説明

インフルエンザウイルスの4つの株に由来する抗原を含むワクチン

本発明のワクチンはインフルエンザウイルスの少なくとも4つの株を含む。いくつかの実施形態では、ワクチンは、卵中よりもむしろ細胞培養物中で産生される。いくつかの実施形態では、ワクチンは、アジュバントを含む。いくつかの実施形態では、ワクチンはスプリットウイルス粒子ワクチンや全ウイルス粒子ワクチンではなく、生糖タンパク質ワクチンまたは糖タンパク質ワクチンである。いくつかの実施形態では、ワクチンは、実質的に同一の質量の各インフルエンザウイルス株の血球凝集素(HA)を含む。いくつかの実施形態では、4つの株は、2つのインフルエンザAウイルス株および2つのインフルエンザBウイルス株を含むであろう(「A−A−B−B」)。他の実施形態では、4つの株は、3つのインフルエンザAウイルス株および1つのインフルエンザBウイルス株を含むであろう(「A−A−A−B」)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中に引用した全ての文献は、その全体が本明細書中で参考として援用される。
【0002】
技術分野
本発明は、インフルエンザウイルス感染からの防御のためのワクチン、特に、3つを超えるウイルス株由来の抗原を含むワクチンの分野にある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
発明の開示
出願人は、現在の3価ワクチンの多くの不足がその製造中の卵の使用に起因すると認識している。卵ベースの製造は、準備期間および能力の両方に関して、特定の季節に必要な抗原量を増加させるのにあまり適切ではない。現在の卵ベースの製造では、ウイルスを卵中での増殖に適合させる必要があり、このため、製造開始時の消費期間を加え、ワクチン株と拡まっている株との間の適合を軽減する選択圧を導入する。さらに、インフルエンザBウイルス株は、卵中で十分に増殖せず、高増殖リアソータントは利用不可能である。現在の手順における卵増殖の絶対条件は、2003/04年シーズンにおいてはH3N2ミスマッチによって十分に証明されており、これは主に関連するFuji様株が卵を使用して最初に単離されなかったので起こった。これらの不足を克服するために、卵の代わりに細胞培養物をウイルス増殖のために使用することができる。したがって、いくつかの実施形態では、本発明のワクチンを、卵中よりもむしろ細胞培養物中で増殖させたウイルスから産生する。
【0004】
卵ベースの技術では特定の季節に産生された抗原の量を増加させることができないことに、ワクチン中の抗原量を減少させることによって取り組むこともできる。1つの抗原量を減少させる方法は、アジュバントを使用することである。したがって、いくつかの実施形態では、本発明のワクチンはアジュバントを含む。
【0005】
いくつかの実施形態では、ワクチンは、実質的に同一の質量の各インフルエンザウイルス株の血球凝集素(HA)を含む(例えば、約1:1:1:1)。1株あたりのHAの質量は、約15μg/用量であり得るか、いくつかの実施形態では、15μg/用量未満(例えば、10μg/用量未満)または15μg/用量超(例えば、>20μg/用量、>25μg/用量(約30μg/用量など))であり得る。他の実施形態では、ワクチンは、異なる質量の異なる株のHAを含む。
【0006】
いくつかの実施形態では、ワクチンは、スプリットウイルス粒子不活化ワクチンや全ウイルス粒子不活化ワクチンではなく、生糖タンパク質ワクチンまたは精製糖タンパク質ワクチンである。
【0007】
したがって、本発明は、株の少なくとも1つが細胞培養物中で増殖した、インフルエンザウイルスの少なくとも4つの株由来の抗原を含むワクチンを提供する。好ましくは、全株を、細胞培養物中で増殖させた。
【0008】
本発明はまた、ワクチンがオボアルブミンを含まない、インフルエンザウイルスの少なくとも4つの株由来の抗原を含むワクチンを提供する。組成物はまた、他の卵タンパク質(例えば、オボムコイド)およびニワトリDNAを含まなくてよい。
【0009】
本発明はまた、(i)4つの異なるインフルエンザウイルス株を細胞培養物中で増殖させる工程;(ii)工程(i)で増殖した各ウイルスから抗原組成物を調製する工程;および(iii)抗原組成物を(例えば、薬学的キャリアと)組み合わせてワクチンを得る工程を含む、ワクチンの調製方法を提供する。
【0010】
本発明はまた、インフルエンザウイルスの少なくとも4つの株由来の抗原を含み、かつアジュバントを含むワクチンを提供する。
【0011】
本発明はまた、(i)4つの異なるインフルエンザウイルス株を増殖させる工程;(ii)工程(i)で増殖した各ウイルスから抗原組成物を調製する工程;ならびに(iii)抗原組成物をアジュバントおよび薬学的キャリアと組み合わせてワクチンを得る工程を含む、ワクチンの調製方法を提供する。
【0012】
本発明はまた、抗原がスプリットウイルス粒子でも全ウイルス粒子でもない、インフルエンザウイルスの少なくとも4つの株由来の抗原を含むワクチンを提供する。抗原は、生インフルエンザウイルスであり得るか、精製糖タンパク質であり得る(すなわち、ワクチンはインフルエンザウイルスの少なくとも4つの株由来の精製血球凝集素を含むであろう)。
【0013】
本発明はまた、(i)4つの異なるインフルエンザウイルス株を増殖させる工程;(ii)工程(i)で増殖した各ウイルスから抗原組成物を調製する工程であって、抗原組成物がスプリットウイルス粒子でも全ウイルス粒子でもない、工程;および(iii)抗原組成物を薬学的キャリアと組み合わせてワクチンを得る工程を含む、ワクチンの調製方法を提供する。
【0014】
本発明はまた、ワクチンが実質的に同一の質量の各インフルエンザウイルス株の血球凝集素(HA)を含む、インフルエンザウイルスの少なくとも4つの株由来の抗原を含むワクチンを提供する。各株のHAの質量は、1株あたりのHAの平均質量の10%以内であろう。質量は、好ましくは、15μgHA/株未満である。
【0015】
本発明はまた、インフルエンザウイルスの少なくとも4つの株由来の抗原を含むワクチンであって、ワクチンが、aμgの第1の株由来の血球凝集素(HA)、bμgの第2の株由来のHA、cμgの第3の株由来のHA、およびdμgの第4の株由来のHAを含み、aおよびbが実質的に同一であり、cおよびdが実質的に同一であるが、aおよびcは実質的に異なる、ワクチンを提供する。aおよびbの値は、aおよびbの平均(「a/b平均」)の10%以内であろう。cおよびdの値は、cおよびdの平均(「c/d平均」)の10%以内であろう。a/b平均およびc/d平均は、a/b平均およびc/d平均の低い方の少なくとも25%異なるであろう(例えば、少なくとも33%、少なくとも40%、少なくとも50%)。
【0016】
本発明はまた、インフルエンザウイルスの少なくとも4つの株由来の抗原を含むワクチンであって、ワクチンが、aμgの第1の株由来の血球凝集素(HA)、bμgの第2の株由来のHA、cμgの第3の株由来のHA、およびdμgの第4の株由来のHAを含み、a、b、およびcが互いに実質的に同一であるが、dと実質的に異なる、ワクチンを提供する。a、b、およびcの値は、a、b、およびcの平均(「a/b/c平均」)の10%以内であろう。dの値は、a/b/c平均とa/b/c平均の少なくとも25%異なるであろう(例えば、少なくとも33%、少なくとも40%、少なくとも50%)。
【0017】
本発明はまた、インフルエンザウイルスの少なくとも4つの株由来の抗原を含むワクチンであって、ワクチンがxμgの株あたりの平均HA量を有し、(a)4つの株のうちの2つのHA量がxより少なくとも10%低く、他の2つの株のHA量がxより少なくとも10%高いか、(b)4つの株のうちの3つのHA量がxより少なくとも10%低く、他の株のHA量がxより少なくとも10%高いか、(c)4つの株のうちの3つのHA量がxより少なくとも10%高く、他の株のHA量がxより少なくとも10%低い、ワクチンを提供する。「少なくとも10%」は、少なくとも25%、少なくとも33%、少なくとも40%、少なくとも50%などであり得る。
【0018】
本発明はまた、(i)4つの異なるインフルエンザウイルス株を増殖させる工程と;(ii)工程(i)で増殖した各ウイルスから抗原組成物を調製する工程であって、抗原組成物が血球凝集素を含む、工程;および(iii)ワクチン中で、各インフルエンザウイルス株について実質的に同一の質量の血球凝集素が得られる比率にて抗原組成物を薬学的キャリアと組み合わせてワクチンを得る工程を含む、ワクチンの調製方法を提供する。
【0019】
いくつかの実施形態では、4つの株は、2つのインフルエンザAウイルス株および2つのインフルエンザBウイルス株を含むであろう。他の実施形態では、4つの株は、3つのインフルエンザAウイルス株および1つのインフルエンザBウイルス株を含むであろう。
【0020】
株の選択
ワクチンで用いるインフルエンザウイルス株は、季節毎に変化する。現在の流行間の期間では、3価ワクチンは、2つのインフルエンザA株(H1N1およびH3N2)および1つのインフルエンザB株を含む。本発明のワクチンは、インフルエンザウイルスの少なくとも4つの株を含む。異なる株を、典型的には個別に増殖させ、ウイルスを回収して抗原を調製した後に混合する。したがって、本発明の過程は、1つを超えるインフルエンザ株由来の抗原を混合する工程を含むことができる。
【0021】
いくつかの実施形態では、4つの株は、2つのインフルエンザAウイルス株および2つのインフルエンザBウイルス株(「A−A−B−B」)を含むであろう。他の実施形態では、4つの株は、3つのインフルエンザAウイルス株および1つのインフルエンザBウイルス株(「A−A−A−B」)を含むであろう。
【0022】
インフルエンザAウイルスは、現在、以下の16種のHAサブタイプが示されている:H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、およびH16。本発明は、1つまたは複数のインフルエンザAウイルスNAサブタイプN1、N2、N3、N4、N5、N6、N7、N8、またはN9から防御することができる。たった2つのインフルエンザAウイルス株を含むワクチンでは、これらは、通常、1つのH1株(例えば、H1N1株)および1つのH3株(例えば、H3N2株)であろう。しかし、いくつかの実施形態では、1つの流行株および1つのH1株、または1つの流行株および1つのH3株が存在し得る。4価インフルエンザワクチンは、H1N1株、H3N2株、H5株(例えば、H5N1株)、およびインフルエンザB株を含むことができる。
【0023】
3つのインフルエンザAウイルス株を含むワクチンでは、これらは、1つのH1株(例えば、H1N1株)および2つのH3株(例えば、2つのH3N2株)であろう。2つのH3株は、抗原的に異なるHAタンパク質(例えば、A/Moscow/10/99と交差反応する1つのH3N2株およびA/Fujian/411/2002と交差反応する1つのH3N2株)を有するであろう。2つのH3株は、異なるクレイド(H3N2株のクレイドA、B、およびCは、参考文献1で開示されている)に由来し得る。しかし、いくつかの実施形態では、これらの株の1つ(すなわち、H1または2つのH3株のうちの1つ)を、流行株と置換することができる。
【0024】
流行インフルエンザ株の特徴は、以下である:(a)現在拡まっているヒト株中の血球凝集素と比較して新規の血球凝集素(すなわち、10年間にわたってヒト集団において明らかにされていない株(例えば、H2)またはヒト集団において以前に全く見られていない株(例えば、一般的にトリ集団においてのみ発見されたH5、H6、またはH9))を含み、その結果、ワクチンレシピエントおよび一般的ヒト集団が株の血球凝集素に免疫学的にナイーブであること、(b)ヒト集団中で水平に伝播することができること、および(c)ヒトに病原性を示すこと。流行株であるH2、H5、H7、またはH9サブタイプ株(例えば、H5N1、H5N3、H9N2、H2N2、H7N1、およびH7N7株)。H5サブタイプ内で、ウイルスは、HAクレイド1、HAクレイド1’、HAクレイド2、またはHAクレイド3(参考文献2)に分類することができ、クレイド1および3が特に関連する。
【0025】
インフルエンザBウイルスは、現在、異なるHAサブタイプが示されていないが、インフルエンザBウイルス株は2つの異なる系列に分類されている。これらの系列は1980年代後期に出現し、互いに抗原的および/または遺伝的に識別することができるHAを有する(参考文献3)。現在のインフルエンザBウイルス株は、B/Victoria/2/87様またはB/Yamagata/16/88様のいずれかである。本発明のワクチンが2つのインフルエンザB株を含む場合、1つのB/Victoria/2/87様株および1つのB/Yamagata/16/88様株が含まれるであろう。これらの株は、通常、抗原的に識別されるが、2つの系列の識別のためのアミノ酸配列の相違も説明されている(例えば、B/Yamagata/16/88様株はしばしば(しかし、常にではない)は、「Lee40」HA配列に対して番号付けしたアミノ酸残基164が欠損したHAタンパク質を有する(参考文献4))。
【0026】
したがって、本発明の好ましいA−A−B−Bワクチンは、以下の株に由来の抗原(好ましくは、血球凝集素)を含むであろう:(i)H1N1株;(ii)H3N2株;(iii)B/Victoria/2/87様株;および(iv)B/Yamagata/16/88様株。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態では、2つ以上のインフルエンザBウイルス株由来の抗原が存在する場合、少なくとも2つのインフルエンザBウイルス株は、異なる血球凝集素であるが、関連するノイラミニダーゼを有することができる。例えば、これらは、共にB/Victoria/2/87様ノイラミニダーゼを有することができるか(参考文献5)、共にB/Yamagata/16/88様ノイラミニダーゼを有することができる。例えば、2つの両B/Victoria/2/87様ノイラミニダーゼは、1つまたは複数の以下の配列特性を有することができる:(1)残基27はセリンではなく、好ましくはロイシンであること;(2)残基44はグルタミン酸ではなく、好ましくはリジンであること;(3)残基46はトレオニンではなく、好ましくはイソロイシンであること;(4)残基51はプロリンではなく、好ましくはセリンであること;(5)残基65はアルギニンではなく、好ましくはヒスチジンであること;(6)残基70はグリシンではなく、好ましくはグルタミン酸塩であること;(7)残基73はロイシンではなく、好ましくはフェニルアラニンであること;および/または(8)残基88はプロリンではなく、好ましくはグルタミンであること。同様に、いくつかの実施形態では、ノイラミニダーゼは、残基43に欠失を有することができるか、トレオニンを有することができ、NA遺伝子のトリヌクレオチド欠失を生じる残基43の欠失は、B/Victoria/2/87様株の特徴として報告されているが、最近の株は、Thr−43が回復している(参考文献5)。逆に、勿論、反対の特徴を、2つのB/Yamagata/16/88様ノイラミニダーゼで共有することができる(例えば、S27、E44、T46、P51、R65、G70、L73、および/またはP88)。これらのアミノ酸は、「Lee40」ノイラミニダーゼ配列に対して番号付けしている(参考文献6)。したがって、本発明のA−A−B−BワクチンはHAと抗原的に異なる2つのB株(一方はB/Yamagata/16/88様、他方はB/Victoria/2/87様)を使用することができるが、NAに関連する(共にB/Yamagata/16/88様または共にB/Victoria/2/87様)。
【0028】
本発明の好ましいA−A−A−Bワクチンは、以下の株に由来の抗原(好ましくは血球凝集素)を含むであろう:(i)H1N1株;(ii)A/Moscow/10/99様H3N2株;(iii)A/Fujian/411/2002様H3N2株;および(iv)インフルエンザBウイルス株(B/Victoria/2/87様またはB/Yamagata/16/88様であり得る)。
【0029】
本発明は、4価のワクチンに制限されず、5価、6価、7価などのワクチンを含む。5価のワクチンの一例としては、3つのインフルエンザA株(例えば、上記で考察した1つのH1株および2つのH3株)+2つのインフルエンザB株を挙げることができる。例えば、A−A−A−B−Bワクチンは、以下の株に由来の抗原(好ましくは、血球凝集素)を含むことができる:(i)H1N1株;(ii)A/Moscow/10/99様H3N2株;(iii)A/Fujian/411/2002様H3N2株;(iv)B/Victoria/2/87様株;および(v)B/Yamagata/16/88様株。別のA−A−A−B−Bワクチンは、以下由来の抗原(好ましくは、血球凝集素)を含むことができる:(i)H1N1株;(ii)H3N2株;(iii)H5N1株などのH5インフルエンザAウイルス株;(iv)B/Victoria/2/87様株;および(v)B/Yamagata/16/88様株。A−A−A−A−Bワクチンは、以下の株に由来の抗原(好ましくは、血球凝集素)を含むことができる:(i)H1N1株;(ii)A/Moscow/10/99様H3N2株;(iii)A/Fujian/411/2002様H3N2株;(iv)H5N1株などのH5インフルエンザAウイルス株;および(v)インフルエンザBウイルス株。A−A−A−A−B−Bワクチンは、以下の株に由来の抗原(好ましくは、血球凝集素)を含むことができる:(i)H1N1株;(ii)A/Moscow/10/99様H3N2株;(iii)A/Fujian/411/2002様H3N2株;(iv)H5N1株などのH5インフルエンザAウイルス株;(v)B/Victoria/2/87様株;および(vi)B/Yamagata/16/88様株。
【0030】
本発明と共に使用されるインフルエンザウイルスはリアソータント株であり得、逆遺伝学技術によって得ることができる。逆遺伝学技術(例えば、参考文献7〜11)によって、所望のゲノムセグメントを有するインフルエンザウイルスをプラスミドを使用してin vitroで調製することが可能である。典型的には、逆遺伝学技術は、(a)例えば、polIプロモーターまたはバクテリオファージRNAポリメラーゼプロモーター由来の所望のウイルスRNA分子をコードするDNA分子、および(b)例えば、polIIプロモーター由来のウイルスタンパク質をコードするDNA分子を発現させる工程を含み、その結果、細胞中の両DNA型の発現によって完全でインタクトな感染性ウイルス粒子が構築される。DNAは、好ましくは、全てのウイルスRNAおよびタンパク質を提供するが、いくつかのRNAおよびタンパク質を提供するためにヘルパーウイルスを使用することも可能である。各ウイルスRNAの産生に個別プラスミドを使用するプラスミドベースの方法を使用することができ(参考文献12〜14)、これらの方法は、全てまたはいくつかの(例えば、PB1、PB2、PA、およびNPタンパク質のみ)ウイルスタンパク質を発現するためのプラスミドの使用も含むであろう。いくつかの方法では、12個までのプラスミドを使用する。必要なプラスミド数を減少させるために、最近のアプローチ(参考文献15)は、同一のプラスミド上の複数のRNAポリメラーゼI転写カセット(例えば、1、2、3、4、5、6、7、または8個全てのインフルエンザA vRNAセグメントをコードする配列)(ウイルスRNA合成用)および別のプラスミド上のRNAポリメラーゼIIプロモーターを有する複数のタンパク質コード領域(例えば、1、2、3、4、5、6、7、または8個全てのインフルエンザA mRNA転写物をコードする配列)を組み合わせている。参考文献15の好ましい態様は以下を含む:(a)1つのプラスミド上のPB1、PB2、およびPA mRNAコード領域、ならびに(b)1つのプラスミド上の8個全てのvRNAコードセグメント。一方のプラスミド上にNAおよびHAセグメントを含み、他方のプラスミド上に6個の他のセグメントを含むことによっても、問題を容易にすることができる。
【0031】
ウイルスRNAセグメントをコードするpolIプロモーター使用に代わる手段として、バクテリオファージポリメラーゼプロモーターを使用することが可能である(参考文献16)。例えば、SP6、T3、またはT7ポリメラーゼのプロモーターを都合良く使用することができる。polIプロモーターの種特異性により、細胞を外因性ポリメラーゼ酵素をコードするプラスミドでもトランスフェクトしなければならないにもかかわらず、バクテリオファージポリメラーゼプロモーターは多数の細胞型(例えば、MDCK)により都合が良い。
【0032】
他の技術では、二重のpolIおよびpolIIプロモーターを使用して、ウイルスRNAを同時にコードし、1つのテンプレートからmRNAを発現することが可能である(参考文献17、18)。
【0033】
したがって、インフルエンザAウイルスは、A/PR/8/34ウイルス由来の1つまたは複数のRNAセグメントを含むことができる(典型的には、A/PR/8/34由来の6セグメントであり、HAおよびNセグメントはワクチン株に由来する(すなわち、6:2リアソータント))。これは、ワクチン調製のためのリアソータントウイルスの精製に有用なA/WSN/33ウイルスまたは任意の他のウイルス株由来の1つまたは複数のRNAセグメントを含むこともできる。インフルエンザAウイルスは、AA/6/60インフルエンザウイルス由来の6つ未満(すなわち、0、1、2、3、4、または5つ)のウイルスセグメントを含むことができる(A/Ann Arbor/6/60)。インフルエンザBウイルスは、AA/1/66インフルエンザウイルス由来の6つ未満(すなわち、0、1、2、3、4、または5つ)のウイルスセグメントを含むことができる(B/Ann Arbor/6/66)。典型的には、本発明は、ヒト−ヒト伝播が可能な株から防御する。したがって、株のゲノムは、通常、哺乳動物(例えば、ヒト)インフルエンザウイルスを起源とする少なくとも1つのRNAセグメントを含むであろう。株のゲノムは、トリインフルエンザウイルスを起源とするNSセグメントを含むことができる。
【0034】
その抗原を組成物中に含めることができる株は、抗ウイルス療法に耐性を示し得(例えば、オセルタミビル(参考文献19)および/またはザナミビルに耐性を示し得る)、株には、耐性流行株(参考文献20)が含まれる。
【0035】
特に有用な株は、患者からの単離と細胞培養系中の複製との間を含めたいかなる段階においても卵を介して継代されない株である。単離からウイルス複製までの全工程についてMDCK細胞の排他的使用は、本発明の1つの好ましい実施形態である。
【0036】
したがって、いくつかの実施形態では、本発明と共に使用される株は、Sia(α2,3)Gal末端二糖を有するオリゴ糖と比較してSia(α2,6)Gal末端二糖を有するオリゴ糖に対する結合優先度を有する血球凝集素を有するであろう。ヒトインフルエンザウイルスは、Sia(α2,6)Gal末端二糖(ガラクトースにα2,6結合したシアル酸)を有する受容体オリゴ糖に結合するが、卵およびベロ細胞はSia(α2,3)Gal末端二糖を有する受容体オリゴ糖を有する。MDCKなどの細胞中でのヒトインフルエンザの増殖により、卵継代と異なり、天然のSia(α2,6)Gal結合を維持するための血球凝集素に対する選択圧が得られる。
【0037】
ウイルスがSia(α2,3)Gal末端二糖を有するオリゴ糖と比較してSia(α2,6)Gal末端二糖を有するオリゴ糖に対する結合優先度を有するかどうかを決定する場合、種々のアッセイを使用することができる。例えば、参考文献21には、インフルエンザウイルス受容体結合活性についての固相酵素結合アッセイについて記載している。これは、親和定数を高感度で定量的に測定する。参考文献22には、2つの異なるシアリル糖タンパク質へのウイルスの結合を評価する固相アッセイを使用し(オボムコイド(Sia(α2,3)Gal決定基を含む);およびブタαマクログロブリン(Sia(α2,6)Gal決定基を含む))、以下の2つの受容体アナログに対するウイルスの結合を評価するアッセイについても記載している:遊離シアル酸(Neu5Ac)および3’−シアリルラクトース(Neu5Acα2−3Galβ1−4Glc)。参考文献23では、グリカンアレイを使用したアッセイを報告している。これにより、α2,3またはα2,6結合についての受容体優先度を明確に区別することができた。参考文献24では、Sia(α2,6)GalまたはSia(α2,3)Galのいずれかを含むように酵素的に修飾されたヒト赤血球の凝集に基づいたアッセイを報告している。アッセイ型に応じて、アッセイを、ウイルス自体を使用して直接実施することができるか、ウイルスから精製した血球凝集素を使用して間接的に実施することができる。
【0038】
いくつかの実施形態では、本発明と共に使用されるインフルエンザ株は、卵由来ウイルス由来の異なるグリコシル化パターンを有する糖タンパク質(血球凝集素が含まれる)を有する。したがって、糖タンパク質には、ニワトリ卵で見られないグリコフォーム(glycoform)が含まれるであろう。
【0039】
いくつかの実施形態では、本発明は、A/Singapore/6/86(H1N1)株、A/Beijing/353/89(H3N2)株、B/Beijing/1/87株、およびB/Panama/45/90株の組み合わせ(特にこれら4つの株由来のスプリット抗原の組み合わせおよび/または15μgHA/株)を使用しない。他の実施形態では、本発明は、A/Taiwan/1/86(H1N1)株、A/Guizhou/54/89(H3N2)株、B/Beijing/1/87株、およびB/Yamagata/16/88株の組み合わせ(特に、これら4つの株由来の全ウイルス粒子の組み合わせではない)を使用しない。
【0040】
ワクチン調製物
種々のインフルエンザウイルスワクチン形態を現在利用可能であり、ワクチンは、一般に、生ウイルスまたは不活化ウイルスのいずれかに基づく。不活化ワクチンは、全ウイルス粒子、「スプリット」ウイルス粒子、または精製表面抗原に基づき得る。インフルエンザ抗原は、ビロソームの形態で存在することもできる。本発明を、任意のこれらのワクチン型と共に使用することができる。
【0041】
既存の生ワクチンには、MedImmuneのFLUMIST(商標)(3価生ウイルス)が含まれる。ワクチンを、適切な基質上でのウイルスの増殖およびその後のウイルス粒子含有流動物からのウイルス粒子の精製を含む過程によって調製する。例えば、流動物を、遠心分離によって明澄化し、緩衝液(例えば、スクロース、リン酸カリウム、およびグルタミン酸1ナトリウムを含む)を使用して安定化することができる。
【0042】
不活化ウイルスを使用する場合、ワクチンは、全ウイルス粒子、スプリットウイルス粒子、または精製表面抗原(血球凝集素が含まれ、さらに、通常、ノイラミニダーゼも含まれる)を含むことができる。ウイルスの化学的不活化手段には、有効量の1つまたは複数の以下の薬剤での処理が含まれる:界面活性剤、ホルムアルデヒド、β−プロピオラクトン、メチレンブルー、ソラレン、カルボキシフラーレン(C60)、2成分エチルアミン、アセチルエチレンイミン、またはその組み合わせ。非化学的なウイルス不活化方法は、当該分野で公知である(例えば、紫外線またはγ線照射など)。
【0043】
ウイルス粒子を、種々の方法によってウイルス含有流動物から回収することができる。例えば、精製過程は、ウイルス粒子を破壊するための界面活性剤を含む線形スクロース勾配溶液を使用したゾーン遠心分離を含むことができる。次いで、任意選択的な希釈後、ダイアフィルトレーションによって抗原を精製することができる。
【0044】
スプリットウイルス粒子を、界面活性剤(例えば、エチルエーテル、ポリソルベート80、デオキシコーラ酸塩、リン酸トリ−N−ブチル、TritonX−100、TritonN101、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、Tergitol NP9など)を使用して精製ウイルス粒子を処理し、それにより、サブウイルス粒子調製物を産生すること(「Tween−エーテル」分解過程が含まれる)によって得る。インフルエンザウイルスの分解方法は、当該分野で周知である(例えば、参考文献25〜309を参照のこと)。ウイルスの分解を、典型的には、全ウイルス(感染性、非感染性のいずれでも)の破壊濃度の分解剤での破壊または断片化によって行う。破壊により、ウイルスタンパク質が完全または部分的に可溶化し、ウイルスの完全性が変化する。好ましい分解剤は、非イオン性およびイオン性(例えば、陽イオン性)界面活性剤(例えば、アルキルグリコシド、アルキルチオグリコシド、アシル糖、スルホベタイン、ベタイン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、N,N−ジアルキル−グルカミド、Hecameg、アルキルフェノキシ−ポリエトキシエタノール、第四級アンモニウム化合物、サルコシル、CTAB(セチルトリメチルアンモニウムブロミド)、リン酸トリ−N−ブチル、Cetavlon、ミリスチルトリメチルアンモニウム塩、リポフェクチン、リポフェクタミン、およびDOT−MA、オクチル−またはノニルフェノキシポリオキシエタノール(例えば、Triton界面活性剤(TritonX−100またはTritonN101など))、ポリオキシエチレンソルビタンエステル(Tween界面活性剤)、ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンエステルなど)である。1つの有用な分解手順は、デオキシコール酸ナトリウムおよびホルムアルデヒドの連続的影響を使用し、最初のウイルス粒子精製(例えば、スクロース密度勾配溶液)の間に分解が起こり得る。したがって、分解過程は、ウイルス粒子含有物質の明澄化(非ウイルス粒子物質を除去するため)、採取したウイルス粒子の濃縮(例えば、CaHPO吸着などの吸着法の使用)、非ウイルス粒子物質からの全ウイルス粒子の分離、密度勾配遠心分離工程において分解剤を使用したウイルス粒子の分解(例えば、デオキシコール酸ナトリウムなどの分解剤を含むスクロース勾配を使用)、および濾過(例えば、限外濾過)による望ましくない物質の除去を含むことができる。スプリットウイルス粒子を、有用には、リン酸ナトリウム緩衝化等張塩化ナトリウム溶液中に再懸濁することができる。BEGRIVAC(商標)、FLUARIX(商標)、FLUZONE(商標)、およびFLUSHIELD(商標)製品は、スプリットワクチンである。
【0045】
精製表面抗原ワクチンは、インフルエンザ表面抗原である赤血球凝集素を含み、典型的にはノイラミニダーゼも含む。精製形態のこれらのタンパク質の調製過程は、当該分野で周知である。FLUVIRIN(商標)、AGRIPPAL(商標)、およびINFLUVAC(商標)製品は、サブユニットワクチンである。
【0046】
別の不活化インフルエンザ抗原形態は、ビロソーム(参考文献31)(核酸遊離ウイルス様リポソーム粒子)である。ビロソームを、界面活性剤でのインフルエンザウイルスの可溶化およびその後のヌクレオカプシドの除去およびウイルス糖タンパク質を含む膜の再構成によって調製することができる。別のビロソームの調製方法は、過剰量のリン脂質にウイルス膜糖タンパク質を添加して、その膜中にウイルスタンパク質を含むリポソームを得る工程を含む。本発明を使用して、INFLEXAL V(商標)およびINVAVAC(商標)製品のように大量のビロソームを保存することができる。
【0047】
インフルエンザウイルスを弱毒化することができる。インフルエンザウイルスは、温度感受性を示し得る。インフルエンザウイルスは、低温適応することができる。これら3つの特徴は、抗原として生ウイルスを使用する場合に特に有用である。
【0048】
HAは、現在の不活化インフルエンザワクチンにおけるの主な免疫原であり、ワクチン用量を、典型的にはSRIDによって測定したHAレベルを参照して標準化する。既存のワクチンは、典型的には、1株あたり約15μgのHAを含むが、例えば、小児、流行状況、またはアジュバントを使用する場合、より低い用量を使用することができる。より高い用量(例えば、3倍または9倍の用量(参考文献32、33))を有する場合、1/2(すなわち、7.5μg HA/株)、1/4、および1/8などの分割用量を使用することができる(参考文献68、69)。したがって、ワクチンは、インフルエンザ株1株あたり0.1μgと150μgの間のHA、好ましくは0.1μgと50μgとの間(例えば、0.1〜20μg、0.1〜15μg、0.1〜10μg、0.1〜7.5μg、0.5〜5μgなど)を含むことができる。特定の用量には、例えば、1株あたり約45、約30、約15、約10、約7.5、約5、約3.8、約1.9、約1.5などが含まれる。例えば、各株のHAの質量が1株あたりの平均HA質量の10%以内、好ましくは平均の5%以内であるように、ワクチン中に含まれる実質的に同一の質量の各株のHAを使用することが好ましい。
【0049】
生ワクチンについて、HA含有量よりもむしろ50%組織培養感染量の中央値(TCID50)によって用量を測定し、1株あたり10と10との間(好ましくは、106.5〜107.5)のTCID50が典型的である。
【0050】
本発明と共に使用される株は、野生型ウイルスで認められる天然のHAまたは修飾HAを有することができる。例えば、トリ種中でウイルスを高度に病原性にする決定基(例えば、HA1/HA2切断部位周囲の高塩基性領域)を除去するためにHAを修飾することが公知である。本発明と共に使用されるインフルエンザBウイルスのHAは、好ましくは、アミノ酸197にAsnを有し、これにより、グリコシル化部位が得られる。(参考文献34)。
【0051】
細胞株
ウイルス増殖のための基質としてSPF卵を使用することよりもむしろ、インフルエンザウイルスの複製を支持する細胞株を使用することが好ましい。細胞株は、典型的には、哺乳動物起源であろう。適切な哺乳動物起源の細胞には、ハムスター、ウシ、霊長類(ヒトおよびサルが含まれる)、およびイヌの細胞が含まれるが、これらに限定されない。しかし、霊長類細胞の使用は好ましくない。種々の細胞型(腎臓細胞、線維芽細胞、網膜細胞、肺細胞など)を使用することができる。適切なハムスター細胞の例は、BHK21またはHKCCという名称を有する細胞株である。適切なサル細胞は、例えば、アフリカミドリザル細胞(ベロ細胞株のような腎臓細胞など)である(参考文献35〜37)。適切なイヌ細胞は、例えば、CLDKおよびMDCK細胞株のような腎臓細胞である。
【0052】
したがって、適切な細胞株には、以下が含まれるが、これらに限定されない:MDCK;CHO;CLDK;HKCC;293T;BHK;ベロ;MRC−5;PER.C6(参考文献38);FRhL2;WI−38など。適切な細胞株は、例えば、American Type Cell Culture(ATCC)収集物(参考文献39)、Coriell Cell Repositories(参考文献40)、またはEuropean Collection of Cell Cultures(ECACC)から広範に利用可能である。例えば、ATCCは、カタログ番号CCL−81、CCL−81.2、CRL−1586、およびCRL−1587で種々の異なるベロ細胞を提供しており、カタログ番号CCL−34でMDCK細胞を提供している。PER.C6は、寄託番号96022940でECACCから利用可能である。
【0053】
最も好ましい細胞株は、哺乳動物型グリコシル化を有する細胞株である。哺乳動物細胞株のあまり好ましくない代替細胞株として、ウイルスをトリ細胞株(アヒル(例えば、アヒル網膜)またはニワトリ由来の細胞株が含まれる)で増殖させることができる(例えば、参考文献41〜43)。トリ細胞株の例には、トリ胚幹細胞(参考文献41、44)およびアヒル網膜細胞(参考文献42)が含まれる。適切なトリ胚幹細胞には、ニワトリ胚幹細胞由来のEBx細胞株(EB45、EB14、およびEB14−074)が含まれる(参考文献45)。ニワトリ胚線維芽細胞(CEF)も使用することができる。しかし、トリ細胞の使用よりもむしろ、哺乳動物細胞の使用は、ワクチンがトリDNAおよび卵タンパク質(オボアルブミンおよびオボムコイドなど)を含み得ず、それにより、アレルゲン性を軽減することができることを意味する。
【0054】
インフルエンザウイルス増殖のための最も好ましい細胞株は、Madin Darbyイヌ腎臓由来のMDCK細胞株(参考文献46〜49)である。元のMDCK細胞株は、ATCCからCCL−34として利用可能であるが、この細胞株の誘導体も使用することができる。例えば、参考文献46では、懸濁培養物中での増殖に適合したMDCK細胞株を開示している(DSM ACC 2219として受託された「MDCK 33016」)。同様に、参考文献50では、無血清培養において懸濁液中で増殖するMDCK由来細胞株を開示する(FERM BP−7449として受託された「B−702」)。参考文献51では、非発癌性MDCK細胞(「MDCK−S」(ATCC PTA−6500)、「MDCK−SF101」(ATCC PTA−6501)、「MDCK−SF102」(ATCC PTA−6502)、および「MDCK−SF103」(PTA−6503)が含まれる)を開示している。参考文献52では感染に対する感受性が高いMDCK細胞株(「MDCK.5F1」細胞(ATCC CRL−12042)が含まれる)を開示している。任意のこれらのMDCK細胞株を使用することができる。
【0055】
ウイルスは、接着培養物上または懸濁液中で増殖することができる。マイクロキャリア培養物を使用することもできる。したがって、いくつかの実施形態では、細胞を、懸濁液中での増殖に適合させることができる。
【0056】
細胞株を、好ましくは、無血清培養培地および/または無タンパク質培地中で増殖させる。ヒトまたは動物起源の血清を添加しない培地を、本発明の文脈では無血清培地という。かかる培地中で増殖する細胞は、天然に、タンパク質自体を含むが、無タンパク質培地は、タンパク質、成長因子、他のタンパク質添加物、および非血清タンパク質を除いて細胞が増殖する培地を意味すると理解される。しかし、この培地は、任意選択的に、ウイルス増殖に必要であり得るトリプシンまたは他のプロテアーゼなどのタンパク質を含むことができる。
【0057】
インフルエンザウイルス複製を支持する細胞株を、ウイルス複製中に、好ましくは、37℃未満(参考文献53)(例えば、30〜36℃、または約30℃、31℃、32℃、33℃、34℃、35℃、36℃)で増殖させる。
【0058】
培養培地中でインフルエンザウイルスを増殖する方法は、一般に、増殖させるべき株の接種材料を細胞培養物に接種する工程、接種された細胞をウイルス増殖に望ましい期間(例えば、ウイルス力価および抗原発現によって決定された期間など(例えば、接種から24時間後と168時間後との間))培養する工程、および増殖したウイルスを回収する工程を含む。培養細胞に、1:500〜1:1、好ましくは1:100〜1:5、より好ましくは1:50〜1:10のウイルス(PFUまたはTCID50によって測定)対細胞比で接種する。ウイルスを細胞懸濁液に添加するか細胞の単層に適用し、ウイルスを、細胞上に少なくとも60分間、通常300分未満、好ましくは90分と240分との間にて25℃〜40℃、好ましくは28℃〜37℃で吸収させる。感染細胞培養物(例えば、単層)を、凍結融解または酵素作用によって除去して、回収した培養上清のウイルス含有量を増加させることができる。次いで、回収した流動物を、不活化するか凍結保存する。培養細胞を、約0.0001〜10、好ましくは0.002〜5、より好ましくは0.001〜2の感染多重度(「m.o.i.」)で感染させることができる。さらにより好ましくは、細胞を、約0.01のm.o.iで感染させる。感染細胞を、感染から30〜60分後に回収することができる。好ましくは、細胞を、感染から34〜48時間後に回収する。さらにより好ましくは、細胞を、感染から38〜40時間後に回収する。一般に、細胞培養物中にプロテアーゼ(典型的には、トリプシン)を添加してウイルスを放出させ、培養中の任意の適切な段階(例えば、接種前、接種と同時、または接種後)でプロテアーゼを添加することができる(参考文献53)。
【0059】
好ましい実施形態では、特にMDCK細胞では、細胞株をマスターワーキングセルバンクから40集団倍加レベルを超えて継代しない。
【0060】
ウイルス接種材料およびウイルス培養物は、好ましくは、単純ヘルペスウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、パラインフルエンザウイルス3、SARSコロナウイルス、アデノウイルス、ライノウイルス、レオウイルス、ポリオーマウイルス、ビルナウイルス、サーコウイルス、および/またはパルボウイルスを含まない(すなわち、これらを試験し、これらによる夾雑について負の結果が得られる)(参考文献54)。単純ヘルペスウイルスの不在が特に好ましい。
【0061】
宿主細胞DNA
ウイルスを細胞株錠で増殖させた場合、最終ワクチン中の残存細胞株DNAを最小にして、いかなるDNAの発癌活性も最小にすることが標準的な実務である。
【0062】
したがって、本発明によって調製されるワクチン組成物は、好ましくは、10ng未満(好ましくは1ng未満、より好ましくは100pg未満)の残存宿主細胞DNA/用量を含むが、微量の宿主細胞DNAが存在しても良い。
【0063】
15μgの赤血球凝集素あたり<10ng(例えば、<1ng、<100pg)の宿主細胞DNAを含むワクチン好ましく、0.25mlの体積あたり<10ng(例えば、<1ng、<100pg)の宿主細胞DNAを含むワクチンも同様である。50μgの赤血球凝集素あたり<10ng(例えば、<1ng、<100pg)の宿主細胞DNAを含むワクチンがより好ましく、0.5mlの体積あたり<10ng(例えば、<1ng、<100pg)の宿主細胞DNAを含むワクチンも同様である。
【0064】
任意の残存宿主細胞DNAの平均長が500bp未満(例えば、400bp未満、300bp未満、200bp未満、100bp未満など)であることが好ましい。
【0065】
夾雑DNAを、標準的な精製手順(例えば、クロマトグラフィなど)を使用してワクチン調製中に除去することができる。残存宿主細胞DNAの除去を、例えば、DNアーゼの使用によるヌクレアーゼ処置によって増強することができる。従来の宿主細胞DNA夾雑の減少方法を、参考文献55および56に開示し、これは、2工程処理(ウイルス増殖中に使用することができるDNアーゼ(例えば、ベンゾナーゼ)の最初の使用およびウイルス粒子破壊中に使用することができる陽イオン性界面活性剤(例えば、CTAB)の使用)を含む。β−プロピオラクトン処理による除去も使用することができる。
【0066】
残存宿主細胞DNAの測定は、現在、生物製剤の日常的な規制基準であり、当業者の通常の能力の範囲内に含まれる。DNA測定に使用されるアッセイは、典型的には、有効なアッセイであろう(参考文献57、58)。有効なアッセイのパフォーマンス特性を、数学的および定量的事項において記載することができ、その起こり得るエラーの起源が同定されている。アッセイは、一般に、精度、正確さ、特異性などの特徴について試験されている。一旦アッセイが(例えば、宿主細胞DNAの既知の標準量に対して)較正され、試験されると、定量的DNA測定を日常的に行うことができる。以下の3つの主なDNA定量技術を使用することができる:ハイブリッド形成方法(サザンブロットまたはあスロットブロット(参考文献59)など);免疫アッセイ法(Threshold(商標)システム(参考文献60)など);および定量的PCR(参考文献61)。これらの方法は、当業者に非常に良く知られているが、各方法の正確な特徴は、問題の宿主細胞(例えば、ハイブリッド形成用プローブの選択、増幅用プライマーおよび/またはプローブの選択)に依存し得る。Molecular Devices のThreshold(商標)システムは、ピコグラムレベルの総DNAのための定量的アッセイであり、生物医薬品中の夾雑DNAレベルのモニタリングのために使用されている(参考文献60)。典型的なアッセイは、ビオチン化ssDNA結合タンパク質と、ウレアーゼ抱合抗ssDNA抗体と、DNAとの間の反応複合体の非配列特異的形成を含む。全アッセイ成分は、製造者から利用可能なcomplete Total DNA Assay Kit中に含まれる。種々の製造者は、残存宿主細胞DNAの検出のための定量的PCRアッセイ(例えば、AppTec(商標)Laboratory Services、BioReliance(商標)、Althea Technologiesなど)を提供している。ヒトウイルスワクチンの宿主細胞DNA夾雑を測定するための化学発光ハイブリッド形成アッセイおよび総DNA Threshold(商標)システムの比較を、参考文献62に見出すことができる。
【0067】
薬学的組成物
本発明の組成物は、薬学的に許容可能である。組成物は、抗原に加えて成分を含む。例えば、組成物は、典型的には、1つまたは複数の薬学的キャリアおよび/または賦形剤を含む。下記のように、アジュバントも含むことができる。かかる成分の徹底的な考察は、参考文献63で利用可能である。
【0068】
組成物は、一般に、水性形態であろう。
【0069】
組成物は、チオメルサールまたは2−フェノキシエタノールなどの防腐剤を含むことができる。しかし、ワクチンは、水銀材料を実質的に含まない(すなわち、5μg/ml未満)(例えば、無チオメルサール)ことが好ましい(参考文献29、64)。水銀を含まないワクチンがより好ましい。無防腐剤ワクチンが特に好ましい。水銀化合物の代わりにコハク酸α−トコフェロールを含めることができる(参考文献29)。
【0070】
毒性を調節するために、ナトリム塩などの生理学的塩を含むことが好ましい。塩化ナトリウム(NaCl)が好ましく、1mg/mlと20mg/mlとの間で存在し得る。存在することができる他の塩には、塩化カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸ジナトリウム2水和物、塩化マグネシウム、塩化カルシウムなどが含まれる。
【0071】
組成物は、一般に、200mOsm/kgと400mOsm/kgとの間、好ましくは240〜360mOsm/kgの浸透圧を有するであろう。より好ましくは、290〜310mOsm/kgの範囲内であろう。浸透圧は、ワクチン接種に起因する疼痛に影響を及ぼさないと以前に報告されているが(参考文献65)、それでもなおこの範囲の浸透圧を維持することが好ましい。
【0072】
組成物は、1つまたは複数の緩衝液を含むことができる。典型的な緩衝液には、Tris緩衝液;ホウ酸緩衝液;コハク酸緩衝液;ヒスチジン緩衝液(特に、水酸化アルミニウムアジュバントを含む);またはクエン酸緩衝液が含まれる。緩衝液は、典型的には、5〜20mMの範囲で含まれるであろう。
【0073】
組成物のpHは、一般に、5.0と8.1との間、より典型的には6.0と8.0との間(例えば、6.5と7.5との間または7.0と7.8との間)であろう。したがって、本発明の過程は、パッケージング前にバルクワクチンのpHを調整する工程を含むことができる。
【0074】
組成物は、好ましくは無菌である。組成物は、好ましくは、無発熱物質である(例えば、<1EU(内毒素単位、標準測定値)/用量、好ましくは<0.1EU/用量を含む)。組成物は、好ましくは、グルテンを含まない。
【0075】
本発明の組成物は、界面活性剤(例えば、特に、スプリットまたは表面抗原ワクチンのためのポリオキシエチレンソルビタンエステル界面活性剤(「Tween」として公知)、オクトキシノール(オクトキシノール−9(TritonX−100)またはt−オクチルフェノキシポリエトキシエタノールなど)、臭化セチルトリメチルアンモニウム(「CTAB」)、またはデオキシコール酸ナトリウムなど)を含むことができる。界面活性剤は、微量でのみ存在することができる。したがって、ワクチンは、オクトキシノール−10およびポリソルベート80をそれぞれ1mg/ml未満含むことができる。微量の他の残存成分は、抗生物質(例えば、ネオマイシン、カナマイシン、ポリミキシンB)であり得る。
【0076】
組成物は、単回免疫化のための物質を含むことができか、複数回免疫化のための物質(すなわち、「複数回投与」キット)を含むことができる。複数回投与の処理で防腐剤を含むことが好ましい。複数回投与組成物中に防腐剤を含める(または付加する)代わりに、組成物を、物質の除去のための無菌アダプターを有する容器に含めることができる。
【0077】
インフルエンザワクチンを、典型的には、約0.5mlの投薬体積で投与するが、半分の用量(すなわち、0.25ml)を小児に投与することができる。
【0078】
組成物およびキットを、好ましくは、2℃と8℃との間で保存する。これらは凍結すべきではない。これらは、理想的には、直射日光を遮断すべきである。
【0079】
アジュバント
本発明の組成物は、有利には、アジュバントを含むことができる。アジュバントは、組成物を投与する患者で誘発される免疫応答(体液性および/または細胞性)を増強するように機能することができる。インフルエンザワクチンとのアジュバントの使用は以前に記載されている。参考文献66および67では、水酸化アルミニウムを使用し、参考文献68では、水酸化アルミニウムとリン酸アルミニウムとの混合物を使用していた。参考文献69は、アルミニウム塩アジュバントの使用も記載していた。Chiron Vaccines のFLUAD(商標)は、水中油型乳濁液を含む。
【0080】
本発明と共に使用することができるアジュバントには、以下が含まれるが、これらに限定されない。
【0081】
・ミネラル含有組成物(カルシウム塩およびアルミニウム塩(またはその混合物)が含まれる)。カルシウム塩には、リン酸カルシウム(例えば、参考文献70に開示の「CAP」粒子)が含まれる。アルミニウム塩には、水酸化物、リン酸塩、硫酸塩などが含まれ、この塩は任意の適切な形態(例えば、ゲル、血漿、無定形など)を取る。これらの塩への吸着が好ましい。ミネラル含有組成物を、金属塩の粒子として処方することもできる(71)。アルミニウム塩アジュバントを、以下により詳細に記載する。
【0082】
・水中油型乳濁液(より詳細には以下を参照のこと)。
【0083】
・サポニン(参考文献97の第22章)。サポニンは、広範な植物種の樹皮、葉、幹、根、および花で見出されるステロールグルコシドおよびトリテルペノイドグリコシドの異種群である。シャボンノキの樹皮由来のサポニンは、アジュバントとして広範に研究されている。スミラックス・オルナタ(Smilax ornata)(サルサプリラ)、ジブソフィラ・パニクラタ(Gypsophilla paniculata)(シュッコンカスミソウ)、およびサポナリア・オフィシアナリス(Saponaria officianalis)(サボンソウ)由来のサポニンを購入することもできる。サポニンアジュバント処方物には、精製処方物(QS21など)および液体処方物(ISCOMなど)が含まれる。QS21は、Stimulon(商標)として販売されている。サポニン組成物は、HPLCおよびRP−HPLCで精製されている。これら3つの技術を使用して、特定の精製画分が同定されている(QS7、QS17、QS18、QS21、QH−A、QH−B、およびQH−Cが含まれる)。好ましくは、サポニンはQS21である。QS21の生成方法は、参考文献72に開示されている。サポニン処方物はまた、コレステロールなどのステロールを含むことができる(参考文献73)。サポニンおよびコレステロールの組成物を使用して、免疫刺激複合体(ISCOM)と呼ばれる固有の粒子を形成することができる(参考文献97の第23章)。ISCOMには、典型的には、ホスファチジルエタノールアミンまたはホスファチジルコリンなどのリン脂質も含まれる。任意の公知のサポニンを、ISCOM中で使用することができる。好ましくは、ISCOMは、1つまたは複数のQuilA、QHA、およびQHCを含む。ISCOMは、参考文献73〜75にさらに記載されている。任意選択的に、ISCOMは、さらなる界面活性剤を欠くことができる(参考文献76)。サポニンに基づくアジュバント開発の概説を、参考文献77および78に見出すことができる。
【0084】
・脂肪性アジュバント(より詳細には以下を参照のこと)。
【0085】
・細菌ADP−リボシル化毒素(例えば、大腸菌熱不安定性エンテロトキシン「LT」、コレラ毒素「CT」、または百日咳毒素「PT」)およびその解毒誘導体(LT−K63およびLT−R72として公知の変異毒素など)(参考文献79)。粘膜アジュバントとしての解毒ADP−リボシル化毒素の使用は、参考文献80に記載されており、非経口アジュバントは参考文献81に記載されている。
【0086】
・生体接着剤および粘膜接着剤(エステル化ヒアルロン酸ミクロスフィア(参考文献82)およびキトサンならびにその誘導体(参考文献83)。
【0087】
・サイトカイン誘導薬(より詳細には以下を参照のこと)。
【0088】
・生分解性および非毒性の材料(例えば、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルソエステル、ポリ酸無水物、ポリカプロラクトンなどであるが、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)が好ましい)から形成され、任意選択的に、負電荷の表面(例えば、SDSを有する)または正電荷の表面(例えば、CTABなどの陽イオン性界面活性剤を有する)を有するように処理された微粒子(すなわち、直径約100nm〜約150μm、より好ましくは直径約200nm〜約30μm、または直径約500nm〜約10μmの粒子)。
【0089】
・リポソーム(参考文献97の第13章および第14章)。アジュバントとしての使用に適切なリポソーム処方物の例を、参考文献84〜86に記載する。
【0090】
・ポリオキシエチレンエーテルおよびポリオキシエチレンエステル(参考文献87)。かかる処方物には、さらに、オクトキシノール(参考文献88)と組み合わせたポリオキシエチレンソルビタンエステル界面活性剤およびオクトキシノールなどの少なくとも1つのさらなる非イオン性界面活性剤と組み合わせたポリオキシエチレンアルキルエーテルまたはエステル界面活性剤(参考文献89)が含まれる。好ましいポリオキシエチレンエーテルは、以下の群から選択される:ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル(ラウレス9)、ポリオキシエチレン−9−ステオリルエーテル、ポリオキシエチレン−8−ステオリルエーテル、ポリオキシエチレン−4−ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン−35−ラウリルエーテル、およびポリオキシエチレン−23−ラウリルエーテル。
【0091】
・ムラミルペプチド(N−アセチルムラミル−L−トレオニル−D−イソグルタミン(「thr−MDP」)、N−アセチル−ノルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン(ノル−MDP)、N−アセチルグルコサミル−N−アセチルムラミル−L−Al−D−イソグル−L−Ala−ジパルミトキシプロピルアミド(「DTP−DPP」または「Theramide(商標))、N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2’ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミン(「MTP−PE」)など)。
【0092】
・第2のグラム陰性由来のリポ糖調製物と組み合わせた第1のグラム陰性細菌から調製した外膜タンパク質プロテオソーム調製物。ここで、外膜タンパク質プロテオソームおよびリポ糖調製物は安定な非共有結合性アジュバント複合体を形成する。かかる複合体には、「IVX−908」(髄膜炎菌外膜およびリポ多糖から構成される複合体)が含まれる。これらは、インフルエンザワクチンのアジュバントとして使用されている(参考文献90)。
【0093】
・メチルイノシン5’−モノリン酸(「MIMP」)(参考文献91)。
【0094】
・ポリヒドロキシル化ピロリジジン化合物(参考文献92)(以下の式:
【0095】
【化1】

(式中、Rは、水素、直鎖または分岐鎖、非置換または置換、飽和または不飽和のアシル基、アルキル基(例えば、シクロアルキル基)、アルケニル基、アルキニル基、およびアリール基を含む群から選択される)を有する化合物などまたはその薬学的に許容可能な塩もしくは誘導体。例には、カスアリン、カスアリン−6−α−D−グルコピラノース、3−エピ−カスアリン、7−エピ−カスアリン、3,7−ジエピ−カスアリンなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0096】
・ガンマイヌリン(参考文献93)またはその誘導体(アルガムリンなど)。
【0097】
これらおよび他のアジュバント活性物質は、参考文献97および98により詳細に考察されている。
【0098】
組成物は、2つ以上のアジュバントを含むことができる。例えば、組成物は、水中油型乳濁液およびサイトカイン誘導薬の両方を有利に含むことができる。この組成物は、インフルエンザワクチンによって誘発されたサイトカイン応答(インターフェロンγ応答など)を改良するからであり、その改良は、乳濁液または薬剤のいずれかを単独で使用した場合に認められる改良よりもはるかに高い。
【0099】
組成物中の抗原およびアジュバントは、典型的には、混合物であろう。
【0100】
水中油型乳濁液アジュバント
水中油型乳濁液は、インフルエンザウイルスワクチンの補助での使用に特に有用であることが見出されている。種々のかかる乳濁液が公知であり、乳濁液は、典型的には、少なくとも1つの油および少なくとも1つの界面活性剤を含み、油および界面活性剤は、生分解性(代謝性)および生体適合性を示す。乳濁液中の油滴は、一般に、直径5μm未満であり、さらにサブミクロンの直径を有することができ、マイクロフルイダイザーを使用してこれらの小さなサイズにし、安定な乳濁液を得る。濾過滅菌に供することができるので、220nm未満のサイズの液滴が好ましい。
【0101】
本発明を、動物(魚類など)または植物起源の油などの油と共に使用することができる。植物油の供給源には、堅果、種子、および穀物が含まれる。例としてラッカセイ油、ダイズ油、ココナッツ油、およびオリーブ油が含まれ、最も一般的に利用されるのは堅果油である。例えば、ホホバ豆から得られるホホバ油を使用することができる。種子油には、ベニバナ油、綿実油、ヒマワリ種子油、およびゴマ種子油などが含まれる。穀物群では、トウモロコシ油が最も容易に利用可能であるが、他の穀類の油(コムギ、カラスムギ、ライムギ、コメ、テフ、ライ小麦など)も使用することができる。グリセロールおよび1,2−プロパンジオールの6〜10炭素脂肪酸エステルは、種子油中に天然に存在しないが、これを、堅果油および種子油から出発する適切な材料の加水分解、分離、およびエステル化によって調製することができる。哺乳動物の乳由来の脂肪および油は代謝性を示す。したがって、これを本発明の実務で使用することができる。動物供給源から純粋な油を得るのに必要な分離手順、精製手順、ケン化手順、および他の手段は、当該分野で周知である。ほとんどの魚類は、容易に回収することができる代謝性油を含む。例えば、タラ肝油、サメ肝油、および鯨蝋などの鯨油は、本明細書中で使用することができるいくつかの魚油の例である。多数の分岐鎖油を、5−炭素イソプレン単位中で生化学的に合成し、これを一般にテルペノイドという。サメ肝油は、本発明で特に好ましいスクアレン(2,6,10,15,19,23−ヘキサメチル−2,6,10,14,18,22−テトラコサヘキサエン)として公知の分岐不飽和テルペノイドを含む。スクアラン(スクアレンの飽和アナログ)も好ましい油である。魚油(スクアレンおよびスクアランが含まれる)は、販売者から容易に利用可能であるか、当該分野で公知の方法によって得ることができる。他の好ましい油は、トコフェロールである(以下を参照のこと)。油の混合物を使用することができる。
【0102】
界面活性剤を、その「HLB」(親水性物質/親油性物質バランス)によって分類することができる。本発明の好ましい界面活性剤は、少なくとも10、好ましくは少なくとも15、より好ましくは少なくとも16のHLBを有する。本発明を、以下の界面活性剤と共に使用することができる:ポリオキシエチレンソルビタンエステル界面活性剤(一般にTweenと呼ばれる)(特に、ポリソルベート20およびポリソルベート80);エチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)、および/またはブチレンオキシド(BO)のコポリマー(DOWFAX(商標)で販売、直鎖EO/POブロックコポリマーなど);エトキシ(オキシ−1,2−エタンジイル)基の反復数が変化し得るオクトキシノール(オクトキシノール−9(TritonX−100、すなわちt−オクチルフェノキシポリエトキシエタノール)が特に興味深い);(オクチルフェノキシ)ポリエトキシエタノール(IGEPAL CA−630/NP−40);リン脂質(ホスファチジルコリン(レシチン)など);ノニルフェノールエトキシラート(Tergitol(商標)NPシリーズなど);ラウリル、セチル、ステアリル、およびオレイルアルコール(Brij界面活性剤として公知)由来のポリオキシエチレン脂肪エーテル(トリエチレングリコールモノラウリルエーテル(Brij 30)など);およびソルビタンエステル(一般に、SPANとして公知)(トリオレイン酸ソルビタン(Span85)およびモノラウリン酸ソルビタンなど)が含まれるが、これらに限定されない。非イオン性界面活性剤が好ましい。乳濁液中に含めるのに好ましい界面活性剤は、Tween80(モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン)、Span85(トリオレイン酸ソルビタン)、レシチン、およびTritonX−100である。
【0103】
界面活性剤の混合物を使用することができる(例えば、Tween80/Span85混合物)。ポリオキシエチレンソルビタンエステル(モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(Tween80)など)およびオクトキシノール(t−オクチルフェノキシポリエトキシエタノール(TritonX−100)など)も適切である。別の有用な組み合わせは、ラウレス9+ポリオキシエチレンソルビタンエステルおよび/またはオクトキシノールを含む。
【0104】
界面活性剤の好ましい量(重量%)は以下である:ポリオキシエチレンソルビタンエステル(Tween80など)0.01〜1%、特に約0.1%;オクチル−またはノニルフェノキシポリオキシエタノール(TritonX−100、またはTritonシリーズ中の他の界面活性剤)0.001〜0.1%、特に0.005〜0.02%;ポリオキシエチレンエーテル(ラウレス9など)0.1〜20%、好ましくは0.1〜10%、特に0.1〜1%または約0.5%。
【0105】
本発明で有用な特定の水中油型乳濁液アジュバントには、以下が含まれるが、これらに限定されない。
【0106】
・スクアレン、Tween80、およびSpan85のサブミクロン乳濁液。乳濁液の組成物は、体積で、約5%スクアレン、約0.5%ポリソルベート80、および約0.5%Span85であり得る。重量では、これらの比は、4.3%スクアレン、0.5%ポリソルベート80、および0.48%Span85になる。このアジュバントは、参考文献97の第10章および参考文献98の第12章により詳細に記載のように、「MF59」(参考文献94〜96)として公知である。MF59乳濁液は、有利には、クエン酸イオンを含む(例えば、10mMクエン酸ナトリウム緩衝液)。
【0107】
・スクアレン、トコフェロール、およびTween80の乳濁液。乳濁液は、リン酸緩衝化生理食塩水を含むことができる。乳濁液は、Span85(例えば、1%)および/またはレシチンも含むことができる。これらの乳濁液は、2〜10%スクアレン、2〜10%トコフェロール、および0.3〜3%Tween80を有することができ、スクアレン:トコフェロール比は、好ましくは1以下であり、これにより、より安定な乳濁液が得られる。スクアレンおよびTween80は、約5:2の体積比で存在することができる。1つのかかる乳濁液を、PBS中でTween80を溶解して2%溶液を得て、90mlのこの溶液を(5gのDL−α−トコフェロールおよび5mlスクアレン)の混合物と混合し、混合物を顕微溶液化することによって作製することができる。得られた乳濁液は、例えば、平均直径が100nmと250nmとの間、好ましくは約180nmのサブミクロン油液滴を有することができる。
【0108】
・スクアレン、トコフェロール、およびTriton界面活性剤(例えば、TritonX−100)の乳濁液。乳濁液は、3d−MPLも含むことができる(下記を参照のこと)。乳濁液は、リン酸緩衝液を含むことができる。
【0109】
・ポリソルベート(例えば、ポリソルベート80)、Triton界面活性剤(例えば、TritonX−100)、およびトコフェロール(例えば、コハク酸α−トコフェロール)を含む乳濁液。乳濁液は、質量比約75:11:10(例えば、750μg/mlポリソルベート80、110μg/mlTritonX−100、および100μg/mlコハク酸α−トコフェロール)のこれら3つの成分を含むことができ、これらの濃度は、抗原由来のこれらの成分が任意に寄与すべきである。乳濁液は、スクアレンも含むことができる。乳濁液は、3d−MPLも含むことができる(下記を参照のこと)。水相は、リン酸緩衝液を含むことができる。
【0110】
・スクアラン、ポリソルベート80、およびポロクサマー401(「プルロニック(商標)L121」)の乳濁液。乳濁液を、リン酸緩衝化生理食塩水(pH7.4)中に処方することができる。この乳濁液は、ムラミルジペプチドのための有用な送達ビヒクルであり、「SAF−1」アジュバント(参考文献99)(0.05〜1%Thr−MDP、5%スクアラン、2.5%プルロニックL121、および0.2%ポリソルベート80)中でトレオニル−MDPと共に使用されている。「AF」アジュバント(参考文献100)(5%スクアラン、1.25%プルロニックL121、および0.2%ポリソルベート80)などの場合、これを、Thr−MDPを使用せずに使用することもできる。顕微溶液化が好ましい。
【0111】
・スクアレン、水性溶媒、ポリオキシエチレンアルキルエーテル親水性非イオン性界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレン(12)セトステアリルエーテル)、および疎水性非イオン性界面活性剤(例えば、ソルビタンエステルまたはマンニドエステル(モノオレイン酸ソルビタンまたは「Span80」など))を含む乳濁液。乳濁液は、好ましくは熱可逆性を示し、そして/または少なくとも90%の200nm未満のサイズの油滴(体積)を有する(参考文献101)。乳濁液は、1つまたは複数の以下も含むことができる:アルジトール;凍結保護剤(例えば、ドデシルマルトシドおよび/またはスクロースなどの糖);および/またはアルキルポリグリコシド。かかる乳濁液を凍結乾燥することができる。
【0112】
・スクアレン、ポロクサマー105、およびAbil−Careの乳濁液(参考文献102)。アジュバント化ワクチン中のこれらの成分の最終濃度(重量)は、5%スクアレン、4%ポロクサマー105(プルロニックポリオール)、および2%Abil−Care85(Bis−PEG/PPG−16/16 PEG/PPG−16/16 ジメチコン;カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド)である。
【0113】
・0.5〜50%の油、0.1〜10%のリン脂質、および0.05〜5%の非イオン性界面活性剤を有する乳濁液。参考文献103に記載のように、好ましいリン脂質成分は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、スフィンゴミエリン、およびカルジオリピンである。サブミクロン液体サイズが有利である。
【0114】
・非代謝性油(軽鉱物油など)および少なくとも1つの界面活性剤(レシチン、Tween80、またはSpan80など)のサブミクロン水中油型乳濁液。QuilAサポニン、コレステロール、サポニン−親油性物質抱合体(グルクロン酸のカルボキシル基を介したデスアシルサポニンへの脂肪族アミノの付加によって精製された、参考文献104に記載のGPI−0100など)、ジメチルジオクダデシルアンモニウムブロミド、および/またはN,N−ジオクタデシル−N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)プロパンジアミンなどの添加物を含めることができる。
【0115】
・サポニン(例えば、QuilAまたはQS21)およびステロール(例えば、コレステロール)をらせん状ミセルとして会合させた乳濁液(参考文献105)。
【0116】
・鉱物油、非イオン性親油性エトキシル化脂肪アルコール、および非イオン性親水性界面活性剤(例えば、エトキシル化脂肪アルコールおよび/またはポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー)を含む乳濁液(参考文献106)。
【0117】
・鉱物油、非イオン性親水性エトキシル化脂肪アルコール、および非イオン性親油性界面活性剤(例えば、エトキシル化脂肪アルコールおよび/またはポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー)を含む乳濁液(参考文献106)。
【0118】
乳濁液を、送達時に抗原と即座に混合することができる。したがって、アジュバントおよび抗原を、使用時の最終処方に備えてパッケージングまたは割り当てたワクチン中に個別に保持することができる。ワクチンが最終的に2つの液体の混合によって調製されるように、抗原は、一般に、水性形態であろう。混合のための2つの液体の体積比は変化し得るが(例えば、5:1と1:5との間)、一般に、約1:1である。
【0119】
抗原およびアジュバントを混合した後、赤血球凝集素抗原は、一般に、水溶液中に残存するであろうが、それ自体が油/水界面周辺に分布することができる。一般に、赤血球凝集素は、乳濁液の油相にほとんど侵入しないであろう。
【0120】
組成物がトコフェロールを含む場合、任意のα、β、γ、δ、ε、またはζトコフェロールを使用することができるが、α−トコフェロールが好ましい。トコフェロールは、いくつかの形態を取ることができる(例えば、異なる塩および/または異性体)。塩には、有機塩(コハク酸塩、酢酸塩、ニコチン酸塩など)が含まれる。D−α−トコフェロールおよびDL−α−トコフェロールの両方を使用することができる。トコフェロールを、高齢患者(例えば、60歳以上)で用いるワクチン中に含めることが有利である。なぜなら、ビタミンEは、この患者群における免疫応答に正の影響を及ぼすことが報告されているからである(参考文献107)。トコフェロールはまた、乳濁液の安定化を補助することができる抗酸化性を有する(参考文献108)。好ましいα−トコフェロールはDL−α−トコフェロールであり、このトコフェロールの好ましい塩はコハク酸塩である。コハク酸塩は、in vivoでTNF関連リガンドと協力することが見出されている。さらに、コハク酸α−トコフェロールは、インフルエンザワクチンと適合し、水銀化合物の代替物として有用な防腐剤であることが公知である(参考文献29)。
【0121】
サイトカイン誘導薬
本発明の組成物中に含めるためのサイトカイン誘導薬は、患者に投与した場合、免疫系を誘発してサイトカイン(インターフェロンおよびインターロイキンが含まれる)を放出することができる。サイトカイン応答は、インフルエンザ感染に対する宿主防御の初期および重要な段階に関与することが公知である(参考文献109)。好ましい薬剤は、1つまたは複数の以下の放出を誘発することができる:インターフェロン−γ;インターロイキン−1;インターロイキン−2;インターロイキン−12;TNF−α;TNF−β;およびGM−CSF。好ましい薬剤は、Th1型免疫応答に関連するサイトカイン(例えば、インターフェロン−γ、TNF−α、インターロイキン−2)の放出を誘発する。インターフェロン−γおよびインターロイキン−2の両方の刺激が好ましい。
【0122】
したがって、本発明の組成物の投与の結果として、患者は、インフルエンザ抗原で刺激された場合、抗原特異的様式で所望のサイトカインを放出するT細胞を有するであろう。例えば、その血液から精製されたT細胞は、in vitroでインフルエンザウイルス赤血球凝集素に曝露した場合、γ−インターフェロンを放出するであろう。末梢血単核球(PBMC)におけるかかる応答の測定方法は当該分野で公知であり、ELISA、ELISPOT、フローサイトメトリー、およびリアルタイムPCRが含まれる。例えば、参考文献110は、破傷風トキソイドに対する抗原特異的T細胞性免疫応答、特にγ−インターフェロン応答をモニタリングする研究を報告しており、ELISPOTが抗原特異的TT誘導性応答を自発的応答と区別するための最も感度の高い方法であるが、フローサイトメトリーによる細胞質内サイトカイン検出が再刺激効果の検出に最も有効な方法であることを見出した。
【0123】
適切なサイトカイン誘導薬には、以下が含まれるが、これらに限定されない。
【0124】
・免疫刺激性オリゴヌクレオチド(CpGモチーフ(リン酸結合によってグアノシンと結合した非メチル化シトシンを含むジヌクレオチド配列)、二本鎖RNA、回文配列を含むオリゴヌクレオチド、またはポリ(dG)配列を含むオリゴヌクレオチドを含むものなど)。
【0125】
・3−O−脱アシル化モノホスホリル脂質A(「3dMPL」、「MPL(商標)」としても公知)(参考文献111〜114)。
【0126】
・イミダゾキノリン化合物(イミキモド(「R−837」)(参考文献115、116)、レシキモド(「R−848」)(参考文献117)、およびそのアナログなど)およびその塩(例えば、塩酸塩)。免疫刺激性イミダゾキノリンについてのさらなる詳細を、参考文献118〜122に見出すことができる。
【0127】
・チオセミカルバゾン化合物(参考文献123に開示のものなど)。活性化合物の処方、製造、およびスクリーニング方法も、参考文献123に記載されている。チオセミカルバゾンは、TNF−αなどのサイトカインの産生のためのヒト末梢血単核球の刺激で特に有効である。
【0128】
・トリプタントリン化合物(参考文献124に開示のものなど)。活性化合物の処方、製造、およびスクリーニング方法も、参考文献124に記載されている。チオセミカルバゾンは、TNF−αなどのサイトカインの産生のためのヒト末梢血単核球の刺激で特に有効である。
【0129】
・以下などのヌクレオシドアナログ:(a)イサトラビン(ANA−245;7−チア−8−オキソグアノシン):
【0130】
【化2】

およびそのプロドラッグ;(b)ANA975;(c)ANA−025−1;(d)ANA380;(e)参考文献125〜127に開示の化合物;(f)式:
【0131】
【化3】

(式中、
およびRは、それぞれ独立して、H、ハロ、−NR、−OH、C1〜6アルコキシ、置換C1〜6アルコキシ、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、C6〜10アリール、置換C6〜10アリール、C1〜6アルキル、または置換C1〜6アルキルであり、
は存在しないか、H、C1〜6アルキル、置換C1〜6アルキル、C6〜10アリール、置換C6〜10アリール、ヘテロシクリル、または置換ヘテロシクリルであり、
およびRは、それぞれ独立して、H、ハロ、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、C(O)−R、C1〜6アルキル、置換C1〜6アルキルであるか、互いに結合してR4〜5のような5員環を形成し、
【0132】
【化4−1】

ここで、
【0133】
【化4−2】

によって示した結合で結合し、
およびXは、それぞれ独立して、N、C、O、またはSであり、
は、H、ハロ、−OH、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニル、−OH、−NR、−(CH−O−R、−O−(C1〜6アルキル)、−S(O)pR、または−C(O)−Rであり、
はH、C1〜6アルキル、置換C1〜6アルキル、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、またはR9aであり、
9aは、
【0134】
【化5−1】

であり、
ここで、
【0135】
【化5−2】

によって示した結合で結合し、
10およびR11は、それぞれ独立して、H、ハロ、C1〜6アルコキシ、置換C1〜6アルコキシ、−NR、または−OHであり、
各RおよびRは、独立して、H、C1〜6アルキル、置換C1〜6アルキル、−C(O)R、C6〜10アリールであり、
各Rは、独立して、H、ホスファート、ジホスファート、トリホスファート、C1〜6アルキル、または置換C1〜6アルキルであり、
各Rは、独立して、H、ハロ、C1〜6アルキル、置換C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ、置換C1〜6アルコキシ、−NH、−NH(C1〜6アルキル)、−NH(置換C1〜6アルキル)、−N(C1〜6アルキル)、−N(置換C1〜6アルキル)、C6〜10アリール、またはヘテロシクリルであり、
各Rは、独立して、H、C1〜6アルキル、置換C1〜6アルキル、C6〜10アリール、置換C6〜10アリール、ヘテロシクリル、または置換ヘテロシクリルであり、
各Rは、独立して、H、C1〜6アルキル、置換C1〜6アルキル、−C(O)R、ホスファート、ジホスファート、またはトリホスファートであり、
各nは、独立して、0、1、2、または3であり、
各pは、独立して、0、1、または2である)を有する化合物、または(g)(a)〜(f)のいずれかの薬学的に許容可能な塩、(a)〜(f)のいずれかの互変異性体、もしくは互変異性体の薬学的に許容可能な塩。
【0136】
・ロキソリビン(7−アリル−8−オキソグアノシン)(参考文献128)。
【0137】
・参考文献129に開示の化合物(アシルピペラジン化合物、インドールジオン化合物、テトラヒドライソキノリン(THIQ)化合物、ベンゾシクロジオン化合物、アミノアザビニル化合物、アミノベンズイミダゾールキノリノン(ABIQ)化合物(参考文献130、131)、ヒドラフタルアミド化合物、ベンゾフェノン化合物、イソキサゾール化合物、ステロール化合物、キナジリノン化合物、ピロール化合物(参考文献132)、アントラキノン化合物、キノキサリン化合物、トリアジン化合物、ピラザロピリミジン化合物、およびベンザゾール化合物(参考文献133)が含まれる)。
【0138】
・ポリオキシドニウムポリマー(参考文献134、135)または他のN酸化ポリエチレン−ピペラジン誘導体。
【0139】
・参考文献136に開示の化合物。
【0140】
・アミノアルキルグルコサミニドリン酸誘導体(RC−529など)(参考文献137、138)。
【0141】
・ホスファゼン(例えば、参考文献139および140に記載のポリ[ジ(カルボキシラトフェノキシ)ホスファゼン](「PCPP」)など)。
【0142】
・CD1dリガンド(α−グリコシルセラミド(参考文献141〜148)(例えば、α−ガラクトシルセラミド)、フィトスフィンゴシン含有α−グリコシルセラミド、OCH、KRN7000[(2S,3S,4R)−1−O−(α−D−ガラクトピラノシル)−2−(N−ヘキサコサノイルアミノ)−1,3,4−オクタデカントリオール]、CRONY−101、3’’−O−スルホ−ガラクトシルセラミドなど)。
【0143】
・以下などの小分子免疫賦活薬(SMIP):
N2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン
N2,N2−ジメチル−1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン
N2−エチル−N2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン
N2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−N2−プロピル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン
1−(2−メチルプロピル)−N2−プロピル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン
N2−ブチル−1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン
N2−ブチル−N2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン
N2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−N2−ペンチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン
N2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−N2−プロプ−2−エニル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン
1−(2−メチルプロピル)−2−[(フェニルメチル)チオ]−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン
1−(2−メチルプロピル)−2−(プロピルチオ)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン
2−[[4−アミノ−1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2−イル](メチル)アミノ]エタノール
2−[[4−アミノ−1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2−イル](メチル)アミノ]酢酸エチル
4−アミノ−1−(2−メチルプロピル)−1,3−ジヒドロ−2H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2−オン
N2−ブチル−1−(2−メチルプロピル)−N4,N4−ビス(フェニルメチル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン
N2−ブチル−N2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−N4,N4−ビス(フェニルメチル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン
N2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−N4,N4−ビス(フェニルメチル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン
N2,N2−ジメチル−1−(2−メチルプロピル)−N4,N4−ビス(フェニルメチル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン
1−{4−アミノ−2−[メチル(プロピル)アミノ]−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−イル}−2−メチルプロパン−2−オール
1−[4−アミノ−2−(プロピルアミノ)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−イル]−2−メチルプロパン−2−オール
N4,N4−ジベンジル−1−(2−メトキシ−2−メチルプロピル)−N2−プロピル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン。
【0144】
本発明で使用されるサイトカイン誘導薬は、Toll様受容体(TLR)のモジュレーターおよび/またはアゴニストであり得る。例えば、これらは、1つまたは複数のヒトTLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR7、TLR8、および/またはTLR9タンパク質のアゴニストであり得る。好ましい薬剤は、TLR7(例えば、イミダゾキノリン)および/またはTLR9(例えば、CpGオリゴヌクレオチド)のアゴニストである。これらの薬剤は、先天免疫経路の活性化に有用である。
【0145】
サイトカイン誘導薬を、その生成中の種々の段階で組成物に添加することができる。例えば、これは抗原組成物の範囲内であり得、この混合物を水中油型乳濁液に添加することができる。別の方法として、これは水中油型乳濁液の範囲内であり得、この場合、薬剤を乳化前に乳濁液成分に添加するか、乳化後に乳濁液に添加することができる。同様に、薬剤を、乳濁液滴内にコアセルベート化することができる。最終組成物内のサイトカイン誘導薬の位置および分布は、親水性/親油性に依存するであろう。例えば、薬剤を、水相中、油相中、および/または油−水界面に配置することができる。
【0146】
サイトカイン誘導薬を、個別の薬剤(抗原(例えば、CRM197)など)に抱合することができる。小分子抱合技術の一般的な概説は、参考文献149に記載されている。別の方法として、アジュバントを、疎水性またはイオン性の相互作用などによってさらなる薬剤と非共有結合することができる。
【0147】
2つの好ましいサイトカイン誘導薬は、(a)免疫刺激性オリゴヌクレオチドおよび(b)3dMPLである。免疫刺激性オリゴヌクレオチドには、ヌクレオチド修飾物/アナログ(ホスホロチオアート修飾物など)が含まれ得、二本鎖または(RNAを除く)一本鎖であり得る。参考文献150、151、および152は、可能なアナログ置換物(例えば、グアノシンの2’−デオキシ−7−デアザグアノシンとの置換)を開示する。CpGオリゴヌクレオチドのアジュバント効果は、参考文献153〜158にさらに考察されている。CpG配列は、TLR9(モチーフGTCGTTまたはTTCGTTなど)に指向することができる(参考文献159)。CpG配列は、Th1免疫応答の誘導体に特異的であり得るか(CpG−A ODN(オリゴデオキシヌクレオチド)など)、B細胞応答の誘導により特異的であり得る(CpG−B ODNなど)。CpG−AおよびCpG−B ODNは、参考文献160〜162に考察されている。好ましくは、CpGはCpG−A ODNである。好ましくは、CpGオリゴヌクレオチドを、5’末端が受容体認識のために接近可能なように構築する。任意選択的に2つのCpGオリゴヌクレオチド配列をその3’末端に結合して、「イムノマー(immunomer)」を形成することができる。例えば、参考文献159および163〜165を参照のこと。有用なCpGアジュバントはCpG7909であり、ProMune(商標)(Coley Pharmaceutical Group,Inc.)としても公知である。
【0148】
CpG配列使用の別の方法としてかそれに加えて、TpG配列を使用することができる(166)。これらのオリゴヌクレオチドは、非メチル化CpGモチーフを含まなくてよい。
【0149】
免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、ピリミジンリッチであり得る。例えば、これは、1つを超える連続チミジンヌクレオチドを含むことができ(例えば、参考文献166に開示のTTTT)、そして/または>25%チミジン(例えば、>35%、>40%、>50%、>60%、>80%など)を有するヌクレオチド組成物を有することができる。例えば、これは、1つを超える連続シトシンヌクレオチドを含むことができ(例えば、参考文献166に開示のCCCC)、そして/または>25% シトシン(例えば、>35%、>40%、>50%、>60%、>80%など)を有するヌクレオチド組成物を有することができる。これらのオリゴヌクレオチドは、非メチル化CpGモチーフを含まなくて良い。
【0150】
免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、典型的には、少なくとも20ヌクレオチドを含むであろう。これらは、100個未満のヌクレオチドを含むことができる。
【0151】
特に有用なアジュバントベースの免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、IC31(商標)として公知である(参考文献167)。したがって、本発明と共に使用されるアジュバントは、(i)少なくとも1つの(好ましくは複数の)CpIモチーフを含むオリゴヌクレオチド(例えば、15〜40ヌクレオチド)および(ii)少なくとも1つの(好ましくは複数の)Lys−Arg−Lysトリペプチド配列を含むポリカチオン性ポリマー(オリゴペプチド(例えば、5〜20アミノ酸)など)の混合物を含むことができる。オリゴヌクレオチドは、26量体配列5’−(IC)13−3’(配列番号1)を含むデオキシヌクレオチドであり得る。ポリカチオン性ポリマーは、11量体アミノ酸配列KLKLLLLLKLK(配列番号2)を含むペプチドであり得る。
【0152】
3dMPL(3−O−脱アシル化モノホスホリル脂質Aまたは3−O−デスアシル−4’モノホスホリル脂質Aとしても公知)は、モノホスホリル脂質A中の還元末端グルコサミンの3位が脱アシル化されたアジュバントである。3dMPLは、サルモネラ・ミネソタ(Salmonella minnesota)のヘプトースレス変異体から調製されており、脂質Aと化学的に類似しているが、酸不安定性ホスホリル基および塩基不安定性アシル基を欠く。これは、単球/マクロファージ系列の細胞を活性化し、いくつかのサイトカイン(IL−1、IL−12、TNF−α、およびGM−CSFが含まれる)の放出を刺激する(参考文献168も参照のこと)。3dMPLの調製は、参考文献169に最初に記載された。
【0153】
3dMPLは、そのアシル化によって変化する関連分子の混合物の形態を取ることができる(例えば、3、4、5、または6個のアシル鎖を有し、長さは異なっていても良い)。2つのグルコサミン(2−デオキシ−2−アミノグルコースとしても公知)単糖は、2位の炭素(すなわち、2位および2’位)でN−アシル化され、また、3’位にO−アシル化が存在する。炭素2に結合する基は、式−NH−CO−CH−CR1’を有する。炭素2’に結合する基は、式−NH−CO−CH−CR2’を有する。炭素3’に結合する基は、式−O−CO−CH−CR3’を有する。代表的な構造は以下である。
【0154】
【化6】

基、R基、およびR基は、それぞれ独立して、−(CH−CHである。値nは、好ましくは8と16との間、より好ましくは9と12との間であり、最も好ましくは10である。
【0155】
1’基、R2’基、およびR3’基は、それぞれ独立して、以下であり得る:(a)−H;(b)−OH;または(c)−O−CO−R(式中、Rは−Hまたは−(CH)m−CHのいずれかであり、値mは、好ましくは8と16との間、より好ましくは10、12、または14である)。2位では、mは好ましくは14である。2’位では、mは好ましくは10である。3’位では、mは好ましくは12である。したがって、R1’基、R2’基、およびR3’基は、好ましくは、ドデカン酸、テトラデカン酸、またはヘキサデカン酸由来の−O−アシル基である。
【0156】
1’、R2’、およびR3’の全てが−Hである場合、3dMPLはたった3つのアシル鎖を有する(2位、2’位、および3’位のそれぞれに1つ)。R1’、R2’、およびR3’のたった2つが−Hである場合、3dMPLは4つのアシル鎖を有することができる。R1’、R2’、およびR3’のたった1つが−Hである場合、3dMPLは5つのアシル鎖を有することができる。R1’、R2’、およびR3’がいずれも−Hでない場合、3dMPLは6つのアシル鎖を有することができる。本発明で使用される3dMPLアジュバントは、3〜6つのアシル鎖を有するこれらの形態の混合物であり得るが、特に、ヘキサアシル鎖形態が総3dMPLの少なくとも10重量%(例えば、≧20%、≧30%、≧40%、≧50%、またはそれ以上)を作製することを確実にするために、混合物中に6つのアシル鎖を有する3dMPLを含むことが好ましい。6アシル鎖を有する3dMPLは、最もアジュバント活性な形態であることが見出されている。
【0157】
したがって、本発明の組成物中に含めるのに最も好ましい3dMPL形態は、以下の式(IV)を有する。
【0158】
【化7】

3dMPLを混合物形態で使用する場合、本発明の組成物中の3dMPの量または濃度は、混合物中の組み合わせ3dMPL種という。
【0159】
水性条件では、3dMPLは、異なるサイズ(例えば、直径<150nmまたは>500nm)を有するミセル凝集体または粒子を形成することができる。これらのいずれかまたは両方を、本発明と共に使用することができ、より良好な粒子を、日常的なアッセイによって選択することができる。より小さな粒子(例えば、3dMPLの透明な水性懸濁液を得るのに十分に小さい)は、その優れた活性により、本発明の使用に好ましい(参考文献170)。好ましい粒子は、平均直径が220nm未満、より好ましくは200nm未満、150nm未満、または120nm未満であり、100nm未満の平均直径でさえ有することができる。しかし、ほとんどの場合、平均直径は、50nm未満ではないであろう。これらの粒子は、濾過滅菌に十分に適切な小ささである。粒子の直径を、平均粒子直径が明らかとなる日常的な動的光散乱技術によって評価することができる。粒子は直径xnmを有すると言われる場合、一般に、この平均付近の粒子が分布するが、少なくとも数値で50%(例えば、≧60%、≧70%、≧80%、≧90%、またはそれを超える)の粒子が、x±25%の範囲内の直径を有するであろう。
【0160】
3dMPLを、有利には、水中油型乳濁液と組み合わせて使用することができる。実質的に、全ての3dMPLが乳濁液の水相中に存在することができる。
【0161】
3dMPLを、単独か、1つまたは複数のさらなる化合物と組み合わせて使用することができる。例えば、QS21サポニン(参考文献171)(水中油型乳濁液中に含まれる(参考文献172))、免疫刺激性オリゴヌクレオチド、QS21および免疫刺激性オリゴヌクレオチドの両方、リン酸アルミニウム(参考文献173)、水酸化アルミニウム(参考文献174)、またはリン酸アルミニウムおよび水酸化アルミニウムの両方と組み合わせて3dMPLを使用することが公知である。
【0162】
脂肪アジュバント
本発明と共に使用することができる脂肪アジュバントには、上記の水中油型乳濁液が含まれ、例えば、以下も含まれる。例えば、:
・参考文献175に定義の式I、II、またはIIIの化合物またはその塩:
【0163】
【化8】

(「ER803058」、「ER803732」、「ER804053」、「ER804058」、「ER804059」、「ER804442」、「ER804680」、「ER804764」、「ER803022」、または「ER804057」(例えば、
【0164】
【化9】

【0165】
【化10】

など)
・OM−174などの大腸菌由来の脂質Aの誘導体(参考文献176および177に記載)。
【0166】
・カチオン性脂質および(通常、中性の)コリピド(co−lipid)の処方物(アミノプロピル−ジメチル−ミリストレイルオキシ−プロパンアンモニウムブロミド−ジフィタノイルホスファチジル−エタノールアミン(「Vaxfectin(商標)」)またはアミノプロピル−ジメチル−ビス−ドデシルオキシ−プロパンアンモニウムブロミド−ジオレオイルホスファチジル−エタノールアミン(「GAP−DLRIE:DOPE」)など)。(±)−N−(3−アミノプロピル)−N,N−ジメチル−2,3−ビス(シン−9−テトラデセネイルオキシ)−1−プロパンアミニウム塩を含む処方物が好ましい(参考文献178)。
【0167】
・3−O−脱アシル化モノホスホリル脂質A(上記を参照のこと)。
【0168】
・リン酸含有非環式骨格に結合した脂質を含む化合物(TLR4アンタゴニストE5564(179、180)など):
【0169】
【化11】

アルミニウム塩アジュバント
水酸化アルミニウムおよびリン酸アルミニウムとして公知のアジュバントを使用することができる。これらの名称は従来の名称であり、便宜のみを目的として使用されるが、存在する実際の化合物を正確に説明していない(例えば、参考文献97181の第9章を参照のこと)。本発明は、一般にアジュバントとして使用する任意の「水酸化物」または「リン酸塩」アジュバントを使用することができる。
【0170】
「水酸化アルミニウム」として公知のアジュバントは、典型的には、酸化水酸化アルミニウム塩であり、これは、通常少なくとも部分的に結晶である。式AlO(OH)によって示すことができる酸化水酸化アルミニウムを、他のアルミニウム化合物(水酸化アルミニウムAl(OH)など)と、赤外(IR)分光法、特に、1070cm−1の吸収バンドおよび3090〜3100cm−1の強いショルダーの存在によって区別することができる(参考文献97の第9章)。水酸化アルミニウムアジュバントの結晶化度は、半分の高さでの回折バンドの幅(WHH)を反映し、不十分な結晶の粒子は、より小さな結晶サイズに起因して広がったより大きなラインを示す。WHHの増加につれて表面積が増加し、より高いWHH値を有するアジュバントは、抗原吸着能力がより高いと考えられる。繊維性の形態(例えば、透過電子顕微鏡写真で認められる)は、水酸化アルミニウムアジュバントに典型的である。水酸化アルミニウムアジュバントのpIは、典型的には、約11である(すなわち、アジュバント自体が生理学的pHで正の表面電荷を有する)。水酸化アルミニウムアジュバントについてpH7.4で1mgのAl+++あたり1.8〜2.6mgの吸着能力が報告されている。
【0171】
「リン酸アルミニウム」として公知のアジュバントは、典型的には、水酸化リン酸アルミニウムであり、しばしば、少量の硫酸塩を含む(すなわち、水酸化リン酸アルミニウム硫酸塩)。これらを、沈殿によって得ることができ、沈殿時の反応条件および濃度は塩中の水酸基のリン酸基への置換の程度に影響を受ける。水酸化リン酸基は、一般に、PO/Alモル比が0.3と1.2との間である。水酸化リン酸基を、ヒドロキシル基の存在によってAlPOと厳密に区別することができる。例えば、3164cm−1(例えば、200℃に加熱時)のIRスペクトルバンドは、構造的ヒドロキシルの存在を示す(参考文献97の第9章)。
【0172】
リン酸アルミニウムアジュバントのPO/Al3+モル比は、一般に、0.3と1.2との間、好ましくは0.8と1.2との間、より好ましくは0.95±0.1であろう。リン酸アルミニウムは、一般に、特に水酸化リン酸塩について無定形であろう。典型的なアジュバントは、PO/Alモル比が0.84と0.92との間であり、0.6mg Al3+/mlを含む無定形の水酸化リン酸アルミニウムである。リン酸アルミニウムは、一般に、粒子であろう(例えば、透過電子顕微鏡写真で認められるように、プレート様形態)。任意の抗原吸着後の粒子の典型的な直径は、0.5〜20μm(例えば、約5〜10μm)である。リン酸アルミニウムアジュバントについて、pH7.4で1mgのAl+++あたり0.7〜1.5mgのタンパク質の吸着能力が報告されている。
【0173】
リン酸アルミニウムの電荷ゼロ点(point of zero charge)(PZC)は、水酸基のリン酸基への置換度に反比例し、この置換度は、沈殿による塩の調製のために使用される反応条件および反応物の濃度に応じて変化し得る。PZCはまた、溶液中の遊離リン酸イオン濃度の変化(より多くのリン酸基=より酸性のPZC)またはヒスチジン緩衝液(PZCをより塩基性にする)などの緩衝液の添加によって変化する。本発明で使用されるリン酸アルミニウムのPZCは、4.0と7.0との間、より好ましくは5.0と6.5との間(例えば、約5.7)であろう。
【0174】
本発明の組成物の調製のために使用されるアルミニウム塩の懸濁液は、緩衝液(例えば、リン酸緩衝液、ヒスチジン緩衝液、またはTris緩衝液)を含むことができるが、これは必ずしも必要とは限らない。懸濁液は、好ましくは、滅菌または発熱物質を含まない。懸濁液は、遊離水性リン酸イオンを含むことができ、例えば、1.0mMと20mMとの間、好ましくは5mMと15mMとの間、より好ましくは約10mMの濃度で存在することができる。懸濁液はまた、塩化ナトリウムを含むことができる。
【0175】
本発明は、水酸化アルミニウムおよびリン酸アルミニウムの混合物を使用することができる(参考文献68)。この場合、水酸化物よりもリン酸アルミニウムの方が多くてよい(例えば、少なくとも2:1の重量比(例えば、≧5:1、≧6:1、≧7:1、≧8:1、≧9:1など))。
【0176】
患者に投与するための組成物中のAl+++濃度は、好ましくは10mg/ml未満(例えば、≦5mg/ml、≦4mg/ml、≦3mg/ml、≦2mg/ml、≦1mg/mlなど)である。好ましい範囲は、0.3mg/mlと1mg/mlとの間である。最大で<0.85mg/用量が好ましい。
【0177】
1つまたは複数のアルミニウム塩アジュバントを含めるのと同様に、アジュバント成分は、1つまたは複数のさらなるアジュバントまたは免疫賦活剤を含むことができる。かかるさらなる成分には、3−O−脱アシル化モノホスホリル脂質Aアジュバント(「3d−MPL」)および/または水中油型乳濁液が含まれるが、これらに限定されない。3d−MPLは、3−O−脱アシル化モノホスホリル脂質Aまたは3−O−デスアシル4’モノホスホリル脂質Aとも呼ばれている。この名称は、モノホスホリル脂質A中の還元末端グルコサミンの3位が脱アシル化されていることを示す。これはS.ミネソタのヘプトースレス変異体から調製されており、脂質Aと化学的に類似しているが、酸不安定性ホスホリル基および塩基不安定性アシル基を欠く。これは、単球/マクロファージ系列の細胞を活性化し、いくつかのサイトカイン(IL−1、IL−12、TNF−α、およびGM−CSFが含まれる)の放出を刺激する。3dMPLの調製は、参考文献169に最初に記載され、製品が製造されており、Corixa CorporationからMPL(商標)として販売されている。さらなる詳細は、参考文献111〜114に見出すことができる。
【0178】
本発明のキット
本発明の組成物を、送達時、特にアジュバント使用時に調製することができる。したがって、本発明は、混合のために準備された種々の成分を含むキットを提供する。キットは、使用するまでアジュバントおよび抗原を個別に保持することが可能である。この配置は、水中油型乳濁液アジュバントを使用する場合に有用であり得る。
【0179】
成分は、キット内で互いに物理的に分離されており、この分離を種々の方法で行うことができる。例えば、2つの成分は、2つの個別の容器(バイアルなど)に存在することができる。次いで、2つのバイアルの内容物を、例えば、一方のバイアルの内容物を取り出して他方のバイアルに添加することまたは両方バイアルの内容物と個別に取り出して第3の容器中で混合することによって混合することができる。
【0180】
好ましい配置では、キット成分の一方がシリンジ中に存在し、他方がバイアルなどの容器中に存在する。シリンジを(例えば、ニードルと共に)使用して、混合のためにその内容物を第2の容器に挿入し、次いで、混合物をシリンジに吸引することができる。次いで、シリンジの混合した内容物を、典型的には新規の滅菌ニードルによって患者に投与することができる。シリンジ中の1成分の包装により、患者への投与のために別のシリンジを使用する必要がなくなる。
【0181】
別の好ましい配置では、2つのキット成分を同一シリンジ中に一緒であるが個別に保持する(例えば、参考文献182〜189に開示のシリンジなどの二室シリンジ)。シリンジを作動させた場合(例えば、投与中)、二室の内容物が混合される。この配置は、使用時の個別の混合工程が回避される。
【0182】
キット成分は、一般に、水性形態であろう。いくつかの配置では、成分(典型的には、アジュバント成分よりもむしろ抗原成分)は、乾燥形態(例えば、凍結乾燥形態)であり、他の成分は水性形態である。2成分を混合して、乾燥成分を再活性化し、患者に投与するための水性成分を得ることができる。凍結乾燥成分を、典型的には、シリンジよりもむしろバイアル内に配置するであろう。乾燥成分は、ラクトース、スクロース、またはマンニトールおよびその混合物(例えば、ラクトース/スクロース混合物、スクロース/マンニトール混合物など)の安定剤を含むことができる。1つの可能な配置は、水性アジュバント成分を含む充填済みシリンジシリンジおよび凍結乾燥抗原成分を含むバイアルを使用する。
【0183】
組成物またはキット成分の包装
本発明の組成物(またはキット成分)に適切な容器には、バイアル、シリンジ(使い捨てシリンジ)、鼻腔用スプレーなどが含まれる。これらの容器は、無菌であるべきである。
【0184】
組成物/成分がバイアル中に存在する場合、バイアルは、好ましくは、ガラス製またはプラスチック製である。組成物をバイアルに添加する前に、好ましくは、バイアルを滅菌する。ラテックス感受性患者が伴う問題を回避するために、バイアルを、好ましくは、無ラテックスストッパーで密封し、全ての包装材料中にラテックスが存在しないことが好ましい。バイアルは、単回用量のワクチンを含むことができるか、1回分を超える用量(「複数回投与」バイアル)(例えば、10回)を含むことができる。好ましいバイアルは、無色ガラス製である。
【0185】
バイアルは、充填済みシリンジをキャップに挿入し、シリンジの内容物をバイアルに排出し(例えば、バイアル中の凍結乾燥物質を再構成するため)、バイアルの内容物をシリンジに戻すことができるように対応したキャップ(例えば、Luerロック)を有することができる。シリンジをバイアルから除去した後、ニードルを取り付け、組成物を患者に投与することができる。キャップを、好ましくは、シールまたはカバーの内部に配置し、その結果、キャップが接近することができる前にシールまたはカバーが除去されなければならない。バイアルは、特に複数回投与バイアルについて、その内容物を無菌的に取り出すことが可能なキャップを有することができる。
【0186】
成分をシリンジにパッケージングする場合、シリンジはシリンジに取り付けたニードルを有することができる。ニードルを取り付けない場合、組み立てて使用するための個別のニードルをシリンジと共に供給することができる。かかるニードルを鞘に収めることができる。セーフティニードルが好ましい。1インチ23ゲージ、1インチ25ゲージ、および5/8インチ25ゲージのニードルが典型的である。シリンジを、記録管理が容易なようにロット番号、インフルエンザの季節、および内容物の期限を印刷することができる剥ぎ取り式のラベルと共に提供することができる。シリンジ中のプランジャは、好ましくは、吸引中にプランジャが偶然に除去されるのを防止するためのストッパーを有する。シリンジは、ラテックスラバーキャップおよび/またはプランジャを有することができる。使い捨てシリンジは、単回用量のワクチンを含む。シリンジは、一般に、ニードルの取り付け前にチップを密封するためのチップキャップを有し、チップキャップは、好ましくは、ブチルラバー製である。シリンジおよびニードルを個別に包装する場合、好ましくは、ニードルにブチルラバー保護物を取り付ける。有用なシリンジは、商標名「Tip−Lok」(商標)で販売されるシリンジである。
【0187】
容器は、例えば、小児への送達を容易にするために、半量を記すことができる。例えば、0.5mlの用量を含むシリンジは、0.25mlの体積を示すマークを有することができる。
【0188】
ガラス容器(例えば、シリンジまたはバイアル)を使用する場合、ソーダ石灰ガラスよりもむしろホウケイ酸ガラスでできている容器を使用することが好ましい。
【0189】
キットまたは組成物を、ワクチンの詳細(例えば、投与の説明)、ワクチン内の抗原の詳細などを含むリーフレットと共に(例えば、同一ボックス中に)包装することができる。説明書はまた、例えば、ワクチン接種後などのアナフィラキシー反応の場合に容易に利用可能なアドレナリン溶液を保持するための警告を含むことができる。
【0190】
治療方法およびワクチン投与
本発明の組成物はヒト患者への投与に適切であり、本発明は、本発明の組成物を患者に投与する工程を含む、患者の免疫応答を惹起する方法を提供する。
【0191】
本発明はまた、薬物用として使用するための本発明のキットまたは組成物を提供する。
【0192】
本発明はまた、患者に免疫応答を惹起するための薬物の製造における、4つの異なるインフルエンザウイルス株由来の抗原の使用を提供する。いくつかの実施形態では、抗原を、細胞培養で増殖させたウイルスから調製する。いくつかの実施形態では、アジュバントを製造でも使用する。いくつかの実施形態では、抗原は、スプリット抗原でも全抗原でもなく、生ウイルスまたは精製表面糖タンパク質である。いくつかの実施形態では、実質的に同一の質量の各インフルエンザウイルス株の血球凝集素を含むワクチンを製造する。
【0193】
一般にこれらの方法および用途を使用して、抗体応答、好ましくは防御的抗体応答が得られるであろう。インフルエンザウイルスワクチン接種後の抗体応答、中和能力、および防御の評価方法は、当該分野で周知である。ヒト研究により、ヒトインフルエンザウイルスの血球凝集素に対する抗体力価が防御と相関することが示されている(約30〜40の血清サンプルの血球凝集阻害力価は、同種ウイルスによる感染を約50%防御する)(参考文献190)。抗体応答を、典型的には、血球凝集阻害、マイクロ中和試験(microneutralisation)、一元放射免疫拡散法(single radial immunodiffusion(SRID)、および/または一元放射溶血試験(single radial hemolysis)(SRH)によって測定する。これらのアッセイ技術は、当該分野で周知である。
【0194】
本発明の組成物を、種々の方法で投与することができる。最も好ましい免疫化経路は、筋肉内注射(例えば、腕または脚)であるが、他の利用可能な経路には、皮下注射、鼻腔内(参考文献191〜193)、経口(参考文献194)、皮内(参考文献195、196)、経皮、経真皮(参考文献197)などが含まれる。
【0195】
本発明にしたがって調製されたワクチンを使用して、小児および成人の両方を治療することができる。インフルエンザワクチンは、小児免疫化および成人免疫化(6ヶ月から)での使用が現在推奨されている。したがって、患者は、1歳未満、1〜5歳、15〜55歳、または少なくとも55歳であり得る。ワクチン投与に好ましい患者は、高齢(例えば、50歳以上、60歳以上、および好ましくは65歳以上)、若年者(5歳以下)、入院患者、医療従事者、軍人および軍関係者、妊婦、慢性的体調不良、免疫不全患者、ワクチン投与7日前に抗ウイルス化合物(例えば、オセルタミビルまたはザナミビル化合物;以下を参照のこと)を投与された患者、卵アレルギーの者、海外旅行者である。ワクチンは、これらの群に唯一適切なのではないが、より一般的に、集団で使用することができる。
【0196】
1つを超えるインフルエンザBウイルス株由来の抗原を含むワクチンが、0〜15歳の群の患者の治療に特に有用である。
【0197】
本発明の好ましい組成物は、有効性についてのCPMP基準1、2、または3を満たす。成人(18〜60歳)では、これらの基準は以下である:(1)70%以上の血清防御;(2)40%以上の血清反応反転;および/または(3)2.5倍以上のGMT増加。高齢者(60歳超)では、これらの基準を以下である:(1)60%以上の血清防御;(2)30%以上の血液反応反転;および/または(3)2倍以上のGMT増加。これらの基準は、少なくとも50人の患者を用いた非盲検研究に基づく。
【0198】
治療は、単回用量投与スケジュールまたは複数回用量投与スケジュールによる治療であり得る。複数回用量を、一次免疫スケジュールおよび/または追加免疫スケジュールで使用することができる。複数回用量投与スケジュールでは、種々の用量を同一経路または異なる経路(例えば、非経口一次免疫および粘膜追加免疫、粘膜一次免疫および非経口追加免疫など)によって投与することができる。1回を超える用量(典型的には、2回)は、免疫学的にナイーブな患者(例えば、インフルエンザワクチンを以前に一度も投与したことのない者)または新規のHAサブタイプを含むワクチンに特に有用である。複数回用量を、典型的には、少なくとも1週間間隔(例えば、約2週間、約3週間、約4週間、約6週間、約8週間、約12週間、約16週間など)で投与するであろう。
【0199】
本発明によって産生されたワクチンを、他のワクチンと実質的に同時に(例えば、麻疹ワクチン、ムンプスワクチン、風疹ワクチン、MMRワクチン、水痘ワクチン、MMRVワクチン、ジフテリアワクチン、破傷風ワクチン、百日咳ワクチン、DTPワクチン、抱合型インフルエンザ菌b型ワクチン、不活化ポリオウイルスワクチン、B型肝炎ウイルスワクチン、髄膜炎菌抱合体ワクチン((4価A−C−W135−Yワクチン)、呼吸器合胞体ウイルスワクチン、肺炎球菌ワクチンなどと実質的に同時)投与することができる(例えば、医療相談時、または医療関係者またはワクチンセンターへの訪問時)。肺炎球菌ワクチンおよび/または髄膜炎菌ワクチンと実質的に同時の投与は、高齢患者で特に有用である。
【0200】
同様に、本発明のワクチンを、抗ウイルス化合物、特にインフルエンザウイルスに対して活性な抗ウイルス化合物(例えば、オセルタミビルおよび/またはザナミビル)と実質的に同時に投与することができる(例えば、医療相談時または医療関係者訪問時)。これらの抗ウイルス剤には、ノイラミニダーゼインヒビター((3R,4R,5S)−4−アセチルアミノ−5−アミノ−3(1−エチルプロポキシ)−1−シクロヘキセン−1−カルボン酸または5−(アセチルアミノ)−4−[(アミノイミノメチル)−アミノ]−2,6−アンヒドロ−3,4,5−トリデオキシ−D−グリセロ−D−ガラクトノン−2−エノン酸(そのエステル(例えば、エチルエステル)およびその塩(例えば、リン酸塩)が含まれる)など)が含まれる。好ましい抗ウイルス薬は、(3R,4R,5S)−4−アセチルアミノ−5−アミノ−3(1−エチルプロポキシ)−1−シクロヘキセン−1−カルボン酸、エチルエステル、リン酸塩(1:1)、リン酸オセルタミビル(TAMIFLU(商標))としても公知)である。
【0201】
インフルエンザBウイルス株の季節による変化
本発明の1つの態様は、いかなる疫学的分析と無関係に、ある季節におけるB/Victoria/2/87様株と次の季節におけるB/Yamagata/16/88様株との間で株が変化する、それぞれの連続的インフルエンザウイルスシーズンのための(北半球の北)インフルエンザBウイルス株の選択方法を提供する。これらのワクチンは、3価または3価超であり得るが、インフルエンザBウイルスのためのB/Victoria/2/87様抗原またはB/Yamagata/16/88様抗原のみを含み、両方を含まない。
【0202】
したがって、本発明は、各シーズンのためのワクチンが1つのインフルエンザBウイルス株由来の抗原を含む、3つの連続したシーズン(北半球のシーズンまたは南半球のシーズンのいずれか)のインフルエンザワクチンの調製方法であって、第1シーズンのためのワクチンはB/Victoria/2/87様株由来の抗原を含み、第2シーズンのためのワクチンはB/Yamagata/16/88様株由来の抗原を含み、第3シーズンのためのワクチンはB/Victoria/2/87様株由来の抗原を含む、方法を提供する。
【0203】
同様に、本発明は、各シーズンのためのワクチンが1つのインフルエンザBウイルス株由来の抗原を含む、3つの連続したシーズン(北半球のシーズンまたは南半球のシーズンのいずれか)のインフルエンザワクチンの調製方法であって、第1シーズンのためのワクチンはB/Yamagata/16/88様株由来の抗原を含み、第2シーズンのためのワクチンはB/Victoria/2/87様株由来の抗原を含み、第3シーズンのためのワクチンはB/Yamagata/16/88様株由来の抗原を含む、方法を提供する。
【0204】
より一般的には、本発明は、少なくとも3つの連続するシーズン(北半球のシーズンまたは南半球のシーズンのいずれか)のインフルエンザワクチンの調製方法であって、(a)各シーズンのためのワクチンが1つのインフルエンザBウイルス株由来の抗原を含み、(b)第1シーズンのためのワクチンはB/Yamagata/16/88様株またはB/Victoria/2/87様株由来の抗原を含み、(b)各連続シーズン後のワクチンが、前のシーズンのワクチンがB/Victoria/2/87様株由来の抗原を含む場合にB/Yamagata/16/88様株を含むか、前のシーズンのワクチンがB/Yamagata/16/88様株由来の抗原を含む場合にB/Victoria/2/87様株由来の抗原を含む、調製方法を提供する。したがって、抗原を、第1シーズンでは、B/Yamagata/16/88様株またはB/Victoria/2/87様株由来の抗原から選択し、その後の各シーズンの抗原をこの2つの間で交互にする。この交互サイクルを、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20シーズン連続して行うことができる。好ましくは、第1シーズンは、2007/08年以降である。
【0205】
H5株を含む多価ワクチン
本発明は、少なくとも1つの流行インフルエンザAウイルス株、少なくとも1つの非流行インフルエンザAウイルス株(例えば、H1および/またはH3由来)、および少なくとも1つのインフルエンザBウイルス株由来の抗原を含む3価または3価を超えるインフルエンザワクチンを提供する。流行株は、現在の予想に基づいて、H5株であろう。したがって、ワクチンは、H5抗原、非H5インフルエンザA抗原、およびインフルエンザB抗原を含むであろう。ワクチンの他の特徴は、本明細書中の他の場所に記載のとおりである。
【0206】
したがって、本発明は、1つのH5インフルエンザAウイルス株、1つのH3N2インフルエンザAウイルス株、および1つのインフルエンザBウイルス株由来の抗原を含む3価インフルエンザウイルスワクチンを提供する。
【0207】
本発明はまた、1つのH1N1インフルエンザAウイルス株、1つのH5インフルエンザAウイルス株、および1つのインフルエンザBウイルス株由来の抗原を含む3価インフルエンザウイルスワクチンを提供する。
【0208】
現在の季節性ワクチンを、流行または潜在的流行インフルエンザウイルス株由来の抗原を含むように有利に適合させることができる。公衆衛生の見通しから、流行株に対するワクチン接種の論理は、個別の季節性ワクチンおよび流行ワクチンの配給よりもさらに容易であろう。さらに、患者は、季節性株および流行株の両方を対象とする単一ワクチンを投与され、それにより、より良好な安全プロフィールが得られ、患者の投薬順守が改善されるであろう。かかるワクチンを、通常の3価季節性ワクチンおよび個別の1価流行ワクチンの製造ならびに単一組成物として投与する前の使用時のこれらのワクチンの混合によって作製することができる。代替法として、4つの抗原バルクを調製し、包装および分配前に混合することができる。
【0209】
したがって、本発明はまた、H1N1インフルエンザAウイルス株、H3N2インフルエンザAウイルス株、流行インフルエンザAウイルス株(例えば、H5N1などのH5株)、およびインフルエンザBウイルス株由来の抗原を含む4価インフルエンザウイルスワクチンを提供する。
【0210】
これらのワクチンは、有利には、水中油型乳濁液(本発明の他の場所に記載)などのアジュバントを含む。アジュバントは、流行株によって誘発される免疫学的ナイーブな患者の免疫応答の改善に有用である。
【0211】
これらの4価ワクチンでは、A−H1N1、A−H3N2、およびBの抗原用量は互いに実質的に同一であり得る(例えば、15μg/用量)。流行株の抗原用量は、その用量未満(10μg/用量未満)であり得る。A−H1N1、A−H3N2、およびBの平均HA用量がdμg/用量である場合、流行株のHA用量は、0.75x dμg/用量未満(例えば、0.7x、0.6x、0.5x、0.4x、0.3x、0.25x、0.2x、または0.1x)であろう。各A−H1N1、A−H3N2、およびB株の個別のHA用量は、好ましくは、dの±10%以内である。1つの実施形態では、用量あたりのHA量は、3つの季節性株については15〜20μg、流行株については約7.5〜10μgの範囲である(例えば、約15μg/株であるが、流行株については約7.5μgである)。
【0212】
本発明はまた、かかるワクチンを調製するためのキットを提供する。したがって、本発明は、(i)H1N1インフルエンザAウイルス株、H3N2インフルエンザAウイルス株、およびインフルエンザBウイルス株由来の抗原を含むインフルエンザワクチンを含む第1の容器;および(ii)流行株(例えば、H5N1などのH5株)由来の抗原を含むインフルエンザワクチンを含む第2の容器を含むキットを提供する。第1および第2の容器の内容物を、使用時(合わせたワクチンとして患者に投与する前)に混合することができる。類似のキットを、インフルエンザBウイルスワクチンの通常の季節性ワクチンとの同時投与のために使用することができる。
【0213】
かかるキットのいくつかの実施形態では、第1の容器はワクチンアジュバントを含まないが、第2の容器はワクチンアジュバント(例えば、水中油型乳濁液)を含む。組み合わせ後、最終ワクチンはアジュバントを含む。
【0214】
本発明はまた、(i)A−H1N1インフルエンザAウイルス由来のバルク抗原を調製する工程;(ii)A−H3N2インフルエンザAウイルス由来のバルク抗原を調製する工程;(iii)流行インフルエンザAウイルス(H5N1インフルエンザAウイルスなど)由来のバルク抗原を調製する工程;(iv)インフルエンザBウイルス由来のバルク抗原を調製する工程;および(v)バルク抗原を組み合わせ、希釈して、所望の濃度の各抗原を有する組み合わせたワクチンを得る工程を含む、組み合わせたインフルエンザワクチンの調製プロセスを提供する。本明細書中の他の場所に記載のように、抗原を容器に充填し、患者への投与のために流通させることができる。
【0215】
通則
用語「〜を含む(comprising)」は、「〜含む(including)」および 「〜からなる」を含む。例えば、X「を含む(comprising)」組成物は、排他的にXからなり得るか、さらなる添加物を含むことができる(例えば、X+Y)。
【0216】
用語「実質的に」は、「完全に」を排除しない。例えば、Yを「実質的に含まない」組成物は、Yを完全に含まなくてよい。必要に応じて、用語「実質的に」を、本発明の定義から省略することができる。
【0217】
数値xに関する用語「約」は、例えば、x±10%を意味する。
【0218】
特に言及しない限り、2つ以上の成分を混合する工程を含むプロセスは、いかなる特定の混合順序も必要としない。したがって、成分を任意の順序で混合することができる。3つの成分が存在する場合、2つの成分を互いに組み合わせ、次いで、組み合わせを第3の成分などと組み合わせることができる。
【0219】
動物(特に、ウシ)材料を細胞培養で使用する場合、これらを、伝染性海綿状脳症(TSE)、特に、ウシ海綿状脳症(BSE)を含まない供給源から得るべきである。全体的に、動物由来材料が全く存在しない細胞を培養することが好ましい。
【0220】
化合物を組成物の一部として身体に投与する場合、もう1つの方法として、化合物を適切なプロドラッグと置換することができる。
【0221】
細胞基質を再集合、逆遺伝学手順、またはウイルス増殖のために使用する場合、例えば、Ph Eurジェネラルチャプター5.2.3のようなヒトワクチン産生での使用が承認されている細胞基質が好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0222】
【図1】図1は、(1)2〜8℃、(2)23〜27℃、または(3)35〜39℃での保存時のワクチン安定性を示す。X軸上の数字は、図1では月数、図2および3では日数を示す。Y軸はHAレベルを示し、横線は季節性抗原(上)および流行抗原(下)についての安定性の閾値を示す。図1および3では、3つのバー群は、左から右に、FLUAD(商標);4価;およびAFLUNOV(商標)である。図2では、2つの群は、FLUAD(商標)および4価である。各時点で、データは、関連する場合、H1N1(横線のストライプ)、H3N2(薄い影)、B(白色)、またはH5N1(交差線の影)について示す。
【図2】図2は、(1)2〜8℃、(2)23〜27℃、または(3)35〜39℃での保存時のワクチン安定性を示す。X軸上の数字は、図1では月数、図2および3では日数を示す。Y軸はHAレベルを示し、横線は季節性抗原(上)および流行抗原(下)についての安定性の閾値を示す。図1および3では、3つのバー群は、左から右に、FLUAD(商標);4価;およびAFLUNOV(商標)である。図2では、2つの群は、FLUAD(商標)および4価である。各時点で、データは、関連する場合、H1N1(横線のストライプ)、H3N2(薄い影)、B(白色)、またはH5N1(交差線の影)について示す。
【図3】図3は、(1)2〜8℃、(2)23〜27℃、または(3)35〜39℃での保存時のワクチン安定性を示す。X軸上の数字は、図1では月数、図2および3では日数を示す。Y軸はHAレベルを示し、横線は季節性抗原(上)および流行抗原(下)についての安定性の閾値を示す。図1および3では、3つのバー群は、左から右に、FLUAD(商標);4価;およびAFLUNOV(商標)である。図2では、2つの群は、FLUAD(商標)および4価である。各時点で、データは、関連する場合、H1N1(横線のストライプ)、H3N2(薄い影)、B(白色)、またはH5N1(交差線の影)について示す。
【発明を実施するための形態】
【0223】
A−A−B−Bワクチン
近年、インフルエンザBウイルスのVictoria/2/87様系列およびYamagata/16/88様系列(「V」および「Y」系列)が同時に流行し、季節性流行病の負担全体に対するそれぞれの寄与は年々変化している。近年使用されているワクチンは、V系列またはY系列のいずれかを含んでいる。2001/02シーズンから、ワクチンが他の系列を含んでいたなら潜在的に回避できたかもしれない全ての米国におけるインフルエンザ症例の比率は0〜29.9%の範囲であった。2001/02から開始した5年間のうちの4年間での不適合Bウイルスに起因するインフルエンザ症例の比率は、A/H1N1ウイルスに寄与し得る比率よりも実際により高かった。
【0224】
【表1】

Nはインフルエンザの症例数である;比率は、その症例をい担うウイルス型を示す;インフルエンザBについての下線を引いた数値は、そのシーズンのワクチン中に存在した系列を示す;「喪失率」は、そのシーズンのワクチン中に存在しなかったインフルエンザBウイルス系列に起因するインフルエンザ症例の比率である。
【0225】
したがって、4価ワクチンを形成するための「喪失(missing)」Bウイルス系列の添加により、最近5年間のシーズンあたりのインフルエンザ症例の30%までを防止することができただろうが、卵ベースの製造技術がかかるワクチンの産生を妨げていた。細胞培養技術は、この問題を克服することができる。
【0226】
A−A−A−Bワクチン
1999年〜2004年にサンプリングされたH3N2インフルエンザAウイルス株のゲノム分析により、2002年に単離したウイルスの大部分が単一の系統発生群(クレイドA)に分類されたことを示していたにもかかわらず、複数の同時流行ウイルス系列が特定の時点で存在していた(1)。2003〜04年インフルエンザシーズンでは、北半球および南半球の両方で主なドリフト変異体(すなわち、A/Fujian/411/2002様変異体)出現した。2001/02年の米国でのインフルエンザは主にH3N2に起因し、全ての抗原的に特徴づけられた単離物は、A/Moscow/10/1999ワクチン株に適合した。次のシーズンでは、疾患がH1およびインフルエンザBで占められた場合、少数の抗原的に特徴づけられたH3N2単離物はMoscow/10/1999様ワクチン株と異なっており、これはおそらくFujian株の出現と同時に起こったためである。2003/04年の北半球のインフルエンザシーズンもFujian株で占められたが、前年由来のH3N2(A/Panama/2007/1999)を含むワクチン株を使用した。この株はFujian株との抗原的適合が低く、ワクチン有効性を減少させた。最初に卵中で単離され(参考文献198、199)、抗原的に類似の卵単離株を利用できないので、Fujian株はFDAによって拒絶されている。卵単離および/または継代の必要性を排除することによってこの状況が防止され、細胞培養技術はこの問題を克服する。さらに、インフルエンザワクチン中に2つのH3N2株を含めることにより、A/Moscow/10/99様株とA/Fujian/411/2002様株との間の交差反応性の欠如によって生じるいかなる問題も回避されるであろう。
【0227】
季節性株および流行株を含むワクチン
現在の季節性インフルエンザワクチンは、インフルエンザAウイルスの1つのH1N1株、インフルエンザAウイルスの1つのH3N2株、およびインフルエンザBウイルスの1つの株由来の血球凝集素抗原を含む。この季節性組み合わせに、インフルエンザウイルスのH5N1株(すなわち、インフルエンザ流行を引き起こす可能性がある株)由来の抗原を補助した。
【0228】
それぞれのA/New CaledoniH1N1株、A/WisconsinH3N2株、およびB/Malaysia株由来の精製表面糖タンパク質を含む季節性ワクチンを調製した。抗原用量は、30μg/mlであり、15μg/株/用量が得られるが、15%過剰であった。バルク抗原を、2倍強度で混合し、MF59水中油型乳濁液アジュバントで1:1の体積比に希釈して最終3価ワクチンを得た。これは商標名FLUAD(商標)で販売されている。
【0229】
インフルエンザAウイルスのH5N1株由来の精製表面糖タンパク質に基づいて、プレ流行ワクチンを調製した。抗原用量は15μg/mlであり、これによって7.5μg/用量が得られるが、15%過剰であった。バルク抗原を、2倍強度で混合し、MF59水中油型乳濁液アジュバントで1:1の体積比に希釈して最終ワクチンを得た(AFLUNOV(商標))。
【0230】
同一の4つのウイルス抗原を含む4価ワクチンを調製した。季節性抗原は、FLUAD(商標)と同一のHA濃度を含むが、H5N1抗原が7.5μg/用量含まれていた(過剰量なし)。抗原を、2倍強度で混合し、MF59水中油型乳濁液アジュバントで1:1の比に希釈して最終4価ワクチンを得た。このワクチンは、FLUAD(商標)およびAFLUNOV(商標)の簡潔な混合物と異なる。これは、抗原が0.5mlの体積中にその総用量で存在するのに対して、簡潔な混合物は1mlの体積中で総用量が得られるからである。
【0231】
安定性研究のために、ワクチンを全て以下で保存した:(1)冷蔵(2〜8℃)で少なくとも3ヶ月間;(2)室温(23〜27℃)で少なくとも14日間;(3)高温(35か39℃、少なくとも7日間。安定性をチェックするために、抗原レベルを、保存中の種々の時点でアッセイした。組成物は、研究期間中の抗原レベルが標的レベルの20%を超えて低下する場合、不安定と見なされる。図1〜3は、結果を示す。
【0232】
図1は、FLUAD(商標)処方物中の抗原が冷蔵した場合に6ヶ月間まで安定であり、H5N1株の添加は3ヶ月の研究期間でいかなる季節性抗原も安定性閾値未満に低下させなかったことを示す。同様に、AFLUNOV(商標)処方物は、9ヶ月まで安定であり、季節性抗原の添加は3ヶ月の研究期間でH5N1抗原を安定性閾値未満に低下させなかった。
【0233】
図2は、FLUAD(商標)処方物中の抗原が室温で7日間安定であるが、インフルエンザB抗原によって14日目に安定性閾値未満に低下したことを示す。抗原はまた、H5N1株の存在下で7日間安定であった。H5N1抗原は、少なくとも14日間4価組成物中で安定なままであった。
【0234】
図3は、FLUAD(商標)処方物中の抗原が高温で1日間安定であるが、インフルエンザB抗原によって3日目に安定性閾値未満に低下したことを示す。AFLUNOV(商標)処方物は7日間安定であった。H5N1抗原は、4価組成物中で7日間安定なままであったが、季節性抗原を、FLUAD(商標)処方物中よりも急速に閾値未満に低下させなかった。
【0235】
したがって、H5N1抗原を、アジュバントの存在下で、いかなる4つの抗原の安定性を低下させることなく季節性抗原と組み合わせることができる。
【0236】
個別の有効性研究では、AGRIPPAL(商標)季節性ワクチンおよびアジュバント化AFLUNOV(商標)H5N1ワクチンをヒト患者に個別または同時に投与するか、混合して組み合わせワクチンとして投与する。患者を、それぞれ50人の8群に分割する。群1〜3に、時間ゼロでワクチンを同時に投与する。群4〜6に時間ゼロで組み合わせワクチンを投与する。群7に時間ゼロでAFLUNOV(商標)を投与する。群8に時間ゼロでAGRIPPAL(商標)を投与する。
【0237】
21日目に、群1および4にさらなるワクチンを投与しないが、全ての他の群に第2のワクチンを投与する。群2および群5に組み合わせワクチンを投与する。群3、6、および8にAFLUNOV(商標)を投与する。群7にAGRIPPAL(商標)を投与する。
【0238】
365日目に、全群AFLUNOV(商標)を投与し、免疫応答を評価する。
【0239】
本発明を例示のみを目的として記載してきたが、本発明の範囲および精神の範囲内のままで修正形態を実施することができると理解されるであろう。
【0240】
参考文献(これらの内容は、参考として本明細書に援用される)
【0241】
【化12】

【0242】
【化13】

【0243】
【化14】

【0244】
【化15】

【0245】
【化16】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
インフルエンザウイルスの少なくとも4つの株由来の抗原を含むワクチンであって、該ワクチンはオボアルブミンを含まない、ワクチン。
【請求項2】
インフルエンザウイルスの少なくとも4つの株由来の抗原を含むワクチンであって、該株の少なくとも1つが細胞培養物中で増殖している、ワクチン。
【請求項3】
アジュバントを含む、請求項1または請求項2に記載のワクチン。
【請求項4】
前記抗原が、スプリットウイルス粒子でも全ウイルス粒子でもない、請求項1〜3のいずれか1項に記載のワクチン。
【請求項5】
実質的に同一の質量の前記4つのインフルエンザウイルス株各々の血球凝集素(HA)を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のワクチン。
【請求項6】
前記4つの株が2つのインフルエンザAウイルス株および2つのインフルエンザBウイルス株を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載のワクチン。
【請求項7】
(i)H1N1株などのH1インフルエンザAウイルス株;(ii)H3N2株などのH3インフルエンザAウイルス株;(iii)B/Victoria/2/87様インフルエンザBウイルス株;および(iv)B/Yamagata/16/88様インフルエンザBウイルス株由来の抗原を含む、請求項6に記載のワクチン。
【請求項8】
前記4つの株が3つのインフルエンザAウイルス株および1つのインフルエンザBウイルス株を含む、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のワクチン。
【請求項9】
(i)H1N1株などのH1インフルエンザAウイルス株;(ii)A/Moscow/10/99と交差反応する血球凝集素を有するH3インフルエンザAウイルス株;(iii)A/Fujian/411/2002と交差反応する血球凝集素を有するH3インフルエンザAウイルス株;および(iv)B/Victoria/2/87様インフルエンザBウイルス株またはB/Yamagata/16様インフルエンザBウイルス株由来のインフルエンザBウイルス株由来の抗原を含む、請求項8に記載のワクチン。
【請求項10】
(i)H1N1株などのH1インフルエンザAウイルス株;(ii)H3N2株などのH3インフルエンザAウイルス株;(iii)H5N1株などのH5インフルエンザAウイルス株;および(iv)B/Victoria/2/87様インフルエンザBウイルス株またはB/Yamagata/16/88様インフルエンザBウイルス株由来のインフルエンザBウイルス株由来の抗原を含む、請求項8に記載のワクチン。
【請求項11】
少なくとも5つのインフルエンザウイルス株由来の抗原を含む、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のワクチン。
【請求項12】
(i)H1N1株などのH1インフルエンザAウイルス株;(ii)A/Moscow/10/99と交差反応する血球凝集素を有するH3インフルエンザAウイルス株;(iii)A/Fujian/411/2002と交差反応する血球凝集素を有するH3インフルエンザAウイルス株;(iv)B/Victoria/2/87様インフルエンザBウイルス株由来のインフルエンザBウイルス株;および(v)B/Yamagata/16/88様インフルエンザBウイルス株由来の抗原を含む、請求項11に記載のワクチン。
【請求項13】
(i)H1N1株などのH1インフルエンザAウイルス株;(ii)A/Moscow/10/99またはA/Fujian/411/2002と交差反応する血球凝集素を有するH3インフルエンザAウイルス株;(iii)H5インフルエンザAウイルス;(iv)B/Victoria/2/87様インフルエンザBウイルス株由来のインフルエンザBウイルス株;および(v)B/Yamagata/16/88様インフルエンザBウイルス株由来の抗原を含む、請求項11に記載のワクチン。
【請求項14】
(i)インフルエンザAウイルスのH1N1株;(ii)インフルエンザAウイルスのA/Moscow/10/99様H3N2株;(iii)インフルエンザAウイルスのA/Fujian/411/2002様H3N2株;(iv)H5N1株などのH5インフルエンザAウイルス株;(v)B/Victoria/2/87様インフルエンザBウイルス株由来のインフルエンザBウイルス株;および(vi)B/Yamagata/16/88様インフルエンザBウイルス株由来の抗原を含む、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のワクチン。
【請求項15】
(i)インフルエンザAウイルスのH1N1株;(ii)インフルエンザAウイルスのA/Moscow/10/99様H3N2株;(iii)インフルエンザAウイルスのA/Fujian/411/2002様H3N2株;(iv)H5N1株などのH5インフルエンザAウイルス株;および(v)B/Victoria/2/87様インフルエンザBウイルス株またはB/Yamagata/16/88様インフルエンザBウイルス株由来のインフルエンザBウイルス株由来の抗原を含む、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のワクチン。
【請求項16】
各インフルエンザAウイルスがA/PR/8/34ウイルス由来の1つまたは複数のRNAセグメントを含む、請求項1〜15のいずれか1項に記載のワクチン。
【請求項17】
各血球凝集素が、Sia(α2,3)Gal末端二糖を有するオリゴ糖と比較してSia(α2,6)Gal末端二糖を有するオリゴ糖と優先的に結合する、請求項1〜16のいずれか1項に記載のワクチン。
【請求項18】
各血球凝集素が、ニワトリ卵中に認められないグリコフォームを有する、請求項1〜17のいずれか1項に記載のワクチン。
【請求項19】
前記ウイルス株をMDCK細胞中で増殖させる、請求項1〜18のいずれか1項に記載のワクチン。
【請求項20】
(i)前記H1株、H3株、およびB株のそれぞれの血球凝集素用量が、これら3つの株の平均用量の10%以内であり、(ii)前記H5株の血球凝集素用量が該H1株、H3株、およびB株の平均用量の75%未満である、請求項10に記載のワクチン。
【請求項21】
アジュバントを含む、インフルエンザウイルスの少なくとも4つの株由来の抗原を含むワクチン。
【請求項22】
前記アジュバントが、サブミクロンの液滴を含む水中油型乳濁液を含む、請求項3〜請求項21のいずれか1項に記載のワクチン。
【請求項23】
前記油がスクアレンを含む、請求項22に記載のワクチン。
【請求項24】
前記アジュバントが、(i)少なくとも1つのCpIモチーフを含むオリゴヌクレオチドおよび(ii)ポリカチオン性オリゴペプチドの混合物を含む、請求項3〜請求項21のいずれか1項に記載のワクチン。
【請求項25】
(i)第1の容器中にインフルエンザウイルス抗原を含む第1の成分を含み、(ii)第2の容器中に水中油型乳濁液を含む第2の成分を含む、請求項22に記載のワクチンを調製するためのキット。
【請求項26】
前記株の少なくとも1つを細胞培養物中で増殖させている、請求項21に記載のワクチン。
【請求項27】
前記抗原がスプリットウイルス粒子でも全ウイルス粒子でもない、請求項21または請求項26に記載のワクチン。
【請求項28】
実質的に同一の質量の前記4つのインフルエンザウイルス株各々の血球凝集素(HA)を含む、請求項21、請求項26、または請求項27に記載のワクチン。
【請求項29】
インフルエンザウイルスの少なくとも4つの株由来の抗原を含むワクチンであって、該抗原がスプリットウイルス粒子でも全ウイルス粒子でもない、ワクチン。
【請求項30】
前記抗原が生インフルエンザウイルスまたは精製糖タンパク質である、請求項29に記載のワクチン。
【請求項31】
前記株の少なくとも1つを細胞培養物中で増殖させている、請求項29または30に記載のワクチン。
【請求項32】
アジュバントを含む、請求項29、請求項30、または請求項31に記載のワクチン。
【請求項33】
実質的に同一の質量の前記4つのインフルエンザウイルス株各々の血球凝集素(HA)を含む、請求項29〜請求項32のいずれか1項に記載のワクチン。
【請求項34】
患者に請求項1〜33のいずれか1項に記載のワクチンを投与する工程を含む、該患者の免疫応答を惹起する方法。
【請求項35】
(i)H1N1インフルエンザAウイルス株、H3N2インフルエンザAウイルス株、および第1のインフルエンザBウイルス株由来の抗原を含むインフルエンザワクチンを含む第1の容器;および(ii)第2のインフルエンザBウイルス株由来の抗原を含むインフルエンザワクチンを含む第2の容器を含み、該第1および第2のインフルエンザBウイルス株の一方がB/Victoria/2/87様株であり、他方がB/Yamagata/16/88様株である、キット。
【請求項36】
患者の免疫応答を惹起するための薬物の製造におけるインフルエンザウイルスの4つの異なる株由来の抗原の使用。
【請求項37】
前記抗原を、細胞培養物中で増殖したウイルスから調製する、請求項36に記載の使用。
【請求項38】
前記薬物が請求項1〜請求項33のいずれか1項に記載のワクチンである、請求項36または請求項37に記載の方法。
【請求項39】
インフルエンザウイルスに対して患者を免疫化する方法であって、該方法は、(i)H1N1インフルエンザAウイルス株、H3N2インフルエンザAウイルス株、および第1のインフルエンザBウイルス株由来の抗原を含むインフルエンザワクチンを含む第1のワクチン;ならびに(ii)第2のインフルエンザBウイルス株由来の抗原を含む第2のワクチンを該患者に同時に投与する工程を包含し、該第1および第2のインフルエンザBウイルス株の一方がB/Victoria/2/87様株であり、他方がB/Yamagata/16/88様株である、方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2011−506264(P2011−506264A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−539832(P2009−539832)
【出願日】平成19年12月5日(2007.12.5)
【国際出願番号】PCT/IB2007/004364
【国際公開番号】WO2008/068631
【国際公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】