説明

ウリ類ホモプシス根腐病菌を同定または検出のためのプライマーセットならびに該プライマーセットを用いた菌体または作物あるいは土壌から、ウリ類ホモプシス根腐病菌を同定または検出する方法

【課題】ウリ科作物の土壌病原糸状菌であるホモプシス・スクレロチオイデスを特異的に検出する方法を提供する。
【解決手段】ホモプシス・スクレロチオイデスのrDNA遺伝子群のITS領域の塩基配列のうち、ホモプシス・スクレロチオイデスに特異的な領域の塩基配列に対応したプライマーを用いて、被検対象の微生物の染色体DNAを鋳型とするPCR反応を行うことによって、ホモプシス・スクレロチオイデスの同定または検出を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウリ科作物の普遍的な病害菌であるホモプシス・スクレロチオイデス(Phomopsis sclerotioides)のリボゾームDNA(rDNA)を構成するITS領域(Internal Transcribed Spacer;ITS-1,-2)およびそれを利用したホモプシス・スクレロチオイデスの選択特異的な検出にある。
【背景技術】
【0002】
不完全菌類のホモプシス・スクレロチオイデスによるウリ科作物のホモプシス根腐病(Black root
rot)は、日本および欧州、北アメリカにおいて経済上の重要病害菌である。本菌に起因する根腐病は着果後収穫期前のウリ科作物に発生し、萎凋症状を引き起こす原因の1つと考えられている。
【0003】
本病害を効率的に防除するには土壌または初期発病植物体からのホモプシス・スクレロチオイデスの検出が不可欠であるが、本病原菌を的確に検出・同定する方法は欠如している。
【0004】
ホモプシス・スクレロチオイデス(P. sclerotioides)は、最初オランダにてキュウリに菌核様の黒点を伴う根腐をおこす糸状菌として報告された(Van Kesteren,
1966, “Black root rot” in cucubrbitaceae caused by Phomopsis sclerotioides
nov. spec., Netherland Journal of Plant Pathology 73:112-116)。日本における本病原菌は、埼玉県のキュウリにホモプシス根腐病を引き起こすPhomopsis sp.として報告された(非特許文献1 橋本ら、1985、ウリ科作物の新病害、ホモプシス根腐病、日本植物病理学会報51巻第1号94頁)が、その後ITS領域の塩基配列の類似性からホモプシス・スクレロチオイデス(P. sclerotioides)として、吉田ら(非特許文献2 2005、日本植物病理学会報71巻第3号219頁)が提唱している。
【0005】
【非特許文献1】日本植物病理学会報51巻第1号94頁、1985年
【非特許文献2】日本植物病理学会報71巻第3号219頁、2005年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記ホモプシス・スクレロチオイデスの分離、培養法として、感染した茎や根から一般糸状菌用の培地を用いて菌糸を単離することは可能である。しかし、選択培地は未開発であり、さらに人工培地上では胞子形成の誘導が極めて困難であるため、得られた菌体がホモプシス・スクレロチオイデスと特定するには、植物体への菌接種によって病徴の再現を確認するための長期間の試験が必要である。
【0007】
また、土壌中には極めて多様な糸状菌が生息しているため、土壌からホモプシス・スクレロチオイデスを一般糸状菌用の培地を用いて検出することはほとんど不可能である。
ウリ科作物の病害菌であるホモプシス・スクレロチオイデスに特異的な配列を有するリボゾームDNA遺伝子群のITS領域の遺伝子配列を決定し、同遺伝子に特異的な配列を見出すことができれば、PCR法により同特異配列を増幅、検出することによって、従来の方法に比べて迅速かつ特異的に病害菌の検出が可能となる。
【0008】
本発明は、ウリ科作物の病害菌であるホモプシス・スクレロチオイデスのrDNA遺伝子群の特異配列を見出し、本病害菌を特異的に検出する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ウリ科作物の病害菌であるホモプシス・スクレロチオイデスは、宿主植物体上で胞子を形成することが極めて稀であり、また、同定の基準となる擬似菌核の形成も栽培後期のウリ類の収穫期に起こるため、発病初期に病原菌種を特定することが非常に困難である。このような条件から、ホモプシス・スクレロチオイデスの客観的な分類・同定には分子レベルでの比較が必要かつ重要であると、本発明者は考えた。
【0010】
そこで、本発明者らは、ホモプシス・スクレロチオイデスに属する菌株からrDNA遺伝子群のITS領域の塩基配列を決定し、類縁菌群との系統的位置関係を検討し、ホモプシス・スクレロチオイデスに特異的な遺伝子配列の検出について鋭意研究を重ねた結果、特異的な配列を見出し、それらの配列を特異的に検出できるプライマーを設計することに成功し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、以下のとおりである。
【0011】
(1)ホモプシス・スクレロチオイデスを同定または検出する方法であって、リボゾームDNAのITS領域中のホモプシス・スクレロチオイデスに特異的な配列を検出することを特徴とする方法。
(2)前記リボゾームDNAのITS領域が、18S rDNAと5.8S rDNAとの間に存在するITS領域(ITS-1)、もしくは、5.8S rDNAと28S rDNAとの間に存在するITS領域(ITS-2)、またはこれらの両方である(1)の方法。
(3)前記リボゾームDNAのITS領域中のホモプシス・スクレロチオイデスに特異的な配列の検出を、同配列をPCR法により特異的に増幅するのに適した2種類のプライマーを用い、ホモプシス・スクレロチオイデスの染色体DNAまたは部分断片を鋳型とする増幅反応により行うことを特徴とする(1)または(2)に記載の方法。
【0012】
(4)リボゾームDNAのITS領域中のホモプシス・スクレロチオイデスに特異的な前記プライマーの塩基配列が、少なくとも一方は図1および表1に示すITS領域の塩基配列において塩基番号57〜85(CPs-1またはその相補配列であるCPs-1’)で表される第一の領域に対応し、他方は図1および表1に示すITS領域の塩基配列において塩基番号445〜473(CPs-2またはその相補配列であるCPs-2’)で表される領域に対応し、これらのプライマーを用いたPCRにより第一の領域および第二の領域の間の配列を増幅することを特徴とする(3)の方法。
【0013】
(5)18S rDNAと5.8S rDNAとの間に存在するITS領域(ITS-1)、もしくは5.8S rDNAと28S rDNAとの間に存在するITS領域(ITS-2)、またはこれらの両遺伝子中のホモプシス・スクレロチオイデスに特異的な配列を検出することによって、ホモプシス・スクレロチオイデスを同定または検出するために使用される2種類のオリゴヌクレオチドからなるPCRプライマーであって、前記プライマーの一方は図1に示すホモプシス・スクレロチオイデスの塩基配列において塩基番号57〜85(CPs-1またはその相補配列であるCPs-1’)で表される第一の領域に対応し、他方は表1に示すホモプシス・スクレロチオイデスの塩基配列において塩基番号445〜473(CPs-2またはその相補配列であるCPs-2’)で表される第二の領域に対応し、前記プライマーを用いたPCRにより第一の領域および第二の領域の間の配列を増幅することを特徴とするプライマーセット。
【0014】
該プライマーセットを用いて、ホモプシス・スクレロチオイデスに罹病したウリ科作物またはホモプシス・スクレロチオイデス汚染土から、ホモプシス・スクレロチオイデスを同定または検出する方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ウリ科作物の病害菌であるホモプシス・スクレロチオイデスに特異的な配列を有するリボゾームDNA遺伝子群のITS領域の遺伝子配列を決定し、同遺伝子に特異的な配列を見出し、PCR法により同特異配列を増幅、検出することによって、従来の方法に比べて迅速かつ特異的に病害菌の検出が可能となる。また、プライマーCPs-1/CPs-2の組合せは罹病植物根から抽出したDNAを鋳型とした場合にも増幅反応を起こすので、発病初期に病原菌種を特定することができる。加えて、ホモプシス・スクレロチオイデス(P.
sclerotioides)の汚染土壌の検出に利用することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の方法は、ホモプシス・スクレロチオイデスを同定または検出する方法である。ホモプシス・スクレロチオイデスの同定または検出とは、被検対象の微生物をホモプシス・スクレロチオイデスまたはそれ以外の微生物と判定すること、または被検対象中のホモプシス・スクレロチオイデスの有無を判定することをいう。本発明の方法は、被検対象中の微生物染色体のリボゾームDNA中に存在するITS領域がホモプシス・スクレロチオイデスに特異的な配列を有するか否かを検出することによって行われる。
【0017】
リボゾームDNAのITS領域中のホモプシス・スクレロチオイデスに特異的な配列とは、ホモプシス・スクレロチオイデスのリボゾームDNAのITS領域中に含まれ、他のホモプシス属菌等の近縁種のリボゾームDNAのITS領域中には含まれない配列をいう。
【0018】
1980年代に入って分子生物学の技術進歩、特にクローニング技術、PCR(Polymerase Chain
Reaction)法、自動シークエンサーの開発、高速演算可能なコンピューターの普及と新しい分子進化解析プログラムの開発は、生物の類縁関係や系統進化を分子レベルから研究する分子系統分類学を誕生させた。分子進化は形態に比べて一定に近い速度で変化するので、これを「分子時計」とみなし、生物のDNA、RNAあるいは蛋白質といった情報高分子を比較することによって、生物間の系統関係が推定出来ると考えるようになった。菌類においてもリボゾームRNA(rRNA)の塩基配列の解析が取り入れられデータが蓄積されつつある。
【0019】
リボゾームRNAは、すべての生物の生命活動に不可欠な蛋白合成に関わっており,これをコードする遺伝子であるリボゾームDNA(rDNA)はほとんどの生物でゲノム内に複数コピー存在し、真核生物では数百から数千コピー存在することが知られている(Gerbi, S. A.
1985, Moleculasr Evolutionary Genetics. Plenum Press. New York, pp.419-517)。リボゾームDNAは、真核生物では一般に18S rRNA,
5.8S rRNA, 28S rRNAをコードする領域(それぞれ、18S rDNA,
5.8S rDNA, 28S rDNAという)が連続して存在し、反復配列を繰り返している。この場合、18Sと5.8Sの間、5.8Sと28Sの間にITS領域(それぞれITS-1, ITS-2)が存在する。
【0020】
分子系統的な研究における手法は、相同と考えられる遺伝子またはそのITS領域の比較が一般的である。例えば、18S rDNAは科(family)や目(order)あるいは綱(class)以上の高次分類群の系統関係の解明に有効である(Bowman, B. H.
et al. 1992. Mol. Biol. Evol. 9:285-296)。また、28S rDNAは属(genus)や種(species)レベルの系統解析に使われている。
【0021】
一方、18Sや28Sに比べて可変領域に富んだITS領域(ITS-1, -2)は、近縁種あるいは種内系統群を識別する指標としても用いられている。例えば、糸状菌類の報告として、デルモシベ(Dermocybe)属、コルチナリウス(Cortinarius)属(Liu,Y. J. et al., 1997,
Can. J. Bot. 75:519-532)、アルミラリア(Armillaria)属(Chillali, M. et al.
1998, New Phytol. 138: 553-561)等がある。
【0022】
そこで、近縁種あるいは種内系統群を識別するのに優れた指標として使われているITS領域(ITS-1, ITS-2)の比較解析から、ウリ科作物の病害菌であるホモプシス・スクレロチオイデス(Phomopsis
sclerotioides)の系統関係を明らかにし、得られた分子情報(ITS-1, -2の塩基配列)からホモプシス・スクレロチオイデス固有の特異配列の解析を試みた。そして、後記実施例に示すように、ホモプシス・スクレロチオイデスに特異的な配列を見出し、それらの配列を特異的に検出できるプライマーを設計することに成功した。
【0023】
すなわち、本発明において、ホモプシス・スクレロチオイデスに特異的な配列を検出するリボゾームDNAのITS領域としては、18S rDNAと5.8S rDNAとの間に存在するITS領域(ITS-1)、もしくは、5.8S rDNAと28S rDNAとの間に存在するITS領域(ITS-2)またはこれらの両方が挙げられる。
【0024】
リボゾームDNAのITS領域中のホモプシス・スクレロチオイデスに特異的な配列の検出は、この配列をPCR法により特異的に増幅するのに適したプライマーを用い、ホモプシス・スクレロチオイデスの染色体DNAまたは部分断片を鋳型とする増幅反応により行うことができる。
【0025】
リボゾームDNAのITS領域中のホモプシス・スクレロチオイデスに特異的な配列としては、図1および表1に示すCPs-1またはCPs−2のいずれかの塩基配列、またはそれらの相補的塩基配列であるCPs-1’またはCPs-2’が挙げられる。CPs-1またはCPs-2に示す塩基配列は、ホモプシス・スクレロチオイデス(菌株コード:9946、9950、9956、Shimane 1、Shimane 3、02-13-9、02-30-3、990528、03-48-4、ATCC18585、ATCC38739、図1および表1参照)のITS領域の遺伝子を、子のう菌類のITS領域(5.8S rDNAを含む)を増幅するために設計された2種類の合成プライマーITS 1およびITS 4(Glass, N. L. &
Donaldson, G.C., 1995. Appl. Environ. Microbiol., pp.1323-1330)を用いて、それぞれの菌株の染色体DNAを鋳型とするPCRによって増幅されたDNA断片の塩基配列である。
【0026】
表1に上記塩基配列と、これに対応する近縁種のITS領域の塩基配列の比較を示す。本発明に用いるプライマーは、ホモプシス・スクレロチオイデスのITS領域を特異的に増幅することができるものであれば特に制限されないが、具体的には表1を参照し、ホモプシス・スクレロチオイデスに特異的な領域を設定し、該領域に対応する塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを合成すればよい。合成されたオリゴヌクレオチドの適性は、ホモプシス・スクレロチオイデスの染色体DNAまたは部分断片を鋳型としたときに増幅産物が得られ、近縁種の染色体DNAまたは部分断片を鋳型としたときに増幅産物が得られないことを確認することによって調べることができる。
【0027】
本発明に用いるプライマーとして具体的には、図1および表1に示したホモプシス・スクレロチオイデスの塩基配列において塩基番号57〜85で表される第一の領域に対応するプライマー(CPs-1)、または、その相補的配列を有するプライマー(CPs-1’)と、塩基番号445〜473で表される第二の領域に対応するプライマー(CPs-2)、または、その相補的配列を有するプライマー(CPs-2’)が挙げられる。これらのプライマーの組合せ(CPs-1とCPs-2またはCPs-1’とCPs-2’)によって第一の領域および第二の領域の間の配列を増幅すると、ITS-1とITS-2、およびこれらに挟まれた5.8S rDNAを含むDNA断片が得られる。
【0028】
染色体DNAの調製、オリゴヌクレオチドの合成、PCR反応およびPCR産物の解析等の手法は当業者によく知られた方法を採用することができる。
【0029】
(実施例)以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。
【0030】
実施例1:ホモプシス・スクレロチオイデスのITS領域の塩基配列解析による系統分類学的考察
以下、この菌株について、ITS領域の塩基配列解読および系統解析を行った。
【0031】
(1)供試菌株
ホモプシス・スクレロチオイデス(Phomopsis
sclerotioides)菌株コード:9946、9950、9956、Shimane 1, Shimane 3、02-13-9、02-30-3、990528、03-48-4、ATCC18585、ATCC38739、ホモプシス・ククルビタエ(P. cucurbitae)菌株コードMAFF410447、ホモプシス・ブレビスチオスポーラ(P. brevistylospora)菌株コードMAFF410449、ホモプシス・ヴェクサンス(P. vexans)菌株コードMAFF712047 ホモプシス・アスパラギ(P. asparagi)菌株コードMAFF237558、ホモプシス・フクシイ(P. fukushii)菌株コードK4、ホモプシス・ロンギコラ(P. longicolla)菌株コードMAFF305849、ホモプシス・オクルタ(P. occulta)菌株コードMAFF410330、ホモプシス・マクロスポーラ(P. macrospora)菌株コードMAFF410313、ホモプシス・ルディス(P. rudis)菌株コードMAFF410311。(以上、表1および表2参照)

【表1】




【表2】

【0032】
上記ホモプシス・スクレロチオイデスの菌株の内、菌株コード:9946、9950、9956の3菌株は罹病スイカから、Shimane 1,
Shimane 3、02-13-9の3菌株は罹病メロンから、02-30-3、990528、03-48-4は罹病カボチャから、本発明者らが日本各地のホモプシス根腐病発病株の根を採取して分離し、形態学的性状および培養学的性状を精査し、接種試験により種名を同定した菌株である。また、ホモプシス・スクレロチオイデス(P.
sclerotioides)ATCC18585およびATCC38739は、罹病キュウリ根からの分離株としてアメリカ合衆国の標準菌株コレクションより入手した(表2参照)。
【0033】
スクレロチオイデス以外のホモプシス属菌株の内、ホモプシス・ククルビタエ(P. cucurbitae)菌株コードMAFF410447、ホモプシス・ブレビスチオスポーラ(P. brevistylospora)菌株コードMAFF410449、ホモプシス・ヴェクサンス(P. vexans)菌株コードMAFF712047 ホモプシス・アスパラギ(P. asparagi)菌株コードMAFF237558、ホモプシス・ロンギコラ(P. longicolla)菌株コードMAFF305849、ホモプシス・オクルタ(P. occulta)菌株コードMAFF410330、ホモプシス・マクロスポーラ(P. macrospora)菌株コードMAFF410313、ホモプシス・ルディス(P. rudis)菌株コードMAFF410311は農林水産省、農業生物資源研究所より入手した菌株である(表2参照)。
【0034】
(2)分離菌株の培養
菌株の培養は、改変イースト・ペプトン・ショ糖寒天培地(イースト 0.1%、ペプトン 0.1%、ショ糖 0.5%、K2HPO4
0.1%、 KH2PO4
0.1%、寒天 1.5%)に各菌株の菌叢小片を植菌し、25℃で7日間静置培養した。
【0035】
(3)分離菌株からのDNA抽出
菌体からのDNAの抽出は電子レンジ法で行った。1.5 mlマイクロチューブにTEバッファー(10 mM Tris-HCl pH 8.0、1.0 mM EDTA)200 μlと直径5 mmの菌叢ディスクを入れ、電子レンジ500 Wで10分間加熱した。9,000×gで10分間遠心分離し、上清(約20μl)を新しいマイクロチューブに移し、DNA試料とした。
【0036】
(4)ITS領域の増幅
ITS領域の遺伝子(5.8S rDNAを含む)のPCRによる増幅は、上記(2)で得られたDNA 50 ngを鋳型とし、ITS領域の遺伝子を増幅するために設計された2種類の合成プライマーITS 1(5’-TCCGTAGGTGAACCTGCGG-3’)およびITS 4(5’-TCCTCCGCTTATTGATATGC-3’)(Glass NL & Donaldson
GC, 1995, Appl. Environ. Microbiol. 61, pp.1323-1330)を用いて行った。
【0037】
反応液の組成は、100 pmol 5’側プライマー(ITS 1)、100 pmol 3’側プライマー(ITS 4)、25 μl Premix Taq(20 mM Tris-HCl (pH 8.3)、100 mM塩化カリウム、3 mM塩化マグネシウム、各0.4 mM デオキシリボヌクレオチド(dATG, dGTP,
dCTP, dTTP)、1.25 U/μl Ex Taq
DNAポリメラーゼ(タカラバイオ社製))で、全体の液量が50 μlとなるように調整した。PCR条件は、94℃で5分間保温した後、94℃で1分間、53℃で1分間、72℃で1分間のサイクルを38回行うこととし、最終サイクルにおける72℃での保温は7分として、PCR(タカラバイオ社製PCRサーマルサイクラーMPを使用)を行った。なお、実施例1で用いたプライマーのITS領域における大まか位置を図1に示す。PCR終了後の増幅産物は1×TAE(40 mM Tris-acetate, pH
8.0, 1 mM EDTA)を含む2.0%アガロースゲルで電気泳動を行った後、エチジウムブロマイドで染色し、紫外線照射下で増幅状況を確認した。
【0038】
(5)ITS領域の塩基配列の決定
PCR産物はRAPID PCR PURIFICATION
SYSTEMS(MARLIGEN)を用いて純化した。手順はメーカー(MARLIGEN)に従った。得られた増幅産物にBinding
solution(400 μl)を加えて混合し、2 ml wash tubeにセットしたcartridgeに移した。これを12,000×gで1分間遠心分離し、wash tube内の廃液を除去した。これに700 μlのwash bufferを加えてから、再度12,000×gで1分間遠心分離し、同様に廃液を排除した。
【0039】
さらに12,000×g で1分間遠心分離しwash bufferを完全に取り除いた。Cartridgeを1.5 ml recovery tubeにセットし、予め65〜70℃に加温したTE buffer 50μlをcartridgeの中央に加えた。室温に1分間静置後、12,000×gで2分間遠心分離した。純化した増幅産物(20 ng/μl)を北海道システム・サイエンス株式会社に依頼して、ITS領域の塩基配列を決定した。
【0040】
(6)結果
プライマーITS 1およびITS 4を用いて増幅した5.8S rDNAを含むITS 1およびITS 2の全長は約540 bpであった。決定されたITS領域の塩基配列を表1に示す。ホモプシス・スクレロチオイデス(P.
sclerotioides)は供試した11菌株全てにおいてITS領域の塩基配列が全く同じであった。
【0041】
塩基配列データのアライメントは、ソフトウェアCLUSTAL W(Thompsonst, J.D. et al.
1994, Nucl. Acid Res. 22:4673-4680)により行った。系統樹は、系統樹作成パッケージソフトPAUP 4.0(Swofford, D.L. 2001, PAUP: phylogenetic analysis
using parsimony V4.0 Sinauer Associates, Sunderland, MA, USA)を用いて最節約法(MP, most parsimony
method)により作成した(図2)。
【0042】
(7)系統分類学的考察
系統解析の結果から、供試した日本産ホモプシス・スクレロチオイデス(P.
sclerotioides)の9菌株全てが欧州産菌株(ATCC18585およびATCC38739)と同一系統枝を構成し、他のホモプシス属菌とは全く異なる単一系統群に位置することが示された(図2)。従って、ITS領域(ITS-1, -2)の塩基配列は、ホモプシス・スクレロチオイデスの近縁種あるいは種内系統群を識別する指標として有効であることが強く示唆された。
【0043】
実施例2:ホモプシス・スクレロチオイデスに特異的なプライマーの設計
実施例1より得られた塩基配列データをアラインメント化することにより、ホモプシス・スクレロチオイデスの各菌株に共通した特異的配列を見い出し、プライマーCPs-1(5'-GCC TCG GCG CAG GCC
GGC CTC ACC-3')およびCPs-2(5'-GGG GCC TTC CAG AAC
GAA ATA TAA TTT-3')を設計することが出来た(図1)。これらのプライマーを用いて、ホモプシス・スクレロチオイデスに対する検出の妥当性を確認した。
【0044】
(1)供試菌株
ホモプシス・スクレロチオイデス(P.
sclerotioides)として、菌株コード:9946、9950、9956、Shimane1, Shimane 3、02-13-9、02-30-3、990528、03-48-4、ATCC18585、ATCC38739を用いた。
【0045】
また、スクレロチオイデス以外のホモプシス属菌で野菜から分離された3菌株(ナス褐紋病菌P. vexans MAFF712047、メロン陥没病菌P. cucurbitae MAFF410447、メロン陥没病菌P.
brevistylospora MAFF410449)を用いた。
【0046】
また、ウリ科野菜に病原性を示す代表的な土壌病原糸状菌7種:黒点根腐病菌(Monosporascus
cannonbollus)、苗立枯病菌(Rhizoctonia solani)、苗立枯病菌(Pythium
ultimum)、菌核病菌(Sclerotinia
sclerotiorum)、つる枯病菌(Didymella bryoniae)、スイカつる割病菌(Fusarium oxysporum f. sp. niveum)、半身萎凋病菌(Veticillium dahliae)を供試した。
【0047】
さらに、千葉大学園芸学部付属農場から採取した土壌でスイカを栽培し、健全なスイカ苗の根圏から無作為に分離した一般糸状菌8菌株(E-B1-1、R-B1-2、R-A1-1、E-B1-2、E-B2-1、R-B3-1、R-B1-1、E-A3-1)も実験に供試した。
【0048】
(2)実験方法
供試菌株の培養およびDNAの抽出は、実施例1の(2)、(3)に記した方法によって行った。
【0049】
PCRによる反応液の組成は、10 pmol 5’側プライマー(CPs-1)、10 pmol 3’側プライマー(CPs-2)、25 μl Premix Taq(20 mM Tris-HCl (pH 8.3)、100 mM塩化カリウム、3 mM塩化マグネシウム、各0.4 mM デオキシリボヌクレオチド(dATG, dGTP,
dCTP, dTTP)、1.25 U/μl Ex Taq
DNAポリメラーゼ(タカラバイオ社製))で、全体の液量が50 μlとなるように調整した。PCR条件は、94℃で5分間保温した後、94℃で30秒間、67℃で20秒間、72℃で20秒間のサイクルを30回行うこととし、最終サイクルにおける72℃での保温は7分として、PCR(タカラバイオ社製PCRサーマルサイクラーMPを使用)を行った。PCR終了後の増幅産物は1×TAEを含む2.0%アガロースゲルで電気泳動を行った後、エチジウムブロマイドで染色し、紫外線照射下で増幅状況を確認した。
【0050】
(3)結果
PCRの結果、プライマー組合せCPs-1/CPs-2は、ホモプシス・スクレロチオイデス(P.
sclerotioides)11菌株から抽出したDNAを鋳型とした場合にのみ想定される塩基配列(約390 bp)を増幅したが、スクレロチオイデス以外のホモプシス属菌で野菜から分離された3菌株(P. vexans MAFF712047、P. cucurbitae MAFF410447、P. brevistylospora MAFF410449)由来のDNAについては全く反応しなかった(図3)。
【0051】
ウリ類に病原性のある土壌病原糸状菌6菌株を用いた場合では、スイカつる割病菌(Fusarium oxysporum f. sp. niveum)から抽出したDNAを鋳型とした場合にのみ増幅反応がみられたが、そのサイズは大きく異なり、ホモプシス・スクレロチオイデスとは容易に識別できた(図4)。また、その他の黒点根腐病菌(Monosporascus
cannonbollus)、苗立枯病菌(Rhizoctonia solani)、苗立枯病菌(Pythium
ultimum)、菌核病菌(Sclerotinia
sclerotiorum)、つる枯病菌(Didymella bryoniae)、半身萎凋病菌(Veticillium dahliae)由来のDNAでは増幅反応は全く起こらなかった。
【0052】
スイカ根圏から分離した一般糸状菌8菌株(E-B1-1、R-B1-2、R-A1-1、E-B1-2、E-B2-1、R-B3-1、R-B1-1、E-A3-1)のいずれのDNAを鋳型とした場合にも、CPs-1/CPs-2をプライマーとしたPCRにおいて増幅反応は認められなかった(図4)。以上の結果から、CPs-1/CPs-2の組合せをプライマーとして用いることにより、ホモプシス・スクレロチオイデス(P. sclerotioides)菌を識別・同定できることが実証された。
【0053】
実証例3:ホモプシス根腐病に罹病したカボチャ台キュウリからのPCRによる菌の検出
【0054】
(実験方法)
供試植物として、福島県二本松市(1地点)および須賀川市(2地点)の露地栽培キュウリ圃場からホモプシス根腐病が発病しているカボチャ台キュウリを採取した。品種はキュウリが「クライマー1号」(二本松市)と「パイロット」(須賀川市)、カボチャ台木が「ゆうゆう一輝」(二本松市)と「バトラー」(須賀川市)である。供試植物は根部の所々が水浸状に褐変し、ホモプシス根腐病に特徴的な擬似菌核が形成されていた。また、対照の健全キュウリ根として蒸気殺菌済の園芸土にキュウリ(品種「シャープ1」を栽培し、実験に供試した。
【0055】
植物根からのDNA抽出およびPCRは以下の手順によった。キュウリ根に付着している土壌を水道水で洗浄して取除き、蒸留水ですすいだ。根部を2〜3cm片に切断し、根片と等量の直径0.5mmのガラスビーズの入ったビードビーター用マイクロチューブに入れた。DNA抽出バッファー(1%SDS、0.5 M NaCl、10 mM Tris-HCl(pH 7.5)、10 mM EDTA)600 μlを加え、ミニビードビーター(MODEL3110BX、Biospec社)で紛砕した。実証例1の(3)に示した方法に順じてDNAを抽出し、DNAペレットは100 μlのTEバッファーに溶解した。得られたDNA溶液1 μlを鋳型として、プライマーCPs-1/CPs-2の組合せを用いてPCRを行った。増幅のためのPCRは実証例2の(2)に示した方法に従った。
【0056】
(結果)
プライマーCPs-1/CPs-2の組合せによるPCRにおいて、ホモプシス・スクレロチオイデス汚染土で栽培されたキュウリ根から抽出したDNAを鋳型とした場合のみ、想定される塩基配列サイズの増幅反応が見られ、非汚染土壌で栽培したキュウリ根(2株)から抽出したDNAを鋳型とした場合には増幅反応は認められなかった(図5)。
【0057】
また、増幅されたPCR産物の塩基配列を決定した結果、想定されるITS領域の塩基配列(392 bp)と一致した。このことから、プライマーCPs-1/CPs-2の組合せは罹病植物根から抽出したDNAを鋳型とした場合にも増幅反応を起こすことが示された。
【0058】
実証例4:ホモプシス・スクレロチオイデス(P.
sclerotioides)汚染土壌からの菌の検出
【0059】
(実験方法)
蒸気殺菌済の園芸土を5号鉢に充填し、そこへジャガイモ煎汁寒天培地(直径8 cm)で3週間培養したホモプシス・スクレロチオイデスの菌叢を混合した。1週間後、催芽したスイカ種子を播種し、約2ヶ月間栽培した。栽培後、スイカ根を取り除き土壌試料とした。土壌からのDNA抽出にはFastDNA SPIN
Kit for Soil(BIO101 ,
Q-BIO gene社登録商標)を用いた。抽出したDNAを鋳型とし、プライマーCPs-1/CPs-2の組合せを用いてPCRを行った。PCRは実証例2に順じて行った。
【0060】
(結果)
プライマーCPs-1/CPs-2の組合せによるPCRにおいて、ホモプシス・スクレロチオイデス汚染土壌から抽出したDNAを鋳型とした場合のみ、想定される塩基配列の増幅が見られ、非汚染土壌から抽出したDNAを鋳型とした場合には増幅反応は認められなかった(図6)。このことから、プライマーCPs-1/CPs-2の組合せはホモプシス・スクレロチオイデス(P.
sclerotioides)の汚染土壌の検出に利用することが可能であることが示された。
【0061】
実施例5:プライマーCPs-1/CPs-2の組合せがホモプシス・スクレロチオイデス(P.
sclerotioides)の検出に特異的である証明
【0062】
実施例1より得られた塩基配列データのアラインメントによるホモプシス・スクレロチオイデスのITS領域の配列(表1)から、本菌の特異的検出のためにCPs-1およびCPs-2以外のプライマーも設計が可能である。そこで、表1に示す塩基配列の中でホモプシス・スクレロチオイデスに特異性の高いと想定される領域(塩基番号384〜414)の相補配列5'-GTA GAT TTC AGG GCC CGC
CCT TTT AC-3'をプライマーCPs-3として構築し、プライマーCPs-1/CPs-3の組合せによる本菌の特異的検出の妥当性を検証した。
【0063】
(実験方法)
供試菌株として、ホモプシス・スクレロチオイデス(P.
sclerotioides):990528、9946、9950、9956、Shimane 1, Shimane 3、02-30-3、03-48-4、ATCC18585、ATCC38739を用い、また、スクレロチオイデス以外のホモプシス属菌で野菜から分離された3菌株(ナス褐紋病菌P. vexans MAFF712047、メロン陥没病菌P. cucurbitae MAFF410447、メロン陥没病菌P.
brevistylospora MAFF410449)を用いた。供試菌株の培養方法および菌体DNAの抽出は実施例1に、また、PCRの条件は実施例2に記した方法によって行った。
【0064】
(結果)
プライマーCPs-1/CPs-3の組合せによるPCRでは、ホモプシス・スクレロチオイデス(P.
sclerotioides)に想定される341 bpのバンドの他にナス褐紋病菌P. vexans MAFF712047から抽出したDNAを鋳型にした場合でも同様のバンドが認められた(図7)。したがって、プライマーCPs-1/CPs-3の組合せでは、ホモプシス・スクレロチオイデスを特異的に検出することは困難であり、プライマーCPs-1/CPs-2の組合せが本菌の特異的検出に優れていると考えられた。
【産業上の利用可能性】
【0065】
上記のように、本発明によれば、ウリ科作物の病害菌であるホモプシス・スクレロチオイデスに特異的な配列を有するリボゾームDNA遺伝子群のITS領域の遺伝子配列を決定し、同遺伝子に特異的な配列を見出し、PCR法により同特異配列を増幅、検出することによって、従来の方法に比べて迅速かつ特異的に病害菌の検出が可能となることが実証された。また、プライマーCPs-1/CPs-2の組合せは罹病植物根から抽出したDNAを鋳型とした場合にも増幅反応を起こすことが示された。加えて、ホモプシス・スクレロチオイデス(P.
sclerotioides)の汚染土壌の検出に利用することが可能である。よって、本菌に起因する根腐病の予防に極めて顕著な効果を期待することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明によるITS領域中のホモプシス・スクレロチオイデスに特異的なプライマーの塩基配列を示す図。
【図2】本発明によるITS領域の塩基配列に基づくホモプシス・スクレロチオイデスとホモプシス菌の分子系統樹を示す図。
【図3】本発明によるプライマー組合せCPs-1/CPs-2による、ホモプシス・スクレロチオイデス(Phomopsissclerotioides)11菌株から抽出したDNAを鋳型とした場合およびこれ以外のホモプシス属菌で野菜から分離された3菌株(P. vexans MAFF712047、P. cucurbitae MAFF410447、P. brevistylospora MAFF410449)由来のDNAについて、PCRを行った結果を示す図。
【図4】スイカ根圏から分離した一般糸状菌8菌株(E-B1-1、R-B1-2、R-A1-1、E-B1-2、E-B2-1、R-B3-1、R-B1-1、E-A3-1)のDNAを鋳型として、本発明によるCPs-1/CPs-2をプライマーとしたPCRを行った結果を示す図。
【図5】本発明によるプライマーCPs-1/CPs-2の組合せによるPCRにおいて、ホモプシス・スクレロチオイデス汚染土で栽培されたキュウリ根(3株)から抽出したDNAを鋳型とした場合および非汚染土壌で栽培したキュウリ根(2株)から抽出したDNAを鋳型とした場合の結果を示す図。
【図6】本発明によるプライマーCPs-1/CPs-2の組合せによるPCRにおいて、ホモプシス・スクレロチオイデス汚染土壌から抽出したDNAを鋳型とした場合および非汚染土壌から抽出したDNAを鋳型とした場合の結果を示す図。
【図7】プライマーCPs-1/CPs-3の組合せによるPCRの結果を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホモプシス・スクレロチオイデスを同定または検出する方法であって、リボゾームDNAのITS領域中のホモプシス・スクレロチオイデスに特異的な配列を検出することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記リボゾームDNAのITS領域が、18S rDNAと5.8S rDNAとの間に存在するITS領域(ITS-1)、または5.8S rDNAと28S rDNAとの間に存在するITS領域(ITS-2)、もしくはこれらの両方である請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記リボゾームDNAのITS領域中のホモプシス・スクレロチオイデスに特異的な配列の検出を、同配列をPCR法により特異的に増幅するのに適した2種類のプライマーを用い、ホモプシス・スクレロチオイデスの染色体DNAまたは部分断片を鋳型とする増幅反応により行うことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
リボゾームDNAのITS領域中のホモプシス・スクレロチオイデスに特異的な配列が、プライマーCPs-1またはCPs-2の塩基配列、ないしはその相補的塩基配列であるCPs-1’またはCPs-2’である請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記プライマーの一方は、ホモプシス・スクレロチオイデスの塩基配列において塩基番号57〜85(CPs-1またはCPs-1’)で表される第一の領域に対応し、前記プライマーの他方は、塩基番号445〜473(CPs-2またはCPs-2’)で表される第二の領域に対応し、前記プライマーを用いたPCRにより第一の領域および第二の領域の間の配列を増幅することを特徴とする請求項4記載の方法。
【請求項6】
18S rDNAと5.8S rDNAとの間に存在するITS領域(ITS-1)、または5.8S rDNAと28S rDNAとの間に存在するITS領域(ITS-2)もしくはこれらの両遺伝子中のホモプシス・スクレロチオイデスに特異的な配列を検出することによって、ホモプシス・スクレロチオイデスを同定または検出するために使用される2種類のオリゴヌクレオチドからなるPCRプライマーセットであって、前記プライマーの一方は、ホモプシス・スクレロチオイデスの塩基配列において塩基番号57〜85(CPs-1またはCPs-1’)で表される第一の領域に対応し、他方は、該ホモプシス・スクレロチオイデスの塩基配列において塩基番号445〜473(CPs-2またはCPs-2’)で表される第二の領域に対応し、該プライマーを用いたPCRにより第一の領域および第二の領域の間の配列を増幅することを特徴とするプライマーセット。
【請求項7】
上記プライマーセットを用いて、ホモプシス・スクレロチオイデスに罹病したウリ科作物またはホモプシス・スクレロチオイデス汚染土から、ホモプシス・スクレロチオイデスを同定または検出する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−202529(P2007−202529A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−28513(P2006−28513)
【出願日】平成18年2月6日(2006.2.6)
【出願人】(304021831)国立大学法人 千葉大学 (601)
【Fターム(参考)】