説明

ウォッシャ液供給装置

【課題】ウォッシャ液供給装置において、簡単な構成でフロント用に優先してウォッシャ液を供給できるようにする。
【解決手段】ウォッシャ液を貯溜するタンク本体3の下部にはインレット挿入口23が形成されており、ここにリア用のウィンドウシールドガラスにウォッシャ液を供給するモータポンプ6のインレット部37が挿入され、支持されている。タンク本体3の内面にはインレット挿入口22を囲むように取付部50が延設されており、取付部50に吸込部51が装着されている。吸込部51は、上向きに湾曲しており、インレット部37の先端開口39よりも高い位置に先端開口54が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両などに搭載され、ウォッシャ液を供給するウォッシャ液供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両は、ウォッシャ液供給装置が搭載されており、ウィンドウシールドガラスにウォッシャ液を噴き付けながらワイパ装置でウィンドウシールドガラスを払拭して洗浄できるようになっている。ウォッシャ液は、車両に搭載されているウォッシャタンクに貯溜されており、ここからモータポンプで吸い出され、ウィンドウシールドガラスに向けて配置された洗浄ノズルから噴出される。
【0003】
ここで、モータポンプは、フロント側のウィンドウシールドガラスにウォッシャ液を噴き付けるフロント用モータポンプと、リア側のウィンドウシールドガラスにウォッシャ液を噴き付けるリア用モータポンプとが設けられている。従来のウォッシャ液供給装置には、これら2つのモータポンプがウォッシャタンクに直接に取り付けられたものがある。2つのモータポンプは、タンク本体に対して2つ並んで配置される。モータポンプの取付構造としては、例えば、モータポンプのインレット部を挿入可能なインレット挿入口をウォッシャタンクの側部下側に設け、インレット挿入口にグロメットを嵌めてからインレット部を挿入し、グロメットを介してインレット部をウォッシャタンクに支持させたものが知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。なお、特許文献1に開示されているモータポンプの取付構造では、ウォッシャタンクに連結架橋部を架橋し、連結架橋部とタンク本体と間に2つのモータポンプを挿入し、連結架橋部の内側に膨出させた凸部でモータポンプの位置決めをしている。
【特許文献1】実開平6−53334号公報
【特許文献2】特開平9−86351号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ウォッシャ液供給装置は、ウォッシャタンク内のウォッシャ液の残量が少なくなったときでも運転者の視界を確保できるように、フロント用に優先的にウォッシャ液が供給されるように構成されていることが好ましい。このような観点から、2つのモータポンプの取り付け位置に差を付けて、フロント用のモータポンプのインレット挿入口をリア用のモータモンプのインレット挿入口よりも低く配置することが好ましいが、ウォッシャタンクはエンジンルーム内の限られたスペースに配置されるため、レイアウト上の制約から2つのモータポンプの高さに差を付けられないことがある。また、異なる位置にモータポンプの取付構造を形成すると取付構造が複雑になり、組み立て時の作業効率が悪くなる。
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、簡単な構成でフロント用に優先してウォッシャ液を供給できるようにすることを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決する本発明の請求項1に係る発明は、ウォッシャ液を貯溜可能なタンク本体と、ウォッシャ液を吸い込むインレット部を有し、ウォッシャ液をフロント用のウィンドウシールドガラスに向けて供給する第1のウォッシャポンプと、ウォッシャ液を吸い込むインレット部を有し、ウォッシャ液をリア用のウィンドウシールドガラスに向けて供給する第2のウォッシャポンプと、前記タンク本体に形成され、前記第1のウォッシャポンプの前記インレット部を挿入する第1の開口部と、前記タンク本体に形成され、前記第2のウォッシャポンプの前記インレット部を挿入する第2の開口部と、前記タンク本体内で前記第1の開口部と前記第2の開口部の少なくとも一方の周囲に設けられ、前記第1のウォッシャポンプに吸い込まれるウォッシャ液の前記タンク本体内での液面の下限が、前記第2のウォッシャポンプに吸い込まれるウォッシャ液の前記タンク本体内での液面の下限よりも低くなるように先端開口が形成された吸込部と、を有することを特徴とするウォッシャ液供給装置とした。
【0006】
このウォッシャ液供給装置は、ウォッシャ液の液量が減ったときには、先端開口が相対的に高い位置にある第2のウォッシャポンプへのウォッシャ液の供給がストップする。これに対して、第1のウォッシャポンプにはウォッシャ液を供給し続けることができるので、フロント側のウィンドウシールドガラスの洗浄を継続して実施できる。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のウォッシャ液供給装置において、前記吸込部は、前記吸込部が連結される前記開口部の周囲で前記タンク本体の内側に突設された取付部の外周面に取り付けられていることを特徴とする。
このウォッシャ液供給装置は、吸込部がタンク本体に対して着脱自在に構成されており、取付部に嵌合させることでウォッシャポンプに吸い込まれるウォッシャ液の液面の下限が調整される。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項1に記載のウォッシャ液供給装置において、前記吸込部は、前記吸込部が連結される前記開口部の周囲で前記タンク本体の内側に突設された取付部の内周面に係合し、かつ前記開口部に圧入されたグロメットの外周に係合されることを特徴とする。
このウォッシャ液供給装置は、吸込部がタンク本体に対して着脱自在に構成されており、吸込部とグロメットでタンク本体を挟み込むように装着される。これによって、ウォッシャポンプに吸い込まれるウォッシャ液の液面の下限が調整される。
【0009】
請求項4に係る発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のウォッシャ液供給装置において、前記第1の開口部と前記第2の開口部とが同じ高さに形成されていることを特徴とする。
このウォッシャ液供給装置は、ウォッシャポンプがタンク本体の外側に同じ高さに並んで配置される。このため、エンジンルーム内のスペースが限られている場合のレイアウト性を向上させることができる。
【0010】
請求項5に係る発明は、請求項4に記載のウォッシャ液供給装置において、記取付部は、前記第2の開口部に連結されており、略L字形に曲がった後に前記第1の開口部よりも高い位置に前記先端開口が形成されていることを特徴とする。
このウォッシャ液供給装置は、フロント側のウィンドウシールドガラスを洗浄する第1のウォッシャポンプにウォッシャ液が優先的に供給されるようになる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、タンク本体内に吸込部を設け、第1のウォッシャポンプと第2のウォッシャポンプのそれぞれがウォッシャ液を吸い込む位置を異ならせたので、グロメットやウォッシャポンプを特殊な形状、配置にする必要がなくなり、装置構成を簡略化できると共に、製造時の作業性が向上する。また、タンク本体内で吸い込み位置の調整を行う構成なので、外側のレイアウトの自由度を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
発明を実施するための最良の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1に全体構成を示すように、ウォッシャ液供給装置1は、中空のウォッシャタンク2を有する。ウォッシャタンク2のタンク本体3の正面3Aの下部には、収容溝4が凹設されており、ここにフロント側のウィンドウシールドガラスにウォッシャ液を供給するフロント用のモータポンプ6(第1のウォッシャポンプ)と、リア側のウィンドウシールドガラスにウォッシャ液を供給するリア用のモータポンプ5(第2のウォッシャポンプ)が取り付けられている。さらに、タンク本体3の正面3Aに略直交する側面3Bの下部には、収容部7が凹設されており、ここにヘッドライトにウォッシャ液を供給するヘッドライト用のモータポンプ8(第3のウォッシャポンプ)が取り付けられている。
【0013】
タンク本体3は、樹脂製の2つの側壁部9,10を突き合わせ、それぞれの側壁部9,10の周縁に延設させたリブ9A,10Aを溶着して中空構造を形成している。各側壁部9,10は、例えば、ブロー成形によって製造されており、車体側に固定する際に使用する複数のブラケット9B,9C,10B,10Cが一体に成形されている。
タンク本体3の上部には、通液口11が開口しており、通液口11からタンク本体3内にインレット管12の下端部が挿入されている。インレット管12は、途中に蛇腹が設けられつつ上方に延びており、その上端部にウォッシャ液取入口が設けられている。ウォッシャ液取入口は、蓋体14で密閉可能になっていると共に、ブラケット15で車体に取り付け可能になっている。
【0014】
図1から図3に示すように、タンク本体3の収容溝4は、上縁が斜めに下がった後、タンク本体3の高さ方向に略平行な平面(取付面)21が形成されている。この取付面21には、第1の開口部を形成するインレット挿入口22と、第2の開口部を形成するインレット挿入口23が、タンク本体3の内側から外側に貫通するように形成されている。これらインレット挿入口22,23は、取付面21の下部、つまりタンク本体3の下部に同じ高さで所定の間隔をおいて形成されている。
収容部7は、タンク本体3の下部を正面3A側から凹ませた形状になっており、タンク本体3の高さ方向に略平行な側面25が形成されている。この側面25には、インレット挿入口26(第3の開口部)が、タンク本体3の内側から外側に貫通するように形成されている。このインレット挿入口26は、前記した他の2つのインレット挿入口22,23よりも高い位置に形成されている。さらに、このインレット挿入口26の周縁の側面側は、略円筒状に外側に突出して接続部27を形成している。この接続部27の内部には、貫通孔を有するブッシュ28が圧入されている。
【0015】
収容溝4側のインレット挿入口22には、外側からグロメット30を圧入した後に、フロント用のモータポンプ5が挿入される。グロメット30は、円筒形状の挿入部31と、挿入部31の基端を鍔状に拡径させた基端部32とを有する。挿入部31の外径は、インレット挿入口22に液密に圧入可能な大きさである。挿入部31の先端には、外径をインレット挿入口22よりも大径にした係止部33で抜け止めを形成してある。係止部33は、先端が閉じるようなテーパ面33Aを有し、インレット挿入口22を嵌入し易くなっている。このような、グロメット30は、例えば、ゴムやエラストマー等の弾性体から製造されている。
【0016】
フロント用のモータポンプ5は、上部にモータ部35が配置され、下部にポンプ部36が形成されており、ポンプ部36から略水平に延びるインレット部37がグロメット30を介してタンク本体3に支持される。インレット部37は、グロメット30内に液密に圧入可能な径を有し、インレット部37の先端には、拡径された係止爪38で抜け止めを形成してある。係止爪38は、先端側が閉じるようなテーパ面を有し、グロメット30に嵌入し易くなっている。インレット部37の長さは、タンク本体3に支持固定したときに、先端開口39がタンク本体3内に突出する長さであり、係止爪38はタンク本体3で、かつグロメット30内に収まる位置に形成されている。
【0017】
モータ部35は、ハウジング内にロータとステータとが配設されており、上端のコネクタ40から給電可能になっている。ポンプ部36内には、インレット部37に連通する通路(不図示)を有する。この通路内には、複数の羽を有するインペラーが配置されており、モータ部35でインペラーを回転させることで、ウォッシャ液をアウトレット部41(図2)から吐出することができる。アウトレット部41には、送液パイプ42が取り付けられている。図1に示すように、送液パイプ42は、タンク本体3に沿って上方に引き出され、タンク本体3の正面3Aに形成したホルダ43に保持された後、車体内に引き回されてフロント用の洗浄ノズル(不図示)に接続されている。なお、ウォッシャポンプの構成は、このようなモータポンプ5の構成に限定されない。
【0018】
また、図5及び図6に示すように、インレット挿入口23には、外側からグロメット30を圧入した後に、リア用のモータポンプ6が挿入される。モータポンプ6の構成は、前記したモータポンプ5と同じである。タンク本体3の内側で、インレット挿入口23の周囲には、取付部50がインレット挿入口23を囲むように一体に延設されている。取付部50は、インレット挿入口23の軸線に略平行に延びる円筒形状を有し、その内径は、インレット挿入口23の径より大きい。そして、インレット挿入口23の周囲に延設された取付部50には、延長用のグロメットである吸込部51が取り付けられている。
【0019】
吸込部51は、取付部50の外周に嵌合される円筒状の基端部52を有し、先端部53がインレット挿入口23の軸線に対して略90度湾曲させられることで全体として略L字形状になっている。先端部53には、先端開口54が鉛直上向きに、かつインレット挿入口23よりも上側に配置されている。吸込部51の基端部52の内周には、係止爪55が環状に突設されている。吸込部51は、インレット挿入口23の軸線に沿って延びる基端部52がリア用のモータポンプ6のインレット部37の先端よりも僅かに内側に突出する長さを有し、かつ吸込部51の内径はインレット部37の内径に比べて十分に大きく設定してあり、モータポンプ6がウォッシャ液を吸い込むときの流路抵抗が大きくならないようにしてある。なお、吸込部51は、樹脂又はゴムから製造されており、形状を維持できる程度の剛性を有する。
【0020】
また、図1及び図2に示すように、タンク本体3の収容部7には、ヘッドライト用のモータポンプ8が配置されている。このモータポンプ8は、側面25側にポンプ部61が配置され、ポンプ部61に対してモータ部62が略水平に配置されるように、ブラケット63でタンク本体3に固定されている。ブラケット63は、モータ部62の外周を覆うと共に、収容部7の上面から延設されるリブ7Aを挟み込んでボルトで固定されている。ポンプ部61から延びるインレット部65は、接続部27及びブッシュ28を通り、インレット挿入口26からタンク本体3内に挿入されている。インレット部65は、ブッシュ28との間に液密構造を形成する外径を有し、その先端には、抜け止め防止用の係止部66が環状に突設されている。なお、他のインレット挿入口22,23と同様にして、グロメット30を介してインレット部65を液密に支持しても良い。
【0021】
モータポンプ8のモータ部62は、ハウジング内にロータとステータとが配設されており、端部に突設されたコネクタ67から給電可能になっている。ポンプ部61内には、インレット部65に連通する通路内に複数の羽を有するインペラーが配置されており、モータ部62でインペラーを回転させることで、ウォッシャ液をアウトレット部68から吐出するように構成されている。なお、アウトレット部68には、送液パイプ69が取り付けられている。送液パイプ69は、タンク本体3に沿って引き回され、タンク本体3の側面3Bに形成したホルダ70に支持された後で、ヘッドライトに向けて配設された洗浄ノズル(不図示)に接続されている。
【0022】
図3に示すように、側面25に形成されるインレット挿入口26は、他の2つのインレット挿入口22,23よりも高い位置に形成されている。図1に示すように、モータポンプ8のインレット部65の先端開口64は、水平に配置されているので、図4に示すフロント用のモータポンプ5の先端開口39より高い位置からウォッシャ液を吸い込むことになる。
【0023】
このようなウォッシャ液供給装置1を製造するときには、タンク本体3の側壁部9,10を樹脂成形し、インレット挿入口23の取付部50に吸込部51を先端開口54が上向きになるように嵌合させる。吸込部51は、係止爪55が取付部50の外周に食い込むことで、タンク本体3に強固に固定される。その後、側壁部9,10を溶着してタンク本体3を形成したら、2つのインレット挿入口22,23のそれぞれにグロメット30を1つずつ圧入する。グロメット30は、タンク本体3との間に液密構造を形成すると共に、係止部33によって抜け落ちが防止される。なお、グロメット30は、側壁部9,10の溶着前に圧入しても良い。なお、図5に示すように吸込部51を取り付ける際に取付面21の裏面側(吸込部51側)に位置決め部21Aを設け、さらに吸込部51にも突起等を設けると、方向を間違えることなく組み付けを行うことが可能になる。
【0024】
さらに、モータポンプ5,6のインレット部37を対応するインレット挿入口22,23のグロメット30に圧入し、グロメット30を介してモータポンプ5,6をタンク本体3に支持させる。インレット部37は、グロメット30との間に液密構造を形成すると共に、係止爪38によって抜け落ちが防止される。各モータポンプ5,6のアウトレット部41には、送液パイプ44を取り付けて洗浄ノズルに接続する。さらに、図1及び図2に示すように、各モータポンプ5,6を外側から覆うように保護カバー71を装着する。
【0025】
ここで、図4に示すように、フロント用のモータポンプ5では、インレット部37の先端開口39が吸い込み位置になり、特にインレット部37の先端開口39の下端がウォッシャ液を吸い込むことができる液面の下限レベルLLになる。これに対して、図5に示すように、リア用のモータポンプ6では、インレット部37の先端開口39よりも高い位置に設定されている吸込部51の先端開口54が吸い込み位置になり、かつウォッシャ液を吸い込むことができる液面の下限レベルLHになる。なお、この下限レベルLHは、ヘッドライト用のモータポンプ8の先端開口64の吸い込み位置(液面)の下限レベルLMよりも高くなっている。
【0026】
また、収容部7では、インレット挿入口26の接続部27にブッシュ28をねじ込んで液密構造を形成する。さらに、モータポンプ8のインレット部65をブッシュ28に圧入してから、モータ部62をブラケット63でリブ7Aに固定する。モータポンプ8のアウトレット部68に送液パイプ69を取り付けて洗浄ノズルに接続する。
【0027】
リア用のウィンドウシールドガラスを洗浄するときには、運転者の操作によってモータポンプ6が稼動し、ウォッシャ液がリア用のノズルからウィンドウシールドガラスに噴き付けられる。これに連動してリア用のワイパ装置を稼動させることで、ウィンドウシールドガラスが洗浄される。フロント用のウィンドウシールドガラスを洗浄するときも同様である。ヘッドライトの全面の透明カバーを洗浄するときには、運転者の操作によってモータポンプ8が稼動し、ヘッドライトに向けて配置された洗浄ノズルからウォッシャ液が噴出される。これに連動してヘッドライトのワイパ装置を稼動させることで、ヘッドライトが洗浄される。
【0028】
ウォッシャタンク2内のウォッシャ液が補充されることなく減少し続け、液面が下限レベルLHを下回ったときには、吸込部51の先端開口54が他のインレット挿入口22,23よりも高い位置に配置されていることから、リア用のモータポンプ6へのウォッシャ液の供給が最初に停止する。さらに液面が減少して下限レベルLMを下回ると、2番目に高い位置に開口しているヘッドライト用のモータポンプ8へのウォッシャ液の供給が停止する。そして、液面が下限レベルLLを下回ると、最も低い位置に開口しているフロント用のモータポンプ6へのウォッシャ液の供給が最後に停止する。
【0029】
このように、各モータポンプ5,6,8の吸い込み位置の下限レベルLL,LM,LHを異ならせてあるので、各レベルLL,LM,LHに相当する液量を下回ったとき、対応する洗浄ノズルからウォッシャ液を噴出できなくなる。このため、下限レベルLL,LM,LHは液量(液面)検出位置としての機能も有する。具体的には、リア用でウォッシャ液を噴出できなくなると、第1の液量を下回ったことが分かり、ヘッドライト側でウォッシャ液を噴出できなくなると、より少ない第2の液量を下回ったことが分かる。フロント用でウォッシャ液を噴出できなくなると、最も少ない第3の液量を下回ったことが分かる。
【0030】
この実施の形態によれば、フロント用のウィンドウシールドガラスのためにウォッシャ液を取り込む開口が最も低い位置に設置されているので、ウォッシャ液が少ない場合でもフロント用に供給するウォッシャ液を確保することができる。この際に、2つのモータポンプ5,6のインレット部37を同じ高さに配置し、リア用には湾曲した吸込部51を取り付けることによって開口位置に差を付けたので、リア用のモータポンプ6を相対的に高い位置に配置する必要がなくなる。フロント用のモータポンプ5がウォッシャタンク2内でウォッシャ液を吸い込む位置が最も低くなっていれば良いので、ウォッシャタンク2の外側で各モータポンプ5,6の位置をエンジンルームのレイアウトなどによって適宜変更することができる。
【0031】
また、取付部50は、タンク本体3の内側に形成された取付部50に嵌合させるので、特殊な形状のグロメットを製造する必要がなくなる。各モータポンプ5,6において同じグロメットを使用できるので、部品のコストを低減できる。仮に、グロメットをL字形にして開口位置に差を付ける場合には、そのような特殊な形状のグロメットの屈曲部分をインレット挿入口23を通してタンク内に挿入しなければならないので作業性が悪くなるが、この実施の形態の構造ではグロメット30の挿入が容易であり、作業性を向上させることができる。
【0032】
ここで、この実施の形態の変形例について説明する。
図7に示す吸込部81は、湾曲した略L字形状を有する点では、前記した構成と同様であるが、基端部82の構成が異なる。すなわち、基端部82の外径は、取付部50の内周に挿入可能な大きさを有し、基端部82の内周にはグロメット30の挿入部31に係止される第1の係止部83が環状に突設されている。さらに、第1の係止部83よりも先端側には、第2の係止部84が環状に突設されている。第2の係止部84は、グロメット30の係止部33のテーパ面33Aに当接可能なテーパ面が形成されている。組み立て時には、先端開口54を上向きにして吸込部81とグロメット30でタンク本体3(インレット挿入口23の周縁)を挟み込むように嵌合させる。吸込部81の基端部82は、取付部50の内周に係合し、グロメット30に嵌合することでタンク本体3に保持される。先端開口54の位置は、前記した下限レベルLHになる。このような吸込部81では、前記と同様の作用、効果が得られる。
【0033】
図8に示す吸込部91は、インレット挿入口22の内側の周縁部を延出させてタンク本体3に一体に構成されている。吸込部91は、基端部92がインレット挿入口22の軸線に略沿って延びた後に湾曲し、その先端部93に先端開口94が上向きに形成されている。先端開口94の位置は、前記した下限レベルLHになっている。グロメット30は、インレット挿入口23から吸込部91内に進入して液密構造を形成し、吸込部91の基端部92内周に係合して抜け止めされる。このようなにタンク本体3に一体に成形した吸込部91であっても、前記と同様の作用、効果が得られる。さらに、部品点数を削減でき、組み立て時の工数を削減できる。
【0034】
なお、本発明は、前記した実施の形態に限定されず広く応用することができる。
例えば、吸込部51の係止爪55を受け入れ可能な係合溝を取付部50の外周でタンク本体3の内面に近い基端側に環状に設け、吸込部51と取付部50とを係合させ易くしても良い。また、モータポンプ5,6のインレット部37の係止爪38を受け入れ可能な係合溝をグロメット30の先端内周に環状に形成し、インレット部37とグロメット30を係合させ易くしても良い。
吸込部51,81が装着されているインレット挿入口23や、吸込部91が一体に形成されているインレット挿入口23を外側から確認できるように、取付面21の外側に刻印や突起を設けても良い。なお、図3に示すタンク本体3の正面3Aには、フロント用を示す「F」の刻印と、リア用を示す「R」の刻印とがなされている。
【0035】
ヘッドライト用にウォッシャ液を吸い込む位置(下限レベルLM)は、リア用にウォッシャ液を吸い込む位置(下限レベルLH)より高く設定しても良い。
吸込部51,81,91は、少なくとも1箇所の湾曲部又は屈曲部を有する形状にすることができる。さらに、湾曲部や屈曲部を有さずに、先端が閉鎖されたストレート管の上側面に先端開口を形成した構成でも良い。これらいずれかの吸込部に加えて、又はいずれかの吸込部に代えて、下向きに先端開口を有する別の吸込部をインレット挿入口22に連結させても良い。下向きに先端開口を有する別の吸込部としては、前記したいずれかの吸込部と略同様の構成を採用できる。
また、フロント側のモータポンプ5のインレット挿入口22に吸込部51の先端開口54を鉛直下向きに、かつインレット挿入口22よりも下側になるように取り付けても良い。
【0036】
また、ウォッシャポンプであるモータポンプ5,6,8の数は、実施の形態に限定されない。ヘッドライトにワイパ装置を有しない車両の場合は、ウォッシャ液供給装置1はヘッドライト用のモータポンプ8及びこれに関連する構成要素を備えない構成になる。さらに、ヘッドライト用のモータポンプ8及びこれに関連する構成要素を備えるウォッシャ液供給装置1と、モータポンプ5,6及びこれに関連する構成要素を備えるウォッシャ液供給装置1とを別々にした構成でも良い。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施の形態に係るウォッシャ液供給装置の側面図である。
【図2】ウォッシャ液供給装置の平面図である。
【図3】ウォッシャタンクの正面図である。
【図4】図2のA−A線に沿った断面図であって、フロント用のモータポンプの支持構造を示す図である。
【図5】図2のB−B線に沿った断面図であって、リア用のモータポンプの支持構造を示す図である。
【図6】図5の分解図である。
【図7】他の形態に係るリア用のモータポンプの支持構造を示す図である。
【図8】他の形態に係るリア用のモータポンプの支持構造を示す図であって、吸込部をタンク本体に一体に形成した図である。
【符号の説明】
【0038】
1 ウォッシャ液供給装置
2 ウォッシャタンク
3 タンク本体
5 モータポンプ(第1のウォッシャポンプ)
6 モータポンプ(第2のウォッシャポンプ)
8 モータポンプ
22,23,25 インレット挿入口
30 グロメット
37 インレット部
50 取付部
51 吸込部
LL 下限レベル(液面の下限)
LH 下限レベル(液面の下限)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウォッシャ液を貯溜可能なタンク本体と、
ウォッシャ液を吸い込むインレット部を有し、ウォッシャ液をフロント用のウィンドウシールドガラスに向けて供給する第1のウォッシャポンプと、
ウォッシャ液を吸い込むインレット部を有し、ウォッシャ液をリア用のウィンドウシールドガラスに向けて供給する第2のウォッシャポンプと、
前記タンク本体に形成され、前記第1のウォッシャポンプの前記インレット部を挿入する第1の開口部と、
前記タンク本体に形成され、前記第2のウォッシャポンプの前記インレット部を挿入する第2の開口部と、
前記タンク本体内で前記第1の開口部と前記第2の開口部の少なくとも一方の周囲に設けられ、前記第1のウォッシャポンプに吸い込まれるウォッシャ液の前記タンク本体内での液面の下限が、前記第2のウォッシャポンプに吸い込まれるウォッシャ液の前記タンク本体内での液面の下限よりも低くなるように先端開口が形成された吸込部と、
を有することを特徴とするウォッシャ液供給装置。
【請求項2】
前記吸込部は、前記吸込部が連結される前記開口部の周囲で前記タンク本体の内側に突設された取付部の外周面に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載のウォッシャ液供給装置。
【請求項3】
前記吸込部は、前記吸込部が連結される前記開口部の周囲で前記タンク本体の内側に突設された取付部の内周面に係合し、かつ前記開口部に圧入されたグロメットの外周に係合されることを特徴とする請求項1に記載のウォッシャ液供給装置。
【請求項4】
前記第1の開口部と前記第2の開口部とが同じ高さに形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のウォッシャ液供給装置。
【請求項5】
前記取付部は、前記第2の開口部に連結されており、略L字形に曲がった後に前記第1の開口部よりも高い位置に前記先端開口が形成されていることを特徴とする請求項4に記載のウォッシャ液供給装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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