説明

ウェハー形逆止弁

【課題】配管されたパイプの内周面に弁体が接触することを防止するとともに、口径が大きくなっても面間を小さくすることができる。
【解決手段】ストッパー板3の中央部には断面不完全円状の連通流路25が設けられ、連通流路25の上部には規制部26が設けられる。規制部26はストッパー板3の上流側の弁箱1と当接する端面から下流側の端面に向かって流路中心方向に延びるテーパー状に形成される。規制部26の下流側の先端には、全開状態において、弁体の円板部の上部内周縁と当接し、ウェハー形逆止弁の開度を規制する係止部27が設けられる。このとき、係止部27の上流側には規制部26と円板部との間に空隙ができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学工場、上下水道、農・水産業、半導体製造分野、食品分野などの各種産業の配管ラインに使用されるウェハー形逆止弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、管路を流れる流体の逆流を防止するために、図13に示すようなウェハー形逆止弁が知られている。その構成は、中心に流路101を有する弁本体102に弁座103を形成し、弁座103に接離する弁体104をシャフト105により揺動可能に軸支するものである。しかしながら、このウェハー形逆止弁にはストッパーが設けられていないため、全開状態において、弁体104の周縁部がウェハー形逆止弁に配管されたパイプの内周面に接触する。そうすると、騒音の発生や、パイプの内周面が損傷し、損傷箇所から腐食やリークが発生するおそれがある。
【0003】
このような弁体104のパイプの内周面への接触を防止したウェハー形逆止弁が知られている(特許文献1参照。)。その構成は、図14に示すように、中心に流路201を有する弁本体202の入口側近傍に弁座203を形成し、弁座203に接離する弁体204を、アーム206を介して弁本体202に軸支したシャフト205により揺動可能に軸支したウェハー形逆止弁において、弁座203と弁体204の当接面を本体配管接続面に対して流体出口側に傾斜させると共に、弁本体202の出口側内周面に弁体204の全開位置を規制するストッパー207を設けたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−61798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1記載のウェハー形逆止弁では、ストッパー207が複数個所に分割して設けられている。そのため、各部品の寸法精度や組立時のばらつきを考慮すると、弁体204がストッパー207に偏って当接し、開度が不安定になるおそれがある。また、ストッパー207が弁体204の中間部分の外周縁と当接するように位置決めされている。弁体204は口径が大きくなるに連れて大きくなるので、口径が大きくなるに連れて面間も大きくなり、ウェハー形逆止弁は大型化、重量化し、配管施工やメンテナンスがしづらくなる。また、面間が大きくなると、ウェハー形逆止弁を配管に締結する配管ボルトも大きくなる。そうなると、配管ボルトの取り付けや調達がしにくくなり、弁本体202にフランジを設けざるを得ず、更なる大型化につながることもある。
【0006】
また、シャフト205が流路201内で剥き出しにされているため、シャフト205周辺に異物やスケールなどが溜まりやすい。異物やスケールが溜まると作動不良を起こしやすくなる。また、異物の接触や摩耗などによりシャフト205に傷が入ると、シャフト205が腐食しやすくなり、破損しやすくなる。さらに、アーム206と弁体204がボルトで連結されているので、ボルトの緩みを確認するために、頻繁なメンテナンスが必要となる。また、ストッパー207を設けたことによって、弁本体202の構造にはアンダーカット(鋳型で抜けない部分)が発生する。そのため、弁本体202は切削加工や砂型、または特殊で複雑な構造の金型で成形されることになる。これらの方法は、製造時間やメンテナンスなどを考慮すると非効率的な方法であり、口径が大きくなるに連れて金型や製造装置が著しく複雑化、大型化する。
【0007】
本発明の目的は、ウェハー形逆止弁に配管されたパイプの内周面に弁体が接触することを確実に防止するとともに、口径が大きくなっても面間が小さく施工性に優れたウェハー形逆止弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、内側に流路を有し下流側に弁座が形成された弁箱と、前記弁箱に揺動自在に軸支するアーム部が設けられた略円盤状弁体が前記弁座に接離可能にされたウェハー形逆止弁において、前記弁箱の下流側に、内側に連通流路が形成されるとともに前記弁体の全開位置を規制する規制部をその内縁に備えたストッパー板が設けられていることを第1の特徴とする。また、弁体の全開位置において、前記略円盤状弁体の一部が前記規制部の下流側に形成された係止部に当接するとともに、前記当接箇所を始点として、前記弁体と前記規制部との間に空隙が形成されていることを第2の特徴とする。さらに、前記弁箱と前記ストッパー板のいずれか一方に凹部が形成され、他方に前記凹部に係合する凸部が形成されたことを第3の特徴とする。さらにまた、一端は前記弁箱と前記ストッパー板に挟持され、他端は前記弁体に押し当てられ、前記弁体を全閉方向に付勢する付勢体が設けられていることを第4の特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、弁箱の下流側に、弁体の全開位置を規制する規制部を上部に備えたストッパー板を設けたので、ウェハー形逆止弁に配管されたパイプの内周面に弁体が接触することを防止するとともに、口径が大きくなっても面間を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第一の実施の形態に係るウェハー形逆止弁の閉状態を示す斜視図である。
【図2】本発明の第一の実施の形態に係るウェハー形逆止弁の分解斜視図である。
【図3】本発明の第一の実施の形態に係るウェハー形逆止弁の閉状態を示す縦断面図である。
【図4】本発明の第一の実施の形態に係るウェハー形逆止弁の開状態を示す縦断面図である。
【図5】本発明のストッパー板の規制部の要部拡大断面図である。
【図6】本発明のストッパー板の他の規制部の要部拡大断面図である。
【図7】本発明のストッパー板の他の規制部の要部拡大断面図である。
【図8】本発明の第二の実施の形態に係るウェハー形逆止弁の閉状態を示す部分断面斜視図である。
【図9】本発明の第三の実施の形態に係るウェハー形逆止弁の開状態を示す斜視図である。
【図10】本発明の第三の実施の形態に係るストッパー板とスプリングの斜視図である。
【図11】本発明の第三の実施の形態に係るウェハー形逆止弁の閉状態を示す縦断面図である。
【図12】本発明の第三の実施の形態に係るウェハー形逆止弁の閉状態を示す縦断面図である。
【図13】従来のウェハー形逆止弁を示す縦断面図である。
【図14】従来の他のウェハー形逆止弁を示す縦断面図である。
【0011】
[第一の実施の形態]
以下、図1〜図7を参照して、本発明によるウェハー形逆止弁の第一の実施の形態について説明する。本発明が本実施の形態に限定されないことは言うまでもない。
【0012】
第一の実施の形態に係るウェハー形逆止弁は、弁箱1と、流路7を開閉する弁体2と、弁体2の全開位置を規制するストッパー板3とを備える。弁体2はその一部(上部)を直線状に切り欠いたオリフラ部2aを有する略円盤状で、弁箱1内の下流側に、このオリフラ部2aから延設されたアーム部15を挿通するシャフト4によって揺動可能に軸支される。また、ストッパー板3はボルト8によって弁箱1の下流側に止水部材20bを介して一体的に固定される。本実施の形態に係るウェハー形逆止弁においては、特にストッパー板3が特徴的な構成を有する。
【0013】
口径250mmのポリ塩化ビニル(以下、PVCと記す)製の弁箱1は略円環板状であり、弁箱1の上流側(図1、2では右側、図3〜図7では左側)には、弁箱1の外形の管軸方向の中心軸から偏心して流路7が設けられている。流路7の上流側の周縁部には流体の圧力損失を低減するために、曲面9が設けられている。弁箱1の下流側の流路7の外周には略円環状の段差11aが設けられ、段差11aの上方(図1〜図7では上側)には段差11aよりも上流側方面に一段深く形成された段差11bが設けられている。段差11aの流路7近傍部はシートリング6が圧接、離間する弁座12となっている。段差11a、11bの内周には流路7と連通する弁体収納部10が設けられ、弁体収納部10は弁体2の円板部13を収納する円板収納部14とアーム部15を収納するアーム収納部16とから構成される。弁箱1の上部(図1〜5では上側)には、アーム収納部16を用いて弁体2を弁箱1に揺動可能に軸支するシャフト4が挿通される連通孔17が設けられている。連通孔17は弁箱1の一方の側面から開口し他方の側面側にかけて設けられている。連通孔17の開口部18にはプラグ5が螺合される雌ねじ部19が設けられている。また、弁箱1の上流側、下流側の各々の端面には止水部材20a、20bが各々嵌合される環状溝部21a、21bが設けられている。環状溝部21bと弁体収納部10との間には、弁箱1とストッパー板3とを一体的に固定するボルト8が螺合される雌ねじ部22が設けられている。
【0014】
PVC製の弁体2はシャフト4によって弁箱1に揺動可能に軸支されている。弁体2は円板部13とアーム部15とから構成され、円板部13の上流側の端面にはシールリング6が嵌合される環状溝部23が設けられている。アーム部15は円板部13よりも上流側に突出して設けられている。また、アーム部15にはシャフト4が挿通される軸孔24が設けられている。軸孔24は円板部13の厚み方向の中心面から上流側に偏心して設けられている。弁体2は、全閉位置において、弁箱1の弁体収納部10に収納されている。このとき、弁体2のアーム部15と弁箱1とのクリアランスは、弁体2が揺動するときに弁箱1に接触しない程度のクリアランスとなっている。また、弁体2の円板部13と弁箱1とのクリアランスは、アーム部15と弁箱1とのクリアランスよりも広めのものとなっている。弁体2の円板部13とアーム部15が一体成形されているため、増し締めなどのメンテナンスが不要でコンパクトな形状となる。
【0015】
PVC製のストッパー板3は略円環板状であり、弁箱1と略同一の外径を有し、弁箱1の下流側にボルト8により一体的に固定されている。ストッパー板3の中央部には断面不完全円状の連通流路25が設けられ、連通流路25の上部には規制部26が設けられている。規制部26はストッパー板3の上流側の弁箱1と当接する端面から下流側の端面に向かって流路中心方向に延びるテーパー状に形成されている。また、規制部26の下流側の先端には、全開状態において、弁体2の円板部13の上部と当接しウェハー形逆止弁の開度を規制する係止部27が設けられている。このとき、係止部27の上流側には規制部26と円板部13との間に空隙34ができるように設計されている。また、ストッパー板3の下流側の端面の連通流路25外周には止水部材28が嵌合される環状溝部29が設けられている。環状溝部29と連通流路25との間には、ボルト8を挿入する挿入孔30が設けられ、挿入孔30はボルト8の頭部がストッパー板3の下流側の端面から突出しないように形成されている。ストッパー板3を弁箱1と別部品とすることによって、ストッパー板3、弁箱1ともにアンダーカットが発生せず単純で成形しやすい形状にすることができる。
【0016】
PVC製のシャフト4は円柱状を有している。シャフト4は弁体2のアーム部15に設けられた軸孔24を挿通し、両端を弁箱1に設けられた連通孔17に支承されていて、弁体2を弁箱1に揺動可能に軸支している。
【0017】
PVC製のプラグ5は一端部には環状溝部33に止水部材31が装着され、他端部には雄ねじ部32が形成されている。プラグ5は連通孔17の雌ねじ部19に螺合され、プラグ5と連通孔17との間を水密状態に封止している。
【0018】
エチレンプロピレンジエンゴム(以下、EPDMと記す)製のシートリング6は弁体2の円板部13の環状溝部23に嵌合されている。シートリング6が弁座12に圧接、離間することによって流路7を開閉している。
【0019】
次に、本発明の第一の実施の形態のウェハー形逆止弁を開閉させたときの作動について説明する。図3はウェハー形逆止弁の全閉状態を示している。このとき、弁体2は弁箱1の弁体収納部10に収納されている。そのため、ストッパー板3が略円環板状で厚みが小さくても、弁体2の円板部13とストッパー板3の規制部26との間に、弁体2が十分に揺動できる空間が確保される。全閉状態において、流体が上流側から下流側へ流れる(順流)と、流体の圧力で弁体2はシャフト4を回転軸として図3において右上方向に揺動し開状態となる。このとき、弁箱1の流路7の上流側の周縁部に設けられた曲面9の半径は、流量を確保するためには5mm以上であることが好ましい。曲面9が大きすぎるとウェハー形逆止弁に配管されるパイプの直径からはみ出したり、弁座12の厚みが小さくなり水撃が発生したときに破損しやすくなる。従って、パイプの直径からはみ出さず十分な厚みを確保するためには15mm以下であることが好ましい。
【0020】
流体の流量が増加するにつれて弁体2の開度も大きくなるが、弁体2がストッパー板3の規制部26に当接すると、弁体2の更なる揺動が阻止されウェハー形逆止弁が全開状態となる。このとき、弁体2は規制部26の係止部27に当接することが好ましく、該当接箇所を始点とした係止部27の上流側には規制部26と弁体2との間にわずかな空隙34が形成されることが好ましい。本発明のウェハー形逆止弁は、弁体2の円板部13の上部をストッパー板3に当接することによって、全開位置の規制と面間を小さくすることを両立させている。そのため、円板部13が規制部26に当接するときに、どの部分に当接するかで開度が変動しやすい。従って、全開状態において、弁体2を規制部26の係止部27に常に当接させ、係止部27の上流側に空隙34を常に設けることによって、全開状態における開放角度を安定的に最大の開放角度に維持することができる。それによって、安定した流量を確保することができる。
【0021】
また、円板部13が規制部26に当接するとき、その衝撃を吸収し弁体2に損傷を生じさせないためには、弁体2の上下方向の長さをLとしたときに、3/32L(図4におけるL1)より下側の領域に当接させることが好ましい。また、ストッパー板3の厚みを小さくするには、11/33L(図4におけるL2)より上側の領域が好ましい。
【0022】
ウェハー形逆止弁が全開状態になると、流体の圧力によって弁体2が下流側に強く押されるため、シャフト4に応力が集中する。このとき、弁体2のアーム部15と弁箱1とのクリアランスは、弁体2が揺動するときに接触しない程度の隙間となっている。そのため、シャフト4の両端部にかかる応力を小さくすることができ、シャフト4の変形および破損を防止することができる。
【0023】
次に、上流側からの流体の流入が停止すると、ウェハー形逆止弁の下流側の流体が上流側へ流れようとする(逆流)。このとき、弁体2には自重により常時下方に垂下する作用が働いているため、弁体2はシャフト4を回転軸として図4において左下方向に揺動される。更に、逆流しようとする流体の圧力が弁体2の下流側の面に面圧となって付加され、弁体2の揺動を速め直ちに閉弁しようとする。弁体2のシートリング6が弁座12に着座するとウェハー形逆止弁は全閉状態となり、弁体2が流体によって下流側から押圧されることによって確実に止水され流体の逆流が防止される。そして、流体の逆流が防止されることによって、ウェハー逆止弁の上流側に配置されるポンプなどの機器の損傷が防止される。
【0024】
このように、ウェハー形逆止弁は、流体が逆流しようとするときに素早く全開状態から全閉状態にする必要がある。全開状態から全閉状態への動作を素早くするためには、全開状態での弁体2の開放角度を小さくすれば良い。しかし、開放角度を小さくすると流量が小さくなり配管系統の流量設計に支障をきたす可能性がある。ウェハー形逆止弁の流量を大きくするには、全開状態での弁体2の開放角度を大きくすれば良い。しかし、開放角度を大きくすると弁体2がウェハー形逆止弁に配管されているパイプの内周面に接触し、更に開放角度を大きくしたければ、流路7の面積を小さくし、弁体2を小さくする必要がある。弁体2を小さくすると弁体2の開放角度を大きくすることはできるが、流路7の面積は小さくなるので、結果的に流量が低下する。従って、配管系統の流量設計に支障をきたさないような流量を確保するためには、全開状態での弁体2の開放角度は55°以上が好ましい。また、流体が逆流しようとするときに、素早く全開状態から全閉状態にして流体の逆流を防ぐためには、全開状態での弁体2の開放角度は80°以下が良い。
【0025】
本発明において、ウェハー形逆止弁の面間Aとストッパー板3の厚みBとの関係は、円板部13や規制部26を破損させることなく、確実に全開位置を規制するためには、A/B≦3であることが好ましい。また、口径が大きくなっても面間を小さくするためには1.5≦A/Bであることが好ましい。面間を小さくすることによって、ウェハー形逆止弁の配管への施工やメンテナンスがしやすくなり、ウェハー形逆止弁を配管に締結する配管ボルトも汎用的な配管ボルトを使用することができる。
【0026】
本発明において、規制部26の係止部27は、弁体2と当接したときの衝撃を弱め破損を防ぐために、鈍角にすることが好ましく(図5参照)、曲面にすると更に好ましい(図6、図7参照)。また、更に衝撃を吸収したいような場合は、規制部26、または弁体2の規制部26と当接する部分に緩衝材を設けても良い。
【0027】
本発明において、ストッパー板3は弁箱1の雌ねじ部22にボルト8を螺合することによって一体的に固定されているが、雌ねじ部22の損傷を防ぐためにナットを埋設しても良い。また、ボルト8が挿入されている挿入孔30にボルト8の頭部を腐食などから保護するためにキャップを被せても良い。また、ストッパー板3と弁箱1の固定はボルト8以外の手段でも良く、ストッパー板3の下流側の端面と弁箱1の上流側の端面から固定手段が突出していなければ、特に限定されない。ボルト8以外の固定手段としては、ストッパー板3と弁箱1を挟み込むような連結部材やノックピンを強制嵌入する方式や、ストッパー板3に突起を設け、弁箱1に受け部を設け、突起と受け部とを強制嵌入やバイヨネット接続によって固定する方式や、溶接、接着などの方式が挙げられる。
【0028】
本発明において、連通孔17は弁箱1を貫通しても貫通しなくてもどちらでもよい。アーム収納部16の両側面に連通孔17が形成されていれば良く、特に限定されない。連通孔17が弁箱1を貫通しなければ、シール箇所が減少し、外部リークの可能性が減少する。連通孔17が弁箱1を貫通すればウェハー形逆止弁の両側から開度指示機構などを設けることができる。
【0029】
本発明において、シャフト4の形状は円柱状でも角柱状でも良く、特に限定されない。また、シャフト4をアーム部15の軸孔24に対して揺動自在に挿通しても、揺動不能に挿通しても良く、特に限定されない。また、アーム部15の両側面からシャフト4を延設させ、アーム部15とシャフト4を一体的に成形しても良い。
【0030】
[第二の実施の形態]
次に、図8を参照して、本発明の第二の実施の形態について説明する。第二の実施の形態が第一の実施の形態と異なるのは、弁箱1とストッパー板3との固定の構造である。すなわち、弁箱1とストッパー板3とをインロー構造としている。図8は本発明の第二の実施の形態に係るウェハー形逆止弁の部分断面斜視図である。なお、図1〜図7と同一の箇所には同一の符号を付し、以下では第一の実施の形態との相違点を主に説明する。
【0031】
図8に示すように、ストッパー板3の上流側の外周縁には環状突起35が設けられ、上流側の端面と環状突起35の内周面によって凹部36が形成されている。また、弁箱1の下流側の外周縁には環状段差37が設けられ、環状段差37の内側に凹部36の内径よりもやや小さい外径を有する凸部38が形成されている。本実施の形態によれば、弁箱1とストッパー板3とを一体的に固定するときに、ストッパー板3の凹部36が弁箱1の凸部38に嵌合されるインロー構造となっている。そのため、弁箱1とストッパー板3との中心軸を容易に合わせることができる。また、弁箱1とストッパー板3との鉛直方向(図8では上下側)のずれを防止することができるので、弁箱1とストッパー板3とを固定するボルト8の本数や強度を小さくすることができる。また、配管中のフランジとフランジとの間にウェハー形逆止弁を挿入し配管を施工するような場合に、弁箱1やストッパー板3がフランジに当接しても、弁箱1とストッパー板3との中心軸のずれやボルト8の破損を防止することができる。従って、弁箱1とストッパー板3とをインロー構造にすることによって、ウェハー形逆止弁の組立性や施工性を向上させることができる。
【0032】
本実施の形態では、弁箱1とストッパー板3の広範囲にわたって凸部38および凹部36を設けたが、局部的に設けても良い。弁箱1とストッパー板3の大きさや重量を考慮し、弁箱1とストッパー板3のずれを防止することができれば、どのような方法でも良く、特に限定されない。例えば、凸部38および凹部36の形状を、弁箱1とストッパー板3とが揺動不能な形状や組立方向が制限されるような形状にして、円周方向のずれや、組立不良を防止しても良い。また、弁箱1とストッパー板3の両方に孔を設け、その孔にピンを挿入しても良い。その他の部品の構成および作用は前記第一の実施の形態と同様であるので説明を省略する。
【0033】
[第三の実施の形態]
次に、図9〜図12を参照して、本発明の第三の実施の形態について説明する。第三の実施の形態が第一の実施の形態および第二の実施の形態と異なるのは、付勢体の存在である。すなわち、弁体2を上流側に付勢するスプリング39が弁箱1とストッパー板3によって挟持固定されている。図9は本発明の第三の実施の形態に係るウェハー形逆止弁の斜視図であり、図10はストッパー板3にスプリング39を配置した状態を示す斜視図である。なお、図1〜図8と同様の構成部材には同一の参照符号を付し、以下では第一の実施の形態および第二の実施の形態との相違点を主に説明する。
【0034】
ストッパー板3の規制部26の上部には、スプリング39のコイル部40を収納するコイル収納部41が設けられている。規制部26の中央には、スプリング39の直線部42を通すために、鉛直方向に伸び、コイル収納部41に連通する切り欠き43が設けられている。
【0035】
ステンレススチール製のスプリング39はコイル型ねじりスプリングであり、コイル部40と直線部42から構成される。スプリング39のコイル部40はストッパー板3の上流側の端面から突出しないようにコイル収納部41に収納される。また、コイル部40の下方に伸びる直線部42は切り欠き43を通過し、直線部42の先端は円板部13の中心付近に当接し、弁体2を上流側に付勢している。
【0036】
次に、本発明の第三の実施の形態のウェハー形逆止弁を開閉させたときの作動について説明する。図11はウェハー形逆止弁の全閉状態を示している。全閉状態において、流体が上流側から下流側へ流れ(順流)、流体の圧力がスプリング39の上流側への付勢力を超えると、弁体2は右上方向に揺動し開状態となる。流体の流量が増加すると、弁体2がストッパー板3の規制部26に当接し全開状態となる。次に、上流側からの流体の流入が停止すると、弁体2には自重とスプリング39の付勢力が働き、弁体2は左下方向に揺動される。更に、逆流しようとする流体の圧力が付加され、弁体2のシートリング6が弁座12に着座し全閉状態となる。スプリング39を取り付けることによって、流体が逆流しようとするときに、素早く全開状態から全閉状態にすることができる。また、全閉状態におけるシール性を向上させることができる。その他の部品の構成および作用は前記第一の実施の形態および第二の実施の形態と同様であるので説明を省略する。
【0037】
本発明において、弁箱1、弁体2、ストッパー板3、シャフト4、プラグ5、ボルト8の材質としては、PVCやポリプロピレンが使用可能であるが、特に限定されない。ウェハー形逆止弁として要求される強度や特性を満たしていれば、ポリビニリデンフルオライド、ポリエチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリジシクロペンタジエン、FRPなどの合成樹脂、またはステンレススチール、チタン、銅、鋳鉄、鋳鋼などの金属などでも良い。
【0038】
シートリング6、止水部材20、28、31の材質としては、エチレンプロピレンゴムやフッ素ゴムが使用可能であるが、特に限定されない。長期的なシール性を確保するときは、ゴム状の弾性体が好ましく、上記の他には、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、クロロスルフォン化ゴム、ニトリルゴム、スチレンブタジエンゴム、塩素化ポリエチレンなどが挙げられる。また、流体が腐食性の極めて強い薬液であるようなときは、耐薬品性に優れたポリテトラフルオロエチレンや弾性体の表面にパーフルオロアルコキシルアルカンを被覆したものが好ましい。
【0039】
スプリング39としては、コイル型ねじりスプリングが使用可能であるが、板状のスプリングでも良く特に限定されない。また、スプリング39の材質としては、ステンレススチールが使用可能であるが、その他の金属でも良く特に限定されない。また、スプリング39を樹脂や塗料でコーティングしても良い。
【0040】
本発明において、弁箱1やストッパー板3の側面に、吊りボルトや計測機器を取り付けるための孔を設けても良い。また、弁箱1やストッパー板3に配管ボルト用のボルト孔や位置決めリブやアイマークを設けても良い。
【0041】
本発明において、全閉状態におけるウェハー形逆止弁のシール性を向上させるために、弁座12とシートリング6との当接面を上流側に傾斜させても良い。また、シートリング6を弁箱1側に取り付け、弁座12を弁体2に設けても良い。また、カウンターウェイトや開度指示機構などを設けても良い。カウンターウェイトを設けることによって、流体が逆流しようとするときに、素早く全開状態から全閉状態にすることができる。また、開度指示機構を設けることによって、開閉状態を視認することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 弁箱
2 弁体
2aオリフラ部
3 ストッパー板
4 シャフト
5 プラグ
6 シートリング
7 流路
8 ボルト
9 曲面
10 弁体収納部
11a 段差
11b 段差
12 弁座
13 円板部
14 円板収納部
15 アーム部
16 アーム収納部
17 連通孔
18 開口部
19 雌ねじ部
20a 止水部材
20b 止水部材
21a 環状溝部
21b 環状溝部
22 雌ねじ部
23 環状溝部
24 軸孔
25 連通流路
26 規制部
27 係止部
28 止水部材
29 環状溝部
30 挿入孔
31 止水部材
32 雄ねじ部
33 環状溝部
34 空隙
35 環状突起
36 凹部
37 環状段差
38 凸部
39 スプリング
40 コイル部
41 コイル収納部
42 直線部
43 切り欠き

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側に流路を有し下流側に弁座が形成された弁箱と、前記弁箱に揺動自在に軸支するアーム部が設けられた略円盤状弁体が前記弁座に接離可能にされたウェハー形逆止弁において、前記弁箱の下流側に、内側に連通流路が形成されるとともに前記弁体の全開位置を規制する規制部をその内縁に備えたストッパー板が設けられていることを特徴とするウェハー形逆止弁。
【請求項2】
弁体の全開位置において、前記略円盤状弁体の一部が前記規制部の下流側に形成された係止部に当接するとともに、前記当接箇所を始点として、前記弁体と前記規制部との間に空隙が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のウェハー形逆止弁。
【請求項3】
前記弁箱と前記ストッパー板のいずれか一方に凹部が形成され、他方に前記凹部に係合する凸部が形成されたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のウェハー形逆止弁。
【請求項4】
一端は前記弁箱と前記ストッパー板に挟持され、他端は前記弁体に押し当てられ、前記弁体を全閉方向に付勢する付勢体が設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のウェハー形逆止弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−202485(P2012−202485A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67764(P2011−67764)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000117102)旭有機材工業株式会社 (235)
【Fターム(参考)】