説明

エアカーテン装置

【課題】従来のカーテン装置では防ぎきれなかった虫の侵入を抑制できるようにする。
【解決手段】建物の開口部にエアカーテンを形成するためのエアカーテン装置1は、空気を送る送風機10と、送風機10から送られた空気を、開口部への出入り方向と交差する方向に吹き出してエアカーテンを形成するための吹き出し部23と、エアカーテンを形成するための空気に薬剤を混合させるための薬剤供給部40とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば工場等の建物の出入り口に設けられるエアカーテン装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、工場等の建物の出入り口にエアカーテン装置を設けて虫が工場内に侵入するのを抑制することが行われている(例えば、特許文献1、2参照)。特許文献1、2のエアカーテン装置は、出入り口を遮るように空気を送る構造であり、空気の流れによりカーテンが形成されて虫の侵入が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−57928号公報
【特許文献2】特開2006−22993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、エアカーテン装置を設けていても、人や荷物に付着した虫が人や荷物と一緒に建物内に侵入してしまう恐れがある。また、虫は人や荷物に付着する以外にも、例えば飛翔虫であれば、建物の外壁の出入り口付近にとまっていて、人の出入りが刺激となって飛び立ち、人と一緒に侵入してしまうこともある。また、建物の外部を歩いている匍匐虫も同様に刺激を受けて出入り口から建物に侵入してしまうこともある。
【0005】
また、これら虫害の抑制のみならず、菌やアレルゲンの建物内への侵入を抑制したいという要求もある。
【0006】
さらに、建物内の快適性を向上させるために消臭や芳香を効果的に行いたいという要求もある。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、従来のカーテン装置では防ぎきれなかった虫の侵入を抑制したり、菌やアレルゲンの建物内への侵入を抑制したり、消臭や芳香を効果的にできる新しい機能を従来のエアカーテン装置に付与することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明では、エアカーテンを形成する空気に防虫、忌避、または殺虫作用のある薬剤や、消臭剤、除菌剤、殺菌剤、芳香剤、アレルゲン凝集除去剤、失活剤を混合するようにした。
【0009】
第1の発明は、建物の開口部にエアカーテンを形成するためのエアカーテン装置において、空気を送る送風機と、上記送風機から送られた空気を、上記開口部への出入り方向と交差する方向に吹き出してエアカーテンを形成する吹き出し部と、エアカーテンを形成するための空気に薬剤を混合させるための薬剤供給部とを備えていることを特徴とするものである。
【0010】
この構成によれば、吹き出し部から吹き出した空気は、エアカーテンを形成した後、建物の開口部近傍にしばらく存在することになる。このエアカーテンを形成する空気に、例えば殺虫剤が混合されている場合には、殺虫剤が建物の開口部近傍に存在することになるので、建物の開口部の外壁にとまっている飛翔虫や建物の開口部の外部を歩いている匍匐虫が殺虫される。これにより、虫の侵入が抑制される。
【0011】
また、エアカーテンを形成する空気に、例えば忌避剤や防虫剤が混合されている場合には、忌避剤や防虫剤が建物の開口部近傍に存在することになるので、飛翔虫や匍匐虫が建物の開口部から逃げる行動をとるようになり、虫の侵入が抑制される。
【0012】
さらに、人や荷物と一緒に建物へ侵入しようとした虫に対しては、エアカーテンを形成する空気に含まれる殺虫剤等が直接的に当たることになる。これにより、確実に殺虫したり、虫に確実に忌避行動をとらせることが可能になる。
【0013】
また、エアカーテンを形成する空気に、例えば消臭剤、除菌剤、殺菌剤、芳香剤、アレルゲン凝集除去剤、失活剤を混合した場合には、それぞれ、消臭効果や、除菌効果、殺菌効果、アレルギー抑制効果を得ることができる。
【0014】
つまり、これまでのエアカーテン装置にない新しい機能を付与することが可能になる。
【0015】
第2の発明は、第1の発明において、エアカーテンを形成するための空気を吸い込む吸い込み部を備え、薬剤供給部が吸い込み部近傍に配置されていることを特徴とするものである。
【0016】
この構成によれば、エアカーテン装置の空気流れ方向上流側に薬剤供給部が配置されることになるので、薬剤と空気とが下流側へ流れていく間によく混合する。そして、薬剤が空気に略均一に混合した状態で吹き出し部から吹き出すことになるので、殺虫等の効果が吹き出し部位によって異なるのを防止することが可能になる。
【0017】
第3の発明は、第1または2の発明において、薬剤供給部は、液状の薬剤を収容する容器と、該容器内の薬剤を吸い出す吸液部材とを備え、上記吸液部材は、エアカーテンを形成するための空気の流れの中に配置されていることを特徴とするものである。
【0018】
この構成によれば、容器内の薬剤が吸液部材により吸い出され、吸い出された薬剤は空気に混合する。そして、容器内の薬剤が無くなると薬剤を補充することで殺虫等の効果が継続して得られる。
【0019】
第4の発明は、第1または2の発明において、薬剤供給部は、液状の薬剤を収容する容器と、該容器内に連通して薬剤を吸引する吸引管とを備え、上記吸引管の薬剤流れ方向下流端は、エアカーテンを形成するための空気の流れの中に配置されていることを特徴とするものである。
【0020】
この構成によれば、吸引管の下流端が空気の流れの中に配置されているので、吸引管の下流端には負圧が作用する。この負圧力により容器内の薬剤が吸い出され、吸い出された薬剤は空気に混合する。そして、容器内の薬剤が無くなると薬剤を補充することで殺虫等の効果が継続して得られる。
【0021】
第5の発明は、第1または2の発明において、エアカーテンを形成するための空気の主流に臨むように開口して大気に連通するように延びる空気通路を備え、上記空気通路には、薬剤供給部が設けられていることを特徴とするものである。
【0022】
この構成によれば、空気通路が、エアカーテンを形成する空気の主流に臨むように開口しているので、空気通路内には負圧が作用する。この負圧力により空気通路内には大気が流入する。流入した大気には、空気通路内の薬剤供給部により薬剤が混合される。そして、空気通路内の薬剤がエアカーテンを形成する空気の主流に混合することになる。
【0023】
第6の発明は、第1から5のいずれか1つにおいて、薬剤には、殺虫剤、虫の忌避剤、防虫剤、消臭剤、除菌剤、殺菌剤、芳香剤のうち、少なくとも1つが含まれていることを特徴とするものである。
【0024】
この構成によれば、エアカーテンを形成するための空気により消臭効果や、除菌効果、殺菌効果などの効果が得られる。
【発明の効果】
【0025】
第1の発明によれば、エアカーテンを形成する空気に薬剤を混合したので、従来のエアカーテンでは防ぎきれなかった虫の侵入を抑制できる等、これまでのエアカーテン装置にない新しい機能を付与することができる。
【0026】
第2の発明によれば、薬剤供給部を吸い込み部近傍に配置したので、薬剤が略均一に混合した空気によりエアカーテンを形成できる。これにより、より一層高い効果を得ることができる。
【0027】
第3の発明によれば、容器内の薬剤を吸い出す吸液部材を空気の流れの中に配置するようにしたので、容器内の薬剤を空気に確実に混合させることができる。そして、薬剤を容器に補充することで、殺虫等の効果を継続して得ることができる。
【0028】
第4の発明によれば、エアカーテンを形成する空気による負圧力を利用して薬剤を空気に確実に混合させることができる。
【0029】
第5の発明によれば、エアカーテンを形成する空気の主流に臨むように開口する空気通路に薬剤供給部を設けたので、薬剤を、空気通路内に作用する負圧力を利用してエアカーテンを形成する空気に混合させることができる。
【0030】
第6の発明によれば、薬剤に、殺虫剤、虫の忌避剤、防虫剤、消臭剤、除菌剤、殺菌剤、アレルゲン凝集除去剤、失活剤のうち、少なくとも1つが含まれているので、虫の侵入を抑制するだけでなく、消臭効果や、除菌効果、殺菌効果、アレルギー抑制効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施形態1にかかるエアカーテン装置が設置された建物の外観斜視図である。
【図2】実施形態1にかかるエアカーテン装置の縦断面図である。
【図3】エアカーテン装置の設定位置を変更した場合の図1相当図である。
【図4】実施形態1の変形例1にかかる図2相当図である。
【図5】実施形態1の変形例2にかかる図2相当図である。
【図6】実施形態1の変形例3にかかる図2相当図である。
【図7】実施形態1の変形例4にかかる図2相当図である。
【図8】実施形態1の変形例5にかかる図2相当図である。
【図9】実施形態2にかかる図2相当図である。
【図10】実施形態2の変形例にかかる図2相当図である。
【図11】実施形態3にかかるエアカーテン装置の断面図である。
【図12】実施形態3の変形例1にかかる図11相当図である。
【図13】実施形態3の変形例2にかかる図11相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0033】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1にかかるエアカーテン装置1を設置した建物100を示している。建物100は、例えば、工場や事務所、各種作業所等が挙げられるが、これらに限られるものではない。符号101は、建物100の出入り口(開口部)である。
【0034】
エアカーテン装置1は、建物100の外壁における出入り口101の上部に取り付けられており、出入り口101の上部から下方へ向けて空気を勢いよく放出することによって出入り口101を遮るようにエアカーテンを形成するように構成されている。
【0035】
図2に示すように、エアカーテン装置1は、送風機10と、送風機10を収容するケーシング20とを備えている。ケーシング20は、出入り口101の上部に沿って延びる略直方体形状とされている。ケーシング20の前壁部20aには、吸い込み口(吸い込み部)21が形成されている。吸い込み口21には、異物の侵入を防止するための吸い込み側格子部材22が嵌め込まれている。
【0036】
ケーシング20の下壁部20bには、吹き出し口(吹き出し部)23が形成されている。吹き出し口23は、建物100の出入り口101の左端から右端に亘るように形成されている。吹き出し口23には、吹き出し側格子部材24が嵌め込まれている。
【0037】
送風機10は、遠心式ファン(シロッコファン)11と、ファン11を収容するスクロールケーシング12と、ファン11を回転駆動するファン駆動モータ(図示せず)とを備えている。スクロールケーシング12の吸気口12aは、ケーシング20内に開口しており、ケーシング20の吸い込み口21から吸い込まれた空気がスクロールケーシング12内に流入するようになっている。
【0038】
尚、送風機10の構造は上記したものに限られず、例えば軸流ファンやクロスフローファン等を用いた送風機であってもよい。
【0039】
スクロールケーシング12の吐出口12bは、ケーシング20内において吹き出し口23の直上方で、かつ、吹き出し口23に対向するように開口しており、吐出口12bから吐出された空気はケーシング20の吹き出し口23から吹き出すようになっている。
【0040】
送風機10の能力は、吹き出し口23から吹き出す空気の風量が出入り口101の上部から下部に亘ってエアカーテンを形成するのに十分な風量が得られるように、また、送風機10の個数は、エアカーテンを形成するのに十分な個数が設定されている。
【0041】
送風機10は、図示しない制御部により制御されるようになっている。制御部には、送風機10を作動状態と停止状態とに切り替えるためのON/OFFスイッチの他、風量を調節するスイッチも設けられている。
【0042】
ケーシング20内には、スクロールケーシング12の吐出口12bとケーシング20の吹き出し口23との間に、略板状の薬剤含浸体(薬剤供給部)40が設けられている。薬剤含浸体40は、例えば、不織布、連通気孔を有する発泡材、ハニカム状の部材等からなる通気性を有する基材に、揮発性を有する薬剤を含浸させてなるものである。
【0043】
薬剤としては、例えば、殺虫剤、虫の忌避剤、防虫剤のうち、少なくとも1つを含んでいる。これら殺虫剤、忌避剤、防虫剤は、従来より一般家庭や事務所等で用いられているものを使用することができる。
【0044】
殺虫剤としては、例えば、アレスリン、dl・d−T80−アレスリン、dl・d−T−アレスリン、d・d−T−アレスリン、フタルスリン、dl・d−T80−フタルスリン、レスメトリン、dl・d−T80−レスメトリン、フラメトリン、ペルメトリン、フェノトリン、フェンバレレート、シペルメトリン、シフェノトリン、イミプロスリン、エトフェンプロックス、テフルスリン、フェンプロパトリン、フェンフルスリン、トランスフルトリン、エンペントリン、テラレスリン、メトフルトリン、プラレトリン、d・d−T80−プラレトリン等ピレスロイド系化合物、ダイアジノン、DDVP、フェニトロチオン、フェニチオン、テメホス、ホキシム、アセフェート、ピリダフェンチオン、エトリムホス、マラチオン、プロチオホス、プロペタンホス、ピラクロホス、クロルピリホス、クロルピリホスメチル等の有機燐系化合物、NAC、ペンチオカルブ、プロポクスル等のカーバメイト系化合物が挙げられる。
【0045】
また、忌避剤としては、例えば前述の殺虫剤に加え、N,N−ジエチル―m―トルアミド、ジメチルフタレート、ジブチルフタレート、2−エチル−1.3−ヘキサンジオール、ジ−n−プロピルイソシンコメロネート、p−ジクロロベンゼン、ジ−n−ブチルサクシネート、カラン−3,4ジオール、1−メチルプロピル2−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペリジンカルボキシラート、N,N−ジエチル−m−トルアミド、ジ−n−ブチルサクシネート、ジ−n−プロピリイソシンコメロネート、p−メンテン−3,8ジオール、ユーカリブトール、グアニジン等が挙げられる。
【0046】
また、薬剤には、害虫成長阻害剤を含んでいてもよく、害虫成長阻害剤としては、例えば、ジフルベンズロン、ブプロフェジン等のキチン合成阻害剤、ピリプロキシフェン、ハイドロプレン等の幼若ホルモン様物質等が挙げられる。
【0047】
また、薬剤には、殺菌剤及び除菌剤の少なくとも一方を含んでいてもよく、殺菌剤や除菌剤としては、例えば、塩化セチルピリジニウム、クロルヘキシジン、塩化ベンゼトニウム、塩化デカリニウム、トリクロサン、パラクロルメタキシレノール、オルソフェニルフェノール、トリクロロカルバニリド、イソプロピルメチルフェノール、グレープフルーツ種子抽出物、ポリリジン、卵白リゾチーム、グリセリン脂肪酸エステル、茶抽出物、プロタミン、竹エキス、エギノキ抽出物、カワラヨモギ抽出物、ヒノキチオール、ホオノキ抽出物、レンギョウ抽出物、ペクチン分解物等が挙げられる。
【0048】
また、薬剤には、芳香剤を含んでいてもよく、芳香剤としては、例えば天然及び人工の各種香料を用いることができ、植物性、動物性の天然ローズ、クローブ、レモン、カルダモン、ビャクダン、クロモジ、シンナモン等植物性香料、ムスク、シベット、カストリウム、アンバーグリス等動物性香料、レモングラス、ペパーミント等の単離香料や炭化水素、アルコール、フェノール、アルデヒド、ケトン、ラクトン、オキシド、エステル類等の人工香料等が挙げられる。
【0049】
また、薬剤には、消臭剤を含んでいてもよく、消臭剤としては、例えばシトラール、シンナミックアルデヒド、カンファー、ボルニルアセテート等の芳香系消臭剤、テレピン油、ユーカリ油、ビャクダン油等植物性精油の中和系消臭剤、ベンズアルデヒド、桂皮アルデヒド、マレイン酸ジメチル、フマル酸エステル等の化学反応系消臭剤や茶葉、緑茶、マテ茶、カカオ、パセリ、シソ科植物等が挙げられる。
【0050】
また、薬剤には、花粉やダニ等のアレルギーを引き起こす原因物質を凝集除去、または失活するアレルゲン凝集除去剤、失活物質を含んでいてもよく、アレルゲン凝集除去剤、失活物質としては、例えば、ヘクトライト、塩化ベンザルコニウム、ポリフェノール化合物やエタノール、酸化チタン、ポリアクリル酸ナトリウム等が挙げられる。
【0051】
以上のように構成されたカーテン装置1を使用する場合について説明する。ON/OFFスイッチの操作によってファン11が回転すると、スクロールケーシング12の吸気口12aに負圧が発生し、これにより、ケーシング20の吸い込み口21から空気が吸い込まれ、ケーシング20内の空気は、吸気口12aからスクロールケーシング12に吸い込まれる。
【0052】
スクロールケーシング12に吸い込まれた空気は吐出口12bから吐出される。吐出口12bから吐出された空気は、薬剤含浸体40に当たり、薬剤含浸体40を通過する。空気が薬剤含浸体40を通過する過程で、空気には、薬剤含浸体40に含浸されている薬剤が混合する。この薬剤が混合した空気がケーシング20の吹き出し口23から吹き出し、建物100の出入り口101にエアカーテンを形成する。
【0053】
エアカーテンを形成した空気は、その後、建物100の出入り口101近傍にしばらく存在することになる。このエアカーテンを形成する空気に殺虫剤が混合されているので、殺虫剤が建物100の出入り口101近傍に存在することになる。これにより、建物100の出入り口101の外部にとまっている飛翔虫や建物100の出入り口101の外部を歩いている匍匐虫が殺虫される。よって、虫が建物100へ侵入するのを抑制できる。
【0054】
また、エアカーテンを形成する空気に忌避剤や防虫剤が混合されているので、忌避剤や防虫剤も建物100の出入り口101近傍に存在することになる。これにより、飛翔虫や匍匐虫が建物100の出入り口101から逃げる行動をとるようになり、虫の侵入が抑制される。
【0055】
さらに、人や荷物と一緒に建物へ侵入しようとした虫に対しては、エアカーテンを形成する空気に含まれる殺虫剤等が直接的に当たることになる。これにより、確実に殺虫したり、虫に確実に忌避行動をとらせることが可能になる。
【0056】
尚、飛翔虫とは、例えばハエやカ、ユスリカ、コバエ、蛾等であり、匍匐虫とは、例えばゴキブリやアリ、ムカデ等である。
【0057】
したがって、この実施形態1によれば、エアカーテンを形成する空気に、殺虫剤、虫の忌避剤、防虫剤を混合したので、出入り口101付近の虫密度を低減し、従来のエアカーテンでは防ぎきれなかった虫の侵入をより効果的に抑制できるといったこれまでのエアカーテン装置にない新しい機能を付与することができる。
【0058】
また、薬剤として、消臭剤、除菌剤、殺菌剤、芳香剤、アレルゲン凝集除去剤、失活剤のうち、少なくとも1つを用いることで、消臭効果や、除菌効果、殺菌効果、芳香効果、アレルギー抑制効果といった、これまでのエアカーテン装置になかった全く新しい機能を得ることができる。
【0059】
尚、薬剤は、殺虫剤、虫の忌避剤、防虫剤、アレルゲン凝集除去剤、失活剤のうち複数種を含むものであってもよい。また、薬剤は、殺虫剤、虫の忌避剤、防虫剤を含まず、消臭剤、除菌剤、殺菌剤、芳香剤、アレルゲン凝集除去剤、失活剤のうち少なくとも1つを含むものであってもよい。
【0060】
また、図3に示すように、エアカーテン装置1は、建物100の出入り口101の左右両側縁部に設置してもよい。
【0061】
また、図4に示す変形例1のように、薬剤含浸体40をケーシング20内において空気流れ方向上流側、即ち、吸い込み口21の近傍に設けてもよい。この変形例1の薬剤含浸体40は、ケーシング20内で空気の流れを横切るように配置されている。また、ケーシング20内の薬剤含浸体40よりも空気流れ上流側には、エアフィルタ41が配設されている。薬剤含浸体40の上流側にエアフィルタ41を配設したことにより、薬剤含浸体40に埃等が付着するのを防止でき、薬剤の揮発性能を長期間に亘って維持できる。
【0062】
また、図5に示す変形例2のように、薬剤含浸体42を環状に形成してもよい。この変形例2の薬剤含浸体42は、ケーシング20の内面に沿って延びるように形成され、該内面に固定されている。薬剤含浸体42の内部を空気が流通するようになっており、この流通時に空気に薬剤が混合する。薬剤含浸体42の形状としては、円環状であってもよいし、断面が多角形の環状であってもよい。また、薬剤含浸体42の周方向の一部が切り欠かれた形状であってもよい。
【0063】
また、図6に示す変形例3のように、薬剤含浸体42を棒状に形成してもよい。この変形例3の薬剤含浸体42は、ケーシング20の内面に沿って延びており、該内面に固定されている。
【0064】
また、送風機10の吸気口12aや吐出口12bに薬剤含浸体42を直接取り付ける形態であってもよい。
【0065】
上記変形例1〜3のように薬剤含浸体42を空気流れ上流側に配置することで、薬剤と空気とが下流側へ流れていく間によく混合する。そして、薬剤が空気に略均一に混合した状態でケーシング20の吹き出し口23から吹き出すことになるので、殺虫等の効果が吹き出し部位によって異なるのを防止することが可能になる。
【0066】
また、図7に示す変形例4のように、薬剤供給部43を、液状の薬剤を収容する容器43aと、容器43a内の薬剤を吸い出す吸液芯43b(吸液部材)とを備えたものとしてもよい。容器43aは、例えば透光性を有する部材で構成されている。この容器43aは、ケーシング20内において空気流れ方向下流側、即ち、送風機10の吐出口12bとケーシング20の吹き出し口23との間に配置されている。容器43aには、上記薬剤含浸体40に含浸させた薬剤と同様な薬剤が収容されている。吸液芯43bは、例えば不織布等の毛細管現象を生じ得る部材で構成されている。吸液芯43bの一端側が容器43a内の薬剤に接触するように配置され、他端側は、容器43aの外部へ突出し、送風機10の吐出口12bとケーシング20の吹き出し口23との間に配置されている。容器43a内の薬剤は、吸液芯43bにより吸い出される。そして、送風機10の吐出口12bから吐出された空気が吸液芯43bに当たると、吸液芯43bの薬剤が空気に混合する。容器43a内の薬剤が無くなると、薬剤を補充することが可能である。薬剤の補充は、薬剤(液)を容器43aに直接補充してもよいし、薬剤が無くなった容器43aを、充填済みの別の容器43aに交換してもよい。容器43aはケーシング20の外部に設けてもよく、こうすることで、薬剤の補充や容器43aの交換がより一層容易に行える。
【0067】
変形例4では、容器43a内の薬剤を吸い出す吸液芯43bを空気の流れの中に配置するようにしたので、容器43a内の薬剤を空気に確実に混合させることができる。そして、薬剤を容器43aに補充することで、殺虫等の効果を継続して得ることができる。
【0068】
また、容器43aに透光性を持たせることで、外部から薬剤の残量を把握できるので、容器43aの交換や薬剤を補充する時期を容易に判断することが可能となる。
【0069】
また、図8に示す変形例5のように、薬剤供給部44を、液状の薬剤を収容する容器44aと、容器44a内に連通して薬剤を吸引するための吸引管44bとを備えたものとしてもよい。吸引管44bは、いわゆるオリフィス管である。吸引管44bの下流端は、送風機10の吐出口12bとケーシング20の吹き出し口23との間の空気の流れの中に配置されているので、吸引管44bの下流端には負圧が作用する。この負圧力により容器44a内の薬剤が吸い出され、吸い出された薬剤は空気に混合する。そして、容器44a内の薬剤が無くなると薬剤を補充することで殺虫等の効果が継続して得られる。また、薬剤の補充方法は変形案4と同様である。
【0070】
(実施形態2)
図9は、本発明の実施形態2にかかるエアカーテン装置1の断面図である。この実施形態2のエアカーテン装置1は、実施形態1のものに対し、薬剤の供給方法が異なるだけであり、他の部分は同一であるため、以下、実施形態1と異なる部分について詳細に説明する。
【0071】
すなわち、実施形態2では、薬剤含浸体46がケーシング20の外部に設けられている。ケーシング20の下壁部20bの吹き出し口23の近傍には、通路形成部材45が下方(エアカーテンを形成するための空気の吹出方向)へ突出するように設けられている。通路形成部材45には、エアカーテンを形成するための空気の主流に臨むように開口して大気に連通するように延びる空気通路45aが形成されている。空気通路45aは、エアカーテンを形成するための空気の主流に臨む側が下流端とされ、反対側の端部が上流端とされており、下流端が上流端よりも下に位置するように傾斜している。
【0072】
空気通路45aには、薬剤含浸体46が配置されている。薬剤含浸体46は、実施形態1の薬剤含浸体40と同様に構成されている。
【0073】
ケーシング20の吹き出し口23から空気が吹き出すと、空気通路45aの下流端が、その空気の主流に臨むように開口しているので、空気通路45a内には負圧が作用する。この負圧力により空気通路45a内には、上流端から大気が流入する。流入した大気は、空気通路45a内の薬剤含浸体46を通過し、これにより大気に薬剤が混合される。そして、空気通路45a内の薬剤がエアカーテンを形成する空気の主流に混合するので、エアカーテンを形成する空気に薬剤が混合される。
【0074】
以上説明したように、この実施形態2にかかるエアカーテン装置1によれば、実施形態1と同様に、エアカーテンを形成する空気に、殺虫剤、虫の忌避剤、防虫剤を混合したので、従来のエアカーテンでは防ぎきれなかった虫の侵入を抑制できる。
【0075】
尚、図10に示す変形例のように、通路形成部材45に薬剤収容部(薬剤供給部)48を形成してもよい。この薬剤収容部48には、実施形態1の薬剤含浸体40に含浸させた薬剤と同じ薬剤が液状で収容されている。薬剤収容部48は、空気通路45aに臨んで開口している。従って、空気通路45aを空気が流れると、その空気に薬剤が混合することになる。この変形例では、薬剤収容部48に薬剤の残量を表示する窓を設けてもよい。
【0076】
(実施形態3)
図11は、本発明の実施形態3にかかるエアカーテン装置1の断面図である。この実施形態3のエアカーテン装置1は、実施形態1のものに対し、空気の流れと薬剤の供給方法とが異なっている。以下、実施形態1と異なる部分について詳細に説明する。
【0077】
ケーシング20内には、中間ダクト50と導風ダクト51とが設けられている。導風ダクト51は、ケーシング20の吹き出し口23の長手方向に沿って延びている。中間ダクト50は、送風機10と導風ダクト50とを接続するためのものである。尚、ケーシング20の吹き出し口23は、建物100の出入り口101の左右方向に延びている。
【0078】
導風ダクト51には、複数の開口部51aが導風ダクト51の長手方向に間隔をあけて設けられている。各開口部51aから空気が吹き出すようになっている。開口部51aは、吹き出し口23の開口位置に対応しており、従って、開口部51aから吹き出した空気はケーシング20の吹き出し口23から吹き出すことになる。
【0079】
ケーシング20内には、液状の薬剤を収容する容器53と、容器53内に連通して薬剤を吸引する吸引管54とが設けられている。吸引管54は、導風ダクト51の外面に沿って導風ダクト51の両端に亘って延びている。吸引管54には、導風ダクト51の開口部51aに対応する部位に、薬剤吐出用のノズル54aが設けられている。
【0080】
実施形態3では、ノズル54aが開口部51aから吹き出す空気の流れの中に配置されているので、開口部51aから空気が吹き出す際に、ノズル54a内に負圧が作用する。この負圧力により容器53内の薬剤が吸い出され、吸い出された薬剤は開口部51aから吹き出す空気に混合する。
【0081】
以上説明したように、この実施形態3にかかるエアカーテン装置1によれば、実施形態1と同様に、これまでのエアカーテン装置にない新しい機能を付与することができる。
【0082】
尚、図12に示す変形例1のように、容器及び吸引管を省略して薬剤含浸体(薬剤供給部)55をケーシング20内に設けるようにしてもよい。薬剤含浸体55は、同図に示すように送風機10の上流側に配置してもよいし、導風ダクト51の下流側に配置してもよい。
【0083】
また、図13に示す変形例2のように、吸引管54の代わりに、実施形態1の変形例4と同様な吸液芯(吸液部材)46を設けてもよい。吸液芯46は、導風ダクト51の外面に沿って導風ダクト51の両端に亘って延びている。この変形例2では、導風ダクト51の開口部51aから吹き出す空気が吸液芯46に当たり、これにより、吸液芯46の薬剤が空気に混合する。
【0084】
また、吸液芯46は、導風ダクト51内や中間ダクト50内、送風機10のスクロールケーシング内に設けてもよい。
【0085】
また、上記実施形態1〜3では、ケーシング20内に送風機10を設けているが、送風機10はケーシング20の外部に配設してもよい。
【0086】
また、薬剤の供給方法としては、例えば、薬剤含浸体や吸液芯を電気により加熱してもよいし、ファンにより薬剤を蒸散するようにしてもよいし、超音波により薬剤を蒸散するようにしてもよく、薬剤の蒸散方法は特に限定されない。
【0087】
また、本エアーカーテン装置1は、風量の調節が可能となっているので、例えば、エアカーテンを形成する必要のないとき(工場の非稼働時等)には、エアカーテン形成時に比べて風量を低下させて微風運転とし、薬剤の拡散のみ継続させるようにすることもできる。
【0088】
また、薬剤含浸体40、42、46や吸液芯43b、47を、エアカーテン装置1の複数箇所に設けるようにしてもよい。
【0089】
また、エアカーテン装置1の使用地域や建物100の種類によって対象とする虫の種類が異なる場合があるが、この場合には、エアカーテン装置1の本体を変更することなく、薬剤の種類のみ変更することで容易に、かつ、低コストで対応することができる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
以上説明したように、本発明にかかるエアカーテン装置は、例えば、工場等の建物の出入り口に設置することができる。
【符号の説明】
【0091】
1 エアカーテン装置
10 送風機
20 ケーシング
23 吹き出し口(吹き出し部)
40 薬剤含浸体(薬剤供給部)
43a 容器
43b 吸液芯(吸液部材)
44a 容器
44b 吸引管
45a 空気通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の開口部にエアカーテンを形成するためのエアカーテン装置において、
空気を送る送風機と、
上記送風機から送られた空気を、上記開口部への出入り方向と交差する方向に吹き出してエアカーテンを形成する吹き出し部と、
エアカーテンを形成するための空気に薬剤を混合させるための薬剤供給部とを備えていることを特徴とするエアカーテン装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエアカーテン装置において、
エアカーテンを形成するための空気を吸い込む吸い込み部を備え、
薬剤供給部が吸い込み部近傍に配置されていることを特徴とするエアカーテン装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のエアカーテン装置において、
薬剤供給部は、液状の薬剤を収容する容器と、該容器内の薬剤を吸い出す吸液部材とを備え、
上記吸液部材は、エアカーテンを形成するための空気の流れの中に配置されていることを特徴とするエアカーテン装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載のエアカーテン装置において、
薬剤供給部は、液状の薬剤を収容する容器と、該容器内に連通して薬剤を吸引する吸引管とを備え、
上記吸引管の薬剤流れ方向下流端は、エアカーテンを形成するための空気の流れの中に配置されていることを特徴とするエアカーテン装置。
【請求項5】
請求項1または2に記載のエアカーテン装置において、
エアカーテンを形成するための空気の主流に臨むように開口して大気に連通するように延びる空気通路を備え、
上記空気通路には、薬剤供給部が設けられていることを特徴とするエアカーテン装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つに記載のエアカーテン装置において、
薬剤には、殺虫剤、虫の忌避剤、防虫剤、消臭剤、除菌剤、殺菌剤、芳香剤、アレルゲン凝集除去剤、失活剤のうち、少なくとも1つが含まれていることを特徴とするエアカーテン装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−132634(P2012−132634A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286225(P2010−286225)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000112853)フマキラー株式会社 (155)
【Fターム(参考)】