説明

ウィルス力価低下含有体

【課題】インフルエンザウィルス力価低下含有体の提供。
【解決手段】結晶粒子の平均サイズが相対的に大きくOH基を有している槍型形状の結晶粒子を含む酸化チタンゾルと、結晶粒子の平均サイズが相対的に小さくOH基を有している球型形状の結晶粒子と、前記各OH基を通じて相互に結合してなる酸化チタンゾルを含み、前記槍型形状の結晶が窒素を含んでいて、可視光線を受けることによって触媒作用が得られるウィルス力価低下含有体を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウィルス力価低下含有体に関し、特に、七面鳥ヘルペスウイルス、マレック病ウィルス、伝染性ファブリキウス嚢病ウィルス、ニューカッスル病ウィルス、伝染性気管支炎ウィルス、感染性喉頭気管炎、鳥脳脊髄炎ウィルス、ひな貧血ウィルス、鶏痘ウィルス、鳥インフルエンザウィルス、鳥類レオウイルス、鳥類白血病ウィルス、細網組織症ウィルス、鳥類アデノウイルス及び出血性腸炎ウィルス、豚インフルエンザ及びその組換え体などに対して好適なウィルス力価低下含有体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、鶏インフルエンザウィルスが社会問題となっていて、何らかの対策が必要である旨が記載されている。また、ニワトリ、七面鳥、ガチョウ、雌アヒル、キジ、ウズラ、ハト及びダチョウなどの鳥インフルエンザウィルスに対しては、ワクチンが有効であるという見解がある。
【0003】
【非特許文献1】特開2004−254696号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ワクチンは、一般的に開発費用が嵩むため、相対的に高価なものとなり実用性の点で問題がある。しかも、鳥インフルエンザウィルスが猛威を振るうような事態が生じれば、ワクチンの不足が予想される。また、たとえワクチンが安価に入手できたとしても、鳥インフルエンザの発生を十分に予防することは困難である。
【0005】
さらに、ワクチンでは発症予防ができても、完全な感染予防は難しいとされており、国際的な鳥インフルエンザ対策としては、摘発淘汰による清浄化が理想とされる。ワクチンの利用は、感染鳥とワクチン投与鳥とのを識別困難にするため、摘発淘汰戦略が取れなくなり、“ワクチンによる感受性の低下”に代わる“感染の機会の低下(曝露ウイルス量の低下)”の方法が求められている。
【0006】
ここで、酸化チタンなどの光触媒活性物質は、抗菌作用があることが知られている。しかし、公知の酸化チタンでは、インフルエンザウィルスの力価を1000倍程度しか低下させることができない。これは、仮にウィルス数が100万程度あった場合に、これらに対して酸化チタン溶液等を塗布することによって、ウィルス数が1000程度まで減少することを意味している。
【0007】
ところが、インフルエンザウィルスの感染を防止するためには、インフルエンザウィルスの力価を、少なくとも100個以下程度に減少させなければならないことが知られている。ワクチン防御試験においては、野外での高濃度感染を想定して、100万個のウイルスが攻撃に用いられているが、それを踏まえると感染阻止には10000倍程度の力価の低下が要求される。このため、公知の酸化チタンでは、ウィルスの感染を十分に抑止するまでには至っていない。
【0008】
そこで、本発明は、安価に十分なウィルス力価低下させることを課題とする。具体的には、ウィルスの力価を10000倍程度低下させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のウィルス力価低下含有体は、結晶粒子の平均サイズが相対的に大きくOH基を有している槍型形状の結晶粒子を含む酸化チタンゾルと、結晶粒子の平均サイズが相対的に小さくOH基を有している球型形状の結晶粒子と、前記各OH基を通じて相互に結合してなる酸化チタンゾルを含み、前記槍型形状の結晶が窒素を含んでいて、可視光線を受けることによって触媒作用が得られる。
【0010】
塗布乾燥後の光触媒の気孔率が50%以下であるとよい。光媒体の単位容積あたりの結晶数が増加して、再結合速度を遅くする等に貢献するためである。
【0011】
また、本発明の物品は、上記の光触媒含有体に含まれる光触媒が塗布されている。特に、光触媒含有体が水系であるので、人畜無害である。したがって、上記物品として、抗菌等の作用が発揮されるような厨房、動物などを飼っておく小屋及びそれに付帯して使用される大鋸屑、籾殻などなどに好適に用いることができる。
【発明の実施の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態のウィルス力価低下含有体の製造工程の概要説明図である。
【0013】
まず、酸化チタン原液を製造する(ステップS1)。
【0014】
水酸化チタン或いは酸化チタン等の超微粒子の分散液、又は水酸化チタンゲルを用意する(ステップS11)。つづいて、上記分散液等に対して、水酸化ナトリウム等の沈殿物生成剤を加える(ステップS12)。これにより、上記分散液等に水酸化チタンの沈殿物が生成させる。
【0015】
具体的には、四塩化チタンの約50〜70重量%水溶液10mlを、蒸留水で1000mlに希釈したもの上記分散液として用意した。また、上記分散液に対して、2.0〜2.5重量%アンモニア水を10ml程度滴下して、水酸化チタンの沈殿物を生成した。
【0016】
つぎに、上記分散液の中から沈殿物を遠心分離や濾別等によって抽出して、その後、
水酸化チタンゲル自体を、不純物除去のために、純水、イオン交換水、蒸留水などで水洗する(ステップS13)。水酸化チタンゲルに純水、イオン交換水、又は蒸留水を加えて100〜500mlとした水酸化チタン懸濁液を製造する(ステップS14)。
【0017】
つぎに、水酸化チタン懸濁液に30重量%過酸化水素水を10〜20ml加えて攪拌してから(ステップS15)、例えば2〜15時間、65〜400℃の温度で加熱する(ステップS16)。こうして、5nm〜30nmのアナターゼ結晶の酸化チタンを含む酸化チタン原液を得る(ステップS17)。
【0018】
この酸化チタン原液は、酸化チタンの平均サイズが約10nmであった。酸化チタンの表面には、ペルオキソ基が修飾されることになる。このため、酸化チタン原液中では、ペルオキソ基の分極によって粒子間の電気的斥力が働き、酸化チタンが相互に反発しあうので凝集することない。なお、酸化チタン原液中におけるアンモニウムイオンなども上記分散に寄与している。このため、酸化チタン原液は、酸化チタンが均一に分散した液体となる。また、こうして製造した酸化チタンは、一つ以上のOH基を有することになる。
【0019】
表1は、図1のステップS1において製造された酸化チタン原液を、透過型電子顕微鏡を介して撮影した図面代用写真である。表1に示すように、酸化チタン原液に含まれる酸化チタンの結晶粒子は、平面的な鑓型をしている(以下、「鑓型酸化チタン」と称する。)。鑓型となるのは、ステップS14の加熱によって、酸化チタンの結晶が、アモルファスからアナタース型結晶となったことを意味する。
【表1】

【0020】
もっとも、酸化チタン原液に含まれる鑓型酸化チタンの形状は制御可能であり、鑓型以外にも、例えば、ステップS14,S15間に、酸化チタン原液に対してホウ素などを添加することによって、略四角形、略五角形、略八角形などの平面的な種々の幾何学形状とすることも可能である。
【0021】
つぎに、酸化チタン原体を製造する(ステップS2)。
【0022】
まず、酸化鉄及び酸化チタンが主成分であるイルメナイト鉱石と硫酸とを反応させることによって硫酸塩を製造する(ステップS21)。つぎに、硫酸塩から不純物を除去する(ステップS22)。その後、その硫酸塩を加水分解して(ステップS23)、不溶性の白色含水酸化チタンを沈澱させる。この際、一つ以上のOH基が形成される。
【0023】
その後、これを中和洗浄し、乾燥又は焼成して、平均サイズが6nm程度の略球型となるまで微粒子化することによって、酸化チタン原体を得る(ステップS24)。このように製造した酸化チタンは、1個以上のOH基を有することになる。
【0024】
なお、上記製造方法は、いわゆる硫酸法と称されている手法であるが、これに限定されず、塩素法、フッ酸法塩化チタンカリ法、四塩化チタン水溶液法、アルコキシド加水分解法など他の製造方法を用いてもよい。
【0025】
ここで、鳥インフルエンザは、主として、屋内養鶏所などのように、太陽光が照射されにくい場所で発生しやすい。そこで、可視光照射によって光触媒作用が得られるように、可視光域の吸収が可能なバンドギャップとすべく、酸化チタンに対する各種ドーパントの導入、酸化チタンの高温還元、酸化チタンに対するX線などの高エネルギー照射などを行う。
【0026】
表2は、図1のステップS2において製造された酸化チタン原体を、透過型電子顕微鏡を介して撮影した図面代用写真である。表2に示すように、酸化チタン原体に含まれる酸化チタンの結晶粒子は、球型をしている(以下、「球型酸化チタン」と称する。)。
【表2】

【0027】
もっとも、球型酸化チタンの結晶粒子の形状は、制御可能であり、球型以外にも、例えば、断面が略楕円型、円柱型、角柱型、これらの折れ線型などの立体的な種々の形状とすることが可能である。本実施形態では、酸化チタン原体の酸化チタンの結晶粒子が、立体的形状であればよい。
【0028】
ここで、本実施形態では、鑓型酸化チタンの結晶粒子の平均サイズを、球型酸化チタンの結晶粒子の平均サイズ以上としている。こうすると、鑓型酸化チタンの隙間に、球型酸化チタンが入りこむことになり、しかも、後述するように両酸化チタンは相互に混合される。したがって、容積あたりのチタン物質の密度は高くなる。このため、ウィルス力価低下含有体を被塗布体に対して塗布した場合、酸化チタンの気孔率の低下を実現する。
【0029】
つぎに、ウィルス力価低下含有体を製造する(ステップS3)。
【0030】
まず、ステップS1で製造した酸化チタン原液に対して、ステップS2で製造した酸化チタン原体を混ぜて(ステップS31)、必要に応じて、この酸化チタン原液を攪拌して、鑓型酸化チタンと球型酸化チタンとを結合させる(ステップS32)。この際、酸化チタン原液を加熱等する処理は不要であるであるし、攪拌スピード、攪拌時間などの攪拌条件は特段限定されるものではない。
【0031】
ここで、既述のように、酸化チタン原液内の酸化チタンは、ペルオキソ基で修飾されているので、酸化チタン原液中で分散しているので、この状態を維持しながら酸化チタン原液に対して酸化チタン原体を添加するとよい。
【0032】
このためには、ペルオキソ基の減少を回避する、又は、酸化チタン原液中における上記分散に寄与するアンモニウイオン濃度などの不純物の減少を回避するとよい。具体的には、ペルオキソチタン酸の濃度が例えば5w%以下とならないようにする、又は、アンモニウムイオンなど不純物が例えば100ppm以下とならないようする。
【0033】
また、既述のように、酸化チタン原液内の酸化チタンと酸化チタン原体の酸化チタンとの双方ともに、1個以上のOH基を有している。このため、両酸化チタンは、互いのOH基部分で水素結合がなされる。つまり、OH基が置換基となる。
【0034】
ところで、一般的な球型酸化チタンゾルは非水系で製造され、鑓型酸化チタンゾルは水系で製造されている。したがって、これらは、理論的には結合しない。そこで、本発明者は、これらを結合させるべく、例えばOH基を含む球型酸化チタンを選択した。この結果、上記のように、球型酸化チタンと鑓型酸化チタンとを、OH基を通じて相互に結合することが可能となる。
【0035】
表3は、図1のステップS3において製造されたウィルス力価低下含有体を、透過型電子顕微鏡を介して撮影した図面代用写真である。球型酸化チタンの大半は、酸化チタン原液中の鑓型酸化チタンと結合される。なお、所要の振動等を酸化チタン原液に加えても、球型酸化チタンと鑓型酸化チタンとの分離は、確認されなかった。
【表3】

【0036】
【0037】
図2は、本実施形態のウィルス力価低下含有体を塗布して乾燥させたシャーレに鳥インフルエンザウィルス液を滴下して蛍光灯から光を照射したときの実験結果を示す図である。図2の横軸に光の照射時間を示し、縦軸にウィルス力価を示している。ここでは、比較のため、本実施形態のウィルス力価低下含有体を塗布していないシャーレに対しても鳥インフルエンザウィルス液を滴下して、同時に蛍光灯から光を照射した。
【0038】
なお、図2に付記しているように、光の照射時間は約48時間とした。また、ウィルス力価は50%組織培養感染量法(Tissue Culture Infectious Dose:TCID50/ml)を用いて測定した。ウィルス力価の検出限界は1×101.5である。
【0039】
また、本実験では、各シャーレと蛍光灯との距離は約10cmとし、蛍光灯は20Wの消費電力のものを用いた。
【0040】
図2には、比較実験も含めて合計4つの実験結果(2回の実験結果)を示している。
【0041】
1.第1回目の実験結果
(1)本実施形態のウィルス力価低下含有体を塗布したシャーレの実験結果
第1回目の実験結果では、本実施形態のウィルス力価低下含有体を塗布したシャーレ側(図2において□で示す)では、光の照射時間が0時間のときに約7.25(Log10TCID50/ml)のウィルス力価が、光の照射時間が8時間のときに約7.25(Log10TCID50/ml)、光の照射時間が24時間のときに約4.5(Log10TCID50/ml)、光の照射時間が48時間のときに約3.5(Log10TCID50/ml)となった。
【0042】
換言すると、実施形態のウィルス力価低下含有体を塗布したシャーレ側では、光の照射時間が24時間のときに約1×102.75のウィルス力価の低下がみられ、光の照射時間が48時間のときに約1×103.75のウィルス力価の低下がみられた。
【0043】
(2)本実施形態のウィルス力価低下含有体を塗布していないシャーレの比較実験結果
これに対して、本実施形態のウィルス力価低下含有体を塗布していないシャーレ側(図2において△で示す)では、光の照射時間が0時間のときに約7.25(Log10TCID50/ml)のウィルス力価が、光の照射時間が8時間のときに約7.25(Log10TCID50/ml)、光の照射時間が24時間のときに約6.25(Log10TCID50/ml)、光の照射時間が48時間のときに約4.5(Log10TCID50/ml)となった。
【0044】
換言すると、本実施形態のウィルス力価低下含有体を塗布していないシャーレ側では、光の照射時間が24時間のときに約1×101.00のウィルス力価の低下しかみられず、光の照射時間が48時間のときに約1×102.75のウィルス力価の低下しかみられなかった。
【0045】
2.第2回目の実験結果
(1)本実施形態のウィルス力価低下含有体を塗布したシャーレの実験結果
第2回目の実験結果では、本実施形態のウィルス力価低下含有体を塗布したシャーレ側(図2において○で示す)では、光の照射時間が0時間のときに約7.75(Log10TCID50/ml)のウィルス力価が、光の照射時間が8時間のときに約7.75(Log10TCID50/ml)、光の照射時間が24時間のときに約4.75(Log10TCID50/ml)、光の照射時間が48時間のときに約3.5(Log10TCID50/ml)となった。
【0046】
換言すると、実施形態のウィルス力価低下含有体を塗布したシャーレ側では、光の照射時間が24時間のときに約1×103.00のウィルス力価の低下がみられ、光の照射時間が48時間のときに約1×104.25のウィルス力価の低下がみられた。
【0047】
(2)本実施形態のウィルス力価低下含有体を塗布していないシャーレの比較実験結果
これに対して、本実施形態のウィルス力価低下含有体を塗布していないシャーレ側(図2において◇で示す)では、光の照射時間が0時間のときに約7.75(Log10TCID50/ml)のウィルス力価が、光の照射時間が8時間のときに約7.75(Log10TCID50/ml)、光の照射時間が24時間のときに約6.25(Log10TCID50/ml)、光の照射時間が48時間のときに約4.75(Log10TCID50/ml)となった。
【0048】
換言すると、本実施形態のウィルス力価低下含有体を塗布していないシャーレ側では、光の照射時間が24時間のときに約1×101.50のウィルス力価の低下しかみられず、光の照射時間が48時間のときに約1×103.00のウィルス力価の低下しかみられなかった。
【0049】
3.考察
上記各実験結果から、以下のことが読み取れる。すなわち、
(1)本実施形態のウィルス力価低下含有体の塗布の有無に拘らず、光の照射時間が8時間程度の場合には、ウィルス力価が低下していない。
【0050】
(2)本実施形態のウィルス力価低下含有体の塗布したシャーレ側では、光の照射時間が8時間経過後には、急激にウィルス力価が低下している。
【0051】
(3)本実施形態のウィルス力価低下含有体の塗布していないシャーレ側では、光の照射時間が8時間経過後には、ウィルス力価が低下しているもの、急激な低下は見られない。
【0052】
(4)本実施形態のウィルス力価低下含有体の塗布したシャーレ側では、ウィルス感染が生じないと考えられる、約1×104.00のウィルス力価の低下が確認できた。
【0053】
(5)本実施形態のウィルス力価低下含有体の塗布していないシャーレ側では、約1×103.00のウィルス力価の低下しか確認できなかった。
【0054】
なお、抗菌作用を有するとされる銀イオンを本実施形態のウィルス力価低下含有体に添加しても、光の照射時間が8時間程度の場合には、ウィルス力価が低下しないことを確認した。その一方で、本実施形態のウィルス力価低下含有体に、酸性水を添加した場合には、光の照射時間が8時間程度の場合には、ウィルス力価の低下が確認された。
【0055】
表4に示すように、球型の光触媒側では20ピコセコンド経過時にほとんどの電子・正孔の再結合が完了している(b)。一方、本実施形態の光触媒側では20ピコセコンド経過時にも半分以上の電子・正孔の再結合が完了していない(a)。これは、本実施形態の光触媒側では、電子・正孔の再結合速度が遅いことを意味している。
【表4】

【0056】
表4に示す測定結果と以下の数式(1)とを用いて、電子濃度を算出した。
【0057】
電子濃度=時間ゼロでの電子濃度/1+時刻ゼロでの電子濃度×電子・正孔の再結合の二次速度定数×時間+ベースライン (1)
なお、球型の光触媒側の電子濃度は約10×1012cm/s、本実施形態の光触媒側の電子濃度は約1×1012cm/sであった。このように、約10倍程度の電子濃度の相違が確認された。
【0058】
(比較例)
1.酸化チタン原液のみを基板に塗布して乾燥させた後に、当該基板表面を電子顕微鏡を用いて観察したところ、表面に付着した酸化チタンには、平均的に約60%の気孔率が確認された。
【0059】
2.球型酸化チタンを蒸留水に混ぜてから、基板に塗布して乾燥させた後に、当該基板表面を電子顕微鏡を用いて観察したところ、表面に付着した酸化チタンには、平均的に約70%の気孔率が確認された。
【0060】
3.本実施形態のウィルス力価低下含有体を基板に塗布して乾燥させた後に、当該基板表面を電子顕微鏡を用いて観察したところ、表面に付着した酸化チタンには、平均的に約30%の気孔率が確認された。気孔率が50%を超える部分は確認されなかった。
【0061】
また、本実施形態のウィルス力価低下含有体を基板に塗布して乾燥させた光触媒膜での光触媒結晶の配向性が高いことが確認された。さらに、光触媒膜の強度が優れていることも確認できた。
【0062】
なお、本実施形態のウィルス力価低下含有体内における、2種類の形状の酸化チタンの混合割合を、約3:7,約5:5,約7:3など種々変更しても、気孔率に大差はなかった。
【0063】
ちなみに、ウィルス力価低下含有体における球状の酸化チタンの含有割合が高まるに連れて、鑓状の酸化チタンと球状の酸化チタンとが結合状態にある酸化チタンが重くなり、これがウィルス力価低下含有体中に沈殿することになった。結局のところ、鑓状の酸化チタンと球状の酸化チタンとの割合は、約3:7乃至約7:3が好ましく、約5:5が最良であることがわかった。
【0064】
なお、本実施形態では、主として、ウィルス力価低下含有体として酸化チタン含有液を例に説明したが、液状に限定されず、ゲル状、ゾル状のものであってもよい。また、光触媒活性物質は、酸化チタン(TiO)のみならず、Fe、CuO、In、WO、FeTiO、PbO、V、FeTiO、Bi、Nb、SrTiO、ZnO、BaTiO、CaTiO、KTaO、SnO、ZrO、Si、GaAs、CdSe、GaP、CdS、ZnSなどとしてもよい。
【0065】
また、本実施形態のウィルス力価低下含有体を塗布した、ゲージ、シート、大鋸屑などを含む畜舎用品も、抗菌効果に優れたものとなる。鳥インフルエンザウィルス等を含む種々のウィルスに対しても、絶大な効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の実施形態のウィルス力価低下含有体であるところの光触媒含有液の製造工程の概要説明図である。
【図2】本実施形態のウィルス力価低下含有体を塗布して乾燥させたシャーレに鳥インフルエンザウィルス液を滴下して蛍光灯から光を照射したときの実験結果を示す図である。
【符号の説明】
【0067】
S1 光触媒原液製造工程
S2 光触媒原体製造工程
S3 光触媒含有液製造工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶粒子の平均サイズが相対的に大きくOH基を有している槍型形状の結晶粒子を含む酸化チタンゾルと、結晶粒子の平均サイズが相対的に小さくOH基を有している球型形状の結晶粒子と、前記各OH基を通じて相互に結合してなる酸化チタンゾルを含み、前記槍型形状の結晶が窒素を含んでいて、可視光線を受けることによって触媒作用が得られるウィルス力価低下含有体。
【請求項2】
塗布乾燥後の酸化チタンの気孔率が50%以下である、請求項1記載のウィルス力価低下含有体。
【請求項3】
請求項1又は2記載のウィルス力価低下含有体が塗布された物品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2008−44869(P2008−44869A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−220460(P2006−220460)
【出願日】平成18年8月11日(2006.8.11)
【出願人】(503343543)株式会社鯤コーポレーション (8)
【Fターム(参考)】