説明

ウィンドウフィルム及びその製造方法、並びにそのウィンドウフィルムを用いたウィンドウ及びその製造方法

【課題】長期間の使用でも劣化し難いEVAを主成分として含む粘着剤層を有する熱圧着用のウィンドウフィルムで、ガラス板に貼り付ける際にニップロールによる加圧を含む工程であっても、外観不良が生じ難いウィンドウフィルムを提供する。
【解決手段】透明プラスチックフィルムの一方の表面に、エチレン−酢酸ビニル共重合体を含む粘着剤組成物からなる粘着剤シートを透明プラスチックフィルムの表面に熱圧着することにより形成されており、且つ前記粘着剤層の両側の表面の粗さ曲線の最大谷深さRv(JIS−B0601(2001))が1μm以上40μm以下であり、且つ谷深さが5μm以上40μm以下の谷部分を占める長さの合計が、評価長さの30%以下であることを特徴とするウィンドウフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン−酢酸ビニル共重合体を主成分とする粘着剤層、熱線遮蔽層等の機能性層及び透明プラスチックフィルムを備える熱圧着用のウィンドウフィルムに関し、特に、ニップロールを用いる加圧を含む工程により、外観不良を生じることなくガラス板等の透明基板に貼り付けることができるウィンドウフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車等のウィンドウ、建築物の窓等(以下、ウィンドウという)には、飛散防止機能、耐擦傷機能、熱線遮蔽機能等を付与するため、それらの機能を有するウィンドウフィルムという機能性フィルムが、透明基板に貼り付けられて用いられている。一般に、ウィンドウフィルムは、透明プラスチックフィルムの表面に、掃除や設置の際にガラス板等の透明基板表面に傷が生じるのを防止するためのハードコート層、又は太陽光中の近赤外線(熱線)の遮蔽や室内から放射される熱線の反射のための熱線遮蔽層等が形成され、その反対側の表面に透明基板に貼り付けるための粘着剤層が形成されている。
【0003】
粘着剤層としては、通常、アクリル樹脂系粘着剤等の感圧接着剤(以下、PSAという)が用いられている(例えば、特許文献1)。粘着剤層にPSAを用いたウィンドウフィルムは透明基板に貼り付ける際に、ゴムローラー等を用いて容易に気泡が入らないように容易に貼り付けることができる。しかしながら、アクリル樹脂系粘着剤の場合は、長期間の使用により、粘着剤が劣化し、フィルムと透明基板との間に発泡が生じたり、フィルムが浮いて剥がれたりして外観不良が生じる場合がある。従って、複層ガラスの内側や高所の窓ガラス等の貼り替えが困難な位置には使用し難いという問題がある。
【0004】
一方、ウィンドウフィルムの粘着剤層として、より耐候性が高い、合わせガラス用の中間膜に一般に用いられる熱圧着用の粘着剤を用いることもできる。熱圧着用の粘着剤としては、エチレン酢酸ビニル共重合体(以下、EVAともいう)を主成分とするもの(以下、EVA系粘着剤ともいう)(例えば、特許文献2)、フッ素樹脂を主成分とするもの、及びポリビニルブチラール(以下、PVBともいう)を主成分とするもの(例えば、特許文献3)等が知られている。特に、EVA系粘着剤は安価であり、接着強度が高く、優れた耐候性、透明性を有する点で有用である。また、EVA系粘着剤は、有機過酸化物などの架橋剤を用いて共重合体を架橋させることにより、接着性、耐貫通性、耐久性等を向上させることができる。
【0005】
特許文献3には、気泡を含まない合わせガラスを効率的に製造するため、表面に、所定の中心線平均粗さRa、山数Pcを有するエンボスを形成したプラスチックシート(中間膜に相当)を2枚のガラス板に挟み、所定の条件で加熱し、ニップロールで加圧した後、所定の条件で2次加熱を行う合わせガラスの製造方法が開示されている。このような方法は、粘着剤層に熱圧着用の粘着剤を用いた熱圧着用のウィンドウフィルムを透明基板に貼り付けてウィンドウを製造する場合も連続的に製造できる有利な方法といえる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−094584号公報
【特許文献2】特開2009−051713号公報
【特許文献3】特開平10−167773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献3に記載された方法は、そこに例示されたフッ素樹脂やPVBを主成分とする粘着剤等にのみ有効であり、EVA系粘着剤を用いた場合は、ニップロールを用いる加圧の際に気泡が入り易く、粘着剤層表面に凹凸が生じて外観不良が生じる場合がある。そこで、粘着剤層にEVA系粘着剤を用いた熱圧着用のウィンドウフィルムを透明基板に貼り付ける場合は、ウィンドウフィルムを透明基板に積層した積層体を真空袋に入れ、脱気し、加熱下に押圧する真空ラミネート法を用いる必要があった。真空ラミネート法は加工に時間がかかり生産性が低いという問題がある。
【0008】
従って、本発明の目的は、粘着剤層に、長期間の使用においても劣化し難く、前述のような利点を有するEVAを主成分として含む粘着剤を用いた熱圧着用のウィンドウフィルムであって、透明基板に貼り付ける際に、ニップロールを用いる加圧を含む工程であっても、外観不良が生じ難いウィンドウフィルムを提供することにある。
【0009】
また、本発明の目的は、このウィンドウフィルムの製造方法を提供することにある。
更に、本発明の目的は、このウィンドウフィルムを用いたウィンドウを提供することにある。
【0010】
また、本発明の目的は、このウィンドウフィルムを用いたウィンドウの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的は、透明プラスチックフィルムの一方の表面に、粘着剤層が形成された熱圧着用のウィンドウフィルムであって、前記粘着剤層が、エチレン−酢酸ビニル共重合体を含む粘着剤組成物からなる粘着剤シートを透明プラスチックフィルムの表面に熱圧着することにより形成されており、且つ前記粘着剤層の両側の表面の粗さ曲線の最大谷深さRv(JIS−B0601(2001))が1μm以上40μm以下であり、且つ谷深さが5μm以上40μm以下の谷部分を占める長さの合計が、評価長さの30%以下であることを特徴とするウィンドウフィルムによって達成される。
【0012】
熱圧着用のウィンドウフィルムにおいて、粘着剤層を透明プラスチックフィルム表面に形成する場合、通常、粘着剤組成物を透明プラスチックフィルム上に押出成形するか、粘着剤シートを透明プラスチックフィルム表面に、単に押圧して形成する。このような方法を採用しているのは、ウィンドウフィルムをガラス板等の透明基板に貼り付ける際に熱圧着を行うため、一般にウィンドウフィルムの製造時には特に大きな熱をかける必要が無いと考えられるからである。しかしながら、ウィンドウフィルムを透明基板に貼り付ける際の熱圧着において、粘着剤層を透明プラスチックフィルムと透明基板の双方に熱圧着する場合、透明プラスチックフィルムと透明基材の曲げ易さの違いにより、粘着剤層と透明プラスチックフィルムとの境界面及び粘着剤層と透明基板との境界面の流動性等の状態が大きく異なってしまうため、ニップロールを用いる加圧を含む熱圧着工程では、ウィンドウフィルムにズレや歪が生じ、気泡が残ってしまったり透明プラスチックフィルムの表面の平滑性が失われたりする不具合が起こることがあった。また、従来のEVA系粘着剤からなる粘着剤層を有するウィンドウフィルムでは、粘着剤層の表面性状については、適性化されていなかった。
【0013】
本発明においては、ウィンドウフィルムの粘着剤層を形成する際に粘着剤シートを熱圧着することで、透明基板に貼り付ける前に粘着剤層と透明プラスチックフィルムとを十分に密着させ、且つ形成された粘着剤層の両側の表面の粗さ曲線の最大谷深さRv等を上記のように適性化している。これにより、透明基板に熱圧着で貼り付ける際にニップロールを用いる加圧工程を用いても、ウィンドウフィルムにおける粘着剤層と透明プラスチックフィルム、及びウィンドウフィルムと透明基板とのズレや各層の歪を低減することができ、気泡が生じ難く表面の平滑性に優れたウィンドウフィルムとすることができる。
【0014】
本発明のウィンドウフィルムの好ましい態様は以下の通りである。
(1)前記粘着剤シートの、熱圧着する前における透明プラスチックフィルム側の表面の算術平均粗さRa(JIS−B0601(2001))が、0.5〜20μmである。これにより、粘着剤シートを透明プラスチックフィルムに熱圧着する際に、より気泡を除去し易くすることができ、粘着剤層と透明プラスチックフィルムとが、より十分に密着したウィンドウフィルムとすることができる。
(2)前記粘着剤シートを熱圧着する温度が、60〜110℃である。
(3)前記粘着剤シートを熱圧着する線圧が、0.5〜50kN/mである。
(2)、(3)により、粘着剤層と透明プラスチックフィルムとが、更に十分に密着したウィンドウフィルムとすることができる。
(4)前記粘着剤組成物が、架橋剤を含む。これにより粘着剤層において、EVAの架橋構造を形成することができ、粘着剤層の接着力をより高めることができる。
(5)前記透明プラスチックフィルムが、融点が150℃以上の耐熱性プラスチックからなるフィルムである。中でも、ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、PETフィルムという)、ポリエチレンナフタレートフィルム(以下、PENフィルムという)、トリアセチルセルロースフィルム(以下、TACフィルムという)は、熱等に対する耐性が高く、透明性が高いため、本発明における透明プラスチックフィルムとして好ましい。
(6)前記透明プラスチックフィルム、前記粘着剤層、及び少なくとも1層の機能性層を含む積層体からなり、前記粘着剤層が最表層に形成されている。
(7)前記機能性層が熱線遮蔽層である。
(8)前記機能性層がハードコート層である。
【0015】
また、上記目的は、透明プラスチックフィルムの一方の表面に、エチレン−酢酸ビニル共重合体を含む粘着剤組成物からなる粘着剤シートを熱圧着することにより、粘着剤層を、該粘着剤層の両側の表面の粗さ曲線の最大谷深さRv(JIS−B0601(2001))が1μm以上40μm以下であり、且つ谷深さが5μm以上40μm以下の谷部分を占める長さの合計が、評価長さの30%以下になるように形成する工程を含むことを特徴とする熱圧着用のウィンドウフィルムの製造方法によっても達成される。上述の通り、通常、熱圧着用のウィンドウフィルムを製造する場合、粘着剤層を押出成形や単なる押圧法により、透明プラスチックフィルムの表面に形成する。本発明のウィンドウフィルムの製造方法は、粘着剤シートを透明プラスチックフィルムに熱圧着し、且つ形成された粘着剤層の両側の表面の粗さ曲線の最大谷深さRv等を上記のように適性化して形成する工程を含んでいる。これにより、透明基板に熱圧着で貼り付ける際にニップロールを用いる加圧工程を用いても、ウィンドウフィルムにおける粘着剤層と透明プラスチックフィルム、及びウィンドウフィルムと透明基板とのズレや各層の歪を低減することができ、気泡が生じ難く表面の平滑性に優れたウィンドウフィルムを製造することができる。
【0016】
(1)本発明のウィンドウフィルムの製造方法の好ましい態様は以下の通りである。
前記粘着剤シートの透明プラスチックフィルム側の表面の算術平均粗さRa(JIS−B0601(2001))が、0.5〜20μmである。これにより、粘着剤シートを透明プラスチックフィルムに熱圧着する工程において、より気泡を除去し易くすることができ、粘着剤層と透明プラスチックフィルムとが、より十分に密着したウィンドウフィルムを製造することができる。
(2)前記粘着剤シートを熱圧着する温度が、60〜110℃である。
(3)前記粘着剤シートを熱圧着する線圧が、0.5〜50kN/mである。
(2)、(3)により、粘着剤層と透明プラスチックフィルムとが、更に十分に密着したウィンドウフィルムを製造することができる。
(4)透明プラスチックフィルムの少なくとも一方の表面に、少なくとも1層の機能性層を形成する工程を更に含む。
【0017】
なお、本発明の製造方法においても、上述の本発明のウィンドウフィルムの好ましい態様と同様な態様が好ましい。
【0018】
また、上記目的は、透明基板の一方の表面に、本発明のウィンドウフィルムを、粘着剤層を透明基板の表面に対向させて配置して熱圧着した積層体を備えることを特徴とするウィンドウによっても達成される。
【0019】
本発明のウィンドウは、効率的に歩留り良く生産可能で、長期間の使用においてもウィンドウフィルムの劣化による外観不良が生じ難いウィンドウである。
【0020】
更に、上記目的は、透明基板の一方の表面に、本発明のウィンドウフィルムを、粘着剤層を透明基板の表面に対向させて配置して熱圧着した積層体と、別の透明基板とが、間隙を置いて配置され、その間隙により中空層が形成されていることを特徴とするウィンドウによっても達成される。2枚の透明基板の間隙に中空層を有するものは、一般に、複層ガラスといわれるものである。長期間の使用においても劣化し難い本発明のウィンドウフィルムを用いることで、耐久性の高い複層ガラス型のウィンドウとすることができる。
【0021】
また、上記目的は、透明基板の一方の表面に、本発明のウィンドウフィルムを、粘着剤層を透明基板の表面に対向させて配置して積層し積層体を得る工程、及び前記積層体を加熱し、ニップロールを用いて加圧することにより圧着する熱圧着工程、を含むことを特徴とするウィンドウの製造方法によっても達成される。本発明のウィンドウの製造方法は、本発明のウィンドウフィルムを用いるので、ウィンドウフィルムを透明基板に熱圧着により貼り付ける際、ニップロールを用いる加圧を用いて効率的に、且つ気泡が生じることによる外観不良を防止してウィンドウを製造することができる。
【0022】
本発明のウィンドウの製造方法の好ましい態様は以下の通りである。
(1)前記熱圧着工程後に、前記積層体を更に加熱する工程を含む。これにより、ウィンドウフィルムの粘着剤層を十分に硬化させることができる。
(2)前記熱圧着工程において、前記積層体を加熱する温度が、60〜110℃である。
(3)前記熱圧着工程において、ニップロールによる加圧の線圧が、2〜100kN/mである。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、熱圧着用のウィンドウフィルムにおいて、粘着剤層を形成する際にEVA系粘着剤からなる粘着剤シートを熱圧着することで、粘着剤層と透明プラスチックフィルムとを十分に密着させ、且つ形成された粘着剤層の両側の表面の粗さ曲線の最大谷深さRv等を適性化しているので、透明基板に熱圧着で貼り付ける際にニップロールを用いる加圧工程を用いても、ウィンドウフィルムのズレや歪を低減することができ、気泡が生じ難く表面の平滑性に優れたウィンドウフィルムとすることができる。従って、本発明の熱圧着用のウィンドウフィルムを用いることで、低コストで生産可能で、長期間の使用においてもウィンドウフィルムの劣化による外観不良が生じ難いウィンドウを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明のウィンドウフィルムの一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明のウィンドウフィルムの別の一例を示す概略断面図である。
【図3】本発明のウィンドウフィルムの製造方法の一例を示す概略断面図である。
【図4】本発明のウィンドウの一例を示す概略断面図である。
【図5】本発明のウィンドウの別の一例を示す概略断面図である。
【図6】本発明のウィンドウの製造方法の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明の熱圧着用のウィンドウフィルムについて、図面を参照しながら説明する。図1は本発明のウィンドウフィルムの一例を示す概略断面図である。図1において、ウィンドウフィルム20は、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等の耐熱性の透明プラスチックフィルム12の一方の表面に、EVA系粘着剤からなる粘着剤層11が形成されている。
【0026】
粘着剤層11は、後述するように、EVAを含む粘着剤組成物からなる粘着剤シートが透明プラスチックフィルム12の表面に熱圧着されたものである。また、粘着剤層11の両側の表面、即ち、透明プラスチックフィルム12側の表面、及び透明プラスチックフィルム12と反対側の表面の粗さ曲線の最大谷深さRv(JIS−B0601(2001)、以下同じ)が1μm以上40μm以下であり、且つ谷深さが5μm以上40μm以下の谷部分を占める長さの合計が、評価長さの30%以下になっている。本発明において、粗さ曲線の最大谷深さRvは、JIS−B0601(2001)に準拠した方法により測定した値である。即ち、粗さ曲線から、その平均線の方向に、所定の長さ(評価長さ)を抜き取り、その評価長さにおける粗さ曲線の谷深さZvを測定し、その最大値を求めたものである。また、粗さ曲線の谷深さが5μm以上40μm以下の谷部分を占める長さの合計の割合については、測定した谷深さZvの範囲が上記範囲である谷部分を占める平均線方向の長さの合計を求め、評価長さに対する割合を求めた。なお、粘着剤層11の透明プラスチックフィルム12側の表面性状の測定は、透明プラスチックフィルム12を容易に剥がして測定することができる。
【0027】
通常、熱圧着用のウィンドウフィルムにおいて、EVA系粘着剤からなる粘着剤層を透明プラスチックフィルムの表面に形成する場合、粘着剤組成物を透明プラスチックフィルム上に押出成形するか、粘着剤シートを透明プラスチックフィルムの表面に、単に押圧して形成する。ウィンドウフィルムの使用時、即ち、透明基板に貼り付ける際に熱圧着を行うため、一般に、ウィンドウフィルム製造時には特に熱をかける必要が無いと考えられるからである。
【0028】
しかしながら、ウィンドウフィルムを透明基板に貼り付ける際の熱圧着において、粘着剤層を透明プラスチックフィルムと透明基板の双方に熱圧着する場合、透明プラスチックフィルムと透明基板の曲げ易さの違いにより、粘着剤層と透明プラスチックフィルムとの境界面及び粘着剤層と透明基板との境界面の流動性等の状態が大きく異なってしまうため、ニップロールを用いる加圧を含む熱圧着工程では、ウィンドウフィルムにズレや歪が生じ、気泡が残ってしまったりプラスチックフィルムの表面の平滑性が失われたりするものと考えられた。また、従来のEVA系粘着剤からなる粘着層を有するウィンドウフィルムでは、粘着剤層の表面性状については適性化されていなかった。
【0029】
本発明においては、ウィンドウフィルム20の粘着剤層11を形成する際に粘着剤シートを熱圧着することで、透明基板に貼り付ける前に粘着剤層11と透明プラスチックフィルム12とを十分に密着させている。また、形成される粘着剤層11の両側の表面の粗さ曲線の最大谷深さRv等を上記のように適性化している(詳細は後述する)。これにより、透明基板に熱圧着で貼り付ける際にニップロールを用いる加圧工程を用いても、ウィンドウフィルム20における粘着剤層11と透明プラスチックフィルム12、及びウィンドウフィルム20と透明基板とのズレや各層の歪を低減することができ、気泡が生じ難く表面の平滑性に優れたウィンドウフィルム20とすることができる。
【0030】
また、図2は本発明のウィンドウフィルムの別の一例を示す概略断面図である。図2において、ウィンドウフィルム20は、図1の場合と同様に、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等の耐熱性の透明プラスチックフィルム12の一方の表面に、EVA系粘着剤からなる粘着剤層11が形成されている。そして、透明プラスチックフィルム12の粘着剤層11が形成された反対側の面に熱線遮蔽層、ハードコート層等の機能性層13が形成されている。機能性層13は1層でも良く、用途に応じて2層以上形成されていても良い。機能性層13の形成位置は、粘着剤層11と透明プラスチックフィルム12との間であっても良く(透明プラスチックフィルム12/機能性層13/粘着剤層11の順で積層されている)、透明プラスチックフィルム12の両側の表面に形成されていても良い(機能性層13/透明プラスチックフィルム12/機能性層13/粘着剤層11の順で積層されている)。粘着剤層11により透明基板に貼り付けるというウィンドウフィルムの性質上、通常、粘着剤層11はウィンドウフィルム20の最表層に形成されている。粘着剤層11及び透明プラスチックフィルム12については、図1の説明の通りである。
【0031】
図3は、本発明のウィンドウフィルムの製造方法の一例を示す概略断面図である。図3に示した装置は、送りロール151及び152、加熱ロール154、プレスロール153及び155、案内ロール156、並びに巻き取りロール157を含む熱圧着装置である。まず、EVAを含む粘着剤組成物から製造した粘着剤シート111を、送りロール151にセットする。また、透明プラスチックフィルム112、又は必要に応じて、常法により透明プラスチックフィルムの一方の表面(又は両側の表面)に熱線遮蔽層等の機能性層を形成した(図示していない)積層フィルム112を送りロール152にセットする。粘着剤シート11及び積層フィルム112の位置は逆でも良い。次いで、図示の通り、粘着剤シート111及び積層フィルム112を積層したものを加熱ロール154とプレスロール153及び155の間で熱圧着し、粘着剤層を透明プラスチックフィルムの表面に形成する。そして、案内ロール156を介して、冷却し、得られたウィンドウフィルム120を巻き取りロール157で巻き取る。 この際、透明プラスチックフィルムの表面に形成される粘着剤層の両側の表面の粗さ曲線の最大谷深さRvが1μm以上40μm以下であり、且つ谷深さが5μm以上40μm以下の谷部分を占める長さの合計が、評価長さの30%以下になるように加熱ロールの温度及び/又はプレスロールの圧力を調節する。また、粘着剤シート111側のロール(図2においてはプレスロール153及び155)の表面性状を調節しても良い。このような熱圧着により、粘着剤層の両側の表面の性状を適性化して透明プラスチックフィルムと十分に密着させることができ、上述のような本発明のウィンドウフィルムを製造することができる。
【0032】
粘着剤シート111を積層フィルム112、即ち透明プラスチックフィルムの表面に熱圧着する際に、粘着剤シート111の透明プラスチックフィルム側の表面の算術平均粗さRa(JIS−B0601(2001)、以下同じ)が、0.5〜20μmであることが好ましい。これにより、熱圧着時に粘着剤シート111と透明プラスチックフィルムとの境界面において、空気の移動が速やかになり、より気泡が除去し易くすることができ、粘着剤層と透明プラスチックフィルムがより十分に密着したウィンドウフィルムを製造することができる。粘着剤シート111の透明プラスチックフィルム側の表面の算術平均粗さ
Raは、2〜18μmが更に好ましい。また、粘着剤シート111の透明プラスチックフィルム側と反対側の表面の算術平均粗さRaも0.5〜20μmであることが好ましい。Raが0.5μm未満であると、粘着剤シート111同士が貼り付いて、送りロール151からスムーズに送り出されなくなったり、プレスロール153に貼り付いたりする不具合が生じる場合がある。一方、Raが20μmを超えると、透明基板との接着時に気泡が除去し難くなる場合がある。通常、粘着剤シート111の表面にエンボス加工することにより、凹凸形状パターンを付与し、上記のような表面性状を付与することができる。凹凸形状パターンは、上述の算術平均粗さRaを有するものであれば、特に制限は無い。例えば、凹凸形状パターンにおける凸部を、円形状、半円形状、多角形状等にすることができる。なお、本発明において、表面の算術平均粗さRaとは、JIS−B0601(2001)に準拠した方法により測定した値である。即ち、粗さ曲線から、その平均線の方向に、所定の長さを抜き取り、その抜き取り部分の平均線から測定曲線までの偏差の絶対値を合計し、平均した値である。
【0033】
また、熱圧着する温度は、60〜110℃が好ましく、80〜110℃が更に好ましく、特に90〜110℃が好ましい。熱圧着の温度は、一般に加熱ロール154の温度で調節する。特に後述するようにEVA系粘着剤組成物に架橋剤を含む場合、架橋剤が反応しないか、ほとんど反応しない温度以下で行う必要がある。
【0034】
また、熱圧着する線圧は、0.5〜50kN/mが好ましく、2〜30kN/mが更に好ましい。このような条件であれば、粘着剤層と透明プラスチックフィルムとが、更に十分に密着したウィドウフィルムを製造することができる。
【0035】
上述の通り、図1又は図2に示した本発明のウィンドウフィルム20において、粘着剤層11の両側の表面の粗さ曲線の最大谷深さRvが1μm以上40μm以下であり、且つ谷深さが5μm以上40μm以下の谷部分を占める長さの合計が、評価長さの30%以下であれば良い。後述する実施例に示すように、粘着剤層11の透明プラスチックフィルム12側の表面、又は透明プラスチックフィルム12と反対側の表面、即ちウィンドウフィルムを貼り付ける透明基板側の表面のいずれか一方の表面性状が上記の範囲を外れると、ウィンドウフィルムを透明基板に、ニップロールを用いる加圧で熱圧着する際にウィンドウフィルムの歪みが生じて、透明プラスチックフィルム12と粘着剤層11との境界面、及び/又は粘着剤層11と透明基板との境界面に気泡が残存し、外観不良が生じることになる。
【0036】
本発明において、粘着剤層11の両側の表面の粗さ曲線の最大谷深さRvは、1 〜38μmが好ましく、1〜35μmが更に好ましい。また粗さ曲線の谷深さが5μm以上40μm以下の谷部分を占める長さの合計は、評価長さの28%以下が好ましく、25%以下が更に好ましい。これにより、ニップロールを用いる加圧で透明基板に熱圧着する際に、より気泡が除去し易いウィンドウフィルムとすることができる。
【0037】
本発明において、粘着剤層11の厚さは、特に制限は無い。厚過ぎるとウィンドウフィルムを透明基板に熱圧着する際に粘着剤層がはみ出る場合があり、薄過ぎると得られるウィンドウの耐貫通性等の機能が低下する場合があるため、粘着剤層11の厚さは、40〜1200μmが好ましく、40〜750μmが更に好ましく、特に100〜650μmが好ましい。
【0038】
以下に、本発明のウィンドウフィルム20を構成する材料について詳述する。本発明において粘着剤層11は、上述の通り、EVAを含む粘着剤組成物からなる粘着剤シートを用いて形成される。
【0039】
[エチレン−酢酸ビニル共重合体]
本発明において、粘着剤組成物のEVAには特に制限はない。EVAにおける酢酸ビニルの含有量は、前記EVAに対して、23〜38質量%が好ましい。EVAの酢酸ビニル単位の含有量が低い程、得られる粘着剤層が硬くなる傾向がある。酢酸ビニル単位の含有量が23質量%未満であると、高温で架橋硬化させる場合に粘着剤層の透明度が十分でない恐れがあり、38質量%を超えると耐衝撃性、耐貫通性に必要な粘着剤層の硬さが不十分となる恐れがある。EVAにおける酢酸ビニルの含有量は25〜30質量%が更に好ましく、特に26〜28質量%が好ましい。また、EVAのメルトフローレート(MFR)(JIS−K7210に従う)は、4g/10分以上が好ましい。これにより、ウィンドウフィルムの製造時やウィンドウフィルムを透明基板に貼り付ける際に、より気泡の除去がし易くなる。MFRは、4.0〜30.0g/10分が更に好ましく、特に8.0〜18.0g/10分であることが好ましい。なお、MFRは、190℃、荷重21.18Nの条件で測定されたものである。
【0040】
[架橋剤]
本発明において、粘着剤組成物は、架橋剤を含むことが好ましい。これにより粘着剤層において、EVAの架橋構造を形成することができ、粘着剤層の接着力をより高めることができる。
【0041】
架橋剤としては、有機過酸化物が好ましく用いられる。有機過酸化物としては、100℃以上の温度で分解してラジカルを発生するものであれば、どのようなものでも使用することができる。有機過酸化物は、一般に、成膜温度、組成物の調整条件、硬化温度、被着体の耐熱性、貯蔵安定性を考慮して選択される。特に、半減期10時間の分解温度が70℃以上のものが好ましい。
【0042】
前記有機過酸化物としては、樹脂の加工温度・貯蔵安定性の観点から、ハイドロパーオキサイド系化合物、ジアルキルパーオキサイド系化合物、パーオキシカーボネート系化合物、及びケトンパーオキサイド系化合物を使用するのが好ましい。これらは、1種単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0043】
前記ハイドロパーオキサイド系化合物としては、例えば、P−メンタンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ヘキシルハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
【0044】
前記ジアルキルパーオキサイド系化合物としては、例えば、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、3−ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチル−α−クミルパーオキサイド、ジ−α−クミルパーオキサイド、1,4−ビス((t−ブチルジオキシ)イソプロピル)ベンゼン、1,3−ビス((t−ブチルジオキシ)イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ビス((t−ブチルパーオキシ)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン、α、α’−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等が挙げられる。
【0045】
前記パーオキシカーボネート系化合物としては、例えば、t−ブチルパ−オキシ−2−エチルヘキシルカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート等が挙げられる。
【0046】
前記ケトンパーオキサイド系化合物としては、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルイソブチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド等が挙げられる。
【0047】
これらの中でも、優れた接着力、耐熱性、耐紫外線性を有する硬化膜が得られることから、ジアルキルパーオキサイド系化合物、特に、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンを用いるのが好ましい。
【0048】
粘着剤組成物における架橋剤の含有量は、EVA100質量部に対して、通常0.5〜5.0質量部であり、好ましくは0.5〜2.5質量部、より好ましくは0.65〜2.5質量部である。架橋剤の含有量が上記の範囲であれば、強固な架橋構造が得られ、ウィンドウフィルムを透明基板に貼り付けた時、透明プラスチックフィルム、粘着剤層及び透明基板を十分に接着一体化させることができる。
【0049】
[架橋助剤]
本発明において、粘着剤組成物は、必要に応じて、さらに架橋助剤を含んでいても良い。前記架橋助剤は、EVAのゲル分率を向上させ、粘着剤層の接着性及び耐久性を向上させることができる。
【0050】
前記架橋助剤の含有量は、EVA100質量部に対して、一般に10質量部以下、好ましくは0.1〜5質量部、更に好ましくは0.1〜2.5質量部で使用される。これにより、更に接着性に優れる粘着剤層が得られる。
【0051】
前記架橋助剤(官能基としてラジカル重合性基を有する化合物)としては、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等の3官能の架橋助剤の他、(メタ)アクリルエステル(例、NKエステル等)の単官能又は2官能の架橋助剤等を挙げることができる。なかでも、トリアリルシアヌレートおよびトリアリルイソシアヌレートが好ましく、特にトリアリルイソシアヌレートが好ましい。
【0052】
[接着向上剤]
本発明において、粘着剤組成物は、更に優れた接着力を付与するために、接着向上剤をさらに含んでいても良い。接着向上剤としては、シランカップリング剤を用いることができる。前記シランカップリング剤としては、γ−クロロプロピルメトキシシラン、ビニルエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランを挙げることができる。これらシランカップリング剤は、単独で使用しても、又は2種以上組み合わせて使用しても良い。なかでも、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランが特に好ましく挙げられる。
【0053】
前記シランカップリング剤の含有量はEVA100質量部に対して0.1〜2質量部が好ましく、更に0.1〜0.65質量部、特に0.1〜0.4質量部であることが好ましい。
【0054】
[その他]
本発明において、粘着剤組成物は、粘着剤層の種々の物性(機械的強度、透明性等の光学的特性、耐熱性、耐光性、架橋速度等)の改良あるいは調整のため、必要に応じて、可塑剤、本発明における化合物Iの他のアクリロキシ基含有化合物、メタクリロキシ基含有化合物及び/又はエポキシ基含有化合物などの各種添加剤をさらに含んでいてもよい。
可塑剤としては、特に限定されるものではないが、一般に多塩基酸のエステル、多価アルコールのエステルが使用される。その例としては、ジオクチルフタレート、ジヘキシルアジペート、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、ブチルセバケート、テトラエチレングリコールジヘプタノエート、トリエチレングリコールジペラルゴネートを挙げることができる。可塑剤は一種用いてもよく、二種以上組み合わせて使用しても良い。可塑剤の含有量は、EVA100質量部に対して5質量部以下の範囲が好ましい。
【0055】
アクリロキシ基含有化合物及びメタクリロキシ基含有化合物としては、一般にアクリル酸あるいはメタクリル酸誘導体であり、例えばアクリル酸あるいはメタクリル酸のエステルやアミドを挙げることができる。エステル残基の例としては、メチル、エチル、ドデシル、ステアリル、ラウリル等の直鎖状のアルキル基、シクロヘキシル基、テトラヒドルフルフリル基、アミノエチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、3−クロロ−2−ヒドロキシプオピル基を挙げることができる。アミドの例としては、ジアセトンアクリルアミドを挙げることができる。また、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールとアクリル酸あるいはメタクリル酸のエステルも挙げることができる。
【0056】
エポキシ含有化合物としては、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、フェノール(エチレンオキシ)グリシジルエーテル、p−t−ブチルフェニルグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、グリシジルメタクリレート、ブチルグリシジルエーテルを挙げることができる。
【0057】
前記アクリロキシ基含有化合物、前記メタクリロキシ基含有化合物、または前記エポキシ基含有化合物は、それぞれEVA100質量部に対してそれぞれ一般に0.5〜5.0質量部、特に1.0〜4.0質量部含まれていることが好ましい。
【0058】
更に、本発明において、粘着剤組成物は、紫外線吸収剤、光安定剤および老化防止剤を含んでいてもよい。紫外線吸収剤を含むことにより、照射された光などの影響によってEVAが劣化し、粘着剤層が黄変するのを抑制することができる。紫外線吸収剤としては、特に制限されないが、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシロキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤が好ましく挙げられる。なお、上記ベンゾフェノン系紫外線吸収剤の配合量は、EVA100質量部に対して0.01〜5質量部であることが好ましい。
【0059】
また、光安定剤を含むことによっても、照射された光などの影響によってEVAの劣化し、粘着剤層が黄変するのを抑制することができる。光安定剤としてはヒンダードアミン系と呼ばれる光安定剤を用いることが好ましく、例えば、LA−52、LA−57、LA−62、LA−63LA−63p、LA−67、LA−68(いずれも(株)ADEKA製)、Tinuvin744、Tinuvin 770、Tinuvin 765、Tinuvin144、Tinuvin 622LD、CHIMASSORB 944LD(いずれもチバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)社製)、UV−3034(B.F.グッドリッチ社製)等を挙げることができる。なお、上記光安定剤は、単独で使用しても、2種以上組み合わせて用いてもよく、その配合量は、EVA100質量部に対して0.01〜5質量部であることが好ましい。
【0060】
老化防止剤としては、例えばN,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナミド〕等のヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系熱安定剤、ラクトン系熱安定剤、ビタミンE系熱安定剤、イオウ系熱安定剤等が挙げられる。
【0061】
[粘着剤シートの製造]
本発明において、粘着剤シートを製造するには、EVA及び必要に応じて上述した各種成分を含む粘着剤組成物を、押出成形又はカレンダ成形(カレンダリング)など、従来公知の方法を用いて、シート状に成形する。組成物の混合は、40〜90℃、特に60〜80℃の温度で加熱混練することにより行うのが好ましい。混練はスーパーミキサー(高速流動混合機)、ロールミル等を用いて、公知の方法で行うことができる。また、シート状に成形する際の加熱温度は、架橋剤を含む場合、架橋剤が反応しない或いはほとんど反応しない温度とすることが好ましい。例えば、40〜90℃、特に50〜80℃とするのが好ましい。更に、必要に応じて、粘着剤シートの少なくとも一方の表面に、エンボス加工により、算術平均粗さRaが、好ましくは0.5〜20μmの表面性状を付与しても良い。
【0062】
エンボス加工は、従来公知の方法を用いて行えばよい。例えば、上記表面性状の反転凹凸形状パターンを有するエンボスローラーやエンボスプレートを粘着剤シートの所定の面に加熱押圧し、凹凸形状パターンを付与することができる。
【0063】
[透明プラスチックフィルム]
本発明において、透明プラスチックフィルム12としては、透明(「可視光に対して透明」を意味する。)のプラスチックフィルムであり、熱圧着用のウィンドウフィルムに使用できる耐熱性を有していれば特に制限はない。特に、融点が150℃以上の耐熱性プラスチックからなるフィルムが好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、ポリエチレンブチレートフィルム、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム、ポリカーボネートフィルム等を挙げることができる。加工時の熱、溶剤、折り曲げ等の負荷に対する耐性が高く、透明性が高い点でPETフィルムが好ましい。透明プラスチックフィルムの表面には機能性層や粘着剤層の密着性を良くするための易接着層を設けても良い。易接着層は、例えば、共重合ポリエステル樹脂とポリウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。透明プラスチックフィルム12の厚さは、特に制限は無いが、10〜500μmが好ましく、50〜400μmが更に好ましく、特に100〜250μmが好ましい。
【0064】
[機能性層]
本発明において、図2における機能性層13は特に制限はなく、ウィンドウフィルムに要求されるどのような機能を有する層でも良い。例えば、従来から用いられている、太陽光中の近赤外線(熱線)を遮蔽する熱線遮蔽層、室内から放射される熱線を反射する熱線反射層、取り付け時や清掃時の透明基板表面の擦り傷や掻き傷を防止するためのハードコート層等が挙げられる。
【0065】
[熱線遮蔽層]
本発明の熱圧着用のウィンドウフィルムは、ウィンドウに用いたときの耐候性、耐熱性が高いため、太陽光等の熱線を受けるウィンドウに用いることが好ましい。従って、機能性層13は熱線遮蔽層であることが好ましい。この場合、長期間の使用においても剥がれたりするような外観不良が生じ難いため、ウィンドウフィルムの貼り替えが困難な複層ガラスの内側に用いることもできる。
【0066】
熱線遮蔽層は、近赤外線吸収剤及びバインダを含む樹脂組成物からなる層である。近赤外線吸収剤は、一般に800〜1200nmの波長に吸収極大を有する無機系材料又は有機系色素である。例えば、タングステン酸化物及び/又は複合タングステン酸化物((複合)タングステン酸化物ともいう)、インジウム−錫酸化物、錫酸化物、アンチモン−錫酸化物、フタロシアニン系色素、金属錯体系色素、ニッケルジチオレン錯体系色素、シアニン系色素、スクアリリウム系色素、ポリメチン系色素、アゾメチン系色素、アゾ系色素、ポリアゾ系色素、ジイモニウム系色素、アミニウム系色素、アントラキノン系色素等を挙げることができる。これらの近赤外線吸収剤は、単独又は組み合わせて使用することができる。
【0067】
バインダとしては、例えば、後述のハードコート層と同様な樹脂を使用することができる。
【0068】
近赤外線吸収剤として、上記(複合)タングステン酸化物を使用する場合、熱線遮蔽層は、バインダ100質量部に対して、(複合)タングステン酸化物を10〜500質量部、さらに20〜500質量部、特に30〜300質量部含有することが好ましい。
【0069】
また、近赤外線吸収剤として、有機系色素を単独、又は上記(複合)タングステン酸化物と併用して使用する場合、上記色素は、バインダ100質量部に対して、0.1〜20質量部、さらに1〜20質量部、特に1〜10質量部含有することが好ましい。
また、熱線遮蔽層には、着色用の色素、紫外線吸収剤、酸化防止剤等をさらに加えても良い。
【0070】
[ハードコート層]
本発明の熱圧着用のウィンドウフィルムはウィンドウに用いたときの耐候性が高く、長期間の使用においても剥がれたりするような外観不良が生じ難い。従って、機能性層13は、更に、ウィンドウの表面の擦り傷等による外観不良も防止することができるハードコート層であることも好ましい。なお、複数の機能性層を形成する場合、ハードコート層はウィンドウフィルムの最外層(透明基板に貼り付けた際に最外層)であることが好ましい。
【0071】
ハードコート層は、JIS K5600(1999)で規定される鉛筆硬度試験でH以上の硬度のものが好ましい。このようなハードコート層とするには、紫外線硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂の樹脂組成物が好ましい。紫外線硬化性樹脂組成物又は熱硬化性樹脂組成物であれば、短時間でハードコート層を形成することができる。特に紫外線硬化性樹脂組成物は、より短時間で硬化させることができ、生産性に優れているので好ましい。紫外線硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、レゾルシノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フラン樹脂、シリコン樹脂などを挙げることができ、紫外線硬化性樹脂は光重合開始剤等とともに紫外線硬化性樹脂組成物とし、熱硬化性樹脂は熱重合開始剤等とともに熱硬化性樹脂組成物として使用する。
【0072】
紫外線硬化性樹脂(モノマー、オリゴマー)としては、例えば、(メタ)アクリレートモノマー類、ポリオール化合物と有機ポリイソシアネートと水酸基含有(メタ)アクリレートの反応物であるポリウレタン(メタ)アクリレート、ビスフェノール型エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸の反応物であるビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートオリゴマー類等を挙げることができる。これら化合物は1種又は2種以上、混合して使用することができる。特に、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の硬質の多官能モノマーを主に使用することが好ましい。
【0073】
これらの紫外線硬化性樹脂を、熱重合開始剤とともに用いて熱硬化性樹脂として使用してもよい。
【0074】
紫外線硬化性樹脂の光重合開始剤として、紫外線硬化性樹脂の性質に適した任意の化合物を使用することができる。例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のアセトフェノン系、ベンジルジメチルケタール等のベンゾイン系、ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系、チオキサントン系等が使用できる。特に、特に1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASFジャパン社製、イルガキュア184)が好ましい。光重合開始剤の量は、樹脂組成物に対して一般に0.1〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%である。
【0075】
熱硬化性樹脂の熱重合開始剤として、加熱により重合を開始させる官能基を含む化合物である有機過酸化物やカチオン重合開始剤が挙げられ、中でも有機過酸化物が好ましい。熱重合開始剤は、1種又は2種以上の混合で使用することができる。熱重合開始剤の量は、樹脂組成物に対して、一般に0.01〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%である。
【0076】
更に、ハードコート層は、必要に応じて、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、老化防止剤、塗料加工助剤、着色剤等を少量含んでいても良い。その量は、樹脂組成物に対して一般に0.1〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%である。
【0077】
ハードコート層を形成するには、例えば、紫外線硬化樹脂の場合、アクリル系モノマー及び光重合開始剤、必要に応じてその他の添加剤を含む紫外線硬化性樹脂組成物をトルエン等の溶媒で溶液にした塗工液をグラビアコータ等により透明プラスチックフィルムの表面に塗工し、その後乾燥し、次いで紫外線により硬化する方法を挙げることができる。このウェットコーティング法であれば、高速で均一に且つ安価に成膜できるという利点がある。
【0078】
紫外線硬化の光源として紫外〜可視領域に発光する多くのものが採用でき、例えば超高圧、高圧、低圧水銀灯、ケミカルランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、マーキュリーハロゲンランプ、カーボンアーク灯、白熱灯、レーザ光等を挙げることができる。照射時間は、ランプの種類、光源の強さによって一概には決められないが、数秒〜数分程度である。また、硬化促進のために、予め積層体を40〜120℃に加熱し、これに紫外線を照射してもよい。
【0079】
[ウィンドウ]
以下に、本発明のウィンドウについて図面を参照しながら説明する。図4は、本発明のウィンドウの一例を示す概略断面図である。
【0080】
ウィンドウ30は、透明基板25の表面に、本発明の熱圧着用のウィンドウフィルムが熱圧着されたウィンドウフィルム(熱圧着後)20’とからなる積層体(熱圧着積層体という)である。熱圧着は、好ましくは後述するように、ニップロールを用いる加圧を含む熱圧着工程によって行われる。ウィンドウフィルム(熱圧着後)20’は、図2における粘着剤層11が熱圧着により硬化し、粘着剤層(熱圧着後)11’となった以外は、上述の図2のウィンドウフィルム20と同様な構成である。
【0081】
本発明のウィンドウ30は、本発明のウィンドウフィルム20を透明基板25に熱圧着したものなので、効率的に、且つ外観不良を生じ難いため歩留り良く生産でき、長期間の使用においてもウィンドウフィルムの劣化による外観不良が生じ難いウィンドウである。
【0082】
透明基板25は、曲げ難い透明な基板であれば良く、例えば、グリーンガラス、珪酸塩ガラス、無機ガラス板、無着色透明ガラス板などのガラス板の他、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンブチレート、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート等のプラスチック製の基板を用いてもよい。プラスチック製の基板の場合は、必要な曲げ難さとして、曲げ弾性率2000MPa以上で、厚みが2mm以上であることが望ましい。耐熱性、耐候性、耐衝撃性等の点でガラス板が好ましく、ガラス板の厚さは、2〜20mm程度が一般的である。
【0083】
また、図5は、本発明のウィンドウの別の一例を示す概略断面図である。
図示の通り、本発明のウィンドウ60は、透明基板45の一方の表面に、本発明の熱圧着用のウィンドウフィルムが熱圧着されたウィンドウフィルム(熱圧着後)20’とからなる熱圧着積層体50、熱圧着積層体50と間隙をおいて対向するように配置された別の透明基板57、これらの外周部に配置され接着剤(図示していない)によりこれらを接合しているスペーサー59、及びスペーサー59によって熱圧着積層体50と透明基板57との間に形成された中空層58から構成されている。即ち、ウィンドウ60は、一般に複層ガラスといわれる構成を備えている(複層ガラス型のウィンドウともいう)。
【0084】
熱圧着積層体50は、上述のウィンドウ30と同様な構成である。従って、ウィンドウフィルムの透明基板45への熱圧着は、好ましくは後述するように、ニップロールを用いる加圧を含む熱圧着工程によって行われる。また、ウィンドウフィルム(熱圧着後)20’は、図2における粘着剤層11が熱圧着により硬化し、粘着剤層(熱圧着後)11’となった以外は、上述の図2のウィンドウフィルム20と同様な構成である。そして、透明基板45は上述の透明基板25と同様である。また、透明基板57については、上述の透明基板25と同様なものの他、表面処理により光拡散機能を備えたすりガラス、網入りガラス、線入板ガラス、強化ガラス、倍強化ガラス、低反射ガラス、高透過板ガラス、セラミック印刷ガラス、熱線や紫外線吸収機能を備えた特殊ガラス等、種々のガラスを適宜選択して用いることができる。
【0085】
ウィンドウ60において、ウィンドウフィルム(熱圧着後)20’の位置は特に制限は無いが、図5に示したように、ウィンドウフィルム(熱圧着後)20’が別の透明基板57に対向するように、即ち、ウィンドウフィルム(熱圧着後)20’が中空層58に隣接するように配置されていることが好ましい。本発明のウィンドウフィルムは、長時間の使用においても劣化し難いので、ウィンドウフィルムの貼り替えが困難な複層ガラスの内側にも好ましく用いることができるからである。
【0086】
本発明のウィンドウ60は、本発明のウィンドウフィルム20を透明基板45に熱圧着した熱圧着積層体50を含んでいるので、効率的に生産でき、長期間の使用においてもウィンドウフィルムの劣化による外観不良が生じ難い複層ガラス型のウィンドウである。
【0087】
図6は、本発明のウィンドウの製造方法の一例を示す概略断面図である。図4におけるウィンドウの製造方法は、まず、透明基板225の一方の表面に、本発明のウィンドウフィルム220を粘着剤層211が透明基板225に接触するように積層し、積層体229を形成する。ウィンドウフィルム220は、透明プラスチックフィルム212の一方の表面に機能性層213が形成され、その反対側の表面にEVA系粘着剤からなる粘着剤層211が、上述の説明のように形成されたものである。
【0088】
この積層体229を搬送装置253により、搬送しながら加熱炉251を通過させる。加熱炉251はヒーター部252を備え、積層体229が加熱炉251を通過する間に、ウィンドウフィルム220の粘着剤層211を所定の温度になるように加熱することができる。その後、積層体229を、対向する2基1対のロール部で構成されるニップロール254の間を通過させる。ニップロール254は、ロール部間を通過するものを所定の線圧で連続的に加圧する装置である。これにより積層体229が加圧され、加熱された粘着剤層211が透明基板225及び透明プラスチックフィルム212の境界面に圧着し、粘着剤層(熱圧着後)211’となり、透明基板225にウィンドウフィルム(熱圧着後)220’が密着したウィンドウ230が形成される。この際、本発明のウィンドウフィルム220において、粘着剤層211は、上述のように透明プラスチックフィルム212にEVA系粘着剤組成物から製造された粘着剤シートを熱圧着することで形成され、且つ、粘着剤層211は、両側の表面の粗さ曲線の最大谷深さRvが1μm以上40μm以下であり、且つ谷深さが5μm以上40μm以下の谷部分を占める長さの合計が、評価長さの30%以下に調整されている。これにより、ニップロールを用いる加圧であっても、ウィンドウフィルム220に歪みが生じ難く、粘着剤層211と透明基板225の境界面に気泡が生じ難くなっている。
【0089】
搬送装置253、加熱炉251、及びニップロール254は従来公知のものを使用することができる。加熱炉251のヒーター部252の加熱方式はどの様な方式でも良く、例えば、赤外線加熱方式、熱風方式等が挙げられる。加熱炉251ではなく、加熱ロール方式の加熱装置であっても良い。加熱は、粘着剤層211に含まれる架橋剤が反応しない温度であれば特に制限は無い。粘着剤層211の流れ性等を考慮すると、積層体229を加熱する温度は、60〜110℃が好ましく、60〜100℃が更に好ましく、特に65〜90℃が好ましい。
【0090】
ニップロール254はどの様なものでも良く、複数対のニップロールを有するものでも良い。また、加圧時の温度低下を避けるため、加熱ロールで構成されているものでも良い。ニップロール254による加圧の線圧は特に制限は無いが、2〜100kN/mが好ましく、5〜50kN/mが更に好ましい。
【0091】
本発明のウィンドウの製造方法において、特に粘着剤層211が架橋剤を含む場合、上述の熱圧着工程後、更に、加熱することで粘着剤層211を架橋一体化する工程(加熱架橋工程)を行うことが好ましい。これにより、粘着剤層211を十分に硬化させ、より接着力を高めることができ、よりウィンドウフィルムが剥がれ難いウィンドウとすることができる。加熱架橋工程は、従来公知の方法を用いることができる。例えば、オートクレーブ等の高温高圧処理を用いることができる。加熱条件は、特に制限は無く、後述のEVA層に含まれる架橋剤等の配合によっても調節する。通常、100〜150℃(特に130℃付近)で、10分〜1時間加熱する。加熱は、1.0×10Pa〜5.0×10Paの圧力で加圧しながら行うのが好ましい。
【0092】
なお、図5に示した複層ガラス型のウィンドウ60とするには、上述のように製造したウィンドウを熱圧着積層体50として用い、常法により製造することができる。
【実施例】
【0093】
以下、本発明を実施例により説明する。
[実施例1〜4、比較例1〜6]
【0094】
1.熱線遮蔽層の形成
下記配合の組成物を、透明プラスチックフィルムとして、表1に示した実施例1〜8及び比較例1〜3の厚さのPETフィルム上に、バーコータを用いて塗布し、80℃のオーブン中で2分間乾燥させた後、照射線量500mJ/mで1秒間紫外線を照射することによりPETフィルム上に熱線遮蔽層(厚さ5μm)を形成した。
【0095】
(配合)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート:80質量部
光重合開始剤(イルガキュア(登録商標)184):5質量部
Cs0.33WO(平均粒径80nm):20質量部
メチルイソブチルケトン:300質量部
【0096】
2.粘着剤シートの作製
下記配合のEVAを含む粘着剤組成物を原料としてカレンダ成形法により成形体を得た。なお、組成物の混練は80℃で15分行い、またカレンダロールの温度は80℃、加工速度は5m/分であった。その後、エンボスロールを用いて、成形体の一方の表面をエンボス加工することにより、算術平均粗さRaが0.5〜20μmの表面性状とし、ウィンドウフィルムを作製した際に粘着剤層が厚さ420μmになるように調製した粘着剤シートを得た。なお、表面性状の測定は、JIS−B0601(2001)に準拠し、表面粗さ測定機((株)東京精密製サーフコム480A)を用いて測定した。また、測定は10箇所行い、その測定値の平均値を求めた。測定条件は、触針先端半径:2μm、評価長さ:12.5mm、測定速度:0.3mm/s、長波長カットオフ値λc:2.5mm、カットオフ比λc/λs:300(λsは短波長カットオフ値)とした。
【0097】
(配合)
EVA(EVAに対する酢酸ビニルの含有量25質量%;ウルトラセン635(東ソー社製)):100質量部、
有機過酸化物(t−ブチルパ−オキシ2−エチルヘキシルカーボネート;トリゴノックス117(化薬アクゾ社製):2.5質量部、
架橋助剤(トリアリルイソシアヌレート;TAIC(登録商標)(日本化成社製)):2質量部、
シランカップリング剤(γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン;KBM503(信越化学社製)):0.5質量部
紫外線吸収剤:(ユビナール3049(BASF社製)):0.5質量部
【0098】
3.ウィンドウフィルムの作製
上記1.で用いた透明プラスチックフィルムの熱線遮蔽層を形成した反対側の表面に、上記2.で作製した粘着剤シートのRaが0.5〜20μmとなっている方の表面を透明プラスチックフィルム側にして載置し、100℃に加熱した加熱ロールで線圧5kN/mで熱圧着し、表1に示した実施例1〜4、及び比較例1〜6の粘着剤層の表面性状(粗さ曲線の最大谷深さRv、谷深さ5μm以上40μm以下の谷部分の割合、算術平均粗さRa)、及び厚さ420μmの粘着剤層を有するウィンドウフィルムを作製した(図3参照)。表面性状の調整は、熱圧着前の粘着剤シートの表面性状、熱圧着の温度及び圧力を調節することで行った。比較例3については、加熱ロールを用いずに粘着剤シートを透明プラスチックフィルムの表面に常温で押圧して表1に示した粘着剤層を有するウィンドウフィルムを作製した。なお、表面性状の測定は、JIS−B0601(2001)に準拠し、表面粗さ測定機((株)東京精密製サーフコム480A)を用いて測定した。また、測定は10箇所行い、その測定値の平均値を求めた。測定条件は、触針先端半径:2μm、評価長さ:12.5mm、測定速度:0.3mm/s、長波長カットオフ値λc:2.5mm、カットオフ比λc/λs:300(λsは短波長カットオフ値)とした。
【0099】
4.ウィンドウの作製
透明基板としてガラス板(厚さ:3mm)に、上記3.で作製した実施例1〜4、及び比較例1〜6のウィンドウフィルムを、粘着剤層をガラス板側にして載置し、加熱装置及びニップロールによる加圧装置を有する圧着装置を用いて、70℃に加熱し、線圧12kN/mで圧着し、次いでオートクレーブにより温度135℃、圧力7×10Paの条件下で30分間加圧処理してウィンドウを作製した。ウィンドウの評価は、得られたウィンドウの気泡の有無、又はウィンドウフィルムのズレの有無を外観観察し、良好な場合を○、気泡残存やフィルムのズレが認められた場合を×とした。
【0100】
5.評価結果
評価結果を表1に示す。
【0101】
【表1】

【0102】
表1に示す通り、ウィンドウフィルムの粘着剤層が粘着剤シートを透明プラスチックフィルムに熱圧着することにより形成され、且つ粘着剤層の両側の表面の粗さ曲線の最大谷深さRvが1μm以上40μm以下であり、且つ谷深さが5μm以上40μm以下の谷部分を占める長さの合計の割合が30%以下の実施例1〜4は、ニップロールを用いる加圧を含む熱圧着工程で透明基板に貼り付けてウィンドウを作製しても、気泡残り及びフィルムのズレが無く、良好な外観であった。
【0103】
一方、粘着剤層の透明プラスチックフィルム側の表面、及び/又は透明プラスチックフィルムと反対側の表面の粗さ曲線の谷深さが5μm以上40μm以下の谷部分を占める長さの合計の割合が30%を超える比較例1及び2、最大谷深さRvが40μmを超える比較例3及び4、並びに最大谷深さRvが1μm未満の比較例5では、気泡残りが生じた。
【0104】
また、粘着剤層を形成する際に熱圧着を用いなかった比較例6は、粘着剤層の表面性状が上記範囲であってもフィルムのズレが生じ外観不良が生じた。
【0105】
以上により、本発明の熱圧着用のウィンドウフィルムは、EVA系粘着剤からなる粘着剤層であっても、ニップロールを用いた加圧による熱圧着工程を用いて外観が良好なウィンドウを製造できることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明により、耐候性が高く、長期間使用しても外観不良が生じ難いウィンドウを効率的に製造できる熱圧着用のウィンドウフィルムを提供できる。本発明により得られるウィンドウは、建築物や乗り物(自動車、鉄道車両、船舶)用の窓、プラズマディスプレイなどの電子機器、冷蔵庫や保温装置などのような各種装置の扉や壁部など、種々の用途に使用することができる。
【符号の説明】
【0107】
11、211 粘着剤層
11’、211’ 粘着剤層(熱圧着後)
12、212 透明プラスチックフィルム
13,213 機能性層
20、120、220 ウィンドウフィルム
20’、220’ ウィンドウフィルム(熱圧着後)
25、45、57、225 透明基板
30、60、230 ウィンドウ
50 熱圧着積層体
58 中空層
59 スペーサー
111 粘着剤シート
112 透明プラスチックフィルム(又は積層フィルム)
229 積層体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明プラスチックフィルムの一方の表面に、粘着剤層が形成された熱圧着用のウィンドウフィルムであって、
前記粘着剤層が、エチレン−酢酸ビニル共重合体を含む粘着剤組成物からなる粘着剤シートを透明プラスチックフィルムの表面に熱圧着することにより形成されており、且つ
前記粘着剤層の両側の表面の粗さ曲線の最大谷深さRv(JIS−B0601(2001))が1μm以上40μm以下であり、且つ谷深さが5μm以上40μm以下の谷部分を占める長さの合計が、評価長さの30%以下であることを特徴とするウィンドウフィルム。
【請求項2】
前記粘着剤シートの、熱圧着する前における透明プラスチックフィルム側の表面の算術平均粗さRa(JIS−B0601(2001))が、0.5〜20μmである請求項1に記載のウィンドウフィルム。
【請求項3】
前記粘着剤シートを熱圧着する温度が、60〜110℃である請求項1又は2に記載のウィンドウフィルム。
【請求項4】
前記粘着剤シートを熱圧着する線圧が、0.5〜50kN/mである請求項1〜3のいずれか1項に記載のウィンドウフィルム。
【請求項5】
前記粘着剤組成物が、架橋剤を含む請求項1〜4のいずれか1項に記載のウィンドウフィルム。
【請求項6】
前記透明プラスチックフィルムが、融点が150℃以上の耐熱性プラスチックからなるフィルムである請求項1〜5のいずれか1項に記載のウィンドウフィルム。
【請求項7】
前記透明プラスチックフィルム、前記粘着剤層、及び少なくとも1層の機能性層を含む積層体からなり、前記粘着剤層が最表層に形成されている請求項1〜6のいずれか1項に記載のウィンドウフィルム。
【請求項8】
前記機能性層が熱線遮蔽層である請求項1〜7のいずれか1項に記載のウィンドウフィルム。
【請求項9】
前記機能性層がハードコート層である請求項1〜8のいずれか1項に記載のウィンドウフィルム。
【請求項10】
透明プラスチックフィルムの一方の表面に、エチレン−酢酸ビニル共重合体を含む粘着剤組成物からなる粘着剤シートを熱圧着することにより、粘着剤層を、該粘着剤層の両側の表面の粗さ曲線の最大谷深さRv(JIS−B0601(2001))が1μm以上40μm以下であり、且つ谷深さが5μm以上40μm以下の谷部分を占める長さの合計が、評価長さの30%以下になるように形成する工程を含むことを特徴とする熱圧着用のウィンドウフィルムの製造方法。
【請求項11】
前記粘着剤シートの透明プラスチックフィルム側の表面の算術平均粗さRa(JIS−B0601(2001))が、0.5〜20μmである請求項10に記載のウィンドウフィルムの製造方法。
【請求項12】
前記熱圧着する工程における温度が、60〜110℃である請求項10又は11に記載のウィンドウフィルムの製造方法。
【請求項13】
前記熱圧着における線圧が、0.5〜50kN/mである請求項10〜12のいずれか1項に記載のウィンドウフィルムの製造方法。
【請求項14】
透明プラスチックフィルムの少なくとも一方の表面に、少なくとも1層の機能性層を形成する工程を更に含む請求項10〜13のいずれか1項に記載のウィンドウフィルムの製造方法。
【請求項15】
透明基板の一方の表面に、請求項1〜9のいずれか1項に記載のウィンドウフィルムを、粘着剤層を透明基板の表面に対向させて配置して熱圧着した積層体を備えることを特徴とするウィンドウ。
【請求項16】
透明基板の一方の表面に、請求項1〜9のいずれか1項に記載のウィンドウフィルムを、粘着剤層を透明基板の表面に対向させて配置して熱圧着した積層体と、別の透明基板とが、間隙を置いて配置され、その間隙により中空層が形成されていることを特徴とするウィンドウ。
【請求項17】
透明基板の一方の表面に、請求項1〜9のいずれか1項に記載のウィンドウフィルムを、粘着剤層を透明基板の表面に対向させて配置して積層し積層体を得る工程、及び
前記積層体を加熱し、ニップロールを用いて加圧することにより圧着する熱圧着工程、を含むことを特徴とするウィンドウの製造方法。
【請求項18】
前記熱圧着工程後に、前記積層体を更に加熱する工程を含む請求項17に記載のウィンドウの製造方法。
【請求項19】
前記熱圧着工程において、前記積層体を加熱する温度が、60〜110℃である請求項17又は18に記載のウィンドウの製造方法。
【請求項20】
前記熱圧着工程において、ニップロールによる加圧の線圧が、2〜100kN/mである請求項17〜19のいずれか1項に記載のウィンドウの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−224009(P2012−224009A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−94715(P2011−94715)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】