説明

ウェハ洗浄方法及びその装置

【課題】洗浄液チャンバからの洗浄液をノズルでウェハに向けて噴射して洗浄することにより、洗浄液を節約すると共に廃液を減少する。
【解決手段】耐酸性又は耐アルカリ性の材料で形成され内部に所定の少量の洗浄液2を収容する洗浄液チャンバ1と、耐酸性又は耐アルカリ性の材料で形成され上記洗浄液チャンバ1にパイプ7で接続されて内部の洗浄液2を洗浄対象のウェハ4に向けて噴射するノズル3と、このノズル3の下方に配置され上面にウェハ4を載置するステージ5と、このステージ5の全体を内側に包み込んで上記ノズル3から噴射される洗浄液2を受ける洗浄バス6とを備え、上記ノズル3とステージ5上に載置されたウェハ4とを相対的にX,Yの2次元方向に移動することにより、ウェハ4の表面に洗浄液2を吹き付けて洗浄するものである。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体装置の製造工程において、レジスト剥離やエッチング等の工程の後にウェハを洗浄液で洗浄するウェハ洗浄方法に関し、詳しくは、洗浄液チャンバからの洗浄液をノズルでウェハに向けて噴射して洗浄することにより、洗浄液を節約すると共に廃液を減少しようとするウェハ洗浄方法及びその装置に係るものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のこの種のウェハ洗浄装置は、バッチ方式と呼ばれるもので、ある程度大きな洗浄槽に強酸性又は強アルカリ性の洗浄液を収容しておき、洗浄対象の複数のウェハを例えばウェハキャリアに収納して、このウェハキャリアごと上記複数のウェハを洗浄槽内の洗浄液に浸漬して洗浄していた。
【0003】
これに対して、ワンバスタイプのウェハ洗浄装置と呼ばれるものがある。これは、比較的小さな一つの洗浄槽に強酸性又は強アルカリ性の洗浄液を収容しておき、洗浄対象の1枚のウェハを洗浄槽内の洗浄液に浸漬して洗浄していた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このような従来のバッチ方式のウェハ洗浄装置においては、洗浄槽が大きいので、大量の洗浄液が必要であり、洗浄液の消費量が多かった。また、ウェハ洗浄後の廃液も大量に発生し、環境汚染の原因となることがあった。一方、ワンバスタイプのウェハ洗浄装置においても、一つの洗浄槽内に洗浄液を滞留させてウェハを浸漬するので、ある程度以上の洗浄液が必要であり、洗浄液の消費量をあまり減らすことはできなかった。また、ウェハ洗浄後の廃液もある程度以上発生し、環境汚染の原因となることがあった。
【0005】
そして、どちらの方式のウェハ洗浄装置においても、ウェハ洗浄後のカスが洗浄槽内でウェハに付着することがあり、十分に洗浄できないことがあった。また、洗浄槽に収容された洗浄液を、所定の使用期間が経過したら交換しなければならず、その交換期間の管理が煩雑であった。さらに、洗浄効果の向上のために、洗浄液としての例えば硫酸を石英チャンバ等の中で約100℃程度に加熱することがあるが、万が一、石英チャンバが割れるようなことがあると、大きな事故になる可能性があった。
【0006】
そこで、本発明は、このような問題点に対処し、洗浄液チャンバからの洗浄液をノズルでウェハに向けて噴射して洗浄することにより、洗浄液を節約すると共に廃液を減少しようとするウェハ洗浄方法及びその装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明によるウェハ洗浄方法は、洗浄液チャンバ内に所定の少量の洗浄液を収容しておき、上記洗浄液チャンバ内の洗浄液をノズルで洗浄対象のウェハに向けて噴射し、上記ノズルとステージ上に載置されたウェハとを相対的にX,Yの2次元方向に移動することにより、ウェハの表面に洗浄液を吹き付けて洗浄するものである。
【0008】
このような方法により、所定の少量の洗浄液を収容する洗浄液チャンバから洗浄液をノズルでウェハに向けて噴射し、上記ノズルとウェハとを相対的にX,Yの2次元方向に移動しながらウェハの表面に洗浄液を吹き付けて洗浄することにより、洗浄液を節約すると共に廃液を減少する。これにより、洗浄液の使用効率を高める。
【0009】
また、上記洗浄液チャンバを所定温度に加熱して、内部の洗浄液を加熱してもよい。これにより、洗浄液チャンバ内の少量の洗浄液を加熱して、危険性を少なくしてウェハの洗浄効果を高める。
【0010】
さらに、上記ウェハを載置するステージの下面側に振動子を設け、該振動子により上記ウェハに対して高周波の振動を与えてもよい。これにより、ウェハの洗浄効果を高める。
【0011】
さらにまた、上記振動子は、ステージの下面側にて、ウェハ上方のノズルの位置に合致され該ノズルと同期してウェハに対して移動するようにしてもよい。これにより、更にウェハの洗浄効果を高める。
【0012】
そして、上記ノズルによる洗浄液の噴射は、1枚のウェハに対して行うものである。これにより、1枚のウェハを洗浄するのに必要な最小限の洗浄液に節約できる。
【0013】
また、本発明によるウェハ洗浄装置は、耐酸性又は耐アルカリ性の材料で形成され内部に所定の少量の洗浄液を収容する洗浄液チャンバと、耐酸性又は耐アルカリ性の材料で形成され上記洗浄液チャンバにパイプで接続されて内部の洗浄液を洗浄対象のウェハに向けて噴射するノズルと、このノズルの下方に配置され上面にウェハを載置するステージと、このステージの全体を内側に包み込んで上記ノズルから噴射される洗浄液を受ける洗浄バスとを備え、上記ノズルとステージ上に載置されたウェハとを相対的にX,Yの2次元方向に移動することにより、ウェハの表面に洗浄液を吹き付けて洗浄するものである。
【0014】
このような構成により、耐酸性又は耐アルカリ性の材料で形成された洗浄液チャンバで内部に所定の少量の洗浄液を収容し、耐酸性又は耐アルカリ性の材料で形成され上記洗浄液チャンバにパイプで接続されたノズルにより内部の洗浄液を洗浄対象のウェハに向けて噴射し、上記ノズルの下方に配置されたステージで上面にウェハを載置し、上記ステージの全体を内側に包み込んだ洗浄バスにより上記ノズルから噴射される洗浄液を受け、上記ノズルとステージ上に載置されたウェハとを相対的にX,Yの2次元方向に移動することにより、ウェハの表面に洗浄液を吹き付けて洗浄する。これにより、洗浄液を節約すると共に廃液を減少する。そして、洗浄液の使用効率が高くなる。
【0015】
また、上記洗浄液チャンバには、その周囲を所定温度に加熱して内部の洗浄液を加熱する加熱手段を備えてもよい。これにより、洗浄液チャンバ内の少量の洗浄液を加熱して、危険性を少なくしてウェハの洗浄効果を高める。
【0016】
さらに、上記ステージの下面側には、上面に載置されるウェハに対して高周波の振動を与える振動子を設けてもよい。これにより、ウェハの洗浄効果を高める。
【0017】
さらにまた、上記振動子は、ステージの下面側にて、ウェハ上方のノズルの位置に合致され該ノズルと同期してウェハに対して移動するようにしてもよい。これにより、更にウェハの洗浄効果を高める。
【0018】
また、上面にウェハを載置したステージを固定しておき、上記ノズルをX,Yの2次元方向に移動するようにしてもよい。或いは、上記ノズルを固定しておき、上面にウェハを載置したステージをX,Yの2次元方向に移動するようにしてもよい。
これにより、上記ノズルとステージ上に載置されたウェハとを相対的にX,Yの2次元方向に走査して、ウェハの表面を全面にわたって洗浄液で洗浄する。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明によるウェハ洗浄方法及びウェハ洗浄装置の実施の形態を示す構成概要図である。そして、ウェハ洗浄装置は、本発明に係るウェハ洗浄方法の実施に使用するものである。
【0020】
まず、本発明によるウェハ洗浄方法は、図1において、洗浄液チャンバ1内に所定の少量の洗浄液2を収容しておき、上記洗浄液チャンバ1内の洗浄液2をノズル3で吸引すると共に該洗浄液2を洗浄対象のウェハ4に向けて噴射し、上記ノズル3とステージ5上に載置されたウェハ4とを相対的にX,Yの2次元方向に移動することにより、ウェハ4の表面を洗浄液2で洗浄するものである。なお、図1において、符号6は、ノズル3から噴射される洗浄液2を受ける洗浄バスを示している。
【0021】
洗浄液チャンバ1内には、例えばウェハ4を1枚洗浄する程度の少量の洗浄液2(例えば、硫酸又は硝酸、過酸化水素水等)が収容されている。そして、この洗浄液チャンバ1に洗浄液供給パイプ7で接続されたノズル3により、上記洗浄液2を吸引すると共に該洗浄液2を洗浄対象のウェハ4に向けて噴射する。
【0022】
このとき、上記ノズル3の軸心部に高圧気体供給パイプ8が接続されており、この高圧気体供給パイプ8の後端に設けられたコンプレッサ9から、上記ノズル3の軸心部に高圧気体を供給して内部に負圧を発生するようになっている。さらに、上記洗浄液チャンバ1の上面には、開閉バルブV1を介して正圧供給手段10が接続されており、洗浄液チャンバ1内に正圧を供給するようになっている。なお、図1において、符号11は、圧力コントローラを示している。
【0023】
この状態で、上記ノズル3とステージ5上に載置されたウェハ4とを相対的にX,Yの2次元方向に移動する。即ち、例えばステージ5を固定しておき、ノズル3を図1の紙面に平行な面内でX,X′方向に移動すると共に、図1の紙面に直交する面内でY,Y′方向(図示省略)に移動すればよい。これにより、ウェハ4の表面が上記ノズル3から噴射される洗浄液2で洗浄される。そして、このノズル3による洗浄液2の噴射は、基本的に1枚のウェハ4に対して行い、ウェハ4を1枚ずつ洗浄する。
【0024】
次に、本発明によるウェハ洗浄装置について説明する。このウェハ洗浄装置は、半導体装置の製造工程において、レジスト剥離やエッチング等の工程の後にウェハを洗浄液で洗浄するもので、図1に示すように、洗浄液チャンバ1と、ノズル3と、ステージ5と、洗浄バス6とを備えて成る。
【0025】
上記洗浄液チャンバ1は、内部に所定の少量の洗浄液2を収容するもので、耐酸性又は耐アルカリ性の材料、例えばテフロン(登録商標)等の合成樹脂で所定の大きさの容器状に形成され、上面に蓋をして密閉可能とされている。この洗浄液チャンバ1の容量は、1枚のウェハ4を洗浄するのに必要な数ml〜数10ml程度の洗浄液2を収容するものとされている。また、洗浄液2としては、強酸(例えば、硫酸又は硝酸、過酸化水素水等)又は強アルカリの溶液が用いられる。なお、上記洗浄液チャンバ1は、石英で形成してもよい。
【0026】
また、洗浄液チャンバ1内には、上記蓋を密閉することにより負圧空間が形成されるようになっている。そして、洗浄液チャンバ1の上面には、該洗浄液チャンバ1内に洗浄液2を供給するためのパイプライン12が接続されている。なお、符号V2は上記パイプライン12の途中に設けられた開閉バルブを示している。
【0027】
上記洗浄液チャンバ1の例えば底面には洗浄液供給パイプ7が接続され、この洗浄液供給パイプ7の先端にノズル3が接続されている。このノズル3は、洗浄液チャンバ1内部の洗浄液2を吸引して該洗浄液2を洗浄対象のウェハ4に向けて噴射するもので、耐酸性又は耐アルカリ性の材料、例えばテフロン(登録商標)等の合成樹脂で形成されている。そして、上記ノズル3の側面部に上記洗浄液供給パイプ7の先端が接続され、ノズル3の軸心部に高圧気体供給パイプ8が接続されている。なお、符号9は上記高圧気体供給パイプ8の後端に設けられたコンプレッサを示している。
【0028】
図2及び図3は、上記ノズル3の具体的な構造の一例を示す断面図である。図2は上記洗浄液供給パイプ7が接続される面を含む縦断面図であり、図3は図2の断面と直交する縦断面図である。図2において、ノズル3の側面部には洗浄液送入口17が形成され、この洗浄液送入口17に上記洗浄液供給パイプ7の先端が接続される。また、ノズル3の軸心部の後端には高圧気体送入口18が形成され、この高圧気体送入口18に上記高圧気体供給パイプ8の先端が接続される。
【0029】
この状態で、図1に示すコンプレッサ9の運転により高圧気体供給パイプ8を介して送られた高圧気体は、図2に示す高圧気体送入口18からノズル3内の軸心部に流入し、小口径の一次気体噴出口19を通って高速噴射し内部混合室20に入る。このとき、図1に示す洗浄液供給パイプ7が接続された洗浄液送入口17の位置にベンチュリ管の原理により負圧を生じ、上記洗浄液供給パイプ7からの洗浄液2を内部混合室20内に吸引する。上記一次気体噴出口19から噴出する高速気体は、洗浄液送入口17より吸引する洗浄液2を破砕し、広くなった内部混合室20の中で洗浄液2と混合され、流速を落としてノズル先端の噴出口21から噴射される。
【0030】
一方、図3に示すように、上記高圧気体送入口18からノズル3内に流入した高圧気体は、ノズル3内の軸心部の外側に形成された二次気体通路22を通って、ノズル3の先端部にスパイラル状に形成された二次気体噴出溝23に至り、高速な旋回流となって噴射される。このとき、上記噴出口21から噴射される洗浄液2を二次混合しながら破砕微粒子化して前方に噴射する。なお、図2及び図3では、旋回流を発生して噴射するノズル3の例を示したが、本発明はこれに限られず、旋回流を発生しない通常のノズルであってもよい。
【0031】
上記洗浄液チャンバ1の例えば上面には、図1に示すように、正圧供給手段10が接続されている。この正圧供給手段10は、上記洗浄液チャンバ1内に形成される負圧空間Sに対し任意圧力の正圧ガスを供給するもので、基端部に1〜2気圧の不活性ガス、例えば窒素ガス(N)を供給する窒素ガスボンベなどが接続されたパイプラインから成る。そして、上記正圧供給手段10と洗浄液チャンバ1との間には、圧力コントローラ11が設けられている。この圧力コントローラ11は、洗浄液チャンバ1に供給する正圧ガスの圧力を調整する圧力制御手段となるもので、上記窒素ガスボンベから供給される窒素ガスの圧力を制御するようになっている。なお、上記正圧供給手段10としてのパイプラインの途中には、洗浄液チャンバ1への正圧供給路を開閉する開閉バルブV1が設けられている。
【0032】
そして、上記正圧供給手段10により洗浄液チャンバ1に正圧ガスを供給し、圧力コントローラ11により正圧ガスの圧力を調整することによって、上記ノズル3への洗浄液2の供給量を制御するようになっている。
【0033】
上記ノズル3の位置する下方には、ステージ5が配置されている。このステージ5は、その上面に洗浄対象のウェハ4を載置するもので、適宜の高さの台状に形成されている。また、上記ステージ5の全体を内側に包み込んで、洗浄バス6が設置されている。この洗浄バス6は、上記ノズル3からウェハ4に噴射された洗浄液2を受けるもので、その周側壁が上記ステージ5上に載置されたウェハ4よりも高く立ち上がっており、周囲に洗浄液2が飛び散らないようにしている。
【0034】
このような状態で、上記ノズル3とステージ5上に載置されたウェハ4とを相対的にX,Yの2次元方向に移動することにより、ウェハ4の表面を洗浄液2で洗浄するようになっている。即ち、図1において、ウェハ4を載置したステージ5を固定しておき、図4に示すように、ノズル3をウェハ4に対してX,Yの2次元方向に移動すればよい。なお、これとは逆に、上記ノズル3を固定しておき、上面にウェハ4を載置したステージ5をX,Yの2次元方向に移動してもよい。
【0035】
そして、本発明においては、上記洗浄液チャンバ1の周囲には、加熱手段(図示省略)が設けられている。この加熱手段は、上記洗浄液チャンバ1の周囲を所定温度に加熱して内部の洗浄液2を加熱するもので、例えば洗浄液チャンバ1の周面に巻き付けられた電気ヒータから成り、約100℃程度に加熱するようになっている。このように洗浄液2を加熱することで、該洗浄液2によるウェハ4の洗浄効果を高くすることができる。
【0036】
また、上記ステージ5の下面側には、振動子13が設けられている。この振動子13は、上記ステージ5の上面に載置されるウェハ4に対して高周波の振動を与えるもので、例えば超音波振動子から成る。そして、この振動子13は、ステージ5の下面側にて、ウェハ4上方のノズル3の位置に合致させて設けられ、且つ該ノズル3と同期してウェハ4に対して移動するようにされている。例えば、図示省略したが、上記ステージ5の下面側に振動子13のX軸方向、Y軸方向の移動機構を設け、上記ノズル3のX,Yの2次元方向の移動機構と連動して移動させればよい。このように、ウェハ4に振動を与えつつその表面にノズル3で洗浄液2を噴射することで、ウェハ4の洗浄効果を高くすることができる。
【0037】
次に、このように構成されたウェハ洗浄装置の動作について説明する。まず、図1において、パイプライン12の途中の開閉バルブV2を開いて洗浄液チャンバ1内に洗浄液2を所定量(例えば数ml〜数10ml程度)だけ供給する。その後、上記開閉バルブV2及び正圧供給手段10の開閉バルブV1を閉じて、上記洗浄液チャンバ1内を密閉状態とする。
【0038】
この状態で、図1に示すコンプレッサ9から高圧気体供給パイプ8を介してノズル3へ高圧気体を送る。すると、前述のようにノズル3内の洗浄液送入口17の位置に負圧(例えば0.1〜0.4気圧)が発生して洗浄液供給パイプ7からの洗浄液2を吸引し、ノズル3の噴出口21(図2参照)から洗浄液2を噴射する。これにより、上記洗浄液チャンバ1内の洗浄液2が少しずつ減少し、該洗浄液チャンバ1の液面が徐々に下がって行く。このとき、洗浄液チャンバ1は密閉されているので、液面が下がった空間Sは負圧になって真空レベルに近付いて行き、ノズル3内に発生する負圧(P)と、上記空間Sの負圧(P)とが等しくなったところで、上記ノズル3からの洗浄液2の噴射が停止する。
【0039】
この状態では、P=Pとなって洗浄液2は流れず、洗浄液チャンバ1及び洗浄液供給パイプ7に何ら遮断弁等を設けなくても洗浄液2が安定して停止する。そして、この状態をもって洗浄液供給の初期状態とし、ここから洗浄液供給の工程がスタートする。なお、このとき、洗浄液2は図2に示すノズル3内の洗浄液送入口17の付近で停止することとなるので、ノズル3へ至る経路が乾くことがない。したがって、その後において、上記ノズル3から洗浄液2をすぐに噴射することができる。
【0040】
次に、ノズル3の噴出口21を洗浄対象としてのウェハ4に向けてセットし、上記と同様にコンプレッサ9から高圧気体供給パイプ8を介してノズル3へ高圧気体を送る。しかし、この状態ではP=Pとなるので、洗浄液2はノズル3から噴射されない。そこで、図1に示す正圧供給手段10の途中の開閉バルブV1を開き、圧力コントローラ11を適宜調整して、洗浄液チャンバ1に供給する正圧ガスの圧力を調整する。すると、上記洗浄液チャンバ1内の圧力が変化して圧力Pが大きくなって、PとPとの差が生じてこの差圧により洗浄液チャンバ1からノズル3に洗浄液2が供給される。これにより、上記ノズル3から洗浄液2が噴射され、ウェハ4に吹き付けられる。
【0041】
このとき、上記圧力コントローラ11による圧力調整を細かく行うことにより、圧力PとPとの差を微細に調整して、ノズル3への洗浄液2の供給流量を微少に制御することができる。例えば、従来は不可能であった1ml/min程度或いはそれ以下のレベル(例えば0.1 ̄0.9ml/min程度)での流量制御が可能となる。また、ノズル3へ至る洗浄液供給パイプ7の途中には何も設けられていないので、この部分に異物が詰まることはなく、スムーズに洗浄液2がノズル3に供給される。なお、上記正圧供給手段10に窒素ガス(N)を供給する代わりに、大気を供給してもよい。
【0042】
そして、上記のようにノズル3から洗浄液2を噴射しつつ、図4に示すように、ノズル3をウェハ4に対してX,Yの2次元方向に移動させて、該ウェハ4の表面に洗浄液2を吹き付けて洗浄する。このとき、上記洗浄液チャンバ1の周面に設けられた加熱手段により、内部の洗浄液2を加熱してもよい。また、ステージ5の下面側に設けられた振動子13を動作させると共に、上記ノズル3と同期してウェハ4に対して移動させてもよい。なお、上記ノズル3から噴射されてウェハ4に吹き付けられた洗浄液2は、洗浄バス6で受けられる。
【0043】
このような洗浄動作により、洗浄液チャンバ1内には所定の少量の洗浄液2を収容しておき、該洗浄液チャンバ1から洗浄液2をノズル3で吸引しウェハ4に向けて微少流量で噴射して1枚ずつ洗浄することにより、洗浄液2を節約すると共に廃液を減少することができる。
【0044】
図5は、図1に示す実施形態によるウェハ洗浄装置の具体的な実施例を示す構成図である。この実施例では、洗浄液チャンバ1に第1及び第2の洗浄液タンク25a,25bを接続し、上記洗浄液チャンバ1内に例えば硫酸を供給したり、純水を供給するようになっている。上記第1の洗浄液タンク25aには洗浄液吸上げパイプ26が挿入され、開閉バルブV2を介して洗浄液チャンバ1内に洗浄液2(硫酸又は純水)を供給するためのパイプライン12に接続されている。また、上記第2の洗浄液タンク25bには洗浄液吸上げパイプ27が挿入され、開閉バルブV3を介して上記パイプライン12に接続されている。なお、上記洗浄液吸上げパイプ26と27とは、洗浄液チャンバ1に対してはパイプライン12で共通に接続されている。
【0045】
そして、上記第1の洗浄液タンク25aの上面には、洗浄液補充パイプ28が接続され、この洗浄液補充パイプ28の洗浄液補充口の手前には開閉バルブV4が設けられている。また、上記第2の洗浄液タンク25bの上面には、洗浄液補充パイプ29が接続され、この洗浄液補充パイプ29の洗浄液補充口の手前には開閉バルブV5が設けられている。
【0046】
このような構成で、洗浄液チャンバ1に硫酸を供給するには、まず、第2の洗浄液タンク25bの洗浄液吸上げパイプ27の開閉バルブV3を閉じると共に、第1の洗浄液タンク25aの洗浄液吸上げパイプ26の開閉バルブV2を開き、正圧供給手段10の開閉バルブV1を閉じておく。この状態で、コンプレッサ9から高圧気体供給パイプ8を介してノズル3へ高圧気体を送る。すると、前述のようにノズル3内に負圧(例えば0.1〜0.4気圧)が発生して洗浄液チャンバ1の内部空間Sの空気を吸引し、該内部空間Sの負圧によって第1の洗浄液タンク25aから硫酸を吸い上げ、パイプライン12を介してその硫酸が洗浄液チャンバ1内に供給される。その後、上記開閉バルブV2を閉じて硫酸の供給を終了する。このとき、上記洗浄液チャンバ1の内部空間Sは負圧に保たれる。
【0047】
このように洗浄液チャンバ1内に硫酸が供給されたところで、コンプレッサ9から高圧気体供給パイプ8を介してノズル3へ高圧気体を送ると共に、正圧供給手段10の途中の開閉バルブV1を開き、圧力コントローラ11を適宜調整して、洗浄液チャンバ1に供給する正圧ガスの圧力を調整する。すると、図1を参照して説明したと同様に動作して、ノズル3から硫酸が噴射され、ウェハ4に吹き付けられて、該ウェハ4を洗浄する。
【0048】
次に、洗浄液チャンバ1内に純水を供給して洗浄するには、まず、第1の洗浄液タンク25aの洗浄液吸上げパイプ26の開閉バルブV2を閉じると共に、第2の洗浄液タンク25bの洗浄液吸上げパイプ27の開閉バルブV3を開き、正圧供給手段10の開閉バルブV1を閉じておく。この状態で、コンプレッサ9から高圧気体供給パイプ8を介してノズル3へ高圧気体を送る。すると、前述と同様に動作して、洗浄液チャンバ1内に純水が供給され、さらにノズル3からその純水が噴射され、ウェハ4に吹き付けられて、該ウェハ4を洗浄する。
【0049】
なお、本発明によるウェハ洗浄装置は、以上に説明した実施形態に限らず、洗浄液チャンバ1の周囲に加熱手段を設けなくてもよい。また、ステージ5の下面側に、振動子13を設けなくてもよい。さらに、ノズル3は、洗浄液チャンバ1内の洗浄液2をベンチュリ管の原理により負圧で吸引してウェハ4に向けて噴射するものとしたが、本発明はこれに限らず、上記洗浄液チャンバ1内の洗浄液2を加圧したり、ポンプで圧送してウェハ4に向けて噴射する通常タイプのものとしてもよい。また、洗浄バス6内のステージ5には、洗浄液2で洗浄後のウェハ4をスピン乾燥する機構を組み込んでもよい。
【0050】
【発明の効果】
本発明は以上のように構成されたので、請求項1に係るウェハ洗浄方法によれば、所定の少量の洗浄液を収容する洗浄液チャンバから洗浄液をノズルでウェハに向けて噴射し、上記ノズルとウェハとを相対的にX,Yの2次元方向に移動しながらウェハの表面に洗浄液を吹き付けて洗浄することにより、洗浄液を節約すると共に廃液を減少することができる。これにより、洗浄液の使用効率を高めることができる。また、環境汚染の原因とならないようにすることができる。さらに、ウェハ洗浄後のカスがウェハに付着することがなく、十分に洗浄できる。さらにまた、洗浄液チャンバ内には所定の少量の洗浄液を収容するだけなので、その管理が容易であるとともに、安全性も向上する。
【0051】
また、請求項2に係る発明によれば、上記洗浄液チャンバを所定温度に加熱して、内部の洗浄液を加熱することにより、ウェハの洗浄効果を高めることができる。この場合、洗浄液チャンバ内の少量の洗浄液を加熱するだけなので、危険性を少なくしてウェハの洗浄効果を高めることができる。
【0052】
さらに、請求項3に係る発明によれば、上記ウェハを載置するステージの下面側に振動子を設け、該振動子により上記ウェハに対して高周波の振動を与えることにより、ウェハの洗浄効果を高めることができる。
【0053】
さらにまた、請求項4に係る発明によれば、上記振動子は、ステージの下面側にて、ウェハ上方のノズルの位置に合致され該ノズルと同期してウェハに対して移動することにより、更にウェハの洗浄効果を高めることができる。
【0054】
そして、請求項5に係る発明によれば、上記ノズルによる洗浄液の噴射は、1枚のウェハに対して行うことにより、1枚のウェハを洗浄するのに必要な最小限の洗浄液に節約することができる。
【0055】
また、請求項6に係るウェハ洗浄装置によれば、耐酸性又は耐アルカリ性の材料で形成された洗浄液チャンバで内部に所定の少量の洗浄液を収容し、耐酸性又は耐アルカリ性の材料で形成され上記洗浄液チャンバにパイプで接続されたノズルにより内部の洗浄液を洗浄対象のウェハに向けて噴射し、上記ノズルとステージ上に載置されたウェハとを相対的にX,Yの2次元方向に移動することにより、ウェハの表面に洗浄液を吹き付けて洗浄することができる。これにより、洗浄液を節約すると共に廃液を減少することができる。したがって、洗浄液の使用効率を高めることができる。また、環境汚染の原因とならないようにすることができる。さらに、ウェハ洗浄後のカスがウェハに付着することがなく、十分に洗浄できる。さらにまた、洗浄液チャンバ内には所定の少量の洗浄液を収容するだけなので、その管理が容易であるとともに、安全性も向上する。
【0056】
そして、請求項7に係る発明によれば、上記洗浄液チャンバには、その周囲を所定温度に加熱して内部の洗浄液を加熱する加熱手段を備えたことにより、洗浄液チャンバ内の少量の洗浄液を加熱して、危険性を少なくしてウェハの洗浄効果を高めることができる。
【0057】
また、請求項8に係る発明によれば、上記ステージの下面側には、上面に載置されるウェハに対して高周波の振動を与える振動子を設けたことにより、ウェハの洗浄効果を高めることができる。
【0058】
さらに、請求項9に係る発明によれば、上記振動子は、ステージの下面側にて、ウェハ上方のノズルの位置に合致され該ノズルと同期してウェハに対して移動するようにしたことにより、更にウェハの洗浄効果を高めることができる。
【0059】
さらにまた、請求項10又は11に係る発明によれば、上面にウェハを載置したステージを固定しておき、上記ノズルをX,Yの2次元方向に移動し、或いは、上記ノズルを固定しておき、上面にウェハを載置したステージをX,Yの2次元方向に移動するようにしたことにより、上記ノズルとステージ上に載置されたウェハとを相対的にX,Yの2次元方向に走査して、ウェハの表面を全面にわたって洗浄液で洗浄することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるウェハ洗浄方法及びウェハ洗浄装置の実施の形態を示す構成概要図である。
【図2】上記ウェハ洗浄装置に用いるノズルの具体的な構造の一例を示す断面図である。
【図3】図2に示す断面と直交する断面における上記ノズルの具体的な構造の一例を示す断面図である。
【図4】ノズルとステージ上に載置されたウェハとを相対的にX,Yの2次元方向に移動することにより、ウェハの表面に洗浄液を吹き付けて洗浄する状態を示す平面説明図である。
【図5】図1に示す実施形態によるウェハ洗浄装置の具体的な実施例を示す構成図である。
【符号の説明】
1…洗浄液チャンバ
2…洗浄液
3…ノズル
4…ウェハ
5…ステージ
6…洗浄バス
7…洗浄液供給パイプ
8…高圧気体供給パイプ
9…コンプレッサ
10…正圧供給手段
11…圧力コントローラ
12…パイプライン
13…振動子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄液チャンバ内に所定の少量の洗浄液を収容しておき、上記洗浄液チャンバ内の洗浄液をノズルで洗浄対象のウェハに向けて噴射し、上記ノズルとステージ上に載置されたウェハとを相対的にX,Yの2次元方向に移動することにより、ウェハの表面に洗浄液を吹き付けて洗浄することを特徴とするウェハ洗浄方法。
【請求項2】
上記洗浄液チャンバを所定温度に加熱して、内部の洗浄液を加熱することを特徴とする請求項1記載のウェハ洗浄方法。
【請求項3】
上記ウェハを載置するステージの下面側に振動子を設け、該振動子により上記ウェハに対して高周波の振動を与えることを特徴とする請求項1又は2記載のウェハ洗浄方法。
【請求項4】
上記振動子は、ステージの下面側にて、ウェハ上方のノズルの位置に合致され該ノズルと同期してウェハに対して移動することを特徴とする請求項3記載のウェハ洗浄方法。
【請求項5】
上記ノズルによる洗浄液の噴射は、1枚のウェハに対して行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のウェハ洗浄方法。
【請求項6】
耐酸性又は耐アルカリ性の材料で形成され内部に所定の少量の洗浄液を収容する洗浄液チャンバと、
耐酸性又は耐アルカリ性の材料で形成され上記洗浄液チャンバにパイプで接続されて内部の洗浄液を洗浄対象のウェハに向けて噴射するノズルと、
このノズルの下方に配置され上面にウェハを載置するステージと、
このステージの全体を内側に包み込んで上記ノズルから噴射される洗浄液を受ける洗浄バスと、を備え、
上記ノズルとステージ上に載置されたウェハとを相対的にX,Yの2次元方向に移動することにより、ウェハの表面に洗浄液を吹き付けて洗浄することを特徴とするウェハ洗浄装置。
【請求項7】
上記洗浄液チャンバには、その周囲を所定温度に加熱して内部の洗浄液を加熱する加熱手段を備えたことを特徴とする請求項6記載のウェハ洗浄装置。
【請求項8】
上記ステージの下面側には、上面に載置されるウェハに対して高周波の振動を与える振動子を設けたことを特徴とする請求項6又は7記載のウェハ洗浄装置。
【請求項9】
上記振動子は、ステージの下面側にて、ウェハ上方のノズルの位置に合致され該ノズルと同期してウェハに対して移動するようにしたことを特徴とする請求項8記載のウェハ洗浄装置。
【請求項10】
上面にウェハを載置したステージを固定しておき、上記ノズルをX,Yの2次元方向に移動するようにしたことを特徴とする請求項6記載のウェハ洗浄装置。
【請求項11】
上記ノズルを固定しておき、上面にウェハを載置したステージをX,Yの2次元方向に移動するようにしたことを特徴とする請求項6記載のウェハ洗浄装置。

【図1】
image rotate



【図2】
image rotate



【図3】
image rotate



【図4】
image rotate



【図5】
image rotate