説明

ウィルス感染を治療するためのアセチルサリチル酸塩を使用する方法

【課題】本発明は、特に耐性が高く、とりわけ喘息発作を引き起こすリスクを確実に防ぐことが可能な、ウィルス感染を治療するためのアセチルサリチル酸を含む製剤を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、人間又は動物、とりわけ哺乳類と鳥類におけるウィルス感染の予防又は治療に用いられる医薬組成物を生成するための、天然又は非天然の塩基性アミノ酸を含む物理学的有効量のO−アセチルサリチル酸の塩からなる組成物の使用方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬組成物を製造するための塩基性アミノ酸を含むO−アセチルサリチル酸の塩からなる組成物の新規な使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インフルエンザは、今もなお大流行の可能性を持つ人類の大疫病の1つである。誘導病原体となるA型インフルエンザウィルスに対する薬は少ししか存在しないが、ウィルスに対して即効性がある。問題は、耐性が比較的早く生じる点である。さらに、H5型のA型インフルエンザウィルスに感染することで誘発され、家禽で流行的に生じる鳥インフルエンザは、人間にも感染するというリスクを有する。よって、感染した家禽に接触する人は特に高いリスクにさらされる。また特筆すべきは、H5N1型ウィルスがオセルタミビルを含むいくつかの承認された薬に対して、次第に影響を受けなくなっているという報告があった。よって、ウィルス感染の予防及び治療のための、可能であれば耐性を誘発しない新規且つ有効な抗インフルエンザ薬が緊急に必要とされている。
【0003】
アセチルサリチル酸は宿主細胞において転写因子NF−kBを阻害し、NF−kBシグナル経路の抑制過程で必須ウィルス成分は細胞核内に留まり、もはやウィルス粒子に組み込まれることが不可能となることがWO2004/060360A1から知られている。ウィルス感染の予防又は治療のためにアセチルサリチル酸を気体投与することも上記文献から知られている。
【0004】
例えば、DE102 02 019A1から塩基性アミノ酸を含むアセチルサリチル酸塩が知られており、これによって得られる製剤は内服のみの使用に限定される。さらに、リウマチ性疾患、関節炎、神経痛、筋肉痛、偏頭痛、虚血性心疾患、脳卒中、狭心症、心筋症、バイパス手術、経皮経管冠動脈形成、ステント移植、HIV患者の免疫システムへの刺激、腫瘍の予防、認知症による認知力低下の遅延、胆石形成の抑制及び/又は糖尿病の治療のために上記塩を用いることが上記文献から知られている。従来周知となっている塩はすでにAspisol(登録商標)の名前で、喘息、花粉症、鼻粘膜の腫れ、慢性気道感染症を治療するための薬として使用されており、内服の他に注射により投与される。これら全ての疾患は、インフルエンザウィルスによるウィルス感染と直接的な相関関係があるわけではない。
【0005】
気道又は肺にエアロゾルとして吸入投与される、抗ウィルス剤としての純粋なアセチルサリチル酸の使用は、動物モデルにおいて概ね非常に有効であることが判明した。しかし、純粋なアセチルサリチル酸の吸入は、人間への使用では気道に強い刺激を生じることもある。さらに、単独で使用される場合、過敏な患者におけるアセチルサリチル酸の吸入は喘息発作を引き起こすことがある点が記載されている。従って、抗インフルエンザ薬としてアセチルサリチル酸を気体で使用することは、喘息患者又は喘息のリスクのある人にはどのような場合であっても禁忌とされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
よって本発明は、特に耐性が高く、とりわけ喘息発作を引き起こすリスクを確実に防ぐことが可能な、ウィルス感染を治療するためのアセチルサリチル酸を含む製剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、人間又は動物、とりわけ哺乳類と鳥類におけるウィルス感染の予防又は治療に用いられる医薬組成物を生成するための、天然又は非天然の塩基性アミノ酸を含む物理学的有効量のO−アセチルサリチル酸の塩からなる組成物の使用方法を本発明は提供する。本発明の目的の対象とされるウィルス感染は、とりわけ自然発生的な野生型ウィルスによる感染であり、遺伝子組み換えウィルスによる感染は対象とされない。
【0008】
鳥類の中で予防又は治療に関連するものは、とりわけ雌鶏、ガチョウ、アヒル、七面鳥、うずら又は鳩などの家禽であるが、鳴禽もまた関連する。
【0009】
投与される製剤は酸ではないため、このような塩を特に気体投与で用いることにより、例えば気道粘膜等における組織の刺激が回避される。これにより、特に喘息を患う患者又は喘息のリスクのある人において喘息発作が確実に防がれ、副作用のリスクを有さず、さらに製剤はすでに喘息の薬として使用されているため、治療薬としても予防薬としても幅広く適用される上で実質的に何の障害もない。さらに、ウィルス複製の抑制効果はアセチルサリチル酸の誘導体化によって実質的に影響を受けず、それどころか、驚くべきことに部分的にわずかに増加することが本発明で判明した。
【0010】
塩基性アミノ酸が“リジン、アルギニン、オルニチン、ジアミノ酪酸又はこれら酸の混合物”の中から選択されるのであれば、モノアセチルサリチル酸であることが好ましい。アミノ酸は、アルファ原子において水素又は随意のラジカルが側鎖として結合されたαアミノカルボン酸であってもよい。塩基性アミノ酸の側鎖は、1つ又はいくつかの塩基性基、詳細にはアミノ基から構成される。塩基性アミノ酸はD−リジン、L−リジン又はD−リジンとL−リジンの混合物であることが好ましい。
【0011】
さらに製剤は、具体的にはグリシン等の非塩基性側鎖を有する天然又は非天然のアミノ酸を含むO−アセチルサリチル酸の塩からなる。組成物におけるリジンとグリシンの重量比は100:1から1:1の範囲とされ、具体的には100:1から10:1の範囲内とされる。製剤はリジンとグリシンのアミノ酸の塩の混合物であることが好ましい。特に好ましいのは、Aspisol(登録商標)という商標名で流通している組成物の例えば水溶液状の塩又は混合塩である。
【0012】
本発明のために、生体に服用又は投与された後に本発明に応じて使用される活性物質に自然的に代謝されるプロドラッグを含む医薬組成物が使用されてもよい。
【0013】
本発明によると、使用される組成物は多数のウィルス感染の予防又は治療に用いることが可能である。とりわけ適するのは、インフルエンザウィルス等のマイナス鎖RNAウィルス、特にH5型又はH7型のウィルスを有するA型インフルエンザウィルスによる感染の予防又は治療のための組成物である。
【0014】
しかし、本発明に従って使用される物質が、NF−kB依存的に規制され、ウィルスによって誘発されるサイトカインの過剰発現(サイトカイン・ストーム)を抑制することも発見された。従って、本発明による物質によって、サイトカインの過剰発現ととりわけ相関的な病原ポテンシャルを持つ多くのウィルスの病原性を一般に低下することが可能となる。よって、本発明に応じて使用される組成物は、コロナウィルス(SARS),呼吸器合胞体ウィルス(RSV),マールブルグウィルスやエボラウィルス等のフィロウィルス、ラッサウィルス、アルゼンチン出血熱ウィルス、ボリビア出血熱ウィルス、ベネズエラ出血熱ウィルス等のアレナウィルス、ハンタウィルス、デング熱ウィルスや黄熱病ウィルス等のフラビウィルス、クリミア・コンゴ出血熱ウィルス、リフトバレー熱ウィルス、パラインフルエンザウィルス(1、2及び3型)、ライノウィルス、ヒトメタ肺炎ウィルス(hMPV)及びエプスタイン・バーウィルスによるウィルス感染の治療及び予防にも適する。
【0015】
本発明に応じて用いられる医薬組成物の生薬製剤は、この技術における通常の方法で生成することができ、原理的には、例えば経口、注射又は吸入用の気体等による随意の投与法が適用可能である。適する固体又は液体の生薬製剤の形態としては、例えば顆粒、粉末、糖衣錠、錠剤、(マイクロ)カプセル、坐薬、シロップ、ジュース、懸濁液、乳剤、点滴剤もしくは注射剤(i.v.、i.p.、i.m.又は s.c.)もしくは微細分散液(エアロゾル)、経皮システム、活性物質を持続的に放出する製剤等があり、その生成にはキャリア物質、爆発剤、結合剤、コーティング剤、膨張剤、滑り剤もしくは潤滑剤、調味料、甘味料及び溶液メディエーター等の通常の手段が用いられる。補助物質としては、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、ラクトース、マンニトール及びその他のサッカリド、滑石、乳タンパク質、ゼラチン、でんぷん、セルロース及びその誘導体、タラ肝油、ひまわり油、ピーナッツ油又はゴマ油等の動物性及び植物性油、ポリエチレン・グリコール、精製水や例えばグリセリン等の単一又は多原子価アルコール、及び上記溶剤の混合物が挙げられる。本発明による医薬組成物は、本発明において用いられる少なくとも1種類の塩を、医薬的に適切で生理的に良好な耐溶性を有するキャリアに規定量混合され、場合によってはその後に適切な活性、追加又は補助物質と混合され、望ましい投与形態に製剤して生成される。経口投与のための製剤の例は、例えばDE102 02 019 A1及びそれに引用された文献に記載されている。
【0016】
しかしながら、生薬製剤としては、気体による経鼻投与のための液体の水性組成物(溶液)又は、例えばCFC(クロロフルオロカーボン)等の室温で液化する噴射剤、1,1,1,2−テトラフルオロエタン又は1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン等のハイドロフルオロアルカン、プロパン、ブタン、イソブタン、又は医療用エアロゾル処方物の分野で通常用いられるその他の噴射剤等の懸濁液に適用可能であれば、粉末状のものが好ましい。上記の噴射剤に加えて、又はその代替として、空気、酸素窒素、二酸化炭素、亜酸化窒素もまた利用可能である。組成物は、例えば生理学的に耐溶性のある表面活性物質等の医療用エアロゾル処方物の通常の追加及び補助物質、及び/又は従来の分散剤から構成されてもよい。
【0017】
水溶液は0.01mMないし3.0M、好適には0.5ないし3.0M又は0.01ないし100mM、とりわけ0.1ないし10mMの塩又は混合塩の水溶液であることが好ましい。
【0018】
溶液であれ、固体状又は懸濁液状の塩であれ、エアロゾルの粒径は、MMAD値(空気動力学的中央粒子径)が10μmよりも、好ましくは5μmよりも小さいことが望ましい。空気動力学的粒度分布のFPD(微粒子量)又はFPF(微粒子の割合)の測定には、米国薬局方(USP)第601章又は欧州薬局方(Ph. Eur.)インハランダ承認基準(Inhalanda Monograph)に記載されている、例えば5段階多段階液体インピンジャー(MSLI)又は8段階アンダーセン・カスケード・インパクター(ACI)などのインパクターが適している。空気動力学的粒度分布に基づき、エアロゾル製剤のMMAD値は対数確立プロットを用いて計算することができる。好ましいMMAD値では、エアロゾル粒子は呼吸性で、通常の投与期間において肺全体に十分な濃度が得られるように肺の深い場所まで達する。小さな粒子が再度吸引されるのを防ぐために、MMAD値の最低限度は0.1μm、好ましくは0.5μm、最適には1μmと定められる。
【0019】
本発明で用いられる塩は、例えばピンディスク、ボール又は空気分離ミルを用いて望ましいMMAD値を得るために小片により細かくされるか、従来の方法で微粉化される。
【0020】
本発明におけるエアロゾルの投与は、医療分野では常用されている吸入器や噴霧器などのエアロゾル発生器が備わった全ての吸引装置を用いて行うことができる。例としては、粉末エアロゾル吸入器又はDPI(粉末吸入器)、ノズル、超音波、振動膜噴霧器が挙げられる。さらに、電気流体力学の原理や液剤から凝縮されたエアロゾルを用いたエアロゾル発生器が使用されてもよい。適した吸入装置の例は、EP1741460A、EP1700614A、EP1258264A及びEP1163921Aに記載されている。
【0021】
用いたエアロゾル発生器のスループット率に関連した組成物の塩分濃度は、少なくとも10mg、好ましくは少なくとも50mg、最適には少なくとも100mgの塩がエアロゾルに変換され、5分以内、好ましくは2分以内、最適には1分以内に患者に投与されるように選択される。
【0022】
さらに、最適な肺沈着を得るには吸気流又は吸気量を確認及び調整することが有効である。吸気流が速すぎると、エアロゾル粒子は咽頭後方にすぐにぶつかるか、声門で分散してしまう。また呼吸が速すぎると、エアロゾルは気管の上部までしか達さず、肺の深部までは届かない。そのため、用いられる吸引システムは患者による深く且つゆっくりとした吸引を保証するものでなければならない。子供への使用では、吸入量は少なくとも200ml、好ましくは少なくとも500mlでなければならない。大人への使用では、吸入量は少なくとも300ml、好ましくは少なくとも500mlとされる。適切には、上記のエアロゾル量の吸引は短くとも1秒、好ましくは短くとも3秒、最適には短くとも5秒の間に行われる。患者の吸気容量に応じて、吸気流は少なくとも1000ml/秒、特に少なくとも500ml/秒、とりわけ少なくとも300ml/秒になるように、また呼吸量は少なくとも20%、特に少なくとも30%、とりわけ少なくとも50%、最大で95%になるように好適に調整される。後者は、患者によるゆっくりとした深い吸引を保証する。
【0023】
本発明のために、センサーを用いて上記パラメーターを測定し、電気、音響及び/又は光による信号で吸入が正常に行われているか否かの情報を提供する吸入システムが使用されてもよい。上記のように作動する吸入装置に関しては、前記した文献を参照されたい。簡易的な吸入システムの場合、上記の測定結果が記された患者の情報シートが医薬組成物に加味されてもよい。
【0024】
このように、本発明は天然又は非天然の塩基アミノ酸、噴射剤、及び選択的に補助及び/又はキャリア物質を含むO−アセチルサリチル酸の塩からなるエアロゾル製剤にもまた関連する。塩は、完全な製剤に対して0.001〜50wt−%、0.001〜10wt−%、特に0.1〜10wt−%、又は10〜50wt−%、特に30〜50wt−%の量で含まれる。塩が粒子状であるならば、10μm以下、特に5μm以下のMMAD値で含有される。
【0025】
特に上記のような高濃度のものが用いられる場合、このような溶液から生成されるエアロゾルが上記のような小さな粒径で生成できるというのは驚くべきことである。
【0026】
さらに本発明は、人間及び動物におけるウィルス感染を予防又は治療するための本発明によるエアロゾル製剤の使用方法にも関し、ウィルスに感染するリスクがある又は既に感染した人間又は動物は、生理学的に有効な量のエアロゾル製剤が鼻又は口から吸入されるように気体投与される。
【0027】
最後に、本発明は供給タンクとそれに接続されたエアロゾル発生器を備えた吸入装置に関し、供給タンクには本発明によるエアロゾル製剤が備えられる。エアロゾル発生器の出力側には、通常マウスピースが接続される。さらに、制御装置による制御下で吸入流及び/又は吸入量を制御する手段となるエア・ポンプが備えられてもよい。吸入流及び呼吸量の制御及び/又は規制を行うための制御及び/又は規制手段が備えられてもよく、制御及び/又は規制手段は上述した数値に好適に調整される。
【0028】
本発明による医薬組成物の上記説明は、本発明によるエアロゾル製剤とその使用及び吸入装置にも同様に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施例1において、Aはアセチルサリチル酸又はアマンタジン又はオセルタミビルで処置された細胞のウィルス力価を非処置細胞の上清のウィルス力価と比較した図であり、Bはリジン・グリシン・アセチルサリチル酸又はオセルタミビルで処理された細胞のウィルス力価を非処置細胞の上清のウィルス力価と比較した図である。
【図2】実施例2において、ウィルス力価と時間の関係を示す図である。
【図3】実施例2において、Aは20時間の時間値でのウィルス力価を示した図であり、Bはウィルス力価の成長速度図を示した図である。
【図4】実施例3において、AはFPVのウィルス力価を示した図であり、BはMB1のウィルス力価を示した図である。
【図5】実施例4において、MAPKの活性型に対して作用するリン酸特異抗体によって検出することが可能なJNK、p38及びERKのウィルス誘発性活性化がウェスタンブロット法に基づいて示された図である
【図6】実施例4において、LG−アセチルサリチル酸の場合におけるカスパーゼ基質ポリADPリボースポリメラーゼ(PARP)の切断によるカスパーゼ活性がウェスタンブロット法に基づいて示された図である。
【図7】実施例4において、LG−アセチルサリチル酸によってウィルスタンパクM1、NP、NS1及びPB1の蓄積が阻害されていないことをウェスタンブロット法で示した図である。
【図8】実施例4における免疫蛍光分析の結果を示した図である。
【図9】実施例5におけるLG−アセチルサリチル酸が投与されたマウス肺におけるIP10及びIFNガンマの発現率を示した図である。
【図10】A、Bはそれぞれ実施例6における実験前日及び実験当日のマウスの体温測定の結果を示した図である。
【図11】C、Dはそれぞれ実施例6における実験1日目及び実験2日目のマウスの体温測定の結果を示した図である。
【図12】E、Fはそれぞれ実施例6における実験3日目及び実験4日目のマウスの体温測定の結果を示した図である。
【図13】実施例6におけるLG−アセチルサリチル酸群とPBS処置群の体重変化を示した図である。
【図14】実施例6において、AはLG−アセチルサリチル酸による処置/未処置の肝臓の重量を示した図であり、Bは同様の脾臓の重量を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は、実施例を参照として以下により詳細に説明される。
【実施例】
【0031】
実施例1:耐性現象の調査
細胞因子に対して抗ウィルス的に作用する抑制剤としてのアセチルサリチル酸の耐性が特に課題となる問題であるため、その耐性変異株の生成傾向がウィルスに直接作用するアマンタジンやオセルタミビルなどの薬剤と比較された。A549肺上皮細胞に高病原性鳥インフルエンザAウィルス分離株A/FPV/Bratislava/79(H7H7)(FPV、家禽ペストウィルス)をMOI(感染の多重度)=0.01で感染させ、アセチルサリチル酸(5mM)、アマンタジン(5μM)及びオセルタミビル(2μM)の存在下及び非存在下で24時間培養された。別のバッチでは、A549肺上皮細胞にA/FPV/Bratislava/79(H7H7)をMOI=0.001で感染させ、リジン・グリシン・アセチルサリチル酸(5mM)及びオセルタミビル(2μM)の存在下及び非存在下で24時間培養された。その後、両方のバッチからそれぞれのサンプルの細胞上清が採取され、MDCK細胞のプラ−ク・アッセイからウィルス力価が測定された。そして上清は正常化(normalize)され、二回処置された又は非処置の細胞を同数のウィルスでそれぞれ感染させるのに用いられ、同様の状況下で継代された。この工程が、5代〜8代継代まで繰り返された。
【0032】
図1Aでは、アセチルサリチル酸又はアマンタジン又はオセルタミビルで処置された細胞のウィルス力価が非処置細胞の上清のウィルス力価と比較されている。アマンタジンで処置された細胞のウィルス力価が、耐性変異株が形成されたことにより、3代継代で再び大幅に増加しているのが判る。驚くべきことに、このような現象はオセルタミビルにおける実験条件下でも同範囲で見受けられた。しかし、それとは明らかに対照的に、アセチルサリチル酸では5代継代においても1代継代と変わらない抗ウィルス活性が見られることが判った。図1Bでは、リジン・グリシン・アセチルサリチル酸又はオセルタミビルで処理された細胞のウィルス力価が非処置細胞の上清のウィルス力価と比較されている。図1Aに表わされた結果はリジン・グリシン・アセチルサリチル酸においても同様に得られ、リジン・グリシン・アセチルサリチル酸による処置後は8代継代後でさえもウィルスの耐性形成は見られなかった。ここで得られた結果は、アセチルサリチル酸だけでなくリジン・グリシン・アセチルサリチル酸が細胞培養において耐性変異株を形成する傾向が全くないことを実証するのに十分に足りるものである。
【0033】
実施例2:抗病原性A型インフルエンザウィルスに対する抗ウィルス活性のためのリジン・グリシン・アセチルサリチル酸形成の調査
調査の対象となる組成物はリジン・グリシン・アセチルサリチル酸(以下、LG−アセチルサリチル酸とも呼ぶ)であり、Bayer AGから入手可能な製品Aspisol(登録商標)の分子構成に相当する。
【0034】
この製剤はインフルエンザウィルスに対する抗ウィルス活性を調べるための実験の対象とされた。A549肺上皮細胞はA/FPV/Bratislava/79(H7N7)(MOI=0.01)によって感染され、アセチルサリチル酸(5mM)又はLG−アセチルサリチル酸(5mM)の存在下又は非存在下で8時間、24時間そして36時間培養された。各サンプルの細胞上清が採取され、MDCK細胞のプラ−ク・アッセイからウィルス力価が測定された。図2はウィルス力価と時間の関係を示す図である。その結果は、LG−アセチルサリチル酸はアセチルサリチル酸と同様に効率的に抗病原性鳥H7N7分離株のウィルス増幅を抑制することを示した。
【0035】
図3で示されるように、亜型H5N1の高病原性分離株によって感染した場合にも上記と同様のことが該当した。A549肺上皮細胞はヒト由来H5N1分離株A/Thailand/KAN-1/2004(MOI=0.001)に感染され、上述の濃度のアセチルサリチル酸又はLG−ア
セチルサリチル酸の存在下又は非存在下で培養された。そして細胞上清は、MDCK細胞のプラ−ク・アッセイによりウィルス力価を測定するために調査された。図3Aは20時間の時間値を示し、図3Bはウィルス力価の成長速度図を示す。その両方において、H5N1株のウィルス力価は数少数乗(several decimal powers)も効果的に阻害されているのが判る。
【0036】
LG−アセチルサリチル酸製剤は体外で高い抗ウィルスポテンシャルを有するため、吸入投与用の抗インフルエンザ活性物質としても適すると考えられる。
【0037】
実施例3:細胞培養系における高病原性鳥インフルエンザウィルスに対するLG−アセチルサリチル酸の影響
MDCKII細胞は、10%の熱的に不活性化されたウシ胎仔血清(FCS、PAA Laboratories/A4305-0346)、ペニシリン(Grunenthal/616G03)及びストレプトマイシン(Sanavita/03056440111)が加えられたMEM培地で培養された。感染させるために、細胞は24ウェルプレート(8×104細胞/well;Greiner, Germany, No. 662160, Lot 05210151)に蒔かれ、37℃で一晩培養された。感染させる前に、細胞はPBSで洗浄され、対応する細胞(FPV,SN1,MB1)はPBS/BA(BAが0.6%添加されたPBS(MP Biomedicals))、MgCl21mM、CaCl20.9mM、ペニシリン(Grunenthal/616G03)及びストレプトマイシンに溶かされ、0.001のMOIで細胞ローン(lawn)においてピペット(pippeted)された。37℃で30分間培養された後、細胞接種は除去され、細胞にはMEM培地又はLG−アセチルサリチル酸5mMを含んだMEM培地が1ml加えられた。感染から8、24、32及び48時間後、それぞれの上清が採取された。“プラ−ク・アッセイ”を用いて感染性のウィルス粒子の有無が検証された。
【0038】
“プラ−ク・アッセイ”のために、MDCKII細胞は翌日には細胞ローンがコンフルエントな状態になるように96ウェルプレートに蒔かれた。細胞はPBSで洗浄され、上清の希釈物によって感染され、PBS/BAにおいて37℃で60分間安置された。培養後、細胞はアビセル培養混合物(アビセルRC−581(FMC/B624C))によってコートされた。このため、2.5%アビセル溶液は同量の2xMEM培地と混合された。培養して20時間後、アビセル培養混合物は除去され、細胞はPBSにおいて4%Roti(登録商標)-Histofix(Roth/32789170)溶液によって固定された状態で4℃で30分間培養された後、PBSで洗浄された。染色に必要とされる以下の作業工程は、室温で行われた。PBSで0.3%トリトン−X−10O(Serva/30043)と共に培養されることで、細胞は透過性になった。ウィルス感染された細胞は免疫組織学法を用いて染色された。このために、細胞はA型インフルエンザウィルスの核タンパク質に特異的なモノクローナル抗体(Serotec/250107)と1時間培養された。感染した細胞は、ぺルオキシダーゼ抗マウス抗体とTrueBlue(登録商標)ペルオキシダーゼ基質(KPL/070490)が添加されて行われたまた別の培養(30分)で検知された。抗体希釈は10%FCSと0.1%Tween−20(Serva/16211)が添加されたPBSにおいて行われた。一次抗体及び二次抗体と培養された後、細胞はPBS/0.1%Tween−20による5分間の洗浄を3回繰り返された。反応を止めるために、プレートは水道水で洗浄され乾燥された。乾燥されたプレートは、CorelDRAW9.0ソフトウェアを用いてスキャンされ、測定された。上清のウィルス力価を特定するために、96ウェルプレートの各ウェルに蓄積した感染細胞(巣)が数えられた。数えられた巣の数はそれぞれの希釈係数で乗算された。計算値から、各サンプルの平均値が求められた。ウィルス力価は平均値のlog10として記録された。
【0039】
この結果は図4に開示される。H7N1ウィルス(FPV)及びH5N1ウィルス(MB1)の複製は、LG−アセチルサリチル酸で処置されたことにより、細胞培養系において部分的には99%以上も抑制されることが見受けられた。
【0040】
実施例4:LG−アセチルサリチル酸の抗ウィルス活動の基礎となる作用の分子メカニズムの調査
さらに、LG−アセチルサリチル酸の作用の分子像が、アセチルサリチル酸の純物質の分子像と同様かどうかが検証された。LG−アセチルサリチル酸はNF−kB阻害剤として作用し、そのため他のウィルス誘導性シグナル経路に何ら副作用を及ぼさないはずである。インフルエンザウィルスの感染後にも活性化されるシグナル伝達物質の重要な群は、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)と呼ばれるもので、キナーゼJNK、p38及びERKもこれに属する。アセチルサリチル酸の純物質に関しては、これらキナーゼのウィルス誘発性活性化はアセチルサリチル酸によって阻害されないことがすでに判っている。図5で示されるように、LG−アセチルサリチル酸に関しても同様のことが言える。ウェスタンブロット法において、これらキナーゼの活性型に対して作用するリン酸特異抗体によって検出することが可能なJNK、p38及びERK(図5、トラック5)のウィルス誘発性活性化は、5mM(トラック7)又は7mM(トラック9)のアセチルサリチル酸を添加しても阻害されなかった。アセチルサリチル酸は、プロアポトーシス因子の発現を阻害することで抗ウィルス的に作用し、最終的には細胞内におけるカスパーゼ活性を低下させる。図6は、LG−アセチルサリチル酸の場合におけるカスパーゼ基質ポリADPリボースポリメラーゼ(PARP)の切断によるカスパーゼ活性がウェスタンブロット法に基づいて示されている。30時間の時点ではっきりと見受けられる切断されたPARP(トラック6)のバンドは、LG−アセチルサリチル酸で処理されたサンプル(トラック7)においては効果的に減少している。
【0041】
ウィルス複製におけるNF−kB依存の工程とは、ウィルス性リボヌクレタンパク質複合体(RNP)が細胞質へカスパーゼ依存性輸送され、細胞膜において新たなウィルス粒子内で形成される工程である。アセチルサリチル酸は、増殖サイクルの初期段階におけるウィルスタンパクの蓄積に作用することなく上記工程を特異的に阻害する。LG−アセチルサリチル酸においても同様の作用機序が働く。図7で、LG−アセチルサリチル酸によってウィルスタンパクM1、NP、NS1及びPB1の蓄積が阻害されていないことをウェスタンブロット法で示されている。しかし、図8に示される免疫蛍光分析からも明らかなように、アセチルサリチル酸の純物質についての上記説明と同様に、ウィルス性RNP複合体が効率的に保持されることが判明した。
【0042】
上記から、LG−アセチルサリチル酸はアセチルサリチル酸と同様の抗ウィルスポテンシャルを有し、ウィルス増殖を阻害する上で同様の分子構造で働くという結論が導かれた。
【0043】
実施例5:LG−アセチルサリチル酸による処置後におけるIP10及びインターフェロンガンマ m−RNA発現の減少
サイトカイン・ストームと呼ばれる過剰なサイトカイン産生は、H5N1インフルエンザウィルスによる感染において重要な病原性因子であることが知られている。これらサイトカインのほとんどがNF−kB依存で制御されているため、LG−ASAはウィルス誘発性サイトカインの発現を阻害し、これらウィルスの病原性に間接的に影響を及ぼすのかを検証した。独自の準備作業から、マウス肺がH5N1(MB1)に感染された後にIP10及びIFNガンマが制御されることが明らかになっていた。このケモカイン又はサイトカインの発現は転写因子NF−kBによって誘発されている。以前の実験結果から、アスピリンはNF−kB阻害剤として作用することも知られている。
【0044】
この実験の目的は、H5N1に感染したマウス肺においてLG−アセチルサリチル酸がNF−kB阻害剤として働くか否かを検証することである。このために、MB1の感染前と感染中にLG−アセチルサリチル酸を処置した場合、2つのケモカイン又はサイトカインの発現率に対して影響を及ぼすか否かが調べられた。実験のためにBalb/cマウス5匹それぞれに、感染(1×103pfu/50μl)の1時間前にLG−アセチルサリチル酸50mMがi.v.(100μl)及びi.p.(200μl)で処置された。その後は感染の17、24及び42時間後に処置が行われた。48時間後に肺は取り出され、RNAが隔離された。対照動物と比較して、LG−アセチルサリチル酸が投与されたマウス肺におけるIP10及びIFNガンマの発現率が、定量的RT−PCRを用いて検証された。そのデータ結果は図9に開示される。
【0045】
比較する上で結果がより明白になるよう、投与されていないマウスにおけるIP10及びIFNガンマの発現率は100%に設定された。LG−アセチルサリチル酸が静脈注射及び腹腔内治療経路で4回投与された後、ケモカイン又はサイトカインの両方においてm−RNAの発現の減少が検知された。静脈注射治療経路ではIP10は62%減少、IFNガンマは68%減少し、IP10は26%減、IFAガンマは50%減であった腹腔内治療経路よりも高い効果が見られた。
【0046】
LG−アセチルサリチル酸で処置された感染マウス肺におけるNF−kB依存遺伝子のH5N1のウィルス誘発性発現は大きく減少したことを上記結果は示している。サイトカインは大きな部分ではNF−kB依存で制御され、H5N1ウィルス感染後に見られるサイトカインの過剰産生(サイトカイン・ストーム)はこれらウィルスの病原性に大きく関わるため、この結果は重要な意味を持つ。このように、LG−ASAはウィルス複製に直接的に影響を及ぼすだけでなく、サイトカインの過剰産生を抑制することにより病気の経過に間接的にも積極的にも影響を及ぼす。
【0047】
実施例6:適合性の調査
下記の実験では、エアロゾルで処置された後のマウスにおけるLG−アセチルサリチル酸の適合性が検査された。処置の影響を可能な限り正確に観察できるように、実験はマウス監視システム(Mouse Monitoring System)を用いて行われた。このシステムによると、体温測定をリアルタイムで行うことができる。5分毎に体温値が測定され、記入された(図10〜12、A〜F)。さらに、動物の体重は毎日測定された。処置の完了時にはマウスは殺処分され、肝臓及び脾臓の臓器重量が計測された。肝毒性の第一兆候として、肝臓が肥大する。また、脾臓が肥大するのは炎症が起こっている兆候である。
【0048】
適合性研究のため、処置の3日前に全部で12匹の雌Balb/cマウスにマウス監視送信機が埋め込まれた。成功した介入は3日間監視された。その後、マウス6匹はそれぞれパリ・ネブライザーによって1日に3回、50mMのLG−アセチルサリチル酸溶液を2ml投与された。対照となるマウス6匹には、2mlのPBSが投与された。処置に約10分を要するように、溶液は1.5barの圧力で噴霧された。処置は5日間に渡り毎日9:00、12:00及び15:00に行われた。
【0049】
LG−アセチルサリチル酸の体重変化に及ぼす影響について検証された。全てのマウスの体重は、処置が行われる初日の1回目の処置(9:00)の前に開始され、毎日計測された。処置初日の体重は100%に設定され、翌日からの計測された体重はそれを参照にされた。2つの処置群の比較結果は図13に開示される。LG−アセチルサリチル酸群とPBS処置群の間で、体重変化に顕著な違いはないことが見受けられる。
【0050】
さらに、LG−アセチルサリチル酸の体温に及ぼす影響についても検証された。既に記載されたように、マウス監視システムはマウスの体温をリアルタイムで測定することが可能である。マウスは代謝が高いため、健康に少しでも変化があれば直ちに体温変化に表れる。図10〜12には、処置の前日(図10A)から処置最終日(4日目)(図12F)までの体温の変化が示される。対照動物と比較して、LG−アセチルサリチル酸で処置されたマウスの体温における差は見受けられない。
【0051】
最後に、LG−アセチルサリチル酸の肝臓及び脾臓の重量に及ぼす影響について検証された。最終処置が行われてから15分後に全ての動物が殺処分され、解剖された。大静脈から放血が完全に行われた後、内蔵器官が調べられた。まず初めに、横隔膜から虚脱しない状態で肺が調べられた。肝臓と脾臓の重量が計測された。この結果は図14に開示される。処置中、マウスの体重に変化はほとんど見られなかったため、臓器重量の正常化は省略されてもよい。脾臓(図14A)及び肝臓(図14B)については、LG−アセチルサリチル酸で処置された動物と対照動物の間で顕著な差は見られなかった。このように、マウスに吸入による処置を行っても、しばしば臓器の腫れを伴うとされる肝毒性の兆候は見受けられなかった。さらに、多くの場合脾臓の肥大を伴うとされる全身性炎症反応も見受けられなかった。
【0052】
上記調査からは、概要として50mM濃度のLG−アセチルサリチル酸2mlを5日間かけて吸入投与することはマウスには適合することが判った。
【0053】
実施例7:患者を対象とした実験
治療のための試みとして、気管支に感染症のある患者4人は、最高で2MのLG−ASA(50:50)からなり、5μm以下の粒径で気化された溶液が投与された。LG−ASAの総量は最大で350mgであった。吸入量は500ml/秒以下に、大抵の場合は300ml/秒以下になるように調整された。呼吸量は患者の吸気容量の少なくとも30%、大抵の場合は少なくとも50%に調整された。
【0054】
患者の内3人においては、すでに投与初日には症状の顕著な改善が見られた。その他全ての患者においては、症状の改善は投与から3日後に見られた。主観的に感知されたこれら溶液中高濃度の適合性は優良であった。味に刺激があると報告した患者はいなかった。また、必要以上の咳の衝動も検知されなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人間又は動物におけるウィルス感染を予防又は治療するための医薬組成物を製造するための、天然又は非天然の塩基性アミノ酸を含むO−アセチルサリチル酸の塩からなる組成物を使用する方法。
【請求項2】
上記塩基性アミノ酸は“リジン、アルギニン、オルニチン、ジアミノ酪酸及びこれらアミノ酸の混合物”からなる群から選択され、好適にはモノアセチルサリチル酸であり、選択的には非塩基性側鎖を有する天然又は非天然の塩基性アミノ酸、特にグリシンを含むO−アセチルサリチル酸の塩からなることを特徴とする請求項1に記載の使用方法。
【請求項3】
上記塩基性アミノ酸は、D−リジン、L−リジン又はD−リジンとL−リジンの混合物であることを特徴とする請求項2に記載の使用方法。
【請求項4】
マイナス鎖RNAウィルス、好適にはA型インフルエンザウィルス、特にH5又はH7型のウィルスによる感染の予防又は治療のための、請求項1から3のいずれか1項に記載の使用方法。
【請求項5】
例えば経鼻投与などの気体による投与のための、液体の水性組成物としての生薬製剤である上記1から4のいずれか1項に記載の使用方法。
【請求項6】
上記水性組成物は、0.1ないし5M、特に0.1ないし3M、好適には1ないし3Mの塩の水性組成物であることを特徴とする請求項5に記載の使用方法。
【請求項7】
上記水性組成物は、0.01ないし100mM、特に0.1ないし10mMの塩の水性組成物であることを特徴とする請求項5に記載の使用方法。
【請求項8】
上記組成物は、吸入器又は噴霧器を備えた医薬的に適合するタンクに備えられることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の使用方法。
【請求項9】
上記タンクは、患者の吸気容量に応じて、吸入量を1000ml/秒以下、好ましくは500ml/秒以下に、呼吸量を少なくとも10%、特に少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%から最大95%に調整できるように備えられることを特徴とする請求項8に記載の使用方法。
【請求項10】
天然又は非天然の塩基性アミノ酸を含むO−アセチルサリチル酸の塩、噴射剤及び選択的に補助及び/又はキャリア物質からなるエアロゾル製剤。
【請求項11】
上記塩は、全体の製剤に対して0.001ないし50wt−%、0.001ないし10wt−%、特に0.1ないし10wt−%又は特に10ないし50wt−%の量で含まれることを特徴とする請求項10に記載のエアロゾル製剤。
【請求項12】
上記塩は、10μm以下、特に5μm以下のMMAD値を有する粒子又は溶液として構成されることを特徴とする請求項10又は11に記載のエアロゾル製剤。
【請求項13】
人間又は動物におけるウィルス感染を予防又は治療するためのエアロゾルを使用する方法であり、
ウィルスに感染する恐れのある又はウィルスに感染した人間又は動物は、鼻又は口からの吸引による気体投与で薬理的に効果的な量のエアロゾル製剤を投与されることを特徴とする請求項10から12のいずれか1項に記載のエアロゾル製剤を使用する方法。
【請求項14】
少なくとも10mg、好ましくは少なくとも50mg、最適には少なくとも100mg、最大では200mg以上の上記エアロゾル製剤が、5分以内、好ましくは2分以内、最適には1分以内に気体投与されることを特徴とする請求項13に記載の使用方法。
【請求項15】
吸入流は1000ml/秒以下、特に500ml/秒以下、とりわけ300ml/秒以下に、呼吸量は患者の吸気容量に対して少なくとも20%、特に少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%から最大95%になるように調整されることを特徴とする請求項13又は14に記載の使用方法。
【請求項16】
供給タンクと、該供給タンクに接続されたエアロゾル発生器を備えた吸入装置であって、供給タンクは請求項10から12のいずれか1項に記載のエアロゾル製剤を備えることを特徴とする吸入装置。
【請求項17】
吸入流及び呼吸量を制御及び/又は規制するための制御及び/又は規制手段を備えた請求項16に記載の吸入装置であって、上記制御及び/又は規制手段は好ましくは請求項13に記載の数値に調整されることを特徴とする吸入装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2011−509928(P2011−509928A)
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−541691(P2010−541691)
【出願日】平成21年1月14日(2009.1.14)
【国際出願番号】PCT/DE2009/000033
【国際公開番号】WO2009/089822
【国際公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(508114085)アクティファエロ ゲーエムベーハー (2)
【Fターム(参考)】