説明

ウェブの切断方法とその切断装置

【課題】連続に搬送されるウェブの切断方法とその切断装置を提供する。
【解決手段】ウェブ12は、製膜ラインから巻き取り装置の間を一定速度で搬送される。スリット刃はウェブ12上にウェブの切断線60を形成する。ロータリカッタはウェブ12上に切断線45を形成する。この搬送方向切断線45bの終端から距離W1以内に、スリット刃による切断線60を形成する。このような切断線45、60はウェブ12から耳部の切り出しを可能にする。シフト部によりスリット刃及びロータリカッタはウェブ12の幅方向に移動自在である。このシフト部によって、所望の幅のウェブを切り出すことができる。これらの切断線45,60の形成方法は、ウェブの幅方向に刃をスライドする必要がない。よって、ウェブの搬送速度を落とさずにウェブを切り出すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続的に送られる比較的広幅の例えばフィルム等の可撓性帯状支持体(以下、ウェブと称する)を送り方向に切断するウェブの切断方法とその切断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
薄膜の透明プラスチックフィルムは近年、液晶ディスプレイの偏光板の保護膜、位相差板等の光学補償フィルム、プラスチック基板、写真用支持体、あるいは動画用セルや光学フィルタ、さらにはOHPフィルムなどの光学材料として需要が増大している。
【0003】
特に最近、液晶ディスプレイは、その品質が向上したこと、および軽量で携帯性に優れていることから、パーソナルコンピュータやワードプロセッサ、携帯用端末、テレビジョン、さらにはデジタルスチルカメラやムービーカメラなどに広く使用されているが、この液晶ディスプレイには画像表示のために偏光板が必須となっている。そして、液晶ディスプレイの品質の向上に合わせて、偏光板の品質向上が要求され、それと共に偏光板の保護膜である透明プラスチックフィルムもより高品質であることが要望されている。
【0004】
偏光板の保護膜などの光学用途フィルムについては、解像力やコントラストの表示品位から高透明性、低光学異方性、平面性、易表面処理性、高耐久性(寸度安定性、耐湿熱性、耐水性)、フィルム内および表面に異物がないこと、表面に傷がなく、かつ傷が付きにくいこと(耐傷性)、適度のフィルム剛性を有すること(取扱い性)、そして適度の透水性など種々の特性を備えていることが必要であるとされている。
【0005】
これらの特性を有するフィルムの原料は、セルロースエステル、ノルボルネン樹脂、アクリル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂などが挙げられるが、生産性や材料価格等の点からセルロースエステルが主に使用されている。特にセルローストリアセテートのフィルムは、極めて高い透明性を有しかつ、光学異方性が小さく、かつレターデーションが低いことから光学用途に特に有利に用いられている。
【0006】
これらのフィルムを製膜する方法としては、溶液製膜法、溶融製膜法および圧延法など各種の製膜技術が利用可能であるが、良好な平面性および低光学異方性を得るためには、溶液製膜法が特に適している。溶液製膜法は、原料フレークを溶剤に溶解し、これに必要に応じて可塑剤、紫外線吸収剤、劣化防止剤、滑り剤、剥離促進剤等の各種の添加剤を加えた高分子溶液(以下、ドープと称する)とし、このドープを水平式のエンドレスの金属ベルトまたは回転するドラムなどの支持体の上に、ドープ供給手段(以下、流延ダイと称する)により流延した後、支持体上である程度まで乾燥し、これにより剛性が付与された自己支持性フィルムを支持体から剥離し、次いで各種の搬送手段により乾燥部を通過させて溶剤を除去することからなる方法である。製膜されたフィルムは溶剤を乾燥させてから巻取りリールに巻き取られる。
【0007】
通常の加工、切断装置では、刃を裁断位置に固定してからウェブを送り込むことができる。しかし、流延装置では連続的にウェブが形成されるため、ウェブの幅変更の時には、ウェブ縁側からスリット刃で切りながら刃を耳切り位置まで移動させなければならない。また、偏光板用フィルムは軽量で薄膜のフィルムが求められており、このような薄膜のフィルムを、スリット刃にて裁断する時にシワが発生しやすい。このシワが発生すると、耳部が折れて切断にいたることも有り、この場合は流延停止となって、製膜ラインが停止してしまうという不具合がある。このため、製品の幅変更時に製膜速度を下げて、スリット刃で切りながらスリット刃を耳切り位置まで移動した後に、製膜速度を所定の速度まで戻すことも可能であるが、製膜速度の低下による製品ロスが非常に大きいという問題がある。このような問題に対して、特許文献1では、ウェブの幅方向に移動自在なスリット刃に上下2つのガイド面を設け、スリット刃をウェブ端面よりスライド移動させて、ウェブの端面を上下2つのガイド面により当接させながら切断することが提案されている。
【特許文献1】特開2003−291090号公報
【0008】
しかしながら、昨今の製膜ラインの高速化により、スリット刃をウェブの幅方向にスライドさせる切断方法において、切り出される耳屑の幅が細くなり、この耳屑がスリット刃に絡みつき、製膜ラインが停止する問題が発生するようになった。これを防ぐために搬送速度を一時的に落とすと、生産効率が下がってしまう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記課題を解決するためのものであり、ウェブの搬送速度の高速化にも対応可能であって、ウェブの搬送速度を落とさずに、連続的に異なる幅のウェブに切り出し可能なウェブの切断方法、及びその切断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のウェブ切断装置は、一定の方向に連続に搬送されるウェブに対して、スリット刃により前記ウェブの搬送方向で前記ウェブを切断するウェブの切断装置において、前記スリット刃を、前記ウェブを切断する切断位置と、前記ウェブから離れた退避位置との間で移動させる第1移動部と、前記退避位置の前記スリット刃を前記ウェブの幅方向に移動させて前記ウェブの切断位置を変更する第2移動部と、前記ウェブの搬送方向に交差する方向で前記ウェブの側端から切り込み線を入れる押し切り部と、前記切り込み線のウェブ幅方向中央部側の端部と接続するように、前記第2移動部を制御するとともに、前記スリット刃により切断線を前記端部に連続するように第1移動部を制御する制御部とを備えることを特徴とする。また、前記押し切り部を前記ウェブの幅方向に移動させて前記切り込み線のウェブ幅方向中央部側の端部を、新たな切断位置にあわせる第3移動部を備えることが好ましい。
【0011】
前記押し切り部は、ダイカットロールとアンビルロールからなるロータリカッタであり、ダイカットロール及びアンビルロールの少なくとも一方の周面には、前記ウェブの通過を許容する切り欠き部を備えることが好ましく、前記切り欠き部を前記ウェブの搬送路に位置させた状態で前記第3移動部により押し切り部を移動させることが好ましい。
【0012】
前記押し切り部による切り込み線は、ウェブ側端から中央方向に向かう幅方向切断線と、この幅方向切断線のウェブ中央部側端部からウェブ搬送方向に延びる搬送方向切断線とから構成されることが好ましい。また、前記幅方向切断線が、ウェブの側縁に対し40°以上80°以下の交差角度で交差することが好ましい。
【0013】
前記切り込み線に、前記搬送方向切断部の終端位置からウェブの側端に向かう幅方向補助切断線を備えることが好ましい。また、前記スリット刃による切断線は、前記幅方向切断線と交差し、前記搬送方向切断線との距離が20mm以下であることが好ましい。
【0014】
また、本発明のウェブの切断方法は、一定の方向に連続的に搬送されるウェブに対して、スリット刃により前記ウェブの搬送方向で前記ウェブを切断するウェブの切断方法において、前記スリット刃を前記ウェブから離してウェブ幅方向に移動し、新たな切断位置にセットする工程と、押し切り部により、前記ウェブの側端から前記ウェブの中央方向に向かう切り込み線を前記ウェブに形成する工程と、前記切り込み線のウェブ中央側の端部に連続するように前記スリット刃により切断を行う工程を有することを特徴とする。なお、前記押し切り部による前記切り込み線は、前記ウェブの側端から中央方向に向かう幅方向切断線と、この幅方向切断線のウェブ中央部側端部から前記ウェブの搬送方向に伸びるウェブ搬送方向切断線から構成されていることが好ましい。
【0015】
前記スリット刃による切断線は、前記幅方向切断線と交差し、前記搬送方向切断線との距離が20mm以下であることが好ましい。また、前記押し切り部による前記切り込み線は、前記搬送方向切断部の終端位置から前記ウェブの側端に向かう幅方向補助切断線を備えることが好ましい。更に、前記ウェブ幅方向切断線は、前記ウェブの側端に対し40°以上80°以下の交差角度で交差することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、一定の方向に連続に搬送されるウェブに対して、スリット刃により前記ウェブの搬送方向で前記ウェブを切断するウェブの切断装置において、前記スリット刃を、前記ウェブを切断する切断位置と、前記ウェブから離れた退避位置との間で移動させる第1移動部と、前記退避位置の前記スリット刃を前記ウェブの幅方向に移動させて前記ウェブの切断位置を変更する第2移動部と、前記ウェブの搬送方向に交差する方向で前記ウェブの側端から切り込み線を入れる押し切り部と、前記切り込み線のウェブ幅方向中央部側の端部と接続するように、前記第2移動部を制御するとともに、前記スリット刃により切断線を前記端部に連続するように第1移動部を制御する制御部とを備えることを特徴とする。このような押し切り部、移動自在なスリット刃を用いることにより、ウェブの搬送ラインの搬送速度を落とさずに、流延装置から搬送されるウェブから所望の幅の製品部を連続に切り出すことが可能である。また、第3移動部を備えることにより、前記押し切り部が前記ウェブの幅方向に移動自在であるため、前記切り込み線のウェブ幅方向中央部側の端部を新たな切断位置にあわせることにより、所望の幅の製品部を連続に切り出すことが可能である。
【0017】
前記押し切り部は、ダイカットロールとアンビルロールからなるロータリカッタであり、ダイカットロール及びアンビルロールの少なくとも一方の周面には、前記ウェブの通過を許容する切り欠き部を備えるため、ウェブの耳切りを行わないときにウェブから退避させるための移動装置が不要となり、耳切り装置を安価に製造することが可能になる。
【0018】
一定の方向に連続的に搬送されるウェブに対し、耳切りの幅の変更を行うためには、少なくとも、所定の位置から搬送方向に水平な搬送方向切断線を形成する必要がある。しかし、この搬送方向切断線だけでは、ウェブから両耳部と製品部を切り分けることが不可能である。従って、ウェブから両耳部と製品部を切り分けるには、ウェブ側端から中央方向に向かう幅方向切断線が必要になる。このような幅方向切断線は、前述したロータリカッタの押し切り刃によって、ウェブの側縁に対し40°以上80°以下の交差角度で交差するように形成される。このため、ウェブの幅変更時に、ウェブの耳部が刃に絡みつくことはない。
【0019】
この切り込み線と、スリット刃により切り込み線に連続するように形成される切断線を用いて、ウェブの耳切りをすることができる。ここで、スリット刃による切断線を前記搬送方向切断線との距離が20mm以下になるように設けることにより、ウェブから製品部を確実に切り出すことができる。また、切り込み線の搬送方向切断部の終端位置からウェブの側端に向かう幅方向補助切断線を備えることにより、第3移動部による位置の誤差を許容することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1に示すように、本発明のウェブ切断装置10は、製膜ライン11から送り出されるウェブ12の両耳部12a、12bと製品部12cに切り分けるものであり、1対のスリット刃13、14、及び押し切り部としての1対のロータリカッタ16,17を備える。スリット刃13、14は、ウェブ12の両側端部に配置されており、これらスリット刃13,14の搬送方向上流側には、ロータリカッタ16,17がウェブ12の両側端部に配置されている。スリット刃13,14及びロータリカッタ16,17は、ウェブ12上に切断線を形成可能な刃を有している。コントローラ19の制御の下、シフト部18は、スリット刃13、14はウェブ12の幅方向に移動自在となっている。同様に、コントローラ19の制御の下、シフト部20は、ロータリカッタ16,17はウェブ12の幅方向に移動自在となっている。このようなコントローラ19の制御下にある、スリット刃13,14及びロータリカッタ16,17を用いて、製膜ライン11から搬送されるウェブ12から、所望の幅を持つ製品部12cを切り出すことができる。こうして得られる製品部12cはウェブ巻き取り装置21によりロール状に巻き取られる。
【0021】
また、ウェブ巻き取り装置21とスリット刃13、14の間には、製品部12cの両端に対して微細な凹凸からなるローレット加工を施すナーリング装置が設けられており、このローレット加工によりウェブ巻き取り装置21による巻きずれを防止している。また、切り離された両耳部12a、12bは、スリット刃13及びスリット刃14の下流に配置される風送装置22に回収される。回収された両耳部12a、12bは、風送装置22の吸引ダクトを通じて、ロータリカッタにより短尺化される。短尺化された耳屑はカットブロワに回収され、更に細かい破砕耳屑となる。この破砕耳屑が製膜材料として再利用が図られる。
【0022】
図2に示すように、スリット刃13はそれぞれ被動刃30及び駆動刃31から構成される。被動刃30及び駆動刃31の周縁には、刃30a、31aが設けられている。また、コントローラ19の制御下にあるシフト部32により、被動刃30及び駆動刃31は、ウェブ12を切断する切断位置と、ウェブ12から離れた退避位置を移動自在になっている。更に、コントローラ19の制御下にあるモータ33は、軸31bを駆動し、駆動刃31をウェブ12の搬送方向に正転させる。被動刃30及び駆動刃31が切断位置にシフトされ、駆動刃31が回転すると、被動刃30は駆動刃31の回転に従転する。このように被動刃30及び駆動刃31がウェブ12を挟持し回転することにより、ウェブ12上に切断線13aを形成することができる。なお、スリット刃14も図2に示すスリット刃13と同様の構成を有しているため、コントローラ19の制御下において切断線14a(図1参照)をウェブ12上に形成することができる。
【0023】
図3に示すロータリカッタ16は、それぞれダイカットロール40とアンビルロール41から構成される。コントローラ19の制御の下、モータ42は、軸40a、41aを駆動し、ダイカットロール40及びアンビルロール41をウェブ12の搬送方向に正転させる。なお、ロータリカッタ17も、ロータリカッタ16と同様の構成を有する。これらロータリカッタ16及び17は、ウェブ12の搬送方向に対し略鏡像の関係になるように形成され配置されることが好ましい。
【0024】
ダイカットロール40及びアンビルロール41は、押し切り領域40b、41bとウェブ12の通過を許容する切り欠き領域40c、41cを有している。押し切り領域40b、41bは平滑に仕上げられている。また、ダイカットロール40の押し切り領域40bには、押し切り刃43が設けられる。この押し切り刃43及び、アンビルロール41の押し切り領域41bがウェブ12を挟持すると、ロータリカッタ16はウェブ12上に切り込み線45を形成可能な切断状態となる。一方、切り欠き領域40c、41cがウェブ12を介して対向すると、ロータリカッタ16は、押し切り刃43がウェブ12から退避する退避状態になる。コントローラ19は、モータ42を用いて、ロータリカッタ16の切断状態及び退避状態の切り替えを行う。
【0025】
図4のように、ダイカットロール40は、中心が軸40aと同心円であり半径R1の底面を有する円柱の側面の一部を切り欠き角度θ1で削り取られた形状を有する。ダイカットロール40が軸40aを中心に回転する時の回転モーメントを最小にするために、ダイカットロール40の内部に空洞50を設けている。空洞50は、軸40aから、切り欠き領域40cから遠ざかる方向に距離A1だけ偏心し、半径R2の円を底面とする円柱に形成される。
【0026】
同様に、アンビルロール41は、中心が軸41aと同心円であり半径R3の底面を有する円柱の側面の一部を切り欠き角度θ2で削り取られた形状を有する。ダイカットロール40と同様に、アンビルロール41にも空洞51が設けられる。空洞51は、軸41aから、切り欠き領域41cから遠ざかる方向に距離A2だけ偏心し、半径R4の円を底面とする円柱に形成される。
【0027】
図5にダイカットロール40の押し切り領域40bの展開図を示す。押し切り刃43は、第1刃43a及び第2刃43bから構成される。第1刃43aは、端面40dからダイカットロール40の回転方向と逆方向に向かって端面40dと角度θ3で交差するように形成されている。また、第2刃43bは、第1刃43aの終端からダイカットロール40の回転方向と逆方向に形成される。これらの第1刃43a及び第2刃43bは湾曲に接続するように形成される。一方、アンビルロール41の押し切り領域41b上は、このような押し切り刃は設けられず、その表面は平滑に仕上げられている。このようなダイカットロール40及びアンビルロール41が回転することにより、押し切り刃43と押し切り領域41bが当接し、これらの押し切り刃43と押し切り領域41bが挟持するウェブ12上に、切り込み線45(図6参照)が形成される。この切り込み線45は、幅方向切断線45a及び搬送方向切断線45bから構成される。
【0028】
また、ダイカットロール40及びアンビルロール41の押し切り領域40b、41bには、無数の通気孔が設けられている。ロータリカッタ16の切断状態において、シフト部20に内蔵されるブロワが軸40a、41aの内部に設けられるエアダクトを通じ、通気孔からダイカットロール40及びアンビルロール41の外部へ空気を送り出す。
【0029】
本実施形態の作用について説明する。図1において、製膜ライン11が停止中のときには、スリット刃13,14は退避位置になっている。また、ダイカットロール40とアンビルロール41は、退避状態になっている。製膜ライン11が稼動し、製膜ライン11にて形成されるウェブ12がウェブ巻き取り装置21へ向かって搬送される。ここでウェブ12から所定の幅の製品部12cを切り出すために、シフト部18を用いて、スリット刃13,14を所定の位置へ移動させる。次に、モータ33によりスリット刃13、14の駆動刃31が回転する(図2参照)。更に、シフト部32がこれらスリット刃13,14を切断位置に移動させて、切断線13a,14aをウェブ12上に形成する。このようにして、所望の幅を有する製品部12cを切り出すことができる。また切り取られた両耳部12a,12bは風送装置22にて回収され、再利用が図られる。
【0030】
このウェブを切り出す製品部12cの幅を変更する際は次のように行う。まず、新たな幅を有する製品部を切り出すために、シフト部20がロータリカッタ16を幅方向に移動させる。第2に、モータ42が、ロータリカッタ16のダイカットロール40及びアンビルロール41を1回転させて、図6に示すようなウェブ12上に切り込み線45を形成する。切り込み線45形成後、ロータリカッタ16はモータ42によって、退避状態に固定される。第3に、スリット刃13が形成する切断線13aが切り込み線45と交わると、シフト部32がスリット刃13を退避位置に移動し、更に、新たなウェブ幅を切り出すために、シフト部18がスリット刃13を幅方向へ移動する。第4に、シフト部32がスリット刃13を切断位置に移動させて、切り込み線45の幅方向切断線45aに交差するような切断線60をウェブ12上に設ける。
【0031】
コントローラ19は、スリット刃13,14が形成する切断線13、60と切り込み線45が交わるように、シフト部18及び32を制御する。このようなシフト部18及び32の制御条件は、予めコントローラ19に内蔵され、コントローラ19は、この制御条件に基づいてシフト部18及び32を制御する。この制御条件は、切り込み線45の形状並びに寸法、ウェブ12の搬送速度及び切り出す製品部12cの幅などから決定され、実験などから得ることが可能である。
【0032】
このようにして、切り込み線45及び切断線60によって、ウェブ12から切り出す耳部12bの幅変更を、ウェブ12の搬送中に行うことができる。同様にして、ロータリカッタ17とスリット刃14により形成される切断線により、ウェブ12から耳部12aを切り出すことができる。こうして、耳部12a,12bはウェブ12から切り出され、新しい幅を有する製品部12cは、ウェブ巻き取り装置21に巻き取られる。
【0033】
この切り込み線45は、ウェブ端部12dと交差角度θ4で交差するように形成される。このようなロータリカッタ16,17による押し切り方法では、交差角度θ4を40°〜80°にすることが好ましい。この角度θ4は、ウェブ12の搬送方向に対するロータリカッタ16、17の設置方向と、ロータリカッタ16、17が有する押し切り刃の形成方向である角度θ3から決定され、これらを適宜選択することにより所望の角度θ4を得ることができる。また、切り込み線45を形成する幅方向切断線45a及び搬送方向切断線45bは湾曲に接続するように形成されるため、これら切断線45a、45bの交点近傍からウェブ12が破断することを防ぐ。なお、ロータリカッタ16の切断状態において、ダイカットロール40及びアンビルロール41の表面に形成される通気孔からの送風によって、ウェブ12がダイカットロール40及びアンビルロール41の表面に貼り付くことを防いでいる。
【0034】
このようなウェブの切断方法において、切断線60と切り込み線45との間隔W1が略20mm以下になるように切断することが好ましい。また、この切り出し方法に汎用性を持たせるために、幅方向切断線45aの長さをL1だけ確保する必要がある。このようにすることで、様々な幅の製品部12cを切り出すことが可能となる。そのため、図6に示すように、幅方向切断線45aの長さL1は、略150mmであることが好ましい。そのため、ダイカットロール40及び、アンビルロール41の半径R1、R3が略170mmであることが好ましく、ダイカットロール40及びアンビルロール41上の切り欠き部40c、41cを形成するために必要な切り欠きの角度θ1、θ2が略100°であることが好ましい。また、この空洞50、51を形成する円柱は、軸40a、41bからの偏心距離A1、A2が略15mmであることが好ましく、この円柱の底面の半径R2、R4が略100mmであることが好ましい。
【0035】
このように、スリット刃13,14と、切り込み刃43を有したロータリカッタ16、17を用いたウェブ12の切断方法は、ウェブ12の搬送中に、スリット刃13,14をウェブ12の幅方向にスライドする必要がないため、スリット刃13,14に耳部12a、12bが絡みつくことなく、ウェブ12の搬送速度を維持しながら、さまざまな幅のウェブ12を連続的に切り出すことが可能になる。
【0036】
上記実施形態では、ロータリカッタ16、17がスリット刃13、14の上流に設置されているが、これに限らず、スリット刃13、14の下流にあってもよい。
【0037】
上記実施形態では、ダイカットロール40及びアンビルロール41を、円柱の側面を平面で切り取った形状に形成すると記載したが、これに限らず、軸を回転することによりウェブ12の通過を許容可能な形状であれば、同等の効果を得ることができる。また、この切り欠き部はダイカットロール或いはアンビルロールのいずれか片方だけに設けても構わない。
【0038】
上記実施形態では、切断線60を搬送方向切断線45bの延長線上に形成すると記載したが、これに限らず、図6のような搬送方向切断線45bの終端から幅方向補助断線45c或いは45dを追加形成してもよい。このような幅方向補助断線45c或いは45dを設けることにより、スリット刃13、14の幅方向の位置の調整が容易になり、ウェブ12から所望の切り出し幅を有する耳部12a、12bを確実に切り出すことが可能になる。またこのような幅方向補助断線45c或いは45dは、図5に示すような第3刃43c或いは第4刃43dを押し切り刃43に追加形成することにより実施可能となる。
【0039】
上記実施形態では、ウェブ12の切り出し幅を変更する際、シフト部32が、スリット刃13,14をウェブ12から一旦退避位置に移動し、新たな幅のウェブ12を切り出す位置で、スリット刃13,14を再度切断位置に移動すると記載したが、ウェブ12の切り出し幅の微調整などを行う場合は、切断位置のスリット刃13,14を回転させた状態で、ウェブ12の幅方向に移動することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】ウェブ切断装置の概要を示す平面図である。
【図2】スリット刃の概要を示す斜視図である。
【図3】ロータリカッタの概要を示す斜視図である。
【図4】ダイカットロール及びアンビルロールの側面図である。
【図5】ダイカットロールの押し切り領域の展開図である。
【図6】スリット刃及びロータリカッタによって、ウェブ上に形成される切断線の概要を示す平面図である。
【符号の説明】
【0041】
10 ウェブ切断装置
11 製膜ライン
12 ウェブ
13、14 スリット刃
16、17 ロータリカッタ
18、20、32 シフト部
19 コントローラ
21 ウェブ巻き取り装置
40 ダイカットロール
41 アンビルロール
40b、41b 押し切り領域
40c、41c 切り欠き領域
43 押し切り刃
45 切り込み線
45a 幅方向切断線
45b 搬送方向切断線
45c、45d 幅方向補助切断線
50、51 空洞
60 切断線
θ4 交差角度


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定の方向に連続に搬送されるウェブに対して、スリット刃により前記ウェブの搬送方向で前記ウェブを切断するウェブの切断装置において、
前記スリット刃を、前記ウェブを切断する切断位置と、前記ウェブから離れた退避位置との間で移動させる第1移動部と、
前記退避位置の前記スリット刃を前記ウェブの幅方向に移動させて前記ウェブの切断位置を変更する第2移動部と、
前記ウェブの前記搬送方向に交差する方向で前記ウェブの側端から切り込み線を入れる押し切り部と、
前記切り込み線のウェブ幅方向中央部側の端部と接続するように、前記第2移動部を制御するとともに、前記スリット刃により切断線を前記端部に連続するように第1移動部を制御する制御部とを備えることを特徴とするウェブの切断装置。
【請求項2】
前記押し切り部を前記ウェブの幅方向に移動させて前記切り込み線のウェブ幅方向中央部側の端部を、新たな切断位置にあわせる第3移動部を備えることを特徴とする請求項1記載のウェブの切断装置。
【請求項3】
前記押し切り部は、ダイカットロールとアンビルロールからなるロータリカッタであり、ダイカットロール及びアンビルロールの少なくとも一方の周面には、前記ウェブの通過を許容する切り欠き部を備えることを特徴とする請求項1または2記載のウェブの切断装置。
【請求項4】
前記切り欠き部を前記ウェブの搬送路に位置させた状態で前記第3移動部により前記押し切り部を移動させることを特徴とする請求項2または3記載のウェブの切断装置。
【請求項5】
前記押し切り部による前記切り込み線が、
前記ウェブの側端から中央方向に向かう幅方向切断線と、
この幅方向切断線の前記ウェブの中央部側端部から前記ウェブの前記搬送方向に延びる搬送方向切断線とから構成されることを特徴とする請求項1ないし4いずれか1項記載のウェブの切断装置。
【請求項6】
前記スリット刃による前記切断線は、前記幅方向切断線と交差し、前記搬送方向切断線との距離が20mm以下であることを特徴とする請求項5記載のウェブの切断装置。
【請求項7】
前記押し切り部による前記切り込み線は、前記搬送方向切断部の終端位置から前記ウェブの側端に向かう幅方向補助切断線を備えることを特徴とする請求項5または6記載のウェブの切断装置。
【請求項8】
前記幅方向切断線が、ウェブの側縁に対し40°以上80°以下の交差角度で交差することを特徴とする請求項5ないし7いずれか1項記載のウェブの切断装置。
【請求項9】
一定の方向に連続的に搬送されるウェブに対して、スリット刃により前記ウェブの搬送方向で前記ウェブを切断するウェブの切断方法において、
前記スリット刃を前記ウェブから離してウェブ幅方向に移動し、新たな切断位置にセットする工程と、
押し切り部により、前記ウェブの側端から前記ウェブの中央方向に向かう切り込み線を前記ウェブに形成する工程と、
前記切り込み線の前記ウェブの中央側の端部に連続するように前記スリット刃により切断を行う工程を有することを特徴とするウェブの切断方法。
【請求項10】
前記押し切り部による前記切り込み線は、前記ウェブの側端から中央方向に向かう幅方向切断線と、この幅方向切断線のウェブ中央部側端部から前記ウェブの搬送方向に伸びるウェブ搬送方向切断線から構成されていることを特徴とする請求項9記載のウェブの切断方法。
【請求項11】
前記スリット刃による切断線は、前記幅方向切断線と交差し、前記搬送方向切断線との距離が20mm以下であることを特徴とする請求項10記載のウェブの切断方法。
【請求項12】
前記押し切り部による前記切り込み線は、前記搬送方向切断部の終端位置から前記ウェブの側端に向かう幅方向補助切断線を備えることを特徴とする請求項11記載のウェブの切断方法。
【請求項13】
前記ウェブ幅方向切断線は、前記ウェブの側端に対し40°以上80°以下の交差角度で交差することを特徴とする請求項10ないし12いずれか1項記載のウェブの切断方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−69324(P2007−69324A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−260532(P2005−260532)
【出願日】平成17年9月8日(2005.9.8)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】