されたように、CD34+細胞は、PSGL−1または他のセレクチンリガンド、さらに有意な量の始原CD34+細胞(これは、CD38では少ないかまたは存在しない(例えば、始原CD34+細胞は全CD34+臍帯血細胞のうちの約30%を含む)を発現し、P−セレクチン(もしくはE−セレクチン)に結合しないか、またはごく少量のP−セレクチン(それぞれ、もしくはE−セレクチン)に結合する。PSGL−1は、CD34+細胞を含むほぼすべての白血球で発現されるホモダイマーのムチンである。機能性(すなわち、P−セレクチンもしくはE−セレクチンに結合し得る)であるために、PSGL−1は、それにsLex基の形成をもたらすいくつかの翻訳後修飾(α1,3−フコシル化を含む)を必要とする。不十分なα1,3−フコシル化は、例えば、未処理のT細胞が血管セレクチンと相互作用する能力に障害を生じる。本発明において、臍帯血由来のHSCがP−セレクチンもしくはE−セレクチンに対して結合不能であることは、PSGL−1または他のセレクチンリガンドの不十分なα1,3−フコシル化に起因することが発見されている。従って、本発明の基となることは、インビトロでのα1,3−フコシルトランスフェラーゼ(例えば、FT−VI)(これはまた、sLex構造の合成を触媒する)によるCD34+細胞の処理が、PSGL−1または他のセレクチンリガンドのフコシル化を増大し、それによって、HSCのホーミング欠損を正すということである。
【0021】
α1,3結合におけるフコースをGlcNAcに転換し得るフコシルトランスフェラーゼは、当該分野で周知である。いくつかが市販されており、例えば、Calbiochemから市販されている。さらに、少なくとも5つの異なる型のα1,3フコシルトランスフェラーゼ(FTIII−V)が、ヒトゲノムによってコードされる。これらとしては、以下が挙げられる:ルイス酵素(FTIII)(これは、フコースをα(1,3)−Galβ4GlcNAcまたはα(1,4)−GAlβ3GlcNAcに転換し得る(Kukowska−Latalloら、Genes Dev.4:1288、1990));FTIV(これは、α(1,3)結合(これは、好ましいシアリル化前駆体ではない)を形成する(Goelzら、Cell 63;1349、1989;Loweら、J.Biol.Chem.266;17467、1991));FTV(Westonら、J.Biol.Chem.267:4152、1992a)およびFTVI(Westonら、J.Biol.Chem.267:24575、1992b)(これは、α(1,3)結合を形成し、シアリル化前駆体もしくは非シアリル化前駆体のいずれかをフコシル化し得る)、ならびにFTVII(Sasakiら、J.Biol.Chem.269:14730、1994;Natsukaら、J.Biol.Chem.269:16789、1994)(これは、シアリル化前駆体のみをフコシル化し得る)。
【0022】
FTIIIは、GDB135717によってコードされる;FTIVは、GDB131563によってコードされる;FTVは、GDB131644によってコードされる;FTVIは、GDB135180によってコードされる;そしてFTVIIは、GDB373982によってコードされる。6番目のα1,3フコシルトランスフェラーゼ(FTIV)は、GDB9958145(ゲノムデータベース登録ID番号は、GDB(TM)Human Genome Database Tronto(Ontario、Canada):The Hospital for Sick Children,Baltimore(Maryland,USA):Johns Hopkins University,1990−から入手可能である。インターネット:UPL http://www.gdb.org/から入手可能である)によってコードされる。本発明はさらに、例えば、米国特許第6,399,337号および同第6,461,835号(これらは、本明細書により明示的にその全体が本明細書中に参考として援用される)に示されるような、当業者が入手可能でありかつ公知の他の非ヒトα1,3フコシルトランスフェラーゼを使用することを意図する。
【0023】
すでに述べたように、ヒトHSCは、α1,3フコシルトランスフェラーゼによる処理のために、例えば、臍帯血、末梢血、または骨髄の供給源中の他の細胞からの分離によって得られ得る。種々の技術が、CD34+CD38low/−幹細胞を単独で、またはCD34+CD38+HSCと組み合わせて別個に得るために利用され得る。モノクローナル抗体は、分化の特定の細胞系統および/または段階に関連するマーカー(表面膜タンパク質)を同定するために特に有用である。抗体は、粗製物分離用に固体支持体に付着され得る。利用される分離技術は、回収されるべき画分の生存度の保持を最大限にすべきである。利用される特定の技術は、分離の有効性、細胞毒性の方法論、実行の容易さおよび速度、ならびに洗練された機器および/または技術的技能の必要性に依存する。
【0024】
分離のための手順としては、抗体コーティングした磁気ビーズを使用する磁気分離、および固体マトリクス(例えば、プレート)に接着した抗体を用いる「パニング」、または他の簡便な技術が挙げられ得る。正確な分離を提供する技術としては、種々の精巧の程度を有する蛍光細胞分析分離装置(例えば、複数の有色チャネル、ローアングル(low angle)および鈍角の光散乱検出チャネルおよびインピーダンスチャネル)が挙げられる。
【0025】
簡便には、抗体は、直接分離を可能にする磁気ビーズ;支持体に結合したアビジンまたはストレプトアビジンビオチンと共に除去され得る;蛍光細胞分析分離装置(FACS)と共に使用され得る蛍光色素などのような、マーカーと結合体化され得、特定の細胞型の分離を容易にし得る。残りの細胞の生存に対して過度に有害でない任意の技術が採用され得る。
【0026】
1つの実施形態において、成熟な細胞マーカーを欠失するHSCが実質的に富化され得、ここで、次いで、この細胞が、FACSまたは高特異性を有する他の形態学により分離され得る。特に簡便な、多色分析がFACSと共に使用され得る。細胞は、特定の抗原についての染色レベルに基づいて分離され得る。多色分析において用途を見出し得る蛍光色素としては、例えば、フィコビリンタンパク質(例えば、フィコエリスリン)およびアロヂコシアニン、フルオレセインおよびテキサスレッドが挙げられる。あるいは、HSCは、例えば、臍帯血、末梢血液または骨髄からの全単核細胞を使用して、未分画の血液サンプルまたは骨髄サンプルから所望のHSCを分離する前に、フコシルトランシフェラーゼを用いて処理され得る。
【0027】
1つの実施形態において、CD34+CD38low/−細胞を含むCD34+HSCは、細胞組成物に遊離のフコシルトランスフェラーゼを添加することによって処理され得、ここで、フコシル化されたCD34+CD38low/−を含む最終血液産物はまた、細胞を処置するために使用されたフコシルトランスフェラーゼを含む。別の実施形態において、HSCは、支持体(例えば、磁気ビーズ、または、当業者に公知の任意の他の支持体)に結合されたフコシルトランスフェラーゼを使用して処理され得、この処理プロセスが完了した後に、この細胞組成物から分離され得る。
【0028】
(方法および結果)
臍帯血サンプルを、Institutional Review Board of the Oklahoma Medical Research Foundation(OMRF)によって認可されたプロトコールに従って、通常の満期普通分娩から得た。1回の分娩あたり70〜100mlの臍帯血を採取した。クエン酸ナトリウムを、抗凝固薬として使用した。臍帯血を採取するための当該分野で公知の、任意の適切な方法(例えば、米国特許第6,440,010号(その全体が本明細書において参考として明白に援用される)に示される方法)が適切である。血液サンプルの上清内のCD34+細胞を、CD34単離ミニMACSキット(Miltenyi Biotec,Bergisch Gladbach,Germany)を用いて富化した。臍帯血をまず、当量の0.9%塩化ナトリウム中の6% デキストラン70(McGaw,Inc.,Irvine,CA)と混合した。2〜3時間の沈降の後、上清内の細胞を取り除き、2mM EDTAおよび0.5% ヒト血清アルブミン(HSA)を含有するHankの平衡化塩溶液(HBSS,Cellgro)中で1度洗浄した。汚染された赤血球を、FACS溶解溶液(BD Biosciences,San Jose,CA)中で溶解した。低密度単核細胞(MNC)を、Ficoll−Hypaque(d=1.077g/ml)にて250gで遠心分離した後に分離した。CD34+細胞を、製造業者の指示書に従ってCD34単離ミニMACSキットを使用して、MNC分画から精製した。単離されたCD34+細胞の精製は、フローサイトメトリーによって試験した場合、約96%であった(図1)。次いで、以下の実験を実施した。
【0029】
(臍帯血から単離したCD34+細胞はPSGL−1を発現し、CD34+細胞が異種性であることのフローサイトメトリーによる立証)
この目的のために、三色染色を使用した。ミニMACS選別により富化した細胞を、ヒトIgGを用いてFcレセプターをブロッキングした後に、FITCに結合体化した抗CD34モノクローナル抗体(mAb、Miltenyi Biotec製のクローンAC136)、PEに結合体化した抗CD38 mAb(BD Pharminge,San Diego,CA)およびCy5に結合体化した抗PSGL−1モノクローナル抗体(BD Pharminge,San Diego,CA)と共にインキュベートした。洗浄した後、細胞を、FACScan(Becton Dickinson)上のフローサイトメトリーにより分析した。CellQuestプログラムを使用してデータを回収した。光散乱ゲート化事象を、蛍光強度の対数スケールにプロットした。実質的に全てのCD34+細胞がPSGL−1を発現し(図2A)、CD34+細胞の約30%がCD38の低い発現を有するか、または発現を有さず(図2B)、これは、始原前駆細胞の下位集団を表す。さらに、P−セレクチンに結合しないHSCの約25%は、CD34+およびCD38low/−である(図3)。これらの結果は、既存のデータを確証する。
【0030】
(精製CD34+細胞についてのPSGL−1のインビトロα1−3−フコシル化)
PSGL−1またはCD34+細胞上の他のセレクチンリガンドに結合するコア2 O−グリカン上にフコースを導入するために、2〜4×106個の細胞を、0.5mLのHBSS/1% HSA中の1mM グアノシン二リン酸(GDP)−フコース(Calbiochem)、20mU/mL α1−3−フコシルトランスフェラーゼVI(FT−VI)(Calbiochem)、および10mMのMnCl2を用いて、5% CO2を含有する雰囲気下、37℃にて40分間処理した。この処理により、最大P−セレクチン結合により測定されるように、CD34+細胞におけるPSGL−1の最適なフコシル化を生じ、さらに、プロピジウムヨージド染色により試験した場合に、CD34+細胞に対して最小の毒性を生じる(図4)。
【0031】
(CD34+細胞におけるフコシル化エピトープの測定、およびインビトロα1,3−フコシル化が、CD34+細胞にフコシル化されたエピトープを作製することの、フローサイトメトリーによる検証)
シアリルLewisxは、フコシル化エピトープである。抗sLexmAbであるHECA 452(ラットIgM、American Type Culture Collegtion[ATCC]製のハイブリドーマ)と共にインキュベートすることによって、本発明者らは、CD34+細胞においてsLexエピトープを試験した。結合したmAbを、ラットIgM(Caltag)に対してFITC結合体化ヤギF(ab)’2フラグメントを用いて検出した。図5Aにより示されるように、臍帯血から得られたCD34+細胞の26%が、低いフコシル化エピトープを発現するか、または発現しない。これらのデータは、CD34+細胞のサブセットが、適切にフコシル化されていないことを示す。インビトロα1,3−フコシル化が、CD34+細胞においてフコシル化エピトープを作製し得るかどうかを調べるために、本発明者らは、上記の方法を使用して、Mnの存在下で、CD34+細胞をFT−VIおよびGDP−フコースを用いて処理した後に、HECA 452で細胞を染色した。本発明者らは、HSCA 452染色により示されるように、インビトロα1,3−フコシル化が、臍帯血由来のCD34+細胞におけるsLexエピトープを劇的に増加したことを見出した(図5B)。
【0032】
(P−セレクチン結合−結果)
(臍帯血由来のCD34+細胞における可溶性P−セレクチンの結合特性の検証)
P−セレクチン結合アッセイについて、臍帯血由来のCD34+細胞を、Fcレセプターをブロッキングした後、抗CD34−PEおよびヒト血小板から単離したP−セレクチンと共にインキュベートした。P−セレクチンの結合を、FITC標識したS12(ヒトP−セレクチンに対するブロッキングしていないmAb)を用いて検出した。細胞のインキュベーションを、4℃にて20分間実施した。系列滴定後のP−セレクチンの飽和量を実験において使用した(図6)。コントロール実験において、細胞のP−セレクチンインキュベーションを、G1(P−セレクチンに対するブロッキングmAb)、PL1(PSGL−1に対するブロッキングmAb)、またはCa2+依存性のセレクチンリガンド相互作用を排除する10mM EDTAの存在下で実施した。フローサイトメトリー分析は、CD34+細胞(主にCD38low/−細胞を含む)の約27%が、P−セレクチンに結合しなかったことを示し、このことは、以前の刊行されたデータと一致する(図7A)(Hidalgo,A.,Weiss,L.A.,およびFrenette,P.S.Functional selectin ligands mediating human CD34+cell interaction with bone marrow endothelium are enhanced postnatally.Adhesion pathways mediating hematopoietic progenitor cell homing to bone marrow.J.Clin.Invest.110:559−569.2002)。図7Cは、P−セレクチンが、CD34+細胞上のPSGL−1に特異的に結合することを示した。これは、G1抗体およびPL1抗体、ならびにEDTAが、結合を無効にしたためである。
【0033】
(CD34+細胞表面のインビトロα1,3−フコシル化が、P−セレクチンに対する結合を増加することの、フローサイトメトリーによる実証)
臍帯血由来のCD34+細胞を、まず、上記のようにGDP−フコースおよびFT−VIで処理し、次いで、抗CD34−PEおよびP−セレクチンの両方で染色した。P−セレクチンの結合を、FITC標識したmAb S12で検出した。外来性FT−VIでの処理が、ヒトP−セレクチンに対するCD34+細胞の結合を有意に増加した(図7B)。P−セレクチンに対する増強された結合は、α1,3−フコシル化の後のCD34+細胞における機能的PSGL−1の増加に起因した。なぜならば、この結合は、抗体G1およびPL1によって、そしてEDTAによってブロッキングされたからである(図7D)。インビトロα1,3−フコシル化についての最適な条件を見出すために、種々のインキュベーション時間およびFT−VI、GDP−フコースおよびMnの濃度を試験した(データ示さず)。条件(上掲)を、最大のP−セレクチン結合によって測定されるように、CD34+細胞におけるPSGL−1の最適なフコシル化を生じた全ての実験について選択し(図7B)、さらに、プロピジウムヨージド染色によって試験されるように、CD34+細胞に対して最小の毒性を生じた(図4)。
【0034】
(インビトロα1,3−フコシル化が、生理学的せん断流れにおいてP−セレクチンに対するCD34+細胞の接着を増加することの実証)
臍帯血由来のCD34+細胞を、さらなる処理のために2つの群に分けた。一方の群を、上記のようにGDP−フコースおよびFT−VIと共にインキュベートし、もう一方の群を、GDP−フコースなしのFT−VIで処理した(偽処理コントロール)。2群の細胞のP−セレクチン結合能を、以下に記載されるようなインビトロフローチャンバローリングアッセイシステム(flow chamber rolling assay system)を使用して比較した。ヒト血小板から単離したP−セレクチンを、平行プレートフローチャンバ内に固定した。125I標識した抗P−セレクチンmAb S12の結合により測定した場合に、145部位/μm2のP−セレクチン部位濃度を使用した。偽処理、またはFTVI処理のCD34+細胞(Hankの緩衝化塩溶液および0.5%ヒトアルブミン中106個/ml)を、1dyn/cm2の壁せん断応力の下でP−セレクチンについて灌流した。ローリング細胞の蓄積数を、画像分析システムに接続されたビデオ顕微鏡システムを用いて測定した。EDTA、ならびに抗体G1およびPL1がローリングを無効にし、ヒト血清アルブミンのみでコーティングしたプレート上ではローリングが見られなかったので、CD34+細胞は、ヒトP−セレクチン−PSGL−1相互作用により、Ca++依存性の様式でローリングした(図8)。偽処理CD34+細胞と比較して、約3倍多いFT−VI処理CD34+細胞が、P−セレクチンについてローリングした。
【0035】
(E−セレクチン結合−結果)
(CD由来のHSCに対する可溶性E−セレクチンの結合特性)
マウス可溶性E−セレクチン/ヒトIgMキメラ(E−セレクチン/IgM)を、流体相のE−セレクチン結合アッセイのために使用した。CD45/ヒトIgMキメラをネガティブコントロールとして使用した。細胞を、Fcレセプターをブロッキングした後に、E−セレクチン/IgMと共にインキュベートした。次いで、E−セレクチンの結合を、FITC標識したヤギ抗ヒトIgMポリクローナル抗体を用いて検出した。この細胞をまた、PE標識した抗CD34 mAb(BD Pharmingen,San Diego,CA)で染色した。インキュベーションを、4℃にて20分間実施した。系列滴定の後に、飽和量のE−セレクチンを実験に使用した。コントロール実験において、染色を、9A9(E−セレクチンに対するブロッキングmAb)、または10mM EDTA(Ca2+依存性セレクチンリガンドの相互作用を排除する)の存在下で実施した。フローサイトメトリー分析は、約25%のCD34+HSCがE−セレクチンに結合しなかったことを示した(図9A)。図9Cは、CD34+HSCのE−セレクチンとの相互作用が特異的であったことを示し、これは、mAb 9A9およびEDTAがこの相互作用を無効にしたからである。
【0036】
(フローサイトメトリーにより測定した場合に、インビトロα1,3−フコシル化が、E−セレクチンに対するCD34+HSCの結合を増加する)
CB由来のCD34+HSCを、2つの群に分けた。一方の群(2〜4×106個の細胞)を、0.5ml HBSS/1% HAS中の1mM GDP−フコース、20mU/ml FTVI(Calbiochem)および10mM MnCl2と共に、5% CO2を含有するインキュベーター内で、37℃にて40分間インキュベートした。もう一方の群を、GDP−フコースなしのFT−VIと共にインキュベートした(偽処理コントロール)。次いで、細胞を、抗CD34およびE−セレクチン/IgMの両方で染色した。外来性のα1,3−フコシルトランスフェラーゼ処理の後、CD34+HSCのE−セレクチンに対する結合は、75%から95%まで増加した(図9Aおよび9B)。E−セレクチンに対する増加した結合は、mAb 9A9およびEDTAにより評価したように、特異的であった(図9D)。図9Cおよび9Dに見られるAb 9A9およびEDTAのブロッキングの後の残りの結合は、ネガティブコントロールであるCD45/IgMで染色された細胞が、類似の特性を有した(データ示さず)ので、非特異的であった。
【0037】
(インビトロα1,3−フコシル化は、生理学的せん断力の下でのHSCのE−セレクチンに対する接着を増加させる)
上記のように、HSCを2つの群に分け、フコシル化した。2つの群の細胞のE−セレクチン結合能を、インビトロフローチャンバローリングシステムを使用して比較した。簡単には、可溶性ヒトE−セレクチンを、平行プレートフローチャンバ内に固定した。125I標識された抗ヒトE−セレクチンmAb ES1の結合により測定した場合、200部位/μm2のE−セレクチン部位濃度を使用した。偽処理またはFT−VI処理したHSC(HBSSおよび0.5% HSA中106個/ml)を、異なるせん断力の下、E−セレクチンについて灌流した。ローリング細胞の蓄積数およびせん断応力を、画像分析システムに連結されたビデオ顕微鏡システムを用いて測定した。試験したせん断力において、偽処理HSCと比較して、約2〜3倍多いFT−VI処理HSCが、E−セレクチンについてローリングした(図10Aおよび10B)。FT−VI処理細胞はまた、より低い速度でローリングし、せん断力による剥離により抵抗性であった(図10Cおよび10D)。HSCのE−セレクチンとの相互作用は、特異的であった。これは、mAb ES1がローリングを無効にし、そしてHSAのみでコーティングしたプレートにおいては、ローリング見られなかったからである(図10B)。PSGL−1に対するP−セレクチンの結合をブロックするPL1は、E−セレクチンについてのHSCのローリングに影響を与えず(図10B)、これは、E−セレクチンが、PSGL−1についての他の部位、または他の細胞表面リガンドに対する結合によってローリングを媒介することを確認する。
【0038】
これらの結果は、インビトロα1,3−フコシル化が、流れの下で、P−セレクチンおよびE−セレクチンに対する、生理学的に関連するCD34+細胞のローリング接着を増強することを示唆する。
【0039】
(インビボ実施例)
(フコシル化HSCは、インビボで、骨髄において増強された移植を示す)
(方法)
インビトロ分析によって、GDP−フコースおよびFTVIで処理したCB HSCが、流体相におけるP−セレクチンおよびE−セレクチンの有意な増加を示し、異なる壁せん断力の下で、フコシル化なしのCB HSCと比較して、P−セレクチンおよびE−セレクチンでコーティングした表面上でよりよくローリングしたことが、本明細書において実証された。フコシル化CB HSCはさらに、インビボで、骨髄への改善されたホーミングおよび骨髄における改善された移植を有することが、本明細書において示される。非肥満糖尿病重症複合免疫不全(NOD/SCID)マウスは、ヒトのHSCのインビボ研究のための異種移植レシピエントとして十分に確立されている。本発明者らは、フコシル化されたかもしくはフコシル化されていないCB HSCを移植されたNOD/SCIDマウスにおいて、ヒト造血系移植を比較した。
【0040】
雄性および雌性の病原体を有さない(NOD/SCID)マウス(The Jackson Laboratory)(4〜5週齢)を、レシピエントとして使用した。このマウスを、2〜4時間照射し(230rad)、その後、それぞれ、FTVI処理(フコシル化)または偽処理(FTVI処理したが、GDP−フコースなし)したCB HSC(300μl中8×106個/マウス)を静脈内注射した。コントロールマウスには、各々CB HSCなしの300μlの生理食塩水を与えた。
【0041】
移植の6週間後、マウスを繁殖させて、屠殺した。両大腿から骨髄細胞を単離し、10mmメッシュフィルタを通して濾過し、細胞片を除去した。赤血球を溶解した後、各マウスからの骨髄有核細胞を1×106個/mlの濃度で、HBSS中に再懸濁した。フローサイトメトリーおよびヒト造血前駆体アッセイ(human hematopoietic progenitor assay)の両方により、移植を分析した。フローサイトメトリーについては、骨髄有核細胞を、Cy5結合体化抗ヒトCD45 mAb(BD Pharmingen,San Diego,CA)と共にインキュベートした。
【0042】
ヒト造血前駆体アッセイについては、35mm培養皿あたり1×105個の骨髄有核細胞をMethoCult H4433培地(Stem Cell Technologyies,Vancouver,Canada)中に二連でプレートし、37℃、5% CO2にてインキュベートした。全コロニー、バースト形成単位−赤血球(BFU−E)、コロニー形成単位−顆粒球/マクロファージ(CFU−GM)、およびコロニー形成単位−顆粒球/巨核球/マクロファージ(CFU−GEMM)を、培養の14日目に計数し、分析した。コロニーのヒト起源を、それぞれ、骨髄細胞についてヒトCD45に対するmAbで、赤血球についてグリコホリンAに対するmAbで染色した異なるコロニーから回収した細胞のフローサイトメトリー分析によって確認した。
【0043】
(結果)
フローサイトメトリーにより分析したように、フコシル化CB HSCを与えた、照射したNOD/SCIDマウスは、偽処理CB HSCを受けたマウスよりも、骨髄および末梢血におて、2〜3倍多いCD45陽性のヒト由来の造血細胞を有した(図11A)。フコシル化細胞を移植したマウスの骨髄におけるヒト造血前駆体の有意に改善された移植は、BFU−E、CFU−GMおよびCFU−GEMMの増加により実証されるように、多重系統であった(図11B)。注目すべきなのは、CB HSC由来のコロニーの大きさが、いずれのレシピエント群においても有意に異ならず(データは示さず)、このことは、フコシル化が、CB前駆体の増殖能を変化しなかったことを示す。従って、このインビボ研究は、FTVI処理したCB HSCが、偽処理細胞が有するよりも、NOD/SCIDマウスの骨髄に帰巣し、骨髄内に移植するより高い能力を有することを実証する。これらの結果は、本発明のHSCが、ヒトにおいて増強された骨髄移植を有することを示す。
【0044】
(有用性)
本明細書中に記載されるフコシル化HSCは、種々の方法で使用され得る。例えば、これらの細胞は、ナイーブ(原始的)であるので、これらは、照射された被験体および/または化学療法に供された個体の骨髄を完全に再構築するために使用され得る。
【0045】
とりわけ、本発明による造血幹細胞の投与により処置され得る症状は、白血病およびリンパ腫(例えば、慢性骨髄性(骨髄形成)白血病(CML)、若年性慢性骨髄性白血病(JCML)、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ急性白血病(ALL)、悪性リンパ腫、多発性骨髄種、再生不良性重症貧血(aplastic anemia gravis)、骨髄異形成症候群(MDS)および自己免疫疾患)である。
【0046】
本発明の処理されたHSCで処置され得る他の疾患は、以下である:Gunther病、ハンター症候群、ハーラー症候群、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、ヴィスコット−オールドリッチ症候群、X連鎖リンパ増殖症候群、および固形組織腫瘍(例えば、乳癌)。
【0047】
これらの処置において、これらの処置されたHSCの集団が、骨髄が切除両方により破壊された患者に与えられ得る。
【0048】
本発明の細胞は、例えば、静脈内注射によって、または、当業者に周知の任意の他の適切な方法によって投与され得る。疾患または状態に罹患する宿主を処置するための方法において、HSCの治療有効量とは、この疾患もしくは状態の症状または効果を減少または排除するのに十分な量である。宿主に投与される治療有効量は、個体を基準に決定され、少なくとも部分的に、個体の大きさ、処置される症状の重篤度、および考えられる結果の考慮に基づく。こうして、治療有効量は、慣用的な実験程度を使用して、このような実務を使用する当業者によって決定され得る。HSC移植に関する詳細な情報については、「Hemopoietic Stem Cell Transplantation,Its Foundation and Clinical Practice」[Modern Medicine,Special Issue,53,2,1998]が参考になり得、この文書に与えられる説明は、その全体が、明白に本明細書中に参考として援用される。
【0049】
投与されるフコシル化幹細胞の投薬量の調製において、種々の薬学的に受容可能なキャリアが利用され得る。キャリア、希釈剤またはビヒクルは、生理学的に受容可能なpHを得るための緩衝化剤(例えば、リン酸緩衝化生理食塩水)および/または、生理学的に受容可能であり、そして/もしくは使用に安全な他の物質を含み得る。一般に、ヒトにおける静脈内注射用の物質は、当業者に利用可能な、Food and Drug Administrationにより確立された規定を満たすべきである。薬学的に受容可能なキャリアは、例えば、1容量:1容量比で、処理されたHSC組成物と組合せられ得る。このキャリアは、例えば、M199またはRPMI 1640倍値であり得る。さらに、上記投薬形態の調製において、今日共通して使用される種々の注入物がまた使用され得る。1つの実施形態において、HSCの移植において従来使用される投与量が使用され得る。この投薬量は、例えば、患者の体重1kgあたり約.01〜10×108個の処理されたMNC(処置されたCD38low/−HSCまたは本明細書中のどこかに規定された、他の処置されたHSCを含む)であり得るか、または、適切な場合は、これより多くても少なくてもよい。
【0050】
本明細書中に記載されるように、本発明は、HSCを処理する方法を企図し、この方法は、一定量のHSC(少なくともこのHSCの一部は、表面タンパク質CD38の発現を欠失しているか、または、この発現が減少している)を提供する工程、およびインビトロにおいて、この量のHSCを、α1,3−フコシルトランスフェラーゼおよびフコースドナーで処理して、処理されたHSCを形成する工程を包含し、この処理されたHSCは、P−セレクチンまたはE−セレクチンに対して増強された結合を有する。1つの実施形態において、表面タンパク質CD38の発現を欠失するか、またはこの発現が減少しているHSCの一部は、骨髄帰巣能が減少している。HSCは、ヒトの臍帯血に由来し得、そして、ヒトの臍帯血の未分画量であり得る。あるいは、HSCは、末梢血に由来し得、そして、末梢血の未分画量であり得る。あるいは、HSCは、骨髄に由来し得、そして、骨髄の未分画量であり得る。表面タンパク質CD38の発現を欠失するか、またはこの発現が減少しているHSCの一部は、PSGL−1またはフコシル化されていないグリカンもしくはフコシル化されていないO−グリカンを有する他の構造を含む。この方法において、表面タンパク質CD38の発現を欠失するか、またはこの発現が減少しているHSCの一部は、NeuAcα2,3 Gal β1,4 GIcNAcを含むコア−2 O−グリカンを有するPSGL−1を含み得、これは、GlcNAcに対するα1,3結合においてフコースを欠くか、または、適切なフコシル化を欠く他のグリカンを含む。1つの実施形態において、少なくとも50%の処理されたHSCが、P−セレクチン結合アッセイにおいて所定の蛍光閾値を超えるP−セレクチン結合蛍光、またはE−セレクチン結合アッセイ(本明細書中のどこかに説明される)において所定の蛍光閾値を超えるE−セレクチン結合蛍光を有する。この方法において、α1,3−フコシルトランスフェラーゼは、α1,3−フコシルトランスフェラーゼIV、またはα1,3−フコシルトランスフェラーゼVIIであり得る。さらに、フコースドナーは、GDP−フコースであり得る。
【0051】
本発明はさらに、臍帯血由来のCD34+HSCを含み、表面タンパク質CD38の発現を欠失するか、またはこの発現が減少しているHSCおよび薬学的に受容可能なキャリアの組成物を企図する。ここで、少なくとも10%のCD34+HSCが、P−セレクチン(またはE−セレクチン)に結合する。この組成物においては、代替的な実施形態において、少なくとも25%、50%、75%、90%または95%のCD34+HSCがP−セレクチン(またはE−セレクチン)に結合する。
【0052】
本発明はまた、造血系疾患、または、HSCの移植を必要とする他の状態を有する被験体を、本明細書中に記載される処理されたHSCの組成物を、このような造血系疾患、または、HSCの移植を必要とする他の状態を有する被験体に投与することによって処置することを企図する。この造血系疾患は、例えば、急性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、脊髄形成異常、慢性骨髄性白血病、若年性慢性骨髄性白血病または鎌状赤血球貧血であり得る。
【0053】
さらに、本発明は、CD34+CD38low/−として特徴付けられる細胞を含むヒトHSCの集団を含む血液製剤を企図し、ここで、少なくとも10%のCD34+CD38low/−が、P−セレクチンまたはE−セレクチンに結合する。この血液製剤においては、代替的な実施形態において、少なくとも25%、50%、75%、90%または95%(またはこの範囲内の任意の百分率)のCD34+CD38low/−が、P−セレクチンまたはE−セレクチンに結合する。この血液製剤において、ヒトHSCは、ヒト臍帯血、成人の末梢血、または骨髄に由来し得る。この血液製剤はまた、薬学的に受容可能なキャリアまたはビヒクルを含み得、そしてまた、遊離のフコシルトランスフェラーゼまたは支持体に結合したフコシルトランスフェラーゼを含み得る。
【0054】
本発明はまた、一定量のHSC(少なくともこのHSCの一部は、表面タンパク質CD38の発現を欠失するか、またはこの発現が減少している)を提供する工程、およびインビトロにて、α1,3−フコシルトランスフェラーゼおよびフコースドナーを用いて一定量のHSCを処理し、処理されたHSCを生成する工程を包含する方法によって製造された血液製剤を企図し、ここで、処理されたHSCの少なくとも10%が、P−セレクチンまたはE−セレクチンに結合する。代替的な実施形態において、この血液製剤の、少なくとも25%、50%、75%、90%または95%(または、この範囲に含まれる任意の百分率)の処理されたHSCが、P−セレクチンまたはE−セレクチンに結合する。血液製剤において、この一定量のHSCは、ヒトの臍帯血、末梢血または骨髄に由来し得る。
【0055】
本発明は、種々の実施形態と組合せて、その局面がより完全に理解および認識され得るように上に記載されているが、これらの特定の実施形態に本発明が制限されることは意図されない。対照的に、添付の特許請求の範囲により規定される本発明の範囲内に包含され得る、全ての代替物、改変および等価物を網羅することが意図される。従って、先の実施例は、本発明の実施を例示するのに役立ち、示される特定のものが、一例として、かつ、本発明の例示的な議論の目的のためだけのものであり、そして、最も有用であり、手順の説明、ならびに本発明の原理および概念の面を容易に理解すると考えられるものを提供するために提示されることが理解される。
【0056】
本明細書中に引用される全ての参考文献、特許、および特許出願は、その全体が参考として、本明細書中に援用される。
【0057】
本明細書中に記載される種々の組成物および生成物の構成および操作において、または、本明細書中に記載される方法の工程、もしくは工程の順序において、本明細書中に記載される本発明の精神および範囲から逸脱することなく、変更がなされ得る。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】A:ヒト臍帯血から単離された単核細胞(MNC)のCD34抗体染色。B:CD34濃縮後のCD34抗体染色。C:CD34+細胞の同位体コントロールIgG染色。軸は、フローサイトメトリーにより測定された場合の蛍光強度である。
【図2】A:臍帯血発現PSGL−1から単離されたCD34+細胞。B:CD34+細胞は、約30%のCD34+CD38low/−細胞(始原前駆体(primitive progenitor))と約65%のCD34+CD38+細胞とからなる。軸は、フローサイトメトリーにより測定された場合の蛍光強度である。
【図3】A:CD34+細胞は、P−セレクチン結合細胞(R2)または非P−セレクチン結合細胞(R1)としてゲートされている。B:R1領域に由来する24%±5%のCD34+細胞は、CD38の発現がまったくないか減少している。この結果は、4回の独立のフローサイトメトリー分析の代表であり、非P−セレクチン結合HSCの有意な数がCD34+およびCD38low/−であることを示す。
【図4】ヨウ化プロピジウム(PI)染色により測定されるとおりのインビトロフコシル化後の細胞の生存度。A:非処置細胞。B:擬処理(sham−treated)細胞。C:FT−VI処理細胞。軸は、フローサイトメトリーにより測定された場合の蛍光強度である。
【図5】A:臍帯血から得られたCD34+細胞の15%が、sLe特異的モノクローナル抗体HECA 452で染色されるように、低フコシル化または非フコシル化エピトープを発現する。B:FT−VIおよびGDP−フコースによるインビトロα1,3−フコシル化は、臍帯血由来のCD34+細胞におけるsLexエピトープを劇的に増加させる。軸は、フローサイトメトリーにより測定された場合の蛍光強度である。
【図6】P−セクレチンの飽和量を決定するための、フローサイトメトリーによるCD34+HSC対する可溶性P−セレクチン結合の滴定。
【図7】臍帯血由来のCD34+細胞に対する飽和濃度の可溶性P−セレクチンの結合。A:非処理の臍帯血由来のCD34+細胞の約27%は、P−セレクチンに結合しないかまたはP−セレクチンに対して低レベルの結合を有する。B:インビトロα1,3−フコシル化は、P−セレクチン結合についてネガティブまたは低くあるCD34+細胞を、P−セレクチン結合についてポジティブまたは高くある細胞に転換する。CおよびD:P−セレクチンは、P−セレクチン(G1)およびPSGL−1(PL1)に対してモノクローナル抗体をブロックすることによって確認されるように、臍帯血由来のCD34+細胞においてPSGL−1に結合する。EDTAはまた、結合を阻害し、これは、PSGL−1に対するP−セレクチン結合を支持するためのCa2+の要求と一致する。軸は、フローサイトメトリーにより測定された場合の蛍光強度である。
【図8】剪断力下での、ヒト血清アルブミン(HSA)またはヒトP−セレクチンにおけるCD34+細胞の回転。GDP−フコースおよびFT−VIによる臍帯血由来のCD34+細胞の処理は、ずれ流動中のP−セレクチンにおいて細胞回転を有意に増加する。
【図9】臍帯血由来のCD34+細胞に対する、可飽和濃度の可溶性E−セレクチンの結合。A:非処理の臍帯血由来のCD34+細胞の約24%は、E−セレクチンに結合しないかまたは低レベルの結合を有する。B:インビトロα1,3−フコシル化は、E−セレクチン結合についてネガティブかまたは低くあるCD34+細胞を、E−セレクチンについてポジティブかつ高くある細胞に転換する。CおよびD:E−セレクチンは、E−セレクチンに対してモノクローナル抗体をブロックすることにより確認されるように、臍帯血由来のCD34+細胞に結合する(9A9)。EDTAもまた、結合を阻害する。軸は、フローサイトメトリーにより測定された場合の蛍光強度である。この結果は、3回の独立の測定の代表である。
【図10】インビトロフコシル化は、剪断力下で、ヒト可溶性E−セレクチンにおけるCD34+細胞回転を有意に増加させる。AおよびB:GDP−フコースおよびFT−VIによるCB CD34+細胞の処理は、様々な剪断力下で、E−セレクチンにおいて回転する細胞の数を有意に増加させる。回転は、それらの細胞がヒト血清アルブミン(HSA)において回転せず、回転がES1、ヒトE−セレクチンに対するmAbによって特異的にブロックされたがPL1、mAb(PSGL−1のP−セレクチン結合部位に結合する)によってブッロクされなかったように、E−セレクチン依存性である。CおよびD:フコシル化CD34+細胞は、剪断力に対してより耐性であり、非処理CD34+細胞よりもよりゆっくりと回る。このデータは、4回の独立の実験の平均±SDを表す。
【図11】フコシル化CB HSCは、致死照射したNOD/SCIDマウスの骨髄における移植の増強を示す。8×106回の擬処理またはFTVI処理CB細胞の移植6週間後のマウスに由来する骨髄(BM)または末梢血(PB)が、ヒト由来の造血移植について分析された。(A)ヒト汎白血球マーカーCD45に対してmAbで染色したBMおよびPB細胞のフローサイトメトリー分析は、フコシル化CB細胞を移植したマウスにおけるヒト由来の細胞の倍加を示した。(B)フコシル化せずにCB細胞を移植したマウスと比較すると、ヒト造血性前駆体アッセイによって示されるように、フコシル化したCB細胞を移植したマウスに由来するBM細胞は、有意に多くのヒトコロニー形成前駆体(これにはBFU−E、CFU−GM、およびCFU−GEMMが挙げられる)を含む。生理食塩水のみを注射したコントロールマウスの骨髄は、コロニーを産生せず、このアッセイの特異性が確認された。
【技術分野】
【0001】
(関連出願に対する相互参照)
本出願は、米国特許法119条第(e)項の下で、2003年4月18日に出願された米国仮出願番号60/463,778の利益を主張し、この出願は、本明細書中にその全体が参考として明確に援用される。
【0002】
(連邦政府によって援助された研究または開発に関する記載)
本発明のいくつかの局面は、国立衛生研究所により与えられた助成金5P5OHL54502の過程でなされた。従って、政府は、本発明のいくつかの局面において一部の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
本発明は概して、造血性幹細胞の治療上の有用性を改善するために、造血性幹細胞(HSC)を処理する方法に関し、より詳細には、(これに限定されないが、)臍帯血に由来する造血性幹細胞を処理する方法に関連し、従って、造血性幹細胞が処理される。
【0004】
炎症の間、P選択およびE選択は、白血球のローリングおよび血管表面への接着に協同して仲介する(McEver,R.P.Selectins:lectins that initiate cell adhesion under flow.Curr Opin Cell Biol.2002年10月;14:581〜856)。骨髄移植のプロセスにおいて、P−セレクチンおよびE−セレクチンはまた、骨髄にHSCを静脈内注射する自動誘導を仲介する(Frenette,P.S.、Subbarao,S.、Mazo,I.B.、Von Andrian,U.H.、Wagner,D.D.Endothelial selectins and vascular cell adhesion molecule−1 promote hepatopoietic progenitor homing to bone marrow.Proc.Natl.Acad.Sci.USA.1998;95:14423〜14428)。ほとんどの組織において、P−セレクチンおよびE−セレクチンは、アゴニストの刺激の後、内皮細胞で発現されるが、それらは、骨髄内皮細胞上では構成的に発現される。セレクチンは、リガンドとしての糖タンパク質または糖脂質上のα2,3−シアリル化グリカンおよびα1,3−フコシル化グリカン(例えば、シアリルLewisX(sLeX)を使用する。P−セレクチンは、P−セレクチン糖タンパク質リガンド−1(PSGL−1)のN末端領域に結合し、PSGL−1は、チロシン表面およびsLeXでキャップされたO−グリカンを含む。E−セレクチンは、PSGL−1の一つ以上の異なる部位に結合する。E−セレクチンと相互作用するために、PSGL−1は、チロシンの硫酸化を必要としないが、O−グリカン上のsLeXの発現は、結合を増強する。E−セレクチンはまた、HSC上の他のリガンドと相互作用する。HSC上のCD44のイソ型は、インビトロでE−セレクチンに結合することが示されている(Dimitroff,C.J.、Lee,J.Y.、Rafii,S.Fuhlbrigge,R.C.、Sackstein,R.CD44 is major E−selectin ligand on human hematopoietic progenitor cells.J.Cell Biol.2001年6月11日;153:1277〜1286)。HSC上のE−セレクチンに対する別の潜在的なリガンドは、E−セレクチンリガンド−1(ESL−1)である(Wild,M.K.、Huang,M.C.、Schulze−Horsel,U.、van Der Merwe,P.A.、Vestweber,D.Affinity,kinetics,and thermodynamics of E−selectin binding to E−selectin ligand−1.J Biol Chem.2001年8月24日;276:31602〜31612)。これらの糖タンパク質リガンドのそれぞれは、sLeX構造を保有すると考えられる。
【0005】
一人の個体から収集された造血性幹細胞は、静脈注入の後、別の個体の骨髄に移植され得る。このアプローチは、種々の血液疾患(例えば、白血病)の処置に広く使用されている(Thomas,E.D.History,current results,and research in marrow transplantation.Perspectives Biol.Med.38:230〜237、1995)。臨床的に、ヒトHSCは、三つの異なる源:骨髄、流動後の成体末梢血および送達後の臍帯から得られた臍帯血から得られる。500万より多い無関係の有志の骨髄ドナーが世界中で登録されているが、ヒト白血球抗原(HLA)が完全にマッチする無関係のドナーを見つけることは、HLAの多型性に起因して多くの患者にとって問題として残っている。骨髄および成体抹消血と比較して、臍帯血は、特に、細胞の広範かつ迅速な利用可能性、ならびに急性および慢性の対宿主性移植片病(GVHD)の危険度を低減させるので、ドナーとレシピエントとの間のHLA同一性に対する必要条件があまりストリンジェントではないという点においていくつかの潜在的な利点を有する(Rocha,V.ら、Comparison of outocomes of unrelated bone marrow and umbilical cord blood transplants in children with acute leukemia.Blood.97:2962〜71、2001)。骨髄もしくは成体末梢血由来のHSCではなく、臍帯血HSCを使用する移植の潜在的な利点としては、以下が挙げられる:(1)大きな潜在的なドナープール;(2)迅速な利用可能性(臍帯血は、予めスクリーニングされ、試験されるので);(3)収集努力を、代表される人種背景の子供が生まれる病院に集中することによって、より大きな人種の多様性が、バンクに獲得され得ること;(4)ドナーに対する危険性または不快感が減少すること;(5)ウイルスによる汚染が稀であること;および(6)完全ではない組織適合性のレシピエントに対してさえも、対宿主性移植片病(ドナーの細胞が、患者の器官および組織を攻撃する)の危険性が減少すること。従って、HSC由来の臍帯血は、近年骨髄移植にますます使用されるようになっている。
【0006】
移植環境において、HSC自動誘導として規定されるプロセスを移植し、そして増殖するための、静脈内に注入されたHSCは、特に骨髄中に噴出する。自動誘導は、インビボおよびインビトロの両方で広く研究され、HSCと骨髄の内皮との間を相互作用する接着分子に依存すると考えられている。セレクチンは、Ca++依存性(C型)動物レクチン内のN末端炭水化物識別ドメインに関連するN末端炭水化物識別ドメインを含む接着分子の一群である。活性化された血小板および内皮細胞で発現されるP−セレクチン、および活性化された内皮細胞で発現されるE−セレクチンは、白血球およびHSCの複合糖質リガンドに結合する。最も良く特徴付けられた糖タンパク質リガンドは、多数シアル酸付加され、フコシル化されたO結合オリゴ糖である、PSGL−1である。PSGL−1は、白血球およびHSCで発現される。PSGL−1欠損マウスを用いた研究は、PSGL−1が白血球のPセレクチンへの係留およびローリングを仲介し、血流中のE−セレクチンへの係留を支持する。PSGL−1はまた、L−セレクチンに結合し、炎症を起こした内皮細胞表面上をローリングする白血球を増幅する白血球−白血球の相互作用を開始する。ヒトPSGL−1において、P−セレクチンおよびL−セレクチン結合部位は、特定の分枝したフコシル化コア−2 O−グリカンに結合するスレオニンの近くに、3つのチロシン硫酸塩残基を含むペプチド配列を含む(McEver,R.P.、Cummings,R.D.Role of PSGL−1 binding to selectins in leukocyte recruitment. J.Clin Invest.100:S97〜103.1997;R.P.McEver:Selectins:Ligands that initiate cell adhesion under flow. Curr.Op.in Cell Biol.14:581〜586、2002)。フコース部分は、合成糖スルホペプチドを用いるインビトロアッセイにより測定した場合、P−セレクチン結合に不可欠である。フコシル化は、α1,3−フコシルトランスフェラーゼのファミリーによって触媒される。中でもα1,3−フコシルトランスフェラーゼIV(FT−IV)およびα1,3−フコシルトランスフェラーゼVII(FT−VII)は、主にヒト白血球において発現される。これらの酵素は、ドナー(例えば、GDP−フコース)から、Gal−GlcNAc配列中のGlcNAcへのα1,3結合の受容体へのフコース残基の転移を触媒する。FT−IVおよびFT−VIIは両方ともsLex構造(NeuAcα2,3Galβ1,4[Fucα1,3]GlcNAcβ1−R)を形成するのに必要であるフコース付加を行なう。ヒトPSGL−1のN末端アミノ酸配列中の特定のスレオニンに結合したコア−2Oグリカン上のsLeXは、P−セレクチンに対する結合に重要である。
【0007】
HSCは、造血性幹細胞の異なる系統(例えば、赤血球、骨髄性細胞、リンパ球および血小板)へ分化する能力を有する。ヒトHSCは、表面糖タンパク質CD34を発現し、これは、HSC同定および分離に日常的に使用される。このようなヒトCD34+細胞(CD34抗原を発現する細胞)は、造血性成熟の種々の程度の前駆体の異種集団を代表する。ヒトCD34+細胞上の別の表面タンパク質CD38の発現の非存在(「−」)または低い発現(「low」)は、CD34+細胞の初期の部分集団の代理マーカーになると考えられる。従って、CD34+CD38low/−部分集団の細胞は、骨髄細胞または成体末梢血由来の全CD34+細胞の約10〜20%を含み、多重前駆体および幹細胞活性(移植能を含む)が高度に富化されている。とりわけ、臍帯血HSCの約30%は、CD34+CD38low/−である。しかし、CD34+CD38low/−成体末梢血幹細胞とは違って、臍帯血CD34+CD38low/−HSCは、マウス骨髄に戻ることが少ないことが公知であり、このことは、主にヒトHSCのマウスの微小血管内皮上のP−セレクチンとの相互作用に依存する(Hidalgo,A、Weiss,L.A.およびFrenette,P.S.)。ヒトCD34+細胞の骨髄内皮との相互作用を仲介する機能的なセレクチンリガンドは、出生後に増強される。接着経路は、造血前駆体細胞が骨髄へ戻るのを仲介する(J.Clin Invest 110:559〜569、2002)。フローサイトメトリー分析は、この戻りの欠損が、HSCに由来するこれらのCD34+CD38low/−臍帯血上に発現された非機能性のPSGL−1から生じることを示唆している。従って、CD34+CD38low/−HSCのP−セレクチンに結合する能力の欠損は、少なくとも一部は、臍帯血HSC移植に伴なう血小板移植および骨髄移植の遅れを説明する。移植のための臍帯血HSCの使用は、主に子供に制限されている(子供は、移植のために必要とする細胞がより少ない)が、これは、へその緒から単離されたHSCの限定された量およびそのHSCの戻る能力の欠損のためである。
【0008】
HSCの戻る能力の欠損を矯正する発明は、造血幹細胞の源としての臍帯血の能力を有意に向上し、それによって急性および慢性の移植片対宿主病に対する危険性を低減し、骨髄再構成の成功をもたらす。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の要旨)
本発明は、一実施形態において、HSCを処理する方法を企図し、この方法は、一定量のHSCまたはHSCの集団を提供する工程であって、このHSCの内の少なくともある量が、表面タンパク質CD38の発現を欠如するか、またはその発現が減少している工程、ならびに一定量のHSCまたはHSCの集団をインビトロで、α1,3フコシルトランスフェラーゼおよびフコースドナーで処理する工程であって、処理されたHSCが、P−セレクチンおよびE−セレクチンへの結合を増強する工程を包含する。さらに、HSCは代表的に、P−セレクチン糖タンパク質リガンド−1(PSGL−1)および/またはP−セレクチンもしくはE−セレクチンに有効に結合しない他のセレクチンリガンドを含むとして特徴付けられる。より詳細には、PSGL−1またはCD34+CD38low/−HSC上に存在する他のセレクチンリガンドは、フコシル化グリカン、特にO−グリカンを欠如するか、またはほとんど有さず、そして、例えば、NeuAcα2,3Galβ1,4GlcNAcを含むコア−2 O−グリカンを有し、GlcNAcへのα1,3結合中のフコースを欠如するPSGL−1を有する。HSCは、本明細書中に記載されるフコシル化の前の未処理状態では、骨髄の戻る能力が低減している。本発明の一実施形態において、HSCは、ヒト臍帯血に由来するが、フコシル化処理後の骨髄へ戻る能力が増強されているとして特徴付けられる限り、骨髄または末梢血に由来し得る。本明細書中に企図される方法において、α1,3フコシルトランスフェラーゼは、例えば、α1,3フコシルトランスフェラーゼIV、α1,3フコシルトランスフェラーゼVI、またはα1,3フコシルトランスフェラーゼVII、またはこれらの組合せであり得る。フコースドナーは、例えば、GDP−フコースであり得る。
【0010】
本発明はさらに、一実施形態において、ヒトHSCを処理する組成物を企図し、この組成物は、表面タンパク質CD38の発現を欠如するか、または発現の減少した(CD38low/−)臍帯血由来のCD34+HSCを含む。ここで、このHSCは、P−セレクチンまたはE−セレクチンに結合し得る。HSCは、保存または患者への投与のための薬学的に受容可能なキャリア、希釈剤またはビヒクル中に処理され得る。本発明はさらに、処置方法に関し、この方法は、血液疾患、または処置のためにHSCの移植を必要とし、その移植から利益を受ける他の疾患を有する被験体にHSCの有効量を投与する工程を包含する。
【0011】
上記のように、本明細書中に記載されるフコシル化処理の後、処理されたCD34+HSC(CD34+CD38low/−HSCを含む)は、未処理のCD34+HSCと比較してP−セレクチンまたはE−セレクチンに対する結合が増強した。P−セレクチン(またはE−セレクチン)に対する増強された結合は、P−セレクチン(または、E−セレクチン、それぞれ)結合アッセイにおいて、(以下に規定する)所定の蛍光閾値より大きい蛍光を有する、処理されたHSCの少なくとも10%と規定される。別の実施形態において、処理したHSCの少なくとも25%は、所定の蛍光閾値を上回る。別の実施形態において、処理したHSCの少なくとも50%は、所定の蛍光閾値を上回る。別の実施形態において、処理したHSCの少なくとも75%は、所定の蛍光閾値を上回る。別の実施形態において、処理したHSCの少なくとも90%は、所定の蛍光閾値を上回る。別の実施形態において、処理したHSCの少なくとも95%は、所定の蛍光閾値を上回る。
【0012】
本発明はさらに、一定量のHSCまたはHSCの集団を提供する工程および一定量のHSCをインビトロでα1,3フコシルトランスフェラーゼおよびフコシルドナーで処理する工程を包含する方法によって製造された血液製剤を企図し、そのHSCの少なくとも一部は、CD34+であり、タンパク質CD38の発現を欠如するか、または減少している。こここで、処理したHSCの大部分は、本明細書中で記載されるとおりP−セレクチン(またはE−セレクチン)に対する結合が増強されている。一定量のHSCは、好ましくは、臍帯血に由来するが、骨髄または成人の末梢血から入手され得る。一定量のHSCまたはHScの集団は、血液または骨髄の一部もしくは分画されていないサンプルを含み得る。
【0013】
(発明の詳細な説明)
本発明は、1つの実施形態において、HSCを処理する方法を意図し、この方法は、表面結合タンパク質CD38の発現を欠くかまたはCD38の減少した発現を有するHSCのある量もしくは集団を提供する工程、およびそのHSCの量もしくは集団をインビトロでα1,3フコシルトランスフェラーゼおよびフコースドナーで処理する工程を包含し、ここで、そのように処理されるHSCは、P−セレクチンまたはE−セレクチンに対する結合が処理していないHSCを超えて高められる。さらに、処理していないHSCは、代表的には、P−セレクチンまたはE−セレクチンに十分に結合しないPSGL−1または他のセレクチンリガンドを主に含むと特徴付けられる。CD38low/−HSCに生じるPSGL−1または他のセレクチンリガンドは、フコシル化グリカン(例えば、O−グリカン)を欠くかまたはフコシル化グリカンの減少した数を有し、そして例えば、PSGL−1(これは、NeuAcα2,3Galβ1,4GlcNAcを含むコアの2個のO−グリカンを有するが、GlcNAcに対するα1,3結合においてフコースを欠く)を有し得る。CD38low/−HSCは、フコシル化前のその処理されない状態において、低下した骨髄ホーミング能を有する。HSCの骨髄ホーミング能を高めるためのさらなるフコシル化を必要とするかもしくはそのようなフコシル化から利益を受けると特徴付けられる限りは、HSCは、骨髄または末梢血由来であり得るが、好ましくは、HSCは、ヒト臍帯血(CB)由来である。本明細書中で意図される方法において、上記α1,3フコシルトランスフェラーゼは、例えば、α1,3フコシルトランスフェラーゼIV、α1,3フコシルトランスフェラーゼVI、またはα1,3フコシルトランスフェラーゼVIIであり得る。上記フコースドナーは、例えば、GDP−フコースであり得る。
【0014】
本発明は、1つの実施形態において、処理されたヒトHSCの組成物を意図し、その組成物は、表面タンパク質CD38(CD38low/−)の発現を欠くかまたはその発現が減少している臍帯血由来のHSCを含み、ここで、処理されたHSCは、PSGL−1または適切にフコシル化された他のセレクチンリガンド(例えば、シアリルLewisxを含む)を含み、そしてP−セレクチン(もしくはE−セレクチン)に結合し得る。処理されたHSCは、保管または患者への投与のために、薬学的に受容可能なキャリアまたはビヒクル中に置かれ得る。本発明はさらに、処置方法に関し、その方法は、有効量の処理されたHSCを、血液障害または処置のためにHSCを必要とする他の疾患を有する被験体に投与する工程を包含する。
【0015】
1つの実施形態において、処理されたHSCの組成物は、臍帯血に由来するヒトHSCの集団を含み、その集団のうちの少なくとも一部分は、P−セレクチン(もしくはE−セレクチン)に対して増大した結合を有するCD34+CD38low/−HSCと特徴付けられる。P−セレクチン(もしくはE−セレクチン)に対する増大した結合は、処理されたHSCのうち少なくとも10%が、P−セレクチン結合アッセイ(それぞれ、もしくはE−セレクチン結合アッセイ)において、所定の蛍光閾値よりも強い蛍光を有すると規定される。別の実施形態において、処理されたHSCのうち少なくとも25%が、所定の蛍光閾値を上回る。別の実施形態において、処理されたHSCのうち少なくとも50%が、所定の蛍光閾値を上回る。別の実施形態において、処理されたHSCのうち少なくとも75%が、所定の蛍光閾値を上回る。別の実施形態において、処理されたHSCのうち少なくとも90%が、所定の蛍光閾値を上回る。別の実施形態において、処理されたHSCのうち少なくとも95%が、所定の蛍光閾値を上回る。ヒトHSCの組成物は、好ましくは、保管または患者への投与のために、薬学的に受容可能なキャリアまたはビヒクル中に置かれる。
【0016】
所定の蛍光閾値は、1つの実施形態において、まず、通常の臍帯血(健常な満期胎児に由来する臍帯血)の単核画分から、少なくとも100個のCD34+CD38low/−HSCを含む細胞のサンプルを得ることによって決定される。このHSCのコントロール(ベースライン)サンプルは、本明細書中の他で記載されるP−セレクチン結合アッセイ(もしくはE−セレクチン結合アッセイ)を使用してか、あるいは当該分野で公知の任意の他のP−セレクチン蛍光結合アッセイ(それぞれ、もしくはE−セレクチン結合アッセイ)によってアッセイされる。P−セレクチン(もしくはE−セレクチン)結合蛍光レベルは、コントロール(ベースライン)サンンプル中のCD34+CD38low/−HSCについて測定される。1つの実施形態において、蛍光値は、コントロールサンンプル中のCD34+CD38low/−HSCのうちの少なくとも95%のP−セレクチン(もしくはE−セレクチン)結合蛍光レベルを上回る値が選択される。選択された蛍光値は、処理された(すなわち、フコシル化された)HSCのP−セレクチン(もしくはE−セレクチン)結合蛍光と比較される所定の蛍光閾値として示される。
【0017】
本発明はさらに、HSCのある量もしくは集団を提供する工程であって、そのHSCのうちの少なくとも一部分がCD34+でありタンパク質CD38の発現を欠くかまたはそのCD38の減少した発現を有する、工程、ならびにそのHSCの量をインビトロでα1,3フコシルトランスフェラーゼおよびフコースドナーで処理する工程を包含する上記方法によって生成される血液産物を意図し、ここで、その処理されたHSCのうちの大部分は、P−セレクチン(もしくはE−セレクチン)に結合する。そのHSCの量は、臍帯血由来であり得るが、骨髄または成体の末梢血由来であり得る。
【0018】
概して、本発明は、方法を意図し、ここで、非機能性PSGL−1もしくは最適以下の機能性PSGL−1あるいは臍帯血HSCで発現される他のセレクチンリガンドは、インビトロα1,3−フコシル化技術によって改変されて、ホーミング欠損が正され、このことが、骨髄移植における使用を改善する。
【0019】
上記のように、CD34+臍帯血HSCは、CD38+(CD38に対してポジティブ)またはCD38low/−(CD38の発現が減少したかもしくは発現しない)と定義され得る。CD38low/−臍帯血HSCは、上記のような蛍光技術を使用して同定され得る。臍帯血HSCは、それに結合したフルオロフォアを有するCD34結合抗体、およびそれに結合した異なるフルオロフォアを有するCD38結合抗体で処理される。CD34+細胞は、照射の際に抗CD34抗体フルオロフォアから蛍光を発するHSCと定義される。CD38low/−HSCは、CD34+HSCのうち30%が、抗CD38結合抗体から測定される場合に最も低い蛍光を有するCD34+HSC、または(本明細書中の他で記載されるような蛍光フローサイトメーターによって測定される場合)50ユニット以下の抗CD38結合抗体蛍光レベルを有するCD34+HSCと定義される。1つの実施形態において、抗CD34結合抗体フルオロフォアは、FITC(フルオレセインイソチオシアネート)であり、一方、抗CD38結合抗体フルオロフォアは、フィコエリトリン(PE)である。
【0020】
すでに説明されたように、CD34+細胞は、PSGL−1または他のセレクチンリガンド、さらに有意な量の始原CD34+細胞(これは、CD38では少ないかまたは存在しない(例えば、始原CD34+細胞は全CD34+臍帯血細胞のうちの約30%を含む)を発現し、P−セレクチン(もしくはE−セレクチン)に結合しないか、またはごく少量のP−セレクチン(それぞれ、もしくはE−セレクチン)に結合する。PSGL−1は、CD34+細胞を含むほぼすべての白血球で発現されるホモダイマーのムチンである。機能性(すなわち、P−セレクチンもしくはE−セレクチンに結合し得る)であるために、PSGL−1は、それにsLex基の形成をもたらすいくつかの翻訳後修飾(α1,3−フコシル化を含む)を必要とする。不十分なα1,3−フコシル化は、例えば、未処理のT細胞が血管セレクチンと相互作用する能力に障害を生じる。本発明において、臍帯血由来のHSCがP−セレクチンもしくはE−セレクチンに対して結合不能であることは、PSGL−1または他のセレクチンリガンドの不十分なα1,3−フコシル化に起因することが発見されている。従って、本発明の基となることは、インビトロでのα1,3−フコシルトランスフェラーゼ(例えば、FT−VI)(これはまた、sLex構造の合成を触媒する)によるCD34+細胞の処理が、PSGL−1または他のセレクチンリガンドのフコシル化を増大し、それによって、HSCのホーミング欠損を正すということである。
【0021】
α1,3結合におけるフコースをGlcNAcに転換し得るフコシルトランスフェラーゼは、当該分野で周知である。いくつかが市販されており、例えば、Calbiochemから市販されている。さらに、少なくとも5つの異なる型のα1,3フコシルトランスフェラーゼ(FTIII−V)が、ヒトゲノムによってコードされる。これらとしては、以下が挙げられる:ルイス酵素(FTIII)(これは、フコースをα(1,3)−Galβ4GlcNAcまたはα(1,4)−GAlβ3GlcNAcに転換し得る(Kukowska−Latalloら、Genes Dev.4:1288、1990));FTIV(これは、α(1,3)結合(これは、好ましいシアリル化前駆体ではない)を形成する(Goelzら、Cell 63;1349、1989;Loweら、J.Biol.Chem.266;17467、1991));FTV(Westonら、J.Biol.Chem.267:4152、1992a)およびFTVI(Westonら、J.Biol.Chem.267:24575、1992b)(これは、α(1,3)結合を形成し、シアリル化前駆体もしくは非シアリル化前駆体のいずれかをフコシル化し得る)、ならびにFTVII(Sasakiら、J.Biol.Chem.269:14730、1994;Natsukaら、J.Biol.Chem.269:16789、1994)(これは、シアリル化前駆体のみをフコシル化し得る)。
【0022】
FTIIIは、GDB135717によってコードされる;FTIVは、GDB131563によってコードされる;FTVは、GDB131644によってコードされる;FTVIは、GDB135180によってコードされる;そしてFTVIIは、GDB373982によってコードされる。6番目のα1,3フコシルトランスフェラーゼ(FTIV)は、GDB9958145(ゲノムデータベース登録ID番号は、GDB(TM)Human Genome Database Tronto(Ontario、Canada):The Hospital for Sick Children,Baltimore(Maryland,USA):Johns Hopkins University,1990−から入手可能である。インターネット:UPL http://www.gdb.org/から入手可能である)によってコードされる。本発明はさらに、例えば、米国特許第6,399,337号および同第6,461,835号(これらは、本明細書により明示的にその全体が本明細書中に参考として援用される)に示されるような、当業者が入手可能でありかつ公知の他の非ヒトα1,3フコシルトランスフェラーゼを使用することを意図する。
【0023】
すでに述べたように、ヒトHSCは、α1,3フコシルトランスフェラーゼによる処理のために、例えば、臍帯血、末梢血、または骨髄の供給源中の他の細胞からの分離によって得られ得る。種々の技術が、CD34+CD38low/−幹細胞を単独で、またはCD34+CD38+HSCと組み合わせて別個に得るために利用され得る。モノクローナル抗体は、分化の特定の細胞系統および/または段階に関連するマーカー(表面膜タンパク質)を同定するために特に有用である。抗体は、粗製物分離用に固体支持体に付着され得る。利用される分離技術は、回収されるべき画分の生存度の保持を最大限にすべきである。利用される特定の技術は、分離の有効性、細胞毒性の方法論、実行の容易さおよび速度、ならびに洗練された機器および/または技術的技能の必要性に依存する。
【0024】
分離のための手順としては、抗体コーティングした磁気ビーズを使用する磁気分離、および固体マトリクス(例えば、プレート)に接着した抗体を用いる「パニング」、または他の簡便な技術が挙げられ得る。正確な分離を提供する技術としては、種々の精巧の程度を有する蛍光細胞分析分離装置(例えば、複数の有色チャネル、ローアングル(low angle)および鈍角の光散乱検出チャネルおよびインピーダンスチャネル)が挙げられる。
【0025】
簡便には、抗体は、直接分離を可能にする磁気ビーズ;支持体に結合したアビジンまたはストレプトアビジンビオチンと共に除去され得る;蛍光細胞分析分離装置(FACS)と共に使用され得る蛍光色素などのような、マーカーと結合体化され得、特定の細胞型の分離を容易にし得る。残りの細胞の生存に対して過度に有害でない任意の技術が採用され得る。
【0026】
1つの実施形態において、成熟な細胞マーカーを欠失するHSCが実質的に富化され得、ここで、次いで、この細胞が、FACSまたは高特異性を有する他の形態学により分離され得る。特に簡便な、多色分析がFACSと共に使用され得る。細胞は、特定の抗原についての染色レベルに基づいて分離され得る。多色分析において用途を見出し得る蛍光色素としては、例えば、フィコビリンタンパク質(例えば、フィコエリスリン)およびアロヂコシアニン、フルオレセインおよびテキサスレッドが挙げられる。あるいは、HSCは、例えば、臍帯血、末梢血液または骨髄からの全単核細胞を使用して、未分画の血液サンプルまたは骨髄サンプルから所望のHSCを分離する前に、フコシルトランシフェラーゼを用いて処理され得る。
【0027】
1つの実施形態において、CD34+CD38low/−細胞を含むCD34+HSCは、細胞組成物に遊離のフコシルトランスフェラーゼを添加することによって処理され得、ここで、フコシル化されたCD34+CD38low/−を含む最終血液産物はまた、細胞を処置するために使用されたフコシルトランスフェラーゼを含む。別の実施形態において、HSCは、支持体(例えば、磁気ビーズ、または、当業者に公知の任意の他の支持体)に結合されたフコシルトランスフェラーゼを使用して処理され得、この処理プロセスが完了した後に、この細胞組成物から分離され得る。
【0028】
(方法および結果)
臍帯血サンプルを、Institutional Review Board of the Oklahoma Medical Research Foundation(OMRF)によって認可されたプロトコールに従って、通常の満期普通分娩から得た。1回の分娩あたり70〜100mlの臍帯血を採取した。クエン酸ナトリウムを、抗凝固薬として使用した。臍帯血を採取するための当該分野で公知の、任意の適切な方法(例えば、米国特許第6,440,010号(その全体が本明細書において参考として明白に援用される)に示される方法)が適切である。血液サンプルの上清内のCD34+細胞を、CD34単離ミニMACSキット(Miltenyi Biotec,Bergisch Gladbach,Germany)を用いて富化した。臍帯血をまず、当量の0.9%塩化ナトリウム中の6% デキストラン70(McGaw,Inc.,Irvine,CA)と混合した。2〜3時間の沈降の後、上清内の細胞を取り除き、2mM EDTAおよび0.5% ヒト血清アルブミン(HSA)を含有するHankの平衡化塩溶液(HBSS,Cellgro)中で1度洗浄した。汚染された赤血球を、FACS溶解溶液(BD Biosciences,San Jose,CA)中で溶解した。低密度単核細胞(MNC)を、Ficoll−Hypaque(d=1.077g/ml)にて250gで遠心分離した後に分離した。CD34+細胞を、製造業者の指示書に従ってCD34単離ミニMACSキットを使用して、MNC分画から精製した。単離されたCD34+細胞の精製は、フローサイトメトリーによって試験した場合、約96%であった(図1)。次いで、以下の実験を実施した。
【0029】
(臍帯血から単離したCD34+細胞はPSGL−1を発現し、CD34+細胞が異種性であることのフローサイトメトリーによる立証)
この目的のために、三色染色を使用した。ミニMACS選別により富化した細胞を、ヒトIgGを用いてFcレセプターをブロッキングした後に、FITCに結合体化した抗CD34モノクローナル抗体(mAb、Miltenyi Biotec製のクローンAC136)、PEに結合体化した抗CD38 mAb(BD Pharminge,San Diego,CA)およびCy5に結合体化した抗PSGL−1モノクローナル抗体(BD Pharminge,San Diego,CA)と共にインキュベートした。洗浄した後、細胞を、FACScan(Becton Dickinson)上のフローサイトメトリーにより分析した。CellQuestプログラムを使用してデータを回収した。光散乱ゲート化事象を、蛍光強度の対数スケールにプロットした。実質的に全てのCD34+細胞がPSGL−1を発現し(図2A)、CD34+細胞の約30%がCD38の低い発現を有するか、または発現を有さず(図2B)、これは、始原前駆細胞の下位集団を表す。さらに、P−セレクチンに結合しないHSCの約25%は、CD34+およびCD38low/−である(図3)。これらの結果は、既存のデータを確証する。
【0030】
(精製CD34+細胞についてのPSGL−1のインビトロα1−3−フコシル化)
PSGL−1またはCD34+細胞上の他のセレクチンリガンドに結合するコア2 O−グリカン上にフコースを導入するために、2〜4×106個の細胞を、0.5mLのHBSS/1% HSA中の1mM グアノシン二リン酸(GDP)−フコース(Calbiochem)、20mU/mL α1−3−フコシルトランスフェラーゼVI(FT−VI)(Calbiochem)、および10mMのMnCl2を用いて、5% CO2を含有する雰囲気下、37℃にて40分間処理した。この処理により、最大P−セレクチン結合により測定されるように、CD34+細胞におけるPSGL−1の最適なフコシル化を生じ、さらに、プロピジウムヨージド染色により試験した場合に、CD34+細胞に対して最小の毒性を生じる(図4)。
【0031】
(CD34+細胞におけるフコシル化エピトープの測定、およびインビトロα1,3−フコシル化が、CD34+細胞にフコシル化されたエピトープを作製することの、フローサイトメトリーによる検証)
シアリルLewisxは、フコシル化エピトープである。抗sLexmAbであるHECA 452(ラットIgM、American Type Culture Collegtion[ATCC]製のハイブリドーマ)と共にインキュベートすることによって、本発明者らは、CD34+細胞においてsLexエピトープを試験した。結合したmAbを、ラットIgM(Caltag)に対してFITC結合体化ヤギF(ab)’2フラグメントを用いて検出した。図5Aにより示されるように、臍帯血から得られたCD34+細胞の26%が、低いフコシル化エピトープを発現するか、または発現しない。これらのデータは、CD34+細胞のサブセットが、適切にフコシル化されていないことを示す。インビトロα1,3−フコシル化が、CD34+細胞においてフコシル化エピトープを作製し得るかどうかを調べるために、本発明者らは、上記の方法を使用して、Mnの存在下で、CD34+細胞をFT−VIおよびGDP−フコースを用いて処理した後に、HECA 452で細胞を染色した。本発明者らは、HSCA 452染色により示されるように、インビトロα1,3−フコシル化が、臍帯血由来のCD34+細胞におけるsLexエピトープを劇的に増加したことを見出した(図5B)。
【0032】
(P−セレクチン結合−結果)
(臍帯血由来のCD34+細胞における可溶性P−セレクチンの結合特性の検証)
P−セレクチン結合アッセイについて、臍帯血由来のCD34+細胞を、Fcレセプターをブロッキングした後、抗CD34−PEおよびヒト血小板から単離したP−セレクチンと共にインキュベートした。P−セレクチンの結合を、FITC標識したS12(ヒトP−セレクチンに対するブロッキングしていないmAb)を用いて検出した。細胞のインキュベーションを、4℃にて20分間実施した。系列滴定後のP−セレクチンの飽和量を実験において使用した(図6)。コントロール実験において、細胞のP−セレクチンインキュベーションを、G1(P−セレクチンに対するブロッキングmAb)、PL1(PSGL−1に対するブロッキングmAb)、またはCa2+依存性のセレクチンリガンド相互作用を排除する10mM EDTAの存在下で実施した。フローサイトメトリー分析は、CD34+細胞(主にCD38low/−細胞を含む)の約27%が、P−セレクチンに結合しなかったことを示し、このことは、以前の刊行されたデータと一致する(図7A)(Hidalgo,A.,Weiss,L.A.,およびFrenette,P.S.Functional selectin ligands mediating human CD34+cell interaction with bone marrow endothelium are enhanced postnatally.Adhesion pathways mediating hematopoietic progenitor cell homing to bone marrow.J.Clin.Invest.110:559−569.2002)。図7Cは、P−セレクチンが、CD34+細胞上のPSGL−1に特異的に結合することを示した。これは、G1抗体およびPL1抗体、ならびにEDTAが、結合を無効にしたためである。
【0033】
(CD34+細胞表面のインビトロα1,3−フコシル化が、P−セレクチンに対する結合を増加することの、フローサイトメトリーによる実証)
臍帯血由来のCD34+細胞を、まず、上記のようにGDP−フコースおよびFT−VIで処理し、次いで、抗CD34−PEおよびP−セレクチンの両方で染色した。P−セレクチンの結合を、FITC標識したmAb S12で検出した。外来性FT−VIでの処理が、ヒトP−セレクチンに対するCD34+細胞の結合を有意に増加した(図7B)。P−セレクチンに対する増強された結合は、α1,3−フコシル化の後のCD34+細胞における機能的PSGL−1の増加に起因した。なぜならば、この結合は、抗体G1およびPL1によって、そしてEDTAによってブロッキングされたからである(図7D)。インビトロα1,3−フコシル化についての最適な条件を見出すために、種々のインキュベーション時間およびFT−VI、GDP−フコースおよびMnの濃度を試験した(データ示さず)。条件(上掲)を、最大のP−セレクチン結合によって測定されるように、CD34+細胞におけるPSGL−1の最適なフコシル化を生じた全ての実験について選択し(図7B)、さらに、プロピジウムヨージド染色によって試験されるように、CD34+細胞に対して最小の毒性を生じた(図4)。
【0034】
(インビトロα1,3−フコシル化が、生理学的せん断流れにおいてP−セレクチンに対するCD34+細胞の接着を増加することの実証)
臍帯血由来のCD34+細胞を、さらなる処理のために2つの群に分けた。一方の群を、上記のようにGDP−フコースおよびFT−VIと共にインキュベートし、もう一方の群を、GDP−フコースなしのFT−VIで処理した(偽処理コントロール)。2群の細胞のP−セレクチン結合能を、以下に記載されるようなインビトロフローチャンバローリングアッセイシステム(flow chamber rolling assay system)を使用して比較した。ヒト血小板から単離したP−セレクチンを、平行プレートフローチャンバ内に固定した。125I標識した抗P−セレクチンmAb S12の結合により測定した場合に、145部位/μm2のP−セレクチン部位濃度を使用した。偽処理、またはFTVI処理のCD34+細胞(Hankの緩衝化塩溶液および0.5%ヒトアルブミン中106個/ml)を、1dyn/cm2の壁せん断応力の下でP−セレクチンについて灌流した。ローリング細胞の蓄積数を、画像分析システムに接続されたビデオ顕微鏡システムを用いて測定した。EDTA、ならびに抗体G1およびPL1がローリングを無効にし、ヒト血清アルブミンのみでコーティングしたプレート上ではローリングが見られなかったので、CD34+細胞は、ヒトP−セレクチン−PSGL−1相互作用により、Ca++依存性の様式でローリングした(図8)。偽処理CD34+細胞と比較して、約3倍多いFT−VI処理CD34+細胞が、P−セレクチンについてローリングした。
【0035】
(E−セレクチン結合−結果)
(CD由来のHSCに対する可溶性E−セレクチンの結合特性)
マウス可溶性E−セレクチン/ヒトIgMキメラ(E−セレクチン/IgM)を、流体相のE−セレクチン結合アッセイのために使用した。CD45/ヒトIgMキメラをネガティブコントロールとして使用した。細胞を、Fcレセプターをブロッキングした後に、E−セレクチン/IgMと共にインキュベートした。次いで、E−セレクチンの結合を、FITC標識したヤギ抗ヒトIgMポリクローナル抗体を用いて検出した。この細胞をまた、PE標識した抗CD34 mAb(BD Pharmingen,San Diego,CA)で染色した。インキュベーションを、4℃にて20分間実施した。系列滴定の後に、飽和量のE−セレクチンを実験に使用した。コントロール実験において、染色を、9A9(E−セレクチンに対するブロッキングmAb)、または10mM EDTA(Ca2+依存性セレクチンリガンドの相互作用を排除する)の存在下で実施した。フローサイトメトリー分析は、約25%のCD34+HSCがE−セレクチンに結合しなかったことを示した(図9A)。図9Cは、CD34+HSCのE−セレクチンとの相互作用が特異的であったことを示し、これは、mAb 9A9およびEDTAがこの相互作用を無効にしたからである。
【0036】
(フローサイトメトリーにより測定した場合に、インビトロα1,3−フコシル化が、E−セレクチンに対するCD34+HSCの結合を増加する)
CB由来のCD34+HSCを、2つの群に分けた。一方の群(2〜4×106個の細胞)を、0.5ml HBSS/1% HAS中の1mM GDP−フコース、20mU/ml FTVI(Calbiochem)および10mM MnCl2と共に、5% CO2を含有するインキュベーター内で、37℃にて40分間インキュベートした。もう一方の群を、GDP−フコースなしのFT−VIと共にインキュベートした(偽処理コントロール)。次いで、細胞を、抗CD34およびE−セレクチン/IgMの両方で染色した。外来性のα1,3−フコシルトランスフェラーゼ処理の後、CD34+HSCのE−セレクチンに対する結合は、75%から95%まで増加した(図9Aおよび9B)。E−セレクチンに対する増加した結合は、mAb 9A9およびEDTAにより評価したように、特異的であった(図9D)。図9Cおよび9Dに見られるAb 9A9およびEDTAのブロッキングの後の残りの結合は、ネガティブコントロールであるCD45/IgMで染色された細胞が、類似の特性を有した(データ示さず)ので、非特異的であった。
【0037】
(インビトロα1,3−フコシル化は、生理学的せん断力の下でのHSCのE−セレクチンに対する接着を増加させる)
上記のように、HSCを2つの群に分け、フコシル化した。2つの群の細胞のE−セレクチン結合能を、インビトロフローチャンバローリングシステムを使用して比較した。簡単には、可溶性ヒトE−セレクチンを、平行プレートフローチャンバ内に固定した。125I標識された抗ヒトE−セレクチンmAb ES1の結合により測定した場合、200部位/μm2のE−セレクチン部位濃度を使用した。偽処理またはFT−VI処理したHSC(HBSSおよび0.5% HSA中106個/ml)を、異なるせん断力の下、E−セレクチンについて灌流した。ローリング細胞の蓄積数およびせん断応力を、画像分析システムに連結されたビデオ顕微鏡システムを用いて測定した。試験したせん断力において、偽処理HSCと比較して、約2〜3倍多いFT−VI処理HSCが、E−セレクチンについてローリングした(図10Aおよび10B)。FT−VI処理細胞はまた、より低い速度でローリングし、せん断力による剥離により抵抗性であった(図10Cおよび10D)。HSCのE−セレクチンとの相互作用は、特異的であった。これは、mAb ES1がローリングを無効にし、そしてHSAのみでコーティングしたプレートにおいては、ローリング見られなかったからである(図10B)。PSGL−1に対するP−セレクチンの結合をブロックするPL1は、E−セレクチンについてのHSCのローリングに影響を与えず(図10B)、これは、E−セレクチンが、PSGL−1についての他の部位、または他の細胞表面リガンドに対する結合によってローリングを媒介することを確認する。
【0038】
これらの結果は、インビトロα1,3−フコシル化が、流れの下で、P−セレクチンおよびE−セレクチンに対する、生理学的に関連するCD34+細胞のローリング接着を増強することを示唆する。
【0039】
(インビボ実施例)
(フコシル化HSCは、インビボで、骨髄において増強された移植を示す)
(方法)
インビトロ分析によって、GDP−フコースおよびFTVIで処理したCB HSCが、流体相におけるP−セレクチンおよびE−セレクチンの有意な増加を示し、異なる壁せん断力の下で、フコシル化なしのCB HSCと比較して、P−セレクチンおよびE−セレクチンでコーティングした表面上でよりよくローリングしたことが、本明細書において実証された。フコシル化CB HSCはさらに、インビボで、骨髄への改善されたホーミングおよび骨髄における改善された移植を有することが、本明細書において示される。非肥満糖尿病重症複合免疫不全(NOD/SCID)マウスは、ヒトのHSCのインビボ研究のための異種移植レシピエントとして十分に確立されている。本発明者らは、フコシル化されたかもしくはフコシル化されていないCB HSCを移植されたNOD/SCIDマウスにおいて、ヒト造血系移植を比較した。
【0040】
雄性および雌性の病原体を有さない(NOD/SCID)マウス(The Jackson Laboratory)(4〜5週齢)を、レシピエントとして使用した。このマウスを、2〜4時間照射し(230rad)、その後、それぞれ、FTVI処理(フコシル化)または偽処理(FTVI処理したが、GDP−フコースなし)したCB HSC(300μl中8×106個/マウス)を静脈内注射した。コントロールマウスには、各々CB HSCなしの300μlの生理食塩水を与えた。
【0041】
移植の6週間後、マウスを繁殖させて、屠殺した。両大腿から骨髄細胞を単離し、10mmメッシュフィルタを通して濾過し、細胞片を除去した。赤血球を溶解した後、各マウスからの骨髄有核細胞を1×106個/mlの濃度で、HBSS中に再懸濁した。フローサイトメトリーおよびヒト造血前駆体アッセイ(human hematopoietic progenitor assay)の両方により、移植を分析した。フローサイトメトリーについては、骨髄有核細胞を、Cy5結合体化抗ヒトCD45 mAb(BD Pharmingen,San Diego,CA)と共にインキュベートした。
【0042】
ヒト造血前駆体アッセイについては、35mm培養皿あたり1×105個の骨髄有核細胞をMethoCult H4433培地(Stem Cell Technologyies,Vancouver,Canada)中に二連でプレートし、37℃、5% CO2にてインキュベートした。全コロニー、バースト形成単位−赤血球(BFU−E)、コロニー形成単位−顆粒球/マクロファージ(CFU−GM)、およびコロニー形成単位−顆粒球/巨核球/マクロファージ(CFU−GEMM)を、培養の14日目に計数し、分析した。コロニーのヒト起源を、それぞれ、骨髄細胞についてヒトCD45に対するmAbで、赤血球についてグリコホリンAに対するmAbで染色した異なるコロニーから回収した細胞のフローサイトメトリー分析によって確認した。
【0043】
(結果)
フローサイトメトリーにより分析したように、フコシル化CB HSCを与えた、照射したNOD/SCIDマウスは、偽処理CB HSCを受けたマウスよりも、骨髄および末梢血におて、2〜3倍多いCD45陽性のヒト由来の造血細胞を有した(図11A)。フコシル化細胞を移植したマウスの骨髄におけるヒト造血前駆体の有意に改善された移植は、BFU−E、CFU−GMおよびCFU−GEMMの増加により実証されるように、多重系統であった(図11B)。注目すべきなのは、CB HSC由来のコロニーの大きさが、いずれのレシピエント群においても有意に異ならず(データは示さず)、このことは、フコシル化が、CB前駆体の増殖能を変化しなかったことを示す。従って、このインビボ研究は、FTVI処理したCB HSCが、偽処理細胞が有するよりも、NOD/SCIDマウスの骨髄に帰巣し、骨髄内に移植するより高い能力を有することを実証する。これらの結果は、本発明のHSCが、ヒトにおいて増強された骨髄移植を有することを示す。
【0044】
(有用性)
本明細書中に記載されるフコシル化HSCは、種々の方法で使用され得る。例えば、これらの細胞は、ナイーブ(原始的)であるので、これらは、照射された被験体および/または化学療法に供された個体の骨髄を完全に再構築するために使用され得る。
【0045】
とりわけ、本発明による造血幹細胞の投与により処置され得る症状は、白血病およびリンパ腫(例えば、慢性骨髄性(骨髄形成)白血病(CML)、若年性慢性骨髄性白血病(JCML)、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ急性白血病(ALL)、悪性リンパ腫、多発性骨髄種、再生不良性重症貧血(aplastic anemia gravis)、骨髄異形成症候群(MDS)および自己免疫疾患)である。
【0046】
本発明の処理されたHSCで処置され得る他の疾患は、以下である:Gunther病、ハンター症候群、ハーラー症候群、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、ヴィスコット−オールドリッチ症候群、X連鎖リンパ増殖症候群、および固形組織腫瘍(例えば、乳癌)。
【0047】
これらの処置において、これらの処置されたHSCの集団が、骨髄が切除両方により破壊された患者に与えられ得る。
【0048】
本発明の細胞は、例えば、静脈内注射によって、または、当業者に周知の任意の他の適切な方法によって投与され得る。疾患または状態に罹患する宿主を処置するための方法において、HSCの治療有効量とは、この疾患もしくは状態の症状または効果を減少または排除するのに十分な量である。宿主に投与される治療有効量は、個体を基準に決定され、少なくとも部分的に、個体の大きさ、処置される症状の重篤度、および考えられる結果の考慮に基づく。こうして、治療有効量は、慣用的な実験程度を使用して、このような実務を使用する当業者によって決定され得る。HSC移植に関する詳細な情報については、「Hemopoietic Stem Cell Transplantation,Its Foundation and Clinical Practice」[Modern Medicine,Special Issue,53,2,1998]が参考になり得、この文書に与えられる説明は、その全体が、明白に本明細書中に参考として援用される。
【0049】
投与されるフコシル化幹細胞の投薬量の調製において、種々の薬学的に受容可能なキャリアが利用され得る。キャリア、希釈剤またはビヒクルは、生理学的に受容可能なpHを得るための緩衝化剤(例えば、リン酸緩衝化生理食塩水)および/または、生理学的に受容可能であり、そして/もしくは使用に安全な他の物質を含み得る。一般に、ヒトにおける静脈内注射用の物質は、当業者に利用可能な、Food and Drug Administrationにより確立された規定を満たすべきである。薬学的に受容可能なキャリアは、例えば、1容量:1容量比で、処理されたHSC組成物と組合せられ得る。このキャリアは、例えば、M199またはRPMI 1640倍値であり得る。さらに、上記投薬形態の調製において、今日共通して使用される種々の注入物がまた使用され得る。1つの実施形態において、HSCの移植において従来使用される投与量が使用され得る。この投薬量は、例えば、患者の体重1kgあたり約.01〜10×108個の処理されたMNC(処置されたCD38low/−HSCまたは本明細書中のどこかに規定された、他の処置されたHSCを含む)であり得るか、または、適切な場合は、これより多くても少なくてもよい。
【0050】
本明細書中に記載されるように、本発明は、HSCを処理する方法を企図し、この方法は、一定量のHSC(少なくともこのHSCの一部は、表面タンパク質CD38の発現を欠失しているか、または、この発現が減少している)を提供する工程、およびインビトロにおいて、この量のHSCを、α1,3−フコシルトランスフェラーゼおよびフコースドナーで処理して、処理されたHSCを形成する工程を包含し、この処理されたHSCは、P−セレクチンまたはE−セレクチンに対して増強された結合を有する。1つの実施形態において、表面タンパク質CD38の発現を欠失するか、またはこの発現が減少しているHSCの一部は、骨髄帰巣能が減少している。HSCは、ヒトの臍帯血に由来し得、そして、ヒトの臍帯血の未分画量であり得る。あるいは、HSCは、末梢血に由来し得、そして、末梢血の未分画量であり得る。あるいは、HSCは、骨髄に由来し得、そして、骨髄の未分画量であり得る。表面タンパク質CD38の発現を欠失するか、またはこの発現が減少しているHSCの一部は、PSGL−1またはフコシル化されていないグリカンもしくはフコシル化されていないO−グリカンを有する他の構造を含む。この方法において、表面タンパク質CD38の発現を欠失するか、またはこの発現が減少しているHSCの一部は、NeuAcα2,3 Gal β1,4 GIcNAcを含むコア−2 O−グリカンを有するPSGL−1を含み得、これは、GlcNAcに対するα1,3結合においてフコースを欠くか、または、適切なフコシル化を欠く他のグリカンを含む。1つの実施形態において、少なくとも50%の処理されたHSCが、P−セレクチン結合アッセイにおいて所定の蛍光閾値を超えるP−セレクチン結合蛍光、またはE−セレクチン結合アッセイ(本明細書中のどこかに説明される)において所定の蛍光閾値を超えるE−セレクチン結合蛍光を有する。この方法において、α1,3−フコシルトランスフェラーゼは、α1,3−フコシルトランスフェラーゼIV、またはα1,3−フコシルトランスフェラーゼVIIであり得る。さらに、フコースドナーは、GDP−フコースであり得る。
【0051】
本発明はさらに、臍帯血由来のCD34+HSCを含み、表面タンパク質CD38の発現を欠失するか、またはこの発現が減少しているHSCおよび薬学的に受容可能なキャリアの組成物を企図する。ここで、少なくとも10%のCD34+HSCが、P−セレクチン(またはE−セレクチン)に結合する。この組成物においては、代替的な実施形態において、少なくとも25%、50%、75%、90%または95%のCD34+HSCがP−セレクチン(またはE−セレクチン)に結合する。
【0052】
本発明はまた、造血系疾患、または、HSCの移植を必要とする他の状態を有する被験体を、本明細書中に記載される処理されたHSCの組成物を、このような造血系疾患、または、HSCの移植を必要とする他の状態を有する被験体に投与することによって処置することを企図する。この造血系疾患は、例えば、急性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、脊髄形成異常、慢性骨髄性白血病、若年性慢性骨髄性白血病または鎌状赤血球貧血であり得る。
【0053】
さらに、本発明は、CD34+CD38low/−として特徴付けられる細胞を含むヒトHSCの集団を含む血液製剤を企図し、ここで、少なくとも10%のCD34+CD38low/−が、P−セレクチンまたはE−セレクチンに結合する。この血液製剤においては、代替的な実施形態において、少なくとも25%、50%、75%、90%または95%(またはこの範囲内の任意の百分率)のCD34+CD38low/−が、P−セレクチンまたはE−セレクチンに結合する。この血液製剤において、ヒトHSCは、ヒト臍帯血、成人の末梢血、または骨髄に由来し得る。この血液製剤はまた、薬学的に受容可能なキャリアまたはビヒクルを含み得、そしてまた、遊離のフコシルトランスフェラーゼまたは支持体に結合したフコシルトランスフェラーゼを含み得る。
【0054】
本発明はまた、一定量のHSC(少なくともこのHSCの一部は、表面タンパク質CD38の発現を欠失するか、またはこの発現が減少している)を提供する工程、およびインビトロにて、α1,3−フコシルトランスフェラーゼおよびフコースドナーを用いて一定量のHSCを処理し、処理されたHSCを生成する工程を包含する方法によって製造された血液製剤を企図し、ここで、処理されたHSCの少なくとも10%が、P−セレクチンまたはE−セレクチンに結合する。代替的な実施形態において、この血液製剤の、少なくとも25%、50%、75%、90%または95%(または、この範囲に含まれる任意の百分率)の処理されたHSCが、P−セレクチンまたはE−セレクチンに結合する。血液製剤において、この一定量のHSCは、ヒトの臍帯血、末梢血または骨髄に由来し得る。
【0055】
本発明は、種々の実施形態と組合せて、その局面がより完全に理解および認識され得るように上に記載されているが、これらの特定の実施形態に本発明が制限されることは意図されない。対照的に、添付の特許請求の範囲により規定される本発明の範囲内に包含され得る、全ての代替物、改変および等価物を網羅することが意図される。従って、先の実施例は、本発明の実施を例示するのに役立ち、示される特定のものが、一例として、かつ、本発明の例示的な議論の目的のためだけのものであり、そして、最も有用であり、手順の説明、ならびに本発明の原理および概念の面を容易に理解すると考えられるものを提供するために提示されることが理解される。
【0056】
本明細書中に引用される全ての参考文献、特許、および特許出願は、その全体が参考として、本明細書中に援用される。
【0057】
本明細書中に記載される種々の組成物および生成物の構成および操作において、または、本明細書中に記載される方法の工程、もしくは工程の順序において、本明細書中に記載される本発明の精神および範囲から逸脱することなく、変更がなされ得る。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】A:ヒト臍帯血から単離された単核細胞(MNC)のCD34抗体染色。B:CD34濃縮後のCD34抗体染色。C:CD34+細胞の同位体コントロールIgG染色。軸は、フローサイトメトリーにより測定された場合の蛍光強度である。
【図2】A:臍帯血発現PSGL−1から単離されたCD34+細胞。B:CD34+細胞は、約30%のCD34+CD38low/−細胞(始原前駆体(primitive progenitor))と約65%のCD34+CD38+細胞とからなる。軸は、フローサイトメトリーにより測定された場合の蛍光強度である。
【図3】A:CD34+細胞は、P−セレクチン結合細胞(R2)または非P−セレクチン結合細胞(R1)としてゲートされている。B:R1領域に由来する24%±5%のCD34+細胞は、CD38の発現がまったくないか減少している。この結果は、4回の独立のフローサイトメトリー分析の代表であり、非P−セレクチン結合HSCの有意な数がCD34+およびCD38low/−であることを示す。
【図4】ヨウ化プロピジウム(PI)染色により測定されるとおりのインビトロフコシル化後の細胞の生存度。A:非処置細胞。B:擬処理(sham−treated)細胞。C:FT−VI処理細胞。軸は、フローサイトメトリーにより測定された場合の蛍光強度である。
【図5】A:臍帯血から得られたCD34+細胞の15%が、sLe特異的モノクローナル抗体HECA 452で染色されるように、低フコシル化または非フコシル化エピトープを発現する。B:FT−VIおよびGDP−フコースによるインビトロα1,3−フコシル化は、臍帯血由来のCD34+細胞におけるsLexエピトープを劇的に増加させる。軸は、フローサイトメトリーにより測定された場合の蛍光強度である。
【図6】P−セクレチンの飽和量を決定するための、フローサイトメトリーによるCD34+HSC対する可溶性P−セレクチン結合の滴定。
【図7】臍帯血由来のCD34+細胞に対する飽和濃度の可溶性P−セレクチンの結合。A:非処理の臍帯血由来のCD34+細胞の約27%は、P−セレクチンに結合しないかまたはP−セレクチンに対して低レベルの結合を有する。B:インビトロα1,3−フコシル化は、P−セレクチン結合についてネガティブまたは低くあるCD34+細胞を、P−セレクチン結合についてポジティブまたは高くある細胞に転換する。CおよびD:P−セレクチンは、P−セレクチン(G1)およびPSGL−1(PL1)に対してモノクローナル抗体をブロックすることによって確認されるように、臍帯血由来のCD34+細胞においてPSGL−1に結合する。EDTAはまた、結合を阻害し、これは、PSGL−1に対するP−セレクチン結合を支持するためのCa2+の要求と一致する。軸は、フローサイトメトリーにより測定された場合の蛍光強度である。
【図8】剪断力下での、ヒト血清アルブミン(HSA)またはヒトP−セレクチンにおけるCD34+細胞の回転。GDP−フコースおよびFT−VIによる臍帯血由来のCD34+細胞の処理は、ずれ流動中のP−セレクチンにおいて細胞回転を有意に増加する。
【図9】臍帯血由来のCD34+細胞に対する、可飽和濃度の可溶性E−セレクチンの結合。A:非処理の臍帯血由来のCD34+細胞の約24%は、E−セレクチンに結合しないかまたは低レベルの結合を有する。B:インビトロα1,3−フコシル化は、E−セレクチン結合についてネガティブかまたは低くあるCD34+細胞を、E−セレクチンについてポジティブかつ高くある細胞に転換する。CおよびD:E−セレクチンは、E−セレクチンに対してモノクローナル抗体をブロックすることにより確認されるように、臍帯血由来のCD34+細胞に結合する(9A9)。EDTAもまた、結合を阻害する。軸は、フローサイトメトリーにより測定された場合の蛍光強度である。この結果は、3回の独立の測定の代表である。
【図10】インビトロフコシル化は、剪断力下で、ヒト可溶性E−セレクチンにおけるCD34+細胞回転を有意に増加させる。AおよびB:GDP−フコースおよびFT−VIによるCB CD34+細胞の処理は、様々な剪断力下で、E−セレクチンにおいて回転する細胞の数を有意に増加させる。回転は、それらの細胞がヒト血清アルブミン(HSA)において回転せず、回転がES1、ヒトE−セレクチンに対するmAbによって特異的にブロックされたがPL1、mAb(PSGL−1のP−セレクチン結合部位に結合する)によってブッロクされなかったように、E−セレクチン依存性である。CおよびD:フコシル化CD34+細胞は、剪断力に対してより耐性であり、非処理CD34+細胞よりもよりゆっくりと回る。このデータは、4回の独立の実験の平均±SDを表す。
【図11】フコシル化CB HSCは、致死照射したNOD/SCIDマウスの骨髄における移植の増強を示す。8×106回の擬処理またはFTVI処理CB細胞の移植6週間後のマウスに由来する骨髄(BM)または末梢血(PB)が、ヒト由来の造血移植について分析された。(A)ヒト汎白血球マーカーCD45に対してmAbで染色したBMおよびPB細胞のフローサイトメトリー分析は、フコシル化CB細胞を移植したマウスにおけるヒト由来の細胞の倍加を示した。(B)フコシル化せずにCB細胞を移植したマウスと比較すると、ヒト造血性前駆体アッセイによって示されるように、フコシル化したCB細胞を移植したマウスに由来するBM細胞は、有意に多くのヒトコロニー形成前駆体(これにはBFU−E、CFU−GM、およびCFU−GEMMが挙げられる)を含む。生理食塩水のみを注射したコントロールマウスの骨髄は、コロニーを産生せず、このアッセイの特異性が確認された。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
HSCを処理する方法であって、該方法は、以下の工程:
一定量のHSC、少なくとも、表面タンパク質CD38の発現を欠くかまたはその発現が減少したHSCの一部を提供する工程;および
該一定量のHSCをインビトロで、α1,3−フコシルトランスフェラーゼおよびフコースドナーで処理して、処理されたHSCを形成する工程であって、ここで該処理されたHSCは、P−セレクチンまたはE−セレクチンへの増強された結合を有する、工程、
を包含する、方法。
【請求項2】
前記一定量のHSCを提供する工程において、前記表面タンパク質CD38の発現を欠くかまたはその発現が減少したHSCの一部は、減少した骨髄ホーミング能力を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記一定量のHSCを提供する工程において、該HSCは、ヒト臍帯血に由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ヒト臍帯血は、未分画量のヒト臍帯血である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記一定量のHSCを提供する工程において、該HSCは、末梢血に由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記末梢血は、未分画量の末梢血である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記一定量のHSCを提供する工程において、該HSCは、骨髄に由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記骨髄は、未分画量の骨髄である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記一定量のHSCを提供する工程において、前記表面タンパク質CD38の発現を欠くかまたはその発現が減少したHSCの一部は、非フコシル化グリカンまたは非フコシル化O−グリカンを有するPSGL−1を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記一定量のHSCを提供する工程において、前記表面タンパク質CD38の発現を欠くかまたはその発現が減少したHSCの一部は、NeuAcα2,3Galβ1,4GIcNAcを含み、かつ該GlcNAcへのα1,3結合のフコースが存在しないかまたは適切なフコシル化を欠く他のグリカンを含む、コア−2O−グリカンを有するPSGL−1を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記一定量のHSCを処理する工程において、前記処理されたHSCの少なくとも50%は、P−セレクチン結合アッセイにおいて所定の蛍光閾値を超えるP−セレクチン結合蛍光を有するか、またはE−セレクチン結合アッセイにおいて所定の蛍光閾値を超えるE−セレクチン結合蛍光を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記一定量のHSCを処理する工程において、前記α1,3フコシルトランスフェラーゼは、α1,3フコシルトランスフェラーゼIV、α1,3フコシルトランスフェラーゼVI、またはα1,3フコシルトランスフェラーゼVIIである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記一定量のHSCを処理する工程において、前記フコースドナーは、GDP−フコースである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
HSCの組成物であって、以下:
臍帯血に由来し、表面タンパク質CD38の発現を欠くかまたはその発現が減少したCD34+HSCであって、ここで該CD34+HSCの少なくとも10%は、P−セレクチンまたはE−セレクチンに結合する、CD34+HSC;および
薬学的に受容可能なキャリア、
を含有する、組成物。
【請求項15】
前記CD34+HSCの少なくとも25%は、P−セレクチンまたはE−セレクチンに結合する、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記CD34+HSCの少なくとも50%は、P−セレクチンまたはE−セレクチンに結合する、請求項14に記載の組成物。
【請求項17】
前記CD34+HSCの少なくとも75%は、P−セレクチンまたはE−セレクチンに結合する、請求項14に記載の組成物。
【請求項18】
前記CD34+HSCの少なくとも90%は、P−セレクチンまたはE−セレクチンに結合する、請求項14に記載の組成物。
【請求項19】
前記CD34+HSCの少なくとも95%は、P−セレクチンまたはE−セレクチンに結合する、請求項14に記載の組成物。
【請求項20】
血液学的疾患またはHSCの移植を要する他の状態を有する被験体を処置する方法であって、該方法は、一定量の請求項14に記載の組成物を、該血液学的疾患またはHSCの移植を要する他の状態を有する被験体に投与する工程を包含する、方法。
【請求項21】
前記血液学的疾患は、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、脊髄形成異常、慢性骨髄性白血病、若年性慢性骨髄性白血病、または鎌状赤血球貧血のうちの1つである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
血液製剤であって、以下:
CD34+CD38low/−として特徴づけられる細胞を含むヒトHSCの集団であって、ここで該CD34+CD38low/−HSCの少なくとも10%は、P−セレクチンまたはE−セレクチンに結合する、ヒトHSCの集団、
を含む、血液製剤。
【請求項23】
前記CD34+CD38low/−HSCの少なくとも25%は、P−セレクチンまたはE−セレクチンに結合する、請求項22に記載の血液製剤。
【請求項24】
前記CD34+CD38low/−HSCの少なくとも50%は、P−セレクチンまたはE−セレクチンに結合する、請求項22に記載の血液製剤。
【請求項25】
前記CD34+CD38low/−HSCの少なくとも75%は、P−セレクチンまたはE−セレクチンに結合する、請求項22に記載の血液製剤。
【請求項26】
前記CD34+CD38low/−HSCの少なくとも90%は、P−セレクチンまたはE−セレクチンに結合する、請求項22に記載の血液製剤。
【請求項27】
前記CD34+CD38low/−HSCの少なくとも95%は、P−セレクチンまたはE−セレクチンに結合する、請求項22に記載の血液製剤。
【請求項28】
前記ヒトHSCは、ヒト臍帯血に由来する、請求項22に記載の血液製剤。
【請求項29】
前記ヒトHSCは、末梢血由来である、請求項22に記載の血液製剤。
【請求項30】
前記ヒトHSCは、骨髄由来である、請求項22に記載の血液製剤。
【請求項31】
薬学的に受容可能なキャリアまたはビヒクルをさらに含む、請求項22に記載の血液製剤。
【請求項32】
遊離のフコシルトランスフェラーゼまたは支持体に結合したフコシルトランスフェラーゼをさらに含む、請求項22に記載の血液製剤。
【請求項33】
以下の工程:
一定量のHSC、少なくとも、表面タンパク質CD38の発現を欠くかまたはその発現が減少したHSCの一部を提供する工程;および
該一定量のHSCをインビトロで、α1,3−フコシルトランスフェラーゼおよびフコースドナーで処理して、処理されたHSCを生成する工程であって、ここで該処理されたHSCの少なくとも10%は、P−セレクチンまたはE−セレクチンに結合する、工程、
を包含する方法により生成される、血液製剤。
【請求項34】
前記処理されたHSCの少なくとも25%は、P−セレクチンまたはE−セレクチンに結合する、請求項33に記載の血液製剤。
【請求項35】
前記処理されたHSCの少なくとも50%は、P−セレクチンまたはE−セレクチンに結合する、請求項33に記載の血液製剤。
【請求項36】
前記処理されたHSCの少なくとも75%は、P−セレクチンまたはE−セレクチンに結合する、請求項33に記載の血液製剤。
【請求項37】
前記処理されたHSCの少なくとも90%は、P−セレクチンまたはE−セレクチンに結合する、請求項33に記載の血液製剤。
【請求項38】
前記処理されたHSCの少なくとも95%は、P−セレクチンまたはE−セレクチンに結合する、請求項33に記載の血液製剤。
【請求項39】
前記一定量のHSCは、ヒト臍帯血に由来する、請求項33に記載の血液製剤。
【請求項40】
前記一定量のHSCは、末梢血に由来する、請求項33に記載の血液製剤。
【請求項41】
前記一定量のHSCは、骨髄に由来する、請求項33に記載の血液製剤。
【請求項42】
HSCを処理する方法であって、該方法は、以下の工程:
一定量のHSCを提供する工程;および
該一定量のHSCをインビトロで、α1,3−フコシルトランスフェラーゼおよびフコースドナーで処理して、処理されたHSCを形成する工程であって、ここで該処理されたHSCは、P−セレクチンまたはE−セレクチンへの増強された結合を有する、工程、
を包含する、方法。
【請求項43】
前記一定量のHSCを提供する工程において、該一定量のHSCの一部は、減少した骨髄ホーミング能力を有する、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記一定量のHSCを提供する工程において、該HSCは、ヒト臍帯血に由来する、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
前記ヒト臍帯血は、未分画量のヒト臍帯血である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記一定量のHSCを提供する工程において、該HSCは、末梢血に由来する、請求項42に記載の方法。
【請求項47】
前記末梢血は、未分画量の末梢血である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記一定量のHSCを提供する工程において、該HSCは、骨髄に由来する、請求項42に記載の方法。
【請求項49】
前記骨髄は、未分画量の骨髄である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記一定量のHSCを提供する工程において、該一定量のHSCの一部は、非フコシル化グリカンまたは非フコシル化O−グリカンを有するPSGL−1を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項51】
前記一定量のHSCを提供する工程において、該一定量のHSCの一部は、NeuAcα2,3Galβ1,4GIcNAcを含み、かつ該GlcNAcへのα1,3結合のフコースが存在しないかまたは適切なフコシル化を欠く他のグリカンを含む、コア−2O−グリカンを有するPSGL−1を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項52】
前記一定量のHSCを処理する工程において、前記処理されたHSCの少なくとも50%は、P−セレクチン結合アッセイにおいて所定の蛍光閾値を超えるP−セレクチン結合蛍光を有するか、またはE−セレクチン結合アッセイにおいて所定の蛍光閾値を超えるE−セレクチン結合蛍光を有する、請求項42に記載の方法。
【請求項53】
前記一定量のHSCを処理する工程において、前記α1,3フコシルトランスフェラーゼは、α1,3フコシルトランスフェラーゼIV、α1,3フコシルトランスフェラーゼVI、またはα1,3フコシルトランスフェラーゼVIIである、請求項42に記載の方法。
【請求項54】
前記一定量のHSCを処理する工程において、前記フコースドナーは、GDP−フコースである、請求項42に記載の方法。
【請求項55】
HSCの組成物であって、以下:
臍帯血に由来するCD34+HSCであって、ここで該CD34+HSCの少なくとも10%は、P−セレクチンまたはE−セレクチンに結合する、CD34+HSC;および
薬学的に受容可能なキャリア、
を含有する、組成物。
【請求項56】
前記CD34+HSCの少なくとも25%は、P−セレクチンまたはE−セレクチンに結合する、請求項55に記載の組成物。
【請求項57】
前記CD34+HSCの少なくとも50%は、P−セレクチンまたはE−セレクチンに結合する、請求項55に記載の組成物。
【請求項58】
前記CD34+HSCの少なくとも75%は、P−セレクチンまたはE−セレクチンに結合する、請求項55に記載の組成物。
【請求項59】
前記CD34+HSCの少なくとも90%は、P−セレクチンまたはE−セレクチンに結合する、請求項55に記載の組成物。
【請求項60】
前記CD34+HSCの少なくとも95%は、P−セレクチンまたはE−セレクチンに結合する、請求項55に記載の組成物。
【請求項61】
血液学的疾患またはHSCの移植を要する他の状態を有する被験体を処置する方法であって、該方法は、一定量の請求項55に記載の組成物を、該血液学的疾患またはHSCの移植を要する他の状態を有する被験体に投与する工程を包含する、方法。
【請求項62】
前記血液学的疾患は、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、脊髄形成異常、慢性骨髄性白血病、若年性慢性骨髄性白血病、または鎌状赤血球貧血のうちの1つである、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
以下の工程:
一定量のHSCを提供する工程;および
該一定量のHSCをインビトロで、α1,3−フコシルトランスフェラーゼおよびフコースドナーで処理して、処理されたHSCを生成する工程であって、ここで該処理されたHSCの少なくとも10%は、P−セレクチンまたはE−セレクチンに結合する、工程、
を包含する方法により生成される、血液製剤。
【請求項64】
前記処理されたHSCの少なくとも25%は、P−セレクチンまたはE−セレクチンに結合する、請求項63に記載の血液製剤。
【請求項65】
前記処理されたHSCの少なくとも50%は、P−セレクチンまたはE−セレクチンに結合する、請求項63に記載の血液製剤。
【請求項66】
前記処理されたHSCの少なくとも75%は、P−セレクチンまたはE−セレクチンに結合する、請求項63に記載の血液製剤。
【請求項67】
前記処理されたHSCの少なくとも90%は、P−セレクチンまたはE−セレクチンに結合する、請求項63に記載の血液製剤。
【請求項68】
前記処理されたHSCの少なくとも95%は、P−セレクチンまたはE−セレクチンに結合する、請求項63に記載の血液製剤。
【請求項69】
前記一定量のHSCは、ヒト臍帯血に由来する、請求項63に記載の血液製剤。
【請求項70】
前記一定量のHSCは、末梢血に由来する、請求項63に記載の血液製剤。
【請求項71】
前記一定量のHSCは、骨髄に由来する、請求項63に記載の血液製剤。
【請求項72】
薬学的に受容可能なキャリアまたはビヒクルをさらに含む、請求項63に記載の血液製剤。
【請求項73】
遊離フコシルトランスフェラーゼまたは支持体に結合したフコシルトランスフェラーゼをさらに含む、請求項63に記載の血液製剤。
【請求項1】
HSCを処理する方法であって、該方法は、以下の工程:
一定量のHSC、少なくとも、表面タンパク質CD38の発現を欠くかまたはその発現が減少したHSCの一部を提供する工程;および
該一定量のHSCをインビトロで、α1,3−フコシルトランスフェラーゼおよびフコースドナーで処理して、処理されたHSCを形成する工程であって、ここで該処理されたHSCは、P−セレクチンまたはE−セレクチンへの増強された結合を有する、工程、
を包含する、方法。
【請求項2】
前記一定量のHSCを提供する工程において、前記表面タンパク質CD38の発現を欠くかまたはその発現が減少したHSCの一部は、減少した骨髄ホーミング能力を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記一定量のHSCを提供する工程において、該HSCは、ヒト臍帯血に由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ヒト臍帯血は、未分画量のヒト臍帯血である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記一定量のHSCを提供する工程において、該HSCは、末梢血に由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記末梢血は、未分画量の末梢血である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記一定量のHSCを提供する工程において、該HSCは、骨髄に由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記骨髄は、未分画量の骨髄である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記一定量のHSCを提供する工程において、前記表面タンパク質CD38の発現を欠くかまたはその発現が減少したHSCの一部は、非フコシル化グリカンまたは非フコシル化O−グリカンを有するPSGL−1を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記一定量のHSCを提供する工程において、前記表面タンパク質CD38の発現を欠くかまたはその発現が減少したHSCの一部は、NeuAcα2,3Galβ1,4GIcNAcを含み、かつ該GlcNAcへのα1,3結合のフコースが存在しないかまたは適切なフコシル化を欠く他のグリカンを含む、コア−2O−グリカンを有するPSGL−1を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記一定量のHSCを処理する工程において、前記処理されたHSCの少なくとも50%は、P−セレクチン結合アッセイにおいて所定の蛍光閾値を超えるP−セレクチン結合蛍光を有するか、またはE−セレクチン結合アッセイにおいて所定の蛍光閾値を超えるE−セレクチン結合蛍光を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記一定量のHSCを処理する工程において、前記α1,3フコシルトランスフェラーゼは、α1,3フコシルトランスフェラーゼIV、α1,3フコシルトランスフェラーゼVI、またはα1,3フコシルトランスフェラーゼVIIである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記一定量のHSCを処理する工程において、前記フコースドナーは、GDP−フコースである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
HSCの組成物であって、以下:
臍帯血に由来し、表面タンパク質CD38の発現を欠くかまたはその発現が減少したCD34+HSCであって、ここで該CD34+HSCの少なくとも10%は、P−セレクチンまたはE−セレクチンに結合する、CD34+HSC;および
薬学的に受容可能なキャリア、
を含有する、組成物。
【請求項15】
前記CD34+HSCの少なくとも25%は、P−セレクチンまたはE−セレクチンに結合する、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記CD34+HSCの少なくとも50%は、P−セレクチンまたはE−セレクチンに結合する、請求項14に記載の組成物。
【請求項17】
前記CD34+HSCの少なくとも75%は、P−セレクチンまたはE−セレクチンに結合する、請求項14に記載の組成物。
【請求項18】
前記CD34+HSCの少なくとも90%は、P−セレクチンまたはE−セレクチンに結合する、請求項14に記載の組成物。
【請求項19】
前記CD34+HSCの少なくとも95%は、P−セレクチンまたはE−セレクチンに結合する、請求項14に記載の組成物。
【請求項20】
血液学的疾患またはHSCの移植を要する他の状態を有する被験体を処置する方法であって、該方法は、一定量の請求項14に記載の組成物を、該血液学的疾患またはHSCの移植を要する他の状態を有する被験体に投与する工程を包含する、方法。
【請求項21】
前記血液学的疾患は、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、脊髄形成異常、慢性骨髄性白血病、若年性慢性骨髄性白血病、または鎌状赤血球貧血のうちの1つである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
血液製剤であって、以下:
CD34+CD38low/−として特徴づけられる細胞を含むヒトHSCの集団であって、ここで該CD34+CD38low/−HSCの少なくとも10%は、P−セレクチンまたはE−セレクチンに結合する、ヒトHSCの集団、
を含む、血液製剤。
【請求項23】
前記CD34+CD38low/−HSCの少なくとも25%は、P−セレクチンまたはE−セレクチンに結合する、請求項22に記載の血液製剤。
【請求項24】
前記CD34+CD38low/−HSCの少なくとも50%は、P−セレクチンまたはE−セレクチンに結合する、請求項22に記載の血液製剤。
【請求項25】
前記CD34+CD38low/−HSCの少なくとも75%は、P−セレクチンまたはE−セレクチンに結合する、請求項22に記載の血液製剤。
【請求項26】
前記CD34+CD38low/−HSCの少なくとも90%は、P−セレクチンまたはE−セレクチンに結合する、請求項22に記載の血液製剤。
【請求項27】
前記CD34+CD38low/−HSCの少なくとも95%は、P−セレクチンまたはE−セレクチンに結合する、請求項22に記載の血液製剤。
【請求項28】
前記ヒトHSCは、ヒト臍帯血に由来する、請求項22に記載の血液製剤。
【請求項29】
前記ヒトHSCは、末梢血由来である、請求項22に記載の血液製剤。
【請求項30】
前記ヒトHSCは、骨髄由来である、請求項22に記載の血液製剤。
【請求項31】
薬学的に受容可能なキャリアまたはビヒクルをさらに含む、請求項22に記載の血液製剤。
【請求項32】
遊離のフコシルトランスフェラーゼまたは支持体に結合したフコシルトランスフェラーゼをさらに含む、請求項22に記載の血液製剤。
【請求項33】
以下の工程:
一定量のHSC、少なくとも、表面タンパク質CD38の発現を欠くかまたはその発現が減少したHSCの一部を提供する工程;および
該一定量のHSCをインビトロで、α1,3−フコシルトランスフェラーゼおよびフコースドナーで処理して、処理されたHSCを生成する工程であって、ここで該処理されたHSCの少なくとも10%は、P−セレクチンまたはE−セレクチンに結合する、工程、
を包含する方法により生成される、血液製剤。
【請求項34】
前記処理されたHSCの少なくとも25%は、P−セレクチンまたはE−セレクチンに結合する、請求項33に記載の血液製剤。
【請求項35】
前記処理されたHSCの少なくとも50%は、P−セレクチンまたはE−セレクチンに結合する、請求項33に記載の血液製剤。
【請求項36】
前記処理されたHSCの少なくとも75%は、P−セレクチンまたはE−セレクチンに結合する、請求項33に記載の血液製剤。
【請求項37】
前記処理されたHSCの少なくとも90%は、P−セレクチンまたはE−セレクチンに結合する、請求項33に記載の血液製剤。
【請求項38】
前記処理されたHSCの少なくとも95%は、P−セレクチンまたはE−セレクチンに結合する、請求項33に記載の血液製剤。
【請求項39】
前記一定量のHSCは、ヒト臍帯血に由来する、請求項33に記載の血液製剤。
【請求項40】
前記一定量のHSCは、末梢血に由来する、請求項33に記載の血液製剤。
【請求項41】
前記一定量のHSCは、骨髄に由来する、請求項33に記載の血液製剤。
【請求項42】
HSCを処理する方法であって、該方法は、以下の工程:
一定量のHSCを提供する工程;および
該一定量のHSCをインビトロで、α1,3−フコシルトランスフェラーゼおよびフコースドナーで処理して、処理されたHSCを形成する工程であって、ここで該処理されたHSCは、P−セレクチンまたはE−セレクチンへの増強された結合を有する、工程、
を包含する、方法。
【請求項43】
前記一定量のHSCを提供する工程において、該一定量のHSCの一部は、減少した骨髄ホーミング能力を有する、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記一定量のHSCを提供する工程において、該HSCは、ヒト臍帯血に由来する、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
前記ヒト臍帯血は、未分画量のヒト臍帯血である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記一定量のHSCを提供する工程において、該HSCは、末梢血に由来する、請求項42に記載の方法。
【請求項47】
前記末梢血は、未分画量の末梢血である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記一定量のHSCを提供する工程において、該HSCは、骨髄に由来する、請求項42に記載の方法。
【請求項49】
前記骨髄は、未分画量の骨髄である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記一定量のHSCを提供する工程において、該一定量のHSCの一部は、非フコシル化グリカンまたは非フコシル化O−グリカンを有するPSGL−1を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項51】
前記一定量のHSCを提供する工程において、該一定量のHSCの一部は、NeuAcα2,3Galβ1,4GIcNAcを含み、かつ該GlcNAcへのα1,3結合のフコースが存在しないかまたは適切なフコシル化を欠く他のグリカンを含む、コア−2O−グリカンを有するPSGL−1を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項52】
前記一定量のHSCを処理する工程において、前記処理されたHSCの少なくとも50%は、P−セレクチン結合アッセイにおいて所定の蛍光閾値を超えるP−セレクチン結合蛍光を有するか、またはE−セレクチン結合アッセイにおいて所定の蛍光閾値を超えるE−セレクチン結合蛍光を有する、請求項42に記載の方法。
【請求項53】
前記一定量のHSCを処理する工程において、前記α1,3フコシルトランスフェラーゼは、α1,3フコシルトランスフェラーゼIV、α1,3フコシルトランスフェラーゼVI、またはα1,3フコシルトランスフェラーゼVIIである、請求項42に記載の方法。
【請求項54】
前記一定量のHSCを処理する工程において、前記フコースドナーは、GDP−フコースである、請求項42に記載の方法。
【請求項55】
HSCの組成物であって、以下:
臍帯血に由来するCD34+HSCであって、ここで該CD34+HSCの少なくとも10%は、P−セレクチンまたはE−セレクチンに結合する、CD34+HSC;および
薬学的に受容可能なキャリア、
を含有する、組成物。
【請求項56】
前記CD34+HSCの少なくとも25%は、P−セレクチンまたはE−セレクチンに結合する、請求項55に記載の組成物。
【請求項57】
前記CD34+HSCの少なくとも50%は、P−セレクチンまたはE−セレクチンに結合する、請求項55に記載の組成物。
【請求項58】
前記CD34+HSCの少なくとも75%は、P−セレクチンまたはE−セレクチンに結合する、請求項55に記載の組成物。
【請求項59】
前記CD34+HSCの少なくとも90%は、P−セレクチンまたはE−セレクチンに結合する、請求項55に記載の組成物。
【請求項60】
前記CD34+HSCの少なくとも95%は、P−セレクチンまたはE−セレクチンに結合する、請求項55に記載の組成物。
【請求項61】
血液学的疾患またはHSCの移植を要する他の状態を有する被験体を処置する方法であって、該方法は、一定量の請求項55に記載の組成物を、該血液学的疾患またはHSCの移植を要する他の状態を有する被験体に投与する工程を包含する、方法。
【請求項62】
前記血液学的疾患は、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、脊髄形成異常、慢性骨髄性白血病、若年性慢性骨髄性白血病、または鎌状赤血球貧血のうちの1つである、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
以下の工程:
一定量のHSCを提供する工程;および
該一定量のHSCをインビトロで、α1,3−フコシルトランスフェラーゼおよびフコースドナーで処理して、処理されたHSCを生成する工程であって、ここで該処理されたHSCの少なくとも10%は、P−セレクチンまたはE−セレクチンに結合する、工程、
を包含する方法により生成される、血液製剤。
【請求項64】
前記処理されたHSCの少なくとも25%は、P−セレクチンまたはE−セレクチンに結合する、請求項63に記載の血液製剤。
【請求項65】
前記処理されたHSCの少なくとも50%は、P−セレクチンまたはE−セレクチンに結合する、請求項63に記載の血液製剤。
【請求項66】
前記処理されたHSCの少なくとも75%は、P−セレクチンまたはE−セレクチンに結合する、請求項63に記載の血液製剤。
【請求項67】
前記処理されたHSCの少なくとも90%は、P−セレクチンまたはE−セレクチンに結合する、請求項63に記載の血液製剤。
【請求項68】
前記処理されたHSCの少なくとも95%は、P−セレクチンまたはE−セレクチンに結合する、請求項63に記載の血液製剤。
【請求項69】
前記一定量のHSCは、ヒト臍帯血に由来する、請求項63に記載の血液製剤。
【請求項70】
前記一定量のHSCは、末梢血に由来する、請求項63に記載の血液製剤。
【請求項71】
前記一定量のHSCは、骨髄に由来する、請求項63に記載の血液製剤。
【請求項72】
薬学的に受容可能なキャリアまたはビヒクルをさらに含む、請求項63に記載の血液製剤。
【請求項73】
遊離フコシルトランスフェラーゼまたは支持体に結合したフコシルトランスフェラーゼをさらに含む、請求項63に記載の血液製剤。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2007−525164(P2007−525164A)
【公表日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−509036(P2006−509036)
【出願日】平成16年3月3日(2004.3.3)
【国際出願番号】PCT/US2004/006474
【国際公開番号】WO2004/094619
【国際公開日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【出願人】(505387093)
【出願人】(505387107)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年3月3日(2004.3.3)
【国際出願番号】PCT/US2004/006474
【国際公開番号】WO2004/094619
【国際公開日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【出願人】(505387093)
【出願人】(505387107)
【Fターム(参考)】
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