説明

エアサスペンション装置

【課題】装置全体としての消費電力を極力抑え、小型で安価なエアサスペンション装置を提供する。
【解決手段】各車輪に装着し空気室ARを有する空気ばね手段ASと、空気室に連通し、駆動時に空気を加圧して空気室に供給し非駆動時に空気を排出する空気供給源PSを備え、その給排流路APにドライヤDが介装され、その中に空気圧発電装置AGが収容されている。車高上昇時における空気ばね手段ASへの空気の供給時には、空気圧発電装置AGの出力電力が電力蓄積手段ES(バッテリBTあるいは大容量キャパシタCN)に供給され、消費電力の一部を回収し、車高降下時に空気ばね手段から空気を排出するときのドライヤ内の空気圧によって空気圧発電装置が駆動され、その出力電力が電力蓄積手段に供給され、装置全体としての消費電力を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアサスペンション装置に関し、特に、車両の各車輪に装着した空気ばね手段への空気の給排を制御して車高を調整するエアサスペンション装置に係る。
【背景技術】
【0002】
エアサスペンション装置として、例えば下記の特許文献1に「車高の降下時間を充分に短くすることが可能なエアサスペンション装置」が提案され(公報の段落〔0005〕に記載)、「車高を下げるときに、排気弁が閉じられた状態で、分断弁が閉作動し、両開閉バルブが開作動するように設定すれば、前輪側左右エアチャンバから前輪側枝流路、前輪側主流路および前輪側タンク流路を通してタンクへ空気が流入するのと同時に、後輪側左右エアチャンバから後輪側枝流路、後輪側主流路および後輪側タンク流路を通してタンクへ空気が流入するようになる。このため、タンクへの流入時における空気の干渉が回避されて車高の降下時間を充分に短くすることが可能である。」と説明されている(段落〔0007〕)。
【0003】
同様に、下記の特許文献2にて「例えばオペレータを含む乗員の乗降時等に車高調整作業(車高の上げ,下げ)を短時間で行うことができ、車高調整時の応答性、制御性を向上することができるようにしたエアサスペンション装置」が提案され(段落〔0010〕)、「空気圧縮機の吐出側に主管路を設け、該主管路の途中には排気弁を設け、車両の各空気ばねに対しては複数の分岐管路と各開閉弁を介して主管路を接続すると共に、該主管路には前記空気ばねから排出された排気空気を内部に貯留する空気タンクをタンク管路を介して接続し、該空気タンクと空気圧縮機との間に接続される再圧縮管路と前記タンク管路とを、方向制御弁により前記空気タンクに対し選択的に連通,遮断する構成」が開示されている(段落〔0017〕)。
【0004】
一方、エアサスペンション用ドライヤとして、例えば下記の特許文献3には「外部のコンプレッサにより圧縮された圧縮空気を乾燥させてから外部のエア制御システム側に送り込むためのエアドライヤ」に関し、従来は「略円筒状のハウジングにおいて軸方向両端面中央部の一方に、外部のコンプレッサに接続されたコンプレッサ側ポートを有し、他方に外部のエア制御システム側に接続されたシステム側ポートを有し、ハウジング内部には乾燥剤が充填されている。」と説明され、更に「充填されている乾燥剤は、コンプレッサ側からエア制御システム側へ向けてハウジング内を通過する空気を除湿する機能を有するものであり、その際に、乾燥剤内部には除湿された空気中の水分が吸着される。この水分の吸着量が増加すると、乾燥剤の除湿機能が徐々に低下する傾向にあるので、エアドライヤを継続的に使用する際には、適宜、外部エア制御システム内に充填されている除湿済の空気を外部エア制御システム側からエアドライヤを介してコンプレッサ側に戻すことにより、乾燥剤中に吸着した水分を乾燥空気に戻し、乾燥剤内の水分の吸着量を減少させ乾燥剤を再生させることにより、エアドライヤの除湿機能の回復を図っている。」と説明されている。そして、特許文献3では「横置きにして車両等へ配置した場合であっても、ハウジング内に結露した水分の排出性を確保可能なエアドライヤ」が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−224869号公報
【特許文献2】特開2008−30701号公報
【特許文献3】特開2002−119824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1等に記載のエアサスペンション装置は、基本的に図6に記載のように構成されており、エアサスペンション用の空気ばね手段ASに対し加圧空気を供給する空気供給源PSが設けられ、バッテリBTに接続された電動モータMによってコンプレッサCが駆動されると、ドライヤD及び逆止弁Gを介して、乾燥した加圧(圧縮)空気が制御弁VAを介して空気ばね手段ASの空気室ARに供給されるように構成されている。また、コンプレッサCの非駆動時に、常閉の排気弁VE及び制御弁VAが開位置とされると、オリフィスO及びドライヤDを介して空気が排出されるように構成されており、この空気の排出時にドライヤDが再生される。
【0007】
然し乍ら、上記従来のエアサスペンション装置では、コンプレッサCを駆動する電動モータMの消費電力が多く、バッテリBTへの負担が大であった。一方、ドライヤDは乾燥空気をエアサスペンションに供給する機能に特化されたものであり、他の用途への適用を考慮されることはなく、特に、電動モータMの消費電力との関連において検討対象とされることはなかった。
【0008】
そこで、本発明は、車両の各車輪に装着した空気ばね手段への空気の給排を制御して車高を調整するエアサスペンション装置において、ドライヤの改良も考慮し、装置全体としての消費電力を極力抑え、小型で安価なエアサスペンション装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を達成するため、本発明は、車両の各車輪に装着し空気室を有する空気ばね手段と、駆動時に空気を加圧して前記空気室に供給し非駆動時に空気を排出する空気供給源と、該空気供給源の前記空気ばね手段に対する空気の給排流路に介装し、当該空気供給源から前記空気室に供給される空気を乾燥させると共に、前記空気室の空気を排出するドライヤとを備え、前記空気供給源から前記空気ばね手段への空気の給排を制御して車高を調整するエアサスペンション装置において、前記空気供給源を駆動するための電力を蓄積する電力蓄積手段と、前記ドライヤ内に収容し、前記空気供給源から前記空気室に空気が供給されるときの前記ドライヤ内の空気圧によって電力を出力する空気圧発電装置と、該空気圧発電装置が出力する電力を前記電力蓄積手段に供給する制御手段とを備えることとしたものである。
【0010】
あるいは、車両の各車輪に装着し空気室を有する空気ばね手段と、駆動時に空気を加圧して前記空気室に供給し非駆動時に空気を排出する空気供給源と、該空気供給源の前記空気ばね手段に対する空気の給排流路に介装し、当該空気供給源から前記空気室に供給される空気を乾燥させると共に、前記空気室の空気を排出するドライヤとを備え、前記空気供給源から前記空気ばね手段への空気の給排を制御して車高を調整するエアサスペンション装置において、前記空気供給源を駆動するための電力を蓄積する電力蓄積手段と、前記ドライヤ内に収容し、前記空気室から空気が排出されるときの前記ドライヤ内の空気圧によって電力を出力する空気圧発電装置と、該空気圧発電装置が出力する電力を前記電力蓄積手段に供給する制御手段とを備えたものとしてもよい。
【0011】
更に、車両の各車輪に装着し空気室を有する空気ばね手段と、駆動時に空気を加圧して前記空気室に供給し非駆動時に空気を排出する空気供給源と、該空気供給源の前記空気ばね手段に対する空気の給排流路に介装し、当該空気供給源から前記空気室に供給される空気を乾燥させると共に、前記空気室の空気を排出するドライヤとを備え、前記空気供給源から前記空気ばね手段への空気の給排を制御して車高を調整するエアサスペンション装置において、前記空気供給源を駆動するための電力を蓄積する電力蓄積手段と、前記ドライヤ内に収容し、前記空気供給源から前記空気室に空気が供給されるときの前記ドライヤ内の空気圧、及び前記空気室から空気が排出されるときの前記ドライヤ内の空気圧によって電力を出力する空気圧発電装置と、該空気圧発電装置が出力する電力を前記電力蓄積手段に供給する制御手段とを備えたものとしてもよい。
【0012】
上記の各エアサスペンション装置において、前記ドライヤは、筒状のハウジングの軸方向の両端に流入口と流出口を有し、前記ハウジング内に収容した一対のフィルタ間に乾燥剤を挟持して成り、前記流入口から導入した流体を前記乾燥剤を介して乾燥させ、前記流出口から乾燥空気を吐出するように構成し、前記空気圧発電装置を、前記流入口側のフィルタと前記流入口との間に介装したものとするとよい。
【0013】
前記空気圧発電装置は、前記ドライヤ内の空気圧によって回転駆動される複数のベーンを有する回転子を備えたものとし、該回転子の回転に応じて電力を出力するように構成することができる。更に、前記空気圧発電装置は、前記回転子に装着した磁石と、前記ハウジングに装着した電磁コイルとを備えたものとすることができる。
【0014】
そして、上記の各エアサスペンション装置において、前記電力蓄積手段は、前記空気圧発電装置から出力される電力を蓄積するバッテリと、該バッテリに対し並列接続されるキャパシタを備えたものとし、前記制御手段は、前記空気圧発電装置の起動時には、前記キャパシタに蓄積された電力を前記空気圧発電装置に供給するように制御する構成としてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明は上述のように構成されているので以下の効果を奏する。即ち、上記の構成になるエアサスペンション装置によれば、ドライヤ内に空気圧発電装置が収容されており、その出力が電力蓄積手段に供給されるように制御される。このとき、空気供給源から空気室に空気が供給されるときのドライヤ内の空気圧によって電力を出力する空気圧発電装置を備えたものにおいては、車高上昇時における空気供給源から空気ばね手段に対し空気を供給する場合において、特に供給開始時には電力蓄積手段の消費電力が大となるが、空気ばね手段への空気の供給作動の全期間に亘って、空気圧発電装置の出力電力が電力蓄積手段に供給されるので、消費電力の一部を回収することができ、装置全体としての消費電力を抑制することができる。また、空気室から空気が排出されるときのドライヤ内の空気圧によって電力を出力する空気圧発電装置を備えたものにおいては、車高降下時に空気ばね手段から空気が排出されるときのドライヤ内の空気圧によって、空気圧発電装置が駆動され、その出力電力が電力蓄積手段に供給されるので、装置全体としての消費電力を抑制することができ、小型で安価な装置とすることができる。何れの場合においても、空気圧発電装置によって、ドライヤに供給される流体内の水分を適切に分離することができるので、小型で安価な装置とすることができる。
【0016】
上記の空気圧発電装置を、ドライヤ内の空気圧によって回転駆動される複数のベーンを有する回転子を備えたものとし、回転子の回転に応じて電力を出力するように構成すれば、複数のベーンによって回転子が回転駆動されると共に、ドライヤに供給される流体内の水分が適切に分離されるので、小型で安価な装置とすることができる。また、上記の空気圧発電装置を、回転子に装着した磁石と、ハウジングに装着した電磁コイルとを備えたものとすれば、電磁コイルの配線が容易で、安価な装置とすることができる。更に、前述のキャパシタを設けることとすれば、空気圧発電装置が出力した電力をキャパシタに蓄積しておき、起動時に必要とする大電流をキャパシタから供給することができるので、電流不足を惹起することはなく、また、電力蓄積手段への負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係るエアサスペンション装置のブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に供するドライヤの断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に供するドライヤを構成するプレートの平面図である。
【図4】本発明の一実施形態に供するドライヤのハウジング内の底部を示す平面図である。
【図5】本発明の一実施形態に供するドライヤの他の実施例を示す断面図である。
【図6】従来のエアサスペンション装置を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の望ましい実施形態を図面を参照して説明する。先ず、本発明の一実施形態に係るエアサスペンション装置の全体構成を説明すると、図1に示すように、従来装置と同様、車両の各車輪(図示せず)に装着し空気室ARを有する空気ばね手段ASと、空気室ARに連通し、駆動時に空気を加圧して空気室ARに供給し非駆動時に空気を排出する空気供給源PSを備えている。この空気供給源PSは、空気ばね手段ASに対し加圧空気を供給するもので、電力蓄積手段ESとして機能するバッテリBTに接続された電動モータMによって、コンプレッサCが駆動されると、ドライヤD(後述する空気圧発電装置AGを収容)を介して、乾燥した加圧空気が制御弁VAを介して空気ばね手段ASに供給されるように構成されている。また、コンプレッサCの非駆動時に、排気弁VE及び制御弁VAが開位置とされると、ドライヤDを介して空気が排出されるように構成されており、この空気の排出時にドライヤDが再生される。上記の排気弁VE及び制御弁VAは、何れも常閉の電磁開閉弁で構成されているが、どのような弁装置を用いることとしてもよい。尚、オリフィスO及びチェックバルブGはドライヤD内に収容もしくは一体的に形成することとしてもよい。
【0019】
ドライヤDは図2に拡大して示すように構成されている。即ち、軸方向の両端に流入口11と流出口12を有する筒状のハウジング10内に、一対のフィルタ21及び22とこれらの間に挟持されるように乾燥剤30が収容されており、流入口11から導入された流体(上記のモータMから出力される水分を含んだ圧縮空気であり、Awで示す)が乾燥剤30を介して乾燥され、流出口12から乾燥空気Adが吐出され、上記空気ばね手段ASに供給される。尚、本実施形態の乾燥剤30は、粒体のシリカゲルで構成されており、フィルタ21及び22は不織布で円板状に形成されている。
【0020】
本実施形態のハウジング10は有底円筒体で、その開口部に蓋部13が環状シールSを介して装着されており、流出口12は蓋部13に形成されている。そして、複数の連通孔Hが形成された支持プレート14がフィルタ22に密着するように配置され、蓋部13と支持プレート14との間に圧縮スプリング15が介装され、支持プレート14及びフィルタ22を介して乾燥剤30が図1の下方に押圧されている。下方では、複数の連通孔Hが形成された支持プレート40がフィルタ21に密着するように配置されている。而して、乾燥剤30は粒体間の流路を確保した状態で、圧縮スプリング15の付勢力によってフィルタ21及び22間に保持されている。
【0021】
上記のように、空気供給源PSの空気ばね手段ASに対する空気の給排流路APにはドライヤDが介装され、その中に空気圧発電装置AGが収容されており、その出力電力が制御手段TRを介して電力蓄積手段ESに供給される。即ち、図2に示すように、流入口11側(図1の下方)のフィルタ21と流入口11との間に空気圧発電装置AGが介装されており、この空気圧発電装置AG及びフィルタ21を介して乾燥剤30内に流体Awが案内される。
【0022】
本実施形態の空気圧発電装置AGは、図2に示すように、ドライヤD内の空気圧によって回転駆動される複数のベーン(代表して51で示す)を有し、回転子を構成するロータ50を備え、空気供給源PSから流体Awが供給され、空気室ARに空気が供給されるときのドライヤD内の空気圧、及び空気室ARから空気が排出されるときのドライヤD内の空気圧によって電力を出力する発電機で構成されている。前述のように、支持プレート40は中央部に円柱状の軸部41を有し、その両端に環状プレート部42及び鍔部43が形成されており、ロータ50が軸受44を介して軸部41に回転自在に支持されている。そして、ロータ50の外周に永久磁石52が装着され、これと対向するように環状の電磁コイル53が配置され、ハウジング10内に収容されている。このように構成すれば、制御手段TRに対し電磁コイル53を容易に配線することができる。尚、本実施形態では発電機としてブラシレス発電機が用いられ、フリクションを抑えることができるが、これに限るものではない。
【0023】
図2及び図4に示すように、ハウジング10の流入口11側(図1の下方)の軸方向端面は、ハウジング10の内側面から流入口11に向かって断面積が漸減する傾斜面10aに形成されており、この傾斜面10aに複数のリブ(代表して16で示す)が立設されている。而して、図2に示すように複数のリブ16の端面に鍔部43の端面が当接するように空気圧発電装置AGが配置されると、複数のリブ16相互の空間と複数のベーン51相互の空間に流路が形成され、流体Awが各ベーン51の表面に衝突するときに流体Aw内の水分が分離される。
【0024】
図1に示すように、制御手段TRは電子制御ユニットECU及びインバータIVを有し、電子制御ユニットECUによる制御に応じて、発電機の出力(交流)がU、V及びWの各相のコイル毎にインバータIVを介して直流に変換されてバッテリBTに充電される。本実施形態のバッテリBTは二次電池が用いられるが、燃料電池でもよく、電力蓄積手段ESとしては、更に大容量キャパシタCNを設け、図1に破線で示す回路を付加することとしてもよい。本実施形態の電子制御ユニットECUは一般的な構成であるので、図示は省略するが、バスを介して相互に接続されたCPU、ROM、RAM、入出力ポート等から成るマイクロコンピュータを備えており、種々の検出信号入力ポートからCPUに入力されるように構成されている。また、出力ポートからはインバータIV等に制御信号が出力されるように構成されている。
【0025】
而して、空気供給源PSから流体Awが供給され、図2に黒矢印で示すように、流入口11からハウジング10内に導入されると、複数のベーン51によってロータ50が回転駆動されると共に、流体Aw内の水分が分離される。尚、図示は省略するが、ここで分離された水分は下流側で捕集され適宜排出される。更に、流体Awは支持プレート40の連通孔Hに案内され、乾燥剤30によって効率的に乾燥され、白抜矢印で示す乾燥空気Adとなって流出口12から吐出され、空気ばね手段ASに供給される。逆に、空気ばね手段ASの空気室AR内の圧縮(加圧)空気が流出口12からハウジング10内に導入されるときにも、複数のベーン51によってロータ50が回転駆動される。このロータ50の回転駆動によって発電し、その交流電力は図1のインバータIVを介して直流電力に変換されてバッテリBTに充電される。尚、空気供給源PSから流体Awが供給されてロータ50が回転駆動されるときと、空気室ARから空気が排出されてロータ50が回転駆動されるときでは、ロータ50の回転方向が逆になるが、発電機としての出力はインバータIVを介して直流電力に変換され、電子制御ユニットECUにより適切にバッテリBTに充電される。
【0026】
而して、本実施形態のエアサスペンション装置によれば、車高上昇時における空気供給源PSから空気ばね手段ASに対し空気を供給する場合において、特に供給開始時にはバッテリBTの消費電力が大となるが、空気ばね手段ASへの空気の供給作動の全期間に亘って、空気圧発電装置AGの出力電力が電力蓄積手段ES(バッテリBTあるいは大容量キャパシタCN)に供給されるので、消費電力の一部を回収することができ、装置全体としての消費電力を抑制することができる。また、車高降下時に空気ばね手段ASから空気を排出するときのドライヤD内の空気圧によって、空気圧発電装置AGが駆動され、その出力電力が電力蓄積手段ES(バッテリBTあるいは大容量キャパシタCN)に供給されるので、装置全体としての消費電力を抑制することができる。
【0027】
更に、図1に破線で示すように大容量キャパシタCNを設けることとすれば、空気圧発電装置AGが出力した電力を大容量キャパシタCNに蓄積しておき、コンプレッサCの起動時に電動モータMが必要とする大電流を大容量キャパシタCNから供給することができるので、電流不足を惹起することはなく、また、バッテリBTへの負担を軽減することができる。
【0028】
図5は、他の実施形態に供するドライヤの他の実施例を示すもので、本実施形態の空気圧発電装置AGにおいては、ロータ50xが軸受44xを介してハウジング10に回動自在に支持されると共に、永久磁石52xがロータ50x(ベーン51x)の中央部に装着されており、これと対向するように電磁コイル53xが軸部41xに配置されている。その他の構成は、図1に示す実施形態と実質的に同じであるので、実質的に同じ部品については同じ符号を付して説明を省略する。而して、本実施形態においても、図2に示す実施形態と同様に機能するが、電磁コイル53xの配線は若干複雑となる。尚、ベーン51による気液分離の機能を持たせないで車高上昇または車高降下時に空気圧発電装置AGを駆動することに特化した構成とする場合には、流出口12側のフィルタ22と流出口12との間に空気圧発電装置AGを介装することとしてもよい。
【符号の説明】
【0029】
AS 空気ばね手段
AR 空気室
PS 空気供給源
M 電動モータ
C コンプレッサ
D ドライヤ
VE 排気弁
VA 制御弁
AP 給排流路
BT バッテリ
ES 電力蓄積手段
AG 空気圧発電装置
TR 制御手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の各車輪に装着し空気室を有する空気ばね手段と、駆動時に空気を加圧して前記空気室に供給し非駆動時に空気を排出する空気供給源と、該空気供給源の前記空気ばね手段に対する空気の給排流路に介装し、当該空気供給源から前記空気室に供給される空気を乾燥させると共に、前記空気室の空気を排出するドライヤとを備え、前記空気供給源から前記空気ばね手段への空気の給排を制御して車高を調整するエアサスペンション装置において、前記空気供給源を駆動するための電力を蓄積する電力蓄積手段と、前記ドライヤ内に収容し、前記空気供給源から前記空気室に空気が供給されるときの前記ドライヤ内の空気圧によって電力を出力する空気圧発電装置と、該空気圧発電装置が出力する電力を前記電力蓄積手段に供給する制御手段とを備えたことを特徴とするエアサスペンション装置。
【請求項2】
車両の各車輪に装着し空気室を有する空気ばね手段と、駆動時に空気を加圧して前記空気室に供給し非駆動時に空気を排出する空気供給源と、該空気供給源の前記空気ばね手段に対する空気の給排流路に介装し、当該空気供給源から前記空気室に供給される空気を乾燥させると共に、前記空気室の空気を排出するドライヤとを備え、前記空気供給源から前記空気ばね手段への空気の給排を制御して車高を調整するエアサスペンション装置において、前記空気供給源を駆動するための電力を蓄積する電力蓄積手段と、前記ドライヤ内に収容し、前記空気室から空気が排出されるときの前記ドライヤ内の空気圧によって電力を出力する空気圧発電装置と、該空気圧発電装置が出力する電力を前記電力蓄積手段に供給する制御手段とを備えたことを特徴とするエアサスペンション装置。
【請求項3】
車両の各車輪に装着し空気室を有する空気ばね手段と、駆動時に空気を加圧して前記空気室に供給し非駆動時に空気を排出する空気供給源と、該空気供給源の前記空気ばね手段に対する空気の給排流路に介装し、当該空気供給源から前記空気室に供給される空気を乾燥させると共に、前記空気室の空気を排出するドライヤとを備え、前記空気供給源から前記空気ばね手段への空気の給排を制御して車高を調整するエアサスペンション装置において、前記空気供給源を駆動するための電力を蓄積する電力蓄積手段と、前記ドライヤ内に収容し、前記空気供給源から前記空気室に空気が供給されるときの前記ドライヤ内の空気圧、及び前記空気室から空気が排出されるときの前記ドライヤ内の空気圧によって電力を出力する空気圧発電装置と、該空気圧発電装置が出力する電力を前記電力蓄積手段に供給する制御手段とを備えたことを特徴とするエアサスペンション装置。
【請求項4】
前記ドライヤは、筒状のハウジングの軸方向の両端に流入口と流出口を有し、前記ハウジング内に収容した一対のフィルタ間に乾燥剤を挟持して成り、前記流入口から導入した流体を前記乾燥剤を介して乾燥させ、前記流出口から乾燥空気を吐出するように構成し、前記空気圧発電装置を、前記流入口側のフィルタと前記流入口との間に介装したことを特徴とする請求項1、2又は3記載のエアサスペンション装置。
【請求項5】
前記空気圧発電装置は、前記ドライヤ内の空気圧によって回転駆動される複数のベーンを有する回転子を備え、該回転子の回転に応じて電力を出力するように構成したことを特徴とする請求項4記載のエアサスペンション装置。
【請求項6】
前記空気圧発電装置は、前記回転子に装着した磁石と、前記ハウジングに装着した電磁コイルとを備えたことを特徴とする請求項5記載のエアサスペンション装置。
【請求項7】
前記電力蓄積手段は、前記空気圧発電装置から出力される電力を蓄積するバッテリと、該バッテリに対し並列接続されるキャパシタを備え、前記制御手段は、前記空気圧発電装置の起動時には、前記キャパシタに蓄積された電力を前記空気圧発電装置に供給するように制御することを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載のエアサスペンション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−17044(P2012−17044A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−156291(P2010−156291)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】