説明

ウレタン系湿気硬化型接着剤組成物

【課題】コロナ処理等の表面処理をしていない、PE及びPP等のオレフィン系樹脂やPET等のポリエステル系樹脂への接着性が良好であるウレタン系湿気硬化型接着剤組成物を提供すること。
【解決手段】数平均分子量が2000〜6000であるポリエステルポリオール(a1)と、数平均分子量が1000〜3000であるポリエーテルポリオール(a2)と、イソシアネート化合物とを反応させてなり、かつ、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(A)、数平均分子量が2000〜4000であり、1分子当たりの平均官能基数が2〜5個の範囲であるオレフィン系ポリオール(B)、軟化点が80〜125℃である脂肪族飽和炭化水素系の粘着付与樹脂(C)、および、軟化点が100〜125℃であるマレイン酸変性された粘着付与樹脂(D)を含むウレタン系湿気硬化型接着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル系及びポリエーテル系のウレタンプレポリマーを含有してなる湿気硬化型接着剤組成物に関し、特に、コロナ処理等の表面処理をしていない、ポリエチレン(以下PEと表記する)及びポリプロピレン(以下PPと表記する)等のオレフィン系樹脂やポリエチレンテレフタレート(以下PETと表記する)等のポリエステル系樹脂への接着性が良好であるウレタン系湿気硬化型接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルポリオール及びポリエーテルポリオールと、イソシアネート化合物との反応によって得られるウレタンプレポリマーからなる湿気硬化型接着剤は、常温で硬化反応が進行し、反応後は良好な接着力、耐熱性が得られるため従来より広く使用されている(特開昭63−189486号公報、特開平2−16180号公報、特開平2−29483号公報、特開平2−32189号公報、特開平3─285982号公報)。
【0003】
このような湿気硬化型接着剤は、オレフィン系樹脂やポリエステル系樹脂へ接着し難く、例えば、被着材がPPやPETである場合はPPやPETに対してコロナ処理等の表面処理を行わなければならず、また表面処理を行っても充分な接着性を得られない事があった。被着材がPEの場合は特に接着し難く、PEに対してコロナ処理等の表面処理を行ってもほとんど接着しなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63−189486号公報
【特許文献2】特開平2−16180号公報
【特許文献3】特開平2−29483号公報
【特許文献4】特開平2−32189号公報
【特許文献5】特開平3─285982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記問題点を鑑みてなされたものであり、その目的はコロナ処理等の表面処理をしていない、難接着材料であるPE及びPP等のオレフィン系樹脂やPET等のポリエステル系樹脂への接着性に優れたウレタン系湿気硬化型接着剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、数平均分子量が2000〜6000であるポリエステルポリオール(a1)と、数平均分子量が1000〜3000であるポリエーテルポリオール(a2)と、イソシアネート化合物とを反応させてなり、かつ、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(A)、
数平均分子量が2000〜4000であり、1分子当たりの平均官能基数が2〜5個の範囲であるオレフィン系ポリオール(B)、
軟化点が80〜125℃である脂肪族飽和炭化水素系の粘着付与樹脂(C)、および、
軟化点が100〜125℃であるマレイン酸変性された粘着付与樹脂(D)を含むウレタン系湿気硬化型接着剤組成物であって、
接着剤組成物の合計100重量%中、オレフィン系ポリオール(B)の割合が3〜10重量%であることを特徴とするウレタン系湿気硬化型接着剤組成物に関する。
【0007】
また、本発明は、接着剤組成物の合計100重量%中、ウレタンプレポリマー(A)の割合が40〜55重量%であり、粘着付与樹脂(C)の割合が15〜30重量%であり、粘着付与樹脂(D)の割合が10〜25重量%であることを特徴とする上記ウレタン系湿気硬化型接着剤組成物に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、コロナ処理等の表面処理をしていない、PE及びPP等のオレフィン系樹脂やPET等のポリエステル系樹脂への接着性に優れた湿気硬化型接着剤組成物を提供することができた。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明において用いられるポリエステルポリオールは数平均分子量が2000〜6000である。
【0010】
ポリエステルポリオールの数平均分子量が2000未満では耐熱性が低下し、数平均分子量が6000を超えると粘度が高くなり、接着剤組成物の塗工性が低下する。
【0011】
本発明において用いられるポリエーテルポリオールは数平均分子量が1000〜3000である。
【0012】
ポリエーテルポリオールの数平均分子量が1000未満では耐熱性が低下し、数平均分子量が3000を超えると粘度が高くなり、接着剤組成物の塗工性が低下する。
【0013】
なお、本発明における数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の値である。
【0014】
本発明において用いられるイソシアネート化合物は、芳香族系のジイソシアネートや脂肪族系のジイソシアネートであり、具体的にはジフェニルメタンジイソシアネート(以下MDIと表記する)やイソホロンジイソシアネート(以下IPDIと表記する)が好ましく用いられる。芳香族系のジイソシアネートまたは脂肪族系のジイソシアネートが有するイソシアネート基と、ポリオールが有する水酸基との当量比(NCO/OH)は1.5〜2.5が好ましく、さらに好ましくはNCO/OH=1.7〜2.2である。前記当量比にかかる範囲内に調整することによって、粘度を調整し、塗工性の良い湿気硬化型接着剤組成物を得る事ができる。
【0015】
上記当量比となるように、数平均分子量が2000〜6000であるポリエステルポリオールと、数平均分子量が1000〜3000であるポリエーテルポリオールと、イソシアネート化合物とを反応させることにより、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(A)を得ることができる。
【0016】
本発明において用いられるオレフィン系ポリオール(B)は数平均分子量が2000〜4000であり、1分子当たりの平均官能基数が2〜5個の範囲であり、本発明のウレタン系湿気硬化型接着剤組成物の合計100重量%中、3〜10重量%の割合で含有される。
【0017】
オレフィン系ポリオール(B)は、後述する脂肪族飽和炭化水素系の粘着付与樹脂(C)と、ポリエステルポリオール成分及びポリエーテルポリオール成分、とを相溶させる為の相溶化剤としての機能がある。オレフィン系ポリオール(B)の数平均分子量が2000未満では、脂肪族飽和炭化水素系の粘着付与樹脂との相溶性が不足することがあり、数平均分子量が4000を超えると、接着剤組成物の粘度が高くなり、塗工性が低下する。
【0018】
オレフィン系ポリオールの1分子当たりの平均官能基数が2個未満では、イソシアネート基と反応する官能基数が少ない為に、接着剤組成物の湿気硬化後の耐熱性及び凝集力が低下する。1分子当たりの平均官能基数が多い程にゲル化し易くなるが、5個以下ではゲル化することが少ない。
ここに、上記官能基としては、具体的には水酸基が挙げられる。
【0019】
接着剤組成物の合計100重量%中、オレフィン系ポリオール(B)の割合が、3重量%未満では脂肪族飽和炭化水素系の粘着付与樹脂(C)との相溶性の改善への効果が少なく、10重量%を越えるとゲル化し易くなる。
【0020】
本発明において用いられる前述の粘着付与樹脂である、脂肪族飽和炭化水素系の粘着付与樹脂(C)の軟化点は80〜125℃であり、マレイン酸変性された粘着付与樹脂(D)の軟化点は100〜125℃であるが、好ましくは共に120℃以下である。ウレタン系プレポリマーは130℃以上では増粘等の劣化が激しくなり、また当該湿気硬化型接着剤組成物は一般的に120℃前後で使用される為に、本発明において用いられる粘着付与樹脂の軟化点も120℃を超えないことが好ましい。
【0021】
本発明における軟化点は、環球法によるものであり、JIS K5601−2−2に準拠して測定される。
【0022】
本発明において用いられるマレイン酸変性された粘着付与樹脂(D)は、具体的にはマレイン酸変性ロジンエステルが好ましく用いられる。他の粘着付与樹脂としてはウレタンプレポリマーと相溶性の良いものも存在するが、コロナ処理等の表面処理をしていない、PPやPET等のオレフィン系樹脂への接着性の向上、初期凝集力の向上、オレフィン樹脂との相溶性を改善する相溶化剤的な効果はマレイン酸変性ロジンエステルが特に優れている。
【0023】
マレイン酸変性された粘着付与樹脂(D)のマレイン酸部分はポリオールの水酸基と、またイソシアネート基とも親和性があると考えられ、他の粘着付与樹脂では得られないウレタンプレポリマーとの相溶性があり、またコロナ処理等の表面処理をしていない、PP等のオレフィン系樹脂やPET等のポリエステル系樹脂への接着性の向上等の効果を得られる。
【0024】
本発明において用いられる脂肪族飽和炭化水素系の粘着付与樹脂(C)は、ポリエステルポリオール成分及びポリエーテルポリオール成分と不相溶であるが、前述のオレフィン系ポリオールが相溶化剤として機能する為に、脂肪族飽和炭化水素樹脂を添加することができ、特にPEへの接着性の向上に効果がある。
脂肪族飽和炭化水素系の粘着付与樹脂(C)としては、具体的には、石油系水添樹脂が好ましく用いられる。
【0025】
本発明においては、接着剤組成物の合計100重量%中、ウレタンプレポリマー(A)の割合が40〜55重量%であり、粘着付与樹脂(C)の割合が15〜30重量%であり、粘着付与樹脂(D)の割合が10〜25重量%であることが好ましい。
【0026】
本発明で言うコロナ処理等の表面処理とは、PP及びPET等の難接着材料の表面を改質し、接着性を向上させる事を目的として行う、コロナ放電処理、紫外線照射処理、オゾン処理等の方法である。
【0027】
また、本発明の湿気硬化型接着剤組成物は、所望によりその他の粘着付与樹脂、オレフィン樹脂、可塑剤、触媒、充填剤、染料、顔料等が加えられても良い。
【実施例】
【0028】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。しかし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0029】
実施例1〜13及び比較例1〜9
<湿気硬化型接着剤組成物の合成方法>
表1〜表4に示した原料の割合(部数)で、MDIまたはIPDI以外をすべて丸底フラスコに投入した。120℃に加熱溶融して1〜2時間真空状態で撹拌し、原料中の水分を十分に脱気した。105℃に温度を下げ、予め40℃〜60℃の加温で溶融したMDI、またはIPDIを投入した。MDIまたはIPDI投入後1.5時間以上真空状態で撹拌を行った。再び120℃に昇温し、合成した湿気硬化型接着剤を取り出した。撹拌速度200〜350RPM
使用機器等;1リットル容量丸底フラスコ、マントルヒーター、撹拌機、真空ポンプ、窒素ガス
被着材;未延伸ポリプロピレン(以下CPPと表記する)シート 400μm厚、非晶性ポリエチレンテレフタレート(以下A−PETと表記する)シート 250μm厚、高密度ポリエチレン(以下HDPEと表記する)シート 500μm厚
【0030】
<湿気硬化型接着剤組成物の接着強度測定方法>
湿気硬化型接着剤組成物を120℃オーブンで溶融させ、50μm厚のPETフィルムにハンドアプリケーターで接着剤層の厚さが40〜50μmとなるように塗工した。直ちにCPPシート及びA−PETシート及びHDPEシートを塗工物と貼り合せ、25mm幅に断裁し、ヒートシールをした。
ヒートシール条件;110℃、1秒、98kPa
養生時間;ヒートシール後から72時間
接着強度測定条件;23℃ 65%RH及び80℃(湿度調整無し)の雰囲気で180度角剥離 剥離速度200mm/分
【0031】
<性能試験評価>
実施例及び比較例の判定結果は以下の基準で表5〜表8に記載する。
相溶性(MDIまたはIPDI以外の原料すべてを溶融撹拌した時の相溶性で、○は問題なく溶融撹拌できる場合、×は粒等が目視できる等の不相溶性を示す場合)、ゲル化(○は合成中にゲル化しない、△はゲル化しないが塗工できない高粘度、×はゲル化する)、塗工性(120℃において、○は粘度40000mPa・s未満、×は粘度40000mPa・s以上)、養生時間72時間後の23℃での接着強度(◎は30N/25mm以上、 ○は30N/25mm未満20N/25mm以上、 △は20N/25mm未満5N/25mm以上、 ×は5N/25mm未満)、養生時間72時間後の80℃での接着強度(◎は20N/25mm以上、 ○は20N/25mm未満10N/25mm以上、 △は10N/25mm未満5N/25mm以上、 ×は5N/25mm未満)
【0032】
<実施例及び比較例で用いられた原料>
ポリエーテルポリオール:PTMG1000(ポリオキシテトラメチレンエーテルグリコール)(三菱化学社製、数平均分子量1000、水酸基価112mgKOH/g)
ポリエーテルポリオール:PTMG2000(ポリオキシテトラメチレンエーテルグリコール)(三菱化学社製、数平均分子量2000、水酸基価57mgKOH/g)
液状ポリエステルポリオール:ダイナコール7230(エボニック デグサ ジャパン社製、数平均分子量3500、水酸基価30mgKOH/g)
液状ポリエステルポリオール:ダイナコール7250(エボニック デグサ ジャパン社製、数平均分子量5500、水酸基価21mgKOH/g)
非結晶性ポリエステルポリオール:ダイナコール7150(エボニック デグサ ジャパン社製、数平均分子量2600、水酸基価42mgKOH/g)
結晶性ポリエステルポリオール:ダイナコール7360(エボニック デグサ ジャパン社製、数平均分子量3500、水酸基価30mgKOH/g)
結晶性ポリエステルポリオール:ダイナコール7362(エボニック デグサ ジャパン社製、数平均分子量2000、水酸基価50mgKOH/g)
結晶性ポリエステルポリオール:ダイナコール7361(エボニック デグサ ジャパン社製、数平均分子量8500、水酸基価13mgKOH/g)
ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI):ミリオネート MT(日本ポリウレタン工業社製)
イソホロンジイソシアネート(IPDI):VESTANAT IPDI(エボニック デグサ ジャパン社製)
オレフィン系ポリオール:ポリテールH(数平均分子量2700、融点60〜70℃、平均官能基数2.3個、三菱化学社製)
石油系水添樹脂:アルコンP−90(荒川化学社製、軟化点90℃)
石油系水添樹脂:アルコンP−100(荒川化学社製、軟化点100℃)
石油系水添樹脂:アルコンP−125(荒川化学社製、軟化点125℃)
石油系水添樹脂:アルコンP−140(荒川化学社製、軟化点140℃)
マレイン酸変性ロジンエステル:リカタック4821(リカファインテク社製、軟化点108℃)
マレイン酸変性ロジンエステル:リカタック4740(リカファインテク社製、軟化点120℃)
マレイン酸変性ロジンエステル:リカエステル28JA(リカファインテク社製、軟化点135℃)
ペンタエリスリトールエステル:リカタック4851(リカファインテク社製、軟化点100℃)
水添ロジンエステル:リカタックF85(リカファインテク社製、軟化点85℃)
テルペン系樹脂:YSポリスターU115(ヤスハラケミカル社製、軟化点115℃)
EVA:ウルトラセン0B54A−6(東ソー社製、メルトフローレート400g/10分 酢酸ビニル含有率33重量%)
【0033】
【表1】

【0034】
【表2】

【0035】
【表3】

【0036】
【表4】

【0037】
【表5】

【0038】
【表6】

【0039】
【表7】

【0040】
【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
数平均分子量が2000〜6000であるポリエステルポリオール(a1)と、数平均分子量が1000〜3000であるポリエーテルポリオール(a2)と、イソシアネート化合物とを反応させてなり、かつ、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(A)、
数平均分子量が2000〜4000であり、1分子当たりの平均官能基数が2〜5個の範囲であるオレフィン系ポリオール(B)、
軟化点が80〜125℃である脂肪族飽和炭化水素系の粘着付与樹脂(C)、および、
軟化点が100〜125℃であるマレイン酸変性された粘着付与樹脂(D)を含むウレタン系湿気硬化型接着剤組成物であって、
接着剤組成物の合計100重量%中、オレフィン系ポリオール(B)の割合が3〜10重量%であることを特徴とするウレタン系湿気硬化型接着剤組成物。
【請求項2】
接着剤組成物の合計100重量%中、ウレタンプレポリマー(A)の割合が40〜55重量%であり、粘着付与樹脂(C)の割合が15〜30重量%であり、粘着付与樹脂(D)の割合が10〜25重量%であることを特徴とする請求項1記載のウレタン系湿気硬化型接着剤組成物。

【公開番号】特開2012−21104(P2012−21104A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−161176(P2010−161176)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【出願人】(591004881)東洋アドレ株式会社 (51)
【Fターム(参考)】