説明

ウレタン樹脂形成性組成物

【課題】得られる樹脂の強度が高く樹脂のフクレや発泡のないポリウレタン樹脂が得られるウレタン樹脂形成性組成物を提供することにある。
【解決手段】主剤(A)と硬化剤(B)の2液からなるウレタン樹脂形成性組成物であって、(A)が、ジイソシアネート(C)と高分子ジオール(D)とを反応して得られるイソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマーを含有し、(B)が、ビスフェノール系化合物(E)のプロピレンオキサイド付加物でありかつ末端に位置する水酸基の1級化率が50モル%以上であるプロピレンオキサイド付加物(F)、末端に位置する水酸基の1級化率が50モル%以上である高分子ポリオール(G)中でエチレン性不飽和単量体を重合させて得られるものおよび/または該高分子ポリオール(G)中に高分子微粒子(L)を分散させたものであるポリマーポリオール(H)、及び塩基性触媒(I)を含有するウレタン樹脂形成性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はウレタン樹脂形成性組成物に関するものであり、より詳しくは特に建築シーラント用に好適なMOCA代替ウレタン樹脂形成性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
建築シーラント用ポリウレタン樹脂は、硬化剤として3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン(以下MOCAと記載)が一般的に使用されている。MOCAは得られるウレタン樹脂の物性が良好であり、イソシアネート成分のNCO基と好適な反応性を示すため、塗膜に発泡やフクレがなく外観が美しく仕上がることから過去から広く使用されている。しかしMOCAは国際癌研究機関IARCの分類で1A(人に対して発がん性がある)に区分されており、MOCA代替は使用者に対する安全性向上の観点から重要である。(例えば特許文献1)
【0003】
このため近年、MOCAを使用しないウレタン樹脂の設計が試みられている。例えば、イソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーにポリマー分散ポリオールを使用することでシーリング材の高強度化を実現する方法が考案されている。(例えば特許文献2)
【0004】
また、下記一般式(1)で示される化合物からなる群より選ばれる1又は2種以上の二環式第3級アミンと、トリメリット酸等のブロック剤との塩を含有してなるポリウレタン樹脂製造用触媒組成物をウレタン化触媒として使用することで、硬化速度及び反応性に優れたポリウレタン樹脂を作成する方法が考案されている。(例えば特許文献3)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許公開2006−321834
【特許文献2】特許公開1994−16764
【特許文献3】特許公開2005―120222
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献2の方法では主剤と硬化剤の混合後の粘度が高くなり、防水材施工時のハンドリング性が悪くなる懸念がある。また、硬化剤にポリオキシアルキレンポリオールを、触媒に複合金属シアン化物錯体触媒を使用しているため、水とイソシアネートとの反応を促進し発泡やフクレによる塗膜外観不良を生じる懸念もある。
また、特許文献3の方法では初期反応を遅延化し、ポットライフを改善することにより生産性を改善することは可能であるが、水とイソシアネートとの反応は抑制できず、塗膜の発泡やフクレ抑制効果は期待できない。
【0007】
このため樹脂物性と良好な塗膜外観を両立するMOCA代替品が望まれているが、従来の方法では樹脂物性と良好な塗膜外観の両立が困難であった。
本発明の課題は、得られる樹脂の強度が高く樹脂のフクレや発泡のないポリウレタン樹脂が得られるウレタン樹脂形成性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、これらの問題点を解決するべく鋭意検討した結果、特定構造を有する主剤と硬化剤とを用いることにより、樹脂の強度と塗膜外観を両立させた建築シーラント用ポリウレタン樹脂を製造できることを見いだし、本発明を完成した。
即ち本発明は、主剤(A)と硬化剤(B)の2液からなるウレタン樹脂形成性組成物であって、主剤(A)が、ジイソシアネート(C)と高分子ジオール(D)とを反応して得られるイソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマーを含有し、硬化剤(B)が、ビスフェノール系化合物(E)のプロピレンオキサイド付加物でありかつ末端に位置する水酸基含有基である−C−OH基の50モル%以上が下記一般式(1)で表されるプロピレンオキサイド付加物(F)、高分子ポリオール(G)の末端に位置する水酸基含有基である−C−OH基の50モル%以上が下記一般式(1)で表されかつ高分子ポリオール(G)中でエチレン性不飽和単量体を重合させて得られるものおよび/または高分子ポリオール(G)中に高分子微粒子を分散させたものであるポリマーポリオール(H)、及び塩基性触媒(I)を含有するウレタン樹脂形成性組成物;該ウレタン樹脂形成性組成物を含有する建築用シーラントである。
【化1】

【発明の効果】
【0009】
本発明のウレタン樹脂は、高い樹脂強度と発泡や膨れのない塗膜外観を両立した優れた性能を有する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のウレタン樹脂形成性組成物は、主剤(A)と硬化剤(B)の2液からなる。
主剤(A)と硬化剤(B)は、通常常温にて混合し、混合後すぐに使用される。混合はミキサー等で行うのが好ましい。建築用シーラントの場合は、現場で施工前に主剤(A)と硬化剤(B)を混合して使用する。
硬化剤(B)に含まれるプロピレンオキサイド付加物(F)は芳香環を有するビスフェノール系化合物(E)のプロピレンオキサイド付加物であって、末端に位置する水酸基含有基である−C−OH基の50モル%以上が上記一般式(1)で表される1級水酸基含有基であるポリオキシプロピレンポリオールである。
【0011】
ビスフェノール系化合物(E)は芳香環を2個有し、活性水素を2個以上有する化合物である。
(E)の具体例としてはビスフェノールA、ビスフェノールB、ビスフェノールF等が挙げられる。この中で特に好ましいものはビスフェノールAである。
ビスフェノール系化合物は2種以上を併用しても良い。
【0012】
プロピレンオキサイド付加物(F)は、上記ビスフェノール系化合物(E)のプロピレンオキサイド(以下,POと略記する。) 付加物である。POの付加モル数は好ましくは1〜9、より好ましくは2〜7である。重合度(分子量)の異なる2種以上を併用しても良い。
【0013】
(F)の分子量は300〜800が好ましく、より好ましくは330〜640であり、さらに好ましくは345〜540である。本発明における分子量は、水酸基価(JIS K0070(1992年版)に規定の方法)の測定結果と出発物質の官能基数からの計算で得られる。
(F)の分子量が300以上であると反応性が良好であり、800以下では樹脂物性が良好である。
【0014】
プロピレンオキサイド付加物(F)の末端に位置する水酸基含有基である−C−OH基の50モル%以上が上記一般式(1)で表される1級水酸基含有基であり(以下1級化率と記載することがある。)、好ましくは60モル%以上、さらに好ましくは70モル%以上が上記一般式(1)で表される1級水酸基含有基である。
−C−OH基の50モル%未満が上記一般式(1)で表される1級水酸基含有基である場合はポリイソシアネートとの反応速度が低下する。
プロピレンオキサイド付加物(F)はトリスペンタフルオロフェニルボラン等の酸性触媒の存在下でビスフェノール系化合物(E)にPOを開環反応させる方法で製造することができ、詳細は例えば特開2000−344881に記載されている。
【0015】
プロピレンオキサイド付加物(F)の使用量はウレタン樹脂全体の重量に対して10〜20%が好ましい。使用量が10%以上であると樹脂強度が良好であり、20%以下であると伸び物性が良好となる。
プロピレンオキサイド付加物(F)の他に本発明の目的が損なわれない範囲で他のポリオール(J)を併用しても良い。(J)の重量は(F)の重量に対して、0〜100重量%、好ましくは1〜50重量%使用してもよい。
他のポリオール(J)としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール等のポリオールが挙げられる。
【0016】
ポリマーポリオール(H)は、下記のポリマーポリオール(H1)又は下記のポリマーポリオール(H2)又は(H1)と(H2)の混合物である。
ポリマーポリオール(H1)は、高分子ポリオール(G)中でラジカル重合開始剤の存在下、ビニルモノマー(K)を重合させて得られるポリマーポリオールである。また、ポリマーポリオール(H2)は高分子ポリオール(G)中に高分子微粒子(L)を安定分散させたものである。
高分子ポリオール(G)の末端に位置する水酸基含有基である−C−OH基の50モル%以上が上記一般式(1)で表される1級水酸基含有基であり、好ましくは60モル%以上、さらに好ましくは70モル%以上が上記一般式(1)で表される1級水酸基含有基である。
なお本発明における1級水酸基含有率はH−NMRでの測定結果から得られる。
−C−OH基の50モル%未満が上記一般式(1)で表される1級水酸基含有基である場合はポリイソシアネートとの反応速度が低下する。
高分子ポリオール(G)はトリスペンタフルオロフェニルボラン等の酸性触媒の存在下でプロピレングリコールにPOを開環反応させる方法で製造することができ、詳細は例えば特開2000−344881に記載されている。
【0017】
高分子ポリオール(G)の分子量は1000〜5000が好ましく、より好ましくは2000〜3000である。本発明における分子量は、水酸基価(JIS K0070(1992年版)に規定の方法)の測定結果と出発物質の官能基数からの計算で得られる。
(G)の分子量が1000以上であると伸び物性が良好であり、5000以下では樹脂強度物性が良好である。
【0018】
ビニルモノマー(K)はスチレン(以下Stと略記)、アクリロニトリル(以下、ACNと略記)、その他のエチレン性不飽和モノマー(k)等が使用できる。エチレン性不飽和モノマー(k)としては、StおよびACNを必須成分とすることが好ましい。高分子ポリオール(G)にラジカル重合開始剤の存在下、ビニルモノマー(K)を重合させて得られる重合体を安定分散させる方法の詳細は、例えば特開2009−007506に記載されている。
高分子微粒子(L)は高分子ポリオール(G)に常温で溶解しないポリマー微粒子であれば特に限定されない。好ましくはStおよびACNを必須成分とするビニルモノマー(K)を微粒子状に重合したものであり、高分子微粒子(L)を均一に分散させるために分散剤を併用してもよい。
【0019】
ポリマーポリオール(H)中の高分子微粒子(L)の量は特に限定されないが、2〜50重量%、特に5〜45重量%が好ましい。
【0020】
ポリマーポリオール(H)の使用量はウレタン樹脂全体の重量に対して10〜40%が好ましい。
ポリマーポリオール(H)の他に本発明の目的が損なわれない範囲で他のポリオール(J)を併用しても良い。(J)の重量は(G)の重量に対して、0〜100重量%、好ましくは1〜50重量%使用してもよい。
他のポリオール(J)としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール等のポリオールが挙げられる。
【0021】
本発明において、塩基性触媒(I)が下記一般式(2)で表される二環式第3級アミン化合物であり、式中のnは1〜3の整数であり、対アニオンXは炭素数1〜18の飽和脂肪族カルボン酸アニオン、炭素数6〜8のフェノール系アニオンや芳香族スルホン酸アニオンである。
【0022】
【化2】

【0023】
上記一般式(2)で示される二環式第3級アミン化合物は、特に限定されるものではないが、例えば、1,5−ジアザ− ビシクロ[4.3.0]−5−ノネン、1,5−ジアザ−ビシクロ[4.4.0]−5−デセン、1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、7−メチル−1,5−ジアザ−ビシクロ[4.3.0]−5−ノネン、7−エチル−1,5−ジアザ−ビシクロ[4.3.0]−5−ノネン、7−プロピル−1,5−ジアザ−ビシクロ[4.3.0]−5−ノネン、7−ブチル−1,5−ジアザ−ビシクロ[4.3.0]−5−ノネン、7−ペンチル−1,5−ジアザ−ビシクロ[4.3.0]−5−ノネン、7−イソプロピル−1,5−ジアザ−ビシクロ[4.3.0]−5−ノネン、7−イソブチル−1,5−ジアザ−ビシクロ[4.3.0]−5−ノネン、7−ジメチルアミノ−1,5−ジアザ−ビシクロ[4.3.0]−5−ノネン、7−ジブチルアミノ−1,5−ジアザ−ビシクロ[4.3.0]−5−ノネン、7−メチル−1,5−ジアザ−ビシクロ[4.4.0]−5−デセン、7−エチル−1,5−ジアザ−ビシクロ[4.4.0]−5−デセン、7−プロピル−1,5−ジアザ−ビシクロ[4.4.0]−5−デセン、7−ブチル−1,5−ジアザ−ビシクロ[4.4.0]−5−デセン、7−ペンチル−1,5−ジアザ−ビシクロ[4.4.0]−5−デセン、7−イソプロピル−1,5−ジアザ−ビシクロ[4.4.0]−5−デセン、7−イソブチル−1,5−ジアザ−ビシクロ[4.4.0]−5−デセン、7−ジメチルアミノ−1,5−ジアザ−ビシクロ[4.4.0]−5−デセン、7−ジブチルアミノ−1,5−ジアザ−ビシクロ[4.4.0]−5−デセン、6−メチル−1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、6−エチル−1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、6−プロピル−1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、6−ブチル−1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、6−ペンチル−1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、6−イソプロピル−1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、6−イソブチル−1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、6−ジメチルアミノ−1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、7−ヒドロキシメチル−1,5−ジアザ−ビシクロ[4.3.0]−5−ノネン、7−(2−ヒドロキシエチル)−1,5−ジアザ−ビシクロ[4.3.0]−5−ノネン、7−(2−ヒドロキシプロピル)−1,5−ジアザ−ビシクロ[4.3.0]−5−ノネン、7−(2−ヒドロキシブチル)−1,5−ジアザ−ビシクロ[4.3.0]−5−ノネン、7−(2−ヒドロキシペンチル)−1,5−ジアザ−ビシクロ[4.3.0]−5−ノネン、7−ヒドロキシメチル−1,5−ジアザ−ビシクロ[4.4.0]−5−デセン、7−(2−ヒドロキシエチル) −1,5−ジアザ−ビシクロ[4.4.0]−5−デセン、7−(2−ヒドロキシプロピル)−1,5−ジアザ−ビシクロ[4.4.0]−5−デセン、7−(2−ヒドロキシブチル)−1,5−ジアザ−ビシクロ[4.4.0]−5−デセン、7−(2−ヒドロキシペンチル)−1,5−ジアザ−ビシクロ[4.4.0]−5−デセン、6−ヒドロキシメチル−1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、6−(2−ヒドロキシエチル)−1,8−ジザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、6−(2−ヒドロキシプロピル)−1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、6−(2−ヒドロキシブチル)−1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、6−(2−ヒドロキシペンチル)−1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン等が挙げられる。これらの中でも、触媒活性に優れ工業的に入手可能なことから、1,5−ジアザ−ビシクロ[4.3.0]−5−ノネン(以下、DBNと称する場合がある)、1,5−ジアザ−ビシクロ[4.4.0]−5−デセン(以下、DBDと称する場合がある)、1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(以下、DBUと称する場合がある)が好ましい。
【0024】
上記一般式(2)で示される対アニオンXとして用いられる化合物は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、オクチル酸等の飽和脂肪族カルボン酸アニオン、フェノール、クレゾール、キシレノール、エチルフェノール等のフェノール系アニオン、芳香族スルホン酸(p−トルエンスルホン酸、p−エチルベンゼンスルホン酸等)のアニオンである。これらの中でも、毒性が低く、工業的に容易に入手可能であることから、オクチル酸が特に好ましい。
【0025】
本発明において、二環式第3級アミンと対アニオンとの混合比率は重要であり、二環式第3級アミンに対する対イオンのモル比が、通常0.8以上1.2以下、より好ましくは0.9以上1.1以下の範囲になるように混合比率を調節する。該モル比が0.8未満の場合、即ちブロック剤の比率が極端に低い場合は、対アニオンの割合が少なくなるために、フリ−の状態で存在する二環式第3級アミンが増えることになり、ポリオールとポリイソシアネートを混合した後のポットライフが短くなる問題を生じるおそれがある。モル比が0.2を超える場合、即ち対アニオンの割合が極端に多い場合は、硬化速度が遅くなり、生産性が低くなる問題を生じるおそれがある。
【0026】
塩基性触媒(I)の使用量は、使用される硬化剤(B)を100重量部としたとき、通常0.0001〜1.0重量部の範囲、好ましくは0.01〜0.1重量部の範囲である。
【0027】
プロピレンオキサイド付加物(F)およびポリマーポリオール(H)は、末端に位置する水酸基含有基である−C−OH基の50モル%以上が上記一般式(1)で表される1級水酸基含有基であるため、塩基性触媒(I)存在下で芳香環を有する末端イソシアネートである主剤(A)と反応することにより、得られる樹脂の強度と好適な反応性を両立させることができる。得られる樹脂は、建築シーラント用ポリウレタン樹脂として好適である。
【0028】
硬化剤(B)において、プロピレンオキサイド付加物(F):ポリマーポリオール(H)の重量比は40〜90:10〜60、好ましくは50〜80:20〜50である。
【0029】
本発明の主剤(A)成分として用いられるプレポリマー成分は、ジイソシアネート(C)と高分子ジオール(D)との反応により得られたイソシアネート基末端プレポリマーを主成分とするものである。このプレポリマーの一方の原料であるジイソシアネート(C)としては、芳香族ポリイソシアネートと脂肪芳香族ポリイソシアネートが挙げられる。
芳香族ポリイソシアネートとして1,3−および/または1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−および/または2,6−トリレンジイソシアネート(以下、TDI)、粗製TDI、キシレンジイソシアネート、α、α、α’α’−テトラメチルキシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDI)、アニリン類とアルデヒドとの縮合物、特にアニリンとフォルムアルデヒドとの縮合物のイソシアネート(以下、ポリメリックMDI)、ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオホスフェート等が挙げられる。
脂肪芳香族ポリイソシアネートとして、o−,p−,m−キシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
これらの中で、樹脂物性の観点から好ましいのは芳香環を2個以上有するジイソシアネートであり、具体例としてはMDIが挙げられる。また、ポットライフの観点から好ましいのは芳香環を1個有するジイソシアネートであり、具体例としてはTDIが挙げられる。
【0030】
また、該プレポリマーの他方の原料である高分子ジオール(D)は、高分子ポリオール(G)と同じ組成であってもよく、高分子ジオール(D)の末端に位置する水酸基の1級化率は特に高い必要はなく、3モル%以下であってもよい。
【0031】
高分子ジオール(D)の分子量は1000〜5000が好ましく、より好ましくは2000〜3000である。本発明における分子量は、水酸基価(JIS K0070(1992年版)に規定の方法)の測定結果と出発物質の官能基数からの計算で得られる。
(D)の分子量が1000以上であると伸び物性が良好であり、5000以下では樹脂強度物性が良好である。
【0032】
このようにして得られたイソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基含有量は1.5〜7重量%の範囲にあるのが好ましい。この含有量が1.5重量%未満では得られる塗膜の機械的強度が不十分であるし、7重量%を超えると可使時間が短くなり、施工しにくくなる。また、塗膜が硬くなりすぎ伸びがでにくくなる。
【0033】
この(A)成分のイソシアネート基末端プレポリマーは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
本発明のウレタン樹脂においては、使用する主剤(A)であるプレポリマーの末端NCOと硬化剤(B)であるポリオール成分の活性水素の比〔(NCO基/活性水素基)の当量比×100〕は好ましくは90〜110、さらに好ましくは95〜110、最も好ましくは100〜110である。
【0035】
本発明のウレタン樹脂形成性組成物は必要により以下に述べるような他の補助成分を含有してもよい。
また、必要により以下に述べるような他の補助成分を用い、その存在下で主剤(A)と硬化剤(B)を反応させても良い。
補助成分としては、例えばフィラー成分(膠質または炭酸カルシウムなど)、着色剤(染料、顔料)、可塑剤(アクリル系、DOP、DIOPなど)、抗酸化剤(ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系など)、垂れ防止剤、表面改質剤、紫外線吸収剤(ベンゾトリアゾール系)などである。ウレタン樹脂中の補助成分の使用量に関しては、ウレタン樹脂形成性組成物全体の重量に対してフィラー成分は好ましくは50%以下、着色剤は好ましくは1%以下、可塑剤は好ましくは30%以下、抗酸化剤は好ましくは1%以下、垂れ防止剤は好ましくは1%以下、表面改質剤は好ましくは1%以下、紫外線吸収剤は好ましくは1%以下である。
【0036】
本発明のウレタン樹脂形成性組成物は、建築用シーラント、合成皮革、塗料、接着剤等の用途に好適に使用される。特に建築用シーラントに好適である。
建築用シーラントに使用されるときのウレタン樹脂形成性組成物の処方例としては、主剤(A)がポリオール成分とイソシアネートからなるNCO末端プレポリマーであり、硬化剤(B)がポリオール成分、必要により炭酸カルシウムなどのフィラー成分、可塑剤、抗酸化剤などの補助成分を混ぜ合わせた配合物である。使用の方法例としては工場にて生産した主剤(A)と硬化剤(B)と必要に応じ補助成分を施工現場にて混ぜ合わせ、場合によりシーラント塗布面にプライマーを事前に塗布した後、上記混合物をコーキングガン等を使用して塗布する。塗布後はヘラ等を用いて塗布面の表面仕上げを行い硬化が完了するまで養生するなどが挙げられる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれによりなんら限定されるものではない。
なお実施例および比較例中において、部および%は、特に断りのないかぎり、それぞれ重量部および重量%を示す。
【0038】
主剤(A)及び硬化剤(B)成分には、下記のものを用いた。
[主剤(A)成分]
PP−2000:ポリオキシプロピレンポリオール
[三洋化成工業(株)製]、平均分子量2000、水酸基価56.0mgKOH/g、
1級化率2%
TDI−100:トリレンジイソシアネート
[日本ポリウレタン工業(株)製]、NCO含有量48.3重量%、
2,4‐TDI100重量%
MDI:ジフェニルメタンジイソシアネート
[日本ポリウレタン工業(株)製]、NCO含有量33.6重量%、
4、4‘−MDI99.9重量%
【0039】
[硬化剤(B)成分]
BP−3P:ポリオキシプロピレンポリオール(プロピレンオキサイド付加物)
[三洋化成工業(株)製]、平均分子量400、水酸基価280.0mgKOH/g、
1級化率2%
FF−3500:ポリオキシプロピレンポリオール
[三洋化成工業(株)製]、平均分子量5000、水酸基価33.7mgKOH/g
1級化率70%
PP−4000:ポリオキシプロピレンポリオール
[三洋化成工業(株)製]、平均分子量4000、水酸基価28.1mgKOH/g、
1級化率2%
MOCA:3,3′‐ジクロロ‐4,4′‐ジアミノジフェニルメタン
[和光純薬工業(株)製]、アミン価420.2mgKOH/g
NT−1:DBUオクチル酸塩
[ウレタン化触媒、サンアプロ(株)製]
U−CAT1102:DBNオクチル酸塩
[ウレタン化触媒、サンアプロ(株)製]
ニッカオクチックス鉛17%DOP(フタル酸ジオクチル):
オクチル酸鉛17%DOP溶液
[ウレタン化触媒、日本化学産業(株)製]
NS−100:炭酸カルシウム[フィラー、日東粉化商事(株)製]
SAG−47:シリコーン系消泡剤[東レ(株)製]
【0040】
(1)プレポリマー成分の調製
・TDI系プレポリマー
1リットルの四つ口セパラブルフラスコに、表1の配合に従ってPP−2000を仕込み、減圧下100℃で1時間脱水を行った。その後、40℃まで冷却しトリレンジイソシアネート(TDI)を仕込み、窒素気流下、かき混ぜながら、70℃まで徐々に加温し、その温度で7時間反応させたのち、室温まで冷却して、プレポリマー成分を調製した。イソシアネート基含有量はJIS K1558に従って測定した。なお、仕込み量は表配合の重量部をgに置き替えた場合の10倍スケールとした。
【0041】
・MDI系プレポリマー
1リットルの四つ口セパラブルフラスコに、表1の配合に従ってPP−2000を仕込み、減圧下100℃で1時間脱水を行った。その後、40℃まで冷却しジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を仕込み、窒素気流下、かき混ぜながら、70℃まで徐々に加温し、その温度で7時間反応させたのち、室温まで冷却して、プレポリマー成分を調製した。イソシアネート基含有量はJIS K1558に従って測定した。なお、仕込み量は表配合の重量部をgに置き替えた場合の10倍スケールとした。
【0042】
(2)プロピレンオキサイド付加物の調製
攪拌装置、温度制御装置付きのSUS製オートクレーブにビスフェノール系化合物であるビスフェノールAを55.5gとトリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン0.01g仕込み、プロピレンオキサイド(以下POと略記することがある)43.5gを反応温度が70〜80℃で12時間かけて滴下した後、75℃で6時間熟成した。次に、水酸化ナトリウム水溶液で中和した後、3.0gの合成珪酸塩(キョーワード600、協和化学製)と水を加えて60℃で3時間処理した。オートクレーブから取り出した後、1ミクロンのフィルターで濾過した後脱水し、ポリオキシプロピレンポリオールA(BX−3P)を得た。BX−3Pの1級水酸基含有率は50モル%、水酸基価より求められる数平均分子量は400であった。
【0043】
(3)ポリマーポリオールの調製
・ポリマーポリオールA
FF−3500中に、StとACNをポリオールの20重量%になるよう重量比で7:3で仕込み、0.5重量%のアゾビスイソブチロニトリルを開始剤として加え、110℃で重合を行ってポリマーポリオールAを調整した。
・ポリマーポリオールB
グリセリンにPOを付加させて得られた分子量7000、水酸基価24、1級化率2%のポリオキシアルキレントリオール中に、StとACNをポリオールの20重量%になるよう重量比で7:3で仕込み、0.5重量%のアゾビスイソブチロニトリルを開始剤として加え、110℃で重合を行ってポリマーポリオールBを調整した。
【0044】
(4)触媒の調製
500ミリリットルのガラス製丸底フラスコに87.0gのトリメリット酸及び溶剤としてDOP150gをとり、次に窒素雰囲気下にて63.0gのDBUを徐々に滴下し攪拌混合した。完全に溶解するまで混合攪拌を行い、DBUとトリメリット酸からなる液状の触媒組成物(DBU−T)を調製した。
【0045】
(5)硬化剤成分の調製
500ミリリットルのポリプロピレン製ビーカーに、表1の配合に従って、まず触媒であるNT−1またはDBU−TまたはU−CAT1102あるいはオクチル酸鉛を仕込み、所定のポリオキシプロピレンポリオール及びポリマーポリオール、MOCA等を加えてかき混ぜた。次いで、所定量のNS−100、SAG−47を加え、スパチュラで予備混合したのち、アジターにて撹拌混合を行い硬化剤成分を調製した。なお、MOCAは加熱溶解したものを用いた。
【0046】
(6)配合及び試験片作成
500ミリリットルのポリプロピレン製ビーカーに、主剤(A)(プレポリマー成分)及び硬化剤(B)を、それぞれ表1に示すように、主剤(A)と硬化剤(B)を1/1の重量割合で仕込んだ後、アジターにて30秒間撹拌混合した後、減圧下で40秒間脱泡を行った。その後、塗膜外観観察用円柱状サンプル片及び機械物性測定用ポリウレタンシートを作成した。なお、塗膜外観観察用円柱状サンプル片は直径30mm、高さ12mmの穴の空いたアルミニウム製の型に主剤と硬化剤との混合物を注型、すり切りし、100℃で17時間硬化させた後に脱型することにより作成した。ポリウレタンシートは、2mmの隙間の空いたアルミニウム製の型に主剤と硬化剤との混合物を注型し、100℃で17時間硬化させた後に脱型することにより作成した。
【0047】
(7)評価
作成した試験片について、以下の方法で塗膜外観及び破断強度を測定し、結果を表2に示した。
・塗膜外観:円柱状サンプル片内に含有する気泡やサンプル片のフクレの度合いを目視にて観察評価した。評価結果は、
○ : フクレや気泡が発生せず。
× : フクレや気泡が発生した。
にて表示した。
・機械物性:上記で作成したポリウレタンシートの破断強度の測定方法はJIS A6021に準拠した。
【0048】
【表1】

【0049】
【表2】

【0050】
以上の結果から、本発明により得られた実施例1〜4の樹脂は、比較例2〜3の樹脂に比べ樹脂物性と塗膜外観を両立しており、比較例1のMOCAを使用した場合と同程度の効果が得られていることが判った。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明のウレタン樹脂は建築シーラント、合成皮革、塗料、接着剤等に好適に使用でき、特に建築シーラント用として著しい有用性を発揮する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主剤(A)と硬化剤(B)の2液からなるウレタン樹脂形成性組成物であって、
主剤(A)が、ジイソシアネート(C)と高分子ジオール(D)とを反応して得られるイソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマーを含有し、
硬化剤(B)が、ビスフェノール系化合物(E)のプロピレンオキサイド付加物でありかつ末端に位置する水酸基含有基である−C−OH基の50モル%以上が下記一般式(1)で表されるプロピレンオキサイド付加物(F)、高分子ポリオール(G)の末端に位置する水酸基含有基である−C−OH基の50モル%以上が下記一般式(1)で表されかつ該高分子ポリオール(G)中でエチレン性不飽和単量体を重合させて得られるものおよび/または該高分子ポリオール(G)中に高分子微粒子(L)を分散させたものであるポリマーポリオール(H)、及び塩基性触媒(I)を含有するウレタン樹脂形成性組成物。
【化1】

【請求項2】
塩基性触媒(I)が下記一般式(2)で表される二環式第3級アミン化合物である請求項1に記載のウレタン樹脂形成性組成物。
【化2】

(式中、nは1〜3の整数であり、対アニオンXは炭素数1〜18の飽和脂肪族カルボン酸アニオンおよび/または炭素数6〜8の芳香族アニオンである。)
【請求項3】
塩基性触媒(I)が、1,5−ジアザ−ビシクロ(4,3,0)ノネン−5、1,5−ジアザ−ビシクロ(4,4,0)デセン−5、及び1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7からなる群より選ばれる一種又は二種以上である請求項1又は2に記載のウレタン樹脂形成性組成物。
【請求項4】
ジイソシアネート(C)が、芳香環を有するジイソシアネートである請求項1〜3のいずれか1項に記載のウレタン樹脂形成性組成物。
【請求項5】
プロピレンオキサイド付加物(F)の、水酸基価より求められる数平均分子量が300〜800である請求項1〜4のいずれか1項に記載のウレタン樹脂形成性組成物。
【請求項6】
高分子ポリオール(G)の水酸基価より求められる数平均分子量が1000〜5000である請求項1〜5のいずれか1項に記載のウレタン樹脂形成性組成物。
【請求項7】
高分子ジオール(D)と高分子ポリオール(G)が同じ組成であり、高分子ジオール(D)の末端に位置する水酸基含有基である−C−OH基の3モル%以下が下記一般式(1)で表される請求項1〜6のいずれか1項に記載のウレタン樹脂形成性組成物。
【化1】

【請求項8】
シーラント用である請求項1〜7のいずれか1項に記載のウレタン樹脂形成性組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のウレタン樹脂形成性組成物を含有するシーラント。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のウレタン樹脂形成性組成物を含有する防水材。

【公開番号】特開2011−207931(P2011−207931A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−74359(P2010−74359)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】