説明

ウォータジェット推進機の軸受冷却装置

【目的】 インデューサ軸に内包するインペラ軸の2重構造軸を軸支する軸受部を冷却すること。
【構成】 インデューサ軸内に同芯配置のインペラ軸を有し、これら2重軸を軸支する軸受部にウォータボックスを設け、このウォータボックスには導通路を介してディフューザに接続する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、回転軸の高出力化に伴って発生する高発熱を巧みに吸収するウォータジェット推進機の軸受冷却装置の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】最近の高速艇は、40〜70ノットの超高速走行を目指し、スクリュー推進方式からウォータジェット推進方式に移行しつつあり、その代表例の一つに図2に示すものがある。
【0003】符号Aは、ウォータジェット推進方式の中枢部を構成する動力部を示し、この動力部Aは胴長の取水ケーシング1と吐出ケーシング2からなる。取水ケーシング1は、駆動源である動水を取り入れるインテークBを有する一方、動水に予圧を与えるインデューサ5を備えている。インデューサ5は減速歯車13を有するインデューサ軸4によって回転力が与えられるが、このインデューサ軸4は、その内部にインデューサ軸受12を介挿して同芯配置のインペラ軸3を備えた、いわゆる2重軸構造形式になっている。
【0004】このような2重軸構造形式のインデューサ軸4の一側は、取水ケーシング1を貫装して延び、途中に水シール部15,17を介装して軸受部Cに軸装されている。軸受部Cは、インデューサ軸4の拡大部に設けられており、インデューサ軸用のものと、インペラ軸用のもとに区分され、それぞれの軸用としてインデューサ軸用油シール11,16、インペラ軸用油シール9,14が装着されている。また、インデューサ軸4の他側は取水ケーシング1の胴軸に沿って延び、その端部は減速歯車13を介装してインデューサ5に接続されている。
【0005】一方、インデューサ軸4に内包されているインペラ軸3は、吐出ケーシング2の胴軸に沿って延び、途中に水シール10に装着されたステーベーン7を配してディフューザコーン部Dに接続されている。このディフューザコーン部Dは、吐出ケーシング2の胴軸に対して左右に曲線的に膨出する椀部稜線を有し、この椀部稜線の外周にインペラ6を装着してインペラ軸3からの動力を伝えて動水に回転エネルギを与えている。さらに、この椀部稜線の外周には、ディフューザ8を配し、このディフューザ8によってインペラ6からの動水の圧力を回復させて吐出部Eに送り出している。このように動力部Aは、吐出部Eからの動水の噴力を利用して推進を得、船艇の超高速化を促している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで、この種装置は、超高速化なるがゆえに取扱う動水量が1000m3 /min 以上ときわめて高く、動力部Aの運転中、発生する軸受部Cからの摩擦熱などの無効熱エネルギも比例的に高くなり、このためもはや自然放熱にたよっていたのではまにあわず、残熱によって軸受部Cは、シールの焼損、潤滑油の劣化、軸受摺動部の損耗などを招来し、大きな事故につながるおそれがある。この発明は、上述の事情に徴し、軸受部を効果的に、かつ効率的に冷却できるウォータジェット推進機の軸受冷却装置を公表することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】この発明は、インデューサ軸内に同芯配置のインペラ軸を有し、これら2重軸を軸支する軸受部にウォータボックスを設け、このウォータボックスにはディフューザからの動水を引き抜いて冷却水として供する導通路を設けたものである。
【0008】
【作用】上記構成によれば、軸受部のウォータボックスにはディフューザからの動水の一部が常時冷却水として流れるので、軸受部に軸装される2重構造軸の回転中に発生する摩擦熱などの無効熱エネルギが大きくなっても十分に冷却することができる。
【0009】
【実施例】以下、この発明の一実施例を図を参照して説明する。
【0010】図1は、この発明にかかるウォータジェット推進機の軸受冷却装置の一部切欠き概略図である。なお、図2と同一構成部品には同一符号を付し、その詳述を略す。
【0011】図1において、全体を符号Aで示す動力部は、動水を取水するインテークB、動水を与圧して旋回力を与えるインペラ8、インデューサ5、2重軸構造を有し、インデューサ5に動力を伝えるインデューサ軸4に同芯的に内設されるインペラ駆動のインペラ軸3、これら2重軸を軸支する軸受部C、インペラ8からの動水の圧力を回復させて吐出部Eに送り出すディフューザ8を備えている。
【0012】しかして上記従来構成において、この発明では軸受部Cにウォータボックス20を設けて、軸受部Cを効果的にかつ効率的に冷却するものである。すなわち、インペラ軸3を内包するインデューサ軸4は、取水ケーシング1を貫装して軸受部Cに延びて軸支されており、軸支された2重構造のインデューサ軸4は従来から水シール15,17、油シール9,11,14,16を備えているものの、何分にも超高出力を出しているがゆえに摩擦熱などの無効熱エネルギの発生が高く、従来シールによる冷却だけではその熱を十分に取り除くことができない。
【0013】このため、軸受部Cにはその全域を囲繞するようにウォータボックス20を設けている。このウォータボックス20は、一側に調節弁19を介装する導通路18を有し、この導通路18はディフューザ8に接続されている。また、ウォータボックス20の他側は冷却水を外部に送り出す排出路21を有する。
【0014】上記構成の動力部Aの冷却系では、ディフューザ8を通る動水の一部が冷却水として活用される。つまり、ディフューザ8から引き抜かれた動水は、導通路18を経てウォータボックス20に導かれ、ここで2重構造のインデューサ軸4を強制冷却し、冷却後、排水路21を経て外部に送り出される。
【0015】したがって、冷却水はすでに使用されている動水の一部をそのまま活用できるから、この種装置に格別の冷却水供給源を必要とせずして水の有効活用を図ることができる。なお、ディフューザ8の動水は極めて高圧であるから、ウォータボックス20に供するときには、調節弁19で圧力コントロールすればよい。
【0016】
【発明の効果】以上の説明のとおり、この発明にかかるウォータジェット推進機の軸受冷却装置では、軸受部にウォータボックスを設け、このウォータボックスにディフューザの動水を一部引き抜いて軸受部の冷却水に活用するから、簡易な構造の下で強制冷却ができ、したがってこの種装置が高出力化に伴って無効熱エネルギが高くなっても十分に対処することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明にかかるウォータジェット推進機の軸受冷却装置の一例を示す一部切欠き概略図。
【図2】従来のウォータジェット推進機の軸受冷却装置の実施例を示す一部切欠き概略図。
【符号の説明】
A 動力部
B インテーク
C 軸受部
3 インペラ軸
4 インデューサ軸
6 インペラ
8 ディフューザ
18 導通路
20 ウォータジェット

【特許請求の範囲】
【請求項1】 インデューサ軸内に同芯配置のインペラ軸を有し、これら2重軸を軸支する軸受部にウォータボックスを設け、このウォータボックスにはディフューザからの動水を引き抜いて冷却水として供する導通路を設けたことを特徴とするウォータジェット推進機の軸受冷却装置。

【図1】
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【図2】
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