説明

ウォーターハンマー防止蛇口およびウォーターハンマー防止蛇口用部品

【課題】 ウォーターハンマーの発生を効果的に抑制し、弁体の破損や給水管からの水漏れ、給湯器の故障等の発生を防止する。
【解決手段】 ハンドル(12)が取り付けられた棒状のスピンドル(14)の先端に組み付けたパッキン(16)を、水の閉め切りの直前にはゆっくりと動作させて、蛇口から流れ出る水を急激に遮断することなく徐々に減少させるために、スピンドルの外周に形成したネジ山のピッチおよびスピンドルを螺合するために蛇口本体(22)に形成された螺子筒(24)の内周のネジ溝のピッチを部分的に変更し、ハンドルの所定の回転量に対するパッキン(16)の動作が、水の閉め切りの直前に小さくする水量漸減機構を蛇口に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は水道の急激な止水操作に伴い発生するウォーターハンマーを防止するためのウォーターハンマー防止蛇口およびウォーターハンマー防止蛇口用部品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の一般家庭用の上水道用の蛇口では、操作レバーを手動操作によって上下動させることにより水道の開閉や水量の調節を行うことができるものも採用されるようになってきているが、現在でも図6に示した従来方式の蛇口が主流である。この従来方式の蛇口は、ハンドルを回転させることによってスピンドルの先端に組み付けたパッキンを上下動させ、水道の開閉や水量の調節を行うものである。
【0003】
より詳細に説明すると、図6に示した従来方式の蛇口は、蛇口のボディをなす蛇口本体22と、蛇口先端となるエルボ状の接続筒31と、水道の開閉や水量の調節を行う回転式の開閉部33とから構成されている。
蛇口本体22には、図示しない水道配管に接続するための入口側の継手部35が基端側に形成され、先端側には水道水を放出するための吐水部37が形成されている。また蛇口本体内には、水道配管と連通する一次側Aと接続筒31と連通する二次側Bとを隔てるための隔壁39が形成されおり、この隔壁39には一次側Aから二次側Bに水道水を導きいれるための弁口41が開設されている。さらに弁口41の上方位置の二次側Bの部位には、開閉部33を取り付けるための内面にネジ溝が彫られた螺子筒24が垂直方向に形成されている。
接続筒31は袋ナット43によって、水密を保持して蛇口本体22の吐水部37に回転自在に取り付けられている。
開閉部33は、上端側にハンドル12が取り付けられたスピンドル14の下端側外周に形成されたネジ山を螺子筒24内周のネジ溝と螺合させ、スピンドル14の下端側に組み付けたこま台45の下面の合成ゴム製のパッキン16を、ハンドル12の回転によるスピンドル14の上下動によって上下動させて、隔壁39に開設された弁口41の開閉を行い、水道の開閉や水量の調節を行う。
【0004】
このような従来方式の蛇口は構造が単純で、操作性、耐久性、信頼性、メンテナンス性などに優れている一方、急激なハンドル操作を日常的に行なうことが多く、そのような場合、ウォーターハンマーと呼ばれる現象が発生しやすくなる。ウォーターハンマー現象とは、急激なレバー操作によって止水することで蛇口から流れ出る水道水に急ブレーキがかかる状態となる結果、水道管内を流れる水道水の運動エネルギが他のエネルギに変換され、甲高い衝撃音とともに水道管内の水圧が瞬間的に増大する現象である。ウォーターハンマーが頻繁に繰り返されると、蛇口自体にはもちろん、給水管やこれに接続される給湯器等にも衝撃が加わり続け、長期的には弁体の破損や給水管からの水漏れ、給湯器の故障等が発生する可能性がある。
【0005】
そこで例えば特許文献1に記載の「主として洗濯機に用いる蛇口」のように、蛇口本体の吐水管の内腔に収容室を形成し、その内部に減圧弁機構を収納し、蛇口本体内に減圧弁機構を組み込んだ蛇口なども発案されている。
【特許文献1】特開平8−144338号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら特許文献1に記載の蛇口はその構造が複雑であり製造コストが高くなるとともに、バッファとなる収容室を蛇口に形成する必要があることから蛇口全体の大きさが大きくなるといった問題があった。また、既存の従来方式の蛇口にはこれをそのまま後付けにより適用することはできず、従来方式の蛇口が既に用いられている場合にはこれを取り外してから新たな蛇口に交換しなければならないといった問題もあった。
【0007】
本発明は上記問題点に鑑みて創案されたもので、その目的は構造が単純でその製造コストも低廉であり、全体の大きさも従来方式の蛇口と変えることなくウォーターハンマーの発生を効果的に抑制し、弁体の破損や給水管からの水漏れ、給湯器の故障等の発生を防止することができるウォーターハンマー防止蛇口を提供することを目的とする。また本発明は、既存の従来方式の蛇口本体の交換をすることなく、既存の蛇口に後付けすることができるウォーターハンマー防止蛇口用部品を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため請求項1に記載のウォーターハンマー防止蛇口は、蛇口(10)の止水を行う際のウォーターハンマーの発生を防止するために、ハンドル(12)が取り付けられた棒状のスピンドル(14)の先端に組み付けたパッキン(16)を、水の閉め切りの直前にはゆっくりと動作させることにより、蛇口から流れ出る水を急激に遮断することなく徐々に減少させて止水するための水量漸減機構(18)を設けた、ことを特徴とする。
【0009】
より具体的には、請求項2に記載したように、前記水量漸減機構(18)は、スピンドル(14)の外周に形成したネジ山のピッチおよびスピンドルを螺合するために蛇口本体(22)に形成された螺子筒(24)の内周のネジ溝のピッチを部分的に変更し、ハンドルの所定の回転量に対するパッキン(16)の動作が、水の閉め切りの直前に小さくなるようにしたものである、か、請求項3に記載したように、水の閉め切りの直前にハンドル(12)の回転操作に所定の負荷がかかるようにしたものである。
【0010】
また請求項4に記載のウォーターハンマー防止蛇口用部品は、既存の蛇口のスピンドルと交換することでウォーターハンマーの発生を防止するためのウォーターハンマー防止蛇口用部品であって、蛇口本体(22)に形成された螺子筒(24)の内径を変更するための円管状の調整筒(26)と、該調整筒に螺合される棒状のスピンドル(14)と、からなり、前記スピンドルの外周に形成したネジ山のピッチおよび前記調整筒の内周に形成したネジ溝のピッチを部分的に変更し、ハンドル(12)の所定の回転量に対するパッキン(16)の上下動が、水の閉め切りの直前に小さくなるようにした、ことを特徴とする。
【0011】
また請求項5に記載のウォーターハンマー防止蛇口用部品は、既存の蛇口のスピンドル(14)に取り付けることでウォーターハンマーの発生を防止するためのウォーターハンマー防止蛇口用部品であって、
蛇口本体(22)に形成された螺子筒(24)の上端部に取り付けられるカバーナット(28)とスピンドルに取り付けられたハンドル(12)との間に配置され、スピンドルの先端に組み付けたパッキン(16)による水の閉め切りの直前に、カバーナット上面とハンドル下面との間に挟止されることでハンドルの回転操作に負荷を与える弾性体(32)からなる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、スピンドルの先端のパッキンを水の閉め切りの直前にゆっくりと作動させ、蛇口から流れ出る水を徐々に減少させて止水してやることで、水の急激な遮断による止水を防ぎ、ウォーターハンマーの発生を回避することができる。これにより蛇口や給水管、給湯器等の破損や水漏れ、給湯器の故障等の発生確率を低減することができる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、スピンドルのネジ山のピッチおよび螺子筒の螺子溝のピッチを部分的に変更し、ハンドルの所定の回転量に対するパッキンの上下動を、水の閉め切りの直前に小さくなるようにしてやることで、一定の回転速度でスピンドルに取り付けられたハンドルが操作された場合にも、急激な水の遮断を回避することができる。なお本発明によれば特許文献1に記載の発明のようにバッファとなる特別な収容室も必要いため、蛇口の大きさを大きくすることなく、非常に簡易な構成によりウォーターハンマーの発生を防止することができる。
【0014】
また請求項3に記載の発明によれば、水の閉め切りの直前にハンドルの回転操作に所定の負荷がかかるようにしてやることで、一定の力によって蛇口のハンドルが操作される場合に、急激な水の遮断によるウォーターハンマーの発生を防止することができる。
【0015】
請求項4に記載の発明は既存の従来方式の蛇口に後付けにより適用することを目的としたもので、既存の蛇口のスピンドルと交換するためのものである。本発明では、蛇口本体に形成された螺子筒にその内周のネジ溝のピッチを部分的に変更するための調整筒を取り付け、これに外周にネジ山のピッチを部分的に変更したスピンドルを螺合して、ハンドルの所定の回転量に対するパッキンの上下動を水の閉め切りの直前に小さくなるようにしてやることで、一定の回転速度で蛇口のハンドルが操作された場合にも、急激な水の遮断によるウォーターハンマーの発生を防止することができる。なお本発明によれば従来技術のように蛇口全体を交換する必要がなく既存の蛇口本体をそのまま使用することができるため、その適用に多くのコストや手間を要することなく蛇口や給水管、給湯器等の破損や水漏れ、給湯器の故障等の発生確率を低減することができる。
【0016】
請求項5に記載の発明も既存の従来方式の蛇口に後付けにより適用するものであるが、請求項4に記載の発明のようなスピンドルの交換を要するものではない。本発明では、ハンドルとカバーナットとの間に、水の閉め切り前にスピンドルのねじ込み回転を阻害して負荷を与える弾性体を配置することで、一定以上の力を水の閉め切りのために必要とさせ、これにより急激な水の遮断によるウォーターハンマーの発生を防止する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施形態を図面を参照して説明する。なお従来方式の蛇口と同様の構成の部位については同一の符号を付す。
【0018】
図1は本発明のウォーターハンマー防止蛇口の構造を示すための縦断面図であり、蛇口が止水された状態を表している。図に示したようにこの蛇口10は、蛇口のボディとなる蛇口本体22と、円筒管をエルボ状に形成した蛇口先端となる接続筒31と、水道の開閉や水量の調節を行う回転式の開閉部33とから構成されている。
【0019】
蛇口本体22の基端側には、図示しない水道配管に接続するための入口側の継手部35が、蛇口本体22の先端側には水道水を放出するための吐水部37が形成されている。また蛇口本体22内には、水道配管と連通する一次側Aと、接続筒31と連通する二次側Bとを隔てる隔壁39が形成されおり、この隔壁39には一次側Aから二次側Bに水道水を導き入れるための水平な円形面をなす弁口41が開設されている。さらに弁口41の上方位置の二次側Bの部位には、弁口41と軸線を一致させた開閉部33を取り付けるための内面にネジ溝が彫られた螺子筒24が垂直方向に形成されている。
【0020】
接続筒31は袋ナット43によって水密を保持して蛇口本体22の吐水部37に回転自在に取り付けられており、この接続筒31を軸周りに回転させることで、吐水する角度を様々に変更することができるようになっている。
【0021】
開閉部33は、蛇口本体22の螺子筒24と螺合するネジ山が下端側の外周に形成されたスピンドル14と、スピンドル14の上部に取り付けられたハンドル12と、スピンドル14の下端に上下に摺動自在に嵌挿したこま台45と、こま台45の下面に装着した合成ゴムからなるパッキン16とから構成されている。ハンドル12を回転操作することでスピンドル14は回転し、こま台45に装着されたパッキン16が蛇口本体22の弁口41を開閉することで、水道の開閉を行うことができる。
【0022】
上述した蛇口10の構造は従来型の水道の蛇口と同様であり、またその外観や大きさも従来型のものと変わるところはない。しかしながら本発明のウォーターハンマー防止蛇口には以下の実施例に示す水量漸減機構が設けられており、この水量漸減機構によってウォーターハンマーの発生防止を実現している。
【実施例1】
【0023】
図2は水量漸減機構をより詳細に説明するために、図1で円で囲んだ部分を拡大したものである。
この水量漸減機構18は、ハンドル12の所定の回転量に対するパッキン16の動作が、水の閉め切りの直前に小さくなるようにするものであり、蛇口本体22の螺子筒24およびこれに螺合されるスピンドル14に形成されている。
【0024】
螺子筒24には図2に示した通りその下端側から、その内径が大きな螺子筒下段部47aと、その内径が小さな螺子筒中段部47bと、その内径が大きな螺子筒上段部47cとが段階的に形成されている。螺子筒下段部47aは螺子筒中段部47bの1.5倍の深さを有しており、螺子筒上段部47cは螺子筒上段部47cの約半分の深さを有している。
ここで螺子筒中段部47bの内周には大きなピッチでネジ溝が形成されており(従来方式の蛇口の螺子筒のネジ溝のピッチと同じ)、螺子筒上段部47cの内周には小さなピッチでネジ溝が形成されているが、螺子筒下段部47aにはネジ溝は形成されていない。なお判別を容易にするために各ネジ溝の大きさは実際よりも大きく強調して表してある。
【0025】
螺子筒24に挿入される部分のスピンドル14には図2に示した通り下端側から、その外径が中位のスピンドル下段部49aと、その外径が小さなスピンドル中段部49bと、その外径が大きなスピンドル上段部49cとが段階的に形成されている。スピンドル中段部49bはスピンドル下段部49aの1.5倍の軸方向長さを有しており、スピンドル上段部49cはスピンドル下段部49aの約半分の軸方向長さとなっている。ここでスピンドル下段部49aの外周には大きなピッチでネジ山が形成されており(従来方式の蛇口のスピンドルのネジ山のピッチと同じ)、スピンドル上段部49cの外周には小さなピッチでネジ山が形成されているが、スピンドル中段部49bにはネジ山は形成されていない。なお判別を容易にするために各ネジ山の大きさは実際よりも大きく強調して表してある。
【0026】
上述した螺子筒24およびスピンドル14とは、螺子筒中段部47bのネジ溝がスピンドル下段部49aのネジ山と螺合し、螺子筒上段部47cのネジ溝がスピンドル上段部49cのネジ山と螺合するようになっている。また、螺子筒下段部47aに対してはスピンドル下段部49aが空転し、螺子筒中段部47bに対してはスピンドル中段部49bが空転するようになっている。
【0027】
図3に螺子筒24にスピンドル14が螺合してスピンドル14の下端に嵌挿したこま台45に装着したパッキン16が、蛇口本体22の弁口41を閉鎖する様子を示した。
(1)螺子筒24に差し入れたスピンドル14をねじ込むと、螺子筒中段部47bのネジ溝にスピンドル下段部49aのネジ山が螺合を開始する(図3(a))。
(2)スピンドル下段部49aの全体と螺子筒中段部47bの全体が完全に螺合したあと、さらにスピンドル14をねじ込むと、スピンドル下段部49aが螺子筒下段部47aに進入するとともに、スピンドル中段部49bが螺子筒中段部47bに進入してくる。このとき螺子筒下段部47aに進入したスピンドル下段部49aは螺子筒下段部47aに対して空転し、また、スピンドル中段部49bは螺子筒中段部47bに対して空転する(図3(b))。
(3)さらにスピンドル14をねじ込むとスピンドル下段部49aの全体が完全に螺子筒下段部47aに収容される。スピンドル下段部49a全体が螺子筒下段部47aに収容されると、スピンドル14は螺子筒24に対して空転するようになるが、その直前にスピンドル上段部49cのネジ山が螺子筒上段部47cのネジ溝と螺合を開始する(図3(c))。
(4)スピンドル上段部49cの全体が螺子筒上段部47cに螺合するとき、スピンドル14の下端は螺子筒24の最深部に達する(図3(d))。スピンドル14の下端が螺子筒24の最深部に達すると、スピンドル14の下端に嵌挿されたこま台45の下面に装着したパッキン16は、隔壁39に開設された弁口41を完全に塞ぎ、蛇口10からの水の吐出を遮断する。
【0028】
ここで、螺子筒上段部47cのネジ溝とスピンドル上段部49cのネジ山は、螺子筒中段部47bのネジ溝とスピンドル下段部49aのネジ山と比べて小さなピッチで形成されているため、所定のスピンドル14の回転量に対してスピンドル14が軸方向下方に移動する移動量は小さくなる。これにより蛇口10の閉め切りの直前には、蛇口10からの水は徐々に減少することとなり、蛇口10から流れ出る水の急激な遮断によるウォーターハンマーの発生が回避される。なお本発明のウォーターハンマー防止蛇口では、従来方式の蛇口よりも水の閉め切りの直前でのハンドルの回転量が多くなるが、ハンドルに加える力は小さくてすむため、これまでよりも小さな力で確実に止水することができるようになるといった副次的効果もある。
【0029】
図4に上述した水量漸減機構18の応用例を示した。なおこの図では図2と同様に図1の円で囲った部分に相当する部分のみを拡大して表してある。
この水量漸減機構18も上記と同様に、水の閉め切りの直前にスピンドル14の先端に組み付けたパッキン16をゆっくりと作動させるために、スピンドル14に形成したネジ山のピッチと、螺子筒24に形成したネジ溝のピッチを部分的に小さくするものであるが、既存の従来方式の蛇口本体22に後付けすることができることを特徴としている。
【0030】
このウォーターハンマー防止蛇口用部品は、既存の従来方式の蛇口本体22の螺子筒24からスピンドルを取り外し、ここに螺子筒24の内径を変更するための円管状の調整筒26を取り付け、この調整筒に新たなスピンドル14を螺合するものである。
【0031】
調整筒26はその外径を螺子筒24の内径と同じくし、その外周にはネジ山が形成されている。このネジ山を、螺子筒の内周に形成されたネジ溝と螺合することで、調整筒26は螺子筒24の内部にその全部が収容されて固定される。
また調整筒26の内周には、その下端側から、その内径が大きな調整筒下段部51aと、その内径が小さな調整筒中段部51bと、その内径が大きな調整筒上段部51cとが段階的に形成されている。調整筒下段部51aは調整筒中段部51bと同程度の深さを有しており、調整筒上段部51cは調整筒中段部51bの約半分の深さを有している。ここで調整筒中段部51bの内周には大きなピッチでネジ溝が形成されており、調整筒上段部51cの内周には小さなピッチでネジ溝が形成されているが、調整筒下段部51aにはネジ溝は形成されていない。
【0032】
スピンドル14は前述のスピンドルとほぼ同様の形状をしているため図面に図1と同様の符号を付すことによりその詳細な説明は省略するが、調整筒26の内周に形成されたネジ溝とスピンドル14の各部位のネジ山とが螺合するように、各部位の内径が前述のスピンドル14の内径よりも調整筒26の肉厚の分だけ小さくなっている。
【0033】
図4に示したウォーターハンマー防止蛇口用部品(調整筒26およびスピンドル14)によれば、既存の従来方式の蛇口本体22を交換することなくこれに後付けすることで、ハンドルの所定の回転量に対して水の閉め切り前にパッキン16をゆっくりと動作させることができ、急激な水の遮断を回避してウォーターハンマーの発生を防止することができる。これにより、多くのコストや手間を要することなく、蛇口10や給水管、給湯器等の破損や水漏れ、給湯器の故障等の発生確率を低減することができる。
【0034】
なお上述した水量漸減機構18では、スピンドル下段部49aの螺子筒24または調整筒26への螺合が解除される直前にスピンドル上段部49cの螺子筒への螺合が開始するようになっている。すなわち、スピンドルネジ山と螺子筒のネジ溝とは常に係合するものとしている。しかしながら、スピンドル下段部49aの螺子筒24または調整筒26への螺合が解除されたあとに、スピンドルが螺子筒等に対して空転するものとし、さらにスピンドルをねじ込みたい場合には、下向きの力を加えた状態でスピンドルをねじ込み回転させることで、スピンドル上段部49cの螺子筒への螺合を開始させる構成とすることも可能である。
【実施例2】
【0035】
図5に本発明のウォーターハンマー防止蛇口用部品を取り付けたウォーターハンマー防止蛇口を示した。この図に示したように、この蛇口10は既存の従来方式の水道の蛇口であるが、カバーナット28とハンドル12との間のスピンドル14の外周には硬質ゴムからなる弾性体32が取り付けられている。なおこの弾性体32は、硬質ゴムに限られるものではなく、弾性を有する硬質プラスティックやばね材等を使用することも勿論可能である。
【0036】
この弾性体32はその内径が取り付けられるスピンドル14の外径と同じ大きさの円筒形状をしており、その軸方向長さは、スピンドルの先端に取り付けられたこま台45に装着されたパッキン16が、弁口41を完全に塞いで水を遮断したときの、カバーナット28から外部に突出するハンドル12の下側に位置する部分のスピンドルの長さよりも若干長くなっている。
すなわちこの弾性体32は、ハンドル12を回転させてスピンドル先端のパッキン16が弁口41の近傍まで下降する際にはスピンドル14とともに回転しながら下方に移動してハンドル12の回転操作を何ら阻害するものではないが(図5(a)参照)、水の閉め切りの直前にはカバーナット28の上面とハンドル12の下面との間に挟止され、ハンドル12のねじ込み回転(スピンドルの下降)を阻害する(図5(b)参照)。
【0037】
このように水の閉め切りの直前に、スピンドル14に取り付けた弾性体32によってハンドル12の回転操作に一定の負荷を与えることで、ハンドル12を回転させる者は水の閉め切りのために意識的にさらに力を加える必要があり、これにより従来無意識に行われていた急激な水の遮断操作を回避してウォーターハンマーの発生を防止することができる。
【0038】
以上説明したように本発明のウォーターハンマー防止蛇口は、その構造が単純で製造コストも低廉であり、蛇口全体の大きさも従来方式のものよりも大きくなることもなく、ウォーターハンマーの発生を効果的に回避し、これにより弁体の破損や給水管からの水漏れ、給湯器の故障等の発生を防止することができる。また上述のようなウォーターハンマー防止蛇口用部品を用いることで、既存の従来方式の蛇口本体の交換をすることなく、既存の蛇口に後付けすることによって簡易にウォーターハンマーの発生を回避することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は家庭用の水道の蛇口への適用を主目的としたものであるが、流体の急激な遮断操作によるウォーターハンマーの発生を防止する必要があるものについては勿論これを適用することができる。また蛇口以外のバルブ等についても適用することができることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】実施例1の蛇口の内部構造を示すための縦断面図である。
【図2】図1の円で囲った部分の拡大図である。
【図3】スピンドルの下端のパッキンが蛇口本体の弁口を閉鎖する様子を示した図である。
【図4】実施例1の応用例であるウォーターハンマー防止蛇口用部品を説明するための部分拡大図である。
【図5】実施例2におけるウォーターハンマー防止蛇口用部品の動作を説明するための図である。
【図6】従来方式の蛇口の内部構造を示すための縦断面図である。
【符号の説明】
【0041】
10 蛇口
12 ハンドル
14 スピンドル
16 パッキン
18 水量漸減機構
22 蛇口本体
24 螺子筒
26 調整筒
28 カバーナット
31 接続筒
32 弾性体
33 開閉部
35 継手部
37 吐水部
39 隔壁
41 弁口
43 袋ナット
45 こま台
47a 螺子筒下段部
47b 螺子筒中段部
47c 螺子筒上段部
49a スピンドル下段部
49b スピンドル中段部
49c スピンドル上段部
51a 調整筒下段部
51b 調整筒中段部
51c 調整筒上段部
A 一次側
B 二次側

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛇口(10)の止水を行う際のウォーターハンマーの発生を防止するために、
ハンドル(12)が取り付けられた棒状のスピンドル(14)の先端に組み付けたパッキン(16)を、水の閉め切りの直前にはゆっくりと動作させることにより、蛇口から流れ出る水を急激に遮断することなく徐々に減少させて止水するための水量漸減機構(18)を設けた、
ことを特徴とするウォーターハンマー防止蛇口。
【請求項2】
前記水量漸減機構(18)は、スピンドル(14)の外周に形成したネジ山のピッチおよびスピンドルを螺合するために蛇口本体(22)に形成された螺子筒(24)の内周のネジ溝のピッチを部分的に変更し、ハンドルの所定の回転量に対するパッキン(16)の動作が、水の閉め切りの直前に小さくなるようにしたものである、
ことを特徴とする請求項1に記載のウォーターハンマー防止蛇口。
【請求項3】
前記水量漸減機構(18)は、水の閉め切りの直前にハンドル(12)の回転操作に所定の負荷がかかるようにしたものである、
ことを特徴とする請求項1に記載のウォーターハンマー防止蛇口。
【請求項4】
既存の蛇口のスピンドルと交換することでウォーターハンマーの発生を防止するためのウォーターハンマー防止蛇口用部品であって、
蛇口本体(22)に形成された螺子筒(24)の内径を変更するための円管状の調整筒(26)と、該調整筒に螺合される棒状のスピンドル(14)と、からなり、
前記スピンドルの外周に形成したネジ山のピッチおよび前記調整筒の内周に形成したネジ溝のピッチを部分的に変更し、ハンドル(12)の所定の回転量に対するパッキン(16)の上下動が、水の閉め切りの直前に小さくなるようにした、
ことを特徴とするウォーターハンマー防止蛇口用部品。
【請求項5】
既存の蛇口のスピンドル(14)に取り付けることでウォーターハンマーの発生を防止するためのウォーターハンマー防止蛇口用部品であって、
蛇口本体(22)に形成された螺子筒(24)の上端部に取り付けられるカバーナット(28)とスピンドルに取り付けられたハンドル(12)との間に配置され、スピンドルの先端に組み付けたパッキン(16)による水の閉め切りの直前に、カバーナット上面とハンドル下面との間に挟止されることでハンドルの回転操作に負荷を与える弾性体(32)からなる、
ことを特徴とするウォーターハンマー防止蛇口用部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−214177(P2006−214177A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−28243(P2005−28243)
【出願日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】