説明

ウィンタースポーツ用具の滑走用コーティング材

本発明によれば、ウィンタースポーツ用具用のコポリマー(I)およびコポリマー(II)のブレンドである滑走用コーティング材が提供され、該コポリマー(I)は、プロピレンマノマーから生じる少なくとも50%の構造構築ブロックを含むプロピレンコポリマーであり、該コポリマー(II)は、エチレンモノマーから生じる少なくとも50%の構造構築ブロックを有するエチレンコポリマーである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウィンタースポーツ用具、特にスキー板およびスノーボード板用の滑走用コーティング材に関する。この滑走用コーティング材は、簡単な方法で高分子材料から押出し成形して得られる。さらに、本発明は、滑走用コーティング材で被覆されたウィンタースポーツ用具に関する。
【背景技術】
【0002】
特にスキーとかスノーボードのように、例えば、雪上を滑るように設計されたウィンタースポーツ用具の品質は、大部分がその滑走性によって決定される。したがって、そのようなウィンタースポーツ用具は、一般に、雪上における用具の滑りの改善を意図した滑走用コーティング材を備えている。そのような滑走用コーティング材は、実質的にはスキー板又はスノーボード板に適当な接着剤で接着されているシートから成るものである。そうした滑走用コーティング材は、確実によく滑るように出来るだけ疎水性である必要がある。
【0003】
種々の異なるタイプの雪に対する傑出した滑走性により、高密度ポリエチレンが当初滑走用コーティング材の材料として用いられたが(スイス公開特許番号601394)、機械的強度および耐久性に問題があった。こうした欠点は、超高分子ポリエチレン(UHMW−PE)を使用することによって解決されるが、UHMW−PEコーティング材は押出法によっては製造できず、複雑な操作、例えば押圧、焼結その後の剥離などにより製造しなければならない(スイス公開特許番号601394)。
【0004】
こうした問題を解決し、滑走用コーティング材を改善するために、例えば押出法により製造される架橋ポリエチレン系ポリマーを使用する方法(スイス公開特許番号601394)あるいは水溶性化合物を滑走用コーティング材に包含させる方法(スイス公開特許番号601392)等の多くの提案がこれまでになされてきた。ごく最近の開発によれば、ポリテトラフルオロエチレン(オーストリア登録特許番号394541)から成る滑走用コーティング材が提案されているが、しかしながら、これは価格の面からだけでも有利ではなく、さらにウィンタースポーツ用具の滑走用コーティング材の問題を充分に解決してはいない。これらの提案のいずれもが、実用化はされておらず、近代的なスキー板およびスノーボード板は、一般に、高い結晶性により最高度の機械的強度および化学的安定性を有するUHMW−PEから成る滑走用コーティング材を備えている。このポリエチレンは、当初、医療技術分野で股関節の製造に用いられたが、プレス工程および焼結工程において通常の帯電防止剤および滑沢剤を用いて熱硬化性プラスチックのような粉末形態で加工される。
【0005】
ポリプロピレンのような他のポリオレフィン類は、ウィンタースポーツ用具の滑走用コーティング材としては不適当であると今日までは考えられていた。それというのも、有利な滑走性を有しないからである。
【0006】
滑走用コーティング材の滑走性は、コーティング材の疎水性を改善する滑走面にストラクチャーを付すことにより改善することができることも知られている。しかしながら、困難な点が一つあり、それはこの滑走面のストラクチャーの効果は、例えば使用中にストラクチャーがちょっとした機械的影響により損傷を受けると、最早、生じないのである。
【0007】
スキー板の滑走性は、滑走用コーティング材を備えたスキー板の場合には通常、必要とされる特別のワックス類の使用によっても改善される。ワックス類を使用する理由は、第一に、滑走用コーティング材の疎水性を改善することにあり、第二に、事実上、全てのプラスチックのように、ポリエチレンは約20℃〜−20℃の温度範囲でその表面硬度は実質上、何の変化も示さないのに対して、雪の滑りやすさは温度を関数として変化することである。したがって、広範囲の添加剤を用いて種々の温度および雪質に合わせて設計されたワックス類が使用されており、低い雪温であればあるほどより硬い表面が望まれ、高い雪温であればあるほどより軟らかい表面が望まれる。更に、表面硬度の調整に加えて、蓮の葉効果を生じ、それゆえ全く湿気のない表面を確約するナノストラクチャーをも形成するワックス類も得られる。しかしながら、ワックス類の使用は複雑であり、ワックスを正しく選択することは難しい。実際、異なる雪質条件に適切に対応できるためには、多数のワックス類を備えていることが必要である。
【0008】
しかしながら、公知のポリエチレン系コーティング材に比べて、容易に製造でき、特に滑走性が改善された性質を有する、滑りのよいウィンタースポーツ用具用コーティング材に対する需要がある。特に、それを使用すると、特別のワックス類を使用することによってのみ可能となる滑走性を達成することができ、その結果ワックス類の使用を実質的にあるいは完全に不要とすることができるようなコーティング材が求められている。ウィンタースポーツ用具は、経済的に製造されるべきである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明により、ウィンタースポーツ用具のための滑走用コーティング材が提供され、この滑走用コーティング材はコポリマー(I)およびコポリマー(II)として下記に示された二つのコポリマーの特定のブレンドから成るものである。本発明はまた、ウィンタースポーツ用具、特にそのような滑走用コーティング材を備えているスキー板に関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
コポリマー(I)は、プロピレンと、プロピレンモノマーから生じる構造構築ブロックを構造構築ブロックの全数に対して少なくとも50%含む少なくとも1つのさらなるオレフィンとのコポリマーである。しかしながら、一般に、これらの構造構築ブロックは、構造構築ブロック全数に対して、コポリマーの99%以下を占める。コポリマー(I)は、プロピレンモノマーから生じる構造構築ブロックの好ましくは70〜99%、より好ましくは75〜98%、特に80〜95%、例えば約90%である(いずれの場合も構造構築ブロック全数に対して)。
【0011】
コポリマー(I)は、さらにまた、少なくとも1つのさらなるオレフィン、好ましくはエチレンから生じる構造構築ブロックを含んでいる。さらなるオレフィン(複数のオレフィン)の割合は、コポリマー(I)(構造構築ブロック100%に対して)の残余を占めている。したがって、コポリマー(I)は、好ましくはプロピレン/エチレンコポリマーであり、プロピレンから成るその構造構築ブロック含量は上記したとおりであり、エチレンから生じる構造構築ブロックはいずれの場合もコポリマーの残余を占める。純正プロピレン/エチレンコポリマーの代わりに、プロピレンおよびエチレンに加えて、シクロオクタジエン、ジシクロペンタジエンおよび/またはヘキサジエン等のジエンをも含んでよいエチレン/プロピレン−ジエンのターポリマー(EPDM)が、好ましく使用することもできる。さらにまた、高級オレフィン類あるいはジエン類をコポリマー中に存在させることもできる。この場合、プロピレンから生じるコポリマー(I)における構造構築ブロックの割合は、上記したとおりであり、一方、エチレンもしくは他のオレフィン類から、またはジエンもしくはジエン類から生じるコポリマーの構造構築ブロックは、その残余を占める。
【0012】
本発明における最も好ましいコポリマー(I)は、例えばPP 7011LLの製品名でExxon Mobil社から商業的に入手可能である。
【0013】
コポリマー(I)は、コポリマー(I)および(II)のブレンドの、好ましくは10〜99重量%、より好ましくは10〜90重量%、特に50〜90重量%、例えば50〜80重量%もしくは60〜80重量%、例えば約80重量%もしくは約70重量%である。
【0014】
コポリマーブレンドにおける2番目の重要な成分は、コポリマー(II)であり、このコポリマー(II)はエチレンとエチレンから生じる構造構築ブロックを(構造構築ブロックの全数に対して)少なくとも50%含む少なくともさらに1つのオレフィンとのコポリマーである。コポリマー(II)は、一般に、それぞれの場合、構造構築ブロックの全数に対して、エチレンから生じる構造構築ブロックを99%以下含み、特にエチレンから生じる構造構築ブロックを70〜99%の、より好ましくは75〜98%、特に80〜95%、例えば約90%を含む。コポリマー(II)は、さらに、別の少なくとも1つのオレフィン、好ましくは炭素数4〜10のオレフィン、特に炭素数6〜10のオレフィン、最も好ましいのはオクテンから生じる構造構築ブロックを含む。
【0015】
本発明によれば、コポリマー(II)はまた、ジエンあるいは複数のジエン類から生じる構築ブロックを、EPDMゴム類で知られているように含むことも同様に好ましい。いずれの場合にも、エチレンから生じる構築ブロックの割合は、上記したとおりであり、一方、さらなるオレフィン類あるいはジエン類から生じる残余の構築ブロックは、コポリマー(II)の残余を占める。本発明に従い使用することのできる好ましいコポリマー(II)は、商業的に入手が可能であり、例えば、Dexplatomer社の製品名Exact 0203あるいはExact Octen−1 Plastomerである。
【0016】
コポリマー(II)は、コポリマー(I)およびコポリマー(II)のブレンドの、好ましくは1〜90重量%、より好ましくは10〜90%重量%、特に10〜50重量%、例えば20〜50重量%あるいは20〜40重量%、例えば約20重量%あるいは約30重量%である。
【0017】
コポリマー(I)およびコポリマー(II)は、共に好ましくはランダムコポリマーである。本発明において使用されている「コポリマー」なる用語は、二つのモノマーユニットから成るコポリマーのみならず、3以上の、特に3つのあるいは4つの異なるモノマーユニットから成るコポリマーを包含する。したがって、ここ使用されている「コポリマー」なる用語は、特にターポリマーをも含む。ここで使用されている「オレフィン」なる用語は、1以上の二重結合、好ましくは1つまたは2つの二重結合(ジエン類)を有する化合物を含み、これらの化合物は好ましくは炭素数が16以下、より好ましくは10以下であり、分枝あるいは直鎖状であってよい。
【0018】
本発明に従い滑走用コーティング材を製造するためのコポリマーブレンドは、また、ポリプロピレンに対してそれ自体公知の好適な滑沢剤を含むのが有利である。滑沢剤が存在する場合には、コポリマー(I)およびコポリマー(II)のブレンドの合計重量に対して、滑沢剤の量は0.1〜30重量%あるいは5〜30重量%、より好ましくは0.5〜10重量%あるいは1〜10重量%、例えば、約1重量%あるいは約3重量%である。特に好ましいのは、滑沢剤は通常の疎水性滑沢剤であり、これは例えば、1級脂肪酸アミン類等の高温で安定な1級または2級脂肪酸類に基づくものである、あるいは疎水性滑沢剤はカルボン酸エステル類である。また、高温で安定な1級脂肪酸類に基づく滑沢剤と1以上のカルボン酸エステル類との混合物が特に好ましい。通常の市販品としては、Hecoplast社(Iserlohn市、ドイツ)のHecoslip 130 POおよびHecoslip 114 PPがある。高温で安定な1級脂肪酸およびカルボン酸エステルの1:2混合物は、特に好ましく使用される。
【0019】
本発明による滑走用コーティング材の生産のためのコポリマーブレンドは、通常の帯電防止剤、特にポリプロピレンに対して知られているカルボン酸エステル類の帯電防止添加剤をさらに含んでいてもよい。そのような帯電防止剤が存在する場合は、帯電防止剤の量はコポリマー(I)およびコポリマー(II)のブレンドの合計重量に対して、0.1〜30重量%あるいは5〜30重量%、より好ましくは0.5〜10重量%、例えば約1重量%である。
【0020】
さらに、本発明の滑走用コーティング材を製造するためのコポリマーブレンドは、通常の結晶造核剤、特にポリプロピレンに対して常用されている結晶造核剤を含むこともできる。結晶造核剤は安息香酸ナトリウムのような1960年代に最初に導入された核形成剤であり、例えばHenkel KGaA社(デュッセルドルフ市、ドイツ)あるいはHecoplast社(Iserlohn市、ドイツ)から入手が可能である。本発明によれば、有機の造核剤はソルビトールアセタール等の砂糖系造核剤が好ましく用いられる。好ましい市販品は、Hecoplast社の製品Heconuk 484PPである。そのような造核剤が存在する場合、コポリマー(I)の重量に対して、0.1〜30重量%、より好ましくは0.5〜10重量%、例えば約2重量%の割合で含まれているのがよい。
【0021】
本発明の好ましい態様では、本発明の滑走用コーティング材を生産するためのコポリマーブレンドは、上記した少なくとも1つの結晶造核剤および上記した少なくとも1つの滑沢剤をともに、それぞれの場合、上記した好ましい量で含まれている。また、滑沢剤は、部分的にあるいは完全に結晶造核剤と結合しているのが好ましい。結晶造核剤が存在する場合、1級脂肪酸類および/または2級脂肪酸類が滑沢剤として好ましく使用され、結晶造核剤の合計重量に対して、1〜90重量%、より好ましは1〜10重量%、特に好ましくは約7重量%の割合で含まれている。
【0022】
好ましい態様では、好ましいコポリマーブレンドは結晶造核剤および任意にあるいは(好ましくは)部分的に結晶造核剤と結合する滑沢剤を含んでおり、特に好ましく使用される滑沢剤は、高温で安定な1級脂肪酸とカルボン酸エステルとの1:10混合物である。
【0023】
さらに、通常の添加剤もまた本発明の滑走用コーティング材の製造用コポリマーブレンドに存在させてもよく、疎水性および帯電性の改善、あるいは耐候性および耐スクラッチ性のための添加剤としてシリカ、無水マレイン酸、カーボンブラックおよびフッ素または弗化炭化水素等の特にシリコン化合物、特に無機のシリコン化合物を挙げることができる。二酸化チタン等の色素を任意に存在させてもよい。そのような添加剤の最適量は、ルーチンの実験によって容易に決めることができ、存在する各添加剤は好ましくは0.05〜3重量%、より好ましくは0.1〜2重量%である。滑沢剤、結晶造核剤、シリコン化合物および無水マレイン酸を含む本発明のコポリマーブレンドが特に好ましい。
【0024】
スキー板が特に高機能適用を意図するような場合、例えば競技用の場合、ポリプロピレンに特に好ましく結合することができ、短期間で疎水性および帯電防止性の改善を果たし、さらに表面硬度を増強する特別の浸漬法を常法により適用することができる。フッ素化イソプロパノールおよび水の混合物をここで例示することができる。
【0025】
驚くべきことに、上記した異なるコポリマーの特定ブレンドは、簡単な押出工程により加工することができ、それによりウィンタースポーツ用具、特にスキー板およびスノーボード板の滑走用コーティング材として極めて優れた方法で適当なシートとすることができる。コーティング材は、その硬度が20℃〜−20℃の温度範囲で変化し、温度が低下するにつれてより硬くなるが、これは今日までワックス類を使って初めて達成することのできていた効果である。
【0026】
さらに、本発明の滑走用コーティング材は、少なくともウィンタースポーツ用具が満足しなければならない要件に関して、優れたノッチ付衝撃強度およびポリエチレン系滑走用コーティング材と比肩しうる強度を有する。
【0027】
本発明の滑走用コーティング材を製造するためのコポリマーブレンドは、通常の方法で加工することができる。コポリマーブレンドの特に有利な点は、通常の押出法、例えば、フィルム押出法により滑走用コーティング材に成形することが出来ることである。UHMW−PE等の他のポリマーの場合に必要なプレス焼結工程は、必ずしも本発明では必要ではない。それゆえ、本発明によれば、前記加工は通常の単軸押出機あるいは二軸押出機、特に混練セクションを有する3ゾーンスクリュー式押出機、好ましくは混練セクションを有する噛合型3ゾーン二軸押出機で実施することができる。
【0028】
押出しダイは、当業者に公知であり、通常のビームダイあるいはコ−トハンガーダイがここでは例示される。サイズ分けのために、通常のカレンダーあるいはスムージングロール装置、特にいわゆる冷却ロール装置を使用することができる。
【0029】
また、本発明によれば、できるだけ低い湿り気となる表面ストラクチャーを滑走用コーティング材に適用することが有利である。驚くべきことに、本発明の滑走用コーティング材の場合、それに表面ストラクチャーを通常の方法で施すと、湿り気が特に大きく減少し、蓮の葉効果がワックス類を使用しなくても起きることが見出された。
【0030】
本発明のさらなる利点は、もし表面ストラクチャーが分子の転移点より下で施された場合、ポリプロピレンが持ついわゆる「記憶効果」が発生することから生まれてくる。記憶効果の結果、機械的作用により少しだけ損傷を受けても 表面ストラクチャーは自動的に回復される。
【0031】
表面ストラクチャーは、スキー板の場合に知られている公知の方法で滑走用コーティング材に適用されるが、例えば組立スムージングロールを使用することにより適用される。上記したように、表面ストラクチャーは、分子の転移点の前に滑走用コーティング材に適用するのが好ましい。
【0032】
本発明による滑走用コーティング材は、一般に、0.1〜10mm、好ましくは0.5〜5mm、特に好ましいのは約1mmの厚さを有する。
【0033】
本発明による滑走用コーティング材は、通常の方法でウィンタースポーツ用具、特にスキー板あるいはスノーボード板に適用することができる。ここで特に好ましいのは、例えば通常のホットメルト接着剤あるいは例えばポリアミド樹脂あるいはエチレン/酢酸ビニルコポリマーのようなホットメルトプラスチック等の適当な接着剤を用いて、あるいはそれらの変法により、滑走用コーティング材をウィンタースポーツ用具に適用することである。しかしながら、滑走用コーティング材は、また、別の公知の方法でも接着させることができる。適用する前に、ウィンタースポーツ用具、特にスキー板あるいはスノーボード板は、ブラッシング、サンドブラスト、脱脂、エッチングまたは浸酸等の通常の前処置に付すことができ、さらに、例えばコロナ処理、火炎処理、プライマー処理あるいはオゾンシャワー等の通常の表面処理に付すことが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下の実施例により本発明を説明する。
【実施例】
【0035】
混合物I:
8000gのExxon Mobil PP 7011L1、2000gのDexplastomer Exact 0203、100gのHecoslip 103 PO(滑沢剤)および160gのHeconuk 484 PP
【0036】
混合物II:
8000gのExxon Mobil PP 7011L1、2000gのDexplastomer Exact 0203、100gのHecoslip 103 POおよび160gのHeconuk 484 PPおよび100gのExxon Mobil Exxelor PO 1020(無水マレイン酸)および40gの工業等級のシリコン粉末(SiO
【0037】
混合物III:
3500gのExxon Mobil PP 7011L1、1500gのDexplastomer Exact 0203、100gのHecoslip 114 PP および50gのHecoslip 103 PO
【0038】
各混合物を通常の攪拌機中で30分間、混合した。次いで、スムージングロールを有する冷却ロール装置を備えたColin製の三ゾーン単軸スクリュー式押出機から成るフィルム押出機で押出して、1mmの厚さのシートを得た。表面処理は、Montana製のスキー板用石製研磨装置を用いて実施した。
【0039】
その後、混合物ごとの小さな見本プレート(5cm x 5cm)を、約8μmの粒子径を有する研磨紙および約100nmの粒子サイズを有する研磨用ペーストで研磨した。その結果、蓮の葉効果が滑走用コーティング材の表面に付与された。研磨残渣を洗い流した後、高度の低摩擦シート表面が得られ、この表面の水滴は球状になって転げ落ちた。
【0040】
表面硬度がかなり増大していることが、シートを冷却することによって見られ、加熱により表面硬度は減少した。
【0041】
混合物IおよびIIから成るシートを、公知の方法で通常の接着剤を使用してスキー板およびスノーボード板に適用した。次いで、このウィンタースポーツ用具は、湿った雪、冷たく乾いた雪、および人口雪の上で、定性的な実際の滑走試験を実施した。P−TEXブランドの最も高品質の市販品UHMW−PE焼結コーティング材を備えたスキー板およびスノーボード板が、比較用として使用された。比較用のコーティング材は、上記した同じ石製研磨装置に試験すべきものと同じ研磨パターンで供給され、競技で使用するために通常行われるように、それぞれの雪温に対する適当なワックス類を使用して専門的に製造される。
【0042】
比較試験において、本発明の新規コーティング材を有するウィンタースポーツ用具は、通常の用具と比べて決して劣るようではなかった。これに対して、特に湿った雪の上では、焼結コーティング材に比べて、混合物IIは本質的に優れており、混合物Iは少し優れていた。
【0043】
以後、上記した本発明のコーティング材は、FX SmartBaseと、混合物Iは、FX SmartBase Basicと、そして混合物IIは、FX SmartBase Siタイプと命名された。
【0044】
本発明の新規FX SmartBaseコーティング材の滑走性についての定性的な分析が、ワックスを施された比較用コーティング材との客観的な比較ができる以下に示す試験設定により実施された。試験設定は図1に示されている。
【0045】
滑走表面用として試験すべきコーティング材を有するそりが、傾度αの決まった角度の、および雪からなる斜面を滑り降りるように設計されている。そりは、最初は磁石で保持されている。そりが磁石から解放されると、時間の測定が始まり、そりは3つの光バリアー(L1,L2,L3)を通過する。
【0046】
ここで、最初の時間t1が、磁石からL1までの最初の距離x1(5.5cm)に対して記録される。次に、2番目の時間t2が、光バリアーL2までの2番目の距離x2(50cm)に対して記録され、最後に3番目の時間t3が、光バリアーL3までの3番目の距離x3(50cm)に対して記録される。
【0047】
Jetterのコンピューター、モデル:nano bが、制御手段として使用された。
【0048】
磁石は、入力電圧24VのIBS社の電磁石を使用した。IDEC社の80cm範囲、1ms応答時間の赤外線光バリアーが光バリアーとして選択された。
【0049】
FX SmartBase BasicとFX SmartBase Siタイプの80cmの面積を有するコーティング材サンプルが、暖かい雪と冷たい雪の上で、それぞれの雪質状況に合った適当なワックス類で調製された比較用コーティング材P−Texと比較された。
【0050】
全てのサンプルは、Montana社の石製研磨装置上で、Crystal Glide Finish法によって、図2に示したような、同じ全体に行き渡るストラクチャーで提供された。
【0051】
暖かい雪および冷たい雪における試験では、Star SkiWax社のワックスEclipse EC1 High Fluorine、+8℃〜−3℃用が、−2℃の雪温および+1.5℃の外気温度で使用された。
【0052】
冷たい雪および乾いた雪における試験では、Star SkiWax社のワックスEclipse EC2 High Fluorine、0℃〜−10℃用が、−6℃の雪温および−4℃の外気温度で使用された。
【0053】
ワックスをTOKO社のワックス用アイロンを用いてP−Texサンプルに塗布した。 次いで、サンプルを室温で2時間冷却した。次に、ワックスをTOKO社のスクレイパーで剥がした。次に、TOKO社のストラクチャーブラシを用いて底面のストラクチャーをブラシで再び磨いた。
【0054】
FX SmartBaseコーティング材には、ワックスをかけなかった。
【0055】
コーティング材は、両面接着剤とねじ継手でそりに装着した。
【0056】
次いで、装着されたコーティング材を有するそりの重量を秤った。使用した秤は、1gに対して正確なSoehnle社の精密な秤、型番8048cyberを用いた。
【0057】
次いで、雪がよく接着するように底に人工芝を敷いたトレーを、雪で満たし、その上に真っ直ぐなエッジを引いて水平な表面を得た。各試験前には、雪を再びピステに注ぎ、水平にした。
【0058】
次いで、そりをガイドに装着し、底面が接触しないようにして磁石に先導した。
【0059】
磁石の電源を切り、光バリアーにおける測定が行われた。コーティング材当り、10回の試験が行われ、全10回の得られた時間を平均化した。
【0060】
その後、平均時間を互いに比較して平均速度を計算した。
【0061】
結果
装着されたコーティング材を有する全てのそりは、339gの同じ重さであった。傾度αの角度は全試験において15°であり、これは25.88%の勾配に相当する。
【0062】
1.暖かい雪および湿った雪に対する一連の試験(雪温:−2℃、外気:+1.5℃)
【表1】

【0063】
速度はv=x/t(式中、v:平均速度;x:距離;t:xにかかる時間)で表され、
FX SmartBase Siタイプは、v=0.9206m/sであり、FX SmartBase Basicは、v=0.8190m/sであり、P−Tex + EClは、v=0.7661m/sである。
したがって、試験された湿った雪の場合、105.5cmの移動距離に対して、FX SmartBase Basicは6.90%、FX SmartBase Siタイプは20.16%速い。その結果が、図3に示されている。
【0064】

2.冷たい雪および乾いた雪に対する一連の試験(雪温:−6℃、外気:−4℃)
【表2】

【0065】
速度:v=x/t
(式中、vは平均速度を、xは距離を、tは距離xにかかる時間を表し、FX SmartBase Siタイプの平均速度(v)は、0.8813m/sであり、FX SmartBase Basicの平均速度(v)は、0.8480m/sであり、P−Tex + EC2の平均速度(v)は、0.8242m/sである。)
【0066】
したがって、冷たい雪の場合、105.5cmの移動距離に対して、FX SmartBase Basicは2.88%、FX SmartBase Siタイプは6.93%速い。結果を図4に示す。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】図1は、実施例の試験設定を示す。
【図2】図2は、サンプルのストラクチャーの一例を示す。
【図3】図3は、暖かい雪および湿った雪に対する一連の試験の結果を示す。
【図4】図4は、冷たい雪および乾いた雪に対する一連の試験の結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コポリマー(I)およびコポリマー(II)のブレンドから成るウィンタースポーツ用具の滑走用コーティング材であって、該コポリマー(I)は、プロピレンとプロピレンモノマーから生じる構造構築ブロックを構造構築ブロックの全数に対して少なくとも50%含む少なくともさらなる1つのオレフィンとのコポリマーであり、該コポリマー(II)は、エチレンとエチレンモノマーから生じる構造構築ブロックを構造構築ブロックの全数に対して少なくとも50%含む少なくともさらなる1つのオレフィンとのコポリマーであることを特徴とする滑走用コーティング材。
【請求項2】
コポリマー(I)とコポリマー(II)の全重量に対して、コポリマー(I)が10〜90重量%、コポリマー(II)が10〜90重量%それぞれ存在することを特徴とする、請求項1に記載の滑走用コーティング材。
【請求項3】
ブレンドがさらに滑沢剤を含んでいることを特徴とする、請求項1または2に記載の滑走用コーティング材。
【請求項4】
滑沢剤が、コポリマー(I)とコポリマー(II)とのブレンドの全重量に対して、0.5〜30重量%含まれていることを特徴とする、請求項3に記載の滑走用コーティング材。
【請求項5】
滑沢剤が、高温で安定な一次または二次脂肪酸、カルボン酸エステルおよびそれらの混合物から選ばれることを特徴とする、請求項3または4に記載の滑走用コーティング材。
【請求項6】
ブレンドがさらに結晶造核剤を含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の滑走用コーティング材。
【請求項7】
ブレンドが、さらに帯電防止添加剤、疎水性改善添加剤、耐候性改善添加剤、耐スクラッチ性改善添加剤および着色剤から選ばれる1以上の添加剤を含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の滑走用コーティング材。
【請求項8】
ブレンドが、シリコン化合物および/または無水マレイン酸を含むことを特徴とする、請求項7に記載の滑走用コーティング材。
【請求項9】
コポリマー(I)が、プロピレン/エチレンコポリマーまたはEPDMターポリマーであることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の滑走用コーティング材。
【請求項10】
コポリマー(I)が、プロピレンモノマーから生じる構造構築ブロックを構造構築ブロックの全数に対して70〜99%含み、およびエチレンモノマーから生じる構造構築ブロックを構造構築ブロックの全数に対して1〜30%含むプロピレン/エチレンコポリマーであることを特徴とする、請求項9に記載の滑走用コーティング材。
【請求項11】
コポリマー(II)が、エチレンと炭素数4〜10の高級オレフィンとのコポリマー、またはエチレン、炭素数4〜10のオレフィンおよびジエンのターポリマーであることを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の滑走用コーティング材。
【請求項12】
炭素数4〜10のオレフィンがオクテンであることを特徴とする、請求項11に記載の滑走用コーティング材。
【請求項13】
コポリマー(II)が、エチレンから生じる構造構築ブロックを構造構築ブロックの全数に対して70〜99%含み、およびオクテンから生じる構造構築ブロックを構造構築ブロックの全数に対してそれぞれ1〜30重量%含むエチレン/オクテンコポリマーであることを特徴とする、請求項11に記載の滑走用コーティング材。
【請求項14】
分子転移点前に施された表面ストラクチャーを有することを特徴とする、請求項1〜13のいずれかに記載の滑走用コーティング材。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれかに記載のブレンドが、フィルム押出工程により押出されてシートを形成し、それに分子転移点前に所望により表面ストラクチャーを施すことを特徴とする、請求項1〜14のいずれかに記載の滑走用コーティング材を製造する方法。
【請求項16】
請求項1〜14のいずれかに記載の滑走用コーティング材を有するウィンタースポーツ用具。
【請求項17】
スキー板またはスノーボード板であることを特徴とする、請求項16に記載のウィンタースポーツ用具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−520211(P2006−520211A)
【公表日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−501746(P2006−501746)
【出願日】平成16年2月5日(2004.2.5)
【国際出願番号】PCT/EP2004/001078
【国際公開番号】WO2004/069352
【国際公開日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(505228925)
【出願人】(505294698)
【Fターム(参考)】