説明

インプラントデバイス離型剤及びその使用法

医療用インプラントデバイスは、高分子材料と離型剤とから製造され、前記デバイスは、成形レザバーインプラントであり、離型剤は、少なくとも1000の分子量(MW)を有する。離型剤は、非イオン性界面活性剤、例えばBrij 35、ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリオレエート、Tween20、Tween80、ビタミンE TPGS及びこれらのいずれか2種以上の混合物、であってよい。水和インプラントは、約500mm以上の表面積を有してよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2007年4月27日に提出された米国仮出願60/914511の利益を主張し、前記仮出願は、全ての目的のために、全体として、参照することにより本明細書の一部を構成する。
【0002】
[発明の分野]
一般に、本発明は医療用インプラントデバイス及びこれの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
薬物は、経口、静脈内投与、エアロゾル吸入、経皮パッチ及び皮下インプラントを含む種々の方法で、患者に送達することができる。選択される方法は、特に、患者内に達すべき薬物又は調合薬の所望の治療濃度及びその濃度が保持されるべき持続期間に依存する。
【0004】
皮下インプラントは、患者の皮膚下に挿入されて、患者に薬物又は他の医薬物質を皮下導入又は投与することを可能とする。一般に、皮下インプラントにより投与される薬物は、長期間にわたりゆっくりと放出され、均一な用量の薬物が、多年月に亘って施与される。
【0005】
インプラントのサイズと形状は、特定の薬物の皮下インプラントからの送達速度を決定する上で重要である。皮下インプラントの寸法は、実際上の配慮により制約される。例えば、代表的なインプラントの長さは、一般に約1.5〜2インチの長さに制限される。その理由は、より長いインプラントは精確に位置づけするのが難しく、より破損しやすく(これは薬物送達速度に影響し得る)、一般により扱いにくく、美容上見えてしまうからである。この理由のため、1本の長いインプラントではなく、個々のより短いインプラントを複数移植して、所望量の薬物を供給することが必要となろう。しかしながら、インプラントの2本以上の施与は、時間がかかり、扱いにくく、かつ桁違いの費用がかかることもあろう。
【0006】
皮下インプラントを使用して投与される活性薬剤、例えば、薬物又は製薬材料などを、生物学的に不活性なポリマーから製造されたカートリッジに埋め込むことができる。そのような場合、カートリッジは、一般に、使用ポリマーの種類に依存して、押出、射出成形、反応射出成形、圧縮成形又は回転成形により製造される円筒形中空チューブである。そのような円筒形中空チューブは、1つ又は2つの開放端を有してよい。例えば、全体として、参照することにより、本明細書の一部を構成する、U.S.特許No.5266325、5292515及び6361797に、好適なカートリッジを回転成形する方法が記載されている。成形又は鋳造の後、活性薬剤は、カートリッジの中空コア又はレゼバーに、通常はペレットの形状で導入することができる。追加の重合性液体材料を、コア開口に導入し、硬化させて、カートリッジを密封することができる。
【0007】
型からカートリッジを外すのに役立つ離型剤は、当技術で公知である。そのような離型剤は、一般に、型の上又は内部に、浸漬被覆で施すか、スプレー又は塗装し、さもなければ型に接着し得る成形重合材料の、型からの抜き取りを容易にする。しかしながら、剰余離型剤は、成形品に接着することもある。クリーンで滅菌されていなくてはならないインプラントデバイスの場合には、これらの離型剤を、インプラントデバイス表面から除去すべきである。あるいは、マイナスの反応を起こさずに患者に導入できる材料から、デバイスを製造すべきである。
【0008】
上述した剰余離型剤が残る問題は、恐らく、最終的にカートリッジを形成する重合性材料と離型剤とを型へ重合性材料を導入する前に組み合わせることにより回避することができる。当然のことだが、離型剤が患者への導入に関して安全でなくてはならず、かつ成形品のポリマーと不利な反応をして、例えば、製品の構造の弱化を引き起こすべきでないという条件のもとに上記問題は回避される。従って、本発明の1態様で、カートリッジのポリマーと好ましくない反応をせず、安全に患者に導入できる、効果的な離型剤が提供される。更に、詳細に以下に記載されるように、選択された離型剤は、滅菌の副作用から、ポリマーカートリッジを保護する。
【発明の概要】
【0009】
第一の態様では、高分子材料と離型剤とを有するデバイスが提供され、このデバイスは、成形レザバーインプラント(reservoir implant)であり、離型剤は、少なくとも1000g/molの分子量を有する。ある実施形態では、離型剤は、非イオン性界面活性剤である。例えば、非イオン性界面活性剤は、ポリエチレングリコール親水性尾部及び親油性頭部を含んでよいが、これに限定はされない。ある実施形態では、離型剤は、Brij 35、ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリオレエート、Tween20、Tween80及び/又はビタミンE TPGS又はこれらのいずれか2種以上の混合物から選択される。更に他の実施形態では、離型剤は、少なくとも約1200の分子量(MW)を有する。
【0010】
ある実施形態では、レゼバーインプラントは、乾燥インプラント(dry implant)である(即ち水和していない)。乾燥インプラントは、ある実施形態では、約350mm以上の表面積を有し、他の実施形態では、約350mm〜約600mmの表面積を有すると、更に記載することができる。
【0011】
更に他の実施形態では、レゼバーインプラントは、水和インプラントである。水和インプラントは、ある実施形態では、約500mm以上の表面積を有し、他の実施形態では、約500mm〜約800mmの表面積を有すると、更に記載することができる。
【0012】
もう1つ別の態様では、インプラントデバイスを製造するためのプロセスが提供される。そのようなプロセスは、重合カラム又は型にモノマーと離型剤を装入するステップと、モノマーを、重合カラム又は型の内面に沿って半径方向外側へ移動させるのに十分な速度で、重合カラム又は型をその縦軸の周りに回転させるステップと、重合カラム又は型を、地面に実質的に平行な位置に保持するステップと、液体重合性材料を重合させるステップと、レゼバーインプラントデバイスを回収するステップとを含んでよく、前記デバイスは、少なくとも1000の分子量(MW)を有する離型剤を少なくとも一部含む。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明組成物と方法を記述する前に、当業者は、これらの例が変化し得ることを認識するであろうから、本発明は、記載される特定の分子、組成物、手順又は手続きに限定されないと理解されるべきである。本記述に使用される専門用語は、特定のバージョン又は実施形態のみを記述することを目的とし、添付クレームによってのみ限定される本発明の範囲を限定する意図はないことも理解されるべきである。本明細書中に使用される用語は、当業者に認識され、公知である意味を有する。しかしながら、便宜上及び完全を期して、選択された用語及びこれらの意味を以下に記載する。
【0014】
本明細書及び添付クレーム中で使用されるように、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が明確に他の指示をしない限り、複数の意味を含む意図があることにも注意すべきである。他の定義が無い場合、本明細書中に使用される全ての技術及び科学用語は、当業者により一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似又は等価の方法及び材料の何れも、本発明の実施形態の実行又は実験に使用できるが、好ましい方法、デバイス及び材料をこれから記載する。本明細書に記述の全ての刊行物は、本発明を支持する範囲まで引用することにより、本明細書の一部を構成する。本明細書中の何物も、先行発明に基づき、本発明が、そのような開示に先行する資格がないことを認めると解釈すべきではない。
【0015】
本明細書中に使用されるように、用語「約」は、使用されている数字のプラスマイナス10%の数値を意味する。例えば、約50%とは、45%〜55%の範囲内であることを意味する。
【0016】
「制御放出処方物」は、薬物又は他の活性薬剤、例えばポリペプチド又は合成化合物、の所定の治療有効量が長期間にわたり一貫して放出されるようにデザインされた処方物を示し、その結果、所望の治療効果を得るのに必要な治療の数を減らす。制御処方物は、所望の効果を得るのに必要な治療の数を減らすのに役立つだろう。制御放出処方物が、送達環境中へ配置された実質的直後に、活性薬剤の放出が開始し、その後、活性薬剤の放出が一貫して持続することにより、被験者内に所望の薬物動態プロファイルが達成されるだろう。ある実施形態では、活性薬剤の放出は、0次又はほぼ0次である。
【0017】
用語「患者」及び「被験者」は、ヒトを含む全ての動物を意味する。患者又は被験者の例には、ヒト、牛、犬、猫、山羊、羊及び豚がある。
【0018】
本明細書中に使用される用語「製薬上許容される塩、エステル、アミド及びプロドラッグ」は、適切な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー応答等が無く、患者の組織に接触して使用するのに好適であり、妥当なリスク対効果比に見合い、かつ意図する使用に有効である、化合物並びに可能であれば両性イオン形状の化合物の、カルボキシレート塩、アミノ酸付加塩、エステル、アミド及びプロドラッグを示す。
【0019】
用語「プロドラッグ」は、例えば、血液中の加水分解により、生体内で迅速に変形して、前記処方物の親化合物を生じる化合物を示す。参照することにより本明細書の一部を構成する、T.Higuchi及びV.Stella,“Pro−drugs as Novel Delivery Systems,”A.C.S.Symposium Seriesの14巻及びBioreversible Carriers in Drug Design,ed.Edward B.Roche,American Pharmaceutical Association and Pergamon Press,1987中で徹底的な検討が行われている。
【0020】
更に、化合物は、水、エタノールなどの製薬上許容される溶剤との溶媒和形態並びに非溶媒和形態で存在してよい。一般に、溶媒和形態は、非溶媒和形態と等価であると考えられている。
【0021】
本明細書中で使用される「高分子薬物」という表現は、薬物、即ち、特定の身体器官又は機能の活性に影響し、ある実施形態では分子量1000g/molより大、他の実施形態では約1000g/mol〜約25000g/mol、又は更に他の実施形態では25000g/molより大の分子量を有する物質を包含することを意図する。ある種の薬物、例えばステロイド、同化剤及びインスリン、は、凝集傾向があり、その結果溶解性を減じるという特徴がある。好適な薬物には、内分泌剤、化学療法剤、抗生物質、抗−薬物中毒剤、腫瘍治療薬、抗真菌薬、抗肺機能不全剤、酵素及び中枢神経系に影響する高分子タンパク質があるが、これらに限定はされない。好ましい高分子薬物には、天然及び組換え生物活性タンパク質並びにその類似体、例えば(1)成長ホルモン及びその類似体、(2)インスリン及びインスリン様成長因子、例えばソマトミジン及びその類似体、(3)他の下垂体由来ホルモン、例えばプロラクチン及びその類似体がある。
【0022】
用語「塩」は、本明細書中で提供される化合物の相対的に無毒の、無機及び有機酸付加塩を示す。これらの塩は、化合物の最終の単離と精製の間に現場製造できるか、又はその遊離塩基の形態の精製化合物を好適な有機又は無機酸と別々に反応させ、そうして形成された塩を単離することにより製造できる。代表的な塩には、酢酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、吉草酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、ホウ酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、リン酸塩、トシレート、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、ナフチル酸塩、メシル酸塩、グルコヘプトン酸塩、ラクトビオン酸塩、及びラウリルスルホネート塩などがある。これらには、例えばナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム等の、アルカリ金属及びアルカリ土類金属に基づくカチオン並びに無毒アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチルアミン等を含んでもよい。(例えば、参照することにより本明細書の一部を構成する、S.M.Barge et al.,“Pharmaceutical Salts,”J.Pharm.Sci.,1977,66:1−19を参照)。
【0023】
「治療」は、患者が患っている場合に、虚弱又は疾患を予防(防止)又は治療するために、患者に対し、医薬の投与又は医療処置を行うことを示す。
【0024】
「治療有効量」は、病状に付随する症候を減じる、予防する又は改善するのに十分な量である。ホルモン療法との関連で、これは、疾病又は不全での身体機能又はホルモンレベルを正常化することも意味し得る。
【0025】
他に記載がない場合、用語「コポリマー」は、少なくとも2つのエチレン性不飽和モノマーの混合物の重合により製造されたポリマーを含む。
【0026】
用語「HEMA単位」は、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(“HEMA”)を含有する親水性材料を重合させることにより得られるポリマー中の反復構造:
【化1】

を意味する。
【0027】
用語「HPMA単位」は、ヒドロキプロピルメタクリレート(“HPMA”)を含有する親水性材料を重合させることにより得られるポリマー中の反復構造:
【化2】

を意味する。
【0028】
用語「HBMA単位」は、2−ヒドロキシブチルメタクリレート(“HBMA”)を含有する親水性材料を重合させることにより得られるポリマー中の反復構造:
【化3】

を意味する。
【0029】
本明細書中に記載の実施形態は、一般に、医療機器として使用される成形品の製造に使用される離型剤を対象とする。一般に、離型剤は、成形品を型から効果的に取り外すことを可能にする化合物である。しかしながら、医療機器に使用される離型剤は、成形品に対し非反応性であってもよく、患者に安全に導入でき、特定の実施形態では、滅菌プロセスにより生じる成形品への悪影響を防ぐことができる。
【0030】
本明細書中で具体化される離型剤は、一般に非イオン性界面活性剤であり、好ましい実施形態では、離型剤は、ビタミンE TPGSである。ビタミンE TPGSは、D−α−トコフェリル(ビタミンE)ポリエチレングリコール1000スクシネートの略称である。これらの離型剤は、優れた離型特性を提供し、成形品に対し非反応性であると同時にインプラントに適した安全プロファイルを提供する。更に、これらの離型剤は、抗酸化剤又はラジカル捕獲剤として作用し、そのため、特に、照射法を含む、フリーラジカルを生じ得る滅菌法による、成形品の滅菌に伴う成形品への悪影響を防止又は減じる。特定の実施形態では、離型剤は、所望のモノマー混合物に溶解する。成形プロセス時に、例えば、親水性モノマー材料、例えばHEMA、HPMA及びHBMAの組合せ、は、両親媒性離型剤、例えばビタミンE TPGS、と併用することができる。
【0031】
非イオン性界面活性剤は、当技術で公知であり、一般に、ポリエチレングリコール親水性尾部及び親油性頭部からなっていてよい。例えば、ビタミンE TPGSにおいて、親油性頭部はトコフェロールスクシネートであり、Triton X−100ではイソオクチルフェニル基である。非イオン性界面活性剤は、数個のパラメーター、例えば、ポリエチレングリコール尾部対親油性頭部のサイズに関係する親水−親油バランス(HLB);ミセルが生じる界面活性剤の濃度である臨界ミセル濃度(CMC);同様の特性を有する他の界面活性剤と比べて、親水性及び親油性部分のサイズを示す分子量(MW);により特徴づけられる。更に、CMCは、界面活性剤の表面活性の指標であり、低いCMCは、より強い結合力の故に、より安定なミセルの指標である。以下の表1に、数個の界面活性剤とその物理特性をリストアップする。
【表1】

【0032】
インプラントデバイスと組み合わせて使用する追加の離型剤として、ポリオキシエチレン(2)ステアリルエーテル、ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン(5)ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレン(10)イソオクチルフェニルエーテル等、又はこれらの離型剤の組合せを挙げることができるが、これらに限定はされない。
【0033】
特定の実施形態では、離型剤は、脂肪酸又は他の疎水性化合物の、ポリオキシエチレンエステルである。これらの化合物は、当技術で公知であり、ポリオキシエチレン尾部及び飽和又は不飽和疎水性頭部を含む。様々の実施形態の疎水性部分は、例えば、フェノール、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、トコフェロール、ビタミンE等の任意の芳香族基含有部分又は多環式芳香族部分を含んでよく、かつイソプレノイド又は非イソプレノイドであってよい。これらの芳香族部分と結合する側鎖は、任意の長さであって良く、更に、任意の数の二重結合及び/又は置換基を含むことができる。例えば、非イオン性界面活性剤には、任意のイソ型、ラセミ化合物又は化学的に変性された誘導体を含む天然又は市販のトコフェロール、例えばビタミン E TPGS、があるが、これに限定はされない。トコフェロールとして、トコフェロールの酸化生成物、例えばα−トコフェロール、トコフェロールキノン、トコフェロールヒドロキノン、エポキシトコフェロール及びニトロトコフェロールの酸化生成物、も挙げることができる。
【0034】
特定の理論に縛られるものではないが、より高い分子量の離型剤は、より低い分子量の離型剤よりも改良された離型特性を提供すると考えられる。そういうものとして、好ましい実施形態で、離型剤は、約1000を上回る分子量(MW)を有する。他の実施形態では、離型剤は、約1200を上回る分子量(MW)を有する。更に他の実施形態では、離型剤は、約1000〜約2000、好ましくは約1200〜1800の分子量(MW)を有する。
【0035】
実施形態の成形品は任意の成形品であってよく、具体的には、成形品を、薬物送達用インプラントデバイスなどの医療機器に使用することができる。薬物送達インプラントデバイスは、活性薬剤を動物、例えばヒト、羊、犬、猫、七面鳥、畜牛等、に遅延/持続及び即座/持続放出するのに非常に有用である。そのようなインプラントデバイスは、当技術で公知であり、例えば、全体として、参照することにより本明細書の一部を構成する、U.S.特許No.5266325、5292515及び6361797中に記載される。
【0036】
様々の実施形態で、埋め込み型薬物送達デバイスとして使用されるカートリッジは、限定的ではないが、円筒形又は環形状を含む任意の形状に成形されてよく、カートリッジの寸法は、その用途に応じて変化させ得る。特定の実施形態では、離型剤を使用して製造された薬物送達デバイスは、内部のレザバー又は「コア」内に活性薬剤、及び場合により製薬上許容される担体を含む、円筒形状インプラントである。インプラントの膜の厚さ(内面と外面との間の厚さ)は、実質的に均一であり、含まれる薬剤の放出のための、律速バリヤとしての機能を果たし得る。そのようなインプラントは、可塑化され又は水和され、種々の医療用途で使用するための他の幾何学的形状製品に再形成できる。キセロゲルのような親水性インプラントは、水を迅速に吸収し、水和状態でヒドロゲルと呼ばれる。どちらの形でも、宿主に対し生体適合性で、無毒であり、生物分解不可能で、水膨潤性及び水不溶性である。
【0037】
好適な送達デバイスは、水性送達環境への活性薬剤の治療用量の遅延/持続放出を可能にする。本明細書中で使用されるように、用語「活性薬剤」又は「活性化合物」は、埋め込み型送達デバイスから送達されて有益かつ有用な結果を生じ得る任意の化合物又は化合物混合物を広く包含する。固体又は液体形状の活性薬剤は、水性系で、十分な溶解性又は混和性を有することで、オーダーメイドのヒドロゲル膜を通して送達環境へ放出され得る。本明細書中に使用されるように、「高分子薬物」を含む「薬物」という用語には、被験者に局所又は全身的効果を与える任意の生理活性又は薬理活性物質が含まれ得る。活性薬剤として、中枢神経系に作用する無機及び有機薬物、精神賦活剤、精神安定剤、抗けいれん薬、筋弛緩薬、抗パーキンソン薬、鎮痛剤、抗炎症薬、麻酔薬、鎮痙薬、筋収縮薬、抗菌剤、抗マラリヤ薬、ホルモン剤、交感神経様作用薬、心臓血管剤、利尿薬、駆虫薬等を挙げることができる。
【0038】
種々の実施形態で、薬物送達デバイスは、活性薬剤及び製薬上許容される担体を含有してよく、この担体は、限定的ではないが、例えば、懸濁媒体、溶媒、水性系、固体基質又はマトリックスなどの何れの形状であってもよい。懸濁媒体及び溶媒として、例えば、シリコン油(特に医療グレード)、コーン油、ヒマシ油、ピーナツ油及び胡麻油等の油;ヒマシ油1mol当たり約30〜35molの酸化エチレンが結合するヒマシ油と酸化エチレンの縮合生成物;低分子量脂肪酸の液体グリセリルトリエステル;低級アルカノール;グリコール;ポリアルキレングリコールを挙げることができる。水性系として、例えば滅菌水、生理食塩水、デキストロース、水又は生理食塩水中のデキストロース等を挙げることができる。固体基質又はマトリックスとして、例えばデンプン、ゼラチン、糖(例えばグルコース)、天然ガム(例えばアカシア、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース)等を挙げることができる。更に、担体は、例えば、保存剤、安定剤、湿潤剤及び乳化剤等の補助剤を含有してもよい。
【0039】
インプラントデバイスの物理的寸法は、送達すべき活性薬剤の総量、所望の1日投薬量及び送達の持続期間に基づいて決定できる。例えば、所定の活性薬剤のより高い1日投薬量を放出するのに十分な表面積を提供するために、より大きなインプラントが必要とされ得る。対照的に、活性薬剤を、より低い1日投薬量で放出すべき場合は、より小さなインプラントを使用することができる。同様に、カートリッジの壁の厚さを増加するか、又はカートリッジ内の孔の数又はサイズを減じるか、又はカートリッジ壁を通る活性薬剤の拡散を一層緩慢にするポリマーを使用して、長期間にわたり、より低い用量を提供することができる。この時間因子は、最適の速度−放出(rate−releasing)膜、その連続孔構造、活性化合物、活性化合物の液体媒体への溶解度及び当業者に公知の他の検討事項に依存する変数であることが理解されよう。一般に、送達の持続期間は、数日から数年にわたり、好ましくは約1週間〜18ヶ月、及びそれより長きにわたることもある。
【0040】
インプラントデバイスの円筒形状カートリッジの円筒形レゼバー又は「コア」の容積は、πrhに等しく、式中、rはレゼバーの半径であり、hはその高さである。円筒からの定常状態放出についての式は:
[dQ/dt]=[2πhDK]/[ln(r/r)]
であり、式中、dQ/dtは、活性薬剤が高分子材料を通る拡散の速度(μg/hr)であり、rは、円筒形デバイスの外側半径である。そのため、膜の厚さは、r−rである。DKは、膜透過係数(cm/hr)であり、式中、Dは膜の拡散率(cm/hr)であり、Kは、膜/担体に関する分配係数である。Cは、担体中の活性薬剤の濃度(μg/cm)である。Cが飽和に保持される場合に、定常状態放出が得られる。決定された定常状態放出定数、1日の投薬量、送達持続期間、及び活性薬剤と担体処方物の容積を使用して、コアの容積が容易に決定でき、適切なサイズのカートリッジを制作する型を用意することができる。
【0041】
被験者、例えばヒト又は他の動物、の皮下に埋め込まれる薬物送達デバイスとして、円筒形カートリッジを使用する特定の実施形態では、水和カートリッジの長さは約5mm〜約60mmであり、外径は、約1.5mm〜約5mmであってよい。何れのサイズのインプラントにも離型剤を使用してよいが、ある実施形態では、離型剤は、より大きなインプラントデバイスの製造で使用される。例えば、非イオン性界面活性離型剤を使用して製造された水和カートリッジの長さは、約40〜約60mmであり、外径は、約3〜約5mmであってよい。ある実施形態では、水和カートリッジの長さは、45〜60mmであり、外径は、3.5〜4.8mmである。特定の理論に縛られることを望むものではないが、非イオン性界面活性剤離型剤は、カートリッジの製造の間、使用される型内の表面張力に打ち勝つと同時に、カートリッジを型から容易に取り外すことを可能にしよう。特定の実施形態では、より大きな動物は、大きな薬物送達デバイスの移植に耐えうるので、より大きなカートリッジが、大きな動物又は家畜、例えば羊、乳牛、山羊、畜牛等のために使用できる。
【0042】
円筒形カートリッジが薬物送達デバイスとして使用される特定の他の実施形態では、カートリッジのサイズは、デバイスの外側表面積に関して記載することができる。とは言うものの、水和インプラント及びキセロゲル(即ち、非水和又は乾燥)インプラントは、種々の寸法、そのため種々の表面積を有する。上に記載のように、ある実施形態では、離型剤が、より大きなインプラントデバイスの製造で使用される。例えば、キセロゲル、非水和、又は乾燥インプラントは、約350mm以上の表面積を有する。或いは、キセロゲル、非水和、又は乾燥インプラントは、約350mm〜約600mmの表面積を有し得る。例えば、乾燥インプラントは、378mm〜660mmの表面積を有し得る。更に、水和インプラントは、約500mm以上の表面積を有し得る。又は、水和インプラントは、約600mm〜約800mmの表面積を有し得る。本明細書に記載されるように、用語「水和インプラント」は、含水量5wt%以上を有し、従って柔らかく、柔軟であるインプラントを示す。本明細書中に使用されるように、乾燥インプラントは、硬く柔軟性のないインプラントを示し、ある実施形態では含水量5wt%未満、他のある実施形態では1wt%未満を有する。
【0043】
インプラントの種々の部品を製造するのに、任意の重合性材料を使用でき、特定の実施形態では、重合性、親水性、エチレン性不飽和化合物を使用して、カートリッジを製造することができる。様々な実施形態に使用できる親水性モノマーの例は、エステル化可能なヒドロキシル基(esterifiable hydroxyl group)及び少なくとも1つの余分のヒドロキシル基を有するポリヒドロキシ化合物とアクリル酸又はメタクリル酸とのモノエステル、例えばメタクリル酸及びアクリル酸のモノアルキレン及びポリアルキレンポリオール、例えば2−ヒドロキシエチルメタクリレート及びアクリレート、ジエチレングリコールメタクリレート及びアクリレート、プロピレングリコールメタクリレート及びアクリレート、ジプロピレングリコールメタクリレート及びアクリレート、グリシジルメタクリレート及びアクリレート、グリセリルメタクリレート及びアクリレート等;N−アルキル及びN,N−ジアルキル置換アクリルアミド及びメタクリルアミド、例えばN−メチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド等;N−ビニルピロリドン;アルキル置換N−ビニルピロリドン、例えばメチル置換N−ビニルピロリドン;N−ビニルカプロラクタム;アルキル置換N−ビニルカプロラクタム、例えばN−ビニル−2−メチルカプロラクタム、N−ビニル−3,5−ジメチルカプロラクタム等であるが、これらに限定はされない。
【0044】
様々な実施形態では、重合性材料は、重合性疎水性モノマー1種以上を更に含んでよい。重合性疎水性コモノマーは、生じる不均質親水性ポリマーの平衡含水率値を減じる実質的に水に不溶の化合物であり、親水基又はその他の基を欠いている。疎水性モノマーの濃度を増加させると、平衡含水率が減少した不均質親水性ポリマーを生じることが判明した。そのため、ある実施形態では、重合性疎水性モノマーの特定量を、重合性親水性材料に添加し、水膨潤性ポリマーカートリッジの平衡含水率値を変更することができる。重合性疎水性コモノマーの例には、アルキル2−アルケノエート、アルコキシアルキル2−アルケノエート及びビニルエステル、例えば、限定的ではないが、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、アルコキシアルキルメタクリレート、アルコキシアルキルアクリレート、ポリ(アルコキシ)アルキルメタクリレート、ビニルアルカノエート等があり、限定的ではないが、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、メトキシメチルアクリレート及びメタクリレート、エトキシメチルアクリレート及びメタクリレート、及びメトキシエチルメタクリレート、酢酸ビニル及びプロピオン酸ビニルを挙げることができる。しかし、当然のことながら、これらのポリマーは、不均質で、交互に疎水性及び親水性極性領域(hydrophilic polar region)を含み得、かつ例えばEGDMAなどの非極性架橋剤は、重合時に、ポリマーの非極性疎水性領域に集結し、ポリマー中に架橋密度勾配を生じ得る。そのようなポリマーは、疎水性セグメントでの過架橋及び親水性セグメントでの低架橋を特徴とし、これは、最終成形品を弱く、壊れやすくし得る。
【0045】
そのため、ある実施形態では、重合性材料は、少なくとも2種の重合性親水性モノマーを含んでよい。例えば、2−ヒドロキシエチルメタクリレート及びヒドロキシプロピルメタクリレート、又は2−ヒドロキシエチルメタクリレート及びN−メチルアクリルアミドなどの混合物を使用することができる。そのような実施形態では、平衡含水率は、2種の親水性モノマーの量を変えることにより調整することができる。特定の理論に縛られることを望むものではないが、均質親水性ポリマーから製造される成形品は、不均質ポリマー混合物から製造される製品よりも均一に架橋されており、それほど脆弱ではないようである。特定の実施形態では、カートリッジは、ポリHEMAを生じるHEMAのような液体親水性モノマーから製造することができる。ポリHEMAは、体内組織に対し、極めて生体適合性を有する、均質で、親水性のホモポリマーであり、0に近い界面自由エネルギーを有する。他の重合性親水性コモノマー1種以上の量を変えて含むHEMA混合物は、重合して、有用な性質を有する、予測可能で均質な親水性コポリマーを生じることができる。
【0046】
1実施形態では、孔形成材料が、重合性親水性材料と共に含まれ得る。孔形成剤は、液体又は固体、有機又は無機であってよく、親水性ポリマー中に望まれる多孔率に依存して0.1ミクロン未満〜数ミクロンのサイズ範囲であってよい。一般に、孔形成剤は、液体重合性材料中に、均一に分布又は分散されてよく、重合親水性ポリマーの化学構造を変えずに、生じた成形親水性カートリッジから抜き取ることができる。孔形成剤の例には、塩化ナトリウム、リン酸カリウム、硝酸カルシウム、モノ−及びポリサッカリド等があるが、これらに限定はされない。
【0047】
重合性材料の架橋を開始及び/又は保持するために、当技術で公知の任意の架橋剤を、重合性材料中に使用でき、前記架橋剤には、例えばジ−、トリ−及びテトラ−エチレン性不飽和化合物などの、少なくとも2つの重合性エチレン性部位を有するポリエチレン性不飽和化合物、例えばジ−不飽和架橋性化合物含有/不含トリ−不飽和架橋剤、例えばジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート及びジアクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート及びジアクリレート;並びにトリエタノールアミン、グリセロール、ペンタエリトリトール、1,1,1−トリメチロールプロパンを含むポリオールの、ジ−、トリ−及びテトラ−アクリレート又はメタクリレートエステル;トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTMA)等があるが、これらに限定はされない。
【0048】
様々な実施形態では、重合性材料の重合は、例えば、有機過酸化物、過炭酸塩、過酸化水素及びアルカリ金属硫酸塩などのフリーラジカル生成化合物を用いて、触媒されるか又は開始され得る。重合触媒及び開始剤の他の例には、クメン、ヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカルボネート、過酸化水素、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、アセチルペルオキシド、ジ−n−プロピルペルオキシジカルボネート、ジ−tert−ブチルペルオキシド、ジ−sec−ブチルペルオキシジカルボネート、硫酸アンモニウム、硫酸カリウム、及び硫酸ナトリウムがあるが、これらに限定はされない。特定の実施形態では、例えばtert−ブチルペルオクトエート、過酸化ベンゾイル、及びジ(secブチル)ペルオキシジカルボネートのような触媒は、例えば約20℃〜約80℃等の適度に低温で効果的なこともある。
【0049】
もう1つ別の実施形態では、慣用のレドックス重合触媒を使用することができる。特定の理論に縛られることを望むものではないが、レドックス触媒を使用する重合の開始は、重合が、例えば、約0℃〜約50℃などの低温で、適切な速度で起こり得るので、有利であろう。当技術で公知であり、かつ使用される、例えば、重硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、チオ硫酸ナトリウム及び過硫酸カリウム等の、どのレドックス重合触媒も、重合反応に使用することができる。
【0050】
重合性材料は、任意の方法により調製することができる。例えば1実施形態では、重合性モノマーは、離型剤と結合して、単一混合物となることができる。場合により、孔形成剤、架橋剤及び/又は重合開始剤も添加することができる。もう1つ別の実施形態では、重合性モノマー及び架橋剤は、結合して、マスターバッチを形成し、孔形成剤、重合開始剤及び離型剤は、重合前に、このマスターバッチ又はマスターバッチの一部に添加することができる。更にもう1つの実施形態では、追加の離型剤を使用して、型の内面を被覆することができる。そのような実施形態では、液体重合性材料又は異なる離型剤の中に挿入された同様の離型剤を、当技術で公知のいずれかの方法、例えば、浸漬コーティング、型の内面へのスプレー又は塗装、により、型又は重合カラムに施すことができる。一般に、十分な離型剤を使用して、型の内面全てを離型剤の薄層で完全に覆うことができる。
【0051】
重合性材料の重合は、塊状で又は不活性溶剤を用いて実施することができる。溶剤を使用する実施形態では、好適な溶剤には、水、有機溶剤、例えば水溶性低級脂肪族一価アルコール及び多価アルコール、例えばグリコール、グリセリン、ジオキサン等並びに溶剤混合物がある。
【0052】
特定の実施形態では、重合性材料の重合は、例えばU.V.、X−線、γ線又はマイクロ波などの電磁波並びに当技術で公知の他の形態の放射線を使用して行うことができる。一般に、触媒有効量の触媒及び/又は開始剤及び/又は電磁波を使用して、重合反応を最適化することができる。例えば、特定の実施形態では、触媒ベンゾインメチルエーテル(BME)を含む液体重合性材料が、紫外線放射を使用して硬化される。
【0053】
カートリッジは、例えば、押出、射出成形、反応性射出成形、圧縮成形又は回転成形などの、当技術で公知の任意の方法を使用して、前記の材料の何れかから製造できる。典型的実施形態では、インプラントデバイスは、遠心鋳造又は回転成形により製造され、その場合、その1先端は閉じられ、他の先端は開口である、適切なサイズの重合カラム又は型を準備し、その長軸の周りの回転に重合カラム又は型を適合させ;モノマーをカラム又は型に導入し;モノマーをカラム又は型の内面に沿って半径方向外側へ移動させるのに十分な速度で、カラム又は型をその長軸周りに回転させ、かつ地面に実質的に平行にこれを保持して、モノマーをコアを有する円筒形形態にし;モノマーを重合させて、これを同心の円筒形コアを有する固体成形品に変換し;かつ製品、即ちレゼバーカートリッジを回収することにより、カートリッジを製造する。
【0054】
一般に、本明細書中に記載される型又は重合カラムは、円筒形の内面を有するので、カラム内側の横断面は環状形状で、直径はほぼ等しくかつ滑らかである。様々な実施形態の型又は重合カラムは、例えば、限定はしないが、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリスチレンを含むプラスチック;金属;ガラス等のような任意の好適な材料から製造され得る。ある実施形態では、カラムは、カラムの重合域に電磁波を到達させ得る材料から製造でき、特定の実施形態では、ガラス、例えばPyrex(商標)、を使用して、型又は重合カラムを製造する。
【0055】
次いで、前記で調製されたモノマー、即ち重合性材料を、型に導入することができる。次いで、型又は重合カラムを、その長軸周りに回転させ、重合材料が所定の形状に安定するまで、地面に平行な位置に保持する。型又は重合カラムの回転速度は、製造されるカートリッジのサイズ、使用される重合性材料の種類及び離型剤の有効性に依存して変化させてよい。例えば、ある実施形態では、回転速度は、約1000rpm未満〜6000rpmより大であってよく、特定の実施形態では、回転速度は、約2150rpmであってよい。
【0056】
所定の形状が得られたら、重合性材料を重合させ、硬化させることができる。使用重合性材料の種類及び製造されるカートリッジのサイズに依存して、任意の期間、多数の方法を使用して、硬化を行うことができる。例えば、重合性材料が所定形状に達したならば、型又は重合カラムにU.V.光を、例えば約1〜約10分の時間照射し、重合性材料の重合を開始することができる。次いで、カートリッジに、熱硬化及びアニーリングを施してよい。例えば、カートリッジを、約100℃までの温度で約60分間熱硬化させ、その後約120℃までの温度で約30分間、後硬化させ、かつ約130℃までの温度で、周囲温度(約25℃)まで徐々に冷却しながら約30分間アニーリングを施すことができる。硬化カートリッジは、型又は重合カラムから取り出し、洗浄して、過剰の離型剤を除去し、及び/又は孔形成剤を抜取り、研磨して、円滑で傷のない表面を得ることができる。
【0057】
ある実施形態では、カートリッジが、薬物送達デバイスの製作に使用される。そのような実施形態では、所定量の活性薬剤、例えば薬物、即ち活性薬剤と医療グレードのシリコン油などの不活性無毒材料との混合物又は懸濁液、を、カートリッジに導入し、部分的にコアを充填することができる。ある実施形態では、テフロンテープなどの不活性材料の層を、活性薬剤の上面に置き、かつ被覆上のコア−中の空隙を封じて、カートリッジから又はカートリッジ内への漏れを防ぐことができる。重合性材料、例えばカートリッジを製造するために使用された重合性材料、で空隙を満たし、重合性材料を重合させて、カートリッジの開口を封鎖するプラグを形成することによりシールを形成できる。ある実施形態では、プラグを形成するために使用される重合性材料は、カートリッジを製造するために使用された液体重合性材料であってよく、かつ最大水和時に、親水性カートリッジの平衡含水率を超える平衡含水率を有さなくてよい。他の実施形態では、前記重合性材料は、カートリッジ製造で使用される液体重合性材料と類似の組成であるが、それよりも高い親水性を有し得る。
【0058】
1つの典型的実施形態では、活性薬剤で充填されたコアを有し、テフロンテープで覆われたカートリッジ用のプラグは、最初に清浄し、適切なリーマーを用いてカートリッジの開口を注意深広げることにより、前記コアの薬剤上の内側表面積を僅かに広げて製造することができる。広げられた表面積は、次いで、例えばエタノールなどの一価又は多価アルコールの十分な量で清掃し、カートリッジの表面を僅かに膨潤させることができる。細い、針状注射器を使用して、少量の液体重合性材料をカートリッジに注入し、コアを頂上まで充填することができる。次いで、その長軸が地面に垂直になるよう、カートリッジを位置付けて、約100rpm〜約200rpmほどの比較的低速度で、例えば旋盤を使用してカートリッジを回転させ、カートリッジをU.V.光に数分、例えば5〜10分間当てることにより、重合性材料を、重合させることができる。活性薬剤が、U.V.光に敏感な場合、例えばアルミニウムホイルなどのシールドを使用して、活性化合物をU.V.光から守ることができる。一般に、プラグの硬化は、薬物に害を及ぼさない温度、例えば周囲温度で、行うべきである。特定の理論に縛られることを望むものではないが、カートリッジ開口端の拡孔及び清掃は、重合性親水性材料の治療表面への浸透を促進する。
【0059】
充填し、密封されたカートリッジは、カートリッジ製造に使用された材料及び送達すべき活性薬剤に依存して、当技術で公知の任意の滅菌技術により、滅菌することができる。例えば、好適な滅菌技術には、熱滅菌、例えばコバルト60照射、γ線、又は電子ビーム等の放射線滅菌、酸化エチレン滅菌等があるが、これらに限定はされない。特定の実施形態では、カートリッジに貼りついた薬剤は、滅菌の間、抗酸化剤又はラジカル捕獲剤として作用し、例えば照射により滅菌される間に形成されるフリーラジカルの悪影響を減じるか又は排除することができる。
【0060】
種々の実施形態では、前記カートリッジ及び/又は医療機器は、滅菌前又は後に保管され、カートリッジは、湿式(wet)又は乾式(dry)包装で保管できる。カートリッジが、湿式包装で保管される実施形態では、包装は、水和液を含んでよい。水和液は、活性化合物がその中に放出されるであろう環境をシミュレートしてよい。例えば、水和液は、体液、滅菌水、涙液、生理食塩水、リン酸緩衝液等に良く似ていてよい。カートリッジが、乾式包装で保管される実施形態では、カートリッジは、使用前に、前記水和液の何れかの中でインキュベートしてよい。例えばインプラントデバイスとして使用される乾燥インプラントは、埋め込み前に、滅菌生理食塩水で水和させることができる。或いは、ある種のインプラントは、乾式インプラントとして埋め込み時に、自己水和でき、従って、埋め込み前のインプラントの水和は必要ない。
【0061】
検討された全ての範囲及び割合は、全ての目的のために、本明細書中の全てのサブ範囲及びサブ割合も記載できるし、また必ず記載するものであり、かつそのようなサブ範囲及びサブ割合の全てが、本発明の要点も形成することを当業者は容易に認識するであろう。列挙された何れの範囲又は割合も、十分に記載され、かつ同じ範囲又は割合を、少なくとも均等に半分、3分の1、4分の1、5分の1、10分の1等々に分割することができると、容易に認識され得る。非限定例として、本明細書中で検討される各範囲又は割合は、下部3分の1、中部3分の1及び上部3分の1等々に容易に分割することができる。
【0062】
本明細書中で参照される全ての刊行物、特許出願、交付済み特許、及び他の文献は、個々の刊行物、特許出願、交付済み特許、及び他の文献が、その全体として、参照することにより組み込まれていることを具体的にかつ個々に示されたかのように、参照することにより本明細書の一部を構成する。参照することにより組み込まれたテキストに含まれる定義は、本開示中の定義に矛盾する範囲まで排除される。
【0063】
このように、一般的に記述された本発明は、以下の実施例を参照することにより更に容易に理解されよう。以下の実施例は、説明のために提供され、本発明を限定することは、意図しない。
【実施例】
【0064】
例1
表2は、製造された幾つかのモノマー混合物を記載する。
【表2】

【0065】
回転成形及びポリマー離型特性は、それぞれ、T、T1週、T2週、T3週及びT4週と指示された、0週、1週、2週、3週及び4週の間隔で、3日間連続して評価され、一覧にすることができた。各日、1%ポリジメチルシロキサンで処理されたガラス型20個を使用した。
【0066】
インプラント1について、最初の時点の第一サイクルは、許容できる離型特性を与えず、実験は放棄した。本明細書中に使用されるように、「許容できる離型特性」というフレーズは、型中で重合させると直ちに、インプラントの完全性に衝撃を与えず、インプラントを、型から取り外せることを示す。例えば、離型剤を有するインプラントについては、引き裂き、破壊、ひび入れ又は他の有害な出来事によりインプラントが破損されずに、型から外れるであろう。インプラント1の許容できない離型特性の結果として、特定の理論に縛られるものではないが、許容できる離型特性の1要因が、離型剤の分子量であり得ると考えられる。
【0067】
各時点で、インプラント2に関し、20個の型の各セットが、3つの回転成形サイクルについて、3日間連続で評価されたが、例外が1つある(Tで、第二及び第三サイクルが週末により中断された)。各時点について、第三サイクルにより失敗は観察されず、それぞれ、許容できる離型特性を提供した。4週間の期間にわたる合計299の各回転成形サイクルで、単一の失敗は観察されなかった。モノマー混合物は、許容できる時間枠内で全ての型に分布し、生じたカートリッジは後硬化の後、型から容易に外れた。
【0068】
例2
モノマー混合物を表3及び下記に従って製造した。
【表3】

【0069】
各処方物のカートリッジをほぼ15〜20個製造し、γ線を10〜11kGyで照射した。各処方物からなるカートリッジ5個の引張強さを最初に測定した。残りのカートリッジを37℃で保管し、3ヶ月及び8ヶ月後に再度引張強さをテストした。データを表4に示す。ビタミンE TPGSを用いて製造されたカートリッジは、照射後最初に、また37℃で3ヶ月及び8ヶ月の保管後にも最高の引張強さを有した。アスコルビン酸も、効果的であるように思えるが、ビタミンE TPGSの場合は、そのより高いMWのため、その効果は、より低いMWの抗酸化剤より更に長く持続し得る。
【表4】

【0070】
例3
例1に記載のモノマー混合物は、オクトレオチド88%、ヒドロキシプロピルセルロース10%及びステアリン酸マグネシウム2%の組成を有するペレットをインプラント2のカートリッジに装填することにより製造した。ペレット装填総量は、ほぼ95〜100mgであった。オクトレオチドのインプラントからの溶離は、ビタミンE TPGSが許容できる型離型剤であることを示し、表5に報告される。
【表5】

【0071】
幾つかの実施形態が説明され、記載されたが、以下のクレームで定義されるように、そのより広い態様において、本発明から逸脱せずに、当業者により本明細書中で変更及び修正がなされ得ることを理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子材料と離型剤とを含むデバイスであって、前記デバイスが、成形レザバーインプラントであり、前記離型剤が、少なくとも1000の分子量(MW)を有するデバイス。
【請求項2】
前記離型剤が、非イオン性界面活性剤である請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記非イオン性界面活性剤が、ポリエチレングリコール親水性尾部及び親油性頭部を含む請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記離型剤が、Brij 35、ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリオレエート、Tween20、Tween80、ビタミンE TPGS及びこれらのいずれか2種以上の混合物からなる群から選択される請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記離型剤が、少なくとも1200の分子量(MW)を有する請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記レゼバーインプラントが、乾燥インプラントである請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記乾燥インプラントが、約350mm以上の表面積を有する請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
前記乾燥インプラントが、約350mm〜約600mmの表面積を有する請求項6に記載のデバイス。
【請求項9】
前記レゼバーインプラントが、水和インプラントである請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
前記水和インプラントが、約500mm以上の表面積を有する請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
前記水和インプラントが、約500mm〜約800mmの表面積を有する請求項9に記載のデバイス。
【請求項12】
前記高分子材料が、2種以上の重合性モノマーを含むモノマー混合物から調製される請求項1に記載のデバイス。
【請求項13】
前記重合性モノマーが、親水性モノマー、疎水性モノマー又はこれらの混合物である請求項12に記載のデバイス。
【請求項14】
前記親水性モノマーが、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ジエチレングリコールメタクリレート、ジエチレングリコールアクリレート、プロピレングリコールメタクリレート、プロピチレングリコールアクリレート、ジプロピレングリコールメタクリレート、ジプロピチレングリコールアクリレート、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリセリルメタクリレート、グリセリルアクリレート、N−メチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルメチルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニル−2−メチルカプロラクタム、N−ビニル−3,5−ジメチルカプロラクタム又はこれらの何れか2種以上の混合物から選択される請求項13に記載のデバイス。
【請求項15】
前記疎水性モノマーが、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、メトキシメチルアクリレート、メトキシメチルメタクリレート、エトキシメチルアクリレート、エトキシメチルメタクリレート、メトキシエチルメタクリレート、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル又はこれらの何れか2種以上の混合物から選択される請求項13に記載のデバイス。
【請求項16】
前記重合性モノマーが、液体である請求項13に記載のデバイス。
【請求項17】
重合カラム又は型にモノマーと離型剤とを装入するステップと、
前記重合カラム又は型の内面に沿って半径方向外側へ前記モノマーを移動させるのに充分な速度で、前記重合カラム又は型をその縦軸の周りに回転させるステップと、
地面に実質的に平行な位置で前記重合カラム又は型を保持するステップと、
前記液体重合性材料を重合させるステップと、
レゼバーインプラントデバイスを回収するステップと、
を含むプロセスであって、前記離型剤が、少なくとも1000の分子量(MW)を有するプロセス。
【請求項18】
前記離型剤が、非イオン性界面活性剤である請求項17に記載のプロセス。
【請求項19】
前記非イオン性界面活性剤が、ポリエチレングリコール親水性尾部及び親油性頭部を含む請求項18に記載のプロセス。
【請求項20】
前記離型剤が、Brij 35、ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリオレエート、Tween20、Tween80、ビタミンE TPGS及びこれらのいずれか2種以上の混合物からなる群から選択される請求項17に記載のプロセス。
【請求項21】
前記離型剤が、少なくとも1200の分子量(MW)を有する請求項17に記載のプロセス。
【請求項22】
前記レゼバーインプラントが、乾燥インプラントである請求項17に記載のプロセス。
【請求項23】
前記乾燥インプラントが、約350mm以上の表面積を有する請求項22に記載のプロセス。
【請求項24】
前記乾燥インプラントが、約350mm〜約600mmの表面積を有する請求項22に記載のプロセス。
【請求項25】
前記レゼバーインプラントが、水和インプラントである請求項17に記載のプロセス。
【請求項26】
前記水和インプラントが、約500mm以上の表面積を有する請求項25に記載のプロセス。
【請求項27】
前記水和インプラントが、約500mm〜約800mmの表面積を有する請求項25に記載のプロセス。
【請求項28】
前記モノマーが、2種以上の重合性モノマーを含む混合物である請求項17に記載のプロセス。
【請求項29】
前記重合カラム又は型が更に、有機過酸化物、過炭酸塩、ペルオキシカルボネート、ペルオキシジカルボネート、ヒドロペルオキシド、アルカリ金属硫酸塩、ベンゾインメチルエーテル又はこれらのいずれか2種以上の混合物から選択されるラジカル重合触媒で装入される請求項17に記載のプロセス。

【公表番号】特表2010−524652(P2010−524652A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−506506(P2010−506506)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【国際出願番号】PCT/US2008/061511
【国際公開番号】WO2008/134475
【国際公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(509297680)エンド ファーマスーティカルズ ソリューションズ インコーポレイテッド. (9)
【氏名又は名称原語表記】ENDO PHARMACEUTICALS SOLUTIONS INC.
【Fターム(参考)】