説明

インビトロ区画化を用いるタンパク質の選択および富化

ゲノムから又は遺伝的配列のランダム突然変異誘発により形成されうるようなポリヌクレオチド配列のライブラリーからの標的遺伝子の選択および富化のための組成物および方法を提供する。該選択および富化は、該ライブラリーからの個々のポリヌクレオチドまたは該ライブラリー由来でないポリヌクレオチドを含みうる複数のポリヌクレオチドならびに転写および翻訳試薬ならびに場合によっては追加的な化学的および酵素試薬を区画化する、エマルション中で形成された水性液滴において生じる。該選択および富化方法は、該ポリヌクレオチド断片に連結されるとアダプター特異的プライマーの存在下で増幅が生じるのを可能にするポリヌクレオチドアダプターを利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
インビトロ区画化(in vitro compartmentalization)を用いるタンパク質の選択および富化に関する。
【背景技術】
【0002】
ダーウィン的進化は多様性を生み出し、変化している環境における個体の成分部分の改善を可能にする。改変された特異性を有する酵素を設計するための1つのアプローチは、インビトロで操作されうる状況における進化を利用することである。この種のアプローチは、遺伝子型と表現型との関連づけ、ならびに様々な遺伝子型の選択および富化(enrichment)のための方法を要する。これらの考察に基づく方法には、ファージディスプレイ(例えば、Smith,Science 228:1315−1317(1985)および米国特許第7,211,564号を参照されたい。)、mRNAディスプレイ(Hanesら,Proc.National Academy Science 94:4937−4942(1997)およびTawfikら,Nat Biotechnol.16:652−656(1998))、およびリボソームディスプレイ(Robertsら,Proc Natl Acad Sci USA 94:12297−12302(1997))が含まれる。これらの方法は、複製可能な粒子の表面上の所望の表現型の提示(ディスプレイ)を利用する。
【0003】
インビトロ区画化(IVC)と称される定向進化のもう1つの方法は油中の水性液滴のエマルションの形成に基づくものであり、ここで、該水性液滴は、制御された量およびタイプのポリヌクレオチドを含有し、それと共に少なくとも、該封入ポリヌクレオチドによりコードされるいずれかの遺伝子の発現を可能にする転写および翻訳系を含有する。これらのエマルション中の水性液滴は、後記に挙げられている刊行物の少なくとも幾つかにおいては、マイクロカプセルとも称される。ついで転写および翻訳のタンパク質産物が、水性液滴1010個中僅か1個の量で最初に存在しうる標的遺伝子の富化を好ましくは可能にするアッセイの幾つかの形態により検出されうる(例えば、Doiら,Nucleic Acids Res 32:e95(2004)、米国特許第6,184,012号、第6,489,103号、第6,495,673号、第7,138,233号および第7,252,943号、米国公開番号2005/0221339、2006/0153924、2006/0154298、2006/0078893、2007/0077572、2007/0092914、2007/0184489および2008/0004436ならびに国際出願番号WO 2006/040551およびWO 2006/051552を参照されたい。)。
【0004】
選択および富化の問題点が解決可能となり、単一エマルション中の10〜1010個もの水性液滴(各水性液滴は分子のライブラリーからの異なる分子を含有する。)を安定に作製することができれば、広範な配列空間における所望の表現型をコードする標的遺伝子に関する高速スクリーニング方法を得ることが可能となるであろう。
【0005】
残念なことに、IVCを用いる報告されているスクリーニングおよび富化方法は期待外れのものである。例えば、Doiらは、制限エンドヌクレアーゼ表現型を発現する遺伝子型の選択および富化のためのスクリーニング方法を記載している。Doiらは、ストレプトアビジンアフィニティー精製を可能にする、制限エンドヌクレアーゼ切断により生成した付着末端へのdUTP−ビオチンの取り込みのためにDNAポリメラーゼを使用した。1ラウンドのインビトロ区画化において、単一のポリヌクレオチドの僅か10倍の富化が達成されたに過ぎなかった。その結果、ランダム化FokIライブラリーから活性表現型FokIを選択するために、多数のラウンドの富化が要求された。
【0006】
エマルションを使用するインビトロ区画化は、広範な配列空間からの標的遺伝子の効率的回収を可能にするよう溶液中のタンパク質活性の選択およびその富化が最適化されうるならば、定向進化の潜在的に有力な方法となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第7,211,564号明細書
【特許文献2】米国特許第6,184,012号明細書
【特許文献3】米国特許第6,489,103号明細書
【特許文献4】米国特許第6,495,673号明細書
【特許文献5】米国特許第7,138,233号明細書
【特許文献6】米国特許第7,252,943号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2005/0221339号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2006/0153924号明細書
【特許文献9】米国特許出願公開第2006/0154298号明細書
【特許文献10】米国特許出願公開第2006/0078893号明細書
【特許文献11】米国特許出願公開第2007/0077572号明細書
【特許文献12】米国特許出願公開第2007/0092914号明細書
【特許文献13】米国特許出願公開第2007/0184489号明細書
【特許文献14】米国特許出願公開第2008/0004436号明細書
【特許文献15】国際公開第2006/040551号
【特許文献16】国際公開第2006/051552号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Science 228:1315−1317(1985)
【非特許文献2】Proc.National Academy Science 94:4937−4942(1997)
【非特許文献3】Nat Biotechnol.16:652−656(1998)
【非特許文献4】Proc Natl Acad Sci USA 94:12297−12302(1997)
【非特許文献5】Nucleic Acids Res 32:e95(2004)
【発明の概要】
【0009】
(要旨)
本発明の1つの実施形態においては、標的遺伝子の選択および富化のための方法を記載する。ここで、該方法は、所望の活性を有するタンパク質をコードする標的遺伝子を1以上のポリヌクレオチド断片が含む、ポリヌクレオチド断片のライブラリーを得ることを含む。該ライブラリー中のポリヌクレオチドをエマルション中の複数の水性液滴中に封入し、ここで、複数の液滴における水性液滴のそれぞれは、(i)転写および翻訳活性を有する酵素の混合物、ならびに(ii)ポリヌクレオチド断片のライブラリーからの1以上のポリヌクレオチド断片を含有する。該ライブラリーからの標的遺伝子を転写させ翻訳させて、リガーゼにより触媒される反応において該ポリヌクレオチド断片がポリヌクレオチドアダプターに共有的に連結されることを可能にする活性を有するタンパク質を得る。本発明の1つの実施形態においては、連結は、好ましくは、該ポリヌクレオチド断片および該ポリヌクレオチドアダプター上の相補的付着末端間で生じるが、該ポリヌクレオチド断片上の平滑末端が連結可能であれば、連結は平滑末端連結によっても達成されうる。これは、例えば、制限エンドヌクレアーゼの活性により達成されうる。ついでアダプター特異的プライマーを使用して、該標的遺伝子を選択的に増幅することが可能である。
【0010】
該アダプター特異的プライマーは、好ましくは、該ポリヌクレオチド断片内には存在せず該アダプター内にのみ存在する配列を有する。しかし、該プライマーは、大部分が該アダプター内に位置するが該ポリヌクレオチド断片の末端における短い配列(例えば、20ヌクレオチド未満)と重複する配列を有しうる。標的遺伝子の具体例には、リガーゼ活性、例えばRNAまたはDNAリガーゼ活性;ポリヌクレオチド切断活性、例えば制限エンドヌクレアーゼ活性、ニッキングエンドヌクレアーゼ活性またはホーミングエンドヌクレアーゼ活性;転写または翻訳活性、例えばtRNAシンテターゼ活性またはRNAポリメラーゼ活性;および逆転写活性よりなる群から選ばれる活性を有するタンパク質をコードするものが含まれる。
【0011】
もう1つの実施形態においては、該ライブラリー中のポリヌクレオチド断片の全てに共通の配列にハイブリダイズしうる第2プライマーをポリメラーゼ依存的増幅において使用し、ここで、該配列は、該アダプター連結末端とは逆の、該ポリヌクレオチドの末端に位置する。好ましくは、該特異的配列はまた、該遺伝子の外部に位置する。
【0012】
1つの実施形態においては、該標的遺伝子の転写および翻訳の後、かつ、該ポリヌクレオチド断片への該アダプターの連結の前に、該水性液滴を破壊する。もう1つの実施形態においては、連結後、かつ、該遺伝子の増幅の前に、該水性液滴を破壊することが可能である。
【0013】
1つの実施形態においては、ある水性液滴は複数のポリヌクレオチド断片を含むことが可能であり、ここで、これらの複数の断片は更に、複数の遺伝子を含む。もう1つの実施形態においては、前記の水性液滴のそれぞれは更に、定められたの第2タンパク質をコードする遺伝子を含有する、該ライブラリー由来ではない第2ポリヌクレオチド断片の1以上を含有しうる。一例においては、定められた第2タンパク質をコードする遺伝子はポリヌクレオチド切断活性を有する。もう1つの実施形態においては、前記の水性液滴のそれぞれは、ポリメラーゼ切断活性を有する試薬酵素を含有する。
【0014】
標的遺伝子が増幅されたら、選択および富化の追加的なラウンドが望ましいかもしれない。この場合、標的遺伝子の発現が可能となり、第2または追加的ポリヌクレオチドアダプターへの連結が可能となり、第2アダプターに特異的なプライマーを使用する標的遺伝子の増幅が可能となるよう、増幅産物は、該遺伝子を転写し翻訳するための酵素の混合物の存在下、エマルション中の複数の水性液滴中に封入される。各ラウンドにおいて使用されるアダプターは、好ましくは、前ラウンドにおけるアダプターとは異なる。しかし、もう1つの実施形態においては、該アダプターは、それが次ラウンドの封入の前に増幅標的遺伝子から除去されるならば、再利用されうる。
【0015】
本発明のもう1つの実施形態においては、1つのラウンドの選択の後の標的遺伝子の富化は少なくとも50倍、70倍または100倍の富化でありうる。
【0016】
もう1つの実施形態においては、該ライブラリー中の個々のポリヌクレオチド断片は、該遺伝子配列の外部の該断片の領域内に、制限エンドヌクレアーゼおよびニッキングエンドヌクレアーゼの少なくとも1つに対する認識配列を含有する。
【0017】
もう1つの実施形態においては、標的遺伝子により発現されたタンパク質で該ポリヌクレオチド断片を切断することにより、該ポリヌクレオチド断片上に付着末端が形成され、場合によっては、酵素試薬により与えられる第2酵素活性または第2ポリヌクレオチド断片によりコードされるタンパク質により与えられる第2酵素活性と組合せて、そのような切断を行うことが可能である。後者の場合、第2ポリヌクレオチド上の遺伝子によりコードされるタンパク質の発現および/または活性は、標的遺伝子により発現されるタンパク質に左右されうる。
【0018】
例えば、標的遺伝子により発現されるタンパク質がtRNAシンテターゼ活性を有する場合、この活性は、第2ポリヌクレオチド断片上の遺伝子によりコードされる制限エンドヌクレアーゼが転写され翻訳され、標的tRNAシンテターゼ遺伝子を含有するポリヌクレオチド断片を切断することを可能にして、アダプターへの連結のための付着末端を生成して、標的遺伝子の選択および富化を引き起こす。
【0019】
もう1つの例においては、標的遺伝子により発現されるタンパク質は、DNAを切断して該ポリヌクレオチド断片上に平滑末端を形成する制限エンドヌクレアーゼである。場合によっては、該平滑末端を付着末端へ変換するために、第2酵素活性が与えられ、この場合、第2酵素活性はニッキングエンドヌクレアーゼでありうる。ついで、適合性付着末端を有するアダプターを、標的遺伝子を含有するポリヌクレオチド断片に連結することが可能である。もう1つの例においては、標的遺伝子により発現されるタンパク質はニッキングエンドヌクレアーゼ活性を有し、第2酵素活性は制限エンドヌクレアーゼ活性である。それらの2つの酵素の活性はアダプターへの連結およびそれに続く増幅のための該ポリヌクレオチド上の付着末端の生成およびをもたらす。
【0020】
もう1つの実施形態においては、ポリヌクレオチド断片のライブラリーはゲノムDNA(gDNA)を含有する。一例においては、標的遺伝子は、天然に存在する遺伝子であり、この場合、該方法は更に、増幅されたDNAからの天然に存在する標的遺伝子のクローニングを含み、それにより、標的化官能性を有する、環境からの天然に存在する新規遺伝子を容易に得るための手段となる。
【0021】
本発明のもう1つの実施形態においては、標的遺伝子は、所望の切断、合成または連結タンパク質活性を有する突然変異誘発された遺伝子である。
【0022】
ゲノムライブラリーまたは突然変異誘発ライブラリーからの標的遺伝子の実施例には、リガーゼ活性、RNAまたはDNAリガーゼ活性;ポリヌクレオチド切断活性、例えば制限エンドヌクレアーゼ活性、ニッキングエンドヌクレアーゼ活性またはホーミングエンドヌクレアーゼ活性;転写または翻訳活性、例えばtRNAシンテターゼ活性またはRNAポリメラーゼ活性;および逆転写活性から選ばれる活性を有するタンパク質をコードするものが含まれる。
【0023】
選択されうる活性の実施例には、天然に存在するタンパク質において見出される特異性からの、所望の特異性の変化が含まれる。1つの実施形態においては、制限エンドヌクレアーゼの切断部位特異性の変化が望まれうる。この実施例においては、コードされるタンパク質が所望の非天然部位において切断されてアダプターへの連結のための付着末端を生成した場合に限り標的遺伝子が選択され富化されるよう、所望の非天然切断部位が該ライブラリー中のポリヌクレオチド断片の末端または末端付近に導入されるであろう。もう1つの実施例は、増強されたポリヌクレオチド切断活性を選択し富化することを含む。あるいは、該コード化タンパク質がその認識部位から、野生型タンパク質と比べて非天然の距離においてDNA配列を切断する能力に基づいて、標的遺伝子を選択し富化することが可能である。
【0024】
他の実施例は、改変された連結至適温度または改変された補因子要件のような新規リガーゼ活性を有するタンパク質をコードする標的遺伝子に関して突然変異誘発ポリヌクレオチド断片のライブラリーをスクリーニングすることを含む。
【0025】
これらの前記実施例は該方法の実施形態の使用に関して限定するものではない。
【0026】
本発明の実施形態は、TspMIと称される新規制限エンドヌクレアーゼの、天然からのクローニングにより例示されている。本発明の追加的実施形態は更に、TspMIをコードする遺伝子を含有するベクター、および該ベクターで形質転換された宿主細胞を含む。
【0027】
本発明の1つの実施形態においては、疎水性液中の親水性溶液のエマルションである組成物を提供し、ここで、該親水性溶液は複数の液滴を形成しており、該液滴のそれぞれは、(i)転写および翻訳活性を有する酵素の混合物、ならびに(ii)ポリヌクレオチド断片のライブラリーからのポリヌクレオチド断片(該ポリヌクレオチド断片は付着末端を有するか、または付着末端を生成するよう該ポリヌクレオチドを切断しうる酵素に対する認識部位を有する。)を含有する。該エマルション中の液滴は更に、該ポリヌクレオチド上で生成される又は存在する付着末端に相補的な付着末端を有するポリヌクレオチドアダプターを含みうる。該エマルション中の液滴は更に、制限エンドヌクレアーゼ試薬を含みうる。該エマルション中の液滴は複数のポリヌクレオチド断片を含むことが可能であり、該ポリヌクレオチド断片の1つは制限エンドヌクレアーゼ試薬をコードしている。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1A】図1Aは、制限エンドヌクレアーゼをコードする標的遺伝子のインビトロ選択および富化の概要図を示す。 転写および翻訳試薬と共にDNA断片のライブラリーをエマルション中の水性液滴中に分散させる(1)。活性な制限エンドヌクレアーゼが液滴中でインビトロで発現されると、該コード化遺伝子を含有するDNA断片の末端の切断が該ポリヌクレオチド断片上のエンドヌクレアーゼ認識配列において生じて付着末端を生成する。これは Xで示されている。エマルション中の反応は、例えば、加熱および/またはEDTAの添加によりクエンチされる。エマルションは水飽和エーテルの添加により破壊される。水相からDNA断片を回収する(2)。適合性付着末端(X )を有する過剰の二本鎖DNAアダプター断片を該DNAに加える。付着末端を有する回収DNA断片と適合性付着末端を有するアダプターとの間でのみ連結が生じる( )(3)。アダプター特異的PCR増幅を行い、ついで、精製された増幅DNAを次ラウンドの選択に進めるか、またはクローニングする(4)。
【図1B】図1Bは、リガーゼ活性を有するタンパク質をコードする標的遺伝子の選択を示す。 転写および翻訳試薬ならびにポリヌクレオチドアダプターと共にDNA断片のライブラリーをエマルション中の水性液滴中に分散させる。リガーゼ活性をコードするDNA断片を含有する個々の液滴において連結が生じる( )。リガーゼをコードする遺伝子が存在しない液滴の内部では連結は生じない(1)。転写および翻訳のための有効時間の後、反応を停止させ、エマルションを破壊する。DNAポリヌクレオチドをエマルションから回収する(2)。アダプター特異的PCR増幅を行い、ついで、精製された増幅DNAを次ラウンドの選択に進めるか、またはクローニングする(3)。
【図1C】図1Cは酵素の共役選択を示す。ポリヌクレオチドのライブラリー、アダプター、インビトロ転写および翻訳試薬(特定のtRNAシンテターゼを除く)、ならびに制限エンドヌクレアーゼをコードする第2ポリヌクレオチド断片を水性液滴中に乳化する。特定のtRNAシンテターゼ活性を有するタンパク質をコードする標的遺伝子が液滴中で発現されると、制限エンドヌクレアーゼをコードする第2ポリヌクレオチドも転写され翻訳される(1)。このエンドヌクレアーゼは、標的遺伝子を含有するポリヌクレオチド断片上の標的遺伝子の外部の部位を切断して、付着末端を生成しうる。反応を停止させ、液滴を破壊する。DNA断片をエマルションから回収する(2)。該アダプターを該切断DNA断片に連結するために、連結工程が必要である(3)。回収されたDNA断片を使用して、アダプター特異的PCRを行う(4)。その結果、連結されたアダプターを有する鋳型DNAが優先的に増幅される。PCR産物を次ラウンドの選択に使用するか、またはクローニングする。
【図2】図2は酵素のインビトロ選択のためのゲノムライブラリー構築の概要図を示す。5kb未満のサイズを有する断片を得るために、噴霧器を使用してゲノムDNAをせん断し(1)、ついで該DNA断片をゲル上でサイズ選択(1K〜3K)し、Phusion(商標)ポリメラーゼ(Finnzymes,Espoo,Finland)を使用して末端修復する(2)。ついで該断片をT4ポリヌクレオチドキナーゼでリン酸化し(3)、NruI切断部位に対応するクローニング部位においてpLT7Kベクター(Kongら,Nucleic Acid Res 28:3216−3223(2000))(4)内に挿入する(5)。単一のベクターとエマルションPCRを行うための増幅試薬とを液滴が含有する、液滴の調製物を作製する。ついでエマルションを破壊し、増幅産物は、標的遺伝子の選択および富化のためのポリヌクレオチドのライブラリーを形成する(6)。したがって、ポリヌクレオチドのライブラリーを転写および翻訳のための試薬(PURE(商標)系,Genome Institute,Japan)と混合し、エマルション中の水性液滴中に封入する。制限エンドヌクレアーゼが、該ゲノム由来のDNA断片によりコードされる場合には、切断が生じ、図1Aに記載されているとおりに確認される。ゲノムからクローニングすべき遺伝子がリガーゼである場合には、1Bに記載されているとおりにリガーゼ遺伝子の富化が生じる。このようにして、僅か3ラウンド以下の選択で酵素をその天然宿主からクローニングすることが可能である(7)。
【図3】図3A〜Fは、第2鋳型と比較した場合の標的遺伝子の富化の具体例を示す。レーンEはエマルション中の転写および翻訳ならびにそれに続くアダプターとの連結およびPCR増幅の産物を示す。該増幅産物は、陽性対照と比較して、グリーン蛍光タンパク質(GFP)に対して実質的に富化されている。 レーンNCは、連結の非存在下かつエマルションの使用を伴わない、それらの2つの遺伝子の増幅の産物を示す陰性対照である。 レーンPCは、全断片が連結され増幅される、制限エンドヌクレアーゼおよびリガーゼの存在下の両遺伝子の増幅の産物を示す陽性対照である。予想どおり、GFPは、PstIと比較して圧倒的な強さで表示される。 図3Aは、モデルライブラリーにおいて使用されるDNA鋳型の概要図を示す。標的遺伝子は、PstIのオープンリーディングフレームをコードするPstI制限エンドヌクレアーゼであり、対照は、GFPをコードする遺伝子である。PstIおよび遺伝子はサイズにおいて異なる。 図3Bは1:100の比のPstIおよびGFPの出発混合物上の第1サイクルの増幅の結果を示す。図上に示されているとおり、レーンは左から右へE、NC、PCである。 図3CおよびDは、出発混合物がPstIおよびGFPを1:1000の比で含有する場合の、それぞれ第1サイクルおよび第2サイクルの増幅の結果を示す。図上に示されているとおり、レーンは左から右へE、NC、PCである。 図3EおよびFは、出発混合物がPstIおよびGFPを1:10および1:10の比で含有する場合の、それぞれ第1サイクルおよび第2サイクルの増幅の結果を示す。レーンは、各比に関して、左から右へEおよびPCである。EにおけるGFPの残存量は、両遺伝子が単一液滴中に偶発的に存在し、PstI遺伝子により産生された制限エンドヌクレアーゼがGFPにも作用したことによるものであろう。 レーンEにおいてPstI遺伝子の量が著しく増加していることに注目されたい。
【図4】図4A〜Dはプロビデンシア・スツアルティイ(Providencia stuartii)からのPstI遺伝子のゲノム選択を示す。 図4A:4Aiは出発ゲノムライブラリーを示す。1kbと3kbとの間の染み(スメア)は、富化前にエマルション中で生成した増幅ゲノム鋳型を含有する。レーン2における単一バンドは空プラスミドに対応する。 4Aiiおよび4Aiiiは、それぞれ、PstI遺伝子特異的プライマーおよびM.PstII特異的プライマーを使用するゲノムライブラリーの増幅の結果を示す。 図4B:4BiはEにおける第1ラウンドの遺伝子選択および富化の後のゲノムライブラリーを示す。NCは4Aiからの全DNAである。 4Biiはエマルション選択後のPstI遺伝子の量の増加を示す。4Biiiにおいては、M.PstIIに関する富化は観察されない。 図4C:4CiはEにおける第2ラウンドの遺伝子選択および富化の後のゲノムライブラリーを示す。NCは、第1ラウンドの選択の後のエマルションの破壊から生じた全DNA断片の増幅に対応する。 4Ciiはエマルション選択後のPstI遺伝子の量の増加を示す。M.PstI遺伝子特異的プライマーを使用した場合、もはや、M.PstII遺伝子は検出されない(4Ciii)。 図4D:4DiはEにおける第3ラウンドの遺伝子選択および富化の後のゲノムライブラリーを示す。NCは、第2ラウンドの選択の後のエマルションの破壊から生じた全DNA断片の増幅に対応する。 4Diiはエマルション選択後のPstI遺伝子の量の増加を示す。M.PstI遺伝子特異的プライマーを使用した場合、もはや、M.PstII遺伝子は検出されない(4Diii)。
【図5】図5は1%アガロースゲル上のテルムス属種(Thermus sp.)からのTspMI遺伝子のゲノム選択を示す。第1、第2および第3レーンは各ラウンドの選択の後のアダプター特異的PCR増幅を示す。第3レーンにおけるバンドがクローニングされ、TspMI遺伝子をコードしていることが確認された。
【図6】図6はAvaI(配列番号1)、NspIII(配列番号2)、BsoBI(配列番号3)およびTspMI(配列番号4)ファミリー間の多重アライメントを示す。枠内に推定触媒モチーフ(EXK)が示されている。触媒残基ヒスチジンが110位と120位との間の矢印で強調されている。TspMIは、触媒のための高度に保存された領域以外は、他のタンパク質配列に対して遠縁類似性を示す。290位と310位との間の矢印は、BsoBIファミリーにおいて縮重塩基認識をもたらす残基を示す。該アライメントはClustalW(Roberts,Proc Natl Acad Sd USA 102:5905−5908(2005))により作成され、ClustalX(Alvesら,Nucleic Acids and Molecular Biology,Pingoud,A.(編),Spring−Verlag:Berlin,Germany,Vol.14,pp.393−411(2004))により可視化された。
【図7】図7はTspMIのヌクレオチド配列(配列番号5)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(実施形態の詳細な説明)
インビトロ区画化は、広範な配列空間からの効率的回収が可能となるよう標的遺伝子の選択および富化が最適化されうるならば、定向進化の有力な方法となる。本発明の実施形態においては、標的遺伝子が発現され場合によっては修飾されるポリヌクレオチドへのアダプター分子の連結を含む、選択および富化のためのアプローチを開発した。このアプローチは各ラウンドの選択中に100倍以上もの富化をもたらし、選択可能な酵素活性をコードする広範な遺伝子に適用されうる。
【0030】
インビトロ区画化は、非混和性液体の任意の適当な組合せから製造されうるエマルションの形成に基づく。好ましくは、親水性溶媒は顕微鏡的またはコロイド的サイズの「水性」液滴を形成する。「液滴」は当技術分野においては「マイクロカプセル」とも称される。コロイド中の水性液滴は、記載されている反応が生じうる環境をもたらす、安定形態の生化学的成分を含有するエマルションの形成に適した任意の親水性物質から形成されうる。液滴が懸濁される疎水性液は該反応物のいずれをも含有しない。
【0031】
該エマルションは1以上の界面活性剤の添加により安定化されうる。これらの界面活性剤は乳化剤と称され、親水性/疎水性界面において作用して、それらの相の分離を妨げる(または少なくとも遅らせる。)。二相エマルションの作製のために、油のような多数の疎水性液および多数の乳化剤が使用可能であり、最近の編集物は16,000種を超える界面活性剤を挙げており、ソルビタンモノオレアート(SPAN.RTM.80;ICI)およびポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート(TWEEN.RTM.80;ICI)のように、それらの多くは乳化剤として使用される(Ash,M.およびAsh,I.Handbook of industrial surfactants.Gower Publishing Ltd:Aldershot,Hampshire,UK(1993);およびSchick,Nonionic surfactants.Marcel Dekker:N.Y.(1996))。
【0032】
アニオン界面活性剤の使用も有益でありうる。適当な界面活性剤には、コール酸ナトリウムおよびタウロコール酸ナトリウムが含まれる。特に好ましいのは、好ましくは0.5% w/vまたはそれ未満の濃度の、デオキシコール酸ナトリウムである。乳化すべき混合物へのアニオン界面活性剤の添加は、区画化後においてのみ該反応が進行することを保証する。
【0033】
エマルションの作製は、一般に、相を一緒にさせる力学的エネルギーの適用を要する。攪拌機(例えば、磁気攪拌機、プロペラーおよびタービン攪拌機、パドル装置および泡立て器)、ホモジナイザー(ロータ−ステータ・ホモジナイザー、高圧バルブホモジナイザーおよびジェット・ホモジナイザーを含む)、コロイドミル、超音波および「膜乳化」装置を含む種々の機械装置を使用する、これを行う種々の方法が存在する(Becher,Emulsions:theory and practice.Reinhold:N.Y.(1957;Dickinson.Emulsions and droplet size control.pp.191−257 Wedlock,D.J.(編),Butterworth−Heinemann:Oxford,U.K.(1994))。
【0034】
水性液滴の体積は、好ましくは、直径0.1μm〜10μmの球に相当する5.2×10−22〜5.2×10−16、より好ましくは、約5.2×10−19〜6.5×10−17(1μm〜5μm)、例えば2〜6μmのオーダーである。
【0035】
エマルション中に形成される水性液滴は一般に安定であり、遺伝的要素または遺伝子産物の液滴間交換は、あったとしても極僅かである。数千リットルの工業的規模までの様々な体積のエマルションを作製するための技術が存在する(Becher,Emulsions:theory and practice,Reinhold:N.Y.(1957);Sherman,Emulsion science.Academic Press:London,U.K.(1968);およびLissant編,“Emulsions and emulsion technology”in Surfactant Science,Marcel Dekker:N.Y.(1974および1984編))。
【0036】
「ポリヌクレオチド断片」は、DNA分子、RNA分子またはRNAの一部およびDNAの一部からなる二本鎖もしくは一本鎖分子または構築物、一本鎖RNAと一本鎖DNAとからなる二本鎖ハイブリッド、あるいは専ら合成塩基からなる又は天然に存在する塩基と合成塩基との混合物からなる部分的または全体的に人工的な核酸分子を意味する。前記のいずれかのものは、一方の末端においてはポリペプチドまたは他の分子基もしくは構築物に連結されることが可能であり、もう一方の末端は付着末端であるか、またはアダプター分子に連結するための付着末端に変換されうる。有利には、「他の」分子基もしくは構築物は、核酸、重合性物質、特にビーズ、例えばポリスチレンビーズ、磁性物質、例えば磁性ビーズ、標識、例えば発蛍光団または同位体標識、化学的試薬、結合剤、例えば巨大環状物質(macrocycle)などよりなる群から選ばれる。
【0037】
該ポリヌクレオチド断片は、適当な調節配列、例えば、遺伝子産物の効率的発現に要求される調節配列、例えばプロモーター、エンハンサー、翻訳開始配列、ポリアデニル化配列、スプライス部位などを含みうる。
【0038】
「ポリヌクレオチド断片のライブラリー」は、個々のポリヌクレオチド断片間で異なる遺伝子配列を有する複数のポリヌクレオチド断片を意味する。好ましくは、該遺伝子配列の1以上は所望のタンパク質活性をコードしており、この場合、これらの遺伝子配列は「標的遺伝子」と称される。標的遺伝子は、所望の酵素活性または結合活性を有するタンパク質をコードすることが可能であり、ここで、該活性は、付着末端を利用した標的遺伝子を含有する該ポリヌクレオチドの末端へのアダプターの連結に要求される。
【0039】
選択および富化のための方法は、該ポリヌクレオチド断片における遺伝的要素の集団から1以上の標的遺伝子を得る目的で行われる。したがって、ポリヌクレオチド断片のライブラリーは、所望のタンパク質活性をコードする遺伝子配列を含有する1以上のポリヌクレオチド断片を含有する、と最初に考えられる。標的遺伝子の非存在下では、標的遺伝子の選択および富化は生じ得ない。
【0040】
「酵素の混合物」は、複数の酵素が関わる商業的に入手可能(NEBカタログ,Ipswich,MAを参照されたい。)な転写および翻訳系、ならびに場合によっては追加的な試薬酵素を意味する。
【0041】
「連結」は2つのポリヌクレオチド間の共有的連結(共有結合)を意味する。該方法の実施形態においては、連結は、タンパク質活性をコードする標的遺伝子を含有するポリヌクレオチド断片、通常は付着末端を有するポリヌクレオチドアダプター、およびリガーゼ活性を有するタンパク質(リガーゼ活性を有するタンパク質を標的遺伝子がコードしない場合)を要する。追加的成分は、場合によっては、ポリヌクレオチド断片を切断して付着末端を生成するための制限エンドヌクレアーゼ試薬もしくは遺伝子、および/または平滑末端切断制限酵素と共に使用されるニッキングエンドヌクレアーゼ試薬もしくは遺伝子を含みうるであろう。制限エンドヌクレアーゼは、連結を引き起こすために常に要求されるわけではない。なぜなら、全断片が付着末端を有するが、リガーゼ活性をコードする断片のみがアダプター依存的選択により選択される点で、該ポリヌクレオチドライブラリーが特徴づけられうるからである。
【0042】
本発明の実施形態においては、アダプターの連結はIVCによる選択および富化のための前提条件である。リガーゼ活性またはエンドヌクレアーゼ活性を有するタンパク質を標的遺伝子がコードしているために標的遺伝子が発現される場合、あるいは標的遺伝子を含有するポリヌクレオチド断片上で制限エンドヌクレアーゼが付着末端を生成するのを可能にするよう標的遺伝子が発現されなければならない場合、あるいは付着末端を連結することによりリガーゼが該ポリヌクレオチドにアダプターを連結するのを可能にする別の活性を標的遺伝子が有する場合、連結は該ポリヌクレオチド断片と該アダプターとの間で生じうる。
【0043】
「活性の増強」は、本明細書に記載されている方法の実施形態を用いて選択されうる活性における増加を意味する、当技術分野における用語である。
【0044】
「付着末端」は、DNAまたはRNAリガーゼの存在下、ポリヌクレオチドアダプターの相補的一本鎖に共有結合しうる一本鎖突出部が存在する、二本鎖ポリヌクレオチド断片の、定められた末端を意味する。「付着末端」は二本鎖RNA、二本鎖DNAまたは二本鎖RNA/DNAハイブリッド上で生成されうる。付着末端は、例えば制限エンドヌクレアーゼ(これらに限定されるものではない。)による酵素的切断により形成されることが可能であり、あるいは化学合成により形成されうる。
【0045】
「増幅」は、当技術分野で公知の、プライマーに基づく任意のDNA配列複製を意味する。例えば、増幅は、ポリメラーゼ連鎖反応(Saikiら,Science 239:487−91(1988))、またはQベータレプリカーゼ増幅(Cahillら.Clin.Chem.37:1482−5(1991);Chetverinら.Progress Nucleic Acid Research Mol.Biol.51:225−70(1995);およびKatanaevら.Febs Lett 359:89−92(1995))、リガーゼ連鎖反応(LCR)(Landegrenら,Science 241:1077−80(1988);Barany PCR Methods Applic.1:5−16(1991))、セルフ・サステインド(self−sustained)配列複製系(Fahyら,PCR Methods Appl 1:25−33(1991))、鎖置換増幅(Walkerら,Nucleic Acid Research 20:1691−6(1992))およびヘリカーゼ依存的増幅(米国特許第7,282,328号)を含む種々の他の遺伝子増幅技術の1つを用いることによるものでありうる。
【0046】
単数形は、「1つ」に限定することを意図したものではない。
【0047】
ポリヌクレオチド断片のライブラリーは標的遺伝子からタンパク質を発現しうるが、該標的遺伝子は、アダプターに連結されるその能力により選択され、この場合、該連結事象は標的遺伝子の発現に基づく。ついで標的遺伝子はアダプター特異的増幅により富化されうる。
【0048】
該方法の実施形態の効力を決定するために、4塩基の3’突出部を生成するPstI制限エンドヌクレアーゼ(認識配列CTGCA↓G)をコードする種々の量の遺伝子でスパイク化(spike)された過剰のGFP遺伝子のライブラリーを使用してどのようにしてモデル選択を行ったかを、後記実施例において説明する。増幅後、単一ラウンドの選択において50倍以上の富化、特に100倍の富化が観察された(図3)。連続的な富化を達成するために、複数ラウンドの選択を行った。
【0049】
標的遺伝子の富化は、該実施形態が生物のゲノムからの新規遺伝子の選択および富化にも適しているという確信を与えた。既に公知であった試験制限エンドヌクレアーゼであるPstIおよびこれまでに未記載の制限エンドヌクレアーゼであるTspMIをコードする標的遺伝子が、それらが存在する細菌(プロビデンシア・スツアルティイ(Providencia stuartii)ゲノム(PstI)およびテルムス属種(Thermus sp.)(TspMI))のゲノムからどのようにして選択され富化されたかを、後記実施例において説明する。単一細菌種のgDNAからライブラリーを構築した。3ラウンドの反復インビトロ選択において、該エンドヌクレアーゼ遺伝子は、生じたライブラリーにおける単一の優勢なDNA種となった。ついでTspMIを初めてクローニングし、配列決定した。
【0050】
該方法の実施形態は、標準的な技術を用いた場合にはクローニングが困難であることが知られている制限エンドヌクレアーゼをクローニングするための改良された系を提供する。ポリヌクレオチド断片において標的遺伝子によりコードされる発現された制限エンドヌクレアーゼは推定遺伝子の外部の特定の部位において該ポリヌクレオチドを切断する。制限エンドヌクレアーゼが発現されると、該ポリヌクレオチド断片上に付着末端または平滑末端が生成する。制限エンドヌクレアーゼがDNAを切断して平滑末端を生成すると、追加的なニッキングエンドヌクレアーゼが水性液滴中に取り込まれることが可能であり、該ポリヌクレオチド断片における該遺伝子と該制限エンドヌクレアーゼ切断部位との間に適当な認識およびニッキング部位が導入されうる。このようにして、標的遺伝子産物による平滑末端の切断の後、該ポリヌクレオチド断片上に付着末端が生成する。該ポリヌクレオチドに対する相補的付着末端を有するアダプターと標的遺伝子を含有するポリヌクレオチド断片との間の連結を促進するための試薬として、水性液滴または破壊されたエマルションにリガーゼが加えられうる。ついで増幅を行って、標的遺伝子が富化されたDNAの調製物を得る。
【0051】
制限エンドヌクレアーゼは、いくつかの様態で、制限エンドヌクレアーゼのクローニングだけではなく種々の他の遺伝子の選択および富化のためのアダプター依存的選択および富化に関与しうる。これらは以下のものを含む:
(a)例えば、リガーゼ活性でのタンパク質の選択および溶液中のそのタンパク質の富化において、IVC内にポリヌクレオチド断片を導入する前に付着末端を生成するために該ポリヌクレオチド断片を切断すること、
(b)該ポリヌクレオチド断片によりコードされるニッキングエンドヌクレアーゼでの切断の前、途中または後に、ポリヌクレオチド断片を切断すること、
(c)標的遺伝子の発現産物として、例えば、転写もしくは翻訳酵素活性、例えばtRNAシンテターゼ活性を有するタンパク質の選択、および/または溶液中のそのタンパク質の富化における、第2ポリヌクレオチド断片の発現産物として、あるいは
(e)例えば、逆転写酵素もしくはリガーゼ活性を有するタンパク質の選択、および/または溶液中のそのタンパク質の富化における、水性粒子中に含有される試薬酵素として。
【0052】
標的遺伝子の、観察された選択性および富化は、制限エンドヌクレアーゼだけではなく、標的遺伝子をコードするポリヌクレオチド断片へのアダプターの連結を要する実験計画によってのみ限定される種々の他の酵素にも適用可能である。アダプターの使用は、広大な配列空間における所望のタンパク質の効率的探索を可能にする。
【0053】
該方法の実施形態の使用は以下のものを含む。
【0054】
(1)制限エンドヌクレアーゼの突然変異体の選択および富化。関心のある酵素をコードする遺伝子と、同一DNA断片内の該突然変異遺伝子の外部の制限エンドヌクレアーゼ切断配列とを各断片が含有する、DNA断片のライブラリーが作製されうる。
【0055】
ポリヌクレオチド断片の起源は、ランダムに突然変異誘発された遺伝子のライブラリーでありうる。あるいは、該ライブラリーは、インビボサンプル(例えば、該インビボサンプルは細胞、生物である。)に由来する異なる遺伝子の集合体、または異なる生物(例えば、土壌サンプルからの微生物)の集合体でありうる。
【0056】
本発明の1つの実施形態においては、例えば、DNAに関する後記方法により、ポリヌクレオチド断片のライブラリーを作製することが可能である。単一細菌種のgDNAをORFサイズの断片(例えば、1〜3Kb)へとせん断する。ついで該DNA断片を、必要に応じて平滑末端化し、いずれかの末端において既知配列(例えば、T7プロモーターおよび特異的制限エンドヌクレアーゼ認識/切断配列+追加的配列)に連結する。ついで遺伝子の外部に制限エンドヌクレアーゼ認識/切断配列を取り込むために、該ゲノム断片をエマルションPCR(Zhengら,Nucleic Acid Research 35:e83(2007))により増幅することが可能である。ついで、増幅された線状断片をIVC中に取り込むことが可能である。
【0057】
個々のDNA断片をインビトロ区画化により液滴中に取り込む。定められた付着末端を生成するために該挿入切断部位において該DNAを切断するいずれかの発現された制限エンドヌクレアーゼは、アダプターに連結する該DNAの能力に応じて選択される。
【0058】
これらの付着末端に連結されたアダプターの付加は所望の遺伝子の選択をもたらす。コードされるエンドヌクレアーゼにより切断された鋳型のみが効率的に連結されうる。ついで該アダプター連結鋳型を、アダプター特異的PCRを用いて増幅して、標的遺伝子を富化させる。
【0059】
各ラウンドごとに異なるアダプターを使用する3ラウンドの反復インビトロ選択により、制限エンドヌクレアーゼ遺伝子は、生じたライブラリにおける単一の優勢なDNA種となった。この方法を用いて、プロビデンシア・スツアルティイ(Providencia stuartii)からのPstI遺伝子およびテルムス属種(Thermus species)からのTspMI遺伝子をクローニングした(実施例を参照されたい。)。
【0060】
連結反応が選択における鍵工程であるため、該方法は、より短い突出部または平滑末端を生成するエンドヌクレアーゼのために修飾されうる。これらの場合、ニッキング酵素によるポリヌクレオチドの切断が付着末端を与えるよう、平滑末端の近傍にニッキング酵素の認識部位が配置されうる。頻繁切断酵素、例えば、4塩基部位を認識する切断酵素は適用範囲外となることがある。なぜなら、それらはそれら自身の遺伝子を破壊する傾向にあるからである。付随するDNAメチルトランスフェラーゼが宿主を防御するため、これらの酵素は生細菌においては毒性ではない。それにもかかわらず、自己破壊部位を有するという選択的欠点のため、頻繁切断酵素の相当な割合はそれらの遺伝子内の認識部位を失っているようである。表1は、自分自身の認識部位を自己の遺伝子内に有する制限エンドヌクレアーゼ遺伝子の統計データを示す。例えば、1kbのサイズの遺伝子の場合、特定の4塩基部位を有さない確率はポアソン分布により約e−4(すなわち、0.018)である。これは、4塩基認識制限エンドヌクレアーゼ遺伝子の半分以上がそれらのコード配列内にそれ自身の部位を有さないという観察と著しく対照的である(表1)。
【0061】
ポリヌクレオチド断片が選択されたら、標準的なクローニング技術(Sambrookら,Molecular cloning:a laboratory manual.Cold Spring Harbor Laboratory Press:New York(1989))を用いて、標的遺伝子をクローニングすることが可能である。しかし、当業者に明らかなとおり、代替的技術も利用可能である。例えば、遺伝子産物内に取り込まれた遺伝的情報が適当な発現ベクター内に取り込まれ、それから発現されうる。
【0062】
(2)野生型酵素と比べて低下したスター(star)活性を有する突然変異体の選択および富化。切断のための単一の配列を認識する代わりに、スター活性を有する制限エンドヌクレアーゼは、一般に互いに一塩基異なる種々の部位において切断する。異なる付着末端間を識別するようにアダプターを設計することにより、スター活性が低下した修飾酵素を選択することが可能である。
【0063】
(3)通常は認識部位の外(例えば、認識部位から20ヌクレオチド)の部位において切断する天然または組換え制限エンドヌクレアーゼの突然変異体の選択および富化。
【0064】
認識部位から、より遠い位置で切断する突然変異体の選択および富化は、アダプターを連結するための標的付着末端を与える認識部位の下流に所定数のヌクレオチドを有するDNA配列を設計することにより達成されうる。
【0065】
(4)ニッキング活性のみを有する突然変異制限エンドヌクレアーゼの選択および富化は、例えば、DNA断片の末端に近い部位を切断するようポリヌクレオチド断片内の突然変異体遺伝子が発現されることを可能にすることにより達成されうる。その結果、アダプターが連結されうる付着末端が生成される。
【0066】
(5)リガーゼ活性の選択および富化。ポリヌクレオチド断片を制限エンドヌクレアーゼにより消化して、定められた末端を得ることが可能である。インビトロ転写および翻訳を可能にするために、アダプターおよびポリヌクレオチド断片をインビトロ区画内に分散させる。リガーゼ活性をコードするDNA断片を増幅するために、アダプター特異的PCRが用いられうる。
【0067】
(6)転写および翻訳に関与する酵素活性を有するタンパク質をコードする遺伝子の選択および富化。
【0068】
これは、ライブラリーからの1以上のポリヌクレオチド断片、および制限エンドヌクレアーゼの遺伝子を含有するポリヌクレオチド断片を、転写および翻訳のための酵素の混合物と共に、標的遺伝子によりコードされるただ1つの転写または翻訳タンパク質も存在しないエマルション中の個々の水性液滴中に取り込ませることにより、達成されうる。該ライブラリーはゲノムライブラリーまたは突然変異誘発標的遺伝子のライブラリーでありうる。該選択方法は、標的遺伝子によりコードされるタンパク質の非存在下の転写翻訳混合物による標的遺伝子によりコードされるタンパク質の産生に基づく。ついで、制限エンドヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドは、標的遺伝子によりコードされるタンパク質を含有する転写および翻訳混合物中で転写され翻訳されうる。ついで制限エンドヌクレアーゼ活性を有するタンパク質は、同じ液滴中に含有されるライブラリーから該ポリヌクレオチド断片を切断して、それにより、水性液滴の内部または外部のアダプターに連結するための、該ポリヌクレオチド断片上の付着末端を生成しうる。ついで、アダプター特異的プライマーを使用して標的遺伝子が増幅されうる。
【0069】
(7)機能性タンパク質をコードする突然変異誘発遺伝子の選択および富化。
【0070】
機能性を有するランダムに突然変異誘発されたタンパク質を効率的にスクリーニングするために、エマルションが使用されうる。遺伝子の通常のスクリーニングライブラリーは種々の基準により突然変異体の選択をもたらす。該突然変異体は、機能性にほとんど無関係な要因、例えば翻訳効率、折り畳み効率、特定のバッファーに対する優先性または触媒効率により、ライブラリー中の混合物から選択されうる。エマルション選択および富化工程を用いることにより、これらの複雑な要因の多くは回避されうる。個々の遺伝子は転写および翻訳系の存在下の別個の水性液滴中に隔離される。ポリヌクレオチド断片の選択を決定する主要基準は、タンパク質が発現されるかどうか、そしてもしそうであれば、そのタンパク質が、該ポリヌクレオチド断片上に付着末端を与え該付着末端により該ポリヌクレオチド断片へのアダプターへの連結をもたらす活性を有するかどうかである。
【0071】
異なる度合の酵素活性または特異性の識別は個々の液滴内で又は増幅後に達成されうる。
【0072】
前記のとおり、複数ラウンドの選択は、所望の特性を有する変異体の回収の増加をもたらしうる。さらに、本明細書に記載されている実施形態を用いる複数ラウンドの選択および富化により、突然変異すると所望の産物、特性の変化または少なくとも機能性の維持を示す、標的遺伝子内の特定のヌクレオチドを明らかにすることも可能である。
【0073】
(8)逆転写酵素活性の単離。該ポリヌクレオチド断片は一本鎖RNAでありうる。該RNA断片が、逆転写酵素をコードする配列を含有する場合、要求される補助因子の存在下、例えば、水性液滴中の逆転写および相補鎖合成に要求されるRNAおよびDNAプライマーの存在下、二本鎖DNAが形成される。さらに、逆転写の二本鎖産物の切断のための及びそれによりアダプターへの連結を可能にする酵素混合物中に、制限エンドヌクレアーゼが含まれる。
【0074】
本明細書中で引用されている全ての参考文献、および2007年2月23日付け出願の米国仮出願番号60/903,258を、参照により本明細書に組み入れることとする。
【実施例】
【0075】
全てのPCRは、高忠実度Phusion(商標)ポリメラーゼ(Finnzymes,Espoo,Finland)を該製造業者の説明に従い使用して行った。全てのオリゴは、New England Biolabs(NEB,Ipswich,MA)において合成した(オリゴの詳細は、表3を参照されたい。)。特に示さない限り、DNA精製においては遠心−カラム法(Qiagen Inc.,Valencia,CA)を用いた。特に示さない限り、酵素は全て、NEB,Ipswich,MAから入手した。
【0076】
モデルライブラリーの構築
まず、PstI遺伝子をpLT7Kベクター(Kongら,Nucleic Acids Res 28:3216−3223(2000))内にクローニングし、ついで該プラスミドから増幅した。pIVEX−GFPベクター(Roche,Basel,Switzerland)からGFP遺伝子を増幅した。T7プロモーターの上流の5’非翻訳領域は両方の鋳型で同一であった。どちらのリバースプライマーも、PstI認識部位(CTGCAG)の、2つの縦列反復配列を有していた(図2A)。PCR産物をゲル精製した。精製DNAの濃度をA260測定値およびゲル電気泳動により決定した。PstIおよびGFP鋳型を種々のモル比(1:100、1:103、1:104および1:105)(最終濃度10ng/μl)で混合することにより、モデルライブラリーを構築した。
【0077】
ゲノムライブラリーの構築
NEB(Ipswich,MA)株コレクションから細菌株を入手した。噴霧器(Invitrogen,Carlsbad,CA,K7025−05)を該製造業者の説明に従い使用して、約10μgの精製gDNAをせん断した。せん断されたgDNAをイソプロパノールにより沈殿させ、水に再懸濁させ、アガロース電気泳動により1kb〜3kbでサイズ選択した。サイズ選択されたgDNAの末端は不均一であり、72℃で2時間、dNTPと共にPhusion(商標)ポリメラーゼ(3’→5’エキソ+)(Finnzymes,Espoo,Finland)を使用して平滑末端化した。精製された平滑末端化gDNA断片を、37℃で1時間、T4ポリヌクレオチドキナーゼを使用してリン酸化した。
【0078】
ベクターpYZ6を、以下の修飾を伴ってpIVEX2.4(Roche,Basel,Switzerland)から誘導した。(1)平滑末端化DNA断片の挿入を可能にするために、リボソーム結合部位の直後のマルチクローニング領域にNruI部位(TCG↓CGA)およびMscI部位(TGG↓CCA)が付加されている。(2)マルチクローニング領域(TspMIゲノム選択における2つのTspMI部位)の後に2つのPstI部位を付加した。環状pYZ6プラスミドをNruI消化により線状化し、精製した。室温で一晩、NruI(1U/10μl)の存在下、T4リガーゼを使用して、gDNA断片とpYZ6との連結を行った。該連結混合物からDNAを精製した。1μlの精製DNAを化学的コンピテント細胞(NEB,Ipswich,MA,Turbo(商標))内に形質転換して、該ライブラリーの質を判定し、該ゲノムの網羅性(coverage)の度合を評価した。
【0079】
ついで、プライマー561および825IIIを使用して該連結gDNAから線状DNA鋳型を「クローン的」に増幅するために、エマルションPCRを行った(Williamsら,Nat Methods 3:545−550(2006))。200μlの該水性PCR混合物を400μlの攪拌油混合物(軽鉱油(Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)中の4.5% v/v Span 80(Fluka,Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)、0.45% v/v Tween 80(Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)、0.05% Triton−X100(EM BioSciences,San Diego,CA))に1000rpmで1.5分にわたって滴下した。該添加の完了後、攪拌を5分間継続した。該エマルションをPCRチューブ内の10アリコートの50μl中にピペッティングし、鉱油を重層した。反応を98℃に60秒間加熱し、ついで30回のサイクル(98℃で10秒間、55℃で20秒間、72℃で90秒間)に付し、ついで7分間、72℃に付した。エマルションPCR用のプライマーはベクターアームにアニールした。フォワードプライマー561はT7プロモーターの〜100nt上流であり、リバースプライマー825IIIはPstI部位の下流であった(表3を参照されたい。)。エマルションPCRからの増幅DNAを、Williamsら(Nat Methods 3:545−550(2006)に記載されているとおりに精製し(図4A)、インビトロ選択に使用した。
【0080】
インビトロ区画化を用いる選択
再構成されたPURE(商標)系(Post Genome Institute,Japan)をインビトロ転写/翻訳反応において使用した。50μlの冷却水性混合物(PURE(商標)系からの25μlの溶液A、10μlの溶液B PURE(商標)系、14μlのHO、1μlのライブラリー)を450μlの攪拌油混合物(軽鉱油(Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)中の0.5% v/v Triton X−100(EM Biosciences,San Diego,CA)および4.5% v/v Span 80(Fluka,Sigma−Aldrich,St.Louis,MO))に1200rpm(Telesystem HP15P,Variomag,Daytona Beach,FL)で加え、さらに5分間攪拌した。インビトロ転写/翻訳を可能にするために、該エマルションを37℃で2時間インキュベートした。PstI選択においては、まず、80℃に20分間加熱し、ついで50μlのクエンチングバッファー(10mM Tris、20mM EDTA,pH=8.0)を加えることにより、該エマルションにおける反応を停止させた。ついで該エマルションを14,000rpm、4℃で15分間遠心した。上部の油相を取り出し、残留エマルションを、1mlの水飽和エーテルで抽出することにより破壊した。Speedvac中で5分間遠心することにより、残留エーテルを除去した。該DNAライブラリーを遠心−カラム法により回収し、50μlのバッファーEB(Qiagen,Valencia,CA)中で溶出した。
【0081】
各エマルション選択後の精製DNAを過剰(>100倍)の短い二本鎖アダプター(100〜200nt)に連結した。アダプターを制限酵素消化により精製DNAから切り出した(表3を参照されたい。)。10μl中2μlの連結混合物をアダプター特異的PCR(初期98℃で60分間、30サイクル(98℃で10秒間、55℃で20秒間、72℃で60秒間)、最終伸長72℃で7分間)のために使用した。連続ラウンドの選択において使用したフォワードプライマーをネスト化(nest)してPCRの特異性を増加させた。PCR後、DNAを遠心−カラム精製し、次ラウンドの選択に使用した。
【0082】
制限エンドヌクレアーゼ遺伝子の特異的富化
図1Aに示すとおり、制限エンドヌクレアーゼ遺伝子の選択は、後に連結およびPCR増幅のために使用される付着末端を生成するそれらの能力に基づく。一方の末端に効率的転写および翻訳のための必須要素(T7プロモーター、リボソーム結合部位)が存在し、他方の末端に基質としての2つの縦列反復PstI認識部位が存在するよう、インビトロ選択のためのDNA鋳型を操作した(図3A)。インビトロ転写/翻訳系と混合されたDNA鋳型を、人工細胞としての1010個までの水性液滴に分散させた(Tawfikら,Nat Biotechnol 16:652−656(1998))。制限エンドヌクレアーゼ遺伝子を含有する液滴において、活性エンドヌクレアーゼがインビトロで発現され、それ自身のコード化DNA鋳型を切断して、尾部に付着末端を残した。遺伝子型−表現型連関が保証されるよう、活性エンドヌクレアーゼ分子は個々の液滴中に限局された。該エマルション中の反応を停止した後、DNA鋳型をプールし、適合性付着末端を有する過剰のアダプターと共に連結混合物中に配置した。ついで、アダプターが連結されているDNA鋳型を特異的に増幅するために、アダプター特異的PCRを行った。これは、アダプターにのみハイブリダイズするリバースプライマーを使用することにより達成され、一方、フォワードプライマーは全DNA鋳型に共通であった。
【0083】
本発明者らは、2つのDNA鋳型(一方はPstIオープンリーディングフレーム(ORF)を有し、他方はGFP ORFを有する。)よりなるモデルライブラリーを構築した。それらの2つの鋳型を、PstI鋳型の濃度が次第に減少する種々のモル比で混合した。PstI鋳型は約1.3kbのサイズであり、GFP鋳型は約1.2kbであった(図3A)。全てのモデル選択を開始する際に、約1010個(10ng/μlにおいて1μlのモデルライブラリー)の鋳型分子を使用した。対照実験においても同量を使用した。陽性対照として、初期ライブラリーを純粋なPstI酵素で消化し、ついでアダプター連結およびPCR増幅を行った。該陽性対照実験においては該ライブラリー中の全鋳型が増幅され、遺伝子型−表現型連関の非存在下、該鋳型間の最終モル比は選択効率を反映する、と本発明者らは予想した。初期ライブラリーを連結反応に直接的に付し、ついでPCR増幅を行うことにより、陰性対照実験を行った。DNA鋳型は平滑末端化PCR産物であったため、それらは、付着末端を有するアダプターに連結せず、したがって増幅されなかった。これは図3において証明されており、この図は、非特異的連結または増幅を示さない陰性対照における陰性結果を示した。
【0084】
PstI:GFP=1:100のライブラリーを使用する単一ラウンドの選択からの結果を図3Bに示す。陽性対照においては、GFPが出発ライブラリーにおける優勢種であったためGFPが優勢に増幅され、陰性対照においては、DNAはほとんど増幅されなかった(図3B、レーンNC)。これとは対照的に、エマルション選択後は、PstI鋳型に対応する明るいバンドが、GFPバンドの上部に、比較しうる強度で出現した(図3Dおよび3F、レーンE)。総合すると、これらの実験はPstI鋳型の特異的富化を示した。1:1000のライブラリーを使用する第1ラウンドの選択において、同様の結果が観察された(図3C)。選択後のPstIとGFPとの最終モル比は、バンド強度から判断すると、1:50より大きく、少なくとも100倍の富化であると判定された。
【0085】
IVC選択中、制限エンドヌクレアーゼ遺伝子を含有する同一液滴中に存在する全ての鋳型が「キャリーオーバー(carryover)」として増幅された。「キャリーオーバー」鋳型を排除するために、連続的選択間で異なるアダプターを使用した。図3Cおよび3Dは、1:1000のライブラリーを使用する2ラウンドの選択を示す。第1ラウンド後、PstI鋳型は100倍以上富化された(図3C、レーンE)。第1PCR後の精製DNAを次ラウンドの選択において直接的に使用し、その後、該PstI鋳型は該ライブラリーにおける優勢DNA種となった(図3D、レーンE)。1:10および1:10のライブラリーを使用する選択を図3Eおよび3Fに示す。第1選択後、非常に僅かなDNAが増幅された(図3E、レーンE)。第2選択後(図3F)、PstIおよびGFPの両方に対応するバンドが約1:1の比で該ゲル上に出現した。各ラウンドの選択において、一貫した100倍の富化が観察された。
【0086】
選択後のDNAのクローニング
選択後のDNAバンドを切り出し、アガロースゲル上で精製した。ついで、選択されたDNAを制限酵素(PstI選択においてはPstI、そしてTspMI選択においてはXmaI)で消化し、pLT7K中に連結した。pLT7Kは、毒性遺伝子を収容するよう設計された(Kongら,Nucleic Acids Res 28:3216−3223(2000))。連結されたDNAをNEB Turbo(商標)(Ipswich,MA)中に形質転換し、LB−Ampプレート上にプレーティングした。プレートを37℃で一晩成長させた。個々のクローンを拾い、アンピシリンを含有するLB培地内で増殖させた。プラスミドをミニプレップ法により抽出し、配列決定した。
【0087】
PstI遺伝子のゲノム選択
制限エンドヌクレアーゼ遺伝子が該モデルライブラリーから有効に富化されることが確認されたため、本発明者らは、より複雑なライブラリーで該系を試すことを続けた。インビトロ選択を用いる対照実験は、活性な制限エンドヌクレアーゼ遺伝子が存在することが知られている細菌ゲノムから構築されたライブラリーを与えた。典型的な細菌ゲノムのサイズは1M塩基未満から10M塩基近くまでと様々である。典型的なII型制限エンドヌクレアーゼ遺伝子のサイズは約1kbである。したがって、細菌gDNAから構築されたライブラリーの複雑度(コンプレキシティー)は10と計算された。本発明者らは、公知PstI遺伝子をその天然宿主プロビデンシア・スツアルティイ(Providencia stuartii)から選択し、ついで新規耐熱性エンドヌクレアーゼTspMI遺伝子をテルムス属種(Thermus sp.)から選択した。
【0088】
ゲノムライブラリーの構築の概要図を図2に示す。簡潔に説明すると、噴霧器を使用して、純粋なゲノムDNA(gDNA)を5kb未満の断片にせん断した。ついで、断片化されたgDNAをサイズ選択(1k〜3k)し、平滑末端化し、リン酸化した。生じたgDNA断片を、インビトロ転写/翻訳および選択のための必須要素を有する線状化されたベクターに連結した。ついでエマルションPCR(Williamsら,Nat Methods 3:545−550(2006))を用いることにより、該ベクターとの連結gDNAを「クローン的」に増幅した。増幅された線状gDNA鋳型をインビトロ選択において直接的に使用した。エマルションPCRを用いる利点には、増幅偏向の軽減およびゲノムライブラリーの質の向上が含まれる。
【0089】
該選択過程中、PCRによる選択の前および後に、該ライブラリー中の2つの参照遺伝子の存在をモニターした。その1つは標的PstI遺伝子であり、もう1つは、エンドヌクレアーゼ活性を有さず染色体上のPstI遺伝子の近傍に位置しないDNAメチルトランスフェラーゼ遺伝子M.PstII(Searsら,Nucleic Acids Res 33:4775−4787(2005))からの断片であった。図4はゲノム選択の全工程を示す。出発ゲノムライブラリーを図4Ai〜4Aiiiに示し、これらにおいては、PstIおよびM.PstII断片の両方が存在する。個々のPCR効率間で差が存在しうるため、バンド強度は該ゲノムライブラリーにおけるそれらの比例的存在量を必ずしも反映していないことに注目されたい。
【0090】
図4Biにおけるゲルは、乳化ゲノムライブラリーおよび陰性対照に関する第1アダプター特異的PCRの結果を示す。それらの2つのPCRの間で見掛け上の相違は存在しない。しかし、それらの2つの参照遺伝子上の個々のPCRは、PstI遺伝子が該乳化ライブラリーにおいては富化されたが該陰性対照においては富化されなかったことを示唆している。対照遺伝子M.PstIIは明らかに増幅されなかった(図4Biiおよび4Biii)。M.PstIIが該乳化ライブラリーにおいては該陰性ライブラリーにおけるより少量しか存在しないことは、該エマルション選択における、より大きなDNAサンプル喪失によるものであろう。図4BiにおけるレーンEを精製し、次ラウンドの選択に使用し(図4(Ci))、その後、該乳化サンプル中には所望のPstI遺伝子だけが存在し、M.PstIIのような他の混入遺伝子は希釈消失した(図4Ciii)。PstI含有鋳型のみが第2選択後に残存したようであるが、それは、ゲル上で明瞭になるには十分ではなかった。図4CiにおけるレーンEを精製し、第3ラウンドの選択に付し、その後、〜1.5kbのバンドが該乳化ライブラリーにおいては出現したが、陰性対照においては出現しなかった(図4Di)。該参照遺伝子上の個々のPCRは第3ラウンドにおける一貫した富化を裏づけた。この1.5kbのバンドは完全なPstIゲノム断片を含有することが後に確認された。これらの結果は、PstIの富化が、予想された経過をたどることを強く示唆している。
【0091】
第3選択からの〜1.5kbのバンドをゲル精製し、PstI酵素で消化し、配列決定のためにpLT7K中にクローニングした。基礎発現の致死効果を阻止するためにアンチセンスプロモーターおよびクローン化遺伝子の制御化抑制を組合せることにより、高毒性遺伝子を収容するようプラスミドpLT7Kを改変操作した(Kongら,Nucleic Acids Res 28:3216−3223(2000))。配列決定されたインサートを、完全に配列決定されたPstI制限−修飾系(Robertsら,Nucleic Acids Res 35:D269−270(2007))と比較し、結果は、開始コドンの上流の3ntおよび終止コドンの下流の〜300ntを伴う完全PstI ORFを含む1つの主要産物が、選択されたgDNA中に存在することを証明した。この結果は、選択されたDNAが実際にgDNA由来であり、考えられうるいずれの混入物にも由来しないことを明白に示した。興味深いことに、選択されたゲノム断片の全てがPstI開始コドンの3nt上流から始まるという観察は、ゲノム選択中の翻訳効率に対する選択圧が存在しうることを示した。
【0092】
TspMI遺伝子のゲノム選択
ついで、それまでにクローニングされていなかった、テルムス属種(Thermus sp.)からのもう1つの耐熱性エンドヌクレアーゼTspMI(認識配列C↓CCGGG)(Parasharら,Appl Microbiol Biotechnol 72:917−923(2006))にインビトロ選択方法を適用した。TspMIは75〜80℃で最適に活性であり、37℃で約20%の活性を保有する(Robertsら,Nucleic Acids Res 35:D269−270(2007))。これらの事実に基づけば、以下の点において、インビトロ選択はPstI遺伝子の選択とは若干異なる:(1)該ライブラリー構築においては、ゲノム断片とベクターとの間の連結工程は、選択すべき標的遺伝子を破壊する、いずれかの酵素によるTspMI遺伝子の内部での切断の可能性を個々に最小にするためにNruIおよびMscI酵素の存在下で行った;(2)該エマルション反応物を、まず、インビトロ転写/翻訳のために37℃でインキュベートし、ついで、効率的なDNA切断のために短時間、65℃に付した;(3)TspMI酵素は熱によっては不活性化され得ないため、該反応を停止するためには専らクエンチングバッファーを使用し、DNA回収の方法を氷上で行った。比較のために、TspMI制限−修飾系を含有するゲノム領域を位置決定するために通常のメチラーゼ選択(Szomolanyiら,Gene 10:219−225(1980))をも行った。
【0093】
図5は、NruI連結に由来するライブラリーを使用する各ラウンドの選択の後のアダプター特異的PCRを示す。その結果、第3選択後に複数のバンドが観察された。これらのバンドを、TspMIの同配列認識酵素であるXmaI(認識配列C↓CCGGG)により消化し、ベクターpLT7K内にクローニングした。インサートを含有する配列決定されたクローンは〜1.1kbのORFを含有していた。このORFは、通常のメチラーゼ選択アプローチから得られるエンドヌクレアーゼ遺伝子と一致し、活性TspMIエンドヌクレアーゼ遺伝子をコードすることが後で確認された。ゲノムインサートを含有する5つの配列決定されたクローンの分析は、選択されたゲノム断片が全て、推定開始コドンの36ヌクレオチド下流から始まり、終止コドンの後の種々の部位で終わる(このため、アガロースゲル上で複数バンドのパターンが生じる。)ことを示唆した。MscI連結に由来するライブラリーを使用する選択はバンドを生成しなかった。後で判明したことであるが、TspMI ORFの内部に複数のMscI部位が存在し、その結果、連結工程中にエンドヌクレアーゼ遺伝子が破壊されていた。TspMI制限−修飾系の配列を図7に示す。
【0094】
TspMI制限−修飾系は幾つかの点で興味深い。それは、通常のRおよびM遺伝子、ならびにm5C DNAメチルトランスフェラーゼでしばしば見出されるニッキングエンドヌクレアーゼ遺伝子(V遺伝子)を含有する。これらのエンドヌクレアーゼは、修復されなければ突然変異誘発性となる自発的事象であるシトシン脱アミノ化の後に形成されるG−Tミスマッチを認識する。配列比較に基づけば、TspMI遺伝子は、CCCGGGを認識する遺伝子の新規ファミリーのメンバーであるらしかった。なぜなら、それは、SmaIおよびXmaIにより代表される遺伝子の公知ファミリーに全く類似していなかったからである(表2)。REBASE(Robertsら,Nucleic Acids Res 35:D269−270(2007))においては、SmaIファミリー内の6個の遺伝子およびXmaIファミリー内の7個の遺伝子(それらの全ては、N4−メチルシトシンを形成するDNAメチルトランスフェラーゼを伴う)が存在する。3つの公知の場合においては、修飾されるのは認識配列内の第2塩基である。この組合せにおける配列類似性を考慮すると、それらは全て、この同じ塩基を修飾する可能性がある。これとは対照的に、M.TspMIは、M.NmeAI(Cm5CGG)に対する限られた類似性を示すに過ぎないm5Cメチルトランスフェラーゼである。
【0095】
TspMIのタンパク質配列は、もう1つの耐熱性制限酵素でありC↓YCGRG(Y=C/T,R=A/G)を認識するBsoBIに対して遠縁的に類似しているに過ぎない(P値>0.1)。これは、CCCGAGおよびCTCGAGの2つの配列を認識するBsoBIの緩やかな特異性、ならびにTspMIにより認識される特異的配列CCCGGGに符合するであろう。認識配列内の切断の相対位置は両酵素で同じであることに注目されたい。図6は、TspMIおよびBsoBI、ならびに同様にC↓YCGRGを認識する2つの他の関連酵素AvaIおよびNspIIIの多重アライメントを示す。TspMIおよびBsoBIファミリー間の配列保存性は触媒モチーフEXK(図6の枠内)に局在化される(van der Woerdら,Structure 9:133−144(2001))。1つの興味深い観察は、求核剤として水分子を脱プロトン化するための塩基として作用すると示唆された(van der Woerdら,Structure 9:133−144(2001))、BsoBIファミリーのこの領域における保存されたヒスチジン残基が、TspMIにおいてはセリン残基により置換されていることである。これは、若干異なる触媒メカニズム(おそらくはセリン媒介求核攻撃)を示唆している。BsoBIにおける2つの残基Asp246およびLys81(図6における枠内の矢印を参照されたい。)は、縮重塩基対を認識することが示唆されており、BsoBIファミリーにおいて保存されているが、TspMIにおいては変化しており、アスパラギン酸は保存されており、リシンがフェニルアラニンに変化している。この場合も、これは、若干異なる塩基認識メカニズム(おそらくはTspMIの厳密な特異性によるもの)を示唆している。
【0096】
【表1】

【0097】
【表2】

【0098】
制限−修飾系の最上部の2つのクラスのメチルトランスフェラーゼは全て、配列において密接に関連しており、このことは、それらが全て、認識配列内の第2シトシン残基を修飾してN4−メチルシトシンを形成することを示唆している。これとは対照的に、M.TspMIは、M.NmeAI(Cm5CGG)に対して限られた類似性しか示さないm5Cメチルトランスフェラーゼである。太字で示された酵素は生化学的に特徴づけられており、その他は、XmaIまたはSmaIに対する配列類似性に基づいて推定されたものである。
【0099】
【表3】



【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法であって、
(a)所望の活性を有するタンパク質をコードする標的遺伝子を1以上のポリヌクレオチド断片が含む、ポリヌクレオチド断片のライブラリーを準備すること、
(b)断片の該ライブラリーをエマルション中の複数の水性液滴中に封入(複数の液滴における水性液滴のそれぞれは、
(i)転写および翻訳活性を有する酵素の混合物、ならびに
(ii)ポリヌクレオチド断片のライブラリーからの1以上のポリヌクレオチド断片を含有する。)すること、
(c)該ライブラリーからの標的遺伝子を転写させ翻訳させて、該標的遺伝子の発現が、リガーゼにより該ポリヌクレオチド断片がポリヌクレオチドアダプターに共有的に連結されることを可能にするようにすること、
(d)アダプター特異的プライマーを使用して該標的遺伝子を増幅すること
を含んでなる方法。
【請求項2】
標的遺伝子の転写および翻訳の後、かつ、ポリヌクレオチド断片へのアダプターの連結の前に、複数の水性液滴を破壊することを更に含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
連結の後、かつ、遺伝子の増幅の前に、複数の水性液滴を破壊することを更に含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
標的遺伝子の発現が、ポリヌクレオチド断片および該ポリヌクレオチドアダプター上の相補的付着末端により該ポリヌクレオチド断片が該アダプターに連結されることを可能にする、請求項1記載の方法。
【請求項5】
水性液滴のそれぞれが更に、(iii)定められた第2タンパク質をコードする、ライブラリーからのものではない第2ポリヌクレオチド断片の1以上を含有する、請求項1記載の方法。
【請求項6】
第2ポリヌクレオチド断片の1以上が、ポリヌクレオチド切断活性を有するタンパク質をコードする少なくとも1つの遺伝子を含む、請求項5記載の方法。
【請求項7】
(e)増幅された標的遺伝子、および該遺伝子を転写し翻訳するための酵素の混合物を、第2エマルション中の複数の水性液滴中に封入すること、
(f)該標的遺伝子を発現させ、リガーゼによる第2ポリヌクレオチドアダプターへの連結を可能にすること、
(g)第2アダプターに特異的なプライマーを使用して、該標的遺伝子を増幅すること、および
(h)随意に段階(e)から(g)を繰返すこと
を更に含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
随意に繰返す段階(e)から(g)が、ポリヌクレオチド断片への連結のために、第2アダプターを請求項1記載のアダプターまたは第3アダプターで置換することを含み、第3アダプターが、第1アダプターとは異なるポリヌクレオチド配列を有する第2アダプターとは異なるポリヌクレオチド配列を有する、請求項7記載の方法。
【請求項9】
段階(d)における標的遺伝子の増幅が、ポリヌクレオチド断片のライブラリーにおける標的遺伝子の少なくとも50倍の富化をもたらす、請求項1記載の方法。
【請求項10】
ライブラリーにおけるポリヌクレオチド断片が、遺伝子配列の外部の断片の領域内に、制限エンドヌクレアーゼおよびニッキングエンドヌクレアーゼの少なくとも1つに対する認識配列を有する、請求項1記載の方法。
【請求項11】
標的遺伝子により発現されたタンパク質で1以上のポリヌクレオチド断片を切断することにより1以上のポリヌクレオチド断片上に付着末端を形成させることを更に含み、切断が任意に酵素試薬により与えられる又は第2ポリヌクレオチド断片内の遺伝子によりコードされるタンパク質により与えられる第2酵素活性を含む、請求項1記載の方法。
【請求項12】
ポリヌクレオチド断片のライブラリーがゲノムDNAを含有する、請求項1記載の方法。
【請求項13】
標的遺伝子が、天然に存在する遺伝子であり、ならびに方法が更に、(i)該天然に存在する標的遺伝子を増幅DNAからクローニングすることを含む、請求項7記載の方法。
【請求項14】
標的遺伝子が、所望の切断、合成または連結タンパク質活性を有する突然変異誘発された遺伝子である、請求項1記載の方法。
【請求項15】
標的遺伝子によりコードされるタンパク質がリガーゼ活性を有する、請求項1記載の方法。
【請求項16】
標的遺伝子によりコードされるタンパク質がポリヌクレオチド切断活性を有する、請求項1記載の方法。
【請求項17】
ポリヌクレオチド切断活性が、制限エンドヌクレアーゼ切断活性、ニッキングエンドヌクレアーゼ活性およびホーミングエンドヌクレアーゼ活性から選ばれる、請求項16記載の方法。
【請求項18】
標的遺伝子によりコードされるタンパク質が転写または翻訳活性を有する、請求項1記載の方法。
【請求項19】
標的遺伝子によりコードされるタンパク質がtRNAシンテターゼ活性を有する、請求項18記載の方法。
【請求項20】
標的遺伝子によりコードされるタンパク質が逆転写酵素活性を有する、請求項1記載の方法。
【請求項21】
標的遺伝子が、リガーゼ活性、ポリヌクレオチド切断活性、転写または翻訳活性および逆転写活性よりなる群から選ばれる活性を有するタンパク質をコードする、請求項13記載の方法。
【請求項22】
標的遺伝子が、リガーゼ活性、ポリヌクレオチド切断活性、転写または翻訳活性および逆転写活性よりなる群から選ばれる活性を有するタンパク質をコードする、請求項14記載の方法。
【請求項23】
タンパク質が非天然標的ポリヌクレオチド切断活性を有する、請求項1記載の方法。
【請求項24】
タンパク質の活性が、(i)DNA上の認識部位への結合、および(ii)非天然に生じる認識配列からの距離における該DNAの切断を含む、請求項1記載の方法。
【請求項25】
各水性液滴が複数のポリヌクレオチド断片を含み、該ポリヌクレオチド断片の少なくとも1つが、制限エンドヌクレアーゼ活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を含む、請求項1記載の方法。
【請求項26】
定められた第2タンパク質が制限エンドヌクレアーゼである、請求項5記載の方法。
【請求項27】
標的遺伝子が、tRNAシンテターゼおよび逆転写酵素から選ばれるタンパク質をコードする、請求項26記載の方法。
【請求項28】
複数の液滴のそれぞれが制限エンドヌクレアーゼ試薬を含む、請求項1記載の方法。
【請求項29】
ポリヌクレオチド断片がRNAを含み、ならびに該RNAが逆転写酵素活性を有するタンパク質をコードする、請求項23記載の方法。
【請求項30】
配列番号5に対して少なくとも90%の配列相同性を有する、TspMI制限エンドヌクレアーゼをコードする単離されたDNA。
【請求項31】
請求項30の単離されたDNAを含んでなるベクター。
【請求項32】
請求項31のベクターで形質転換された宿主細胞。
【請求項33】
疎水性液中の親水性溶液のエマルションであって、該親水性溶液が複数の液滴を形成しており、該液滴のそれぞれが、
(i)転写および翻訳活性を有する酵素の混合物、ならびに
(ii)ポリヌクレオチド断片のライブラリーからのポリヌクレオチド断片(該ポリヌクレオチド断片は付着末端を有するか、または該ポリヌクレオチドを切断して付着末端を生成しうる酵素に対する認識部位を有する。)を含有する、エマルション。
【請求項34】
(iii)ポリヌクレオチド断片上に生成した又は存在する付着末端に相補的な付着末端を有するポリヌクレオチドアダプター
を更に含む、請求項32記載のエマルション。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−518863(P2010−518863A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−551028(P2009−551028)
【出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【国際出願番号】PCT/US2008/054709
【国際公開番号】WO2008/103900
【国際公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(591021970)ニユー・イングランド・バイオレイブス・インコーポレイテツド (18)
【Fターム(参考)】