説明

インホイールモータ駆動ユニット

【課題】入出力軸相対傾斜を吸収しつつこれら両軸間を駆動結合する相対変位吸収式駆動結合構造の小型化が可能なインホイールモータ駆動ユニットを提供する。
【解決手段】電動モータ2の回転は入力軸3、相対変位吸収式駆動結合構造11、および出力軸6を介してハブベアリング8(車輪)に伝達される。相対変位吸収式駆動結合構造11は、内筒および外筒間に弾性材を充填して構成し、内筒に出力軸6を、また外筒に入力軸3を結合することにより、入出力軸3,6を結合部7で揺動可能に駆動結合する。相対変位吸収式駆動結合構造11は、電動モータ2を挟んでハブベアリング8と反対の側に配置する。これにより、入出力軸3,6の揺動可能な結合部7が、ハブベアリング8から遠い軸線方向位置に存在することとなり、ハブベアリング8のガタや寸法公差や撓みに起因した車輪回転面の変位による出力軸6の揺動角αが従来の「α´」よりも小さくなり、相対変位吸収式駆動結合構造11の小型化が可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪を個々の電動モータにより駆動して走行可能な電気自動車に用いられる、車輪ごとの駆動ユニット、所謂インホイールモータ駆動ユニットの改良提案に関するものである。
【背景技術】
【0002】
かかるインホイールモータ駆動ユニットとしては従来、例えば特許文献1に記載のようなものが知られている。
【0003】
このインホイールモータ駆動ユニットは、電動モータによって駆動される入力軸と、車輪に結合された出力軸と、該出力軸を回転自在に支持するハブベアリングとを具備し、
電動モータからの回転動力を入力軸および出力軸を経て車輪に伝達することで、各車輪を個々のインホイールモータ駆動ユニットにより駆動し、電気自動車を走行させるものである。
【0004】
よって、上記入力軸および出力軸間は相互に駆動結合する必要がある。
ところで入出力軸間の駆動結合に際しては、ハブベアリングのガタや寸法公差に起因して、車輪への横力などにより出力軸は入力軸に対し相対的に揺動することから、これら入出力軸間における駆動結合部の相対的な変位を吸収可能な態様で当該駆動結合を行う必要がある。
【0005】
そのため入出力軸間の駆動結合は、特許文献1にも記載されているとおり、相対変位吸収式駆動結合構造によって当該駆動結合を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−190440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載のものに代表される従来のインホイールモータ駆動ユニットにあっては、上記の相対変位吸収式駆動結合構造が、出力軸の回転支承を司ると同時に車輪軸受部でもあるハブベアリングの近くに配置されているため、以下のような問題を生ずる。
【0008】
つまり、相対変位吸収式駆動結合構造がハブベアリングに近いということは、この相対変位吸収式駆動結合構造が出力軸の揺動中心になることから、出力軸の揺動中心が車輪に近いということを意味する。
そのため従来は、ハブベアリングのガタや寸法公差に起因した車輪回転面の変位による出力軸の揺動角、つまり入出力軸間における駆動結合部の入出力軸相対変位量が大きくなる。
【0009】
上記の相対変位吸収式駆動結合構造は、かかる大きな入出力軸駆動結合部の入出力軸相対変位を確実に吸収して、入出力軸間に「こじり」等の不具合を生じないようにする必要があり、
従って従来のインホイールモータ駆動ユニットにあっては、入出力軸間の相対変位吸収式駆動結合構造が大型化するのを避けられず、ひいてはインホイールモータ駆動ユニット自身が大型化するという問題を生ずる。
【0010】
かといって、ハブベアリングを車幅方向外方へ移動させることにより、これと、相対変位吸収式駆動結合構造との距離を大きくしようとすると、インホイールモータ駆動ユニットの軸長が長くなって、小型化が使命のインホイールモータ駆動ユニットの大型化を招いてしまう。
【0011】
本発明は、電動モータに対する上記相対変位吸収式駆動結合構造の相対的な配置箇所を工夫することにより、つまり相対変位吸収式駆動結合構造をハブベアリングから遠い軸線方向位置に配置することで、インホイールモータ駆動ユニットの上記した大型化に頼るのではなく、上記相対変位吸収式駆動結合構造の大型化に関する問題を回避し得るようにしたインホイールモータ駆動ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的のため、本発明のインホイールモータ駆動ユニットは、以下のごとくにこれを構成する。
先ず、本発明の前提となるインホイールモータ駆動ユニットを説明するに、これは、
ハウジング内に回転自在に横架した入力軸と、
電動モータによって駆動される入力軸と、車輪に結合された出力軸と、該出力軸を回転自在に支持するハブベアリングとを具備し、前記入力軸および出力軸間を駆動結合すると共に、該駆動結合部の入出力軸相対変位を吸収可能な態様で前記入力軸および出力軸間の駆動結合を行う相対変位吸収式駆動結合構造を設けたものである。
【0013】
本発明は、かかるインホイールモータ駆動ユニットにおける上記の相対変位吸収式駆動結合構造を以下のように、
つまり上記電動モータを挟んで、上記ハブベアリングと反対の側における軸線方向位置に配置した構成に特徴づけられる。
【発明の効果】
【0014】
かかる本発明のインホイールモータ駆動ユニットによれば、相対変位吸収式駆動結合構造が上記の配置に起因して、ハブベアリングから遠い軸線方向位置に存在していることとなる。
このため、相対変位吸収式駆動結合構造の位置によって決まる出力軸の揺動中心がハブベアリング(車輪)から遠く離れており、ハブベアリングのガタや寸法公差に起因した車輪回転面の変位による出力軸の揺動角、つまり入出力軸間における駆動結合部の入出力軸相対変位量を小さくすることができる。
【0015】
従って相対変位吸収式駆動結合構造が、入出力軸駆動結合部の上記小さな入出力軸相対変位を吸収するだけでよくなり、入出力軸間における相対変位吸収式駆動結合構造の小型化が可能で、ひいてはインホイールモータ駆動ユニットを小型化し得て、これらの上記大型化に関する問題を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の着想に至った経緯を説明するのに用いた電気自動車用インホイールモータ駆動ユニットの参考例を模式的に示す縦断側面図である。
【図2】本発明の第1実施例になるインホイールモータ駆動ユニットを示す模式的縦断側面図である。
【図3】図2におけるインホイールモータ駆動ユニットで用いた相対変位吸収式駆動結合構造を示し、 (a)は、該相対変位吸収式駆動結合構造を、図3(b)のIII−III線上で断面とし、矢の方向に見て示す縦断側面図、 (b)は、該相対変位吸収式駆動結合構造を、軸直角断面として示す縦断正面図である。
【図4】本発明の第2実施例になるインホイールモータ駆動ユニットを示す模式的縦断側面図である。
【図5】図4におけるインホイールモータ駆動ユニットで用いた相対変位吸収式駆動結合構造を示し、 (a)は、該相対変位吸収式駆動結合構造を、図5(b)のV−V線上で断面とし、矢の方向に見て示す縦断側面図、 (b)は、該相対変位吸収式駆動結合構造を、軸直角断面として示す縦断正面図である。
【図6】本発明の第3実施例になるインホイールモータ駆動ユニットを示す模式的縦断側面図である。
【図7】本発明の第4実施例になるインホイールモータ駆動ユニットを示す模式的縦断側面図である。
【図8】本発明の第5実施例になるインホイールモータ駆動ユニットを示す模式的縦断側面図である。
【図9】本発明の第6実施例になるインホイールモータ駆動ユニットを示し、 (a)は、該インホイールモータ駆動ユニットの模式的縦断側面図、 (b)は、該インホイールモータ駆動ユニットのタイヤ横力入力時における出力軸傾斜状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を、図面に示す実施例に基づき詳細に説明する。
<参考例の構成と、その問題点>
図1は、本発明の着想に至った経緯を説明するのに用いる、インホイールモータ駆動ユニットの参考例を示す。
図1におけるインホイールモータ駆動ユニットはハウジング1を具え、このハウジング1内に電動モータ2を収納する。
【0018】
電動モータ2は、ハウジング1内に固設したステータ2sと、その内周にラジアルギャップ(径方向隙間)を持たせて同心に配置したロータ2rとで構成する。
ロータ2r は、インホイールモータ駆動ユニットの入力軸3に駆動結合し、この入力軸3を、ロータ2rの軸線方向両側に配置した軸受4,5によりハウジング1に回転自在に支承する。
【0019】
入力軸3に、同軸に突き合わせて出力軸6を配置し、これら入力軸3および出力軸6の突き合わせ部7を相互に結合する。
出力軸6の他端にはハブベアリング8を固着し、このハブベアリング8を複列アンギュラベアリング9でハウジング1の開口端に回転自在に支持することで、出力軸6をハウジング1内に支承する。
ハブベアリング8は、図示しなかったが、ハウジング1の開口端から露出した面に車輪を取り付ける。
【0020】
電動モータ2のステータ2sに通電すると、これからの電磁力でロータ2rが回転駆動される。
電動モータ2からの回転駆動力は入力軸3および出力軸6を順次経てハブベアリング8に達し、車輪を入力軸3および出力軸6と一体回転させることで、電気自動車の走行を可能にする。
【0021】
ところで入力軸3および出力軸6の相互突き合わせ結合部7は、ハブベアリング8のガタや寸法公差、更に撓みに起因して、車輪への横力などにより出力軸6が入力軸3に対し相対的に揺動することから、両軸が相対的に変位する。
かかる出力軸6の揺動(入出力軸3,6の突き合わせ結合部7における入出力軸相対変位)は、異音や、駆動機能の損失(車両の走行不能)や、左右輪駆動力差による車両挙動不安定を生じ、これらの問題を回避する必要がある。
【0022】
上記は、図1のごとく入出力軸3,6間が直結されている場合の問題であって、入出力軸3,6間が変速機構を介して結合されている場合は更に、変速機構の歯当たりによるギヤノイズ、応力集中、フリクションの増大など、電気自動車として看過できない別の問題をも生じ、これら問題の回避も急務である。
【0023】
上記の諸問題を解決するため従来は、前記した特許文献1にも見られるごとく、上記した出力軸6の揺動(入出力軸3,6の突き合わせ結合部7における入出力軸相対変位)を吸収可能な態様で入出力軸3,6間を駆動結合すべく、相対変位吸収式駆動結合構造(図1でははブラックボックス「11」として示した)により当該駆動結合を行っていた。
【0024】
しかし従来のインホイールモータ駆動ユニットにあっては、相対変位吸収式駆動結合構造11が破線「11´」で示すごとく、出力軸6の回転支持部であると同時に車輪軸受部でもあるハブベアリング8の近くに配置されているため、
入出力軸3,6の相互突き合わせ結合部が破線「7´」で示すようにハブベアリング8の近くに位置し、ハブベアリング8のガタや寸法公差や撓みに起因した車輪回転面の変位による出力軸6の揺動角αが「α´」で示すように大きくなり、入出力軸3,6間における駆動結合部7´の入出力軸相対変位量が大きくなる。
【0025】
相対変位吸収式駆動結合構造11´は、かかる大きな出力軸6の揺動角α´(入出力軸駆動結合部7´の入出力軸相対変位)を確実に吸収して、入出力軸3,6間に「こじり」等の不具合を生じないようにする必要があり、
従って従来のインホイールモータ駆動ユニットにあっては、相対変位吸収式駆動結合構造11´が、ラバーカップリングなど撓み式であっても、ギヤカップリングなど機構式であっても、を大型化するのを避けられず、ひいてはインホイールモータ駆動ユニット自身が大型化するという問題を生ずる。
【0026】
かといって、ハブベアリング8を車幅方向外方へ移動させることにより、これと、相対変位吸収式駆動結合構造11´との距離を大きくしようとすると、インホイールモータ駆動ユニットの軸長が長くなって、小型化が使命のインホイールモータ駆動ユニットの大型化を招いてしまう。
【0027】
<第1実施例の構成>
図2は、上記の大型化に関する問題を解消した本発明の第1実施例になるインホイールモータ駆動ユニットを示し、図3(a),(b)は、このインホイールモータ駆動ユニットに用いる相対変位吸収式駆動結合構造11の詳細を示す。
【0028】
図2中、図1におけると同様に機能する部分には同一符号を付して示すにとどめ、その重複説明を避けた。
本実施例においては図2に示すごとく、電動モータ2を挟んで、ハブベアリング8と反対の側における軸線方向位置に相対変位吸収式駆動結合構造11を配置する。
このため、ロータ2rに結合した入力軸3は中空とし、その外周に設けた軸受4,5を介してハウジング1に回転自在に支持する。
【0029】
出力軸6は入力軸3の中空孔内に遊嵌し、これら入力軸3および出力軸6をそれぞれ、ハブベアリング8から遠い端部7において相対変位吸収式駆動結合構造11により相互に結合する。
【0030】
相対変位吸収式駆動結合構造11は、例えば図3(a),(b)に示すように、内筒12および外筒13を同心配置して具え、内筒12の外周には複数個の軸線方向突条12aを円周方向等間隔に配して突設し、外筒13の内周には複数個の軸線方向突条13aを円周方向等間隔に配して突設する。
突条12a,13aは、円周方向に相互に重なり合うような相対高さとし、これら突条12a,13aが位置する内筒12の外周および外筒13の内周間に、ゴムなどの弾性材14(相対変位吸収体)を充填して、この弾性材14を介し内筒12および外筒13を一体化する。
【0031】
かかる相対変位吸収式駆動結合構造11を、図2に示すごとく入力軸3および出力軸6間の駆動結合に用いるに際しては、
内筒12の軸線方向突条12aに軸線方向孔12bを穿設してボルト15を挿通し、外筒13の軸線方向突条13aにも軸線方向孔13bを穿設してボルト16を挿通する。
そして、ハブベアリング8に近い内筒12および外筒13の端面にそれぞれ、出力軸6および入力軸3の対応端部を突き当て、
軸線方向突条12aに挿通したボルト15で出力軸6の端部を内筒12に取着し、軸線方向突条13aに挿通したボルト16で中空入力軸3の端部を外筒13に取着する。
【0032】
<第1実施例の作用・効果>
電動モータ2(ロータ2r)からの回転動力は、中空入力軸3を経て相対変位吸収式駆動結合構造11の外筒13に達し、その後、弾性材14および内筒12を順次経て出力軸6に至り、ハブベアリング8(車輪)の回転駆動によって電気自動車の走行を可能にする。
【0033】
この間、ハブベアリング8のガタや寸法公差、更に撓みに起因して、車輪への横力などにより出力軸6が入力軸3に対し相対的に揺動し、これら軸3,6が結合端部7で相対変位しても、これを相対変位吸収式駆動結合構造11(弾性材14)の弾性変形により吸収しつつ上記の動力伝達を継続することができ、軸3,6間に「こじり」などの不具合が発生するのを回避することができる。
【0034】
そして本実施例においては、相対変位吸収式駆動結合構造11が、電動モータ2を挟んでハブベアリング8と反対の側に配置されているため、
入出力軸3,6の結合部7が、ハブベアリング8から遠い軸線方向位置に存在することとなり、ハブベアリング8のガタや寸法公差や撓みに起因した車輪回転面の変位による出力軸6の揺動角αが従来の「α´」よりも大幅に小さくなり、入出力軸3,6間における駆動結合部7の入出力軸相対変位量が従来よりも相当小さくなる。
【0035】
従って、入出力軸3,6間における駆動結合部7の入出力軸相対変位を上記のように吸収するための相対変位吸収式駆動結合構造11が、入出力軸3,6間における駆動結合部7の入出力軸相対変位量に見合った小型なものでよくなり、ひいてはインホイールモータ駆動ユニットの小型化に寄与する。
【0036】
この効果は、相対変位吸収式駆動結合構造11が図示例のようなラバーカップリング(撓み)式でなく、ギヤカップリングなど機構式である場合も、またフルードカップリングなど流体式である場合においても、同様に得られること勿論である。
【0037】
<第2実施例の構成>
図4は、前記の大型化に関する問題を解消した本発明の第2実施例になるインホイールモータ駆動ユニットを示し、図5(a),(b)は、このインホイールモータ駆動ユニットに用いる相対変位吸収式駆動結合構造11の詳細を示す。
【0038】
図4中、図1におけると同様に機能する部分には同一符号を付して示すにとどめ、その重複説明を避けた。
本実施例においても第1実施例と同様に図4のごとく、電動モータ2を挟んで、ハブベアリング8と反対の側における軸線方向位置に相対変位吸収式駆動結合構造11を配置し、ロータ2rに結合した入力軸3を中空とし、出力軸6は入力軸3の中空孔内に遊嵌する。
【0039】
ところで、中空の入力軸3および出力軸6の隣接端同士の駆動結合に際しては、この駆動結合を第1実施例のように直接的に行わず、遊星歯車式の減速歯車組21を介して行う。
この減速歯車組21は本発明における変速歯車機構に相当するもので、少なくとも一部が相対変位吸収式駆動結合構造11と径方向に重なり合う軸線方向位置に配置する。
【0040】
そして減速歯車組21はサンギヤ22と、このサンギヤ22に対しハブベアリング8から遠ざかる軸線方向へずらせて同心配置した固定のリングギヤ23と、これらサンギヤ22およびリングギヤ23に噛合する段付きプラネタリピニオン(段付きピニオン)24と、かかる段付きプラネタリピニオン24を回転自在に支持するキャリア25とにより構成する。
【0041】
入力軸3は、ハブベアリング8から遠い端部に上記のサンギヤ22を一体成形して具え、この入力軸3をサンギヤ22からハブベアリング8に向かう方向へ延在させ、この延在端部を軸受5によりウジング1に回転自在に支持する。
【0042】
段付きプラネタリピニオン24は、入力軸3上のサンギヤ22に噛合する大径ギヤ部24a、および固定のリングギヤ23に噛合する小径ギヤ部24bを一体に有した段付きピニオン(遊星歯車)として、
段付きプラネタリピニオン24をサンギヤ22の外周およびリングギヤ23の内周に沿い転動させ得るようになす。
この段付きプラネタリピニオン24は、大径ギヤ部24aがハブベアリング8に近い側に位置し、小径ギヤ部24bがハブベアリング8から遠い側に位置するような向きに配置する。
【0043】
段付きプラネタリピニオン24は、複数個(例えば4個)一組として円周方向等間隔に配置し、この円周方向等間隔配置を保って段付きプラネタリピニオン24を共通なキャリア25により回転自在に支持する。
複数個の段付きプラネタリピニオン24を回転自在に支持したキャリア25は、減速歯車組21の出力回転要素として機能するものであり、ハブベアリング8に近い一端を入力軸3上に回転自在に支持し、他端を図5につき後述する要領で相対変位吸収式駆動結合構造11の外周に固着する。
【0044】
キャリア25の当該他端は、軸受4によりハウジング1に対し回転自在に支持し、これにより軸受4が、相対変位吸収式駆動結合構造11を介し間接的に入力軸3の対応端をハウジング1に軸承するものとする。
従って入力軸3は第1実施例と同様に、両端を軸受4,5によりハウジング1に対し回転自在に支持する。
【0045】
相対変位吸収式駆動結合構造11は、入力軸3と、その中空孔内に遊嵌した出力軸6とを、ハブベアリング8から遠い端部7において相互に結合するもので、例えば図5(a),(b)に示すように構成する。
つまり相対変位吸収式駆動結合構造11は、基本的に図3(a),(b)につき前述したと同様なものとし、内筒12および外筒13を同心配置して具え、内筒12の外周には複数個の軸線方向突条12aを円周方向等間隔に配して突設し、外筒13の内周には複数個の軸線方向突条13aを円周方向等間隔に配して突設する。
また突条12a,13aは、円周方向に相互に重なり合うような相対高さとし、これら突条12a,13aが位置する内筒12の外周および外筒13の内周間に、ゴムなどの弾性材14を充填して、この弾性材14を介して内筒12および外筒13を一体化する。
【0046】
ところでかかる相対変位吸収式駆動結合構造11を、図4に示すごとく入力軸3および出力軸6間の駆動結合に用いるに際しては、
内筒12の軸線方向突条12aに軸線方向孔12bを穿設してボルト17を挿通し、外筒13の外周にフランジ13cを設けると共に当該フランジ13cに軸線方向孔13dを穿設してボルト18を挿通する。
そして、ハブベアリング8に近い内筒12の端面に出力軸6を突き当て、軸線方向突条12aに挿通したボルト17で出力軸6の端部を内筒12に取着し、
外筒13のフランジ13cに、ハブベアリング8から遠いキャリア25の端部を突き当て、フランジ13cに挿通したボルト18でキャリア25を外筒13に取着する。
【0047】
<第2実施例の作用・効果>
電動モータ2(ロータ2r)からの回転動力は、中空入力軸3を経て減速歯車組21のサンギヤ22に伝達される。
これによりサンギヤ22は、大径ギヤ部24aを介して段付きプラネタリピニオン24を回転させるが、このとき固定のリングギヤ23が反力受けとして機能するため、段付きプラネタリピニオン24は、小径ギヤ部24bがリングギヤ23の内周に沿って転動し、また大径ギヤ部24aがサンギヤ22の外周に沿って転動するような遊星運動を行う。
【0048】
かかる段付きプラネタリピニオン24の遊星運動は、キャリア25を経て相対変位吸収式駆動結合構造11の外筒13に達し、その後、弾性材14および内筒12を順次経て出力軸6に至り、ハブベアリング8(車輪)の回転駆動によって電気自動車の走行を可能にする。
上記の伝動作用により減速歯車組21は、電動モータ2から入力軸3への回転を、サンギヤ22の歯数およびリングギヤ23の歯数により決まる比で減速してハブベアリング8(車輪)に伝達することができる。
【0049】
この間、ハブベアリング8のガタや寸法公差、更に撓みに起因して、車輪への横力などにより出力軸6が入力軸3に対し相対的に揺動し、これら軸3,6が結合端部7において相対変位しても、これを相対変位吸収式駆動結合構造11(弾性材14)の弾性変形により吸収しつつ上記の動力伝達を継続することができ、軸3,6間に「こじり」などの不具合が発生するのを回避することができる。
【0050】
そして本実施例においても第1実施例と同様に、相対変位吸収式駆動結合構造11が、電動モータ2を挟んでハブベアリング8と反対の側に配置されているため、
入出力軸3,6の結合部7が、ハブベアリング8から遠い軸線方向位置に存在することとなり、ハブベアリング8のガタや寸法公差や撓みに起因した車輪回転面の変位による出力軸6の揺動角が、図2にαで示すと同程度の小さなものとなり、入出力軸3,6間における駆動結合部7の入出力軸相対変位量が小さく、相対変位吸収式駆動結合構造11、ひいてはインホイールモータ駆動ユニットを小型化することができる。
【0051】
加えて本実施例においては、入力軸3および出力軸6の隣接端同士の駆動結合を遊星歯車式の減速歯車組21を介して行うといえども、この減速歯車組21を、少なくとも一部が相対変位吸収式駆動結合構造11と径方向に重なり合う軸線方向位置に配置するため、インホイールモータ駆動ユニットの大幅な軸線方向長大化を生ずることなく減速歯車組21の設置が可能である。
【0052】
<第3実施例の構成>
図6は、本発明の第3実施例になるインホイールモータ駆動ユニットを示し、このインホイールモータ駆動ユニットに用いる相対変位吸収式駆動結合構造11は、図5(a),(b)につき前述したと同様なものとする。
【0053】
図6中、図1におけると同様に機能する部分には同一符号を付して示すにとどめ、その重複説明を避けた。
本実施例においても第1実施例と同様に図6のごとく、電動モータ2を挟んで、ハブベアリング8と反対の側における軸線方向位置に相対変位吸収式駆動結合構造11を配置する。
ロータ2rに結合した入力軸3は中空とし、その両端を軸受4,5によりハウジング1内に回転自在に支持し、出力軸6は入力軸3の中空孔内に遊嵌する。
【0054】
ところで、入力軸3および出力軸6の隣接端同士の駆動結合に際しては、この駆動結合を第1実施例のように直接的に行わず、平行軸式の減速歯車組31を介して行う。
この減速歯車組31は本発明における変速歯車機構に相当するもので、少なくとも一部が相対変位吸収式駆動結合構造11と径方向に重なり合う軸線方向位置に配置する。
【0055】
そして減速歯車組31は、ハブベアリング8から遠い入力軸3の端部に一体成形したドライブピニオン32と、このドライブピニオン32に噛合する大径の中間ギヤ33とから成るドライブギヤ組、および小径の中間ギヤ34と、この中間ギヤ34に噛合する大径の出力ギヤ35とから成るドリブンギヤ組により構成する。
なお中間ギヤ33,34は、ハブベアリング8に近い側からその順位配置して、アイドラシャフト36を介し相互に一体化し、このアイドラシャフト36をハウジング1内に回転自在に支持する。
また出力ギヤ35は、減速歯車組31の出力回転要素として機能するものであり、軸受37を介してハウジング1内に回転自在に支持する。
【0056】
相対変位吸収式駆動結合構造11は、入力軸3と、その中空孔内に遊嵌した出力軸6とを、ハブベアリング8から遠い端部7において相互に結合するもので、図5(a),(b)につき前述したと同様なものとする。
【0057】
かかる相対変位吸収式駆動結合構造11で、図6に示すごとく入力軸3および出力軸6間の駆動結合を行うに際しては、
図5(a),(b)に示すごとく内筒12の軸線方向突条12aに挿通したボルト17、および外筒13の外周フランジ13cに挿通したボルト18を用いる。
つまり、ハブベアリング8に近い内筒12の端面に出力軸6を突き当てた状態で、ボルト17により出力軸6の端部を内筒12に取着し、
外筒13のフランジ13cに出力ギヤ35の内周部を突き当てた状態で、ボルト18により出力ギヤ35を外筒13に取着する。
【0058】
<第3実施例の作用・効果>
電動モータ2(ロータ2r)からの回転動力は、中空入力軸3を経て減速歯車組31のドライブピニオン32に伝達される。
その後ドライブピニオン32の回転は、ドライブピニオン32と中間ギヤ33とから成るドライブギヤ組、および、中間ギヤ34と出力ギヤ35とから成るドリブンギヤ組を順次経て、相対変位吸収式駆動結合構造11の外筒13(図5参照)に達する。
【0059】
外筒13への回転は、弾性材14および内筒12(いずれも図5参照)を順次経て出力軸6に至り、ハブベアリング8(車輪)の回転駆動によって電気自動車の走行を可能にする。
上記の伝動作用により減速歯車組31は、電動モータ2から入力軸3への回転を、ドライブピニオン32の歯数および出力ギヤ35の歯数により決まる比で減速してハブベアリング8(車輪)に伝達することができる。
【0060】
この間、ハブベアリング8のガタや寸法公差、更に撓みに起因して、車輪への横力などにより出力軸6が入力軸3に対し相対的に揺動し、これら軸3,6が結合端部7において相対変位しても、これを相対変位吸収式駆動結合構造11(図5に示した弾性材14)の弾性変形により吸収しつつ上記の動力伝達を継続することができ、軸3,6間に「こじり」などの不具合が発生するのを回避することができる。
【0061】
そして本実施例においても第1実施例と同様に、相対変位吸収式駆動結合構造11が、電動モータ2を挟んでハブベアリング8と反対の側に配置されているため、
入出力軸3,6の結合部7が、ハブベアリング8から遠い軸線方向位置に存在することとなり、ハブベアリング8のガタや寸法公差や撓みに起因した車輪回転面の変位による出力軸6の揺動角が、図2にαで示すと同程度の小さなものとなり、入出力軸3,6間における駆動結合部7の入出力軸相対変位量が小さく、相対変位吸収式駆動結合構造11、ひいてはインホイールモータ駆動ユニットを小型化することができる。
【0062】
加えて本実施例においては、入力軸3および出力軸6の隣接端同士の駆動結合を平行軸式の減速歯車組31を介して行うといえども、この減速歯車組31を、少なくとも一部が相対変位吸収式駆動結合構造11と径方向に重なり合う軸線方向位置に配置するため、インホイールモータ駆動ユニットの大幅な軸線方向長大化を生ずることなく減速歯車組31の設置が可能である。
【0063】
<第4実施例の構成>
図7は、本発明の第4実施例になるインホイールモータ駆動ユニットを示し、このインホイールモータ駆動ユニットに用いる相対変位吸収式駆動結合構造11は、図3(a),(b)につき前述したと同様なものとする。
【0064】
本実施例においても第1実施例と同様に図7のごとく、電動モータ2を挟んで、ハブベアリング8と反対の側における軸線方向位置に相対変位吸収式駆動結合構造11を配置し、ロータ2rに結合した入力軸3を中空とし、出力軸6は入力軸3の中空孔内に遊嵌する。
【0065】
そして、入力軸3および出力軸6の隣接端同士の駆動結合は、図4に示す第2実施例と同様に、遊星歯車式の減速歯車組21を介してこれを行う。
しかして図4に示す第2実施例と異なり、減速歯車組21はいささかも相対変位吸収式駆動結合構造11と径方向に重なり合うことのないよう、相対変位吸収式駆動結合構造11および電動モータ2間の軸線方向位置に配置する。
【0066】
そして減速歯車組21は、図4に示す第2実施例と同様、サンギヤ22と、固定のリングギヤ23と、段付きプラネタリピニオン24と、キャリア25とにより構成するが、
ハブベアリング8から遠いキャリア25の端部を相対変位吸収式駆動結合構造11に駆動結合するに際しては、相対変位吸収式駆動結合構造11および減速歯車組21の上記した軸線方向相対位置に起因し、ハブベアリング8に近い相対変位吸収式駆動結合構造11の端面において、その外筒13(図3参照)に対しキャリア25の上記端部を駆動結合する。
【0067】
つまり、キャリア25の上記端部に、相対変位吸収式駆動結合構造11へ向けて伸びる延長軸26を同心配置して固着し、この延長軸26は出力軸6を遊嵌可能な中空に構成する。
そして、相対変位吸収式駆動結合構造11に近い中空延長軸26の先端を、ハブベアリング8に近い外筒13(図3参照)の端面に突き当て、軸線方向突条13aに挿通したボルト16で中空延長軸26の上記先端を外筒13に取着する。
なお出力軸6は、相対変位吸収式駆動結合構造11に近い端部を、ハブベアリング8に近い内筒12の端面に突き当て、軸線方向突条12aに挿通したボルト15で出力軸6の当該端部を内筒12に取着する。
【0068】
<第4実施例の作用・効果>
電動モータ2(ロータ2r)から入力軸3への回転動力は、遊星歯車式の減速歯車組21により減速されて、キャリア25から中空延長軸26に達する。
この中空延長軸26への減速回転は、相対変位吸収式駆動結合構造11の外筒13に向かい、その後、弾性材14および内筒12を順次経て出力軸6に至り、ハブベアリング8(車輪)の回転駆動によって電気自動車の走行を可能にする。
【0069】
この間、ハブベアリング8のガタや寸法公差、更に撓みに起因して、車輪への横力などにより出力軸6が入力軸3に対し相対的に揺動し、これら軸3,6が結合端部7において相対変位しても、これを相対変位吸収式駆動結合構造11(弾性材14)の弾性変形により吸収しつつ上記の動力伝達を継続することができ、軸3,6間に「こじり」などの不具合が発生するのを回避することができる。
【0070】
そして本実施例においては、相対変位吸収式駆動結合構造11が、電動モータ2を挟んでハブベアリング8と反対の側に配置されているのに加え、減速歯車組21よりも更にハブベアリング8から遠い軸線方向位置に配置されているため、
入出力軸3,6の結合部7が、図4の場合よりも一層ハブベアリング8から遠い軸線方向位置に存在することとなり、ハブベアリング8のガタや寸法公差や撓みに起因した車輪回転面の変位による出力軸6の揺動角が、図4の場合よりも更に小さなものとなる。
【0071】
これにより、入出力軸3,6間における駆動結合部7の入出力軸相対変位量が図4の場合よりも更に小さく、相対変位吸収式駆動結合構造11、ひいてはインホイールモータ駆動ユニットの更なる小型化を実現することができる。
【0072】
なお、相対変位吸収式駆動結合構造11を減速歯車組21よりも更にハブベアリング8から遠い軸線方向位置に配置するため、インホイールモータ駆動ユニットの軸長が長くなるが、
軸長増大部分が相対変位吸収式駆動結合構造11のみであって小径なため、車載性の悪化は限定的である。
【0073】
<第5実施例の構成>
図8は、本発明の第5実施例になるインホイールモータ駆動ユニットを示し、このインホイールモータ駆動ユニットに用いる相対変位吸収式駆動結合構造11は、図3(a),(b)につき前述したと同様なものとする。
【0074】
本実施例においても第1実施例と同様に図8のごとく、電動モータ2を挟んで、ハブベアリング8と反対の側における軸線方向位置に相対変位吸収式駆動結合構造11を配置し、ロータ2rに結合した入力軸3を中空とし、出力軸6は入力軸3の中空孔内に遊嵌する。
【0075】
そして、入力軸3および出力軸6の隣接端同士の駆動結合は、図6に示す第3実施例と同様に、平行軸式の減速歯車組31を介してこれを行う。
しかして図6に示す第4実施例と異なり、減速歯車組31はいささかも相対変位吸収式駆動結合構造11と径方向に重なり合うことのないよう、相対変位吸収式駆動結合構造11および電動モータ2間の軸線方向位置に配置する。
【0076】
そして減速歯車組31は、図6に示す第3実施例と同様、ドライブピニオン32および大径中間ギヤ33から成るドライブギヤ組と、小径中間ギヤ34および出力ギヤ35から成るドリブンギヤ組とにより構成するが、
出力ギヤ35の内周を相対変位吸収式駆動結合構造11に駆動結合するに際しては、相対変位吸収式駆動結合構造11および減速歯車組31の上記した軸線方向相対位置に起因し、ハブベアリング8に近い相対変位吸収式駆動結合構造11の端面において、その外筒13(図3参照)に対し出力ギヤ35の内周を駆動結合する。
【0077】
つまり、出力ギヤ35の内周に、相対変位吸収式駆動結合構造11へ向けて伸びる延長軸38を同心配置して固着し、この延長軸38は出力軸6を遊嵌可能な中空に構成する。
そして、相対変位吸収式駆動結合構造11に近い中空延長軸38の先端を、ハブベアリング8に近い外筒13(図3参照)の端面に突き当て、軸線方向突条13aに挿通したボルト16で中空延長軸38の上記先端を外筒13に取着する。
なお出力軸6は、相対変位吸収式駆動結合構造11に近い端部を、ハブベアリング8に近い内筒12の端面に突き当て、軸線方向突条12aに挿通したボルト15で出力軸6の当該端部を内筒12に取着する。
【0078】
<第5実施例の作用・効果>
電動モータ2(ロータ2r)からの回転動力は、平行軸式の減速歯車組31により減速されて、出力ギヤ35から中空延長軸38に達する。
この中空延長軸38への減速回転は、相対変位吸収式駆動結合構造11の外筒13に向かい、その後、弾性材14および内筒12を順次経て出力軸6に至り、ハブベアリング8(車輪)の回転駆動によって電気自動車の走行を可能にする。
【0079】
この間、ハブベアリング8のガタや寸法公差、更に撓みに起因して、車輪への横力などにより出力軸6が入力軸3に対し相対的に揺動し、これら軸3,6が結合端部7において相対変位しても、これを相対変位吸収式駆動結合構造11(図3に示した弾性材14)の弾性変形により吸収しつつ上記の動力伝達を継続することができ、軸3,6間に「こじり」などの不具合が発生するのを回避することができる。
【0080】
そして本実施例においては、相対変位吸収式駆動結合構造11が、電動モータ2を挟んでハブベアリング8と反対の側に配置されているのに加え、減速歯車組31よりも更にハブベアリング8から遠い軸線方向位置に配置されているため、
入出力軸3,6の結合部7が、図6の場合よりも一層ハブベアリング8から遠い軸線方向位置に存在することとなり、ハブベアリング8のガタや寸法公差や撓みに起因した車輪回転面の変位による出力軸6の揺動角が、図6の場合よりも更に小さなものとなる。
これにより、入出力軸3,6間における駆動結合部7の入出力軸相対変位量が図6の場合よりも更に小さく、相対変位吸収式駆動結合構造11、ひいてはインホイールモータ駆動ユニットの更なる小型化を実現することができる。
【0081】
なお、相対変位吸収式駆動結合構造11を減速歯車組31よりも更にハブベアリング8から遠い軸線方向位置に配置するため、インホイールモータ駆動ユニットの軸長が長くなるが、
軸長増大部分が相対変位吸収式駆動結合構造11のみであって小径なため、車載性の悪化は限定的である。
【0082】
<第6実施例の構成>
図9(a),(b)は、本発明の第6実施例になるインホイールモータ駆動ユニットを示す。
本実施例は基本的に図4の第2実施例と同様に構成するが、出力軸6とハブベアリング8との結合を前記した各実施例におけるように剛結合とせず、相対変位吸収式駆動結合構造11とは別に設けた相対変位吸収式駆動結合構造41により、結合部42の周りで出力軸6およびハブベアリング8の相対変位を吸収し得るよう、これら出力軸6およびハブベアリング8間を駆動結合する。
【0083】
<第6実施例の作用・効果>
電動モータ2(ロータ2r)から入力軸3への回転動力は、遊星歯車式の減速歯車組21により減速されて、キャリア25から相対変位吸収式駆動結合構造11の外筒13(図5参照)に向かい、その後、弾性材14および内筒12を順次経て出力軸6に至り、ハブベアリング8(車輪)の回転駆動によって電気自動車の走行を可能にする。
【0084】
この間、ハブベアリング8のガタや寸法公差、更に撓みに起因して、車輪への横力などにより出力軸6が入力軸3に対し相対的に、例えば図9(b)のように揺動し、これら軸3,6が結合端部7において相対変位しても、これを相対変位吸収式駆動結合構造11(弾性材14)の弾性変形により吸収しつつ上記の動力伝達を継続することができ、軸3,6間に「こじり」などの不具合が発生するのを回避することができる。
【0085】
そして、相対変位吸収式駆動結合構造11が、電動モータ2を挟んでハブベアリング8と反対の側に配置されているため、
入出力軸3,6の結合部7が、ハブベアリング8から遠い軸線方向位置に存在することとなり、ハブベアリング8のガタや寸法公差や撓みに起因した車輪回転面の変位による出力軸6の揺動角が図9(b)のように小さなものとなる。
これにより、入出力軸3,6間における駆動結合部7の入出力軸相対変位量が小さく、相対変位吸収式駆動結合構造11、ひいてはインホイールモータ駆動ユニットの小型化を実現することができる。
【0086】
加えて本実施例では、別の相対変位吸収式駆動結合構造41により、結合部42の周りで出力軸6およびハブベアリング8の相対変位を吸収し得るよう、これら出力軸6およびハブベアリング8間を駆動結合するため、
相対変位吸収式駆動結合構造11,41の共働により、出力軸6の両端が共に関節を持って相手方メンバに駆動結合されることとなり、ハブベアリング8のガタや変位の発生形態によらず、これを確実に吸収することができ、前記した効果を更に顕著なものにすることができる。
【0087】
また出力軸6を曲げるような形態の変位が発生した場合においても、相対変位吸収式駆動結合構造41がハブベアリング8を図9(b)に示すように、或るタイヤ接地中心点O1の周りで例えば矢Bの方向へ揺動させ得て、路面から出力軸6への荷重入力を緩和、若しくは0にすることができ、これに抗し得るよう造る必要のある出力軸6や、その軸承構造の小型化を図ることが可能になる。
【0088】
なお当該効果は、車輪転舵時におけるハブベアリング8と、出力軸6との相対変位も吸収可能であり、当該転舵時にハブベアリング8および出力軸6間に「こじり」が発生しないようにするのにも有効である。
【0089】
ちなみに、タイヤ接地中心点O1と、ハブベアリング8および出力軸6間の関節中心42との距離が短いほど、路面からの上下入力によるハブベアリング8へのモーメント力および変位を低減することができ、車両の挙動安定にとって有利である。
【符号の説明】
【0090】
1 ハウジング
2 電動モータ
3 入力軸
4,5 軸受
6 出力軸
7 入出力軸結合部
8 ハブベアリング
9 複列アンギュラベアリング
11 相対変位吸収式駆動結合構造
12 内筒
12a 軸線方向突条
13 外筒
13a 軸線方向突条
13c 外周フランジ
14 弾性材(相対変位吸収体)
15,16 ボルト
21 遊星歯車式減速歯車組
22 サンギヤ
23 リングギヤ
24 段付きプラネタリピニオン
25 キャリア
26 延長軸
31 平行軸式減速歯車組
32 ドライブピニオン
33 大径中間ギヤ
34 小径中間ギヤ
35 出力ギヤ
36 アイドラシャフト
37 軸受
38 延長軸
41 別の相対変位吸収式駆動結合構造
42 ハブベアリング結合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータによって駆動される入力軸と、車輪に結合された出力軸と、該出力軸を回転自在に支持するハブベアリングとを具備し、前記入力軸および出力軸間を駆動結合すると共に、該駆動結合部の入出力軸相対変位を吸収可能な態様で前記入力軸および出力軸間の駆動結合を行う相対変位吸収式駆動結合構造を設けたインホイールモータ駆動ユニットにおいて、
前記電動モータを挟んで、前記ハブベアリングと反対の側における軸線方向位置に前記相対変位吸収式駆動結合構造を配置したことを特徴とするインホイールモータ駆動ユニット。
【請求項2】
前記電動モータが変速歯車機構を介して前記入力軸を駆動するものである、請求項1に記載のインホイールモータ駆動ユニットにおいて、
前記変速歯車機構を、少なくとも一部が前記相対変位吸収式駆動結合構造と径方向に重なり合うよう配置したことを特徴とするインホイールモータ駆動ユニット。
【請求項3】
請求項2に記載のインホイールモータ駆動ユニットにおいて、
前記相対変位吸収式駆動結合構造を内周部および外周部と、これら内外周部間に、前記駆動結合部の入出力軸相対変位を吸収するよう介在させた相対変位吸収体とで構成し、 前記外周部の外周面に前記変速歯車機構の出力回転要素を結合し、前記内周部の端面に前記出力軸を結合したことを特徴とするインホイールモータ駆動ユニット。
【請求項4】
前記電動モータが変速歯車機構を介して前記入力軸を駆動するものである、請求項1に記載のインホイールモータ駆動ユニットにおいて、
前記変速歯車機構を、前記相対変位吸収式駆動結合構造と径方向に重なり合うことのないよう、該相対変位吸収式駆動結合構造と前記電動モータとの間における軸線方向位置に配置したことを特徴とするインホイールモータ駆動ユニット。
【請求項5】
請求項4に記載のインホイールモータ駆動ユニットにおいて、
前記相対変位吸収式駆動結合構造を内周部および外周部と、これら内外周部間に、前記駆動結合部の入出力軸相対変位を吸収するよう介在させた相対変位吸収体とで構成し、
前記外周部の端面に前記変速歯車機構の出力回転要素を結合し、前記内周部の端面に前記出力軸を結合したことを特徴とするインホイールモータ駆動ユニット。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のインホイールモータ駆動ユニットにおいて、
前記ハブベアリングおよび出力軸間を駆動結合すると共に、該駆動結合部におけるハブベアリングおよび出力軸の相対変位を吸収可能な態様で前記ハブベアリングおよび出力軸間の駆動結合を行う別の相対変位吸収式駆動結合構造を設けたことを特徴とするインホイールモータ駆動ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−71612(P2013−71612A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212536(P2011−212536)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】