説明

ウェブのしわ伸ばし装置およびウェブロール体製造方法

【課題】長尺のウェブをロール体に巻き取る場合、しわ欠点だけでなく、帯電欠点もほとんどないウェブロール体を得ることができるようなウェブのしわ伸ばし装置を提供する。また、上記しわ伸ばし装置を用いた巻取装置ならびに上記巻取装置を用いたウェブロール体の製造方法を提供する。
【解決手段】連続して搬送されるウェブの巾方向両端部に接触しながら前記ウェブに生じたしわを伸ばすためのしわ伸ばし手段を備えたウェブのしわ伸ばし装置であって、前記ウェブの搬送方向の前記しわ伸ばし手段の上流側または下流側の少なくとも一方に、前記しわ伸ばし手段との接触によりウェブに生じた静電気を除去するための除電手段を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェブのしわ伸ばし装置およびウェブロール体製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルム等の長尺ウェブをしわ無くロール体に巻き取るために様々なしわ伸ばし装置が提案されている。なかでも特許文献1のようなウェブ巾方向両端部に接触し、かつウェブを吸引する手段を備えたしわ伸ばし装置は十分なウェブ拡幅力が得られ、非常に有効なしわ伸ばし装置と言える。図1は特許文献1に記載のしわ伸ばし装置の概略平面図である。図1において、図示しない吸引装置に接続されたしわ伸ばし装置1、1′はガイドローラ2とガイドローラ3との間の搬送中のウェブWの巾方向両端部近傍に前記ウェブWの搬送方向に対して相互に開く方向に設置されている。また図2はしわ伸ばし装置1の概略断面図を示している。図2においてウェブWは吸引口4に接続された真空ポンプやブロアなど(図示せず)によって下方に吸引され、ウェブガイド手段5に接触する。ウェブガイド手段5は例えば複数本の回転可能なローラ6からなり、ウェブWは前記ローラ6に吸着しながら搬送される。しわ伸ばし装置1は前述の通りウェブWの搬送方向に対して一定角度、相互に開く方向に配置されているため、ウェブWの両端部をそれぞれウェブの幅方向外側向きに付勢することになり、しわ伸ばし装置1以前の搬送工程で生じたしわを伸ばして搬送可能である。
【0003】
一方、ウェブの巻取技術におけるもうひとつの課題としてウェブが帯電するという問題がある。これは、ウェブが搬送ロールに接触しながら搬送されたり、巻取り中にウェブ同士が擦れたりすることでウェブに静電気が蓄積される現象であり、帯電したウェブをそのまま巻き取ると、例えば後の加工工程で巻き出す際に上の層のウェブと下の層のウェブとが密着するいわゆる「ブロッキング現象」によってウェブが破れたり、同じく巻取り後の加工工程で近年、ウェブ表面に金属等を蒸着加工する場合があるが、この蒸着工程において、帯電部に金属が蒸着出来ない「金属はじき現象」等の問題が発生することがある。それ以外にも、巻取り中においても上下の層が密着して巻取ロール体上でウェブにきついしわを生じてしまう等、巻取ロール体の取り扱いが極めて困難になることが多い。そこで、巻取装置の巻取部に巻取ロール体から静電気を除去するための静電気除去装置が巻取ロール体の全幅に対応して設けられていることが一般的である。例えば特許文献2に記載の静電気除去装置は巻取径に応じて非接触式の除電器が巻取ロール体との距離を一定になるように位置制御されており、ロール体径方向全体およびロール体幅方向全幅にわたって一様に除電可能なように工夫されている。
【0004】
しかしながら、近年、ウェブロール体の品質への要求が高まり、より一層上記しわや帯電の無いウェブロール体の製造が望まれている。さらには、薄物化、広幅化、およびコストダウンの要求も強い。これまで、例えば特許文献1に記載のように従来のしわ伸ばし装置は、しわ伸ばし装置自身が接触した部位(ウェブ両端部)はトリミングして屑化することが普通であった。つまり、従来のしわ伸ばし装置はトリミング工程の上流に設置され、巻取直前に設置されることは無かった。従って、トリミング工程より上流側のしわ伸ばし装置でしわを伸ばされたウェブは、巻取に至るまでの搬送工程で再びしわを発生する場合があった。特に搬送されるウェブの厚みが薄い場合などはこの現象が顕著である。
【0005】
また、上記各種しわ伸ばし装置によってしわ伸ばし装置と接触した部分のみウェブが強く帯電し、接触していないウェブとの間で帯電量に差がつくため、上記特許文献2に代表される一般的な巻取部の除電器では、ロール径方向での除電能力は考慮されているもののウェブ巾方向の除電分布については何ら考慮されておらず、ウェブ端部のしわ伸ばし装置接触部のみ帯電が残るといった問題があった。本発明者らの知見によると、従来の端部のみ接触するしわ伸ばし装置は、取り扱いが簡便でしわ伸ばし効果もあるが、端部のみ局所接触するため、その部分のウェブの帯電量がウェブ中央部の帯電量に比べ大きくなり、仮に巻取直前に配置しても、巻取近傍の除電器をもってしても上記接触部の静電気が十分に除去されずウェブに残存することが多く、巻取直前に配置してしわのない状態で巻き取るためには実用に耐えないものであった。そのため、仮にこのような使い方とすると、接触部はトリミングして屑化したり、そのままロール体として巻き取られたとしても、後工程にて種々の問題を発生し、製品として欠陥のあるロール体とならざるを得ない。
【特許文献1】特開平4−223135号公報
【特許文献2】特開昭62−55900号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、しわ欠点および帯電欠点のほとんどないウェブロール体を得ることができるようなウェブのしわ伸ばし装置を提供することにある。また、本発明の別の目的は上記しわ伸ばし装置を用いた巻取装置ならびに上記巻取装置を用いたウェブロール体の製造方法を提供することにある。本発明のさらに別の目的は、歩留りよくウェブロール体を製造することができるウェブロール体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明によれば、連続して搬送されるウェブの巾方向両端部に接触しながら前記ウェブに生じたしわを伸ばすためのしわ伸ばし手段を備えたウェブのしわ伸ばし装置であって、前記ウェブの搬送方向の前記しわ伸ばし手段の下流側に、前記しわ伸ばし手段との接触によりウェブに生じた静電気を除去するための除電手段を備えたことを特徴とするウェブのしわ伸ばし装置が提供される。
【0008】
また、本発明の好ましい形態によれば、前記除電手段を、前記ウェブの幅方向において、前記しわ伸ばし手段が前記ウェブに接触する幅の0.8倍以上1.4倍以下の長さで、かつ前記ウェブの搬送方向において、前記しわ伸ばし手段と前記ウエブとが接触する最下流点から下流側に10mm以上100mm以下の位置に設けたことを特徴とするウェブのしわ伸ばし装置が提供される。
【0009】
また、本発明の好ましい形態によれば、前記除電手段が、前記ウェブに非接触の電極に電圧を印加してコロナ放電によりイオンを発生させる電圧印加式除電手段であることを特徴とするウェブのしわ伸ばし装置が提供される。
【0010】
また、本発明の好ましい形態によれば、前記除電手段が、前記ウェブに非接触の電極に電圧を印加してコロナ放電によりイオンを発生させ、かつ前記イオンをエアブローによって前記ウェブに吹き付けるエアブロー式除電手段であることを特徴とするウェブのしわ伸ばし装置が提供される。
【0011】
また、本発明の好ましい形態によれば、前記除電手段が、接地されたブラシ状の導電体を前記ウェブに接触させる自己放電式除電手段であることを特徴とするウェブのしわ伸ばし装置が提供される。
【0012】
また、本発明の好ましい形態によれば、前記しわ伸ばし手段が、前記両端部にそれぞれ設けられた、前記両端部を表裏両面から挟むように構成された一対のローラ、一対のベルト、一対のディスクのいずれか一つを備えたニップユニットを備え、かつ前記各ニップユニットにおける前記一対のローラ、一対のベルト、一対のディスクのいずれか一つの回転方向が前記両端部にそれぞれ外向きに付勢する方向となるように構成されていることを特徴とするウェブのしわ伸ばし装置が提供される。
【0013】
また、本発明の好ましい形態によれば、前記しわ伸ばし手段が、前記両端部にそれぞれ設けられた、前記両端部にそれぞれ外向きに付勢する方向となるように構成されたウェブガイド手段と、前記ウェブガイド手段を支持し、かつ包囲するように前記ウェブ両端部の表裏いずれか1面に対向して開口した開口部を有する吸引口とを有し、前記吸引口に接続され、前記吸引口を通しての空気吸引により前記ウェブを前記ウェブガイド手段に接触するように吸引する手段とを備えたことを特徴とするウェブのしわ伸ばし装置が提供される。
【0014】
また、本発明の好ましい形態によれば、前記ウェブガイド手段が、前記両端部にそれぞれ外向きに付勢する方向に周回自在なローラまたはベルトを備えたものであることを特徴とするウェブのしわ伸ばし装置が提供される。
【0015】
また、本発明の別の形態によれば、搬送されてきた連続したウェブを巻き取る巻取コアと前記巻取コアに近接するタッチローラと、前記タッチローラより搬送方向の上流側であってウェブが接触する複数本のローラとを備えたウェブの巻取装置であって、前記ウェブのしわ伸ばし装置を、前記タッチローラと、前記ウェブに接触しかつ前記タッチローラより上流側で最もタッチローラに近い位置にあるローラとの間に備えたことを特徴とするウェブの巻取装置が提供される。
【0016】
また、本発明の好ましい形態によれば、前記位置に備えたウェブのしわ伸ばし装置の搬送方向上流側に、前記ウェブの両端部をトリミングする切断装置を備えたことを特徴とするウェブの巻取装置が提供される。
【0017】
また、本発明の別の形態によれば、搬送されてきた連続したウェブを巻き取る巻取コアと前記巻取コアに近接するタッチローラと、前記タッチローラより搬送方向の上流側であってウェブが接触する複数本のローラとを備え、かつ前記ウェブのしわ伸ばし装置を、前記タッチローラと、前記ウェブに接触しかつ前記タッチローラより上流側で最もタッチローラに近い位置にあるローラとの間に備えたウェブの巻取装置を用いたウェブの製造方法であって、前記ウェブとして厚みが0.5μm以上20μm以下であるものを用いることを特徴とするウェブの製造方法が提供される。
【0018】
また、本発明の別の形態によれば、搬送されてきた連続したウェブを巻き取る巻取コアと前記巻取コアに近接するタッチローラと、前記タッチローラより搬送方向の上流側であってウェブが接触する複数本のローラとを備え、かつ上記ウェブのしわ伸ばし装置を、前記タッチローラと、前記ウェブに接触しかつ前記タッチローラより上流側で最もタッチローラに近い位置にあるローラとの間に備え、さらに前記位置に備えたウェブのしわ伸ばし装置の搬送方向上流側に、前記ウェブの両端部をトリミングする切断装置を備えたウェブの巻取装置を用いたウェブの製造方法であって、前記ウェブの厚みが0.5μm以上20μm以下であることを特徴とするウェブの製造方法が提供される。
【0019】
まず、本発明において、ウェブのしわ伸ばし装置はウェブの巾方向両端部近傍にそれぞれ設置する一対のウェブ端部把持装置を備えている。それぞれのユニットはウェブ両端部にそれぞれ外向きに付勢する方向に備えられている以外はほぼ同様の構成をしているため、以降特に記載の無い場合を除いて、片側のみの構成について記載する。ただし、その構成は実質的にウェブ巾方向反対側においても同じである。
【0020】
本発明におけるウェブのしわ伸ばし装置は、搬送中にウェブに生じたしわを伸ばすしわ伸ばし手段と、前記しわ伸ばし手段との接触によってウェブに生じた静電気を除去する除電手段とからなる。ここで、「しわ伸ばし手段」とはウェブの両端部においてそれぞれ外向きに付勢することができるしわ伸ばし手段であれば基本的に何でも適用できる。例えば、搬送中のウェブ端部を、回転可能に支持され、かつ軸線を傾けた一対のニップローラで挟持し、前記ニップローラの回転に伴ってウェブに拡幅力を与えるクロスガイダ装置を用いることができる。ここで、ローラのかわりにベルトやディスクを用いることもできる。
【0021】
別の「しわ伸ばし手段」として、特許文献1に記載の、ウェブ両端部にそれぞれ設けられた、前記両端部にそれぞれ外向きに付勢する方向となるように構成されたウェブガイド手段と前記ウェブガイド手段を支持し、かつ包囲するようにウェブの表裏いずれか1面に対向して開口した開口部を有する吸引口とを有し、前記吸引口に接続され、前記吸引口を通しての空気吸引によりウェブを前記ウェブガイド手段に接触するように吸引する手段とを備えたしわ伸ばし装置は好適である。上記装置においては前記クロスガイダ装置と異なり、ウェブの表裏どちらか1面のみに設置することができるため、ウェブ通しの際にも邪魔にならず、ニップ力の調整も不要であり、操作性が格段に向上する。
【0022】
また前記ウェブガイド手段が、前記両端部にそれぞれ外向きに付勢する方向に周回自在なローラまたはベルトを備えたものであることは、より好ましい。このようなウェブガイド手段を有することで、吸引により吸引口を通してウェブ面近傍の空気が吸引され、該ウェブ面がウェブガイド手段の接触面に吸着される。このウェブへの接触面を、ウェブWの両端部をそれぞれウェブの幅方向外側向きに付勢する方向に傾けることで、ウェブは吸着状態を維持しながら拡幅される。また前記ウェブガイド手段が周回自在なローラまたはベルトからなることで、ウェブが吸引口に引っ掛かってウェブに傷を生じたりウェブ破れが発生しにくくなる。ここで、吸引手段としては真空ポンプやブロワを用いることが出来る。
【0023】
また「除電手段」としては接触式と非接触式のいずれかを用いることが出来る。接触式とは、例えば接地された導電体支持部材によって保持された複数の導電性繊維から成るブラシ状のもので、前記複数の導電性繊維を目的帯電物(ここではウェブ)に対向させて接触させることで、前記導電性繊維の先端に電界が集中していわゆる先端放電によって対象帯電体の電荷を中和するとされている。このように接触式除電器は中和できる電位が低いとされているものの、構造が簡単であり、取り扱いが容易である。
【0024】
一方、非接触式の静電気除去手段としては、高電圧発生装置からの高電圧微少電流により、イオン発生手段(例えば針状電極とアース間、針状電極と一定電極間で微少電流にて放電を起こさせるもの)にて静電気中和用イオンを発生させるものが良く知られており、先の接触式除電器に比べて、中和出来る電位が高く除電能力が高いとされている。またエアブロー式除電器は、イオン発生手段にブロワを連結し、発生した中和用イオンを目的帯電物(ここではウェブ)に向け空気とともに吹き付けるようにした装置であって、より一層の効果を得る場合がある。
【0025】
本発明においては操作性、経済性、しわ伸ばし手段による帯電電位の高さ等を勘案し適宜の除電手段を選択することができる。
【0026】
ここで、ウェブの幅方向において、前記除電手段は前記しわ伸ばし手段が接触する幅と概略同じ長さで、かつ、ウェブの搬送方向において、前記しわ伸ばし手段と前記除電手段との距離を10mm以上100mm以下にするのが良い。好ましくは前記除電手段を、前記しわ伸ばし手段と前記ウェブとが接触する最下流点から出来るだけ近い下流側に設置する方が良い。本発明においては、まず、ウェブの幅方向において、前記除電手段は前記しわ伸ばし手段とウェブの接触部位についてのみ除電出来れば十分であり、従って除電手段の長さとしては、前記しわ伸ばし手段の接触幅の0.8倍以上1.4倍以下の長さが好ましい。また、ウェブ搬送方向においては、しわ伸ばし手段と除電手段との間に存在する帯電したウェブの距離を出来るだけ短くするのが好ましい。これは、この距離が長いとその間で異物や粉塵などが静電気によってウェブに吸い付けられ、後に傷等の問題になるためである。とは言え、上記距離が10mmより小さくなると、接触式の除電器ではブラシがローラに接触してウェブの除電能力が落ちたり、除電手段が非接触式ではしわ伸ばし手段が金属製の場合等は、しわ伸ばし手段に向かって放電し、ウェブが除電されないこともある。また、上記距離が100mmを超えても実質的に影響の無い場合もあるが、しわ伸ばし装置全体をコンパクトにし、取り扱いを容易にするためには、100mm以下とするのが好ましい。
【0027】
本発明において、「ウェブ」とは、紙やフィルム、薄い金属箔などを言うが、プラスチックフィルムが好適である。フィルムとしては例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、芳香族ナイロン等のポリアミド系、その他ポリイミド系、ポリスルホン系、ポリビニル系、ポリエステルエーテル系、ポリカーボネート系、ポリフェニレンサルファイド系、ポリ乳酸系、セルロース系、アクリル系などからなる樹脂シートが用いられる。もちろん、これらの樹脂の混合物や共重合物であってもよい。また各種の添加剤、例えば帯電防止剤や、耐候剤や、無機または有機の粒子や、ワックス等の滑剤や、顔料を含むものであってもよい。中でもポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、アラミドまたはポリイミドフィルムなどのフィルムに有効である。
【0028】
また、「ウェブの巻取装置」とは、少なくとも連続したウェブを巻き取る巻取コアと、前記巻取コアに近接するタッチローラと、前記タッチローラよりウェブ搬送方向上流側にウェブが接触する複数本のローラとを備えたウェブの巻取装置であって、例えばフィルム製造工程の最後で中間製品をロール体に巻き取る、いわゆるワインダであっても、前記中間製品ロールを所望の幅にスリットするスリッタであっても、あるいはフィルム表面に蒸着やコーティングを施したり、単に巻き替えることを目的とした装置であっても良い。
【0029】
前記ウェブの巻取装置において、上述のウェブのしわ伸ばし装置を、前記タッチローラと、前記ウェブに接触しかつ前記タッチローラより上流側で最もタッチローラに近い位置にあるローラとの間に設置することが好ましい。つまり巻取直前に前記しわ伸ばし装置を設置することが好適である。また、本発明のしわ伸ばし装置より上流側に前記ウェブの両端部を除去する切断装置を備えることも好適である。
【0030】
本発明のしわ伸ばし装置を巻取直前に設置することで、しわ伸ばし手段の下流に除電手段が設置されているため、帯電の無いウェブをトリミングすること無くそのままウェブロール体に巻き取ることが可能である。さらに、本発明のしわ伸ばし装置より上流側にウェブ端部の切断装置を設置することで、従来はウェブ成型に必要だが製品にはならないウェブ端部(元々除去する部分)に加えて帯電により除去して屑化していた部分を、前記ウェブ成型に必要なウェブ端部のみを屑化するだけで良く、製品部を増やすことが可能で歩留が向上し、よりしわの無い高品質なウェブロールを効率良く得ることが出来る。
【0031】
ここで、図10(A)、図10(B)を用いて詳しく説明する。図10(A)、図10(B)は共にしわ伸ばし装置の概略平面図を示しており、図10(A)は従来のしわ伸ばし装置の適用例、図10(B)は本発明のしわ伸ばし装置の適用例を示している。すなわち、従来は図10(A)に示すように、しわ伸ばし装置101、101′をウェブWの搬送ロール102と103との間に設置し、しわ伸ばし後(しわ伸ばし装置下流)にトリミング装置106、106′により、しわ伸ばし装置の接していた部分E2を、ウェブ成型に必要なウェブ端部E1とともに屑化していた。従って、しわ伸ばし装置101、101′を適用して、しわの無いウェブロールを生産しようとすると、タッチロール104に付勢されながら巻取コア105に巻き取られるウェブロール製品の幅WP1は狭くなっていた。これに対し、図10(B)に示す本発明の実施形態では、しわ伸ばし装置107、107′はウェブWの搬送ロール103の下流側でタッチロール104の直前に設置される。また、トリミング装置106、106′はしわ伸ばし装置107、107′よりも上流側に設置される。本発明の一実施形態のしわ伸ばし装置107、107′は除電手段を備えているため、しわ伸ばし前にウェブ成型に必要なウェブ端部E1を切断するだけで、しわ伸ばし手段に接していた部分、すなわち図10(A)のE2に相当する部分を残して製品に含めることができ、巻取コア105に巻き取られるウェブロール製品の幅WP2を広くできるのである。
【0032】
本発明において、ウェブの厚みとしては0.5μm以上20μm以下が好適である。0.5μmより薄い厚みのウェブにおいてはウェブ両端部において、しわ伸ばし装置との接触によりウェブが破れる場合が多い。また、20μmをこえる厚みのウェブにおいては、ウェブの剛性が高く、しわが伸びにくいため、仮にしわを伸ばすためには、しわ伸ばし手段との接触が強くなるため、除電手段によって除去しきれないほどの帯電をする場合がある。しわを伸ばしつつ除電によって帯電の無い良好なウェブロール体を得ることが出来る。連続して搬送されるウェブ厚みtはウェブ幅方向の中央部の厚みを10m間隔で測定した平均値を用いることとする。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、以下に説明するとおり、例えば連続して搬送されるウェブの巾方向両端部に接触しながら前記ウェブに生じたしわを伸ばすためのしわ伸ばし手段を備えたウェブのしわ伸ばし装置であって、前記ウェブの搬送方向の少なくとも一方に、前記しわ伸ばし手段との接触によりウェブに生じた静電気を除去するための除電手段を備えたことを特徴とするウェブのしわ伸ばし装置を適用したウェブの巻取装置において、しわ、帯電などの欠点のほとんどない綺麗なウェブロール体を製造することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下に本発明の実施の形態について詳細に述べるが、本発明は以下の実施例を含む実施の形態に限定されるものではなく、発明の目的を達成できて、かつ、発明の要旨を逸脱しない範囲内においての種々の変更は当然あり得る。
【0035】
本発明の一実施形態をフィルム巻取装置に適用した場合を例にとって、図面を参照しながら説明する。
【0036】
図3は本発明の一実施形態に係るウェブのしわ伸ばし装置の概略平面図である。また、図4は図3に示したウェブのしわ伸ばし装置の一方のユニットの概略断面図、図5は拡大平面図を示している。図3に示すように、しわ伸ばし装置7、7′は、ローラ8とローラ9との間の、搬送中のウェブWの幅方向両端近傍にウェブの下面より設置されている。本実施形態においては、しわ伸ばし装置7は、しわ伸ばし手段10と、前記ウェブWの搬送方向においてしわ伸ばし手段10の下流側に設けた除電手段20とからなる。
【0037】
図4および図5に示すように、しわ伸ばし装置7において、しわ伸ばし手段10は、ウェブガイド手段11と、ウェブガイド手段11を支持し、かつ、包囲することによってウェブWの下面に向かって開口する開口部を有するケース12とからなり、前記ケース12の下部には吸引口13と、吸引口13に配管14を介して接続され、前記吸引口13を通してウェブW下面側の空気を吸引するための吸引手段(図示しない)とを備える。ウェブガイド手段11は、例えば、外周に孔15の空いた中空の複数のローラ16からなる。前記ローラ16は、ウェブWと平行な平面内に搬送方向に対し一定角度θ傾斜し、かつ各ローラは前記搬送方向に実質的に平行に配列されている。傾斜角度θは僅かな角度で良いが、ウェブWの幅、厚みt、表面状態等によって5〜40度の範囲内で適宜選択できる。θを上記範囲内にすることで、しわ伸ばし効果を高めると共に、ローラ16の回転速度を低下させないという効果も得られるので好ましい。このθの方向は、図3に示すように、ウェブ両側で見て、ウェブW搬送方向に対して相互に開く方向、つまりローラ16の回転方向が、ウェブWの両端部にそれぞれ外向きに付勢する方向である。この複数のローラ16の外周面が、移動自在なウェブWへの接触面を構成する。
【0038】
なお、各ローラ16の長手方向端面には、ウェブWとの接触の際にウェブWに傷を付けないように丸みがつけられている。ローラ16の材質としては、金属、樹脂、ゴム等任意のものを適宜選択できる。各ローラ16は、ケース12の内面側に回転自在に両端支持されている。吸引口13のウェブW側の開口部の形状は、図5に示すようにローラ16群の形状に合うように鋸刃状にするのが好ましいが、この形状に限定されるものでは無い。本実施形態では、吸引口13による空気吸引は、図4にも示すように、各ローラ16間、各ローラ16とケース12の内面との間、および孔15を通して行われるようになっているが、これら空気吸引経路の態様はウェブ厚みや速度等に応じて、吸引口13内での負圧調整可能範囲が適切な範囲となるように、吸引口13の大きさやケース12の開口部の形状を適宜選択できる。
【0039】
ここでケース12の開口部は、前記ウェブWの一面に対向して開口しておけば良く、他の外周面から多少の空気流入のある僅かな面積の開口部の存在は問題とならない。このように構成された装置において、ウェブWは、その幅方向両端部において、吸引手段による吸引口13およびケース12の開口部ならびにローラ16の孔15を通しての下面近傍の空気吸引により、ウェブガイド手段11としてのローラ16の外周面上に吸着される。このとき、図4に示すように、吸引されたウェブWは、ウェブガイド手段11を構成する各ローラ16の上面に沿うように円弧状に湾曲されながら各ローラ外周面に接触する。この接触による摩擦力によって、ウェブWはローラ外周面に捕捉され、ウェブWの走行により各ローラ16を回転させるとともに、上記捕捉によりウェブWの位置が規制され、ウェブWは各ローラ16の回転方向に、つまり各ローラ16の外周面移動と同じ方向に強制搬送される。前述のとおり、各ローラ16はウェブ搬送方向に対して角度θ開く方向に配置されているため、ウェブWのしわが伸ばされる。
【0040】
本実施形態のしわ伸ばし手段においては、前述の通り、ウェブW下面側の空気吸引は、各ローラ16間、各ローラ16と吸引口13の内面との間のみならず、多数の孔15を通しても行われるので、ウェブWは十分な吸引力をもって各ローラ16上に吸着される。そして、各ローラ16上では、図4に示したように、ウェブWは各ローラ16の外周面に円弧状に巻き付くように接触、吸着されるので大きな摩擦力が得られ、十分な拡幅力を得る。すなわち十分にしわを伸ばすことが出来、効果が大きい。また、しわ伸ばし手段としては、ローラ16の代わりに表面に孔の空いたベルトを用いることが出来る。ベルトの場合は、ウェブが円弧状に変形しなくとも十分な吸着力を得ることができるため、極めて薄いウェブにおいても、ウェブの帯電をより一層抑制したり、破れの発生を抑制できる。ベルトにおいてもその材質は金属、樹脂など適宜選択可能であり、駆動または従動も選択できる。
【0041】
吸引手段はブロワ等を用いることが出来る。配管途中にバルブ等を設けて吸引圧を調整しても良いし、ブロワの出力を可変出来るものにしても良い。吸引圧力はウェブ下面から100mm離れた位置の吸引口13内部において、吸引方向と垂直な平面における概略中心部で測定して、およそ0.0001MPaから1.0MPaの範囲で選択できる。
【0042】
一方、本実施形態において、除電手段20は、金属等の導電体からなる複数本の針状電極を備えた電極部21と前記針状電極に接続し高電圧を印加するための電源部22とからなる。図6は本実施形態の除電手段20の部分断面図である。図6において、電極部21を構成する例えば直径1mmの金属からなる複数本の針状電極23は、根本部分で土台となる金属軸24に相互に通電して接続されており、周囲を樹脂等の絶縁体25で覆われ、外周面のケース26と絶縁されている。ここでケース26は接地(アース)されている必要がある。針状電極23の先端部27はさらに鋭利に尖っており、その先端部が対象帯電物(ここではウェブW)に対向する。隣合う針同士の間隔Dは印加電圧や対象帯電物の電位によって適宜選択することが可能であるが、およそ5mmから20mm程度の範囲で選択される。金属軸24は高圧ケーブル28によって、電源等の高電圧発生装置に29に接続されており、上記高電圧発生装置29からの高電圧微小電流によって、針状電極23とアース間で放電が起こり、針状電極23の先端部27からイオンが発生する。該イオンがウェブに向かって放出され、ウェブ表面のイオンを中和し、ウェブ表面の帯電を取り除く効果がある。ここで印加する電圧としては、適宜選択可能であるが、およそ2〜20kVの範囲で選択できる。
【0043】
また、除電手段20は、ケース12に埋め込んで、しわ伸ばし手段10と一体になっていても良いし、例えばブラケット30等でケース12に固定し、ウェブWに対する高さや角度、しわ伸ばし手段との距離を調整出来るように構成すると、より好ましい。特にウェブWと針状電極21との距離Hは5mmから50mm程度にすると良い。また、除電手段20としわ伸ばし手段10との距離、すなわち、しわ伸ばし手段10とウェブWとが接触する最下流点(例えば最下流にあるローラ16の最下流点)から、除電手段20の電極21の中央部(例えば針状電極23の先端部27)までの距離Lを10mmから100mmの範囲にすることが好ましく、本実施形態では50mm程度にするのが良い。さらに、図4に示すように、針状電極近傍にエアブローノズル31を設置し、上記発生したイオンをウェブ方向に吹き付けるようにしても良い。この際、エアブローノズルは特に限定されるものでは無く公知のものが利用出来る他、除電装置と一体化されたものでも良い。エア風速としては適宜選択可能で、エアブローノズル先端で測定して、0.1〜10m/s程度が良い。
ここで、除電手段20の電極部21の幅(ウェブWの幅方向における長さ)WS(例えば最内側と最外側の針状電極23間の距離)は、しわ伸ばし手段10の幅(同上)WE(例えばローラ16のフィルム幅方向における長さ)の0.8倍以上1.4倍以下程度に構成するのが良い。電極部21の幅がしわ伸ばし手段10の幅よりも小さいと、ウェブWに帯電が残る場合がある。逆に大きいと非効率なだけで無く、電極部21から供給されるイオンによって、しわ伸ばし手段21が非接触の部分のウェブを逆に帯電させてしまう場合がある。
【0044】
図7は本実施形態のしわ伸ばし装置をポリエチレンテレフタレートフィルム(以下PETフィルム)の製造設備の巻取装置(ワインダ)に取り付けた例を示した模式図である。図示しない製膜工程で成型、延伸(または無延伸搬送)されたPETフィルムFは複数本の搬送ローラ37を経て、巻取コア32にフィルムロール33として巻き取られる。その際、タッチローラ34を前記巻取りコア32に付勢しながら巻き取ることで、フィルム層間の空気を適度に排除し、巻きズレやしわの無き綺麗なフィルムロール33を得ることが出来る。また、フィルムロール33またはフィルムロール33とタッチローラ34の接触部に向かって中和イオンを供給するための、巻取除電装置35がフィルム幅方向全体に渡って設置されている。ここで本実施形態のしわ伸ばし装置7をタッチローラ34と、前記タッチローラ34の上流側直前の搬送ローラ37′との間に設置するのが好ましい。さらには、製膜端部を切断して除去するためのカッター装置36を、しわ伸ばし装置7の搬送方向上流側に備えるのが好ましい。つまり、本実施形態のしわ伸ばし装置7はしわ伸ばし手段10と除電手段20を併せ持つため、カッター装置36で製膜端部を除去した後の工程に適用しても、しわ伸ばし手段の接触によりフィルム端部に帯電した静電気を除去して巻き取ることが可能であり、巻取コア32の直前でしわを伸ばすことが出来るため、再びしわの発生する工程が無く、しわの無い綺麗なフィルムロールを得ることが出来る。ここで、フィルムの厚みは0.5μm以上20μm以下が好ましい。
【0045】
また、図8は本発明の別の実施形態を示す概略側面図である。しわ伸ばし装置40はウェブWの幅方向端部を上下面から挟むように構成されたしわ伸ばし手段41と、前記しわ伸ばし手段41が接触し、帯電した部分のウェブを除電するための除電手段42とからなる。しわ伸ばし手段41は上下一対のローラ44を回転自在に支持する軸受け45からなり、前記ローラ44の回転方向が前記ウェブWの搬送方向に対して開く方向で、かつ、一対のローラ44は一方のローラが他方のローラに対して付勢するように構成されている。ここで、ウェブWに接触するローラ表面43の材質は金属または樹脂、ゴムなどから適宜選択される。つまり一対のニップローラのうち一方の表面は金属、他方の表面はゴム、あるいは両方の表面が樹脂など、様々な組合せが可能である。また、ローラ44は前記ウェブWとの摩擦によって回転するものであっても良いし、モータ等を用いて積極的に駆動するものであっても良い。このように構成された上下一対のローラによって搬送中にウェブWに生じたしわが伸ばされる。さらに除電手段42もウェブ上下に備えられているため、上記一対のローラとの摩擦接触でウェブWの端部が帯電しても、その部分の除電が可能であり、結果として高品質なウェブロール体を得ることが出来る。ここで、除電手段42は上述の除電手段20のように種々の構成をとることが出来る。なかでも図8に示すように除電手段42の電極部(図では針状電極先端)を上下に対向するように設置することは本願出願人らが先に出願した特開2004−39421号公報に記載の通り、より高い除電力を得ることができるため好適である。
【0046】
また図9は本発明のさらに別の実施形態を示す概略断面図であり、しわ伸ばし装置50はしわ伸ばし手段51と除電手段52とからなる。しわ伸ばし手段51としては、先述のしわ伸ばし手段10およびしわ伸ばし手段41のような種々の手段が適用され、除電手段51としては接地(アース)された金属等でできた除電ブラシ53をウェブWに接触させることで他の実施形態と同様の効果を得ることが出来る。本実施形態によれば他の実施形態に比べて、非常に簡便な装置で目的を達成できる。
【実施例】
【0047】
[実施例1]
上記のワインダを用いてフィルムロールを巻き取る際、本発明の一実施形態に係るウェブのしわ伸ばし装置7を適用して性能を評価した結果について説明する。フィルムは破断強度σb=215MPa、幅4mのPETフィルムであり、巻取速度150m/分で巻長を4000mのフィルムロール体を製造した。巻取コアは鉄製の外径300mm、長さ4.5mの中空パイプであり、両端を回転自在に把持し、外部の駆動装置で回転駆動している。タッチローラは外径300mm、長さ4.2mの表面がゴムからなるローラで、100N/mの圧力でフィルムロール体に押し付けている。また、フィルムに付与する張力は200N/mとした。
【0048】
ここで、フィルム厚みはt=5μm、しわ伸ばし装置としては、図4に記載の装置を図7のXで示す位置(タッチロール直前)に設置した。しわ伸ばし装置の上流側にカッター装置を設置し、製膜端部を除去している。しわ伸ばし手段はステンレス製の直径30mm、長さ100mmのローラが5本とステンレス製のケースで構成し、吸引圧力はP=0.003MPaとした。ここで、ローラの角度θは10度とし、従って、WEは約104mmとなる。
【0049】
また、除電手段の電極は先端を鋭利にした直径1mmの針状電極を12本等間隔にフィルム幅方向に並べた電極を用いた。ここで隣合う針同士の間隔はD=10mmとした。従ってフィルム幅方向における除電手段の電極部長さWSは120mmであり、上記WEに対して約1.15倍の長さとなり、かつフィルム幅方向に同じ位置でフィルム搬送方向に並列に構成されている。また、高電圧電源に印加する電圧は4kV、針状電極とフィルムとの距離はH=25mm、ローラと針状電極との距離はL=50mmとした。さらにエアブローノズルにより風速2m/sでエアを供給している。
【0050】
しわ伸ばし装置の評価としては、巻取り中のフィルムロール体の巻姿不良であるしわの発生量と、巻取り完了後のフィルムロール体の幅方向端部、すなわち本発明のしわ伸ばし装置が適用される部分における表面電位とで行う。しわの発生量については、しわの発生が全く無いものを◎、極めて軽度なしわが発生するものを○、軽度なしわが発生するものを△、製品にならない程度のしわが発生するものを×として、結果を表1の中に記載した。
また、帯電量については、巻取完了後、フィルムロール体幅方向両端部の該当位置(しわ伸ばし装置が適用される部分の幅方向中央部に相当する位置)にシムコ製表面電位計Model523を用いてフィルムロール体から垂直方向に30mm離した位置で測定し、両端部の平均値を同じく表1の中に記載した。
[実施例2]
次の点以外は実施例1と全く同じ構成にして、実施例1と同様の方法で評価を行った。結果を表1に記載した。
【0051】
フィルム厚みをt=40μmとし、吸引圧力をP=0.01MPaとした。
[実施例3]
次の点以外は実施例1と全く同じ構成にして、実施例1と同様の方法で評価を行った。結果を表1に記載した。
【0052】
吸引圧力をP=0.0007MPaとした。
[実施例4]
次の点以外は実施例1と全く同じ構成にして、実施例1と同様の方法で評価を行った。結果を表1に記載した。
【0053】
しわ伸ばし装置の適用位置を図7のYの位置(搬送ローラの途中)とした。従って、カッター装置はしわ伸ばし装置の下流側となり、しわ伸ばし装置の適用部は除去される。
[実施例5]
次の点以外は実施例1と全く同じ構成にして、実施例1と同様の方法で評価を行った。結果を表1に記載した。
【0054】
しわ伸ばし装置としては図4に記載の装置を用いるがエアブローノズルを取り外した。従って、エアの供給は行わなかった。ここでしわ伸ばし手段の構成は図4と同じである。
[実施例6]
次の点以外は実施例1と全く同じ構成にして、実施例1と同様の方法で評価を行った。結果を表1に記載した。
【0055】
しわ伸ばし装置として、図9に記載の装置を用いた。つまり、除電手段が接地した導電体のブラシからなる接触式の除電手段とした。ここでしわ伸ばし手段の構成は図4と同じである。
[実施例7]
次の点以外は実施例1と全く同じ構成にして、実施例1と同様の方法で評価を行った。結果を表1に記載した。
【0056】
しわ伸ばし装置として図8に記載の装置を用いた。ローラは直径80mmであり、その表面は金属製で接地した。ここで除電手段の構成は図4と同じであり、フィルム上下面にそれぞれ設置している。
[実施例8]
次の点以外は実施例1と全く同じ構成にして、実施例1と同様の方法で評価を行った。結果を表1に記載した。
【0057】
ローラと針状電極との距離はL=200mmとした。
[比較例1]
次の点以外は実施例1と全く同じ構成にして、実施例1と同様の方法で評価を行った。結果を表1に記載した。
【0058】
しわ伸ばし装置として図2に記載の装置を用いた。つまり除電手段を備えていない。ここでしわ伸ばし手段の構成は図4と同じである。
[比較例2]
次の点以外は実施例1と全く同じ構成にして、実施例1と同様の方法で評価を行った。結果を表1に記載した。
【0059】
しわ伸ばし装置を用いなかった。
【0060】
【表1】

【0061】
以上のように、本発明のウェブのしわ伸ばし装置をフィルムの巻取装置に適用することで、厚みが薄く幅の広いフィルムを巻き取る場合においても、しわや帯電問題の発生を防止することができ、高品質なフィルムロール体を得ることが出来る。しわ伸ばし装置を用いない比較例2においては、極端にしわの発生状況が悪く製品とならない。また、比較例1のように除電手段を具備しないしわ伸ばし装置においては、フィルム端部のしわ伸ばし装置接触部において、フィルムが高電位に帯電するが、実施例1のように除電手段を具備し、かつ所定の厚みのフィルムに適用することで、しわの発生も無く、帯電部も十分に除電することができた。また実施例2では、フィルム厚みが厚くても、吸引圧をあげることでしわを伸ばすことができ、かつ帯電も許容の量であった。また実施例3では、吸引圧力を小さくしてもしわの発生も軽微であり、帯電も防止できた。また実施例4では、しわ伸ばし手段の設置位置がタッチローラ直前でなく、搬送ローラの途中に設置しても、しわ伸ばし手段通過後に再発するしわは許容範囲であった。しわ伸ばし手段の接触部は除去したため帯電は問題なかったが、フィルムロール体の幅が狭くなった。また実施例5では、除電手段のエア供給を止めたが、針状電極からの放電だけで十分な除電能力があった。また実施例6では除電手段を接触式の自己放電式除電手段としたが、除電能力は許容範囲であり効果は十分である。また実施例7では、しわ伸ばし手段としてクロスガイダを設置したが、図4のしわ伸ばし手段に比べてしわは多少残るものの問題無い程度であり、帯電も問題無い。また実施例8では、しわ伸ばし手段と除電手段の距離を長くしたが、本実施例では実施例1同様高い効果を得た。しかしながら、しわ伸ばし手段と除電手段の間で静電気によりゴミの吸着が懸念されたり、操作性が悪化する場合がある。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明はウェブのしわ伸ばし装置としての利用が可能であり、特にプラスチックフィルムの製造に好適であるが、その応用範囲がこれらに限られたるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】従来のしわ伸ばし装置の概略平面図である。
【図2】従来のしわ伸ばし装置の一方の概略断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るウェブのしわ伸ばし装置の概略平面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るウェブのしわ伸ばし装置の一方のユニットの概略断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るウェブのしわ伸ばし装置の一方の拡大平面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るウェブのしわ伸ばし装置の除電手段の部分断面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係るウェブの製造工程の模式図である。
【図8】本発明の一実施形態に係るウェブのしわ伸ばし装置の一方の概略側面図である。
【図9】本発明の一実施形態に係るウェブのしわ伸ばし装置の一方の概略断面図である。
【図10(A)】従来のしわ伸ばし装置の概略平面図である。
【図10(B)】本発明の一実施形態に係るウェブのしわ伸ばし装置の概略平面図である。
【符号の説明】
【0064】
1、1′しわ伸ばし装置
2 ガイドローラ
3 ガイドローラ
4 吸引口
5 ウェブガイド手段
6 ローラ
7、7′しわ伸ばし装置
8 ガイドローラ
9 ガイドローラ
10 しわ伸ばし手段
11 ウェブガイド手段
12 ケース
13 吸引口
14 配管
15 孔
16 ローラ
20 除電手段
21 電極部
22 電源部
23 針状電極
24 金属軸
25 絶縁体
26 ケース
27 針状電極の先端部
28 高圧ケーブル
29 高電圧発生装置
30 ブラケット
31エアブローノズル
32 巻取コア
33 フィルムロール
34 タッチローラ
35 巻取除電装置
36 カッター装置
37、37′搬送ローラ
40 しわ伸ばし装置
41 しわ伸ばし手段
42 除電手段
43 ローラ表面
44 ローラ
45 軸受け
50 しわ伸ばし装置
51 しわ伸ばし手段
52 除電手段
53 除電ブラシ
101、101′しわ伸ばし装置
102 搬送ローラ
103 搬送ローラ
104 タッチローラ
105 巻取コア
106、106′トリミング装置
107、107′しわ伸ばし装置
E1 成型端部
E2 しわ伸ばし装置適用端部
WP1 ウェブロール製品幅
WP2 ウェブロール製品幅
W ウェブ
θ ウェブ搬送方向に対するローラの開き角度
t ウェブ厚み
P 吸引圧力
F PETフィルム
D 各々の針状電極の間隔
H 針状電極先端部とウェブとの距離
L しわ伸ばし手段と除電手段との距離
WE しわ伸ばし手段の幅方向長さ
WS 電極部の幅方向長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続して搬送されるウェブの巾方向両端部に接触しながら前記ウェブに生じたしわを伸ばすためのしわ伸ばし手段を備えたウェブのしわ伸ばし装置であって、前記ウェブの搬送方向の前記しわ伸ばし手段の下流側に、前記しわ伸ばし手段との接触によりウェブに生じた静電気を除去するための除電手段を備えたことを特徴とするウェブのしわ伸ばし装置。
【請求項2】
前記除電手段を、前記ウェブの幅方向において、前記しわ伸ばし手段が前記ウェブに接触する幅の0.8倍以上1.4倍以下の長さで、かつ前記ウェブの搬送方向において、前記しわ伸ばし手段と前記ウエブとが接触する最下流点から下流側に10mm以上100mm以下の位置に設けたことを特徴とする請求項1に記載のウェブのしわ伸ばし装置。
【請求項3】
前記除電手段が、前記ウェブに非接触の電極に電圧を印加してコロナ放電によりイオンを発生させる電圧印加式除電手段であることを特徴とする請求項1または2に記載のウェブのしわ伸ばし装置。
【請求項4】
前記除電手段が、前記ウェブに非接触の電極に電圧を印加してコロナ放電によりイオンを発生させ、かつ前記イオンをエアブローによって前記ウェブに吹き付けるエアブロー式除電手段であることを特徴とする請求項3に記載のウェブのしわ伸ばし装置。
【請求項5】
前記除電手段が、接地されたブラシ状の導電体を前記ウェブに接触させる自己放電式除電手段であることを特徴とする請求項1または2に記載のウェブのしわ伸ばし装置。
【請求項6】
前記しわ伸ばし手段が、前記両端部にそれぞれ設けられた、前記両端部を表裏両面から挟むように構成された一対のローラ、一対のベルト、一対のディスクのいずれか一つを備えたニップユニットを備え、かつ前記各ニップユニットにおける前記一対のローラ、一対のベルト、一対のディスクのいずれか一つの回転方向が前記両端部にそれぞれ外向きに付勢する方向となるように構成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のウェブのしわ伸ばし装置。
【請求項7】
前記しわ伸ばし手段が、前記両端部にそれぞれ設けられた、前記両端部にそれぞれ外向きに付勢する方向となるように構成されたウェブガイド手段と、前記ウェブガイド手段を支持し、かつ包囲するように前記ウェブ両端部の表裏いずれか1面に対向して開口した開口部を有する吸引口とを有し、前記吸引口に接続され、前記吸引口を通しての空気吸引により前記ウェブを前記ウェブガイド手段に接触するように吸引する手段とを備えたことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のウェブのしわ伸ばし装置。
【請求項8】
前記ウェブガイド手段が、前記両端部にそれぞれ外向きに付勢する方向に周回自在なローラまたはベルトを備えたものであることを特徴とする請求項7に記載のウェブのしわ伸ばし装置。
【請求項9】
搬送されてきた連続したウェブを巻き取る巻取コアと前記巻取コアに近接するタッチローラと、前記タッチローラより搬送方向の上流側であってウェブが接触する複数本のローラとを備えたウェブの巻取装置であって、請求項1から8のいずれかに記載のウェブのしわ伸ばし装置を、前記タッチローラと、前記ウェブに接触しかつ前記タッチローラより上流側で最もタッチローラに近い位置にあるローラとの間に備えたことを特徴とするウェブの巻取装置。
【請求項10】
前記位置に備えたウェブのしわ伸ばし装置の搬送方向上流側に、前記ウェブの両端部をトリミングする切断装置を備えたことを特徴とする請求項9に記載のウェブの巻取装置。
【請求項11】
搬送されてきた連続したウェブを巻き取る巻取コアと前記巻取コアに近接するタッチローラと、前記タッチローラより搬送方向の上流側であってウェブが接触する複数本のローラとを備え、かつ請求項1から8のいずれかに記載のウェブのしわ伸ばし装置を、前記タッチローラと、前記ウェブに接触しかつ前記タッチローラより上流側で最もタッチローラに近い位置にあるローラとの間に備えたウェブの巻取装置を用いたウェブの製造方法であって、前記ウェブとして厚みが0.5μm以上20μm以下であるものを用いることを特徴とするウェブの製造方法。
【請求項12】
搬送されてきた連続したウェブを巻き取る巻取コアと前記巻取コアに近接するタッチローラと、前記タッチローラより搬送方向の上流側であってウェブが接触する複数本のローラとを備え、かつ請求項1から8のいずれかに記載のウェブのしわ伸ばし装置を、前記タッチローラと、前記ウェブに接触しかつ前記タッチローラより上流側で最もタッチローラに近い位置にあるローラとの間に備え、さらに前記位置に備えたウェブのしわ伸ばし装置の搬送方向上流側に、前記ウェブの両端部をトリミングする切断装置を備えたウェブの巻取装置を用いたウェブの製造方法であって、前記ウェブの厚みが0.5μm以上20μm以下であることを特徴とするウェブの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10(A)】
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【図10(B)】
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【公開番号】特開2008−81274(P2008−81274A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−264099(P2006−264099)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】