説明

インプリント装置、インプリント方法、および、物品の製造方法

【課題】生産性の点で有利なインプリント装置を提供する。
【解決手段】基板5上の未硬化樹脂を型により成形して硬化させ、前記基板5上に硬化した樹脂のパターンを形成するインプリント装置であって、前記基板5に対して前記未硬化樹脂と溶媒との混合液を吐出する吐出手段7と、前記基板5上に吐出された前記混合液から前記溶媒を蒸発させる蒸発手段9と、を備え、前記吐出手段7は、前記基板5上で液滴と液滴とが接触するように前記混合液を吐出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプリント装置、インプリント方法、および、物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの微細化の要求が進み、従来のフォトリソグラフィ技術に加え、モールド(型)と基板上の未硬化樹脂とを互いに押し付けて、モールドに形成された微細な凹凸パターンに対応する樹脂のパターンを基板上に形成する微細加工技術が存在する。この技術は、インプリント技術とも呼ばれ、基板上に数ナノメートルオーダーの微細な構造体を形成することができる。例えば、インプリント技術の一つとして、光硬化法がある。この光硬化法は、まず、基板上のショット領域(インプリント領域)に紫外線硬化樹脂(インプリント樹脂、光硬化樹脂)を吐出する。次に、この樹脂(未硬化樹脂)とモールドとを互いに押し付ける。そして、紫外線を照射して樹脂を硬化させたうえで離型することにより、樹脂のパターンが基板上に形成される。
【0003】
このインプリント技術を採用したインプリント装置により基板上に樹脂のパターンが形成された後、この基板は、別のエッチング装置に搬送され、樹脂のパターンに沿った凹部(パターン転写部)が形成される。このとき、凹部の線幅に係る面内ばらつきが発生しないように、樹脂パターンの残膜厚を基板の面内で均一化することが重要となる。そこで、特許文献1は、インクジェット方式の吐出装置で樹脂を基板上に吐出する際、転写するパターンの密度に応じて樹脂の液滴の配置を最適化することにより残膜厚を均一化するインプリント方法を開示している。しかしながら、この特許文献1に示すように、樹脂を離散的に基板上に配置するインプリント方法では、基板上にて樹脂が広がりにくいため、樹脂とモールドとを押し付ける際、基板とモールドとの間に気泡が閉じ込められやすい。この気泡を閉じ込めたまま樹脂を硬化させると、形成した樹脂のパターンに未充填欠陥が生じる可能性がある。一方、この未充填欠陥の発生を防止するために、気泡が消滅するまで待機すると、当然、生産性が低下する。そこで、特許文献2は、樹脂に対する溶解性や拡散性の高い気体をモールドと基板との間に導入することで、気泡の消滅を促進するインプリント方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009/0115110号明細書
【特許文献2】特表2007−509769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2に示すインプリント方法では、生産性の向上のために、更なる改善が望まれる。
【0006】
本発明は、生産性の点で有利なインプリント装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、基板上の未硬化樹脂を型により成形して硬化させ、基板上に硬化した樹脂のパターンを形成するインプリント装置であって、基板に対して未硬化樹脂と溶媒との混合液を吐出する吐出手段と、基板上に吐出された混合液から溶媒を蒸発させる蒸発手段と、を備え、吐出手段は、基板上で液滴と液滴とが接触するように混合液を吐出する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、例えば、生産性の点で有利なインプリント装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施形態に係るインプリント装置の構成を示す概略図である。
【図2】基板上に吐出した液滴の配置を示す模式図である。
【図3】本発明の第3実施形態に係るインプリント装置の構成を示す概略図である。
【図4】本発明の第4実施形態に係るインプリント装置に関する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について図面等を参照して説明する。
【0011】
(第1実施形態)
まず、本発明の第1実施形態に係るインプリント装置について説明する。図1は、本実施形態のインプリント装置の構成を示す概略図である。このインプリント装置は、半導体デバイスの製造工程に使用される被処理基板であるウエハ上(基板上)に対してモールド(型)のパターンを転写する加工装置であり、特に、インプリント技術の中でも光硬化法を採用した装置である。なお、図1において、モールドに対する光(紫外線)の照射軸に平行にZ軸を取り、該Z軸に垂直な平面内で後述のモールドベースに対してウエハが移動する方向にX軸を取り、該X軸に直交する方向にY軸を取って説明する。このインプリント装置1は、照明系ユニット2と、モールド3と、モールド保持装置4と、ウエハ5と、ウエハステージ6と、吐出装置7と、モールド搬送装置8と、減圧機構9と、制御装置10とを備える。
【0012】
照明系ユニット2は、インプリント処理の際に、モールド3に対して紫外線11を照射する照明手段である。照明系ユニット2は、光源と、該光源から射出された紫外線11をインプリントに適切な光に調整するための複数の光学素子から構成される。モールド保持装置4は、モールド3を保持、及び固定するための保持装置である。このモールド保持装置4は、モールド3に圧縮力を加えることにより、モールド3に形成されたパターンを所望の形状に補正する形状補正機構12と、吸着力や静電力によりモールド3を引きつけて保持するモールドベース13とを備える。また、モールド保持装置4は、ウエハ5上に形成された紫外線硬化樹脂にモールド3を押し付けるために、モールドベース13をZ軸方向に駆動する不図示のベース駆動機構を備える。なお、このインプリント装置1では、上記のように、一方のモールド3をZ方向に駆動する構成とするが、例えば、他方のウエハステージ6(ウエハ5)をZ方向に駆動する構成としてもよい。
【0013】
ウエハ5は、例えば、単結晶シリコンからなる被処理基板であり、被処理面には、成形部となる紫外線硬化樹脂(以下、単に「樹脂」と表記する)が吐出される。また、ウエハステージ6は、ウエハ5を真空吸着により保持し、かつ、XY平面内を自由に移動可能な基板保持手段(移動体)である。また、吐出装置7は、ウエハ5上に未硬化の樹脂を吐出する吐出手段(塗布手段)である。樹脂は、紫外線を受光することにより硬化する性質を有する紫外線硬化樹脂であり、製造する半導体デバイスの種類等により適宜選択される。ここで、本実施形態の吐出装置7は、この樹脂に対してある溶媒を混合した混合液を液滴として、インクジェット方式にて吐出するものとする。更に、モールド搬送装置8は、モールド3を搬送し、モールドベース13に対してモールド3を設置する搬送手段である。
【0014】
減圧機構9は、吐出装置7にてウエハ5上に樹脂の液膜を形成した後に、液膜中の溶媒を好適に蒸発させるための蒸発手段である。この減圧機構9は、液膜の周囲の雰囲気を減圧することが可能な真空排気機構(減圧手段)を含む。一方、蒸発手段は、後述するが、溶媒の揮発性が高い場合には、減圧機構9の構成に変えて、単に液膜に対して送風が可能な送風機構としてもよい。また、減圧機構9は、図1に示すように、モールド保持装置4と一体で、かつ、モールド3に形成された凹凸パターン周辺に減圧部(送風部)が位置するように設置することが望ましい。
【0015】
制御装置10は、インプリント装置1の各構成要素の動作及び調整等を制御する制御手段である。この制御装置10は、インプリント装置1の各構成要素に回線により接続された、磁気記憶媒体等の記憶手段を有するコンピュータ、及びシーケンサ等で構成され、プログラム、若しくはシーケンスにより、各構成要素の制御を実行する。なお、制御装置10は、インプリント装置1と一体で構成しても良いし、若しくは、インプリント装置1とは別の場所に設置し、遠隔で制御する構成としても良い。
【0016】
次に、インプリント装置1によるインプリント処理について説明する。まず、後述する制御部は、ウエハステージ6にウエハ5を載置及び固定させた後、ウエハステージ6を吐出装置7の吐出位置へ移動させる。その後、吐出装置7は、吐出工程として、ウエハ5の所定のショット(被処理領域)に樹脂(未硬化樹脂)を吐出する。次に、制御部は、ウエハ5上の吐出面がモールド3の直下に位置するように、ウエハステージ6を移動させる。次に、制御部は、モールド3の押印面とウエハ5上の吐出面との位置合わせ、及び形状補正機構12によるモールド3の形状補正を実施した後、ベース駆動機構を駆動させ、ウエハ5上の樹脂にモールド3を押印する(押印工程)。このとき、樹脂は、モールド3の押印によりモールド3に形成されたパターンに沿って流動する。この状態で、照明系ユニット2は、硬化工程として、モールド3の背面(上面)から紫外線11を照射し、モールド3を透過した紫外線11により樹脂が硬化する。そして、樹脂が硬化した後、制御部は、ベース駆動機構を再駆動させ、モールド3をウエハ5から離型させる(離型工程)。これにより、ウエハ5上のショットの表面には、モールド3のパターンに倣った3次元形状の樹脂の層が形成される。
【0017】
次に、インプリント装置1の作用について説明する。図2は、吐出装置7によりウエハ5上のショット20に対して吐出された、混合液からなる液滴21の形状を示す模式図である。この場合、混合液は、溶媒である酢酸エチルに、樹脂を1.6%溶解させたものとする。ここで、吐出装置7は、上記吐出工程において、混合液を180ピコリットルの液滴としてショット20上に吐出する。このとき、ショット20上における液滴21の配置は、モールド3に形成された凹凸パターンの密度に基づいて決定される。即ち、制御装置10は、液滴21の吐出領域が、凹凸パターンの密度の高い領域では密に、一方、凹凸パターンの密度の低い領域では疎になるように、吐出装置7に対して液滴21の吐出量を調整させる。これにより、ショット20上に吐出された、ある1つの液滴21は、図2(a)に示すように、少なくとも隣接する他のいずれかの液滴と接触する。そして、この接触した部分に働く表面張力により、液滴と液滴とに囲まれた領域が1秒以内に混合液で満たされるので、ショット20上には混合液からなる液膜が形成される。
【0018】
ここで、本実施形態における混合液中の溶媒の体積は、樹脂の体積の60倍としたが、樹脂に形成される微細パターンの高さや残膜厚によっては、最適な体積比が異なる。例えば、50〜100nmの微細パターン高さ、及び10〜20nmの残膜厚を実現するためには、この溶媒の体積は、樹脂の体積の30〜1000倍であることが望ましい。なお、混合液中の溶媒の体積が樹脂の体積の30倍よりも小さい場合には、ショット20上に吐出された液滴と液滴とは接触しない(図2(b)参照)。この場合、ショット20上にて各液滴22が広がり1つの液膜となるためには、10秒以上の時間を要するため、インプリント装置1全体の生産性が低下する。一方、この溶媒の体積が樹脂の体積の1000倍よりも大きい場合には、ショット20上に液滴21を吐出した後の液膜の厚みが厚くなる。この場合、液膜の粘性抵抗が小さくなるので、ショット20上の液膜の厚みは、均一となる。この液膜の厚みの均一化により、形成される微細パターンの残膜厚には、凹凸パターンの密度分布に応じた厚み分布が発生する。
【0019】
更に、混合液の1回の吐出量を180ピコリットルとすることで、液膜の厚みは、最大で3μmとなる。このように液膜の厚みが薄くなることにより、液膜の形成から3秒経過した後でも、凹凸パターンの密度に応じて形成された液膜の厚み分布は維持される。例えば、混合液の粘度が0.4mPa・sである場合には、液膜の厚みが40μm以下であれば、粘性抵抗により均一な厚みの液膜にはならない。特に、本実施形態の溶媒である酢酸エチルの粘度は、0.4mPa・sであるため、液膜の厚み分布はそのまま維持される。なお、混合液の粘度が0.4mPa・s以上である場合には、40μmよりも厚い膜厚でも、液膜の厚み分布を維持できる。逆に、混合液の粘度が0.4mPa・sよりも低い場合には、液膜の厚さが40μmよりも薄くないと、液膜の厚み分布を維持することができない。以上のことを踏まえ、本実施形態における混合液の粘度μ(Pa・s)と、液膜の厚みd(m)との関係は、式(1)で表される。
μ/d≧10 (1)
【0020】
また、本実施形態のインプリント装置1では、制御装置10は、吐出工程にてショット20上に液膜を形成した後、液膜中の溶媒を蒸発させる蒸発工程に移行する。この溶媒を蒸発させることにより、ショット20上には所望の厚み分布を有する樹脂の液膜が形成される。ここで、溶媒の揮発性が高い場合には、自然に蒸発(自然気化)させればよい。これに対して、減圧機構9により故意に液滴の吐出領域の周辺の空間(雰囲気)を減圧することで、溶媒の蒸発速度を上げてもよい。この場合、インプリント装置1のスループットを低下させることなく溶媒を効率良く蒸発させるためには、溶媒の沸点は、大気圧下で25〜90℃、又は、常温での蒸気圧が0.01〜0.09MPaであることが望ましい。例えば、溶媒の沸点が大気圧下で25℃未満、又は、常温での蒸気圧が0.09MPa以上の場合には、溶媒が過度に蒸発しやすいため、吐出装置7による混合液の吐出安定性が低下する可能性がある。一方、溶媒の沸点が大気圧下で90℃以上、又は、常温での蒸気圧が0.01MPa未満の場合には、溶媒がショット20上に残りやすく、この残留溶媒が欠陥の原因となる可能性がある。
【0021】
制御装置10は、上記の蒸発工程の終了後、残留した樹脂の膜に対してモールド3を押し付ける押印工程に移行し、その後、上記のように、硬化工程、及び離型工程を順に実行することで、ウエハ5上に樹脂の微細パターンを形成する。このように、吐出装置7は、吐出工程において、モールド3の凹凸パターンの密度に応じてショット20上に液滴を配置(吐出)することで液膜の厚みに分布を持たせるので、ショット20上に形成した樹脂の微細パターンの残膜厚を均一にすることができる。以後、このインプリント装置1とは別のエッチング装置により、ウエハ5に対して、このウエハ5上に形成した樹脂の微細パターンをマスクとしてCHFガスを用いたドライエッチングを実施し、樹脂の下層に凹部を形成する。このとき、本実施形態の作用により、凹部形成前の樹脂の微細パターンの残膜厚がウエハ5の面内で均一になっているので、ドライエッチングによる凹部の線幅の面内ばらつきは生じない。
【0022】
以上のように、本実施形態のインプリント装置1によれば、ウエハ5上に形成された樹脂の微細パターンの残膜厚を均一化しつつ、高い生産性を確保し、未充填欠陥の発生を防止することができる。
【0023】
なお、本実施形態では、樹脂に混合する溶媒として酢酸エチルを用いたが、溶媒は、この物質に限定するものではない。例えば、溶媒は、上記のように沸点が大気圧下で25〜90℃、又は、常温での蒸気圧が0.01〜0.09MPaの条件を満たし、紫外線硬化樹脂を溶解する溶媒であれば、その他の物質でも代用可能である。
【0024】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係るインプリント装置について説明する。本実施形態のインプリント装置の特徴は、吐出装置7が吐出する混合液を、溶媒であるハイドロフルオロカーボン(HFC−245ca)に、樹脂を0.3%溶解させたものとする点にある。なお、本実施形態のインプリント装置の構成は、第1実施形態に係るインプリント装置1と同様であるため、各構成要素の符号は、インプリント装置1と同一とし、説明を省略する。この場合、吐出装置7は、上記吐出工程において、混合液を1ナノリットルの液滴としてショット20上に吐出する。本実施形態においても、ショット20上における液滴21の配置は、モールド3に形成された凹凸パターンの密度に基づいて決定される。これにより、ショット20上に吐出された、ある1つの液滴23は、図2(c)に示すように、少なくとも隣接する他のいずれかの液滴と接触する。この場合も、この接触した部分に働く表面張力により、液滴と液滴とに囲まれた領域が短時間内に混合液で満たされるので、ショット20上には混合液からなる液膜が形成される。
【0025】
ここで、本実施形態における混合液中の溶媒の体積は、樹脂の体積の300倍とした。この場合も、例えば、50〜100nmの微細パターン高さ、及び10〜20nmの残膜厚を実現するためには、この溶媒の体積は、樹脂の体積の30〜1000倍であることが望ましい。更に、混合液の1回の吐出量を1ナノリットルとすることで、液膜の厚みは、最大で15μmとなる。このように液膜の厚みが薄くなることにより、液膜の形成から3秒経過した後でも、第1実施形態と同様に、凹凸パターンの密度に応じて形成された液膜の厚み分布は維持される。例えば、混合液の粘度が0.6mPa・sである場合、液膜の厚みが60μm以下であれば、粘性抵抗により均一な厚みの液膜にはならない。特に、本実施形態の溶媒であるHFC−245caの粘度は、0.6mPa・sであるため、液膜の厚み分布はそのまま維持される。
【0026】
また、本実施形態のインプリント装置でも、制御装置10は、吐出工程にてショット20上に液膜を形成した後、液膜中の溶媒を蒸発させる蒸発工程に移行する。特に、本実施形態では、制御装置10は、液膜が形成されたウエハ5を減圧機構9の減圧部に移動させた後、減圧機構9により溶媒の蒸発工程を実施させる。このとき、減圧機構9は、液膜周辺の雰囲気を0.07MPaの減圧雰囲気に調整する。このように、減圧機構9は、液膜周辺の雰囲気を減圧させることにより、溶媒であるHFC−245caの蒸発速度を上げることができる。
【0027】
制御装置10は、上記の蒸発工程の終了後、残留した樹脂の膜に対してモールド3を押し付ける押印工程に移行し、その後、上記のように、硬化工程、及び離型工程を順に実行することで、ウエハ5上に樹脂の微細パターンを形成する。特に、本実施形態では、蒸発工程にて減圧雰囲気中にHFC−245caが存在する状態において、押印工程に移行することが望ましい。このHFC−245caは、0.07MPaの減圧雰囲気中では気体として存在するが、0.1MPaの圧力雰囲気では凝縮する性質を有する。そこで、この凝縮性を利用することで、モールド3と樹脂との間に発生する気泡を1秒以下の短時間で消滅させることができる。更に、HFC−245caは、フッ素系の材料であるため、離型工程においても、モールド3と樹脂との界面にHFC−245caを導入することにより離型力を下げることができるという離型剤としての利点がある。
【0028】
以後、第1実施形態と同様に、別のエッチング装置により、ウエハ5上に形成した樹脂の微細パターンをマスクとして、CHFガスを用いたドライエッチングを実施し、樹脂の下層に凹部を形成する。このように、本実施形態のインプリント装置によれば、第1実施形態と同様の効果を奏すると共に、吐出装置7が吐出する混合液の溶媒としてHFC−245caを採用することにより、溶媒の蒸発時間を更に短縮することができる等の利点がある。
【0029】
なお、本実施形態では、樹脂に混合する溶媒としてハイドロフルオロカーボンを用いたが、溶媒は、この物質に限定するものではない。例えば、溶媒は、上記のように沸点が大気圧下で25〜90℃、又は、常温での蒸気圧が0.01〜0.09MPaの条件を満たすものであれば、ハイドロフルオロエーテル、又はハイドロフルオロオレフィン等のフッ素系の物質でも代用可能である。
【0030】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係るインプリント装置について説明する。図3は、本実施形態に係るインプリント装置30の構成を示す概略図である。特に、図3(a)は、インプリント装置の側面図であり、図3(b)は、複数のショットを含むインプリント領域の周辺をZ方向上面から見た平面図(透視図)である。なお、図3に示すインプリント装置30において、第1実施形態に係るインプリント装置1と同一構成のものには同一の符号を付し、説明を省略する。本実施形態のインプリント装置30の特徴は、少なくとも2つの吐出装置31と、少なくとも2つの減圧装置32とを有する点にある。以下、インプリント装置30は、第1及び第2の吐出装置31a、31bと、第1及び第2の減圧装置32a、32bとの各2台の装置を有するものとして説明する。ここで、第1の吐出装置31aと第2の吐出装置31bとは、図3(b)に示すように、Y方向の各ショット列に一致し、かつ、X方向で同列となるように設置することが望ましい。更に、モールド保持装置4に設置された第1の減圧装置32aに対して、第2の減圧装置32bも、Y方向のショット列に一致し、かつ、X方向で第1減圧装置32aと同列となるように設置することが望ましい。なお、吐出装置31及び減圧装置32の本体自体の構成は、第1実施形態に係る吐出装置7及び減圧機構9の本体構成とそれぞれ略同一とする。
【0031】
この場合、制御装置10は、吐出工程において、図3(b)に示すようにウエハステージ6を−Y方向に駆動しながら、2つの第1及び第2の吐出装置31a、31bにより同時に2つのショット33a、33bに対して樹脂と溶媒との混合液を吐出する。このときの溶媒の沸点や常温での蒸気圧の各条件は、第1実施形態と同様である。これにより、ショット33a、33b上に吐出されたある1つの液滴は、少なくとも隣接する他のいずれかの液滴と接触する。この場合も、この接触した部分に働く表面張力により、液滴と液滴とに囲まれた領域が短時間内に混合液で満たされるので、ショット33a、33b上には混合液からなる液膜が形成される。次に、制御装置10は、ウエハステージ6を駆動し、液膜を形成したショットの一方、例えば、ショット33aをモールド保持装置4に設置された第1の減圧装置32aの減圧部に移動させる。この移動により、他方のショット33bは、第2の減圧装置32bの減圧部に位置することになる。次に、制御装置10は、第1の減圧装置32a、及び第2の減圧装置32bにより、混合液が吐出されたショット33a、33bの周辺を減圧雰囲気とする。これにより、各減圧装置32a、32bは、混合液中から溶媒を短時間で蒸発させることができ、同時に、溶媒を適宜回収することにより、この溶媒がインプリント装置30内に拡散することに起因する装置内部の汚染を防止することができる。このように、本実施形態のインプリント装置30によれば、上記実施形態と同様の効果を奏すると共に、吐出装置31と減圧装置32とをそれぞれ複数設置することで、更なるスループットの向上を図ることができる。
【0032】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態に係るインプリント装置について説明する。図4は、本実施形態に係るインプリント装置40に係る図であり、特に、図4(a)は、インプリント装置40の構成を示す側面図である。なお、図4に示すインプリント装置40において、第1実施形態に係るインプリント装置1と同一構成のものには同一の符号を付し、説明を省略する。本実施形態のインプリント装置40の特徴は、複数の種類の液体を異なる吐出量にて吐出可能な吐出装置41を有する点にある。この吐出装置41は、それぞれ異なる液体が収容される液容器42と、この各液容器42から吐出装置41へ各液体を送る流路46とを含み、各液体をそれぞれ個別に吐出する不図示の複数の吐出口を有する。特に、本実施形態の液容器42は、溶媒の体積が樹脂の体積の60倍となるように調製した第1の混合液を収容する第1の液容器42aと、溶媒の体積が樹脂の体積の300倍となるように調製した第2の混合液を収容する第2の液容器42bとからなるものとする。また、液容器42aに接続される吐出口からの吐出量は、180ピコリットル、一方、液容器42bに接続される吐出口からの吐出量は、1ナノリットルである。なお、本実施形態で採用する溶媒は、上記実施形態に示すものが望ましい。
【0033】
この場合、制御装置10は、吐出工程において、ウエハ5を載置したウエハステージ6を−Y方向に駆動しながら、吐出装置41により、ショット43に対して樹脂と溶媒との混合液を吐出する。このときの溶媒の沸点や常温での蒸気圧の各条件は、第1実施形態と同様である。図4(b)は、吐出装置41によりウエハ5上のショット43に対して吐出された、混合液からなる液滴44、45の形状を示す模式図である。なお、ショット43の端部43aは、モールド3の端部と一致する部分、又は、ウエハ5の端部と一致する部分であるが、以下、端部43aは、モールド3の端部と一致する部分として説明する。ここで、吐出装置41から吐出された液滴が端部43aから大きく外側にはみ出ると、隣接するショット43の欠陥の原因となる可能性がある。同様に、液滴がウエハ5の外側にはみ出ると、ウエハ5の端部における発塵の原因となる可能性がある。そこで、このような液滴のはみ出しを抑制するために、吐出装置41は、端部43aに対しては、180ピコリットルの液滴44を吐出し、一方、ショット43の内部に対しては、1ナノリットルの液滴45を吐出するように、吐出する混合液を使い分ける。これにより、端部43a付近の液滴44がショット43の内部に吐出された液滴45よりも小さくなるので、端部43aからの液滴のはみ出しを抑えることができる。なお、制御装置10が実行させる蒸発工程以後の工程は、上記実施形態と同様である。このように、本実施形態のインプリント装置40によれば、第1実施形態と同様の効果を奏すると共に、吐出工程時のショット43からの液滴のはみ出しを好適に抑えることができる。
【0034】
なお、本実施形態では、インプリント装置40は、複数の液容器42a、42bと、これに対応した複数の吐出口を有する吐出装置41を有するものとして説明したが、本発明は、これに限定するものではない。例えば、複数の液容器に対して、それぞれ吐出口を有する複数の吐出装置を有する構成としてもよい。
【0035】
(物品の製造方法)
物品としてのデバイス(半導体集積回路素子、液晶表示素子等)の製造方法は、上述したインプリント装置を用いて基板(ウエハ、ガラスプレート、フィルム状基板)にパターンを形成する工程を含む。更に、該製造方法は、パターンが形成された基板をエッチングする工程を含みうる。なお、パターンドメディア(記録媒体)や光学素子等の他の物品を製造する場合には、該製造方法は、エッチングの代わりに、パターンが形成された基板を加工する他の処理を含みうる。本実施形態の物品の製造方法は、従来の方法に比べて、物品の性能・品質・生産性・生産コストの少なくとも1つにおいて有利である。
【0036】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 インプリント装置
5 ウエハ
7 吐出装置
9 減圧装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上の未硬化樹脂を型により成形して硬化させ、前記基板上に硬化した樹脂のパターンを形成するインプリント装置であって、
前記基板に対して前記未硬化樹脂と溶媒との混合液を吐出する吐出手段と、
前記基板上に吐出された前記混合液から前記溶媒を蒸発させる蒸発手段と、を備え、
前記吐出手段は、前記基板上で液滴と液滴とが接触するように前記混合液を吐出する、
ことを特徴とするインプリント装置。
【請求項2】
前記吐出手段は、インクジェット方式を採用する、ことを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項3】
前記吐出手段は、互いに異なる種類の前記混合液を収容する複数の容器を含む、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のインプリント装置。
【請求項4】
前記吐出手段は、前記基板上のインプリント領域の端部と前記インプリント領域の内部とに対して、それぞれ異なる種類の前記混合液を吐出し、
前記端部に対する前記混合液の吐出量は、前記内部に対する前記混合液の吐出量より少ない、ことを特徴とする請求項3に記載のインプリント装置。
【請求項5】
前記蒸発手段は、前記基板上の前記混合液の周囲の雰囲気に対して送風する送風機構を含む、ことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項6】
前記蒸発手段は、前記基板上の前記混合液の周囲の雰囲気を減圧する減圧機構を含む、ことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項7】
前記吐出手段は、前記蒸発手段により前記混合液の前記溶媒が蒸発して得られた液膜の厚みが前記型の凹部の密度に応じた厚みとなるように、前記混合液を前記基板に吐出する、ことを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項8】
前記吐出手段は、前記混合液の粘度をμ(Pa・s)とし、前記基板上に吐出された前記混合液の液膜の厚みをd(m)とすると、
μ/d≧10
の条件を満たすように前記混合液を前記基板に吐出する、ことを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項9】
前記混合液における前記溶媒の体積は、前記樹脂の体積の30〜1000倍の範囲にある、ことを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項10】
前記溶媒の沸点は、大気圧下で25〜90℃の範囲にある、ことを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項11】
前記溶媒の常温での蒸気圧は、0.01〜0.09MPaの範囲にある、ことを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項12】
前記溶媒は、離型剤を含む、ことを特徴とする請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項13】
前記溶媒は、酢酸エチル、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテル、又は、ハイドロフルオロオレフィンを含む、ことを特徴とする請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項14】
基板上の未硬化樹脂を型により成形して硬化させ、前記基板上に硬化した樹脂のパターンを形成するインプリント方法であって、
前記未硬化樹脂と溶媒との混合液を該混合液の液滴と液滴とが接触するように前記基板上に吐出する吐出工程と、
前記基板上に吐出された前記混合液から前記溶媒を蒸発させる蒸発工程と、
を含むことを特徴とするインプリント方法。
【請求項15】
請求項1ないし請求項13のいずれか1項に記載のインプリント装置、又は、請求項14に記載のインプリント方法を用いて基板上に樹脂のパターンを形成する工程と、
前記工程で前記パターンを形成された基板を加工する工程と、
を含むことを特徴とする物品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−129381(P2012−129381A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−280178(P2010−280178)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】