説明

ウォーキングビーム上のコイル異常検出方法およびコイル異常検出構造

【課題】ウォーキングビーム上のコイルがコイル先端部を周辺設備に引っ掛けて、転倒等を起こす前に、そのコイル異常を検出することができるウォーキングビーム上のコイル異常検出方法およびコイル異常検出構造を提供する。
【解決手段】ウォーキングビーム20により搬送されるコイル10がその先端部を周辺設備に引っ掛けたコイル異常を検出するために、コイル10の先端部が周辺設備に接触した際のコイル10の水平面内での回転挙動に追随してウォーキングビーム20が水平面内で旋回できるようにしておき、ウォーキングビーム20の水平面内での旋回動作を近接センサ25で検知することによって、当該コイル異常を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウォーキングビーム上を搬送されるコイルの異常を検出するコイル異常検出方法およびコイル異常検出構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鋼帯等の金属帯の製造ラインにおいては、金属帯のコイル(以下、単に「コイル」という)をウォーキングビームで搬送することが行われる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
その際、通常は、コイルはバンドにより結束されているが、処理ライン(例えば、酸洗ライン)への装入前に、バンドカッター等でバンドが除去される。そして、それ以降は結束されない状態でコイルが搬送される。
【0004】
結束されない状態のコイルは、図3に示すように、ウォーキングビーム40上のコイル(金属帯)10の先端部11が巻きほぐれてコイル下部よりはみ出すことがある。そこで、そのはみ出し量(口出し量)が所定の量を超えないように、所定の位置に設置した光電管センサ等50で検出・監視するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平06−072522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記のように、コイル10の先端部11の口出し量を光電管センサ50で検出・監視する方法では、コイル径の差異により、コイル先端部11の口出し量を的確に検出できない場合がある。
【0007】
もし、コイル先端部11の口出し量の検出がうまくいかない場合は、コイル先端部11を周辺設備に引っ掛けて(接触させて)、コイル10が転倒し、周辺設備の破損に至る場合がある。また、光電管センサ50をコイル先端部11が破損させてしまう場合もある。
【0008】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、ウォーキングビーム上のコイルがコイル先端部を周辺設備に引っ掛けて(接触させて)、転倒等を起こす前に、そのコイル異常を検出することができるウォーキングビーム上のコイル異常検出方法およびコイル異常検出構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明者は鋭意検討を行った結果、ウォーキングビーム上のコイルがコイル先端部を周辺設備に引っ掛けた(接触させた)場合の、コイルの挙動について着目した。すなわち、図2(a)に搬送方向から見た正面図、図2(b)に上方から見た平面図を示すように、ウォーキングビーム40上のコイル10がコイル先端部11を周辺設備に接触させた場合、コイル10には水平面内でコイル10を回転させようとする外力が加わる。図2(b)中において、矢印で示す方向への回転である。
【0010】
そこで、このコイル10の回転挙動に追随して、ウォーキングビーム40を水平面内で旋回できるようにしておけば、ウォーキングビーム40上のコイル10がコイル先端部11を周辺設備に接触させたとしても、コイル10がウォーキングビーム40上から転倒することが防止されるとともに、そのウォーキングビーム40の旋回動作を検知するようにすれば、ウォーキングビーム40上のコイル10がコイル先端部11を周辺設備に接触させたことが検出できるとの着想を得た。これによって、ウォーキングビーム40上のコイル10がコイル先端部11を周辺設備に接触させたとしても、コイル10が転倒する前に、当該コイル10の異常を検出することができるようになる。
【0011】
上記の着想に基づいて、本発明は以下の特徴を有している。
【0012】
[1]ウォーキングビーム上を搬送されるコイルの先端部が巻きほぐれて、その先端部が周辺設備に接触することで発生するコイル異常を検出するコイル異常検出方法であって、巻きほぐれたコイルの先端部が周辺設備に接触した際のコイルの水平面内での回転に追随してウォーキングビームが水平面内で旋回できるように構成しておき、前記ウォーキングビームの水平面内での旋回を検知することによって、当該コイル異常を検出することを特徴とするウォーキングビーム上のコイル異常検出方法。
【0013】
[2]ウォーキングビームが水平面内で旋回する際の摩擦係数μと、ウォーキングビームのコイルスキッドの傾斜角度θとが、
tanθ>μ
の関係を満たすようにすることを特徴とする前記[1]に記載のウォーキングビーム上のコイル異常検出方法。
【0014】
[3]ウォーキングビーム上を搬送されるコイルの先端部が巻きほぐれて、その先端部が周辺設備に接触することで発生するコイル異常を検出するコイル異常検出構造であって、巻きほぐれたコイルの先端部が周辺設備に接触した際のコイルの水平面内での回転に追随してウォーキングビームが水平面内で旋回できる機構と、前記ウォーキングビームの水平面内での旋回を検知する検知手段とを有していることを特徴とするウォーキングビーム上のコイル異常検出構造。
【0015】
[4]ウォーキングビームが水平面内で旋回する際の摩擦係数μと、ウォーキングビームのコイルスキッドの傾斜角度θとが、
tanθ>μ
の関係を満たしていることを特徴とする前記[3]に記載のウォーキングビーム上のコイル異常検出構造。
【発明の効果】
【0016】
ウォーキングビーム上のコイルがコイル先端部を周辺設備に引っ掛けた(接触させた)コイル異常が生じた場合でも、当該コイルが転倒等を起こす前に、そのコイル異常を検出することができる。その結果、コイルの転倒等による設備破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係るウォーキングビームの構造を示す図である。
【図2】ウォーキングビーム上のコイルがコイル先端部を周辺設備に接触させた際の挙動を示す図である。
【図3】従来技術の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係るウォーキングビーム20の構造を示す図である。このウォーキングビーム20は、ウォーキングビーム本体21と、コイル10を載置するコイルスキッド22(コイルスキッド基部22a、コイルスキッド楔部22b)とに分割された分割構造になっており、コイルスキッド22がウォーキングビーム本体21に対して、旋回軸23を中心にして水平面内で旋回できるようになっている。すなわち、ウォーキングビーム本体21が非旋回部位で、コイルスキッド22が旋回部位となる。
【0020】
そして、このコイルスキッド22の旋回動作を検知する検知手段として、ウォーキングビーム本体21に近接センサ25が取り付けられ、コイルスキッド22に近接センサ25用の検知板26が取り付けられている。
【0021】
また、コイルスキッド22がウォーキングビーム本体21に対して旋回する際の旋回抵抗Fcは、コイルスキッド22とウォーキングビーム本体21との接触面の摩擦係数(コイルスキッド基部22aの下面とウォーキングビーム本体21の上面との間の摩擦係数)をμとし(μ=0.1〜0.3程度)、コイル10の重量をWとすると、
Fc=μW
となるので、摩擦係数μと、コイルスキッド楔部22bの傾斜角度(楔の頂角)θとが、
tanθ>μ
の関係を満たすようにしている。
【0022】
これによって、コイル10がコイルスキッド楔部22bから外れることなく、コイルスキッド22が旋回できる。
【0023】
上記のような構造のウォーキングビーム20によってコイル10を搬送する場合、ウォーキングビーム20上のコイル10がコイル先端部11を周辺設備に引っ掛けたとしても、その際のコイル10の水平面内での回転挙動に追随して、コイル10がコイルスキッド楔部22bから外れることなく、コイルスキッド22が水平面内で旋回する。そして、そのコイルスキッド22の旋回動作を近接センサ25と検知板26によって検知する。
【0024】
なお、コイルスキッド22が水平面内で旋回したままでは、隣のコイルスキッドとの間でコイル10の受け渡しが難しくなるので、適宜ウォーキングビーム20を停止して、コイルスキッド22を当初の位置に戻す。また、必要に応じて、コイル10の載置姿勢を整える。
【0025】
このようにして、この実施形態においては、ウォーキングビーム20上のコイル10がコイル先端部11を周辺設備に引っ掛けた場合でも、コイル10が転倒等を起こす前に、そのコイル異常を検出することができる。その結果、コイル10の転倒等による設備破損を防止することができる。
【0026】
なお、この実施形態では、近接センサ25と検知板26によってコイルスキッド22の旋回動作を検知するようにしているが、他の方法で検知することもできる。
【0027】
例えば、距離センサによる検出方法である。例えば、ウォーキングビーム本体21に距離センサを取り付け、その距離センサでコイルスキッド22の任意の位置までの距離を測定するようにしておく。そして、コイルスキッド22の旋回動作に伴う測定距離の変化によって、コイルスキッド22の旋回動作を検知する。なお、距離センサは接触式あるいは非接触式のどちらでもよい。
【0028】
また、光電管による検出方法もある。例えば、コイルスキッド22に投光器、ウォーキングビーム本体21に受光器を取り付け、その間にスリット板を配置し、投光器からの光線がスリット板のスリットを通過して、受光器で受光されるようにしておく。そして、コイルスキッド22の旋回動作に伴う投光器の光軸のズレにより、投光器からの光線がスリット板で遮蔽されて、受光器で受光できなくなることによって、コイルスキッド22の旋回動作を検知する。
【0029】
また、監視カメラ等によってコイルスキッド22の旋回動作あるいはコイル10の回転挙動を検知するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0030】
10 コイル(金属帯)
11 コイル先端部
20 ウォーキングビーム
21 ウォーキングビーム本体(非旋回部位)
22 コイルスキッド(旋回部位)
22a コイルスキッド基部
22b コイルスキッド楔部
23 旋回軸
25 近接センサ
26 検出板
40 ウォーキングビーム
50 光電管センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウォーキングビーム上を搬送されるコイルの先端部が巻きほぐれて、その先端部が周辺設備に接触することで発生するコイル異常を検出するコイル異常検出方法であって、巻きほぐれたコイルの先端部が周辺設備に接触した際のコイルの水平面内での回転に追随してウォーキングビームが水平面内で旋回できるように構成しておき、前記ウォーキングビームの水平面内での旋回を検知することによって、当該コイル異常を検出することを特徴とするウォーキングビーム上のコイル異常検出方法。
【請求項2】
ウォーキングビームが水平面内で旋回する際の摩擦係数μと、ウォーキングビームのコイルスキッドの傾斜角度θとが、
tanθ>μ
の関係を満たすようにすることを特徴とする請求項1に記載のウォーキングビーム上のコイル異常検出方法。
【請求項3】
ウォーキングビーム上を搬送されるコイルの先端部が巻きほぐれて、その先端部が周辺設備に接触することで発生するコイル異常を検出するコイル異常検出構造であって、巻きほぐれたコイルの先端部が周辺設備に接触した際のコイルの水平面内での回転に追随してウォーキングビームが水平面内で旋回できる機構と、前記ウォーキングビームの水平面内での旋回を検知する検知手段とを有していることを特徴とするウォーキングビーム上のコイル異常検出構造。
【請求項4】
ウォーキングビームが水平面内で旋回する際の摩擦係数μと、ウォーキングビームのコイルスキッドの傾斜角度θとが、
tanθ>μ
の関係を満たしていることを特徴とする請求項3に記載のウォーキングビーム上のコイル異常検出構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−195564(P2010−195564A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−44939(P2009−44939)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】