説明

ウェルドラインの検査装置、検査方法ならびに樹脂成型品の製造方法

【課題】樹脂成型品に生じるウェルドラインを明瞭に検出することのできるウェルドラインの検査装置および検査方法を提供する。また、樹脂成型品を効率的かつ高品質に製造する製造方法を提供する。
【解決手段】樹脂内部まで透過する光を出射可能な光源と、光源から被検査物に照射される光を偏光させる偏光子と、被検査物からの反射光のうち所定の偏光状態の光のみを通過させる検光子と、この検光子を介した被検査物の反射光を受けて撮像を行うとともに焦点位置を被検査物の内部まで移動可能にされた撮像部と、前記撮像部により得られた撮像データから被検査物にあるウェルドラインの分析を行う分析部とを備えたことを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、樹脂成型品に生じたウェルドラインの検査方法および検査装置ならびに樹脂成型品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
中空部を有する樹脂成型品を射出成型等により製作する場合、溶融樹脂が中空部の部分を回り込んで再び合流するところにウェルドライン(線状痕)が発生する。また、溶融樹脂を注入するゲートを2個以上設けた場合にも、溶融樹脂の先頭部が合流するところにウェルドラインが発生する。ウェルドラインは成型条件によって程度が軽減したり増大したりする場合があり、程度の大きなウェルドラインが発生した場合には樹脂成型品の強度の劣化が生じる。
【0003】
従来、ウェルドラインの良否等を検査する場合には、肉眼による検査、あるいは通常の撮像を行ってその撮像データを分析する程度であった。
【0004】
また、本願発明に関連する技術として、次のような技術の開示があった。例えば、特許文献1には、偏光顕微鏡を用いて半導体ウェハ等の表面の欠陥を検査する技術が開示されている。また、特許文献2には、偏光を利用して表面反射光と内部散乱反射光とを分離して皮膚内部のメラミン成分やヘモグロビン成分の計測を行う技術について開示されている。
【特許文献1】特開2003−262595号公報
【特許文献2】特開2002−200050号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の樹脂成型品のウェルドラインの検査方法では、樹脂内部に発生したウェルドラインを明瞭に検出することが困難であり、そのためウェルドラインの良否判定を正確に行うことも困難であった。
【0006】
また、正確な良否判定が困難であることから、製造ライン上で樹脂成型品に程度の大きなウェルドラインが連続して発生するような場合でも、その不良をすぐに発見することができないため、不良発生の情報を成型工程へフィードバックするまでに時間がかかり、樹脂成型品の歩留りを低下させてしまうなどの課題があった。
【0007】
この発明の目的は、樹脂成型品に生じるウェルドラインを明瞭に検出することのできるウェルドラインの検査装置および検査方法を提供することにある。
【0008】
この発明の他の目的は、ウェルドラインの明瞭な検出によって樹脂成型品を効率的かつ高品質に製造可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、
樹脂成型品である被検査物のウェルドラインを検査するウェルドラインの検査装置であって、
樹脂内部まで透過する光を出射可能な光源と、
光源から被検査物に照射される光を偏光させる偏光子と、
被検査物からの反射光のうち所定の偏光状態の光のみを通過させる検光子と、
焦点位置を被検査物の内部まで移動させながら前記検光子を介した被検査物を撮像する撮像部と、
前記撮像部により得られた撮像データから被検査物にあるウェルドラインの分析を行う分析部と、
を備えていることを特徴としている。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のウェルドラインの検査装置において、
前記光源は、複数の波長の光を選択的に出射可能な構成であり、
さらに、
ウェルドラインがより明瞭に表された撮像データが得られるように、前記光源から出射される光の波長を自動的に切り換える光源制御手段を備えていることを特徴としている。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1記載のウェルドラインの検査装置において、
ウェルドラインがより明瞭に表された撮像データが得られるように、前記撮像部の焦点の位置を自動的に移動させる焦点位置制御手段を備えていることを特徴としている。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項1記載のウェルドラインの検査装置において、
ウェルドラインの画像データを蓄積したデータベースを備え、
前記分析部は、前記撮像部により得られた撮像データと前記データベースの画像データとを比較して被検査物のウェルドラインの良否判定を行うように構成されていることを特徴としている。
【0013】
請求項5記載の発明は、
光源から樹脂内部まで透過する光を出射させ、
当該出射された光を、偏光子により偏光して被検査物に照射させ、
当該偏光された光が照射された被検査物からの反射光のうち所定の偏光状態の光のみを検光子により通過させ、
撮像部により焦点位置を前記被検査物の内部まで移動させながら前記検光子を介した被検査物を撮像させ、
分析部により前記撮像部により得られた撮像データから前記被検査物にあるウェルドラインの分析を行うことを特徴としている。
【0014】
請求項6記載の発明は、請求項5記載のウェルドラインの検査方法において、
被検査物の内部にあるウェルドラインの撮像データを得る際に、ウェルドラインがより明瞭に表された撮像データが得られるように、前記光源から出射される光の波長の切り換え、および/または、前記撮像部の焦点位置の移動を行うことを特徴としている。
【0015】
請求項7記載の発明は、受信成型品の製造方法において、
樹脂成型を行う成型工程と、
前記成型工程により得られた樹脂成型品に対して、請求項5又は6に記載のウェルドラインの検査方法により前記樹脂成型品にあるウェルドラインの良否判定を行う検査工程と、を有していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明に従うと、ウェルドラインの明瞭な検出と正確な良否判定とを行うことができる。すなわち、ウェルドラインには樹脂密度の不均一さや分子配列の不均一さが生じるため、光を反射する際に光の偏光面を不均一に変化させる。従って、偏光子を介した光の入射と検光子を介した反射光の所定の偏光成分の撮像とにより、肉眼や通常の撮像では得られない、ウェルドラインの明瞭な検出が可能となる。さらに、樹脂成型品の内部に光を透過させ、内部の位置に焦点を合わせて撮像を行うことで、樹脂成型品の内部に生じたウェルドラインも明瞭に検出でき、その良否検査等を正確に行うことができる。
【0017】
また、このようなウェルドラインの検査方法を成型工程後の検査工程に適用することで、ウェルドラインの不良が発生した場合に、この情報を速やかに成型工程にフィードバックさせて、不良を発生させている成型工程を停止させたり成型条件の改善を図ったりすることができ、高品質の樹脂成型品を効率的に製造することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施の形態のウェルドライン検査装置の全体構成を示すブロック図である。
【0020】
この実施の形態のウェルドライン検査装置1は、樹脂成型品の製造工程において、射出成型後に冷却されてベルト搬送されてきた樹脂成型品に対して、この樹脂成型品に生じているウェルドラインの良否検査を行うための装置である。このウェルドライン検査装置1は、樹脂成型品である被検査物30に光を照射する光源10と、出射する光源の波長を切り換える光源制御部11と、光源10から被検査物30に照射される光を偏光させる偏光板12と、被検査物30からの反射光を撮像する撮像部13と、撮像レンズ13aを動かして撮像部13の焦点位置を変化させるフォーカス位置制御部14と、被検査物30からの反射光のうち特定の偏光状態の光のみを撮像部13へ通過させる検光板15と、撮像データから被検査物の内部反射光の画像データを抽出可能な内部反射光検出部16と、装置の動作制御やウェルドラインの分析処理等を行うシステム制御部20と、制御データや制御プログラムを格納するとともにシステム制御部20に作業用のメモリ空間を提供する記憶装置21と、ウェルドラインの限度見本となる画像データなどを蓄積したデータベース22等を備えている。
【0021】
光源10は、例えば、複数種類の電灯やレーザを備え、これらを切り換えて動作させることで、複数の波長の光を選択的に出射可能な構成である。光の波長は、被試験対象となる樹脂の種類に合わせて、樹脂内部まで透過しやすい波長を複数用意しておくと良い。また、電灯やレーザの位置をスライド可能な構成としたりミラーや光ファイバーなどの光学系を用いることで、作動させる電灯やレーザを切り換えた場合でも、同様の経路で光が出射されるように構成されている。
【0022】
撮像部13は、例えばCCD(Charge Coupled Device)カメラなどが適用されている。撮像レンズ13aは、被写界深度の小さなものであり、樹脂内部の所定の深さ位置にフォーカスを合わせて、その深さ位置からの散乱反射光をより多く集束させて撮像を行うことが可能にされている。
【0023】
検光板15は、その偏光面が次のような向きになるように設定されている。すなわち、偏光板12により偏光された光がそのまま被検査物30の表面で反射されたときに、この反射光を遮るような向きである。これにより、被検査物30の表面反射光を遮って、被検査物30の内部散乱反射光をより多く撮像部13に入射させるようになっている。
【0024】
なお、この検光板15は、例えば内部反射光検出部16の制御等により偏光面の角度を変更可能に構成しても良い。内部反射光検出部16は、検光板15を回転させながら撮像部13の撮像データを取り込み且つ比較するとともに、例えば、撮像画像のコントラストが一番大きくなるときを内部反射光をよく取り込んだ状態と識別し、検光板15をこの回転角度に設定するように構成しても良い。
【0025】
システム制御部20には、制御プログラムを実行するCPU(中央演算処理装置)やRAM(Random Access Memory)、各部との間で信号の入出力を行うインターフェースなどを有するコンピュータである。
【0026】
この実施形態のウェルドライン検査装置は上記のように構成され、樹脂成型品の製造工程において、次のようにして射出成型後の樹脂成型品に対してウェルドラインの良否検査を行うようになっている。
【0027】
図2には、図1のウェルドライン検査装置が組み込まれた製造ラインシステムにおけるメイン制御処理のフローチャートを示す。
【0028】
製造ラインシステムでは、樹脂成型品の製造処理を開始すると、先ず、ウェルドライン検査装置1、射出成型装置、ベルト搬送装置、並びに、その他の装置に対して初期化コマンドを送信し、各装置の初期化を行う(ステップS1)。次いで、製造ラインを停止させるまで、ステップS2〜S6のループ処理を繰り返し、射出成型されてくる複数の樹脂成型品に対して順次次のような処理を実行する。
【0029】
すなわち、先ず、射出成型後の1個の樹脂成型品(ワークとも呼ぶ)をベルト搬送により搬入する(ステップS2)。これにより、ウェルドライン検査装置1の撮像位置に樹脂成型品が所定の向きにセットされた状態で停止する(ステップS2)。次いで、製造ラインシステムからウェルドライン検査装置1のシステム制御部に検査処理のコマンドが出力されてウェルドライン検査装置1に検査処理を実行させる(ステップS3)。検査処理については後で詳述する。そして、検査処理が終了したら、製造ラインシステムによりウェルドライン検査装置1の記憶装置21に格納された判定フラグが読み出され、この判定フラグに従って検査結果の表示出力が行われる(ステップS4)。オペレータは、この製造ラインシステムの表示出力を見て、樹脂成型品のウェルドラインの良/不良を確認することができる。また、不良の表示が続いた場合などには、製造ラインを停止させて射出成型処理に異常がないか確認したり、成型条件を変更するなどの対処をとることができる。続いて、検査後のワークをベルト搬送により搬出して次の工程に移行させる(ステップS5)。
【0030】
さらに、製造ラインシステムは、良品/不良品のカウント処理、検査で不良判定がなされたワークをベルト搬送によりNG経路に分岐させる処理、別工程における制御処理など、製造ライン全体ににわたるその他の処理を行って(ステップS6)、再び、ステップS2に戻る。このようなステップS2〜S6のループ処理が、個々のワークごとに繰り返し実行されることで、製造ラインにおいて複数の樹脂成型品が製造されていく。
【0031】
図3には、ウェルドライン検査装置のシステム制御部により実行される検査処理のフローチャートを示す。図4は、そのステップS12において実行されるウェルド画像抽出処理の詳細を示すフローチャート、図5は、図3のステップS13において実行される分析処理の詳細を示すフローチャートである。
【0032】
ウェルドライン検査装置1は、製造ラインシステムから検査処理のコマンドを受けると図3の検査処理を実行する。先ず、各種の変数等を初期化し(ステップS11)、次いで、撮像位置にセットされた樹脂成型品に対して撮像処理等を行ってウェルドの画像を抽出し(ステップS12)、続いて、このウェルドの画像を分析して良否判定等を行う(ステップS13)。
【0033】
ステップS12のウェルド画像抽出処理に移行すると、ウェルドライン検査装置1のシステム制御部20は、図4に示すような一連の処理を実行する。すなわち、先ず、光源10の出力と撮像部13のフォーカス位置とを初期状態にする(ステップS21)。具体的には、光源10のうち最初に出力動作させる光源部を点灯させ、且つ、撮像部13の撮像レンズ13aを初期位置に移動させる。フォーカスの初期位置は、例えば、中程度以上のウェルドラインが発生すると予測される深さ範囲の例えば上限位置(あるいは下限位置)に設定される。
【0034】
次いで、撮像部13を駆動して撮像データを取得する(ステップS22)。射出成型処理においてはウェルドラインの発生箇所は予め絞られているため、撮像部13の撮像フレームをこのウェルドラインの発生箇所に合わせておくことで、この撮像処理によりウェルドラインの発生箇所を含んだ所定範囲の撮像データが得られる。
【0035】
また、このとき、偏光板12と検光板15の作用によって、被検査物30の表面反射光が遮られ撮像部13には内部散乱反射光が入射する。また、撮像部13のフォーカスは被検査物30の所定の深さ位置に合わせられていることから、この深さ位置からの反射光をより集束させた撮像データが得られる。
【0036】
図6には、樹脂成型品のウェルドラインにおける反射光の偏光の変化を示す説明図を、図7には、樹脂成型品の組成と光源波長の組み合わせに起因する反射光量の違いを説明する図を示す。図7(a)は樹脂成型品が第1組成である場合のもの、(b)は樹脂成型品が第2組成である場合のものである。
【0037】
ステップS22の撮像処理において、図6に示すように、撮像部13のフォーカス位置にウェルドラインWLがあった場合、ウェルドラインWLの近傍では樹脂密度や分子配列が不均一となるため、この部分の反射光は偏光状態が一定にならず大きくばらつく。一方、ウェルドラインWLから外れた部分では樹脂密度や分子配列が均一になっているため、内部散乱により反射される光の偏光状態は比較的ばらつきが少ない。
【0038】
そのため、上記ステップS22の反射光撮像処理によって、ウェルドラインWLの近傍が暗く周辺範囲がぼんやり明るくなった撮像データを得ることができる。ここで、撮像部13のフォーカスは所定の深さ位置に合わせられているので、被検査物30の所定の深さにおけるウェルドラインWLの像が表された撮像データが得られる。
【0039】
さらに、このとき撮像部13は露光量の調整等によりぼんやり明るい周辺部分の明るさが一定になるように明度調整されて撮像データを出力する。この露光量の調整は、樹脂の組成に適した波長の光を光源10から出射して一番明瞭なウェルドラインWLの撮像データが得られたときに、それを検知しやすくするためのものである。
【0040】
すなわち、図7(a),(b)に示されるように、2種類の波長の光(光源Aの光と光源Bの光)を同一強度で樹脂成型品30A,30Bに照射した場合、樹脂成型品30A,30Bの組成の違いによって各波長の光の吸収量や透過量が異なってくる。そして、光の吸収量が多かったり透過量が少ない波長の光を光源として用いた場合には、樹脂内部の散乱反射やウェルドラインWLからの反射が全体的に少なくなる一方、光の吸収量が少なく透過量の多い波長の光を光源として用いた場合には、樹脂内部の散乱反射やウェルドラインWLからの反射が全体的に多くなる。そのため、露光量の調整を行わないと、ウェルドラインWLが明瞭に表わされた撮像データと、余り明瞭に表わされていない撮像データとの比較が困難となる。例えば、この実施形態では、後述するように、ウェルドラインWLの程度の大きさを分析するときに、撮像データ中の一定明度以下となるピクセル数を指標として用いている。そのため、露光量の調整をしないと、全体的に暗くなってウェルドラインWLが明瞭に表されていない撮像データがウェルドラインWLの分析用に採用されかねない。しかしながら、上記のように露光量の調整を行なうことで、適した光源を使用してウェルドラインWLが高いコントラストで明瞭に表された撮像データを容易に検出し、それを分析用に採用することができる。
【0041】
なお、ステップS22の反射光撮像処理の際、内部反射光検出部16の制御等により検光板15の偏光面を回転させてウェルドラインWLが一番高いコントラストで撮像されるように制御しても良い。
【0042】
次に、上記の撮像データが得られたら、この撮像データ中のうち一定明度以下のピクセル数をカウントし、このピクセル数が所定個以上あるか判別する(ステップS23)。すなわち、撮像データに表われるウェルドラインWLの程度が大きい場合には、その部分の明度は低くなるので、明度の低いピクセル数をカウントして、それを判別する。ここで、比較基準となる個数は、例えば、良否判断を行うべき程度のウェルドラインWLに対応した個数である。
【0043】
一定明度以下のピクセル数が所定個数以上あった場合には、1個のワークに対する処理において、このピクセル数が最大個数であるか否かを判別し、最大個数であればこの撮像データを抽出画像として記録・更新し、次のステップS26に移行するが、最大個数でなければ、この撮像データは破棄して、そのまま次のステップS26に移行する。
【0044】
ステップS26では、光源10の波長の切り換えを全て行ったか否か判別し、全ての切り換えを終えていなければ、ステップS27で光源10の波長を1つ切り換えて、ステップS22に戻る。一方、光源10の波長の切り換えを全て終了していれば、ステップS28で撮像部13のフォーカスを設定範囲内で一通り変更したか判別し、まだであれば、ステップS29でフォーカス位置を1ステップ深くして、ステップS22に戻る。一方、一通り全てのフォーカス位置に変更済みであれば、ステップS30に移行する。
【0045】
上記のステップS22,S26〜S29の処理が繰り返し行われることで、程度の大きなウェルドラインが発生する可能性のある範囲として予め定められた範囲の上限位置から下限位置まで撮像部13のフォーカス位置が変位されて撮像処理が行われるとともに、各フォーカス位置ごとに光源10の全ての波長の切り換えが行われて、各切り換えごとに撮像処理がなされるようになっている。さらに、ステップS23〜S25の処理により、全ての撮像データの中から一番程度の大きなウェルドラインの撮像データが記録データとして残るようになっている。
【0046】
そして、全ての光源波長の切り換え×全フォーカス位置の切り換えが終了したら、ステップS30に移行して、記録されている画像データを分析処理にかける抽出画像データとして確定する。この抽出された画像データは、一番程度が大きくウェルドラインが一番明瞭に撮像された画像データである。そして、このウェルド画像抽出処理を終了して、続く図5の分析処理に移行する。
【0047】
なお、上記のステップS23の判別処理で、撮像した全ての画像データにおいて判別結果が“NO”となった場合には、白紙の画像データが抽出画像として確定される。この抽出画像は、分析を必要とする程度のウェルドラインが検出されなかったことを示すものとなる。
【0048】
また、異常が無い限り、一定以上のウェルドラインを表わす撮像データが必ず得られるというような場合には、次のようなエラー処理を加えるようにしても良い。すなわち、ステップS23の比較処理において撮像した全ての画像データで判別結果が“NO”となった場合には、ステップS30の抽出画像の確定処理の代わりに、エラー処理として正常な撮像処理が行えなかったことを通知する処理等を実行するようにしても良い。
【0049】
分析処理に移行すると、図5に示すように、先ず、先の処理で抽出された画像データ(抽出画像)と、データベース22に格納されている限度見本の画像データとを作業エリアに読み出し(ステップS31)、これらの画像データのうち一定明度以下のピクセルの個数をカウントして比較する(ステップS32)。この比較により、限度見本に表されたウェルドラインと、先の抽出画像中に表されているウェルドラインの程度の大きさが比較される。
【0050】
そして、この比較の大小を判別し(ステップS33)、抽出画像の方が少なければ、その後の処理で良品として扱うために記憶装置21中の所定の領域にOKフラグを設定する(ステップS34)。一方、抽出画像の方が多ければ、その後の処理で不良品として扱うために記憶装置21中の所定の領域にNGフラグを設定する(ステップS35)。そして、この分析処理を終了する。このフラグの設定により、メイン制御処理(図2)におけるステップS4の検査結果の表示処理やステップS6のその他の制御処理において、検査後の樹脂成型品を良品又は不良品として扱いを区別する様々な処理を行うことができる。
【0051】
以上のように、この実施形態のウェルドラインの検査装置1およびこの検査装置1を用いた検査方法によれば、樹脂内部にまで透過する光を出射する光源および偏光を用いた撮像処理により、樹脂内部のウェルドラインも明瞭に検出し、ウェルドラインの正確な良否判定を行うことができる。
【0052】
また、光源波長の切り換えと撮像部13のフォーカス変更の処理によって、樹脂内部のウェルドラインのうち一番程度が大きくなった深さ位置のウェルドラインの撮像画像を、最適な波長の光を用いて一番明瞭に取得することが可能となる。また、これによりウェルドラインのより正確な良否判定を行うことが可能となる。
【0053】
また、ウェルドラインの画像データを格納したデータベース22を備え、この画像データと撮像データとを比較することで良否判断等の分析を行うので、画像データを差し替えることで、簡単に良否判断の基準を設定変更できるなど、ユーザに分かりやすく設定容易な分析処理を実現できる。
【0054】
また、このようなウェルドラインの検査方法を射出成型後の樹脂成型品に対して行なう樹脂成型品の製造方法によれば、正確なウェルドラインの良否判定により、例えば、異常が続いた場合に、それを速やかに発見して、射出成型工程を停止させたり、成型条件を改善するなどの対応を取ることができ、それにより歩留りの高い高品質な樹脂成型品を製造することができるという効果が得られる。
【0055】
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。 例えば、上記実施形態では、ウェルドラインの近傍部が暗く、その周囲が明るくなる撮像データを得て、ウェルドラインの分析を行うものと説明しているが、検光板15の回転角度の調整方法を変えることで、ウェルドラインの近傍部が明るく周囲が暗くなるような撮像データを得ることも可能である。そのような場合には、明るいピクセルの比較処理等により同様にウェルドラインの良否判定を行うようにすることができる。
【0056】
また、上記実施形態では、撮像データ中の一定明度以下のピクセル数をカウントしてウェルドラインの程度を分析するようにしているが、例えば、データベースに、程度の小さなウェルドラインから程度の大きなウェルドラインの画像データを複数用意しておき、画像照合により撮像データ中のウェルドラインと一番近い画像データを検索して、それによりウェルドラインの程度を分析するようにしても良い。その他、撮像データからウェルドラインの分析を行う方法としては公知である種々の画像認識の手法を適用しても良い。
【0057】
その他、上記実施形態で示した細部構造および処理方法等は発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施の形態のウェルドライン検査装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】図1のウェルドライン検査装置が組み込まれた製造ラインシステムのメイン制御処理の手順を示すフローチャートである。
【図3】ウェルドライン検査装置のシステム制御部により実行される検査処理の手順を示すフローチャートである。
【図4】図3のステップS2のウェルド抽出処理の詳細な処理手順を示すフローチャートである。
【図5】図3のステップS3の分析処理の詳細な処理手順を示すフローチャートである。
【図6】樹脂成型品のウェルドラインにおける反射光の偏光の変化を示す説明図である。
【図7】樹脂成型品の組成と光源波長の組み合わせに起因する反射光量の違いを説明する図である。
【符号の説明】
【0059】
1 ウェルドライン検査装置
10 光源
11 光源制御部
12 偏光板
13 撮像部
14 フォーカス位置制御部
15 検光板
16 内部反射光検出部
20 システム制御部(分析部)
21 記憶装置
22 データベース
30 被検査物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成型品である被検査物のウェルドラインを検査するウェルドラインの検査装置であって、
樹脂内部まで透過する光を出射可能な光源と、
光源から被検査物に照射される光を偏光させる偏光子と、
被検査物からの反射光のうち所定の偏光状態の光のみを通過させる検光子と、
焦点位置を被検査物の内部まで移動させながら前記検光子を介した被検査物を撮像する撮像部と、
前記撮像部により得られた撮像データから被検査物にあるウェルドラインの分析を行う分析部と、
を備えていることを特徴とするウェルドラインの検査装置。
【請求項2】
前記光源は、複数の波長の光を選択的に出射可能な構成であり、
さらに、
ウェルドラインがより明瞭に表された撮像データが得られるように、前記光源から出射される光の波長を自動的に切り換える光源制御手段を備えていることを特徴とする請求項1記載のウェルドラインの検査装置。
【請求項3】
ウェルドラインがより明瞭に表された撮像データが得られるように、前記撮像部の焦点の位置を自動的に移動させる焦点位置制御手段を備えていることを特徴とする請求項1記載のウェルドラインの検査装置。
【請求項4】
ウェルドラインの画像データを蓄積したデータベースを備え、
前記分析部は、前記撮像部により得られた撮像データと前記データベースの画像データとを比較して被検査物のウェルドラインの良否判定を行うように構成されていることを特徴とする請求項1記載のウェルドラインの検査装置。
【請求項5】
光源から樹脂内部まで透過する光を出射させ、
当該出射された光を、偏光子により偏光して被検査物に照射させ、
当該偏光された光が照射された被検査物からの反射光のうち所定の偏光状態の光のみを検光子により通過させ、
撮像部により焦点位置を前記被検査物の内部まで移動させながら前記検光子を介した被検査物を撮像させ、
分析部により前記撮像部により得られた撮像データから前記被検査物にあるウェルドラインの分析を行うことを特徴とするウェルドラインの検査方法。
【請求項6】
被検査物の内部にあるウェルドラインの撮像データを得る際に、ウェルドラインがより明瞭に表された撮像データが得られるように、前記光源から出射される光の波長の切り換え、および/または、前記撮像部の焦点位置の移動を行うことを特徴とする請求項5記載のウェルドラインの検査方法。
【請求項7】
樹脂成型を行う成型工程と、
前記成型工程により得られた樹脂成型品に対して、請求項5又は6に記載のウェルドラインの検査方法により前記樹脂成型品にあるウェルドラインの良否判定を行う検査工程と、
を有していることを特徴とする樹脂成型品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−150720(P2009−150720A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−327745(P2007−327745)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】