説明

インフルエンザウイルス検出用組成物およびキットならびにそれらの使用方法

ポリペプチドのシアル酸結合ドメインに結合したシアル酸を含む単離組成物を提供する。その使用およびそれを含むキットもまた提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インフルエンザウイルスを検出するために使用できる新規な組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
インフルエンザAおよびBウイルスは、米国だけで毎年推定3千万〜5千万人の感染症がある急性呼吸器疾患の主要な原因である。インフルエンザAは、数百万人の人々を死亡させた1919年の「スペインかぜ」など、重大な流行病の原因となっている。多くのウイルス性および細菌性感染症は、インフルエンザと同様の症状で存在し得る。
【0003】
種々の動物種に生じる多数の変異および進化のため、種々のサブタイプのウイルスが季節ごとに出現する。トリインフルエンザ(H5N1)ウイルスは、アジアにおいて種のバリアを越えた前例のない動物流行性の病原性の高いウイルスである。このウイルスは、ヒトに死をもたらし、さらに集団発生により、他のヒト集団もまた危険になり得ることが示されている。H5N1は、より高い病原性を獲得しつつあることが示されており、スペインかぜウイルスの2.5%の死亡率と比較して、幼児および小児では89%の致死率に達している。今日まで、H5N1の限定的で非持続性のヒトからヒトへの伝染が報告されている。H5N1のトリからヒトへ、可能性として環境からヒトへの伝染と一致する証拠がある。H5N1株が、ヒトからヒトへの効率的な伝染を一旦獲得すると、汎発流行性の危険性が劇的に増加するであろう。
【0004】
臨床材料中のウイルス同定に関する臨床検査が広く用いられており、種々の異なる検出方法論が利用できる。非特許文献1のテキストでは、インフルエンザを含む、広範囲のウイルスに使用される方法を一般的に考察している。
【0005】
多くの試験が、インフルエンザAおよびBウイルスの診断のために利用できる。インフルエンザウイルスを同定する従来の方法では、感受性および特異性の高い細胞培養を使用している。あいにくと、インフルエンザウイルスの培養、単離および同定に必要な時間は2日から10日の間と考えられ、したがって、医師を適切な療法に導くことに関しては殆ど役に立たない。インフルエンザウイルス感染は通常、自己限定性であることから、治療を有効にするには診断が迅速でなければならない。言い換えれば、このような細胞培養法は通常、遡及的疫学情報の提供においてのみ価値がある。
【0006】
大部分のインフルエンザ検出法およびインフルエンザ株またはサブタイプの間を識別する方法では、RT-PCRまたはPCRによりインフルエンザ遺伝子材料の存在が検出される[非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4]。これらの方法では、遺伝子増幅反応の結果を検出するために異なる手段が用いられる。RT-PCRおよびPCR反応は複雑であり、したがって、専門的な実験作業が必要とされ、8時間も時間がかかる場合がある。
【0007】
幾つかの検出法は、A型もしくはB型核タンパク質[特許文献1]あるいはH1N1またはH2N2サブタイプ赤血球凝集素[特許文献2]に特異的なモノクローナル抗体に基づいている。しかしながら、免疫ベースのアッセイは、労働集約的であり、かなりの技術熟達化を必要とし、しばしば解釈が困難な結果を伴う。
【0008】
最近、インフルエンザAに特異的な二、三の迅速な直接試験が利用できるようになった。それにより、モノクローナル免疫蛍光アッセイ(IFA)が報告されており(非特許文献5)、少なくとも1種の酵素の免疫アッセイ(EIA)が利用できる(非特許文献6)。インフルエンザAに対するこれらの迅速な検出法の多くの比較が報告されている;例えば、治療手段および感染制御手段の実施に間に合うようなウイルスの同定、および疫学的目的のために社会に流行しているインフルエンザ株の抗原構成のモニターの双方を可能にするために、培養物の単離と共に直接的検体試験の使用を推奨した非特許文献7を参照されたい。IFA法は、労働集約的であることが報告されており、かなりの技術熟達化を必要とし、しばしば解釈の困難な結果を伴う。一方、ETA法(Directigen FLU-A; Becton Dickinson Microbiology Systems)は、高レベルの偽陽性結果を与えるため、このアッセイは、直接的免疫蛍光試験に追加するか、またはその代替アッセイとしてのみ、検査室で使用すべきであると勧告されている(非特許文献8)。
【0009】
インフルエンザビリオン類はそれらの表面上に、宿主細胞の糖結合体上のシアル酸を認識する、2つの糖タンパク質、赤血球凝集素(HA)およびノイラミニダーゼ(NA)を含有する。HAは、細胞表面のシアリルオリゴ糖類に結合し、次いで細胞へのウイルスの侵入を媒介するが、一方、NAは、新たに合成されたHAおよびNAポリペプチドのオリゴ糖類上のシアル酸を除去することにより後代ビリオンの凝集を防ぐ。シアル酸(Neu5Ac)と前末端基糖とを結合するグリコシド結合は、インフルエンザビリオンのノイラミニダーゼ活性の基質である。ノイラミニダーゼは、この結合を加水分解し、それによって前末端基糖からNeu5Acを開裂する。NAはまた、宿主細胞の糖結合体からシアル酸を除去することにより感染細胞からの後代ビリオン類の溶出を容易にする[非特許文献9]。
【0010】
インフルエンザウイルスの感染症に重要な役割を果たすHAおよびNAは、インフルエンザ研究の中心として注目されており、多数の研究により、種々の基質に対する種々の株のHAおよびNAの特異性および優先度が調べられている。
【0011】
インフルエンザウイルスのHA受容体特異性は、元の宿主種によって異なる。すなわち、HAは、ウイルスが単離された宿主の細胞に発現されたシアル酸-ガラクトース結合を優先的に認識する。例えば、カモの腸管上皮細胞は、カモインフルエンザウイルスのHAにより優先的に認識されるα2,3結合(NeuAcα2-3Gal)を介してガラクトースに結合したN-アセチルノイラミン酸(NeuAc)を主として発現する。同様に、ヒトウイルスHAは、NeuAcα2-6Galであるヒト気管上皮細胞に発現したシアル酸の一次結合を優先的に結合する。同様に、NeuAcα2-3GalおよびNeuAcα2-6Galに対するNA特異性は試験されるウイルス分離体に依存する。
【0012】
特許文献3および特許文献4の双方は、インフルエンザウイルスの同定のために酵素ベースの検出法を教示している。そこに教示された酵素ベースアッセイでは、ウイルス性ノイラミニダーゼと色素産生基質との反応によりウイルスの存在が検出される。色素産生基質が分解して光を生じ、次いでその光を検出することができる。化学発光基質材料としては、4-アルコキシ-N-アセチルノイラミン酸および4,7-ジアルコキシ-N-アセチルノイラミン酸の酵素的に作動可能な1,2-ジオキセタン誘導体ならびに他のN-ノイラメリック誘導体が挙げられる。特許文献5は、インフルエンザノイラミニダーゼの種々のタイプにより種々の反応性を示し、したがって特定のタイプのインフルエンザ感染を識別できるN-アセチルノイラミン酸の色素産生誘導体を教示している。したがって、インフルエンザA型およびB型ウイルスは、4,7-ジアルコキシ-N-アセチルノイラミン酸を用いて、パラインフルエンザ1型、2型、3型および4型、ならびにおたふく風邪と識別することができる。しかしながら、この基質は、HAサブタイピングをも含むインフルエンザの種々の株を識別することはできない。
【特許文献1】米国特許第5,316,910号
【特許文献2】米国特許第5,589,174号
【特許文献3】米国特許第5,252,458号
【特許文献4】米国特許第7,081,352号
【特許文献5】米国特許第5,663,055号
【特許文献6】米国特許第6,243,980号
【特許文献7】米国特許第4,666,828号
【特許文献8】米国特許第4,683,202号
【特許文献9】米国特許第4,801,531号
【特許文献10】米国特許第5,192,659号
【特許文献11】米国特許第5,272,057号
【特許文献12】米国特許第3,791,932号
【特許文献13】米国特許第3,839,153号
【特許文献14】米国特許第3,850,752号
【特許文献15】米国特許第3,850,578号
【特許文献16】米国特許第3,853,987号
【特許文献17】米国特許第3,867,517号
【特許文献18】米国特許第3,879,262号
【特許文献19】米国特許第3,901,654号
【特許文献20】米国特許第3,935,074号
【特許文献21】米国特許第3,984,533号
【特許文献22】米国特許第3,996,345号
【特許文献23】米国特許第4,034,074号
【特許文献24】米国特許第4,098,876号
【特許文献25】米国特許第4,879,219号
【特許文献26】米国特許第5,011,771号
【特許文献27】米国特許第5,281,521号
【非特許文献1】「Laboratory Diagnosis of Viral Infections」、Marcel Dekker 1992年、編集者E. H. Lennette
【非特許文献2】Hassibiら、Biophys Chem. 2005年8月1日; 116(3): 175〜85頁
【非特許文献3】Hum Mutat. 2006年7月; 27(7): 644〜53頁
【非特許文献4】Claas ECら、Lancet. 1998年; 351, 472〜477頁
【非特許文献5】Spada, B.ら、J. Virol. Methods、1991年33 305頁
【非特許文献6】Ryan-Poirier, K. A.ら、J. Clin. Microbiol.、1992年30 1072頁
【非特許文献7】Leonardi, G. P.ら、J. Clin. Microbiol.、1994年32 70頁
【非特許文献8】Waner, J. L.ら、J. Clin. Microbiol.、1991年29 479頁
【非特許文献9】Zambion、J. antimicrobial chemotherapy、1999年、44、Topic B、3〜9頁
【非特許文献10】Nadanoら(1986) J. Biol. Chem. 261: 11550〜11557頁
【非特許文献11】Kanamoriら(1990) J. Biol. Chem. 265: 21811〜21819頁
【非特許文献12】Varki (1992) Glycobiology 2: 25〜40頁
【非特許文献13】Sialic Acids: Chemistry, Metabolism and Function, R. Schauer編集(Springer-Verlag、ニューヨーク(1992))
【非特許文献14】「Carbohydrates in Drug Design」(1999年、64、7号847頁)
【非特許文献15】「Glycopeptides and Related Compounds. Synthesis, Analysis, and Applications」(1999年、64、9号、1092頁)
【非特許文献16】、「Techniques in Glycobiology」(1999年、64、10号、1215頁)
【非特許文献17】Glycochemistry. Principles, Synthesis, and Applications (Wang, P. G.、およびBertozzi, C. R.編集、Marcel Dekker、ニューヨーク-バーゼル、2001年)
【非特許文献18】Quantitative Drug Design、C. A. Ramsden GD.、17.2章、F. Choplin Pergamon Press (1992)
【非特許文献19】HeerzeらGlycobiology 5巻4号427〜433頁、1995年
【非特許文献20】John Morrow StewartおよびJanis Dillaha Young、[Solid Phase Peptide Syntheses (第二版、Pierce Chemical Company、1984年)]
【非特許文献21】Creighton T.(1983) Proteins, structures and molecular principles. WH Freeman社、ニューヨーク州
【非特許文献22】Bitterら、(1987) Methods in Enzymol. 153: 516〜544頁
【非特許文献23】Studierら、(1990) Methods in Enzymol. 185: 60〜89頁
【非特許文献24】Brissonら、(1984) Nature 310: 511〜514頁
【非特許文献25】Takamatsuら、(1987) EMBO J. 6: 307〜311頁
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【非特許文献34】Tozzoliら(2006) Clin. Chem. Lab Med. 44: 837〜42頁
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【非特許文献37】Yinnaki (2004) J. Immunoassay Immunochem. 25: 345〜57頁
【非特許文献38】Rouquette (2003) 120: 676〜81頁
【非特許文献39】Toellner (2006) Clinical Chemistry 52: 1575〜1583頁
【非特許文献40】Horejsh (2005) Nucl. Acids Res. 33頁
【非特許文献41】「Molecular Cloning: A laboratory Manual」Sambrookら、(1989)
【非特許文献42】「Current Protocols in Molecular Biology」I〜III巻Ausubel, R. M.編集(1994)
【非特許文献43】Ausubelら、「Current Protocols in Molecular Biology」、John WileyおよびSons、ボルチモア、メリーランド州(1989)
【非特許文献44】Perbal、「A Practical Guide to Molecular Cloning」、John Wiley & Sons、ニューヨーク(1988)
【非特許文献45】Watsonら、「Recombinant DNA」、Scientific American Books、ニューヨーク
【非特許文献46】Birrenら(編集)「Genome Analysis: A Laboratory Manual Series」、1〜4巻、Cold Spring Harbor Laboratory Press、ニューヨーク(1998)
【非特許文献47】「Cell Biology: A Laboratory Handbook」、I〜III巻Cellis J. E.編集(1994)
【非特許文献48】Freshneyによる「Culture of Animal Cells-A Manual of Basic Technique」、Wiley-Liss、ニューヨーク州(1994)第三版
【非特許文献49】「Current Protocols in Immunology」I〜III巻Coligan J. E.編集(1994)
【非特許文献50】Stitesら(編集)「Basic and Clinical Immunology」(第八版)、Appleton & Lange、ノーウォーク、コネチカット州(1994)
【非特許文献51】MishellおよびShiigi (編集)、「Selected Methods in Cellular Immunology」、W. H. Freeman社、ニューヨーク(1980)
【非特許文献52】「Oligonucleotide Synthesis」Gait, M. J.編集(1984)
【非特許文献53】「Nucleic Acid Hybridization」Hames, B. D.およびHiggins S. J.編集(1985)
【非特許文献54】「Transcription and Translation」Hames, B. D.およびHiggins S. J.編集(1984)
【非特許文献55】「Animal Cell Culture」Freshney, R. I.編集(1986)
【非特許文献56】「Immobilized Cells and Enzymes」IRL Press、(1986)
【非特許文献57】「A Practical Guide to Molecular Cloning」Perbal, B.、(1984)
【非特許文献58】「Methods in Enzymology」1〜317巻、Academic Press
【非特許文献59】「PCR Protocols: A Guide To Methods And Applications」、Academic Press、サンディエゴ、カリフォルニア州(1990)
【非特許文献60】Marshakら、「Strategies for Protein Purification and Characterization-A Laboratory Course Manual」CSHL Press (1996)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
多数の変異および進化のため、インフルエンザウイルスは、種々のサブタイプのウイルスが季節ごとに発生する。1つの突然変異型が、特に激烈になると世界的な恐怖に陥ることから、このようなウイルスにより生じる恐れのある汎発性流行病の拡がりをモニターし、最少にするために、ヒトおよびトリ双方における激烈タイプのインフルエンザウイルスを迅速に検出し、単離することは緊急を要する。
【0014】
このように、種々のインフルエンザ株、特にH5N1など、人々に極めて激烈で致死的となり得る株の迅速な検出に使用できる方法および基質を有することの必要性は広く認識されており、また、これは極めて有益となるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一態様によれば、ポリペプチドのシアル酸結合ドメインに結合したシアル酸を含む単離組成物が提供される。
【0016】
本発明の別の態様によれば、一般式:
X-Y-Z
(式中、
Yは、ノイラミニダーゼの基質を含み、ノイラミニダーゼによるX-Y-Zの開裂は、開裂産物X-Y'およびY''-Zを形成し、ここでY'は、Yの第一の開裂産物であり、Y''は、Yの第二の開裂産物であり;
Xは、検出可能な部分を含み;
Zは、2相分離系のうちの1つの分離相に結合できる分離部分を含み;
前記X-Y-Zは、前記ウイルス性ノイラミニダーゼの天然基質の連続部分を形成しない)である組成物が提供される。
【0017】
本発明のなお別の態様によれば、サンプル中の少なくとも1種の病原体を検出する方法であって、
(a)前記基質の開裂を可能にする条件下、前記サンプルと本発明の組成物とを接触させる段階と;
(b)前記基質の開裂をモニタリングする段階であって、前記基質の前記開裂により、サンプル中の前記少なくとも1種の病原体の存在が示される段階と、を含む方法が提供される。
【0018】
本発明のなおさらなる態様によれば、鳥類における潜在的にヒト病原性であるトリインフルエンザウイルスを検出する方法であって、
(a)トリサンプルと、ノイラミニダーゼ基質すなわちα2,6結合を含む前記ノイラミニダーゼ基質とを接触させる段階と;
(b)前記基質の前記開裂により、潜在的にヒト病原性であるトリインフルエンザウイルスが示される前記基質の開裂をモニタリングする段階と、を含む方法が提供される。
【0019】
本発明のなおさらなる態様によれば、ヒトにおけるトリインフルエンザウイルスを検出する方法であって、(a)ヒトサンプルと、NeuGcα2,3結合を含むノイラミニダーゼ基質とを接触させる段階と; (b)前記基質の前記開裂により、ヒトにおけるトリインフルエンザウイルスが示される前記基質の開裂をモニタリングする段階と、を含む方法が提供される。
【0020】
本発明のさらなる態様によれば、サンプル中の少なくとも1種のインフルエンザウイルスを検出するための診断用キットであって、本発明の複数の組成物、および前記基質の開裂を検出するための試薬を含むキットが提供される。
【0021】
本発明のなおさらなる態様によれば、包装材料と、サンプル中の複数種のインフルエンザウイルスの存在を検出するための複数の組成物とを含む診断用キットであって、前記組成物の各々が、一般式
X-Y-Z
(式中、
Yは、ウイルス性ノイラミニダーゼの基質を含み、前記ウイルス性ノイラミニダーゼによるX-Y-Zの開裂は、開裂産物X-Y'およびY''-Zを形成し、ここでY'は、Yの第一の開裂産物であり、Y''は、Yの第二の開裂産物であり;
Xは、検出可能な部分を含み;
Zは、2相分離系のうちの1つの分離相に結合できる分離部分を含み;
前記X-Y-Zは、前記ノイラミニダーゼの天然基質の連続部分を形成しない)であり、
前記Xの各々は弁別的に検出可能であり、一方、前記包装材料は、前記キットがサンプル中の複数種のインフルエンザウイルスの検出用であることを示すラベルまたは添付文書を含む診断用キットが提供される。
【0022】
下記の本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、前記シアル酸は、リンカーを介して少なくとも1種の炭水化物に結合している。
【0023】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前記シアル酸は、2種の炭水化物に結合しており、前記2種の炭水化物のうちの第一の炭水化物が、第二のリンカーを介して前記2種の炭水化物のうちの第二の炭水化物に結合している。
【0024】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前記第二のリンカーは、α1-4リンカー、α1-3リンカー、α2-3リンカーおよびα1-6リンカーからなる群から選択される。
【0025】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前記組成物は、ノイラミニダーゼにより加水分解可能である。
【0026】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前記炭水化物は、ガラクトース、N-アセチルガラクトサミン、グルコース、マンノース、グルコースアミン、ガラクトースアミン、ラムノース、フコース、イノシトール、シロ-イノシトール、フルクトース、キシルロース、リブロース、リボース、アロエス、アルトロース、アラビノース、キシロース、グロース、イドース、リキソース、タロース、ノイラミン酸、グルコロン酸、グルカン酸、グルコン酸、GalNAcおよびGlcNAcからなる群から選択される。
【0027】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前記リンカーは、α2,3リンカー、α2,6リンカーおよびα2,8リンカーからなる群から選択される。
【0028】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前記シアル酸は天然物質である。
【0029】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前記シアル酸は合成物質である。
【0030】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前記ポリペプチドは、赤血球凝集素ポリペプチドである。
【0031】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前記シアル酸結合ドメインは、赤血球凝集素ポリペプチドに含まれる。
【0032】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前記赤血球凝集素ポリペプチドは切断されている。
【0033】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前記赤血球凝集素ポリペプチドは、H1ポリペプチド、H2ポリペプチド、H3ポリペプチド、H4ポリペプチド、H5ポリペプチド、H6ポリペプチド、H7ポリペプチド、H8ポリペプチド、H9ポリペプチド、H10ポリペプチド、H11ポリペプチド、H12ポリペプチド、H13ポリペプチド、H14ポリペプチド、H15ポリペプチドおよびH16ポリペプチドからなる群から選択される。
【0034】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前記組成物は、少なくとも1つの検出可能な部分をさらに含む。
【0035】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前記シアル酸は、リンカーを介して少なくとも1つの炭水化物に結合している。
【0036】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前記検出可能な部分は、リンカーを介して前記シアル酸に結合している。
【0037】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前記少なくとも1つの検出可能な部分は前酵素であり、一方、前記結合の開裂により前記前酵素を活性化する。
【0038】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前記少なくとも1つの検出可能な部分は前基質であり、一方、前記結合の開裂により前記前基質を遊離して酵素の検出可能な活性な基質が形成される。
【0039】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前記酵素は、βガラクトシダーゼである。
【0040】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前記少なくとも1つの検出可能な部分はFRET対であり、一方、前記結合の開裂により前記FRET対からシグナルが生成する。
【0041】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前記少なくとも1つの検出可能な部分は量子ドットであり、一方、前記結合の開裂により前記量子ドットからシグナルが生成する。
【0042】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前記少なくとも1つの検出可能な部分は、酵素、蛍光体、発色団、タンパク質、ペプチド、前酵素、化学発光物質、前基質、量子ドットおよび放射性同位元素からなる群から選択される標識化剤を含む。
【0043】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前記組成物は分離部分をさらに含む。
【0044】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前記組成物は、一般式:
X-Y-Z
(式中、
Yは、ノイラミニダーゼの基質を含み、ノイラミニダーゼによるX-Y-Zの開裂は、開裂産物X-Y'およびY''-Zを形成し、ここでY'は、Yの第一の開裂産物であり、Y''は、Yの第二の開裂産物であり;
Xは、検出可能な部分を含み;
Zは、2相分離系のうちの1つの分離相に結合できる前記分離部分を含み;
前記X-Y-Zは、前記ウイルス性ノイラミニダーゼの天然基質の連続部分を形成しない)である。
【0045】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前記検出可能な部分は、酵素、蛍光体、発色団、FRET対、タンパク質、ペプチド、前酵素、化学発光物質、前基質、量子ドットおよび放射性同位元素からなる群から選択される標識化剤を含む。
【0046】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前記分離部分は、免疫学的結合剤、磁気結合部分、ペプチド結合部分、親和性結合部分および核酸部分からなる群から選択される。
【0047】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前記分離部分は、検出可能な部分をさらに含む。
【0048】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前記病原体はインフルエンザウイルスである。
【0049】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前記サンプルは哺乳動物サンプルである。
【0050】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前記哺乳動物サンプルはヒトサンプルである。
【0051】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前記サンプルはトリサンプルである。
【0052】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前記基質はα2,6結合を含む場合、前記基質の前記開裂により、潜在的にヒト病原性であるトリインフルエンザウイルスが示される。
【0053】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前記基質がNeuGcα2,3結合を含む場合、前記基質の前記開裂により、トリインフルエンザウイルスが示される。
【0054】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前記サンプルは、粘液、唾液、のど洗浄液、鼻腔洗浄液、脊髄液、痰、尿、精液、汗、大便、血漿、血液、気管支肺胞液、膣液、涙液および組織生検からなる群から選択される。
【0055】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前記サンプルは、粘液、唾液、のど洗浄液、鼻腔洗浄液、脊髄液、痰、血漿、血液、気管支肺胞液、涙液および組織生検からなる群から選択される。
【0056】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前記モニタリングは、ホモジニアスアッセイを用いて実施される。
【0057】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前記モニタリングは、ヘテロジニアスアッセイを用いて実施される。
【0058】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前記ウイルス性ノイラミニダーゼの前記基質は、ポリペプチドのシアル酸結合ドメインに結合したシアル酸を含む。
【0059】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前記診断用キットは、前記基質の開裂を検出する試薬をさらに含む。
【0060】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前記複数の組成物の各々は、異なるノイラミニダーゼに対する基質である。
【0061】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前記複数の組成物は、単一の固体支持体に結合している。
【0062】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前記弁別的な検出は、前記単一の固体支持体上のアドレス可能な位置により実施される。
【0063】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前記弁別的な検出は、異なる検出可能な部分により実施される。
【0064】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前記固体支持体は、ビーズとして構成される。
【0065】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前記ビーズは、着色ビーズ、磁気ビーズ、タグ付きビーズおよび蛍光ビーズからなる群から選択される。
【0066】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前記診断用キットは、前記インフルエンザウイルス以外の、コロナウイルス、SARS、HMPV (ヒトメタニューモウイルス)、アデノウイルス、RSV (呼吸器合胞体ウイルス)およびライノウイルスからなる群から選択される少なくとも1種以上のウイルス検出用基質をさらに含む。
【0067】
本発明は、インフルエンザウイルスの特定株を迅速に検出する方法および組成物を提供することによって、現在知られている構成の欠点を首尾よく処理する。
【0068】
他に定義されない限り、本明細書に用いられる全ての専門用語および科学的用語は、本発明が属する斯界の当業者により一般的に解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されたものと類似または同等の方法および材料は、本発明の実施または試験に使用できるが、好適な方法および材料は、以下に記載されている。本明細書に記載された全ての刊行物、特許出願、特許、および他の引用文献は、参照としてその全体が本明細書に援用される。矛盾する場合は、定義を含む特許明細書により統制される。さらに、材料、方法、および実施例は、例示としてのみのものであり、限定することを意図するものではない。
【0069】
本発明は、添付の図面を参照して、例示のみを目的として記載されている。ここで特に詳細な図面に関して、示された項目は、本発明の好ましい実施形態の例および例示的な説明目的のためのものであり、最も有用であると考えられるものを提供し、本発明の原理および概念についての説明が容易に理解されるために提示される。この点において、本発明の基本的理解に必要なものよりも詳細に本発明の構造的詳細を示す試みは成されておらず、図面を参照した説明により、当業者に対して本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化できるかを明らかにするものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0070】
本発明は、ノイラミニダーゼに対する新規な基質に関する。本発明は、特に、ノイラミニダーゼを発現するウイルスを検出し、その株を識別するために使用できる。
【0071】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳しく説明する前に、本発明は、以下の説明に記載された、または実施例により例示された詳細に対してその適用が限定されるものではないと解されるべきである。本発明は、他の実施形態で可能であるか、または種々の方法で実行、実施することができる。また、本明細書に用いられる語句および用語は、説明を目的としたものであり、限定するものとみなしてはならないことを理解すべきである。
【0072】
インフルエンザウイルスによる感染症など、ウイルス性感染症の診断は、ウイルスに特徴的な独特の部分(moieties)の存在を検出することによって実施できる。ウイルス粒子は通常、特異的なリガンド-抗リガンド相互作用(例えば、リガンド結合部分、受容体および抗体)により、特にウイルスエピトープに特異的な抗体の使用により検出できるビリオンの外面上に弁別的な抗原成分を担持する。このような相互作用は、質量作用の法則に依存し、この理由のために限定された感受性を有し得る。ウイルス粒子の多くはさらに、ビリオン粒子上に特異的な酵素活性を担持する。インフルエンザウイルスは、環境に曝されるビリオンの一体部分としてウイルス特異的ノイラミニダーゼ活性を賦与されたウイルスの一例である。その基質は、シアル酸(Neu5Ac)と宿主細胞表面の糖結合体の前末端基糖とを結合するグリコシド結合である。ノイラミニダーゼは、この結合を加水分解することによって、前末端基糖からNeu5Acを開裂する。
【0073】
このような場合の酵素活性の利用により、検出法の感受性を増加させる可能性が提供される。
【0074】
インフルエンザビリオンはまた、それらの表面にやはり、ノイラミニダーゼのように宿主細胞の糖結合体上の末端シアル酸を認識する赤血球凝集素(HA)を含む。これらの末端シアル酸は、HAシアル酸受容体ドメインに対するリガンドとして働く。インフルエンザウイルスのHA受容体およびNA特異性は、元の宿主細胞によって異なる。すなわち、HAおよびNAは、ウイルスが単離された宿主細胞に発現されるシアル酸-ガラクトース結合を優先的に認識する。HA-シアル酸複合体は、糖結合体の前末端基糖上のシアル酸グリコシド結合の開裂を媒介するNAと相互作用する。HA (1-16)およびNA (1-9)の多くの変異体が存在し、HAとNAの全ての組合せが、感染性ウイルスを形成できるわけではないことは明白である。シアル酸に対するHAとNAとの間の近接相互作用には、効率的な開裂を達成するために、これら2つの細胞表面粒子間での適合性が必要となる。
【0075】
本発明を考慮している間に、本発明者らは、HA-シアル酸糖結合体-NA複合体特異性によりインフルエンザウイルス株を識別する新規な方法を概念化した。したがって、本発明者らは、HAポリペプチド、またはその一部に結合したシアル酸を含む新規なノイラミニダーゼ基質分子を考慮している。HAポリペプチドは、特定の様式で細胞表面にシアル酸を供するために役立ち、それによって一定のノイラミニダーゼのみによってこの複合体の開裂が可能になるため、基質分子へのHAポリペプチドの組込みにより、インフルエンザウイルス間のより高い識別化レベルが可能になる。
【0076】
さらに、本発明は、ヒト病原性トリインフルエンザウイルスとヒト非病原性トリインフルエンザウイルスとを識別できる基質を提供する。このような基質は、糖部分に結合したシアル酸を含み、この2つの間の結合により、病原性または非病原性のいずれかのトリインフルエンザウイルスに対して特異性が提供される。具体的には、2,6結合糖ならびに2,3結合糖(または2,8結合糖)からのシアル酸の開裂により、トリウイルスがヒトに対して潜在的に病原性であることを示す。
【0077】
したがって、本発明の一態様によれば、ポリペプチドのシアル酸結合ドメインに結合したシアル酸を含む単離組成物が提供される。
【0078】
本明細書に用いられる語句「シアル酸」とは、SIA誘導体ファミリーの任意のメンバーのことである。シアル酸ファミリーの最も一般的なメンバーは、N-アセチル-ノイラミン酸(2-ケト-5-アセタミンド-3,5-ジデオキシ-D-グリセロ-D-ガラクトノヌロピラノス-1-オン酸)(しばしば、Neu5Ac、NeuAc、またはNANAと省略される)である。このファミリーの第二のメンバーは、NeuAcのN-アセチル基が加水分解されているN-グリコリル-ノイラミン酸(Neu5GcまたはNeuGc)である。第三のシアル酸ファミリーメンバーは、2-ケト-3-デオキシ-ノヌロソン酸(KDN) (非特許文献10; 非特許文献11)である。また、9-O-ラクチル-Neu5Acまたは9-O-アセチル-Neu5Acのような9-O-Cl-C6アシル-Neu5Ac、9デオキシ-9-フルオロ-Neu5Acおよび9-アジド-9-デオキシ-Neu5Acなどの9-置換シアル酸も含まれる。シアル酸ファミリーのレビューに関しては、例えば、非特許文献12; 非特許文献13)を参照されたい。シアル酸は、天然物質であってもあるいは合成物質(すなわち、類縁体)であってもよい。代表的なシアル酸類およびそれらの類縁体(ManAc類縁体を含む)を図5に示す。
【0079】
シアル酸を合成する方法は、当業界によく知られており、例えば、非特許文献14、非特許文献15、非特許文献16および非特許文献17を参照されたい。
【0080】
本明細書に用いられる用語「結合」とは、限定はしないが、共役結合、水素結合、静電結合および受容体基質親和性結合を含む、任意のタイプの結合のことである。
【0081】
本発明の本態様によれば、基質分子中のシアル酸は、ポリペプチドのシアル酸結合ドメインに結合している。
【0082】
本明細書に用いられる語句「ポリペプチドのシアル酸結合ドメイン」とは、シアル酸を結合でき、ノイラミニダーゼにより触媒的に処理/加水分解できるようにそれを提供する任意のペプチド配列(すなわち、天然物質または合成物質)のことである。
【0083】
本明細書に用いられる用語「ペプチド」とは、天然ペプチド類(分解産物、合成的に合成されたペプチド類または組換えペプチド類)およびペプチド模倣物(典型的には、合成的に合成されたペプチド類)、ならびに例えば、体内でペプチドをより安定にする、または細胞内へより浸透できる修飾を有し得るペプチド類縁体であるペプトイド類およびセミペプトイド類を包含する。このような修飾としては、限定はしないが、N末端修飾、C末端修飾、限定はしないが、CH2-NH、CH2-S、CH2-S=O、O=C-NH、CH2-O、CH2-CH2、S=C-NH、CH=CHまたはCF=CHを含むペプチド結合修飾、主鎖修飾、および残基修飾が挙げられる。ペプチド模倣化合物を調製する方法は、当技術分野でよく知られており、例えば、本明細書に十分に示されるように参照として組み込まれている、非特許文献18に明記されている。この点におけるさらなる詳細は以下に示される。
【0084】
ペプチド内のペプチド結合(-CO-NH-)は、例えば、N-メチル化結合(-N(CH3)-CO-)、エステル結合(-C(R)H-C-O-O-C(R)-N-)、ケトメチレン結合(-CO-CH2-)、α-アザ結合(-NH-N(R)-CO-) により置換でき、式中Rは、任意のアルキル、例えば、メチルであり、また、カルバ結合(-CH2-NH-)、ヒドロキシエチレン結合(-CH(OH)-CH2-)、チオアミド結合(-CS-NH-)、オレフィン二重結合(-CH=CH-)、レトロアミド結合(-NH-CO-)、ペプチド誘導体(-N(R)-CH2-CO-) により置換でき、式中Rは、炭素原子上に本来示される「直鎖状」側鎖である。
【0085】
これらの修飾は、ペプチド鎖に沿って任意の結合で、さらに同時に幾つかの(2〜3つ)結合でも生じることができる。
【0086】
天然芳香族アミノ酸、Trp、TyrおよびPheは、フェニルグリシン、Tic、ナフチルアラニン(Nal)、フェニルイソセリン、トレオニノール、Pheの環メチル化誘導体、Pheのハロゲン化誘導体またはo-メチル-Tyrなどの合成非天然酸に置き換えることができる。
【0087】
上記に加えて、本発明のペプチド類としてはまた、1つ以上の修飾アミノ酸類または1つ以上の非アミノ酸モノマー類(例えば、脂肪酸、複合体炭水化物など)を挙げることができる。
【0088】
本明細書および上記の請求項の節で用いられる用語「アミノ酸」または「アミノ酸類」には、20種の天然アミノ酸類;例えば、ヒドロキシプロリン、ホスホセリンおよびホスホトレオニンなど、しばしば翻訳後にインビボで修飾されたこれらのアミノ酸類;および限定はしないが、2-アミノアジピン酸、ヒドロキシリシン、イソデスモシン、ノル-バリン、ノル-ロイシンおよびオルニチンなど、他の異常アミノ酸類を含むと解釈される。さらに、用語「アミノ酸」は、D-およびL-双方のアミノ酸類を含む。
【0089】
下表1および2には、本発明に使用できる天然アミノ酸類(表1)および特殊または修飾アミノ酸類(例えば、合成物質、表2)を掲げている。
【0090】
【表1】

【0091】
【表2】



【0092】
シアル酸結合ドメインは、シアル酸結合ドメインをまさしく含む短ペプチド配列(例えば、10未満のアミノ酸)であり得るか、またはシアル酸結合ドメインならびに他のドメイン、例えば、完全長タンパク質もしくは切断タンパク質(例えば、10〜50のアミノ酸)を含むポリペプチドに含まれ得る。シアル酸を結合できる代表的な短ペプチド配列は、当技術分野に知られており、例えば、非特許文献19を参照されたい。
【0093】
シアル酸を結合できるポリペプチド(すなわち、シアル酸結合ドメインを含むタンパク質)の例は、下記の表3に示される。
【0094】
【表3】

【0095】
本発明の本態様の好ましい実施形態によれば、シアル酸結合ドメインは、赤血球凝集素ポリペプチド、またはその一部、例えば、16のインフルエンザ赤血球凝集素変異体(H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、またはH16)のうちの1つである。本発明の赤血球凝集素ポリペプチドのアミノ酸配列は、天然配列に対して少なくとも80%相同であることが好ましい。
【0096】
シアル酸結合部位を含む短ペプチド類は、当業界によく知られており、さらに非特許文献20により記載されている固相ペプチド合成法を用いて合成できる。合成ペプチドは、分取高速液体クロマトグラフィーにより精製できる(非特許文献21)およびその組成物は、アミノ酸配列決定により確認できる。
【0097】
より長いペプチド、例えば、完全長タンパク質または切断タンパク質が望まれる場合、それらは、非特許文献22、非特許文献23、非特許文献24、非特許文献25、非特許文献26および非特許文献27、非特許文献28および非特許文献29により記載されるような組換え技法を用いて作出できる。
【0098】
特に好ましい実施形態によれば、本発明の組成物のシアル酸は、ノイラミニダーゼに対する基質である(すなわち、ノイラミニダーゼにより加水分解される)ような様式でリンカーを介して少なくとも1つの炭水化物に結合している。
【0099】
本明細書に用いられる用語「ノイラミニダーゼ」とは、EC 3.2.1.18に示されたシアリダーゼ、すなわちアシルノイラミニルヒドロラーゼとしても知られている酵素のことである。
【0100】
本発明の本態様の本実施形態による代表的な炭水化物としては、限定はしないが、ガラクトース、N-アセチルガラクトサミン、グルコース、マンノース、グルコースアミン、ガラクトースアミン、ラムノース、フコース、イノシトール、シロ-イノシトール、フルクトース、キシルロース、リブロース、リボース、アロエス、アルトロース、アラビノース、キシロース、グロース、イドース、リキソース、タロース、ノイラミン酸、グルコロン酸、グルカン酸、グルコン酸、GalNAcおよびGlcNAcが挙げられる。
【0101】
本明細書に用いられる用語「リンカー」とは、結合、好ましくは共有結合のことである。炭水化物とシアル酸との間の結合は、α2,3結合、α2,6結合またはα2,8結合であり得る。
【0102】
シアル酸は、このような炭水化物部分に天然に結合し得る。あるいは、炭水化物は、当業界によく知られている化学的手法を用いてシアル酸に結合できる。
【0103】
本発明の基質組成物は、第一の炭水化物部分に結合した第二の炭水化物部分を含んで、ノイラミニダーゼの天然基質をさらに模倣することができる。いずれの結合も、例えば、α1-4結合、α1-3結合、α2-3結合およびα1-6結合など、2つの炭水化物部分間で把握されている。
【0104】
本発明の組成物は、診断用に向けられることから、それらは検出可能な部分を含むことが好ましい。
【0105】
本明細書に用いられる検出可能な部分(本明細書においてシグナル伝達部分とも称される)とは、直接的または間接的に検出できる(視覚化、カウントされるなど)分子または複数分子のことである。代表的な検出可能な部分は、限定はしないが、酵素、前酵素、前基質、蛍光体、発色団、タンパク質(例えば、エピトープタグ)、ペプチド、量子ドット、化学発光物質、FRET対および放射性同位元素が挙げられる。
【0106】
一シナリオによれば、検出可能な部分は、検出可能な部分とシアル酸自体との間の結合がノイラミニダーゼに対する開裂部位であるようにリンカーを介して本発明の組成物に結合している。
【0107】
別のシナリオによれば、検出可能な部分は、ノイラミニダーゼに対する開裂部位として作用する結合をすでに含んでいる(例えば、α2,3結合またはα1,6結合により結合した炭水化物を含む)本発明の組成物に結合している。この場合、検出可能な部分は、潜在的な基質結合を介してシアル酸部分に結合しない。
【0108】
検出可能な部分は、リンカーの開裂の際にシグナルを提供することが好ましい。
【0109】
このような検出可能な部分の例は前酵素である。したがって、基質開裂の際に酵素を活性化でき、検出できる(その触媒的活性の検出を介して)。このような前酵素の例は、このカスケードにおける前トロンビン(因子II)または他の酵素である。
【0110】
このような検出可能な部分の別の例は前基質である。したがって、基質開裂の際に前基質は、第二の酵素に対する活性基質に変わる。例えば、本発明の組成物は、NeuAc(2,3)-Xgalを含むことができる。X-galは、β-ガラクトシダーゼにより開裂できないような様式でシアル酸と結合している。前基質の開裂により、β-ガラクトシダーゼ酵素に対する基質になる遊離のXgalを放出する。β-ガラクトシダーゼ酵素によるその後のXgalの開裂により、検出可能な色を生じる。前基質は、さらに実施例8に検討され、図10に示される。
【0111】
このような検出可能な部分のさらに別の例は量子ドットである。したがって、基質開裂の際にシグナルが、量子ドットから放出される。
【0112】
このような検出可能な部分のさらなる例は、結合の開裂によりクエンチャーを放出し、FRETシグナルが作出されるFRET対である。本発明の目的のために、「クエンチャー部分」は、シグナル伝達部分により放射されたシグナルを減少できるか、または除去できる任意の物質である。例えば、クエンチャー部分は、シグナル伝達部分またはエネルギー移動機序により放射されたシグナルの吸収により作用できる。シグナル伝達部分とクエンチャー部分との間の距離は、基質がシグナル伝達部分とクエンチャー部分との分離を生じる位置で開裂されない限り、クエンチャー部分の存在が、シグナル伝達部分により放射されたシグナルを実質的に減少させるか、または除去させるような距離にある。
【0113】
典型的にFRET対の1つのメンバーは、開裂配列の一端に配置され、他のメンバーは、開裂配列の他端に配置される。しかしながら、必要ならば(削除形態まで)全ての部分は、開裂配列の一端に配置され得ることを認識されるであろう。
【0114】
FRET対を含む本発明の基質分子を調製する代表的な方法は、以下に記載される。
【0115】
第一に、ポリペプチドシアル酸結合部位(例えば、HA)は、NHSエステル反応性染料を用いることによりクエンチャーが標識される。標識化は、反応性スクシンイミジル-エステル(NHS)を用いて達成できる。共役アミド結合は、活性化染料と利用できるアミノ基(すなわち、リシンまたはタンパク質中のN末端)との間で形成できる。NHS染料を用いて標識する一例は、emp Biotech GmbHによるFluoro Spin 331 Protein Labeling & Purification Kitである。この染料は、N-メトアントラニル酸(MANT)の反応性スクシンイミジル-エステルを用いて25kD超の分子量を有するタンパク質の標識のために設計されている。この結合は、安定な共役アミド結合の形成から生じる。このタンパク質-染料結合体は、それぞれ約331nmの周囲および426nmで蛍光励起および蛍光放射最大を有する。同じ原理は、例えば、HAをダブシル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(ダブシル-NHS; Molecular Probes社、ユージーン、オレゴン州、米国、D-2245から入手できる)により標識するために適用できる。この結果はHA-ダブシル結合体となる。
【0116】
次に、炭水化物配列に結合したシアル酸部分は、配列中の炭水化物の1つのシアル酸の下流の蛍光体(EDANS)に結合している。最終段階は、リガンド-受容体相互作用を介して標識シアル酸とHAとを結合させることである。この様式で蛍光体(EDANS)は、クエンチャー(DABCYL)に密接して置かれ、FRETを可能にさせる。NAによる開裂の際に蛍光体を放出し、検出できる。
【0117】
一実施形態において、シグナル伝達部分およびクエンチャー部分は、3または5つ以下のアミノ酸残基により分離される。別の実施形態において、シグナル伝達部分およびクエンチャー部分は、10以下のアミノ酸残基により分離される。さらに別の実施形態において、シグナル伝達部分およびクエンチャー部分は、15以下のアミノ酸残基により分離される。さらに別の実施形態において、シグナル伝達部分およびクエンチャー部分は、20以下のアミノ酸残基により分離される。さらに以下に記載されるような検出手段として使用される他の部分は、これらのガイドラインに従って結合できる。また、いずれの検出手段(例えば、部分)も、ペプチド開裂配列自体のアミノ酸の任意の1つに連続的またはアミノ酸修飾により基質に直接的または間接的に結合できることを認識するであろう。
【0118】
蛍光および比色アッセイは、当業者に知られている。例えば: 非特許文献30、および非特許文献31を参照されたい。
【0119】
本発明の別の実施形態において、シグナル伝達部分(すなわち、検出可能な部分)は、化学発光シグナル伝達部分である。化学発光シグナル伝達部分は、基質のノイラミニダーゼ開裂領域の片側に結合し、蛍光受容クエンチャー部分は、開裂領域の他の側に結合している。その内容が参照として組み込まれている特許文献6は、シグナル伝達部分として化学発光1,2-ジオキセタン化合物の使用を含むような検出システムを記載している。サンプル中にウイルス性ノイラミニダーゼが存在しない場合、基質の開裂は生じない。1,2-ジオキセタン分解からのエネルギーが、蛍光受容部分に移され、1,2-ジオキセタンの放射スペクトルとは異なる波長で放出される。基質が開裂される場合、蛍光受容部分は、1,2-ジオキセタンから分離され、ジオキセタン化合物からの化学発光放射が見られる。
【0120】
別の実施形態において、シグナル伝達部分は蛍光化合物であり、クエンチャー部分は、シグナル伝達部分の放射スペクトルに重なる励起スペクトルを有する蛍光化合物である。ここで2つの部分は、蛍光部分が共鳴エネルギードナーとして作用できるように蛍光共鳴エネルギー移動と調和する距離で離れて分離される。
【0121】
別の実施形態において、非蛍光吸収染料などのクエンチング基は、蛍光受容クエンチング部分の代わりに使用される。好適なクエンチング基は、その内容が参照として組み込まれている特許文献6に記載されている。
【0122】
本発明の本態様の別の実施形態によれば、本発明の基質組成物は、分離部分を含む。このような基質形態は、さらに以下に記載されるヘテロジニアス検出アッセイに使用されることが好ましい。
【0123】
本明細書に用いられる語句「分離部分」は、非開裂および開裂産物の分離を可能にする任意の部分である。代表的な分離部分としては、限定はしないが、免疫学的結合剤、磁気結合部分、ペプチド結合部分、親和性結合部分および核酸部分が挙げられる。分離部分のさらなる例は、下記の実施例1〜3に提供される。分離部分は、検出可能な試剤をさらに含むことが認識されるであろう。検出可能な試剤の例は上記に提供される。
【0124】
好ましい実施形態によれば、本発明の基質は、以下の一般式、
X-Y-Z
(式中、
Yは、ノイラミニダーゼの基質を含み、開裂産物X-Y'およびY''-Zを形成する前記ノイラミニダーゼによるX-Y-Zの開裂を含み、ここでY'は、Yの第一の開裂産物であり、Y''は、Yの第二の開裂産物であり;
Xは、検出可能な部分を含み;
Zは、2相分離系のうちの1つの分離相に結合できる分離部分を含み;
X-Y-Zは、前記ウイルス性ノイラミニダーゼの天然基質の連続部分を形成しない)を有する組成物に含まれる。
【0125】
検出可能な部分は、分離部分に結合しないような手段をとるべきである。
【0126】
本明細書に記載された任意の実施形態において、いずれの部分も、各末端におけるカップリング官能基を有するスペーサー分子を介して共有結合により直接的、または間接的にペプチドに結合できる。このようなリンカーの例としては、アルキル、グリコール、エーテル、ポリエーテル、ポリヌクレオチドおよびポリペプチド分子が挙げられる。
【0127】
本明細書の上記のとおり、本発明の組成物は、サンプル中の病原体を検出するために使用できる。この方法は、
(a)前記基質の開裂を可能にする条件下、前記サンプルとノイラミニダーゼ基質とを接触させる段階と;
(b)前記基質の開裂をモニタリングする段階であって、前記基質の開裂により、サンプル中の少なくとも1種の病原体の存在が示される段階と、を含む。
【0128】
本明細書に用いられる「病原体」とは、その細胞表面上のノイラミニダーゼを含む任意の病原体のことである。代表的な病原体としては、限定はしないが、インフルエンザA型ウイルス、インフルエンザB型ウイルス、肺炎球菌、コレラ菌、サルモネラ菌、シードウイルス、ニューカッスル病ウイルス、おたふく風邪ウイルス、La Piedad-Michoacan-Mexicoウイルス、センダイウイルス、麻疹ウイルス、牛疫ウイルス、ニッパウイルス、パラインフルエンザ、ヘンドラウイルスおよび呼吸器合胞体ウイルス(RSV)が挙げられる。本発明の本態様の好ましい実施形態によれば、病原体はインフルエンザウイルスである。
【0129】
したがって、本発明の本態様の一実施形態によれば、該組成物を、インフルエンザウイルスの存在について試験されるサンプルと接触させる。ウイルスがサンプル中に存在する場合、ウイルス性ノイラミニダーゼもまた存在する。この酵素は基質を開裂し、シグナル伝達部分(すなわち、検出可能な部分)からのシグナルの変化を見ることができる。このようなホモジニアス蛍光および比色アッセイは、当業者に知られている。例えば、非特許文献30、および非特許文献31を参照されたい。
【0130】
本明細書に用いられる用語「サンプル」とは、ウイルスを含むかまたは許容し得る任意の生物サンプル(例えば、組織培養サンプルまたは体液/組織サンプル)のことである。好ましくは、生物サンプルとは、全血、血清、血漿、脳脊髄液、尿、リンパ液、気道(例えば、鼻腔洗浄サンプル)、腸管および生殖器管の種々の外分泌、涙液、唾液、精液、汗、大便、および乳などの体液、ならびに白血球、悪性組織、羊水、および絨毛膜絨毛のことである。
【0131】
生物サンプルは、任意の生物、好ましくは哺乳動物(例えば、ヒト)またはトリに由来し得る。
【0132】
上記のとおり、本発明の方法は、サンプルとノイラミニダーゼ基質とを接触させることにより達成させる。好ましくは、ノイラミニダーゼ基質は、上記の本発明の組成物を含む。しかしながら、多くのノイラミニダーゼ基質は当業界に知られており、本発明の本態様に従って使用できることを認識するであろう(例えば、特許文献4参照)。
【0133】
サンプルを、酵素阻害剤を含む緩衝液の存在下、本発明の基質と接触させることが好ましい。開裂処理を妨げない限り、本発明の本態様に従って任意の緩衝液を使用できる。
【0134】
本発明の本態様の一実施形態によれば、全ての基質分子の開裂を実施できるような十分な時間で、サンプルを基質組成物と接触させる。
【0135】
本発明の本態様の別の実施形態によれば、開始開裂動力学がモニターできるような時間で、サンプルを基質組成物と接触させる。
【0136】
さらに別の実施形態によれば、開裂処理を通してモニタリングが実施される(すなわち、リアルタイムモニタリング)。図9は、本発明の方法の特定の実施形態を示している。
【0137】
本発明の方法もまた、ウイルス株を識別するために使用できることを認識するであろう。特定のウイルスの種々の株は、本発明の基質分子に対して種々の親和力を含む。例えば、第一のインフルエンザウイルス株は、その株がH1ポリペプチドにより提供される場合、シアル酸を開裂するのに効率的であるノイラミニダーゼを含むことができ、一方、第二のインフルエンザウイルス株は、その株がH2ポリペプチドにより提供される場合、シアル酸を開裂するのに効率的であるノイラミニダーゼを含むことができる。同様に、シアル酸と炭水化物との間の結合(すなわち、2,3、2,6または2,8結合)もまた、特異性を付与する。したがって、サンプルと既知の基質とを接触させることによって、ウイルス株を分類し、および/または識別することが可能である。代表的な赤血球凝集素および特定のウイルスと結合するノイラミニダーゼ対は、表5、実施例9に示される。
【0138】
ワクチン接種された種が、激烈タイプのウイルスを発生していないかどうかを検出するために使用できることから、この方法は特に、トリおよびヒトのワクチン接種のモニタリングに適する。
【0139】
本発明の方法は、ヒト病原性トリウイルスとヒト非病原性ウイルスとを識別するために使用できるように適合させることができる。例えば、トリサンプルにおいて、α2,6結合を含むシアル酸基質が開裂される場合、これは、潜在的にヒト病原性であるトリインフルエンザウイルスを示していると思われる。
【0140】
本発明の方法は、ヒト対象がトリインフルエンザウイルスに感染しているかどうかを判定するためにも使用できる。例えば、ヒトサンプルにおいて、NeuGcα2,3結合を含むシアル酸基質が開裂される場合、これは、トリインフルエンザウイルス感染を示していると思われる。
【0141】
当業界に知られている基質開裂をモニタリングする任意のアッセイは、本発明のこの態様において使用することができる。
【0142】
基質開裂のモニタリングは、ホモジニアスまたはヘテロジニアスアッセイにより実施できる。
【0143】
本明細書に用いられる語句「ホモジニアスアッセイ」とは、他のアッセイ成分からシグナル伝達部分の分離を必要としないアッセイのことである。
【0144】
ここに記載された検出法を用いて、ウイルスがサンプル中に存在する場合にはノイラミニダーゼによって基質が開裂される条件下において、試験サンプルを基質と接触させる。一実施形態においては、温度が調節される。温度は、例えば、酵素反応に最適な条件を提供するために37℃に調節することができる。開裂された基質断片からのシグナルは、次に、使用される標識に適切な検出デバイスを用いて検出される。
【0145】
「ヘテロジニアスアッセイ」は、固相がアッセイ時に別のアッセイ成分から分離されるアッセイである。
【0146】
ヘテロジニアスアッセイの使用に好適な固相は、限定はしないが、試験管、マイクロタイタープレート、マイクロタイターウェル、ビーズ、ディップスティック、ポリマー微小粒子、磁気微小粒子、ニトロセルロース、チップアレイおよび当業者に知られた他の固相が挙げられる。ヘテロジニアスアッセイに用いられるシグナル伝達部分は、当業者に知られた任意の標識であり得る。このような標識としては、放射性、比色、蛍光および発光標識が挙げられる。
【0147】
プロテアーゼの検出のためのヘテロジニアス化学発光アッセイは、その内容が参照として組み込まれている特許文献6に記載されている。一実施形態において、試験下のウイルス性疾患に感染していると想定される対象に医療スタッフを接触させる必要なく結果を得ることができるように、本発明のホモジニアスまたはヘテロジニアスアッセイ法は自動化される。例えば、対象は、クリーンルーム(例えば、限定はしないが、P3タイプルーム)内で試験できる。対象は、上述のタイプの基質によりコーティングされた固相を含むことができる診断用キットを室内で手にするか、または室内に入る前に受け取ることができる。例えば、固相は、基質に前もって浸された組織、または妊娠を試験するために使用されるタイプに由来し得る試験用スティックであり得る。対象は、固相上の予め調整されたスポットに唾液サンプルなどのサンプルを供給できる。
【0148】
次にサンプルを含有する固相を、酵素反応を生じさせるためにインキュベートする。一実施形態において、酵素反応に最適な条件を提供するために反応温度を37℃に調節する。インキュベーションが完了したら、リモートコントロールまたは室外から手動操作の機械システムを用いて、試験を受けるサンプルを分光光度計上で測定できる。定性的着色またはUV検出についてサンプルを試験することができる。試験後、サンプルは、自動化システムにより、またはサンプルを廃棄するリモート操作ハンドルにより廃棄できる。
【0149】
1つのプレート上で本発明の幾つかの基質を組み合わせることにより、各基質は、シアル酸、炭水化物および赤血球凝集素の特定の組合せを含み、各タイプのノイラミニダーゼに関して各マトリックスの開裂プロフィールを構築して、次のタイプのウイルスを予測できるシステムを創製できる。これは、季節に関するワクチンタイプを予測するため、または正確なタイプのインフルエンザウイルス、およびヒトおよび動物に対するその致死性ならびに激烈性の程度を検出するために使用できる。
【0150】
多数のウイルスの存在を一度に検出するために、当業界に知られた任意の方法または複数ウイルスの検出のために採用された上記の方法を使用することが可能である。
【0151】
以下は、このような手段の非消耗的例を提供する。
【0152】
Xウェルプレート中のマイクロプレート。各ウェルは、種々のウイルスに相当する種々の特異的基質を含有する。臨床サンプルの添加により、適切な波長の標準的マイクロプレートリーダーを用いて反応をモニターし、どのウェルが酵素活性を示したかを記録する。各ウェルは1つの特異的な基質を含有することから、マイクロプレートリーダーにより提供されたデータによって、臨床サンプル中にどのウイルス性ノイラミニダーゼが存在するかを明瞭にすることが可能である。酵素の存在によってウイルスの存在を確認する。
【0153】
Mediselチップテクノロジー(非特許文献32)- Mediselテクノロジーを用いて、チップ上の(対象のウイルスに対応する)特異的な基質分子を固定化することが可能である。臨床サンプルの添加により、反応はレーザービームを用いてモニターされる。チップ上の各点は、1つの特異的な基質を含有することから、Mediselデバイスにより提供されたデータによって、臨床サンプル中にどのウイルス酵素が存在するかを明瞭にすることが可能である。酵素の存在によってウイルスの存在を確認する。
【0154】
カラムでの分離-(対象のウイルスに対応する)特異的基質は、固有のDNAスペーサーを用いて市販のビーズに結合することができる。臨床サンプルの添加により、反応を行う。(臨床サンプル中の特異的ウイルス性ノイラミニダーゼにより)特異的基質の開裂が生じると、クエンチャーが放出され、ビーズが蛍光を発する。次にビーズを、固有のDNAスペーサーへのハイブリダイゼーションを介してカラム上で分離し、各タイプのビーズ(各々異なるウイルスに対応)の蛍光を、標準的な蛍光光度計を用いて適切な波長で測定する。ウイルス性ノイラミニダーゼにより切断されたビーズだけが蛍光を発する。これにより、どのウイルス性ノイラミニダーゼが臨床サンプルに存在するかを明瞭にすることが可能である。酵素の存在によってウイルスの存在を確認する。
【0155】
ビーズFACS分離-カラム分離単独の場合と同様に、各特異的ペプチドが、種々の色を有するビーズに結合している場合、分離ステップはFACSにより行われる。本法において、スペーサーは、DNAまたはペプチドまたはペプチド模倣物または炭水化物または任意の有機部分スペーサーであり得る(非特許文献33)。
【0156】
本発明に従って使用できる他の方法は、非特許文献34; 非特許文献35; 非特許文献36; 非特許文献37; 非特許文献38; 非特許文献39; 非特許文献40により記載され、これらの各々は参照としてその全体が本明細書に組み込まれている。
【0157】
本発明のノイラミニダーゼ基質を含むキットもまた考慮される。種々のキット成分は、別個の容器に包装され、使用直前に混合することができる。このような成分の別個の包装により、活性成分の機能を喪失することなく長期間保存できる。2種以上の成分が同じ容器に含まれる実施形態もまた考慮される。代表的なキットは、1種以上の以下の試薬を含むことができる:ヘテロジニアスアッセイを用いる場合の洗浄用緩衝剤; 基質を開裂できるノイラミニダーゼを含まない陰性対照試薬; 基質を開裂できるノイラミニダーゼを含有する陽性対照; (d)シグナル伝達部分からの検出可能なシグナルの増強用シグナル発生試薬; (d)シリンジ、のどかき出し棒、または他のサンプル採取デバイス等のサンプル採取手段。
【0158】
本発明のキットは、所望されるならば、本発明のキットの1つ以上のユニットを包含することのできるパックで提供することが可能である。このパックには、キットを使用するための取扱い説明書を添付することができる。このパックはまた、実験室補足の製造、使用または販売を規制する政府機関による注意書きを容器に記載した形態であることができ、その注意書きは、組成物の形態について当該機関の承認を反映したものとなる。
【0159】
本発明のキットは、コロナウイルス、SARS、HMPV (ヒトメタニューモウイルス)、アデノウイルス、RSV (呼吸器合胞体ウイルス)およびライノウイルスなどの他の呼吸器系ウイルスの検出用に他の基質(例えば、プロテアーゼ基質)をさらに含むことができる。
【0160】
キットに含まれる試薬は、種々の組成物の使用期間が保護され、容器の材料により吸着されないか、または変化されないような任意の種類の容器で供給することができる。例えば、密封ガラスアンプルは、窒素などの中性非反応性ガス下で包装された凍結乾燥試薬、または緩衝剤を含有できる。アンプルは、ガラスや、ポリカーボネート、ポリスチレンなどの有機ポリマー類、セラミック、金属または同様の試薬を保持するために典型的に使用される他の材料など、全ての好適な材料からなり得る。好適な容器の他の例としては、アンプルと同様の物質から製造できる簡単なボトル、アルミニウムまたは合金などのフォイル裏打ち内部を含むことができる外囲容器が挙げられる。他の容器としては、試験管、バイアル、フラスコ、ボトル、シリンジなどが挙げられる。皮下注射針により貫通することができるストッパーを有するボトルなど、容器は滅菌アクセスポートを有することができる。他の容器は、除去することによって成分を混合でき、容易に除去可能な膜により分離される2つの区画を有することができる。除去可能な膜は、ガラス、プラスチック、ゴムなどであり得る。
【0161】
キットはまた、指示資料と共に供給することができる。取扱い説明書は、紙または他の基材上に印刷でき、および/またはフロッピー(登録商標)ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、Zipディスク、ビデオテープ、オーディオテープなど、電子読取り可能な媒体として供給することができる。詳細な取扱い説明書は、キットと物理的に付随する必要はなく、その代わり、使用者は、キットの製造元または販売業者により指定されるか、または電子メールにより供給されるインターネットウェブサイトに指示され得る。
【0162】
本発明のさらなる目的、利点および新規な特徴は、以下の非制限的実施例を検証することによって斯界の当業者に明らかになるであろう。さらに、種々の実施形態および上記に概説され、請求項の範囲で請求された本発明の態様の各々については、以下の実施例において実験的な支持が為されている。
【実施例】
【0163】
ここで上記の説明と共に、本発明を非限定様式で例証する以下の実施例が引用される。
【0164】
一般に、本明細書に用いられる命名および本発明に利用される実験室的手法は、分子、生化学、細菌学および組換えDNA技法を含む。このような技法は、文献で完全に説明される。例えば、非特許文献41、非特許文献42、非特許文献43、非特許文献44、非特許文献45、非特許文献46、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10および特許文献11に示された方法論、非特許文献47、非特許文献48、非特許文献49、非特許文献50、非特許文献51を参照されたい;利用できる免疫アッセイは、特許および科学文献に広範囲に記載されている、例えば、特許文献12、特許文献13、特許文献14、特許文献15、特許文献16、特許文献17、特許文献18、特許文献19、特許文献20、特許文献21、特許文献22、特許文献23、特許文献24、特許文献25、特許文献26および特許文献27、非特許文献52、非特許文献53、非特許文献54、非特許文献55、非特許文献56、非特許文献57、非特許文献58、非特許文献59、非特許文献60を参照されたい;これらの全ては、参照として本明細書に完全に示されるように組み込まれている。他の一般的な引用文献は、本文書を通して提供される。そこでの手法は、斯界によく知られていると考えられ、読み手の利便性のために提供される。そこに含まれる全ての情報は、参照として本明細書に組み込まれている。
【0165】
(実施例1)
本発明の代表的な基質および分離システム
図1は、本発明の基質構造を示す概略図である。この基質は、3つの部分:X、YおよびZを含む。特異的開裂部位を有するコア分子または分子の複合体(セグメントY)は、一端がタグ付き分子(X)に接続し、その目的は、開裂された基質を検出することである。他端において、Yは、処理基質と未処理基質との間を分離する機能セグメント(Z)に接続される。分子Yの開裂の際に、基質は、2つの部分: (1)部分XおよびYの一部を含有するタグ付きセグメント(TS)および(2) ZおよびYの一部を含有する分離セグメント(SS)に分けられる。
【0166】
図1に記載された基質のノイラミニダーゼによる開裂の際に、Zセグメント(分離セグメント)は、処理および未処理基質間を分離するために使用される。したがって、処理基質のTS(タグ付き分子を含有する)のみが、タグ付き分子に対して高親和性を有する部分に結合する。したがって、親和性結合処理により、開裂基質のみを検出する。この方法で、処理分子のみを検出することが可能である(図2)。
【0167】
図3は、上記の方法を用いて多数の基質開裂の同時検出を例示している。同時検出は、基質が分離機能(Z)において同様であるが、それらの特異的開裂分子(Y)において異なる場合に生じ得る。この場合の各基質は、そのコア分子(Y)に加わることができる固有の異なるタグ付き分子(X)を有する。開裂および処理基質と未処理基質とを分離後、異なる(および処理)基質のTSのみを、親和力により結合する。Zを含有する全ての分子(未処理基質または処理基質のSS)が、分離機序により保持される。種々の基質の種々のTSへのさらなる分離は、予め決められた部位が各々異なるTSに対して親和性を有する部分を含有し、例えば、各部位がTSの1種にのみ結合できる膜、チップなどを設計することにより得ることができる。次に分離溶液を、このチップまたは膜と接触させて親和性結合を生じることができる。どの予め決められた部位が、種々のTSに対する親和性により結合しているかを知ることにより、どの基質が処理されたかを確認できる。各基質が、基質開裂を開始させた酵素に特異的であることから、どの酵素がその対応する基質を開裂したかを確認でき、どのノイラミニダーゼが溶液中に存在するかを推測できる。その結果、どの病原体または原因物質が該当する酵素に対応するものであるかが推測できる。
【0168】
代表的な分離システム:
1.固定化分離システム(ISS)-このシステムにおいて、Zは、ビーズ、ニトロセルロース膜、ビオチン-アビジンまたは他の親和性対を介して固定化表面に結合しているスペーサーである。緩衝液中での開裂が生じた後、未処理基質または処理基質のSSのいずれも、緩衝液から固定化面を分離することにより(抽出、遠心分離、ろ過などにより)除去され、処理基質のTSのみを残す。この方法において、各基質の動力学をモニターすることも可能である。
【0169】
2.動的分離システム(DSS)-このシステムにおいて、Zは、緩衝液中の基質全てに対して共通かまたは固有の特殊な分子である。開裂が生じた後、緩衝液を、特殊に設計した膜またはチップと接触させる。膜は垂直であり、その底部においてZに対応する親和性部分を有する。膜の隣接部分は、種々の基質のXに対応する種々の部位(loci)を含む。次に緩衝液をキャピラリまたは電力により膜またはチップの長さに沿って押出す。Zを含有する全ての分子(未処理基質または処理基質のSS)が、膜の底部に(Zに対応する親和性部分により)保持される。処理基質のTS(Zを含有しない)のみが、膜を上昇でき、予め決められた部位に対する親和性により結合可能である(図4)。
【0170】
3.親和性ろ過システム(AFS)-本システムにおいては緩衝液がZに対する親和性を有するカラムを通してろ過されるため、Zを含有する全ての分子(未処理基質または処理基質のSS)が、カラム内に残留する。この流液は、処理物質のTSのみを含有する。
【0171】
(実施例2)
ビーズおよび蛍光に基づくノイラミニダーゼの検出(FRET)
本実施例は、臨床サンプル中のトリインフルエンザH5N1ウイルスおよび他のタイプのインフルエンザの存在の検出を記載する。ウイルスのインフルエンザファミリーは、特定の赤血球凝集素およびノイラミニダーゼ対の組合せを利用する。これらの対は、特異的開裂活性を示す。本実施例において、基質は、一端に着色ビーズ(Zに相当)に結合した蛍光体を有する赤血球凝集素(HA) (またはその一部)からなる。蛍光体は、HA部分にも結合できる。HAのシアル酸受容体は、HA部分の一端とシアル酸を含有する分子と他端上のクエンチャーとの間で結合するために使用される。代表的なシアル酸部分は、図5に例示される。HA分子の他端は、受容体-基質親和性(ノイラミニダーゼの天然基質を模倣する)を介してその残基分子(Xに対応する)としてクエンチャーを有するシアル酸(Yに対応する)に結合しているシアル酸受容体を末端とする。この基質の開裂により、ビーズのクエンチャーおよび蛍光の分離を生じる(図6)。
【0172】
反応混合物は、種々のタイプの上記基質を含有する。各基質は、異なるビーズ色およびシアル酸に対する異なる結合、例えば、2,3または2,6を有する(図11を参照)。この特異性は、ノイラミニダーゼと赤血球凝集素とシアル酸との間の開裂時に生じる複合体により定められる。種々の複合体に対する異なる特異性のため、物質は異なる速度で開裂される。このような場合、各ビーズは、インフルエンザウイルスファミリーの異なるNAに加えることができる。反応混合物を臨床サンプルと接触させ、シアル酸の開裂はノイラミニダーゼにより生じることができ、分子のクエンチャー部分を除去する。開裂が生じた後、ビーズは、FACSまたは他の既存のテクノロジーを用いて異なる色に従って分離され、蛍光(適切な波長で)は、各ビーズタイプについて測定される。各ビーズは、異なるノイラミニダーゼの開裂部位を表すことから、どのインフルエンザウイルスのサブファミリーが臨床サンプルに存在するかを特定することができる。
【0173】
HAの代わりにスペーサーにより基質を設計することにより、HAの必要性を無効にすることも可能である。シアル酸は、NAの触媒活性を害しないような形体で残基の1つを介してスペーサーに共有結合している(ノイラミン酸の3位または4位に結合)-(受容体-基質親和性結合の代わりに共有結合)。
【0174】
ビーズを、分離目的のために任意の他の親和性対で置き換えることも可能である。したがって、実施例に記載された任意の他の方法によりノイラミニダーゼの検出を可能にする。FRET対はまた、開裂を検出するためにビーズを用いる代わりに量子ドットからなり得る(http://www.azonano.com/Details.asp?ArticleID=1726#_Quantum_Dot_Technology)。
【0175】
(実施例3)
未知のタイプのインフルエンザウイルスの検出用インフルエンザタイプ(プロファイリング)のマトリックス測定
インフルエンザウイルスは、ノイラミニダーゼおよびHAウイルス性タンパク質の組合せによって定義される。ウイルスの名称は、この組合せによって定義される。すなわち、H5N1ウイルスは、HA5とそのスパイク上のノイラミニダーゼ1との組合せを有する。ウイルスにおける複数の突然変異および進化のため、季節ごとに異なるサブタイプを発生する。1つの変異型が、特に激烈なものになるという世界的な脅威(1918年のヨーロッパにおいて2千5百万以上の人々が死亡したスペインかぜの期間に生じた)が存在することから、このようなウイルスにより生じて脅威となる汎発流行性の拡がりをモニターし、最少にするために、激烈タイプのインフルエンザウイルスを迅速に検出し、単離することが急務である。現在、一定のインフルエンザ季節において特定のインフルエンザタイプの正確なプロフィールを迅速な試験で測定する方法は無い。本発明に記載された方法は、このような測定を可能にする。
【0176】
以下の実施例において、基質のベースラインマトリックスは、2-3結合および2-6結合を介して結合し、種々の基質特異性を含む幾つかのタイプのシアル酸誘導体に結合した、H1〜Hnタンパク質の組合せから構築される。基質の一団は、ノイラミニダーゼ酵素の一団と反応して、特定の蛍光プロファイルを確立する。次のステップは、基質の一団を、未知の臨床サンプルに適用することである。得られた結果の一例は、本明細書の下表1に示されている。臨床サンプル中に存在する特定のタイプのウイルスを判定するために、これらの結果を、予め決定されたプロファイルと比較する。
【0177】
【表4】

【0178】
(実施例4)
区画化に基づくノイラミニダーゼ検出
本実施例において、反応は異なった区画に分離される。各区画は、シアル酸に対する異なる結合を有し、種々のノイラミニダーゼに対する特異性を表す異なる基質(すなわち、Neu5ac2-6gal、neu5ac2-3gal、Neu-gly-2-3gal)を含有する。該基質はシアル酸(Yに対応)であり、その残基はビオチン(Zに対応)である。
【0179】
開裂後、各区画はアビジンを有するフィルターを通してろ過される。ビオチン(未処理基質または処理基質のビオチン残基)を含有する分子はいずれも該フィルターに保持される。処理基質のシアル酸は、シアル酸検出のためのアッセイを含む区画のセグメントへと該フィルターを通ることができる。該アッセイは、一方では、チオバルビツール酸に基づくものであることができる。他方、シアル酸のケトン誘導体を基質として使用でき、したがって、ケトン誘導体化検出アッセイも同様に可能である。この方法では、どの区画が開裂を受けたのかが判定される。各区画が異なるノイラミニダーゼ開裂部位を表すため、臨床サンプル中に、インフルエンザウイルスのどのサブファミリーが存在しているかを知ることができる。
【0180】
(実施例5)
マーカー(ISS)nに基づくプロテアーゼおよびノイラミニダーゼの同時検出
本実施例において、分離ステップは、基質を固定化表面に結合することによってすでに成されている。ノイラミニダーゼの基質は、実施例2に記載されているとおりであるが、ただ、ビーズの替わりに、HAを、この目的のために特別に設計された膜、チップなどの上の予め決められた位置に結合させる。プロテアーゼの基質は、一端を、必要とされる場合はスペーサー(Zに対応)を介して、膜、チップなどの上の予め決められた位置に結合させた開裂配列(Yに対応)である。プロテアーゼの開裂により、基質からクエンチャーが除去される方法で、XはFRETテクノロジーに基づいている。いずれの基質も開裂によって蛍光強度がもたらされる。
【0181】
次いで、該膜が臨床サンプルと接触することとなり、開裂が生じる。各位置に関する蛍光強度を測定することによって、個々に処理した基質を検出できる。各位置は異なるノイラミニダーゼまたはプロテアーゼの開裂部位を表すため、臨床サンプル中にどのウイルスが存在しているかを知ることができる。
【0182】
(実施例6)
ヒト病原性および非病原性トリインフルエンザ獣医検出用キット
以下の実施例では、典型的なトリインフルエンザ検出用キットが記載される。
【0183】
α2,3結合を介してガラクトースに結合したN-アセチルノイラミン酸(NeuAc) (NeuAcα2-3Gal)は、カモ上皮細胞上に優先的に発現される。ヒト気道上皮表面は、NeuAcα 2-3GalおよびNeuAcα 2-6Galの糖タンパク質を示す。ヒトに対して病原性の可能性のあるトリインフルエンザウイルスは、NeuAcα 2-3GalおよびNeuAcα 2-6Galに基づいた基質双方を処理するはずであり、一方、ヒトに対して病原性でないトリインフルエンザウイルスは、NeuAcα 2-3Galに基づいた基質のみを処理するはずである。
【0184】
本実施例では、固体表面に結合させた双方の基質および該試験を実施する上で必要な全ての試薬を含有するキットを考慮している。臨床検体は、罹患した鳥から抽出される。次いで、該検体を固体表面に接触させると、開裂が生じる。基質が切断されなければ(図8A)、該疾患はインフルエンザではない。NeuAcα 2-3Galに基づいた基質のみが切断されれば(図8B)、該疾患は、ヒトに対して病原性でないトリインフルエンザウイルスである。NeuAcα 2-3GalおよびNeuAcα 2-6Galに基づいた基質双方が切断されれば(図8C)、該疾患は、ヒトに病原性のトリインフルエンザウイルスである。
【0185】
(実施例7)
ヒトにおけるヒトインフルエンザおよびトリインフルエンザ検出用キット
以下の実施例では、ウイルスが、ヒトインフルエンザか、ヒト病原性トリインフルエンザかを検出するための典型的なキットが記載される。
【0186】
ヒト気管上皮細胞は、検出可能なレベルのN-グリコリルノイラミン(NeuGcα2-3Gal)酸を有さず、現在のヒトインフルエンザ株は、低いNeuGc特異性を示す。トリ上皮細胞は、検出可能レベルのNeuGcα2-3Galを有する。
【0187】
本実施例では、双方とも固体表面に結合している、上記の基質およびNeuAcα 2-3Galを含有するキットを考慮している。該キットはまた、該試験を実施する上で必要な全ての試薬も含有する。
【0188】
臨床検体は、ヒト患者から抽出される。開裂が生じ得るように、検体を該固体表面に接触させる。基質が切断されなければ、該疾患はインフルエンザではない(図8A)。NeuAcα 2-3Galに基づいた基質のみが切断されれば(図8B)、該疾患は、ヒトインフルエンザウイルスである。NeuAcα 2-3GalおよびNeuGcα 2-3Galに基づいた基質双方が切断されれば(図8C)、該疾患は、ヒト病原性トリインフルエンザウイルスである。
【0189】
(実施例8)
前基質を用いた検出
前基質の設計は以下のとおりである:α2,3を介してNeu5AcをXgalのガラクトースのC3に結合させる。Xgalは、β-ガラクトシダーゼの公知の色素産生基質である(図10)。
【0190】
前基質をインフルエンザを含有する臨床検体に接触させる。検体中のNAは前基質を開裂する。前基質の開裂により、遊離シアル酸および遊離Xgalが生成する。次いで、培地中にすでに存在するβ-ガラクトシダーゼが、Xgalを処理し、色素産生反応を触媒することができる。培地の色は青色になる。
【0191】
臨床検体がインフルエンザを含有しない場合、シアル酸はXgalに結合したままである。β-ガラクトシダーゼ(基質を含有する末端ガラクトースのみを処理できる)は、Xgalを処理できず、色素産生反応は生じない。培地の色は変化しない。
【0192】
(実施例9)
赤血球凝集素とノイラミニダーゼの対
以下の例は、インフルエンザウイルスの診断に使用できる代表的なインフルエンザウイルスヘマグルチニンとノイラミニダーゼの対を表にしたものである。
【0193】
【表5】






















































































































































































































































































【0194】
当然のことながら、明確にするために別々の実施形態の文脈に記載されている本発明のある特徴を、1つの実施形態に組み合わせて提供することもできることを理解されたい。逆に、簡潔にするために1つの実施形態の文脈に記載されている本発明の種々の特徴を、別個に、または任意の好適な副次的組合せにおいて提供することも可能である。
【0195】
本発明を、その特定の実施形態と関連させて記載したが、多くの変更、改良および改変が当業者に明らかであろうことは明白である。したがって、そのような全ての変更、改良および改変は、添付の請求項の趣旨および広い範囲内に包含される意図のものである。個々の各刊行物、特許または特許出願が参照として本明細書に組み込まれていることが具体的に個別に指示されているのと同じ程度に、本明細書に記載された全ての刊行物、特許および特許出願は参照としてそれらの全体が本明細書に組み込まれている。なお、本出願におけるいずれの参考文献の引用または認定も、このような参考文献が本発明の先行技術であることを認めるものとして解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0196】
【図1】本発明の基質の一実施形態の構造を示す概略図である。
【図2】本発明の分離システムの一実施形態の基本的操作を示す概略図である。
【図3】3種の基質分子の同時検出を示す概略図であり、それらのうちの2種が開裂する。
【図4】本発明の一実施形態による動的分離システムを示す概略図である。
【図5】本発明により使用できる代表的なシアル酸を示す概略図である。
【図6】インフルエンザウイルスの検出用ノイラミニダーゼ基質を示す概略図である。
【図7】それぞれヒトまたはトリ細胞に関してヒトインフルエンザウイルスおよびトリインフルエンザウイルスの特異性を示す概略図である。
【図8】図8Aは、トリインフルエンザウイルスの病原性を試験するための代表的なキットを示す写真である。インフルエンザウイルスを含まないサンプルと接触後のキットを示す写真である。図8Bは、トリインフルエンザウイルスの病原性を試験するための代表的なキットを示す写真である。ヒト非病原性トリインフルエンザを含むサンプルと接触後のキットを示す写真である。図8Cは、トリインフルエンザウイルスの病原性を試験するための代表的なキットを示す写真である。ヒト病原性トリインフルエンザを含むサンプルと接触後のキットを示す写真である。
【図9】インフルエンザウイルスの検出法を示すブロック図である。
【図10】前基質を用いた基質開裂の検出を示す概略図である。
【図11】着色ビーズにより種々のタイプのインフルエンザの同時検出を示す概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリペプチドのシアル酸結合ドメインに結合したシアル酸を含む単離組成物。
【請求項2】
前記シアル酸が、リンカーを介して少なくとも1つの炭水化物に結合している請求項1に記載の単離組成物。
【請求項3】
前記シアル酸が、2つの炭水化物に結合しており、前記2つの炭水化物のうちの第一の炭水化物が、第二のリンカーを介して前記2つの炭水化物のうちの第二の炭水化物に結合している請求項2に記載の単離組成物。
【請求項4】
前記第二のリンカーが、α1-4リンカー、α1-3リンカー、α2-3リンカーおよびα1-6リンカーからなる群から選択される請求項3に記載の単離組成物。
【請求項5】
ノイラミニダーゼにより加水分解可能である請求項1に記載の単離組成物。
【請求項6】
前記炭水化物が、ガラクトース、N-アセチルガラクトサミン、グルコース、マンノース、グルコースアミン、ガラクトースアミン、ラムノース、フコース、イノシトール、シロ-イノシトール、フルクトース、キシルロース、リブロース、リボース、アロエス、アルトロース、アラビノース、キシロース、グロース、イドース、リキソース、タロース、ノイラミン酸、グルコロン酸、グルカン酸、グルコン酸、GalNAcおよびGlcNAcからなる群から選択される請求項2または3に記載の単離組成物。
【請求項7】
前記リンカーが、α2,3リンカー、α2,6リンカーおよびα2,8リンカーからなる群から選択される請求項2に記載の単離組成物。
【請求項8】
前記シアル酸が天然物質である請求項1に記載の単離組成物。
【請求項9】
前記シアル酸が合成物質である請求項1に記載の単離組成物。
【請求項10】
前記ポリペプチドが、赤血球凝集素ポリペプチドである請求項1に記載の単離組成物。
【請求項11】
前記シアル酸結合ドメインが、赤血球凝集素ポリペプチドに含まれる請求項1に記載の単離組成物。
【請求項12】
前記赤血球凝集素ポリペプチドが切断されている請求項11に記載の単離組成物。
【請求項13】
前記赤血球凝集素ポリペプチドが、H1ポリペプチド、H2ポリペプチド、H3ポリペプチド、H4ポリペプチド、H5ポリペプチド、H6ポリペプチド、H7ポリペプチド、H8ポリペプチド、H9ポリペプチド、H10ポリペプチド、H11ポリペプチド、H12ポリペプチド、H13ポリペプチド、H14ポリペプチド、H15ポリペプチドおよびH16ポリペプチドからなる群から選択される請求項10、11または12に記載の単離組成物。
【請求項14】
少なくとも1つの検出可能な部分をさらに含む請求項1に記載の単離組成物。
【請求項15】
前記シアル酸が、リンカーを介して少なくとも1つの炭水化物に結合している請求項14に記載の単離組成物。
【請求項16】
前記検出可能な部分が、リンカーを介して前記シアル酸に結合している請求項14に記載の単離組成物。
【請求項17】
前記少なくとも1つの検出可能な部分が前酵素であり、前記結合の開裂により前記前酵素が活性化される請求項15または16に記載の単離組成物。
【請求項18】
前記少なくとも1つの検出可能な部分が前基質であり、前記結合の開裂により前記前基質を遊離させて酵素の検出可能な活性な基質を形成する請求項15または16に記載の単離組成物。
【請求項19】
前記酵素が、βガラクトシダーゼである請求項18に記載の単離組成物。
【請求項20】
前記少なくとも1つの検出可能な部分がFRET対であり、前記結合の開裂により前記FRET対からシグナルが生成する請求項15または16に記載の単離組成物。
【請求項21】
前記少なくとも1つの検出可能な部分が量子ドットであり、前記結合の開裂により前記量子ドットからシグナルが生成する15または16請求項に記載の単離組成物。
【請求項22】
前記少なくとも1つの検出可能な部分が、酵素、蛍光体、発色団、タンパク質、ペプチド、前酵素、化学発光物質、前基質、量子ドットおよび放射性同位元素からなる群から選択される標識化剤を含む請求項15または16に記載の単離組成物。
【請求項23】
分離部分をさらに含む請求項1に記載の単離組成物。
【請求項24】
一般式:
X-Y-Z
(式中、
Yは、ノイラミニダーゼの基質を含み、ノイラミニダーゼによるX-Y-Zの開裂は、開裂産物X-Y'およびY''-Zを形成し、ここでY'は、Yの第一の開裂産物であり、Y''は、Yの第二の開裂産物であり;
Xは、検出可能な部分を含み;
Zは、2相分離系のうちの1つの分離相に結合できる前記分離部分を含み;
前記X-Y-Zは、前記ウイルス性ノイラミニダーゼの天然基質の連続部分を形成しない)である請求項23に記載の単離組成物。
【請求項25】
一般式:
X-Y-Z
(式中、
Yは、ノイラミニダーゼの基質を含み、前記ノイラミニダーゼによるX-Y-Zの開裂は、開裂産物X-Y'およびY''-Zを形成し、ここでY'は、Yの第一の開裂産物であり、Y''は、Yの第二の開裂産物であり;
Xは、検出可能な部分を含み;
Zは、2相分離系のうちの1つの分離相に結合できる前記分離部分を含み;
前記X-Y-Zは、前記ウイルス性ノイラミニダーゼの天然基質の連続部分を形成しない)である組成物。
【請求項26】
前記少なくとも1つの検出可能な部分が、酵素、蛍光体、発色団、FRET対、タンパク質、前酵素、化学発光物質、前基質、量子ドットおよび放射性同位元素からなる群から選択される標識化剤を含む請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
前記分離部分が、免疫学的結合剤、磁気結合部分、ペプチド結合部分、親和性結合部分および核酸部分からなる群から選択される請求項23、24または25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項28】
前記分離部分が、検出可能な部分をさらに含む請求項23、24または25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項29】
前記検出可能な部分が、酵素、蛍光体、発色団、タンパク質、ペプチド、前酵素、FRET対、化学発光物質、前基質、量子ドットおよび放射性同位元素からなる群から選択される請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
サンプル中の少なくとも1種の病原体を検出する方法であって、
(a)前記基質の開裂を可能にする条件下、前記サンプルと請求項1または25に記載の組成物とを接触させる段階と;
(b)前記基質の開裂をモニタリングする段階であって、前記基質の前記開裂により、前記サンプル中の前記少なくとも1種の病原体の存在が示される段階と、を含む方法。
【請求項31】
前記病原体がインフルエンザウイルスである請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記サンプルが哺乳動物サンプルである請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記哺乳動物サンプルがヒトサンプルである請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記サンプルがトリサンプルである請求項30に記載の方法。
【請求項35】
前記基質がα2,6結合を含む場合、前記基質の前記開裂により、潜在的にヒト病原性であるトリインフルエンザウイルスを示す請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記基質がNeuGcα2,3結合を含む場合、前記基質の前記開裂により、トリインフルエンザウイルスを示す請求項33に記載の方法。
【請求項37】
鳥類における潜在的にヒト病原性であるトリインフルエンザウイルスを検出する方法であって、
(a)トリサンプルとノイラミニダーゼ基質とを接触させる段階であって、前記ノイラミニダーゼ基質がα2,6結合を含むものである段階と;
(b)前記基質の開裂をモニタリングする段階であって、前記基質の前記開裂が潜在的にヒト病原性であるトリインフルエンザウイルスを示すものである段階と、を含む方法。
【請求項38】
ヒトにおけるトリインフルエンザウイルスを検出する方法であって、
(a)ヒトサンプルと、NeuGcα2,3結合を含むノイラミニダーゼ基質とを接触させる段階と;
(b)前記基質の開裂をモニタリングする段階であって、前記基質の前記開裂がヒトにおけるトリインフルエンザウイルスを示すものである段階と、を含む方法。
【請求項39】
前記サンプルが、粘液、唾液、のど洗浄液、鼻腔洗浄液、脊髄液、痰、尿、精液、汗、大便、血漿、血液、気管支肺胞液、膣液、涙液および組織生検からなる群から選択される請求項30、37および38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記サンプルが、粘液、唾液、のど洗浄液、鼻腔洗浄液、脊髄液、痰、血漿、血液、気管支肺胞液、涙液および組織生検からなる群から選択される請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記モニタリングが、ホモジニアスアッセイを用いて実施される請求項30、37および38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記モニタリングが、ヘテロジニアスアッセイを用いて実施される請求項30、37および38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
サンプル中の少なくとも1種のインフルエンザウイルスを検出するための診断用キットであって、請求項1から7、14から15および24から28のいずれかに記載の複数の組成物、および前記基質の開裂を検出するための試薬を含むキット。
【請求項44】
包装材料と、サンプル中の複数種のインフルエンザウイルスの存在を検出するための複数の組成物とを含む診断用キットであって、前記組成物の各々が、一般式
X-Y-Z
(式中、
Yは、ウイルス性ノイラミニダーゼの基質を含み、前記ウイルス性ノイラミニダーゼによるX-Y-Zの開裂は、開裂産物X-Y'およびY''-Zを形成し、ここでY'は、Yの第一の開裂産物であり、Y''は、Yの第二の開裂産物であり;
Xは、検出可能な部分を含み;
Zは、2相分離系のうちの1つの分離相に結合できる分離部分を含み;
前記X-Y-Zは、前記ノイラミニダーゼの天然基質の連続部分を形成しない)であり、
前記Xの各々は弁別的に検出可能であり、一方、前記包装材料は、前記キットがサンプル中の複数種のインフルエンザウイルスの検出用であることを示すラベルまたは添付文書を含む診断用キット。
【請求項45】
前記ウイルス性ノイラミニダーゼの前記基質が、ポリペプチドのシアル酸結合ドメインに結合したシアル酸を含む請求項44に記載の診断用キット。
【請求項46】
前記シアル酸が、リンカーを介して少なくとも1つの炭水化物に結合している請求項45に記載の診断用キット。
【請求項47】
前記炭水化物が、ガラクトース、N-アセチルガラクトサミン、グルコース、マンノース、グルコースアミン、ガラクトースアミン、ラムノース、フコース、イノシトール、シロ-イノシトール、フルクトース、キシルロース、リブロース、リボース、アロエス、アルトロース、アラビノース、キシロース、グロース、イドース、リキソース、タロース、ノイラミン酸、グルコロン酸、グルカン酸、グルコン酸、GalNAcおよびGlcNAcからなる群から選択される請求項46に記載の診断用キット。
【請求項48】
前記リンカーが、α2,3リンカー、α2,6リンカーおよびα2,8リンカーからなる群から選択される請求項46に記載の診断用キット。
【請求項49】
前記シアル酸が天然物質である請求項45に記載の診断用キット。
【請求項50】
前記シアル酸が合成物質である請求項45に記載の診断用キット。
【請求項51】
前記ポリペプチドが、赤血球凝集素ポリペプチドである請求項45に記載の診断用キット。
【請求項52】
前記シアル酸結合ドメインが、赤血球凝集素ポリペプチドに含まれる請求項45に記載の診断用キット。
【請求項53】
前記赤血球凝集素ポリペプチドが切断されている請求項52に記載の診断用キット。
【請求項54】
前記赤血球凝集素ポリペプチドが、H1ポリペプチド、H2ポリペプチド、H3ポリペプチド、H4ポリペプチド、H5ポリペプチド、H6ポリペプチド、H7ポリペプチド、H8ポリペプチド、H9ポリペプチド、H10ポリペプチド、H11ポリペプチド、H12ポリペプチド、H13ポリペプチド、H14ポリペプチド、H15ポリペプチドおよびH16ポリペプチドからなる群から選択される請求項45に記載の診断用キット。
【請求項55】
前記基質の開裂を検出する試薬をさらに含む請求項44に記載の診断用キット。
【請求項56】
前記複数の組成物の各々が、異なるノイラミニダーゼに対する基質である請求項44に記載の診断用キット。
【請求項57】
前記複数の組成物が、単一の固体支持体に結合している請求項44に記載の診断用キット。
【請求項58】
前記弁別的な検出が、前記単一の固体支持体上のアドレス可能な位置により実施される請求項57に記載の診断用キット。
【請求項59】
前記弁別的な検出が、異なる検出可能な部分により実施される請求項44に記載の診断用キット。
【請求項60】
前記固体支持体が、ビーズとして構成されている請求項58に記載の診断用キット。
【請求項61】
前記ビーズが、着色ビーズ、磁気ビーズ、タグ付きビーズおよび蛍光ビーズからなる群から選択される請求項60に記載の診断用キット。
【請求項62】
前記インフルエンザウイルス以外の、コロナウイルス、SARS、HMPV (ヒトメタニューモウイルス)、アデノウイルス、RSV (呼吸器合胞体ウイルス)およびライノウイルスからなる群から選択される少なくとも1種以上のウイルス検出用の基質をさらに含む請求項44に記載の診断用キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図6】
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【図8】
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【図11】
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【公表番号】特表2009−516502(P2009−516502A)
【公表日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−537311(P2008−537311)
【出願日】平成18年10月25日(2006.10.25)
【国際出願番号】PCT/IL2006/001226
【国際公開番号】WO2007/049276
【国際公開日】平成19年5月3日(2007.5.3)
【出願人】(508074077)エムエヌディー・ダイアグノスティック・リミテッド (2)
【Fターム(参考)】