説明

インビボにおける生体分子の自己集合性システムのダイナミクスの測定方法および治療剤の発見または評価のための使用

本出願人は、ヒトを含む無傷動物において用いることができる安定な同位体標識技術に基づいて、生体分子の自己集合性システムのダイナミクスを測定する簡単で迅速なアッセイを創立している。生体分子の自己集合性システムの例として、微小管重合体、アクチンフィラメント、アミロイド−βプラーク、または原繊維、プリオンプラーク、または原繊維、フィブリン凝集体、タウフィラメント(たとえば、神経原繊維変化)、α−シヌクレインフィラメントおよび突然変異ヘモグロビン凝集体が挙げられる。本発明方法は、組織間の集合および分解のダイナミクスにおける構成的差異を示し、これらのダイナミクスを安定化させる化合物の作用を感受する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2004年8月7日出願の出願番号60/599,716の優先権を主張し、この出願は、全体として参照することにより本発明に援用される。
技術分野
本発明は、生体分子の自己集合性システム(たとえば、“分子集合体”)のダイナミクスまたは集合および分解速度の測定方法に関する。このようなシステムとして、特に、チューブリン二量体からの微小管重合体;脳中のアミロイド−βタンパク質からのアミロイド−βペプチドまたはプラーク;赤血球中の突然変異ヘモグロビンタンパク質からの鎌状赤血球ヘモグロビン凝集体;脳中のプリオンタンパク質からのプリオン原繊維またはプラーク;フィブリンタンパク質からのフィブリン集合体(たとえば、血餅);アクチンタンパク質からのアクチンフィラメント;タウタンパク質からのタウフィラメント(神経原繊維変化);α−シヌクレインタンパク質からのα−シヌクレインフィラメントまたは凝集体(レビー小体およびレビー軸索);ミトコンドリア内膜中のカルジオリピン分子からのカルジオリピン凝集体;形質膜中のコレステロール分子からのコレステロール凝集体;ミトコンドリア内膜中のリン脂質分子からのリン脂質凝集体;核膜中のリン脂質分子からのリン脂質凝集体;形質膜中のリン脂質分子からのリン脂質凝集体;ミエリンラメラ中のリン脂質分子からのリン脂質凝集体;およびミエリンラメラ中のガラクトセレブロシド分子からのガラクトセレブロシド凝集体が挙げられる。本発明方法は、薬物の発見および開発ならびに薬物毒性の同定に適用できる。
【背景技術】
【0002】
細胞および生物体には、種々の生体分子の自己集合性システム(本明細書において“分子集合体”と呼ぶ)がある。これらの分子集合体は、構造および内容は異なるが、酵素などの触媒を必要とせずに形成される、たとえば、“自己集合する”という共通点を有する。これに関連して認識するための重要な特徴は、生体分子の自己集合性システムと生体において生合成過程を介して形成される大部分の他の巨大分子との間の差異である。自己集合性システムは、いくつかの点で、ポリヌクレオチド(DNA、RNA)、タンパク質、脂質、複合糖質などの他のタイプの巨大分子の標準的生合成形成とは異なる。自己集合性型でない標準的巨大分子は、酵素または触媒または合成される完全分子機構(たとえば、タンパク質合成のためのリボソーム装置;DNA複製または転写のための複合マルチ酵素装置;脂質生合成のための小胞体など)を必要とし;インビボにおける自発的形成を妨げるエネルギー障壁を有し;巨大分子へと形成されるサブユニット間の共有化学結合を典型的特徴とし;自発的に分解しないが、別の異化装置(たとえば、タンパク質の分解のためのプロテアソームおよびタンパク質分解酵素;長鎖脂肪酸の異化分解のための酸化酵素およびミトコンドリアマトリックス;RNA分解のためのRNA分解酵素など)を必要とする。対照的に、生体分子の自己集合性システムまたは分子凝集体は、酵素、触媒または形成するための分子機構を必要とせず、形成へのエネルギー障壁を典型的に有さず、インビボにて自発的に形成され、集合体中のサブユニット間に共有化学結合を有さず、インビボにて自発的に分解される。したがって、生体分子の自己集合性システムの生物学的役割、機能および重要性は、自己集合性型でない巨大分子の生物学的役割、機能および重要性とは根本的に異なる。自己集合性分子集合体の概念を説明するのに用いることができる1つの例は、微小管である。微小管は、二量体サブユニットからなり、α−チューブリンおよびβ−チューブリン単量体タンパク質を順番に含む。いったん形成されると、αβ−二量体は非常に安定である。これらの二量体サブユニットは、微小管と呼ばれる長鎖またはフィラメントへ自己集合し、次いで、生体細胞における微小骨格として機能する。
【0003】
微小管は、その構造において極性を示し、プラス末端(速い成長)とマイナス末端(遅い成長)をもつ。微小管は、その集合および分解速度において様々であり、たとえば、動力学的であるという(“微小管ダイナミクス”)。細胞中の微小管は、連続的流動(重合/解重合としても知られる、集合/分解)状態で存在すると考えられる。したがって、微小管ダイナミクスに関連して、集合対分解のバランスが、細胞内の微小管の平均長さおよびその寿命を決定する。
【0004】
動力学的集合および分解によって特徴付けられる細胞の内外に存在する様々な他の分子集合体がある。例として、突然変異ヘモグロビン凝集体、アミロイド−β(Aβ)原繊維またはプラーク、血餅を含むフィブリン集合体、プリオン原繊維またはプラーク、α−シヌクレインフィラメントまたは凝集体(レビー小体またはレビー軸索)、タウフィラメントまたは凝集体(神経原繊維変化)、リン脂質凝集体、カルジオリピン凝集体およびコレステロール凝集体が挙げられる。これまでに、分子集合体の動力学的集合および分解を測定するための迅速で、正確かつ精密な方法はなかった。このような方法は、薬物の発見および開発、分子集合体に関連する種々の疾患の診断および予後診断ならびに生物医学の基礎研究における使用が見込まれる。
【本発明の要約】
【0005】
本発明は、分子集合体のダイナミクス(すなわち、集合および分解速度)の測定方法を提供する。本発明方法は、フィラメント状アクチン(たとえば、微小フィラメント)へのアクチン重合、Aβ原繊維またはプラークへのアミロイドβ(Aβ)凝集、プリオン原繊維またはプラークへのプリオン凝集、フィブリン集合体(たとえば、血餅)へのフィブリン凝集、鎌状赤血球中のヘモグロビン凝集体への突然変異ヘモグロビン凝集、タウフィラメント(神経原繊維変化)へのタウ凝集、α−シヌクレインフィラメントおよび凝集体(レビー小体およびレビー軸索)へのα−シヌクレイン凝集、ミトコンドリア内膜中のカルジオリピン凝集体、形質膜中のコレステロール凝集体、ミエリンラメラ中のガラクトセレブロシド凝集体および形質膜中のリン脂質凝集体、ミエリンラメラおよび細胞内小器官の膜などのこのような生体分子の自己集合性システムに適用することができる。
【0006】
本発明は、インビボ設定における微小管ダイナミクスおよび微小管標的化チューブリン極性化剤(MTPA)を初めて実証する。
【0007】
本発明方法は、微小管ダイナミクスおよび他の生体分子の自己集合性システムのダイナミクスにおける効果を測定、同定、評価および特徴付けするための化合物の高スループットスクリーニングに適しており、したがって、抗ガン剤などの新規な治療剤の同定および/または毒性および他の効果の評価に適している。
【0008】
本発明は、生体システムから測定した微小管および/または他の生体分子の自己集合性システムの集合および分解のダイナミクスの評価および/または定量を可能にする。本明細書に概略するように、該評価は、種々の方法で行うことができる。1つの態様において、本発明は非曝露生体システムから測定された微小管および他の生体分子の自己集合性システムのダイナミクスに対する、1つ以上の候補作用剤に曝露された生体システムのダイナミクスの比較方法を提供する。非曝露生体システムとは、ガンまたはその他の増殖性障害(乾癬など)などの疾患を有するが、まだ候補作用剤に曝露されていない生体システムであってよく、あるいは、非曝露生体システムとは、ガンまたはその他の増殖性障害を有さない生体システムであってよい。非増殖性障害を同じ方法で評価することができる。曝露および非曝露生体システムからの微小管のダイナミクスまたは他の生体分子の自己集合性システムのダイナミクス間の差異を同定し、次いで、この情報を用いて、1つ以上の候補作用剤(またはその組み合わせもしくは混合剤)が、曝露生体システムにおいて、微小管のダイナミクスにおける変化または他の生体分子の自己集合性システムのダイナミクスにおける変化を誘発するかどうかを決定する。1つ以上の化合物を哺乳動物に投与し、微小管ダイナミクス(速度)または他の生体分子の自己集合性システムのダイナミクス(速度)を計算し、非曝露の同じ種の哺乳動物から計算されたダイナミクス(速度)に対して評価することができる。別法として、1つ以上の化合物に曝露する前に、同じ哺乳動物からの微小管ダイナミクス(速度)または他の生体分子の自己集合性システムのダイナミクス(速度)を計算し、次いで、該1つ以上の化合物に曝露した後に、同じ哺乳動物において、ダイナミクス(速度)を計算してもよい。哺乳動物は、ヒトであってもよい。
【0009】
1つの態様において、本発明は、コントロール生体システムと比較して、試験生体システムにおける生体分子集合体へのサブユニットの自己集合速度を測定する方法を提供する。該方法は、同位体標識基質が少なくとも1つのサブユニットおよび少なくとも1つの分子集合体に組み込まれるのに十分な時間の最初の期間に生体システムに該基質を投与することを含む。生体システムからサンプルを得、最初のサンプルから標識された分子集合体の量を定量する。必要に応じて、特に微小管評価の場合、組み込まれない標識サブユニットの量も定量する。標識された分子集合体の量をコントロール生体システムにおける標識された分子集合体の量と比較し、必要に応じて、組み込まれない標識サブユニットの量をコントロール生体システムにおける組み込まれない標識サブユニットの量と比較して、コントロール生体システムと比較して、試験生体システムにおける自己集合速度の差異を決定する。
【0010】
さらなる態様において、比較ステップは、比較ステップが速度の比率を計算し、コントロール生体システムにおける分子流動速度の比率に対してその比率を比較するように、標識分子集合体および遊離サブユニットの分子流動速度を計算することを含む。
【0011】
別の態様において、本発明方法はさらに、同位体標識基質の投与の前、中、後のいずれかに、候補作用剤を試験生体システムに投与することを含む。
【0012】
本発明のさらなる態様は、時間の第2の期間に基質を投与し、計算を繰り返すこと;第2のサンプルを得て、計算を繰り返すこと;第2の基質を投与すること;またはそれらの組み合わせを含む。
【0013】
1つの具体例において、安定な同位体標識技術の使用によって、生体分子の自己集合性システムのダイナミクスを測定する。該技術は、対象生体システムへの安定な同位体標識基質の投与または接触を含む。安定な同位体標識として、2H、13C、15N、18O、33S、34Sが挙げられる。もう1つの具体例において、放射性同位体標識技術の使用によって、微小管ダイナミクス(速度)または他の生体分子の自己集合性システムのダイナミクス(速度)を測定する。放射性同位体として、3H、14C、32P、33P、35S、125I、131Iが挙げられる。
【0014】
同位体標識基質として、2H20、H218O、15NH313CO2、H13C032H標識アミノ酸、13C標識アミノ酸、15N標識アミノ酸、18O標識アミノ酸、34Sまたは33S標識アミノ酸、3H2O、3H標識アミノ酸および14C標識アミノ酸、2H標識グルコース、13C標識グルコース、2H標識有機分子、13C標識有機分子および15N標識有機分子が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0015】
1つの具体例において、1つ以上のチューブリン二量体(微小管重合体のサブユニット)への安定な同位体標識基質の組み込みおよび微小管重合体への組み込みを当業界で公知の方法によって同時に測定する。
本発明の別の具体例において、1つ以上の安定な同位体を含む同位体摂動分子を提供する。同位体摂動分子は、本明細書に記載の標識方法の産物である。
本発明のさらに別の具体例において、同位体摂動分子を1つ以上の放射性同位体で標識する。
本発明のさらに別の具体例において、同位体標識前駆体およびその使用説明書を含む1つ以上のキットを提供する。キットは、安定な同位体標識前駆体または放射性標識同位体前駆体または両方を含むことができる。安定な同位体標識前駆体および放射性標識同位体前駆体は、1つのキットで提供されてもよく、あるいは、別々にして2つ以上のキットで提供されてもよい。キットは、同位体標識前駆体を投与するための1つ以上の道具をさらに含んでもよい。またキットは、対象からサンプルを集めるための1つ以上の道具を含んでもよい。
【0016】
本発明のさらに別の具体例において、本発明方法から作成されたデータを含む1つ以上の情報記憶装置を提供する。データは、分析されても、一部分析されても、または分析されなくてもよい。データを紙、プラスチック、磁気、光学または他の貯蔵および提示用の媒体に記録することができる。
本発明のさらに別の具体例において、本発明方法によって同定され、少なくとも部分的に特徴付けられた1つ以上の薬物が意図される。
【発明の詳細な記載】
【0017】
発明の概要
出願人は、細胞(たとえば、単一細胞またはインビトロ細胞系など)および生物体(たとえば、無傷の動物およびヒトなど)などの生体システムに用いることができる同位体標識技術(放射性同位体と安定な同位体の両方を含む)に基づいて、生体分子の自己集合性システムのダイナミクス(すなわち、分子集合体の集合および分解の速度)を測定するための単純で迅速なアッセイを構築した。すなわち、本発明は、自己集合性“重合体”への“単量体”の天然の平衡を利用する;したがって、本発明は、集合および分解の間のダイナミクスを比較することができる。このような生体分子の自己集合性システム(たとえば、“分子集合体”)として、微小管(チューブリン二量体の重合から形成される);フィラメント状アクチンまたは微小フィラメント(単量体アクチンの重合から形成される);アミロイド−ベータ(Aβ)原繊維またはプラーク(Aβタンパク質の凝集から形成される);タウフィラメントまたはタウタンパク質の凝集から形成されるプラーク(神経原繊維変化);α−シヌクレインタンパク質の凝集から形成されるα−シヌクレインフィラメントまたは凝集体(レビー小体またはレビー軸索);突然変異ヘモグロビン凝集体(鎌状赤血球中の突然変異ヘモグロビンの凝集から形成される);プリオン原繊維またはプラーク(突然変異または感染プリオンタンパク質の凝集から形成される);フィブリン凝集体または血餅(フィブリンの重合から形成される);ミエリンラメラ中のガラクトセレブロシド凝集体;ミトコンドリアの内膜中のジホスファチジルグリセロール(たとえば、カルジオリピン)凝集体;形質膜中のコレステロール凝集体;および形質膜、ミエリンラメラおよび細胞内小器官の膜中のリン脂質凝集体(たとえば、ホスファチジルセリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルイノシトールおよびホスファチジルエタノールアミンの凝集体などのホスホグリセリドの凝集体)が挙げられる。
【0018】
これに関連して認識するための重要な特徴は、生体分子の自己集合性システムと生体において生合成過程を介して形成される大部分の他の巨大分子との間の差異である。自己集合性システムは、いくつかの点で、ポリヌクレオチド(DNA、RNA)、タンパク質、脂質、複合糖質などの他のタイプの巨大分子の標準的生合成形成とは異なる。自己集合性型でない標準的巨大分子は、酵素または触媒または合成される完全分子機構(たとえば、タンパク質合成のためのリボソーム装置;DNA複製または転写のための複合マルチ酵素装置;脂質生合成のための小胞体など)を必要とし;インビボにおける自発的形成を妨げるエネルギー障壁を有し;巨大分子へと形成されるサブユニット間の共有化学結合を典型的特徴とし;自発的に分解しないが、別の異化装置(たとえば、タンパク質の分解のためのプロテアソームおよびタンパク質分解酵素;長鎖脂肪酸の異化分解のための酸化酵素およびミトコンドリアマトリックス;RNA分解のためのRNA分解酵素など)を必要とする。対照的に、生体分子の自己集合性システムまたは分子凝集体は、酵素、触媒または形成するための分子機構を必要とせず、形成へのエネルギー障壁を典型的に有さず、インビボにて自発的に形成され、集合体中のサブユニット間に共有化学結合を有さず、インビボにて自発的に分解される。したがって、生体分子の自己集合性システムの生物学的役割、機能および重要性は、自己集合性型でない巨大分子の生物学的役割、機能および重要性とは根本的に異なる。
【0019】
一般に、本発明は、種々の異なる方法で実践することができる。1つの具体例において、下記により詳しく説明するように、生体システム(たとえば、疾患がある個体、薬物または候補薬物に曝露された個体、対象の細胞系、原発性ガン細胞、細菌など)への同位体標識基質の投与は、たとえば、細胞骨格または鞭毛様微小管などの分子集合体への標識の組み込みをもたらす。1つのシステムにおける1つの実験で行った測定値を、たとえば、疾患がない、または薬物曝露の無いコントロール生体システムなどのコントロールデータに対して比較することができる。下記により詳しく説明するように、測定値を種々の方法で処理することができる。したがって、たとえば、1つ以上の時点における組み込まれた基質:未組み込みの基質の比率をコントロールシステムに対して比較することができる。組み込み差異(したがって、差比)は、自己集合性活性の量または比率の調節の現れである。これは、同位体標識基質の投与(継続的または断続的投与のいずれか)後の単一の時点におけるシステムのサンプリングとして、または複数(たとえば、2つ以上)の時点におけるマルチサンプリングとして行うことができる。さらに、単回投後に単回サンプリングを行うことができ、または様々な回数の投与後に単回サンプリングを行うことができる。たとえば、標識を短期ボーラス投与し、次いで、インキュベートし、時点Xでサンプリングすることができる;次いで、このシステムを除去し、第2のより長いボーラス投与を行い、次いで、インキュベーションおよびサンプリングを再度行うことができる。別法として、マルチサンプリングおよびマルチ投与(マルチ同位体標識および/または異なる基質の使用を含む)を行うことができる。
【0020】
別法として、標識組み込みの量を用いて、集合体への標識基質の増加についての分子流動速度を計算することができる。これは、上記概略したように、単一の時点における単回サンプリング(およびゼロ時点に基づいて速度を計算する)、またはマルチ時点におけるマルチサンプリングあるいはその両方を用いて行うこともできる。次いで、分子流動速度の比率を自己集合性活性における変化を解明するために比較する。
【0021】
2H2Oまたは他の安定な同位体標識を用いる標識付けを、ヒトにおいて安全に容易に行うことができるので、アッセイを容易にヒト用に適合させることができる。さらに、分子集合体の自己重合の調節のアッセイを、たとえば、新規な核酸合成、アポトーシスの存在、血管新生などの他のアッセイと組み合わせて、本明細書に概略するように、種々の他の用途の間で、機構経路および併用療法を明確にすることができる。
【0022】
微小管ダイナミクスに適用する場合、パクリタキセルの最大耐用治療用量の30分の1以下の用量における有意な効果を示すための実践において実証されているように、本発明方法は、組織間の微小管の集合および分解(重合および解重合)の速度において構成的差異を示し、微小管安定化剤の作用に対して鋭敏な感受性を示す。新規DNA合成の同時安定同位体測定などの別のアッセイと組み合わせて用いる場合、本発明方法は、活発に増殖中および有糸分裂後の組織の両方において、微小管安定化剤の機序に基づく治療および毒性作用を定量的に表すことができ、このような薬物の下流効果への感受性に関する腫瘍間の多様性についての情報を提供することができる。これらの特徴は、抗有糸分裂剤の破壊的作用の機序に対して重要な関わりを有し、薬物発見および開発のための新しい領域を開く。場合によっては、集合体安定性(たとえば、新規成長または重合の欠如など)、集合体分解(たとえば、血餅および動脈硬化プラークなど)または集合体集合とともに、治療効果が見られることに留意すべきである。
【0023】
本明細書に開示する方法は、生体分子の自己集合性システム(たとえば、分子集合体)に適用することができる。上述したように、生物学および病理学におけるこのような生体分子の自己集合性システムとして、細胞骨格微小管ならびに細胞および鞭毛様微小管などの微小管重合体、アクチンフィラメント(微小フィラメント)の自己集合および分解(重合および解重合)、細胞骨格の一次構成、心筋症に伴う欠損症または失調症、筋ジストロフィー、虚血性急性腎不全、ガンおよび血管新生、重症筋無力症および筋萎縮性側索硬化症、特に;アルツハイマー病の患者およびアルツハイマー病の動物モデルの脳において起こる過程であるAβペプチドからのAβ原繊維またはプラークの自己集合および分解;アルツハイマー病の患者の脳および認知症の患者および動物モデルにおいて起こる過程であるタウフィラメントまたはプラーク(たとえば、神経原繊維変化)の自己集合および分解;パーキンソン病の患者の脳および認知症の患者の脳および動物モデルにおいて起こる過程であるα−シヌクレインフィラメントまたは凝集体(レビー小体またはレビー軸索)の自己集合および分解;この身体状態における末端器官機能不全をもたらす過程である鎌状赤血球病の患者の赤血球における遊離ヘモグロビンからの突然変異ヘモグロビン凝集体の自己集合および分解;血液凝固障害をもたらすこの過程における欠陥である遊離フィブリンからのフィブリン凝集体(血餅)の自己集合および分解;クロイツフェルト・ヤコブ病、クル病、スクレイピーまたはウシ海綿状脳症の脳における遊離PrPからのプリオン原繊維またはプラークの自己集合および分解;ミトコンドリアの内膜中のカルジオリピン凝集体の自己集合および分解;形質膜中のコレステロール凝集体の自己集合および分解;多発性硬化症および他の脱髄性疾患の患者および動物モデルにおいて起こるミエリンラメラ中のガラクトセレブロシド凝集体の自己集合および分解;および形質膜、ミエリンラメラおよび細胞内小器官の膜中のリン脂質凝集体(たとえば、ホスファチジルセリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルイノシトールおよびホスファチジルエタノールアミンの凝集体などのホスホグリセリドの凝集体)の自己集合および分解が挙げられる。これらのシステムは、たとえば、デオキシリボヌクレオチド、アミノ酸などの、自己集合性ではないが、高次構造を形成するために触媒または他の外因性因子を必要とする生体分子のシステムとは対照的であるか、または区別される。
【0024】
1つの具体例において、本発明方法は、遊離チューブリンサブユニット(図1Aおよび1B参照)または生体分子の自己集合性システムの他の遊離サブユニットを同位体標識するために、重水(2H2O)を使用する。当業者であれば、以下に詳述するように、他の同位体を用いることができ、それを標識アミノ酸また標識脂肪酸または標識グリセロールまたはタンパク質生合成およびリン脂質生合成の他の前駆体を介して投与することができることを理解するであろう(図1Cも参照)。2H2O例とともに存在し、微小管への適用される場合、標識は、非必須アミノ酸の生合成のための代謝経路を介して、新たに合成された遊離チューブリンサブユニットに入る。新たに合成された遊離チューブリンサブユニットへの2Hの組み込みは、重合を介して微小管に組み込まれる前に、チューブリン二量体プールにおいて現れる(図2A参照)。微小管が極めて動的である生物学的環境において、2H標識は、二量体中に蓄積し、重合体は、2つのプールの間の急速な交換動態を反映して同じ速度でたまる(たとえば、微小管の動的不安定性)。しかし、微小管標的化チューブリン重合化剤(MTPA)によるか、または内因性微小管安定化因子によって微小管が安定化されている環境では、新たに合成されたチューブリン中の2H標識は、遊離チューブリンの生合成速度に比例する速度で二量体プール中に現れるが、微小管重合体への組み込みは、より遅く、劇的に遅いことが多い(図2B−4参照)。
【0025】
次いで、ガスクロマトグラフィー/質量分析(GC/MS)または当業界で公知の他の分析技術(後記に詳述する)によって、微小管ダイナミクスを定量化する。この方法論は、有意に少ない化合物しか必要とせず、わずか数日中に予測でき、再現可能性が高い。
【0026】
当業者であれば理解できるように、本発明方法は、前述および後述するような他の生体分子の自己集合性システムに適用することができる。
【0027】
一般技術
本発明の実施は、他に特記しない限り、当業者に周知である分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学および免疫学の慣例技術をさらに利用する。このような技術は、たとえば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、second edition(Sambrookら、1989)Cold Spring Harbor Press;Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait編、1984);Methods in Molecular Biology、Humana Press;Cell Biology:A Laboratory Notebook(J.E.Cellis編、1998)Academic Press;Animal Cell Culture(R.I.Freshney編、1987);Introduction to Cell and Tissue Culture( J.P.Mather and P.E.Roberts、1998)Plenum Press; Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures(A.Doyle、J.B.Griffiths、and D.G.Newell、eds.、1993−8)J.Wiley and Sons; Methods in Enzymology(Academic Press、Inc.);Handbook of Experimental Immunology(D.M.Weir and C.C.Blackwell、eds.);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.M.Miller and M.P.Calos、eds.、1987);Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubelら、eds.、1987);PCR: The Polymerase Chain Reaction,(Mullisら、eds.、1994);Current Protocols in Immunology(J.E.Coliganら、eds.、1991);Short Protocols in Molecular Biology(Wiley and Sons、1999);and mass isotopomer distribution analysis at eight years:theoretical、analytic and experimental considerations by Hellerstein and Neese(Am J Physiol 276(Endocrinol Metab.39)E1146−E1162、1999)などの文献に詳述されている。さらに、典型的には、市販のアッセイキットおよび試薬を用いる手順を、他に特記しない限り、使用説明書にしたがって用いる。
【0028】
本発明の実施は、他に特記しない限り、当業者に周知である化学および分析化学の慣例技術をさらに利用する。このような技術は、たとえば、Fundamentals of Analytical Chemistry(D.Skoog、D West、F Holler、S Crouch、auth、2003);Analytical Chemistry(S.Higson、auth、2004);Advanced Instrumental Methods of Chemical Analysis(J.Churacek編、1994);and Advanced質量分析:Applications in organic and analytical chemistry(U.Schlunegger)などの文献に詳述されている。
【0029】
本発明の実施は、他に特記しない限り、当業者に周知である臨床前および臨床調査の慣例技術をさらに利用する。このような技術は、文献に詳述されている。
【0030】
他に特記しない限り、本明細書において使用する、すべての業界用語、標記法およびその他の科学的専門用語は、本発明が関連する当業者によって通例理解される意味を有することを意図するものである。いくつかの場合、通例理解される意味を有する用語は、本明細書において、明確にするために、および/またはすぐ参照できるように定義され、このような本明細書中の定義の包含は、必ずしも一般的に当業界で理解される意味を越える実質的差異を表すと解釈されるべきではない。本明細書に記載または参照される技術および手順は、一般に当業者によってよく理解され、慣例の方法論を用いて通例使用されるものであり、たとえば、8年間における質量イソトポマー分布分析:Hellerstein and Neese(Am J Physiol 276(Endocrinol Metab.39)E1146−E1162、1999)による理論的、分析的および実験的検討、などである。必要に応じて、一般的に、市販のキットおよび試薬の使用を含む手順を、他に特記しない限り、使用説明書に記載の手順および/またはパラメーターにしたがって行う
【0031】
“分子流動速度”は、タンパク質および/または有機代謝物の合成および/または分解の速度を意味する。また、“分子流動速度”は、タンパク質および/または有機代謝物の分子プールへのインプットまたは分子プールからの除去を意味し、したがって、該分子プールに出入りする流量と同意義である。
【0032】
“代謝経路”は、生体システム(たとえば、生化学的処理)中のリンクした一連の2つ以上の生化学的ステップを意味し、その、最終結果は、分子(1つまたは複数)の化学的、空間的または物理的変換である。代謝経路は、経路を構成する生化学的ステップを通る分子の方向および流れによって定義される。代謝経路内の分子は、たとえば、脂質、タンパク質、アミノ酸、炭水化物、核酸、ポリヌクレオチド、ポルフィリン、グリコサミノグリカン、糖脂質、中間代謝物、無機化合物、イオンなどの生化学的種類でありうるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
“ダイナミクス”は、分子または分子のシステムの速度論的特徴に関連する。本明細書において、ダイナミクスは、時間の次元における化学的速度(たとえば、単位時間当たりの質量またはモル、たとえば、モル/分、グラム/時間)を意味し、合成速度、分解速度、代謝回転速度、変換速度、交換速度、集合および分解速度、重合および解重合速度、凝集および脱凝集速度および分子集合体の速度論的挙動の他の態様を包含する。これらの速度のいくつかが、関連しうることに留意すべきである;たとえば、合成速度と分解速度を合わせて、代謝回転速度とすることができる。これは、場合によっては、“代謝経路を通る流動速度”と呼ばれることもある。場合によっては、特に、逆行できないかまたは解重合が非常に遅い“代謝経路を通る流動速度”は、明確に定義された生化学的出発点(たとえば、突然変異ヘモグロビンの導入)から明確に定義された終点(たとえば、不可逆的凝集)への転換速度を意味することができる。
【0034】
“生体分子の自己集合性システム”または“分子集合体”は、酵素、複合分子機構、生化学的活性化またはその他の外部因子などの触媒を必要とすることなく、サブユニット(たとえば、“単量体”)の集合体から構成されるか、または該集合体(“重合体”)を自発的に形成し、典型的には、該集合体を自発的に溶解(分解)する能力がある生化学的または分子的物質を意味する(正確なpH、温度などが生体システムにとって必要である場合を除く)。場合によっては、重合または集合は、エネルギーの付加なしに起こる(たとえば、ATP)。該生体分子の自己集合性システムの集合および分解の速度は、外部因子(モジュレーター、薬物など)によって変更されうるが、これらの因子は、自己集合または分解がインビボで起こるためには必要ではない。本発明における集合体は、一般に(常にではない)、微小管のチューブリン形成の場合のようなホモ重合体であるが、ヘテロ重合体もまた含まれる。集合体は、直線または分枝重合体、繊維、原繊維、フィラメント、凝集体またはサブユニットの他の高次構造の生化学的形態を取ることができる。本明細書で用いる用語“分子集合体”は、“生体分子の自己集合性システム”と同義である。
【0035】
“分子集合体”として、微小管(チューブリン二量体の重合から形成される);フィラメント状アクチンまたは微小フィラメント(単量体アクチンの重合から形成される);アミロイド−ベータ(Aβ)原繊維またはプラーク(Aβタンパク質の凝集から形成される);タウフィラメントまたはタウタンパク質の凝集から形成されるプラーク(神経原繊維変化);α−シヌクレインタンパク質の凝集から形成されるα−シヌクレインフィラメントまたは凝集体(レビー小体またはレビー軸索);突然変異ヘモグロビン凝集体(鎌状赤血球中の突然変異ヘモグロビンの凝集から形成される);プリオン原繊維またはプラーク(突然変異または感染プリオンタンパク質の凝集から形成される);フィブリン凝集体または血餅(フィブリンの重合から形成される);ミエリンラメラ中のガラクトセレブロシド凝集体;ミトコンドリアの内膜中のジホスファチジルグリセロール(たとえば、カルジオリピン)凝集体;形質膜中のコレステロール凝集体;および形質膜、ミエリンラメラおよび細胞内小器官の膜中のリン脂質凝集体(たとえば、ホスファチジルセリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルイノシトールおよびホスファチジルエタノールアミンの凝集体などのホスホグリセリドの凝集体)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
本明細書で用いる“サブユニット”または“生体分子の自己集合性システムのサブユニット”は、重合体、繊維、フィラメント、原繊維、凝集体またはサブユニットの他の高次構造(たとえば、分子集合体)へ自己集合する能力がある、対象の生体分子のシステムの遊離(非集合)形態を意味する。
【0037】
“自己集合および分解”は、自己集合性システムにおけるどのような自己形成(“自己集合”)および自己集合した生体分子の自己分解(“分解”)をも意味する。このような自己集合および分解として、重合および解重合ならびに凝集および脱凝集が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
“同位体”は、同じ数のプロトンを有し、したがって同じ元素であるが、異なる数の中性子を有する原子を意味する(たとえば、1Hに対して、2HまたはD)。用語“同位体”には、たとえば、非放射性同位体などの“安定な同位体”ならびに、たとえば、経時崩壊する同位体などの“放射性同位体”が含まれ、場合によっては前者が好ましい。安定な同位体標識として、2H、13C、15N、18O、33S、34Sが挙げられるが、これらに限定されるものではない。放射性同位体として、3H、14C、32P、33P、35S、125I、131Iが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0039】
“イソトポローグ”は、同一の原子および化学組成を有するが、同位体的内容が異なる同位体の相同体または分子種を意味する(たとえば、上述の例において、CH3NH2に対して、CH3NHD)。イソトポローグは、それらの同位体組成によって定義され、したがって、各イソトポローグは、特有の正確な質量を有するが、特有の構造はもたない。イソトポローグは、通常、分子中の同位体の位置によって相異する同位体的異性体(イソトポマー)のファミリーを包含する(たとえば、CH3NHDとCH2DNH2は、同じイソトポローグであるが、異なるイソトポマーである)。
【0040】
“同位体標識水”は、水素または酸素のいずれかの1つ以上の重同位体で標識された水を包含する。同位体標識水の特定の例として、2H2O、3H2OおよびH218Oが挙げられる。
【0041】
同位体標識基質として、2H20、H218O、15NH313CO2、H13C032H標識アミノ酸、13C標識アミノ酸、15N標識アミノ酸、18O標識アミノ酸、34Sまたは33S標識アミノ酸、3H2O、3H標識アミノ酸および14C標識アミノ酸、2H−グルコース、13C標識グルコース、2H標識有機分子、13C標識有機分子および15N標識有機分子が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
“タンパク質前駆体”は、その1つ以上の原子が、生体システムの生化学過程を介して、細胞、組織、器官または他の生物システム内のタンパク質分子に組み込まれる能力がある有機または無機分子またはその成分を意味する。タンパク質前駆体の例として、アミノ酸、H2O、CO2、NH3およびHCO3が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
“同位体標識タンパク質前駆体”は、天然、細胞、組織または器官に存在する元素の最も豊富な同位体とは相異する元素の同位体を含むタンパク質前駆体を意味する。同位体標識は、2H、13C、15N、18O、33S、34Sなどの生体分子に存在する元素の特定の重同位体を包含し、あるいは、3H、14C、35S、125I、131Iなどの生体分子に存在する元素の他の同位体を含んでもよい。同位体標識タンパク質前駆体として、2H20、H218O、15NH313CO2、H13C032H標識アミノ酸、13C標識アミノ酸、15N標識アミノ酸、18O標識アミノ酸、34Sまたは33S標識アミノ酸、3H2O 3H標識アミノ酸および14C標識アミノ酸が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0044】
本明細書で用いる“候補剤”または“候補薬”は、本明細書に概略するように活性をスクリーニングできる、たとえば、抗体および酵素などの生体治療薬を包含するタンパク質などの分子、公知の薬物および薬物候補、多糖類、脂肪酸、ワクチン、核酸などを包含する小有機分子のいずれをも意味する。候補剤は、本発明において、分子集合体活性および集合、そのための潜在的疾患状態に影響を及ぼす強力な治療薬を発見することなどの広範な理由のため;作用剤(たとえば、工業的化学物質、農薬、除草剤などの環境汚染物質)、薬物および薬物候補、食品添加物、化粧品などの毒性作用を解明するため;創薬;ならびに候補剤に関連する新規経路を解明するため(たとえば、薬物の副作用への探求など)に評価される。
【0045】
候補剤には、数多くの化学種が含まれる。1つの具体例において、候補剤は、有機分子、好ましくは100〜約2,500ダルトンの分子量を有する小有機化合物である。分子量100〜約2,000ダルトンが特に好ましく、約1,500ダルトン未満がより好ましく、約1,000ダルトン未満がより好ましく、約500ダルトン未満がより好ましい。候補剤は、タンパク質との、特に水素結合との構造的相互作用に必要な官能基を含み、典型的には、少なくとも1つのアミン、カルボニル、ヒドロキシまたはカルボキシル基を含み、少なくとも2つの官能化学基を含むのが好ましい。は、1つ以上の上記官能基で置換された環式炭素もしくは複素環式構造および/または芳香族もしくは多環式芳香族構造を含むことが多い。候補剤は、ペプチド、糖類、脂肪酸、ステロイド、プリン、ピリミジン、その誘導体、構造類縁体または組み合わせなどの生体分子からも見出される。
【0046】
“薬物リード”または“薬物候補”は、潜在的治療剤(薬)として評価されている化学的要素または生体分子として本明細書において定義される。“薬物作用剤”または“作用剤”または“化合物”は、本明細書において互換的に用いられ、潜在的治療剤として投与されるか、承認されるか、もしくは試験下にある物質の組成物または既知の治療剤である物質の組成物(たとえば、化学的要素または生物学的因子)のいずれをも記述する。
【0047】
“既知の薬物”または“既知の薬物作用剤”または“承認済み薬物”は、合衆国または他の管轄体においてヒトまたは動物に用いる薬物として治療用途を承認されている作用剤(たとえば、化学的要素または生物学的因子)を意味する。本発明において、用語“承認済み薬物”は、本明細書に開示する方法の使用によって試験されている(“薬物再目的化”)適応症とは別の適応症に対して承認された薬物を包含する。一例として、男性不妊とフルオキセチンを用いることによって、本発明方法は、FDA(および他の管轄体)によって抑うつの治療に対して承認された薬物であるフルオキセチンを、精子の運動性における効果、したがって、男性不妊の治療に対して試験することを可能にする;フルオキセチンによる男性不妊の治療は、FDAまたは他の管轄体によって承認されていない適応症である。このような方法で、承認済み薬物(この例ではフルオキセチン)について新しい用途(この例では男性不妊の治療)を発見することができる。
【0048】
さらに、薬物経路および潜在的な望ましくない副作用を解明するために、分子集合体の集合速度における効果について“承認済み薬物”を試験すること、すなわち、“承認済み薬物”をその適応症内で試験することができる。
【0049】
合成または天然化合物のライブラリーなどの広範囲の源から候補剤を得る。たとえば、数多くの手段が、ランダム化オリゴヌクレオチドおよびペプチドの発現および/または合成などの広範囲の有機化合物および生体分子のランダムおよび定方向合成に利用可能である。別法として、細菌、真菌、植物および動物抽出物の形態での天然化合物のライブラリーが利用可能であるか、または容易に作成される。さらに、天然または合成により作成されたライブラリーおよび化合物は、慣例の化学的、物理的および生化学的手段を介して容易に修飾される。既知の薬理作用剤を、構造類縁体を作成するためのアシル化、アルキル化、エステル化、アミド化などの定方向またはランダム化学的修飾に付してもよい。
【0050】
候補生体活性剤は、タンパク質であってよい。本明細書で用いる“タンパク質”は、少なくとも2つの共有結合したアミノ酸を意味し、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチドおよびペプチドが包含される。タンパク質は、天然アミノ酸およびペプチド結合で構成されてもよく、あるいは合成ペプチド様構造であってもよい。したがって、本明細書で用いる“アミノ酸”または“ペプチド残基”は、天然および合成アミノ酸の両方を意味する。たとえば、ホモ-フェニルアラニン、シトルリンおよびノルロイシンは、本発明の目的にとってアミノ酸であるとみなされる。“アミノ酸”は、プロリンおよびヒドロキシプロリンなどのイミノ酸も包含する。側鎖は、(R)または(S)立体配置のいずれかであってよい。好ましい具体例において、アミノ酸は、(S)またはL−立体配置である。天然でない側鎖を用いる場合、たとえば、インビボ分解を防止または遅延化するために、非アミノ酸置換基を用いることができる。酵素のペプチドインヒビターが特定の用途を見出す。
【0051】
候補生体活性剤は、天然タンパク質、または天然タンパク質のフラグメントであってもよい。したがって、たとえば、タンパク質を含む細胞抽出物またはタンパク質様抽出物のランダムまたは定方向切断物を用いることができる。この方法で、本明細書に記載するシステムにおいてスクリーニングするための原核および真核性タンパク質のライブラリーを作成することができる。この具体例においては、細菌、真菌、ウイルスおよび哺乳動物タンパク質のライブラリーが特に好ましく、後者が好ましく、ヒトタンパク質が特に好ましい。
【0052】
候補剤は、タンパク質の1つの種類である抗体であってもよい。用語“抗体”は、全抗体または組換えDNA技術によってデノボ合成された抗体およびその誘導体の修飾によって産生される、Fab Fab2、一本鎖抗体(たとえば、Fv)、キメラ抗体、ヒト化およびヒト抗体などの当業界で公知の抗体フラグメント(全長が好ましい)を包含する。
【0053】
候補生体活性剤は、核酸であってもよい。本明細書において“核酸”または“オリゴヌクレオチド”または文法的等価物は、一緒に共有結合した少なくとも2つのヌクレオチドを意味する。本発明の核酸は、以下に概略するように、場合によっては、たとえば、ホスホルアミド(Beaucageら、Tetrahedron、49(10):1925(1993)およびその引用文献;Letsinger、J.Org.Chem.、35:3800(1970);Sprinzlら、Eur.J.Biochem.、81:579(1977);Letsingerら、Nucl.Acids Res.、14:3487(1986);Sawaiら、Chem.Lett.、805(1984)、Letsingerら、J.Am.Chem.Soc.、110:4470(1988);およびPauwelsら、Chemica Scripta、26:141(1986))、ホスホロチオエート(Magら、核酸 Res.、19:1437(1991);and U.S.特許 No.5,644,048)、ホスホロジチオエート(Briuら、J.Am.Chem.Soc.、111:2321(1989))、O−メチルホスホロアミデート結合(Eckstein、Oligonucleotides and Analogues:A Practical Approach、Oxford University Press参照)およびペプチド核酸骨格および結合(Egholm、J.Am.Chem.Soc.、114:1895(1992);Meierら、Chem.Int.Ed.Engl.、31:1008(1992);Nielsen、Nature、365:566(1993);Carlssonら、Nature、380:207(1996)参照)(これらは、全体として参照することにより本発明に援用される)を含むなどの別の骨格を有する核酸類縁体が包含されるが、一般に、ホスホジエステル結合を含む。他の核酸類縁体として、ポジティブ骨格(Denpcyら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、92:6097(1995));非イオン性骨格(U.S.特許 Nos.5,386,023;5,637,684;5,602,240;5,216,141;および4,469,863;Kiedrowshiら、Angew.Chem.Intl.Ed.English、30:423(1991);Letsingerら、J.Am.Chem.Soc.、110:4470(1988);Letsingerら、Nucleoside & Nucleotide、13:1597(1994);Chapters 2 and 3、ASC Symposium Series 580、“Carbohydrate Modifications in Antisense Research”、Ed.Y.S.SanghuiおよびP.Dan Cook;Mesmaekerら、Bioorganic & Medicinal Chem.Lett.、4:395(1994);Jeffsら、J.Biomolecular NMR、34:17(1994);Tetrahedron Lett.、37:743(1996))およびU.S.特許 Nos.5,235,033および5,034,506およびChapters 6 and 7、ASC Symposium Series 580、“Carbohydrate Modifications in Antisense Research”、Ed.Y.S.Sanghui and P.Dan Cookなどに記載の非リボース骨格およびペプチド核酸をもつものが挙げられる。1つ以上の炭素環式糖質を含む核酸もまた、核酸の定義に包含される(Jenkinsら、Chem.Soc.Rev.,(1995)pp.169−176を参照)。いくつかの核酸類縁体が、Rawls、C & E News、June 2、1997、page 35に記載されている。これらは、全体として参照することにより本発明に援用される。リボース−リン酸骨格のこれらの修飾は、標識などのさらなる部分の付加を促進するため、または生理的環境下でこのような分子の安定性および半減期を増加させるために行われる。さらに、天然核酸および類縁体の混合物を作成することができる。別法として、異なる核酸類縁体の混合物および天然核酸および類縁体の混合物を作成してもよい。核酸は、正確に一本鎖または二本鎖であってもよく、あるいは、制限フラグメント、ウイルス、プラスミド、染色体などの二本鎖または一本鎖配列の両方の部分を含んでもよい。核酸は、DNA、ゲノムおよびcDNAの両方、RNAまたはハイブリッドであってもよい;ここで、核酸は、デオキシリボ−およびリボ核酸の組み合わせいずれか、およびウラシル、アデニン、チミン、シトシン、グアニン、イノシン、キサンチン、ハイポキサンチン、イソシトシン、イソグアニン、4−アセチルシトシン、8−ヒドロキシ−N6−メチルアデノシン、アジリジニルシトシン、プソイドイソシトシン、5−(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウラシル、5−カルボキシメチル−アミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルアデニン、1−メチルプソイドウラシル、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−メチルアデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、β−D−マンノシルケオシン、5−メトキシカルボニルメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸、オキシブトキソシン、プソイドウラシル、ケオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、N−ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸、プソイドウラシル、ケオシン、2−チオシトシンおよび2,6−ジアミノプリンなどの塩基の組み合わせのいずれかを含む。本発明に関して、ヌクレオシド(リボース+塩基)がおよびヌクレオチド(リボース、塩基および少なくとも1つのリン酸)は、他に特記しない限り、本明細書において互換的用いられることに留意すべきである。
【0054】
上述したように、一般に、タンパク質、核酸の候補生体活性剤は、天然の核酸、ランダムおよび/または合成核酸である。たとえば、原核または真核ゲノムの切断は、上記に概略したように、タンパク質に対して用いることができる。さらに、RNAisが本明細書に含まれる
【0055】
“食品添加物”として、感覚刺激剤(たとえば、香味、食感、芳香および色彩を与える作用剤)、ニトロソアミン、ニトロソアミド、N−ニトロソ物質などの保存剤、凝結剤、乳化剤、分散剤、燻蒸剤、保湿剤、酸化および還元剤、推進剤、金属イオン封鎖剤、溶媒、界面活性剤、表面処理剤、共力剤、農薬、有機塩素化合物、食用動物が摂取する化学物質または食用植物が組み込む化学物質および包装材料から食物または飲料に浸出される(または他の入り方で入る)化学物質が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0056】
該用語は、食物または飲料製品に、製造および包装過程中のどこかの段階で添加されるか、または食用動物による摂取によって入るか、または食用植物により組み込みによって入るか、または内毒素または外毒素(ボツリヌス毒またはアフラトキシンなどの予め生産された毒素)などの微生物副産物を介して入るか、または調理過程を介して入るか(たとえば、2−アミノ−3−メチルイミダゾ[4,5−f]キノロンなどの複素環式アミンなど)、または製造、包装、保管および出荷作業中に包装材料から浸出するかまたは他の過程によって入る化学物質を包含することを意味する。
【0057】
“工業的化学物質”として、揮発性有機化合物、半揮発性有機化合物、洗浄剤、溶媒、稀釈剤、混合剤、金属化合物、金属、有機金属、半金属、ヘキサンなどの置換および非置換脂肪族および非環式炭化水素、ベンゼンおよびスチレンなどの置換および非置換芳香族炭化水素、塩化ビニルなどのハロゲン化炭化水素、ニトロベンゼンなどのアミノ誘導体およびニトロ誘導体プロピレングリコールなどのグリコール誘導体、シクロヘキサノンなどのケトン、フルフラールなどのアルデヒド、アクリルアミドなどのアミドおよび無水物、フェノール、シアニドおよびニトリル、イソシアネートおよび農薬、除草剤、殺鼠剤および防カビ剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0058】
“環境汚染物質”には、天然に見出されない化学物質または天然に見出されるが、天然に見出されるレベル(少なくとも天然の接近しうる媒体中に見出される)を越えて人工的に濃縮される化学物質が包含される。したがって、たとえば、環境汚染物質には、公園、学校またはなどの非職業的または非工業的環境においてこれまでに見出された職業的または工業的化学物質として同定された非天然化学物質のいずれかが包含されうる。あるいは、環境汚染物質には、バックグラウンドを越えるレベルでの鉛(たとえば、自動車の有鉛ガソリンの燃焼からの排気ガスによって堆積した幹線道路沿いの土壌中に見出される鉛など)などの天然の化学物質が包含されてもよい。環境汚染物質には、工場の煙突または地上水または地下水への工場廃液などの点源からのもの、あるいは幹線道路走行中の自動車からの排気ガス、市街道路を走行中のバスからのディーゼル排気ガス(およびその含有成分すべて)または農地に起因する空気中の埃から土壌中に堆積した農薬などの非点源からのものも含まれる。本明細書で用いる“環境汚染物質(contaminant)”は、“環境汚染物質(pollutant)”と同義である。
【0059】
“部分的に精製する”は、他の類似成分の混合物の1つ以上の成分を除去する方法を意味する。たとえば、“タンパク質を部分的に精製する”は、1つ以上のタンパク質の混合物から1つ以上のタンパク質を除去することを意味する。“単離する”は、化合物の混合物から1つの化合物を分離することを意味する。たとえば、“タンパク質を分離する”は、1つ以上のタンパク質の混合物中のすべての他のタンパク質から1つの特定のたとえば、を分離することを意味する。
【0060】
“生体システム”として、細胞(初代細胞を含む)、細胞系(正常および異常細胞を含む)、植物、細菌(特に、繊毛および/または鞭毛をもつ細菌)および動物、特に哺乳動物、特にヒトが挙げられるが、これらに限定されるものではない。適当な細胞として、すべてのタイプの腫瘍細胞(特に、黒色腫、骨髄性白血病、肺、乳房、卵巣、結腸、腎臓、前立腺、脳、膵臓および睾丸のガン種)、心筋細胞、内皮細胞、上皮細胞、リンパ球(T細胞およびB細胞)、マスト細胞、好酸球、血管内膜細胞、肝細胞、単核球などの白血球、造血、神経、皮膚、肺、腎臓、肝臓および筋細胞幹細胞などの幹細胞、破骨細胞、軟骨細胞および他の結合組織細胞、ケラチン生成細胞、メラニン形成細胞、肝細胞、腎細胞、筋細胞、繊維芽細胞、神経細胞、膠細胞、膵細胞、腸上皮細胞、リンパ球、赤血球、脂肪細胞、筋細胞、繊維芽細胞、神経細胞、膵臓の管細胞および腺房細胞、胃腸上皮細胞、白血球、リンパ球、赤血球、ケラチン生成細胞、肺上皮細胞、頸椎上皮細胞、子宮内膜細胞、卵巣細胞(たとえば、卵巣間質細胞)、乳房上皮細胞、メラニン形成細胞、黒色腫細胞、前立腺上皮細胞、膀胱上皮細胞、星状細胞、精子細胞、微生物細胞およびインビトロで生存し、機能することができるいずれかの他の細胞型が挙げられるが、これらに限定されるものではない。微生物および植物細胞も使用することができる。特に、分子集合体が微小管を含む場合、繊毛(ヒトなどの哺乳動物の気道を内張する内皮細胞など)および/または鞭毛(精子細胞および有鞭毛細菌細胞などを有する細胞は、以下に詳述するように、評価することができる。
【0061】
1つの具体例において、細胞は、一般に工作されてもよく、すなわち、外因性の核酸を含んでもよい。
【0062】
細胞を多細胞生物から採取し、培養してもよく、あるいは、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションなどの商業的供給源から購入し、当業界で公知の技術を用いて細胞系として増殖させてもよい。適当な細胞系として、上述した細胞のいずれかから作成された細胞系ならびに樹立細胞系が挙げられるが、これらに限定されるものではない。適当な細胞として、ジャーカットT細胞、NIH3T3細胞、CHO、Cosなどの公知の研究細胞もが挙げられるが、これらに限定されるものではない。ATCC細胞系カタログ(これは、参照することにより本発明に援用される)を参照のこと。適当な哺乳動物として、ヒトおよびチンパンジーおよび他の類人猿および他のサル種などの非ヒト霊長類など(これらに限定されるものではない);ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギおよびウマなどの家畜;イヌおよびネコなどの家庭内動物;マウス、ラットおよびモルモットなどの齧歯類などの実験動物などの哺乳類の一員のいずれかが挙げられるが、これらに限定されるものではない。この用語は、特定の年齢または性別を意味しない。したがって、雄性または雌性の成体および新生児ならびに胎児がこの定義内に含まれる。生体システムは、候補剤による処置などの摂動が存在しないか、または疾患もしくは疾患の危険性がないコントロールシステムまたは評価下のシステムのいずれかでありうる。“生体システム”には、ヒト患者などの個々の被験者が含まれる。
【0063】
“生体サンプル”は、細胞以下の成分、細胞、組織または生物などの生態システムから得られるサンプルのいずれをも含む。この定義には、最小限に侵襲的または非侵襲的アプローチ(たとえば、最小の危険性、不快さまたは労力を含む、尿採取、針吸引、乳管洗浄からの乳汁採取、皮膚掻き取り、精液採取、膣分泌採取、鼻分泌採取、唾液採取、便採取および他の手順)により生物から得られる生物由来の流動体(液体を含む)サンプルも含まれる。この定義には、調達後に、試薬による処理、可溶化またはタンパク質、脂質、炭水化物もしくは有機代謝物といったような集合体などの特定成分の富化などの、何らかの操作を施されたサンプルも含まれる。用語“生体サンプル”には、血清、血漿、他の生体液または組織サンプルも含まれ、培養細胞、細胞上清および細胞溶解液も含まれる。
【0064】
“生体液”は、
尿、浮腫液、唾液、類液、炎症浸出液、滑液、膿瘍、蓄膿または他の感染液、汗、肺分泌物(痰)、精液、糞便、胆汁、腸分泌液、膣分泌物または身体の外側にある空間(たとえば、内腔または外皮空間など)中のいずれかの他の生体液を意味するが、これらに限定されるものではない
【0065】
“正確な質量”は、分子式中の全ての同位体の正確な質量を合計することによって計算された質量を意味する(たとえば、CH3NHDに対しては32.04847)。
“見掛けの質量”は、分子の正確な質量を概数にすることによって得られた整数の質量を意味する。
【0066】
“質量イソトポマー”は、同位体的組成よりも見掛けの質量に基づいて分類される同位体的異性体のファミリーを意味する。質量イソトポマーは、イソトポローグとは異なり、異なる同位体組成の分子を含む(たとえば、CH3NHD、13CH3NH2、CH315NH2は、同じ質量イソトポマーの要素であるが、異なるイソトポローグである)。操作上の用語において、質量イソトポマーは、質量分析計によって分割されないイソトポローグのファミリーである。四重極質量分析計にとって、これは、典型的に、質量イソトポマーが、見掛けの質量を共有するイソトポローグのファミリーであることを意味する。したがって、イソトポローグであるCH3NH2およびCH3NHDは、見掛けの質量において相異し、異なる質量イソトポマーとして区別されるが、イソトポローグであるCH3NHD、CH2DNH213CH3NH2およびCH315NH2は、すべて同じ見掛けの質量であり、したがって、同じ質量イソトポマーである。したがって、各質量イソトポマーは、典型的に、1つ以上のイソトポローグから構成され、1つ以上の正確な質量を有する。すべての個々のイソトポローグは、四重極質量分析計を用いて分割されず、高度の質量分割を行う質量分析計を用いてさえも分割され得ないので、イソトポローグと質量イソトポマーとの間の差異は、実践において有用であり、質量分析データからの計算は、イソトポローグよりもむしろ質量イソトポマーの存在度において行われなければならない。質量が最低の質量イソトポマーをM0で表す;大部分の有機分子にとって、これは、12C、1H、16O、14Nなどのすべてを包含する化学種である。他の質量イソトポマーは、M0からのその質量の差異によって区別される(M1、M2など)。ある質量イソトポマーにとって、分子内の同位体の部位または位置は、特定されず、様々でありうる(たとえば、“位置イソトポマー”は区別されない)。
【0067】
“質量イソトポマーエンベロープ”は、分子またはイオンフラグメントに関連する質量イソトポマーのセットを意味する。
“質量イソトポマーパターン”は、分子の質量イソトポマーの存在度のヒストグラムを意味する。従来、そのパターンは、すべての存在度が、最も豊富な質量イソトポマーの量に標準化される相対存在度パーセントで表される;最も豊富なイソトポマーは、100%であると言われる。しかし、質量イソトポマー分布分析(MIDA)などの確率分析を含む適用するのに好ましい形態は、各化学種が総存在度に寄与する画分が用いられる比率または画分存在度である。用語“同位体パターン”は、用語“質量イソトポマーパターン”と同義である。
【0068】
“モノイソトピック質量”は、1H、12C、14N、16O、32Sなどのすべてを含む分子種の正確な質量を意味する。C、H、N、O、P、S、F、Cl、BrおよびIから構成されるイソトポローグにとって、これらの元素の最も豊富な同位体もまた、質量において最低であるので、最低の質量を有するイソトポローグのイソトピック組成物は、唯一で明白である。モノイソトピック質量は、m0と略記され、他の質量イソトポマーの質量は、それらの質量のm0からの差異によって同定される(m1、m2など)。
【0069】
“同位体摂動”は、天然においてより少ない同位体が過剰(富化)で存在するにせよ、あるいは欠乏(枯渇)して存在するにせよ、天然に見出される分布とは相異する同位体の分布をもつ、元素または分子の明確な組み込みに起因する元素または分子の状態を意味する。
【0070】
“対象の分子”は、本発明の分子集合体に自己集合するアミノ酸、炭水化物、脂肪酸、ペプチド、糖類、脂質、核酸、ポリヌクレオチド、グリコサミノグリカン、ポリペプチドまたはタンパク質などのいずれかの分子(重合体および/または単量体)を意味するが、これらに限定されるものではない。本発明に関連して、“対象の分子”は、疾患の“バイオマーカー”であり、非曝露または他の点では健康な被験者(たとえば、コントロール被験者)の流動速度に比べたその流動速度は、将来的に疾患または傷害が予測される対象の被験者において臨床的に敏感でないこと、または敏感な病態生理学的発現を表すことができる。このような様式において、対象の被験者における対象の1つ以上のバイオマーカーの流動速度を、コントロール被験者における対象の1つ以上のバイオマーカーの流動速度と比較により、対象の被験者を対象の疾患であると診断することにおける用途または対象の被験者の疾患獲得リスクを評価または定量することにおける用途が見出されるであろう。さらに、このような情報により、対象の疾患を有する対象の被験者についての予後を確立すること、対象の被験者における対象の疾患の進行をモニターすること、または対象の疾患を有する対象の被験者における治療計画の治療効力を評価することにおける用途が見出されるであろう。
【0071】
“対象の被験者”は、対象の疾患を有するか、ある程度の対象の疾患を獲得するリスクを有するか、または候補剤の効果を評価されるヒト、動物または細胞を意味する。
“コントロール被験者”は、対象の疾患を有さないか、ある程度の対象の疾患を獲得するリスクを有さないか、または候補剤の効果を評価されないヒトまたは動物を意味する。
“単量体”は、重合体の合成中に結合し、重合体中で2回以上存在する
化学単位を意味する。
“重合体”は、単量体から合成され、単量体の2つ以上の繰り返しを含む分子を意味する。
【0072】
“同位体標識基質”は、生体システムにおける対象の分子に組み込まれうる同位体標識前駆体分子のいずれをも包含する。同位体標識基質の例として、2H2O、3H2O、2H−グルコース、2H標識アミノ酸、2H標識有機分子、13C標識有機分子、14C標識有機分子、13CO214CO215N標識有機分子および15NH3が挙げられるが、これらに限定されるものではない。“重水”は、1つ以上の2H同位体を組み込んでいる水を意味する。“標識グルコース”は、1つ以上の2H同位体で標識されたグルコースを意味する。標識グルコースまたは2H標識グルコースの特定の例として、[6,6−2H2]グルコース、[1−2H1]グルコースおよび[1,2,3,4,5,6−2H7]グルコースが挙げられる。
【0073】
“投与する(した)”は、候補剤および標識基質などの化合物に曝露された生体システムを包含する。このような曝露は、動物または他の高等生物における局所適用、経口摂取、吸入、皮下注射、腹腔内注入、静脈内注射および動脈内注射により可能であるが、これらに限定されるものではない。細胞、組織培養物または細胞系への投与は、成長培地への化合物の添加によって行うことができる。
“個体”は、脊椎動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトである。
【0074】
薬物の発見および開発に関連して、“少なくとも部分的に同定された”は、薬剤(たとえば、“化合物”)の少なくとも1つの臨床的に関連した薬理学的特徴が、1つ以上の本発明方法を用いて同定されたことを意味する。この特徴は、望ましいもの、たとえば、疾患過程に寄与する代謝経路を介して分子流動速度を増加または減少すること、疾患に関連したシグナルトランスダクション経路または代謝経路の活性を変更する細胞表面受容体を変更すること、酵素の活性化を阻害することなどである。あるいは、薬剤の薬理学的特徴は、望ましくないもの、たとえば、1つ以上の毒性効果の生成であってもよい。当業者に周知である多くの薬剤の望ましい特徴および望ましくない特徴があり、それぞれは、開発されている特定の薬剤および標的疾患との関連において考察されるであろう。もちろん、薬剤は、たとえば、薬物開発経路に沿った特定の節目の決定点を支持するのに十分である幾つかの特徴(望ましいまたは望ましくないまたはその両方)が同定された場合、少なくとも部分的に同定された状態以上でありうる。このような節目として、インビトロからインビボへの移行のための前臨床決定、治験許可申請前の継続および/または中止決定、第I相から第II相への移行、第II相から第III相への移行、新薬承認申請および市販薬としての食品医薬局認可が挙げられるが、これらに限定されるものではない。したがって、“少なくとも部分的に”同定されたとは、薬物の発見/薬物の開発過程において薬剤を評価するのに有用な1つ以上の薬理学的特徴の同定を包含する。薬理学者または医師もしくは他の研究者は、薬剤の同定された望ましいおよび望ましくない特徴のすべてまたは一部を評価して、その治療指数を確立することができる。これは、当業界で周知の手順を用いて達成することができる。
【0075】
本発明に関連して、“薬剤を製造すること”は、薬剤製品の製造のために用いられる当業者に周知の手段のいずれをも包含する。製造方法として、医薬品化学合成(たとえば、合成有機化学など)、組み合わせ化学、ハイブリドーマモノクローナル抗体産生、組換えDNA技術などのバイオテクノロジー法および当業者に周知のその他の技術が挙げられるが、これらに限定されるものではない。このような製品は、治療用途のために市販される最終的薬剤、治療用途のために市販される組み合わせ製品の一要素、または組み合わせ製品の部分であるかまたは単一製品であるかを問わず、最終的医薬製品の開発において用いられるいずれかの中間産物でありうる。“薬剤を製造すること”は、“化合物を製造すること”と同義である。
【0076】
“バイオマーカー”は、1つ以上の疾患の開始、進行、重篤度、病理、悪性度、段階、活性、能力障害、死亡率、罹患率、疾患細分類または他の根底にある病原的または病理的特徴を測定するのに有用または潜在的に有用である生物からの生化学的測定値を意味する。バイオマーカーの概念には、1つ以上の疾患の開始、進行、重篤度、病理、悪性度、段階、活性、能力障害、死亡率、罹患率、疾患細分類または他の根底にある病原的または病理的特徴を測定するのに有用な、血圧などの身体における物理的測定値も包含される。バイオマーカーの概念には、動物またはヒトにおける毒性イベントを予測するために用いられる薬理学的または生理学的測定値も包含される。バイオマーカーは、治療的介入の結果をモニターするための標的(たとえば、薬剤の標的)であってもよい。
【0077】
本発明に関連して、“評価する”または“評価”または“評価すること”は、、通常、標準および/または条件を確立するための比較実験の結果を用いる査定および研究を介して、活性、毒性、相対強度、潜在的治療的価値および/または効力、有意性または化学的要素、生物学的因子、化学的要素の組み合わせもしくは生物学的因子の組み合わせの価値が決定される過程を意味する。この用語は、薬物開発過程においてさらに前進するための、化学的要素または生物学的因子(または化学的要素の組み合わせもしくは生物学的因子の組み合わせ)における“継続/中止”決定を行う意志決定者のための十分な情報の提供という概念を包含する。“継続/中止”決定は、前臨床開発の段階、前臨床から治験許可申請段階、第I相から第II相への段階、第II相から第II相内のさらに進展した相(第IIb相など)への段階、第II相から第III相への段階、第III相から新薬申請または生物製剤許可申請への段階またはそれ以上の段階(第IV相または他の新薬申請後または生物製剤許可申請後の段階)など(これらに限定されるものではない)の薬物開発過程におけるいずれかの時点または節目において行うことができる。この用語は、ある種類の化合物(化学的要素、生物製剤)において“最良(best−in−breed)”を選択するための十分な情報の提供という概念も包含する。
【0078】
本発明に関連して、“特徴付けする”、“特徴付けすること”または“特徴付け”は、化学的要素または化学的要素の組み合わせの特徴または質を記載するための労力を意味する。本明細書で用いるこの用語は、“評価する”とほとんど同等であるが、薬物を“評価する”ことは、薬物開発の前進における“継続/中止”決定を行う能力を包含し、この用語は“評価する”のより正確な解釈を欠いている。
【0079】
“身体状態”または“病状”は、全体またはその部分の1つとしての身体の生理的状態を意味する。この用語は、通常、以前の生理的または精神的状態からの変化、または医学の権威によって疾患または傷害として認められない異常さを示すために用いられる。“身体状態”または“病状”の例には、肥満および妊娠が包含される。
【0080】
“増殖性障害”または“増殖性疾患”は、ガンなどの無制御細胞増殖を特徴とするいずれかの疾患を意味する。乾癬などの無制御または過形成性増殖を特徴とする非悪性疾患または障害もまた、この用語の意味に含まれる増殖性障害または増殖性疾患である。
【0081】
本発明の方法
本発明は、生体システム(たとえば、細胞、組織または生物)における複数の生体分子の自己集合性システムのダイナミクス(たとえば、自己集合および分解速度;合成および分解速度)を決定する方法に関する。最初に、1つ以上の同位体標識基質(本明細書において“前駆体”と称されることもある)を、複数の生体分子の自己集合性システムのサブユニットに組み込まれるのに十分な時間の少なくとも最初の期間の間に生体システムに投与する。たとえば、細胞画分法などの種々の方法において生体システムから標識分子集合体が得られ、標識の量が、通常、定量される。さらに、“未組み込み”標識基質もまた、定量することができる;たとえば、本明細書に概略するように質量分析を用いる。
【0082】
上記に概略するように、この様式において、たとえば、質量分析または当業界で公知の他の分析技術を用いることによって、特定の時間間隔にわたって、標的サブユニットまたは分子集合体(たとえば、チューブリン二量体および微小管重合体)における、同位体含量および/またはパターンまたは同位体含量および/またはパターンの変化の速度を測定し、比較することによって、微小管のダイナミクスを決定することができる。非集合サブユニットにおける、同位体含量および/またはパターンまたは同位体含量および/またはパターンの変化の速度に対する、分子集合体(たとえば、微小管)における、同位体含量および/またはパターンまたは同位体含量および/またはパターンの変化の速度の間の関係は、特に、有益な情報である(しかし、すべてのシステム分析が、“未集合”または“遊離”基質の定量化または評価を必要としないことに留意すべきである)。次いで、微小管集合および分解(重合および解重合)のダイナミクスを計算することができる。同様の様式において、細胞骨格中のアクチンフィラメント(たとえば、微小フィラメント)、鎌状赤血球中の突然変異ヘモグロビン、脳内のアミロイド−ベータ原繊維、脳内のタウフィラメントまたは凝集体(神経原繊維変化)、脳内のα−シヌクレインフィラメントまたは凝集体(レビー小体またはレビー軸索)、プリオン凝集体またはプラーク、血餅中のフィブリン集合体、ミエリンラメラ中のガラクトセレブロシド凝集体、ミエリンラメラ中のリン脂質凝集体(または減少した凝集体)、ミトコンドリア内膜中のカルジオリピン凝集体、形質膜中のコレステロール凝集体または形質膜、ミエリンラメラおよび細胞内小器官の膜中のリン脂質凝集体などのいずれかの生体分子の自己集合性システムのダイナミクスを計算することができる。
【0083】
別法として、放射性標識基質がチューブリン二量体に組み込まれ、次いで、微小管重合体に組み込まれる本発明において、該放射性標識基質が使用を企図される。この様式において、チューブリン二量体および微小管重合体に存在する放射能を、シンチレーション計数などの当業界で公知の方法を用いて測定することによって、微小管のダイナミクスを決定することができる。同様の様式において、他の生体分子の自己集合性システムについても放射性標識基質を用いることができる。
【0084】
もう1つの具体例において、1つ以上の候補剤への曝露前および後に、微小管の集合および分解(重合および解重合)から微小管のダイナミクスを測定して、毒性を評価する。当業者には当然のことであるが、工業的または職業的化学物質、化粧品、食品添加物、環境汚染物質、薬物および薬物候補など(これらに限定されるものではない)の種々の適当な種類の候補剤の毒性を試験することができる。同様の様式において、1つ以上の候補剤への曝露前、中および/または後に、いずれかの生体分子の自己集合性システムの集合および分解のダイナミクスを測定することができる。
【0085】
別法として、生体システムを候補剤に曝露し、その微小管のダイナミクスを、同じ種類の非曝露生体システムからの微小管のダイナミクスと比較して、毒性を評価する(たとえば、複数の生体システムを使用して、毒性を評価する)。
本発明の自己集合性システムのすべてに関しては、異なる時点において、または異なる期間、異なる候補剤の用量、異なる候補剤の組み合わせ、異なる“パルス-チェイス”実験またはその組み合わせについて、比較を行うこともできる。たとえば、用量曲線または用量時間曲線またはそのマトリックスを行うことができる。
【0086】
本発明のさらなる具体例では、精子細胞および/または精子形成(たとえば、睾丸組織)において、微小管の重合および解重合を、精子の運動性を増大させるため(生殖能力)、または精子の運動性を低下させるため(受胎調節)の薬物の開発などの種々の理由のため、または他の理由における、精子の運動性および/または形成における薬物および薬物候補の評価のために評価する。
さらなる具体例において、微小管形成が繊毛形成および活動にとって重要であるので、呼吸器および胃腸管を内張する細胞などの繊毛をもつ真核細胞もまた用いることができる。
別の具体例において、生体システムは、鞭毛を有する細菌細胞である。多くの細菌株は、移動および/または感染のために鞭毛を利用し、したがって、微小管重合および解重合のダイナミクスを、抗生物質などの薬物開発に用いることができる。
【0087】
本発明の別の具体例において、チューブリン以外の自己集合性生体システムにおける集合および分解のダイナミクスを測定することができる。自己集合性生体システムの1つのこのような例は、アルツハイマー病の患者の脳内またはアルツハイマー病の動物モデルの脳内でAβペプチド(アミロイド前駆体タンパク質(APP)からタンパク質分解処理によって誘導されるAβ1−40またはAβ1−42)から形成されたAβ原繊維またはプラークである。アミロイド繊維形成のダイナミクスが、アルツハイマー病における本発明の病原、進行および潜在的治療効率に対する中心的対象である。Aβ原繊維のダイナミクスは、本明細書に開示する本発明方法の使用によって測定することができる。1つの具体例において、安定な同位体標識基質を、APPを発現または過剰発現しているトランスジェニックマウスなどのアルツハイマー病の動物モデルまたはアルツハイマー病の患者に投与する。次いで、Aβプラーク(原繊維)およびAβペプチド(またはAPP中で同時合成されたペプチド)への該安定な同位体標識の組み込みを当業界で公知の方法によって測定する。この様式において、特定の時間間隔にわたって、質量分析または当業界で公知の他の分析技術を用いて、標的化自己集合性分子(たとえば、Aβ原繊維またはプラーク)および遊離Aβペプチド中の同位体含量および/またはパターンまたは同位体含量および/またはパターンの変化の速度を測定し、比較することによって、Aβプラーク(原繊維)のダイナミクスを決定することができる。凝集体(Aβ原繊維またはプラーク)および非凝集サブユニット(遊離AβペプチドまたはAPP中で同時合成されたペプチド)中の標識(たとえば、同位体含量および/またはパターンまたは同位体含量および/またはパターンの変化の速度)の間の関係は、特に有益な情報である。
【0088】
したがって、当業界で公知の計算方法を用いることによって、Aβ原繊維またはプラークの集合および分解のダイナミクスを計算することができる。
【0089】
微小管の例で記載したように、本発明方法により、1つ以上の化合物に曝露された生体システムから測定されたAβ原繊維またはプラークの集合および分解のダイナミクスを、非曝露生体システムから測定されたAβ原繊維またはプラークのダイナミクスに対して比較することができる。別法として、1つ以上の化合物に曝露する前に、生体システムからAβ原繊維またはプラークのダイナミクスを計算することができ、次いで、速度を該1つ以上の化合物に曝露した後の同じ生体システムにおいて計算し、次いで、比較してもよい。
【0090】
本発明の他の具体例において、他の自己集合性生体システム中の集合および分解のダイナミクスを測定する。このような自己集合性生体システムの例として、鎌状赤血球病の動物または患者の赤血球中の突然変異ヘモグロビン(たとえば、ヘモグロビンS)から形成された鎌状ヘモグロビン凝集体が挙げられる。したがって、上述の自己集合性システムと同様に、凝集分子(たとえば、鎌状ヘモグロビン凝集体)および遊離ヘモグロビンタンパク質中の同位体含量および/またはパターンまたは同位体含量および/またはパターンの変化の速度に基づいて、鎌状ヘモグロビン凝集体への同位体標識基質の取り込みを決定する。凝集体(鎌状ヘモグロビン)および非凝集サブユニット(遊離ヘモグロビン)における標識間の関係は、特に有益な情報である。したがって、当業界で公知の計算方法を用いて、鎌状ヘモグロビンの集合および分解のダイナミクスを計算することができる。したがって、本明細書に記載の方法によって、鎌状ヘモグロビン凝集体のダイナミクスにおける1つ以上の化合物への曝露の影響を決定することができる。
【0091】
自己集合性生体システムのもう1つの例は、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、クル病、スクレイピーおよびウシ海綿状脳症(BSE)に関与するプリオンである。通常、脳内に存在する遊離プリオンタンパク質(PrP)サブユニットは、感染性プリオン凝集体によって引き起こされた核形成の後に、棒状粒子の凝集体へ沈澱する。正常PrPの病原性凝集体への変換には、コンホメーションの変化および重合が関与している。上述(以下に詳述)の自己集合性システムと同様に、特定の時間間隔にわたって、プリオン凝集体および遊離PrPへの同位体標識基質の取り込みを測定し、比較する。したがって、質量分析または当業界で公知の他の分析技術によって測定された凝集体(プリオン棒状粒子)および非凝集サブユニット(遊離PrP)の同位体含量および/またはパターンまたは同位体含量および/またはパターンの変化の速度に基づいて、プリオン凝集体の集合および分解のダイナミクスを決定する。凝集体(the プリオン 原繊維)および非凝集サブユニット(遊離PrP)中の標識(たとえば、同位体含量および/またはパターンまたは同位体含量および/またはパターンの変化の速度)の間の関係は、特に有益な情報である。したがって、当業界で公知の計算方法を用いることによって、プリオン原繊維の集合および分解のダイナミクスを計算することができる。したがって、本明細書に記載の本発明方法を用いて、プリオン原繊維の集合および分解のダイナミクスにおける1つ以上の化合物への曝露の影響を決定することができる。
【0092】
自己集合性生体システムのもう1つの例は、アクチンである。遊離アクチンは、G−アクチンと呼ばれる球状単量体である。単量体は自己集合して、F−アクチンと呼ばれるフィラメント状重合体になる。F−アクチン重合体は、細胞の細胞骨格を含む。細胞骨格は動的であり、たとえば、アクチン微小フィラメントは常に、収縮しているか、または長さおよび束が成長しており、微小フィラメントの網目構造は常に、形成されるか、または分解している。フィラメント状アクチンの重合および解重合は、細胞質分裂などの多くの細胞機能において重要である。微小管および上述および後述する他のシステムの自己集合と同様に、特定の時間間隔にわたって、F−アクチンフィラメンおよび遊離G−アクチンへの同位体標識基質の取り込みを測定し、比較する。したがって、質量分析または他の当業界で公知の分析技術の使用によって測定されたフィラメント状形体(F−アクチン重合体)および遊離サブユニット(G−アクチン単量体)中の同位体含量および/またはパターンまたは同位体含量および/またはパターンの変化の速度に基づいて、アクチンフィラメントの集合および分解のダイナミクスを決定する。フィラメント状形体および遊離形体中の標識(たとえば、同位体含量および/またはパターンまたは同位体含量および/またはパターンの変化の速度)間の関係は、特に有益な情報である。したがって、当業界で公知の計算方法を用いることによって、アクチンフィラメントの集合および分解のダイナミクスを計算することができる。したがって、本明細書に記載の本発明方法を用いて、アクチンフィラメントの集合および分解のダイナミクスにおける1つ以上の化合物への曝露の影響を決定することができる。
【0093】
自己集合性生体システムのもう1つの例は、アクチンである。遊離アクチンは、G−アクチンと呼ばれる球状単量体である。単量体は自己集合して、F−アクチンと呼ばれるフィラメント状重合体になる。F−アクチン重合体は、細胞の細胞骨格を含む。細胞骨格は動的であり、たとえば、アクチン微小フィラメントは常に、収縮しているか、または長さおよび束が成長しており、微小フィラメントの網目構造は常に、形成されるか、または分解している。フィラメント状アクチンの重合および解重合は、細胞質分裂などの多くの細胞機能において重要である。微小管および上述および後述する他のシステムの自己集合と同様に、特定の時間間隔にわたって、F−アクチンフィラメンおよび遊離G−アクチンへの同位体標識基質の取り込みを測定し、比較する。したがって、質量分析または他の当業界で公知の分析技術の使用によって測定されたフィラメント状形体(F−アクチン重合体)および遊離サブユニット(G−アクチン単量体)中の同位体含量および/またはパターンまたは同位体含量および/またはパターンの変化の速度に基づいて、アクチンフィラメントの集合および分解のダイナミクスを決定する。フィラメント状形体および遊離形体中の標識(たとえば、同位体含量および/またはパターンまたは同位体含量および/またはパターンの変化の速度)間の関係は、特に有益な情報である。したがって、当業界で公知の計算方法を用いることによって、アクチンフィラメントの集合および分解のダイナミクスを計算することができる。したがって、本明細書に記載の本発明方法を用いて、アクチンフィラメントの集合および分解のダイナミクスにおける1つ以上の化合物への曝露の影響を決定することができる。
【0094】
自己集合性生体システムのもう1つの例は、血餅の形成である。遊離フィブリン単量体がフィブリン繊維へ自己集合する場合に、血餅が形成される。したがって、フィブリン 繊維(たとえば血餅)および遊離フィブリン中の同位体含量および/またはパターンまたは同位体含量および/またはパターンの変化の速度に基づいて、フィブリン繊維(たとえば、血餅)への同位体標識基質の取り込みを決定する。凝集体(血餅)および非凝集サブユニット(遊離フィブリンまたはその前駆体、フィブリノーゲン)中の標識間の関係は、特に有益な情報である。したがって、当業界で公知の計算方法を用いて、フィブリン繊維(たとえば、血餅)の集合および分解のダイナミクスを計算することができる。したがって、本明細書に記載の本発明方法によって、フィブリン繊維のダイナミクスにおける1つ以上の化合物への曝露の影響を決定することができる。
【0095】
本発明の別の具体例において、細胞の増殖速度を反映しない有糸分裂終了細胞(たとえば、分化ニューロンなどの非分裂細胞)における微小管ダイナミクスの測定により、細胞毒性(たとえば、軸索機能障害)などの他の重要な生物学的過程を測定することができる。
【0096】
生体分子の自己集合性システムのダイナミクスにおける変化を、たとえば、公知薬物、薬物候補、薬物リード(またはその組み合わせ)、または農薬、除草剤、プラスチックなどの工業的化学物質、または化粧品もしくは食品添加物などの候補剤によって顕在化することができる。
【0097】
少なくとも1つの同位体標識基質分子を、生体分子(たとえば、チューブリン二量体、Aβタンパク質、アクチン、タウタンパク質、α−シヌクレイン、突然変異ヘモグロビン、フィブリン、遊離プリオンタンパク質、ガラクトセレブロシド、カルジオリピン、コレステロール、ホスファチジルセリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルイノシトールおよびホスファチジルエタノールアミン)の自己集合性システムの1つ以上のサブユニットにインビボで組み込まれ、次いで、分子集合体に組み込まれるのに十分な時間にわたって生体システムに(あるいは、もし生体システムが細胞系などの培養細胞または細菌ならば、細胞内に)投与する。1つの具体例において、同位体標識基質分子は、安定な同位体(たとえば、非放射性同位体)である。もう1つの具体例において、同位体標識基質分子は、放射性同位体で標識される。さらに別の具体例において、安定および放射性同位体の両方を用いて、1つ以上の同位体標識基質分子を標識する。
【0098】
生化学的単離手順によって、生体システムから標識サブユニットおよび/または標識分子集合体を得、質量分析または当業界で公知の他の分析技術によって同定する。各同定されたサブユニットまたは分子集合体(たとえば、分子の同位体含量および/またはパターンまたは分子の同位体含量および/またはパターンの変化の速度)に対応する質量イソトポマーエンベロープ内のイオンの相対的および絶対的存在度を定量する。1つの具体例において、各同定されたサブユニットまたは分子集合体に対応する質量イソトポマーエンベロープ内のイオンの相対的および絶対的存在度を質量分析によって定量する。次いで、当業界で公知であり、後述する方程式の使用によって生体分子の自己集合性システムのダイナミクスを計算する。計算されたダイナミクスを、1つ以上の候補剤または候補剤の組み合わせへの曝露の有無、またはレベルの相異する1つ以上の候補剤または作用剤の組み合わせへの曝露に対する応答において比較する。
【0099】
この様式において、生体分子の自己集合性システムのダイナミクスにおける変化を測定し、定量し、疾患診断;疾患予後;投与した候補剤の治療効力;および/または候補剤の毒性作用ならびに薬物発見と関連させる。
【0100】
同位体標識前駆体の投与
本発明方法の最初のステップとして、同位体標識前駆体を投与する。
同位体標識前駆体分子の投与
標識前駆体分子
同位体標識
分子流動速度を測定する最初のステップは、生体システムへ同位体標識前駆体分子を投与することを含む。同位体標識前駆体分子は安定な同位体または放射性同位体である。使用できる同位体標識として、2H、13C、15N、18O、3H、14C、35S、32P、125I、131Iまたは有機システムに存在する元素の他の同位体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
1つの具体例において、同位体標識は、2Hである。
【0101】
前駆体分子
前駆体分子は、対象の“単量体”または“サブユニット”に組み込まれる同位体標識を有する分子のいずれであってもよく、あるいは単量体それ自体でもありうる。同位体標識を用いて、本明細書に開示するすべての前駆体分子を修飾して同位体標識前駆体分子を形成してもよい。
前駆体分子全体を1つ以上のサブユニット(たとえば、タンパク質、リン脂質、コレステロール(たとえば、αβ−チューブリン、β−チューブリン))に組み込んでもよい。別法として、前駆体分子の一部をサブユニットに組み込んでもよい。
【0102】
タンパク質前駆体
タンパク質前駆体分子は、当業界で公知のタンパク質前駆体分子のいずれであってもよい。これらの前駆体分子として、CO2、NH3、グルコース、乳酸塩、H2O、酢酸塩および脂肪酸が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
タンパク質の前駆体分子は、1つ以上のアミノ酸を含んでもよい。前駆体は、いずれかのアミノ酸であってもよい。前駆体分子は、1つまたは複数の重水素を含むアミノ酸であってもよい。たとえば、前駆体分子は、1つ以上の13C−リシン、15N−ヒスチジン、13C−セリン、13C−グリシン、2H−ロイシン、15N−グリシン、13C−ロイシン、2H5−ヒスチジンおよびいずれかの重水素化アミノ酸であってもよい。非標識アミノ酸で非稀釈または稀釈して標識アミノ酸を投与してもよい。すべての同位体標識前駆体は、たとえば、Cambridge Isotope Labs(Andover、MA)から市販されている。
【0103】
タンパク質前駆体分子は、翻訳後または翻訳前修飾アミノ酸のためのいずれの前駆体をも包含する。これらの前駆体として、
グリシン、セリンまたはH2Oなどのメチル化の前駆体;H2OまたはO2などのヒドロキシル化の前駆体;H2OまたはO2などのホスホリル化の前駆体;脂肪酸、酢酸塩、H2O、エタノール、ケトン体、グルコースまたはフルクトースなどのプレニル化の前駆体;CO2、O2、H2Oまたはグルコースなどのカルボキシル化の前駆体;酢酸塩、エタノール、グルコース、フルクトース、乳酸塩、アラニン、H2O、CO2またはO2などのアセチル化の前駆体;グリコシル化の前駆体および当業界で公知の他の翻訳後修飾が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0104】
遊離アミノ酸に存在する標識の程度は、実験的に決定してもよく、あるいは、アミノ酸における標識部位の数に基づいて仮定してもよい。たとえば、標識として水素同位体を用いる場合、体内水分中で2H2Oに曝露中の遊離アミノ酸、さらに詳しくはtRNA−アミノ酸のC−H結合に存在する標識を同定することができる。各非必須アミノ酸におけるC−H結合の総数は、たとえば、アラニンにおいて4、グリシンにおいて2などが知られている。
【0105】
タンパク質のための前駆体分子は、水(たとえば、重水)であってもよい。タンパク質のO−HおよびN−H結合は、水溶液において不安定なので、C−H結合における水素原子が、2H2Oからのタンパク質合成を測定するのに有用なアミノ酸上の水素原子である。2H2OからO−HまたはN−H結合への2H−標識の交換は、上述したように、遊離アミノ酸からタンパク質を合成することなく起こる。C−H結合は、特定の酵素触媒中間代謝反応中に、H2Oから遊離アミノ酸への組み込みを受ける。したがって、2H2O投与後のタンパク質−結合アミノ酸のC−H結合における2H−標識の存在は、タンパク質が、2H2O曝露の期間中に遊離体であったアミノ酸から集合されたこと、たとえば、タンパク質が新たに合成されることを意味する。分析的に、使用されたアミノ酸誘導体は、すべてのC−H結合を含まなければならないが、すべての潜在的に汚染されているN−HおよびO−H結合を除去しなければならない。
【0106】
体内水分からの水素原子(たとえば、重水素または三重水素)は、遊離アミノ酸に組み込まれてもよい。標識水からの2Hまたは3Hは、中間代謝の反応を介して、細胞内の遊離アミノ酸に入ることができるが、2Hまたは3Hは、ペプチド結合で存在するか、またはトランスファーRNAに結合するアミノ酸に入ることはできない。遊離必須アミノ酸は、迅速な可逆的アミノ基転移反応を介して、体内水分からα−炭素原子C−H結合へ1つの水素原子を組み込むことができる。遊離非必須アミノ酸は、より多くの代謝的に交換可能なC−H結合を含み、もちろん、したがって、新たに合成されたタンパク質において、2H2Oからの分子当たりの同位体富化値がより高いことが予測される。
【0107】
体内水分からの標識水素原子が、他の生化学的経路を介して、他のアミノ酸に組み込まれてもよいことを当業者であれば理解するであろう。たとえば、水からの水素原子が、クエン酸回路において前駆体であるα−ケトグルタル酸塩の合成を介してグルタミン酸塩に組み込まれうることが当業界において知られている。グルタミン酸塩は、グルタミン、プロリンおよびアルギニン合成のための生化学的前駆体であることも知られている。もう1つの例として、体内水分からの水素原子は、3−メチル−ヒスチジン中のメチル基、ヒドロキシプロリンまたはヒドロキシリシン中のヒドロキシル基などの翻訳後修飾アミノ酸に組み込まれうる。他のアミノ酸合成経路が、当業者に公知である。
【0108】
酸素原子(H218O)もまた、酵素触媒反応を介してアミノ酸に組み込まれうる。たとえば、アミノ酸のカルボン酸部分への酸素交換が、酵素触媒反応中に起こる。アミノ酸への標識酸素の組み込みは、当業者に公知である。酸素原子は、酵素触媒反応を介して、18O2からアミノ酸に組み込まれてもよい(ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリシンまたは他の翻訳後修飾アミノ酸など)。
【0109】
標識水からの水素および酸素標識は、翻訳後修飾を介してアミノ酸に組み込まれてもよい。1つの具体例において、翻訳後修飾に先立って、翻訳後修飾がすでに、生合成経路を介して標識水素または酸素を含むことができる。もう1つの具体例において、翻訳後修飾は、翻訳後修飾ステップ(たとえば、メチルば、ヒドロキシル化、ホスホリル化、プレニル化、硫酸化、カルボキシル化、アセチル化、グリコシル化または他の公知の翻訳後修飾)の前または後のいずれかにおいて、体内水分からの遊離交換標識水素に関与する代謝誘導体から標識水素、酸素、炭素または窒素を含むことができる。
被験者への投与に適したタンパク質前駆体として、上述したようなタンパク質に見出される標準的アミノ酸に加えて、H2O、CO2、NH3およびHCO3が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0110】
前駆体分子としての水
水は、タンパク質(およびDNAおよび脂質などの他の生体分子)の前駆体である。このように、標識水(たとえば、重水)は、本明細書に教示する方法において前駆体となりうる。
標識水は、市販のものを容易に入手できる。たとえば、2H2OをCambridge Isotope Labs(Andover、MA)から購入することができ、3H2OをNew England Nuclear, Inc. から購入することができる。一般に、2H2O(およびH218O)は、非放射性であり、したがって、放射性3H2Oよりも毒性の懸念が少ない。たとえば、2H2Oを体内総水分のパーセント、たとえば、消費される体内総水分の1%として投与することができる(たとえば、1日に消費される3リットルの水に対して、30マイクロリットルの2H2Oが消費される)。3H2を用いる場合、当業者によって容易に決定される非毒性量を投与する。
【0111】
2H2Oの相対的高割合での体内水分における富化(たとえば、体内総水分の1−10%が標識される)は、本発明の技術を用いて、比較的安価に達成される。この水の富化は、これらのレベルは、何の毒性の徴候もなく、ヒトおよび実験動物において数週間または数ヶ月維持されるので、比較的一定であり、安定である。多数のヒト被験者(>100人)におけるこの発見は、高用量の2H2Oにおける前庭毒性についてのこれまでの懸念とは反対である。本発明者らの1人が、体内水分富化における急速な変化が妨げられる限りは(たとえば、少量の初期投与、分割投与など)、2H2Oの高割合での体内水分における富化が、毒性なしに維持されうることを発見している。たとえば、市販の2H2Oが安価であることにより、1−5%の範囲における富化を比較的低費用で長期維持することができる(たとえば、計算により、10%遊離ロイシン富化での2H−ロイシンの12時間の標識付け、したがって、その期間のロイシン前駆体プールにおける7−8%富化に対してよりも、2% 2H2O富化での2ヶ月の標識付け、したがって、アラニン前駆体プールにおける7−8%富化に対して低費用が示される)。
2Hのように18O同位体は、毒性がなく、結果として有意な健康上のリスクが存在しないので、H218Oの投与について、相対的に高く相対的に一定の体内水分富化もまた、達成されうる。
【0112】
脂質前駆体
標識前駆体脂質は、脂質生合成におけるいずれの前駆体をも包含しうる。
脂質の前駆体分子は、CO2、NH3、グルコース、乳酸塩、H2O、酢酸塩および脂肪酸であってもよい。
前駆体には、脂肪酸、アシル−グリセロールのグリセロール部分、コレステロールおよびその誘導体の前駆体である標識水、好ましくは2H2O;トリグリセリド、リン脂質、コレステロールエステル、コアミドおよび他の脂質の前駆体である13Cまたは2H標識脂肪酸、;脂肪酸およびコレステロールの前駆体である13C−または2H−酢酸塩;脂肪酸、コレステロール、アシル−グリセリドおよび酵素的触媒反応または非酵素的酸化損傷(たとえば、脂肪酸に対する)によって、ある種酸化的に修飾された脂肪酸(過酸化物など)の前駆体である18O2;アシル−グリセリドの前駆体である13C−または2H−グリセロール;内因性に合成された脂肪酸、コレステロールおよびアシルグリセリドの前駆体である13C−または2H標識酢酸塩、エタノール、ケトン体または脂肪酸;および2Hまたは13C標識コレステロールまたはその誘導体(胆汁酸およびステロイドホルモンを包含する)も包含される。すべての同位体標識前駆体が、たとえば、Cambridge Isotope Labs(Andover、MA)から市販のものを購入することができる。
【0113】
糖脂質、リン脂質およびセレブロシド(ガラクトセレブロシドなど)などの複合脂質もまた、セレブロシド(N−アセチルガラクトサミン、N−アセチルグルコサミン硫酸塩、グルクロン酸およびグルクロン酸硫酸塩が挙げられるが、これらに限定されるものではない)の糖部分、セレブロシドの脂肪酸アシル部分およびセレブロシドのスフィンゴシン部分の前駆体である2H2O;セレブロシド、糖脂質、リン脂質および他の誘導体の脂肪酸部分の前駆体である2H−または13C標識脂肪酸などの前駆体から標識されうる。
前駆体分子は、脂質の成分であるかまたはそれを包含する。
【0114】
投与する前駆体の形態
1つ以上の同位体標識前駆体を投与する形態は、該同位体標識前駆体の吸収特性および各化合物が標的化される特定の生合成プールに応じて様々である。インビボ分析では、前駆体は、実験動物(たとえば、種々の増殖性疾患または正常動物モデル)およびヒトなどの多細胞生物に、直接デリバリーされうる。さらに、インビトロでは、前駆体は、生体細胞に投与されうる。
【0115】
一般に、投与の適切な形態は、少なくとも一時的期間の間、生合成プールおよびこのようなプールを供給するリザーバーに定常状態レベルの前駆体を作り出す形態である。投与の血管内(静脈内など)または経口経路が、通例、このような前駆体をヒトなどの生物に投与するために用いられる。皮下または筋肉内投与などのその他の投与経路も、遅放出性前駆体組成物とともに用いる場合などに適している。注射用組成物は、一般に、当業界で公知の滅菌医薬賦形剤中で製造される。成分(前駆体または候補剤のいずれか)を細胞媒体に加えることは、インビトロシステムに対して行うことができる。
【0116】
生体分子の自己集合性システムの複数のタンパク質および他のサブユニットの獲得
本発明方法の実施において、1つの態様では、他の生体分子の自己集合性システムのタンパク質およびサブユニット(たとえば、リン脂質、コレステロール)は、当業界で公知の方法にしたがって生体システムから得られる。生体分子の自己集合性システムの複数の分子集合体および/または遊離サブユニットは、生体システムから得られる。たとえば、採血、採尿、バイオプシーまたは他の当業界で公知の方法によって、1つ以上の生体サンプルを得ることができる。1つ以上の生体サンプルは、1つ以上の生体液であってもよい。他の生体分子の自己集合性システムのタンパク質またはサブユニットを、筋肉、肝臓、脳、副腎組織、前立腺組織、子宮内膜組織、血液、皮膚、乳房組織またはいずれかの他の身体の組織または細胞(たとえば、いずれかの組織の上皮細胞)などの特定の臓器または組織(または組織または臓器を含むいずれかの細胞型)から得てもよい。他の生体分子の自己集合性システムのタンパク質またはサブユニットを、腫瘍細胞または他の増殖もしくは非増殖細胞などの特定のグループの細胞から得ることもできる。他の生体分子の自己集合性システムのタンパク質またはサブユニットを、生体サンプルから得て、次いで、必要に応じて、当業界で公知の標準的生化学的方法を用いて部分的に精製するか、または単離することもできる。
【0117】
生物学的サンプリングは、種々の因子によって様々である。このような因子として、サンプリングの容易さおよび安全性、生体分子の自己集合性システムのタンパク質または他のサブユニットの合成および分解/除去速度および細胞、動物またはヒトに投与される治療用化学剤または生物剤(たとえば、治療化合物)の半減期が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0118】
アッセイの必要条件に応じて、他の生体分子の自己集合性システムのタンパク質およびサブユニットを、1つ以上の生体サンプルから部分的に精製および/または単離してもよい。一般に、分子集合体および/またはサブユニットを、どのような他の成分がサンプル内に存在するかに応じて、当業者に公知の種々の方法で単離または精製することができる。標準的精製方法として、イオン交換、疎水性、親和性および逆相HPLCクロマトグラフィー、高性能液体クロマトグラフィー(FPLC)、化学抽出、薄層クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィーおよび等電点電気泳動などの電気泳動的、分子的、免疫的クロマトグラフィー技術が挙げられる。たとえば、標準的抗体カラムを用いて、幾つかのタンパク質を精製することができる。タンパク質濃縮と併用した限外濾過およびダイアフィルトレーション技術も有用である。適当な精製技術の一般的ガイダンスとして、Scopes、R.、Protein Purification、Springer−Verlag、NY(1982)を参照されたい。必要な精製の程度は、アッセイおよびシステムの要素に応じて様々である。精製が必要でない場合もある。
【0119】
もう1つの具体例において、他の生体分子の自己集合性システムのタンパク質またはサブユニット(たとえば、形質膜または細胞小器官膜またはミエリンラメラのためのガラクトセレブロシドまたはリン脂質および/またはコレステロール )を加水分解または他の分解に付して、より小さい分子を形成する。加水分解法として、化学的加水分解(酸加水分解など)および生化学的加水分解(ペプチド分解など)などの当業界で公知の方法が挙げられるが、これらに限定されるものではない。加水分解または分解は、他の生体分子の自己集合性システムのタンパク質またはサブユニットの精製および/または単離の前または後に行うことができる。他の生体分子の自己集合性システムのタンパク質またはサブユニットを、HPLC、FPLC、ガスクロマトグラフィー、ゲル電気泳動および/または当業者に公知のいずれかの他の化学的および/または生化学的化合物の分離法などの慣例の精製方法によって、部分的に精製するか、または必要に応じて、単離してもよい。
【0120】
分析
質量分析
ガスクロマトグラフィー−質量分析(GC−MS)、同位体比質量分析、GC同位体比燃焼MS、GC同位体比熱分解MS、液体クロマトグラフィーMS、電子スプレーイオン化MS、マトリックス支援レーザー脱離飛行時間MS、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴MSおよびサイクロイドMSなどの質量分析(これらに限定されるものではない)などの当業界で公知の種々の方法によって、他の生体分子の自己集合性システムのタンパク質またはサブユニットにおける同位体富化を決定することができる。
【0121】
質量分析は、タンパク質または脂質などの分子を急速に移動する気体イオンに変換し、それらの質量:電荷比に基づいてそれらを分離する。したがって、イオンまたはイオンフラグメントの同位体またはイソトポローグの分布を用いて、複数のタンパク質またはリン脂質またはコレステロール分子の同位体富化を測定してもよい。
一般に、質量分析計は、イオン化手段と質量分析計を含む。多くの異なる型の質量分析計が当業界で公知である。これらとして、磁場分析計、電子スプレーイオン化、四重極、イオントラップ、飛行時間質量分析計およびフーリエ変換分析計が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0122】
質量分析計は、多くの異なるイオン化法を含むことができる。これらとして、電子衝撃、化学イオン化および電場イオン化などの気相イオン化源、ならびに電場脱離、高速原子衝撃、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化および表面増強脱離/イオン化などの脱離源が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
さらに、2つ以上の質量分析計を組み合わせて最初に前駆体イオンを分離し、次いで、気相フラグメントイオンを分離し、測定することができる。これらの装置は、タンパク質またはリン脂質またはコレステロールまたはガラクトセレブロシドの最初の一連のイオンフラグメントを生成し、次いで、最初のイオンの第2のフラグメントを生成する。
【0123】
異なるイオン化法も当業界で公知である。1つの重要な進歩は、タンパク質、リン脂質、ガラクトセレブロシドおよびコレステロールなどの大きな不揮発性巨大分子のイオン化のための技術の開発であった。このタイプの技術は、電子スプレーイオン化(ESI)およびマトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)を包含する。これらにより、MSを液体クロマトグラフィーおよびキャピラリーゾーン電気泳動などの強力なサンプル分離導入技術と組み合わせて適用することができた。
さらに、質量分析計をガスクロマトグラフィー(GC)および高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)などの分離手段と組み合わせることができる。ガスクロマトグラフィー/質量分析(GC/MS)において、ガスクロマトグラフからのキャピラリーを、質量分析計に直接結合し、必要に応じて、ジェット分離器を用いる。このような適用において、ガスクロマトグラフィー(GC)カラムは、サンプルガス混合物からサンプル成分を分離し、分離した成分をイオン化し、質量分析計において化学的に分析する。
【0124】
一般に、タンパク質またはリン脂質またはガラクトセレブロシドまたはコレステロールについて、ベースライン質量イソトポマー頻度分布を決定するために、このようなサンプルを、同位体標識前駆体の注入前に処理する。このような測定は、細胞、組織または微生物において、タンパク質またはリン脂質またはガラクトセレブロシドまたはコレステロールの質量イソトポマーの天然の頻度を確立する1つの手段である。細胞、組織または生物が、同様の環境履歴を有する被験者の集団の一部である場合、このようなバックグラウンド測定ために集団イソトポマー頻度分布を用いることができる。さらに、既知の同位体の平均天然存在度を用いて、このようなベースラインイソトポマー頻度分布を評価することができる。たとえば、天然において、有機炭素に存在する13Cの天然の存在度は、1.11%である。このようなイソトポマー頻度分布を決定する方法を以下に述べる。典型的に、タンパク質またはリン脂質またはコレステロールのサンプルを、同位体標識前駆体の投与前および後に、処理する。
【0125】
相対および絶対質量イソトポマー存在度の測定
測定した質量スペクトルのピーク高または別法としてピーク下領域を、親(ゼロ質量同位体)イソトポマーへ向かう比として表す。当然のことながら、本発明のために、サンプル中のイソトポマーの存在度の相対および絶対値を提供する計算手段を、このようなデータを記載するにあたって用いることができる。
【0126】
他の生体分子の自己集合性システムの標識:非標識タンパク質またはサブユニットの割合の計算
次いで、他の生体分子の自己集合性システムの標識または非標識タンパク質および/またはサブユニットの割合を計算する。実施者は、最初に、単離された分子のイソトポマー種について測定された過剰モル比を決定する。次いで、実施者は、理論的パターンに対して、測定された過剰比の内部パターンを比較する。このような理論的パターンは、U.S.特許 Nos.5,338,686;5,910,403;および6,010,846(これらは、全体として参照することにより本発明に援用される)に記載の二項式または多項式分布関係を用いて計算することができる。計算は、質量イソトポマー分布分析(MIDA)を含む。質量イソトポマー分布分析(MIDA)コンビナトリアルアルゴリズムの変化は、当業者に公知の多くの異なる源において考察される。この方法は、Hellerstein and Neese(1999)ならびにChinkesら(1996)およびKelleher and Masterson(1992)およびU.S.特許出願 No.10/279,399によってさらに考察される(これらは、全体として参照することにより本発明に援用される)。
【0127】
上記引用文献に加えて、この方法を実行する計算ソフトウェアは、Professor Marc Hellerstein、University of California、Berkeleyから公的に入手可能である。理論的パターンに対する過剰モル比の比較は、対象のタンパク質またはリン脂質またはガラクトセレブロシドまたはコレステロールについて作成された表を用いるか、または決定された関係を用いて図表的に行うことができる。これらの比較から、前駆体サブユニットプールにおけるサブユニットの質量同位体富化の確率を表すp値などの値が決定される。次いで、この富化を用いて、すべてのイソトポマーが新たに合成されたならば存在することが期待されるイソトポマー過剰比を明らかにするために、各質量イソトポマーについて新たに合成されたタンパク質またはリン脂質またはガラクトセレブロシドまたはコレステロールの富化を表すAX*値などの値を決定する。
【0128】
次いで、画分存在度を計算する。個々の同位体(元素について)または質量イソトポマー(分子について)の画分存在度は、特定の同位体または質量イソトポマーによって表される総存在度の画分である。これは、相対存在度とは区別され、ここで、最も存在度の多い種類は、100の値が付与され、すべての他の種類は100に対して標準化され、相対存在度パーセントとして表される。質量イソトポマーMxについて、
【数1】

[ここで、0からnは、存在度が生じる最低質量(M0)の質量イソトポマーに対する見掛けの質量の範囲である]
【数2】

[ここで、下付のeは、富化された存在度を意味し、bは、ベースラインまたは天然の存在度を意味する]
【0129】
前駆体投与期間中に実際に新たに形成された分子集合体の画分を決定するために、測定されたモル比(EMX)を、各質量イソトポマーについての新たに形成された分子集合体の富化を表す計算された富化値AX*と比較して、もしすべてのイソトポマーが新たに形成されたならば存在することが期待されるイソトポマー過剰比を明らかにする。
【0130】
分子流動速度の計算
自己集合の比を決定する方法は、前駆体プールに存在する分子集合体の質量同位体標識サブユニットの割合を計算し、この割合を用いて、少なくとも1つの分子集合体の質量同位体標識サブユニットを含む分子集合体の期待度数を計算することを包含する。次いで、この期待度数を、実際の実験的に決定されたイソトポマー度数と比較する。これらの値から、選択された組み込み期間中に加えられた同位体標識前駆体から自己集合する分子集合体の割合を決定することができる。したがって、このような期間中の自己集合の比も決定される。定常状態濃度でのシステムにおいて、あるいは該システムにおける濃度のいくらかの変化が測定可能であるかまたは該期間中に既知である場合では、それによって、当業界で公知の計算を用いて、分解の速度も既知である。次いで、前駆体−生成物の関係を適用する。継続的標識法のために、同位体富化を漸近的(たとえば、最大可能な)富化と比較し、速度パラメーター(たとえば、合成速度)を前駆体−生成物方程式から計算する。継続的標識、前駆体−生成物方程式:
ks=[−ln(1−f)]/t
[ここで、f=画分合成=生成物富化/漸近的前駆体/富化;および
t=調べられたシステムにおいて接触する標識投与の時間である]
を適用することによって、画分合成速度(ks)を決定することができる。
【0131】
非継続的標識方法のために、同位体富化における減少速度を計算し、サブユニットの速度パラメーターを指数関数的減衰方程式から計算する。この方法の実践において、好ましくは生体分子の自己集合性システムの複数の質量同位体標識サブユニットを含む質量イソトポマーにおいて、分子集合体が富化される。天然の質量同位体標識前駆体(たとえば、2H2O)が比較的低い存在度であることにより、分子集合体のこれらのより高い質量イソトポマー(たとえば、微小管重合体のための3または4個の質量同位体標識チューブリン二量体を含むタンパク質)は、外来性前駆体(たとえば、2H2O)の不在下でごく少量形成されるが、前駆体組み込みの期間中(たとえば、の細胞、組織、器官または生物への2H2Oの投与中)に有意な量で形成される。連続的時点において細胞、組織、器官または生物から得た分子集合体を、質量分析により分析して、高質量イソトポマーの相対度数を決定するか、または分子集合体からのサブユニット(たとえば、タンパク質、リン脂質、ガラクトセレブロシド、コレステロール)の高質量イソトポマーの相対度数を決定する。高質量イソトポマーは、最初の時点前にほとんど合成されるので、2つの時点間でのその減衰が、サブユニットの減衰速度の直接測定を提供する。複数の質量同位体標識サブユニットを含まない質量イソトポマーの減衰速度もまた、本明細書に記載の方法によって、計算し、用いることができる。
【0132】
好ましくは、最初の時点は、質量同位体標識サブユニット(たとえば、微小管重合体のための標識チューブリン二量体)の割合が、前駆体投与に続くその最高レベルから実質的に減衰したことを確実にするために、投与形態に応じて、前駆体(たとえば、2H2O)の投与が終わってから少なくとも2−3時間後である。1つの具体例において、次の時点は、典型的に、最初の時点から1−4時間後であるが、このタイミングは、生体重合体プールの交換速度に応じて変わる。
【0133】
分子集合体の減衰速度を、同位体標識サブユニットについての減衰曲線から決定する。減衰曲線が数個の時点によって限定される、この場合は、該曲線を指数関数的減衰曲線にフィッティングさせ、このことから、減衰定数を決定することによって、減衰動態を決定することができる。
指数関数的または他の速度論的減衰曲線:
kd=[−ln f]/t

に基づいて、分解速度定数(kd)を計算することができる。
【0134】
本発明の使用
本発明は、生体分子の自己集合性システムの自己集合または分解のインヒビターおよび他の高次構造のためのインビボハイスループットスクリーニング方法(たとえば、新たな微小管標的化チューブリン重合剤の同定および特徴付け)として使用が見出される。たとえば、微小管の分解を阻害する化合物は、中期における細胞周期の停止をもたらし、それによって、有糸分裂を遮断し、細胞複製および分裂(増殖)を阻害する。腫瘍細胞は、その制御できない増殖を特徴とするので、このような成り行きはガンにおいて有用である。現在の微小管標的化チューブリン重合剤(MTPA)は、卵巣、肺、頭部および頸部、膀胱ならびに食道のガンなどの多くのタイプのガンの治療に有効な重要なガンの化学療法剤である。しかし、すべての公知のMTPAが、重大な欠陥を有しており、より有利な治療指数をもつ新しいMTPAを同定し、特徴付けることが、ガン化学療法の分野を有意に前進させる。本発明方法により、微小管ダイナミクスにおける活性について化合物をスクリーニングすることができ、したがって、ガンまたは乾癬などのこれらの増殖性疾患を治療する化合物を同定、評価、特徴決定、開発および市販することができる(図7は、この過程の計画表を示す)。
【0135】
さらに、微小管の形成および分解は、真核生物、原核生物および古細菌の鞭毛および繊毛運動において重要な要素の役割を果たす。したがって、たとえば、精子細胞における微小管形成を、運動性を増加させること(たとえば、生殖能力)または運動性を低下させること(たとえば、受胎調節)について分析することができる。繊毛のある上皮および内皮細胞は、呼吸管および胃腸管において非常に重要な役割を果たし、これらの細胞を毒性および薬物候補作用の両方について評価することができる。さらに、ほとんどではないが、多くの細菌は、運動に関連する鞭毛または繊毛を有し、抗生物質活性について化合物を試験することもまた、本発明の範囲に含まれる。
【0136】
アクチンダイナミクスは、細胞の運動性/移動(たとえば、腫瘍細胞の転移)および腫瘍細胞の接着に関与するので、アクチン重合(たとえば、微小フィラメント)を阻害する化合物もまた、ガンを治療するのに有用である。本発明方法により、ガンおよび微小フィラメントの安定性における変化が関与する他の障害(たとえば、筋ジストロフィー、心筋症など−後記参照)を治療する化合物をスクリーニング、同定、特徴決定、評価、開発および市販することができる。さらに、アクチン細胞骨格の再構築(たとえば、微小フィラメントなど)は、血管新生にとって必須である。微小フィラメントダイナミクスに影響を及ぼす化合物は、内皮細胞増殖および移動(たとえば、血管新生)において効果を有するであろう。特に、微小フィラメントダイナミクスは、1つ以上の成長因子に対する応答における運動を生み出す葉状仮足および膜ラッフルにとって必須である(ダイナミクスを測定し、1つ以上の成長因子に曝露しない細胞と比較することができる)。さらに、微小フィラメントダイナミクスは、種々の筋ジストロフィー、種々の心筋症、重症筋無力症および他の筋萎縮性側索硬化症などの数種類の他の疾患にも関与するので、本発明方法により、微小フィラメントダイナミクスにおける活性について化合物をスクリーニングすることができ、したがって、これらの疾患を治療する化合物を同定、評価、特徴決定、開発および市販することができる(図7は、この過程の計画表を示す)。
【0137】
Aβ原繊維またはプラークへのAβ自己集合を阻害する化合物は、アルツハイマー病を治療するのに有用である。本発明方法により、Aβ原繊維またはプラーク形成が関与するアルツハイマー病および他の神経変性障害(たとえば、認知症)を治療する化合物をスクリーニング、同定、評価、特徴決定、開発および市販することができる(図7は、この過程の計画表を示す)。
【0138】
レビー小体フィラメント(レビー小体)およびレビー軸索フィラメント(レビー神経症)へのα−シヌクレインの自己集合を阻害する化合物は、パーキンソン病および認知症を治療するのに有用である(BS、Jakes R、Tsutsui M、Spillantini MG、Crowther RA、Goedert M、Koto A.Brain Pathol.2004 Apr;14(2):137−47;Spillantini MG、Crowther RA、Jakes R、Hasegawa M、Goedert M.Proc Natl Acad Sci USA.1998 May 26;95(11):6469−73を参照(両方とも、全体として参照することにより本発明に援用される))。本発明方法により、レビー小体およびレビー軸索の存在が関与するパーキンソン病および認知症などの他の神経変性疾患を治療する化合物をスクリーニング、同定、評価、特徴決定、開発および市販することができる(図7は、この過程の計画表を示す)。
【0139】
タウフィラメント(プラークおよび神経原繊維変化)へのタウ自己集合を阻害する化合物は、アルツハイマー病および認知症を治療するのに有用である(Chen F、David D、Ferrari A、Gotz J.Curr Drug Targets.2004 Aug;5(6):503−15;Goedert M、Spillantini MG、Serpell LC、Berriman J、Smith MJ、Jakes R、Crowther RA.Philos Trans R Soc Lond B Biol Sci.2001 Feb 28;356(1406):213−27を参照(両方とも、全体として参照することにより本発明に援用される))。本発明方法により、タウフィラメントの存在が関与するアルツハイマー病および認知症などの他の神経変性疾患(タウ分子集合体が関連する疾患は、まとめて“タウオパチー”と呼ばれる)を治療する化合物をスクリーニング、同定、評価、特徴決定、開発および市販することができる(図7は、この過程の計画表を示す)。
【0140】
プリオン原繊維またはプラークへのプリオン自己集合を阻害する化合物は、クロイツフェルト・ヤコブ病、クル病、スクレイピーまたはウシ海綿状脳症を治療するのに有用である。本発明方法により、プリオン凝集における活性について化合物をスクリーニングすることができ、したがって、クロイツフェルト・ヤコブ病、クル病、スクレイピーまたはウシ海綿状脳症などのプリオン病を治療する化合物を同定、評価、特徴決定、開発および市販することができる(図7は、この過程の計画表を示す)。
【0141】
フィブリン凝集体(血餅または血栓)へのフィブリン自己集合を阻害する化合物は、肺塞栓、深部静脈血栓症、脳梗塞および心筋梗塞(血栓形成過剰)または血友病、播種性血管内凝固症、ビタミンK欠乏または肝疾患などの出血性障害(不十分な血栓形成)などの血栓の過剰または不十分な形成などの疾患または身体状態を治療するのに有用である。本発明方法により、フィブリン凝集における活性について化合物をスクリーニングすることができ、したがって、心筋梗塞、脳梗塞、出血性疾患および血栓形成における変更などの他の疾患または身体状態を治療する化合物を同定、評価、特徴決定、開発および市販することができる(図7は、この過程の計画表を示す)。
【0142】
鎌状細胞貧血において特徴的な鎌状化を引き起こす赤血球中での突然変異ヘモグロビン凝集体への突然変異ヘモグロビン自己集合を阻害する化合物は、鎌状細胞貧血および突然変異ヘモグロビン凝集を少なくとも部分的に特徴とする他の疾患を治療するのに有用である。本発明方法により、突然変異ヘモグロビン凝集における活性について化合物をスクリーニングすることができ、したがって、鎌状細胞貧血および突然変異ヘモグロビン凝集を少なくとも部分的に特徴とする他の疾患を治療する化合物を同定、評価、特徴決定、開発および市販することができる。
【0143】
ニューロンにおいて微小管重合体の量を増加し、微小管への新たに合成されたチューブリンの正味の取り込みを促進する化合物は、神経障害などの神経毒性作用を生み出す。本発明方法により、神経障害などの神経毒性作用について化合物をスクリーニングすることができる。本発明方法を用いて、当業者は、一群の化合物(たとえば、開発における薬物のすべての同族体など)を試験し、好ましい薬剤としてさらに開発するために最小の神経毒性同族体を選択することができる(図7は、この過程の計画表を示す)。
【0144】
ミエリンラメラ中のホスファチジルコリン含量の減少が、脱髄に寄与することがわかっているので、ミエリンラメラ中のリン脂質(たとえば、ホスファチジルコリン)の凝集を安定化する化合物は、多発性硬化症および他の脱髄性疾患の治療における使用を見出すことができる(たとえば、Ohler B、Graf K、Bragg R、Lemons T、Coe R、Genain、Israelachvili J、Husted C.Biochim Biophys Acta。2004 Jan 20;1688(1):10−7を参照(これは、全体として参照することにより本発明に援用される))。ミエリンラメラ中のガラクトセレブロシド凝集を安定化する化合物は、ホスファチジルコリンの凝集を安定化する化合物として同じ目的を果たす。あるいは、ミエリンラメラ中のホスファチジルセリンの含量の増加が、脱髄を促進することがわかっているので、ミエリンラメラ中の他のリン脂質(ホスファチジルセリンなど)の凝集体の安定性を減少または不安定性を増加する化合物もまた、多発性硬化症の治療における使用を見出すことができる(たとえば、Ohler B、Graf K、Bragg R、Lemons T、Coe R、Genain C、Israelachvili J、Husted C.Biochim Biophys Acta.2004 Jan 20;1688(1):10−7を参照(これは、前述のとおり、全体として参照することにより本発明に援用される))(図7は、この過程の計画表を示す)。
【0145】
形質膜の破壊は、筋ジストロフィーをもたらす。筋ジストロフィーを治療するための1つのアプローチが先に検討されているが(たとえば、細胞骨格を含むアクチン微小フィラメントを安定化することなど)、リン脂質および/またはコレステロールの凝集を安定化することによって形質膜を安定化する化合物もまた、筋ジストロフィーを治療するのに有用である。本発明方法により、形質膜中のリン脂質および/またはコレステロールを安定化するこのような化合物を同定、特徴決定、評価、開発および市販することができ、筋ジストロフィーの治療における使用を見出すことができる(図7は、この過程の計画表を示す)。
【0146】
本発明方法により、形質膜または細胞内小器官の周囲のいずれもの脂質膜の脂質二重層の寿命を測定することもできる。膜に組み込まれた標識コレステロールまたは標識リン脂質を遊離標識コレステロールまたは遊離標識リン脂質と比較することができ、あるいは両方(たとえば、コレステロールおよびリン脂質)の比較を同時に行って脂質膜(対象の分子集合体)の寿命を決定することができる。次いで、化合物をスクリーニングして、それらが対象の脂質膜(たとえば、形質膜、小胞体膜、ゴルジ体膜、リゾチーム膜、リソソーム膜、神経伝達物質小胞膜または分泌タンパク質小胞膜などのいずれかの小胞膜、核膜、ミトコンドリア外膜およびミトコンドリア内膜)に対して安定しているか不安定であるかを決定することができる(図7は、この過程の計画表を示す)。
【0147】
本発明方法により、ミトコンドリア内膜(対象の分子集合体)の寿命を測定することもできる。本発明方法を用いることにより、ミトコンドリア内膜に組み込まれた標識カルジオリピンを遊離標識カルジオリピンと比較することができる。次いで、化合物をスクリーニングして、それらがミトコンドリア内膜に対して安定しているか不安定であるかを決定することができる(図7は、この過程の計画表を示す)。
【0148】
これまでの記載により、本発明の使用の説明的例示を提供してきたが、本発明方法が、生体分子の自己集合性システムに関連する疾患を治療するための化合物を同定、評価、特徴決定、開発および市販するための他の本発明の使用例に適用されうることを当業者であれば当然理解するように、このような使用例は限定的なものではない。
【0149】
図7は、薬物発見および開発過程における本発明の使用を説明する。ステップ701において、たとえば、購入または実施許諾を得ることによって、複数の薬物候補または他の化合物を得る。ステップ703において、本明細書に記載したとおり、インビトロおよびインビボ動態アッセイに化合物を適用する。ステップ705において、本明細書に記載したとおり、生体分子の自己集合性システムの集合および分解のダイナミクスを測定する。特定の表現型の状態においてダイナミクスを低下させることが望ましいならば、たとえば、集合した分子集合体を安定化するか、または分子集合体へのサブユニットの組み込みを阻害することによって集合および分解のダイナミクスを低下させる化合物が一般に、より有用であると判断され、逆に、ダイナミクスを増大させる化合物は一般に、より望ましくないと判断される。標的発見過程において、もう1つの表現型に対してダイナミクスを増大または低下させる特定の表現型(たとえば、疾患対非疾患など)が、良好な治療または診断標的であるか、または良好な治療または診断標的の経路にあると判断することができる。ステップ707において、対象の化合物、対象の標的または診断法を選択し、さらに使用し、さらに開発する。標的の場合、このような標的は、たとえば、公知の小分子スクリーニング方法(たとえば、新たな化学物質のハイスループットスクリーニング)などのテーマであってもよい。別法として、生物学的因子またはすでに承認された薬物または他の化合物(または化合物の組み合わせおよび/または混合物)を用いることができる。ステップ709において、化合物または診断法を販売または配布する。もちろん、最適の結果を得るために、図7に示す過程における1つ以上のステップが、何度も繰り返されることは認められる。
【0150】
同位体摂動分子または分子集合体
別の態様において、本発明方法は、同位体摂動分子(たとえば、標識アミノ酸、標識ペプチド、標識タンパク質、標識リン脂質、標識コレステロール、標識カルジオリピンなど)または分子集合体(たとえば、同位体摂動チューブリン二量体を含む微小管;同位体摂動Aβペプチドを含むアミロイド原繊維凝集体)の製造を提供する。これらの同位体摂動分子は、分子集合体の集合/分解経路内の分子の流動の決定において有用な情報を含む。前述したように、1つ以上の同位体摂動分子は、いったん生物の細胞および/または組織から単離されると、情報を抽出するために分析される。
【0151】
キット
本発明は、インビボで分子流動速度を測定および比較するためのキットを提供する。キットは、同位体標識前駆体分子および、好ましい具体例において、当業界で公知のタンパク質を分離、精製または単離するための化合物および/または組織サンプルを得るのに必要な化学物質、コンビナトリアル分析のための自動計算ソフトウェアおよびキットの使用説明書を包含する。
水の投与手段(たとえば、計量カップ、針、注射器、ピペット、静脈内投与用チューブ)などの他のキット構成要素を必要に応じて、キットに提供することもできる。同様に、生体システムからサンプルを得るための器具(たとえば、試料カップ、針、注射器および組織サンプリング装置)を必要に応じて、提供することもできる。
【0152】
情報記憶装置
本発明はまた、本発明方法により集めたデータを含む紙の報告書またはデータ記憶装置などの情報記憶装置を提供する。情報記憶装置として、紙または類似の有形的表現媒体上の報告書、プラスチック透明シート上の報告書またはマイクロフィッシュおよび光学または磁気媒体上に記憶されたデータ(たとえば、コンパクトディスク、デジタルビデオディスク、光学ディスク、磁気ディスクなど)または情報を一時的または永久に記憶しているコンピューターが挙げられるが、これらに限定されるものではない。データは、少なくとも一部コンピューター内に含まれてもよく、電子メールメッセージまたは電子メールメッセージに電子ファイルとして添付してもよい。情報記憶装置内のデータは、“未加工”(たとえば、収集し、未分析)であっても、部分的に分析しても、あるいは完全に分析してもよい。データ分析は、コンピューターまたは他の自動化装置で行うことができ、あるいは手動で行うこともできる。さらなる分析または表示またはその両方のために、情報記憶装置を、データを別のデータ記憶システム(たとえば、コンピューター、手持ちサイズのコンピューターなど)にダウンロードするために用いることもできる。別法として、さらなる分析または表示またはその両方のために、情報記憶装置内のデータを紙、プラスチック透明シートまたは他の類似の有形的表現媒体上に印刷することができる。
【0153】
ロボット構成要素
好ましい具体例、たとえば、細菌培養系などの細胞培養系を用いる場合などにおいて、本発明の装置は、各ステーションまたはステーションのセットにおいて液体を装填および除去するための構成要素などの液体処理構成要素を含むことができる。液体処理システムは、いくつかの構成要素を含むロボットシステムを含むことができる。さらに、本明細書に概略したステップのいくつか、またはすべてを自動化してもよい;したがって、たとえば、該システムを、完全または部分的に自動化することができる。
【0154】
当業者には当然のことであるが、用いることができる広範な構成要素があり、該要素として、1つ以上のロボットアーム;マイクロプレートの位置決めのためのプレートハンドラー;カートリッジおよび/またはキャップを備えたホルダー;非汚染プレート上のウエルのためのフタを除去および交換するための自動フタまたはキャップハンドラー;使い捨てチップによるサンプル分配のためのアセンブリ;サンプル分配のための洗えるチップアセンブリ;96ウエル装填ブロック;冷却試薬棚;マイクロタイタープレートピペットポジション(必要に応じて、冷却);プレートおよびチップの積み重ねタワー;およびコンピューターシステム
が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0155】
完全にロボットのシステムまたはマイクロ流体システムは、スクリーニング適用のすべてのステップを行うための、ハイスループットピペット操作などの自動化された液体、粒子、細胞および生物処理を含む。これは、吸引、分配、混合、希釈、洗浄、正確な体積運搬;ピペットチップの回収および廃棄;および単一サンプルからの多数デリバリーのための同一体積の繰り返しピペット操作などの液体、粒子、細胞および生物操作を包含する。これらの操作は、交差汚染のない液体、粒子、細胞および生物運搬である。この器具は、フィルター、膜および/または娘プレートへのマイクロプレートサンプルの自動複製、高密度運搬、フルプレート連続希釈および大容量オペレーションを行う。
【0156】
好ましい具体例において、化学的に誘導体化された粒子、プレート、カートリッジ、チューブ、磁気粒子またはアッセイ要素に特異性をもつ他の固相マトリックスを用いる。マイクロプレート、チューブまたはいずれかの固相マトリックスの結合表面は、非極性表面、高極性表面、共有結合を促進するための修飾デキストランコーティング、抗体コーティング、融合タンパク質またはペプチドを結合する親和性媒体、組換えタンパク質AまたはGなどの表面固定タンパク質、ヌクレオチド樹脂またはコーティングを包含し、他の親和性マトリックスが本発明において、たとえば、集合体またはサブユニットの精製のためにに有用である。
【0157】
好ましい具体例において、マルチウエルプレート、マルチチューブ、ホルダー、カートリッジ、ミニチューブ、深ウエルプレート、微量遠心チューブ、冷凍バイアル、スクエアウエルプレート、フィルター、チップ(chip)、光ファイバー、ビーズおよび種々の容積をもつ他の固相マトリックスまたはプラットフォームが、さらなる用量のためのアップグレードできるモジュールプラットフォームに対応する。このモジュールプラットフォームは、速度可変軌道振とう器およびサンプル源、サンプルおよび試薬希釈、アッセイプレート、サンプルおよび試薬リザーバー、ピペットチップのためのマルチポジションワークデッキおよびアクテブウォッシュステーションを包含する。
【0158】
好ましい具体例において、制御ブロックまたはプラットフォームなどの熱交換機の温度を安定させて、0℃−100℃のインキュベートサンプルの正確な温度コントロールを提供するために、温度循環および温度制御システムを用いる;これを、ステーション温度コントローラーに加えて、あるいは代えて用いる。
【0159】
好ましい具体例において、シングルまたはマルチ磁気プローブ、親和性プローブを有する交換可能なピペットヘッド(シングルまたはマルチチャンネル)またはピペッターは、液体、粒子、細胞および生物を無人操縦で操作する。マルチウエルまたはマルチチューブ磁気分離機またはプラットフォームは、シングルまたはマルチサンプルフォーマットで液体、粒子、細胞および生物を操作する。
【実施例】
【0160】
以下の非制限的実施例により、本明細書に記載の本明細書をさらに説明する。
実施例1:チューブリン二量体および微小管重合体への安定な同位体組み込みは、培養ヒト肺ガン細胞(SW1573)の微小管ダイナミクスにおけるパクリタキセルの効果を明らかにする:
2H2Oによる生合成標識が、活発に増殖している細胞での微小管ダイナミクスにおけるMTPAの効果を明らかにすることができるかどうかを決定するために、SW1573ヒト肺ガン細胞を培養し、4% 2H2Oを含む培養培地で指数増殖中にそれぞれ2、6、12、24および36時間標識する。核後(post-nuclear)上清からチューブリン二量体および重合体画分を単離し、SDS−PAGEによって決定される≧90%純度まで、各画分からチューブリンを精製する。加水分解後、GC/MS分析のために負化学イオン化によりアミノ酸を誘導体化し、アラニン誘導体への2H−標識組み込みを(M+1)質量イソトポマーの天然存在度を超える増加として定量する(“2H−富化”;図3)。36時間を通しての着実に増加する標識組み込み(図3A)は、新たに合成されたチューブリン二量体および重合体画分への2H−アラニン組み込みを示す。両画分における2H−チューブリン組み込みの速度が類似していることは、重合体への二量体の流動が標識組み込みの総速度と比べて速い時間規模で起こることを示す。このデータは、活発に分裂する細胞において、チューブリン二量体および重合体が、時間単位の時間規模において速度論的平衡にあることを裏付ける。対照的に、0.4 μMのパクリタキセルが存在すると、重合体への2H組み込みの速度は、二量体への標識組み込みの速度と比べて75%低下する(図3B)。これは、微小管を安定化することによって動的不安定を防止するパクリタキセルの能力を反映する、重合体への2H−チューブリン二量体の流動の実質的阻害を示す。
【0161】
実施例2:安定な同位体組み込みは、インビボでの微小管ダイナミクスにおけるパクリタキセルの効果を明らかにする:
インビボでの微小管ダイナミクスを測定するという本発明方法の適用の実行可能性を実証するために、SW1573ヒト肺ガン細胞およびMCF−7ヒト乳ガン細胞をヌードマウスに別々に植え込む。腫瘍は、直径が約1000 mm3に成長することができる;次いで、マウスにパクリタキセルを用量増加させて腹腔内注入する。飲料水中の2H2O(8%)を24時間投与し、体内水分において約5%の2H富化を得る(代謝水であるバランス)。薬物処置後24時間で動物を屠殺し、チューブリン二量体および重合体への2H−標識組み込みの分析のために腫瘍組織を除去する(図4)。コントロール動物からのSW1573腫瘍において、相対的合成は、インビトロ培養において観察されるものと比べて減少する(図3中の24時間において2%に対して、図4A中は1.4%の2H−富化である)が、重要なことに、2つのプール間の急速な交換を反映して(極めて動的な微小管)、チューブリン二量体および微小管への標識組み込みはまた区別不可能である。対照的に、パクリタキセル処置は、抑制されたダイナミシティを示す用量依存的様式で、微小管への2H−チューブリンの組み込みを減少させるが、一方、チューブリン二量体の画分合成は、培養物中で測定されるものと同様に、増加する(図3B)。
【0162】
パクリタキセルの質的に類似した効果は、2H−標識組み込みの量はSW1573腫瘍よりも低いが、植え込まれたMCF−7腫瘍においても見られる(図4B)。2H−標識重合体のパクリタキセル依存性減少は、5および10mg/kgの用量において統計的には有意であるが、まりはっきりしない。さらに、この腫瘍において、チューブリン画分合成のパクリタキセル誘発性アップレギュレーションには、ベースラインを越える有意性はない。
データは、安定な同位体標識アッセイが、インビボでパクリタキセルによる微小管ダイナミクスの調節を定量する能力があるという発見およびパクリタキセルのインビボにおける効果が、細胞培養において観察される効果と類似するという発見を裏付ける。
【0163】
実施例3:細胞増殖に対する微小管ダイナミクスの比較:
チューブリンイソタイプ含量における変更、排出ポンプおよびインビボ薬物代謝などの種々の因子が、腫瘍におけるパクリタキセルの作用を妨害することができる。これらの因子にかかわらず、微小管ダイナミクスの阻害は、もしインビボにおけるMTPAの抗増殖活性に関連するならば、細胞増殖の阻害に相関すべきである。この関係を調査するために、微小管への標識組み込みのパクリタキセル誘発性阻害を腫瘍細胞組織における画分DNA合成の阻害と相関関係させる(後者は、簡便な安定同位体に基づく細胞増殖の測定値として役立つ(U.S.特許 Nos.5,910,403、6,010,846、6,461,806を参照、先に述べたように、全体として参照することにより本発明に援用される))。結果(図5Aおよび5B)は、両方のタイプ腫瘍において、微小管ダイナミクスの阻害(コントロールと比較した、重合した微小管への標識組み込みの画分損失として表される)と、新たに合成されたDNAの阻害(腫瘍細胞増殖の測定値)との間に強い関係を示す。したがって、微小管ダイナミクスの阻害は、MTPAのインビボ抗増殖作用において、および関連して、測定可能な影響を有すると思われる。
【0164】
実施例4:パクリタキセル誘発性細胞毒性およびニューロパチー:
パクリタキセルの神経毒性作用を評価するために、腫瘍をもつマウスから座骨神経を単離し、遊離チューブリンへの2H標識組み込みを、重合した微小管への2H標識組み込みと比較する(図6)。結果は、腫瘍細胞において観察される結果と著しく対照的である。腫瘍細胞において観察される遊離チューブリンと結合チューブリンとの間の速度論的平衡とは異なり、座骨神経微小管は、ベースラインにおいて概して静的であり、重合体への2H標識組み込みは、遊離チューブリンにおいて測定される値のわずか約40%にとどまる(図6A)。驚くべきことに、パクリタキセルの用量を多くすると、重合体への標識組み込みが増加するが、遊離チューブリンの標識がわずかに減少し、薬物投与後に、新たに作成されたチューブリンのより多くの画分が、最後に微小管に行き着くことが示される。この作用をさらに調査するために、重合していない遊離チューブリンおよび微小管の存在度における正味の変化を、デンシトメトリー分析によって評価する(図6B)。データから、微小管重合体の量における用量依存性増加および遊離チューブリン二量体におけるわずかな減少が明らかであり、座骨神経においては、パクリタキセルが、微小管重合体の量を増加し、微小管への新たに合成されたチューブリンの正味の組み込みを促進することが示される。
【0165】
実施例5:化合物の微小管ダイナミクスを阻害する能力のスクリーニング:
新規化学物質(NCE)、またはNCEの組み合わせ、または薬物候補、または薬物候補の組み合わせ、薬物リード、または薬物リードの組み合わせ、または米医薬品便覧(PDR)またはメルクインデックスに記載の薬物などのすでに承認された薬物、またはすでに承認された薬物の組み合わせ、または生物学的因子、または生物学的因子の組み合わせ(またはNCE、薬物候補、薬物リード、すでに承認された薬物および/または生物学的因子の混合物のいずれかの組み合わせ)が、微小管ダイナミクスを阻害することができるかどうかを決定することが、NCE、または薬物候補、または薬物リード、またはすでに承認された薬物、または生物学的因子(またはNCEの組み合わせ、または薬物候補の組み合わせ、または薬物リードの組み合わせ、またはすでに承認された薬物の組み合わせ、または生物学的因子の組み合わせ、またはNCEおよび/または薬物候補および/または薬物リードおよび/またはすでに承認された薬物および/または生物学的因子の種々の混合物の組み合わせ)が、ガンの治療の可能性を有するかどうかを決定することにおいて重要である。
【0166】
NCE、または薬物候補、または薬物リード、またはすでに承認された薬物、または生物学的因子(またはNCE、薬物候補、薬物リード、すでに承認された薬物および生物学的因子を包含する組み合わせ、またはそのいずれかのバリエーションを包含する組み合わせ(そのいずれかの混合物を含む))が、微小管ダイナミクスを阻害するかどうか(その結果、上述したように、ガンの治療の特効薬の候補薬物であるかどうか)を評価するために、SW1573ヒト肺ガン細胞およびMCF−7ヒト乳ガン細胞をヌードマウスに別々に植え込む。腫瘍は、直径が約1000 mm3に成長することができる;次いで、マウスに化合物または化合物の組み合わせを用量増加させて腹腔内注入する。飲料水中の2H2O(8%)を24時間投与し、体内水分において約5%の2H富化を得る(代謝水であるバランス)。薬物処置後24時間で動物を屠殺し、上述のように、チューブリン二量体および重合体への2H−標識組み込みの分析のために腫瘍組織を除去する(図4)。次いで、図7に示すように、活性を示す化合物のさらなる開発に着手する。図7に示すように、本発明方法は、アクチン微小フィラメントへのアクチン重合、Aβ原繊維またはプラークへのAβ凝集、血餅へのフィブリン集合、鎌状赤血球中の突然変異ヘモグロビン凝集およびプリオン原繊維またはプラークへのプリオン凝集などの生体重合体の自己集合性システムのいずれかにおける活性を有するいずれかの化合物の発見、開発および市販に適用できる。
【0167】
実施例6:安定な同位体標識を用いるアクチン自己集合の測定:
アクチン集合および分解(重合および解重合)のダイナミクスを計算することができるように、1つ以上のアクチン単量体(アクチンフィラメントのサブユニット)への安定な同位体標識基質の組み込みおよびアクチンフィラメント(たとえば、微小フィラメント)への安定な同位体標識基質の組み込みを同時に測定する。
アクチン単量体およびアクチンフィラメントを単離するために、文献に記載の数種の方法を組み合わせる(Segura、M.およびU.Lindberg.(1984):J.Biol.Chem.259:3949−3954;Ohshima、S.、H.AbeおよびT.Obinata.(1989):J.Biol.Chem.105:855−7;Pinder、J.C.、J.A.Sleep、P.M.BennettおよびW.B.Gratzer.(1995):Anal.Biochem.225:291−295、これらは、全体として参照することにより本発明に援用される)。このプロトコルは、アクチンを重合および解重合の相互サイクルに付すことを必要としないという点において、従来の筋肉アクチンの精製とは相異する。要約すれば、該製造は、高濃度のトリス緩衝液による細胞中のアクチン複合体の抽出および解離;マルチ高速遠心分離;ならびに陰イオン交換クロマトグラフィーおよびDNアーゼI−セファロース上の親和性クロマトグラフィーを含む。成体ニワトリ、ウシ赤血球およびニワトリ胎児脳から得たアクチンの精製がこの方法によって成功しており、種々の組織または培養細胞に適用することができる。アクチン集合および分解(重合および解重合)のダイナミクスを計算することができるように、1つ以上のアクチン単量体(アクチンフィラメントのサブユニット)への安定な同位体標識基質の組み込みおよびアクチンフィラメント(すなわち、微小フィラメント)への安定な同位体標識基質の組み込みを測定する。
【0168】
実施例7:安定な同位体標識を用いるフィラメントへのタウ自己集合の測定:
タウタンパク質は、対らせん状フィラメント(PHF、またはアルツハイマー神経原繊維変化)として知られる重合体骨格へ自己集合する。PHFへのタウ自己凝集(タウ重合)の速度を計算することができるように、1つ以上のタウタンパク質(PHFのサブユニット)への安定な同位体標識基質の組み込みおよび対らせん状フィラメント(すなわち、PHF)への安定な同位体標識基質の組み込みを同時に測定する。可溶性タウタンパク質およびPHF−タウを単離するために、文献に記載の数種の方法を組み合わせる(Grundke−Iqbal I、Iqbal K、Quinlan M、Tung YC、Zaidi MS、Wisniewski HM.(1986):J Biol Chem.261:6084−9;Wischik CM、Novak M、Thogersen HC、Edwards PC、Runswick MJ、Jakes R、Walker JE、Milstein C、Roth M、Klug A(1988 ):Proc Natl Acad Sci U S A。85:4506−10、これらは、全体として参照することにより本発明に援用される)。AD脳細胞質抽出物の低速上清を用いて可溶性タウタンパク質を富化し、ペレットを用いてタウ重合体(PHF−タウ)を富化する。細胞質抽出物の低速上清を80−90℃に加熱し、超音波処理し、沸騰水浴にて5分間インキュベートし、次いで、高速遠心分離する。上清を2.5%過塩素酸および6%トリクロロ酢酸で30分間連続的にしょりし、次いで、高速遠心分離して、純粋な可溶性タウ富化画分(ペレット)を沈降させる。細胞質抽出物の低速ペレット(粗PHF)を、10倍容の0.8M NaCl中で100 ℃にて超音波処理し、0.16Mおよび0.5Mスクロースクッション、次いで1%(wt/vol)サルコシルクッションによるマルチ高速遠心分離により分画して、純粋なPHF−タウ(タウ重合体)を沈降させる。
【0169】
実施例8:安定な同位体標識を用いるプロト原繊維および原繊維へのAβ自己集合の測定:
(1−40)および/またはAβ(1−42)ペプチド(単量体)は、繊維形成またはアミロイド形成と呼ばれる過程において、プロト原繊維および原繊維(アミロイドプラーク)へ自己集合することができる。アミロイドプラーク(原繊維化)へのAβ(1−40)および/またはAβ(1−42)単量体の自己凝集速度を計算することができるように、1つ以上のAβ(1−40)および/またはAβ(1−42)単量体(アミロイドプラークのサブユニット)への安定な同位体標識基質の組み込みおよびプロト原繊維およびその後の原繊維(たとえば、プラーク)への安定な同位体標識基質の組み込みを同時に測定する。可溶性Aβ単量体/二量体または不安定な中間体プロト原繊維(オリゴマー)および原繊維(プラーク)を単離するために、文献に記載の数種の方法を組み合わせる(Cai、X.D.、Golde、T.E.& Younkin、S.(1993):Science 259、514−516;Johnson−Wood、K.、Lee、M.、Motter、R.、Hu、K.、Gordon、G.、Barbour、R.、Khan、K.、Gordon、M.、Tan、H.、Games、D.ら(1997)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94、1550−1555;15;Melissa A.Moss、Michael R.Nichols、Dana Kim Reed、Jan H.HohおよびTerrone L.Rosenberry Mol Pharmacol 64:1160−1168、2003、これらは、全体として参照することにより本発明に援用される)。要約すると、70%ギ酸を用いて、AD脳から可溶性および不溶性Aβを抽出する。等体積の2 M トリス(pH 6.8)でpHを中和した後、低温にて、0.2% トリトンX−100の存在下のサイズ排除クロマトグラフィーにより、可溶性抽出物を単量体/二量体とプロト原繊維(オリゴマー)とに分画して、Aβのカラムに対する粘性を低下させる。単離したプロト原繊維(オリゴマー)を超音波処理し、HPLCサイ排除クロマトグラフィーにより、さらに単量体/二量体に分画する。8 M 尿素、pH 10に溶解することにより不溶性Aβ原繊維(プラーク)を変性し、次いで、40℃の水浴中で1時間超音波処理し、次いで、Anotop 25 Plus 20−nm フィルター(Whatman)で濾過する。HPLCサイ排除クロマトグラフィーにより、可溶性の分解された原繊維を単量体/二量体に分画する。
【0170】
実施例9:安定な同位体標識を用いる精子軸糸微小管へのチューブリン自己集合の測定:
チューブリンは、すべての真核細胞に存在し、すべてのクラスの微小管:すべての細胞質輸送を構成する微小管の間期網状組織、細胞内小器官、紡錘体、9個の外側ダブレットと2個の中心シングレットの軸糸および基底小体および中心体トリプレットのビルディングブロックを構成する(Dustin P.(1984):Microtubles.Springer−Verlag、Berlin2nd ed;Alberts B.、Bray D.、Lewis J.、Raff M.、Roberts K.、Watson JD.(1994):Moleclar Biology of the Cell.Garland Publishing、New−York & London、3rd Ed、herein incorporated by reference in their entirety)。
【0171】
微小管は、その基底部にて精子基底小体の遠位の中心体に固定される軸糸の主たる構造的特徴を代表する。軸糸に存在する微小管は、遠位(プラス)端におけるA繊維(13個のプロトフィラメント)およびB繊維(11個のプロトフィラメント)へのチューブリン二量体の付加による基底小体に存在する遠位中心体の伸長により、同じルールにしたがって作成される。微小管へのチューブリン自己凝集(チューブリン重合)の速度を計算することができるように、1つ以上のチューブリン二量体(微小管のサブユニット)への安定な同位体標識基質の組み込みおよび微小管(たとえば、チューブリン重合体)への安定な同位体標識基質の組み込みを同時に測定する。軸糸の微小管集合は、種々の微小管標的化チューブリン重合剤(MTPA)および解重合剤(MTPDA)によって阻害することができる。本明細書に開示する本発明方法は、インビトロおよびインビボでの精子運動性のインヒビターおよびエンハンサーのスクリーニングに適用することができる。
【0172】
精子可溶性チューブリン二量体および軸糸微小管を単離するために、文献に記載の数種の方法を組み合わせる(Simon、J.R.、N。A。Adam and E.D.Salmon(199):Micron Microsc.Acta.22:405−412;Waterman−Storer、C.M.and E.D.Salmon(1997):Journal of Cell Biology.139:417−434;Salmon、E.D.およびWay、M.(1999):Cytoskeleton.Current Opinion in Cell Biology 11:15−17、これらは、全体として参照することにより本発明に援用される)。実験動物またはヒトの精子を、4℃にて5分間の低速遠心分離(3,000 X g)により集める。微小管安定化緩衝液中、5倍容の20%スクロースにて精子(ペレット)の膜を除去し、部分的に融けた氷に浸したドウンス(Dounce)ガラスホモジナイザーを用いてゆるやかにホモジナイズする。別の低速および高速超遠心分離ステップ(12,000 X gで4℃にて10分間および20,000 X gで4℃にて15分間)を用いて精子頭部を尾部から分離する。精子尾部(ペレット)は、膜を除去した尾部を含む先端部白色層および頭部と残屑を含む底部黄色層に階層化される。先端部白色層を厚め、4倍容の微小管安定化緩衝液に懸濁する。再懸濁および遠心分離のサイクルを3回繰り返して、頭部と残屑から尾部フラグメントを完全に分離する。純粋な尾部フラグメント(白色ペレット)を4倍容の微小管安定化抽出緩衝液に懸濁し、氷上のドウンスガラスホモジナイザーに移す。抽出物を氷上で45分間インキュベートし、次いで、高速遠心分離によって、可溶性チューブリン二量体(上清)および軸糸微小管(ペレット)に分画する。
【図面の簡単な説明】
【0173】
【図1A】図1Aは、同位体標識水から選ばれた遊離アミノ酸への標識水素(2H、または3H)交換の経路を示す。例示を目的として、2つのNEAA'(アラニンおよびグリシン)を示す。アラニンおよびグリシンを図1Aに示す。略語:TA、トランスアミナーゼ;PEP−CK、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ;TCAC、TCA回路;STHM、セリンテトラヒドロ葉酸メチルトランスフェラーゼ。
【図1B】図1Bは、同位体標識水から選ばれた遊離アミノ酸への標識水素(2H、または3H)交換の経路を示す。例示を目的として、EAA(ロイシン)を示す。ロイシンを図1Bに示す。略語:TA、トランスアミナーゼ。
【図1C】図1Cは、タンパク質合成のためのH218Oによる遊離アミノ酸の18O標識を示す。
【図2】図2Aは、微小管重合体への2H標識チューブリン二量体の組み込みを示す。図2Bは、この過程における微小管標的化チューブリン重合体化剤の効果を示す。
【図3】図3Aは、活発に増殖するヒト肺ガン細胞(SW1573)における微小管ダイナミクスを示す。細胞は、4% 2H2Oを含む培地中で36時間培養し、標識した。2H標識は、36時間の期間中着実に増加し、新たに合成されたチューブリン二量体および重合体フラクションへの2Hアラニン組み込みを反映する。図3Bは、0.4 mMパクリタキセルで処置された同じ細胞系(SW1573)における微小管ダイナミクスを示す。パクリタキセルの存在は、標識重合体において2H富化を減少させ、重合体への2Hチューブリン二量体組み込みの阻害が反映されている。
【図4】図4Aは、ヒト肺ガン細胞SW1573を移植されたヌードマウスにおけるパクリタキセルを用いる用量−反応実験を示す。マウスに指示量のパクリタキセルを腹腔内注入し、2H2Oで24時間標識した。≧5 mg/kgで、パクリタキセルは、チューブリン二量体のデノボ合成を増加したが、重合体への標識組み込みを阻害した。図4Bは、ヒト乳ガン細胞MCF−7を移植されたヌードマウスにおけるパクリタキセルを用いる用量−反応実験を示す。マウスに指示量のパクリタキセルを腹腔内注入し、2H2Oで24時間標識した。≧5 mg/kgで、パクリタキセルは、チューブリン二量体のデノボ合成を増加したが、重合体への標識組み込みを阻害したを示す。
【図5】図5Aは、ヒトSW1573肺ガン細胞を移植され、種々の用量のパクリタキセルを注入し、2H2Oで24時間標識したヌードマウスからの結果を示す。微小管ダイナミクスを(重合体における2H富化)/(二量体における2H富化)として表した。デノボDNA合成の阻害を腫瘍細胞DNAへの2H標識組み込みにおける減少として定量した。図に示すように、微小管動的不安定性と細胞増殖における減少との間に強い相関関係がある。図5Bは、ヒトSW1573乳ガン細胞を移植され、種々の用量のパクリタキセルを注入し、2H2Oで24時間標識したヌードマウスからの結果を示す。微小管ダイナミクスを(重合体における2H富化)/(二量体における2H富化)として表した。デノボDNA合成の阻害を腫瘍細胞DNAへの2H標識組み込みにおける減少として定量した。SW1573データ(図5A)と同様に、微小管動的不安定性と細胞増殖における減少との間に強い相関関係がある。
【図6】図6は、末梢神経系の微小管ダイナミクスにおけるパクリタキセルの用量−応答効果を示す。座骨神経微小管ダイナミクスを図6Aに示し、チューブリン二量体および微小管重合体レベルのデンシトメトリー定量を図6Bに示す。
【図7】図7は、薬物発見および開発過程における本発明の使用を描くものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コントロール生体システムと比較して、試験生体システムにおける自己集合の速度における差異を決定するための、該コントロール生体システムと比較して、該試験生体システムにおける生体分子集合体へのサブユニットの自己集合の速度を測定する方法であって:
a)同位体標識基質が少なくとも1つの該サブユニットおよび少なくとも1つの該分子集合体に組み込まれるのに十分な時間の最初の期間に該生体システムに同位体標識基質を投与し;
b)該生体システムから最初のサンプルを得;
c)該最初のサンプルから標識された分子集合体の量を定量し;
d)組み込まれない標識サブユニットの量を定量し;
e)標識された分子集合体の量をコントロール生体システムにおける標識された分子集合体の量と比較し;次いで、
f)組み込まれない標識サブユニットの量をコントロール生体システムにおける組み込まれない標識サブユニットの量と比較する;
ことを含む方法。
【請求項2】
比較ステップが、速度の比率を計算し、該コントロール生体システムにおける分子流動速度の比率に対してその比率を比較することからなる、標識分子集合体の分子流動速度を計算することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該同位体標識基質が、チューブリンタンパク質二量体である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
該同位体標識基質が、単量体アクチンタンパク質である請求項1に記載の方法。
【請求項5】
該同位体標識基質が、プリオンタンパク質である請求項1に記載の方法。
【請求項6】
該同位体標識基質が、アミロイド−ベータタンパク質である請求項1に記載の方法。
【請求項7】
該同位体標識基質が、フィブリンタンパク質である請求項1に記載の方法。
【請求項8】
該同位体標識基質が、突然変異ヘモグロビンタンパク質である請求項1に記載の方法。
【請求項9】
該試験生体システムに候補剤を投与することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
該候補剤が、該同位体標識基質の投与前に投与される請求項9に記載の方法。
【請求項11】
該候補剤が、該同位体標識基質の投与中に投与される請求項9に記載の方法。
【請求項12】
該候補剤が、該同位体標識基質の投与後に投与される請求項9に記載の方法。
【請求項13】
時間の第2の期間に該基質を投与し、ステップb)−f)を繰り返すことをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
第2のサンプルを得、ステップc)−f)を繰り返すことをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
該候補剤が、薬物である請求項5に記載の方法。
【請求項16】
該同位体標識基質が、安定な同位体で標識される請求項1に記載の方法。
【請求項17】
該同位体標識基質が、安定な同位体標識水である請求項1に記載の方法。
【請求項18】
該安定な同位体標識水が、2Hで標識される請求項17に記載の方法。
【請求項19】
該同位体標識基質が、放射性同位体で標識される請求項1に記載の方法。
【請求項20】
該同位体標識基質が、放射性同位体標識水である請求項19に記載の方法。
【請求項21】
該放射性同位体標識水が、3Hで標識される請求項20に記載の方法。
【請求項22】
該試験生体システムおよび該コントロール生体システムが、哺乳動物である請求項1に記載の方法。
【請求項23】
該試験生体システムおよび該コントロール生体システムが、ヒトである請求項1に記載の方法。
【請求項24】
該試験生体システムおよび該コントロール生体システムが、細胞系である請求項1に記載の方法。
【請求項25】
該試験生体システムおよび該コントロール生体システムが、初代細胞である請求項1に記載の方法。
【請求項26】
該初代細胞が、精子細胞である請求項25に記載の方法。
【請求項27】
該試験生体システムおよび該コントロール生体システムが、細菌細胞である請求項1に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−509421(P2008−509421A)
【公表日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−525698(P2007−525698)
【出願日】平成17年8月8日(2005.8.8)
【国際出願番号】PCT/US2005/028069
【国際公開番号】WO2006/017812
【国際公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(507041238)キナメッド・インコーポレイテッド (5)
【氏名又は名称原語表記】KineMed, Inc.
【Fターム(参考)】