インプリントモールド
【課題】配線板と配線板に形成される金属配線の密着性の向上を図ることができるインプリントモールドを提供する。
【解決手段】基材2と、所定のパターンを転写可能とする基材2の主面表面に形成された凸部4とを備え、凸部4の頂部41の周縁部42の少なくとも一部に突起45が設けられているインプリントモールド1である。さらに基材2と前記基材2上に形成されたパターン用凸部4Aと、前記パターン用凸部上に形成されたビア用凸部とを備え、前記ビア用凸部の頂部の面積がパターン用凸部4Aの頂部よりも狭く、前記パターン用凸部4Aの頂部及びビア用凸部の頂部のそれぞれの周縁部の少なくとも一部に突起が形成されたことを特徴とする。
【解決手段】基材2と、所定のパターンを転写可能とする基材2の主面表面に形成された凸部4とを備え、凸部4の頂部41の周縁部42の少なくとも一部に突起45が設けられているインプリントモールド1である。さらに基材2と前記基材2上に形成されたパターン用凸部4Aと、前記パターン用凸部上に形成されたビア用凸部とを備え、前記ビア用凸部の頂部の面積がパターン用凸部4Aの頂部よりも狭く、前記パターン用凸部4Aの頂部及びビア用凸部の頂部のそれぞれの周縁部の少なくとも一部に突起が形成されたことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線板の作製において、樹脂に所定のパターンを転写するインプリントモールドに関する。
【背景技術】
【0002】
ナノインプリント技術においては、製造装置の基台上に配置された樹脂に、所定のパターンを転写可能な凸部が基材の主面表面に形成されたインプリントモールドを押し付けることで、樹脂表面に所定のパターンが転写される。その後、樹脂を硬化させて樹脂層を形成し、樹脂層の凹部に金属を堆積させることで、主面表面に金属配線が設けられた配線板が製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−287805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年の電子機器の小型化に伴い、リジット基板の代替として多層のフレキシブルプリント配線板が用いられることを踏まえ、配線板と配線板の主面表面に形成される金属配線の密着性のさらなる向上が求められている。
また製造装置の基台上に配置された樹脂にインプリントモールドの凸部を貫通させてビア用の凹部を形成する際に、ビア用の凹部の底部に樹脂残渣が生ずることがあった。樹脂残渣が生じたまま樹脂を硬化させて樹脂層を形成し、ビア用の凹部に金属を堆積させると、ビア層の端部に薄い樹脂層が存在することになる。その後、外部基板の金属層とビア層を接続すると、薄い樹脂層が金属層とビア層の間に介在するため、金属層とビア層の導通が悪くなるおそれがあった。そのため、ビア用の凹部底部の樹脂残渣をアッシング等により取り除く必要があった。
【0005】
樹脂残渣を低減もしくはアッシング工程を簡略化する方法としては、インプリントモールドの凸部の頂部の表面に微小突起を設けて頂部表面を粗くするという技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に開示された技術によれば、微小突起の形状が樹脂の表面に伝播して樹脂の表面が粗くなる。その結果、アッシング工程において樹脂がプラズマに曝される表面積が大きくなるため、樹脂残渣の除去が容易になるという作用効果が得られる。
しかしながら、インプリントの際に、微小突起と樹脂または外部基板が点で接触することになるため、圧力が微小突起に集中し、インプリントモールドが壊れやすくなるという問題があった。
以上より、本発明の第1の目的は、配線板と配線板に形成される金属配線の密着性の向上を図ることができるインプリントモールドを提供することにある。また、本発明の第2の目的は、インプリントによりビアを形成する際に転写パターンの樹脂残渣を低減でき、耐久性があるインプリントモールドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、基材と、所定のパターンを転写可能とする基材の主面表面に形成された凸部とを備え、凸部の頂部の周縁部の少なくとも一部に突起が設けられているインプリントモールドを要旨とする。
本発明の第2の態様は、基材と、基材上に形成されたパターン用凸部と、パターン用凸部上に形成されたビア用凸部とを備え、ビア用凸部の頂部の面積がパターン用凸部の頂部よりも狭く、パターン用凸部の頂部及びビア用凸部の頂部のそれぞれの周縁部の少なくとも一部に突起が形成されたインプリントモールドを要旨とする。
本発明の第3の態様は、突起が、頂部の周縁部を一周するように形成されているインプリントモールドを要旨とする。
本発明の第4の態様は、突起が、互いに平行に複数本形成されているインプリントモールドを要旨とする。
本発明の第5の態様は、突起の長手方向に直交する断面における突起の高さ/幅が0.1以上5以下で形成されているインプリントモールドを要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、インプリントモールドの凸部の頂部周縁部に突起を設けたことで、インプリントの際に突起の形状が樹脂の表面に伝播して樹脂の表面積が広がることで、アンカー効果により配線板と配線板に形成される金属配線の密着性が向上する。
本発明によれば、インプリントモールドの凸部の頂部周縁部に突起を設けたことで、突起により押し付けられた樹脂の厚さが薄くなり、その後の工程で容易に樹脂残渣を除去できるため、外部基板の金属層との導通を確保することができる。
本発明によれば、凸部の頂部の表面全体に亘って微小突起を設けることなく、頂部の周縁部にのみ突起を設けて頂部を平坦にしたことで、インプリントする際、凸部の頂部に加わる圧力が頂部の全体に均一に分散される。その結果、インプリントモールドが壊れにくくなるという作用効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】(a)は第1の実施形態にかかるインプリントモールドの斜視図、(b)は断面図である。
【図2】第1の実施形態にかかるインプリントモールドの上面図である。
【図3】第1の実施形態にかかるインプリントモールドの断面図である。
【図4】第1の実施形態にかかるインプリントモールドの製造方法における、基板上に光感光性樹脂を塗布する工程図である。
【図5】第1の実施形態にかかるインプリントモールドの製造方法における、樹脂層を形成する工程図である。
【図6】第1の実施形態にかかるインプリントモールドの製造方法における、基板に孔を形成する工程図である。
【図7】第1の実施形態にかかるインプリントモールドの製造方法における、孔を備える基板を得る工程図である。
【図8】第1の実施形態にかかるインプリントモールドの製造方法における、基板上にレジストを塗布する工程図である。
【図9】第1の実施形態にかかるインプリントモールドの製造方法における、基板上に電子線レジスト層を設ける工程図である。
【図10】第1の実施形態にかかるインプリントモールドの製造方法における、凸部の一部に突起を形成する工程図である。
【図11】第1の実施形態にかかるインプリントモールドを用いた配線板の製造方法における、樹脂にインプリントモールドを押し付ける工程図である。
【図12】第1の実施形態にかかるインプリントモールドを用いた配線板の製造方法における、樹脂を硬化させる工程図である。
【図13】第1の実施形態にかかるインプリントモールドを用いた配線板の製造方法における、基材表面に凹部が形成された配線板を得る工程図である。
【図14】第1の実施形態にかかるインプリントモールドを用いた配線板の製造方法における、配線板上に金属を堆積させる工程図である。
【図15】第1の実施形態にかかるインプリントモールドを用いた配線板の製造方法における、余分な金属をロール研磨により除去する工程図である。
【図16】第1の実施形態にかかるインプリントモールドを用いた配線板の製造方法における、主面表面に配線が設けられた配線板の完成図である。
【図17】(a)は第2の実施形態にかかるインプリントモールドの上面図、(b)は断面図である。
【図18】第2の実施形態にかかるインプリントモールドを用いた配線板の製造方法における、基板上に塗布された樹脂にインプリントモールドを押し付ける工程図である。
【図19】第2の実施形態にかかるインプリントモールドを用いた配線板の製造方法における、加熱により樹脂を硬化させる工程図である。
【図20】第2の実施形態にかかるインプリントモールドを用いた配線板の製造方法における、基材上に凹部が形成された配線板を得る工程図である。
【図21】第2の実施形態にかかるインプリントモールドを用いた配線板の製造方法における、主面表面に金属配線が設けられた配線板を得る工程図である。
【図22】第2の実施形態にかかるインプリントモールドを用いた配線板の製造方法における、複数の配線板を積層させる工程図である。
【図23】実施形態の変形例にかかるインプリントモールドの断面図である。
【図24】実施形態の変形例にかかるインプリントモールドの断面図である。
【図25】実施形態の変形例にかかるインプリントモールドの断面図である。
【図26】実施形態の変形例にかかる突起の配置パターン(二重)を示すインプリントモールドの上面図である。
【図27】実施形態の変形例にかかる突起のパターン形状(略等間隔に配置された複数の突起)を示すインプリントモールドの上面図である。
【図28】実施形態の変形例にかかる突起のパターン形状(互い違いに形成された複数の突起)を示すインプリントモールドの上面図である。
【図29】実施形態の変形例にかかる突起のパターン形状(ハの字状に設けられた複数の突起)を示すインプリントモールドの上面図である。
【図30】実施形態の変形例にかかる突起のパターン形状(波型)を示すインプリントモールドの上面図である。
【図31】実施形態の変形例にかかる突起(一側縁部の長手方向にのみ細長い突起)の配置を示すインプリントモールドの上面図である。
【図32】実施形態の変形例にかかる突起(短手方向にのみ細長い突起)の配置を示すインプリントモールドの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、実施形態を挙げて本発明の説明を行うが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。なお、図中同一の機能又は類似の機能を有するものについては、同一又は類似の符号を付して説明を省略する。
【0010】
[第1の実施形態]
[インプリントモールド]
図1(a)に示すように、第1の実施形態にかかるインプリントモールド1は、基材2と、所定のパターンを転写可能とする基材2の主面表面に形成された凸部4とを備える。図1(b)に示すように、インプリントモールド1は、凸部4の頂部41の周縁部42の少なくとも一部に突起45が設けられている。本実施形態では、頂部41の長手方向の両側縁近傍にそれぞれ突起45が形成されている。突起45の長手方向に直交する断面形状は、インプリントモールド1の製造が容易という観点から凸形状をしている。
【0011】
インプリントモールド1の頂部41の周縁部42に突起45を設けたことで、インプリントの際、突起45の形状が樹脂の表面に伝播して樹脂の表面積が広がる。その結果、アンカー効果により樹脂層と樹脂層の主面表面に形成される金属配線の密着性が向上する。
【0012】
具体的には、図1(a)に示すように頂部41の長手方向の周縁部42に平行に一対の突起45を備えることが好ましい。また図2に示すように、頂部41の周縁部42を一周するように、頂部41の端部43に沿って突起45が形成されていることがより好ましい。
【0013】
図1(b)に示す突起45の長手方向に直交する断面における突起45の高さ(h)/幅(w)を0.1以上5以下とすることが好ましく、0.3以上1以下とすることがさらに好ましい。インプリントの際にインプリントモールド1と樹脂層との離型性が向上するからである。またアンカー効果による樹脂層と樹脂層の主面表面に形成される金属配線の密着性が向上するからである。
【0014】
インプリントモールド1の材質としては、後に説明する製造工程において、マスク材とのエッチング比が維持されるものであれば特に制限されることはない。インプリントモールド1の材質としては、例えば、石英やシリコンを用いることができる。
【0015】
[インプリントモールドの製造方法]
図3に示すような、基材2上に凸部4を複数備えるインプリントモールド1の製造方法について、図4〜図10を参照しつつ説明する。
【0016】
(イ)例えば石英もしくはシリコンからなる基材2を用意する。そして、図4に示すように基材2上に、基材2との選択比が確保できるマスク材料、例えば光感光性樹脂103を塗布する。その後、図5に示すようにフォトリソグラフィー法を用いて光感光性樹脂103を硬化させ、基材2上に所定の開口部3a、3b、3cを備える樹脂層3を形成する。なお、マスク材料としては光感光性樹脂103の他にも、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、金属などを用いることができる。
【0017】
(ロ)図6に示すように、基材2上に設けられた樹脂層3の開口部3a、3b、3cを介してフッ素含有ガスを供給して基材2をドライエッチングする。そして、孔49a、49b、49cを形成することにより、その両脇に凸部4を形成する。その後、樹脂層3を取り除いて、図7に示すような、孔49a…49cを備える基材2を得る。なお、基材にシリコンを使った場合、孔49a…49cのエッチングには、結晶異方性エッチング液、例えば水酸化カリウム(KOH)、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、エチレンジアミン・ピロカテコール溶液(EDP)、ヒドラジン(N2H4・H2O)などを使用しても構わない。
【0018】
(ハ)図8に示すように基材2及び凸部4の表面を覆うようにレジストを塗布してレジスト層5を形成する。レジストとしては、例えばポジ型レジスト(日本ゼオン株式会社製、製品名「ZEP520-22」)を用いることができる。その後、図9に示すように電子線リソグラフィー法を用いて、凸部4の突起45が形成される箇所以外のレジスト層5に開口部5a…5dを形成する。
【0019】
(ニ)図10に示すように、レジスト層5の開口部5a…5dを介してフッ素含有ガスを供給して凸部4の一部をドライエッチングして突起45を形成する。その後レジスト層5を除去する。以上により図3に示すインプリントモールド1が製造される。
【0020】
[配線板の製造方法]
図3のインプリントモールド1を用いた配線板の製造方法について図11〜図16を参照しつつ説明する。
【0021】
(イ)図11に示すように基台10上に塗布された樹脂108を加熱してインプリントモールド1を押し付ける。樹脂108としては熱可塑性ポリイミドを用いることができる。その後、図12に示すように樹脂108を冷却して硬化させる。そして、インプリントモールド1を取り外すことで、図13に示すような、樹脂108が硬化した基材82の表面に凹部83が形成された配線板8が得られる。凹部83の両脇に凸部84が形成され、また凹部83の底部81の一部に断面凸形状の突起85が形成されている。
【0022】
(ロ)図14に示すように、配線板8上に凹部83が埋まるように金属109を堆積させる。例えば、無電解メッキにより銅(Cu)シード層を形成した後、電解メッキにより銅(Cu)を析出させる。その後、図15に示すように、凸部84の表面と金属109の表面が、同一面になるように、余分な金属109をロール研磨により除去して配線9を形成する。ロール研磨の他にも、例えば硫酸や過酸化水素を用いたエッチングによって余分な金属109を取り除いても構わない。基台10を取り外すことで、図16に示すような、主面表面に配線9が設けられた配線板8が得られる。
【0023】
配線板の製造方法によれば、インプリントモールドの凸部4の頂部に突起45を設けたことで、インプリントの際に突起45の形状が樹脂108の表面に伝播して樹脂108の表面積が広がることで、アンカー効果により配線板8と配線9との接触面積が増加する。そのため、配線板8から配線9(金属)が剥離しづらくなるという作用効果が得られる。
【0024】
配線板8と配線9の底面の接触面積を広げ、配線板8と配線9の接着強度を向上することが求められる用途としては、特に制限はないが、例えば基材としてポリイミド等を用いたフレキシブル配線板が挙げられる。
【0025】
[第2の実施形態]
[インプリントモールド]
第1の実施形態にかかるインプリントモールド1は、凸部4を一段としたが、段数に制限なく、上述のインプリントモールド1の製造工程を繰り返して多段式にしても構わない。第1の実施形態との相違点を中心に説明する。第2の実施形態として、例えば図17(b)に示すように、基材2Aと、基材2A上に形成されたパターン用凸部4Aと、パターン用凸部4A上に形成されたビア用凸部6とを備え、ビア用凸部6の頂部61の面積がパターン用凸部4Aの頂部41Aよりも狭いインプリントモールド1Aとしてもよい。パターン用凸部の頂部41Aの周縁部には断面Vの字状の突起45A,ビア用頂部61の周縁部には断面Vの字状の突起65がそれぞれ形成されている。
ビア用凸部6の頂部61の形状は多角形に限定されることはないので、図17(a)に示すように、ビア用凸部の頂部61を円状とし、ビア用凸部の頂部61の周縁部に円状の突起65を形成してもよい。
【0026】
[多層配線板の製造方法]
インプリントモールド1Aによれば、以下の工程により多層配線板38が製造される。まず(イ)図18に示すように、基台10上に塗布された樹脂108を加熱してインプリントモールド1Aを押し付ける。その後、図19に示すように樹脂108を冷却して硬化させる。そして、インプリントモールド1Aを取り外す。すると図20に示すような、樹脂108が硬化した基材82Aの表面にビア用凹部86Aと配線用凹部83Aが形成された配線板8A1が得られる。インプリントモールド1Aの突起45Aの形状が伝播されるようにして、凹部83Aの底部81Aの一部に凹部85Aが形成される。なお、ビア用凹部86Aの底部に形成された台形状の樹脂残渣88Aまたはその一部を適宜アッシング等で取り除く。ビア用頂部61の周縁部を取り囲むように突起65を配置したことにより、ビア用凹部86Aの底部に樹脂残渣の薄くなった部分を形成することができる。その後、アッシング等により台形状の樹脂残渣88Aまたはその一部を基材82Aから除去することにより、後述する配線板8A2の金属層との導通を確保することができる。
(ロ)その後、図14,図15と同様の工程を行う。そして基台10を外すことで、図21に示すような、ビア用凹部86Aと配線用凹部83Aに配線9Aが形成された配線板8A1が得られる。
(ハ)得られた配線板8A1、8A2、8A3を複数積層させることで、図22に示すような多層配線板38が製造される。
【0027】
一般にビア用凹部を形成する際、ビア用頂部が平坦であるため、樹脂残渣も平坦になる。樹脂残渣の厚さは、樹脂物性、インプリント条件による。ところが、第2の実施形態によれば、ビア用頂部61の周縁部を取り囲むように突起65を配置したことにより、ビア用頂部が平坦な場合に比べ、突起65にかかる圧力が高くなるため、突起65に対応する樹脂の厚さが薄くなる。そのため、基板8A1から容易に台形状の樹脂残渣88Aまたはその一部を除去することができる。
【0028】
インプリントモールド1Aのビア用頂部61に形成された突起65の形状が樹脂の表面に伝播して樹脂残渣の表面積が広がる。そのため、仮にアッシングを行った際には、樹脂残渣がプラズマに曝される表面積が広がることで樹脂残渣の除去が容易になるという作用効果が得られる。なお、樹脂残渣が十分に少なく、ビア層と積層した基板の配線との導通が確保されるのであれば、アッシング工程は必須の工程ではなく任意の工程である。
【0029】
一般にビア用頂部の表面全体に亘って微小突起を設けて頂部表面を粗くした場合、樹脂にインプリントモールドを押し付けてインプリントする際、微小突起と樹脂が点で接触する。そのため、圧力が微小突起に集中するので、微小突起が破損しやすい。ところが、ビア用頂部61の周縁部にのみ突起65を設け、その他の頂部61の部分を平坦にすることで、インプリントする際、ビア用頂部61に加わる圧力がビア用頂部61の全体に均一に分散される。その結果、インプリントモールド1Aが壊れにくくなる。
【0030】
(他の実施形態)
上記のように、本発明は第1、第2の実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
第1の実施形態にかかるインプリントモールド1では、凸部4の頂部41の周縁部42に突起45を設けた。その他、図23に示す実施形態の変形例にかかるインプリントモールド1Bのように、基材2Bと、所定のパターンを転写可能とする基材2Bの主面表面に形成された凸部4Bとを備えていてもよい。凸部4Bの頂部41Bの周縁部に台形状の突起45Bが形成されている。これによりモールドの破損を防ぐことができる。
【0031】
第1の実施形態における基材2のエッチングにおいては、基材2とマスク材のエッチング選択比を高くした。しかし、基材2とマスク材のエッチング選択比を低くし、エッチング側壁に側壁保護膜(CF系ポリマー)が形成される異方性エッチング条件とすることで図23に示すようなインプリントモールド1Bが製造される。インプリントモールド1Bは、例えば、基材2Bとしてシリコンを用い、マスク材としてシリコンとのエッチング選択比が5程度のポジ型レジスト(東京応化製、製品名「OFPR-800」等)を用い、ドライエッチングガス(SF6+C4F8+O2)を供給するという条件で、上述の製造方法に準じて製造することができる。
【0032】
図1(b)の突起45の断面形状は、長方形状に限らず、他の形状としても構わない。例えば図24に示すように断面三角形状の突起45Cとしてもよい。断面三角形状とすることで、図13に示す配線板8の凹部83の底部81に形成される突起85の断面形状が三角形状となる。
また図25に示すように断面三角形状の突起45Dと、頂部41Dの境界にVの字状の切り込み48を設けてもよい。
なお、図24のインプリントモールド1C、図25インプリントモールド1Dは、図23のインプリントモールド1Bと同様の手法を用いて製造することができる。
【0033】
配線板8と配線9の接着強度を向上する観点からは、頂部41に形成される突起45のパターン形状を以下のようにしてもよい。例えば図26に示すように、突起45の内側に、突起45と相似形の突起48を形成してもよい。また、図27に示すように凸部4の頂部41の両側縁部に、長手方向に沿って長方形状をなす複数の突起が略等間隔に配置された突起45Fを形成してもよい。その際、図28に示すように互い違いに形成された突起45Gとしてもよいし、図29に示すように「ハ」の字状の構成単位からなる突起を複数連続して配置した突起45Hとしてもよい。さらに図30に示すように凸部4の頂部41の両側縁部に長辺方向に沿って連続する波型の突起45Iを形成してもよい。図26〜図30に示すパターンを組み合わせた形状としてもよい。
【0034】
また第1の実施形態においては、頂部41の周縁部42を一周するように、突起45を備えることとした。しかし、インプリントモールド1を樹脂に押し当てた際の圧力がかかる面内傾向によっては、例えば図31に示すように頂部41の一側縁部の長手方向にのみ細長い突起45Jを設けてもよいし、また図32に示すように短手方向にのみ細長い突起45Kを設けても構わない。
【0035】
なお、図26から図32に示されるそれぞれの突起48、45F…45Kの断面形状は、特に制限されず、図1(b)に示すように長方形状でもよいし、図23から図25に示すような形状でも構わない。
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0036】
1…インプリントモールド、2…基材、4…凸部、41…頂部、42…周縁部、43…端部、45…突起、
1A…インプリントモールド、2A…基材、4A…パターン用凸部、6…ビア用凸部、41A…パターン用頂部、61…ビア用頂部、45A,65…突起、
1B…インプリントモールド、2B…基材、4B…凸部、41B…頂部、
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線板の作製において、樹脂に所定のパターンを転写するインプリントモールドに関する。
【背景技術】
【0002】
ナノインプリント技術においては、製造装置の基台上に配置された樹脂に、所定のパターンを転写可能な凸部が基材の主面表面に形成されたインプリントモールドを押し付けることで、樹脂表面に所定のパターンが転写される。その後、樹脂を硬化させて樹脂層を形成し、樹脂層の凹部に金属を堆積させることで、主面表面に金属配線が設けられた配線板が製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−287805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年の電子機器の小型化に伴い、リジット基板の代替として多層のフレキシブルプリント配線板が用いられることを踏まえ、配線板と配線板の主面表面に形成される金属配線の密着性のさらなる向上が求められている。
また製造装置の基台上に配置された樹脂にインプリントモールドの凸部を貫通させてビア用の凹部を形成する際に、ビア用の凹部の底部に樹脂残渣が生ずることがあった。樹脂残渣が生じたまま樹脂を硬化させて樹脂層を形成し、ビア用の凹部に金属を堆積させると、ビア層の端部に薄い樹脂層が存在することになる。その後、外部基板の金属層とビア層を接続すると、薄い樹脂層が金属層とビア層の間に介在するため、金属層とビア層の導通が悪くなるおそれがあった。そのため、ビア用の凹部底部の樹脂残渣をアッシング等により取り除く必要があった。
【0005】
樹脂残渣を低減もしくはアッシング工程を簡略化する方法としては、インプリントモールドの凸部の頂部の表面に微小突起を設けて頂部表面を粗くするという技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に開示された技術によれば、微小突起の形状が樹脂の表面に伝播して樹脂の表面が粗くなる。その結果、アッシング工程において樹脂がプラズマに曝される表面積が大きくなるため、樹脂残渣の除去が容易になるという作用効果が得られる。
しかしながら、インプリントの際に、微小突起と樹脂または外部基板が点で接触することになるため、圧力が微小突起に集中し、インプリントモールドが壊れやすくなるという問題があった。
以上より、本発明の第1の目的は、配線板と配線板に形成される金属配線の密着性の向上を図ることができるインプリントモールドを提供することにある。また、本発明の第2の目的は、インプリントによりビアを形成する際に転写パターンの樹脂残渣を低減でき、耐久性があるインプリントモールドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、基材と、所定のパターンを転写可能とする基材の主面表面に形成された凸部とを備え、凸部の頂部の周縁部の少なくとも一部に突起が設けられているインプリントモールドを要旨とする。
本発明の第2の態様は、基材と、基材上に形成されたパターン用凸部と、パターン用凸部上に形成されたビア用凸部とを備え、ビア用凸部の頂部の面積がパターン用凸部の頂部よりも狭く、パターン用凸部の頂部及びビア用凸部の頂部のそれぞれの周縁部の少なくとも一部に突起が形成されたインプリントモールドを要旨とする。
本発明の第3の態様は、突起が、頂部の周縁部を一周するように形成されているインプリントモールドを要旨とする。
本発明の第4の態様は、突起が、互いに平行に複数本形成されているインプリントモールドを要旨とする。
本発明の第5の態様は、突起の長手方向に直交する断面における突起の高さ/幅が0.1以上5以下で形成されているインプリントモールドを要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、インプリントモールドの凸部の頂部周縁部に突起を設けたことで、インプリントの際に突起の形状が樹脂の表面に伝播して樹脂の表面積が広がることで、アンカー効果により配線板と配線板に形成される金属配線の密着性が向上する。
本発明によれば、インプリントモールドの凸部の頂部周縁部に突起を設けたことで、突起により押し付けられた樹脂の厚さが薄くなり、その後の工程で容易に樹脂残渣を除去できるため、外部基板の金属層との導通を確保することができる。
本発明によれば、凸部の頂部の表面全体に亘って微小突起を設けることなく、頂部の周縁部にのみ突起を設けて頂部を平坦にしたことで、インプリントする際、凸部の頂部に加わる圧力が頂部の全体に均一に分散される。その結果、インプリントモールドが壊れにくくなるという作用効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】(a)は第1の実施形態にかかるインプリントモールドの斜視図、(b)は断面図である。
【図2】第1の実施形態にかかるインプリントモールドの上面図である。
【図3】第1の実施形態にかかるインプリントモールドの断面図である。
【図4】第1の実施形態にかかるインプリントモールドの製造方法における、基板上に光感光性樹脂を塗布する工程図である。
【図5】第1の実施形態にかかるインプリントモールドの製造方法における、樹脂層を形成する工程図である。
【図6】第1の実施形態にかかるインプリントモールドの製造方法における、基板に孔を形成する工程図である。
【図7】第1の実施形態にかかるインプリントモールドの製造方法における、孔を備える基板を得る工程図である。
【図8】第1の実施形態にかかるインプリントモールドの製造方法における、基板上にレジストを塗布する工程図である。
【図9】第1の実施形態にかかるインプリントモールドの製造方法における、基板上に電子線レジスト層を設ける工程図である。
【図10】第1の実施形態にかかるインプリントモールドの製造方法における、凸部の一部に突起を形成する工程図である。
【図11】第1の実施形態にかかるインプリントモールドを用いた配線板の製造方法における、樹脂にインプリントモールドを押し付ける工程図である。
【図12】第1の実施形態にかかるインプリントモールドを用いた配線板の製造方法における、樹脂を硬化させる工程図である。
【図13】第1の実施形態にかかるインプリントモールドを用いた配線板の製造方法における、基材表面に凹部が形成された配線板を得る工程図である。
【図14】第1の実施形態にかかるインプリントモールドを用いた配線板の製造方法における、配線板上に金属を堆積させる工程図である。
【図15】第1の実施形態にかかるインプリントモールドを用いた配線板の製造方法における、余分な金属をロール研磨により除去する工程図である。
【図16】第1の実施形態にかかるインプリントモールドを用いた配線板の製造方法における、主面表面に配線が設けられた配線板の完成図である。
【図17】(a)は第2の実施形態にかかるインプリントモールドの上面図、(b)は断面図である。
【図18】第2の実施形態にかかるインプリントモールドを用いた配線板の製造方法における、基板上に塗布された樹脂にインプリントモールドを押し付ける工程図である。
【図19】第2の実施形態にかかるインプリントモールドを用いた配線板の製造方法における、加熱により樹脂を硬化させる工程図である。
【図20】第2の実施形態にかかるインプリントモールドを用いた配線板の製造方法における、基材上に凹部が形成された配線板を得る工程図である。
【図21】第2の実施形態にかかるインプリントモールドを用いた配線板の製造方法における、主面表面に金属配線が設けられた配線板を得る工程図である。
【図22】第2の実施形態にかかるインプリントモールドを用いた配線板の製造方法における、複数の配線板を積層させる工程図である。
【図23】実施形態の変形例にかかるインプリントモールドの断面図である。
【図24】実施形態の変形例にかかるインプリントモールドの断面図である。
【図25】実施形態の変形例にかかるインプリントモールドの断面図である。
【図26】実施形態の変形例にかかる突起の配置パターン(二重)を示すインプリントモールドの上面図である。
【図27】実施形態の変形例にかかる突起のパターン形状(略等間隔に配置された複数の突起)を示すインプリントモールドの上面図である。
【図28】実施形態の変形例にかかる突起のパターン形状(互い違いに形成された複数の突起)を示すインプリントモールドの上面図である。
【図29】実施形態の変形例にかかる突起のパターン形状(ハの字状に設けられた複数の突起)を示すインプリントモールドの上面図である。
【図30】実施形態の変形例にかかる突起のパターン形状(波型)を示すインプリントモールドの上面図である。
【図31】実施形態の変形例にかかる突起(一側縁部の長手方向にのみ細長い突起)の配置を示すインプリントモールドの上面図である。
【図32】実施形態の変形例にかかる突起(短手方向にのみ細長い突起)の配置を示すインプリントモールドの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、実施形態を挙げて本発明の説明を行うが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。なお、図中同一の機能又は類似の機能を有するものについては、同一又は類似の符号を付して説明を省略する。
【0010】
[第1の実施形態]
[インプリントモールド]
図1(a)に示すように、第1の実施形態にかかるインプリントモールド1は、基材2と、所定のパターンを転写可能とする基材2の主面表面に形成された凸部4とを備える。図1(b)に示すように、インプリントモールド1は、凸部4の頂部41の周縁部42の少なくとも一部に突起45が設けられている。本実施形態では、頂部41の長手方向の両側縁近傍にそれぞれ突起45が形成されている。突起45の長手方向に直交する断面形状は、インプリントモールド1の製造が容易という観点から凸形状をしている。
【0011】
インプリントモールド1の頂部41の周縁部42に突起45を設けたことで、インプリントの際、突起45の形状が樹脂の表面に伝播して樹脂の表面積が広がる。その結果、アンカー効果により樹脂層と樹脂層の主面表面に形成される金属配線の密着性が向上する。
【0012】
具体的には、図1(a)に示すように頂部41の長手方向の周縁部42に平行に一対の突起45を備えることが好ましい。また図2に示すように、頂部41の周縁部42を一周するように、頂部41の端部43に沿って突起45が形成されていることがより好ましい。
【0013】
図1(b)に示す突起45の長手方向に直交する断面における突起45の高さ(h)/幅(w)を0.1以上5以下とすることが好ましく、0.3以上1以下とすることがさらに好ましい。インプリントの際にインプリントモールド1と樹脂層との離型性が向上するからである。またアンカー効果による樹脂層と樹脂層の主面表面に形成される金属配線の密着性が向上するからである。
【0014】
インプリントモールド1の材質としては、後に説明する製造工程において、マスク材とのエッチング比が維持されるものであれば特に制限されることはない。インプリントモールド1の材質としては、例えば、石英やシリコンを用いることができる。
【0015】
[インプリントモールドの製造方法]
図3に示すような、基材2上に凸部4を複数備えるインプリントモールド1の製造方法について、図4〜図10を参照しつつ説明する。
【0016】
(イ)例えば石英もしくはシリコンからなる基材2を用意する。そして、図4に示すように基材2上に、基材2との選択比が確保できるマスク材料、例えば光感光性樹脂103を塗布する。その後、図5に示すようにフォトリソグラフィー法を用いて光感光性樹脂103を硬化させ、基材2上に所定の開口部3a、3b、3cを備える樹脂層3を形成する。なお、マスク材料としては光感光性樹脂103の他にも、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、金属などを用いることができる。
【0017】
(ロ)図6に示すように、基材2上に設けられた樹脂層3の開口部3a、3b、3cを介してフッ素含有ガスを供給して基材2をドライエッチングする。そして、孔49a、49b、49cを形成することにより、その両脇に凸部4を形成する。その後、樹脂層3を取り除いて、図7に示すような、孔49a…49cを備える基材2を得る。なお、基材にシリコンを使った場合、孔49a…49cのエッチングには、結晶異方性エッチング液、例えば水酸化カリウム(KOH)、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、エチレンジアミン・ピロカテコール溶液(EDP)、ヒドラジン(N2H4・H2O)などを使用しても構わない。
【0018】
(ハ)図8に示すように基材2及び凸部4の表面を覆うようにレジストを塗布してレジスト層5を形成する。レジストとしては、例えばポジ型レジスト(日本ゼオン株式会社製、製品名「ZEP520-22」)を用いることができる。その後、図9に示すように電子線リソグラフィー法を用いて、凸部4の突起45が形成される箇所以外のレジスト層5に開口部5a…5dを形成する。
【0019】
(ニ)図10に示すように、レジスト層5の開口部5a…5dを介してフッ素含有ガスを供給して凸部4の一部をドライエッチングして突起45を形成する。その後レジスト層5を除去する。以上により図3に示すインプリントモールド1が製造される。
【0020】
[配線板の製造方法]
図3のインプリントモールド1を用いた配線板の製造方法について図11〜図16を参照しつつ説明する。
【0021】
(イ)図11に示すように基台10上に塗布された樹脂108を加熱してインプリントモールド1を押し付ける。樹脂108としては熱可塑性ポリイミドを用いることができる。その後、図12に示すように樹脂108を冷却して硬化させる。そして、インプリントモールド1を取り外すことで、図13に示すような、樹脂108が硬化した基材82の表面に凹部83が形成された配線板8が得られる。凹部83の両脇に凸部84が形成され、また凹部83の底部81の一部に断面凸形状の突起85が形成されている。
【0022】
(ロ)図14に示すように、配線板8上に凹部83が埋まるように金属109を堆積させる。例えば、無電解メッキにより銅(Cu)シード層を形成した後、電解メッキにより銅(Cu)を析出させる。その後、図15に示すように、凸部84の表面と金属109の表面が、同一面になるように、余分な金属109をロール研磨により除去して配線9を形成する。ロール研磨の他にも、例えば硫酸や過酸化水素を用いたエッチングによって余分な金属109を取り除いても構わない。基台10を取り外すことで、図16に示すような、主面表面に配線9が設けられた配線板8が得られる。
【0023】
配線板の製造方法によれば、インプリントモールドの凸部4の頂部に突起45を設けたことで、インプリントの際に突起45の形状が樹脂108の表面に伝播して樹脂108の表面積が広がることで、アンカー効果により配線板8と配線9との接触面積が増加する。そのため、配線板8から配線9(金属)が剥離しづらくなるという作用効果が得られる。
【0024】
配線板8と配線9の底面の接触面積を広げ、配線板8と配線9の接着強度を向上することが求められる用途としては、特に制限はないが、例えば基材としてポリイミド等を用いたフレキシブル配線板が挙げられる。
【0025】
[第2の実施形態]
[インプリントモールド]
第1の実施形態にかかるインプリントモールド1は、凸部4を一段としたが、段数に制限なく、上述のインプリントモールド1の製造工程を繰り返して多段式にしても構わない。第1の実施形態との相違点を中心に説明する。第2の実施形態として、例えば図17(b)に示すように、基材2Aと、基材2A上に形成されたパターン用凸部4Aと、パターン用凸部4A上に形成されたビア用凸部6とを備え、ビア用凸部6の頂部61の面積がパターン用凸部4Aの頂部41Aよりも狭いインプリントモールド1Aとしてもよい。パターン用凸部の頂部41Aの周縁部には断面Vの字状の突起45A,ビア用頂部61の周縁部には断面Vの字状の突起65がそれぞれ形成されている。
ビア用凸部6の頂部61の形状は多角形に限定されることはないので、図17(a)に示すように、ビア用凸部の頂部61を円状とし、ビア用凸部の頂部61の周縁部に円状の突起65を形成してもよい。
【0026】
[多層配線板の製造方法]
インプリントモールド1Aによれば、以下の工程により多層配線板38が製造される。まず(イ)図18に示すように、基台10上に塗布された樹脂108を加熱してインプリントモールド1Aを押し付ける。その後、図19に示すように樹脂108を冷却して硬化させる。そして、インプリントモールド1Aを取り外す。すると図20に示すような、樹脂108が硬化した基材82Aの表面にビア用凹部86Aと配線用凹部83Aが形成された配線板8A1が得られる。インプリントモールド1Aの突起45Aの形状が伝播されるようにして、凹部83Aの底部81Aの一部に凹部85Aが形成される。なお、ビア用凹部86Aの底部に形成された台形状の樹脂残渣88Aまたはその一部を適宜アッシング等で取り除く。ビア用頂部61の周縁部を取り囲むように突起65を配置したことにより、ビア用凹部86Aの底部に樹脂残渣の薄くなった部分を形成することができる。その後、アッシング等により台形状の樹脂残渣88Aまたはその一部を基材82Aから除去することにより、後述する配線板8A2の金属層との導通を確保することができる。
(ロ)その後、図14,図15と同様の工程を行う。そして基台10を外すことで、図21に示すような、ビア用凹部86Aと配線用凹部83Aに配線9Aが形成された配線板8A1が得られる。
(ハ)得られた配線板8A1、8A2、8A3を複数積層させることで、図22に示すような多層配線板38が製造される。
【0027】
一般にビア用凹部を形成する際、ビア用頂部が平坦であるため、樹脂残渣も平坦になる。樹脂残渣の厚さは、樹脂物性、インプリント条件による。ところが、第2の実施形態によれば、ビア用頂部61の周縁部を取り囲むように突起65を配置したことにより、ビア用頂部が平坦な場合に比べ、突起65にかかる圧力が高くなるため、突起65に対応する樹脂の厚さが薄くなる。そのため、基板8A1から容易に台形状の樹脂残渣88Aまたはその一部を除去することができる。
【0028】
インプリントモールド1Aのビア用頂部61に形成された突起65の形状が樹脂の表面に伝播して樹脂残渣の表面積が広がる。そのため、仮にアッシングを行った際には、樹脂残渣がプラズマに曝される表面積が広がることで樹脂残渣の除去が容易になるという作用効果が得られる。なお、樹脂残渣が十分に少なく、ビア層と積層した基板の配線との導通が確保されるのであれば、アッシング工程は必須の工程ではなく任意の工程である。
【0029】
一般にビア用頂部の表面全体に亘って微小突起を設けて頂部表面を粗くした場合、樹脂にインプリントモールドを押し付けてインプリントする際、微小突起と樹脂が点で接触する。そのため、圧力が微小突起に集中するので、微小突起が破損しやすい。ところが、ビア用頂部61の周縁部にのみ突起65を設け、その他の頂部61の部分を平坦にすることで、インプリントする際、ビア用頂部61に加わる圧力がビア用頂部61の全体に均一に分散される。その結果、インプリントモールド1Aが壊れにくくなる。
【0030】
(他の実施形態)
上記のように、本発明は第1、第2の実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
第1の実施形態にかかるインプリントモールド1では、凸部4の頂部41の周縁部42に突起45を設けた。その他、図23に示す実施形態の変形例にかかるインプリントモールド1Bのように、基材2Bと、所定のパターンを転写可能とする基材2Bの主面表面に形成された凸部4Bとを備えていてもよい。凸部4Bの頂部41Bの周縁部に台形状の突起45Bが形成されている。これによりモールドの破損を防ぐことができる。
【0031】
第1の実施形態における基材2のエッチングにおいては、基材2とマスク材のエッチング選択比を高くした。しかし、基材2とマスク材のエッチング選択比を低くし、エッチング側壁に側壁保護膜(CF系ポリマー)が形成される異方性エッチング条件とすることで図23に示すようなインプリントモールド1Bが製造される。インプリントモールド1Bは、例えば、基材2Bとしてシリコンを用い、マスク材としてシリコンとのエッチング選択比が5程度のポジ型レジスト(東京応化製、製品名「OFPR-800」等)を用い、ドライエッチングガス(SF6+C4F8+O2)を供給するという条件で、上述の製造方法に準じて製造することができる。
【0032】
図1(b)の突起45の断面形状は、長方形状に限らず、他の形状としても構わない。例えば図24に示すように断面三角形状の突起45Cとしてもよい。断面三角形状とすることで、図13に示す配線板8の凹部83の底部81に形成される突起85の断面形状が三角形状となる。
また図25に示すように断面三角形状の突起45Dと、頂部41Dの境界にVの字状の切り込み48を設けてもよい。
なお、図24のインプリントモールド1C、図25インプリントモールド1Dは、図23のインプリントモールド1Bと同様の手法を用いて製造することができる。
【0033】
配線板8と配線9の接着強度を向上する観点からは、頂部41に形成される突起45のパターン形状を以下のようにしてもよい。例えば図26に示すように、突起45の内側に、突起45と相似形の突起48を形成してもよい。また、図27に示すように凸部4の頂部41の両側縁部に、長手方向に沿って長方形状をなす複数の突起が略等間隔に配置された突起45Fを形成してもよい。その際、図28に示すように互い違いに形成された突起45Gとしてもよいし、図29に示すように「ハ」の字状の構成単位からなる突起を複数連続して配置した突起45Hとしてもよい。さらに図30に示すように凸部4の頂部41の両側縁部に長辺方向に沿って連続する波型の突起45Iを形成してもよい。図26〜図30に示すパターンを組み合わせた形状としてもよい。
【0034】
また第1の実施形態においては、頂部41の周縁部42を一周するように、突起45を備えることとした。しかし、インプリントモールド1を樹脂に押し当てた際の圧力がかかる面内傾向によっては、例えば図31に示すように頂部41の一側縁部の長手方向にのみ細長い突起45Jを設けてもよいし、また図32に示すように短手方向にのみ細長い突起45Kを設けても構わない。
【0035】
なお、図26から図32に示されるそれぞれの突起48、45F…45Kの断面形状は、特に制限されず、図1(b)に示すように長方形状でもよいし、図23から図25に示すような形状でも構わない。
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0036】
1…インプリントモールド、2…基材、4…凸部、41…頂部、42…周縁部、43…端部、45…突起、
1A…インプリントモールド、2A…基材、4A…パターン用凸部、6…ビア用凸部、41A…パターン用頂部、61…ビア用頂部、45A,65…突起、
1B…インプリントモールド、2B…基材、4B…凸部、41B…頂部、
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
所定のパターンを転写可能とする前記基材の主面表面に形成された凸部とを備え、
前記凸部の頂部の周縁部の少なくとも一部に突起が設けられていることを特徴とするインプリントモールド。
【請求項2】
基材と、
前記基材上に形成されたパターン用凸部と、
前記パターン用凸部上に形成されたビア用凸部とを備え、
前記ビア用凸部の頂部の面積がパターン用凸部の頂部よりも狭く、前記パターン用凸部の頂部及びビア用凸部の頂部のそれぞれの周縁部の少なくとも一部に突起が形成されたことを特徴とするインプリントモールド。
【請求項3】
前記突起は、前記頂部の周縁部を一周するように形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のインプリントモールド。
【請求項4】
前記突起は、互いに平行に複数本形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のインプリントモールド。
【請求項5】
前記突起の長手方向に直交する断面における前記突起の高さ/幅が0.1以上5以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のインプリントモールド。
【請求項1】
基材と、
所定のパターンを転写可能とする前記基材の主面表面に形成された凸部とを備え、
前記凸部の頂部の周縁部の少なくとも一部に突起が設けられていることを特徴とするインプリントモールド。
【請求項2】
基材と、
前記基材上に形成されたパターン用凸部と、
前記パターン用凸部上に形成されたビア用凸部とを備え、
前記ビア用凸部の頂部の面積がパターン用凸部の頂部よりも狭く、前記パターン用凸部の頂部及びビア用凸部の頂部のそれぞれの周縁部の少なくとも一部に突起が形成されたことを特徴とするインプリントモールド。
【請求項3】
前記突起は、前記頂部の周縁部を一周するように形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のインプリントモールド。
【請求項4】
前記突起は、互いに平行に複数本形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のインプリントモールド。
【請求項5】
前記突起の長手方向に直交する断面における前記突起の高さ/幅が0.1以上5以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のインプリントモールド。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【公開番号】特開2012−232456(P2012−232456A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−101598(P2011−101598)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】
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