説明

インピーダンスセンサー及びその利用

【解決手段】
本発明は、高導電性である電極が絶縁材料のバリアで分離されている高感度のインピーダンスセンサーに関する。このセンサーは、ヒト、動物あるいは環境起源の生体サンプル内での分析対象物の存在如何を直接的に判定するのに利用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサー表面に直接的に結合された受容体分子が関与する生化学反応を直接的にモニターするのに適したインピーダンスバイオセンサーの分野に関する。特に、本発明は、2つの高導電性電極を分離する絶縁バリアの表面形態に関する。
【背景技術】
【0002】
免疫反応が介在する場合には、インピーダンスの測定値が、化学的修飾電極表面で発生する生化学反応の記録に利用でき(バタイラード・P他「分析化学」1988年、60:2374−2379;C・ベルグレン、B・ブジャナンソン、G・ヨハンソン「電気分析」2001年、13:173)、DNAのハイブリッド形成の直接的測定に利用できること(特許WO2004065624;リィ・XH、リー・JS、クラーツ・HB“電極マイクロアレイを利用した一塩基不適合の電気化学検出”「分析化学」2006年9月1日、78(17):6096−6101)は知られている。
【0003】
測定感度を増強し、センサー要素を小型化する目的で、櫛状構造である2個の平坦電極で形成されたインピーダンストランスジューサ(櫛状電極アレイ)が存在する(P・バンガーウェン他「センサーアクチュエータ・B」1998年、49、73;W・ローレイン他「センサーアクチュエータ・B」2000年、68、360)(櫛状電極アレイ、IDEA)。
【0004】
図1では、トランスジューサの直交突起が図示されている。これは、絶縁基板(1)と、2つの集電バー体(2)と(3)を含む。集電バー体は、櫛状電極を溶接接点(4)と(5)に結合する。
【0005】
インピーダンス測定の中心的な考えは、いくつもの特許において対処されてきた(WO2004044570、EP0543550、EP0241771、GB2137361)。特に、図2で示すようなインピーダンスセンサーでは、一部の分子が電極表面で各対の櫛状電極間に固定されるか、1対の櫛歯間の表面上に固定される。
【0006】
これら分子は、サンプル溶液に曝露されると特定の分析対象物を“認識”する。この認識プロセスは、一般的に、媒質の導電率及び/又は誘電率の変化をもたらす。これら変動は、広周波数域でのインピーダンススペクトルの変化として記録される。最後に、2体の電極間のインピーダンスを測定することで、等価電極回路のパラメータを調節する手段によって認識プロセスの規模が確立できる。これは、スペクトルの形状から除去される(図2で概略的に図示)。
【0007】
等価回路を形成する要素の物理的特徴は、以下の通りである。
【0008】
:結合スレッド、接点および集電バーの接触抵抗;
:2電極と接触媒質(一般的に水溶液)の間で確立される幾何容量;
:2電極間の水溶液の電気抵抗;
DL:相間電極/溶液の二重層容量;
CT:電極表面のファラデー処理による電荷移動抵抗;
W :濃縮の追加分極化(ワールブルグインピーダンス)、電極表面の粗度及び/又は電極表面の追加層存在。
【0009】
電極上に固定センサーを備えたセンサーが提起する問題は、前述したごとく、良好な精度と感度を備えた測定結果を得るには、導電性電極(図2Bの6)上の固定層が完璧に均質で無欠でなければならないが、これは、現実には達成が困難である。
【0010】
前述のインピーダンスセンサーのパラメータは、櫛状電極の形態により変動する。すなわち、各櫛歯の幅および櫛歯間隔(図2Aのパラメータaとb)による。信号の大部分は、ベルトル線(7)が概略的に示されている図2Aに関して解説されているように、媒質内へのその浸透が2体の隣接する櫛状電極の中央部間の距離と等しい電極の領域によるものである。生体分子の一般的な長さは、10nmから100nmの範囲である。このことは、分子が各対の櫛状電極間の空間に固定されている場合を暗示する。櫛歯の太さと櫛歯電極間の距離は、非常に小さい必要がある。このことは、従来の超小型電子技術では達成が困難である。
【0011】
上記の困難性によって、これらセンサーを直接的な測定に利用しようとする場合には、これらセンサーは、他の従来技術よりも低い感度を有する。
【0012】
特許WO2005026178およびUS2005176067で教示されているように、櫛状電極アレイの感度を向上させるために、酸化還元種のプロダクションまたはレジストレーションに基づいて、免疫(シー・MH、ペン・YY、ゾウ・J他“ヒト血清における肝臓線維症マーカの大量スクリーニングのためにシリコンチップ上に配置された超小型電極に基づく免疫アッセイ”「バイオセンサー&バイオエレクトロニクス」2006年6月15日、21(12):2210−2216)、DNA(V・ダルマン他“電気化学酸化還元プローブを利用した櫛状超小型電極に対するオリゴヌクレオチドハイブリッド形成のラベルを使用しないインピーダンス検出”「バイオセンサー&バイオエレクトロニクス」2005年、21:645から654)またはRNA(エルショルツ・B、ワール・R、ブローム・L他“超小型電気アレイを利用したバクテリアRNAの自動検出および定量化”「分析化学」2006年7月15日、78(14):4894から4802)のために間接分析が利用された。
【0013】
これらセンサーの電気化学感度を向上させるため、三次元櫛状電極の利用が提案された。これは、30μm厚の金属電極を含んでいる(ホンダ・N、イナバ・M、カタギリ・T他“3D櫛状電極を利用した高効率電気化学免疫センサー”「バイオセンサー&バイオエレクトロニクス」2005年5月15日、20(11):2305から2309)。
【0014】
インピーダンス感度を向上させる別の方法は、特許US20022150886およびWO2005001479で開示されているように検出対象である分子に結合した金属粒子またはポリマー粒子を利用する(ワング・JB、プロフィット・JA、プギア・MJ他“バイオセンサーにおけるインピーダンスとキャパシタンス信号増幅のための金ナノ粒子共役”「分析化学」2006年3月15日、78(6):1769から1773)。マーキングされた分子とセンサーに固定された受容体の間の相互作用は、増強された電界との干渉をもたらし、その結果、感度の向上が得られる。
【0015】
特許US6440662においては、金属シートで部分的に被覆された通路により形成され、金属表面層と共にセンサー電極を形成する三次元IDEAセンサーが教示されている。この形態は、分析された電界の再分布およびセンサー感度の向上を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の1目的は、サンプル内の分析対象物の存在を直接的に判定するために有用なバイオセンサーの利用であり、以下の要素を含む(図4参照):
i)絶縁基板(8)または絶縁層による被膜;
ii)基板上に高導電性材料で形成され、各対の櫛歯が分離されている少なくとも1対の化学的に不活性である櫛状電極(9と10);
iii)絶縁材料製のバリア(11)であって、溶接点(13と14)が内部方向に開いている1対の隣接櫛状電極の中央部間の距離と高さが類似;
iv)絶縁材料表面上または電極表面上に化学的に固定された受容体分子(12)。
【0017】
本発明の1特殊目的は、要素(i)の絶縁基板がポリマー、ガラスまたは無機酸化物で製造されている本発明のバイオセンサーの利用であるが、本発明は、それらに限定されない。
【0018】
本発明の別な特殊目的は、要素(i)の基板が絶縁材料ではなく、二酸化ケイ素またはポリマーの絶縁層または誘電層を含んでいる本発明のバイオセンサーの利用であるが、本発明はそれらに限定はされない。
【0019】
本発明の別な特殊目的は、要素(ii)の高導電性で不活性である電極が、好適にはPt、PdおよびAuのごとき金属、酸化物、Si、多結晶シリコン、ケイ化タンタルあるいはポリマー導電体に属する材料である本発明のバイオセンサーの利用であるが、本発明はそれらに限定はされない。
【0020】
本発明の別な特殊目的は、電極が0.5μmから10.0μmの幅と間隔の櫛歯を有している本発明のバイオセンサーの利用である。
【0021】
本発明の別な特殊目的は、要素(iii)の絶縁バリアが、無機酸化物、ポリマーおよびUV光に敏感な材料である本発明のバイオセンサーの利用であるが、本発明は、それらに限定されない。
【0022】
本発明の別な特殊目的は、要素(iii)の絶縁バリアが、絶縁層の厚みを特徴としている本発明のバイオセンサーの利用である。この厚みは、2体の隣接櫛歯を分離するバリアの高さである。すなわち、1対の連続櫛状電極の中央部を分離する距離の50%から150%であり、好適に100%である。
【0023】
本発明の別な特殊目的は、AC電圧が印加される(ii)の電極の電気特性を検出し、バリアの表面に近接する電界の変動を検出する装置と、その電圧を印加する装置とをさらに含んでいる本発明のバイオセンサーの利用である。
【0024】
本発明の別な特殊目的は、生体サンプルで発見される分析対象物または分子の利用を特徴とする本発明のバイオセンサーの利用である。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明の1目的は、新規な電気化学バイオセンサー並びに分析対象サンプル内における分子構造物また分析対象物の存在あるいは不在を判定することができる方法の提供である。
【0026】
本発明は、その作用原理が、2つの電極間で発生する電界と、センサー表面の受容体分子または固定センサーとの溶液内のサンプルからの分析対象物の反応により形成される分子構造との間で発生する干渉に基づいて新規で非常に高感度である電気化学センサーを構築することができるという実験結果に基づいており、そこでは非常に高導電性である電極は絶縁材料のバリアで分離されている(例1から3参照)。
【0027】
分子相互反応で起きる生化学反応は、イオン電荷分布に影響を及ぼす。よって、バリア表面に近接した層の電気特性に影響を及ぼす。AC電圧が検出装置を介して電極に印加され、発生するインピーダンス変化が検出される。
【0028】
絶縁バリアの存在のために、電極間を流れる電流のほとんどはバリアの表面に非常に近い薄層内を通過する。よって、生化学プロセスで誘導されるインピーダンス変化に対する感度が向上する。
【0029】
特に、それが電圧差であろうと電流差であろうと、本発明のセンサーの溶接点(13)と(14)に電気信号が適用されると(図4A)、一連のベクトル線(7)を発生させる電界が出現する(図4B)。もし、検出対象の分子または分析対象物がサンプル溶液内で発見されれば、それらは、受容体分子またはセンサー(12)に結合し、バリア表面に近接する電界に大きな変動をもたらす。
【0030】
図2Cの構成における変動はずっと小さい。この変動は、特定の周波数及び/又は適したDC極性でのインピーダンス測定によって定量化できる(例2と3参照)。
【0031】
従って、本発明の1目的は、サンプル内における分析対象物の存在を直接的に確認させる有用なバイオセンサーに関する。本発明のバイオセンサーは、以下の要素を含む(図4参照):
i)絶縁基板(8)または絶縁層による被膜;
ii)基板上に高導電性材料で形成され、各対の櫛歯が分離されている少なくとも1対の化学的に不活性である櫛状電極(9と10);
iii)絶縁材料製のバリア(11)であって、溶接点(13と14)が内部方向に開いている1対の隣接櫛状電極の中央部間の距離と高さが類似;
iv)絶縁材料表面上または電極表面上に化学的に固定された受容体分子(12)。
【0032】
本発明の受容体分子は、サンプルの他の分子または分析対象物と反応して錯体(複合物)を形成及び/又は二次反応を誘起することができる機能的に特定される分子であると理解される。1例として、受容体分子は、酵素、抗体、抗原、ペプチド、DNA断片、RNA断片、またはオリゴヌクレオチドである。
【0033】
溶液またはサンプル内で確認される分析対象物または分子は受容体分子と結合または反応可能な、サンプル内に存在するどのような分子であってもよい。それら分析対象物は、例えば、酵素、抗体、抗原、ペプチド、DNA断片、RNA断片、オリゴヌクレオチド、または真核生物や原核生物のごとき異なるタイプの完全細胞等であるが、これらに限定されない。
【0034】
受容体分子と分析対象物との間の結合は、例えば、サンプル内での分析対象物特定作業において(好適には臨床生物学または獣医生物学、栄養学または環境起源、等々)単DNA及び/又はRNA鎖、抗原/抗体および酵素/基板反応のハイブリッド形成において発生する。
【0035】
ベース層と呼ばれる要素(i)の基材は、異なる種類の材料でもよい。例えば、結晶ウェハー(水晶、シリコン、サファイア)、アモルファス材料(ガラス)、ポリマー(PMMA、PCC、PEEK、PVE、PEI)またはAlのごときセラミック厚層でよい。
【0036】
基材が絶縁性ではない場合、絶縁誘電層がその表面に形成されなければならない。この絶縁層は、ポリイミドまたはBCBのごときポリマー材料、あるいはLPCVDやPECVD技術で堆積されるSiのごとき無機材料、またはシリコンウェハー上に堆積されるか熱的に成長するSiO層でよい。
【0037】
本発明の1特殊目的は、要素(i)の絶縁基板がポリマー、ガラスまたは無機酸化物で製造されている本発明のバイオセンサーの利用であるが、本発明はそれらに限定されない。
【0038】
本発明の別な特殊目的は、要素(i)の基板が絶縁材料ではなく、二酸化ケイ素またはポリマーの絶縁層または誘電層を含んでいる本発明のバイオセンサーの利用であるが、本発明はそれらに限定はされない。
【0039】
要素(ii)の電極は、良好な導電性である材料層が、好適には蒸着処理によって誘電層状に堆積されて形成される。電極の形態は、リトグラフ技術および引き続く直接エッチングまたはリフトオフ技術により定義される。
【0040】
各対の櫛状電極間の幅と分離距離(図1Aではパラメータaとb)は、好適にはミクロン単位であるが、サブミクロン単位でも構わない。良好な導電体であり、溶液と反応しないならばどのような材料であっても電極の形成に使用できる。本発明の範囲は、限定しないが、電極特性を変更するような反応が発生しない限り、Pt、Pd、AuまたはSiのごとき材料、シリコン多結晶体、ケイ化タンタルあるいはポリマー導電体が利用できる。導電層の厚みは、非常に大きいものでもよいが、生化学センサーとして利用するには約150nmの厚みが好適である。
【0041】
層の堆積は、熱蒸着、陰極スパッタリング、電子銃または導電材料の層を製造できるどのような他の知られた技術を利用してもよい。これらは専門家の技術範囲である。
【0042】
本発明の別な特殊目的は、要素(ii)の高導電性で不活性である電極が、好適にはPt、PdおよびAuのごとき金属、酸化物、Si、多結晶シリコン、ケイ化タンタルあるいはポリマー導電体に属する材料である本発明のバイオセンサーの利用であるが、本発明はそれらに限定はされない。
【0043】
本発明の別な特殊目的は、電極が0.5μmから10.0μmの幅と間隔の櫛歯を有している本発明のバイオセンサーの利用である。
【0044】
インピーダンスセンサーと外部測定回路(例:インピーダンス材料)との間の確実な接続を得るためには、溶接点(13)と(14)を準備し、以下で解説するように製造工程を実行することが必要である。
【0045】
その構造パターンが決定されたセンサー表面に金属層が積層される。この積層には、コントラストマスキングとフォトリトグラフ処理および従来のエッチング処理が利用される。溶接点の金属は、導電性電極を形成するように良好なスレッド溶接と、その下側の材料との低接触抵抗を保証する限りいかなる金属であっても良い。例えばこの金属はアルミニウムである。
【0046】
それぞれの対の櫛状構造である隣接電極間の誘電バリアは、絶縁材料(15)の層を堆積する手段によって作成される。この絶縁材料層は、フォトリトグラフUV処理とエッチング(主として深い反応性イオンエッチング(DRIE))の手段によって金属電極(櫛歯)および溶接点の上で除去される。絶縁層の厚みはバリアの高さであり、このバリアは2つの隣接櫛歯を分離し、その対の隣接櫛歯電極の中央間距離の100%に等しい。
【0047】
同様に、2連続櫛歯の中心間距離の50%から150%の高さのバリアも可能であると同時にこの範囲以下または以上であっても可能である。分析対象溶液との接触防止が必須である集電器バリア(図1の2)を除いて、本発明においてはセンサーの表面の他部分に絶縁層を維持することは必須ではない。
【0048】
バリアを形成する誘電材料はいかなる絶縁材料であっても構わない。しかし、技術的理由により、LPCVDで得られる二酸化ケイ素が好適である。なぜなら、この材料は容易に除去できるからである。
【0049】
エッチング処理後に製造されるバリア形状もさほど重要ではない。なぜなら、バリアは方形でも構わず、傾斜壁または垂直壁を備えることができ、それらの上部は平坦であっても丸形であってもよいからである。
【0050】
異なる電極を分離するバリアを製造するため、上記以外に従来技術に従って、本発明の範囲内で他の方法も利用できる。従って、UV光に敏感な材料がバリアの形成に利用できる。毛細管ミクロ成型、レプリカ成型、溶剤利用ミクロ成型、等々であるミクロ成型(超小型成型)技術も活用できる。
【0051】
本発明の別な特殊目的は、要素(iii)の絶縁バリアが、無機酸化物、ポリマーおよびUV光に敏感な材料である本発明のバイオセンサーの利用であるが、本発明はそれらに限定されない。
【0052】
本発明の別な特殊目的は、要素(iii)の絶縁バリアが、絶縁層の厚みを特徴としている本発明のバイオセンサーの利用である。この厚みは、2体の隣接櫛歯を分離するバリアの高さである。すなわち、1対の連続櫛状電極の中央部を分離する距離の50%から150%であり、好適に100%である。
【0053】
要素(iv)の受容体分子(図4の12)は、従来の分子固定方法によって絶縁バリアの表面に固定できる。本発明を限定するものではないが、例えば、エポキシドやカルボジイミドによる結合、還元精製による結合、シアノゲンブロミド、スクシンイミド、カルボジイミダゾール、塩化トレシルおよび塩化トシル、塩化ジビニル、マレイミド、ヒドラジド、イソ(チオ)シアネートによる結合、および好適にはアミノシラン、エポキシドシラン、チオシアネートおよびイソチオシアネートシラン、無水琥珀酸シラン、スルフィドリルシランおよびカプロラクタムシランによるシアン化による結合である。
【0054】
受容体分子とは、分析対象生体サンプル内に存在する対応分析対象物と結合することができる生体分子である。本発明の別なセンサー形態は、要素(iv)の受容体分子が電極表面で固定されたものである。
【0055】
解説した技術方法は、従来の超小型電子技術を利用と相俟ってセンサーの超小型化を可能にし、単体である基板上に造り付けセンサーアレイの構築を可能にする。
【0056】
解説した方法による造り付けセンサーアレイは、マイクロ診断用の装置の製造を可能にする。これら造り付け装置は複数のパラメータを同時的に検出させるため、マルチパラメータ分析と呼称される。このことは、サンプルが小さい場合にスクリーニングアッセイを望むように状況において特に重要である。
【0057】
本発明の別特殊目的は、電極が櫛状アレイで構成されている本発明のバイオセンサーの利用である。
【0058】
受容体分子と分析対象物との結合が発生したときのバイオセンサー電界の変動は、適した周波数及び/又はDC分極化におけるインピーダンス測定により定量化が可能である。インピーダンス分析は好適な電気測定である。なぜなら、DC分極化を含んでも含まなくても、あるいは両方の技術を組み合わせてもこのインピーダンス分析は周波数の所定範囲で、抵抗、容量、誘電及び/又はリアクタンスの損失の測定を可能にするからである。
【0059】
本発明の別特殊目的は、要素(iii)の電極に接続された電気特性を検出する装置をさらに備えた本発明のバイオセンサーの利用である。その装置にはAC電圧が印加され、バリア表面に近接した電界の変動を検出する。このバイオセンサーはその電圧を印加させる装置をさらに含む。
【0060】
本発明の1特殊実施形態は、検出装置がセンサーの電極間のインピーダンスを測定するインピーダンスメータである本発明のバイオセンサーである。
【0061】
本発明の別特殊実施形態は、複数の生体分子センサーを含む本発明のバイオセンサーである。それらは、例えば、核酸(例:プローブまたはオリゴヌクレオチド)、抗原、抗体、酵素、タンパク質、またはペプチド等である異なる種類の生体分子であろうと、あるいは同一種類の分子であろうと、それらは1以上の異なる標的分子に向かう。
【0062】
本発明の別特殊目的は、生体サンプル内に発見される分析対象物または分子のバイオセンサーの利用である。
【0063】
前述したように、分析対象物とは、酵素、抗体、抗原、ペプチド、DNA断片、RNA断片、オリゴヌクレオチド、あるいは、真核生物または原核生物のごとき異なる種類の完全細胞であるがこれらには限定されない。それらの特定は、例えば、ヒトまたは動物の病気の診断、環境分析、法医学分析、等々の分野において重要である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】櫛状電極アレイ(IDEA)と称される2つの共面櫛状電極を備えた従来のインピーダンストランスジューサ図である。 このトランスジューサは、絶縁基板(1)、櫛状電極(2’と3’)に接続する2体の集電バー(2)と(3)、および溶接点(4)と(5)を備える。
【図2】図1で図示されているトランスジューサの断面図である。 (A)幅が“b”であり、電極間距離が“a”であり、電界(7)のベクトルを有する櫛状電極(2’と3’)が図示されている。電界のさらに高い強度は、装置表面に配置された2体の隣接電極(aとb)の中央間距離に等しい距離範囲で囲まれている。 (B)櫛状電極上で固定された受容体分子(6)の例。 (C)櫛状電極間で固定された分子(6)の例。
【図3】櫛状電極アレイに等価である電気回路図である。 この等価回路を形成する要素の物理的特徴は、次の通りである: R:結合スレッド、接点および集電バーの接触抵抗; C:2電極と接触媒質(一般的に水溶液)の間で確立される幾何容量; R:2電極間の水溶液の電気抵抗; CDL:相間電極/溶液の二重層容量; RCT:電極表面のファラデー処理による電荷移動抵抗; W :濃縮の追加分極化(ワールブルグインピーダンス)、電極表面の粗度及び/又は電極表面の追加層存在。
【図4】(A)インピーダンスセンサーは、非常に良好な導電材料で成り、誘電バリア(11)で分離された1対の櫛状電極(9)と(10)が両側に提供されている絶縁層が被膜されている基材(8)(高さが2体の電極櫛歯の中央部間距離に等しい)を備えている。 これら櫛歯間にバリアを形成する材料は、良好な絶縁体(15)であり、溶接点(14と15)はその方向に開いている。 (B)図4Aの装置の断面。基板(8)、電極(9と10)、それら電極を隔てるバリア(11)と電界(7)のベクトルが図示されている。 (C)図4Aで図示する装置の断面。バリア表面で固定された受容体分子(12)の層を含む。
【図5】スルファピリジン溶液に対するELISA免疫アッセイ(破線)および本発明の免疫センサー(赤線)のキャリブレーション曲線図である。
【図6】実験の別々の時間で測定されたインピーダンススペクトルを調整する手段により、図3で示す等価回路で発生するパラメータRとRCTである。
【発明を実施するための形態】
【0065】
【実施例1】
【0066】
発明インピーダンスセンサーの製造
本発明の実施例の開始材料は、シリコンウェハーであった。それを基板としてのみ使用する場合には、その物質のタイプや使用量は重要ではなく、導電率や結晶方位性も重要ではない。そのシリコンウェハーは、950℃での湿潤酸化法により熱的に酸化され、良好な誘電特性を備えた2500nmの二酸化ケイ素層が形成された。
【0067】
次のステップは、マグネトロンによる陰極スパッタリングの手段で厚みが230nmであるケイ化タンタル層を堆積することであった。
【0068】
最初のフォトリトグラフ処理段階で、集電バーと2体の電極櫛歯が提供された。形状化は、反応性イオンエッチング技術によってなされた。その結果、216本の櫛歯を有するアレイが製造された。その櫛歯は、それぞれ3.0μmの厚さであり、他は隣接櫛歯間距離が3.0μmであった。電極間の開口は、1.4mmであり、各電極の全長は、301.0mmであった。
【0069】
溶接点は、1.0μmのアルミ層を堆積することで形成された。集電バーの両端でのその堆積は、従来のフォトリトグラフとエッチング技術を利用した手段により実行された。
【0070】
最終ステップは、絶縁バリアの作成であった。このためウェハー表面は、LPCVDで堆積された4.0μmの酸化ケイ素層で被覆された。
【0071】
フォトリトグラフおよびエッチングが再び利用され、溶接点を除いて、櫛歯間に材料を残すパターンを作成し、集電バーを被覆した。この層除去は、深い反応性イオンエッチング(DRIE)技術で実施された。これは、ほぼ垂直な壁を有したバリアを提供した。この特殊形態の場合、このバリアの高さは、2体の隣接櫛歯間距離の約67%であった。
【0072】
ウェハーが切断されると、個々の装置は、PCB基板に接着され、インピーダンスメータとの電気的接続のためにスレッドが溶接された。
【実施例2】
【0073】
免疫センサーとしての発明センサーの利用
機能付与に進む前に電極は、70%の無水エタノールと30%のミリQ水の溶液で洗浄された。その後、電極は、2.5%のNaOHとミリQ水の溶液に10分間浸され、NaOHの作用を中和させるために100mLのミリQ水で濯がれた。最後に、それら電極は、エタノールで洗浄され、窒素流で乾燥された。
【0074】
電極は、2.5%の無水エタノールのGPTS(3−グルシドキシプロピル)トリメトキシシラン溶液内に3時間、常温にて浸され、軌道撹拌された。その後、電極は、エタノールで洗浄され、窒素流で乾燥された。
【0075】
電極櫛歯上の抗原の共有結合固定は、炭酸バッファ溶液(pH=9.6)内の2d−BSA(0.8μg/ml、300μL)抗原溶液を使用して実行された。反応は24時間、25℃にて維持され、軌道撹拌された。余剰液は、電極をPBSTバッファで洗浄することで(4回、1000μL/電極)で除去され、乾燥窒素流で乾燥された。
【0076】
生体分子受容体(抗体)は、ファミド類から抗生物質の分析用に設計され、製造された。生物受容体の準備は、分子モデル化法を利用して免疫不完全抗原(ハプテン)を設計する手段によって取り組まれた。
【0077】
これら研究の結果、2個のハプテンまたは抗原の合成が提案された。
【0078】
一方(ハプテン1)は、スルファミド構造の大部分を占め、他方(スルプテン2)は、ほんの一断片であり、この種類の抗生物質化合物の大部分に共通する部位を保存した。これら2つのハプテンは、従来方法に従ってHCH(カブトガニヘモシアニン)タンパク質およびBSA(ウシ血清アルブミン)タンパク質に組み合わされた。
【0079】
これらハプテンまたは抗原の共有結合と、タンパク質に結合された抗原の残物の数の定量化は、質量分析器により実施された。その後、ニュージーランド種のウサギが6ヶ月間の免疫プロトコールによりこの抗原で免疫化された。その間、免疫反応の進行は、少量の血液サンプルを得ることでモニターされた。
【0080】
スルフォンアミドタイプの抗体によって製造される抗血清剤の親和性を評価するには、競合タイプの免疫化学アッセイを確立することが必要であった。このため、8つの競合ハプテン(SA−3−10)の準備が提案された。これらは、抗体の製造に使用されるハプテンまたは抗原と化学的に類似した構造であったが、幾分かの構造修飾または分子の異なる部位に位置するスペーサアームが必要であった。
【0081】
当初は、これらのハプテンは、酵素HRP(ワサビペルオキシダーゼ)を備えた酵素トレーサを準備するのに使用された。直接ELISAフォーマットでのこれら酵素トレーサを使用した予備研究では、スルファピラジン等の抗体によっては9μgL−1に近いIC50で認知できた。
【0082】
PBST(PEST内の0.64nMから50000nM)で準備されたスルファピリジン様式の溶液が電極(150μL/電極)に加えられ、その後に得られた特殊スルファミド抗血清剤(#155)(PBST内の1/2000、150μL/電極)の溶液が加えられた。
【0083】
常温で30分間培養した後に、電極は、PBST(3回、1000μL/電極)と、ミルQ水(1回、1000μL/電極)で洗浄された。この反応は、低導電溶液内で測定された。
【0084】
キャリブレーション曲線は、4つのパラメータで次の式に調整された。
【0085】
(式) Y={(A−B)/[1+(x/C)]}+B
(Aは最大吸収率、Bは最少吸収率、Cは最大値の50%である吸収率を提供する濃度、DはS状曲線の湾曲点の傾斜度)。
【0086】
【表1】

これらの値は、キャリブレーション曲線の調整に使用された4つのパラメータにより式から得られた値である。
【0087】

表1で示されるデータは、免疫酵素アッセイELISAと、インピーダンス免疫センサーのパラメータ特性を表す。IC50は、感度を表した。このとき、アッセイの最も高感度である値は、最少である。
【0088】
免疫センサーのIC50とELISAの値を比較すると、それらが同じ大きさの特性によるものであり、本発明の免疫センサーが感度に関しては、ELISAアッセイと同様に振舞うことが確認された。
【0089】
別な重要なパラメータは、最大信号と最小信号との関係であった。本発明の装置では、値が大きいほど、反応は良好である。
【0090】
本発明の免疫アッセイと、ELISAアッセイとを比較すると、ELISAよりも優れた反応が免疫アッセイからあったことが判明した。最後に、重要な情報としてRが提供された。これは、前述のS状曲線に対する実験データの調整程度を示したが、結局は同一であった。
【実施例3】
【0091】
DNAバイオセンサーとしての発明センサーの利用
機能付与に進む前に、電極は、70%の無水エタノールと30%のミルQ水の溶液で洗浄された。その後、電極は、2.5%のNaOHとミリQ水の溶液に10分間浸され、NaOHの作用を中和させるために100mLのミリQ水で濯がれた。最後に、電極は、エタノールで洗浄され、窒素流で乾燥された。
【0092】
電極は、2.5%の無水エタノールのGPTS(3−グルシドキシプロピル)トリメトキシシラン溶液に3時間、常温で浸され、軌道撹拌された。その後、電極は、エタノールで洗浄され、窒素流で乾燥された。
【0093】
20対の塩基の単一オリゴヌクレオチド鎖が電極表面に配位5’でアミノ基によって固定された。これら電極は、炭酸バッファ8ph−9.69内で20対の塩基のオリゴヌクレオチドを含む溶液(10μg/ml、300μL)に浸された。
【0094】
24時間の反応後に、電極は、PBSTバッファで洗浄され(4回、1000μL/電極)、窒素流で乾燥された。
【0095】
オリゴは、20以下:5’−アミノヘキシル−CGA GTC ATT GAG TCA TCG AG−3’であり、20以上:5’−フルオレセイナヘキシル−CTC GAT GAC TCA ATG ACT CG−3’であった。
【0096】
オリゴヌクレオチドのハイブリッド形成が配位5’でフルオレセインにマーキングされた相補20塩基対のオリゴヌクレオチドによりバッファ溶液内にて実行された。
【0097】
電極は、相補オリゴヌクレーチドを含む溶液(10μg/ml、300μL)に浸され、5分間常温で培養された。その後、電極は、PBSTバッファ(1000μL/電極)で洗浄され、乾燥窒素流で乾燥された。ハイブリッド形成プロセスは低導電性溶液内にて測定された。
【0098】
【表2】

【0099】
【表3】

【0100】
表示値(RsとRct)から理解されようが、表面の当初固定オリゴヌクレオチド鎖による本発明のセンサー装置と、相補的であるハイブリッド化オリゴヌクレオチド鎖による同一装置との間には大きな変化が存在する。
【0101】
この観察される相違は、本発明のセンサーがオリゴヌクレオチド鎖のハイブリッド形成を区別するのに使用が可能であることを示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル内における分析対象物の存在如何を直接的に判定するバイオセンサーであって、以下の要素、
(i)絶縁基板(8)または絶縁層による被膜と、
(ii)前記基板上に高導電性材料で形成されている少なくとも1対の化学的に不活性である櫛状電極(9と10)であって、各対の櫛歯は、該電極によって分離されている櫛状電極と、
(iii)絶縁材料製のバリア(11)であって、その高さが溶接点(13と14)がその内部方向に開いている1対の前記隣接櫛状電極の中央部間距離と類似するバリアと、
(iv)前記絶縁材料表面上または前記電極表面上に化学的に固定された受容体分子(12)と、
を含んでいることを特徴とするバイオセンサー。
【請求項2】
受容体分子は、酵素、抗体、抗原、ペプチド、DNA断片、RNA断片およびオリゴヌクレオチドで成る群に属していることを特徴とする請求項1記載のバイオセンサー。
【請求項3】
要素(i)の基板は、ポリマー、ガラスおよび無機酸化物で成る群に属していることを特徴とする請求項1記載のバイオセンサー。
【請求項4】
要素(i)の基板は、絶縁材料ではなく、二酸化ケイ素またはポリマーに属する絶縁層または誘電層を含んでいることを特徴とする請求項1記載のバイオセンサー。
【請求項5】
要素(ii)の高導電性で不活性である電極は、金属(好適にはPt、Pd、Au)、酸化物、Si、多結晶ケイ素、ケイ化タンタルおよびポリマー導電体で成る群に属する材料であることを特徴とする請求項1記載のバイオセンサー。
【請求項6】
電極は、0.5μmから10.0μmの幅と櫛歯間距離を有した櫛歯を有していることを特徴とする請求項1記載のバイオセンサー。
【請求項7】
要素(iii)の絶縁バリアは、無機酸化物、ポリマーおよびUV光に高感度である材料で成る群に属する材料であることを特徴とする請求項1記載のバイオセンサー。
【請求項8】
要素(iii)の絶縁バリアは、絶縁層の厚みを特徴とし、該厚みは、2体の櫛歯を分離するバリア高さを与えるものであり、該バリア高さは、連続的櫛状電極の中央部を分離する距離の50%から150%であり、好適には100%に近いことを特徴とする請求項1記載のバイオセンサー。
【請求項9】
要素(iv)の受容体分子は、電極の表面に固定されることを特徴とする請求項1記載のバイオセンサー。
【請求項10】
電極は、櫛状アレイ状に構成されていることを特徴とする請求項1記載のバイオセンサー。
【請求項11】
要素(ii)の電極に接続されている電気特性を検出する装置をさらに含んでおり、
該装置には、AC電圧が印加され、バリアの表面に近接する電界の変動を検出するものであり、また、該電圧を印加する装置をさらに含んでいることを特徴とする請求項1記載のバイオセンサー。
【請求項12】
検出装置は、センサーの電極間のインピーダンスを測定するインピーダンスメータであることを特徴とする請求項11記載のバイオセンサー。
【請求項13】
いくつかの生体分子センサーを含んでおり、それらが、例えば、核酸(例:プローブまたはオリゴヌクレオチド)、抗原、抗体、酵素、タンパク質、またはペプチドである生体分子の異なるタイプであるためであろうが、同一タイプの分子であるためであろうが、それらは、1以上の異なる分析対象物に向かうことを特徴とする請求項1記載のバイオセンサー。
【請求項14】
生体サンプル内にて発見される分析対象物または分子の特定のための請求項1から13のいずれかに記載のバイオセンサーの利用。

【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図2C】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図4C】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2010−526311(P2010−526311A)
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−506958(P2010−506958)
【出願日】平成20年4月29日(2008.4.29)
【国際出願番号】PCT/ES2008/070084
【国際公開番号】WO2008/139016
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(508157886)コンセジョ スペリオール デ インベスティガショネス シエンティフィカス (21)
【Fターム(参考)】