説明

エアコン用コンプレッサーの駆動制御装置

【課題】車両の動力性能を低下させず、快適な操縦性を有し、さらに冷房の対象となる車両の室内を設定温度と略一致するようにエアコンの作動を制御することができるエアコン用コンプレッサーの駆動制御装置を提供する。
【解決手段】車両走行用エンジンでエアコンのコンプレッサーを駆動する車両用エアコンコンプレッサーの駆動制御装置において、エンジンの作動を制御するエンジン用ECUと、エアコンの作動を制御するエアコン用ECUと、エンジンによって駆動されるエアコン用の複数のコンプレッサーとを備え、エアコン用ECUはエンジン用ECUからエンジンの駆動状態の情報を入手して、エンジン用ECUに対し、アイドルアップ信号を出力して複数のコンプレッサーの駆動を制御するとともに、複数のコンプレッサーの駆動による駆動負荷量を計算し、エンジン回転の低下を防ぐように複数のコンプレッサーの任意の数を停止させるように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両走行用エンジンによってエアコンのコンプレッサーを駆動する車両用エアコン用コンプレッサーの駆動制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両に備えられるエアコンは、エンジンの動力を利用してエアコンのコンプレッサーを駆動し、冷凍サイクルを用いて車両の室内の冷房効果を得るものである。前記冷凍サイクルは一般的な公知の冷凍サイクルを用いることができる。
また、前記車両に備えられるエアコンには、その作動を制御するエアコン用ECU(Electric Control Unit)が設けられている。該エアコン用ECUにより、冷房の対象となる車両の室内の温度が、該車両の使用者によるエアコンの設定温度と略一致するように前記エアコンの作動を制御している。
【0003】
このようなエアコン用ECUは、エアコンにより冷房を行う車両室内の温度を検知し、該温度が前記設定温度と略一致するように前記エアコンのコンプレッサーの容量を制御するものであり、このコンプレッサーの容量の制御を省動力化を図りつつ行うための技術として、例えば特許文献1には、コンプレッサーの容量を設定する容量設定手段と、エンジン回転数またはエンジン負荷と設定レベルとを比較判定し、エンジン回転数またはエンジン負荷が設定レベルより低いときに前記容量設定手段を制御してコンプレッサーの容量を大きくし、高いときにコンプレッサーの容量を小さく設定する制御手段と、熱負荷に基づいて前記設定レベルの大きさを調整するレベル調整手段とを有し、前記レベル調整手段は熱負荷が小さいときに前記設定レベルを引き下げるようにしてコンプレッサーが大容量で駆動される割合を低減するようにしたエアコン用コンプレッサーの駆動制御装置が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、車両の加速状態を検出してコンプレッサーの作動を一時的に停止制御する車両用エアコン制御装置において、スロットル開度センサと、吸入空気量センサと、車室内温度センサと、前記各センサ出力を受け入れてスロットル開度、スロットル開度変化、吸入空気量変化及び車室内温度を所定値と比較する演算制御装置、とを含み、スロットル開度、スロットル開度変化及び吸入空気量のいずれかが所定値を超え且つ車室内温度が一定値以下である場合にコンプレッサーを一時的に停止制御する車両用エアコン制御装置が開示されている。
【0005】
【特許文献1】実開昭61−46015号公報
【特許文献2】実開昭63−48617号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、バス等の冷房の対象となる室内部分が大きな車両においては、前記エアコン制御を行う容量が大きいため、前記エアコン用のコンプレッサーの容量も大きくする必要があり、複数のエアコン用のコンプレッサーを併用して室内の温度を調整している。従って、特許文献1及び特許文献2に開示された何れの技術を用いても、前記冷房の対象となる室内部分が大きな車両においては、エアコン用のコンプレッサーの調整容量も大きいため、エアコン駆動に伴う車両駆動用エンジンへの負荷が増大し、車両の動力性能が低下するという問題がある。また、車両の動力性能を低下させないために大型のエンジンを搭載すると、冬場等の冷房が不要の際には燃料の無駄遣いとなり車両のランニングコストが増大するという問題がある。
【0007】
従って、本発明はかかる従来技術の問題に鑑み、エンジンの車両駆動用動力への負荷を増大させないために車両の動力性能を低下させず、従って快適な操縦性を有し、さらに冷房の対象となる車両の室内を設定温度と略一致するようにエアコンの作動を制御することができるエアコン用コンプレッサーの駆動制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため本発明においては、
車両走行用エンジンでエアコンのコンプレッサーを駆動する車両用エアコンコンプレッサーの駆動制御装置において、前記エンジンの作動を制御するエンジン用ECUと、前記エアコンの作動を制御するエアコン用ECUと、前記エンジンによって駆動されるエアコン用の複数のコンプレッサーとを備え、前記エアコン用ECUは前記エンジン用ECUから前記エンジンの駆動状態の情報を入手して、前記エンジン用ECUに対し、前記エンジンがアイドル運転状態の場合にアイドルアップ信号を出力して前記複数のコンプレッサーの駆動を制御するとともに、前記複数のコンプレッサーの駆動による駆動負荷量を計算し、前記エンジン回転の低下を防ぐように前記複数のコンプレッサーの任意の数を停止させるように制御することを特徴とする。
【0009】
前記エンジン用ECUは、前記エアコン用ECUからのアイドルアップ信号が入力されると、前記複数のコンプレッサーの一部または全部を駆動することによるトルク低下を計算し、エンジン回転が低下しないように前記複数のコンプレッサーの任意の数を停止させるように制御する。
例えば加速時や登坂時などのエンジントルクに余裕が少ないときには、前記計算に基づき前記複数のコンプレッサーの一部又は全部を停止して動力性能を維持する。
これにより、エンジンの車両駆動用動力を犠牲にせず、快適な操縦性を確保することができ、さらに冷房の対象となる車両の室内を設定温度と略一致するようにエアコンの作動を制御することができる。
【0010】
また、前記複数のコンプレッサーの駆動が停止されて車両室内温度が設定値を超えた場合に、前記エアコン用ECUは前記停止されたコンプレッサーを駆動させると共に、前記コンプレッサーの駆動温度の設定値を車両室内温度の前記設定値より高くしたことを特徴とする。
前記制御により前記複数のコンプレッサーの一部または全部の駆動が停止されて車両室内温度が設定値を超えると、車両室内の居住性を確保するために前記停止されたコンプレッサーを駆動させる。
これにより車両室内の温度を設定値に確保することができるため、車両室内の居住性の著しい悪化を防止することができる。なお、この場合エンジンの動力特性は低下するが、室内温度の前記設定値を前記エアコンのコンプレッサー駆動設定温度よりも低い温度としておくことで、最大動力特性の低下時間を短く抑えることができる。例えばエアコンの設定温度が27℃であれば、室内温度の前記設定値は25℃程度とするとよい。
これにより、室内の設定温度境界部分でのコンプレッサー作動、停止の繰返しを防ぎ、装置の耐久性向上及びエンジン出力に対する負荷変動の繰返しを防止して走行安定性が確保できる。
【0011】
また、前記車両室内温度が設定値を超えた状態が一定時間継続した場合に、前記エアコン用ECUは前記停止されたコンプレッサーを駆動させることを特徴とする。
これにより、車両室内温度が著しく上昇し、車両室内の居住性の著しい悪化を防止することができる。また、前記設定値を超えた状態が一定時間継続した場合にのみ、前記停止されたコンプレッサーを駆動させることで、室内温度の検出値の瞬間的な振れ等によって前記停止されたコンプレッサーが駆動することがないため、前記最大動力特性の低下時間をさらに短く抑えることができる。
【発明の効果】
【0012】
以上記載のごとく本発明によれば、エンジンの車両駆動用動力への負荷変動量を小さくさせて車両の動力性能の低下を防ぐ。従って快適な操縦性を有し、さらに冷房の対象となる車両の室内を設定温度と略一致するようにエアコンの作動を制御することができるエアコン用コンプレッサーの駆動制御装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【実施例1】
【0014】
図1は、実施例1に係る車両に搭載されるエンジンシステムの正面図である。該エンジンシステム2は、エンジン4と、2つのエアコン用コンプレッサー6、8とを含む。以下、エアコン用コンプレッサー6をエアコン用コンプレッサー(No.1)6、エアコン用コンプレッサー8をエアコン用コンプレッサー(No.2)8と称する。
【0015】
エンジン4は、車両の走行用駆動力を発生するものである。また、エンジン4のクランクシャフト10には、ベルト16によってエアコン用コンプレッサー(No.1)6が連結され、ベルト18によってエアコン用コンプレッサー(No.2)8が連結されており、エンジン4は、発生した動力の一部をエアコン用コンプレッサー(No.1)6及びエアコン用コンプレッサー(No.2)8に出力可能に構成されている。
【0016】
エアコン用コンプレッサー(No.1)6及びエアコン用コンプレッサー(No.2)8は、それぞれベルト16及びベルト18によってエンジン4のクランクシャフト10と連結され、エンジン4が発生する動力を用いて駆動される。このエアコン用コンプレッサー(No.1)6及びエアコン用コンプレッサー(No.2)8は、後述するエアコン用ECUからの信号に応じて作動及び停止する。
【0017】
図2は、実施例1に係るエアコン用コンプレッサーの制御に係る機能ブロック図である。前述のように、エアコン用コンプレッサー(No.1)6及びエアコン用コンプレッサー(No.2)8はエアコン用ECU22からの信号に応じて作動及び停止する。
【0018】
図2を参照して、車両のアイドリング時に車両の使用者が室内の設定温度(例えば25℃)でスイッチ30をONにすると、該スイッチ30のON及び設定温度25℃はケーブル32を介してエアコン用ECU22に入力される。エアコン用ECU22では、前記スイッチ30がONにされた信号が入力されると、ケーブル36及びケーブル38を介してエンジン4の作動を制御するエンジン用ECUに対して、アイドルアップ信号を出力する。
【0019】
エンジン用ECU24では、前記アイドルアップ信号が入力されると、エアコン用コンプレッサー(No.1)6及びエアコン用コンプレッサー(No.2)8のうち1台又は2台が駆動した場合のトルク低下を計算し、該トルク低下によってエンジン回転が低下しないように、ケーブル46及びケーブル48を介してエアコン用コンプレッサー(No.1)6及びエアコン用コンプレッサー(No.2)8の許可信号又は不許可信号を出力する。エンジン4の駆動状態及び前記トルク低下の計算から、エアコン用コンプレッサー(No.1)6及びエアコン用コンプレッサー(No.2)8のうち2台とも駆動してもエンジン回転が低下しない場合にはケーブル46及びケーブル48を介して許可信号を出力し、エアコン用コンプレッサー(No.1)6及びエアコン用コンプレッサー(No.2)8のうち1台駆動してもエンジン回転は低下しないが2台駆動するとエンジン回転は低下する場合にはケーブル46を介してエアコン用コンプレッサー(No.1)6の許可信号を出すとともにケーブル48を介してエアコン用コンプレッサー(No.2)8の不許可信号を出力し、エアコン用コンプレッサー(No.1)6及びエアコン用コンプレッサー(No.2)8のうち1台でも駆動するとエンジン回転が低下する場合にはケーブル46及びケーブル48を介して不許可信号を出力する。
【0020】
エアコン用ECU22では、前記許可信号又は不許可信号が入力されると、該信号、エアコンの設定温度及び車両の室内温度に基づいて、エアコン用コンプレッサー(No.1)6及びエアコン用コンプレッサー(No.2)8を制御する。
【0021】
図3は、実施例1に係るエアコン用コンプレッサーの制御のフローチャートである。
図2及び図3に基づいて、エアコン用コンプレッサーの制御についてさらに詳しく説明する。
なお、図3において、点線Aで囲んだ範囲はエアコン用ECU22における制御のステップを表し、点線Bで囲んだ範囲はエンジン用ECU24における制御のステップを表している。
【0022】
まず、ステップS1で車両の使用者が例えば設定温度25℃にてエアコンのスイッチをONにする。
ステップS1でエアコンのスイッチがONにされると、前記スイッチのON信号及び前記設定温度25℃がエアコン用ECU22に入力され、ステップS2で車両の室温が設定温度25℃より高いか否かを判断する。
【0023】
ステップS2でNoと判断されると、エアコンを駆動する必要がないため、ステップS2に戻り、室温が設定温度25℃より高くならない限りエアコン用コンプレッサーは駆動しない。
ステップS2でYesと判断されると、ステップS3で、車両の室温に基づきエアコン用のコンプレッサーを1台駆動させるか2台駆動させるかを判断する。ステップS3における判断は車両の室温が設定温度25℃より極端に高い(例えば30℃以上)場合には2台駆動と判断し、そうでない場合(例えば25℃〜30℃)である場合には1台駆動と判断するというように、室温によって判断することができる。
【0024】
ステップS3で1台と判断されると、ステップS4でエアコン用ECU22からケーブル36を介してエンジン用ECU24にアイドルアップ信号を出力する。
【0025】
ステップS4で出力されたアイドルアップ信号がエンジン用ECU24に入力されると、エンジン用ECU24では、ステップS5でトルクに余裕があるか否かを判断する。ここでいうトルクに余裕があるか否かの判断とは、エアコン用コンプレッサーを1台(エアコン用コンプレッサー(No.1)6)駆動した場合のトルクを計算し、該計算結果とエンジンの駆動状態から、エアコン用コンプレッサーを1台駆動した場合にエンジン回転数が低下するかどうかかを判断し、エンジン回転数が低下しない場合はトルクに余裕がある、低下する場合はトルクに余裕がないと判断することである。
【0026】
ステップS5でトルクに余裕があると判断されると、ステップS6でケーブル46を介してエアコン用コンプレッサーの駆動を許可する許可信号を出力する。
該許可信号がエアコン用ECU22に入力されると、ステップS7で、エアコン用ECU22はエアコン用コンプレッサーを1台(エアコン用コンプレッサー(No.1)6)を駆動する。
ステップS7でエアコン用コンプレッサー(No.1)6が駆動すると、該エアコン用コンプレッサー(No.1)6を駆動したままステップS2に戻る。
【0027】
ステップS5でトルクに余裕がないと判断されると、ステップS8でケーブル46を介してエアコン用コンプレッサーの駆動を許可しない不許可信号を出力する。
該不許可信号がエアコン用ECU22に入力されると、ステップS9で、室内温度が前記設定温度25℃よりも2℃高い温度である設定値27℃よりも高いか否かを判断する。前記設定値27℃は、エアコンの設定温度25℃よりも高い温度であっても極度に不快とならない温度を設定することができ、27℃に限定されるものではない。
【0028】
ステップS9でNoと判断されると、ステップS9でYesと判断されるかエアコンのスイッチが切られるまでステップS9の判断を繰り返す。
ステップS9でYesと判断されると、ステップS10でエアコン用コンプレッサーを1台(エアコン用コンプレッサー(No.1)6)を駆動する。これにより車両室内の温度を低下させて設定値27℃以下に確保することができるため、車両室内の居住性の著しい悪化を防止することができる。なおこの場合、ステップS5でトルクに余裕がないと判断されている状態であるため、エンジンの回転数は低下するが、エアコン用ECUが駆動する前記設定値27℃を前記室内温度の設定温度25℃よりも高い温度としているため、ステップS9の時点で室温が25〜27℃である場合にはステップS10でのエアコン用コンプレッサー(No.1)6は駆動がなされないため、エアコンプレッサー(No.1)の駆動時間を短時間化しエンジンの回転数の低下時間を短く抑えることができる。
【0029】
ステップS10でエアコン用コンプレッサー(No.1)6が駆動され一定時間が経過すると、ステップS11で室内温度が前記設定温度25℃よりも低いか否かを判断する。
ステップS11でYesと判断されると、ステップS12でエアコン用コンプレッサー(No.1)6を停止してからステップS2に戻る。
ステップS11でNoと判断されると、ステップS13でエアコン用コンプレッサー(No.1)6を停止してからステップS9に戻る。これによりエアコン用コンプレッサー(No.1)6の停止時間を最小限に抑えることができる。
【0030】
また、ステップS3で2台と判断されると、ステップS14でエアコン用ECU22からケーブル36及びケーブル38を介してエンジン用ECU24にアイドルアップ信号を出力する。
【0031】
ステップS14で出力されたアイドルアップ信号がエンジン用ECU24に入力されると、エンジン用ECU24では、ステップS15でトルクに余裕があるか否かを判断する。ここでいうトルクに余裕があるか否かの判断とは、エアコン用コンプレッサーを2台駆動した場合にエンジン回転数が低下しない場合はトルクに余裕がある、低下する場合はトルクに余裕がないと判断することである。
【0032】
ステップS15でトルクに余裕があると判断されると、ステップS16でケーブル46及びケーブル48を介してエアコン用コンプレッサーの駆動を許可する許可信号を出力する。
該許可信号がエアコン用ECU22に入力されると、ステップS17で、エアコン用ECU22はエアコン用コンプレッサーを2台(エアコン用コンプレッサー(No.1)6及びエアコン用コンプレッサー(No.2)8)を駆動する。
ステップS17でエアコン用コンプレッサー(No.1)6及びエアコン用コンプレッサー(No.2)8が駆動すると、該2台のエアコン用コンプレッサーを駆動したままステップS2に戻る。
【0033】
ステップS15でトルクに余裕がないと判断されると、ステップS18でエアコン用コンプレッサー1台分トルクに余裕があるか否かを判断する。ここでいうエアコン用コンプレッサー1台分トルクに余裕があるか否かの判断とは、エアコン用コンプレッサーを1台駆動した場合にエンジン回転数が低下しない場合はトルクに余裕がある、低下する場合はトルクに余裕がないと判断することである。
【0034】
ステップS18で余裕があると判断されると、ステップS19でケーブル46を介してエアコン用コンプレッサー1台分の駆動を許可する許可信号を出力するとともに、ケーブル48を介してエアコン用コンプレッサー1台分の駆動を許可しない不許可信号を出力する。
該許可信号及び不許可信号がエアコン用ECU22に入力されると、ステップS20で、エアコン用ECU22はエアコン用コンプレッサーを1台(エアコン用コンプレッサー(No.1)6)駆動する。
【0035】
ステップS20でエアコン用コンプレッサー(No.1)が駆動すると、ステップS21で室内温度が前記設定温度25℃よりも2℃高い温度である設定値27℃よりも高いか否かを判断する。前記設定値27℃は、エアコンの設定温度25℃よりも高い温度であっても極度に不快とならない温度を設定することができ、27℃に限定されるものではない。
【0036】
ステップS21でYesと判断されると、ステップS22でエアコン用コンプレッサーをさらに1台(エアコン用コンプレッサー(No.2)8)を駆動する。これにより車両室内の温度を設定値27℃以下に確保することができ、車両室内の居住性の著しい悪化を防止することができる。なおこの場合、ステップS18でエアコン用コンプレッサーを2台駆動させるほどにはトルクに余裕がないと判断されている状態であるため、エンジンの回転数は低下するが、エアコン用ECUが駆動する前記設定値27℃を前記室内温度の設定温度25℃よりも高い温度としているため、エンジンの回転数の低下時間を短く抑えることができる。
【0037】
ステップS21でNoと判断されるか、ステップS22でエアコン用コンプレッサーを2台駆動させてから一定時間が経過すると、ステップS23で室内温度が前記設定温度25℃よりも低いか否かを判断する。
ステップS23でYesと判断されると、ステップS24でエアコン用コンプレッサーを停止してからステップS2に戻る。
ステップS23でNoと判断されると、ステップS25でエアコン用コンプレッサー(No.2)8を停止し、エアコン用コンプレッサーを1台(エアコン用コンプレッサー(No.1)6)のみ駆動した状態としてからステップS21に戻る。
【0038】
また、ステップS18で余裕がないと判断されると、ステップS26でケーブル46及びケーブル48を介してエアコン用コンプレッサーの駆動を許可しない不許可信号を出力する。
該不許可信号がエアコン用ECU22に入力されると、ステップS27で室内温度が前記設定温度25℃よりも2℃高い温度である設定値27℃よりも高いか否かを判断する。前記設定値27℃は、エアコンの設定温度25℃よりも高い温度であっても極度に不快とならない温度を設定することができ、27℃に限定されるものではない。
【0039】
ステップS27でNoと判断されると、ステップS27でYesと判断されるかエアコンのスイッチが切られるまでステップS27の判断を繰り返す。
ステップS27でYesと判断されると、ステップS28でエアコン用コンプレッサーを1台(エアコン用コンプレッサー(No.1)6)を駆動する。
【0040】
ステップS28でエアコン用コンプレッサー(No.1)6が駆動され一定時間が経過すると、ステップS29で室内温度が前記設定値27℃よりも高いか否かを判断する。
ステップS29でYesと判断されると、ステップS30でエアコン用コンプレッサーをさらに1台(エアコン用コンプレッサー(No.2)8)を駆動する。
【0041】
ステップS29でNoと判断されるか、ステップS30でエアコン用コンプレッサーを2台駆動させてから一定時間が経過すると、ステップS31で室内温度が前記設定温度25℃よりも低いか否かを判断する。
ステップS31でYesと判断されるとエアコン用コンプレッサーを停止してからステップS2に戻る。
ステップS31でNoと判断されると、エアコン用コンプレッサーを停止してからステップS27に戻る。
【0042】
以上のような制御により、トルクに余裕がある、即ちエアコン用コンプレッサーを駆動してもエンジン回転数が低下しない場合にはエアコン用コンプレッサーを必要数だけ駆動(停止)して室内温度を設定温度25℃と略一致するようにエアコンの作動を制御することができ、トルクに余裕がある、即ちエアコン用コンプレッサーを駆動するとエンジン回転数が低下する場合においても、エンジン回転数の低下を小さく抑えつつ室内温度を設定値27℃以下とすることができるため、エンジンの回転数の極端な低下と室内の居住性の著しい悪化の双方を防止することができる。
【0043】
また、図3のフローチャートにおけるステップS9、ステップS21、ステップS27及びステップS29では、本実施例においては、室内温度が設定値27℃よりも高いか否かを判断したが、これに代えて室内温度が設定値27℃よりも高い状態が一定時間継続したか否かを判断するようにすると、室内温度の検出値の瞬間的な振れ等によって前記停止されたコンプレッサーが駆動することがないため、前記エンジンの動力特性の低下時間をさらに短く抑えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
エンジンの車両駆動用動力への負荷を増大させないために車両の動力性能を低下させず、従って快適な操縦性を有し、さらに冷房の対象となる車両の室内を設定温度と略一致するようにエアコンの作動を制御することができるエアコン用コンプレッサーの駆動制御装置として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】車両に搭載されるエンジンシステムの正面図である。
【図2】エアコン用コンプレッサーの制御に係る機能ブロック図である。
【図3】エアコン用コンプレッサーの制御のフローチャートである。
【符号の説明】
【0046】
4 エンジン
6、8 エアコン用コンプレッサー
22 エアコン用ECU
24 エンジン用ECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両走行用エンジンでエアコンのコンプレッサーを駆動する車両用エアコン用コンプレッサーの駆動制御装置において、
前記エンジンの作動を制御するエンジン用ECUと、前記エアコンの作動を制御するエアコン用ECUと、前記エンジンによって駆動されるエアコン用の複数のコンプレッサーとを備え、
前記エアコン用ECUは前記エンジン用ECUから前記エンジンの駆動状態の情報を入手して、前記エンジン用ECUに対し、前記エンジンがアイドル状態の場合に前記アイドルアップ信号を出力して前記複数のコンプレッサーの駆動を制御するとともに、前記複数のコンプレッサーの駆動による駆動負荷量を計算し、前記エンジン回転の低下を防ぐように前記複数のコンプレッサーの任意の数を停止させるように制御することを特徴とするエアコン用コンプレッサーの駆動制御装置。
【請求項2】
前記複数のコンプレッサーの駆動が停止されて車両室内温度が設定値を超えた場合に、前記エアコン用ECUは前記停止されたコンプレッサーを駆動させると共に、前記コンプレッサーの駆動温度の設定値を車両室内温度の前記設定値より高くしたことを特徴とする請求項1記載のエアコン用コンプレッサーの駆動制御装置。
【請求項3】
前記車両室内温度が設定値を超えた状態が一定時間継続した場合に、前記エアコン用ECUは前記停止されたコンプレッサーを駆動させることを特徴とする請求項2記載のエアコン用コンプレッサーの駆動制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−89761(P2010−89761A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−264604(P2008−264604)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【出願人】(303002158)三菱ふそうトラック・バス株式会社 (1,037)
【Fターム(参考)】