説明

インフルエンザウイルスヘマグルチニンについてのアッセイ

限外濾過とHPLCとの組み合わせを用いてインフルエンザウイルスを分析する。この組み合わせは、ヘマグルチニン(HA)を定量化することができ、一元放射免疫拡散法(SRID)の結果と良好に相関するだけでなく、免疫化学的なSRID試薬を待つことによる遅れを伴わずに実施することができる。本発明は、試料中のインフルエンザウイルスHAを精製するための方法を提供する。この方法は、(i)試料の限外濾過によって濾液を提供するステップと、(ii)濾液のRP−HPLCによって濾液中の任意のHAを濾液中の任意の他の成分から分離するステップと、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、2009年5月29日に出願された米国仮特許出願61/217,405からの優先権を主張し、上記米国仮特許出願の全容は、参照によって本明細書に援用される。
【0002】
(技術分野)
本発明は、例えばワクチンを分析するための、インフルエンザウイルスヘマグルチニンについてのアッセイの分野内にある。
【背景技術】
【0003】
(背景技術)
不活化インフルエンザワクチン中のヘマグルチニン(HA)含量についての標準アッセイは、一元放射免疫拡散法(「SRID」)にもとづいている[非特許文献1(1)、非特許文献2(2)]。この方法は、1978年にWHOによって赤血球の凝集にもとづく試験を置き換えるように推奨された。
【0004】
SRIDアッセイは十分に確立されているが、実施するのに時間がかかり、ダイナミックレンジが不十分で、ばらつきがかなりあり、必要な特異的抗HA血清を調製し、その後この血清を検定するのに長い時間がかかることがある。従って、インフルエンザHAを定量化するための非SRIDアッセイが求められてきた。
【0005】
1つの手法は、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)を用いることであった。例えば、特許文献1(参考文献3)は、HAが洗剤の存在下で還元され、アルキル化されてそのスルフヒドリル基が保護され、RP−HPLCカラムにかけられ、次に有機移動相中のイオン対形成剤で溶出される方法を開示している。本発明者らにとって、インフルエンザ抗原精製についての従来のRP−HPLC法は、目的のタンパク質ピークの分解能が低く、回収率が低く、定量的でなかった点が不満である。しかし、それらの方法は、溶出温度を50〜70℃に上昇させることによってインフルエンザHAについてのRP−HPLCの回収率および再現性を上昇させることができた。非特許文献3(参考文献4)にこの方法のさらなる詳細が開示されている。汎発流行株に関する研究を含む非特許文献4(参考文献5)も参照すること。
【0006】
サイズ排除HPLCをRP−HPLCと組み合わせる2D−HPLCもインフルエンザワクチン成分の特性を調べるために用いられてきた[非特許文献5(6)]。この方法は、HAを定量化することができたが、ホルムアルデヒド処理された抗原には実施されなかった。そのような処理はHAを不可逆的に架橋させ、従って2D−HPLC法がバルク不活化ワクチン抗原を試験するのに適しているか不確かである。
【0007】
サイズ排除HPLCそれ自体も汎発流行株を含む不活化スプリットワクチンにおけるHA検出および定量化のために用いられてきた[非特許文献6(7)]。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2005/090390号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Williams, Vet Microbiol (1993) 37:253−262.
【非特許文献2】Fitzgerald & Needy, Dev Biol Stand (1986) 64:73−79.
【非特許文献3】Kapteyn et al., Vaccine (2006) 24:3137−44.
【非特許文献4】Kapteyn et al., Vaccine (2009) 27:1468−77.
【非特許文献5】Garcia−Canas et al., Anal. Chem. (2007) 79(8): 3164−72.
【非特許文献6】Michaelides, Studies by Undergraduate Researchers at Guelph (2008) 1(2):7−19.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
HAを定量化するためのSRIDアッセイのさらなる改善された代替法が依然として求められている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の概要)
本発明は、限外濾過(UF)とRP−HPLCとの組み合わせを用いてインフルエンザHAを分析する。これらの2つの技法を組み合わせるとHAを定量化することができ、機能的抗体を惹起するワクチンの能力を判定する上でSRIDより信頼性を高くすることができる。さらに、この組み合わせは、免疫化学的なSRID試薬を待つことによる遅れを伴わずに実施することができるだけでなく、SRID結果と良好に相関する。
【0012】
SRIDの1つの利点は、2つの形のHAを区別することが可能になることである。すなわち、免疫学的に活性なHAは検出されるが免疫学的に不活性なHA(変性体/凝集体/ミスフォールディング体)は検出されない。従って、SRIDは主としてワクチン中の「有用」HAを測定する。しかし、HPLCは変性作用のある技法であるためこの利点は失われ、インフルエンザHAを定量化するための従来のHPLCベースの方法は2つの形のHAを区別することができなかった。従って、従来のHPLCベースの方法は「有用」HAの含量を過大評価し得、期待値より低い免疫学的活性を有するワクチンが得られる。この不利に対処するために、UFステップを用いて変性/凝集HAを除去することができ、次に、RP−HPLCを用いて残存HAを精製し、検出し、分析および/または定量化することができる。
【0013】
従って、本発明は、試料中のインフルエンザウイルスHAを精製するための方法を提供する。この方法は、(i)試料の限外濾過によって濾液を提供するステップと、(ii)濾液のRP−HPLCによって濾液中の任意のHAを濾液中の任意の他の成分から分離するステップと、を含む。ステップ(ii)において分離されたHAはその後検出することができ、この検出は定量性のあるものとすることができ、それによって元の試料中の活性HAの量の計算が可能になる。そのような計算の後、次に試料(または、より普通には試料が採取された元のバルク材料)を希釈して所望のHA濃度を有する材料を得ることができる。この材料は、ワクチン製造のために用いることができる。
【0014】
本発明は、試料中のインフルエンザウイルスHAをRP−HPLCによって精製するためのプロセスにおいて、RP−HPLCの前に試料を限外濾過に供することからなる改善も提供する。
【0015】
本発明は、インフルエンザHAを含むバルク抗原も提供する。バルク材料の試料は本発明の方法によって分析されたものである。
【0016】
本発明は、参考文献3から5の方法と比較して、スルフヒドリルが誘導体化されるステップを必要とせず、高い溶出温度を必要としない。所望であるならば、これらの特徴の一方または両方が本発明とともに用いられることがあるが(例えば、高い溶出温度は有用であり得る)、それらが必要ということではない。
【0017】
(限外濾過)
UFは、半透膜に対して液体を静水圧で押す膜濾過技法である。懸濁固体および高分子量の溶質は保持される一方、水および低分子量溶質は膜を通過することができる。UF膜の分子量カットオフ(MWCO)は、どの溶質が膜を通過する(すなわち濾液に行く)ことができ、どれが保持される(すなわち濃縮水中に)かを定める。
【0018】
本発明のためには任意の変性/凝集HAを保持する一方で任意の活性HAの通過を可能にする膜が選ばれる。この分離のためには300kDaのカットオフが便利であるが、他のカットオフも用いることができる。インフルエンザHA糖タンパク質は単量体として約75kDaであるが、これらはビリオン中では約230kDaのホモ三量体として集合する。正確な分子量はウイルス株およびグリコシル化によって変化するが、所望の単量体および/または三量体の通過を可能にする一方でより高い分子量の凝集体を保持するようにUF膜カットオフを容易に選ぶことができる。HAフラグメントが精製される場合(下記参照)、カットオフはそれに応じて減少させることができる。
【0019】
UFは、さまざまな形式、例えば交差流(接線流、TFUF)または通常流(デッドエンド型)で作動させることができる。どちらの形式も用いることができるが、本発明の分析方法には通常流の方が便利である。遠心分離管の内部のUF膜(例えば遠心分離UF濃縮器)を用いてもよい。
【0020】
さまざまな種類のUF膜、例えばらせん型モジュール(管の周りに巻かれた大きな連続層の膜と支持体材料)、管状膜(試料はコアを通って流れ、濾液は外向きに管ハウジングに流入する)、中空糸膜(試料はファイバーの開放コアを通って流れ、濾液はファイバーの周りのカートリッジ区域の中に集められる)、および垂直膜(試料は管の中に送入され、管の長軸に実質的に平行な平面中の、垂直膜を通って流れる)が利用可能である。これらの膜配置の任意のものを用いることができる。
【0021】
UFは、加圧下で実施することができる。通常は、試料はポンプによって加圧され、濾液の方は大気圧のままとされる。
【0022】
UF膜にはさまざまな材料が用いられる。本方法は、ポリエーテルスルホン膜を便利に用いることができる。
【0023】
(RP−HPLC)
UFは元の試料から変性/凝集HAを除去するが、活性HAは通過して濾液中に入る。次に、この濾液をRP−HPLCに供してHAを濾液中の任意の他のタンパク質から(例えば他のインフルエンザウイルス抗原から、または非インフルエンザタンパク質から)分離する。この分離の結果、HAは精製され、この精製された材料を分析することができ、例えば定量化することができる。
【0024】
HPLCは、液体(移動相、例えば溶媒)をクロマトグラフィーカラム(固定相)に加えるクロマトグラフィーの形であり、カラム上の保持は固定相と試料中に存在する成分との間の相互作用に依存する。ポンプがカラムを通して液相を移動させ、条件を変化させると異なる分子を異なる時間にカラムから溶出させることができる。RP−HPLCは非極性固定相と水性で、適度に極性の移動相とを有する。一般的に、RP−HPLC保持時間は、移動相中の水の割合を上昇させる(それによって今や親水性の強くなった移動相より疎水性固定相への疎水性分析物の親和力を強くする)ことによって上昇させることができ、逆に、非極性またはより極性の低い有機溶媒(例えばメタノール、アセトニトリル)の割合を上昇させることによって減少させることができる。
【0025】
RP−HPLCの段階は、UF処理された試料中の任意のHAを他のタンパク質から分離する。従って、RP−HPLCカラムおよび溶出条件は、HAをこれらの他のタンパク質から分離することができるように選ばれる。この分解能を達成するRP−HPLCの能力は、例えば参考文献4から既に知られている。
【0026】
さまざまな形のRP−HPLCが利用可能である。本発明は、4000Åの孔サイズを有する10μmのポリスチレンジビニルベンゼン(PSDVB)粒子のカラム上で便利に実施することができるが、他の支持体材料(例えば他の疎水性ポリマー、例えばシリカ中のシラノール基に共有結合しているオクタデシル、デシルまたはブチルのn−アルキル疎水鎖)、粒子サイズ(例えば3〜50μm)および孔サイズ(例えば250〜5000Å)を用いることができ、PSDVBの特性は、共重合中のPSとDVBとの比を変化させること、またはβ−誘導体化(例えばスルホアシル化)によって変化させることができる。適当なRP−HPLC支持体は、HAを保持および溶出させ、試料中に存在する他の材料から分離する能力にもとづいて容易に選ぶことができる。2つの孔種別を有するビーズを伴った支持体を用いることができる:粒子自体を通る対流が発生することを可能にする大きな「貫通孔」、これが内部の短い「拡散」孔に試料分子を迅速に運ぶ。この孔配置は、拡散が起こることが必要である距離を短縮し、試料分子が結合部位と相互作用するために必要な時間を短縮する。従って、拡散を律速ではなくすることができ、分解能または容量を犠牲にすることなく流速を上昇させる(例えば1000〜5000cm/時間)ことができる。
【0027】
例えばアセトニトリル勾配を用いてさまざまな溶出緩衝液を用いることができる。適当な流速は、例えば0.1から5ml/分(例えば0.5から1.5ml/分、または約0.8ml/分)で容易に選ぶことができる。溶出は、室温において行うことができるが、参考文献3に記載されているように50〜70℃の範囲、例えば55〜65℃、または約60℃における溶出が有用である。
【0028】
RP−HPLC溶出液をモニタリングして(例えば約214nmにおけるUV吸光度について、または約290nmにおける励起および約335nmにおける発光を用いる固有蛍光について)UF処理された試料中の任意のHAを検出することができる。HPLC溶出クロマトグラム上のHAピークの下の面積を用いてHAを定量化することができる。従ってこの方法は、UF処理された試料中のHAの量、従ってUF前の試料中の活性HAの量の計算を可能にする。既知の容積の試料を用いることにより、次にこれらの方法によって決定されたHAの量を用いて試料が採取された元の材料中の、例えばバルク抗原調製物または個別ワクチン用量中のHA濃度を計算することができる。
【0029】
UF濾液は、RP−HPLCに直接注入(例えばインライン装置中で)されてもよく、収集されてから別に導入されてもよい。実施態様によっては、濾液はRP−HPLCの前に処理される。例えば、参考文献3は、RP−HPLCの前にアルキル化ステップを実施する。本発明ではこのステップを実施することができるが、それは必要ではない(従って好ましくない)。UFとRP−HPLCとの間の1つの有用なステップは、濾液を洗剤で処理することである。洗剤を加えると単量体でない、例えば脂質二重層中のローゼットの形である任意の濾液HAを可溶化することができる。このため、洗剤処理はUFの後ではあるがRP−HPLCの前に行われる。これは、UFの前に処理すると非天然型HA(変性/凝集)を可溶化し得、これにより非天然型HAがUFフィルタを通り抜け、従って誤解を生む結果を生じるからである。
【0030】
適当な可溶化洗剤は、イオン性、非イオン性または両性イオン性であってよく、デオキシコレート、リン酸トリ−N−ブチル、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、Tergitol NP9、アルキルグリコシド、アルキルチオグリコシド、アシル糖、スルホベタイン、ベタイン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、N;N−ジアルキル−グルカミド、Hecameg、アルキル−フェノキシ−ポリエトキシエタノール、サルコシル、ミリスチルトリメチルアンモニウム塩、リポフェクチン、リポフェクタミン、およびDOT−MA、オクチルまたはノニルフェノキシポリオキシエタノール(例えばTriton X100またはTriton N101などのTriton界面活性剤)、ポリオキシエチレンソルビタンエステル(ポリソルベート80などのTween界面活性剤)、ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンエステル(polyoxyethlene esters)、「Zwittergent 3−14」TM(n−テトラデシル−N,N−ジメチル−3−アンモニオ−1−プロパンスルホナート、CAS 14933−09−6、「TDAPS」)などの両性「Zwittergent」洗剤、オクタエチレングリコールモノドデシルエーテル(「C12E8」)などのアルキレングリコールモノドデシルエーテルなどを含むがこれに限定されるものではない。これらは、HAを可溶化するのに十分高い(例えば最大5%(v/v)であるが通常は最大約1%)が、その後の分析を妨害するほど高くないレベルで加えられる。重要な2つの特定の洗剤は、Zwittergent 3−14TMおよびC12E8である。例えば、室温において1% Zwittergentで30分間処理すると良好な分析結果が得られる。
【0031】
(試料)
UFおよびRP−HPLCに供される試料は、インフルエンザウイルスHAを含む(または少なくとも含むと思われる)。いくつかの株由来のHAを含む材料について多くの場合にSRIDが行われる(例えば3価材料)。本発明は、多価材料に用いることができるが、異なるHAをHPLCカラムによって分離することができなければ、各株由来の抗原を別々に定量化することはできない。ただし、状況によっては、各株からの寄与を知る必要がなく多価混合物中の全HAを定量化すれば十分である。しかし、一般に、試料はただ1つのインフルエンザウイルス株由来のHAを含み、すなわち1価である。
【0032】
本発明は、さまざまな種類の試料に用いることができる。本発明を用いて最終的なワクチンを分析することができるが、分析方法が破壊型なので、最終的なワクチンは普通はバッチからの単一ワクチンであり、分析結果はバッチの特性を示す。試料は、バルクワクチン材料から採取されたものであってよく、分析結果はバルクの特性を全体として示す。他の実施態様において、試料は、さらにウイルス含有流体であってよく、例えば細胞培養物または卵由来のウイルス含有採取流体であってよい。従って、試料は、出発材料、最終ワクチン材料、またはウイルス培養物から最終ワクチンの間の任意の製造中間体であってよい。
【0033】
試料は、通常はインフルエンザビリオン由来のHAを含むが、代りに組み換え宿主中(例えばバキュロウイルスベクターを用いる昆虫細胞系統中)に発現され、精製されたHAを含んでも[8,9,10]、ウイルス様粒子(VLP、例えば参考文献11および12参照)の形であってよい。しかし、一般に、抗原はビリオン由来であり、従って試料は、HAに加えて他のインフルエンザウイルスタンパク質(例えばPB1、PB2、PA、NP、NA、M1、M2、NS1および/またはNS2タンパク質)を含んでよく、インフルエンザウイルス脂質も含んでよい。
【0034】
ビリオン由来インフルエンザウイルス抗原は、生ウイルスまたは不活化ウイルスのどちらかにもとづく(例えば参考文献13の17および18章を参照)。本発明は、生ウイルス由来のHAレベルを決定するために用いることができるが、生ワクチンの投与はHA含量ではなく50%組織培養感染量にもとづき、従って本発明は、普通は不活化材料中のHAレベルを決定するために用いられる。
【0035】
不活化ワクチンは、ビリオン全体、「スプリット」ビリオン、精製された表面抗原(HAを含み、通常はノイラミニダーゼも含む)またはビロゾーム(核酸のないウイルス様リポソーム粒子[14])にもとづいてよい。本発明は、すべてのそのようなワクチンに用いることができる。BEGRIVACTM、FLUARIXTM、PREPANDRIXTM、FLUZONETMおよびFLUSHIELDTM製品はスプリットワクチンである。FLUVIRINTM、AGRIPPALTM、FLUADTMおよびINFLUVACTM製品は表面抗原ワクチンである。INFLEXAL VTMおよびINVAVACTM製品はビロゾームワクチンである。本発明は、スプリットおよび表面抗原ワクチン中のHA含量を測定するために最も有用である。
【0036】
本発明は、インフルエンザA型ウイルスとインフルエンザB型ウイルスとを両方含む任意のインフルエンザウイルス型由来のHAに用いることができる。
【0037】
インフルエンザA型ウイルスについて、本発明は、任意の公知のHA亜型(H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15またはH16)由来のHAに用いることができ、H1、H3およびH5株に特に有用である。株は、NA亜型N1、N2、N3、N4、N5、N6、N7、N8またはN9の任意のものを有してよい。例えば、本発明を用いてH1N1株、H3N2株、H5N1株等由来の材料を分析することができる。本発明は、H1株に特に有用であり、実施態様によっては、株は、配列番号2(A/Chile/1/1983由来HA1)より配列番号1(A/California/04/2009由来HA1)に密接に関連しているHAを有する、すなわち、同じ比較アルゴリズムおよびパラメータを用いると配列番号2より配列番号1と比較したときにより高い度合いの配列同一性を有する、H1株(例えばH1N1株)である。他の実施態様においては、H1 HAは、配列番号1より配列番号2と密接に関連している。
【0038】
インフルエンザBウイルスについて、本発明は、B/Victoria/2/87様株またはB/Yamagata/16/88様株由来のHAに用いることができる。これらの2つの群の株は、普通は抗原的に区別されるが、これら2つの系統を区別するためのアミノ酸配列の差異も記載された。例えば、多くの場合に(常にではないが)B/Yamagata/16/88様株は、「Lee40」HA配列と対比して数えてアミノ酸残基164において欠失のあるHAタンパク質を有する[15]。
【0039】
本発明の方法によって分析されるHAは、HA0として知られている全長前駆体HAであってよい。しかし、実施態様によっては、HAはHA0のフラグメントである。HA0を、セリンプロテアーゼ、例えばトリプシンによってフラグメント化してN末端フラグメント(HA1)およびC末端フラグメント(HA2)を得ることができる。これらのフラグメントは、ジスルフィド架橋によって結合したままであってよい。従って、本発明の方法は、HA0、HA1またはHA2を精製してもよく、ただ1つのそのようなフラグメントの(例えばHA1の)検出および分析を含んでもよい。精製され、分析され得る他のHAフラグメントは、例えば、ブロメライン処理によって放出されるフラグメント、またはブロメラインとトリプシンとの両方による処理によって得られるフラグメントを含む。通常、これらの方法はHA1を精製し、従って少なくともRP−HPLCステップは還元条件下で(例えばDTTを用いて)実施してHA1とHA2とが分離されることを確実にするべきであり、任意選択として精製前消化ステップ(例えばトリプシンを用いて)を含んでHA2からのHA1の完全な切断を確実にしてよい(しかし、この消化は多くの場合に不必要であり、任意の全長HA0の存在を容易に試験して消化が有用であるか決定することができる)。参考文献4は、HA1がRP−HPLCによってHA2および他のワクチン成分から良好に分離されることを報告している。
【0040】
試料中のHAは、HA1/HA2切断部位の周りに超塩基領域を含むことがあるが、他の実施態様においてはこの領域は存在しない。
【0041】
試料中のHAは、Sia(α2、3)Gal末端二糖を有するオリゴ糖と比較してSia(α2,6)Gal末端二糖を有するオリゴ糖との結合優先性を有することもあり、またはその反対のこともあり、あるいはそのような優先性を示さないこともある。参考文献16においてこの優先性のためのアッセイが考察されている。ヒトインフルエンザウイルスは、Sia(α2,6)Gal末端二糖(ガラクトースにα−2,6結合したシアル酸)を有する受容体オリゴ糖に結合するが、卵およびVero細胞はSia(α2,3)Gal末端二糖を有する受容体オリゴ糖を有する。
【0042】
実施態様によっては、HAは、卵由来ウイルスにおいて見られるパターンと異なるグリコシル化パターンを有する。従って、HAは鶏卵において見られない糖型を含んでよい。有用なHAはイヌの糖型を含み、例えばウイルスはMDCK細胞中で増殖させたものであってよい。他の有用なHAはヒト糖型を含み、例えばウイルスはPER.C6細胞中で増殖させたものであってよい。他の有用なHAはサル糖型を含み、例えばウイルスはVero細胞中で増殖させたものであってよい。これらの細胞系統は、例えばAmerican Type Cell Culture(ATCC)収集物から、Coriell Cell Repositoriesから、またはEuropean Collection of Cell Cultures(ECACC)から広く入手可能である。例えば、ATCCは、カタログ番号CCL−81、CCL−81.2、CRL−1586およびCRL−1587でさまざまな異なるVero細胞を供給し、カタログ番号CCL−34でMDCK細胞を供給している。寄託番号96022940でECACCからPER.C6が入手可能である。1つの適当なMDCK細胞系統はDSM ACC 2219として寄託されている「MDCK 33016」である[17]。
【0043】
試料中のHAは野生株ウイルス由来であってもよく、または特にインフルエンザAウイルスの場合、再集合体ウイルス由来であってもよい。再集合体ウイルスは、逆遺伝学技法によって得られたものであってもよい。従って、試料は1つのウイルス株由来のHAを含んでよいが、異なる株由来、例えばA/PR/8/34由来、A/AA/6/60由来、またはA/WSN/33由来の他のインフルエンザ抗原(例えばPB1、PB2、PA、NP、M1、M2、NS1および/またはNS2タンパク質)を含んでもよい。
【0044】
試料中のHA濃度は、普通は0.1μg/mlから10mg/ml、例えば1μg/mlから1mg/ml、または10μg/mlから100μg/mlである。実施態様によっては、濃度は、約30μg/ml、約15μg/mlまたは約7.5μg/mlである。
【0045】
試料は血清成分を含んでよいが、好ましくはそのような成分を含まない。
【0046】
試料は卵タンパク質(例えばオボアルブミンおよびオボムコイド)および/またはニワトリDNAを含んでよいが、実施態様によっては、例えばウイルスが細胞培養中で増殖したときこれらの成分を含まない。
【0047】
試料は、DNA、例えばニワトリDNAまたは哺乳動物DNA(例えばMDCK細胞、Vero細胞、PER.C6細胞など由来)を含んでよい。しかし、理想として、試料は、1mgのHAあたり600ng未満のDNA(好ましくは60ng未満、より好ましくは6ng未満)を含む。
【0048】
試料は、好ましくは、インフルエンザウイルスタンパク質を除いてウイルスタンパク質を含まない。
【0049】
試料は、洗剤、例えばポリオキシエチレンソルビタンエステル界面活性剤(「Tween」として知られている、例えばポリソルベート80)、オクトキシノール(例えばオクトキシノール−9(Triton X−100)もしくは−10、またはt−オクチルフェノキシポリエトキシエタノール)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(「CTAB」)、またはデオキシコール酸ナトリウムを含んでよい(特にスプリットまたは表面抗原ワクチン試料の場合に)。洗剤は、ごく僅かな量でのみ存在してよい(例えば抗原製造からの残留物)。ごく僅かな量の他の試料成分は、抗生物質(例えばネオマイシン、カナマイシン、ポリミキシンB)であり得る。
【0050】
(下流のステップ)
本発明の方法は、目的の材料中のHA濃度の測定を可能にする。この材料、特にバルクワクチンは、次に希釈して所望の最終HA濃度を得ることができる。従って、本発明の方法は、HA精製の結果にもとづいてワクチンを希釈するさらなるステップを含んでよく、本発明は、(a)本明細書に開示されている方法によってワクチン中、またはワクチンの試料中のHAを精製するステップと、(b)ステップ(a)の結果を用いてワクチン中のHA濃度を計算するステップとを含む、ワクチンを分析するための方法を提供する。本発明は、前記ステップ(a)および(b)と、ステップ(b)の結果を用いてバルクワクチンを希釈して所望のHA濃度を得るさらなるステップ(c)とを含む、所望のHA濃度を有するバルクワクチンを提供するための方法も提供する。希釈されたバルクワクチンの単位用量を次に抽出することができ、従って本発明は、前記ステップ(a)から(c)と、希釈されたバルクから1つ以上の単位用量のワクチンを抽出するさらなるステップ(d)とを含み、各単位用量は所望のHA含量を有する、患者に用いるためのワクチンを提供するための方法を提供する。抽出された材料は、容器、例えばバイアルまたは注射器に入れることができる。
【0051】
希釈されたバルクは、単位用量抽出の前に他の成分、例えばアジュバントと混合することができる。従って、本発明は、前記ステップ(a)から(c)と、希釈されたバルクワクチンをアジュバントと混合するさらなるステップ(d)とを含む、バルクアジュバント付加ワクチンを提供するための方法を提供する。本発明は、前記ステップ(a)から(d)と、希釈されたバルクから1つ以上の単位用量のワクチンを抽出するさらなるステップ(e)とを含み、各単位用量は所望のHA含量を有する、患者に用いるためのアジュバント付加ワクチンを提供するための方法も提供する。抽出された材料は、容器、例えばバイアルまたは注射器に入れることができる。
【0052】
抽出された用量をアジュバントと混合することの代替法として、抽出された用量は代りに第1のキット成分として、第2のキット成分と組み合わされてパッケージされてよく、第2のキット成分はワクチンアジュバントである。2つのキット成分を使用するときに組み合せてアジュバント付加ワクチンが得られてよい。キットは、使用のときまでアジュバントと抗原とが別々に保たれる(例えばPREPANDRIXTM製品のように)ことを可能にする。成分は、キット内で物理的に互いに分離しており、この分離はさまざまな方法で達成することができる。例えば、2つの成分は2つの別々の容器、例えばバイアルの中にあってよい。次に、例えば一方のバイアルの内容物を取り出し、他方のバイアルに加えるか、または両方のバイアルの内容物を別々に取り出し、第3の容器の中で混合することによって、2つのバイアルの内容物を混合することができる。1つの用意においては、キット成分の一方は注射器の中にあり、他方は容器、例えばバイアルの中にある。注射器を用いて(例えば針付き)その内容物を混合のために第2の容器に入れることができ、次に、混合物を注射器の中に戻すことができる。次に、混合された注射器の内容物を、通常は新しい無菌の針を通して患者に投与することができる。一方の成分を注射器にパッケージすれば、患者投与のために別の注射器を用いる必要がなくなる。別の用意においては、2つのキット成分が同じ注射器の中で一緒に、ただし、別々に保たれる(例えば2室型注射器)[18]。注射器を動かすと(例えば患者への投与中)、2つの室の内容物が混合される。この用意は、使用時における別個の混合ステップの必要を回避する。
【0053】
抗原とアジュバントとが製造中に混合されるかまたは患者への送達の時点で混合されるかにかかわらず、一般的に抗原は水性であり、従って混合ステップは2つの液体を混合することを含む。混合のための2つの液体の容積比は変化させる(例えば5:1から1:5)ことができるが、一般的に約1:1である。従って、2つのキット成分は、互いに実質的に同じ容積の液体を含んでよい。
【0054】
アジュバントは、組成物を受ける患者において惹起される免疫応答(体液および/または細胞)を増強することができる。この目的のための通常のアジュバントは、水中油エマルジョンである。さまざまな適当なエマルジョンが知られており、通常は少なくとも1つの油と少なくとも1つの界面活性剤とを含み、油(単数または複数)および界面活性剤(単数または複数)は生物分解性(代謝性)かつ生物適合性である。エマルジョン中の油滴は、一般的に直径5μm未満であり、エマルジョンはサブミクロンの直径を有する油滴を含むと有利であり、これらの小さなサイズはマイクロフルイダイザーによって達成され、安定なエマルジョンを提供する。フィルタ滅菌に供することができるので220nm未満のサイズを有する液滴が好ましい。
【0055】
エマルジョンは、動物(例えば魚)または植物供給源由来の油を含んでよい。植物油についての供給源は、堅果、種子および穀類を含む。最も普通に入手可能なラッカセイ油、ダイズ油、ヤシ油およびオリーブ油が堅果の油の例である。例えば、ホホバ豆から得られるホホバ油を用いることができる。種子油は、サフラワー油、綿実油、ヒマワリ種子油、ゴマ種子油および類似物を含む。穀物群において、トウモロコシ油が最も容易に入手可能であるが他の穀物、例えばコムギ、オートムギ、ライムギ、米、テフ、ライ小麦および類似物の油も用いてよい。グリセロールおよび1,2−プロパンジオールの6〜10炭素脂肪酸エステルは、天然に種子油中に生じることはないが、堅果および種子の油から出発する適切な材料の加水分解、分離およびエステル化によって調製してよい。哺乳動物の乳由来の油脂は代謝性であり、従って、本発明の実施において用いてよい。動物供給源から純粋な油を得るために必要な分離、精製、ケン化および他の手段の手順は当分野において周知である。ほとんどの魚は、容易に収集され得る代謝性の油を含む。例えば、タラ肝油、サメ肝油、および鯨油例えば鯨蝋は、本発明において用いてよい魚油のいくつかの例を示す。5炭素イソプレン単位の複数の分岐鎖油が生化学的に合成され、一般的にテルペノイドと呼ばれている。サメ肝油は、スクアレンとして知られている分岐、不飽和テルペノイド、2,6,10,15,19,23−ヘキサメチル−2,6,10,14,18,22−テトラコサヘキサエンを含んでいる。他の好ましい油は、DL−α−トコフェロールを含むトコフェロール類である。スクアレンを含むエマルジョンが特に好ましい。油の混合物を用いることができる。
【0056】
界面活性剤は、「HLB」(親水性/親油性バランス)によって分類することができる。本発明の好ましい界面活性剤は、少なくとも10、好ましくは少なくとも15、より好ましくは少なくとも16のHLBを有する。適当な界面活性剤の例は、ポリオキシエチレンソルビタンエステル界面活性剤(普通はTween類と呼ばれている)、特にポリソルベート20およびポリソルベート80、DOWFAXTMの商品名で販売されているエチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)および/またはブチレンオキシド(BO)のコポリマー、例えば直鎖EO/POブロックコポリマー、繰り返しエトキシ(オキシ−1,2−エタンジイル)基の数が変化してよく、オクトキシノール−9(Triton X−100またはt−オクチルフェノキシポリエトキシエタノール)が特に重要であるオクトキシノール類、(オクチルフェノキシ)ポリエトキシエタノール(IGEPAL CA−630/NP−40)、リン脂質、例えばホスファチジルコリン(レシチン)、ラウリル、セチル、ステアリルおよびオレイルアルコールから誘導されるポリオキシエチレン脂肪エーテル(Brij界面活性剤として知られている)、例えばトリエチレングリコールモノラウリルエーテル(Brij 30)、ならびにソルビタンエステル(普通はSPANとして知られている)、例えばトリオレイン酸ソルビタン(Span 85)およびモノラウリン酸ソルビタンを含むがこれに限定されるものではない。エマルジョン中に含むと好ましい界面活性剤は、Tween 80(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート、ポリソルベート80)、Span 85(ソルビタントリオレアート)、レシチンおよびTriton X−100である。ポリソルベート80を含むと好ましい。
【0057】
界面活性剤の混合物、例えばTween 80/Span 85混合物を用いることができる。ポリオキシエチレンソルビタンエステル、例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート(Tween 80)と、オクトキシノール、例えばt−オクチルフェノキシポリエトキシエタノール(Triton X−100)との組み合わせも適している。別の有用な組み合わせは、laureth 9と、ポリオキシエチレンソルビタンエステルおよび/またはオクトキシノールとを含む。
【0058】
界面活性剤の好ましい量(重量%)は、ポリオキシエチレンソルビタンエステル(例えばTween 80)0.01から1%、特に約0.1%、オクチルまたはノニルフェノキシポリオキシエタノール(例えばTriton X−100、またはTriton系統の他の洗剤)0.001から0.1%、特に0.005から0.02%、ポリオキシエチレンエーテル(例えばlaureth 9)0.1から20%、好ましくは0.1から10%、特に0.1から1%、または約0.5%である。
【0059】
本発明に有用な特定の水中油エマルジョンアジュバントは、以下を含むがこれに限定されるものではない。
【0060】
・スクアレン、Tween 80およびSpan 85のサブミクロンエマルジョン。エマルジョンの容積組成は、約5%のスクアレン、約0.5%のポリソルベート80および約0.5%のSpan 85であってよい。重量で言えばこれらの比は4.3%のスクアレン、0.5%のポリソルベート80および0.48%のSpan 85となる。このアジュバントは、参考文献22の10章または参考文献23の12章においてより詳細に記載されているように、「MF59」として知られている[19〜21]。MF59エマルジョンはクエン酸イオン、例えば10mMクエン酸ナトリウム緩衝液を含むと有利である。
【0061】
・スクアレン、α−トコフェロールおよびポリソルベート80を含むエマルジョン。これらのエマルジョンは、2から10%のスクアレン、2から10%のトコフェロール、および0.3から3%のTween 80を有してよく、スクアレン:トコフェロールの重量比は好ましくは≦1(例えば0.90)である。なぜならば、これがより安定なエマルジョンを提供するからである。スクアレンとTween 80とは、約5:2の容積比、または約11:5の重量比で存在してよい。Tween 80をPBS中に溶解させて2%溶液とし、次にこの溶液の90mlを(5gのDL−α−トコフェロールおよび5mlスクアレン)の混合物と混合し、次に混合物をマイクロフルイダイズすることによって1つのそのようなエマルジョンを得ることができる。得られるエマルジョンは、サブミクロン、例えば100から250nm、好ましくは約180nmの平均直径を有する油滴を有してよい。
【0062】
・スクアレン、トコフェロールおよびTriton洗剤(例えばTriton X−100)のエマルジョン。エマルジョンは、3d−MPL(下を参照)も含んでよい。エマルジョンは、リン酸緩衝液を含んでよい。
【0063】
・ポリソルベート(例えばポリソルベート80)、Triton洗剤(例えばTriton X−100)およびトコフェロール(例えばα−トコフェロールスクシナート)を含むエマルジョン。エマルジョンは、これらの3つの成分を約75:11:10の質量比(例えば750μg/mlのポリソルベート80、110μg/mlのTriton X−100および100μg/mlのα−トコフェロールスクシナート)で含んでよく、これらの濃度は、抗原由来のこれらの成分の任意の寄与を含むべきである。エマルジョンは、スクアレンも含んでよい。エマルジョンは、3d−MPL(下を参照)も含んでよい。水相は、リン酸緩衝液を含んでよい。
【0064】
・スクアラン、ポリソルベート80およびポロキサマー401(「PluronicTM L121」)のエマルジョン。エマルジョンは、リン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)中で処方することができる。このエマルジョンは、ムラミルジペプチドについての有用な送達ビヒクルであり、「SAF−1」アジュバント(0.05〜1%のThr−MDP、5%のスクアラン、2.5%のPluronic L121および0.2%のポリソルベート80)中でスレオニル−MDPとともに用いられた[24]。それは、「AF」アジュバント(5%のスクアラン、1.25%のPluronic L121および0.2%のポリソルベート80)の場合のように、Thr−MDPなしで用いてもよい[25]。マイクロフルイダイゼーションが好ましい。
【0065】
・スクアレン、水性溶媒、ポリオキシエチレンアルキルエーテル親水性非イオン界面活性剤(例えばポリオキシエチレン(12)セトステアリルエーテル)および疎水性非イオン界面活性剤(例えばソルビタンエステルまたはマンニドエステル、例えばソルビタンモノオレアートもしくは「Span 80」)を含むエマルジョン。このエマルジョンは、好ましくは熱可逆性であり、および/または200nm未満のサイズを有する油滴を少なくとも90容積%有する[26]。エマルジョンは、アルジトール、凍結保護剤(例えば、ドデシルマルトシドおよび/またはスクロースなどの糖)、および/またはアルキルポリグリコシドの1つ以上も含んでよい。そのようなエマルジョンは凍結乾燥させてよい。
【0066】
・0.5〜50%の油、0.1〜10%のリン脂質、および0.05〜5%の非イオン界面活性剤を有するエマルジョン。参考文献27に記載されているように、好ましいリン脂質成分は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、スフィンゴミエリンおよびカルジオリピンである。サブミクロンの液滴サイズが有利である。
【0067】
・非代謝性の油(例えば軽油)および少なくとも1つの界面活性剤(例えばレシチン、Tween 80またはSpan 80)のサブミクロンの水中油エマルジョン。添加剤、例えばQuil Aサポニン、コレステロール、サポニン−親油物質結合体(例えば、グルクロン酸のカルボキシル基を介するデスアシルサポニンへの脂肪族アミンの付加によって作り出され、参考文献28に記載されているGPI−0100)、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(dimethydioctadecylammonium)および/またはN,N−ジオクタデシル−N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)プロパンジアミンが含まれてよい。
【0068】
・鉱油、非イオン親油性エトキシル化脂肪アルコール、および非イオン親水性界面活性剤(例えばエトキシル化脂肪アルコールおよび/またはポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー)を含むエマルジョン[29]。
【0069】
・鉱油、非イオン親水性エトキシル化脂肪アルコール、および非イオン親油性界面活性剤(例えばエトキシル化脂肪アルコールおよび/またはポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー)を含むエマルジョン[29]。
【0070】
・サポニン(例えばQuil AまたはQS21)およびステロール(例えばコレステロール)がらせん形ミセルとして結合しているエマルジョン[30]。
【0071】
ワクチン中のHA含量を測定すること、およびバルクワクチンを所望のHA含量に希釈することの重要性は、不活化インフルエンザワクチンがHAレベルによって標準化されるので生じる。現行のワクチンは、通常は株あたり約30μg/mlのHAを含んでいるが、例えば小児用または非常事態においてこれより低い用量も用いられている。分数の用量、例えば1/2(すなわちFOCETRIATMにおける15μg/mlのHA)、1/4(すなわち投与されるときのPREPANDRIXTMにおける7.5μg/ml)、および1/8が用いられ[31,32]、高用量(例えば3倍または9倍用量[33,34])も用いられてきた。従って、希釈が行われてインフルエンザウイルス株あたり0.1から200μg/ml、好ましくは1から150μg/ml、例えば1〜90μg/ml、1〜20μgml、0.1〜15μg/ml、0.1〜10μg/ml、0.1〜7.5μg/ml、0.5〜5μg/ml、3.75〜15μg/mlなどのHA濃度が得られてよい。特定の希釈後濃度は、例えば約90μg/ml、約45μg/ml、約30μg/ml、約15μg/ml、約10μg/ml、約7.5μg/ml、約5μg/ml、約3.8μg/ml、約3.75μg/ml、約1.9μg/ml、約1.5μg/mlなどを含む。ワクチン中にアジュバントが存在するときはもっと低い濃度(例えば<30μg/ml)が最も有用である。いくつかの研究においては(例えば参考文献35)、180μg/mlという高さの濃度が用いられたことがあるが、本発明の組成物は、普通は≦30μg/mlのHA濃度を有する。
【0072】
(医薬品組成物)
患者への投与のためのHA含有組成物は、薬学的に許容されるものである。それらは、普通はHAおよび任意選択のアジュバントに加えて成分を含み、例えばそれらは通常は1つ以上の医薬品キャリア(単数または複数)および/または賦形剤(単数または複数)を含む。参考文献36においてそのような成分の詳細な考察が入手可能である。
【0073】
医薬品組成物は、一般的に水性の形(例えば注射用)であるが、固体投与形も用いることができ、インフルエンザワクチン投与用に知られている。
【0074】
医薬品組成物は、防腐剤、例えばチオメルサール(例えば10μg/mlで)または2−フェノキシエタノールを含んでよい。しかし、ワクチンは実質的に水銀材料を含むべきでなく(すなわち5μg/ml未満)、例えばチオメルサールを含まないものが好ましい[37]。水銀を含まないワクチンがより好ましい。防腐剤を含まないワクチンが特に好ましい。
【0075】
張度を制御するために、水性医薬品組成物は、生理塩、例えばナトリウム塩を含んでよい。塩化ナトリウム(NaCl)が好ましく、塩化ナトリウムは1から20mg/mlで存在してよい。存在してよい他の塩は、塩化カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二ナトリウム脱水物、塩化マグネシウム、塩化カルシウムなどを含む。
【0076】
水性医薬品組成物は、一般的に200mOsm/kgから400mOsm/kg、好ましくは240〜360mOsm/kgの重量オスモル濃度を有し、より好ましくは290〜310mOsm/kgの範囲に属する。重量オスモル濃度は、以前にワクチン投与によって引き起こされる痛みに影響を及ぼさないと報告された[38]ことがあるが、それでも重量オスモル濃度をこの範囲に保つことが好ましい。
【0077】
医薬品組成物は、1つ以上の緩衝剤を含んでよい。通常の緩衝剤は、リン酸緩衝剤、トリス緩衝剤、ホウ酸緩衝剤、コハク酸緩衝剤、ヒスチジン緩衝剤、またはクエン酸緩衝剤を含む。緩衝剤は、通常は5〜20mMの範囲で含まれる。緩衝剤は、エマルジョンの水相中にあってよい。
【0078】
医薬品組成物のpHは、一般的に5.0から8.1、より通常は6.0から8.0、例えば6.5から7.5、または7.0から7.8である。従って、本発明のプロセスは、用量抽出またはパッケージングの前にバルクのpHを調節するステップを含んでよい。
【0079】
医薬品組成物は、好ましくは無菌である。医薬品組成物は、好ましくはグルテンを含まない。
【0080】
好ましい医薬品組成物は、低いエンドトキシン含量、例えば1IU/ml未満、好ましくは0.5IU/ml未満を有する。エンドトキシン測定についての国際単位は周知であり、例えば国際標準、例えばNIBSCから入手可能な2nd International Standard(Code 94/580−IS)との比較によって、試料について計算することができる[39,40]。卵の中で増殖させたウイルスから調製される現行のワクチンは、0.5〜5IU/mlの領域のエンドトキシンレベルを有する。
【0081】
医薬品組成物は、抗生物質(例えばネオマイシン、カナマイシン、ポリミキシンB)を含まないことがある。
【0082】
医薬品組成物は、単一免疫化についての材料を含んでもよく、複数免疫化についての材料(すなわち「複数用量」組成物、この場合、抽出単位用量は2人以上の患者の用量に十分な材料を含む)を含んでもよい。複数用量の用意は、普通はワクチン中に防腐剤を含む。この必要を回避するために、ワクチンは材料の取り出しのための無菌アダプターを有する容器中に含まれてよい。
【0083】
インフルエンザワクチンは、通常は筋肉内注射によって約0.5mlの投薬量容積で投与されるが、半用量(すなわち約0.25ml)が小児に投与されてよく、それに応じて単位用量が選ばれ、例えば単一の患者への投与のために、0.5ml用量を与える単位用量が選ばれる。より低い投薬量容積が用いられてよく、例えば皮内注射用には0.1ml容積が有用である。
【0084】
(組成物またはキット成分のパッケージング)
本発明のプロセスは、ワクチンが容器に入れられる、特に医者による使用のための配布用の容器に入れられるステップを含んでよい。このステップは、普通はバルクからの材料の抽出と、容器の中へそれを入れることを含む。
【0085】
水性ワクチンのための適当な容器は、バイアル、点鼻スプレーおよび使い捨て注射器を含む。それらは、無菌であるべきである。
【0086】
組成物/成分がバイアルに入れられる場合、バイアルは好ましくはガラスまたはプラスチック材料でできている。バイアルは好ましくは組成物がそれに加えられる前に滅菌される。ラテックス感受性患者に関わる問題を回避するために、ラテックスを含まない栓でバイアルを密封し得、すべてのパッケージング材料中にラテックスがないことが好ましい。バイアルはワクチンの単一用量を含んでよく、あるいは2以上の用量(「複数用量」バイアル)、例えば10用量を含んでよい。好ましいバイアルは、無色ガラスでできている。
【0087】
バイアルは、注射器をその中に挿入することができるように適合させられているキャップ(例えばLuerロック)を有してよい。バイアルは、特に複数用量バイアルの場合に、その内容物の無菌取り出しを可能にするキャップを有してよい。
【0088】
組成物/成分が注射器中にパッケージされる場合、注射器は、それに取り付けられた針を有してよい。針が取り付けられていないなら、組み立ておよび使用のための別個の針が注射器とともに供給されてよい。そのような針はさやに納められていてよい。安全針が好ましい。1インチ23ゲージ、1インチ25ゲージ、および5/8インチ25ゲージの針が通常である。注射器は剥離式ラベルと共に提供されてよく、剥離式ラベルには記録保持を容易にするためにロット番号、インフルエンザ季節および内容物の有効期限が印刷されてよい。注射器の中のプランジャーは、好ましくはプランジャーが吸引中に偶然に外れることを防ぐ止め具を有する。注射器は、ラテックスゴムキャップおよび/またはプランジャーを有してよい。使い捨て注射器は、単一用量のワクチンを含む。注射器は、一般的に針を取り付ける前に先端に封をする先端キャップを有し、先端キャップは好ましくはブチルゴムでできている。注射器と針とが別々にパッケージされる場合、針は好ましくはブチルゴムシールドを備える。有用な注射器は、商品名「Tip−Lok」TMで販売されているものである。他の有用な注射器は、皮内投与に適しているもの、例えば約1.5mmの長さの針を有するマイクロインジェクションデバイスを含む。
【0089】
容器は、例えば小児への送達を容易にするように、しるしを付けて半用量容積を示してよい。例えば、0.5mlの用量を含んでいる注射器に0.25ml容積を示すしるしを付けてよい。
【0090】
ガラス容器(例えば注射器またはバイアル)が用いられる場合、ソーダライムガラスではなくホウ珪酸ガラスから作られた容器を用いることが好ましい。
【0091】
組成物は、ワクチンの詳細、例えば投与のための指示事項、ワクチン内の抗原の詳細などを含むリーフレットと(例えば同じ箱の中で)組み合わされてよい。指示事項は、例えばワクチン投与後のアナフィラキシー反応の場合に備えてアドレナリンの溶液を直ぐに利用できるようにしておくなどの警告も含んでよい。
【0092】
(処置の方法およびワクチンの投与)
本発明の組成物は、動物、例えばヒトへの投与に適しており、本発明は、本発明の組成物を患者に投与するステップを含む、動物において免疫応答を高める方法を提供する。
【0093】
本発明は、例えば動物における免疫応答を高めるための薬剤として用いるための本発明のキットまたは組成物も提供する。本発明は、動物における免疫応答を高めるための薬剤の製造における本発明の組成物の使用も提供する。
【0094】
本発明の方法および使用によって高められる免疫応答は、一般的に抗体応答、好ましくは防御抗体応答を含む。インフルエンザウイルスワクチン投与後に抗体応答、中和能力および防御を評価するための方法は当分野において周知である。ヒト研究は、ヒトインフルエンザウイルスのHAに対する抗体力価が防御と相関している(約30〜40の血清試料血球凝集阻害力価が相同ウイルスによる感染からの約50%の防御を生じる)ことを示した[41]。抗体応答は、通常は血球凝集阻害によって、マイクロ中和によって、一元放射免疫拡散法(SRID)によって、および/または一元放射溶血(SRH)によって測定される。これらのアッセイ技法は、当分野において周知である。
【0095】
インフルエンザワクチンは、さまざまな方法で投与することができる。最も好ましい免疫化経路は、筋肉内注射(例えば腕または脚に)によってであるが、他の利用可能な経路は、皮下注射、鼻腔内[42〜44]、皮内[45,46]、経口[47]、経皮(transcutaneous)、経皮(transdermal)[48]などを含む。皮内および鼻腔内経路が魅力的である。皮内投与は、例えば約1.5mm長の針を有するマイクロインジェクションデバイスを含んでよい。
【0096】
本発明によって調製されたワクチンは、小児と大人との両方を処置するために用いてよい。インフルエンザワクチンは、現在、6ヶ月齢からの小児および大人の免疫化に用いることが薦められている。従って、患者は、1才未満、1〜5才、5〜15才、15〜55才または少なくとも55才であってよい。ワクチンを受けるのが好ましい患者は、高齢者(例えば≧50歳、≧60歳、好ましくは≧65歳)、幼若者(例えば≦5歳)、入院患者、ヘルスケア作業者、軍部および軍人、妊婦、慢性病者、免疫不全患者、ワクチンを受ける前の7日間に抗ウイルス化合物(例えばオセルタミビルまたはザナミビル化合物、下記参照)を服用した患者、卵アレルギーを有する人々および海外旅行をする人々である。しかし、ワクチンはこれらの群にだけ適しているわけではなく、集団においてより一般的に用いてよい。
【0097】
本発明の好ましい組成物は、効力に関するCPMP基準の1、2または3を満たす。成人(18〜60歳)においては、これらの基準は、(1)≧70%セロプロクション、(2)≧40%セロコンバージョン、および/または(3)≧2.5倍のGMT上昇である。高齢者(>60歳)においては、これらの基準は、(1)≧60%セロプロクション、(2)≧30%セロコンバージョン、および/または(3)≧2倍のGMT上昇である。これらの基準は、少なくとも50人の患者による非盲検検査にもとづく。これらの基準は、ワクチン中の各株に適用される。
【0098】
処置は、単一用量計画または複数用量計画によってであってよい。一次免疫化計画においておよび/または追加免疫化計画において複数用量が用いられてよい。複数用量計画においては、同じかまたは異なる経路、例えば非経口の一次および粘膜の追加、粘膜の一次および非経口の追加などによって、さまざまな用量が与えられてよい。2つ以上の用量(通常は2用量)の投与は、免疫学的にナイーブな患者、例えば以前にインフルエンザワクチンを受けたことがまったくない人々の場合、または新しいHA亜型に対してワクチン投与する場合に特に有用である。複数用量は、通常は少なくとも1週(例えば約2週、約3週、約4週、約6週、約8週、約12週、約16週など)離して投与される。
【0099】
本発明によって製造されたワクチンは、他のワクチンと実質的に同時に(例えば同じ診察あるいはヘルスケア専門家またはワクチン投与センターへの訪問中に)、例えばはしかワクチン、おたふくかぜワクチン、風疹ワクチン、MMRワクチン、水痘ワクチン、MMRVワクチン、ジフテリアワクチン、破傷風ワクチン、百日咳ワクチン、DTPワクチン、結合b型H.influenzaeワクチン、不活化ポリオウイルスワクチン、B型肝炎ウイルスワクチン、髄膜炎菌結合ワクチン(例えばA−C−W135−Y4価ワクチン)、RSウイルスワクチン、肺炎球菌結合ワクチンなどと実質的に同時に患者に投与されてよい。肺炎球菌ワクチンおよび/または髄膜炎菌ワクチンと実質的に同時での投与は高齢の患者において特に有用である。
【0100】
同様に、本発明のワクチンは、抗ウイルス化合物、特にインフルエンザウイルスに対して活性な抗ウイルス化合物(例えばオセルタミビルおよび/またはザナミビル)と実質的に同時に(例えば同じ診察またはヘルスケア専門家への訪問中に)患者に投与されてよい。
【0101】
(全般)
用語「を含む(comprising)」は、「を内包する(including)」ならびに「からなる(consisting)」を包含し、例えばX「を含む(comprising)」組成物はXだけからなってもよいし、追加のなにかを含んで例えばX+Yであってよい。
【0102】
用語「実質的に」は、「完全に」を排除せず、例えばYを「実質的に含まない」組成物はYを完全に含まないことがある。必要な場合、用語「実質的に」は本発明の定義から省略されてよい。
【0103】
数値xと関連する用語「約」は、任意選択であり、例えばx±10%を意味する。
【0104】
上記で「GI」番号法が用いられている。GI番号、または「GenInfo Identifier」は、配列がNCBIのデータベースに加えられるときにNCBIによって処理される各配列記録に連続的に割り当てられる一連の数字である。GI番号は、配列記録のアクセッション番号となんの類似性もない。配列が更新される(例えば訂正のために、またはより多くの注釈もしくは情報を加えるために)とき、新しいGI番号を受ける。従って、所定のGI番号と関連する配列は決して変わらない。
【0105】
特に断らない限り、2つ以上の成分を混合するステップを含むプロセスは、いかなる特定の混合順も必要としない。従って、成分は、いかなる順序で混合されてもよい。3つの成分がある場合、2つの成分を互いに組み合せることができ、次に、この組み合わせを第3の成分と組み合わせるなどが、あり得る。
【0106】
細胞の培養において動物(特にウシ)材料が用いられる場合、それらは感染性海綿状脳症(TSE)ではない、特にウシ海綿状脳症(BSE)ではない供給源から得るべきである。全体として、動物由来材料の完全な非存在下で細胞を培養することが好ましい。
【0107】
組成物の一部として化合物が体に投与される場合、代りにその化合物を適当なプロドラッグによって置き換えてよい。
【0108】
再集合または逆遺伝学手順のために細胞基質が用いられる場合、好ましくは、例えばPh Eur総則5.2.3章にあるようにヒトワクチン製造における使用が承認されたものである。
【0109】
ポリペチド配列の間の同一性は、好ましくはMPSRCHプログラム(Oxford Molecular)に実装されているSmith−Waterman相同検索アルゴリズムにより、ギャップオープンペナルティー=12およびギャップ延長ペナルティー=1のパラメータを用いるアフィンギャップ検索を用いて決定される。
【発明を実施するための形態】
【0110】
(発明を実施するための様式)
1価インフルエンザウイルス抗原バルク(「モノバルク」)中のインフルエンザHAを定量化する方法としてRP−HPLCが試験された。RP−HPLCは、モノバルクが高い比純度および安定なHAを有する場合、HAの良好な定量性を示すことが見いだされ、定量的結果は標準SRID結果と密接に合致した。しかし、ワクチンが顕著な量の変性HAを含む状況になると、RP−HPLC法はもはやSRIDアッセイと合致しなかった。
【0111】
例えば、次の表は、4つのA/H3N2モノバルクからの結果を示している。BCAによって全タンパク質濃度(μg/ml)が評価され、次にSRID(標準プロトコル)とRP−HPLCとの両方によってHA濃度(μg/ml)が評価された。RP−HPLCは、60℃において0.8ml/分の流速で作動している2.1mm×100mmのPorosTMR1/10カラム上で実施された。移動相は、(A)水中0.1%のTFA、5%のアセトニトリル、および(B)100%アセトニトリル中0.1%のTFA(溶媒B)であり、6.5分間で20%/80%から0%/100%のA/B混合物へ変化させた。
【0112】
RP−HPLCの前に、モノバルク中のHAは既にHA1とHA2とに切断されていることが見いだされ、DTTを加えて(最終濃度25mM、続いて90℃で10分間加熱)これらが分離されることを確実にした。試料をPBSで希釈し、較正範囲とした。この方法は、HAのNIBSC参照試料(濾過していない)を用いて較正された。
【0113】
RP−HPLCはHA1ピークを容易に分離することができ、従って定量化のために用いられた。結果は、次の通りであった。
【0114】
【表1】

従って、HPLCはモノバルクAについてはSRIDと良好に一致したが、B、CまたはDについては一致しなかった。これらの3つのモノバルクは品質が低いことが見いだされた。従って、RP−HPLC法は、モノバルクの品質にかかわりなく良好な結果が得られるように改善されなければならなかった。
【0115】
限外濾過を用いるHPLC前の処理ステップが導入された。PES膜を有する500μl容量のVivaSpinTM300kD MWCOスピンカラムがモノバルク中の凝集したHAを捕捉し、濾液はRP−HPLCによって容易に分析されてSRIDと良好に一致する結果が得られることが見いだされた。
【0116】
限外濾過の前に試料が(必要なら)希釈されて<100μg/mlのタンパク質濃度が得られた。限外濾過ステップとRP−HPLCステップとの間で1%のZwittergent(9部の濾液+1部の10%のZwittergent 10%)の最終濃度を有する濾液が室温で30分間インキュベートされた。前と同じようにRP−HPLCが実施された。
【0117】
次の表は、SRID、または前処理UFステップを行ってRP−HPLCによって測定されたHA含量を、UFステップを行わずに測定されたHA含量と比較して示している。
【0118】
【表2】

従って、前処理UFステップは、RP−HPLCの結果をSRIDの結果と密接に対応させる。
【0119】
A/H1N1株を用いて予備的な実験も行われた。この方法によりHA1を精製することに成功し、UF前処理により凝集体を取り除いたが、RP−HPLCによって測定された抗原含量はSRIDとあまり良好に相関しなかった。しかし、関連する標準抗原が試験されたとき、その含量はその参照値と>2倍相違した。従って、標準抗原に問題があるようであり、従ってこれらの実験の結果は信頼性が低い。
【0120】
結論として、RP−HPLCは、特に顕著な量の変性HAを有するモノバルクにおいてHA含量を系統的に過大評価する。しかし、前処理UFステップの後で、値はSRIDと非常に密接に一致する。
【0121】
例を示すためにだけ本発明が記載されてきたことと、本発明の範囲および精神の範囲内にとどまりながら改変を成し得ることが理解される。
【0122】
【数1】

【0123】
【数2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中のインフルエンザウイルスHAを精製するための方法であって、(i)該試料の限外濾過によって濾液を提供するステップと、(ii)該濾液のRP−HPLCによって該濾液中の任意のHAを該濾液中の任意の他の成分から分離するステップと、を含む、方法。
【請求項2】
ステップ(i)は、300kDaのカットオフを有する限外濾過膜を用いる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(ii)は、500〜5000Åの孔サイズを有するポリスチレンジビニルベンゼン粒子のRP−HPLC支持体を用いる、前述の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
前記試料が、ただ1つのインフルエンザウイルス株由来のHAを含む、前述の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記HAが、インフルエンザAウイルスHAを含む、前述の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記HAが、H1、H3またはH5のHAである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記HAが、インフルエンザBウイルスHAを含む、前述の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記試料中のHAが、インフルエンザビリオン由来である、前述の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記試料が、(i)インフルエンザウイルスHA、および(ii)インフルエンザウイルス抗原PB1、PB2、PA、NP、NA、M1、M2、NS1および/またはNS2を含む、前述の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記試料が、インフルエンザビリオン全体を含む、前述の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記試料が、スプリットインフルエンザビリオンを含む、前述の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記試料が、インフルエンザビリオン由来の精製された表面抗原を含む、前述の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記HAが、HA1である、前述の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記試料が、(i)血清成分、(ii)卵タンパク質、および/または(iii)ニワトリDNAを含まない、前述の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記試料が、インフルエンザウイルスタンパク質以外のウイルスタンパク質を含まない、前述の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記試料が、洗剤を含む、前述の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記試料が、バルクワクチンである、前述の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
ワクチンを分析するための方法であって、(a)前述の請求項のいずれかに記載の方法によって該ワクチンまたはその試料中のHAを精製するステップと、(b)ステップ(a)の結果を用いて該ワクチン中のHA濃度を計算するステップと、を含む、方法。
【請求項19】
所望のHA濃度を有するバルクワクチンを提供するための方法であって、(a)請求項16に記載の方法によってワクチンまたはその試料中のHAを精製するステップと、(b)ステップ(a)の結果を用いて該バルクワクチン中のHA濃度を計算するステップと、(c)ステップ(b)の結果を用いて該バルクワクチンを希釈して該所望のHA濃度を得るステップと、を含む、方法。
【請求項20】
前記所望のHA濃度が、1から150μg/ml、例えば90μg/ml、45μg/ml、30μg/ml、15μg/ml、10μg/ml、7.5μg/ml、5μg/ml、3.8μg/ml、3.75μg/ml、1.9μg/ml、または1.5μg/mlである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
患者に用いるためのワクチンを提供するための方法であって、請求項19または請求項20に記載の方法によって所望のHA含量を有するバルクワクチンを調製するステップと、その後、該希釈されたバルクから1つ以上の単位用量のワクチンを抽出するステップと、を含む、方法。
【請求項22】
抽出された単位用量がキット成分として、ワクチンアジュバントである第2のキット成分と組み合わされてパッケージされる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
バルクのアジュバント付加ワクチンを提供するための方法であって、請求項19または請求項20に記載の方法によって所望のHA含量を有するバルクワクチンを調製するステップと、その後、該希釈されたバルクワクチンをアジュバントと混合するステップと、を含む、方法。
【請求項24】
患者に用いるためのアジュバント付加ワクチンを提供するための方法であって、請求項23に記載の方法によってバルクアジュバント付加ワクチンを提供するステップと、その後、1つ以上の単位用量のワクチンを該バルクから抽出するステップと、を含む、方法。


【公表番号】特表2012−528139(P2012−528139A)
【公表日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−512471(P2012−512471)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【国際出願番号】PCT/IB2010/001423
【国際公開番号】WO2010/136896
【国際公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】