ウイルス粒子の組織化電子顕微鏡写真における識別及び分類
電子顕微鏡写真における構造の識別及び特徴付け用の方法である。第1画像における構造を選定する。構造は第1方向において変形する第1形状種類を持つ。選定される構造を、第1形状種類と異なる第2形状種類に変換する。第2形状種類の変換する構造を用いて複数の鋳型を形成する。第2画像における新しい構造を識別する。新しい構造は第1形状種類を持つ。各鋳型の第2形状種類の構造を、第1方向において変形する。鋳型が新しい構造に最良に調和する好適鋳型であることを定める。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)本発明は画像における構造の識別に関する。とりわけ、本発明はウイルス粒子の組織化電子顕微鏡写真における識別及び分類の方法及び手配を提供する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
(発明の背景)ウイルス構築(アセンブリ)は難解な処理であり、及び集中的な研究の対象である。ウイルスは宿主細胞を利用し、それらの子孫のウイルス粒子を、成熟(完成)及び細胞内輸送の複雑な処理を経ることによって生成する。この処理は、電子顕微鏡を利用する高倍率で監視することができ、それは異なる種類のウイルス粒子の異なる細胞区画(コンパートメント)における視覚的な同定を許す。
解決されるべきままである重要な問題には、ウイルスタンパク質の同一性が含まれ、それは、このウイルス構築処理の各段階、並びに異なる種類のウイルス粒子のウイルス成熟中での根底にある細胞内の転位及び局在の機構において包含される。ウイルスの成熟の構造的局面は一般的に対処し難いが、断層撮影及び低温(クリオ)EMのような視覚化技術がウイルス構造上の膨大な情報に大いに貢献した。これらの技術は、安定な、成熟することが多いウイルス粒子上の情報を提供する。遺伝学的道具(ツール)は入手可能であり、鍵となるウイルスタンパク質成分の変異体を生成し、及び構造的な効果は、EMによって視覚化することができる。しかし、構造的効果、特に中間及び曖昧な粒子形態を特徴付け、及び客観的なやり方においてそれを適切に定量化するための妥当な道具を欠如する。ウイルス粒子、成熟及び細胞内輸送を特徴付け、及び定量化するための画像分析の道具は、電子顕微鏡を用いて異なるウイルス構築状態の客観的な検討を促進する。多数の情報が獲得されるが、構造化され、及びそれから統計的に生成され、効果を評価し、及び結論を引き出されるべき必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0003】
(本発明の概要)ウイルス粒子の構造形態学の電子顕微鏡写真における特徴付けは、複雑な作業であるが、ウイルス粒子形態学における成熟処理(プロセス)の研究及び適用される変異又は抗ウイルス性薬物の効果に応じた変化の検出に関連して望ましい。したがって、手法が、ウイルス粒子の形態を電子顕微鏡写真において記載し、及び分類するために、所定のウイルス構造の不変の特徴(invariant characteristics)の決定に基づいて開発された。ウイルス粒子のための鋳型は、小さな慣らし(training)の組の電子顕微鏡写真から得られる情報に基づいて創造され、及び次いで興味のある同様な構造を、無制限の数の電子顕微鏡写真における相関の処理によって分類し、及び定量化するために採用される。線形の変形分析を用いて、本明細書に記載するこの新しい演算法(アルゴリズム)を楕円率のようなウイルス粒子の変動を取り扱うことができ、及び更にウイルス粒子の寸法及び配向(オリエンテーション)のような特性の評価を許す。方法の実践的適用は、ウイルス粒子の3種の多様な分類(クラス)を、人間(ヒト)のサイトメガロ-ウイルスに感染する線維芽細胞の透過電子顕微鏡写真において位置付ける能力によって実証される。
【0004】
概要において、方法は、構造の電子顕微鏡写真における識別及び特徴付け用である。第1画像における構造を選定する。構造は第1方向において変形される第1形状種類を持つ。選定構造は、第1形状種類と異なる第2形状種類に変換される。第2形状種類の変換される構造を用いて複数の鋳型を形成する。第2画像における新しい構造を識別する。新しい構造は第1形状種類を持つ。各鋳型の第2形状種類の構造は、第1方向において変形される。鋳型が新しい構造に最良に調和する好適鋳型であることを定める。
【0005】
(図面の簡潔な説明)(図面の簡単な説明)の項に移す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
(詳細な記載)ウイルス粒子の電子顕微鏡写真における識別において補助されるように、自動化される系(システム)の開発を、本明細書に記載する。型(モデル)として、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)、β-ヘルペス分類のウイルスに感染させた線維芽細胞を用いた。ヘルペスウイルスは例示的例として用いただけであり、及び本発明はヘルペスウイルスに制限されないと理解すべきである。ヒトサイトメガロウイルスでの感染の間に、ウイルス粒子の多くの異なる中間形態が生成される。ヘルペスウイルスの構築の間に、宿主細胞が、ウイルスの遺伝的物質のコピーを作成するように、及びカプシド、ウイルスタンパク質の殻を生成するように迫られ、それらは遺伝的物質を包み、及び保護する。カプシドは、球状構造であり、それは寸法及び対称性に関して変動させることができ、及び成熟するときに二重膜によって包まれ得る。ウイルスカプシドの成熟は、ウイルス粒子生産における重要な段階であり、及び頻繁に検討されるものの1種である。しかし、それらの外観は、電子顕微鏡写真において著しく変動し、それは分析を難問にする。ヘルペスウイルスの独特な特長は、外皮(テグメント)であり、最終的な包囲に先立ってカプシドを囲むウイルスタンパク質の層である。外被(エンベロープ)は覆われた(tegumented)カプシドの細胞質における分泌小胞への出芽によって獲得される。しかる後、感染性ウイルス粒子は宿主細胞を、形質膜を有する小胞を含むこれらのウイルスの融合によって出る。
【0007】
ウイルス粒子の分類及び定量化用の目的手法を、そのような透過電子顕微鏡写真において開発した。低温電子顕微鏡(クリオ-EM)の画像の関連分析において、著しく多くの努力が識別の異なる方法の探索(exploring)に向けられた。低温顕微鏡写真では、多重の鋳型を採用する相互相関及び縁部(エッジ)検出のための方法が好首尾に適用された。
【0008】
適する取組みで、ウイルス粒子の成熟及びそれらの細胞内の転位の特徴付け及び定量化を許すものは、電子顕微鏡検査を採用するこれらの現象の目的の検討を促進する。しかし、電子顕微鏡画像は、それらの重く組織化された(textured)背景のため、目的のやり方において分析及び記載し難い。加えて、個々のウイルス粒子は、電子顕微鏡写真におけるそれらの投射、電子顕微鏡検査用の試料調製に利用する手法及び写真撮影に用いる設定によって多種多様な形状を表示する。典型的な電子顕微鏡画像100、102は、貴重な情報を提供し、図1A及び1Bにそれぞれ示される。
【0009】
本発明では、取組みはHCMYの感染した細胞の核におけるカプシドの分析に適用され、それは、エンプティ(空)のカプシド104(Aと呼ばれる)、半透明な中心(コア)106を有するカプシド(Bと呼ばれる)及び包装されたDNAを含むカプシド108(Cと呼ばれる)のような、図2A-Cにおいて最良に示すように、成熟の規定される状態で存在する。
【0010】
本発明に従う方法及び手配をウイルス粒子と共に例示する。これは非-制限的な例として見るべきである。他の種類の粒子は、例えば、細胞又は細胞の構造のような、生物学的対象物を含み、しかしまた、非-有機的粒子及び構造は、記載される方法及び手配への軽微(マイナ)な修飾を用いて識別及び特徴付けられ得る。
【0011】
本発明に従う方法には、画像獲得工程が含まれる。電子顕微鏡写真は走査(スキャン)すべきファイル又は映像(ピクチャ)として電子顕微鏡から提供され得る。方法の更なる工程のため、好ましくは各顕微鏡写真のための画素寸法、分解能及び拡張の知識を達成し、及び貯える。
【0012】
前-処理工程では、関連ある粒子を選定し、及び可能性がある変形した外観から円形に変換する。
【0013】
鋳型形成の工程において、選定及び変換した粒子を、鋳型を形成するのに用いて、それは試験関数によって特徴付けられ得る。
【0014】
調和性の工程では、鋳型又は試験関数を利用し、粒子を更なる画像(群)において識別する。方法の工程は、次に記載し、及び例証する。
【0015】
本発明に従う識別及び分類の機器は、十分な算出力を有する一般的な個人向け(パーソナル)コンピュータに基づき得る。識別及び分類の機器は、顕微鏡写真を受け取るためのインターフェイス、変形した画像を変換するための前-処理手段、鋳型を形成するため又は試験関数を抽出するための手段、及び調和性手法を実行するための手段を備える。これらの工程は、典型的に及び好ましくはソフトウェアコードモジュールによって遂行される。
【0016】
ヒトの胚性の肺線維芽細胞(HF)のような細胞培養物を、Hank's(ハンクス)塩を有し、炭酸水素塩を含まない、最小基本培地(GIBCO(ギブコ) BRL社)を、25mMのHEPES [4-(2ヒドロキシエチル)-l-ピペラジンスルホン酸エタン]、10%熱-不活化ウシ胎仔血清、L-グルタミン(2mM)、ペニシリン(100U/ml)及びストレプトマイシン(100mg/ml)(GIBCO BRL、Grand Island(グランドアイランド)、NY(ニューヨーク州)、米国)で補足したものにおいて維持した。細胞を、最大17回の継代について175cm2での組織培養フラスコ(Corning(コーニング社)、New York(ニューヨーク)、米国)において培養した。
【0017】
ウイルス感染工程において、HF細胞を、1の感染効率(a multiplicity of infection、MOI)を採用するHCMV株AD169で感染させた。上清に含まれるウイルスを、7又は10の日数の感染後日数(days post-infection、dpi)で収集し、細胞残屑を低速遠心分離によって取り除き、及び接種のために用いるまで-70℃で凍らせた。
【0018】
ウイルス感染させた細胞を、電子顕微鏡検査によって検査するために、感染されてない及びHCMVで感染させた細胞を、1、3、5、及び7のdpiで収穫し、及びしかる後0.1Mショ糖及び3mMのCaCl2を含む0.1Mカコジル酸ナトリウム緩衝剤において2%グルタルアルデヒドで、室温pH7.4、30分間固定した。細胞を次いで木製棒(スティック)によって削り落とし、及び連続させる4℃での一昼夜の固定のためにEppendorf(エッペンドルフ)管に移した。この手法に次いで、細胞を3mMのCaCl2を含む0.15Mカコジル酸ナトリウム緩衝剤、pH7.4において洗浄し、及び遠心分離によってペレット化(小球化)した。これらのペレットを次いで1.5mMのCaCl2を含む0.07Mカコジル酸ナトリウム緩衝剤、pH7.4、4℃で、2時間溶解した2%四酸化オスミウムにおいて後-固定し、連続してエタノール及びアセトンにおいて脱水し、及びLX-112(Ladd(ラッド社)、Burlington(バーリントン)、VT(バーモント州)、米国)において埋め込んだ。区分上の対比(コントラスト)は、酢酸ウラニル、次いでクエン酸鉛によって得、及び検査を、Philips(フィリップス)420又はTecnai(テクナイ)10(FEI Company(カンパニ)、Oregon(オレゴン)、米国)の透過電子顕微鏡の80kVで実行した。
【0019】
次いで画像の獲得、離散化及び分析を続けた。HCMV-感染させたHF細胞の電子顕微鏡写真を、HP Scanjet(スキャンジェット)3970における5.5nm/画素の分解能での8-ビット階調(グレイスケール)を採用してデジタル化した。履行は、Matlab(メタラボ)7.0.1(Mathworks Inc.(マスワーク社)、Natick(ナティック)、MA(マサチューセッツ州)、米国)及びDell Optiplex(デル・オプティプレックス)GX260の個人向けコンピュータ上のSun Java(登録商標)(サン・ジャバ)1.4.2ソフトウェアを用い実行した。この分析は、使い易いグラフィカルインターフェイス、及び迅速で、便利な使用のために後述する助変数(パラメータ)の自動化を包含する。
【0020】
次いで細胞内ウイルス構築の検討のための使用者に友好的(ユーザ-フレンドリ)な及び信頼できる道具を開発した。取組みは密集した(コンパクトな)一組(セット)のR2における点(ポイント)、顕微鏡写真の分野の知見に基づき、それぞれについて点は対応する関数値を持った。この組の点及び関数を、まとめて試験関数又は鋳型として称し、及び数列(シーケンス){(xk, ck)}kによって記載することができ、式中xは点であり、及びcは関数値である。試験関数はなるべくなら関数値の数列が対応する点の階調上の値に相関するような様式において生成される。したがって、規定される組の同じ種類のウイルス粒子が求められ、この特定の粒子構造のための鋳型が提供されるように数列が慣らされ、及び設計される。この希少な表示は、個々のウイルス粒子についての鋳型の気軽な変形及び調整を許し、その顕微鏡写真における形状はほぼ楕円形である。
【0021】
変形の前-処理工程において、同じ種類のウイルス粒子内の基礎構造(サブストラクチャ)の位置は、異なる画像において変動する。例えば、ウイルス粒子は時々、異なる楕円形の形態において現れるようなやり方で変形する。試験関数を創造するために、線形ベクトル空間(スペース)が用いられ、それは分析されるベクトル空間の位置が相対的に固定されることを請求する。変形を近づけるために、均一な線形の変換が選抜されたが、それが顕微鏡写真において見られる最も突出した(prominent)変形を覆う(カバー)するからである。これらの算出の計算費用はかなり低く、及び境界の管理を簡略化する。この取組みは、4-次元の変換操作物(オペレータ)、即ち、2x2行列(マトリクス)の使用を要求することが多い。包含されるこれらの変数は、変形(φR)に先立つ構造の回転、一次的径方向(放射状)変形
、楕円形構造にまで挙げて与えられる変形の比率(d)及び回転に次ぐ変形(φD)として表現することができる。これらは、一緒に、下記に示される変換を形成し、即ち、
【数1】
である。
【0022】
個々のウイルス粒子についての変換の変数を識別するために、楕円の組を手動で用い、各カプシド壁の位置、寸法及び変形を、図3A及び3Bにおいて最良に示すように、評価した。画像110(Aと呼ぶ)は楕円形の形状を持つが、一方、画像112(Bと呼ぶ)は記載されるように変形され、それがより一層円形に成形される(shaped)。このようにして3種(φD、
及びd)の4つの変数を提供する。試料を次いで部分的に変換し、図3Bにおいて例示するように、変形することなく測定した一次的半径(d=1)を取得した。
【0023】
回転と無関係なカプシド壁の多角形基本設計(polygonal architecture)及びDNA中心の位置のような特長は、各試料のためのφR値によって定められ得る。この値を見出すため、各々の部分的に変換させた試料を、図4A-Cの左欄に示すように、その中間値(mean)の周りで、画像114a、116a及び118aの視覚的に重要な領域を覆う円の内部において標準化され得る。次いで、各試料についてのL2-センス(sence)における距離の平方の和は、角度に関して最小にされ得る。この最小化がN-1の変数を、Nが対照試料を固定されるべき1種の試料と考えられることを伴って包含するので、この手法は、1つずつ既に処理された試料への距離を最小にすることによって簡略化され得る。画像のすべての転換を次いで双-線形様式(bi-linear fashion)において履行し、それによって関数fの値が点(x, y)で次のように近似され、即ち、
【数2】
であり、式中、
はxの最も近いより一層小さい整数値であり、
は最接近のより一層高い整数値及びxm=x-
である。積分を同じ補間(interpolation)を用いて実行し得る。この処理工程から得られる測定は、変形の特性、即ち、主要な半径(一次半径)及び変形比率の範囲の指示を提供するが、これらの助変数は付加的な経験に基づいて定められるべきである。ウイルス構造の変形のすべての種類の回転及びすべての方向は、電子顕微鏡写真において存在すると期待されるので、これらの変数はなるべくなら固定されない。
【0024】
ウイルス粒子の鋳型のための点及び局所的関数値(助変数)は、次に識別され得る。変形する試料が同じ位置での部分的な構造を伴い整列すると、この取組みを用いて不変関数(invariant function)の値が見出される。この手法をより一層明確に記載するために、変形される試料fは、この関数のグラフ中に、画素位置x及びそれらの対応する関数値cをf={(xk,ck)}kとして列挙する(個々に挙げる)ことによって転換することができる。同じ数列の画素位置を含む関数値yi及びyjの2種の数列(以下にベクトルとして称する)の間の調和の程度は、標準的な評価した統計上の相関を用いて定め、即ち、
【数3】
であり、式中、
はベクトルの中間値であり、及びすべての係数の[-1,1]への調和が地図化される。この取組みを用いるための理論的根拠は、それが2種の構造間の線形的相似の程度を指示することである。それらの中間値
【数4】
の周りで標準化された試料ベクトルを行列における列へ設置した後、試験関数数列
【数5】
は、できるだけ
【数6】
を大きくし、定められ、このようにして慣らしのために用いる試料への最良の調和が提供される。
【0025】
特異値分解(SVD)を次のように記載し得、即ち、
【数7】
はAに適用され、そこでは
【数8】
であり、その場合
【数9】
が期待される。この最後の表現は、wがΣ(それは最大の特異値である)の最大の固有値(eigenvalue)に対応する固有ベクトル(eigenvector)であるとき、最大であり、及びfcはこのようにしてUの対応する列でなければならない。この関数がAにおいて列の線形組合せ(linear combination)であるので、調和(方程式2a)は
【数10】
にまで減る。
【0026】
この初期SVDにおける試験関数は、仮定される第1の支持(support)に関連付けられるすべての点の係数を利用する。これらの点の若干は画像におけるウイルス構造の幾分外側に位置付けられ、及び加えて、点が、係数が著しく変動し得る構造において存在する。このようにして、各係数の有意性を順位付けし、及びそれによって変動の最悪のものを除去するため、
【数11】
の値を各係数について算出した。一定の百分率(パーセント)の点を、次いで試験関数において保持することができる。これらの操作が試験関数に基づいて変化するので、新しいSVDをその後算出した。
【0027】
図4A-Cは、識別される変動性係数のすべての係数又はそれらの80%だけを用いて得られる試験関数を例示し、最少の変動を分散順位(variance rank)に従って見せる。明らかに、DNA中心の寸法はCカプシドのための試験関数において変動し、及びそれ故に最も不確かな点を右手の画像114b、116b及び118bにおいて排除した。したがって、このやり方における係数の数の減少によって得られる試験関数を日常的に採用した。
【0028】
変形を次いで合成し得る。分析される構造が任意の方向において双方とも方向付けられ、及び任意の方向で直線的に変形すると仮定されたので、これらの特長は、画像が分析されるとき、試験関数に自動的に適用されなければならない。情報は、試験関数が変形されるときに調和する関数の挙動によって提供され、また興味あるものであり、及び同様の状況において生かされる(exploited)。画像B及び固定される試験関数fcは維持され、及び変形Tが変動する一方、調和性関数g(T)=M(fc,{B(Txk)}k)(式中、数列{xk}kは試験関数の生成から得られる)が実行された。Tを助変数
【数12】
の観点によって記載するため、以下の仮定を作成し、即ち、
(i) 一定の
【数13】
について、変形される試験関数は画像において対象物に最も似た構造を現わす。このTがgを最大化するものであることが仮定される。
(ii) Tは最大の変形と関連付けられ、変形の組の内部の範囲内に局在化され、及び境界においてではない。これらの条件下に、gが組の外側で最大化される(即ち、構造が余りにも大きく、余りにも小さく、又は余りに悪く変形させられる)場合、最も近い境界点との調和がまだ高くてよい。
【0029】
考慮されるよう識別されるように、構造はこれらの規準に調和すべきである。調和性関数の最大化は、逆にされ最急降下の基本構想(スキーム)と共に実行され、非-変形の試験関数を開始点として用い、及び派生物を8-点、中央の異なる基本構想として近似する(即ち、変形における各変数について2点)。
【0030】
採用する調和性規準の適用を図5及び6において描写する。図5Aは、これらの規準が、どのようにして、標準のAカプシドに、並びに同じようなしかし偽性の構造に適用されるときに働くかを例示する。画像120(Aと呼ぶ)において、標準のカプシドが示される。試験関数が変形するとき、グラフは、どのようにして、調和性関数gが径方向(放射状)の寸法
及びgを最大化する許容可能な変形の組における点からの変形(d)の程度と共に変動するかを例示する。変形する試験関数は、試料のものに似た外観を持ち、及び変形は境界の内側にある。分類はこのようにして陽性になる(肯定的な)べきである。図5Bでの画像122(Bと呼ぶ)において、画像Aとは似ずに、最大化される変形の組における点(g)が境界上に置かれ、及びグラフがこの組の外側のより一層高い調和性の値を示す。このようにして、この分類は陰性になる(否定的な)べきである。この場合において、変形の境界は、例示目的のために、
【数14】
に設定された。
【0031】
ウイルスカプシドはこの細胞小器官の膜を通して出芽によって核を出る。この処理に関連して、ウイルス及び他の構造の間で区別することは、図6における画像126a及び126bにおいて示すように、困難である。青十字(ブルークロス)で印が付く構造は調和性規準(i)及び(ii)を満たし、及びその一方、赤い円で印が付くものは規準(i)しか満たさない。この図では、青十字は画像における点を指示し、そこでは、試験関数及びカプシド構造調和の間の調和が0.8よりも良好であり、及び変形の程度が受け入れられる。赤い円は、この調和が0.8よりも良好であるが、そこでは変形の程度が許容可能でない点を指示する。調和として印が付く構造は、0.94の調和性を持ち、それは非常に高い。
【0032】
電子顕微鏡の画像におけるウイルス粒子構造は、次いで識別され得る。試験関数fcに似た画像(B)における構造について検索するために、方程式2bを畳み込み(convolution)にまで拡大する。試験関数の点(m)での調和は、このようにして
【数15】
として表現することができる。
【0033】
この手法は大いに時間がかかる。それは少数の観察及び仮定によって加速させることができ、即ち、
(i) 試験関数の変形する変数は互いに対し直交でなく、及びこれらの構造が回転に本質的に無関係であるので、非-変形の試験関数の調和が、同じ種類の任意の許容可能な変形した構造に対し一定の値のものよりも良好である。
(ii) 翻訳(translation)が構造を更に変形させるので、非-変形の試験関数への調和が、ウイルス粒子の実際の位置で、少なくとも1種の直径の試験関数のこの位置からの距離の場所でのものより高いと仮定される。
【0034】
これらの規準を履行し、あるものはより一層大きな画像内の潜在的に興味深い点の部分集合(サブセット)を識別することができる。しかる後、先行する区分において記載する最適化を採用するこの組の更なる分析を実行することができる。この取組みは、P={Mj}jの調和性の値に関連付けられる画像における最終的な組の点を提供する。画像におけるすべての興味深い位置の包含を確実にするため、上記仮定(i)と連結される閾値を0.5に設定した。
【0035】
最終的な組の後-処理では、ウイルス粒子を計数する。閾値(t)は存在せず、それは、すべての画像における標準の及び偽性の構造の間を見分けることができ、即ち、この手法を採用する構造の指摘が経験豊かなウイルス学者によって為されるものと完全には合致しない。閾値の設定は従って、選択肢ではない。代わって、陽性の確率関数PPF: [-1,1]→[0,1]を用い、一定の調和性の値に関連付けられる所定の点が実際にウイルス粒子に関連付けられる確率を定めることができる。この陽性の予測値(PPV)の拡張は、正しく識別される構造の数及び一定の調和性の値で識別される構造の合計数の間の比を算出することによって得られる。このようにして、点の部分集合
を含むこの手法によって識別される構造の組(P)について、
【数16】
の、所定の種類のウイルス粒子が関連付けられる。
【0036】
平滑な及び単調に増加する関数を得るため、0.05をεについての値として選抜した。画像における構造の期待される数(N)を指示する確率関数は
【数17】
である。
【0037】
方法のFNR/FPRの正確性は、次のように記載し得る。それらの成熟の段階に従って電子顕微鏡写真において見られるウイルス粒子を編成する(organize)ため、本明細書に記載するような型を、各々の特定の段階を描くように要求する。さらに、そのような画像におけるウイルス粒子の検出及び量子化のために有用であるべきこの型のために、それはまた誤った(spurious)構造を拒むことができなければならない。このようにして、理想的な型は、異なる種類のウイルス粒子のすべての可能な画像を検出すべきであるが、同じ空間において、即ち、背景において位置付けられるに他ならない。本発明者等の型をこの観点において特徴付けるために、普通に偽陰性(FNR)及び偽陽性(FPR)の比率を利用した。FNRを、その方法によって不正確に拒まれる標準のウイルス粒子の数及び標準の粒子の実際の数の間の比率として規定し、一方では、FPRは、標準のものとして識別される誤った構造の数及び本取組みによって標準であると考えられる構造の合計の数の間の比率である。このようにして、これらの比率の双方は0及び1の間にあり、理想的には0である。
【0038】
画像を通した検索によって獲得される調和性の値の組によって提供される情報に基づいてウイルス粒子の数を定めるために、上述の陽性の確率関数PPFを用い得る。識別される粒子の期待される数を、画像において存在する粒子の真の数と比較し、計数誤差の中間値及び標準偏差を取得した。加えて、体系的な中間差(mean difference)が存在するか、即ち、手法が、平均上、余りにも多く、又は余りに少数の粒子を識別するどうかを評価するため、H0仮説、即ち、“中間差=0”を試験した。
【0039】
標準化及び試験を、画像の分かれた組上で、2種の慣らしのため、及び12種の試験のために遂行した。標準化のために用いた試料の数は、A、B、及びCの試験関数のために、それぞれ4、7及び10であった。試験画像は53Aカプシド、239Bカプシド及び83Cカプシドの合計を含み、及び変形の境界は
【数18】
に設定した。
【0040】
偽陰性(FNR)及び偽陽性(FPR)の比率は次のように記載し得る。方法を、本発明者等の結果を経験豊かなウイルス学者のそれらと比較することによって評価した。FPR及びFNRを、図7A-Cにおけるグラフ128、130及び132のそれぞれにおいて最良に示されるように、調和性の測定のための閾値の関数として算出した。FNRを、調和性の測定のための一定の閾値を採用する手法によって不正確に拒まれる標準の構造の数、及びウイルス学者によって定められるように存在するウイルス粒子の実際の数の間の比率として規定する。同じように、FPRは、標準であるとして識別される誤った構造の数及びこの手法により標準であると考えられる構造の合計の数の間の比率である。他の方法との比較のため、曲線の交差を、A試験関数のための0.25、B試験関数のための0.13及びC試験関数のための0.23で起こした。
【0041】
電子顕微鏡写真における構造の量子化は、次に示すように記載し得る。上記に提示する結果から算出されるPPF値134を図8において示す。グラフは、一定の調和性の値でその手法によって正しく識別されるウイルス粒子の相対度数(頻度)を描写する。比較のため、真の及び偽の構造の間の完全な分離を提供する理想的な方法が、若干の閾値でHeaviside(ヘビサイド)工程の関数を招く。比較のため、真の及び偽の構造の間の完全な分離を提供する理想的な場合の手法が、若干の閾値でHeaviside工程関数を招く。
【0042】
本発明者等の手法による試験画像の組において存在するように識別されるウイルス粒子の合計数の散乱図(プロット)136を、ウイルス学者によって定められるような正しい数に比較して、図9において同一性関数(identity function、恒等関数)と一緒に示す。このグラフにおける線は同一性関数を描写する。中間値差は0.16であり、及び標準偏差は5.63である。帰無仮説H0の有意水準は、即ち、“中間値差=0”が0.92である。明らかに、これらの2種の値の間に緊密な類似があり(中間値差=0.16、5.63の標準偏差)、それは、理想的な場合において、同一性関数上の点である。有意性のH0の水準が、スチューデントの(Student's)t-検定に従い0.92であったという事実は、これらの2種の中間値における取組みの間に体系的な相違がなかったという公正な確率(fair probability)が存在したこと指示する。これらの結果は、大きな組の電子顕微鏡写真における成熟の異なる段階でのウイルス構造の合計数の急速な選別(スクリーニング)が、さもなければ、双方の時間のかかる、及び専門家に退屈な作業を、本発明者等の自動化される手法で、迅速に及び確実に達成することができることを示す。
【0043】
興味ある構造が位置付けられる画像138における位置の設定に基づいて、図10に示すような地図を生成することができる。これは、これらの構造の手動計数を著しく促進し、及びまた手動分析のための枠組みを与える。未処理の画像における構造を単に数え、及び比較する代わりに、ウイルス学者はそのような地図の入手可能性によってこの作業において著しく援助される。種々の構造が頂部分の列の左側で始まる下向きの調和性の値の順序において左から右にまで仕分け(ソート)される。
【0044】
ウイルス構築の処理を検討するとき、成熟の段階への関係における構造的位相幾何学(トポロジ)に関する情報は通常、利用できないか、又は漠然と規定される。したがって、ウイルス粒子を成熟の異なる段階で仕分け、及び分類するための道具が求められる。一旦少数の出発点が一組の明らかな構造の分類によって得られたら、これらを用い、採用される調和性の関数で、同様の構造を識別することによって分類される構造の組を拡大することができる。この取組みは、電子顕微鏡写真におけるウイルス成熟の地図作成を、迅速で、信頼でき及び記載するのに容易にするのに役立つ。
【0045】
本発明を好適な構成及び具体例に従って記載しているが、一定の置換及び変形を、以下の請求の範囲の精神及び範囲から逸脱することなく、それに対してなされ得ると理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1A】増殖性ヘルペスウイルスの典型的な透過電子顕微鏡写真の画像を示す。
【図1B】増殖性ヘルペスウイルスの典型的な透過電子顕微鏡写真の画像を示す。
【図2A】エンプティ(空の)ヘルペスウイルスヌクレオカプシドを示す。
【図2B】半透明コアを有するヘルペスウイルスヌクレオカプシドを示す。
【図2C】包装DNAを含むヘルペスウイルスヌクレオカプシドを示す。
【図3A】楕円形状を有するウイルス粒子を示す。
【図3B】ウイルス粒子を示し、それは円形にするために変形された。
【図4】A〜Cは、ウイルスカプシド構造(A、B及びC)についての減少率を(何も)採用しない又は80%の係数の最小変動(VAR)を採用する電子顕微鏡写真における試験関数を見せる。
【図5A】試験関数Aの標準のカプシド構造への及び同様であるが偽性構造への調和を示す。
【図5B】(A)試験関数Bの標準のカプシド構造への及び同様であるが偽性構造への調和を示す。
【図6】試験関数Aとの小胞(ベシクル)内での調和を示す。
【図7】A〜Cは、異なる試験関数A、B及びCについての偽陽性(FPR)及び偽陰性(FNR)の比を、それぞれ示す。
【図8】試験関数A、B及びCについての陽性確率関数(PPFs)を示す。
【図9】ウイルス学者によって定められるような、試験画像(X-軸)の組において存在する実際の合計数のウイルス構造を、本発明者等の手法(Y-軸)によって識別される数に対して比較して示す。
【図10】興味のある場所をC試験関数について本明細書に例示する電子顕微鏡写真において識別される地図(マップ)の自動化生成を示す。
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)本発明は画像における構造の識別に関する。とりわけ、本発明はウイルス粒子の組織化電子顕微鏡写真における識別及び分類の方法及び手配を提供する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
(発明の背景)ウイルス構築(アセンブリ)は難解な処理であり、及び集中的な研究の対象である。ウイルスは宿主細胞を利用し、それらの子孫のウイルス粒子を、成熟(完成)及び細胞内輸送の複雑な処理を経ることによって生成する。この処理は、電子顕微鏡を利用する高倍率で監視することができ、それは異なる種類のウイルス粒子の異なる細胞区画(コンパートメント)における視覚的な同定を許す。
解決されるべきままである重要な問題には、ウイルスタンパク質の同一性が含まれ、それは、このウイルス構築処理の各段階、並びに異なる種類のウイルス粒子のウイルス成熟中での根底にある細胞内の転位及び局在の機構において包含される。ウイルスの成熟の構造的局面は一般的に対処し難いが、断層撮影及び低温(クリオ)EMのような視覚化技術がウイルス構造上の膨大な情報に大いに貢献した。これらの技術は、安定な、成熟することが多いウイルス粒子上の情報を提供する。遺伝学的道具(ツール)は入手可能であり、鍵となるウイルスタンパク質成分の変異体を生成し、及び構造的な効果は、EMによって視覚化することができる。しかし、構造的効果、特に中間及び曖昧な粒子形態を特徴付け、及び客観的なやり方においてそれを適切に定量化するための妥当な道具を欠如する。ウイルス粒子、成熟及び細胞内輸送を特徴付け、及び定量化するための画像分析の道具は、電子顕微鏡を用いて異なるウイルス構築状態の客観的な検討を促進する。多数の情報が獲得されるが、構造化され、及びそれから統計的に生成され、効果を評価し、及び結論を引き出されるべき必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0003】
(本発明の概要)ウイルス粒子の構造形態学の電子顕微鏡写真における特徴付けは、複雑な作業であるが、ウイルス粒子形態学における成熟処理(プロセス)の研究及び適用される変異又は抗ウイルス性薬物の効果に応じた変化の検出に関連して望ましい。したがって、手法が、ウイルス粒子の形態を電子顕微鏡写真において記載し、及び分類するために、所定のウイルス構造の不変の特徴(invariant characteristics)の決定に基づいて開発された。ウイルス粒子のための鋳型は、小さな慣らし(training)の組の電子顕微鏡写真から得られる情報に基づいて創造され、及び次いで興味のある同様な構造を、無制限の数の電子顕微鏡写真における相関の処理によって分類し、及び定量化するために採用される。線形の変形分析を用いて、本明細書に記載するこの新しい演算法(アルゴリズム)を楕円率のようなウイルス粒子の変動を取り扱うことができ、及び更にウイルス粒子の寸法及び配向(オリエンテーション)のような特性の評価を許す。方法の実践的適用は、ウイルス粒子の3種の多様な分類(クラス)を、人間(ヒト)のサイトメガロ-ウイルスに感染する線維芽細胞の透過電子顕微鏡写真において位置付ける能力によって実証される。
【0004】
概要において、方法は、構造の電子顕微鏡写真における識別及び特徴付け用である。第1画像における構造を選定する。構造は第1方向において変形される第1形状種類を持つ。選定構造は、第1形状種類と異なる第2形状種類に変換される。第2形状種類の変換される構造を用いて複数の鋳型を形成する。第2画像における新しい構造を識別する。新しい構造は第1形状種類を持つ。各鋳型の第2形状種類の構造は、第1方向において変形される。鋳型が新しい構造に最良に調和する好適鋳型であることを定める。
【0005】
(図面の簡潔な説明)(図面の簡単な説明)の項に移す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
(詳細な記載)ウイルス粒子の電子顕微鏡写真における識別において補助されるように、自動化される系(システム)の開発を、本明細書に記載する。型(モデル)として、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)、β-ヘルペス分類のウイルスに感染させた線維芽細胞を用いた。ヘルペスウイルスは例示的例として用いただけであり、及び本発明はヘルペスウイルスに制限されないと理解すべきである。ヒトサイトメガロウイルスでの感染の間に、ウイルス粒子の多くの異なる中間形態が生成される。ヘルペスウイルスの構築の間に、宿主細胞が、ウイルスの遺伝的物質のコピーを作成するように、及びカプシド、ウイルスタンパク質の殻を生成するように迫られ、それらは遺伝的物質を包み、及び保護する。カプシドは、球状構造であり、それは寸法及び対称性に関して変動させることができ、及び成熟するときに二重膜によって包まれ得る。ウイルスカプシドの成熟は、ウイルス粒子生産における重要な段階であり、及び頻繁に検討されるものの1種である。しかし、それらの外観は、電子顕微鏡写真において著しく変動し、それは分析を難問にする。ヘルペスウイルスの独特な特長は、外皮(テグメント)であり、最終的な包囲に先立ってカプシドを囲むウイルスタンパク質の層である。外被(エンベロープ)は覆われた(tegumented)カプシドの細胞質における分泌小胞への出芽によって獲得される。しかる後、感染性ウイルス粒子は宿主細胞を、形質膜を有する小胞を含むこれらのウイルスの融合によって出る。
【0007】
ウイルス粒子の分類及び定量化用の目的手法を、そのような透過電子顕微鏡写真において開発した。低温電子顕微鏡(クリオ-EM)の画像の関連分析において、著しく多くの努力が識別の異なる方法の探索(exploring)に向けられた。低温顕微鏡写真では、多重の鋳型を採用する相互相関及び縁部(エッジ)検出のための方法が好首尾に適用された。
【0008】
適する取組みで、ウイルス粒子の成熟及びそれらの細胞内の転位の特徴付け及び定量化を許すものは、電子顕微鏡検査を採用するこれらの現象の目的の検討を促進する。しかし、電子顕微鏡画像は、それらの重く組織化された(textured)背景のため、目的のやり方において分析及び記載し難い。加えて、個々のウイルス粒子は、電子顕微鏡写真におけるそれらの投射、電子顕微鏡検査用の試料調製に利用する手法及び写真撮影に用いる設定によって多種多様な形状を表示する。典型的な電子顕微鏡画像100、102は、貴重な情報を提供し、図1A及び1Bにそれぞれ示される。
【0009】
本発明では、取組みはHCMYの感染した細胞の核におけるカプシドの分析に適用され、それは、エンプティ(空)のカプシド104(Aと呼ばれる)、半透明な中心(コア)106を有するカプシド(Bと呼ばれる)及び包装されたDNAを含むカプシド108(Cと呼ばれる)のような、図2A-Cにおいて最良に示すように、成熟の規定される状態で存在する。
【0010】
本発明に従う方法及び手配をウイルス粒子と共に例示する。これは非-制限的な例として見るべきである。他の種類の粒子は、例えば、細胞又は細胞の構造のような、生物学的対象物を含み、しかしまた、非-有機的粒子及び構造は、記載される方法及び手配への軽微(マイナ)な修飾を用いて識別及び特徴付けられ得る。
【0011】
本発明に従う方法には、画像獲得工程が含まれる。電子顕微鏡写真は走査(スキャン)すべきファイル又は映像(ピクチャ)として電子顕微鏡から提供され得る。方法の更なる工程のため、好ましくは各顕微鏡写真のための画素寸法、分解能及び拡張の知識を達成し、及び貯える。
【0012】
前-処理工程では、関連ある粒子を選定し、及び可能性がある変形した外観から円形に変換する。
【0013】
鋳型形成の工程において、選定及び変換した粒子を、鋳型を形成するのに用いて、それは試験関数によって特徴付けられ得る。
【0014】
調和性の工程では、鋳型又は試験関数を利用し、粒子を更なる画像(群)において識別する。方法の工程は、次に記載し、及び例証する。
【0015】
本発明に従う識別及び分類の機器は、十分な算出力を有する一般的な個人向け(パーソナル)コンピュータに基づき得る。識別及び分類の機器は、顕微鏡写真を受け取るためのインターフェイス、変形した画像を変換するための前-処理手段、鋳型を形成するため又は試験関数を抽出するための手段、及び調和性手法を実行するための手段を備える。これらの工程は、典型的に及び好ましくはソフトウェアコードモジュールによって遂行される。
【0016】
ヒトの胚性の肺線維芽細胞(HF)のような細胞培養物を、Hank's(ハンクス)塩を有し、炭酸水素塩を含まない、最小基本培地(GIBCO(ギブコ) BRL社)を、25mMのHEPES [4-(2ヒドロキシエチル)-l-ピペラジンスルホン酸エタン]、10%熱-不活化ウシ胎仔血清、L-グルタミン(2mM)、ペニシリン(100U/ml)及びストレプトマイシン(100mg/ml)(GIBCO BRL、Grand Island(グランドアイランド)、NY(ニューヨーク州)、米国)で補足したものにおいて維持した。細胞を、最大17回の継代について175cm2での組織培養フラスコ(Corning(コーニング社)、New York(ニューヨーク)、米国)において培養した。
【0017】
ウイルス感染工程において、HF細胞を、1の感染効率(a multiplicity of infection、MOI)を採用するHCMV株AD169で感染させた。上清に含まれるウイルスを、7又は10の日数の感染後日数(days post-infection、dpi)で収集し、細胞残屑を低速遠心分離によって取り除き、及び接種のために用いるまで-70℃で凍らせた。
【0018】
ウイルス感染させた細胞を、電子顕微鏡検査によって検査するために、感染されてない及びHCMVで感染させた細胞を、1、3、5、及び7のdpiで収穫し、及びしかる後0.1Mショ糖及び3mMのCaCl2を含む0.1Mカコジル酸ナトリウム緩衝剤において2%グルタルアルデヒドで、室温pH7.4、30分間固定した。細胞を次いで木製棒(スティック)によって削り落とし、及び連続させる4℃での一昼夜の固定のためにEppendorf(エッペンドルフ)管に移した。この手法に次いで、細胞を3mMのCaCl2を含む0.15Mカコジル酸ナトリウム緩衝剤、pH7.4において洗浄し、及び遠心分離によってペレット化(小球化)した。これらのペレットを次いで1.5mMのCaCl2を含む0.07Mカコジル酸ナトリウム緩衝剤、pH7.4、4℃で、2時間溶解した2%四酸化オスミウムにおいて後-固定し、連続してエタノール及びアセトンにおいて脱水し、及びLX-112(Ladd(ラッド社)、Burlington(バーリントン)、VT(バーモント州)、米国)において埋め込んだ。区分上の対比(コントラスト)は、酢酸ウラニル、次いでクエン酸鉛によって得、及び検査を、Philips(フィリップス)420又はTecnai(テクナイ)10(FEI Company(カンパニ)、Oregon(オレゴン)、米国)の透過電子顕微鏡の80kVで実行した。
【0019】
次いで画像の獲得、離散化及び分析を続けた。HCMV-感染させたHF細胞の電子顕微鏡写真を、HP Scanjet(スキャンジェット)3970における5.5nm/画素の分解能での8-ビット階調(グレイスケール)を採用してデジタル化した。履行は、Matlab(メタラボ)7.0.1(Mathworks Inc.(マスワーク社)、Natick(ナティック)、MA(マサチューセッツ州)、米国)及びDell Optiplex(デル・オプティプレックス)GX260の個人向けコンピュータ上のSun Java(登録商標)(サン・ジャバ)1.4.2ソフトウェアを用い実行した。この分析は、使い易いグラフィカルインターフェイス、及び迅速で、便利な使用のために後述する助変数(パラメータ)の自動化を包含する。
【0020】
次いで細胞内ウイルス構築の検討のための使用者に友好的(ユーザ-フレンドリ)な及び信頼できる道具を開発した。取組みは密集した(コンパクトな)一組(セット)のR2における点(ポイント)、顕微鏡写真の分野の知見に基づき、それぞれについて点は対応する関数値を持った。この組の点及び関数を、まとめて試験関数又は鋳型として称し、及び数列(シーケンス){(xk, ck)}kによって記載することができ、式中xは点であり、及びcは関数値である。試験関数はなるべくなら関数値の数列が対応する点の階調上の値に相関するような様式において生成される。したがって、規定される組の同じ種類のウイルス粒子が求められ、この特定の粒子構造のための鋳型が提供されるように数列が慣らされ、及び設計される。この希少な表示は、個々のウイルス粒子についての鋳型の気軽な変形及び調整を許し、その顕微鏡写真における形状はほぼ楕円形である。
【0021】
変形の前-処理工程において、同じ種類のウイルス粒子内の基礎構造(サブストラクチャ)の位置は、異なる画像において変動する。例えば、ウイルス粒子は時々、異なる楕円形の形態において現れるようなやり方で変形する。試験関数を創造するために、線形ベクトル空間(スペース)が用いられ、それは分析されるベクトル空間の位置が相対的に固定されることを請求する。変形を近づけるために、均一な線形の変換が選抜されたが、それが顕微鏡写真において見られる最も突出した(prominent)変形を覆う(カバー)するからである。これらの算出の計算費用はかなり低く、及び境界の管理を簡略化する。この取組みは、4-次元の変換操作物(オペレータ)、即ち、2x2行列(マトリクス)の使用を要求することが多い。包含されるこれらの変数は、変形(φR)に先立つ構造の回転、一次的径方向(放射状)変形
、楕円形構造にまで挙げて与えられる変形の比率(d)及び回転に次ぐ変形(φD)として表現することができる。これらは、一緒に、下記に示される変換を形成し、即ち、
【数1】
である。
【0022】
個々のウイルス粒子についての変換の変数を識別するために、楕円の組を手動で用い、各カプシド壁の位置、寸法及び変形を、図3A及び3Bにおいて最良に示すように、評価した。画像110(Aと呼ぶ)は楕円形の形状を持つが、一方、画像112(Bと呼ぶ)は記載されるように変形され、それがより一層円形に成形される(shaped)。このようにして3種(φD、
及びd)の4つの変数を提供する。試料を次いで部分的に変換し、図3Bにおいて例示するように、変形することなく測定した一次的半径(d=1)を取得した。
【0023】
回転と無関係なカプシド壁の多角形基本設計(polygonal architecture)及びDNA中心の位置のような特長は、各試料のためのφR値によって定められ得る。この値を見出すため、各々の部分的に変換させた試料を、図4A-Cの左欄に示すように、その中間値(mean)の周りで、画像114a、116a及び118aの視覚的に重要な領域を覆う円の内部において標準化され得る。次いで、各試料についてのL2-センス(sence)における距離の平方の和は、角度に関して最小にされ得る。この最小化がN-1の変数を、Nが対照試料を固定されるべき1種の試料と考えられることを伴って包含するので、この手法は、1つずつ既に処理された試料への距離を最小にすることによって簡略化され得る。画像のすべての転換を次いで双-線形様式(bi-linear fashion)において履行し、それによって関数fの値が点(x, y)で次のように近似され、即ち、
【数2】
であり、式中、
はxの最も近いより一層小さい整数値であり、
は最接近のより一層高い整数値及びxm=x-
である。積分を同じ補間(interpolation)を用いて実行し得る。この処理工程から得られる測定は、変形の特性、即ち、主要な半径(一次半径)及び変形比率の範囲の指示を提供するが、これらの助変数は付加的な経験に基づいて定められるべきである。ウイルス構造の変形のすべての種類の回転及びすべての方向は、電子顕微鏡写真において存在すると期待されるので、これらの変数はなるべくなら固定されない。
【0024】
ウイルス粒子の鋳型のための点及び局所的関数値(助変数)は、次に識別され得る。変形する試料が同じ位置での部分的な構造を伴い整列すると、この取組みを用いて不変関数(invariant function)の値が見出される。この手法をより一層明確に記載するために、変形される試料fは、この関数のグラフ中に、画素位置x及びそれらの対応する関数値cをf={(xk,ck)}kとして列挙する(個々に挙げる)ことによって転換することができる。同じ数列の画素位置を含む関数値yi及びyjの2種の数列(以下にベクトルとして称する)の間の調和の程度は、標準的な評価した統計上の相関を用いて定め、即ち、
【数3】
であり、式中、
はベクトルの中間値であり、及びすべての係数の[-1,1]への調和が地図化される。この取組みを用いるための理論的根拠は、それが2種の構造間の線形的相似の程度を指示することである。それらの中間値
【数4】
の周りで標準化された試料ベクトルを行列における列へ設置した後、試験関数数列
【数5】
は、できるだけ
【数6】
を大きくし、定められ、このようにして慣らしのために用いる試料への最良の調和が提供される。
【0025】
特異値分解(SVD)を次のように記載し得、即ち、
【数7】
はAに適用され、そこでは
【数8】
であり、その場合
【数9】
が期待される。この最後の表現は、wがΣ(それは最大の特異値である)の最大の固有値(eigenvalue)に対応する固有ベクトル(eigenvector)であるとき、最大であり、及びfcはこのようにしてUの対応する列でなければならない。この関数がAにおいて列の線形組合せ(linear combination)であるので、調和(方程式2a)は
【数10】
にまで減る。
【0026】
この初期SVDにおける試験関数は、仮定される第1の支持(support)に関連付けられるすべての点の係数を利用する。これらの点の若干は画像におけるウイルス構造の幾分外側に位置付けられ、及び加えて、点が、係数が著しく変動し得る構造において存在する。このようにして、各係数の有意性を順位付けし、及びそれによって変動の最悪のものを除去するため、
【数11】
の値を各係数について算出した。一定の百分率(パーセント)の点を、次いで試験関数において保持することができる。これらの操作が試験関数に基づいて変化するので、新しいSVDをその後算出した。
【0027】
図4A-Cは、識別される変動性係数のすべての係数又はそれらの80%だけを用いて得られる試験関数を例示し、最少の変動を分散順位(variance rank)に従って見せる。明らかに、DNA中心の寸法はCカプシドのための試験関数において変動し、及びそれ故に最も不確かな点を右手の画像114b、116b及び118bにおいて排除した。したがって、このやり方における係数の数の減少によって得られる試験関数を日常的に採用した。
【0028】
変形を次いで合成し得る。分析される構造が任意の方向において双方とも方向付けられ、及び任意の方向で直線的に変形すると仮定されたので、これらの特長は、画像が分析されるとき、試験関数に自動的に適用されなければならない。情報は、試験関数が変形されるときに調和する関数の挙動によって提供され、また興味あるものであり、及び同様の状況において生かされる(exploited)。画像B及び固定される試験関数fcは維持され、及び変形Tが変動する一方、調和性関数g(T)=M(fc,{B(Txk)}k)(式中、数列{xk}kは試験関数の生成から得られる)が実行された。Tを助変数
【数12】
の観点によって記載するため、以下の仮定を作成し、即ち、
(i) 一定の
【数13】
について、変形される試験関数は画像において対象物に最も似た構造を現わす。このTがgを最大化するものであることが仮定される。
(ii) Tは最大の変形と関連付けられ、変形の組の内部の範囲内に局在化され、及び境界においてではない。これらの条件下に、gが組の外側で最大化される(即ち、構造が余りにも大きく、余りにも小さく、又は余りに悪く変形させられる)場合、最も近い境界点との調和がまだ高くてよい。
【0029】
考慮されるよう識別されるように、構造はこれらの規準に調和すべきである。調和性関数の最大化は、逆にされ最急降下の基本構想(スキーム)と共に実行され、非-変形の試験関数を開始点として用い、及び派生物を8-点、中央の異なる基本構想として近似する(即ち、変形における各変数について2点)。
【0030】
採用する調和性規準の適用を図5及び6において描写する。図5Aは、これらの規準が、どのようにして、標準のAカプシドに、並びに同じようなしかし偽性の構造に適用されるときに働くかを例示する。画像120(Aと呼ぶ)において、標準のカプシドが示される。試験関数が変形するとき、グラフは、どのようにして、調和性関数gが径方向(放射状)の寸法
及びgを最大化する許容可能な変形の組における点からの変形(d)の程度と共に変動するかを例示する。変形する試験関数は、試料のものに似た外観を持ち、及び変形は境界の内側にある。分類はこのようにして陽性になる(肯定的な)べきである。図5Bでの画像122(Bと呼ぶ)において、画像Aとは似ずに、最大化される変形の組における点(g)が境界上に置かれ、及びグラフがこの組の外側のより一層高い調和性の値を示す。このようにして、この分類は陰性になる(否定的な)べきである。この場合において、変形の境界は、例示目的のために、
【数14】
に設定された。
【0031】
ウイルスカプシドはこの細胞小器官の膜を通して出芽によって核を出る。この処理に関連して、ウイルス及び他の構造の間で区別することは、図6における画像126a及び126bにおいて示すように、困難である。青十字(ブルークロス)で印が付く構造は調和性規準(i)及び(ii)を満たし、及びその一方、赤い円で印が付くものは規準(i)しか満たさない。この図では、青十字は画像における点を指示し、そこでは、試験関数及びカプシド構造調和の間の調和が0.8よりも良好であり、及び変形の程度が受け入れられる。赤い円は、この調和が0.8よりも良好であるが、そこでは変形の程度が許容可能でない点を指示する。調和として印が付く構造は、0.94の調和性を持ち、それは非常に高い。
【0032】
電子顕微鏡の画像におけるウイルス粒子構造は、次いで識別され得る。試験関数fcに似た画像(B)における構造について検索するために、方程式2bを畳み込み(convolution)にまで拡大する。試験関数の点(m)での調和は、このようにして
【数15】
として表現することができる。
【0033】
この手法は大いに時間がかかる。それは少数の観察及び仮定によって加速させることができ、即ち、
(i) 試験関数の変形する変数は互いに対し直交でなく、及びこれらの構造が回転に本質的に無関係であるので、非-変形の試験関数の調和が、同じ種類の任意の許容可能な変形した構造に対し一定の値のものよりも良好である。
(ii) 翻訳(translation)が構造を更に変形させるので、非-変形の試験関数への調和が、ウイルス粒子の実際の位置で、少なくとも1種の直径の試験関数のこの位置からの距離の場所でのものより高いと仮定される。
【0034】
これらの規準を履行し、あるものはより一層大きな画像内の潜在的に興味深い点の部分集合(サブセット)を識別することができる。しかる後、先行する区分において記載する最適化を採用するこの組の更なる分析を実行することができる。この取組みは、P={Mj}jの調和性の値に関連付けられる画像における最終的な組の点を提供する。画像におけるすべての興味深い位置の包含を確実にするため、上記仮定(i)と連結される閾値を0.5に設定した。
【0035】
最終的な組の後-処理では、ウイルス粒子を計数する。閾値(t)は存在せず、それは、すべての画像における標準の及び偽性の構造の間を見分けることができ、即ち、この手法を採用する構造の指摘が経験豊かなウイルス学者によって為されるものと完全には合致しない。閾値の設定は従って、選択肢ではない。代わって、陽性の確率関数PPF: [-1,1]→[0,1]を用い、一定の調和性の値に関連付けられる所定の点が実際にウイルス粒子に関連付けられる確率を定めることができる。この陽性の予測値(PPV)の拡張は、正しく識別される構造の数及び一定の調和性の値で識別される構造の合計数の間の比を算出することによって得られる。このようにして、点の部分集合
を含むこの手法によって識別される構造の組(P)について、
【数16】
の、所定の種類のウイルス粒子が関連付けられる。
【0036】
平滑な及び単調に増加する関数を得るため、0.05をεについての値として選抜した。画像における構造の期待される数(N)を指示する確率関数は
【数17】
である。
【0037】
方法のFNR/FPRの正確性は、次のように記載し得る。それらの成熟の段階に従って電子顕微鏡写真において見られるウイルス粒子を編成する(organize)ため、本明細書に記載するような型を、各々の特定の段階を描くように要求する。さらに、そのような画像におけるウイルス粒子の検出及び量子化のために有用であるべきこの型のために、それはまた誤った(spurious)構造を拒むことができなければならない。このようにして、理想的な型は、異なる種類のウイルス粒子のすべての可能な画像を検出すべきであるが、同じ空間において、即ち、背景において位置付けられるに他ならない。本発明者等の型をこの観点において特徴付けるために、普通に偽陰性(FNR)及び偽陽性(FPR)の比率を利用した。FNRを、その方法によって不正確に拒まれる標準のウイルス粒子の数及び標準の粒子の実際の数の間の比率として規定し、一方では、FPRは、標準のものとして識別される誤った構造の数及び本取組みによって標準であると考えられる構造の合計の数の間の比率である。このようにして、これらの比率の双方は0及び1の間にあり、理想的には0である。
【0038】
画像を通した検索によって獲得される調和性の値の組によって提供される情報に基づいてウイルス粒子の数を定めるために、上述の陽性の確率関数PPFを用い得る。識別される粒子の期待される数を、画像において存在する粒子の真の数と比較し、計数誤差の中間値及び標準偏差を取得した。加えて、体系的な中間差(mean difference)が存在するか、即ち、手法が、平均上、余りにも多く、又は余りに少数の粒子を識別するどうかを評価するため、H0仮説、即ち、“中間差=0”を試験した。
【0039】
標準化及び試験を、画像の分かれた組上で、2種の慣らしのため、及び12種の試験のために遂行した。標準化のために用いた試料の数は、A、B、及びCの試験関数のために、それぞれ4、7及び10であった。試験画像は53Aカプシド、239Bカプシド及び83Cカプシドの合計を含み、及び変形の境界は
【数18】
に設定した。
【0040】
偽陰性(FNR)及び偽陽性(FPR)の比率は次のように記載し得る。方法を、本発明者等の結果を経験豊かなウイルス学者のそれらと比較することによって評価した。FPR及びFNRを、図7A-Cにおけるグラフ128、130及び132のそれぞれにおいて最良に示されるように、調和性の測定のための閾値の関数として算出した。FNRを、調和性の測定のための一定の閾値を採用する手法によって不正確に拒まれる標準の構造の数、及びウイルス学者によって定められるように存在するウイルス粒子の実際の数の間の比率として規定する。同じように、FPRは、標準であるとして識別される誤った構造の数及びこの手法により標準であると考えられる構造の合計の数の間の比率である。他の方法との比較のため、曲線の交差を、A試験関数のための0.25、B試験関数のための0.13及びC試験関数のための0.23で起こした。
【0041】
電子顕微鏡写真における構造の量子化は、次に示すように記載し得る。上記に提示する結果から算出されるPPF値134を図8において示す。グラフは、一定の調和性の値でその手法によって正しく識別されるウイルス粒子の相対度数(頻度)を描写する。比較のため、真の及び偽の構造の間の完全な分離を提供する理想的な方法が、若干の閾値でHeaviside(ヘビサイド)工程の関数を招く。比較のため、真の及び偽の構造の間の完全な分離を提供する理想的な場合の手法が、若干の閾値でHeaviside工程関数を招く。
【0042】
本発明者等の手法による試験画像の組において存在するように識別されるウイルス粒子の合計数の散乱図(プロット)136を、ウイルス学者によって定められるような正しい数に比較して、図9において同一性関数(identity function、恒等関数)と一緒に示す。このグラフにおける線は同一性関数を描写する。中間値差は0.16であり、及び標準偏差は5.63である。帰無仮説H0の有意水準は、即ち、“中間値差=0”が0.92である。明らかに、これらの2種の値の間に緊密な類似があり(中間値差=0.16、5.63の標準偏差)、それは、理想的な場合において、同一性関数上の点である。有意性のH0の水準が、スチューデントの(Student's)t-検定に従い0.92であったという事実は、これらの2種の中間値における取組みの間に体系的な相違がなかったという公正な確率(fair probability)が存在したこと指示する。これらの結果は、大きな組の電子顕微鏡写真における成熟の異なる段階でのウイルス構造の合計数の急速な選別(スクリーニング)が、さもなければ、双方の時間のかかる、及び専門家に退屈な作業を、本発明者等の自動化される手法で、迅速に及び確実に達成することができることを示す。
【0043】
興味ある構造が位置付けられる画像138における位置の設定に基づいて、図10に示すような地図を生成することができる。これは、これらの構造の手動計数を著しく促進し、及びまた手動分析のための枠組みを与える。未処理の画像における構造を単に数え、及び比較する代わりに、ウイルス学者はそのような地図の入手可能性によってこの作業において著しく援助される。種々の構造が頂部分の列の左側で始まる下向きの調和性の値の順序において左から右にまで仕分け(ソート)される。
【0044】
ウイルス構築の処理を検討するとき、成熟の段階への関係における構造的位相幾何学(トポロジ)に関する情報は通常、利用できないか、又は漠然と規定される。したがって、ウイルス粒子を成熟の異なる段階で仕分け、及び分類するための道具が求められる。一旦少数の出発点が一組の明らかな構造の分類によって得られたら、これらを用い、採用される調和性の関数で、同様の構造を識別することによって分類される構造の組を拡大することができる。この取組みは、電子顕微鏡写真におけるウイルス成熟の地図作成を、迅速で、信頼でき及び記載するのに容易にするのに役立つ。
【0045】
本発明を好適な構成及び具体例に従って記載しているが、一定の置換及び変形を、以下の請求の範囲の精神及び範囲から逸脱することなく、それに対してなされ得ると理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1A】増殖性ヘルペスウイルスの典型的な透過電子顕微鏡写真の画像を示す。
【図1B】増殖性ヘルペスウイルスの典型的な透過電子顕微鏡写真の画像を示す。
【図2A】エンプティ(空の)ヘルペスウイルスヌクレオカプシドを示す。
【図2B】半透明コアを有するヘルペスウイルスヌクレオカプシドを示す。
【図2C】包装DNAを含むヘルペスウイルスヌクレオカプシドを示す。
【図3A】楕円形状を有するウイルス粒子を示す。
【図3B】ウイルス粒子を示し、それは円形にするために変形された。
【図4】A〜Cは、ウイルスカプシド構造(A、B及びC)についての減少率を(何も)採用しない又は80%の係数の最小変動(VAR)を採用する電子顕微鏡写真における試験関数を見せる。
【図5A】試験関数Aの標準のカプシド構造への及び同様であるが偽性構造への調和を示す。
【図5B】(A)試験関数Bの標準のカプシド構造への及び同様であるが偽性構造への調和を示す。
【図6】試験関数Aとの小胞(ベシクル)内での調和を示す。
【図7】A〜Cは、異なる試験関数A、B及びCについての偽陽性(FPR)及び偽陰性(FNR)の比を、それぞれ示す。
【図8】試験関数A、B及びCについての陽性確率関数(PPFs)を示す。
【図9】ウイルス学者によって定められるような、試験画像(X-軸)の組において存在する実際の合計数のウイルス構造を、本発明者等の手法(Y-軸)によって識別される数に対して比較して示す。
【図10】興味のある場所をC試験関数について本明細書に例示する電子顕微鏡写真において識別される地図(マップ)の自動化生成を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子顕微鏡写真における構造の識別及び特徴付けの方法であって、次の、即ち、
第1画像(110)における構造を選定する工程であり、構造は第1方向において変形される第1形状種類を持つ工程、
選定される構造を第1形状種類と異なる第2形状種類に変換する工程、
第2形状種類の変換される構造を用いて複数の鋳型を形成する工程、
第2画像(112)における新しい構造を識別する工程であり、新しい構造は第1形状種類を持つ工程、
各鋳型の第2形状種類の構造を、第1方向において変形する工程、
鋳型が新しい構造に最良に調和する好適鋳型であることを定める工程、及び
複数の鋳型を新しい楕円成形構造の形状に変形し、及び各変形鋳型を試験して好適鋳型が最も正確に第2画像における新しい楕円成形構造に調和することを確かにする工程
を備える、方法。
【請求項2】
方法が更に、ウイルス粒子(110)を機械的に、楕円形状又は実質円形状から変形させる工程を備える、請求項1に従う方法。
【請求項3】
方法が更に、ウイルス粒子(110)の回転を、ウイルス粒子の変形に先立ち現わす工程を備える、請求項に従う方法。
【請求項4】
方法が更に、ウイルス粒子(110)の回転に次いでウイルス粒子(110)の変形を現わす工程を備える、請求項3に従う方法。
【請求項5】
方法が更に、他の鋳型を試験して好適鋳型が最良調和を提供することを確かにする工程を備える、請求項1に従う方法。
【請求項6】
方法が更に、構造を、楕円形状の構造の寸法及び程度と関連する助変数に基づき選定する工程を備える、請求項5に従う方法。
【請求項7】
方法が更に、第1方向以外の他の方向を試験して第1方向の最適鋳型の変形が新しい楕円成形構造の最良調和を提供することを確かにする工程を備える、請求項1に従う方法。
【請求項8】
方法が更に、調和が第1方向以外の方向において低い精度であることを定める工程を備える、請求項7に従う方法。
【請求項9】
方法が更に、新しい楕円-成形構造の成熟の段階及び種類の構造を好適鋳型に基づき定める工程を備える、請求項1に従う方法。
【請求項10】
方法が更に、新しい楕円成形構造の径方向距離内で処分される構造をろ別する工程を備える、請求項1に従う方法。
【請求項1】
電子顕微鏡写真における構造の識別及び特徴付けの方法であって、次の、即ち、
第1画像(110)における構造を選定する工程であり、構造は第1方向において変形される第1形状種類を持つ工程、
選定される構造を第1形状種類と異なる第2形状種類に変換する工程、
第2形状種類の変換される構造を用いて複数の鋳型を形成する工程、
第2画像(112)における新しい構造を識別する工程であり、新しい構造は第1形状種類を持つ工程、
各鋳型の第2形状種類の構造を、第1方向において変形する工程、
鋳型が新しい構造に最良に調和する好適鋳型であることを定める工程、及び
複数の鋳型を新しい楕円成形構造の形状に変形し、及び各変形鋳型を試験して好適鋳型が最も正確に第2画像における新しい楕円成形構造に調和することを確かにする工程
を備える、方法。
【請求項2】
方法が更に、ウイルス粒子(110)を機械的に、楕円形状又は実質円形状から変形させる工程を備える、請求項1に従う方法。
【請求項3】
方法が更に、ウイルス粒子(110)の回転を、ウイルス粒子の変形に先立ち現わす工程を備える、請求項に従う方法。
【請求項4】
方法が更に、ウイルス粒子(110)の回転に次いでウイルス粒子(110)の変形を現わす工程を備える、請求項3に従う方法。
【請求項5】
方法が更に、他の鋳型を試験して好適鋳型が最良調和を提供することを確かにする工程を備える、請求項1に従う方法。
【請求項6】
方法が更に、構造を、楕円形状の構造の寸法及び程度と関連する助変数に基づき選定する工程を備える、請求項5に従う方法。
【請求項7】
方法が更に、第1方向以外の他の方向を試験して第1方向の最適鋳型の変形が新しい楕円成形構造の最良調和を提供することを確かにする工程を備える、請求項1に従う方法。
【請求項8】
方法が更に、調和が第1方向以外の方向において低い精度であることを定める工程を備える、請求項7に従う方法。
【請求項9】
方法が更に、新しい楕円-成形構造の成熟の段階及び種類の構造を好適鋳型に基づき定める工程を備える、請求項1に従う方法。
【請求項10】
方法が更に、新しい楕円成形構造の径方向距離内で処分される構造をろ別する工程を備える、請求項1に従う方法。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2009−511046(P2009−511046A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−535537(P2008−535537)
【出願日】平成18年9月12日(2006.9.12)
【国際出願番号】PCT/US2006/035758
【国際公開番号】WO2007/046985
【国際公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(507339869)インテリジェント ヴァイルス イメージング インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月12日(2006.9.12)
【国際出願番号】PCT/US2006/035758
【国際公開番号】WO2007/046985
【国際公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(507339869)インテリジェント ヴァイルス イメージング インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】
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