説明

ウイルス粒子産生カプセル化細胞

【課題】ウイルス粒子を産生するカプセル化細胞であって、宿主に移植された後で、該細胞により産生されたウイルス粒子を該カプセルから放出させ、かつ、有意な宿主の免疫または炎症応答を惹起しないカプセル化細胞を提供する。
【解決手段】ウイルス粒子を産生する細胞を高分子電解質の水溶液に懸濁し、ついで前形成粒子形態の該懸濁液を、対荷電高分子電解質の水溶液を含有する沈殿浴中に導入することにより製造することができるカプセル化細胞。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウイルス粒子(特に、治療用遺伝子を保持するレトロウイルスベクターのゲノムを含有するレトロウイルス粒子)を産生するカプセル化細胞、そのようなカプセル化細胞の製造法、および標的器官/細胞へ遺伝子(特に治療用遺伝子)を輸送するためのそのようなカプセル化細胞の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
標的細胞へ治療上有益な遺伝子を輸送することは、遺伝子治療の概念の中心的課題である。遺伝子治療が常套的な方法となるためには、治療用遺伝子を標的細胞へ有効にインビボで輸送させる系を開発することが最も重要である。
【0003】
ウイルスベクター、特にレトロウイルスベクターは、遺伝子治療に最も一般的に使用されている輸送ビークルである(非特許文献1)。現在承認されている遺伝子治療プロトコールのほとんどは、細胞を患者から取り出し、インビトロで遺伝的に修飾し、ついでその患者へ再導入するという、エクスビボ(ex vivo)アプローチを採用している。この方法は手間および経費がかかり、技術的に進歩した施設に制限されてしまう。さらに、この種のアプローチは、単離、培養および再移植が容易にできる細胞に限定される(非特許文献2)。治療用遺伝子のインビボ輸送には多くの利点があるが、このアプローチは現在のその形態では、非効率的で問題が多い。遺伝子導入効率が低いことによる大きな問題は、ウイルスベクターを複数回適用しなければならないことである。複数回のベクター輸送を要することは、面倒であるばかりでなく、そのウイルス粒子に対する免疫応答により不成功となる可能性がある。
【0004】
これらの問題を回避すると考えられる1つの方法は、ウイルス粒子を産生する細胞を直接移植することによるものである。ウイルスベクターのゲノムを含有するウイルス粒子を産生する細胞を標的器官または細胞の隣にインシトゥで移植すれば、標的細胞/器官へのウイルスベクターの直接的な適用が可能となるであろう。
【0005】
さらに、使用するウイルスベクターウイルスがレトロウイルスベクターウイルスの場合には、そのようなアプローチの方が、高用量の一回量を複数回適用するより有利である。なぜなら、標的細胞が複製される時点でベクターウイルスが存在している可能性、およびそれによりそれが標的細胞に感染できる可能性が高くなるからである。さらに、ウイルス粒子の放出がより低いが連続的であることは、ウイルス粒子に対する宿主の免疫応答から逃れるのに有利かもしれない。
【0006】
ウイルスベクターの有効な輸送のためには、ウイルス粒子産生細胞は、移植後に宿主中で長期間生存可能でなければならず、ウイルス粒子が、この期間中に産生され、該細胞から放出されなければならない。有意な免疫応答の非存在下では(例えば、脳内移植後)、これらの細胞は長期にわたり生存可能である(非特許文献3;非特許文献4)。しかしながら、他の身体部位で移植を成功させるためには、免疫系からプロデューサー細胞を防御しなければならない。
【0007】
したがって、このアプローチの長期的な有効性は、(1)宿主免疫系からの該細胞の防御(そのような細胞で通常見られるように、特に、ウイルス粒子を産生する細胞が、異なる種からのものである場合には、該免疫系は通常、該ウイルス粒子産生細胞を排除する)、および(2)血管新生に必要となりうる長期間のインシトゥでの該細胞の生存に依存する。
【0008】
ある生物活性分子を放出させるがこれらの分子を産生する細胞を宿主免疫系から防御する透過性構造体中に細胞をカプセル化することが、いくつか成功している(再検討のためには、非特許文献5を参照されたし)。ヒト成長ホルモン(hGH)(非特許文献6)または分泌型ヒトアデノシンデアミナーゼ(非特許文献7)を産生するよう遺伝的に修飾された細胞がカプセル化されている。これらのいずれの研究においても、細胞はポリ−L−リシン−アルギナートマイクロカプセル中にカプセル化されており、その細胞は培養中で長期間生存することが示された。これは、その酵素またはホルモンの長期にわたる産生を伴った。さらに、このマイクロカプセルをマウスに移植したところ、その細胞は1年間生存し続け、hGHを産生し続けることが示されており(非特許文献6)、このことは、このカプセルが宿主免疫系による破壊から該トランスフェクション化細胞を防御することを示すものである。
【0009】
他の物質を使用することによる細胞のカプセル化も報告されている。遺伝的に神経成長因子を産生するよう修飾された乳児ハムスター腎細胞が、ポリアクリロニトリル/塩化ビニル中にカプセル化されており、ラット脳内に移植されている。このカプセル化細胞は、少なくとも6ヵ月間生存し、NGFを産生し続けた(非特許文献8;非特許文献9)。
【0010】
さらに、硫酸セルロースとポリジメチルジアリルアンモニウムとの高分子電解質複合体中に肝細胞をカプセル化することが成功している(非特許文献10)。このカプセル化肝細胞の90%以上が生存能を維持し、このカプセル化細胞は、単層として成長させた肝細胞に対して、代謝活性の増加を示した。この文献には、硫酸セルロース/ポリジメチルジアリルアンモニウムカプセルが、他の型の細胞(例えば、ウイルス粒子を産生する細胞)の成長を維持することについても、ウイルス粒子を該カプセルから放出させることについても示唆されていない。
【0011】
本発明で用いる硫酸セルロースカプセルの製造は、特許文献1に十分に記載されている。また、硫酸セルロースの合成も、この特許出願に記載されている。硫酸セルロースカプセルの包括的な特徴づけのための方法は、非特許文献11に詳細に記載されている。他の硫酸セルロースカプセルは、特許文献2に記載されている。セルロースカプセルの特性、すなわちサイズ、孔径、壁厚および機械的特性は、例えば、カプセル製造時の物理的環境、沈殿浴の粘度、そのイオン強度、温度、細胞/硫酸セルロース懸濁液の添加速度、硫酸セルロースの組成および非特許文献11に記載されている他のパラメーターなどのいくつかの要因に左右される。
【特許文献1】独国特許出願公開第4021050号明細書
【特許文献2】英国特許第2135954号明細書
【非特許文献1】Morgan, R.A., and Anderson, W.F. (1993). Human gene therapy. Ann. Rev. Biochem. 62,191-217
【非特許文献2】Guenzburg, W.H., Saller, R., and Salmons, B. (1995). Retroviral vectors directed to predefined cell types for gene therapy. Biologicals 23, 5-12
【非特許文献3】Culver, K.W., Ram, Z., Wallbridge, S., Ishii, H., Oldfield, E.H., and Baese, R.M. (1992). In vivo gene transfer with retroviral vector producer cells for treatment of experimental brain tumors. Science 256, 1550-1552
【非特許文献4】Ram, Z., Culver, K.W., Walbridge, S., Blaese, R.M., and Oldfield, E.H. (1993). In situ retroviral-mediated gene transfer for the treatment of brain tumors in rats. Cancer Res. 53, 83-88
【非特許文献5】Chang, P.L. (1995). Nonautologous somatic gene therapy. In Somatic Gene Therapy. P.L. Chang, ed. (CRC Press, Boca Raton) pp.203-223
【非特許文献6】Tai, l.T., and Sun, A.M. (1993). Microencapsulation of recombinant cells: a new delivery system for gene therapy. FASEBJ. 7, 1061-1069
【非特許文献7】Hughes, M., Vassilakos, A., Andrews D.W., Hortelano, G., Belmont, J.W., and Chang, P.L. (1994). Delivery of a secretable adenosine deaminase through microcapsules a novel approach to somatic gene therapy. Hum. Gene Ther.5, 1445-1455
【非特許文献8】Winn, S.R., Hammang, J.P., Emerich, D.F., Lee, A., Palmiter, R.D., and Baetge, E.E. (1994). Polymer encapsulated cells genetically modified to secrete human nerve growth promote the survival of axotomized septal cholinergic neurons. Proc.Natl. Acad. Sci. USA91, 2324-2328
【非特許文献9】Deglon, N., Zurn, A., Baetge, E., and Aebischer, P. (1995) Development of gene therapy for the treatment of neurodegenerative diseases; Parkinson disease, Alzheimer disease and amyotrophic lateral sclerosis therapy; polymer encapsulated neurotrophic-secreting cell intrathecal transplantation. Gene Ther.2, 563
【非特許文献10】Stange, J., Mitzner, S., Dautzenberg, H., Ram low, W., Knippel, M., Steiner, M., Ernst B., Schmidt, R., and Klinkmann, H. (1993). Prolonged biochemical and morphological stability of encapsulated liver cells - a new method. Biomat. Art. Cells & Immob. Biotech. 21, 343-352
【非特許文献11】H.Dautzenberg et al., Biomat.Art.Cells & Immob.Biotech., 21(3), 399-405 (1993)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
驚くべきことに、移植細胞からのウイルス粒子の連続的産生は、高分子電解質複合体中へ該細胞をカプセル化することにより達成できることが見出された。そのようなカプセルの孔は、ウイルスを不活性化することが知られている抗体および補体(Welshら,1975,Cornettaら,1990)が該カプセル中へ侵入するのに十分な大きさであるが、本発明者らは、移植されたカプセル付近での有意な免疫または炎症反応または壊死の証拠を何ら見出していない。さらに、驚くべきことに、本発明のカプセルは、宿主中にうまく移植され、急速に血管新生されるようになることが見出された。したがって、本発明のカプセル化細胞は、治療用遺伝子を保持するウイルスベクターの長期にわたるインビボでの輸送を可能とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、とりわけ、以下のものを単独または組み合わせて含んでなる:
細胞を含有するコアと該コアを包囲する多孔性カプセル壁とを含んでなる、ウイルス粒子を産生するカプセル化細胞であって、該多孔性カプセル壁が該ウイルス粒子を透過しうることを特徴とするカプセル化細胞;
該多孔性カプセル壁が、対荷電高分子電解質(counter-charged polyelectrolytes)から形成される高分子電解質複合体よりなる、前記カプセル化細胞;
該多孔性カプセル壁が、硫酸基含有多糖もしくは多糖誘導体またはスルホナート基含有合成ポリマーおよび第四級アンモニウム基を有するポリマーとから形成される高分子電解質複合体よりなる、前記カプセル化細胞;
該硫酸基含有多糖もしくは多糖誘導体が硫酸セルロース、酢酸硫酸セルロース、カルボキシメチルセルロース硫酸、デキストラン硫酸またはデンプン硫酸であり、該スルホナート基含有合成ポリマーがポリスチレンスルホナートである、前記カプセル化細胞;
第四級アンモニウム基を有するポリマーが、ポリジメチルジアリルアンモニウムまたはポリビニルベンジル−トリメチルアンモニウムである、前記カプセル化細胞;
該多孔性カプセル壁が、硫酸セルロースおよびポリジメチルジアリルアンモニウムから形成される複合体よりなる、前記カプセル化細胞;
0.01〜5 mm、好ましくは0.1〜1 mmの直径を有するマイクロカプセルの形態を有する、前記カプセル化細胞;
該カプセルが、孔を含有するカプセル表面に包囲される該カプセル壁の内部を形成する海綿状硫酸セルロースマトリックスよりなり、該海綿状マトリックスが細胞で満たされている、前記のいずれかのカプセル化細胞;
該多孔性カプセル壁の表面孔径が、80〜150 nm、好ましくは100〜120 nmである、前記カプセル化細胞;
該カプセル化細胞により産生されるウイルス粒子が、レトロウイルスベクターのゲノムを含有するレトロウイルス粒子である、前記カプセル化細胞;
レトロウイルス粒子を産生するカプセル化細胞が、発現ベクターでトランスフェクションされたパッケージング細胞系であり、該発現ベクターが、レトロウイルスベクターコンストラクトを保持し、該レトロウイルスベクターコンストラクトが、標的細胞に感染し該標的細胞中で該レトロウイルスベクターコンストラクトに保持された1以上のコード配列の発現を指令する能力を有し、該パッケージング細胞系が、該レトロウイルスベクターコンストラクトがパッケージングされるのに必要なタンパク質をコードする遺伝子を保持する少なくとも1つの発現ベクターを含む、前記カプセル化細胞;
該コード配列の少なくとも1つが、マーカー遺伝子、治療用遺伝子、抗ウイルス遺伝子、抗腫瘍遺伝子およびサイトカイン遺伝子から選ばれる異種ペプチドをコードする、前記カプセル化細胞;
該マーカー遺伝子が、β−ガラクトシダーゼ、ネオマイシン、アルコールデヒドロゲナーゼ、ピューロマイシン、ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)、ハイグロマイシンおよび分泌アルカリホスファターゼなどのタンパク質をコードするマーカー遺伝子よりなる群から選ばれ、該治療用遺伝子が、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ、シトシンデアミナーゼ、グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(gpt)、シトクロムP450などのタンパク質をコードする遺伝子、SDIなどの細胞周期調節遺伝子、p53などのタンパク質をコードする癌抑制遺伝子、メリチン、セクロピンまたはサイトカイン(例えば、IL−2)などのタンパク質をコードする抗増殖遺伝子から選ばれる、前記カプセル化細胞;
該パッケージング細胞系が、psi-2、psi-crypt、psi−AM、GP+E−86、PA317およびGP+envAM-12から選ばれる、前記カプセル化細胞;
該パッケージング細胞系にトランスフェクションされた発現ベクターが、pBAG、pLXSN、p125LX、pLX2B1またはpc3/2B1またはそれらの誘導体である、前記カプセル化細胞;
ウイルス粒子を産生する細胞を高分子電解質の水溶液に懸濁し、ついで前形成粒子形態の該懸濁液を、対荷電高分子電解質の水溶液を含有する沈殿浴中に導入することを含んでなる、前記カプセル化細胞の製造法;
該粒子形成が噴霧により生じる、前記製造法;
該細胞を、硫酸基含有多糖もしくは多糖誘導体またはスルホナート基含有合成ポリマーの水溶液に懸濁する、前記製造法;
該硫酸基含有多糖もしくは多糖誘導体が、硫酸セルロース、酢酸硫酸セルロース、カルボキシメチルセルロース硫酸、デキストラン硫酸またはデンプン硫酸から選択され、該スルホナート基含有合成ポリマーがポリスチレンスルホナートである、前記製造法;
該沈殿浴が、第四級アンモニウム基を有するポリマーの水溶液を含有する、前記製造法;
第四級アンモニウム基を有するポリマーが、ポリジメチルジアリルアンモニウムまたはポリビニルベンジル−トリメチルアンモニウムである、前記製造法;
該細胞を、硫酸セルロースナトリウムの水溶液に懸濁し、ポリジメチルジアリルアンモニウムクロリドの水溶液を含有する沈殿浴中に導入する、前記製造法;
該硫酸セルロース水溶液が、緩衝食塩水中の0.5〜50%、好ましくは2〜5%の硫酸セルロースナトリウムおよび2〜10%、好ましくは5%のウシ胎児血清よりなる、前記製造法;
該沈殿浴中の水溶液が、緩衝食塩水中の0.5〜50 %、好ましくは2〜10%、より好ましくは3%のポリジメチルジアリルアンモニウムクロリドよりなる、前記製造法;
前記製造法により製造される、前記のいずれかに記載のカプセル化細胞;
標的器官/細胞へ遺伝子を輸送するための、前記のいずれかに記載のカプセル化細胞の使用であって、
a)適当な培地中で該カプセル化細胞を培養し、そして
b)生きた動物(ヒトを含む)の体内へ該カプセル化細胞を移植することを含んでなる使用;
該標的器官/細胞が乳腺または膵臓である、前記使用;および
該標的器官/細胞が、動脈を包囲する平滑筋細胞および他の型の細胞である、前記使用。
【0014】
<発明の目的>
ウイルス粒子を産生するカプセル化細胞であって、宿主に移植された後で、該細胞により産生されたウイルス粒子を該カプセルから放出させ、かつ、有意な宿主の免疫または炎症応答を惹起しないカプセル化細胞を提供することが本発明の目的である。
【0015】
ウイルス粒子を産生するそのようなカプセル化細胞の製造法を提供することが、本発明のさらに別の目的である。
【0016】
本発明のさらに別の目的は、ウイルス粒子を産生するそのようなカプセル化細胞を宿主に移植し、それにより標的器官または標的細胞付近でウイルス粒子の連続的な産生および放出を引き起こさせることにより、標的器官/細胞へ遺伝子(特に治療用遺伝子)を輸送する方法を提供することである。
【0017】
<本発明>
本発明によれば、ウイルス粒子を産生するカプセル化細胞であって、宿主に移植された後で、該細胞により産生されたウイルス粒子を該カプセルから放出させ、かつ、有意な宿主の免疫または炎症応答を惹起しないカプセル化細胞が提供される。
【0018】
本発明のカプセル化細胞は、ウイルス粒子を産生する細胞を高分子電解質(例えば、硫酸基含有多糖もしくは多糖誘導体またはスルホナート基含有合成ポリマーから選ばれる)の水溶液に懸濁し、ついで前形成粒子形態の該懸濁液を、対荷電高分子電解質(例えば、第四級アンモニウム基を有するポリマー)の水溶液を含有する沈殿浴中に導入することにより製造することができる。
【0019】
硫酸基含有多糖もしくは多糖誘導体としては、塩、特にナトリウム塩の形態の、硫酸セルロース、酢酸硫酸セルロース、カルボキシメチルセルロース硫酸、デキストラン硫酸、デンプン硫酸などが挙げられる。該スルホナート基含有合成ポリマーは、ポリスチレンスルホナート塩(好ましくは、ナトリウム塩)であってもよい。
【0020】
第四級アンモニウム基を有するポリマーとしては、塩、好ましくは塩化物塩の形態の、ポリジメチルジアリルアンモニウム、ポリビニルベンジル−トリメチルアンモニウムなどが挙げられる。
【0021】
本発明の好ましい実施態様では、ウイルス粒子を産生する細胞を、硫酸セルロースおよびポリジメチルジアリル−アンモニウムから形成される複合体よりなる複合体中にカプセル化する。
【0022】
そのようなカプセルは、好ましくは、ウイルス粒子を産生する細胞を、0.5〜50%、好ましくは2〜5%の硫酸セルロースナトリウムおよび5%のウシ胎児血清を含有する(所望により緩衝液中)溶液に懸濁することにより製造する。ついでこの懸濁液を、攪拌しながら、0.5〜50%、好ましくは2〜10%、最も好ましくは約3%のポリジメチル−ジアリルアンモニウムクロリドを含有する(所望により緩衝液中)沈殿浴中へ分注系(例えば、エアジェット系または圧電系)により滴下する。カプセルの形成は数ミリ秒以内で生じ、該細胞含有カプセルを、沈殿浴中で30秒〜5分間維持し、ついで洗浄する。この方法の迅速性は、該細胞が、全操作の間に過度にストレスを受けないことを保証する(Stangeら,1993)。
【0023】
本発明のカプセルは、0.01〜5 mm、好ましくは0.1〜1 mmの種々の直径を有する。そのため、種々の細胞数を含有するカプセルを、製造することができる。本発明のカプセル化方法を用いると、1010個まで、好ましくは105〜107個のウイルス粒子産生細胞を、高分子電解質複合体中にカプセル化することができる。
【0024】
硫酸セルロースおよびポリジメチルジアリルアンモニウムよりなるカプセルは、優れた機械的特性を有し、一定のサイズおよび孔径に製造することができる。
【0025】
該カプセルの孔径は、80〜150 nm、好ましくは100〜120 nmである。
【0026】
該カプセル化細胞は、通常の細胞培養培地(その種類はカプセル化細胞による)中にて、湿度、温度およびCO2濃度の標準的な条件で培養することができる。この培養期間中に該カプセルから細胞培養培地中へのウイルス粒子の産生を確認するには、RT-PCR法、または標的細胞への無細胞(0.45μmで濾過したもの)上清の導入、ついで、該ウイルス粒子内に含有されたウイルスベクターコンストラクトに保持された遺伝子にコードされるマーカータンパク質の活性に関するアッセイによりウイルス感染を確認することにより行なうことができる。ウイルスベクターに保持されたマーカー遺伝子が、特定の化合物に対する耐性を標的細胞に付与する遺伝子であれば、該系により産生されたウイルスの力価を確認することができる。
【0027】
培養中で適当な時間が経過した後(通常、1時間以上、30日未満)、該細胞含有カプセルを、種々の身体領域中へ直接的にまたはシリンジを用いて注入することにより、外科的に移植することができる。
【0028】
本発明のカプセル化細胞により産生されるウイルス粒子は、遺伝子治療に有用な任意のウイルス(例えば、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルスまたはレトロウイルスなどであるが、これらに限定されるものではない)に基づくものであってもよい(再検討のためには、GuenzburgおよびSalmons, 1995を参照されたし)。
【0029】
本発明の好ましい実施態様では、該カプセル化細胞は、マーカーおよび/または治療用遺伝子を保持するレトロウイルスベクターコンストラクトのゲノムを含有するレトロウイルス粒子を産生するパッケージング細胞系である。
【0030】
レトロウイルスベクター系は、以下の2つの成分よりなる。
【0031】
1)ウイルスタンパク質をコードする遺伝子が標的細胞に導入すべき治療用遺伝子(所望によりマーカー遺伝子を含む)で置換されている、修飾されたレトロウイルスであるレトロウイルスベクターコンストラクトを保持する発現ベクター(ベクタープラスミド)。ウイルスタンパク質をコードする遺伝子の置換は、該ウイルスを有効に欠損させるため、それは、該修飾レトロウイルスに該欠損ウイルスタンパク質を付与する該系の第2成分によりレスキューされる必要がある。
【0032】
第2成分は、
2)大量のウイルスタンパク質を産生するが、自己増殖性(replication competent)ウイルス産生能を欠く細胞系である。この細胞系は、パッケージング細胞系として公知であり、該修飾レトロウイルスゲノムのパッケージングを可能にする遺伝子を保持するプラスミドでトランスフェクションされた細胞系よりなる。これらのプラスミドは、ビリオン産生に要する必須ウイルスタンパク質の合成を指令する。
【0033】
このパッケージングされたレトロウイルスベクターを得るためには、該ベクタープラスミドをパッケージング細胞系にトランスフェクションする。これらの条件下で、挿入された治療用遺伝子および所望によりマーカー遺伝子を含む修飾されたレトロウイルスゲノムが該ベクタープラスミドから転写され、得られた修飾レトロウイルスゲノムが該レトロウイルス粒子中にパッケージングされる。そのようなウイルス粒子が感染した細胞中にはウイルスタンパク質が存在しないため、該細胞はウイルス粒子を産生できない。しかしながら、該感染細胞においては、該治療用遺伝子およびマーカー遺伝子を保持するレトロウイルスベクターコンストラクトが存在し、これらが発現されうる。
【0034】
国際公開第94/29437号パンフレット、国際公開第89/11539号パンフレットおよび国際公開第96/07748号パンフレットは、本発明の目的に有用な種々の型のレトロウイルスベクター系を記載している。
【0035】
本発明のカプセル化細胞により産生されるウイルス粒子は、マーカーおよび/または治療用遺伝子をコードする遺伝子を保持するウイルスベクターのゲノムを含有するよう構築されうる。
【0036】
該ウイルスベクターにより保持されるマーカーまたは治療用遺伝子は、例えば、β−ガラクトシダーゼ、ネオマイシン、アルコールデヒドロゲナーゼ、ピューロマイシン、ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)、ハイグロマイシン、分泌アルカリホスファターゼなどのタンパク質をコードする遺伝子、または、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ、シトシンデアミナーゼ、グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(gpt)、シトクロムP450などのタンパク質をコードする治療用遺伝子、SDIなどの細胞周期調節遺伝子、p53などのタンパク質をコードする癌抑制遺伝子、またはメリチン、セクロピンまたはサイトカイン(例えば、IL-2)などのタンパク質をコードする抗増殖遺伝子であってもよい。
【0037】
特定の実施態様では、本発明は、腫瘍の治療における本発明のカプセル化細胞の使用に関する。
【0038】
悪性腫瘍の多くは、化学療法に十分に反応しない。腫瘍の治療に使用される抗癌薬は、ほとんどの場合、全身適用されるため、その患者の全身に広がってしまう。癌治療に必要なそのような薬物の高い全身用量は、患者にとって望ましくない副作用を引き起こすことが多い。抗癌薬の高い全身濃度に関するこれらの問題を避けうる1つの戦略は、腫瘍中またはその付近へ該薬物を直接適用するか又はそこで該薬物を直接活性化することによるものである。これは、抗癌薬(例えば、プロドラッグを細胞傷害性剤に変換しうる活性化酵素)をコードする遺伝子を保持する操作されたウイルス(特に、レトロウイルス)ベクターのゲノムを含有するウイルス粒子を産生する本発明のカプセル化細胞を、腫瘍細胞中またはその付近の細胞中へ移植することにより達成することが可能である。
【0039】
本発明の1つの実施態様では、腫瘍関連酵素(例えば、シトクロムP450)の遺伝子、または無毒性薬を1以上の毒性代謝物に変換するチミジンキナーゼなど(これらに限定されるものではない)の自殺遺伝子を保持するレトロウイルスベクターのゲノムを含有するレトロウイルス粒子を産生するカプセル化細胞が提供される。本発明のそのようなカプセル化細胞は、腫瘍(例えば、膵臓または乳腺中の腫瘍)内またはその付近へ該カプセルを移植することにより、癌の治療に使用することができる。
【0040】
結合した治療用遺伝子の発現を特定の細胞型へ方向づけるための標的細胞特異的調節要素およびプロモーターを使用することにより、迫加的な標的化を得ることができる。
【0041】
そのような標的細胞特異的調節要素およびプロモーターには、例えば、カルボニックアンヒドラーゼIIおよびβ−グルコキナーゼ調節要素およびプロモーターなどの膵臓特異的調節要素およびプロモーター、免疫グロブリンおよびMMTVリンパ球特異的調節要素およびプロモーターなどのリンパ球特異的調節要素およびプロモーター、乳漿酸性タンパク質(Whey Acidic Protein(WAP))、マウス乳癌ウイルス(MMTV)、β−ラクトグロブリンおよびカゼイン特異的調節要素およびプロモーターなどの乳房特異的調節要素およびプロモーター、およびグルココルチコイドホルモンに対する応答性を付与したりあるいは発現を乳腺に方向づけるMMTV特異的調節要素およびプロモーターが含まれる。他のプロモーターには、例えば、CD4、CD34及びIL2プロモーターが含まれる。前記調節要素およびプロモーターは、好ましくは、前記レトロウイルスベクターの発現を調節する。
【0042】
誘導性プロモーター、例えば、放射能誘導性プロモーター、例えば、細胞間接着分子−1(ICAM-1)プロモーター、上皮増殖因子受容体(EGFR)プロモーター、および腫瘍壊死因子(TNF)プロモーターも使用することができる。
【0043】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明することとするが、これらの実施例は本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0044】
<実施例1 pBAGによるPA317のリポフェクションおよびG418耐性細胞の単離>
両種指向性(amphotropic)NIH3T3に基づくPA317パッケージング細胞(MillerおよびButtimore,1986)を、10%ウシ胎児血清を含有するダルベッコの改変イーグル培地(DMEM)中で培養した。該細胞を、リポフェクションの1日前に3×105細胞の密度で10 cm組織培養皿にまき、ついで、GIBCO/BRLからのリポフェクタミンキットを製造業者の指示に従い使用して、MLV(マウス白血病ウイルス)に基づくレトロウイルスベクターを保持する2μgのpBAGベクター(Priceら,1987)でリポフェクションした。ついで、該細胞を1:10希釈し、さらに400μg/ml G418(GIBCO/BRL)を含有する通常の培地中で培養した。14日後に、G418耐性細胞のコロニーをプールした。
【0045】
<実施例2 マイクロカプセル化>
2〜5%硫酸セルロースナトリウムおよび5%ウシ胎児血清を含有する1 mlの緩衝食塩水溶液に107個の細胞を懸濁し、緩衝食塩水中に2〜3%ポリジメチル−ジアリルアンモニウムを含有する沈殿浴中に、該懸濁液を分注系(エアジェット系)を用いて滴下した。カプセル形成は数ミリ秒以内に生じ、ついで硫酸セルロースより実質的になる機械的支持のための内部のより多孔性の層がさらに構築された。細胞を含有する該カプセルを沈殿浴中で30秒〜5分間維持し、ついでDMEM中で洗浄した(Stangeら,1993)。前記のとおり種々のパラメーター(すなわち、硫酸セルロースナトリウムの濃度、エアジェット系の流れ、および沈殿浴中での時間)に対して得られたバッチを、生物学的研究に使用した。代表的な条件は、例えば、2.5%硫酸セルロースナトリウム、2%ポリジメチル−ジアリルアンモニウムおよび沈殿浴中で1分、あるいは1.5%硫酸セルロースナトリウム、2%ポリジメチル−ジアリルアンモニウムおよび沈殿浴中で0.5分、あるいは3%硫酸セルロースナトリウム、3%ポリジメチル−ジアリルアンモニウムおよび沈殿浴中で2分である。正確なパラメーターは、所望のカプセルの正確なサイズ、カプセル壁の厚さおよび他の特性も考慮して選ばれる。
【0046】
<実施例3 マウスの乳腺中へのマイクロカプセルの移植>
2月齢の雌BALB/cマウスの乳腺中に、「鍵穴(key hole)」手術により、該マイクロカプセルを挿入し、該侵入部位を1縫合で閉じた。直径0.5〜2 mmの6個以下のカプセルを各手術部位に挿入した。
【0047】
該マイクロカプセルからのウイルス放出のインビトロ研究、該マイクロカプセルの構造、および免疫適格マウス(immunocompetent mouse)中への該カプセル移植の効果を、以下の試験方法を用いて調べた。
A)β−ガラクトシダーゼ活性
組織化学的染色による感染細胞の検出を、既に概説されているとおりに(Cepko,1989)行なった。該細胞、カプセルまたは組織切片を、冷却PBSで洗浄し、ついで2%パラホルムアルデヒド溶液で、該サンプルの厚さに応じて20分〜24時間固定した。PBSで徹底的に洗浄した後、該細胞、カプセルまたは組織切片を、基質X-gal(20mM K3FeCN6、20mM K4FeCN6・3H2O、2mM MgCl2および1 mg/ml X−gal)を含有する溶液中、37℃で少なくとも2時間インキュベートした。
B)感染
感染の6時間前に、4×104個の標的細胞を6ウェル組織培養プレート中にまいた。ウイルス産生細胞を含有するカプセルを該細胞上に載せ、ポリブレン(8μg/ml)を該培地に加えた。4時間後、該培地を交換して、残留ポリブレンを除去した。5日後、いくつかのウェルを、前記のとおりβ−ガラクトシダーゼ活性に関して染色し、残りのものは、より大きな組織培養皿中にトリプシン処理し、400μg/ml G418を含有する培地中で培養した。16日後、G418耐性コロニーを検出した。
C)RT-PCR分析
5mlのカプセル培養培地上清からウイルス粒子を、超遠心(240,000×g、1時間、4℃)によりペレット化した。該ペレットを、溶解緩衝液(1% Triton100、0.5%デスオキシコール酸ナトリウム、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム、PBS)に再懸濁し、フェノール抽出によりRNA抽出し、ついでエタノール沈殿させた[既に記載されているとおりに行なった(Salmonsら,1986)]。ついで、レディツーゴー・Tプライムド第1鎖キット(Ready-To-Go T-primed first-strand kit)(Pharmacia)を用いて、該RNAをDNAに逆転写した。envおよびR(MLV由来BAGベクターLTRのもの)(図2A)内に位置するプライマーを用いて、PCR増幅を行なった。このPCR増幅は、500mM KCl、10mM トリス-HCl(pH8.3)、1.5 mM MgCl2、0.01%(w/v)ゼラチンおよび100μMの各dNTP、40pMの各プライマーおよび2.5単位Taqポリメラーゼ(Perkin Elmer)よりなる100μlの反応混合物中で行なった。この反応は、パーキン・エルマー・シータス(Perkin Elmer Cetus)サーマルサイクラー9600中、以下の条件下で行なった:94℃で1分、53℃で2分および72℃で3分の35サイクル。該PCR産物を、0.8%アガロースゲル上で分離し、ついでZetaプローブ膜(BIORAD)に移し、同じプライマーおよびpBAGを鋳型として用いて得たMLVゲノムの32P標識された612bpのPCR 断片とハイブリダイズさせた[既に記載されているとおりに行なった(Indraccoloら,1995)]。MLV特異的配列を、Fujiホスホイメージング系(BAS1000)を用いて可視化した。
D)PCR分折
BAGベクターの残留env配列内に位置する第1プライマー、および該レトロウイルスベクター配列の外部のプラスミドのポリオーマ領域中の第2プライマーを用いるPCR(図3B)により、ゲノムDNA(1μg)を増幅した。以下の反応条件を用いて前記のとおりにPCR反応を行なった:94℃で1分間、50℃で2分間および68℃で3分間の35サイクル。該PCR産物を、該ポリオーマ配列に特異的なpBAGからの32P標識された 1.5kbのXbaI DNA断片とハイブリダイズさせた。
F)電子顕微鏡検査
走査型電子顕微鏡(SEM)および透過型電子顕微鏡(TEM)検査のための標本を、PBS(pH7.35)中で洗浄し、PBS中の1%グルタルアルデヒド中で15分間前固定した後、2%OsO4中で15分間後固定した。該サンプルを等級化系列のエタノールで脱水し、ついで2つの群に分けた。a)SEMサンプルを、CO2を用いて臨界点乾燥し、1〜3 nmの白金(Emscope SC500; Ashford,England)でコーティングした。このコーティングされた標本を、二次モードで5〜10kvの加速電圧の10kv電界放出走査型電子顕微鏡(Joel JSM-6300F; 東京、日本)で検査した。b)TEMサンプルをEpoen中に包埋した。超薄切片を、酢酸ウラニルおよびクエン酸鉛で二重染色し、Zeiss EM-10C(Oberkochen,Germany)透過型電子顕微鏡で観察した。
【0048】
<結果>
マイクロカプセルからのウイルス放出のインビトロ研究
実施例2で得たマイクロカプセル中の細胞を、前記試験で記載したとおり基質X-galを用いてβ−ガラクトシダーゼ活性に関して染色したところ、該細胞は、非カプセル化ベクター産生細胞と同様(示されていない)、pBAG(図1)によってコードされるβ−ガラクトシダーゼ遺伝子を発現することが示された。
【0049】
該マイクロカプセル中の細胞から細胞培養培地中へウイルス粒子が放出されることを確認するために、培養後の種々の時点でカプセル上清から収穫されたペレット化ビリオンからRNAを調製した。前記RT-PCR分析において記載されているとおり、ウイルスenvおよびR領域に相補的なプライマーを用いるRT-PCRにより、このRNAを分析した。MLVに特異的な予想されるサイズ(612bp)のPCR産生断片が、マイクロカプセル培養培地中で少なくとも6週間認められ(図2B、レーン1〜4)、この時点で分析を中断した。RT-PCR前のRNアーゼによるウイルスRNAの前処理ではシグナルが全く生成しなかったため(図2C、1〜4)、この断片は、混入DNAによるものではない。
【0050】
該カプセルからの感染性ウイルスの産生および放出は、感染試験において前記したとおり、それを標的細胞、例えば、NIH3T3(Jainchillら,1969)またはCRFK(Crandellら,1973)細胞と共培養することにより確認できた。4日の共培養の後、該標的細胞および該カプセル化パッケージング細胞のアリコートを、前記のとおり、β−ガラクトシダーゼ活性に関して染色した。残りの標的細胞を、G418耐性に関して選択した。共培養されたNIH3T及びCRFK細胞の多くがβ-gal遺伝子を発現することを示すことができた(図3A)。
【0051】
感染により標的細胞がβ-gal遺伝子を獲得していることを確認するために、標的細胞をPCRにより試験した。BAGを産生するパッケージング細胞系は、PA317細胞系(Miller及びButtimore,1986)に基づくものであり、単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼ遺伝子(HSV-TK)を保持しており、その産物により、プロドラッグであるガンシクロビルが細胞傷害性薬に変換される。標的NIH3T3またはCRFK細胞は、通常はこの遺伝子を保持しない。β-galを発現する共培養NIH3T3及びCFRK標的細胞がGCVに耐性であることを示すことができた実験では(これは、BAG産生細胞の流出が全く生じていなかったことを示すものである)、ゲノムDNAを該標的細胞から抽出し、該ベクター外部のプラスミド配列の存在に関してPCR(前期のPCR分析)により分析した。BAGベクターをプラスミドpBAGの形態でパッケージング細胞中にリポフェクションしたため、これらの配列はパッケージング細胞中には存在する。しかしながら、該パッケージング細胞から産生されたウイルスは、これらのプラスミド配列を保持しないため、該標的感染細胞中に存在するはずがない。図3Bは、そのようなプラスミド配列がいずれも検出不可能であったことを示し、このことは、これらの細胞がBAGベクターに感染したことと一致する。
【0052】
マイクロカプセルの構造
該マイクロカプセルの切片を調製し、その構造を電子顕微鏡により分析した。該カプセルの内部は、細胞で満たされた海綿状様マトリックスよりなる(図4)。該マイクロカプセルの表面の走査型電子顕微鏡検査(図4)においては、白色の棒がレトロウイルス粒子の平均直径を表すため、該カプセルからレトロウイルスベクター粒子を通過させるのに十分な大きさの孔の存在が示されている。
【0053】
免疫適格マウスにおけるインビボ安定性
該マイクロカプセルのインビボ安定性、および該マイクロカプセルまたはそれが産生するウイルスが有意な免疫応答を惹起するか否かを示すために、それを2月齢の雌BALB/cマウスの乳腺中に移植した。該マウスを、移植後の種々の時点で犠牲にして、該マイクロカプセルの運命と、感染性ウイルスが産生されるか否かとを評価した。移植されたマイクロカプセルは、移植後少なくとも6週間、乳脂肪パッド内に包埋されていることが明らかに認められた(図5A)。興味深いことに、分析したすべての動物において該マイクロカプセルの付近で血管新生が生じた(図5A)。これはおそらく、パッケージング細胞による脈管形成性または増殖性因子の産生の結果であろう。
【0054】
マイクロカプセルおよび周囲の乳房組織を通過するよう作製した切片から、血管はカプセルに直接隣接して見出されることが確認された(図5B)。また、これらの切片は、マイクロカプセルと乳房組織との間に位置する結合組織の層を示した。マイクロカプセルまたはそれが含有するウイルス産生細胞に対する有意な炎症応答または免疫応答の証拠はなかった。
【0055】
感染性レトロウイルスベクター粒子が該カプセルから放出され、周囲の乳房組織に感染したことを示すために、いくつかの切片をβ-galの発現に関してX-gal染色により分析した。β-gal遺伝子を発現する細胞が、マイクロカプセルの外部に明らかに認められた(図5C)。
【0056】
<実施例4>
本実施例は、ラットシトクロムP450 2B1の遺伝子を含有する腫瘍内感染用レトロウイルス発現ベクターの構築を記載する。
【0057】
図6に示す発現ベクターpLX2B1は、プラスミドpLX125およびpSW1(Kedzieら,1991)から得た断片を連結することにより構築した。プラスミドpLX125をHpaIで線状化し、得られた平滑末端を、仔ウシ腸ホスファターゼを用いて脱リン酸化した。1%アガロースゲル上での分離、切り出しおよびQiaquickプロトコール(Qiagen)を用いる調製により、該DNAを精製した。該DNAを、エタノール沈殿の後、水に再懸濁した。
【0058】
クローニングベクターpSW1をSmaIおよびHincIIで消化して、2つの平滑末端化断片を得た。該消化混合物を、1%アガロースゲル上で分離した。ラットシトクロムP450 2B1 cDNA(Fuji-Kuriyamaら,1982)を含有する最も短い断片(1,5kb)を切り出し、Qiaquick DNA抽出プロトコールを用いて溶出し、エタノール沈殿し、水に再懸濁した。
【0059】
pLX125の7,6fMolsおよびpSW1のSmaI/HindII断片の24fMolsを共に混合し、T4リガーゼ(Boehringer)を用いて12℃で3日間連結した。該リガーゼを65℃で10分間不活性化し、該DNAを、10倍容量のブタノールでブタノール沈殿させた。その沈殿したDNAを水に再懸濁し、DH10B細菌(Gibco)中にエレクトロポレーションした。アンピシリン耐性コロニーを選択し、DNAを調製し、SspBI/SalI、BamHI/SspBI、PvuI及びBamHIで試験消化した。最終的な正しいプラスミドをpLX2B1と称することにした。
【0060】
リポフェクション
リポフェクションの1日前に、3×105個のレトロウイルスパッケージング細胞PA317(Miller及びButtimore,1986)を6cmペトリまたは培養皿中にまいた。感染の当日、2μgのpLX2B1を100μlの無血清培地と混合した。平行して、15μlのLipofectamine(Gibco BRL)を100μlの無血清培地と混合した。該プラスミド含有溶液を、該Lipofectamine混合物に加え、45分間インキュベートした。35分後、該細胞を2mlの無血清培地で1回洗浄した。800μlの無血清培地を該リポフェクション混合物に加え、得られた1mlを、その調製された細胞上に加えた。6時間後、10%FCSを含有する1mlのダルベッコの改変イーグル培地を加えた。翌日、該細胞をトリプシン処理し、1:10希釈し、100mm皿上にまいた。24時間後、該培地を、ネオマイシン類似体G418を含有する培地と取り換えた。単細胞クローンまたは細胞集団を単離し、シトクロムP450の発現に関して分析した。
【0061】
カプセル化
得られたレトロウイルスベクター産生パッケージング細胞を、前記実施例2に記載のとおりにカプセル化する。
【0062】
移植
得られたカプセルを、「鍵穴(key hole)」手術により、BALB/cまたはGRマウスの移植性または自発性腫瘍の付近またはその中に導入する。直径1mmの約6個のカプセルを各手術部位に挿入する。その手術部を1縫合により閉じる。ついで該マウスを、シクロホスファミドまたはイフォスファミドで処理した。これは、20mg/mlの100μlの直接的な腫瘍内注入により局所的に、あるいは130mg CPA/kg体重(i.p.)および40〜60mg IFO/kg体重(i.p.)の全身濃度で、最大10週まで行なった。この期間中、腫瘍サイズおよび肉眼による外観を毎日モニターする。ついで該マウスを犠牲にし、挿入されたカプセルおよび腫瘍を含有する組織を取り出し、光学および電子顕微鏡検査用の組織切片を調製する。これらの切片は、カプセルの良好な移植、血管新生を明らかに示し、細胞性免疫応答を示すリンパ球の存在の証拠を示さない。これらの切片はまた、カプセル内での細胞死または壊死の徴候を示さない。これに対して、該腫瘍は壊死を示し、試験期間中に腫瘍サイズの明らかな減少が生じたことが肉眼的に示された。
【0063】
<実施例5>
本実施例は、ラットシトクロムP450 2B1を構成的に発現する安定な細胞系の構築を記載する。
【0064】
発現ベクターpc3/2B1は、ブラスミドpcDNA3(Invitrogen)およびpSW1(Kedzieら,1991)から得た断片を連結することにより構築した。
【0065】
プラスミドpcDNA3をXhoI/XbaIで消化し、得られた付着末端化断片を、仔ウシ腸ホスファターゼを用いて脱リン酸化した。1%アガロースゲル上での分離、切り出しおよびQiaquickプロトコール(Qiagen)を用いる調製により、該ベクターバックボーンのDNAを精製した。該DNAを、エタノール沈殿の後、水に再懸濁した。
【0066】
クローニングベクターpSW1をXhoI及びXbaIで消化して、2つの断片を得た。該消化混合物を、1%アガロースゲル上で分離した。ラットシトクロムP450 2B1 cDNA(Fuji-Kuriyamaら,1982)を含有する最も短い断片(1,5kb)を切り出し、Qiaquick DNA抽出プロトコールを用いて溶出し、エタノール沈殿させ、水に再懸濁した。
【0067】
pcDNA3バックボーンの8,3fMolsおよびpSW1のXhoI/XbaI断片の24,8fMolsを共に混合し、T4リガーゼ(Boehringer)を用いて12℃で1日間連結した。該リガーゼを65℃で10分間不活性化し、該DNAを、10倍容量のブタノールでブタノール沈殿させた。その沈殿したDNAを水に再懸濁し、DH10B細菌(Gibco)中にエレクトロポレーションした。アンピシリン耐性コロニーを選択し、DNAを調製し、EcoRI、BamHI、EcoRV及びXhoIで試験消化した。最終的な正しいプラスミドをpc3/2B1と称することにした。
【0068】
リポフェクション
リポフェクションの前日に、3×105個のNIH3T3細胞を35mm皿中にまいた。感染の当日、2μgのpc3/2B1を100μlの無血清培地と混合した。平行して、15μlのLipofectamine を100μlの無血清培地と混合した。該プラスミド含有溶液を、該Lipofectamine 混合物に加え、45分間インキュベートした。35分後、該細胞を2 mlの無血清培地で1回洗浄した。800μlの無血清培地を該リポフェクション混合物に加え、得られた1 mlを、その調製された細胞上に加えた。6時間後、10%FCSを含有する1mlのDMEM(Glutamax)を加えた。翌日、該細胞をトリプシン処理し、10倍希釈し、100mm皿上にまいた。24時間後、該培地を、ネオマイシン培地と取り換えた。14日後、ネオマイシン耐性クローンを単離し、該ベクターの存在および活性に関して試験した。
【0069】
これらの細胞を含有するカプセルを、実施例2に記載のとおりに製造し、マウスの腫瘍部位付近に移植した。シクロホスファミドまたはイフォスファミドでの処理の後、前記のとおり、処理の効力を評価した。
【0070】
<参照文献>
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【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】図1は、β−ガラクトシダーゼ発現を示すための、pBAGで安定にトランスフェクションされたカプセル化PA317細胞の組織染色を示す。
【図2】図2は、該カプセルにより放出されたウイルス粒子のRT-PCR分析(2B;レーン1〜4:カプセルの培養の2、3、5および6週間後に採取された培地)を示す。非カプセル化BAGウイルス産生細胞からの細胞培養培地を陽性対照(レーン5)として、非トランスフェクション化PA317からの培地を陰性対照(レーン6)として使用した。増幅されるバンドがウイルスRNAに由来することを保証するためにRT-PCR分析を行なう前に該ウイルスサンプルをRNアーゼで消化した場合は、シグナルは認められなかった(2C;レーン1〜4)。RNアーゼ処理なしの非カプセル化BAGウイルス産生細胞から調製されたウイルスRNAを、RT-PCR反応において陽性対照として使用した(レーン7)。
【図3A】図3Aは、カプセル化ウイルス産生細胞とNIH3T3細胞との共培養を示す。パッケージング細胞を産生するレトロウイルスベクターを含有するカプセルを加える1日前に、標的細胞を低密度でまいた。数日後、細胞およびカプセルを共に、β−ガラクトシダーゼ活性に関して組織染色した。
【図3B】図3Bは、図3Aにおいてβ−ガラクトシダーゼを発現する標的細胞が、ウイルス産生細胞の流出によるものではなく、感染事象に由来することを確認するために、細胞からゲノムDNAを抽出し、PCR分析を行なった。
【図4】図4は、カプセルの表面を示す走査型電子顕微鏡検査を示す。この場合、孔様構造は、高倍率(×75000)で検出可能となる。白色の棒は100nm(レトロウイルス粒子の直径)を表しており、これらの構造が表す孔を通って、該ウイルスが該カプセルから放出されることが示されている。
【図5A】図5Aは、マウスの乳腺内に移植されたカプセルの組織学的分析を示す。
【図5B】図5Bは、マウス乳腺中に4週間移植した後のカプセルを通る切片の光学顕微鏡検査(133倍の倍率)を示す。
【図5C】図5Cは、BAGベクター産生PA317細胞含有カプセルの移植後のマウス乳房細胞への感染を示す。
【図6】図6は、プロモーター変換の後にU3-MMTVプロモーターにより制御されることとなるラットシトクロムP450 2B1の遺伝子を含有する発現ベクターpLX2B1の構造を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レトロウイルス粒子を産生するレトロウイルスパッケージング細胞をカプセル化したカプセルを含む医薬組成物であって、前記カプセルが前記レトロウイルス粒子に対して透過性である多孔性カプセル壁を具備する、前記の医薬組成物。
【請求項2】
多孔性カプセル壁が高分子電解質複合体を含む、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
多孔性カプセル壁が、硫酸基含有多糖もしくは多糖誘導体またはスルホナート基含有合成ポリマーと第四級アンモニウム基を有するポリマーとから形成される高分子電解質複合体を含む、請求項1または2のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【請求項4】
硫酸基含有多糖もしくは多糖誘導体が硫酸セルロース、酢酸硫酸セルロース、カルボキシメチルセルロース硫酸、デキストラン硫酸またはデンプン硫酸からなる群の1つまたは複数の要素(element)より選択され、該スルホナート基含有合成ポリマーがポリスチレンスルホナートである、請求項3記載の医薬組成物。
【請求項5】
第四級アンモニウム基を有するポリマーが、ポリジメチルジアリルアンモニウムまたはポリビニルベンジル−トリメチルアンモニウムである、請求項3または4のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【請求項6】
多孔性カプセル壁が硫酸セルロースおよびポリジメチルジアリルアンモニウムから形成される複合体を含む、請求項1〜5のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【請求項7】
カプセルが、0.01〜5 mmの直径を有するマイクロカプセルの形態を有する、請求項1〜6のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【請求項8】
カプセルが、孔を含有するカプセル壁によって包囲されたカプセルの内部を形成する海綿状マトリックスを含み、前記海綿状マトリックスが細胞で満たされている、請求項1〜7のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【請求項9】
多孔性カプセル壁の表面孔径が、80〜150 mmである、請求項1〜8のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【請求項10】
レトロウイルス粒子を産生するカプセル化された細胞が、発現ベクターでトランスフェクトされたパッケージング細胞系であり、前記発現ベクターが、標的細胞に感染し該標的細胞中でレトロウイルスベクターコンストラクトに保持された1つまたは複数のコード配列の発現を指令する能力を有するレトロウイルスベクターコンストラクトを保有し、前記パッケージング細胞系が、該レトロウイルスベクターコンストラクトがパッケージングされるのに必要なタンパク質をコードする遺伝子を保持する少なくとも1つの発現ベクターを含む、請求項1〜9のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【請求項11】
コード配列の少なくとも1つが、マーカー遺伝子、治療用遺伝子、抗ウイルス遺伝子、抗腫瘍遺伝子およびサイトカイン遺伝子から選択される異種ペプチドをコードする、請求項10記載の医薬組成物。
【請求項12】
遺伝子治療に、および/または癌またはその他の関連疾病もしくは疾患に使用するための請求項1〜11のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【請求項13】
カプセル化された細胞が、標的器官/細胞および/または標的器官/細胞の隣に注射および/または移植される、標的器官/細胞へ遺伝子を輸送するための請求項12記載の医薬組成物。
【請求項14】
標的器官/細胞および/または標的器官/細胞の隣に、注射および/または移植するために適した形態の請求項1〜13のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【請求項15】
標的器官/細胞が癌性組織である、請求項14記載の医薬組成物。
【請求項16】
標的器官/細胞が乳腺、膵臓または動脈を包囲する平滑筋細胞である、請求項14または15のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか1つに記載の医薬組成物の治療的に有効な量を、治療が必要な患者に投与することを含む、ヒト以外の疾病または疾患を治療するための方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−101011(P2008−101011A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−301109(P2007−301109)
【出願日】平成19年11月21日(2007.11.21)
【分割の表示】特願平9−504165の分割
【原出願日】平成8年6月24日(1996.6.24)
【出願人】(502240076)バヴァリアン・ノルディック・アクティーゼルスカブ (18)
【出願人】(398061245)ヘルムホルツ・ツェントルム・ミュンヒェン・ドイチェス・フォルシュンクスツェントルム・フューア・ゲズントハイト・ウント・ウムベルト(ゲーエムベーハー) (19)
【氏名又は名称原語表記】Helmholtz Zentrum Muenchen Deutsches Forschungszentrum fuer Gesundheit und Umwelt (GmbH)
【Fターム(参考)】