説明

ウニ処理装置及びウニ処理方法

【課題】できる限り生殖巣を傷つけることなく、完全な形態の生殖巣を採取可能であり、口器側の周辺の殻を切断し、口器及び内臓を除去し且つ生殖巣を剥ぎ取ることが可能であり、得られた殻をウニ料理等の食器、或いは食品容器、冷凍食品容器として使用可能とすることができる、ウニ処理装置及びウニ処理方法を提供する。
【解決手段】ウニの口器側とは反対側からウニを固定するための固定具4と、該固定具4に対向する位置に配置されているウニ殻を切断するための切断具2を有し、該切断具2は、ウニの口器側面に対してほぼ垂直方向から口を含めた口器側の周辺の殻を円形に切除するための回転可能な円形刃が回転軸6の先端に固定されてなる切断具であり、前記固定具4のウニ載置箇所の中心と該円形刃の中心はほぼ同一線上に配置され、該固定具4と該円形刃は相対的に移動可能となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウニの殻に穴を開け、内臓などを除去し、傷のつかない生殖巣を採取するためのウニ処理装置及びウニ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に行われているウニの処理方法は、まずウニ殻を2つに割って内蔵などを振り落としたのち、殻に貼り付いている生殖巣を特殊なスプーンで剥ぎ取る方法である。この方法では、5個ある生殖巣のうち、常に割れ目に当たった1〜2個が傷つけられるという不都合がある。また、残りの生殖巣を損なわずに剥ぎ取るのは難しく、年季の必要な職人芸とされている。さらに、2つ割りされた殻には利用価値がないので、そのまま廃棄されている。
【0003】
特開昭56−99744号公報(特許文献1)には、ウニの殻割り器が示されている。該特許文献1によれば、抑圧部材の先端をウニの口の片側に咬合させた状態で、殻割り刃をウニに侵入させてこじ開けることによってウニの殻を2個に割り、生殖巣を採取することが示されている。しかしながら、該特許文献1の手段は、前記従来のウニ殻を2つに割る手法を機械によって行う手段にすぎず、割れ目に当たった1〜2個が傷つけられるという不都合は完全に解消できないし、且つ、2つ割りされた殻には利用価値がない。
【0004】
特開平7−194347号公報(特許文献2)には、ベルトコンベア上に比較的平坦な口器側を上部にしてウニを載置して移送しながら切断位置において帯状鋸刃等によって口器側部分をベルトコンベアと平行に切断して生殖巣を傷つけずに生殖巣を露出させる処理方式が示されている。
【0005】
しかしながら、ウニの口器側面は比較的平坦面となっており、ウニの生殖巣は該平坦面となっている口器側裏面にまで延びて付いているため、ベルトコンベア面に対して平行面でウニの口器側面を切断しようとすると、平坦面全体を切除することになりどうしても生殖巣の一部までもが切断されるという不都合がある。特許文献2のようなベルトコンベアと平行面でウニ殻を切断する方法では、ウニの生殖巣と口器の境界で切断することが困難であるという不都合がある。
【0006】
【特許文献1】特開昭56−99744号公報
【特許文献2】特開平7−194347号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、できる限り生殖巣を傷つけることなく、完全な形態の生殖巣が採取可能であり、口器側の周辺の殻を切断し、口器及び内臓を除去し且つ生殖巣を剥ぎ取ることが可能であり、得られた殻をウニ料理等の食器、或いは食品容器、冷凍食品容器として使用可能とすることができる、ウニ処理装置及びウニ処理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記した課題を解決する本発明のウニ処理装置は、ウニの口器側とは反対側からウニを固定するための固定具と、該固定具に対向する位置に配置されているウニ殻を切断するための切断具を有し、該切断具は、ウニの口器側面に対してほぼ垂直方向から口を含めた口器側の周辺の殻を円形に切除するための回転可能な円形刃が回転軸の先端に固定されてなる切断具であり、前記固定具のウニ載置箇所の中心と該円形刃の中心はほぼ同一線上に配置され、該固定具と該円形刃は相対的に移動可能となっていることを特徴とする。
【0009】
本発明のウニ処理装置において、円形刃は円盤の周辺部位に刃先が円盤平面に対してほぼ垂直に形成されて円筒状となっていることが望ましい。該円形刃をウニの口器側上方から垂直に移動させた場合に円形刃の刃先によりウニの口器側を切断することが可能となる。
【0010】
本発明のウニ処理装置において、円形刃は刃先の近傍に刃先がウニ殻内の一定深さで進入するのを阻止するストッパを有することが望ましい。切断具によりウニの殻に穴が開いた後に円形刃の全体がウニ殻の中に押し込まれ生殖巣を傷つける恐れがあるが、切断具が前記ストッパを有することにより、生殖巣の手前で円形刃の刃先が止まるので、生殖巣の損傷を防ぐことができる。
【0011】
本発明のウニ処理装置において、固定具に固定されたウニと回転する前記円形刃との相対的位置のブレを防止するためのブレ防止針A前記回転軸の先端に固定させてもよい。該ブレ防止針はウニの口に嵌合することにより、ウニに対して円形刃の回転が安定することになる。
【0012】
本発明のウニ処理装置において、ブレ防止針のウニへの挿入幅はウニの口の径とほぼ同等であり、該ブレ防止針の先端は、前記円形刃の刃先よりも突出していることが望ましい。該構成のブレ防止針によりウニの開口部にブレ防止針が確実に嵌合固定されるので、切断具全体の横ブレが抑制されることから回転する円形刃のブレが抑制され、ウニ殻の切断が安定化する。
【0013】
本発明のウニ処理装置において、ウニ殻切断時にウニを固定するための固定具は、固定台上に固定されており、該固定具は垂直に突起した複数個の突起物が形成されてなる剣山を用いることができる。このような剣山を用いることにより、剣山の突起物をウニの棘の隙間を縫って殻に接触するまで押し込むことによって剣山の突起物とウニの棘が絡まってウニが固定具上に固定される。
【0014】
本発明のウニ処理方法は、ウニの口器側を上にして固定具上に固定し、ウニの口器側に対してほぼ垂直方向から回転する円形刃を当接させてウニの生殖巣と口の境界を円形に切断して、穴を形成し、形成された穴から内臓を除去し、生殖巣を剥ぎ取ることを特徴とする。
【0015】
さらに好ましい本発明のウニ処理方法は、ウニの口器側を上にして固定具上に固定し、ウニの口にブレ防止針を嵌合させ、ウニの口器側に対してほぼ垂直方向から回転する円形刃を当接させてウニの生殖巣と口の境界を円形に切断して、穴を形成し、形成された穴から内臓を除去し、生殖巣を剥ぎ取ることを特徴とする。
【0016】
ウニを固定台に固定する方法は、固定台に固定された固定具としての剣山の突起物をウニの棘の隙間を縫って殻に接触するまで押し込むことによって剣山の突起物とウニの棘が絡まってウニを固定具上に固定する方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明のウニ処理装置及びウニ処理方法は、ウニの口器側面に対して回転する円形刃の刃先を垂直方向から当接させて切断しているので、ウニの生殖巣と口との境界を確実に簡単な操作で切断することが可能となり、生殖巣を切断することなく、内臓を除去した後、生殖巣を剥ぎ取り採取することができる。本発明のウニ処理方法では口器周囲にある突起も一緒に除去されるので、生殖巣の剥ぎ取りも容易に行える。さらに、円形に開いたウニ殻は、そのままウニ料理等を入れて食前に出す食器として利用、或いは、珍味等の食品を入れた食品容器、冷凍食品容器として利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明のウニ処理装置及びウニ処理方法を、本発明の装置の具体例の1例を示す図面、及び本発明のウニ処理方法の具体的な1例を示すプロセス図に基づいて次に説明する。
【0019】
ウニ処理装置
図1は本発明のウニ処理装置の1例を表し、(a)は側面図、(b)は正面図である。図1において、1は台座、2は切断具、3は切断具に回転運動を与え、切断具を保持するる切断具保持・動力機構、4はウニを固定するための固定具、5は固定具を固定するための固定台、6は台座1に垂直に固定して設けられ、切断具保持・動力機構3と固定台5を固定支持するための支持バーである。
【0020】
図2は、切断具2の1例を表し、図2における11は全体が開放端を有する円筒状で刃先が開放端付近の円周に沿って形成された円形刃である。円形刃11は中心に設けられた貫通口に回転軸12が挿入され、ナット15、15’にて回転軸12に締め付け固着されている。図4に円形刃11の刃先部分の一部を示すように刃先部分は短冊状等に形成された刃となっており、一部の短冊状の刃は垂直にさらに折り曲げられている。該折り曲げられた部分は、円形刃11がウニ内に進入するときに、ウニ殻の外郭に係止するようにストッパ14の役割をする。該ストッパ14により、円形刃11の刃先はそれ以上ウニの内部に進入しない。図2において点線で示すストッパ14は、図2の断面とは異なる他の断面で表されるストッパ14を図2において便宜的に表している。図2において13はブレ防止針であり、ウニの口に嵌合可能な開放端を有する円筒形となっている。ブレ防止針13の中心部には貫通口が形成されている。ブレ防止針13の貫通孔に回転軸12が挿入されており、ブレ防止針13が、回転軸12の径よりも大きい径の平頭部16の肩面と、ナット15’の平面との間に、遊びを持って挟着されている。
【0021】
図3は、切断具2の別の1例を表し、円形刃21と回転軸22とが一体成形されている。円形刃21は、回転軸22の一方端に形成された平頭部26が切断刃を有するように形成されており、軸方向に開放端を有する円筒状となっている。平頭部26の平面24は円形刃21がウニ内に進入するときのストッパの機能を有する。23はブレ防止針であり、ウニの口に嵌合可能な開放端を有する円筒形となっている。ブレ防止針23の中心軸部分には貫通口が形成され、該貫通孔にボルト25が挿入され、さらに平頭部26の回転中心に該ボルト25がねじ込まれ、且つ、平頭部26の平面とボルト25の間で、ブレ防止針23が遊びを持って挟着される。
【0022】
円形刃は以上のような構造の外に、一般に市販されているホールソーを用いることもできる。また、該ホールソーに対しても中心部にブレ防止針を設けることも可能である。
【0023】
ウニ処理方法
図5は、ウニに切断具を適用して、内臓を除去するプロセスを示す図である。
【0024】
図5(a)は、ウニの模式図を示す。31はウニの口であり、球状の殻32が地物に接する面にある。口31の内部にはアリストテレスのちょうちんとよばれる口器33がある。さらに殻32内部には、口器33に続いて、体内を一巻きのらせんを描きつつ上に抜ける消化器等の内臓34があり、殻32の上面の肛門35に続いている。殻32の内側の側面には肛門35から口器33近傍に延びて生殖巣36が貼り付いている。
【0025】
図5(b)は、ウニを逆さにしてウニ殻に切断具を適用しようとする状態を示す。切断具は図3の切断具と同等なものを概略的に示している。ウニ殻は固定台上の固定具により固定されている(図5には図示していない。)。
【0026】
図5(c)は、切断具をウニの口器側面に垂直に下降させて、ウニの口31内にブレ防止針23を押し込んで嵌合させた状態で、円形刃21を回転させて、口31と生殖巣36の境界の殻に円形刃21の刃先を当接させ殻を切断する状態を示す。この時、ブレ防止針23が口31と嵌合されているので、円形刃21の刃先が殻に当接しても、刃先のブレを防止することができる。
【0027】
図5(d)は、ウニ殻の口器側周囲の切断が完了した状態を示す。
図5(e)は、ウニ殻32をひっくり返して、振ることにより切断された口器側殻と共に内部の口器33及び内臓34を落下させて取り出す。
口器及び内臓が除去された状態のウニに対して、図示していないが、ヘラ等により生殖巣を採取する。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の装置及び方法によれば、ウニの生殖巣を切断することなく簡単な操作で口器周囲の殻を切断でき、口器及び内臓を除去し且つ生殖巣を剥ぎ取ることが可能であり、得られた殻をそのままウニ料理等を入れて食前に出す食器として利用、或いは、珍味等の食品を入れた食品容器、冷凍食品容器として使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明のウニ処理装置の1例を表し、(a)は側面図、(b)は正面図である。
【図2】本発明のウニ処理装置における切断具の1例を表す図である。
【図3】本発明のウニ処理装置における切断具の別の1例を表す図である。
【図4】本発明のウニ処理装置における切断具の1例の円形刃の刃先部分の一部を示す図である。
【図5】ウニに切断具を適用して、内臓を除去する本発明のウニ処理方法のプロセスを示す図である。
【符号の説明】
【0030】
1 台座
2 切断具
3 切断具保持・動力機構
4 固定具
5 固定台
6 支持バー
11 円形刃
12 回転軸
13 ブレ防止針
14 ストッパ
15、15’ ナット
16 平頭部
21 円形刃
22 回転軸
23 ブレ防止針
24 平面
25 ボルト
26 平頭部
31 口
32 殻
33 口器
34 内臓
35 肛門
36 生殖巣

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウニの口器側とは反対側からウニを固定するための固定具と、
該固定具に対向する位置に配置されているウニ殻を切断するための切断具を有し、
該切断具は、ウニの口器側面に対してほぼ垂直方向から口を含めた口器側の周辺の殻を円形に切除するための回転可能な円形刃が回転軸の先端に固定されてなる切断具であり、前記固定具のウニ載置箇所の中心と該円形刃の中心はほぼ同一線上に配置され、該固定具と該円形刃は相対的に移動可能となっていることを特徴とするウニ処理装置。
【請求項2】
前記円形刃は円盤の周辺部位に刃先が円盤平面に対してほぼ垂直に形成されたものである請求項1に記載のウニ処理装置。
【請求項3】
前記円形刃は刃先の近傍に刃先がウニ殻内へ一定深さで進入するのを阻止するストッパを有することを特徴とする請求項1又は2に記載のウニ処理装置。
【請求項4】
前記固定具に固定されたウニと回転時の前記円形刃との相対的位置のブレを防止するためのブレ防止針が前記回転軸の先端に固定されており、該ブレ防止針はウニの口に嵌合するものであることを特徴とする請求項1、2又は3に記載のウニ処理装置。
【請求項5】
前記ブレ防止針のウニへの挿入幅はウニの口の径とほぼ同等であり、該ブレ防止針の先端は、前記円形刃の刃先よりも突出していることを特徴とする請求項4に記載のウニ処理装置。
【請求項6】
前記固定具は切断具に対向する位置に配置された固定台上に固定されており、該固定具は垂直に突起した複数個の突起物が形成されてなる剣山であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載のウニ処理装置。
【請求項7】
ウニの口器側を上にして固定具上に固定し、
ウニの口器側に対してほぼ垂直方向から回転する円形刃を当接させてウニの生殖巣と口の境界を円形に切断して、穴を形成し、
形成された穴から内臓を除去し、
生殖巣を剥ぎ取ることを特徴とするウニ処理方法。
【請求項8】
ウニの口器側を上にして固定具上に固定し、
ウニの口にブレ防止針を嵌合させ、
ウニの口器側に対してほぼ垂直方向から回転する円形刃を当接させてウニの生殖巣と口の境界を円形に切断して、穴を形成し、
形成された穴から内臓を除去し、
生殖巣を剥ぎ取ることを特徴とするウニ処理方法。
【請求項9】
前記固定具は切断具に対向する位置に配置された固定台上に固定されており、該固定具は垂直に突起した複数個の突起物が形成されてなる剣山であり、剣山の突起物をウニの棘の隙間を縫って殻に接触するまで押し込むことによって剣山の突起物とウニの棘が絡まってウニを固定具上に固定することを特徴とする請求項7又は8に記載のウニ処理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−29087(P2010−29087A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−193271(P2008−193271)
【出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【出願人】(595051588)
【出願人】(507419219)有限会社尾塚水産 (3)
【Fターム(参考)】