説明

ウシの品種の鑑別方法

【課題】牛肉の基となっている牛の品種を、実際に売られている牛肉を材料として効率的に鑑別する方法、殊に、生産量が多く、かつ、不当表示などの偽装工作の対象となる可能性が高い第一代交雑種やホルスタイン種の肉が、黒毛和種由来の肉として販売されているような場合、これを非黒毛和種由来の肉であると鑑別できる方法を提供する。
【解決手段】遺伝子多型のうち、1種以上の特定の多型マーカーを指標として、遺伝子増幅法により被験牛の遺伝子DNAを検出することにより、当該被験牛が黒毛和種か否か等を鑑別する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子の検出による、ウシの品種の鑑別方法に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
現在、我国で飼育されている肉用牛は、黒毛和種、褐毛和種、無角和種、日本短角種の和牛4品種と、若干の外国種である。和牛4品種の中でも特に黒毛和種の供用頭数は多く、その繁殖雌牛は我国の肉用種繁殖雌牛総頭数において約90%を占めている。一方、我国で飼育されている乳用牛は、そのほぼ全てがホルスタイン種で、この他に若干のジャージー種が存在する。
【0003】
ホルスタイン種の雄子牛は肥育用素牛として出荷されていた。ホルスタイン種の肉質は黒毛和種に劣るが、その枝肉は安価で、大衆肉として好まれてきたが、牛肉の輸入自由化に伴い、ホルスタイン種牛肉と競合する外国産の安価な牛肉が市場に大量に出回るようになった。そこで、外国産の安価な牛肉に対抗するため、国内では、ホルスタイン種雌牛に黒毛和種雄牛を交配して作った第一代交雑種 からの牛肉生産が盛んになってきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−209581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、近年、牛海綿状脳症 (BSE; Bovine Spongiform Encephalopathy) 感染牛が
我国でも確認されるようになり、牛肉の安全性に対する消費者の不安から、一時、牛肉需要が激減した。また、外国産輸入牛肉を国産牛肉と偽称した事例に代表されるような、牛肉などの食品を不当な表示で販売するという不祥事も起きた。この偽称販売は輸入牛肉に対してだけではなく、国産牛肉に対しても行われている可能性を否定できない。例えば、上述の黒毛和種とホルスタイン種との第一代交雑種の毛色は、黒毛和種の毛色と見分けがつきにくいだけではなく、肉質も黒毛和種に近く、この第一代交雑種の中でも、特に肉質の良いものは黒毛和種とほとんど差が認められないこともある。このため、この第一代交雑種牛肉が、黒毛和種高級牛肉として偽称販売される可能性を否定することができない。
このような偽装を防止するため、農林水産省は素牛の誕生から市場までの流れをトレースできるシステム (トレーサビリティー) の構築に努めている。このシステムは、食肉の偽装販売を防ぎ、食肉の品質や安全性を保証する上でも重要な要素になると期待されている。また、このトレーサビリティーを補完する意味で、黒毛和種と第一代交雑種とを正しく鑑別する技術、ひいては牛品種を正しく鑑別する技術の確立が望まれている。しかし、現在に至るまで、科学的な手法に基づく客観的判定基準による品種鑑定技術は、実用化されていない。
【0006】
そこで、本発明が解決すべき課題は、牛肉の基となっている牛の品種を、実際に売られている牛肉を材料として効率的に鑑別する方法、殊に、生産量が多く、かつ、不当表示などの偽装工作の対象となる可能性が高い第一代交雑種やホルスタイン種の肉が、黒毛和種由来の肉として販売されているような場合、これを非黒毛和種由来の肉であると鑑別できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
生物の進化は、遺伝子の本質であるDNAの塩基配列の突然変異によりもたらされたと考えられる。品種の違いもこのような塩基配列の変化が蓄積した結果と考えられるから、鑑別対象となる品種間で、ゲノムDNAの塩基配列が一塩基でも異なる「多型」が認められれば、この多型を品種鑑別のマーカーとして利用できることになる。
【0008】
DNA塩基配列の多型を、品種鑑別のマーカーとする検査の場合、検査対象とすべきDNAの範囲を絞ることができるため、と畜から日時が経過した、冷凍もしくは冷蔵保存されていた肉であっても、DNAが抽出できさえすれば検査することが可能と考えられる。それ故、食肉を対象とした遺伝子に関わる検査の場合、遺伝子の多型を検査マーカーとすることが好適である。
【0009】
近年、遺伝子工学が飛躍的に発展し、DNA分析に基づく遺伝学的な分析が可能となった
。DNAの多型は遺伝標識として有用で、それをマーカーとして、家畜では、血統登録、個
体識別、親子判定、病原遺伝子のキャリア個体の除去などに利用されている。遺伝子多型の検索方法としては、特に限定されず、通常公知の方法、例えば、マイクロサテライト法、RAPD (Random Amplified Polymorphic DNA)法、Amplified Fragment Length Polymorphism (AFLP) 法 (Vos, et al. 1995)等〔例えば、バイオマニュアルシリーズ1,遺伝子工学の基礎技術,山本 雅編,羊土社(1993)等を参照のこと]等や、これらの遺伝子検索方法の変法等を行うことが可能である。
【0010】
例えば、AFLP法 は、2種類の制限酵素を用いた多型解析法であり、比較的簡単に多数のゲノム情報を得ることの出来る多型解析法として注目されている。そのため、AFLP法 は
、遺伝的類縁関係 (Nijiman, et al. 1999、Moreno, et al. 2002) 、QTL (quantitative
trait loci) 解析 (Otsen, et al. 1996) 、連鎖地図作成 (Barendse, et al. 1994、Lee, et al. 2002) 、cDNAを利用した発現遺伝子の解析 (Bracaccia, et al. 2001) などの幅広い研究に応用されており、本発明においても好適な遺伝子多型の検索法として応用することができる。すなわち、AFLP法 自体は、一度にゲノム全体の多型をスクリーニングするため、遺伝子座毎の遺伝子型の判定が不可能であるが、AFLP多型となっている原因(一塩基多型や、塩基の挿入若しくは欠損に基づく多型)を同定することにより、この同定情報を基に、PCR−RFLP法やハイブリダイズ法等により、被験牛の遺伝子型の判定を行うことが可能である。かかる遺伝子型の判定結果を集積して解析することにより、遺伝子頻度を推測し、牛の品種間の遺伝的構造の差異が予測することが可能となる。
【0011】
本発明者は、上記の課題の解決に向けて、黒毛和種とホルスタイン種間におけるAFLP法を用いた遺伝子の多型解析の結果、牛の品種を鑑別可能な遺伝子の多型マーカーを見出し、本発明を完成した。
【0012】
多型マーカーの検索]
本発明者は、黒毛和種と、ホルスタイン種またはホルスタイン種と黒毛和種の第一代交雑種(以下、F1ともいう)等とを峻別可能な遺伝子の多型マーカーを見つけだすために、AFLP法により、ホルスタイン種に高頻度で検出されるAFLP多型断片を中心に検索を行った。
【0013】
まず、黒毛和種とホルスタイン種各10頭ずつで1次スクリーニングを行い、検出されるAFLP断片に偏りがあったプライマーセットについては、黒毛和種を50頭に、ホルスタイン
種を51頭に増やして、2次スクリーニングを行った。
【0014】
(i)牛のゲノムDNA抽出
まず、牛の肝臓組織、リンパ節、血液(白血球)をホモジナイズした残渣を、ザルコシル、EDTAを含むTNE溶液に溶解後、Proteinase Kを加え、37℃で一晩インキュベートした
。次に、TE-フェノール抽出、フェノール/クロロフォルム/イソアミルアルコール抽出、
ジエチルエーテル抽出、およびエタノール沈殿によりDNAを抽出精製し、かかるDNAを遺伝子試料とした。
【0015】
(ii)AFLP法によるゲノムスキャンニング
AFLP法における操作は、基本的には、Vosら (1995) の方法に従って行った。まず、500ngのDNAを制限酵素Taq IとEcoRIの組み合わせで切断し、表1に示したTaq IアダプターとEcoRIアダプターを付加し、これをPCRのためのテンプレートとした。PCR反応液は、アダプターを付加した鋳型DNA 溶液5μl、1×Ex Taq buffer、dNTP Mixture (0.2mM each)、TaKaRa Ex TaqTM Hot Start Version (1U)、1つの塩基を付加させたアダプターに特異的に結合する1st PCRプライマー(Taq IプライマーとEcoRIプライマー;表1参照)各75ngを含み、蒸留水で全量を50μlに調整した。1st PCR反応は、94℃ 30秒、56℃1分、72℃ 1分を1サイクルとして20サイクル繰り返した後、72℃ 10分の伸長反応を行った。なお、サーマルサイクラーは、PE BiosystemsのGeneAmp PCR system 9700Gを使用した。1st PCR産物は蒸留水で10倍希釈し−20℃で保存した。
【0016】
【表1】

【0017】
[表中、アダプターとプライマーの配列番号は、上から順に、23〜30(アダプターの2本鎖は、1本鎖毎にカウント)とする]
【0018】
次に、蒸留水で10倍希釈した1st PCR産物5μlに、1×Ex Taq buffer、dNTP Mixture(0.2mM each)、TaKaRa Ex TaqTMHot Start Version(1U)、3つの塩基を付加させたアダプターに特異的に結合する2nd PCRプライマー(Taq IプライマーとEcoRIプライマー;表1参照)を加え、蒸留水で20μlに調整した。加えるプライマーは付加されたアダプターの種類に従った。PCR反応は、94℃ 30秒、65℃ 30秒、72℃ 1分を1サイクルとして13サイクル繰り返した。さらに94℃ 30秒、65℃ 30秒、72℃ 1分のサイクルを23サイクル繰り返した。その際に、1サイクルごとに0.7℃ずつ温度を下げるタッチダウンPCRを行った。2nd PCR産物は、スラブ型電気泳動装置を用い、Long Ranger(Takara)ゲルで、0.6×TBE、1,800Vで2.5時間、電気泳動した。電気泳動後、SILVER SEQUENCETM DNA Staining Reagents (Promega)で銀染色し、DNAバンドを観察した。
【0019】
上述の方法により、黒毛和種およびホルスタイン種各10頭ずつのゲノムDNAにおいて、
合計500組のプライマーセットでスキャンニングした結果、黒毛和種に高頻度に検出され
た多型バンドが4本、ホルスタイン種に高頻度に検出された多型バンドが29本得られた(
図1参照)。これらのバンドが得られたプライマーセットを用い、黒毛和種50頭、ホルス
タイン種51頭に供試頭数を増やし2次スクリーニングを行ったところ、6種類のAFLP多型バンドの検出頻度が極端に偏っていた。よって、これら6種類の多型断片をBIMA(Breed Identified Markers derived from AFLP)1〜6とし、以降の解析を行った。
【0020】
また、上述のAFLPゲノムスキャニングとは別個に、合計約1000組のプライマーセッ
トを用いて、AFLPゲノムスキャニングを行った。その結果、さらに高精度の検出を可能とする5種類の新たな識別マーカー(BIMA7〜11)を得た。
【0021】
(iii)AFLP多型断片のクローニングと塩基配列の解析
次に、銀染色法により検出されたAFLP多型バンド(BIMA1〜11)をポリアクリルアミド
ゲルから切り出し、TE 20μlに浸してDNAを溶出させた。このDNA溶液をテンプレートとして2nd PCRと同じ条件でPCR反応を行い、1.5%アガロースゲルで20分間電気泳動した。UV
照射下でゲルからバンドを切り出し、Ultra CleanTM 15 DNA Purification Kit (MO BIO)
でDNAを抽出した。
【0022】
抽出したAFLP多型断片は、pGEM-T Vector (pGEM-T Easy Vector System II;Promega
)に挿入後、コンピテント大腸菌 (JM109)に導入し、抗生物質アンピシリン添加LB-アガ
ープレート上で、37℃で一晩培養した。プレートに生育した上記プラスミドで形質転換されたアンピシリン耐性の大腸菌のコロニーを滅菌爪楊枝で拾い上げ、少量を保存用プレートに殖菌した後、残りを0.2mg/ml Proteinase K、0.45% NP40、0.45% Tween20を含む溶
液でDNAを溶出させ、2nd PCRと同じ条件でPCR反応を行い、目的の断片がクローニングさ
れているか電気泳動により確認した。
【0023】
目的の断片がクローニングされているコロニーを、加熱滅菌した白金耳で保存用プレートから拾い、50μg/mlアンピシリン添加LB培地3mlに移し、37℃で一晩振盪培養した。プ
ラスミドはアルカリ法で抽出し、RNase Aで混入しているRNAを分解後、フェノール/クロ
ロフォルム/イソアミルおよびジエチルエーテルで抽出後、エタノール沈殿したDNAを50μl 蒸留水に溶かした。
【0024】
クローニングされたAFLP断片の塩基配列は、Sequi Therm EXCELTM II DNA sequencing Kits-LC (EPICENTRE Technologies)により解析した。IRD800で標識されたM13 Forward、M13 Reverseの2種類のプライマーを用い、添付プロトコールに従い、95℃ 5分加熱後、95
℃ 30秒、50℃ 15秒、70℃ 1分を1サイクルとして30サイクル繰り返した後、70℃ 7分間
の伸長反応を行い、ラベリングした。シークエンスにはLong Ranger Gelを用い、LI-COR
社DNAシーケンサーにて、0.8×TBE、2,000V、5時間以上通電し、解析した。
【0025】
(iv)フランキングサイトの塩基配列決定
多型部位は、EcoRI、Taq Iの制限酵素認識部位である可能性があるため、AFLP多型断片の両端を含むフランキングサイトの塩基配列を、Universal GenomeWalkerTM Kit (BD Biosciences)を用いたPCR Walking法(Devic, et al. 1997)で決定した。無作為に選んだ黒毛和種1個体のDNAを、添付マニュアルに従い、Dra I、EcoRV、Pvu II、Stu Iの4種類の制限酵素で切断し、それぞれにGenome-Walker Adaptor(表2)をライゲーションし、ライブラリーを作成した。
【0026】
【表2】

【0027】
[表中、アダプターとプライマーの配列番号は、上から順に、31〜34(アダプターの2本鎖は、1本鎖毎にカウント)とする]
【0028】
【表3】

【0029】
[表中、プライマーの配列番号は、左上から左下、次いで、右上から右下に向かって、順に、35〜58とする]
【0030】
アダプターを付加した4種類のゲノムライブラリーをテンプレートとして、プライマリ
ーPCRを行った。反応液は、1μlテンプレートDNA溶液、1×TthPCR Reaction Buffer、dNTP(0.2mM each)、1.1mM Mg(OAc)2、0.2μM Adaptor primer 1(表2)、0.2μM 1st PCR
プライマー(表3)、1×Advantage Genomic Polymerase Mixを含み、蒸留水で全量50μl
とし、94℃ 2秒、72℃ 3分を1サイクルとして7サイクル反応させた。この際、タッチダウンPCRにより67℃まで伸長反応の温度を下げた。その後、94℃ 2秒、67℃ 3分を1サイクルとして32サイクル反応させ、67℃で4分維持した。
【0031】
次に、蒸留水で50倍に希釈したプライマリーPCR産物 1μl、1×Tth PCR Reaction Buffer、dNTP(0.2mM each)、1.1mM Mg(OAc)2、0.2μM Adaptor primer 2(表2)、0.2μM 2nd PCRプライマー(表3)、1×Advantage Genomic Polymerase Mixを含み、蒸留水で全量50μlとしたセカンダリーPCR反応液を調整した。PCR反応条件は94℃ 2秒、72℃ 3分を1サイクルとして5サイクル行った。この際、タッチダウンPCRにより67℃まで伸長反応の温度を下げた。その後、94℃ 2秒、67℃ 3分を1サイクルとして20サイクル行い、67℃で4分維持した。それでも伸長反応がうまく行かない場合は、step down PCRを行った (Zhang, et al. 2000)。
【0032】
PCR Walkingにより得られたPCR産物は、アガロースゲルから回収し、(iii)AFLP多型断
片のクローニングと塩基配列の解析で用いられたクローニングおよびシークエンス方法と同様に、クローニング後、塩基配列を決定した。ただし、サブクローニングの確認は、PCR Walking法のセカンダリーPCRで使用したプライマーを用いた。
BIMA7〜11に対しても、同様の方法でフランキングサイトの塩基配列の決定を行った。
【0033】
(v)品種間の変異の特定
フランキングサイトの塩基配列に基づいて、制限酵素部位を挟みこめるプライマーセットを設計した。このプライマーセットを用いて黒毛和種とホルスタイン種のゲノムDNAでPCR反応を行った。反応条件は94℃ 2分間熱変性後、94℃ 30秒、65℃ 30秒、72℃ 1分を1
サイクルとして30サイクル反応させた後、72℃ 7分、伸長反応した。得られた産物はアガロースゲルから回収し、SILVER SEQUENCETM DNA Sequencing Reagentsを用い、添付プロ
トコールに従ってシーケンス反応を行い、銀染色法でバンドを検出した。シークエンス解析の結果から黒毛和種とホルスタイン種の塩基配列を比較し、BIMA1〜11の多型断片にお
いて多型の原因となっている変異を特定したところ、制限酵素認識部位の変異が原因であったものが8種類 (EcoRIが3種類、Taq Iが5種類)、欠失によるものが3種類であった。
【0034】
このようにして配列が決定されたBIMA1〜11の多型断片を、黒毛和種型とホルスタイン
種型に分けて開示する。
【0035】
図2は、BIMA1の多型断片を示した図面である。図2(1)は、ホルスタイン種型の断
片(BIMA1a:配列番号1)であり、(2)は、黒毛和種型の断片(BIMA1b:配列番号2)である。図2により、BIMA1の多型断片における多型は、黒毛和種のウシの遺伝子DNA
における、配列番号2に示す塩基配列の164〜166番目における遺伝子多型が、「CTC」であるか、または、当該3塩基の欠失であるか、により表現される多型であることがわかる。
【0036】
図3は、BIMA2の多型断片を示した図面である。図3(1)は、ホルスタイン種型の断
片(BIMA2a:配列番号3)であり、(2)は、黒毛和種型の断片(BIMA2b:配列番号4)である。図3により、BIMA2の多型断片における多型は、黒毛和種のウシの遺伝子DNA
における、配列番号4に示す塩基配列の589番目の塩基における遺伝子多型が、「G]であるか、または、「A」であるか、により表現される多型であることがわかる。
【0037】
図4は、BIMA3の多型断片を示した図面である。図4(1)は、ホルスタイン種型の断
片(BIMA3a:配列番号5)であり、(2)は、黒毛和種型の断片(BIMA3b:配列番号6)である。図4により、BIMA3の多型断片における多型は、黒毛和種のウシの遺伝子DNA
における、配列番号6に示す塩基配列の560〜568番目の塩基における遺伝子多型が、「ACCCTCAGG」であるか、または、当該9塩基の欠失であるか、により表現される多型であることがわかる。
【0038】
図5は、BIMA4の多型断片を示した図面である。図5(1)は、ホルスタイン種型の断
片(BIMA4a:配列番号7)であり、(2)は、黒毛和種型の断片(BIMA4b:配列番号8)である。図5により、BIMA4の多型断片における多型は、黒毛和種のウシの遺伝子DNA
における、配列番号8に示す塩基配列の445番目の塩基における遺伝子多型が、「C」であるか、または、「G」であるか、により表現される多型であることがわかる。
【0039】
図6は、BIMA5の多型断片を示した図面である。図6(1)は、ホルスタイン種型の断
片(BIMA5a:配列番号9)であり、(2)は、黒毛和種型の断片(BIMA5b:配列番号10)である。図6により、BIMA5の多型断片における多型は、黒毛和種のウシの遺伝子DNA
における、配列番号10に示す塩基配列の344番目の塩基における遺伝子多型が、「C」であるか、または、「G」であるか、により表現される多型であることがわかる。
【0040】
図7は、BIMA6の多型断片を示した図面である。図7(1)は、ホルスタイン種型の断
片(BIMA6a:配列番号11)であり、(2)は、黒毛和種型の断片(BIMA6b:配列番号12)である。図7により、BIMA6の多型断片における多型は、黒毛和種のウシの遺伝子DNA
における、配列番号12に示す塩基配列の524番目の塩基における遺伝子多型が、「A」であるか、または、当該塩基の欠失であるか、により表現される多型であることがわかる。
【0041】
図8は、BIMA7の多型断片を示した図面である。図8(1)は、ホルスタイン種型の断片(BIMA7a:配列番号13)であり、(2)は、黒毛和種型の断片(BIMA7b:配列番号14)である。図8により、BIMA7の多型断片における多型は、黒毛和種のウシの遺伝子DNAにおける、配列番号14に示す塩基配列の734番目の塩基における遺伝子多型が、「C
」であるか、または、「T」であるか、により表現される多型であることがわかる。
【0042】
図9は、BIMA8の多型断片を示した図面である。図9(1)は、ホルスタイン種型の断片(BIMA8a:配列番号15)であり、(2)は、黒毛和種型の断片(BIMA8b:配列番号16)である。図9により、BIMA8の多型断片における多型は、黒毛和種のウシの遺伝子DNAにおける、配列番号16に示す塩基配列の1212番目の塩基における遺伝子多型が、「T」であるか、または、「C」であるか、により表現される多型であることがわかる。
【0043】
図10は、BIMA9の多型断片を示した図面である。図10(1)は、ホルスタイン種型の断片(BIMA9a:配列番号17)であり、(2)は、黒毛和種型の断片(BIMA9b:配列番号18)である。図10により、BIMA9の多型断片における多型は、黒毛和種のウシの遺伝子DNAにおける、配列番号18に示す塩基配列の1051番目の塩基における遺伝子多型が、「G」であるか、または、「A」であるか、により表現される多型であることがわかる。
【0044】
図11は、BIMA10の多型断片を示した図面である。図11(1)は、ホルスタイン種型の断片(BIMA10a:配列番号19)であり、(2)は、黒毛和種型の断片(BIMA10b:配列番号20)である。図11により、BIMA10の多型断片における多型は、黒毛和種のウシの遺伝子DNAにおける、配列番号20に示す塩基配列の633番目の塩基における遺伝子多型が、「G」であるか、または、「A」であるか、により表現される多型であることがわかる。
【0045】
図12は、BIMA11の多型断片を示した図面である。図12(1)は、ホルスタイン種型の断片(BIMA11a:配列番号21)であり、(2)は、黒毛和種型の断片(BIMA11b:配列番号22)である。図12により、BIMA11の多型断片における多型は、黒毛和種のウシの遺伝子DNAにおける、配列番号22に示す塩基配列の202〜204番目の塩基における遺伝子多型が、「TGG」の3塩基であるか、または、当該塩基の欠失であるか、により表現される多型であることがわかる。
【0046】
なお、本明細書における核酸塩基の表示は、通常の例に則り、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)である。
【0047】
さらに、配列番号1〜12に示す塩基配列は、すべて、ウシのゲノムDNAの一部を構成するポリヌクレオチドであり、特定の制限酵素でウシのゲノムDNAを処理することにより得られる、特定のポリヌクレオチド鎖である(詳細については後述する)。そして、これらの配列番号1〜22のうち、配列番号1と2、3と4、5と6、7と8、9と10、11と12、13と14、15と16、17と18、19と20、および、21と22は、本鑑別方法を行う上での指標となる遺伝子多型を示すポリヌクレオチド鎖の組であるが、これらのポリヌクレオチド鎖を表示する塩基の番号は、別添の配列表の表示とそれ以外の部分とでは異なる場合がある。すなわち、遺伝子多型が、一塩基置換等のポリヌクレオチド鎖の塩基数の変動を伴わない多型であれば、別添の配列表の表示とそれ以外の部分の表示は一致するが、例えば、特定の塩基の欠落等のポリヌクレオチド鎖の塩基数の変動を伴う多型の場合においては、両者が一致しない場合がある。
【0048】
例えば、配列番号1と2は、配列番号2における第164〜166番目の3塩基「CTG」が、配列番号1においては欠落している遺伝子多型を示している。つまり、配列番号2の全塩基数は762であるのに対して、配列番号1の全塩基数は、それよりも3塩基少ない759である。この場合、別添の配列表では、「配列番号1の全塩基数は759であり、かつ、配列番号2の第164〜166番目に該当する部分は無視して表示する」が、それ以外の部分では、この塩基の欠落がかかわる遺伝子多型の形態を明示するために、「
配列番号1の全塩基数は762であり、かつ、配列番号2の第164〜166番目に該当する部分を欠落部分としてカウントして表示する」こととする。
【0049】
配列番号5と6、および、21と22の組においても、これと同様の表示を行っている。
【0050】
本鑑別方法
本発明は、下記1〜11で表されるウシの遺伝子の多型のうち、1種または2種以上の多型を指標として、被験牛の遺伝子DNAを検出することにより、当該被験牛が黒毛和種であるか否かを鑑別する、ウシの品種の鑑別方法(以下、本鑑別方法ともいう)を提供する発明である。
【0051】
1.黒毛和種のウシの遺伝子DNAにおける、配列番号2(BIMA1b)に示す塩基配列の164〜166番目の塩基「CTC」における遺伝子多型(以下、多型1ともいう)である。
【0052】
多型1は、典型的には、当該遺伝子多型が、「CTC」であるか、または、当該3塩基の欠失であるか、により表現される多型である。
【0053】
2.黒毛和種のウシの遺伝子DNAにおける、配列番号4(BIMA2b)に示す塩基配列の
589番目の塩基「G」における遺伝子多型(以下、多型2ともいう)である。
多型2は、典型的には、当該遺伝子多型が、「G」であるか、または、「A」であるか、により表現される多型である。
【0054】
3.黒毛和種のウシの遺伝子DNAにおける、配列番号6(BIMA3b)に示す塩基配列の560〜568番目の塩基「ACCCTCAGG」における遺伝子多型(以下、多型3ともいう)である。
【0055】
多型3は、典型的には、当該遺伝子多型が、「ACCCTCAGG」であるか、または、当該9塩基の欠失であるか、により表現される多型である。
【0056】
4.黒毛和種のウシの遺伝子DNAにおける、配列番号8(BIMA4b)に示す塩基配列の445番目の塩基「C」における遺伝子多型(以下、多型4ともいう)である。
多型4は、典型的には、当該遺伝子多型が、「C」であるか、または、「G」であるか、により表現される多型である。
【0057】
5.黒毛和種のウシの遺伝子DNAにおける、配列番号10(BIMA5b)に示す塩基配列
の344番目の塩基「C」における遺伝子多型(以下、多型5ともいう)である。
【0058】
多型5は、典型的には、当該遺伝子多型が、「C」であるか、または、「G」であるか、により表現される多型である。
【0059】
6.黒毛和種のウシの遺伝子DNAにおける、配列番号12(BIMA6b)に示す塩基配列の524番目の塩基「A」における遺伝子多型(以下、多型6ともいう)である。
【0060】
多型6は、典型的には、当該遺伝子多型が、「A」であるか、または、当該塩基の欠失であるか、により表現される多型である。
【0061】
7.黒毛和種のウシの遺伝子DNAにおける、配列番号14(BIMA7b)に示す塩基配列の734番目の塩基「C」における遺伝子多型(以下、多型7ともいう)である。
【0062】
多型7は、典型的には、当該遺伝子多型が、「C」であるか、または、「T」であるか、により表現される多型である。
【0063】
8.黒毛和種のウシの遺伝子DNAにおける、配列番号16(BIMA8b)に示す塩基配列の1212番目の塩基における遺伝子多型(以下、多型8ともいう)である。
【0064】
多型8は、典型的には、当該遺伝子多型が、「T」であるか、または、「C」であるか、により表現される多型である。
9.黒毛和種のウシの遺伝子DNAにおける、配列番号18(BIMA9b)に示す塩基配列の1051番目の塩基における遺伝子多型(以下、多型9ともいう)である。
【0065】
多型9は、典型的には、当該遺伝子多型が、「G」であるか、または、「A」であるか、により表現される多型である。
【0066】
10.黒毛和種のウシの遺伝子DNAにおける、配列番号20(BIMA10b)に示す塩基配
列の633番目の塩基における遺伝子多型(以下、多型10ともいう)である。
【0067】
多型10は、典型的には、当該遺伝子多型が、「G」であるか、または、「A」であるか、により表現される多型である。
【0068】
11.黒毛和種のウシの遺伝子DNAにおける、配列番号22(BIMA11b)に示す塩基配
列の202〜204番目の塩基における遺伝子多型(以下、多型11ともいう)である。
【0069】
多型11は、典型的には、当該遺伝子多型が、「TGG」の3塩基であるか、または、当該塩基の欠失であるか、により表現される多型である。
本鑑別方法は、特に、被験牛が黒毛和種牛であるか、または、ホルスタイン種牛、若しくは、ホルスタイン種牛と黒毛和種牛の第一代交雑種であるか、を鑑別することができる方法として用いることが有用である。
【0070】
本鑑別方法は、被験牛の遺伝子試料におけるアリルタイプを判別し、そのアリルタイプから、被験牛の品種を鑑別する方法である。
【0071】
ここで、遺伝子試料とは、好適には、牛の体細胞の遺伝子(具体的には、DNA)、または、これを主成分として含む試料をいう。好適な遺伝子試料を牛の体細胞の遺伝子としたのは、生殖細胞の遺伝子では、一生殖細胞において、父方または母方のいずれか一方のアリルタイプしか判別できず、迅速・的確な個体のアリルタイプの判別が困難であるからである。遺伝子試料の採取部位は、特に限定されず、例えば、筋肉組織、皮下組織、末梢血白血球、毛根細胞などから採取することができる。また、採取対象は、生きている牛のみならず、市場に出回っている精肉であってもよい。本鑑別方法の主要な実施形態が、市販の精肉の品種の鑑別であることを鑑みると、本鑑別方法における遺伝子試料の採取対象が精肉でも可能であることは、極めて重要なことである。遺伝子試料の採取対象からの遺伝子試料の調製は、通常公知のDNAの抽出・精製方法に従って行うことが可能である。また、市販のDNAの抽出・精製キットを用いて、遺伝子試料の調製を行うことも可能である〔採取対象として精肉を用いる場合、筋肉組織等からDNAを抽出するキット(QIAGEN社のQIAamp DNA Mini Kit 等)を用いることも可能である〕。
【0072】
遺伝子試料からの特定の遺伝子多型である多型1〜6を検出する方法は、特に限定されず、例えば、インベーダー・アッセイ法〔Third Wave Technologies 社(米国)〕、SSCP法、各種のRFLP法、HET(hetero duplex analysis)法、DGGE法(denaturin
g gradient gel electrophoresis) 法、DS(direct sequence) 法、CCM(chemical cleavage mismatch)法、CDI(carbodiimid modification)法、PCR法を用いた一本鎖DNA高次構造多型解析法を行うことができる〔PCR−SSCP(single-stranded conformation polymorphism) 法〕、PCR/ GC−clamp 法〔例えば、バイオマニュアルシリーズ1,遺伝子工学の基礎技術,山本 雅編,羊土社(1993)等を参照のこと、特に、PCR/ GC−clamp 法については、Myers,R.M.,Shefield,V.,and Cox,D.R.(1988) in Genomic Analysis:A Practical Approach.K.Davies,ed.IRL Press Limited,Oxford,pp.95-139 等を参照のこと〕。
【0073】
また、本鑑別方法を行う態様は、特に限定されず、選択する遺伝子多型の検出方法に応じて適宜選択することができる。典型的には、本鑑別方法を行うための要素が備わっている、遺伝子検出用キットを用いて行うことが可能である。具体的には、例えば、ウエルが設けられているマイクロプレートの個々のウエルに、本鑑別方法を行うために必要な材料や試薬を組み合わせて、遺伝子多型部位における塩基の相違を検出可能な反応を行い、かかる検出反応により、所望する遺伝子多型部位における塩基の相違を検出することができる。また、マイクロプレートに代えて、いわゆるマイクロアレイを用いて、遺伝子の検出を、さらに集約的に行うことも可能である。このように、この遺伝子検出用キットは、マイクロプレートやマイクロアレイ等の遺伝子検出を行う器具、試薬、希釈液等を、必要に応じて組み合わせて、その構成要素とすることができる。
【0074】
本鑑別方法は、上述したように、BIMA1〜11という異なる遺伝子座に、それぞれ遺伝子
の多型に基づく異なるアリルタイプを見出して完成された発明であり、被験牛の品種を的確、かつ、多様な観点から鑑別することが可能である。
本鑑別方法により、以下の観点から、被験牛の品種を鑑別することができる。
【0075】
(1)被験牛が、黒毛和種であるか否かを鑑別することができる。
【0076】
上記の遺伝子の多型は、黒毛和種とホルスタイン種の間において見出されたものであり、特に、黒毛和種においては、特徴的なアリルパターンをBIMA1〜11において示すことが明らかとなった。ブランド黒毛和種の精肉は、市場において高級品として認識されており、ホルスタイン種との第一代雑種やホルスタイン種そのものの精肉と消費者において混同されることが懸念されている。そのため、精肉が、第一代交雑種やホルスタイン種の肉にもかかわらず、黒毛和種の肉として、偽証・販売されていないかどうかを明確に鑑別可能であることは、非常に有益なことである。
【0077】
具体的に開示すると、下記のように、特性の異なる2種類のマーカー群を用いて、2段階のスクリーニングを行うことにより、高検出率かつ低危険率で、被験牛の鑑定を行うことが可能である(詳細については、後述する)。
【0078】
1)BIMA1〜6を用いた態様(図13)
(第1段階)
被験牛における、多型1および/または6を検出し、当該遺伝子多型が非黒毛和種型を
示す場合には、当該被験牛を非黒毛和種と判定し、
(第2段階)
第1段階において、多型1および/または6の遺伝子多型が非黒毛和種型を示さない場合には、第2段階として、多型2、4および5からなる群から選ばれる2若しくは3種の遺伝子多型を検出し、当該遺伝子多型が非黒毛和種型を示さない場合には、当該被験牛を黒毛和種と判定する。
【0079】
2)BIMA1〜11を用いた態様
(第1段階)
被験牛における、多型7および/または8を検出し、当該遺伝子多型が非黒毛和種型を
示す場合には、当該被験牛を非黒毛和種と判定する工程である。
【0080】
この工程により、非黒毛和種を高頻度で検出することができるので、初期のスクリーニング検査として、この第1段階を独立した鑑定態様とすることも可能である。
【0081】
(第2段階)
第1段階において、多型7および/または8の遺伝子多型が非黒毛和種型を示さない場合には、第2段階として、多型1〜6、および、多型9〜11からからなる群から選ばれる2種以上の遺伝子多型を検出し、当該遺伝子多型が非黒毛和種型を示さない場合には、当該被験牛を黒毛和種と判定する工程である。
【0082】
この第2段階で用いる9種類の多型のうち、特に、多型1及び11を検出対象とすることが、検出精度を効率的に高めることが可能であり、好適である。また、これらの多型1及び11に加えて、多型6および/または9を検出対象とすると、いっそう検出精度を向上させることが可能となる。
【0083】
このようにして、「黒毛和種にもかかわらず、黒毛和種と判定されない」という危険を、最大限排除しつつ、「黒毛和種」として偽装した、ホルスタイン種や、ホルスタイン種と黒毛和種の第一代雑種等を鑑別することが可能となる。
【0084】
(2)他の態様の鑑別をすることも可能である。
本発明において見出されたBIMA1〜11における多型と、他の遺伝子の多型に対する情報
を組み合わせることによって、さらに多様な牛の品種の鑑別を行うことが可能である。
【0085】
このようにして、本鑑別方法により、被験牛の品種、好適には、被験牛が黒毛和種か否かを、精肉の段階においても鑑別することが可能である。
【0086】
本鑑別方法により、小売りされている精肉から、その基になっている牛の品種を鑑別することにより、不等表示等の不正行為を抑止し、健全な流通を維持し、その結果、消費者の保護を図ることが可能となる。また、本鑑別方法は、輸入牛肉、外国産の牛肉、ホルスタイン種と黒毛和種の第一代交雑種以外の交雑種等を識別する手段の一つとして、技術的な応用価値がある。
【0087】
本検出用キット
さらに、本発明は、本鑑別方法を行うための検出用キット(以下、本検出用キットともいう)を提供する発明である。
【0088】
本検出用キットには、本鑑別方法を行うために必要な要素が含有されている。例えば、遺伝子検出用の試薬(ヌクレオチド鎖を含む)、希釈液、検出用のプレート(いわゆるDNAチップを含む)等を挙げることができるが、その中でも、PCR法(その変法を含む)等の遺伝子増幅法に、遺伝子増幅用プライマーとして用いるヌクレオチド鎖(本ヌクレオチド鎖)は重要である。
【0089】
このように、本発明は、本鑑別方法を行うために、遺伝子増幅用プライマー等として用いることができる、特定のヌクレオチド鎖(以下、本ヌクレオチド鎖ともいう)を提供する発明である。
【0090】
本ヌクレオチド鎖は、下記の態様を例示することができる。
【0091】
1.配列番号1または2の164〜166番目の塩基(多型1)を検出可能な遺伝子増幅産物を与える、配列番号1または2に示す塩基配列(BIMA1)を基とした増幅用プ
ライマーとして用いることができるヌクレオチド鎖。
【0092】
2.配列番号3または4の589番目の塩基(多型2)を検出可能な遺伝子増幅産物を与える、配列番号3または4に示す塩基配列(BIMA2)を基とした増幅用プライマーとして用いることができるヌクレオチド鎖。
【0093】
3.配列番号5または6の560〜568番目の塩基(多型3)を検出可能な遺伝子増幅産物を与える、配列番号5または6に示す塩基配列(BIMA3)を基とした増幅用プライマーとして用いることができるヌクレオチド鎖。
【0094】
4.配列番号7または8の445番目の塩基(多型4)を検出可能な遺伝子増幅産物を与える、配列番号7または8に示す塩基配列(BIMA4)を基とした増幅用プライマーとして用いることができるヌクレオチド鎖。
【0095】
5.配列番号9または10の344番目の塩基(多型5)を検出可能な遺伝子増幅産物を与える、配列番号9または10に示す塩基配列(BIMA5)を基とした増幅用プライマーとして用いることができるヌクレオチド鎖。
【0096】
6.配列番号11または12の524番目の塩基(多型6)を検出可能な遺伝子増幅産物を与える、配列番号11または12に示す塩基配列(BIMA6)を基とした増幅用プライマーとして用いることができるヌクレオチド鎖。
【0097】
7.配列番号13または14の734番目の塩基(多型7)を検出可能な遺伝子増幅産物を与える、配列番号13または14に示す塩基配列(BIMA7)を基にした増幅用プライマーとして用いることができるヌクレオチド鎖。
【0098】
8.配列番号15または16の1212番目の塩基(多型8)を検出可能な遺伝子増幅産物を与える、配列番号15または16に示す塩基配列(BIMA8)を基にした増幅用プライマーとして用いることができるヌクレオチド鎖。
【0099】
9.配列番号17または18の1051番目の塩基(多型9)を検出可能な遺伝子増幅産物を与える、配列番号17または18に示す塩基配列(BIMA9)を基にした増幅用プライマーとして用いることができるヌクレオチド鎖。
【0100】
10.配列番号19または20の633番目の塩基(多型10)を検出可能な遺伝子増幅産物を与える、配列番号19または20に示す塩基配列(BIMA10)を基にした増幅用プライマーとして用いることができるヌクレオチド鎖。
【0101】
11.配列番号21または22の202〜204番目の塩基(多型11)を検出可能な遺伝子増幅産物を与える、配列番号21または22に示す塩基配列(BIMA11)を基にした増幅用プライマーとして用いることができるヌクレオチド鎖。
【0102】
これらの態様の本ヌクレオチド鎖は、選択する検出法によって異なる態様となり得る。すなわち、例えば、SSCP(Single-strand conformation polymorphism) 法、RFLP(restriction fragment length polymorphism)法、インベーダー法等の多型塩基の相違により、直接的に異なる遺伝子増幅産物を得て、これにより多型を検出する場合には、好適な態様として、BIMA1〜11の多型塩基を含むヌクレオチド鎖とハイブリダイズが可能であり、かつ、その3’末端に多型塩基に対応する塩基を保有する、塩基数が10〜4
5、好ましくは15〜40のヌクレオチド鎖が挙げられる(この態様のヌクレオチド鎖を、遺伝子増幅用プライマーの対の一方として用いて、被験牛の遺伝子を増幅して得られる遺伝子増幅産物を、所望するアリルタイプの判別情報として用いることができる)。
【0103】
また、両方の多型塩基を含む遺伝子領域を増幅させて、得られた増幅産物の分子量を比較することにより、多型塩基の内容を検出する方法(この方法は、多型1、3、11のように、多型部分において塩基の欠失や挿入が認められる場合が有用である)を選択する場合や、得られた遺伝子増幅産物に多型部分に対して感受性が認められる制限酵素を作用させて、その消化産物の分子量の相違を検出する方法(この方法は、多型2,4〜10のように、多型塩基が置換している場合が有用である)を行う場合には、BIMA1〜11の多型塩基を含むヌクレオチド鎖とハイブリダイズが可能であり、かつ、多型塩基に対応する部分を含まずに、プライマーとしてのハイブリダイズに多型塩基を挟み込んで、多型塩基を含む増幅産物を得ることができる、塩基数が10〜45、好ましくは15〜40のヌクレオチド鎖であることが好適である。
【発明の効果】
【0104】
本発明により、牛肉の基となっている品種を効率的に鑑別する方法、すなわち、ホルスタイン種、黒毛和種、およびこれらの第一代交雑種を鑑別する方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】AFLP法による多型解析例を示した図面である。
【図2】BIMA1にかかわる遺伝子領域の塩基配列を示した図面である。
【図3】BIMA2にかかわる遺伝子領域の塩基配列を示した図面である。
【図4】BIMA3にかかわる遺伝子領域の塩基配列を示した図面である。
【図5】BIMA4にかかわる遺伝子領域の塩基配列を示した図面である。
【図6】BIMA5にかかわる遺伝子領域の塩基配列を示した図面である。
【図7】BIMA6にかかわる遺伝子領域の塩基配列を示した図面である。
【図8】BIMA7にかかわる遺伝子領域の塩基配列を示した図面である。
【図9(1)】BIMA8aにかかわる遺伝子領域の塩基配列を示した図面である。
【図9(2)】BIMA8bにかかわる遺伝子領域の塩基配列を示した図面である。
【図10(1)】BIMA9aにかかわる遺伝子領域の塩基配列を示した図面である。
【図10(2)】BIMA9bにかかわる遺伝子領域の塩基配列を示した図面である。
【図11】BIMA10にかかわる遺伝子領域の塩基配列を示した図面である。
【図12】BIMA11にかかわる遺伝子領域の塩基配列を示した図面である。
【図13】BIMAマーカー5種類を用いた2段階判定による品種鑑定例を示した図面である。
【図14】各マーカーにおける多型検出方法と検出断片サイズを示した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0106】
SNPsマーカーを用いた遺伝子型判別]
次に、多型部分の変異の種類に応じて、PCRやミスマッチPCR-RFLPなどによる大量試料
について簡便に遺伝子型判別を解析できる方法を構築した(表4、図14)。
【0107】
(1)BIMA1〜6
反応液は、ゲノムDNA 50ng、1×PCR buffer、dNTP mixture (0.2mM each)、各プライマー 10pmol、DNA polymerase 1U (TaKaRa Ex TaqTM Hot Start Version) を含み、蒸留水で全量20μlとした。基本的なPCRの条件は、94℃ 2分熱変性後、94℃ 30秒、65(or 55)℃ 30秒、72℃ 1分を1サイクルとして30サイクル反応後、72℃ 7分の伸長反応を行った。ただし、増幅しにくいプライマーについては、65℃のアニーリング温度を62℃に下げて行った。PCR-RFLPを行うマーカーについては、以下の反応を行った。反応液は、PCR産物 10μl、制限酵素バッファー 3μl、制限酵素EcoRIまたはTaqI 5unitを含み蒸留水で全量30μlとし、EcoRIで切断するものは37℃、TaqIで切断するものは65℃でそれぞれ12時間以上インキュベートした。BIMA2、4、5、6の反応液は、3%アガロースゲルで100V、30分間、電気泳動後、エチジウムブロマイド染色によりバンドを検出した。BIMA1と3のPCR産物は、5%ポリアクリルアミドゲルで、1,800V、2時間、電気泳動後、銀染色(Silver sequence DNA staining reagents:Promega社)によりバンドを検出した。なお、ミスマッチPCR-RFLPとは、PCRプライマーセットの一方に、作為的に一塩基の置換を入れたプライマーを用いることで(表4参照)、RFLPで使用する制限酵素で認識される塩基配列をプライマー領域に持つPCR産物を作り出し、多型部分が制限酵素で切断されないアリルを鋳型としたPCR産物であっても、この部分が必ず切断される方法である(図14)。これは、PCR反応および制限酵素処理が正常に起きていることを裏付ける内部指標となる。
【0108】
(2)BIMA7〜11
ゲノムDNA(10ng/μl)5μl、10×PCR buffer(100mM Tris-HCl, 15mM MgCl, 500mM KCl ;
pH8.6) 2.0μl、dNTP Mixture(2.5mM each)1.6μl、TaKaRa Ex TaqTMHot Start Version(5unit/μl)0.08μl、Forwardプライマー 10ngとReverseプライマー10ngをそれぞれ加え
、超純水で全量を20μlとして反応を行った。PCRの条件は基本的には以下のように設定した。94℃ 2分後、94℃30秒、65℃ 30秒、72℃ 1分を1サイクルとして30サイクル繰り返した後、72℃ 7分の伸長反応を行った。ただし、PCR増幅がしにくいプライマーについては
、65℃のアニーリング温度を下げて行った。
【0109】
PCR産物10μl、10×制限酵素buffer(各制限酵素に対応するもの)3μl、制限酵素(10unit/μl)0.5μlをそれぞれ加え、超純水で全量を30μlとして各制限酵素の活性温度でインキュベートした。
【0110】
40%グリセロール液 (40%グリセロール, 0.25% Bromophenol Blue, 0.25% Xylene Cyanol FF) を加えて1.5%アガロースゲル (アガロース S 60mg, 1×TBE buffer 40ml, エチジウムブロマイド溶液 (10mg/ml in water) 2.0μl) で電気泳動した。
【0111】
銀染色法にはSILVER SEQUENCETMDNA Staining Reagents (Promega) を用いた。方法は
プロトコールに従った。
【0112】
ゲル溶液の作成は、尿素 35g、10×TBE (1L中にTris 108g, Boric Acid 55g, Na3EDTA
・2H2O 9.3g) 8.4ml、Long Ranger(R) Gel Solution 8.4ml、これに超純水を加えてよく撹拌し、尿素が完全に溶けた後、超純水を加えて全量を70mlにした。この溶液を0.45μm
のフィルターで濾過し、10分間脱気した。これに10%APS 350μl、TEMED 35μlを加え、
ゲル板にゆっくり流し込み、上部にコームを差し込み2時間以上放置した。電気泳動は、
スラブ型電気泳動装置を用いた。bufferには0.6×TBEを使用し、1,800Vで行った。
【0113】
電気泳動後、ゲル板をはがし染色した。染色には、10%酢酸溶液 2L (停止液)、2g AgNO3・37% Formaldehyde 2L (染色液)、6g NaCO3 2L (現像液)を用いた。また現像液は氷上に保存し、使用する直前に37% Formaldehyde 3mlとSodium Thiosulfate 400μlを加えた。
【0114】
ゲル板をトレイに入れ、停止液 1Lを加え、20分間振とうした。その後、超純水で3回洗浄し、染色液にゲル板を浸し、30分間振とうした。染色が終わったゲル板は、銀が落ちすぎない程度に超純水に軽く浸し、すばやく現像液に浸し、バンドが現れるまで振とうした。その後、適度なところで停止液を加えて反応を止めた後、超純水で再び洗浄し、DNAバンドを観察した。
【0115】
【表4】

【0116】
[表中、プライマーの配列番号は、表の上から下に向かって、順に、59〜80とする]
【0117】
(1)BIMA1〜6
この方法を用いて、黒毛和種100頭、ホルスタイン種100頭およびF1 90頭について、各
マーカーでの遺伝子型頻度と遺伝子頻度を調べた(表5)。黒毛和種やホルスタイン種か
ら検出されたBIMAマーカーの遺伝子頻度は、F1においてほぼ半分の値を示した。この事から、各BIMAマーカーは、黒毛和種とホルスタイン種の集団において、ここで示された遺伝子頻度と同等の頻度で分布していることが示唆された。
【0118】
【表5】

【0119】
(2)BIMA1〜11
また、同様の方法を用いて、(1)とは別個に黒毛和種296頭、ホルスタイン種10
0頭およびF196頭について、各マーカーでの遺伝子型頻度と遺伝子頻度を調べた(表6
)。
【0120】
【表6】

【0121】
複数のSNPsマーカーを用いた遺伝子型頻度からの鑑定確率計算
(1)BIMA1〜6
まず、黒毛和種においてアリルaの遺伝子頻度が小さいマーカーであるBIMA1と6をタイ
プIマーカー、ホルスタイン種においてBIMA1と6以外でアリルaの遺伝子頻度が高いマーカーであるBIMA2、4、5をタイプIIマーカーとした。これらのマーカーを組み合わせたときのF1の検出率と黒毛和種を誤ってF1と判定してしまう危険率を、表5の結果を用いてそれぞれ計算したところ、タイプIマーカー群では検出率73.01%、危険率1.00%(表7)、タイプIIマーカー群では検出率56.27%、危険率1.98%(表8)であった。
【0122】
【表7】

【0123】
【表8】

【0124】
ここで、タイプIマーカーでホルスタイン種アリルaが検出されたものはF1(またはホルスタイン種)として扱い、タイプIマーカーでアリルaが検出されなかったものは、タイプIIマーカーで鑑定し、2マーカー以上でアリルaが検出されたものをF1(またはホルスタイン種)として判定すると定義し、この2段階鑑定による検出率と危険率を求めた。
【0125】
F1でありながらタイプIマーカーでアリルaが検出できない個体は、
式:1−0.7301=0.2699
で表され、これに対して検出率56.27%のタイプIIマーカーを適用すると、新たに検出されるF1は、
式:0.2699×0.5627=0.1519
で表される。これは、タイプIマーカーで検出された個体以外に、新たに検出されるF1全
体に対する割合なので、全体の検出率は、
式:0.7301+0.1519=0.8820
で表され、F1全体の88.20%でアリルaが検出される、すなわち、検出率88.20%となる。
【0126】
次に危険率だが、これは黒毛和種をF1として間違って判定してしまう、すなわちアリルaが検出される確率を意味する。BIMA1は黒毛和種において遺伝子型aaおよびabは検出されないため(表5参照)、危険率は0、BIMA6は遺伝子型abが1個体存在するので危険率1%、したがってタイプIマーカー群での危険率は1%である。一方、タイプIIマーカー群では、上
述の定義より、3マーカーのうちいずれか2個で検出される黒毛和種の割合と3マーカー全てで検出される割合を加えたものが危険率となる。すなわち、2マーカーで検出される組
み合わせである、BIMA2×4、BIMA4×5、BIMA5×2の危険率から、3マーカー全てで検出さ
れるBIMA2×4×5の危険率が重複する分を差し引いたものであるから、
式:0.088×0.107+0.107×0.0591+0.0591×0.088−2×0.088×0.107×0.0591=0.0198
で計算される。これを信頼度で表現する場合は、
式:1−0.0198=0.9802
で与えられ、98.02%となる。
【0127】
よって、これら全てを統合した結果から、2段階判定法では、88.20%の検出率と98.02%
の信頼度で鑑定可能と評価された。ただし、危険率は検出されたマーカー数および種類により変動するため、あくまで信頼度が低くなる場合の組み合わせにおける値として示した。
【0128】
(2)BIMA1〜11
上記(1)の方法に準じて、BIMA1〜11の鑑定能についての検討を行った。その結果、こ
れらのマーカーを用いた場合の最高の品種鑑定能を得るマーカーの組み合わせは、BIMA1
、BIMA7、BIMA8、BIMA11を用いた場合であることが明らかとなった。その精度は、F1の検
出率91.7%、誤判別率0.7% (信頼度99.3%)であった。F1の検出率が向上すると共に、信頼度も98%から、99.3%に向上した。
【0129】
つまり、これらマーカーを用いて判別を行った場合、黒毛和種をF1として誤判別してしまうことが、例えば1000頭中20頭から7頭にまで減少可能となった。検査対象となる個体
のほとんどが黒毛和種であることを考えると、この誤判別率を減少できたことは重要である。
【0130】
またF1の検出率を上昇させるためには、これら4つのマーカーに加えて、BIMA6とBIMA9を加えることが有効である。この場合、F1の検出率96.7%、誤判別率2.4% (信頼度97.6%)であった。
【0131】
なお、黒毛和種とホルスタイン種の鑑定確率について、もっとも有効な品種鑑定能を得るマーカーの組み合わせは、F1識別と同様、BIMA1、BIMA7、BIMA8、BIMA11を用いた場合
であることが明らかとなった。その精度は、ホルスタイン種の検出率99.3%、誤判別率0.7% (信頼度99.3%)であった。また2種類のみのマーカーを用いた場合(BIMA7,8)では、検出率81.1%、誤判別率0% (信頼度100%)であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記1〜11で表されるウシの遺伝子の多型のうち、1種または2種以上の多型を指標として、被験牛の遺伝子DNAを検出することにより、当該被験牛が黒毛和種であるか否かを鑑別する、ウシの品種の鑑別方法。
1.黒毛和種のウシの遺伝子DNAにおける、配列番号2に示す塩基配列の164〜166番目の塩基における遺伝子多型。
2.黒毛和種のウシの遺伝子DNAにおける、配列番号4に示す塩基配列の589番目の塩基における遺伝子多型。
3.黒毛和種のウシの遺伝子DNAにおける、配列番号6に示す塩基配列の560〜568番目の塩基における遺伝子多型。
4.黒毛和種のウシの遺伝子DNAにおける、配列番号8に示す塩基配列の445番目の塩基における遺伝子多型。
5.黒毛和種のウシの遺伝子DNAにおける、配列番号10に示す塩基配列の344番目の塩基における遺伝子多型。
6.黒毛和種のウシの遺伝子DNAにおける、配列番号12に示す塩基配列の524番目の塩基における遺伝子多型。
7.黒毛和種のウシの遺伝子DNAにおける、配列番号14に示す塩基配列の734番目の塩基における遺伝子多型。
8.黒毛和種のウシの遺伝子DNAにおける、配列番号16に示す塩基配列の1212番目の塩基における遺伝子多型。
9.黒毛和種のウシの遺伝子DNAにおける、配列番号18に示す塩基配列の1051番目の塩基における遺伝子多型。
10.黒毛和種のウシの遺伝子DNAにおける、配列番号20に示す塩基配列の633番目の塩基における遺伝子多型。
11.黒毛和種のウシの遺伝子DNAにおける、配列番号22に示す塩基配列の202〜204番目の塩基における遺伝子多型。
【請求項2】
1.黒毛和種のウシの遺伝子DNAにおける、配列番号2に示す塩基配列の164〜166番目における遺伝子多型が、「CTC」であるか、または、当該3塩基の欠失であるか、により表現される多型である、請求項1記載のウシの品種の鑑別方法。
【請求項3】
遺伝子多型を、配列番号1および2の164〜166番目の塩基部分を、遺伝子増幅法により得られる遺伝子増幅産物により検出する、請求項2記載のウシの品種の鑑別方法。
【請求項4】
2.黒毛和種のウシの遺伝子DNAにおける、配列番号4に示す塩基配列の589番目の塩基における遺伝子多型が、「G]であるか、または、「A」であるか、により表現される多型である、請求項1〜3のいずれかに記載のウシの品種の鑑別方法。
【請求項5】
遺伝子多型を、配列番号3および4の589番目の塩基部分を、遺伝子増幅法により得られる遺伝子増幅産物により検出する、請求項1〜4のいずれかに記載のウシの品種の鑑別方法。
【請求項6】
3.黒毛和種のウシの遺伝子DNAにおける、配列番号6に示す塩基配列の560〜568番目の塩基における遺伝子多型が、「ACCCTCAGG」であるか、または、当該9塩基の欠失であるか、により表現される多型である、請求項1〜5のいずれかに記載のウシの品種の鑑別方法。
【請求項7】
遺伝子多型を、配列番号5および6の560〜568番目の塩基部分を、遺伝子増幅法により得られる遺伝子増幅産物により検出する、請求項1〜6のいずれかに記載のウシの品種の鑑別方法。
【請求項8】
4.黒毛和種のウシの遺伝子DNAにおける、配列番号8に示す塩基配列の445番目の塩基における遺伝子多型が、「C」であるか、または、「G」であるか、により表現される多型である、請求項1〜8のいずれかに記載のウシの品種の鑑別方法。
【請求項9】
遺伝子多型を、配列番号7および8の445番目の塩基部分を、遺伝子増幅法により得られる遺伝子増幅産物により検出する、請求項1〜8のいずれかに記載のウシの品種の鑑別方法。
【請求項10】
5.黒毛和種のウシの遺伝子DNAにおける、配列番号10に示す塩基配列の344番目の塩基における遺伝子多型が、「C」であるか、または、「G」であるか、により表現される多型である、請求項1〜9のいずれかに記載のウシの品種の鑑別方法。
【請求項11】
遺伝子多型を、配列番号9および10の344番目の塩基部分を、遺伝子増幅法により得られる遺伝子増幅産物により検出する、請求項1〜10のいずれかに記載のウシの品種の鑑別方法。
【請求項12】
6.黒毛和種のウシの遺伝子DNAにおける、配列番号12に示す塩基配列の524番目の塩基における遺伝子多型が、「A」であるか、または、当該塩基の欠失であるか、により表現される多型である、請求項1〜11のいずれかに記載のウシの品種の鑑別方法。
【請求項13】
遺伝子多型を、配列番号11および12の524番目の塩基部分を、遺伝子増幅法により得られる遺伝子増幅産物により検出する、請求項1〜12のいずれかに記載のウシの品種の鑑別方法。
【請求項14】
7.黒毛和種のウシの遺伝子DNAにおける、配列番号14に示す塩基配列の734番目の塩基における遺伝子多型が、「C]であるか、または、「T」であるか、により表現される多型である、請求項1〜13のいずれかに記載のウシの品種の鑑別方法。
【請求項15】
遺伝子多型を、配列番号13および14の734番目の塩基部分を、遺伝子増幅法により得られる遺伝子増幅産物により検出する、請求項1〜14のいずれかに記載のウシの品種の鑑別方法。
【請求項16】
8.黒毛和種のウシの遺伝子DNAにおける、配列番号16に示す塩基配列の1212番目の塩基における遺伝子多型が、「T」であるか、または、「C」であるか、により表現される多型である、請求項1〜15のいずれかに記載のウシの品種の鑑別方法。
【請求項17】
遺伝子多型を、配列番号15および16の1212番目の塩基部分を、遺伝子増幅法により得られる遺伝子増幅産物により検出する、請求項1〜16のいずれかに記載のウシの品種の鑑別方法。
【請求項18】
9.黒毛和種のウシの遺伝子DNAにおける、配列番号18に示す塩基配列の1051番目の塩基における遺伝子多型が、「G」であるか、または、「A」であるか、により表現される多型である、請求項1〜17のいずれかに記載のウシの品種の鑑別方法。
【請求項19】
遺伝子多型を、配列番号17および18の1051番目の塩基部分を、遺伝子増幅法により得られる遺伝子増幅産物により検出する、請求項1〜18のいずれかに記載のウシの品種の鑑別方法。
【請求項20】
10.黒毛和種のウシの遺伝子DNAにおける、配列番号20に示す塩基配列の633番目の塩基における遺伝子多型が、「G」であるか、または、「A」であるか、により表現される多型である、請求項1〜19のいずれかに記載のウシの品種の鑑別方法。
【請求項21】
遺伝子多型を、配列番号19および20の633番目の塩基部分を、遺伝子増幅法により得られる遺伝子増幅産物により検出する、請求項1〜20のいずれかに記載のウシの品種の鑑別方法。
【請求項22】
11.黒毛和種のウシの遺伝子DNAにおける、配列番号22に示す塩基配列の202〜204番目の塩基における遺伝子多型が、「TGG」であるか、または、当該3塩基の欠失であるか、により表現される多型である、請求項1〜21のいずれかに記載のウシの品種の鑑別方法。
【請求項23】
遺伝子多型を、配列番号21および22の202〜204番目の塩基部分を、遺伝子増幅法により得られる遺伝子増幅産物により検出する、請求項1〜22のいずれかに記載のウシの品種の鑑別方法。
【請求項24】
鑑別方法が、被験牛が黒毛和種牛であるか、または、ホルスタイン種牛、若しくは、ホルスタイン種牛と黒毛和種牛の第一代交雑種であるか、を鑑別することができる方法である、請求項1〜23のいずれかの請求項に記載のウシの品種の鑑別方法。
【請求項25】
第1段階として、被験牛における、下記1および/または6の遺伝子多型を検出し、当該遺伝子多型が非黒毛和種型を示す場合には、当該被験牛を非黒毛和種と判定し、
1.黒毛和種のウシの遺伝子DNAにおける、配列番号2に示す塩基配列の164〜166番目の塩基における遺伝子多型。
6.黒毛和種のウシの遺伝子DNAにおける、配列番号12に示す塩基配列の524番目の塩基における遺伝子多型。
上記第1段階において、上記遺伝子多型1および/または6の遺伝子多型が非黒毛和種型を示さない場合には、第2段階として、上記の被験牛における下記2、4および5からなる群から選ばれる2種若しくは3種の遺伝子多型を検出し、当該遺伝子多型が非黒毛和種型を示さない場合には、当該被験牛を黒毛和種と判定する、請求項1〜24のいずれかに記載のウシの品種の鑑別方法。
2.黒毛和種のウシの遺伝子DNAにおける、配列番号4に示す塩基配列の589番目の塩基における遺伝子多型。
4.黒毛和種のウシの遺伝子DNAにおける、配列番号8に示す塩基配列の445番目の塩基における遺伝子多型
5.黒毛和種のウシの遺伝子DNAにおける、配列番号10に示す塩基配列の344番目の塩基における遺伝子多型。
【請求項26】
被験牛における、下記7および/または8の遺伝子多型を検出し、当該遺伝子多型が非黒毛和種型を示す場合には、当該被験牛を非黒毛和種と判定する、請求項1〜24のいずれかに記載のウシの品種の鑑別方法。
7.黒毛和種のウシの遺伝子DNAにおける、配列番号14に示す塩基配列の734番目の塩基における遺伝子多型。
8.黒毛和種のウシの遺伝子DNAにおける、配列番号16に示す塩基配列の1212番目の塩基における遺伝子多型。
【請求項27】
第1段階として、被験牛における、下記7および/または8の遺伝子多型を検出し、当該遺伝子多型が非黒毛和種型を示す場合には、当該被験牛を非黒毛和種と判定し、
7.黒毛和種のウシの遺伝子DNAにおける、配列番号14に示す塩基配列の734番目の塩基における遺伝子多型。
8.黒毛和種のウシの遺伝子DNAにおける、配列番号16に示す塩基配列の1212番目の塩基における遺伝子多型。
上記第1段階において、上記遺伝子多型7および/または8の遺伝子多型が非黒毛和種型を示さない場合には、第2段階として、上記の被験牛における下記1〜6、9〜11からなる群から選ばれる2種以上の遺伝子多型を検出し、当該遺伝子多型が非黒毛和種型を示さない場合には、当該被験牛を黒毛和種と判定する、請求項1〜24のいずれかに記載のウシの品種の鑑別方法。
1.黒毛和種のウシの遺伝子DNAにおける、配列番号2に示す塩基配列の164〜166番目の塩基における遺伝子多型。
2.黒毛和種のウシの遺伝子DNAにおける、配列番号4に示す塩基配列の589番目の塩基における遺伝子多型。
3.黒毛和種のウシの遺伝子DNAにおける、配列番号6に示す塩基配列の560〜568番目の塩基における遺伝子多型。
4.黒毛和種のウシの遺伝子DNAにおける、配列番号8に示す塩基配列の445番目の塩基における遺伝子多型。
5.黒毛和種のウシの遺伝子DNAにおける、配列番号10に示す塩基配列の344番目の塩基における遺伝子多型。
6.黒毛和種のウシの遺伝子DNAにおける、配列番号12に示す塩基配列の524番目の塩基における遺伝子多型。
9.黒毛和種のウシの遺伝子DNAにおける、配列番号18に示す塩基配列の1051番目の塩基における遺伝子多型。
10.黒毛和種のウシの遺伝子DNAにおける、配列番号20に示す塩基配列の633番目の塩基における遺伝子多型。
11.黒毛和種のウシの遺伝子DNAにおける、配列番号22に示す塩基配列の202〜204番目の塩基における遺伝子多型。
【請求項28】
上記第1段階において、被験牛の上記遺伝子多型7および/または8の遺伝子多型が非黒毛和種型を示さない場合には、第2段階として、上記1および11の遺伝子多型を検出し、当該遺伝子多型が非黒毛和種型を示さない場合には、当該被験牛を黒毛和種と判定する、請求項27記載のウシの品種の鑑別方法。
【請求項29】
上記第1段階において、被験牛の上記遺伝子多型7および/または8の遺伝子多型が非黒毛和種型を示さない場合には、第2段階として、上記1および11、並びに、6および/または9の遺伝子多型を検出し、当該遺伝子多型が非黒毛和種型を示さない場合には、当該被験牛を黒毛和種と判定する、請求項27記載のウシの品種の鑑別方法。
【請求項30】
遺伝子多型の検出は、インベーダー・アッセイ法、SSCP法、RFLP法、HET法、DGGE法、DS法、CCM法、CDI法、PCR−SSCP法、または、PCR/ GC−clamp 法、によって行われる、請求項1〜29のいずれかに記載のウシの品種の鑑別方法。
【請求項31】
下記1〜11に示す群からなる、1種または2種以上のヌクレオチド鎖。
1.配列番号1または2の164〜166番目の塩基を検出可能な遺伝子増幅産物を与える、配列番号1または2に示す塩基配列を基とした増幅用プライマーとして用いることができるヌクレオチド鎖。
2.配列番号3または4の589番目の塩基を検出可能な遺伝子増幅産物を与える、配列番号3または4に示す塩基配列を基とした増幅用プライマーとして用いることができるヌクレオチド鎖。
3.配列番号5または6の560〜568番目の塩基を検出可能な遺伝子増幅産物を与える、配列番号5または6に示す塩基配列を基とした増幅用プライマーとして用いることができるヌクレオチド鎖。
4.配列番号7または8の445番目の塩基を検出可能な遺伝子増幅産物を与える、配列番号7または8に示す塩基配列を基とした増幅用プライマーとして用いることができるヌクレオチド鎖。
5.配列番号9または10の344番目の塩基を検出可能な遺伝子増幅産物を与える、配列番号9または10に示す塩基配列を基とした増幅用プライマーとして用いることができるヌクレオチド鎖。
6.配列番号11または12の524番目の塩基を検出可能な遺伝子増幅産物を与える、配列番号11または12に示す塩基配列を基とした増幅用プライマーとして用いることができるヌクレオチド鎖。
7.配列番号13または14の734番目の塩基を検出可能な遺伝子増幅産物を与える、配列番号13または14に示す塩基配列を基にした増幅用プライマーとして用いることができるヌクレオチド鎖。
8.配列番号15または16の1212番目の塩基を検出可能な遺伝子増幅産物を与える、配列番号15または16に示す塩基配列を基にした増幅用プライマーとして用いることができるヌクレオチド鎖。
9.配列番号17または18の1051番目の塩基を検出可能な遺伝子増幅産物を与える、配列番号17または18に示す塩基配列を基にした増幅用プライマーとして用いることができるヌクレオチド鎖。
10.配列番号19または20の633番目の塩基を検出可能な遺伝子増幅産物を与える、配列番号19または20に示す塩基配列を基にした増幅用プライマーとして用いることができるヌクレオチド鎖。
11.配列番号21または22の202〜204番目の塩基を検出可能な遺伝子増幅産物を与える、配列番号21または22に示す塩基配列を基にした増幅用プライマーとして用いることができるヌクレオチド鎖。
【請求項32】
請求項31に記載のヌクレオチド鎖を構成要素として含む、請求項1〜30のいずれかに記載のウシの品種の鑑別方法を行うための、遺伝子検出用キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9(1)】
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【図9(2)】
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【図10(1)】
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【図10(2)】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−240320(P2009−240320A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−146583(P2009−146583)
【出願日】平成21年6月19日(2009.6.19)
【分割の表示】特願2004−26987(P2004−26987)の分割
【原出願日】平成16年2月3日(2004.2.3)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成15年11月30日 日本食肉研究会発行の「食肉の科学 第44巻 第2号 (通巻第82号)」に発表
【出願人】(504150450)国立大学法人神戸大学 (421)
【出願人】(591083336)株式会社ビー・エム・エル (31)
【出願人】(501167644)独立行政法人農業生物資源研究所 (200)
【Fターム(参考)】